JP6518481B2 - ポリ塩化ビニル樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物に関する。更に詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等として好適に使用し得るポリ塩化ビニル樹脂組成物に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた材料が注目されている。
例えば、特許文献1には、微細セルロース繊維に炭化水素基がアミド結合を介して結合してなる微細セルロース繊維複合体と、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリカーボネート系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂とを含有する樹脂組成物が、実用上十分な機械的強度を有し、該樹脂の着色が少ないものとなることが開示されている。
特許文献2には、樹脂と繊維状フィラーとを含む複合体組成物であって、該樹脂の30℃におけるヤング率が1GPaより低い樹脂であり、該複合体組成物中の該繊維状フィラーの含有率が10wt%未満であることにより、線膨張係数の低い複合体組成物とすることができると記載されている。ここで用いられる樹脂材料としては、ヤング率が前記条件を満たすものであれば特に制限されないと記載されており、塩化ビニル樹脂が一例として挙げられている。また、繊維状フィラーとしては、セルロース又はガラスで構成されたものが開示されており、微細セルロース繊維が例示されている。
特開2014−34616号公報 特開2013−181084号公報
しかしながら、各種用途への適用が試みられる樹脂組成物として、従来のポリ塩化ビニル樹脂組成物ではさらなる改良が必要である。即ち、常温において良好な機械的強度を示すだけでなく、高温下で強度が低下することなく、また低温下では柔軟性が失われずに、かつ、伸縮性にも優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物の開発が望まれている。
本発明は、高温下においても優れた強度を維持することに加えて低温下では柔軟性が損なわれず、かつ、伸縮性にも優れるポリ塩化ビニル樹脂組成物に関する。
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂、微細セルロース繊維又はその改質物、及び可塑剤を含有してなるポリ塩化ビニル樹脂組成物に関する。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、高温下においても優れた強度を維持することに加えて低温下では柔軟性が損なわれず、かつ、伸縮性にも優れるという優れた効果を奏する。
従来、ポリ塩化ビニル樹脂はゴム弾性を要する用途に多用されているところ、機械的強度を向上させる目的で、セルロース繊維を配合する試みもなされている。しかし、冬場の低温下では、強度が高くなりすぎて柔軟性に劣るものとなる。一方で、ポリ塩化ビニル樹脂に可塑剤を配合すると、ガラス転移点が低下して、低温下での柔軟性は向上するものの高温下での強度が低くなりすぎることから、低温下での柔軟性に優れながらも高温下での強度を維持する更なるポリ塩化ビニル樹脂組成物が要求される。また、ゴム弾性を要する用途への適用の観点から、さらなる高い伸縮性が要求される。そこで、本発明者らが検討した結果、驚くべきことに、ポリ塩化ビニル樹脂に可塑剤と微細セルロース繊維を配合したところ、低温下で良好な柔軟性を示しながらも高温下での強度にも優れるものとなり、また、伸縮性にも優れることが判明した。その詳細な理由は不明であるが、比較的熱に強い微細セルロース繊維を配合することで、繊維同士が絡まり合い強度を発現するため高温領域での強度を向上させ、可塑剤が塩化ビニルのポリマー分子間に割り込んで分子間の接近を妨げるため分子間の距離が広がることで低温下での柔軟性を保持し、また、微細セルロース繊維と可塑剤の相乗効果で、高い伸縮性が得られると推察される。なお、本明細書において、「強度」は後述の「貯蔵弾性率」により評価される特性のことであり、「低温下での柔軟性」は例えば−50〜−5℃での強度、「高温下での強度」は例えば60〜105℃での強度により評価される。また、「伸縮性」は後述の「破断伸度」により評価される特性のことである。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂、微細セルロース繊維又はその改質物、及び可塑剤を含有する。
〔ポリ塩化ビニル樹脂組成物〕
[ポリ塩化ビニル樹脂]
本発明で用いられるポリ塩化ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニルに加えて、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレンや、塩化ビニルと他のビニルモノマーとの共重合体を用いることができる。該共重合体としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等を挙げることができ、これら共重合体中の塩化ビニルモノマーユニットの比率は、高温下での強度、低温下での柔軟性、高伸縮性の観点から、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これらのポリ塩化ビニル樹脂は、市販品や塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法に従って調製したものを用いることができる。
[微細セルロース繊維又はその改質物]
本発明で用いられる微細セルロース繊維又はその改質物としては、公知の微細セルロース繊維、当該微細セルロース繊維に修飾基が導入された微細セルロース繊維改質物が挙げられる。なお、本明細書において、微細セルロース繊維に修飾基が導入されているとは、微細セルロース繊維表面のカルボキシ基に修飾基がイオン結合及び/又はアミド結合によって結合している状態のことを意味する。より詳しくは、微細セルロース繊維のカルボキシ基が脱プロトン化したところに、修飾基を有するアミンがイオン結合した状態、あるいは、アミド基の炭素原子が微細セルロース繊維のセルロース骨格に共有結合し、窒素原子に直接にあるいは連結基を介して修飾基が共有結合した状態を意味する。
<微細セルロース繊維>
(平均繊維径)
本発明における微細セルロース繊維は、平均繊維径が均一な繊維径を持つ微細セルロース繊維改質物を製造する観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.2nm以上、さらに好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは0.8nm以上、よりさらに好ましくは1nm以上である。また、ポリ塩化ビニル樹脂に含有させて樹脂組成物(複合材料ともいう)とした時の機械的強度を十分に向上させると共に高温下での強度を向上する観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下、よりさらに好ましくは5nm以下である。なお、本明細書において、セルロース繊維の平均繊維径は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅と見なすことができる。
(カルボキシ基含有量)
微細セルロース繊維のカルボキシ基含有量は、安定な微細化及び修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、さらに好ましくは0.6mmol/g以上、さらに好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、さらに好ましくは1.8mmol/g以下である。本発明で用いられる微細セルロース繊維に、カルボキシ基含有量がかかる範囲外である微細セルロース繊維が、意図せずに不純物として含まれることもあり得る。なお、「カルボキシ基含有量」とは、微細セルロース繊維を構成するセルロース中のカルボキシ基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
(平均アスペクト比)
微細セルロース繊維の平均アスペクト比(繊維長/繊維径)は、樹脂に含有させて複合材料とした時の機械的強度を十分に向上させる観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは50以上、よりさらに好ましくは100以上である。また、樹脂中の分散性低下に伴う機械的強度の低下を抑制する観点から、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは400以下、よりさらに好ましくは350以下である。平均アスペクト比が上記範囲にある微細セルロース繊維は、樹脂に配合した際に該樹脂中での分散性に優れ、機械的強度が高く、脆性破壊し難い樹脂組成物が得られる。なお、本明細書において、平均アスペクト比は、分散液中のセルロース繊維濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)によりセルロース繊維のアスペクト比を逆算して求める。なお、下記式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS,CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb×ρ=M/Nの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m)、Mは分子量、Nはアボガドロ数を表す〕から導き出されるものである。また、上記の粘度式(8.138)において、剛直棒状分子をセルロース繊維とする。下記式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρは分散媒の密度(kg/m)、ρはセルロース結晶の密度(kg/m)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρ)を表す。
Figure 0006518481
(結晶化度)
微細セルロース繊維の結晶化度は、樹脂に含有させて複合材料とした時の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、よりさらに好ましくは45%以上である。また、反応効率を向上させる観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下、よりさらに好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記計算式(A)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
<微細セルロース繊維の改質物(微細セルロース繊維複合体)>
本発明で用いられる微細セルロース繊維の改質物は、上記の微細セルロース繊維表面に修飾基が結合しているものを示すが、これは、例えば、微細セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基を選択して、修飾基を有するアミンをイオン結合及び/又はアミド結合させることにより得られる。なお、本明細書において、微細セルロース繊維の改質物のことを、微細セルロース繊維複合体と記載することもある。
(修飾基を有するアミン)
修飾基を有するアミンとしては、後述の修飾基を有するものであればよく、イオン結合の場合は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンのいずれでもよいが、反応性の観点から、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミド結合の場合は、第1級アミン、第2級アミンのいずれでもよいが、反応性の観点から、第1級アミンが好ましい。
本発明における修飾基としては、低温下での強度を向上させる観点から、炭化水素基、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(EO/PO)共重合部等を用いることができる。これらは単独で又は2種以上が組み合わさって微細セルロース繊維に導入されてもよい。
炭化水素基としては、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が挙げられ、副反応を抑制する観点及び安定性の観点から、鎖式飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基であることが好ましい。
鎖式飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式飽和炭化水素基の炭素数は、高温下での強度維持、伸縮性の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、30以下が好ましく、18以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、8以下がよりさらに好ましい。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられ、高温下での強度維持、伸縮性の観点から、好ましくはプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基であり、より好ましくはプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
鎖式不飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式不飽和炭化水素基の炭素数は、取り扱い性の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。また、入手容易性の観点から、30以下が好ましく、18以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、8以下がよりさらに好ましい。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、オクタデセン基が挙げられ、樹脂との相溶性の観点から、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基であり、より好ましくはヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
環式飽和炭化水素基の炭素数は、取り扱い性の観点から、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。また、入手容易性の観点から、20以下が好ましく、16以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、8以下がよりさらに好ましい。
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられ、樹脂との相溶性の観点から、好ましくはシクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基であり、より好ましくはシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基である。これらは、単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
前記アリール基の総炭素数は6以上であればよく、樹脂との相溶性の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは14以下、さらに好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
前記アラルキル基の総炭素数は7以上であり、樹脂との相溶性の観点から、好ましくは8以上であり、また、同様の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは14以下、さらに好ましくは13以下、さらに好ましくは11以下である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。なかでも、樹脂との相溶性の観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が後述する置換基で置換された基などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上が任意の割合でそれぞれ導入されていてもよい。なかでも、樹脂との相溶性の観点から、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基が好ましく、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基がより好ましく、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基がさらに好ましい。
前記炭化水素基を有するアミンは、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。
微細セルロース繊維複合体における炭化水素基の平均結合量は、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基については、前記微細セルロース繊維に対して、炭化水素基の結合量の制御が容易であることから、好ましくは0.001mmol/g以上、より好ましくは0.005mmol/g以上、さらに好ましくは0.01mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、さらに好ましくは1mmol/g以下である。また、芳香族炭化水素基については、炭化水素基の平均結合量は、樹脂に配合した際に機械的強度等に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.2mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上、さらに好ましくは0.7mmol/g以上、さらに好ましくは0.9mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、さらに好ましくは1.5mmol/g以下である。ここで、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合であっても、個々の平均結合量は前記範囲内であることが好ましい。
また、炭化水素基の導入率は、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基については、得られる樹脂組成物の機械的強度の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であり、反応性の観点から、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下、さらに好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下である。また、芳香族炭化水素基については、炭化水素基の導入率は、樹脂に配合した際に機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であり、反応性の観点から、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下、さらに好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下である。ここで、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100%を超えない範囲において、前記範囲内となることが好ましい。
EO/PO共重合部とは、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)がランダム又はブロック状に重合した構造を意味する。例えば、EO/PO共重合部を有するアミンが後述する式(i)で表される場合は、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)はランダム又はブロック状の連鎖構造となるが、該アミンが後述する式(ii)で表される構造を有するアミンである場合は、(EO)a(PO)b、(EO)c(PO)d、(EO)e(PO)fは、連鎖している必要はない。
EO/PO共重合部中のPOの含有率(モル%)は、機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上であり、同様の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは75モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。なお、POの含有率が100モル%とは、EO/PO共重合部がPOのみで構成されているものであり、本発明においてはPO重合部が導入されていても構わない。
EO/PO共重合部の分子量は、機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは1,500以上であり、同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、さらに好ましくは5,000以下、さらに好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,500以下、よりさらに好ましくは2,500以下である。例えば、後述する式(ii)で表される構造を有するアミンである場合は、(EO)a(PO)b+(EO)c(PO)d+(EO)e(PO)fの合計の分子量を、EO/PO共重合部の分子量とする。EO/PO共重合部中のPOの含有率(モル%)、EO/PO共重合部の分子量は、アミンを製造する際の平均付加モル数から計算して求めることができる。
EO/PO共重合部とアミンとは、直接に又は連結基を介して結合しているものが好ましい。連結基としては炭化水素基が好ましく、炭素数が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のアルキレン基が用いられる。例えば、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
かかるEO/PO共重合部を有するアミンとしては、例えば、下記式(i):
Figure 0006518481
〔式中、Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、−CHCH(CH)NH基、又は下記式(ii)で表される基を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す正の数、bはPOの平均付加モル数を示す正の数である〕
で表される化合物が挙げられる。
式(ii):
Figure 0006518481
〔式中、nは0又は1であり、Rはフェニル基、水素原子、又は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、c及びeは、EOの平均付加モル数を示し、独立して0〜50の数であり、d及びfはPOの平均付加モル数を示し、独立して1〜50の数である〕
式(i)におけるaはEOの平均付加モル数を示し、機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは11以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、さらに好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下、よりさらに好ましくは40以下である。
式(i)におけるbはPOの平均付加モル数を示し、透明性と機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
また、EO/PO共重合部中のPOの含有率(モル%)は、アミンが前記式(i)で表される場合は、前記aとbより、共重合部におけるPOの含有率を計算することが可能であり、式:b×100/(a+b)より求めることができ、アミンが前記式(i)及び式(ii)で表される場合は、同様に、式:(b+d+f)×100/(a+b+c+d+e+f)より求めることができる。好ましい範囲は、前述のとおりである。
式(i)におけるRは水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、−CHCH(CH)NH基、又は前記式(ii)で表される基を示すが、機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、水素原子が好ましい。炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、イソ又はノルマルのプロピル基である。
また、式(i)におけるRが式(ii)で表される基である場合、式(ii)におけるRの炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、好ましくはメチル基、エチル基である。Rがメチル基又はエチル基である場合、nが1であることが好ましく、Rが水素原子である場合、nが0であることが好ましい。また、式(ii)におけるc及びeとしては、独立して、10〜30が好ましく、d及びfとしては、独立して、5〜25が好ましい。
かかる式(i)で表されるEO/PO共重合部を有するアミンは、公知の方法に従って調製することができる。例えば、プロピレングリコールアルキルエーテルにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを所望量付加させた後、水酸基末端をアミノ化すればよい。必要により、アルキルエーテルを酸で開裂することで末端を水素原子とすることができる。これらの製造方法は、特開平3−181448号を参照することができる。
また、市販品も好適に用いられ、具体例としては、HUNTSMAN社製のJeffamine M−2070、Jeffamine M−2005、Jeffamine M−1000、Surfoamine B200、Surfoamine L100、Surfoamine L200、Surfoamine L207,Surfoamine L300、XTJ−501、XTJ−506、XTJ−507、XTJ―508;BASF社製のM3000、Jeffamine ED−900、Jeffamine ED−2003、Jeffamine D−2000、Jeffamine D−4000、XTJ−510、Jeffamine T−3000、JeffamineT−5000、XTJ−502、XTJ−509、XTJ−510等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
微細セルロース繊維複合体におけるEO/PO共重合部の平均結合量は、機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、さらに好ましくは0.1mmol/g以上、さらに好ましくは0.3mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上、さらに好ましくは0.8mmol/g以上、さらに好ましくは1mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、さらに好ましくは1.5mmol/g以下である。
また、微細セルロース繊維複合体におけるEO/PO共重合部の修飾率は、透明性と機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であり、透明性と機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは95%以下である。
なお、前記修飾基は置換基を有するものであってもよく、例えば、置換基を含めた炭化水素基全体の総炭素数が前記範囲内となるものが好ましい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1〜6のアルコキシ−カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1〜6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1〜6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1〜6のジアルキルアミノ基が挙げられる。なお、前記した炭化水素基そのものが置換基として結合していてもよい。
なお、本明細書において、修飾基の平均結合量は、アミン添加量、アミンの種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。また、微細セルロース繊維複合体における修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、微細セルロース繊維表面のカルボキシ基に修飾基が導入された量及び割合のことであり、微細セルロース繊維のカルボキシ基含有量を公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出することができる。
<微細セルロース繊維複合体の製造方法>
微細セルロース繊維複合体は、微細セルロース繊維に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、予め調製された微細セルロース繊維に修飾基を導入する反応を行ってもよいし、微細セルロース繊維を調製する際に修飾基を導入する反応を行ってもよい。なお、微細セルロース繊維は、公知の方法、例えば、特開2011−140632号公報に記載の方法により製造することができる。
修飾基の微細セルロース繊維への導入態様によって、以下の2態様が挙げられる。即ち、修飾基をイオン結合によって微細セルロース繊維に結合させる態様(態様A)、修飾基をアミド結合によって微細セルロース繊維に結合させる態様(態様B)が挙げられる。
〔態様A〕
工程(1):天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
工程(2A):工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有するアミンとを混合する工程
〔態様B〕
工程(1):天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
工程(2B):工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維と、修飾基を有するアミンとをアミド化反応させる工程
なお、前記好適な製造方法としては、工程(1)の後に後述する微細化工程を行い、カルボキシ基含有微細セルロース繊維とした後に工程(2A又は2B)を行う方法(第1の製造形態)、及び、工程(1)の後に工程(2A又は2B)を行い、その後に微細化工程を行う方法(第2の製造形態)が挙げられる。
以下、態様Aの第1の製造形態に基づいて、微細セルロース繊維複合体の製造方法を説明する。
〔工程(1)〕
工程(1)は、天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程である。
工程(1)では、まず、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準:150℃にて30分間加熱乾燥させた後の天然セルロース繊維の質量)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていてもよい。また、前記市販のパルプのセルロースI型結晶化度は、通常80%以上である。
(酸化処理工程)
次に、上記天然セルロース繊維を、N−オキシル化合物の存在下で酸化処理して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る(以下、単に「酸化処理」と称する場合がある)。
N−オキシル化合物としては、炭素数1又は2のアルキル基を有するピペリジンオキシル化合物、ピロリジンオキシル化合物、イミダゾリンオキシル化合物、及びアザアダマンタン化合物から選ばれる1種以上の複素環式のN−オキシル化合物が好ましい。これらの中では、反応性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有するピペリジンオキシル化合物が好ましく、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−アルコキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−アミノ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル等のジ−tert−アルキルニトロキシル化合物、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−ホスフォノキシ−TEMPO等が挙げられる。これらのピペリジンオキシル化合物の中では、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルがより好ましく、2,2,6,6テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)がさらに好ましい。
N−オキシル化合物の量は、触媒量であればよく、天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜9質量%、さらに好ましくは0.1〜8質量%、よりさらに好ましくは0.5〜5質量%である。
天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化剤を使用することができる。酸化剤としては、溶媒をアルカリ性域に調整した場合の溶解度や反応速度等の観点から、酸素又は空気、過酸化物;ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸及びそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;ハロゲン酸化物、窒素酸化物等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましく、具体的には、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウムが例示される。酸化剤の使用量は、天然セルロース繊維のカルボキシ基置換度(酸化度)に応じて選択すればよく、また反応条件によって酸化反応収率が異なるため一概には決められないが、原料である天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対し、好ましくは約1〜100質量%となる範囲である。
また、酸化反応をより一層効率よく行うため、助触媒として、臭化ナトリウム、臭化カリウム等の臭化物や、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のヨウ化物等を用いることができる。助触媒の量は、その機能を発揮できる有効量であればよく、特に制限はない。
酸化処理における反応温度は、反応の選択性、副反応の抑制の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは20℃以下であり、その下限は、好ましくは−5℃以上である。
また、反応系のpHは酸化剤の性質に合わせることが好ましく、例えば、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、反応系のpHはアルカリ側とすることが好ましく、pH7〜13が好ましく、pH10〜13がより好ましい。また、反応時間は1〜240分間が望ましい。
上記酸化処理を行うことにより、カルボキシ基含有量が好ましくは0.1mmol/g以上の、カルボキシ基含有セルロース繊維が得られる。
(精製工程)
前記酸化反応で得られるカルボキシ基含有セルロース繊維は、触媒として用いるTEMPO等のN−オキシル化合物や副生塩を含む。そのまま次工程を行ってもよいが、精製を行って純度の高いカルボキシ基含有セルロース繊維を得ることもできる。精製方法としては、酸化反応における溶媒の種類、生成物の酸化の程度、精製の程度により最適な方法を採用することができる。例えば、良溶媒として水、貧溶媒としてメタノール、エタノール、アセトン等を用いた再沈殿、ヘキサン等の水と相分離する溶媒へのTEMPO等の抽出、及び塩のイオン交換、透析等による精製等が挙げられる。
(微細化工程)
第1の製造形態では、前記精製工程後、工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維を微細化する工程を行う。微細化工程では、前記精製工程を経たカルボキシ基含有セルロース繊維を溶媒中に分散させ、微細化処理を行うことが好ましい。この微細化工程を行うことにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にある微細セルロース繊維が得られる。
分散媒としての溶媒は、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3〜6のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数1〜6の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;炭素数2〜5の低級アルキルエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル等の極性溶媒等が例示される。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、微細化処理の操作性の観点から、水、炭素数1〜6のアルコール、炭素数3〜6のケトン、炭素数2〜5の低級アルキルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、コハク酸メチルトリグリコールジエステル等の極性溶媒が好ましく、環境負荷低減の観点から、水がより好ましい。溶媒の使用量は、カルボキシ基含有セルロース繊維を分散できる有効量であればよく、特に制限はないが、カルボキシ基含有セルロース繊維に対して、好ましくは1〜500質量倍、より好ましくは2〜200質量倍使用することがより好ましい。
また、微細化処理で使用する装置としては公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における反応物繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。
微細化工程後に得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維の形態としては、必要に応じ、固形分濃度を調整した懸濁液状(目視的に無色透明又は不透明な液)、あるいは乾燥処理した粉末状(但し、微細セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることもできる。なお、懸濁液状にする場合、分散媒として水のみを使用してもよく、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール類)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用してもよい。
このような天然セルロース繊維の酸化処理及び微細化処理により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシ基へと選択的に酸化され、前記カルボキシ基含有量が好ましくは0.1mmol/g以上のセルロースからなる、好ましくは平均繊維径0.1〜200nmの微細化された、好ましくは30%以上の結晶化度を有するセルロース繊維を得ることができる。ここで、前記カルボキシ基含有微細セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有している。これは、本発明で用いるカルボキシ基含有微細セルロース繊維が、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料が表面酸化され微細化された繊維であることを意味する。なお、工程(1)において、天然セルロース繊維の酸化処理後に、さらに酸(例えば、塩酸)を反応させてカルボキシ基含有量を調整することができ、該反応は微細化処理前、微細化処理後のいずれに行ってもよい。
〔工程(2A)〕
第1の製造形態において、工程(2A)は、前記微細化工程を経て得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維と、修飾基を有するアミンとを混合して、微細セルロース繊維複合体を得る工程である。具体的には、前記カルボキシ基含有微細セルロース繊維と、修飾基を有するアミンとを溶媒中で混合する。
工程(2A)で用いられる、修飾基を有するアミンとしては、微細セルロース繊維複合体において前記した前述のものが挙げられる。
前記アミンの使用量は、微細セルロース繊維複合体における所望のアミン塩の結合量により決めることができるが、反応性の観点から、カルボキシ基含有微細セルロース繊維に含有されるカルボキシ基1molに対して、アミン基が、好ましくは0.01mol以上、より好ましくは0.1mol以上、さらに好ましくは0.5mol以上、さらに好ましくは0.7mol以上、よりさらに好ましくは1mol以上であり、製品純度の観点から、好ましくは50mol以下、より好ましくは20mol以下、さらに好ましくは10mol以下となる量用いる。なお、前記範囲に含まれる量のアミンを一度に反応に供しても、分割して反応に供してもよい。アミンが、モノアミンの場合は、上記のアミン基とアミンとは同じである。
溶媒としては、用いるアミンが溶解する溶媒を選択することが好ましく、例えば、エタノール、イソプロパノール(IPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸、水等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの極性溶媒の中でも、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、エタノール、DMF、水が好ましい。
混合時の温度は、アミンの反応性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。また、複合体の着色の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。混合時間は、用いるアミン及び溶媒の種類に応じて適宜設定することができるが、アミンの反応性の観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.1時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
前記塩形成後、未反応のアミン等を除去するために、適宜後処理を行ってもよい。該後処理の方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
また、態様Bの製造方法については、工程(1)は態様Aと同様に行うことができるので、以下に第1の製造形態における工程(2B)について記載する。また、例えば、特開2013−151661号公報に記載の方法により製造することができる。
〔工程(2B)〕
第1の製造形態において、工程(2B)は、前記微細化工程を経て得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維と、修飾基を有するアミンとをアミド化反応させて、微細セルロース繊維複合体を得る工程である。前記混合方法としては、原料が反応する程度のものであれば特に問題なく、具体的には、前記原料を縮合剤の存在下で混合し、カルボキシ基含有微細セルロース繊維に含有されるカルボキシ基と、修飾基を有するアミンのアミノ基とを縮合反応させてアミド結合を形成する。
工程(2B)で用いられる、修飾基を有するアミンとしては、微細セルロース繊維複合体において前記した前述のものが挙げられる。
工程(2B)では、カルボキシ基含有微細セルロース繊維と、修飾基を有するアミンとを縮合剤の存在下でアミド化させる。
前記アミンの使用量は、反応性の観点から、カルボキシ基含有微細セルロース繊維に含有されるカルボキシ基1molに対して、アミンが、好ましくは0.1mol以上、より好ましくは0.5mol以上であり、製品純度の観点から、好ましくは50mol以下、より好ましくは20mol以下、さらに好ましくは10mol以下となる量用いる。なお、前記範囲に含まれる量のアミンを一度に反応に供しても、分割して反応に供してもよい。
縮合剤としては、特には限定されないが、合成化学シリーズ ペプチド合成(丸善社)P116記載、又はTetrahedron,57,1551(2001)記載の縮合剤などが挙げられ、例えば、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド(以下、「DMT−MM」と称する場合がある。)等が挙げられる。
上記アミド化反応においては、前記微細化工程における溶媒が挙げられ、用いるアミンが溶解する溶媒を選択することが好ましい。
前記アミド化反応における反応時間及び反応温度は、用いるアミン及び溶媒の種類等に応じて適宜選択することができるが、反応率の観点から、好ましくは1〜24時間、より好ましくは10〜20時間である。また、反応温度は、反応性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。また、複合体の着色の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
前記反応後、未反応のアミンや縮合剤等を除去するために、適宜後処理を行ってもよい。該後処理の方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
なお、態様A及び態様Bのいずれにおいても、第2の製造形態では、前記した各工程を、工程(1)、工程(2A)又は工程(2B)、微細化工程の順で行うこと以外は、第1の製造形態と同様の方法で行うことができる。
また、態様A及び態様Bを組み合せて得られる微細セルロース繊維複合体であってもよく、即ち、イオン結合を介して連結した修飾基とアミド結合を介して連結した修飾基を有する微細セルロース繊維複合体であってもよい。この場合、工程(2A)と工程(2B)のいずれを先に行ってもよい。
かくして、微細セルロース繊維に修飾基がイオン結合及び/又はアミド結合を介して連結した、微細セルロース繊維複合体を得ることができる。本発明においては、得られる樹脂組成物の強度と弾性のバランスの観点から、修飾基がアミド結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体が好ましい。
得られた微細セルロース繊維複合体は、上記後処理を行った後の分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状の微細セルロース繊維複合体を得て、これを使用することもできる。ここで「粉末状」とは、微細セルロース繊維複合体が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。
粉末状の微細セルロース繊維複合体としては、例えば、前記微細セルロース繊維複合体の分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;前記微細セルロース繊維複合体の分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;前記微細セルロース繊維複合体の分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、前記微細セルロース繊維複合体の分散液を大気中で噴霧し、乾燥させる方法である。
微細セルロース繊維複合体は、平均繊維径が、得られる樹脂組成物の高温下での強度を向上する観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.2nm以上、さらに好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは0.8nm以上、よりさらに好ましくは1nm以上である。また、得られる樹脂組成物の高温下での強度、機械的強度、及び透明性の観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、よりさらに好ましくは10nm以下である。
なお、微細セルロース繊維複合体は、工程(2A)又は工程(2B)の反応により結晶性が低下することがないことから、前記微細セルロース繊維の結晶化度と同程度の結晶化度を有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物に含有される微細セルロース繊維複合体としては、前記のように微細セルロース繊維に炭化水素基及び/又はEO/PO共重合部がイオン結合及び/又はアミド結合を介して連結したものであり、平均繊維径は、0.1〜200nmが好ましい。
[可塑剤]
可塑剤としては、特に限定されず、一般の樹脂組成物に用いられる可塑剤が挙げられる。なかでも、得られる樹脂組成物の低温下での柔軟性、透明性の観点から、分子中に2個以上のエステル基を有する化合物が好ましい。このような化合物としては、多価カルボン酸とモノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのエステル、ならびに、多価アルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのエステル等が挙げられる。
具体的には、例えば、特開平4-335060号公報、特開2008−174718号公報、及び特開2008−115372号公報に記載の可塑剤が挙げられる。なかでも、機械的強度、透明性の観点から、好ましくは酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを1〜2モル付加)とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜6のポリエチレングリコールとのエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを2〜3モル付加)とのエステル、フタル酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのジエステル、アジピン酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのジエステル、トリメリット酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのトリエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルであり、より好ましくはフタル酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのジエステル、アジピン酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのジエステル、トリメリット酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのトリエステルである。
フタル酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのジエステルとしては、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、テトラヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルを用いることができる。なかでも、可塑化効率の観点から、好ましくはフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシルであり、より好ましくはフタル酸ジ−2−エチルヘキシルである。
アジピン酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのジエステルとしては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシルを用いることができる。なかでも、可塑化効率の観点から、好ましくはアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシルであり、より好ましくはアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルである。
トリメリット酸と炭素数6〜18のモノアルコールとのトリエステルとしては、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル、トリメリット酸トリイソデシルを用いることができる。なかでも、可塑化効率の観点から、好ましくはトリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルオクチルであり、より好ましくはトリメリット酸トリ−2−エチルヘキシルである。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物における各成分の含有量は、下記のとおりである。
本発明の樹脂組成物中のポリ塩化ビニル樹脂の含有量は、樹脂組成物の成形加工性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、微細セルロース繊維複合体や可塑剤等を含有させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
本発明の樹脂組成物中の微細セルロース繊維又はその改質物の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度、伸縮性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上であり、製造時の操作性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。なお、ここでの微細セルロース繊維の含有量とは、修飾基が導入されていない微細セルロース繊維の含有量のことである。
また、本発明の樹脂組成物が微細セルロース繊維の改質物を含有する場合、微細セルロース繊維の含有量(換算量)は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度、伸縮性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上であり、製造時の操作性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。
本発明の樹脂組成物中の微細セルロース繊維又はその改質物の含有量は、得られる樹脂組成物の機械的強度、伸縮性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、製造時の操作性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
本発明の樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度、高温下での強度、低温下での柔軟性、成形性を向上させる観点から、好ましくは15質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは45質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは55質量部以上であり、微細セルロース繊維複合体等を含有させ、機械的強度を維持する観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは65質量部以下である。
本発明の樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、得られる樹脂組成物の機械的強度、高温下での強度、低温下での柔軟性、成形性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、微細セルロース繊維複合体等を含有させ、機械的強度を維持する観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また、でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等も含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。任意の添加剤の含有量としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されても良いが、例えば、樹脂組成物中10質量%程度以下が好ましく、5質量%程度以下がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂と微細セルロース繊維又はその改質物と可塑剤を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂と微細セルロース繊維又はその改質物と可塑剤、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、ヘンシェルミキサー、高圧ホモジナイザー等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練または溶媒キャスト法により調製することができる。
本発明の樹脂組成物は、加工性が良好で、かつ、高温下で良好な強度を示しながらも低温下では柔軟性に優れ、また、伸縮性に優れるため、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等各種用途、なかでも、自動車用途に好適に用いることができる。
[樹脂成形体]
樹脂成形体は、前記樹脂組成物を押出成形、射出成形、プレス成形、注型成型又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。例えば、パッケージや基板などに注入あるいは塗布してした後、乾燥し硬化させることで用途に応じた成形体を得ることができる。
シート状の成形体を調製する場合、加工性の観点から、その厚さは0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上がさらに好ましい。また、1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。
かくして得られた本発明の樹脂組成物の成形体は、機械的強度に優れ、また、高温下で良好な強度を示しながらも低温下では柔軟性に優れ、かつ、伸縮性に優れることから、前記樹脂組成物で挙げられた各種用途に好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔微細セルロース繊維の平均繊維径〕
微細セルロース繊維に水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、微細セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。
〔微細セルロース繊維及び微細セルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量〕
乾燥質量0.5gの微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体を100mLビーカーにとり、イオン交換水もしくはメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−50」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
微細セルロース繊維の調製例1(天然セルロースにN−オキシル化合物を作用させて得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム28.4質量%をこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。イオン交換水を用いて得られた酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。その後、酸化パルプ3.9gとイオン交換水296.1gを高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP−2 5005)を用いて245MPaで微細化処理を2回行い、カルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1.3質量%)を得た。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.4mmol/gであった。
微細セルロース繊維の調製例2(酸型処理して得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液)
ビーカーに微細セルロース繊維の調製例1で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液4088.75g(固形分濃度1.3質量%)にイオン交換水4085gを加え0.5質量%の水溶液とし、メカニカルスターラーにて室温下(25℃)、30分攪拌した。続いて1M塩酸水溶液を245g仕込み室温下、1時間反応させた。反応終了後、アセトンで再沈し、ろ過、その後、アセトン/イオン交換水にて洗浄を行い、塩酸及び塩を除去した。最後にアセトンを加えろ過し、アセトンにカルボキシ基含有微細セルロース繊維が膨潤した状態のアセトン含有酸型セルロース繊維分散液(固形分濃度5.0質量%)を得た。反応終了後、ろ過し、その後、イオン交換水にて洗浄を行い、塩酸及び塩を除去した。アセトンで溶媒置換した後、ジメチルホルムアミド(DMF)で溶媒置換し、カルボキシ基含有微細セルロース繊維が膨潤した状態のDMF含有酸型セルロース繊維分散液(固形分濃度5.0質量%)を得た。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.4mmol/gであった。
EO/PO共重合部を有するアミン(EO/POアミン)の製造例1〜4
プロピレングリコール第三級ブチルエーテル132g(1モル)を1Lのオートクレーブに仕込み、75℃に加熱し、フレーク状の水酸化カリウム1.2gを加え、溶解するまで攪拌した。次いで、表1に示す量のエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)を110℃で0.34MPaにて反応させた後、Magnesol 30/40(ケイ酸マグネシウム、ダラスグループ社製)7.14gを投入して95℃で中和し、得られた生成物をジ第三級ブチル−p−クレゾール 0.16gを添加、混合した後、濾過して、EO/PO共重合体であるポリエーテルを得た。
一方、酸化ニッケル/酸化銅/酸化クロム(モル比:75/23/2)(和光純薬工業社)の触媒を充填した1.250mLの管状反応容器に上記で得られたポリエーテル(8.4mL/min)、アンモニア(12.6mL/min)及び水素(0.8mL/min)をそれぞれ供給した。容器の温度を190℃に維持し、圧力を14MPaに維持した。そして容器からの粗流出液を70℃及び3.5mmHgにて30分間留去した。得られたアミノ化ポリエーテル200g及び15%塩酸水溶液93.6gをフラスコに仕込み、反応混合物を100℃にて3.75時間加熱し、第三級ブチルエーテルを酸で開裂させた。そして生成物を15%の水酸化カリウム水溶液144gで中和した。次に中和された生成物を112℃で一時間減圧留去して濾過し、前述の式(i)で表されるEO/PO共重合部を有するモノアミン(EO/POアミン)を得た。なお、得られたモノアミンは、EO/PO共重合部とアミンが直接結合しており、前記式(i)におけるRは水素原子である。
なお、アミン共重合部の分子量は、例えば、製造例1のアミンの場合、
44〔EO分子量(44.03)×EO付加モル数(1)〕+522〔PO分子量(58.04)×PO付加モル数(9)〕+58.04〔出発原料中のPO部分分子量(プロピレングリコール)〕=624
を四捨五入して600と算出した。
Figure 0006518481
微細セルロース繊維複合体の製造例1(実施例1〜10、12〜16、22〜25及び比較例3、5)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液35g(固形分濃度5.4質量%)を仕込んだ。続いて、表2〜5に示す種類のアミンを表2〜5に示すアミン基量に相当する量、縮合剤である4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド(DMT−MM)を微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して2.2〜4molに相当する量、N−メチルホルマリン(NMM)を微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して1.2〜3molに相当する量をそれぞれ仕込み、DMF300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、DMT−MM塩を除去し、アセトンで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、表2〜5に示す種類のアミンがアミド結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
微細セルロース繊維複合体の製造例2(実施例17〜20)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液35g(固形分濃度5.4質量%)を仕込んだ。続いて、表3に示す種類のアミンを表3に示すアミン基量に相当する量を仕込み、イオン交換水300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、アセトンで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、表3に示す種類のアミンがイオン結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
微細セルロース繊維複合体の製造例3(実施例21)
<アミド結合によるフェニル基修飾>
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液35g(固形分濃度5.4質量%)を仕込んだ。続いて、アニリンを表4に示すアミン基量に相当する量、縮合剤であるDMT−MMを微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して2.5molに相当する量、NMMを微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対して1.4molに相当する量をそれぞれ仕込み、DMF300g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、DMT−MM塩を除去し、アセトンで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、フェニル基がアミド結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
<イオン結合によるEO/PO共重合部修飾>
次に、得られた微細セルロース繊維複合体分散液10g(固形分濃度5.0質量%)に対し、表4に示すEO/PO共重合アミンを表4に示すアミン基量に相当する量を仕込み、イオン交換水100g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、イオン交換水にて洗浄、アセトンで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、アミド結合を介してフェニル基と、イオン結合を介してEOPO共重合体がそれぞれ連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
実施例1〜10、12〜25及び比較例1〜3、5<ポリ塩化ビニル樹脂組成物>
表2〜5に示す種類の微細セルロース繊維改質物の分散液を、微細セルロース繊維改質物の量が表2〜5に示す量となる量、表2〜5に示す可塑剤を表2〜5に示す量、及びポリ塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ社製、商品名:ZEST1400Z)2g(100質量部)と塩ビ用安定化剤(ADEKA社製、商品名:アデカスタブRUP−103)0.04gとステアリン酸(花王社製、商品名:ルナックS70V)0.01gを混合したDMF溶液を、順次添加して超音波ホモジナイザー(US−300E、日本精機製作所社製)にて2分間攪拌、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP−2 5005)にて100MPaで2パス、150MPaで1パス微細処理させた。該均一混合物をガラスシャーレに注ぎ、2日間40℃で真空乾燥を行い、厚さ約0.3mmのシート状の複合材料を製造した。
実施例11及び比較例4
微細セルロース繊維複合体の製造例1で製造した微細セルロース繊維複合体を、微細セルロース繊維の調製例2で製造した微細セルロース繊維に変更し、組成物中の微細セルロース繊維量が表3又は表5に示す量となる量を添加したこと以外は実施例1と同様の方法で複合材料を製造した。
得られた成形体の特性を、下記試験例1と2の方法に従って評価した。結果を表2〜5に示す。
試験例1(破断伸度)
引張圧縮試験機(SHIMADZU社製、商品名「Autograph AGS−X」)を用いて、JIS K7113に準拠して、成形体の破断伸度を引張試験によって測定した。2号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離80mmでセットし、クロスヘッド速度10mm/minで測定した。破断伸度が50%以上の場合に伸縮性に優れていることを示し、その値がより高い方が伸縮性に優れていることを示す。
試験例2(貯蔵弾性率)
動的粘弾性装置(SII社製、商品名「DMS6100」)を用いて、幅5mm、長さ20mmの短冊型サンプルを、窒素雰囲気下、周波数1Hzで、−50℃から150℃まで、1分間に2℃の割合で温度を上昇させて、引張モードで計測した。貯蔵弾性率数は100℃と−30℃の値を用いた。貯蔵弾性率(MPa、100℃)は4以上の場合に高温下での強度が優れていることを示し、貯蔵弾性率(MPa、−30℃)は3200以下の場合に低温下での柔軟性が優れていると判断することができる。
なお、表2〜5における原料は以下の通りである。
[ポリ塩化ビニル樹脂]
ポリ塩化ビニル樹脂:新第一塩ビ社製、商品名:ZEST1400Z
[可塑剤]
DOP:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、花王社製、商品名:ビニサイザー80
DIDP:フタル酸ジイソデシル、和光純薬工業社製
DOA:アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、和光純薬工業社製
DIDA:アジピン酸ジイソデシル、和光純薬工業社製
TOTM:トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、和光純薬工業社製
Figure 0006518481
Figure 0006518481
Figure 0006518481
Figure 0006518481
表2より、実施例1〜実施例4を比較すると、可塑剤の質量部数が一定の場合、微細セルロース繊維改質物の質量部数が増加するにつれ、高温下での強度に優れることがわかる。また、実施例5〜7を比較すると、微細セルロース繊維改質物の質量部数が一定の場合、可塑剤の質量部数が増加するにつれ、高温下での強度に優れ、低温下での柔軟性にも優れることがわかる。また、実施例3、8〜10を比較すると、可塑剤の質量部数が一定の場合、EO/PO共重合アミンの製造番号4が最も低温下での柔軟性に優れ、また高温下での強度にも優れるという効果を奏することがわかる。
表3より、微細セルロース繊維改質物の修飾基が鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基である場合にも、低温下での柔軟性に優れ、また高温下での強度にも優れるという効果を奏することがわかる(実施例12〜16)。また、前記効果は、修飾基の導入方法がアミド結合であってもイオン結合であっても、良好に奏されることが分かる(実施例3と実施例17、実施例12と実施例18、実施例13と実施例19、実施例14と実施例20)。
表4より、芳香族炭化水素基とEO/PO共重合物が両方導入されている場合にも、低温下での柔軟性に優れ、また高温下での強度にも優れるという効果を奏することがわかる(実施例21)。また、実施例3、実施例22〜25の対比により、可塑剤の種類が変更しても良好な効果が奏されることが分かる。
一方、微細セルロース繊維を含有しない比較例2は、高温下での強度に劣るものであり、可塑剤を含有しない比較例3〜5は、低温下での柔軟性や伸縮性に劣ることが分かる。
本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、高温下での強度に優れながらも低温下での柔軟性にも優れ、かつ、高伸縮性を有するので、例えば、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. ポリ塩化ビニル樹脂、微細セルロース繊維又はその改質物、及び可塑剤を含有してなるポリ塩化ビニル樹脂組成物であって、微細セルロース繊維又はその改質物の含有量が、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であり、可塑剤の含有量が、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、15質量部以上200質量部以下である、ポリ塩化ビニル樹脂組成物
  2. 微細セルロース繊維のカルボキシ基含有量が0.1mmol/g以上であり、平均繊維径が0.1〜200nmである、請求項1記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
  3. 微細セルロース繊維の改質物が、微細セルロース繊維のカルボキシ基に炭化水素基又はエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(EO/PO)共重合部が導入されたものである、請求項1又は2記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
  4. 炭化水素基又はエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(EO/PO)共重合部の導入がアミド結合及び/又はイオン結合を介したものである、請求項3記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物。
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