JP6519789B2 - シール部材 - Google Patents
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Description
例えば自動車では、トランスミッションやディファレンシャルギヤ等をはじめとする多くの部分で、回転軸をシールするためにオイルシールが利用されている。
また摺動面は、上記外周面に対する接触幅を小さくして、回転軸の回転トルクを低減するために、径方向内方へ突出させた稜線状に形成するのが一般的である。
上記オイルシールの形成材料としては、例えば各種のゴム等が用いられる。
近年、特に自動車用のオイルシールにおいては、自動車のさらなる低燃費化の要求に対応するべく、回転軸に対する良好な密封性(シール性)を維持しながら、回転軸の回転に伴う、当該回転軸の外周面との摺動によって発生する回転トルクを、現状よりもさらに低減できること、すなわち現状よりも低摩擦化できることが求められるようになってきている。
これに対し、特にオイルシールは、内部空間に封入した多量のオイルによる良好な潤滑下で常時使用されるものであるため、当該オイルシールのもとになるゴム組成物に固体潤滑剤を配合しても、さらなる低摩擦化を図ることはできない。
上記粒子は、粒径が5μm以上、90μm以下であるのが好ましい(請求項2)。
また上記粒子の一部が摺動面から突出されて、当該摺動面に多数の突起(24)が形成されているのが好ましい(請求項3)。
また上記粒子は、ビッカース硬さHvが400以上という高い硬度を有するため、当該粒子からなる突起が摺動時に摩耗するのを抑制して、上記接触面積の小さい状態を良好に維持できる。
そのため、例えばシリカや、SiC系等の各種セラミックなどの、同程度の硬度を有する他の粒子を使用する場合に比べて、加硫後のゴムの引張強さや伸び等の、ゴムとしての物性の低下を抑制して、良好なゴム物性を維持できる。また当該粒子からなる突起が摺動時に脱落するのを抑制して、上記接触面積の小さい状態を良好に維持できる。
さらに、上記粒子を含むことで摺動面自体の耐摩耗性も向上するため、例えばシール部材がオイルシールである場合には、上記摺動面の摩耗によって締め付け力が低下して密封性が失われたり、外周面に対する接触幅が増加し、摩擦が大きくなって回転トルクが上昇したりするのを抑制できる。
したがって、請求項1に記載の発明によれば、良好な密封性を維持しながら現状よりも低摩擦化が可能である上、摺動によって上記密封性が失われたり、摩擦が大きくなったりしにくいシール部材を提供できる。
請求項2に記載の発明によれば、上記粒子の粒径を5μm以上、90μm以下の範囲に設定することにより、摺動面での良好な密封性を維持してオイルの漏れを防止しながら、上記粒子からなる突起によって、他部材の表面に対する摺動面の接触面積を小さくして、より一層の低摩擦化を図ることができる。
図1(a)を参照して、この例のオイルシール1は、他部材としての回転軸2と、当該回転軸2を取り囲む環状の周囲部材3との間を封止するためのものであって、全体がゴムによって形成された、環状の芯金4を内包し、周囲部材3に嵌合される環状のシール本体5、および当該シール本体5の内周から径方向内方へ延設されて回転軸2の外周面6に接触する環状のシールリップ7を備えている。
またシール本体5は、芯金4の筒状部8の外周面を被覆する外筒部10、および当該外筒部10と連続して、内フランジ部9の、図において左側の側面を被覆する外板部11を備えている。
膨出部10aは、全周に亘って厚みが一定に形成されており、それによって芯金4の筒状部8は、シール本体5を周囲部材3に嵌合した際に、当該周囲部材3と同心状に配設される。
シールリップ7は、上記外板部11の径方向内側の端部からさらに径方向内方で、かつ図において右方向へ延設された主リップ部12と、当該主リップ部12の、シール本体5側の基部の内周から径方向内方で、かつ図において左方向へ延設された略板状の断面形状を有する副リップ部13とを備えている。
副リップ部13の内周は、当該副リップ部13の基端側から先端側へ向けて内径が徐々に小さくなるテーパー面19とされており、当該テーパー面19と副リップ部13の先端面20との間の、径方向内方へ突出された稜線の近傍が、回転軸2の外周面6に接触する摺動面21とされている。
そして、上記ゴム組成物23中に含まれた粒子22の一部が、シールリップ7の摺動面16、21から突出されて、当該摺動面16、21に多数の突起24が形成されている。
上記粒子22としては、ビッカース硬さHvが400以上の多孔質炭素セラミック材からなる種々の粒子が使用可能である。
かかる粒子22としては、特に米糠や麩等の糠麩類、およびフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を主な出発原料として製造されたものが好ましい。
また上記混合物を造粒し、例えば加圧、脱気しながら成形した成形品を、同様に不活性ガス雰囲気中、または真空中で、所定の最終焼成温度に達するまで昇温し、当該最終焼成温度で一定時間保持して炭化させ、次いで常温まで冷却して粉砕したのち、さらに必要に応じて分級して製造された粒子も使用可能である。
なお多孔質炭素セラミック材のビッカース硬さHvは、上記範囲でも1600以下であるのが好ましい。ビッカース硬さHvがこの範囲を超える高硬度で、しかも多孔質の炭素セラミック材の粒子を製造するのは容易でない。
上記粒子22としては、例えば三和油脂(株)製のRBセラミックス〔ビッカース硬さHv:400(平均値)、1090(最大値)〕、RHセラミックス〔ビッカース硬さHv:640(平均値)、1600(最大値)〕の粉末品や、成形品の粉砕物等の1種または2種以上が挙げられる。
すなわち粒子22の粒径が5μm未満では、当該粒子22によって摺動面16、21に形成される突起24の突出高さが不足するため、当該突起24による低摩擦化の効果が十分に得られないおそれがある。
これに対し、粒子22の粒径を上記の範囲とすることにより、摺動面16、21の良好な密閉性を維持してオイルの漏れを防止しながら、当該粒子22からなる突起24によって、回転軸2の外周面6に対する摺動面16、21の接触面積を小さくして低摩擦化を図ることができる。
図2は、粒子22の粒径(μm)と、低摩擦化の指標としてのオイルシール1のシールトルク[mN・m]との関係を測定した結果の一例を示すグラフである。
シールトルクは、アクリルゴムに、所定量の加硫剤、加硫促進剤とともに、前出の三和油脂(株)製のRBセラミックス〔ビッカース硬さHv:400(平均値)、1090(最大値)〕の、粒径50μmの粒子、または粒径90μmの粒子22を、それぞれ添加量が18質量%となるように添加して調製したゴム組成物、および比較のために、粒子22を無添加のゴム組成物を用いて、それぞれ図1(a)に示す立体形状を有するシール本体5、シールリップ7を備えたオイルシール1を作製して、回転軸2を挿通した状態で測定した結果を示している。
粒子の配合割合は、これも先に説明したように、ゴム組成物の総量の3質量%以上、40質量%以下に限定される。
一方、粒子22の添加量がゴム組成物の総量の40質量%を超える場合には、相対的にゴムの量が不足して、引張強さや伸び等のゴムとしての物性が低下して、加硫後のゴムが硬くかつ脆くなる。
これに対し、粒子22の添加量を上記の範囲とすることにより、上記引張強さや伸び等のゴムとしての物性を良好に維持しながら、当該粒子22からなる突起24によって、回転軸2の外周面6に対する摺動面16、21の接触面積を小さくして低摩擦化を図ることができる。
図3は、粒子22の添加量(質量%)と、上記シールトルク[mN・m]との関係を測定した結果の一例を示すグラフである。また図4は、上記粒子22の添加量(質量%)と、加硫後のゴムの抗張力[MPa・%]との関係を測定した結果の一例を示すグラフである。
抗張力は、ゴムとしての物性を示す指標であって、抗張力が大きいほど、ゴムとしての物性に優れていることを示している。
本発明の構成は、以上で説明した図の例に限定されるものではない。
例えば図の例では、シール本体5とシールリップ7の全体を、粒子22を含むゴム組成物23によって形成していたが、少なくとも摺動面16、21の近傍のみを上記ゴム組成物23によって形成し、その他の領域は、粒子22を含まない通常のゴム組成物によって形成しても構わない。
さらに言えば、本発明の構成はオイルシールに限定されるものではなく、ダストシールや他の種々のシール部材に適用可能であり、固定部のシール部材であってもよい。
Claims (3)
- 他部材との摺動面を備え、少なくとも前記摺動面は、ビッカース硬さHvが400以上の多孔質炭素セラミック材の粒子を3質量%以上、40質量%以下の割合で含むゴム組成物からなるシール部材。
- 前記粒子は、粒径が5μm以上、90μm以下である請求項1に記載のシール部材。
- 前記粒子の一部が前記摺動面から突出されて、前記摺動面に多数の突起が形成されている請求項1または2に記載のシール部材。
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