JP6443981B2 - 微細セルロース繊維複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、微細セルロース繊維複合体に関する。更に詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等にナノフィラーとして好適に配合し得る微細セルロース繊維複合体、及び該微細セルロース繊維複合体を含有する樹脂組成物に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた材料が注目されている。
特許文献1には、ポリエステル樹脂、及び、微細セルロース繊維に炭化水素基がアミド結合を介して連結してなる、平均繊維径が0.1〜200nmの微細セルロース繊維複合体を含有してなるポリエステル樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、分子中のグルコースの6位に少なくとも1のアリール基を有する繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であって、該アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、C6位のメチロールを酸化処理してアルデヒド基やカルボキシル基を導入し、アリール基を有する化合物と反応させることにより得られると記載されている。また、より詳しい合成方法として、セルロース繊維とアリール基を有する化合物をフリーデルクラフツアルキル化反応することで得られると開示されている。
特開2013−151636号公報 特開2012−107199号公報
しかしながら、特許文献1及び2の微細セルロース繊維複合体を含有する組成物では、耐熱性と機械的強度の両立において、まだ、十分とは言えない。
本発明は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂に配合した際に、耐熱性、機械的強度、及び透明性に優れ、樹脂によっては更に寸法安定性に優れる樹脂組成物を提供し得る微細セルロース繊維複合体、及び、該複合体を含有する樹脂組成物に関する。
本発明は、下記〔1〕〜〔2〕に関する。
〔1〕 微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基がアミド結合を介して連結し導入されてなる、微細セルロース繊維複合体。
〔2〕 熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂と前記〔1〕記載の微細セルロース繊維複合体とを含有する、樹脂組成物。
本発明の微細セルロース繊維複合体は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂(以下、単に樹脂ともいう)に配合した際に、耐熱性、機械的強度、及び透明性に優れ、樹脂によっては更に寸法安定性に優れる樹脂組成物を提供することができる。
[微細セルロース繊維複合体]
本発明の微細セルロース繊維複合体は、微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基がアミド結合を介して連結して導入されていることを特徴とする。なお、本明細書において、微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基が導入されているとは、微細セルロース繊維表面のカルボキシ基に芳香族炭化水素基がアミド結合によって結合している状態のことを意味する。より詳しくは、アミド基の炭素原子がセルロース骨格に共有結合し、窒素原子に直接にあるいは連結基を介して芳香族炭化水素基が共有結合した状態を意味する。
本発明の微細セルロース繊維複合体を含有する樹脂組成物が、耐熱性、機械的強度、及び透明性に優れ、樹脂によっては、更に寸法安定性にも優れる理由は、次のように考えられる。本発明の微細セルロース繊維複合体は、微細セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基と、芳香族炭化水素基とをアミド結合させることで、芳香族環によるπ-π相互作用によって、セルロース繊維複合体自身の樹脂への親和性が高められたため、樹脂と配合した際に該樹脂中で分散性に優れるものとなり、得られる樹脂組成物が耐熱性、機械的強度、及び透明性に優れ、樹脂によっては、更に寸法安定性を向上させることが可能となる。
<微細セルロース繊維>
(平均繊維径)
本発明で用いられる微細セルロース繊維複合体を構成する微細セルロース繊維は、平均繊維径が、均一な繊維径を持つ微細セルロース繊維複合体を製造する観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.2nm以上、さらに好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは0.8nm以上、よりさらに好ましくは1nm以上である。また、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂に含有させて樹脂組成物(複合材料ともいう)とした時の機械的強度を十分に向上させると共に透明性を維持し、かつ、耐熱性を向上し、樹脂によっては、更に寸法安定性にも優れる観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下、よりさらに好ましくは5nm以下である。なお、本明細書において、セルロース繊維の平均繊維径は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅と見なすことができる。
(カルボキシ基含有量)
微細セルロース繊維のカルボキシ基含有量は、安定な微細化及びアミド化の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、さらに好ましくは0.6mmol/g以上、さらに好ましくは0.8mmol/g以上である。また、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、さらに好ましくは1.8mmol/g以下である。本発明で用いられる微細セルロース繊維に、カルボキシ基含有量がかかる範囲外である微細セルロース繊維が、意図せずに不純物として含まれることもあり得る。なお、「カルボキシ基含有量」とは、微細セルロース繊維を構成するセルロース中のカルボキシ基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
(平均アスペクト比)
微細セルロース繊維の平均アスペクト比(繊維長/繊維径)は、樹脂に含有させて複合材料とした時の機械的強度を十分に向上させる観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは50以上、よりさらに好ましくは100以上である。また、樹脂中の分散性低下に伴う機械的強度の低下を抑制する観点から、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは400以下、よりさらに好ましくは350以下である。平均アスペクト比が上記範囲にある微細セルロース繊維は、樹脂に配合した際に該樹脂中での分散性に優れ、機械的強度が高く、脆性破壊し難い樹脂組成物が得られる。なお、本明細書において、平均アスペクト比は、分散液中のセルロース繊維濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)によりセルロース繊維のアスペクト比を逆算して求める。なお、下記式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS,CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb×ρ=M/Nの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m)、Mは分子量、Nはアボガドロ数を表す〕から導き出されるものである。また、上記の粘度式(8.138)において、剛直棒状分子をセルロース繊維とする。下記式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρは分散媒の密度(kg/m)、ρはセルロース結晶の密度(kg/m)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρ)を表す。
Figure 0006443981
(結晶化度)
微細セルロース繊維の結晶化度は、樹脂に含有させて複合材料とした時の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上、よりさらに好ましくは45%以上である。また、アミド化反応の反応効率を向上させる観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下、よりさらに好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記計算式(A)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
<芳香族炭化水素基を有するアミン>
本発明の微細セルロース繊維複合体は、上記の微細セルロース繊維表面に芳香族炭化水素基が結合しているものを示すが、これは、例えば、微細セルロース繊維表面に既に存在するカルボキシ基を選択して、芳香族炭化水素基を有するアミンをアミド結合させることにより得られる。該アミンとしては、第1級アミン、第2級アミンのいずれでもよいが、反応性の観点から、第1級アミンが好ましい。
(芳香族炭化水素基)
本発明における芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換されたが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上が前記アミンに含まれていてもよい。なかでも、樹脂との相溶性の観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が後述する置換基で置換された基などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上が前記アミンに含まれていてもよい。なかでも、樹脂との相溶性の観点から、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基が好ましく、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基がより好ましく、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基がさらに好ましい。
前記アリール基及びアラルキル基の総炭素数は、樹脂との相溶性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、また、同様の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、より好ましくは14以下、さらに好ましくは13以下、さらに好ましくは11以下である。
前記アリール基及びアラルキル基の置換基としては、置換基を含めた芳香族炭化水素基全体の総炭素数が前記範囲内となるものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1〜6のアルコキシ−カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1〜6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1〜6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1〜6のジアルキルアミノ基が挙げられる。なお、前記した芳香族基そのものが置換基として結合していてもよい。
前記芳香族炭化水素基を有するアミンにおいて芳香族炭化水素基とN原子とは、直接に又は連結基を介して結合しているものが好ましい。連結基としては炭化水素基が好ましく、炭素数が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のアルキレン基が用いられる。例えば、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
かかる芳香族炭化水素基を有するアミンの具体例を以下に挙げる。例えば、アリール基を有するアミンとしては、アニリン、4−ビフェニリルアミン、ジフェニルアミン、2−アミノナフタレン、p−テルフェニルアミン、2−アミノアントラセン、2-アミノアントラキノンが挙げられる。なかでも、樹脂との相溶性の観点からアニリン、4−ビフェニリルアミン、ジフェニルアミン、2−アミノナフタレン、p−テルフェニルアミンが好ましく、アニリンがより好ましい。また、アラルキル基を有するアミンとしては、ベンジルアミン、フェネチルアミン、3−フェニルプロピルアミン、5−フェニルペンチルアミン、6−フェニルヘキシルアミン、7−フェニルヘプチルアミン、8−フェニルオクチルアミンが挙げられる。なかでも、同様の観点からベンジルアミン、フェネチルアミン、5−フェニルペンチルアミン、6−フェニルヘキシルアミン、7−フェニルヘプチルアミンが好ましく、ベンジルアミン、フェネチルアミン、3−フェニルプロピルアミン、5−フェニルペンチルアミン、6−フェニルヘキシルアミンがより好ましく、ベンジルアミン、フェネチルアミン、3−フェニルプロピルアミン、5−フェニルペンチルアミンがさらに好ましい。
前記芳香族炭化水素基を有するアミンは、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。例えば、ニトロベンゼンを還元することでアニリンを製造することができ、ベンズニトリルを水素化することでベンジルアミンを製造することができる。
微細セルロース繊維複合体における芳香族炭化水素基の結合量は、樹脂に配合した際には、機械的強度等に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.1mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上、さらに好ましくは0.7mmol/g以上、さらに好ましくは0.9mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、さらに好ましくは1.5mmol/g以下である。芳香族炭化水素基の結合量は、前記アミンの添加量、種類、反応温度、反応時間、溶媒を変更することで調整することができる。
また、微細セルロース繊維複合体における芳香族炭化水素基の導入率(修飾率ともいう)は、樹脂に配合した際には、機械的強度に優れる樹脂組成物を得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上であり、反応性の観点から、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下、さらに好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下である。なお、本発明において、芳香族炭化水素基の結合量(mmol/g)及び導入率(%)は、具体的には後述の実施例に記載の方法で求められる。
<微細セルロース繊維複合体の製造方法>
微細セルロース繊維複合体は、微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、予め調製された微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基を導入する反応を行ってもよいし、微細セルロース繊維を調製する際に芳香族炭化水素基を導入する反応を行ってもよい。なお、微細セルロース繊維は、公知の方法、例えば、特開2011−140632号公報に記載の方法により製造することができる。
好適な製造方法としては、例えば、下記工程(1)及び工程(2)を含む製造方法が挙げられる。
工程(1):天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維と、芳香族炭化水素基を有するアミンとをアミド化反応させる工程
なお、前記好適な製造方法としては、工程(1)の後に後述する微細化工程を行い、カルボキシ基含有微細セルロース繊維とした後に工程(2)を行う方法(第1の製造形態)、及び、工程(1)の後に工程(2)を行い、その後に微細化工程を行う方法(第2の製造形態)が挙げられる。
以下、前記「第1の製造形態」に基づいて、微細セルロース繊維複合体の製造方法を説明する。
〔工程(1)〕
工程(1)は、天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程である。
工程(1)では、まず、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準:150℃にて30分間加熱乾燥させた後の天然セルロース繊維の質量)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていてもよい。また、前記市販のパルプのセルロースI型結晶化度は、通常80%以上である。
(酸化処理工程)
次に、上記天然セルロース繊維を、N−オキシル化合物の存在下で酸化処理して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る(以下、単に「酸化処理」と称する場合がある)。
N−オキシル化合物としては、炭素数1又は2のアルキル基を有するピペリジンオキシル化合物、ピロリジンオキシル化合物、イミダゾリンオキシル化合物、及びアザアダマンタン化合物から選ばれる1種以上の複素環式のN−オキシル化合物が好ましい。これらの中では、反応性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有するピペリジンオキシル化合物が好ましく、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−アルコキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−アミノ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル等のジ−tert−アルキルニトロキシル化合物、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−ホスフォノキシ−TEMPO等が挙げられる。これらのピペリジンオキシル化合物の中では、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルがより好ましく、2,2,6,6テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)がさらに好ましい。
N−オキシル化合物の量は、触媒量であればよく、天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜9質量%、さらに好ましくは0.1〜8質量%、よりさらに好ましくは0.5〜5質量%である。
天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化剤を使用することができる。酸化剤としては、溶媒をアルカリ性域に調整した場合の溶解度や反応速度等の観点から、酸素又は空気、過酸化物;ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸及びそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;ハロゲン酸化物、窒素酸化物等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましく、具体的には、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウムが例示される。酸化剤の使用量は、天然セルロース繊維のカルボキシ基置換度(酸化度)に応じて選択すればよく、また反応条件によって酸化反応収率が異なるため一概には決められないが、原料である天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)100質量部に対し、約1〜100質量部となる範囲である。
また、酸化反応をより一層効率よく行うため、助触媒として、臭化ナトリウム、臭化カリウム等の臭化物や、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のヨウ化物等を用いることができる。助触媒の量は、その機能を発揮できる有効量であればよく、特に制限はない。
酸化処理における反応温度は、反応の選択性、副反応の抑制の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは20℃以下であり、その下限は、好ましくは−5℃以上である。
また、反応系のpHは酸化剤の性質に合わせることが好ましく、例えば、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、反応系のpHはアルカリ側とすることが好ましく、pH7〜13が好ましく、pH10〜13がより好ましい。また、反応時間は1〜240分間が望ましい。
上記酸化処理を行うことにより、カルボキシ基含有量が、好ましくは0.1〜3mmol/gの範囲の、カルボキシ基含有セルロース繊維が得られる。
(精製工程)
前記酸化反応で得られるカルボキシ基含有セルロース繊維は、触媒として用いるTEMPO等のN−オキシル化合物や副生塩を含む。そのまま次工程を行ってもよいが、精製を行って純度の高いカルボキシ基含有セルロース繊維を得ることもできる。精製方法としては、酸化反応における溶媒の種類、生成物の酸化の程度、精製の程度により最適な方法を採用することができる。例えば、良溶媒として水、貧溶媒としてメタノール、エタノール、アセトン等を用いた再沈殿、ヘキサン等の水と相分離する溶媒へのTEMPO等の抽出、及び塩のイオン交換、透析等による精製等が挙げられる。
(微細化工程)
第1の製造形態では、前記精製工程後、工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維を微細化する工程を行う。微細化工程では、前記精製工程を経たカルボキシ基含有セルロース繊維を溶媒中に分散させ、微細化処理を行うことが好ましい。この微細化工程を行うことにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にある微細セルロース繊維が得られる。
分散媒としての溶媒は、水の他、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3〜6のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数1〜6の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;炭素数2〜5の低級アルキルエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル等の極性溶媒等が例示される。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、微細化処理の操作性の観点から、水、炭素数1〜6のアルコール、炭素数3〜6のケトン、炭素数2〜5の低級アルキルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、コハク酸メチルトリグリコールジエステル等の極性溶媒が好ましく、環境負荷低減の観点から、水がより好ましい。溶媒の使用量は、カルボキシ基含有セルロース繊維を分散できる有効量であればよく、特に制限はないが、カルボキシ基含有セルロース繊維に対して、好ましくは1〜500質量倍、より好ましくは2〜200質量倍使用することがより好ましい。
また、微細化処理で使用する装置としては公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における反応物繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。
微細化工程後に得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維の形態としては、必要に応じ、固形分濃度を調整した懸濁液状(目視的に無色透明又は不透明な液)、あるいは乾燥処理した粉末状(但し、微細セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることもできる。なお、懸濁液状にする場合、分散媒として水のみを使用してもよく、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール類)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用してもよい。
このような天然セルロース繊維の酸化処理及び微細化処理により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシ基へと選択的に酸化され、前記カルボキシ基含有量が、好ましくは0.1〜3mmol/gのセルロースからなる、好ましくは平均繊維径0.1〜200nmの微細化された、好ましくは30%以上の結晶化度を有するセルロース繊維を得ることができる。ここで、前記カルボキシ基含有微細セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有している。これは、本発明で用いるカルボキシ基含有微細セルロース繊維が、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料が表面酸化され微細化された繊維であることを意味する。なお、工程(1)において、天然セルロース繊維の酸化処理後に、さらに酸(例えば、塩酸)を反応させてカルボキシ基含有量を調整することができ、該反応は微細化処理前、微細化処理後のいずれに行ってもよい。
〔工程(2)〕
第1の製造形態において、工程(2)は、前記微細化工程を経て得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維と、芳香族炭化水素基を有するアミンとをアミド化反応させて、微細セルロース繊維複合体を得る工程である。前記混合方法としては、原料が反応する程度のものであれば特に問題なく、具体的には、前記原料を縮合剤の存在下で混合し、カルボキシ基含有微細セルロース繊維に含有されるカルボキシ基と、芳香族炭化水素基を有するアミンのアミノ基とを縮合反応させてアミド結合を形成する。
工程(2)で用いられる芳香族炭化水素基を有するアミンとしては、微細セルロース繊維複合体において前記した前述のものが挙げられる。
工程(2)では、カルボキシ基含有微細セルロース繊維と、芳香族炭化水素基を有するアミンとを縮合剤の存在下でアミド化させる。
前記アミンの使用量は、反応性の観点から、カルボキシ基含有微細セルロース繊維に含有されるカルボキシ基1molに対して、アミンが、好ましくは0.1mol以上、より好ましくは0.5mol以上、さらに好ましくは0.7mol以上、よりさらに好ましくは1mol以上であり、製品純度の観点から、好ましくは50mol以下、より好ましくは20mol以下、さらに好ましくは10mol以下となる量用いる。なお、前記範囲に含まれる量のアミンを一度に反応に供しても、分割して反応に供してもよい。
縮合剤としては、特には限定されないが、合成化学シリーズ ペプチド合成(丸善社)P116記載、又はTetrahedron,57,1551(2001)記載の縮合剤などが挙げられ、例えば、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライド(以下、「DMT−MM」と称する場合がある。)等が挙げられる。
上記アミド化反応においては、前記微細化工程における溶媒が挙げられ、用いるアミンが溶解する溶媒を選択することが好ましい。
前記アミド化反応における反応時間及び反応温度は、用いるアミン及び溶媒の種類等に応じて適宜選択することができるが、反応率の観点から、好ましくは1〜24時間、より好ましくは10〜20時間である。また、反応温度は、反応性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。また、複合体の着色の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
前記反応後、未反応のアミンや縮合剤等を除去するために、適宜後処理を行ってもよい。該後処理の方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
かくして、微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基がアミド結合を介して連結した、微細セルロース繊維複合体を得ることができる。
第2の製造形態では、前記した各工程を、工程(1)、工程(2)、微細化工程の順で行うこと以外は、第1の製造形態と同様の方法で行うことができる。
得られた微細セルロース繊維複合体は、上記後処理を行った後の分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状の微細セルロース繊維複合体を得て、これを使用することもできる。ここで「粉末状」とは、微細セルロース繊維複合体が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。
粉末状の微細セルロース繊維複合体としては、例えば、前記微細セルロース繊維複合体の分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;前記微細セルロース繊維複合体の分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;前記微細セルロース繊維複合体の分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、前記微細セルロース繊維複合体の分散液を大気中で噴霧し、乾燥させる方法である。
微細セルロース繊維複合体は、平均繊維径が、耐熱性(成型時の着色の少なさ)の観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.2nm以上、さらに好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは0.8nm以上、よりさらに好ましくは1nm以上である。また、機械的強度及び透明性の観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、よりさらに好ましくは10nm以下である。
なお、微細セルロース繊維複合体は、工程(2)の反応により結晶性が低下することがないことから、前記微細セルロース繊維の結晶化度と同程度の結晶化度を有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物に含有される微細セルロース繊維複合体としては、前記のように微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基がアミド結合を介して連結したものであり、平均繊維径は、0.1〜200nmが好ましい。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂と前記微細セルロース繊維複合体とを含有する。前記微細セルロース繊維複合体により、前記樹脂の機械的強度等を向上することができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等の飽和ポリエステル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂;トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース等のセルロース系樹脂;ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いても良い。これらの中でも、凝集物が少なく、透明性に優れる樹脂組成物が得られることから、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を含むものを意味する。
ポリエステル系樹脂としては、当該分野において公知のものであれば特に限定はないが、生分解性を有していることが好ましく、生分解性ポリエステル樹脂が好ましい。具体的には、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等の脂肪族ポリエステル樹脂;ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート等の脂肪族芳香族コポリエステル樹脂;デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン等の天然高分子と上記の脂肪族ポリエステル樹脂あるいは脂肪族芳香族コポリエステル樹脂との混合物等が挙げられる。これらのなかでも、加工性、経済性、入手性、及び物性に優れることから、ポリブチレンサクシネート及びポリ乳酸樹脂が好ましく、ポリ乳酸樹脂がより好ましい。なお、本明細書において「生分解性」とは、自然界において微生物によって低分子化合物に分解され得る性質のことであり、具体的には、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性のことを意味する。
ポリ乳酸樹脂としては、市販されているポリ乳酸樹脂(例えば、Nature Works社製:商品名 Nature Works PLA/NW3001D、NW4032D、N4000、トヨタ自動車社製:商品名 エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17等)の他、乳酸やラクチドから合成したポリ乳酸が挙げられる。強度や耐熱性の向上の観点から、光学純度90%以上のポリ乳酸樹脂が好ましく、例えば、比較的分子量が高く、また光学純度の高いNature Works社製 ポリ乳酸樹脂(NW4032D、N4000等)が好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、該樹脂を構成する全重合体の単量体単位の合計を基準として、50重量%以上の(メタ)アクリル酸メチルを単量体単位として含むものが好ましく、メタクリル系樹脂がより好ましい。
メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル及びこれに共重合可能な他の単量体を共重合することによって製造することができる。重合方法は特に限定されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、注型重合法(例えば、セルキャスト重合法)などが挙げられ、生産性の観点から、注型重合法(例えば、セルキャスト重合法)が好ましい。また、上記単量体混合物とラジカル重合開始剤を含む重合性混合物を重合反応させることで、耐熱性に優れるメタクリル系樹脂が得られる。
硬化性樹脂は、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射により、ラジカルやカチオンを発生する光重合開始剤を用いることで重合反応が進行する。
前記光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性、耐水性、透明性及び耐擦傷性向上の観点から、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンが好ましい。
光重合開始剤で、例えば、単量体(単官能単量体、多官能単量体)、反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂等を重合することができる。
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3〜8官能単量体としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらのオリゴマー又は樹脂は、前記単量体と共に用いても良い。
光硬化性樹脂は、凝集物が少なく、透明性に優れる樹脂組成物が得られる観点から、好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ユリア樹脂;メラミン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ジアリルフタレート樹脂;ポリウレタン樹脂;ケイ素樹脂;ポリイミド樹脂;ゴム系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中では、凝集物が少なく、透明性に優れる樹脂組成物が得られることから、エポキシ樹脂がより好ましい。
前記樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤を配合することによって、樹脂組成物から得られる成形材料を強固に成形することができ、機械的強度を向上させることができる。尚、硬化剤の含有量は、使用する硬化剤の種類により適宜設定すればよい。
微細セルロース繊維複合体としては、前述した本発明の微細セルロース繊維複合体を用いることができる。
樹脂組成物中の樹脂の含有量、樹脂に対する微細セルロース繊維複合体量及び樹脂に対する微細セルロース繊維量(換算量)は、樹脂の種類にもよるが、下記のとおりである。
本発明の樹脂組成物中の樹脂の含有量は、成形体を製造する観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上がさらに好ましく、微細セルロース繊維複合体や可塑剤等を含有させる観点から、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物中の微細セルロース繊維複合体量の含有量は、得られる樹脂組成物の機械的強度等の観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、得られる樹脂組成物の透明性の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がより更に好ましい。
本発明の樹脂組成物中の微細セルロース繊維複合体量は、樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であり、また、得られる樹脂組成物の透明性の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
本発明の樹脂組成物中、微細セルロース繊維量(換算量)は、樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上であり、得られる樹脂組成物の透明性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
本発明の樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されても良いが、例えば、樹脂組成物中10質量%程度以下が好ましく、5質量%程度以下がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂と微細セルロース繊維複合体を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂と微細セルロース繊維複合体、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、ヘンシェルミキサー等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練または溶媒キャスト法により調製することができる。
本発明の樹脂組成物は、加工性が良好で、かつ、耐熱性に優れるため、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等各種用途、なかでも、自動車用途に好適に用いることができる。
[樹脂成形体]
樹脂成形体は、前記樹脂組成物を押出成形、射出成形、プレス成形、注型成型又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。例えば、硬化性樹脂の場合はパッケージや基板などに、注入あるいは塗布してした後、乾燥し硬化させることで用途に応じた成形体を得ることができる。
シート状の成形体を調製する場合、加工性の観点から、その厚さは0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上がさらに好ましい。また、1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。
かくして得られた本発明の樹脂組成物の成形体は、機械的強度及び耐熱性に優れ、前記樹脂組成物で挙げられた、各種用途に好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔微細セルロース繊維の平均繊維径〕
微細セルロース繊維に水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、微細セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。
〔微細セルロース繊維及び微細セルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量〕
乾燥質量0.5gの微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体を100mLビーカーにとり、イオン交換水もしくはメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−50」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、微細セルロース繊維又は微細セルロース繊維複合体のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
〔微細セルロース繊維複合体のアミド基の平均結合量及びアミド基の導入率〕
アミド基導入前後の微細セルロース繊維複合体中のカルボキシ基含有量を前記滴定方法により求め、アミド基の平均結合量を下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。
アミド基の結合量(mmol/g)=アミド基導入前の微細セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)−アミド基導入後の微細セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
アミド基の導入率(%)={アミド基の結合量(mmol/g)/アミド基導入前の微細セルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
微細セルロース繊維の調製例1(天然セルロースにN−オキシル化合物を作用させて得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維の分散液)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム28.4質量%をこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。イオン交換水を用いて得られた酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。その後、酸化パルプ3.9gとイオン交換水296.1gを高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバーストラボ HJP−2 5005)を用いて245MPaで微細化処理を2回行い、カルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1.3質量%)を得た。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.4mmol/gであった。
微細セルロース繊維の調製例2(酸型処理して得られるカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液)
ビーカーに調製例1で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液4088.75g(固形分濃度1.3質量%)にイオン交換水4085gを加え0.5質量%の水溶液とし、メカニカルスターラーにて室温下(25℃)、30分攪拌した。続いて1M塩酸水溶液を245g仕込み室温下、1時間反応させた。反応終了後、アセトンで再沈し、ろ過、その後、アセトン/イオン交換水にて洗浄を行い、塩酸及び塩を除去した。最後にアセトンを加えろ過し、アセトンにカルボキシ基含有微細セルロース繊維が膨潤した状態のアセトン含有酸型セルロース繊維分散液(固形分濃度5.0質量%)を得た。反応終了後、ろ過し、その後、イオン交換水にて洗浄を行い、塩酸及び塩を除去した。アセトンで溶媒置換した後、DMFで溶媒置換し、カルボキシ基含有微細セルロース繊維が膨潤した状態のDMF含有酸型セルロース繊維分散液(固形分濃度5.0質量%)を得た。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、カルボキシ基含有量は1.6mmol/gであった。
微細セルロース繊維複合体の製造例1〜3、比較製造例1(実施例1〜3及び比較例1)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維分散液40g(固形分濃度5.0質量%)を仕込んだ。続いて、表1に示す種類のアミン(いずれも市販品)を、いずれも、微細セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミン基1.2molに相当する量、4−メチルモルホリン0.34g、縮合剤であるDMT−MMを1.98g仕込み、DMF 300g中に溶解させた。反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、エタノールにて洗浄、DMT−MM塩を除去し、DMFで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、芳香族炭化水素基、ヘキシル基アミンがアミド結合を介して連結した微細セルロース繊維複合体を得た。
微細セルロース繊維複合体の比較製造例2(比較例2)
特許文献2(特開2012−107199)の[実施例9]に記載されている方法で、微細セルロース繊維にアミノフェニル基がケトン基を介して結合した微細セルロース繊維複合体を得た。
得られた微細セルロース繊維複合体について、DMFに0.5質量%濃度で分散させた液を調製し、下記の試験例1及び2の方法に従って特性を評価した。結果を表1に示す。なお、参考例1として、微細セルロース繊維の調製例2で得られたカルボキシ基含有微細セルロース繊維をDMFに0.5質量%濃度で分散させた液についても同様に評価を行った結果も併せて示す。
試験例1(凝集物の量)
得られた微細セルロース繊維複合体分散液を、デジタルマイクロスコープVHX−1000(KEYENCE社製)で透過光を用いクロスニコルで観測した。WINROOF(三谷商事社製)を用いて画像解析を行い凝集物の面積を算出した。具体的には、得られた画像をモノクロ化した後に、二値化し、白い部分の面積を算出した。数値が低いほど、透明性に優れることを示す。
試験例2(透過率)
紫外可視分光光度計(UV−VISIBLE SPECTROMETER UV−2550 島津製作所社製)を用いて、得られた微細セルロース繊維複合体分散液の600nmでの透過率を測定し、これを透明度の指標とした。数値が高いほど透明性に優れることを示す。
Figure 0006443981
上記より、実施例1〜3と参考例1、比較例1の結果から芳香族が結合していると凝集物が少なく、透過率も高いことが分かる。
実施例1〜3及び比較例1〜2<熱硬化性樹脂>
表2に示す種類の微細セルロース繊維複合体をDMFで固形分濃度3%に調整した。この微細セルロース繊維複合体分散液を微細セルロース繊維換算量が樹脂100質量部に対して10質量部となる量と、エポキシ樹脂であるjER828(三菱化学社製)2.0gを混合し、高圧ホモジナイザーを用いて、100MPaで1パス、150MPaで1パス微細処理させた。得られた溶液に対して、硬化剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業社製)を0.1g加え、自転公転式攪拌機 あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて7分間攪拌した。得られたワニスをバーコーターを用いて表2に示す塗布厚で塗工した。80℃で90分乾燥し、溶媒を除去した後、150℃60分熱硬化させて、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料を製造した。
参考例1
実施例1で用いた微細セルロース繊維複合体を微細セルロース繊維(調製例2)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合材料を製造した。
参考例2
微細セルロース繊維複合体を添加しない以外は実施例1と同様の方法で複合材料を製造した。
得られた成形体の特性を、下記試験例3〜6の方法に従って評価した。結果を表2に示す。表2中、微細セルロース繊維換算量は、下記式により求めた。
微細セルロース繊維量(g)=微細セルロース繊維複合体(g)/[1+アミンの分子量(g/mol)×アミン結合量(mmol/g)×0.001]
なお、ここでいうアミンの分子量とは、アミン化合物全体の分子量のことである。
試験例3(引張弾性率)
引張圧縮試験機(SHIMADZU社製、商品名「Autograph AGS−X」)を用いて、JIS K7113に準拠して、成形体の引張弾性率及び引張降伏強度をそれぞれ引張試験によって測定した。2号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離80mmでセットし、クロスヘッド速度50mm/minで測定した。引張弾性率が高い方が機械的強度に優れていることを示す。
試験例4(線熱膨張係数)
熱応力歪測定装置(セイコー電子社製、商品名「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、幅3mm、長さ40mmの短冊型サンプルを窒素雰囲気下1分間に5℃の割合で温度を上昇させて引張モードで荷重を50gで計測した。線熱膨張係数は室温(25℃)から、150℃までの温度範囲での平均線熱膨張係数を算出して得た。線熱膨張係数が低い方が寸法安定性に優れていることを示す。
試験例5(貯蔵弾性率)
動的粘弾性装置(SII社製、商品名「DMS6100」)を用いて、幅5mm、長さ40mmの短冊型サンプルを、窒素雰囲気下、周波数1Hzで、−20℃から160℃まで、1分間に2℃の割合で温度を上昇させて、引張モードで計測した。貯蔵弾性率数は100℃の値を用いた。貯蔵弾性率が高い方が耐熱性に優れていることを示す。
試験例6(透明性)
ヘイズメーター(HM−150型 村上色彩技術研究所社製)を用いて、Haze値を測定し、これを透明度の指標とした。数値が低いほど透明性に優れることを示す。
Figure 0006443981
表2より、本発明品の微細セルロース繊維複合体を含有する熱硬化性樹脂組成物は、機械的強度が高く、寸法安定性、耐熱性、及び透明性に優れることがわかる。
本発明の微細セルロース繊維複合体は、樹脂に対して高い分散性を有し、強度増強効果を発現させることができるものであり、各種充填剤等として好適である。また、該微細セルロース繊維複合体の分散液を配合した本発明の樹脂組成物は、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 微細セルロース繊維に芳香族炭化水素基がアミド結合を介して連結し導入されてなる、微細セルロース繊維複合体であって、芳香族炭化水素基が、総炭素数6以上24以下のアリール基及びアラルキル基からなる群より選択される1種以上の基であり、セルロース構成単位のC6位に結合してなり、芳香族炭化水素基の結合量が、0.01〜3mmol/gである、微細セルロース繊維複合体
  2. 微細セルロース繊維の平均繊維径が0.1〜200nmである、請求項1記載の複合体。
  3. 請求項1又は2記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法であって、下記工程(1)及び工程(2)を含む製造方法。
    工程(1):天然セルロース繊維をN−オキシル化合物存在下で酸化して、カルボキシ基含有セルロース繊維を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られたカルボキシ基含有セルロース繊維と、芳香族炭化水素基を有するアミンとをアミド化反応させる工程
  4. 熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂と請求項1又は2記載の微細セルロース繊維複合体とを含有する、樹脂組成物。
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