JP6517562B2 - 主電動機用軸受 - Google Patents

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Description

本発明は鉄道車両の主電動機用軸受に関するものであって、特に、グリース寿命を延伸することが可能な主電動機用軸受に関する。
鉄道車両の主電動機用の軸受は、温度変化に起因した主軸の軸方向への膨張および収縮に対応するため、固定側の軸受として玉軸受が用いられる一方で、自由側の軸受としては主軸の膨張および収縮に対応可能な円筒ころ軸受が用いられる。固定側の玉軸受は、たとえば深溝玉軸受であり、鋼球と鉄板波型保持器とを備えている。また、自由側の円筒ころ軸受は、鋼製の円筒ころと黄銅揉抜保持器とを備えている。そして、これらの主電動機用軸受が高温、高速回転下で使用される場合には、たとえばリチウム石鹸および鉱油を有するグリースが潤滑剤として用いられる。
鉄道車両の主電動機用軸受におけるグリースの潤滑寿命は、軸受の転動疲労寿命に対して短いため、現状では所定の走行距離毎に実施される車両の分解検査においてグリースの詰め替え作業が行なわれる。また、現状のメンテナンス周期においてもグリースの劣化が進行している場合が多く、メンテナンス周期をさらに延伸するためにはグリースの潤滑寿命を延伸することが必要となる。一方で、耐久性を向上させることが可能な軸受として、グリースを容易に供給可能な構造を有する軸受も提案されている(特許文献1)。
転がり軸受や保持器などの摺動面は、潤滑グリースなどが供給されて転がり摩擦またはすべり摩擦を低減している。また、更に摺動性を向上させるための表面処理が摺動面になされている。表面処理の1つにフッ素系樹脂被膜を形成する方法がある。例えば、摺動部材の摺動部に形成したポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)被膜に50〜250kGyの線量の放射線を照射することにより、耐摩耗性および基材との密着性を高める方法が知られている(特許文献2)。
特開2000−291667号公報 特開2010−155443号公報
特許文献1に示すグリースの劣化は、主電動機の高速回転時の発熱による軸受の昇温や、鋼からなる転動体および保持器の摩擦により生じる金属摩耗粉がグリース中に混入することに主に起因している。そのため、特許文献1に示す方法では、グリースの潤滑寿命を延伸することはできるが、グリースの劣化を抑制することはできないという問題がある。したがって、メンテナンス周期のさらなる延伸という観点から、軸受の昇温やグリース中の金属成分の増加を抑制することにより、グリースの潤滑寿命を延伸することが要求されている。
特許文献2に示す製造方法は、無潤滑下、低面圧の条件下で使用するため、基材との密着性を高める方法であり、主電動機用軸受の摺動面に要求される潤滑グリース中、高滑り速度、高面圧の条件の場合は適用が困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、グリース寿命を延伸することが可能な主電動機用軸受の提供を目的とする。
本発明は、鉄道車両の主電動機の主軸を回転自在に支持する主電動機用軸受であって、この軸受は、(1)内周面に外輪転走面を有し、鋼からなる外輪と、(2)外周面に内輪転走面を有し、この内輪転走面が外輪転走面に対向するように上記外輪の内側に配置され、鋼からなる内輪と、(3)上記外輪転走面および上記内輪転走面に接触し、円環状の軌道上に並べて配置される複数の転動体と、(4)この複数の転動体を周方向に所定のピッチで保持する保持器とを備えており、上記転動体および上記保持器が鉄系金属材からなり、且つ上記保持器表面に架橋フッ素樹脂被膜を有することを特徴とする。
本発明の主電動機用軸受が開放形軸受であることを特徴とする。ここで、開放形軸受とは、外輪と内輪とにより挟まれる空間を閉じるシール部材を有さない軸受を意味する。また、主電動機の主軸の自由側を支持する主電動機用軸受であることを特徴とする。また、保持器表面に形成される架橋フッ素樹脂被膜は、未架橋フッ素樹脂被膜に放射線照射して架橋させた架橋フッ素樹脂被膜であることを特徴とする。
本発明の主電動機用軸受は、架橋フッ素樹脂被膜を有する鉄系金属材保持器を備えているため、金属からなる保持器を備える軸受において問題となる保持器と転動体との摩擦による金属摩耗粉の発生を抑制することができる。このため、グリース寿命を延伸することが可能な主電動機用軸受が得られる。また、開放形軸受とすることにより、主電動機用軸受へのグリースの供給が容易になり、その結果軸受の潤滑が容易になる。また、主電動機主軸の自由側を支持する軸受として、円筒ころ軸受に比べて転がり抵抗が小さい玉軸受を採用することができる。
主電動機用軸受が組み込まれる台車の構成を示す図である。 主電動機の構成を示す図である。 第1軸受装置の構成を示す拡大図である。 第2軸受装置の構成を示す拡大図である。 主電動機用軸受を示す図である。 サバン型摩擦摩耗試験結果を示す図である。 実験例1のNMRチャートの拡大図である。 実験例4のNMRチャートの拡大図である。 実験例6のNMRチャートの拡大図である。 架橋に伴なう−82ppmの規格化シグナル強度比である。 グリース潤滑下のサバン型摩擦摩耗試験を示す図である。 無処理試験片の試験後摩耗痕の状態の写真を示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の主電動機用軸受を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
図1は主電動機用軸受が組み込まれる台車の構成を示す図である。図1を参照して、台車1は、鉄道車両に備えられる台車であって、台車本体2と、主電動機10と、カップリング30と、駆動装置40と、車軸50と、車輪60と、車軸軸受装置70とを備えている。
主電動機10は、主電動機取付部2aにおいて台車本体2に支持されている。また、主電動機10の主軸20は、カップリング30を介して駆動装置40に接続されている。駆動装置40は、主軸20に固定された小歯車41と、車軸50に固定された大歯車42とを有し、小歯車41と大歯車42とは互いに噛み合うように配置されている。車軸50には、一対の車輪60が固定されており、その両端は車軸軸受装置70により台車本体2に対して支持されている。また、車軸軸受装置70は、台枠2bにおいて台車本体2に支持されている。
主電動機10による車輪60の動作について図1を参照して説明する。まず、主電動機10が動作することにより主軸20が回転する。このとき、主軸20の当該回転は、カップリング30を介して駆動装置40に伝達され、主軸20に固定された小歯車41が回転する。そして、小歯車41の当該回転により、小歯車41と噛み合う大歯車42が回転する。そして、大歯車42に固定された車軸50が回転することにより、車軸50の両端に固定された車輪60が回転し、台車1が走行する。なお、主電動機10の動作については後述する。
図2は主電動機10の構成を示す図である。図2を参照して、主電動機10は、コイル12aを有する固定子12と、固定子12に対向するように配置された回転子13と、固定子12および回転子13を取り囲むように配置されたフレーム11とを主に備えている。回転子13の中心部(回転軸)を含む部位には、主軸20が貫通するように固定されている。また、主電動機10は、主軸20を主軸20の外周面20aに対向して配置される部材に対して軸周りに回転自在に支持する本実施の形態の主電動機主軸の支持構造としての第1軸受装置80および第2軸受装置81をさらに備えている。
図2を参照して、主電動機10の動作について説明する。まず、3相交流電流が固定子12のコイル12aに供給される。このとき、回転子13の周りに回転磁界が形成され、この回転磁界により回転子13に誘導電流が発生する。このように、回転子13の周りに回転磁界が形成され、かつ回転子13に誘導電流が発生することにより、回転子13を回転軸周りに回転させるように働く電磁力が発生し、回転子13が回転する。そして、回転子13の当該回転は、主軸20を介して外部に取り出される。
図2を参照して、主電動機主軸の支持構造について説明する。主電動機主軸の支持構造は、主軸20の固定側を支持する第1軸受装置80と、主軸20の自由側を支持する第2軸受装置81とを備えている。
図3は第1軸受装置80の構成を示す拡大図である。図3を参照して、第1軸受装置80は、第1軸受82と、第1固定部材としてのハウジング83と、前蓋84と、端蓋85とを備えている。11は上述したフレームである。第1軸受82は、外輪82aと、内輪82bと、転動体82cと、保持器82dとを有している。第1軸受82は、前蓋84と端蓋85とにより挟まれ、また内輪82bの内周面が主軸20の外周面20aに接触し、かつ外輪82aの外周面がハウジング83に対して固定されている。また、第1軸受82は、本実施の形態の主電動機用軸受であって、たとえば深溝玉軸受である。
図4は第2軸受装置81の構成を示す拡大図である。図4を参照して、第2軸受装置81は、第2軸受86と、第2固定部材としてのハウジング83と、前蓋84と、端蓋85とを備えている。11は上述したフレームである。第2軸受86は、外輪86aと、内輪86bと、転動体86cと、保持器86dとを有している。第2軸受86は、前蓋84と端蓋85とにより挟まれ、かつ内輪86bの内周面が主軸20の外周面20aに接触するように配置されている。また、第2軸受86は、第1軸受82と同様に、本実施の形態の主電動機用軸受であって、たとえば深溝玉軸受である。
第2軸受86の外輪86aは、主軸20の軸方向においてハウジング83に対して相対的に変位することを許容する変位許容部材87を挟んでハウジング83に対向して配置されている。より具体的には、変位許容部材87は、第2軸受86の外輪86aが、ハウジング83に対して滑ることを許容する部材であって、たとえば金属からなる円筒部材の内周面に樹脂が配置されたすべり軸受である。
図5は主電動機用軸受を示す図である。主電動機用軸受90は、図3および図4において、第1軸受82および第2軸受86として示すように、この鉄道車両の主電動機10において、主軸20を、主軸20の外周面20aに対向して配置される部材、たとえばハウジング83に対して軸周りに回転自在に支持する主電動機用軸受であって、たとえば転がり抵抗の小さい深溝玉軸受である。
図5を参照して、主電動機用軸受90は、内周面に外輪転走面91aを有する外輪91と、外周面に内輪転走面92aを有する内輪92と、複数の転動体93と、保持器94とを備えている。内輪92は、内輪転走面92aが外輪91の外輪転走面91aに対向するように外輪91の内側に配置されている。外輪91および内輪92は、鋼からなっており、たとえばJIS規格SUJ2などの高炭素クロム軸受鋼、SCM420などの機械構造用合金鋼、またはS53Cなどの機械構造用炭素鋼からなっている。
転動体93は、例えばSUJ2からなる鉄系金属材製の玉であり、外輪転走面91aおよび内輪転走面92aに接触し、外輪転走面91aおよび内輪転走面92aの周方向に沿った円環状の軌道上に複数並べて配置されている。保持器94は、鉄系金属材の表面に架橋フッ素樹脂被膜を有する保持器であり、転動体93を周方向に所定のピッチで保持している。鉄系金属材とは、転がり軸受などに使用される軸受鋼、浸炭鋼、機械構造用炭素鋼、冷間圧延鋼、または熱間圧延鋼等が挙げられる。鉄系金属材は摺動部材の形状に加工後、焼入焼戻し処理することで所定の表面硬度に調整する。例えばクロムモリブデン鋼(SCM415)を用いた鉄系金属材製保持器の場合、Hv484〜595に調整した鉄系金属材を使用することが好ましい。また、冷間圧延鋼(SPCC)を用いた鉄系金属材製保持器の場合、HRB65以下に調整した鉄系金属材を使用することが好ましい。
主電動機用軸受90は、鉄系金属材の表面に架橋フッ素樹脂被膜を有する保持器94を備えているため、金属からなる保持器を備える軸受において問題となる保持器と転動体との摩擦による金属摩耗粉の発生を抑制することができる。このように、本実施の形態の主電動機用軸受90は、グリース寿命を延伸することが可能な主電動機用軸受である。
また、主電動機用軸受90は、図5に示すように、外輪91と内輪92とにより挟まれる空間がシール部材等により閉じられない開放形軸受であってもよい。これにより、主電動機用軸受90へのグリースの供給が容易になり、その結果主電動機用軸受90の潤滑が容易になる。
また、主電動機用軸受90は、上記主電動機用主軸の支持構造において説明したように、主軸20の自由側を支持していてもよい。このように、主軸の自由側を支持する主電動機用軸受には、円筒ころ軸受に比べて転がり抵抗が小さい玉軸受である主電動機用軸受90を採用することができる。
保持器94が有する架橋フッ素樹脂被膜は、鉄系金属材からなる保持器94の表面に形成された未架橋フッ素樹脂被膜を架橋させた架橋フッ素樹脂被膜である。架橋フッ素樹脂被膜は、鉄系金属材表面に下地層を形成することなく形成することができる。また、この架橋フッ素樹脂被膜は下地層とこの下地層表面に形成された架橋フッ素樹脂層とすることができる。下地層は、耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む混合物層であり、鉄系金属材と架橋フッ素樹脂層との密着性を向上させることができる。
耐熱性樹脂は、下地層および上層膜の焼成時において熱分解しない樹脂である。ここで熱分解しないとは、下地層および上層膜を焼成する温度および時間内において、熱分解を開始しない樹脂である。また耐熱性樹脂は、鉄系金属材との密着性に優れた官能基および第一のフッ素樹脂とも反応する官能基を分子主鎖内または分子端部に有する樹脂であることが好ましい。
耐熱性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミドイミド樹脂、イミド樹脂、エーテルイミド樹脂、イミダゾール樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、フッ素樹脂が塗膜形成時の収縮を防ぐウレタン樹脂、アクリル樹脂を併用することができる。
第一のフッ素樹脂は、下地層を形成する水系塗布液に粒子状に分散できる樹脂であれば使用できる。第一のフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)粒子、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)粒子、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPという)粒子、またはこれらの2種以上が好ましく使用できる。
下地層を形成する水系塗布液には、耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂以外に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン界面活性剤、カーボンブラックなどの無機顔料、N−メチル−2−ピロリドンなどの水に任意に混合する非プロトン系極性溶剤、主溶剤としての水が配合される。また、消泡剤、乾燥剤、増粘剤、レベリング剤、ハジキ防止剤などを配合できる。下地層を形成する水系塗布液としては、例えば、ダイキン工業株式会社製プライマー塗料EKシリーズ、EDシリーズが挙げられる。
第二のフッ素樹脂層は、下地層の表面に形成され放射線により架橋できるフッ素樹脂の層である。第一のフッ素樹脂と第二のフッ素樹脂とは同一であっても異なっていてもよいが、同一のフッ素樹脂を使用することが好ましい。第二のフッ素樹脂としては、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。これらの樹脂は単独でも混合物としても使用できる。また、これらの中で、耐熱性および摺動性に優れるPTFEが好ましい。
第二のフッ素樹脂層は、PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液を塗布乾燥することにより得られる。PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液としては、例えば、ダイキン工業株式会社製ポリフロン=PTFEエナメルが挙げられる。
鉄系金属材からなる保持器表面への架橋フッ素樹脂被膜の形成方法について以下説明する。
(1)鉄系金属材の表面処理
鉄系金属材は、架橋フッ素樹脂被膜形成前にショットブラスト等を用いて、予め金属材表面の粗さ(Ra)を1.0〜2.0μmに調整し、その後、石油ベンジン等の有機溶剤内に浸漬させ、5分〜1時間程度超音波脱脂を行なうことが好ましい。
(2)下地層を形成する水系塗布液の塗装
下地層を形成する水系塗布液を塗布前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミルを用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法を用いて塗布する。
(3)下地層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。乾燥後の下地層の層厚さは2.5〜20μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは10〜15μmの範囲内である。2.5μm以下であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗の摩耗により、金属基材が露出するおそれがある。20μm以上であると、被膜形成時のクラック発生や運転中に剥離して潤滑状態が悪化するおそれがある。層厚さを2.5〜20μmの範囲とすることで、初期摩耗による金属基材の露出を防止でき、運転中における剥離を長期間にわたって防止できる。
下地層を形成することなく、フッ素樹脂層を形成する場合、上記(2)および(3)の工程を省略できる。
(4)第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液の塗装
第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミルを用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法を用いて塗装する。
(5)第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。乾燥後の第二のフッ素樹脂層の層厚さは2.5〜20μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは10〜15μmの範囲内である。2.5μm以下であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗の摩耗により、金属基材が露出するおそれがある。20μm以上であると、被膜形成時のクラック発生や運転中に剥離して潤滑状態が悪化するおそれがある。層厚さを2.5〜20μmの範囲とすることで、初期摩耗による金属基材の露出を防止でき、運転中における剥離を長期間にわたって防止できる。
なお、下地層および第二のフッ素樹脂層の塗装方法としては、スプレー法以外にディッピング法、刷毛塗り法など被膜を形成できるものであれば使用できる。被膜の表面粗さ、塗布形状をできるだけ小さくし、層厚さの均一性を考慮するとスプレー法が好ましい。
(6)焼成
第二のフッ素樹脂層の乾燥後、加熱炉内、空気中で第二のフッ素樹脂の融点以上の温度、好ましくは(融点(Tm)+30℃)〜(融点(Tm)+100℃)、5〜40分の範囲内で焼成する。第一および第二のフッ素樹脂がPTFEの場合、好ましくは380℃の加熱炉内で30分間焼成する。
(7)第二のフッ素樹脂層の架橋
焼成後の被膜に、照射温度が第二のフッ素樹脂層の融点より30℃低い温度から該融点の20℃高い温度以下であり、より好ましくは照射線量が250kGy超750kGy以下の条件で放射線を照射してフッ素樹脂層を架橋させる。放射線としては、α線(α崩壊を行なう放射性核種から放出されるヘリウム−4の原子核の粒子線)、β線(原子核から放出される陰電子および陽電子)、電子線(ほぼ一定の運動エネルギーを持つ電子ビーム;一般に、熱電子を真空中で加速してつくる)などの粒子線;γ線(原子核、素粒子のエネルギー準位間の遷移や素粒子の対消滅、対生成などによって放出・吸収される波長の短い電磁波)などの電離放射線を用いることができる。これらの放射線の中でも、架橋効率や操作性の観点から、電子線およびγ線が好ましく、電子線がより好ましい。特に電子線は、電子線照射装置が入手しやすいこと、照射操作が簡単であること、連続的な照射工程を採用することができることなどの利点を有している。
照射温度が第二のフッ素樹脂層の融点より30℃低い温度から該融点の20℃高い温度以下の温度範囲以外ではフッ素樹脂層の架橋が十分に進まない。フッ素樹脂層の高硬度化が十分に進まない。また、照射雰囲気は架橋を効率的に行なうため、真空引きや不活性ガス注入により照射領域の酸素濃度を低くする必要がある。酸素濃度の範囲は0〜300ppmが好ましい。酸素濃度を以上のような濃度範囲に維持するには操作性やコスト面の観点から窒素ガス注入による不活性雰囲気が好ましい。
照射線量が250kGy以下であると架橋が不十分となり、摩耗量が大きく、金属基材が露出してしまう場合がある。また、照射線量が1000kGy以上であると架橋が必要以上に進み、被膜の硬度が上昇することで、脆化し、剥離等の被膜損傷が起こりやすくなる場合がある。好ましい照射線量の上限は900kGy以下であり、より好ましくは750kGy以下である。
照射温度が第二のフッ素樹脂層の融点より30℃低い温度から該融点の20℃高い温度以下の温度範囲内、照射線量が250kGy超750kGy以下の条件で放射線を照射してフッ素樹脂層を架橋させることにより、押し込み硬さで表される、架橋フッ素樹脂被膜層の表面硬度を52〜90MPa、好ましくは60〜85MPaとなるように調整できる。押し込み硬さが52MPaよりも低いと、摩耗量が大きく、金属基材が露出してしまう場合がある。また、押し込み硬さが90MPaよりも高いと、被膜の硬度が上昇することで、脆化し、剥離等の被膜損傷が起こりやすくなる場合がある。
また、照射温度が第二のフッ素樹脂層の融点より30℃低い温度から該融点の20℃高い温度以下の温度範囲内、照射線量が250kGy超750kGy以下の条件で放射線を照射してフッ素樹脂層を架橋させることにより、第二のフッ素樹脂層の融点 が265〜310℃、好ましくは272〜301℃となるようにフッ素樹脂層を低融点化できる。融点が310℃よりも高いと、摩耗量が大きく、金属基材が露出してしまう場合がある。また、融点が265℃よりも低いと、被膜の硬度が上昇することで、脆化し、剥離等の被膜損傷が起こりやすくなる場合がある。
上述した方法により得られた架橋フッ素樹脂被膜層の層厚さは、5μm以上40μm未満、好ましくは15μm以上30μm未満である。層厚さが5μm未満であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗の摩耗により、金属基材が露出するおそれがある。40μm以上であると、被膜形成時のクラック発生や運転中に剥離して潤滑状態が悪化するおそれがある。層厚さを5μm以上40μm未満の範囲とすることで、初期摩耗による金属基材の露出を防止でき、運転中における剥離を長期間にわたって防止できる。
上述した方法により得られた架橋フッ素樹脂被膜の空気中での耐摩耗性を評価するため、サバン型摩擦摩耗試験にて摩耗量を測定した。試験片、相手材などの試験条件を以下に示す。
(1)試験片の作成
試験片:SPCC製30mm×30mm、厚さ2mmの金属平板に架橋フッ素樹脂被膜を形成した。下地層はダイキン社製プライマー塗料(型番:EK−1909S21R)、第二のフッ素樹脂層にはダイキン社製トップ塗料(型番:EK−3700C21R)を用いた。乾燥時間はそれぞれ90℃の恒温槽内で30分間乾燥し、380℃の加熱炉内で30分間焼成した。
その後、以下の条件で試験片に架橋フッ素樹脂被膜側から電子線照射を行なった。
使用装置:株式会社NHVコーポレーション社製EPS−3000
加速電圧:1.16MeV
照射線量:実験例1が0kGy(未照射)、実験例2が85kGy、実験例3が250kGy、実験例4が500kGy、実験例5が750kGy、実験例6が1000kGy
線量率:実験例2が3.9kGy/s、実験例3、実験例4、実験例5および実験例6が6.1kGy/s
コンベア速度:実験例2が3m/分、実験例3および実験例5が2m/分、実験例4および実験例6が1m/分
照射時の被膜温度:310℃
照射時のチャンバー内雰囲気:加熱窒素
電子流:実験例2が8.1mA、実験例3、実験例4、実験例5および実験例6が12.7mA
照射幅(コンベア移動方向):27.5cm
(2)実験例の試験片被膜
実験例1:PTFE被膜(照射線量:0kGy、被膜の層厚さ:20μm)
実験例2:PTFE被膜(照射線量:85kGy、被膜の層厚さ:20μm)
実験例3:PTFE被膜(照射線量:250kGy、被膜の層厚さ:20μm)
実験例4:PTFE被膜(照射線量:500kGy、被膜の層厚さ:20μm)
実験例5:PTFE被膜(照射線量:750kGy、被膜の層厚さ:20μm)
実験例6:PTFE被膜(照射線量:1000kGy、被膜の層厚さ:20μm)
(3)サバン型摩擦摩耗試験の条件
相手材:焼入焼戻し処理したSUJ2製φ40mm×幅10mm×副曲率R60mmのリング
潤滑油:無
滑り速度:0.05m/s
荷重:50N
摺動時間:実験例1は5分間、実験例2、実験例3、実験例4、実験例5および実験例6は60分間連続で試験
潤滑状態:無潤滑
(4)試験結果
試験結果を図6に示す。比摩耗量は摩耗体積を摺動距離と荷重で除した値であり、形成された摩耗痕の短径、相手材の形状寸法(φ40mmおよびR60mm)から摩耗体積を算出した。なお、図6は、実験例1の比摩耗量を1.0とした場合のそれぞれの値の比を示した。
図6に示すように、電子線照射しなかった実験例1に比較して、実験例2、実験例3、実験例4、実験例5および実験例6は優れた比摩耗量を示した。
次に本発明に用いる架橋フッ素樹脂被膜について説明する。一般に、フッ素系樹脂、特にポリテトラフルオロエチレン樹脂は化学的に非常に安定で、有機溶媒などに対しても極めて安定であるため、分子構造あるいは分子量などを同定することは困難である。さらに本発明の摺動部材は架橋による三次元構造を形成しているため、さらに溶媒に溶解し難くなり、構造分析はいっそう困難となる。しかしながら19F Magic angle Spinning(MAS)核磁気共鳴(NMR)法(High speed magic angle nuclear magnetic resonance)による測定ならびに解析により、架橋フッ素樹脂被膜の三次元構造を同定することが可能となる。
測定は、日本電子株式会社製NMR装置JNM−ECX400を用いて、好適な測定核種(19F)、共鳴周波数(376.2MHz)、MAS(Magic Angle Spinning)回転数(15および12kHz)、サンプル量(4mm固体NMR管に約70μL)、待ち時間(recycle delay time)(10秒)ならびに測定温度(約24℃)で行なった。結果を図7〜図9に示す。図7は実験例1のNMR、図8は実験例4のNMR、図9は実験例6のNMRチャートの拡大図をそれぞれ表す。図7〜図9において上段はMAS回転数15kHz、下段はMAS回転数12kHzをそれぞれ表す。図10は架橋に伴い強度が増加する−82ppmでのシグナル強度を主シグナルである−122ppmでのシグナル強度で規格化し、グラフにしたものである。図10において上段は測定値、下段はグラフを表す。このシグナル強度比が高いほど架橋度が進行しているものと考えられる。
放射線照射を行なっていない第二のフッ素樹脂層(実験例1、0kGy)を上記の条件で測定すると、MAS回転数15kHzにおいて、−82ppm、−122ppm、−162ppmのシグナルが観測された(図7上段)。また、MAS回転数12kHzにおいて、同じく、−58ppm、−82ppm、−90ppm、−122ppm、−154ppm、−186ppmのシグナルが観測された(図7下段)。−122ppmは−CF2−CF2−結合におけるF原子のシグナルであり、−82ppmは−CF2−CF3結合における−CF3のF原子のシグナルであることが知られている。このことから、MAS回転数15kHzにおける−82ppmおよび−162ppm、MAS回転数12kHzにおける−58ppm、−90ppm、−154ppm、−186ppmのシグナルはスピニングサイドバンド(Spinning Side Band:SSB)である。なお、−122ppm〜−130ppmの領域で−122ppmのシグナルに隠れてブロードになっているシグナルが観測されている。このシグナルは−126ppmに観測されるはずの−CF2−CF3結合における−CF2−のF原子のシグナルである。従って、放射線照射を行なっていない未架橋の第二のフッ素樹脂層は−CF2−CF2−結合に帰属する−122ppm、−CF2−CF3に帰属する−82ppmおよび−126ppmのシグナルを有するNMRチャートで表される。
500kGyの線量の放射線を照射した第二のフッ素樹脂層(実験例4、500kGy)の固体19F MAS NMRを未架橋の第二のフッ素樹脂層と同じ条件で測定すると、スピニングサイドバンドを除いて、−68ppm、−70ppm、−80ppm、−82ppm、−109ppm、−112ppm、−122ppm、−126ppm、−152ppm、および−186ppmのシグナルが観測された(図8上段および図8下段)。−68ppm、−70ppm、−80ppm、−109ppm、−112ppm、−152ppm、および−186ppmのシグナルが放射線照射により新たに出現し、−82ppmのシグナルはその強度が未照射より増加していた。
1000kGyの線量の放射線を照射した第二のフッ素樹脂層(実験例6、1000kGy)の固体19F MAS NMRを未架橋の第二のフッ素樹脂層と同じ条件で測定すると、スピニングサイドバンドを除いて、−68ppm、−70ppm、−77ppm、−80ppm、−82ppm、−109ppm、−112ppm、−122ppm、−126ppm、−152ppm、および−186ppmのシグナルが観測された(図9上段および図9下段)。−68ppm、−70ppm、−77ppm、−80ppm、−109ppm、−112ppm、−152ppm、および−186ppmのシグナルが放射線照射により新たに出現し、−82ppmのシグナルはそのシグナル強度が500kGy照射時より増加していた。
上記シグナルは、帰属するF原子を下線で表せば、例えば−70ppmは=CF−C 3、−109ppmは−C 2−CF(CF3)−C 2−、−152ppmは=C−C=、−186ppmは≡Cに帰属されることが知られている(Beate Fuchs and Ulrich Scheler., Branching and Cross−Linking in Radiation−Modified Poly(tetrafluoroethylene):A Solid−State NMR Investigation.Macromolecules,33,120−124.2000年)。
これらのシグナルは化学的に非等価なフッ素原子の存在を示すと同時に第二のフッ素樹脂層が架橋による三次元構造を形成していることを示す。また、上記文献によれば、観測されるシグナルの強度は照射線量500kGyよりも照射線量1000kGyの方が強くなり、少なくとも照射線量3000kGyまでは、照射線量の増加に伴ってシグナルが強くなることが知られている。なお、上記文献に記載されていないシグナルについては、放射線の照射条件の違いにより第二のフッ素樹脂層の構造が異なっていることが考えられるが、架橋構造が形成されていることは、=CF−C 3、−C 2−CF(CF3)−C 2−、=C−C=、≡C等の構造が存在することから明白である。
図10に示すように、規格化シグナル強度比は、照射線量が増加するに従って増加している。照射線量が500kGyで明らかに架橋構造が出現し、照射線量が1000kGyに2倍になると、規格化シグナル強度比は約3倍になっており、架橋がより進行していることが分かった。
放射線照射によりフッ素樹脂が架橋して表面硬度が高くなる。被膜の押し込み硬さが52〜90MPa、好ましくは60〜85MPaとなるように放射線を照射してフッ素樹脂層を高硬度化させる。照射線量は250〜750kGyとすることが好ましい。この照射線量の範囲内で摺動層の表面硬度を調整できる。
照射の結果、押し込み硬さが52MPaよりも低いと、摩耗量が大きく、金属基材が露出してしまう場合がある。また、押し込み硬さが90MPaよりも高いと、被膜の硬度が上昇することで、脆化し、剥離等の被膜損傷が起こりやすくなる場合がある。
また、放射線照射によりフッ素樹脂が架橋して融点を低下させることができる。焼成後の被膜に、照射温度が第二のフッ素樹脂層の放射線照射前の融点より30℃低い温度から該融点の20℃高い温度以下であり、被膜の融点が265〜310℃、好ましくは272〜301℃となるように放射線を照射してフッ素樹脂層を低融点化させる。照射線量は250〜750kGyとすることが好ましい。照射の結果、融点が310℃よりも高いと、摩耗量が大きく、金属基材が露出してしまう場合がある。また、融点が265℃よりも低いと、被膜の硬度が上昇することで、脆化し、剥離等の被膜損傷が起こりやすくなる場合がある。
上記架橋フッ素樹脂被膜を有する鉄系金属材製保持器は、架橋フッ素樹脂被膜が鉄系金属材との密着性に優れ、また摺動面がグリース中においても耐摩耗性に優れているので、この保持器を有する軸受装置に好適に用いることができる。特に鉄道車両の主電動機において、電動機の主軸を、この主軸の外周面に対向して配置される部材に対して軸周りに回転自在に支持する主電動機用軸受に好適に用いることができる。
グリースは、高速回転時の発熱による軸受の昇温や、鋼からなる転動体および保持器の摩擦により生じる金属摩耗粉が混入することに起因して劣化する。これに対して、架橋フッ素樹脂被膜層を相互に摺動する鉄系金属材の少なくとも一方に設けることで、鉄同士が相互に摺動する場合よりも、金属摩耗粉の経時的な増加量(グリースへの混入量)を抑えることができる。この結果、グリースの劣化を抑制でき、グリースの潤滑寿命を延伸できる。
グリース潤滑される鉄道車両の主電動機用の軸受は、温度変化に起因した主軸の軸方向への膨張および収縮に対応するため、固定側の軸受として玉軸受が用いられる一方で、自由側の軸受としては主軸の膨張および収縮に対応可能な円筒ころ軸受が用いられる場合がある。固定側の玉軸受は、例えば深溝玉軸受であり、鋼球と鉄板波型保持器とを備えている。また、自由側の円筒ころ軸受は、鋼製の円筒ころと黄銅揉抜保持器とを備えている。これらの主電動機用軸受が高温、高速回転下で使用される場合には、例えば、リチウム石けんおよび鉱油を有するグリースが潤滑剤として用いられる。
このような鉄道車両の主電動機用軸受におけるグリースの潤滑寿命は、軸受の転動疲労寿命に対して短いため、現状では所定の走行距離毎に実施される車両の分解検査においてグリースの詰め替え作業(メンテナンス)が行なわれる。また、現状のメンテナンス周期においても、上記の理由等により、グリースの劣化が進行している場合が多い。この軸受として本発明の転がり軸受装置を適用することで、グリースの潤滑寿命を延伸でき、上記メンテナンス周期を延伸できる。
架橋フッ素樹脂被膜のグリース中での耐摩耗性を評価するため、実験例4の試験片を用い、以下の条件で、グリース潤滑下によるサバン型摩擦摩耗試験にて摩耗量を測定した。比較として、SPCC製30mm×30mm、厚さ2mmの金属平板のみからなる無処理試験片について、同じ試験を行なった。
(a)グリース潤滑下のサバン型摩擦摩耗試験の条件
相手材:焼入焼戻し処理したSUJ2製φ40mm×幅10mm×副曲率R60mmのリング
潤滑剤種:グリース(協同油脂製ユニマックスR2)
潤滑剤量:50mgを相手材リングに手付け
滑り速度:0.05m/s
荷重:50N
摺動時間:1時間または10時間
(b)試験結果
試験結果を図11に示す。また、無処理試験片の試験後摩耗痕の状態の写真を図12に示す。摩耗体積(鉄粉体積)は、形成された摩耗痕の短径、相手材の形状寸法(φ40mmおよびR60mm)から算出した。
図11に示すように、グリース潤滑下において、実験例4は、所定の架橋フッ素樹脂被膜を有さない無処理試験片と比較して優れた耐摩耗性を示した。なお、実験例4では、1時間および10時間のいずれの場合においても、摩耗による鉄粉は確認されなかった。
本発明は、グリース潤滑下において、高滑り速度、高面圧の条件下においても摩耗を抑制でき摺動材が得られるので、特に、鉄系金属材製保持器を用いたグリース潤滑中で使用される保持器およびこの保持器を用いた鉄道車両の主電動機用軸受の分野で使用できる。
1 台車
2 台車本体
2a 主電動機取付部
2b 台枠
10 主電動機
11 フレーム
12 固定子
12a コイル
13 回転子
20 主軸
20a 外周面
30 カップリング
40 駆動装置
41 小歯車
42 大歯車
50 車軸
60 車輪
70 車軸軸受装置
80 第1軸受装置
81 第2軸受装置
82 第1軸受
83 ハウジング
84 前蓋
85 端蓋
86 第2軸受
87 変位許容部材
90 主電動機用軸受
91,82a,86a 外輪
92,82b,86b 内輪
93,82c,86c 転動体
94,82d,86d 保持器
91a 外輪転走面
92a 内輪転走面

Claims (3)

  1. 鉄道車両の主電動機の主軸を回転自在に支持する主電動機用軸受であって、この軸受は、
    内周面に外輪転走面を有し、鋼からなる外輪と、
    外周面に内輪転走面を有し、前記内輪転走面が前記外輪転走面に対向するように前記外輪の内側に配置され、鋼からなる内輪と、
    前記外輪転走面および前記内輪転走面に接触し、円環状の軌道上に並べて配置される複数の転動体と、
    前記転動体を周方向に所定のピッチで保持する保持器とを備え、
    前記転動体および前記保持器は鉄系金属材からなり、且つ前記保持器表面に架橋フッ素樹脂被膜を有しており、
    前記架橋フッ素樹脂被膜は、前記鉄系金属材の表面に形成される耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む下地層と、この下地層表面に形成された第二のフッ素樹脂を含む架橋フッ素樹脂層とからなることを特徴とする主電動機用軸受。
  2. 前記軸受が開放形軸受であることを特徴とする請求項1記載の主電動機用軸受。
  3. 前記架橋フッ素樹脂被膜は、未架橋フッ素樹脂被膜に放射線照射して架橋させた架橋フッ素樹脂被膜であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の主電動機用軸受。
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