以下、本発明に係る構成を図1から図12に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係る液体を吐出する装置は、液体を吐出する液体吐出ヘッド(液体吐出ヘッド41)と、液体吐出ヘッドから吐出された液体を受け、液体による電気的変化を検知する電極部材(電極板101)と、を有し、液体吐出ヘッドと電極部材の何れか一方または両方が液体の吐出方向と交差する方向に移動することで、液体吐出ヘッドと電極部材との液体の吐出方向における間隔が変化するものである。なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
本発明に係る液体を吐出する装置の一実施形態であるインクジェット方式の画像形成装置について図1〜図3を参照して説明する。図1は画像形成装置の機構部の平面説明図、図2は画像形成装置の要部側面説明図、図3は画像形成装置の液体吐出ユニットの平面説明図である。なお、図3はヘッドを上方から透過した状態で示している。
この画像形成装置は、シリアル型装置であり、主ガイド部材1などのガイド機構でキャリッジ3を主走査方向に移動可能に保持している。キャリッジ3は、主走査移動機構を構成する、主走査モータ5によって駆動プーリ6と従動プーリ7間に架け渡したタイミングベルト8を介して主走査方向(キャリッジ移動方向)に往復移動される。
キャリッジ3には、2つの液体吐出ユニット40A,40B(区別しないときは、「液体吐出ユニット40」という。)を搭載している。液体吐出ユニット40は、液体吐出手段としての液体吐出ヘッド41と、液体吐出ヘッド41に液体を供給するヘッドタンク42とを一体化して構成している。
液体吐出ヘッド41は、図3に示すように、それぞれ複数のノズル41nを配列した2つのノズル列Na,Nbを有している。液体吐出ユニット40Aのヘッド41の一方のノズル列Naはブラック(K)の液滴を、他方のノズル列Nbはシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。また、液体吐出ユニット40Bのヘッド41の一方のノズル列Naはマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列Nbはイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
なお、液体吐出手段としては、1つの液体吐出ヘッドのノズル面41aに複数のノズルを並べた各色の液滴を吐出する複数のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
ヘッドタンク42は、それぞれ各ヘッド41の2つのノズル列Na,Nbに対応して、各色の液体を収容する2つのタンク部を対にした複数のタンク部を備える構成である。
そして、装置本体側には、各色の液体を収容したメインタンク(液体カートリッジ)50(50y,50m,50c,50k)が交換可能に装着されるカートリッジホルダ51が配置されている。
このカートリッジホルダ51には送液ポンプ部52が設けられ、メインタンク50から送液ポンプ部52によって各色の供給チューブ(液体供給経路ともいう。)56を介して各ヘッドタンク42のタンク部に各色の液体が供給される。
一方、用紙Pを搬送するために、用紙Pを吸着して液体吐出ユニット40のヘッド41に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。
搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されている。
搬送ベルト12は、副走査モータ16によってタイミングベルト17及びタイミングプーリ18を介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。この搬送ベルト12は、周回移動しながら帯電ローラによって帯電(電荷付与)され、あるいは、吸引手段によって用紙Pの吸引を行う。
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方にヘッド41の維持回復を行う回復手段の1つである維持回復機構20が配置されている。キャリッジ3の主走査方向の他方側には搬送ベルト12の側方にヘッド41から予備吐出(空吐出)される液体を受ける空吐出受け81がそれぞれ配置されている。なお、ヘッドの状態を維持、回復するための吐出を予備吐出といい、装置本来の目的を達するための吐出を本吐出という。
維持回復機構20は、例えばヘッド41のノズル面41aをキャッピングする吸引キャップ21、保湿キャップ22、ノズル面41aを払拭するワイパ部材23、予備される液体を受ける空吐出受け24などで構成されている。
また、搬送ベルト12と維持回復機構20との間の記録領域外であって、ヘッド41に対向可能な領域には、ヘッド41の吐出状態を検知する吐出検知装置を構成する吐出検知ユニット100が配置されている。
また、キャリッジ3の主走査方向に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール123を張り渡し、キャリッジ3にはエンコーダスケール123のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ124を設けている。これらのエンコーダスケール123とエンコーダセンサ124によってキャリッジ3の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
また、搬送ローラ13の軸にはコードホイール125を取り付け、このコードホイール125に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ126を設けている。これらのコードホイール125とエンコーダセンサ126によって搬送ベルト12の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)を構成している。
このように構成した装置においては、用紙Pが搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じてヘッド41を駆動することにより、停止している用紙Pに液体を吐出して1行分を記録する。そして、用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。
記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、印字動作を終了して、用紙Pを図示しない排紙トレイに排紙する。
次に、画像形成装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。図4は画像形成装置の制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行する本発明に係るプログラムを含む各種プログラムなどの固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503とを含む主制御部500Aを備えている。
また、制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ(NVRAM)504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
また、制御部500は、ヘッド41を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、ヘッド41を駆動するためのキャリッジ3側に設けたヘッドドライバ(ドライバIC)509とを備えている。
また、制御部500は、キャリッジ3を移動走査する主走査モータ5、搬送ベルト12を周回移動させる副走査モータ16、維持回復機構20の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510を備えている。維持回復モータ556は、維持回復機構20のキャップ21、22やワイパ部材23を昇降(進退)させる移動機構(昇降機構)29及び吸引ポンプ27の駆動などを行なう。
また、制御部500は、主走査エンコーダおよび副走査エンコーダからの検出信号を入力して解析するエンコーダ解析部511を備えている。
また、制御部500は、送液ポンプ54を駆動する供給系駆動部512を備えている。また、制御部500は、吐出検知ユニット100による吐出検知を行う吐出検知部515を備えている。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
また、制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を有し、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、画像読み取り装置などのホスト600のプリンタドライバ601側から所定のデータ等の送受信を行う。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。
この印刷制御部508は、ROM502に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含む。そして、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力されるヘッド41の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択してヘッド41の圧力発生手段に対して与え、ヘッド41を駆動する。このとき、駆動波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
I/O部513は、温度センサ572、その他装置に装着されている各種のセンサ群570からの情報を取得し、装置の制御に必要な情報を抽出し、各種の制御に使用する。
また、制御部500は、ヘッドと電極板との間隔(以下、ヘッド電極板ギャップともいう)の調整を行う調整手段として、ギャップ調整機構520を制御するギャップ制御部516を備えている。ギャップ調整機構520の詳細は後述するが、ヘッド41の主走査位置を制御する主走査モータ5や主走査エンコーダがギャップ調整機構520として機能する。
(吐出検知装置)
次に、液体を吐出する装置における吐出検知装置200について説明する。図5に示す吐出検知装置200は、吐出検知ユニット100、吐出検知部515、および主制御部500Aにより構成され、ヘッド41のノズル41nからの液体の吐出の有無などを検知する。
図5は、吐出検知装置200の説明図である。吐出検知ユニット100は、ヘッド41から吐出された液体を受ける受け面102を備える電極部材としての電極板101を有している。ここでは、電極板101の表面を受け面102としている。また、受け面102は撥水性処理を施している。
電極板101はホルダ部材103上に配置されている。ホルダ部材103は、例えばプラスチック等の絶縁材料で形成された絶縁部材である。
電極板101は、導電性の金属板で、例えば、SUS304、銅合金にNiメッキを施したもの、あるいは、Pdメッキを施したものなどで形成している。
この電極板101はリード線104を介して吐出検知部515に接続される。
次に、吐出検知部515は、電極板101に高電圧VE(例えば750V)を加える高電圧電源701を備えている。この高電圧電源701は、主制御部500Aによってオン/オフ制御される。
また、電極板101の受け面102に吐出された液体が付着したときの電極板101の電気的変化に伴う信号を入力するバンドパスフィルタ(BPF)702と、信号を増幅する増幅器(AMP)703と、増幅信号をA/D変換するAD変換器(ADC)704とを備えている。このADC704の変換結果を主制御部500Aに入力する。
主制御部500Aは、吐出検知動作を行うときには、ヘッド41のノズル面41aと受け面102とを対向させ、電極板101に高電圧VEを付与し、ノズル面41aと電極板101との間に電位差を与える。このとき、ヘッド41のノズル面41aはマイナスに帯電し、電極板101はプラスに帯電される。
この状態で、ヘッド41から1ノズルずつ検知用の液体を1滴又は複数滴を吐出させる。
このとき、吐出される液滴はマイナスに帯電されたヘッド41のノズル面41aから吐出されるので、液体もマイナスに帯電されている。このマイナスに帯電された液体が受け面102に付着して、プラスに帯電された電極板101に近づくと、電極板101に加えている高電圧VEの電圧が微小に変動する。
そこで、バンドパスフィルタ702にてこの変動分(AC成分)を抽出し、増幅回路703で増幅して、ADC704でA/D変換して測定結果(検出結果)として主制御部500Aに入力する。
そこで、主制御部500Aでは、測定結果(変動分)が予め設定した閾値を越えているか否かを判別して、測定結果が閾値を越えているときには、吐出している(吐出有、正常吐出)と判別し、閾値を越えていないときには不吐出(吐出無)と判別する。
ここで、1ノズルずつ吐出させた場合、1ノズルの吐出/不吐出の判別には、0.5〜10msec程度の時間を要する。そこで、2ノズルに対して同時に吐出させる波形を与えて、検知出力を2つの閾値と比較して、2ノズルとも吐出されている場合、1ノズルが未吐出である場合、いずれも不吐出である場合を判別することもできる。
すべてのノズルについての吐出/不吐出の判別が終了した後、電極板101に加えている高電圧VEはオフ状態にされる。
このようにして、受け面に液体が付着したときの電極部材の電気的変化を検出して吐出の有無、状態を検知することができる。
この吐出検知装置200は、図5に示した構成に加え、図4に示したギャップ制御部516およびギャップ調整機構520を有して構成される。以下、吐出検知装置200によるギャップ調整制御および吐出検知制御について説明する。
図6は、吐出検知装置200におけるヘッドと電極板とのギャップ調整制御のフローチャートである。吐出検知装置200におけるギャップ調整制御は、ユーザが操作パネル514等の操作により用紙設定を変更した場合に実行される。用紙設定時に実行しておくことで、吐出検知によるダウンタイムを低減することができる。例えば、用紙Pとしてロール紙(連続紙)を用いる画像形成装置では、ロールフォーミング動作の一環として紙種設定を行うため、その際に、ギャップ調整制御も実行しておくことで、ダウンタイムを低減することができる。
先ず、ユーザにより紙種設定が変更されると(S101)、ギャップ制御部516は、設定された紙種では印字モードに応じて印字波形を使い分けているか否か、すなわち、印字モードに応じて複数の印字波形を有するかを判断する(S102)。
ここで、印字モードによる印字波形の使い分けについて説明する。インクジェット方式の画像形成装置は、一般に、スキャン数を少なくして、生産性を優先するモード(生産性優先モード)と、スキャン数を多くして画質を優先するモード(画質優先モード)を有している。生産性優先モードでは、1回のスキャンで紙面をインクで埋める領域を大きくする必要があるため滴量が多くなる印字波形が用いられ、一方、画質優先モードでは、1回のスキャンで紙面をインクで埋める領域を小さくする必要があるため滴量の少なくなる印字波形が用いられる。また、滴量が多い印字波形の場合、滴の滴長は長くなり、滴量が少ない印字波形の場合は、滴の滴長が短くなる。
一方で、紙種によっては、印字波形は同一とし、スキャン数等の調整によって、生産性優先モードと画質優先モードの双方に対応可能なものも存在する。このため、このような紙種では、印字モードによる印字波形の使い分けはなされない。
図7は、紙種および印字モードに応じた印字波形、滴長、ヘッド電極板ギャップの一例を示す説明図である。
図7に示す例では、コート紙の場合は、生産性優先モードでの印字波形(印字波形B)と、画質優先モードでの印字波形(印字波形C)とは相違するが、普通紙の場合は、生産性優先モードでの印字波形と、画質優先モードでの印字波形が同じ印字波形(印字波形A)となっている。
次いで、滴長とヘッド電極板ギャップとの関係について説明する。図7に示すように、滴長が短い場合はヘッド電極板ギャップは小さく、滴長が長い場合はヘッド電極板ギャップは大きく設定される。
吐出検知装置200では、上述のように、電極板101にプラスの電荷を印加すると、ヘッド41側でマイナスの電荷が誘起されて、ノズル面41aにマイナスの電荷が集積する。このマイナスの電荷を引き付ける力の大きさは、ヘッド電極板ギャップに依存し、ギャップが小さいほど強く、ギャップが大きいほど弱くなる。ここで、ヘッド41から吐出っされる液滴は、ヘッド41と繋がっている間は、ヘッド41の一部とみなせるため、液滴の先端と電極板101との間隔(距離)が、電荷を引き付ける力を決めるギャップとみなせる。よって、吐出する液滴の滴長が短い印字波形については、ヘッド電極板ギャップを小さくし、吐出する液滴の滴長が短い印字波形については、ヘッド電極板ギャップは大きくすることで、ヘッド電極板ギャップを同等とすることができる。
なお、図7では、2つの紙種と2つの印字モードについての設定例を示したが、紙種数、印字モード数はこれに限られるものではないのは勿論である。また、例えば、1の紙種について印字モードが3以上ある場合に、印字波形を使い分ける印字モードと使い分けない印字モードとの双方を含むものであってもよいのは勿論である。
図6のフローチャートの説明に戻り、S102では、設定された紙種に印字モードによる印字波形の使い分けがあるかどうかを判断し、使い分けがない紙種の場合(S102:No)、例えば、図7の例の普通紙である場合は、当該紙種(普通紙)で使用する印字波形(印字波形A)が選択される(S103)。
一方、印字波形の使い分けがある紙種の場合(S102:Yes)、例えば、図7の例のコート紙である場合は、当該紙種(コート紙)で使用する印字波形のうち、予め決められた印字モード(デフォルト印字モード)の印字波形を選択する(S104)。ここで、デフォルト印字モードとは、ユーザが印字モードを指定せずにジョブを送信した場合に、選択されるモードをいい、紙種ごとに予め設定されている。コート紙では、画質優先モードがデフォルト印字モードとして設定されており、該当する印字波形Cが選択される。
これは、実際に印字の際に選択される印字モードは、ジョブを受信するまでは未知であるため、便宜的にいずれかの印字モードの印字波形を設定して、これに応じたギャップ調整をしておくものである。よって、該当する紙種から任意に選択された1の印字モードに対応する印字波形を選択しておくものであればよい。
S103およびS104のいずれかのステップにより印字波形が選択されると、ギャップ制御部516は、ギャップ調整機構520を制御して、選択された印字波形に対応するヘッド電極板ギャップとなるようにヘッド電極板ギャップを調整する(S105)。ヘッド電極板ギャップの調整後は、次回のヘッド電極板ギャップ変更まで待機状態となる(S106)。
次いで、吐出検知装置200の吐出検知制御について説明する。図8は、吐出検知装置200による吐出検知制御のフローチャートである。吐出検知装置200が吐出検知を実行するタイミングは、一般に以下の2つの場合である。1つは、実際の印字の直前である。この場合、画像形成装置にジョブが送信され、画像形成装置で当該ジョブについての印字動作が実行される直前に吐出検知が実行される。もう1つは、予備吐出、クリーニング動作などのメンテナンス動作の直後である。この場合、所定のメンテナンス動作の完了後に吐出検知が実行される。なお、吐出検知制御を上記2つのタイミング以外の任意のタイミングで実行してもよいのは勿論である。
吐出検知制御では、先ず、吐出検知要求があると(S201)、ギャップ制御部516は、印字動作の開始前であるか否かを判断する(S202)。印字動作の直前でない場合(S202:No)、すなわち、メンテンナンス動作後の吐出検知の場合には、図6のギャップ調整制御にて調整されたヘッド電極板ギャップの状態でそのまま吐出検知を実行する(S207)。
一方、印字動作の開始前である場合(S202:Yes)、印字を実行する当該ジョブに含まれる印字モードの情報を参照し(S203)、この印字モードに該当する印字波形を選択する(S204)。
次いで、S204で選択された印字波形に対応するヘッド電極板ギャップが、図6のギャップ調整制御で調整されたヘッド電極板ギャップと一致しているか、すなわち、ヘッド電極板ギャップの再調整が必要かどうかを判断する(S205)。再調整が必要ない場合(S205:No)は、図6のギャップ調整制御にて調整されたヘッド電極板ギャップの状態でそのまま吐出検知を実行する(S207)。
一方、再調整が必要な場合(S205:Yes)は、ギャップ制御部516はギャップ調整機構520を制御して、受信したジョブの印字モードに応じたヘッド電極板ギャップに調整した後(S206)、吐出検知を実行する(S207)。
例えば、コート紙については、図6のギャップ調整制御において、デフォルト印字モードである画質優先モードに対応する印字波形Cに対応するヘッド電極板ギャップ(小)に調整される。そして、印字を実行するジョブの印字モードが画質優先モードであれば、ギャップの再調整は不要だが、生産性優先モードである場合、生産性優先モードの印字波形Bに対応するヘッド電極板ギャップ(大)へ調整がされる。
(ギャップ調整機構(1))
次いで、ギャップ調整機構520について説明する。図9は、ギャップ調整機構520の第1の構成例についての説明図である。このギャップ調整機構520は、ヘッド41の主走査位置を制御する主走査モータ5および主走査エンコーダと、主走査方向に傾斜を有した状態で配置された吐出検知ユニット100の電極板101と、で構成される。
図9(a)に示す主走査位置にヘッド41が位置する場合、ヘッド41のノズル面41aと電極板101の受け面102との間のヘッド電極間ギャップは、G1で示される。
一方、ヘッド41の主走査位置が図9(b)に示す位置である場合、ノズル面41aと受け面102との間のヘッド電極間ギャップG2は、電極板101の傾斜により、図9(a)に示す場合よりも大きくなる(G2>G1)。
また、ヘッド41の主走査位置が図9(c)に示す位置である場合、ノズル面41aと受け面102との間のヘッド電極間ギャップG3は、電極板101の傾斜により、図9(a)に示す状態よりも小さくなる(G3<G1)。
すなわち、ヘッド電極間ギャップは、G2>G1>G3となり、ヘッド41の電極板101に対する主走査位置を変更することで、ギャップを調整することができる。例えば、図7の例において、図9(a)のギャップG1を滴長「中」の場合のギャップ「中」、図9(b)のギャップG2を滴長「長」の場合のギャップ「大」、図9(c)のギャップG3を滴長「短」の場合のギャップ「小」と設定することができる。
このように、電極板101を傾斜配置するとともに、使用する印字波形の滴長に応じて、キャリッジ3の停止位置(すなわち、吐出検知位置)を設定することで、簡易な構成により、ヘッド電極板ギャップを調整することが可能となる。
このギャップ調整機構520の第1の構成例において、キャリッジ3に2列のノズル列Na,Nbを有するヘッド41を5つ(ヘッド41A〜E)備える場合(2ノズル列×5ヘッド)の吐出検知について図10を参照して説明する。
検知位置を矢印で示す位置とした場合、ヘッド41のすべてのノズル列についての吐出検知を行うために、以下のように、キャリッジ3を移動しつつ吐出検知を行うこととなる。
(1)ヘッド41Aのノズル列Naが検知位置となるようにキャリッジ3を移動し、この位置において、ヘッド41Aのノズル列Naのすべてのチャネルを順に検知する。
(2)次いで、ヘッド41Aのノズル列Nbが検知位置となるようにキャリッジ3を移動し、この位置において、ヘッド41Aのノズル列Nbのすべてのチャネルを順に検知する。
(3)次いで、ヘッド41Bのノズル列Naが検知位置となるようにキャリッジ3を移動し、この位置において、ヘッド41Bのノズル列Naのすべてのチャネルを順に検知する。
(4)次いで、ヘッド41Bのノズル列Nbが検知位置となるようにキャリッジ3を移動し、この位置において、ヘッド41Bのノズル列Nbのすべてのチャネルを順に検知する。
(5)以下、ヘッド41C〜Eについて同様。
(ギャップ調整機構(2))
図11および図12は、ギャップ調整機構520の第2の構成例を示す説明図である。このギャップ調整機構520は、ヘッド41の主走査位置を制御する主走査モータ5および主走査エンコーダと、主走査方向に印字波形数分の段差を有する吐出検知ユニット100の電極板101と、で構成される。
図11(a)に示す主走査位置にヘッド41が位置する場合、ヘッド41のノズル面41aと電極板101の受け面102との間のヘッド電極間ギャップは、G1で示される。
一方、ヘッド41の主走査位置が図11(b)に示す位置である場合、ノズル面41aと受け面102との間のヘッド電極間ギャップG2は、電極板101の段差により、図11(a)に示す場合よりも大きくなる(G2>G1)。
また、ヘッド41の主走査位置が図11(c)に示す位置である場合、ノズル面41aと受け面102との間のヘッド電極間ギャップG3は、電極板101の段差により、図11(a)に示す状態よりも小さくなる(G3<G1)。
すなわち、ヘッド電極間ギャップは、G2>G1>G3となり、ヘッド41の電極板101に対する主走査位置を変更することで、ギャップを調整することができる。
このギャップ調整機構520の第2の構成例において、キャリッジ3に2列のノズル列Na,Nbを有するヘッド41を5つ(ヘッド41A〜E)備える場合(2ノズル列×5ヘッド)の吐出検知について図12を参照して説明する。
ここでは、電極板101が3段の階段状に配置され、2段目の受け面102が検知位置である場合について説明する。図12に示すように、ヘッド全体の主走査方向での吐出幅は、検知位置よりも大きい(ヘッド全体の吐出幅>電極板の検知位置の幅)ため、ヘッド41のすべてのノズル列についての吐出検知を行うためにキャリッジ3を移動しつつ吐出検知を行うこととなる。
すなわち、以下のような処理フローとなる。
(1)ヘッド41Aが検知位置に含まれるようにキャリッジ3を移動し、この位置において、ヘッド41Aのノズル列Naのすべてのチャネルを順に検知する。
(2)その位置のまま、ヘッド41Aのノズル列Nbのすべてのチャネルを順に検知する。
(3)次いで、ヘッド41Bが検知位置に含まれるようにキャリッジ3を移動し、この位置において、ヘッド41Bのノズル列Naのすべてのチャネルを順に検知する。
(4)その位置のまま、ヘッド41Bのノズル列Nbのすべてのチャネルを順に検知する。
(5)以下、ヘッド41C〜Eについて同様。
ここで、電極板101の検知位置の幅、つまり、階段形状の電極板101の一段の幅を、ヘッドの少なくとも2列のノズル列の間隔よりも大きくしておくことで、キャリッジ3の移動回数を少なくすることができる。さらに、階段形状の電極板101の一段の幅を、ヘッド全体の吐出幅をよりも大きくする(ヘッド全体の吐出幅<電極板の検知位置の幅)ことで、キャリッジ3を移動させることなくすべてのノズルについての吐出検知が可能となるため、吐出検知制御の効率化を図ることが可能となる。
このように、電極板101を印字波形(滴長)の種類と同数の階段状形状の電極板101とするとともに、使用する印字波形の滴長に応じて、キャリッジ3の停止位置(すなわち、吐出検知位置)を設定することで、簡易な構成により、ヘッド電極板ギャップを調整することが可能となる。また、図9の例に比べて、キャリッジ3の停止位置の自由度が大きいため、キャリッジ3の停止位置誤差の影響をなくすことができる。
以上説明したように本実施形態に係る液体を吐出する装置は、印字に実際に使用する駆動波形を用いて吐出検知を行うとともに、使用する駆動波形の種類に合わせて最適なヘッド電極板ギャップに調整することで、吐出検知結果と実際の印字時の吐出結果の不一致をなくして、精度よく滴吐出状態を検知することが可能となる。
なお、上述したギャップ調整機構520の第1および第2の構成例においては、電極板101は、主走査方向に傾斜、または段差を有するように配置され、ヘッド41が主走査位置を変更しつつ液体を吐出する例について説明したが、ギャップ調整制御におけるヘッド41の移動方向は、これに限られるものではなく、液体の吐出方向と交差する方向に移動するものであればよい。このとき、電極板101は、ヘッド41の移動方向に応じて、ノズル面に対して傾斜を有し、または、ノズル面に平行な角度から見て階段状に、配置されるものであればよく、傾斜方向、または段差を有する方向は上記の例に限定されるものではない。
また、上述したギャップ調整機構520の第1および第2の構成例においては、電極板101が固設され、ヘッド41を移動させることでヘッド電極板ギャップを調整する例を説明したが、電極板101を液体の吐出方向と交差する方向に移動させる電極板変位手段を有し、ギャップ調整制御において、ヘッド41を移動させず、電極板101を液体の吐出方向と交差する方向に移動させることで、ヘッド電極板ギャップを調整するものとしてもよい。また、ヘッド41および電極板101の両方を液体の吐出方向と交差する方向に移動させつつ、ヘッド電極板ギャップを調整するものとしてもよい。
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。