JP6177119B2 - 酸化セルロース繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
(a)酸化セルロース繊維を、水存在下、100℃以上、250℃以下で加熱し、酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、加熱前の含有量から0.05mmol/g以上、0.7mmol/g以下減少させて熱変性させた酸化セルロース繊維を調製する工程
(b)工程(a)で得られた熱変性させた酸化セルロース繊維を溶媒へ微細分散させて酸化セルロース繊維微細分散液を得る工程
(c)工程(b)で得られた酸化セルロース繊維微細分散液を樹脂と混練する工程
(d)工程(c)で得られた混練物をシート化する工程
(a)酸化セルロース繊維を、水存在下、100℃以上、250℃以下で加熱し、酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、加熱前の含有量から0.05mmol/g以上、0.7mmol/g以下減少させて熱変性させた酸化セルロース繊維を調製する工程
からなる。
(b)工程(a)で得られた熱変性させた酸化セルロース繊維を溶媒へ微細分散させて酸化セルロース繊維微細分散液を得る工程
(c)工程(b)で得られた酸化セルロース繊維微細分散液を樹脂と混練する工程
(d)工程(c)で得られた混練物をシート化する工程
工程(a)では、酸化セルロース繊維を、水存在下、100℃以上、250℃以下で加熱して熱変性させることにより、酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、加熱前のカルボキシ基含有量から0.05mmol/g以上、0.7mmol/g以下減少させる。以下、工程(a)で得られる熱変性させた酸化セルロース繊維を、熱変性酸化セルロース繊維という。
工程(a)で原料として用いる酸化セルロース繊維は、ピラノース環中の6位炭素のみが酸化されカルボキシ基に変換した構造を有している。例えば、木材パルプ等の天然セルロース繊維を、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)触媒の下で酸化処理することにより得られる。
工程(a)で原料として用いる酸化セルロース繊維は、平均繊維径が、均一な繊維径を持つ熱変性酸化セルロース繊維を製造する観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは1.3nm以上、さらに好ましくは1.6nm以上、さらに好ましくは1.8nm以上、よりさらに好ましくは2nm以上である。また、樹脂中に含有させてシート状の樹脂成形体とした時の機械的強度を十分に向上させる観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、よりさらに好ましくは10nm以下である。また、熱変性酸化セルロース繊維を樹脂に含有させて得られる複合材料の機械的強度を向上させる観点から、平均繊維径は好ましくは1nm以上、200nm以下、より好ましくは1.3nm以上、100nm以下、さらに好ましくは1.6nm以上、50nm以下、さらに好ましくは1.8nm以上、20nm以下、よりさらに好ましくは2nm以上、10nm以下である。該平均繊維径が1nm以上であると、繊維径を揃えることが容易であり、また該平均繊維径が200nm以下であると、工程(a)で得られる熱変性させた酸化セルロース繊維を樹脂に配合した際の機械的強度の向上効果が良好である。なお、酸化セルロースの平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
工程(a)で原料として用いる酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量は、酸化セルロース繊維を構成するセルロース中のカルボキシ基の中で、酸塩基滴定されるものの量を意味する。本実施形態においては、前記カルボキシ基含有量は、工程(a)で得られる熱変性させた酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体の引っ張り強度及び破断伸度の観点から、0.1mmol/g以上であり、好ましくは0.4mmol/g以上、より好ましくは0.6mmol/g以上、さらに好ましくは0.8mmol/g以上である。また、酸化セルロース繊維の調製時における洗浄性と収率を向上させる観点から、3mmol/g以下であり、好ましくは2mmol/g以下、より好ましくは1.8mmol/g以下、さらに好ましくは1.6mmol/g以下である。また、カルボキシ基含有量は、熱変性酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体の引っ張り強度及び破断伸度並びに酸化セルロース繊維の調製時における洗浄性と収率を向上させる観点から、0.1mmol/g以上、3mmol/g以下であり、好ましくは0.4mmol/g以上、2mmol/g以下、より好ましくは0.6mmol/g以上、1.8mmol/g以下、さらに好ましくは0.8mmol/g以上、1.6mmol/g以下である。その詳細な理由は明確ではないが、工程(a)で原料として用いる酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量が上記範囲内であれば、工程(a)において得られる熱変性酸化セルロース繊維が、酸化セルロース繊維の微細構造を保持し、かつ加熱処理後に樹脂中への分散性を向上させるのに適した状態になると考えられる。そのため、当該熱変性酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体は引っ張り強度及び破断伸度が高いと考えられる。なお、本発明で用いられる酸化セルロース繊維に、カルボキシ基含有量がかかる範囲外である酸化セルロース繊維が、意図せずに不純物として含まれることもあり得る。なお、酸化セルロースのカルボキシ基含有量は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
工程(a)では溶媒として水を使用する。水には、メタノール、エタノール、プロパノール等の好ましくは炭素数1以上、6以下、より好ましくは炭素数1以上、3以下のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3以上、6以下のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数1以上、6以下の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が混合されていても構わない。これらの水以外の溶媒の含有量は、水を含めた全溶媒中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であればよい。尚、溶媒は液体だけでなく、蒸気として供給することも可能である。
工程(a)では酸化セルロース繊維を100℃以上、250℃以下の温度範囲内で加熱する。工程(a)における加熱温度は、処理効率並びに工程(a)で得られる熱変性酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体の引っ張り強度及び破断伸度の観点から、100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上である。また、酸化セルロース繊維の分解防止の観点から、250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。また、同様の観点から、工程(a)における加熱温度は、100℃以上、250℃以下であり、好ましくは120℃以上、200℃以下、より好ましくは140℃以上、180℃以下である。
工程(a)における処理圧力は、処理効率並びに工程(a)で得られる熱変性酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体の引っ張り強度及び破断伸度の観点から、好ましくは使用する溶媒の飽和蒸気圧以上である。また、工程(a)における処理圧力は、好ましくは0.1MPa[gage]以上、より好ましくは0.2MPa[gage]以上、さらに好ましくは0.3MPa[gage]以上であり、好ましくは10MPa[gage]以下、より好ましくは5MPa[gage]以下、さらに好ましくは3MPa[gage]以下、さらに好ましくは1MPa[gage]以下である。なお、工程(a)における処理圧力は密閉条件で行う場合は温度と溶媒の蒸気圧に応じた値となる。
工程(a)における処理時間は、処理効率並びに工程(a)で得られる熱変性酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体の引っ張り強度及び破断伸度の観点から、好ましくは1分間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。なお、処理時間とは、加熱温度に到達した時刻を0時間として、当該加熱温度を維持している時間を表すこととする。また、加熱処理が不連続で行われる場合には、処理時間とは前記加熱温度を維持している時間の合計時間を意味する。
工程(a)において、攪拌をせずに加熱処理を行ってもなんら問題はないが、攪拌を行うことで加熱処理の均一性を保つことができ、製品の品質を向上することができるため、適切な攪拌を行うことができる。攪拌の形態は特に制限は無く、一般的に用いられる混合攪拌装置を使用することができる。例えば、攪拌羽根やマグネティックスターラー等による攪拌を用いることができる。攪拌羽根に関しては、公知のものを使用でき、例えばタービン翼、プロペラ翼、スクリュー翼、ディスクタービン翼、ファウドラー翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼などである。固形分濃度が高い場合には処理液の流動性が低く高粘度となるため、リボンミキサー、レディゲミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー等の攪拌装置を利用することが好ましい。
工程(a)において、処理時の固形分濃度の下限値は、生産性の観点から、好ましくは0.1質量%、より好ましくは1質量%、さらに好ましくは5質量%である。上限値は、出発原料に含まれる水分除去の負荷を低減できる観点から、好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%、さらに好ましくは30質量%、さらに好ましくは15質量%である。なお、固形分濃度とは、処理液全体の内の処理前の酸化セルロース繊維の濃度(質量%)を意味する。
(カルボキシ基減少量)
工程(a)における酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量の減少量は、工程(a)で得られる熱変性酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体の引っ張り強度及び破断伸度の観点から、0.05mmol/g以上、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.15mmol/g以上である。また、酸化セルロース繊維の分解防止の観点から、0.7mmol/g以下、好ましくは0.65mmol/g以下である。また、同様の観点から、工程(a)における前記カルボキシ基含有量の減少量は、0.05mmol/g以上、0.7mmol/g以下であり、好ましくは0.1mmol/g以上、0.65mmol/g以下、より好ましくは0.15mmol/g以上、0.65mmol/g以下である。なお、前記減少量は、加熱温度の上昇及び/又は処理時間の増加により多く調整することが可能であり、加熱温度の低下及び/又は処理時間の減少により少なく調整することが可能である。本発明において、酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量の減少量は、酸化セルロース繊維の熱変性の程度、即ち、熱負荷の程度を表す指標の一つである。
工程(a)における加熱後の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量は、酸化セルロース繊維の分解防止の観点から、好ましくは0.05mmol/g以上、より好ましくは0.1mmol/g以上、さらに好ましくは0.2mmol/g以上である。また、工程(a)で得られる熱変性酸化セルロース繊維を含有するシート状の樹脂成形体の引っ張り強度及び破断伸度の観点から、好ましくは2.95mmol/g以下、より好ましくは2.0mmol/g以下、さらに好ましくは1.5mmol/g以下である。また、同様の観点から、工程(a)における加熱後のカルボキシ基含有量は、好ましくは0.05mmol/g以上、2.95mmol/g以下、より好ましくは0.1mmol/g以上、2.95mmol/g以下、さらに好ましくは0.2mmol/g以上、2.0mmol/g以下、さらに好ましくは0.2mmol/g以上、1.5mmol/g以下である。
工程(a)で得られる熱変性酸化セルロース繊維は、処理溶媒中にてブロック状で分散又は凝集分散した状態で得られ、加熱処理により脱離した低分子のカルボン酸やその他着色成分が含まれる。よって、そのまま固液分離を行って次工程を行ってもよいが、洗浄工程を行って純度の高い熱変性酸化セルロース繊維を得ることもできる。
工程(b)では、工程(a)で得られた熱変性酸化セルロース繊維をそのまま、又は前記洗浄工程の後、溶媒中に微細分散する。ここで得られる微細分散液を、工程(c)にて樹脂と混練することで、熱変性酸化セルロース繊維が樹脂中で分散され、引張弾性率及び破断伸度の高いシート状の樹脂成形体が得られると考えられる。なお、ここでいう微細分散とは、熱変性酸化セルロース繊維を溶媒中で剪断処理することで、凝集物を繊維ごとに分散させ、熱変性酸化セルロース繊維の微細分散液を得ることを意味する。
工程(b)における分散媒としての溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の好ましくは炭素数1以上、6以下、より好ましくは炭素数1以上、3以下のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3以上、6以下のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数3以上、6以下の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;炭素数2以上、5以下の低級アルキルエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、ビス(メチルトリエチレングリコール)サクシネート等の樹脂の可塑剤等が例示される。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、微細化処理の操作性の観点から、水、炭素数1以上、6以下のアルコール、炭素数3以上、6以下のケトン、炭素数2以上、5以下の低級アルキルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、ビス(メチルトリエチレングリコール)サクシネート等の樹脂の可塑剤が好ましく、その後樹脂中へ分散させる工程へ移行する観点から、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、ビス(メチルトリエチレングリコール)サクシネート等がより好ましい。
工程(b)の微細分散処理で使用する装置としては公知の分散機が好適に使用される。例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。
工程(c)では工程(b)で得られた酸化セルロース繊維微細分散液を樹脂と混練し樹脂組成物の作製を行う。使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂が主に用いられる。熱変性酸化セルロース繊維の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.08質量部以上である。また、得られる樹脂組成物の機械的強度の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下である。また、好適な含有量範囲としては、好ましくは0.01質量部以上、5質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上、1質量部以下、さらに好ましくは0.08質量部以上、0.5質量部以下、さらに好ましくは0.08質量部以上、0.2質量部以下である。
ポリエステル樹脂としては、特に限定はないが、生分解性を有していることが好ましく、生分解性ポリエステル樹脂が好ましい。具体的には、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等の脂肪族ポリエステル樹脂;ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート等の脂肪族芳香族コポリエステル樹脂;デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン等の天然高分子と上記の脂肪族ポリエステル樹脂あるいは脂肪族芳香族コポリエステル樹脂との混合物等が挙げられる。これらのなかでも、加工性、経済性、入手性、及び物性に優れることから、ポリブチレンサクシネート及びポリ乳酸樹脂が好ましく、ポリ乳酸樹脂がより好ましい。なお、本明細書において「生分解性」とは、自然界において微生物によって低分子化合物に分解され得る性質のことであり、具体的には、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性のことを意味する。
可塑剤としては、従来からの可塑剤であるフタル酸エステルやコハク酸エステル、アジピン酸エステルといった多価カルボン酸エステル、グリセリン等脂肪族ポリオールの脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、分子内に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加したアルコールであるエステル化合物が好ましく、具体的には、特開2008−174718号公報及び特開2008−115372号公報に記載の可塑剤が例示される。なお、本発明では、熱変性酸化セルロース繊維を良好に分散させる観点から、好ましくは熱変性酸化セルロース繊維の分散媒として可塑剤と予め熱変性酸化セルロース繊維とを混合させて含有させる。
結晶核剤としては、天然又は合成珪酸塩化合物、酸化チタン、硫酸バリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ソーダ等の金属塩やカオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、マイカ等の無機系結晶核剤の他、エチレンビス脂肪酸アミドやプロピレンビス脂肪酸アミド、ブチレンビス脂肪酸アミド等や、フェニルホスホン酸金属塩等の有機系結晶核剤が挙げられる。これらのなかでも、透明性向上の観点から、有機系結晶核剤が好ましく、アルキレンビス脂肪酸アミド又はヒドロキシアルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましく、ヒドロキシアルキレンビス脂肪酸アミドがさらに好ましい。また、透明性向上の観点からアルキレンビス脂肪酸アミド又はヒドロキシアルキレンビス脂肪酸アミドのアルキレン基はエチレン基、プロピレン基又はブチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。具体的には、エチレンビスステアリン酸アミドやエチレンビスオレイン酸アミド等のエチレンビス脂肪酸アミド、プロピレンビス脂肪酸アミド、ブチレンビス脂肪酸アミド等のアルキレンビス脂肪酸アミド、エチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミド等のアルキレンビスヒドロキシ脂肪酸アミドが挙げられる。
工程(d)では工程(c)で得られた樹脂組成物をシート化して、シート状の樹脂成形体の作製を行う。
本発明のシート状の樹脂成形体は、工程(c)で得られた樹脂組成物を押出成形、射出成形、又はプレス成形することによって調製することができる。
乾燥質量0.3gの酸化セルロース繊維を100mLビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製し、酸化セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−50」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/酸化セルロース繊維の質量(0.3g)
前記のカルボキシ基含有量の測定により測定された原料の酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量をカルボキシ基含有量(1)、熱変性された酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量をカルボキシ基含有量(2)として、次式により、固形分1gあたりのカルボキシ基の減少量(以下カルボキシ基減少量)を算出する。
カルボキシ基減少量(mmol/g)=カルボキシ基含有量(1)(mmol/g)−カルボキシ基含有量(2)(mmol/g)
酸化セルロース繊維又は熱変性酸化セルロース繊維に水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、酸化セルロース繊維又は熱変性酸化セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。
針葉樹の漂白クラフトパルプ(WEST FRASER MILLS LTD社製、商品名「Hinton Hi−Brite」、カナダ標準濾水度(CSF)750ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPO触媒としては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムは、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムは、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
原料は、酸化セルロース繊維の調製例1−1と同じものを用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gに9900gの脱イオン水を加えて十分に攪拌した。その後、さらに該漂白クラフトパルプ繊維100gに対し、TEMPO1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム14.2質量%をこの順で添加した。pHスタッド(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−50」)を用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持しながら、反応を120分行った。水酸化ナトリウムの滴下を停止し反応を終了し、酸化セルロース繊維の分散液を得た。次に得られた酸化セルロース繊維を、脱イオン水を用いて十分に洗浄し、次いでガラスフィルター(孔径 平均約40μm)を用いて吸引濾過により脱水処理を行った。なお、酸化セルロース繊維の洗浄は、洗浄脱水された水の電気伝導度が0.3mS/m以下、さらにpHが5.5程度になるまで繰り返し行った。
原料は、酸化セルロース繊維の調製例1−1と同じものを用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gに9900gの脱イオン水を加えて十分に攪拌した。その後、さらに該漂白クラフトパルプ繊維100gに対し、さらにTEMPO1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム36.3質量%をこの順で添加した。pHスタッド(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT−50」)を用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持しながら、反応を120分行った。水酸化ナトリウムの滴下を停止し反応を終了し、酸化セルロース繊維の分散液を得た。次に得られた酸化セルロース繊維を、脱イオン水を用いて十分に洗浄し、次いでガラスフィルター(孔径 平均約40μm)を用いて吸引濾過により脱水処理を行った。なお、酸化セルロース繊維の洗浄は、洗浄脱水された水の電気伝導度が0.3mS/m以下、さらにpHが5.5程度になるまで繰り返し行った。
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル2463g、パラトルエンスルホン酸一水和物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6(mgKOH/g)であった。反応液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業社製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル(以下、可塑剤Aと記す)を得た。得られたジエステルは、酸価0.2(mgKOH/g)、鹸化価276(mgKOH/g)、水酸基価1以下(mgKOH/g)、色相APHA200であった。
酸型酸化セルロース繊維(1−1)16.7g(固形分5g)と脱イオン水33.3gを金属製圧力機器(耐圧硝子工業株式会社製、商品名:「ポータブルリアクターTVS−N2型」)へ入れ、0.4MPa[gage]の窒素ガスで金属製圧力機器内部を加圧した後、大気圧(101kPa[abs])に戻した(以下、この操作を窒素置換という)。さらに4回窒素置換を行った後密閉した。その後無攪拌状態で180℃に加熱したオイルバスで槽内温度が150℃となるまで加熱し、その後槽内温度が150℃を維持するようにオイルバス温度を調整して5時間反応した(反応時の圧力は表1に示す)。
酸型酸化セルロース繊維(1−1)16.7g(固形分5g)と脱イオン水33.3gを金属製圧力機器へ入れ、5回窒素置換を行った後密閉した。その後無攪拌状態で210℃に加熱したオイルバスで槽内温度が180℃となるまで加熱し、その後槽内温度が180℃を維持するようにオイルバス温度を調整して1分間反応した(反応時の圧力は表1に示す)。冷却後、黒褐色の内容物を取り出したのち、実施例1−1に示した洗浄工程を行い、黒褐色のアセトンを含浸した熱変性酸化セルロース繊維(1−2)を37.5g得た。その内5.2gを凍結乾燥し、固形分量を確認した所0.74gであった(固形分全体量5.3g)。凍結乾燥品を用いてカルボキシ基含有量を測定すると1.21mmol/gであった。
酸型酸化セルロース繊維(1−1)16.7g(固形分5g)と脱イオン水33.3gを金属製圧力機器へ入れ、5回窒素置換を行った後密閉した。その後無攪拌状態で150℃に加熱したオイルバスで槽内温度が120℃となるまで加熱し、その後槽内温度が120℃を維持するようにオイルバス温度を調整して5時間反応した(反応時の圧力は表1に示す)。冷却後、黒褐色の内容物を取り出したのち、実施例1−1に示した洗浄工程を行い、黒褐色のアセトンを含浸した熱変性酸化セルロース繊維(1−3)を27.6g得た。その内5.6gを凍結乾燥し、固形分量を確認した所0.97gであった(固形分全体量4.8g)。凍結乾燥品を用いてカルボキシ基含有量を測定すると1.27mmol/gであった。
酸型酸化セルロース繊維(1−1)16.7g(固形分5g)と脱イオン水33.3gを金属製圧力機器へ入れ、5回窒素置換を行った後密閉した。その後無攪拌状態で180℃に加熱したオイルバスで槽内温度が150℃となるまで加熱し、その後槽内温度が150℃を維持するようにオイルバス温度を調整して10時間反応した(反応時の圧力は表1に示す)。冷却後、黒褐色の内容物を取り出したのち、実施例1−1に示した濾過洗浄工程を行い、黒褐色のアセトンを含浸した熱変性酸化セルロース繊維(1−4)を26.0g得た。その内6.1gを凍結乾燥し、固形分量を確認した所0.88gであった(固形分全体量3.8g)。凍結乾燥品を用いてカルボキシ基含有量を測定すると1.00mmol/gであった。
酸型酸化セルロース繊維(1−2)13.7g(固形分5g)と脱イオン水36.3gを金属製圧力機器へ入れ、5回窒素置換を行った後密閉した。その後無攪拌状態で180℃に加熱したオイルバスで槽内温度が150℃となるまで加熱し、その後槽内温度が150℃を維持するようにオイルバス温度を調整して5時間反応した(反応時の圧力は表1に示す)。冷却後、黒褐色の内容物を取り出したのち、実施例1−1に示した濾過洗浄工程を行い、黒褐色のアセトンを含浸した熱変性酸化セルロース繊維(1−5)を26.3g得た。その内5.3gを凍結乾燥し、固形分量を確認した所0.89gであった(固形分全体量4.5g)。凍結乾燥品を用いてカルボキシ基含有量を測定すると0.23mmol/gであった。
酸型酸化セルロース繊維(1−3)18.3g(固形分5g)と脱イオン水31.7gを金属製圧力機器へ入れ、5回窒素置換を行った後密閉した。その後無攪拌状態で180℃に加熱したオイルバスで槽内温度が150℃となるまで加熱し、その後槽内温度が150℃を維持するようにオイルバス温度を調整して5時間反応した(反応時の圧力は表1に示す)。冷却後、黒褐色の内容物を取り出したのち、実施例1−1に示した濾過洗浄工程を行い、黒褐色のアセトンを含浸した熱変性酸化セルロース繊維(1−6)を24.4g得た。その内4.9gを凍結乾燥し、固形分量を確認した所0.72gであった(固形分全体量3.6g)。凍結乾燥品を用いてカルボキシ基含有量を測定すると1.08mmol/gであった。
酸型酸化セルロース繊維(1−1)16.7g(固形分5g)と脱イオン水33.3gを金属製圧力機器へ入れ、5回窒素置換を行った後密閉した。その後無攪拌状態で210℃に加熱したオイルバスで槽内温度が180℃となるまで加熱し、その後槽内温度が180℃を維持するようにオイルバス温度を調整して5時間反応した(反応時の圧力は表1に示す)。冷却後、黒褐色の内容物を取り出したのち、実施例1−1に示した洗浄工程を行い、黒褐色のアセトンを含浸した熱変性酸化セルロース繊維(1−7)を13.17g得た。その内3.0gを凍結乾燥し、固形分量を確認した所0.52gであった(固形分全体量2.3g)。凍結乾燥品を用いてカルボキシ基含有量を測定すると0.54mmol/gであった。
酸型酸化セルロース繊維(1−1)20.72g(固形分6.2g)にアセトンを450g加えて攪拌した後、PTFEメンブレンフィルター(アドバンテック社製、型番:「T020A047A」を使用)を用いて濾過分離を行った。同様の操作をさらに2回行い、フィルター上に白色のアセトンを含浸した酸化セルロース繊維(1−8)を75.5g得た。その内4.5gを凍結乾燥し、固形分量を確認した所0.40gであった(固形分全体量6.7g)。
上記実施例、比較例で得られた熱変性酸化セルロース繊維及び酸化セルロース繊維の物性を表1に示す。
アセトンを含浸した熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を固形分が1gとなるように可塑剤A100gへ入れて攪拌し、得られた混合溶液を、NMII−L200−D10(吉田機械興業社製、商品名:「ナノヴェイタ」)を用いて、200MPa[gage]で湿式分散処理を10パス行い、酸化セルロース繊維可塑剤微細分散液を得た。
熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を、実施例1−2で得られた熱変性酸化セルロース繊維(1−2)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でシート状の樹脂成形体を作製した。
熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を、実施例1−3で得られた熱変性酸化セルロース繊維(1−3)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でシート状の樹脂成形体を作製した。
熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を、実施例1−4で得られた熱変性酸化セルロース繊維(1−4)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でシート状の樹脂成形体を作製した。
熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を、実施例1−5で得られた熱変性酸化セルロース繊維(1−5)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でシート状の樹脂成形体を作製した。
熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を、実施例1−6で得られた熱変性酸化セルロース繊維(1−6)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でシート状の樹脂成形体を作製した。
熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を、比較例1−1で得られた熱変性酸化セルロース繊維(1−7)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でシート状の樹脂成形体を作製した。
熱変性酸化セルロース繊維(1−1)を、比較例1−2で得られた酸化セルロース繊維(1−8)に変更したこと以外は製造例1−1と同様の方法でシート状の樹脂成形体を作製した。
可塑剤A5.00gと、ポリ乳酸樹脂(Nature works製、商品名:NW4032D)50g(固形分換算)、結晶核剤(日本化成社製、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、商品名:スリパックスH)0.2gを順次添加し、混練機(東洋精機社製、商品名:ラボプラストミルModel 30C150)を用いて、回転数50rpm、180℃で10分間混練して樹脂組成物を得た。
JIS K7113に準拠し、厚さ0.4mm、2号試験片を作製し、引張試験機(商品名/AUTOGRAPH AG−Xplus(島津製作所社製))を用いて引張速度50mm/分で試験を行い、弾性率を測定した。なお、引張弾性率の算出や破断伸度の算出にあたり、ひずみは試験片掴み具間距離の変化から求めたものを用いた。該試験片掴み具間距離については、試験開始時で80mmとした。ひずみ算出方法は以下の通りである。
ひずみ値=ΔL/L0
ΔL:試験片掴み具間距離の変化
L0:試験開始時の掴み具間の距離を表す。本試験においてはL0=80mm
また、引張弾性率の算出や破断伸度の算出に当たり用いた応力値の算出方法は下記の通りである。
応力σ[Pa]=F/S
F:試験時の引張荷重[N]
S:試験片において荷重がかかる箇所の断面積[m2]、即ち、荷重がかかる箇
所の厚さ×幅(幅6mm、厚さ0.4mm)
酸型酸化セルロース繊維(1−1)200g(固形分60g)と脱イオン水400gを金属製圧力機器(耐圧硝子工業株式会社製、商品名:「TAS−1.5−10−200型」)へ入れ、5回窒素置換を行った後密閉した。その後攪拌状態でヒーターにより槽内温度が150℃となるまで加熱し、その後槽内温度150℃を5時間維持した。冷却後、黒褐色の内容物を取り出したのち、得られた分散液を20g(固形分2g)とりわけ、100gのアセトンを加えてアセトン分散液を得た。以下、この加熱処理された酸化セルロース繊維が分散したアセトン溶液を加熱処理酸化セルロース繊維分散液(2−1)と呼称する。
加熱処理酸化セルロース繊維分散液(2−1)を、PTFEメンブレンフィルター(アドバンテック社製、型番:「T020A047A」を使用)を用いて減圧濾過分離を行った。その後濾過残渣に対して脱イオン水とアセトンを質量比2:8で混合した80質量%アセトン水溶液198gを加えて攪拌し懸濁させて、固形分を濾別する操作を2回行った。第一回目の濾別の際の、濾過開始から100ccの濾液が得られるまでの時間は、45分21秒であった。濾別操作後、フィルター上に黒褐色のアセトンを含浸した加熱処理酸化セルロース繊維を6.8g得た。その内約1gを水分計(島津製作所製「MOC63u」)にて含液率を測定した所77.2質量%(固形分全体量1.55g)であった。以下、このアセトンを含浸した加熱処理された酸化セルロース繊維を、加熱処理酸化セルロース繊維(2−1)と呼称する。
加熱処理酸化セルロース繊維分散液(2−1)を、PTFEメンブレンフィルター(アドバンテック社製、型番:「T020A047A」を使用)を用いて減圧濾過分離を行った。その後濾過残渣に対して脱イオン水とアセトンを質量比1:9で混合した90質量%アセトン水溶液198gを加えて攪拌し懸濁させて、固形分を濾別する操作を2回行った。第一回目の濾別の際の、濾過開始から100ccの濾液が得られるまでの時間は、21分30秒であった。濾別操作後、フィルター上に黒褐色のアセトンを含浸した加熱処理酸化セルロース繊維を7.6g得た。その内約1gを水分計(島津製作所製「MOC63u」)にて含液率を測定した所75.3質量%(固形分全体量1.88g)であった。以下、このアセトンを含浸した加熱処理された酸化セルロース繊維を、加熱処理酸化セルロース繊維(2−2)と呼称する。
加熱処理酸化セルロース繊維分散液(2−1)を、PTFEメンブレンフィルター(アドバンテック社製、型番:「T020A047A」を使用)を用いて減圧濾過分離を行った。その後濾過残渣に対してアセトン198gを加えて攪拌し懸濁させて、固形分を濾別する操作を2回行った。第一回目の濾別の際の、濾過開始から100ccの濾液が得られるまでの時間は、3分45秒であった。濾別操作後、フィルター上に黒褐色のアセトンを含浸した加熱処理酸化セルロース繊維を9.77g得た。その内約1gを水分計(島津製作所製「MOC63u」)にて含液率を測定した所83.7質量%(固形分全体量1.59g)であった。以下、このアセトンを含浸した加熱処理された酸化セルロース繊維を、加熱処理酸化セルロース繊維(2−3)と呼称する。
加熱処理酸化セルロース繊維分散液(2−1)を、PTFEメンブレンフィルター(アドバンテック社製、型番:「T020A047A」を使用)を用いて減圧濾過分離を行った。その後濾過残渣に対して脱イオン水とアセトンを質量比3:7で混合した70質量%アセトン水溶液198gを加えて攪拌し懸濁させて、固形分を濾別する操作を2回行った。第一回目の濾別の際の、濾過開始から100ccの濾液が得られるまでの時間は、3時間6分であった。濾別操作後、フィルター上に黒褐色のアセトンを含浸した加熱処理酸化セルロース繊維を6.05g得た。その内約1gを水分計(島津製作所製「MOC63u」)にて含液率を測定した所78.3質量%(固形分全体量1.31g)であった。以下、このアセトンを含浸した加熱処理された酸化セルロース繊維を、加熱処理酸化セルロース繊維(2−4)と呼称する。
上記実施例で得られた熱変性酸化セルロース繊維の洗浄時の条件を表3にまとめて示す。また、得られた加熱処理酸化セルロース繊維の含液率も併せて示す。
アセトンを含浸した加熱処理酸化セルロース繊維(2−1)を固形分が0.2質量%となるように脱イオン水へ入れて攪拌し、得られた混合溶液を、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所社製、「US−300E」)を用いて、出力80%で1分間処理を2度行い、水分散液(3−1)を得た。
加熱処理酸化セルロース繊維(2−1)を、実施例2−2で得られた加熱処理酸化セルロース繊維(2−2)に変更したこと以外は、水分散液の調製例3−1と同様の方法で処理を行い、水分散液(3−2)を得た。
加熱処理酸化セルロース繊維(2−1)を、実施例2−3で得られた加熱処理酸化セルロース繊維(2−3)に変更したこと以外は、水分散液の調製例3−1と同様の方法で処理を行い、水分散液(3−3)を得た。
加熱処理酸化セルロース繊維(2−1)を、実施例2−4で得られた加熱処理酸化セルロース繊維(2−4)に変更したこと以外は、水分散液の調製例3−1と同様の方法で処理を行い、水分散液(3−4)を得た。
上記実施例で得られた熱変性酸化セルロース繊維の洗浄時の条件を表4にまとめて示す。また、得られた加熱処理酸化セルロース繊維の特性を以下の試験例3−1に基づいて評価した。結果を表4に示す。
得られた水分散液(3−1)から(3−4)を、それぞれガードナー管に必要量量り取り、ガードナー色数標準液と比較することで色相評価を行った。ガードナー色数が小さい場合、色相が良好であると評価することができる。また、ガードナー色数の1目盛を4段階に細分化し、測定値として採用した(例えば、ガードナー色数1と2の間に1.25、1.5、1.75の値を設けて細分化した)。
Claims (12)
- カルボキシ基含有量が0.1mmol/g以上、3mmol/g以下の酸化セルロース繊維を、水存在下で、100℃以上、250℃以下で加熱し、該セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、加熱前の含有量から0.05mmol/g以上、0.7mmol/g以下減少させる、熱変性させた酸化セルロース繊維の製造方法。
- 加熱時間が1分間以上、24時間以下である、請求項1記載の製造方法。
- 加熱時の処理圧力が使用する溶媒の飽和蒸気圧以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 加熱時の処理圧力が0.1MPa[gage]以上、10MPa[gage]以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 加熱後のカルボキシ基含有量が0.05mmol/g以上、2.95mmol/g以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 酸化セルロース繊維の加熱後、さらに、熱変性させた酸化セルロース繊維の洗浄を行う、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 熱変性させた酸化セルロース繊維の洗浄時に使用する洗浄液が、水と、炭素数が1以上、6以下のアルコール、炭素数が3以上、6以下のケトン、直鎖若しくは分岐状の炭素数が3以上、6以下の飽和炭化水素若しくは不飽和炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれる溶媒との混合溶媒である、請求項6に記載の製造方法。
- 熱変性させた酸化セルロース繊維の洗浄時に使用する洗浄液の水分含有量が1〜90質量%である、請求項6又は7に記載の製造方法。
- 以下の工程(a)〜(d)を含む、シート状の樹脂成形体の製造方法。
(a)酸化セルロース繊維を、水存在下、100℃以上、250℃以下で加熱し、酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量を、加熱前の含有量から0.05mmol/g以上、0.7mmol/g以下減少させて熱変性させた酸化セルロース繊維を調製する工程
(b)工程(a)で得られた熱変性させた酸化セルロース繊維を溶媒へ微細分散させて酸化セルロース繊維微細分散液を得る工程
(c)工程(b)で得られた酸化セルロース繊維微細分散液を樹脂と混練する工程
(d)工程(c)で得られた混練物をシート化する工程 - 工程(b)において、溶媒へ微細分散させる前に熱変性させた酸化セルロース繊維を洗浄する工程を含む、請求項9に記載のシート状の樹脂成形体の製造方法。
- 熱変性させた酸化セルロース繊維を洗浄する工程で使用する洗浄液が、水と、炭素数が1以上、6以下のアルコール、炭素数が3以上、6以下のケトン、直鎖若しくは分岐状の炭素数が3以上、6以下の飽和炭化水素若しくは不飽和炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群より選ばれる溶媒との混合溶媒である、請求項10に記載のシート状の樹脂成形体の製造方法。
- 熱変性させた酸化セルロース繊維を洗浄する工程で使用する洗浄液の水分含有量が1〜90質量%である、請求項10又は11に記載のシート状の樹脂成形体の製造方法。
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