JP6124052B2 - オイルシールとその製造方法 - Google Patents
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Description
かかるオイルシールは、軸との摺動によって、前記シールリップの、前記軸の外周面への接触面が摩耗して締め代が徐々に低下して最終的にオイル漏れに到る。
ところがその場合には、オイルシールの全体で硬度が上昇し、ゴム特有の弾性が低下して、例えば軸の外周面の凹凸や軸のフレ等による、前記軸の外周面の位置ずれに対するシールリップの追随性が低下してしまい、早期にオイル漏れに到る場合がある。
そこで、例えば特許文献1においては、シールリップの、軸の外周面への接触面を、パーハイドロポリシラザンとポリオルガノシラザンとを含む溶液を塗布したのち熱処理して得られる低摩擦性のコーティング層で被覆することが提案されている。
ところが前記コーティング層は薄い上、シールリップを形成する加硫ゴムとは異質の前記化合物によって、シールリップとは界面を介して不連続に形成されているため、軸の外周面との摩擦によって短期間で剥離したり摩滅したりしやすい。そのため、耐摩耗性を向上する効果を長期間に亘って持続することはできず、前記コーティング層による耐摩耗性の向上効果には限界がある。
前記構成をシールリップに適用すれば、当該シールリップそれ自体は柔軟で弾性に優れた状態を維持しながら、前記シールリップの接触面を被覆した、前記混合組成物からなる層によって前記接触面を低摩擦化して、耐摩耗性を向上することができる。
環状の芯金を(4)内包し、前記周囲部材(3)に嵌合される環状のシール本体(5)、および
前記シール本体(5)の内周から径方向内方へ延設されて、前記軸(2)の外周面(6)に接触する環状のシールリップ(7)を備えたオイルシール(1)であって、
前記オイルシール(1)の立体形状に対応する金型(22)の型面(23)(25)に離型剤を塗布した状態で、前記金型(22)内に前記芯金(4)をセットするとともに未加硫のゴムを充填したのち、前記ゴムをプレス加硫して形成されているとともに、
前記金型(22)の型面(23)(25)のうち、少なくとも前記シールリップ(7)の接触面に対応する領域(23a)(25a)に塗布する離型剤に、選択的に、前記ゴムの加硫剤、および加硫促進剤を分散させることにより、前記シールリップ(7)は、全体が前記加硫ゴムによる単一相を呈しながら、なおかつ少なくとも前記軸(2)の外周面(6)への接触面を構成する表層部が、前記シールリップ(7)のその他の部分より高硬度とされていることを特徴とするものである。
前記請求項1の構成によれば、シールリップの、少なくとも軸の外周面への接触面を構成する表層部を、当該シールリップのその他の部分より選択的に高硬度とすることにより、前記シールリップの耐摩耗性を向上することができる。また前記のように表層部を、シールリップのその他の部分と、界面を介さず単一相を呈するように、加硫ゴムによって一体に形成するとともに、前記のように選択的に高硬度化することで、前記表層部が短期間で剥離したり摩滅したりするのを防止して、前記表層部による高い耐摩耗性を、従来に比べて長期間に亘って維持することができる。しかもシールリップのその他の部分は、前記表層部より低硬度で柔軟性に優れるため、当該その他の部分により、シールリップの、軸の外周面の位置ずれに対する良好な追随性を維持することもできる。
環状の芯金を(4)内包し、前記周囲部材(3)に嵌合される環状のシール本体(5)、および
前記シール本体(5)の内周から径方向内方へ延設されて、前記軸(2)の外周面(6)に接触する環状のシールリップ(7)を備えたオイルシール(1)の製造方法であって、前記オイルシール(1)の立体形状に対応する金型(22)の型面(23)(25)に離型剤を塗布する工程、前記金型(22)内に前記芯金(4)をセットするとともに未加硫のゴムを充填する工程、および前記ゴムをプレス加硫する工程を備え、前記離型剤の塗布工程において、前記金型(22)の型面(23)(25)のうち、少なくとも前記シールリップ(7)の接触面に対応する領域(23a)(25a)に、選択的に、前記ゴムの加硫剤、および加硫促進剤を分散させた離型剤を塗布することにより、前記シールリップ(7)の全体での、前記加硫ゴムによる単一相を維持しながら、なおかつ少なくとも前記接触面を構成する表層部を、前記シールリップ(7)のその他の部分より高硬度とすることを特徴とするオイルシール(1)の製造方法である。
図1を参照して、この例のオイルシール1は、軸2と、前記軸2を取り囲む環状の周囲部材3との間を封止するためのものであって、全体が加硫ゴムによって一体に形成された、環状の芯金4を内包し、前記周囲部材3に嵌合される環状のシール本体5、および前記シール本体5の内周から径方向内方へ延設されて、前記軸2の外周面6に接触する環状のシールリップ7を備えている。
またシール本体5は、芯金4の筒状部8の外周面を被覆する外筒部10、前記筒状部8の内周面、および内フランジ部9の、図において右側の側面を被覆する内筒部11、ならびに前記外筒部10の、図において左側の端部から径方向内方に延設されて、前記内フランジ部9の、図において左側の側面を被覆することで、オイルシール1の、前記左側(軸2の軸方向の一方側)の端面を構成する外板部12を備えている。
このうち主リップ部13の、先端側の内周には、前記主リップ部13の基部側から先端部へ向けて内径が徐々に小さくなるテーパー面15と、逆に前記主リップ部13の先端部から基端側へ向けて内径が徐々に小さくなるテーパー面16とが設けられて、前記両テーパー面15、16の稜線部により、前記軸2の外周面6に接触するリップ17が構成されている。
前記シールリップ7は、その全体が界面を介さず、前記加硫ゴムによる単一相を呈しながら、なおかつその内周のうち、図において太線の破線で示した領域、すなわち主リップ部13の、図において右側の先端面20から、前記両テーパー面15、16、およびリップ17を含む主リップ部13の内周面、ならびに副リップ部14の、図において右側の側面を経て、前記副リップ部14の、図において左側の側面21までの領域の各表面を構成する表層部が、前記シールリップ7のその他の部分よりも高硬度とされている。
またシールリップ7のその他の部分の硬度は、前記ショアA硬さで表して60以上であるのが好ましく、75以下、特に70以下であるのが好ましい。
表層部、すなわち他の部分より選択的に高硬度化する領域の、シールリップ7の表面からの厚みは、0.1mm以上であるのが好ましく、1mm以内であるのが好ましい。
表層部の厚みを調整するには、離型剤に分散させる加硫剤、加硫促進剤の量や種類を変更すればよい。
前記ゴムの加硫物(加硫ゴム)によって一体に形成したシールリップ7の、軸2の外周面6への接触面を構成する表層部を、前記シールリップ7のその他の部分と界面を介さず単一相を呈しながら、選択的に高硬度の状態とするために、本発明では、当該表層部の架橋密度を、その他の部分より高くする必要があり、そのために、以下に説明する本発明の製造方法によってオイルシールが製造される。
図1、図2を参照して、この例の金型22は、前記オイルシール1の、シール本体5の外筒部10の外周面から外板部12の一方側の側面、およびシールリップ7の内周面を経て、前記内周面のうちテーパー面16までの領域の立体形状(外面形状)に対応する凹入形状の型面23を備えた下型24と、前記オイルシール1の、シール本体5の内筒部11から、シールリップ7の外周面を経て、当該シールリップ7の先端面20までの立体形状(内面形状)に対応する凸出形状の型面25を備えた上型26とで構成されている。
前記下型24は、前記型面23のうち、前記外筒部10の外周面に対応する領域を有する第一下型28、外板部12の一方側の側面に対応する領域を有する第二下型29、およびシールリップ7の内周面に対応する領域を有する第三下型30の3つのパーツによって構成されている。
この際、前記型面23、25のうち、図中に太線の破線で示した、シールリップ7のその他の部分よりも選択的に表層部を高硬度化する領域23a、25aには、通常の離型剤ではなく、当該離型剤に、さらにゴムの加硫剤、および加硫促進剤を分散させた離型剤を、選択的に塗布する。
前記ゴムは、基材としてのゴムに、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進剤等の加硫系の添加剤や、老化防止剤その他の添加剤等を所定の割合で配合したゴムコンパウンドとして使用する。
そうするとゴムは、前記両型24、26の型面23、25に沿うように隙間なく型窩27内に満たされる、すなわちオイルシール1の立体形状に成形されるとともに加硫されて、前記図1に示す断面形状を有し、かつシールリップ7の内周面の、図中に太字の破線で示した領域を構成する表層部が、その他の部分よりも高密度に架橋されて高硬度化されたオイルシール1が製造される。
離型剤に分散させる加硫剤、および加硫促進剤の種類は、使用するゴムの種類に応じて適宜選択すればよい。ゴムコンパウンドに配合する加硫剤、加硫促進剤も同様である。離型剤とゴムコンパウンドで、同じ加硫剤、加硫促進剤を配合してもよいし、互いに異なる加硫剤、加硫促進剤を配合してもよい。ただし使用材料数の削減による工程の簡略化等を考慮すると、前記離型剤とゴムコンパウンドで同じ加硫剤、加硫促進剤を使用するのが好ましい。
離型剤の代表的組成の一例を下記表1に示すが、離型剤の組成は、この例には限定されない。
加硫促進剤TT:チウラム系加硫促進剤
加硫促進剤CZ:スルフェンアミド系加硫促進剤
なお本発明の構成は、以上で説明した図1、図2の例に限定されるものではない。
この際、前述した離型剤に加硫剤、加硫促進剤を分散させて特定の領域を高硬度化する方法によれば、前記離型剤を塗布する領域を変更するだけで、高硬度化する領域の変更に柔軟に対応できるという利点がある。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を施すことができる。
シールリップのモデルとして、圧縮永久ひずみ試験用の円板状の試験片(直径φ29.0mm、)厚み12.5mm)をプレス加硫によって作製することとし、前記円板の、一方の表面と側面に対応する型面を有する下型と、他方の表面に対応する型面を有する上型とを用意した。
そして前記試験片の、前記一方の表面からの深さ方向の、加硫ゴムの硬度の分布を測定した。結果を図3に示す。
図3より、下型の、試験片の一方の表面に対応する型面に、加硫剤、および加硫促進剤を分散させた離型剤を選択的に塗布してプレス加硫することにより、製造された試験片の、前記一方の表面に、その他の部分より高硬度化された表層部を形成できることが判った。
Claims (2)
- 軸と、前記軸を取り囲む環状の周囲部材との間を封止するために、全体が加硫ゴムによって一体に形成された、
環状の芯金を内包し、前記周囲部材に嵌合される環状のシール本体、および
前記シール本体の内周から径方向内方へ延設されて、前記軸の外周面に接触する環状のシールリップを備えたオイルシールであって、
前記オイルシールの立体形状に対応する金型の型面に離型剤を塗布した状態で、前記金型内に前記芯金をセットするとともに未加硫のゴムを充填したのち、前記ゴムをプレス加硫して形成されているとともに、
前記金型の型面のうち、少なくとも前記シールリップの接触面に対応する領域に塗布する離型剤に、選択的に、前記ゴムの加硫剤、および加硫促進剤を分散させることにより、前記シールリップは、全体が前記加硫ゴムによる単一相を呈しながら、なおかつ少なくとも前記軸の外周面への接触面を構成する表層部が、前記シールリップのその他の部分より高硬度とされていることを特徴とするオイルシール。 - 軸と、前記軸を取り囲む環状の周囲部材との間を封止するために、全体が加硫ゴムによって一体に形成された、
環状の芯金を内包し、前記周囲部材に嵌合される環状のシール本体、および
前記シール本体の内周から径方向内方へ延設されて、前記軸の外周面に接触する環状のシールリップを備えたオイルシールの製造方法であって、前記オイルシールの立体形状に対応する金型の型面に離型剤を塗布する工程、前記金型内に前記芯金をセットするとともに未加硫のゴムを充填する工程、および前記ゴムをプレス加硫する工程を備え、前記離型剤の塗布工程において、前記金型の型面のうち、少なくとも前記シールリップの接触面に対応する領域に、選択的に、前記ゴムの加硫剤、および加硫促進剤を分散させた離型剤を塗布することにより、前記シールリップの全体での、前記加硫ゴムによる単一相を維持しながら、なおかつ少なくとも前記接触面を構成する表層部を、前記シールリップのその他の部分より高硬度とすることを特徴とするオイルシールの製造方法。
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