JP2020051444A - 駆動車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置の軽量化、コンパクト化を図るとともに、ハブ輪の加締部と継手外輪の肩部との当接面に発生する異音を長期間にわたって防止できる駆動車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】駆動車輪用軸受装置は、外方部材3と、ハブ輪1および内側軌道面2aが形成され、ハブ輪1の端部の加締部1cに圧入された内輪2からなる内方部材と、複列の転動体4と、ハブ輪1とトルク伝達可能に嵌合されるとともに着脱自在に締結された継手外輪12と、継手外輪12の肩部12cとハブ輪1の加締部1cとの間に介在された円環平板状のスラスト軸受7とを備え、スラスト軸受7は、スラスト面に、金属基材上に直接または金属多孔質層を介して形成された摺動層を有し、該摺動層は、表面にフッ素樹脂を含むフッ素樹脂層を有し、フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋された架橋フッ素樹脂層であり、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である。【選択図】図1
Description
本発明は、自動車などの車輪を回転自在に支承する駆動車輪用軸受装置、特に、複列転がり軸受とハブ輪と等速自在継手とをユニット化した駆動車輪用軸受装置に関する。
例えば、4輪駆動車の全輪や、FR車の後輪、FF車の前輪などの自動車の駆動輪は、駆動車輪用軸受装置によって懸架装置に支持されている。近年、軽量化、コンパクト化の要求から、ハブ輪と等速自在継手と軸受部とをユニット化するとともに、軸受部と等速自在継手とを分離可能とした駆動車輪用軸受装置が知られている(特許文献1)。このような構成とすることで、モジュール化と補修時の作業性向上が図れる。
図5に、従来の駆動車輪用軸受装置の例を示す。この駆動車輪用軸受装置は、ハブ輪と等速自在継手と軸受部とをユニット化したものであり、いわゆる第3世代の車輪用軸受装置である。内方部材は、ハブ輪51と、ハブ輪51に圧入された別体の内輪52とからなる。ハブ輪51は車輪(図示省略)を取り付けるための車輪取付けフランジ51dを一体に有する。この車輪取付けフランジ51dの円周等配位置にはハブボルト(図示省略)が設けられる。ハブ輪51において車輪取付けフランジ51dとは反対側の端部には小径段部51bが形成されており、そこに内輪52が圧入される。小径段部51bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部51cにより、ハブ輪51に対して内輪52が軸方向へ抜けることを防止している。なお、内方部材は軸受内輪に相当する。
外方部材53は、外周に車体(図示省略)に取り付けるための車体取付けフランジ53bを一体に有し、内周には複列の外側軌道面53a、53aが形成されている。一方、内方部材において、これら外側軌道面53a、53aに対向する内側軌道面51a、52aがそれぞれハブ輪51と内輪52に一体形成されている。対向する両側の軌道面の間には、複列の転動体(ボール)54、54が転動自在に収容されている。また、外方部材53の両端部にはシール部材55、56が装着されている。シール部材により、軸受内部に封入されたグリースの漏洩を防ぐとともに、外部から軸受内部に雨水や粉塵などが侵入することを防止している。なお、外方部材は軸受外輪に相当する。
等速自在継手60は、継手内輪61と、継手外輪62と、トルク伝達部材としてのボール64と、ボール64を保持するためのケージ63とからなる。継手外輪62はカップ状のマウス部62aと、マウス部62aから軸方向に延出した軸部62dとを有する。マウス部62aの内周面は球面状に形成され、その内周面の円周方向に等間隔に、軸方向に延びる曲線状のトラック溝62bが形成されている。継手内輪61の外周面は球面状に形成され、その外周面の円周方向に等間隔に、軸方向に延びる曲線状のトラック溝61aが形成されている。継手内輪61のトラック溝61aと継手外輪62のトラック溝62bは対向しており、一対のトラック溝にボール64が1つずつ組み込まれている。各ボール64はケージ63のポケットに収容される。トラック溝61a、62bの各曲率中心は、継手中心に対して互いに軸方向に等距離だけオフセットしている。そのため、継手外輪62の軸線と継手内輪61の軸線が角度(作動角)をなした場合でも、ボール64は作動角の二等分面内に保持され、継手の等速性が維持される。
継手外輪62の軸部62dは、セレーション(またはスプライン)軸部にてハブ輪51のセレーション孔51eとトルク伝達可能に嵌合されている。さらに、固定ボルト58により、加締部51cと継手外輪62の肩部62cとが当接した状態で、ハブ輪51と継手外輪62とが着脱自在に締結されている。
このような従来の構成の駆動車輪用軸受装置では、運転時にしばしばスティックスリップ音が発生する場合があった。この異音は、ハブ輪51と継手外輪62との間で伝達されるトルクの変動に伴い、ハブ輪51の加締部51cと継手外輪62の肩部62cとの当接面が擦れ合うことで発生することが原因であるといわれている。すなわち、継手外輪62の軸部62dに形成されたセレーション軸部を介してトルクがハブ輪51に伝達されるが、このセレーション嵌合部の円周方向のガタが大きいと、車両の加減速の繰り返しにより異音が発生する。また、一般的に、固定ボルト58は高トルクで緊締されるが、トルク変動が繰り返し作用することで固定ボルト58の緩みや、上記当接面の摩耗などが生じ、その結果軸力が低下する。軸力が低下すると上記当接面でスティックスリップ現象が発生し、それに伴って異音(カッキン音)が発生する。
このような異音の発生を抑制するため、特許文献1の駆動車輪用軸受装置では、セレーション嵌合部の円周方向のガタを抑制するとともに、ハブ輪51に対して内輪52を固定するための加締部51cが平坦面に形成されている。これにより、固定ボルト58の緊締による加締部51cの塑性変形が防止され、固定ボルト58の緩みが抑制される。その結果、当接面の接触面積が増大し、摩耗が抑制され、異音の発生が抑制される。
一方、特許文献2に記載の駆動車輪用軸受装置は、上記異音の発生を抑制するため、継手外輪の肩部とハブ輪の加締部との間にスラスト軸受を介在させている。スラスト軸受としては、軸受のスラスト面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)、セラミック、モリブデンなどの被膜を形成した軸受や、スラスト面に形成された放射溝にプラスチックグリースを充填した軸受が開示されている。スラスト軸受を介在させることで、滑りによって継手外輪の肩部とハブ輪の加締部を擦るエネルギーを小さくして、異音の抑制を図っている。
ところで、図5に示すように、継手外輪62の軸部62dからハブ輪51へ伝達されるトルクは、車両の加減速により頻繁に変化し、軸部62dはこのトルク伝達に伴って捩り方向に弾性変形する。その変形量はトルクの変動によって頻繁に変化する。そして、軸部62dを捩り方向に変形させようとする力、または捩り変形した軸部62dが元に戻ろうとする力が、上記当接面に作用する摩擦力よりも大きくなると、上記当接面で微小な滑りが発生する。この場合、特許文献1の構成では、上記当接面に作用する摩擦力が大きいと、滑りによって加締部51cと肩部62cとを擦るエネルギーが大きくなって異音が発生することになる。
また、特許文献2に記載されている、DLC、セラミック、モリブデンなどの被膜が形成されたスラスト軸受は、摺動によって被膜が摩耗してしまうおそれがある。また、プラスチックグリースが充填されたスラスト軸受は、雨などによって油分が流出してしまうおそれがある。そのため、上記異音を安定して長期的に防止できる技術が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複列転がり軸受とハブ輪と等速自在継手とをユニット化した駆動車輪用軸受装置において、装置の軽量化、コンパクト化を図るとともに、ハブ輪の加締部と継手外輪の肩部との当接面に発生する異音を長期間にわたって防止できる駆動車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
本発明の駆動車輪用軸受装置は、内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、外周に上記複列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面が形成されたハブ輪、および外周に上記複列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面が形成され、上記ハブ輪の端部の加締部に圧入された内輪からなる内方部材と、上記両側の軌道面間に収容された複列の転動体と、上記ハブ輪とトルク伝達可能に嵌合されるとともに着脱自在に締結された継手外輪と、該継手外輪の肩部と上記ハブ輪の加締部との間に介在された円環平板状のスラスト軸受とを備え、上記スラスト軸受は、上記肩部または上記加締部と摺接するスラスト面に、金属基材上に直接または金属多孔質層を介して形成された摺動層を有し、上記摺動層は、表面にフッ素樹脂を含むフッ素樹脂層を有し、上記フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋された架橋フッ素樹脂層であり、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であることを特徴とする。
上記摺動層は、上記金属基材の表面に形成される耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む下地層と、この下地層表面に形成される第二のフッ素樹脂を含む第二のフッ素樹脂層とからなり、上記耐熱性樹脂は、炭素原子と共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つの原子を高分子構造の少なくとも主鎖に含む樹脂であり、上記第二のフッ素樹脂層が上記架橋フッ素樹脂層であることを特徴とする。
上記耐熱性樹脂が、ポリアミドイミド(PAI)樹脂またはポリエーテルサルホン(PES)樹脂であることを特徴とする。
上記架橋フッ素樹脂層の層厚さが5〜20μmであることを特徴とする。
上記架橋フッ素樹脂層に含まれるフッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂であることを特徴とする。
本発明の駆動車輪用軸受装置は、複列転がり軸受とハブ輪と等速自在継手とがユニット化された軸受装置であって、等速自在継手を構成する継手外輪の肩部と、ハブ輪の加締部との間に介在されたスラスト軸受を備えており、該スラスト軸受は、肩部または加締部と摺接するスラスト面に摺動層を有し、該摺動層は、その表面に、少なくとも表面近傍が架橋された架橋フッ素樹脂層を有し、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であるので、相手部材と摺動した場合、フッ素樹脂の特性である低摩擦性によりスティックスリップが抑制され、優れた異音抑制効果が得られる。また、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である架橋構造であることから、摺動に対する耐摩耗性に優れる。そのため、本発明の駆動車輪用軸受装置によれば、直接継手外輪の肩部とハブ輪の加締部とが当接することなく、滑りによって肩部とハブ輪の加締部を擦るエネルギーが小さくなって異音(カッキン音)の発生を防止できる。
摺動層は、金属基材の表面に形成される耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む下地層と、この下地層表面に形成される架橋フッ素樹脂層からなるので、摺動層と金属基材との密着性に優れる。特に、耐熱性樹脂として、PAI樹脂またはPES樹脂を用いるので、耐熱性や、金属基材との密着性に一層優れ、高温雰囲気下となるエンジンに使用することができる。
本発明の駆動車輪用軸受装置を図1に基づいて説明する。図1に示す駆動車輪用軸受装置は、複列転がり軸受とハブ輪と等速自在継手とをユニット化したものである。外周に内側軌道面1a、2aを有する内方部材(ハブ輪1および内輪2)が軸受内輪に相当し、内周に外側軌道面3a、3aを有する外方部材3が軸受外輪に相当する。本明細書においては、車両への組付け状態で車両の外側寄り(図面左側)となる側をアウトボード側、中央寄り側(図面右側)をインボード側という。なお、図1に示す軸受装置は、セルフリテイン形式の第3世代の車輪用軸受装置と呼ばれ、従来のようにナットなどで強固に緊締して予圧量を管理する必要がない。そのため、車両への組み込みを容易にすることができ、かつ、長期間その予圧量を維持することができる。
ハブ輪1は、アウトボード側の端部に車輪(図示省略)を取り付けるための車輪取付けフランジ1dを一体に有し、外周には複列の内側軌道面の一方の軌道面1aと、この内側軌道面1aから軸方向に延びる円筒状の小径段部1bが形成されている。この小径段部1bに別体の内輪2が圧入されており、内輪2の外周には複列の内側軌道面の他方の軌道面2aが形成されている。ハブ輪1の内側軌道面1aと内輪2の内側軌道面2aが複列の転がり軸受の内側軌道面を構成する。ハブ輪1は中空形状であり、内周にはセレーション孔1eが形成されている。内輪2は、小径段部1bのインボード側の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部1cによって軸方向に固定される。加締部1cの内端面1fは、加締治具によって平坦面に形成されている。
ハブ輪1はS53Cなどの炭素0.40〜0.80質量%を含む中炭素鋼で形成され、車輪取付けフランジ1dのアウトボード側の基部から内側軌道面1a、小径段部1bにかけて、高周波焼入れによって硬化処理され、表面硬さが58〜64HRCとなっている。なお、加締部1cは鍛造後の素材表面硬さ24HRC以下の未焼入れ部としている。一方、内輪2はSUJ2などの高炭素クロム軸受鋼からなり、ずぶ焼入れにより芯部まで54〜64HRCの範囲で硬化処理されている。
外方部材3は、外周に車体(図示省略)に取り付けるための車体取付けフランジ3bを一体に有し、内周には複列の外側軌道面3a、3aが形成されている。外方部材3は、ハブ輪1と同様の中炭素鋼からなり、外側軌道面3aは高周波焼入れによって硬化処理され、表面硬さが58〜64HRCとなっている。
外方部材3の外側軌道面3a、3aと、内方部材の内側軌道面1a、2aとの間に複列の転動体4、4が転動自在に収容されている。なお、図1では、転動体4として玉を使用した複列アンギュラ玉軸受を例示したが、これに限らず、例えば転動体として円すいころを使用した複列円すいころ軸受を採用してもよい。外方部材3の両端部にはシール部材5、6が装着されており、軸受内部に封入されたグリースの漏洩を防ぐとともに、外部から軸受内部に雨水や粉塵などが侵入することを防止している。
等速自在継手10は、継手内輪11と、継手外輪12と、トルク伝達要素としてのボール14と、ボール14を保持するためのケージ13とを備えている。継手外輪12はハブ輪1と同様の中炭素鋼で形成され、カップ状のマウス部12aと、マウス部12aの底部をなす肩部12cと、肩部12cから軸方向に延出した軸部12dとを有する。マウス部12aの内周には、軸方向に延びる曲線状のトラック溝12bが形成されている。トラック溝12bと肩部12cの表面には高周波焼入れによって形成された表面硬さ58〜64HRCの硬化層がある。
軸部12dの外周にはセレーション軸12eが形成されており、ハブ輪1のセレーション孔1eとトルク伝達可能に嵌合されている。軸部12dは中空形状であり、内周にめねじが形成されている。このめねじに、固定ボルト8が座金9を介して所定の締付トルクで締結される。これにより、ハブ輪1と継手外輪12とが着脱自在に一体に固定される。この構成とすることで、継手外輪12の軸部12dの長さを短くすることができ、装置の軽量化、コンパクト化が図れるとともに、例えば補修時において、懸架装置を外すことなく、等速自在継手10を軸受部分から分解することも可能となる。
ハブ輪1の加締部1cの内端面1fと継手外輪12の肩部12cとの間に、円環平板状のスラスト軸受7が介在されている。図2に示すように、スラスト軸受7の軸方向両端面(両スラスト面)に後述する摺動層16が形成されている。各摺動層16は、肩部12cまたは加締部1cとそれぞれ摺接する。摺動層16は、金属基材15上に直接または金属多孔質層を介して形成される。スラスト軸受7の厚さ(軸方向長さ)は0.5〜3.5mmの範囲内が好ましい。0.5mm未満では取扱い性に劣る傾向があり、3.5mmを越えると材料コストが嵩むおそれがある。
図3には、スラスト軸受の軸方向断面図を示す。図3において、摺動層16は、金属基材15の表面に形成された下地層17と、この下地層17の表面に形成された架橋フッ素樹脂層18とで構成される。架橋フッ素樹脂層18に含まれるフッ素樹脂は、少なくとも表面近傍が架橋されており、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である。この場合、架橋フッ素樹脂層は、表面より下地層との境界面に向かってフッ素樹脂の架橋率が低くなる傾斜層とすることができる。
図3に示す金属基材15は、下地層17側の表面が粗面化処理により粗くなっている。粗面化処理としては、ショットブラスト法などの機械的粗面化法、グロー放電やブラズマ放電処理などの電気的粗面化法、アルカリ処理などの化学的粗面化法などが採用できる。また、金属基材15上に金属多孔質層を介して、摺動層を形成する構成としてもよい。金属多孔質層は、例えば金属粉末を固化させる焼結法や、溶射法などによって形成される。用いる金属粉末には、鉄系、銅系、ニッケル系、モリブデン系、アルミニウム系およびこれらを複合したものを用いることができる。特に銅合金粉末の焼結層、溶射層が加工性および密着性に優れるため好ましい。金属基材の表面を粗面化することで、アンカー効果により摺動層を金属基材に強固に密着させることができる。
下地層17は、耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む混合物層であり、金属基材15と架橋フッ素樹脂層18との密着性を向上させる。なお、下地層17に含まれる第一のフッ素樹脂の架橋については特に限定されない。例えば、境界面の近傍に存在する第一のフッ素樹脂のみが架橋された構造でもよい。
耐熱性樹脂は、炭素原子と共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つの原子を高分子構造の少なくとも主鎖に含む樹脂である。また、下地層および上層膜の焼成時において熱分解しない樹脂である。ここで熱分解しないとは、下地層および上層膜を焼成する温度および時間内において、熱分解を開始しない樹脂である。また耐熱性樹脂は、金属基材との密着性に優れた官能基および第一のフッ素樹脂とも反応する官能基を分子主鎖内または分子端部に有する樹脂であることが好ましい。
耐熱性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、PAI樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミダゾール樹脂、PES樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、フッ素樹脂が塗膜形成時の収縮を防ぐウレタン樹脂、アクリル樹脂を併用することができる。
耐熱性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、PAI樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミダゾール樹脂、PES樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、フッ素樹脂が塗膜形成時の収縮を防ぐウレタン樹脂、アクリル樹脂を併用することができる。
上記耐熱性樹脂の中でも、耐熱性、耐摩耗性および下地である金属基材との結着性に優れることから、PAI樹脂またはPES樹脂を用いることが好ましい。PAI樹脂の中でも、イミド結合、アミド結合が芳香族基を介して結合している芳香族系のPAI樹脂が好ましい。芳香族系PAI樹脂であると、下地の金属基材との結着性に優れ、かつ、得られる被膜の耐熱性が特に優れる。
第一のフッ素樹脂は、下地層を形成する水系塗布液に粒子状に分散できる樹脂であれば使用できる。第一のフッ素樹脂としては、PTFE粒子、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)粒子、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPという)粒子、またはこれらの2種以上が好ましく使用できる。
下地層を形成する水系塗布液には、耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂以外に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン界面活性剤、カーボンブラックなどの無機顔料、N−メチル−2−ピロリドンなどの水に任意に混合する非プロトン系極性溶剤、主溶剤としての水が配合される。また、消泡剤、乾燥剤、増粘剤、レベリング剤、ハジキ防止剤などを配合できる。下地層を形成する水系塗布液としては、例えば、ダイキン工業株式会社製プライマー塗料EKシリーズ、EDシリーズが挙げられる。
架橋フッ素樹脂層は、下地層の表面に形成され、放射線によりフッ素樹脂の分子鎖同士が架橋反応を起こし、架橋されたフッ素樹脂の層である。第一のフッ素樹脂と第二のフッ素樹脂とは同一であっても異なっていてもよいが、同一のフッ素樹脂を使用することが好ましい。第二のフッ素樹脂としては、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。これらの樹脂は単独でも混合物としても使用できる。また、これらの上記フッ素樹脂の中でも、耐熱性および摺動性に優れるPTFE樹脂が好ましい。PTFE樹脂は、融点327℃、連続使用温度260℃のフッ素樹脂である。PTFE樹脂としては、低摩擦で非粘着性を付与でき、かつ、使用温度雰囲気に耐える耐熱性を有するものであれば使用することができる。
架橋フッ素樹脂層は、PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液を塗布乾燥することにより得られる。PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液としては、例えば、ダイキン工業株式会社製ポリフロン=PTFEエナメルが挙げられる。
架橋フッ素樹脂層の層厚さは2.5〜20μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは5〜15μmの範囲内である。2.5μm未満であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗により、下地層が露出するおそれがある。特に、層厚さを5〜20μmの範囲とすることで、初期摩耗による下地層の露出を好適に防止できる。
下地層の層厚さは2.5〜20μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは5〜15μmの範囲内である。2.5μm未満であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗により、金属基材が露出するおそれがある。20μmをこえると、被膜形成時のクラック発生や運転中に剥離して潤滑状態が悪化するおそれがある。層厚さを2.5〜20μmの範囲とすることで、初期摩耗による金属基材の露出を防止でき、運転中における剥離を長期間にわたって防止できる。
以上より、摺動層の層厚さは、5μm以上40μm未満、好ましくは15〜30μmである。層厚さが5μm未満であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗、局部的な摩耗により、金属基材が露出するおそれがある。40μm以上であると、被膜形成時のクラック発生や運転中に剥離して潤滑状態が悪化するおそれがある。摺動層の層厚さを5μm以上40μm未満の範囲とすることで、初期摩耗による金属基材の露出を防止でき、運転中における剥離を長期間にわたって防止できる。
金属基材表面への摺動層の形成方法について以下説明する。
(1)金属基材の表面処理
金属基材は、摺動層形成前にショットブラスト等を用いて、予め金属基材表面の粗さ(Ra)を1.0〜2.0μmに調整し、その後、石油ベンジン等の有機溶剤内に浸漬させ、5分〜1時間程度超音波脱脂を行なうことが好ましい。
(2)下地層を形成する水系塗布液の塗装
下地層を形成する水系塗布液を塗布前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミル架台を用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法(霧化塗装法)を用いて塗布する。
(3)下地層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。
(1)金属基材の表面処理
金属基材は、摺動層形成前にショットブラスト等を用いて、予め金属基材表面の粗さ(Ra)を1.0〜2.0μmに調整し、その後、石油ベンジン等の有機溶剤内に浸漬させ、5分〜1時間程度超音波脱脂を行なうことが好ましい。
(2)下地層を形成する水系塗布液の塗装
下地層を形成する水系塗布液を塗布前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミル架台を用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法(霧化塗装法)を用いて塗布する。
(3)下地層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。
(4)第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液の塗装
第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミル架台を用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法を用いて塗装する。
(5)第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。
なお、下地層および第二のフッ素樹脂層の塗装方法としては、スプレー法以外にディッピング法(浸漬塗装法)、ディスペンド法、ロール法、刷毛塗り法など被膜を形成できるものであれば使用できる。被膜の表面粗さ、塗布形状をできるだけ小さくし、層厚さの均一性や精度を考慮するとスプレー法が好ましい。
第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミル架台を用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法を用いて塗装する。
(5)第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。
なお、下地層および第二のフッ素樹脂層の塗装方法としては、スプレー法以外にディッピング法(浸漬塗装法)、ディスペンド法、ロール法、刷毛塗り法など被膜を形成できるものであれば使用できる。被膜の表面粗さ、塗布形状をできるだけ小さくし、層厚さの均一性や精度を考慮するとスプレー法が好ましい。
(6)焼成
第二のフッ素樹脂層の乾燥後、加熱炉内、空気中で(融点(Tm)+30℃)〜(融点(Tm)+100℃)、5〜40分の範囲内で焼成する。第一および第二のフッ素樹脂がPTFEの場合、好ましくは380℃の加熱炉内で30分間焼成する。
第二のフッ素樹脂層の乾燥後、加熱炉内、空気中で(融点(Tm)+30℃)〜(融点(Tm)+100℃)、5〜40分の範囲内で焼成する。第一および第二のフッ素樹脂がPTFEの場合、好ましくは380℃の加熱炉内で30分間焼成する。
(7)第二のフッ素樹脂層の電子線照射
焼成後の被膜に、放射線を照射して第二のフッ素樹脂層を架橋させる。放射線としては、α線(α崩壊を行なう放射性核種から放出されるヘリウム−4の原子核の粒子線)、β線(原子核から放出される陰電子および陽電子)、電子線(ほぼ一定の運動エネルギーを持つ電子ビーム;一般に、熱電子を真空中で加速してつくる)などの粒子線;γ線(原子核、素粒子のエネルギー準位間の遷移や素粒子の対消滅、対生成などによって放出・吸収される波長の短い電磁波)などの電離放射線を用いることができる。これらの放射線の中でも、架橋効率や操作性の観点から、電子線およびγ線が好ましく、電子線がより好ましい。特に電子線は、電子線照射装置が入手しやすいこと、照射操作が簡単であること、連続的な照射工程を採用することができることなどの利点を有している。
焼成後の被膜に、放射線を照射して第二のフッ素樹脂層を架橋させる。放射線としては、α線(α崩壊を行なう放射性核種から放出されるヘリウム−4の原子核の粒子線)、β線(原子核から放出される陰電子および陽電子)、電子線(ほぼ一定の運動エネルギーを持つ電子ビーム;一般に、熱電子を真空中で加速してつくる)などの粒子線;γ線(原子核、素粒子のエネルギー準位間の遷移や素粒子の対消滅、対生成などによって放出・吸収される波長の短い電磁波)などの電離放射線を用いることができる。これらの放射線の中でも、架橋効率や操作性の観点から、電子線およびγ線が好ましく、電子線がより好ましい。特に電子線は、電子線照射装置が入手しやすいこと、照射操作が簡単であること、連続的な照射工程を採用することができることなどの利点を有している。
架橋フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋されていればよい。好ましくは、架橋フッ素樹脂層の最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であり、より好ましくは、平均架橋率が15〜25%である。平均架橋率を9%以上とすることで、架橋による耐摩耗効果が得られやすく、下地層の露出をより防ぐことができる。また、平均架橋率を25%以下とすることで、過度な架橋による被膜の亀裂や剥離などの損傷が起こりにくくできる。また、電子線照射に要する時間も長くなりすぎず、量産性を保つことができる。照射条件は、上記平均架橋率が9〜25%の範囲内となるような照射温度、照射線量、および加速電圧で放射線を照射することが好ましい。例えば、第二のフッ素樹脂の融点近傍温度で、不活性雰囲気(窒素雰囲気)下で電子線を照射することで架橋構造を生成することができる。
本発明では、上述した摺動層を有するスラスト軸受7を加締部1cと肩部12cとの間に介在させることにより、加締部1cと肩部12cが直接当接することなく、当接面(すなわち、加締部1cとスラスト軸受7、および肩部12cとスラスト軸受7)に作用する摩擦力が格段に減少する。したがって、滑りによって加締部1cと肩部12cを擦るエネルギーが小さくなって異音の発生を好適に防止できる。また、従来のスラスト軸受の構成で懸念される潤滑成分の流出も防止することができる。
図3では摺動層が下地層と架橋フッ素樹脂層とからなる二層構造を例示したが、これに限定されず、例えば摺動層が架橋フッ素樹脂層のみからなる単層構造であってもよい。この場合でも、架橋フッ素樹脂層の最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であることが好ましい。
(1)試験片の作成
試験片:鋼製(SPCC製)の外径φ21mm、内径φ17mm、厚さ10mmの円環平板のスラスト面に膜厚20μmの摺動層を形成した。円環平板を脱脂した後、ショットブラストを用いて1.5μmRaに調整し、その後、石油ベンジンに浸漬し、5分程度超音波脱脂を行った。下地層はダイキン社製プライマー塗料(型番:EK−1909S21R)、第二のフッ素樹脂層にはダイキン社製トップ塗料(型番:EK−3700C21R)を用いて、下地層および第二のフッ素樹脂層の層厚さがそれぞれ10μmとなるよう成膜した。各塗料を、上述した、再分散した水系塗布液を濾過して行うスプレー法により塗布した。乾燥時間はそれぞれ90℃の恒温槽内で30分間乾燥し、380℃の加熱炉内で30分間焼成した。
摺動層を形成した試験片を電子線照射装置の加熱プレートに置き、以下の条件で摺動層側から電子線照射を行なった。照射条件の照射線量を変更して複数の試験片を得た。
使用装置:浜松ホトニクス株式会社製 EBエンジン
照射条件:加速電圧 70kV
温度 340℃
照射時のチャンバー内雰囲気 加熱窒素(酸素濃度1000ppm以下)
試験片:鋼製(SPCC製)の外径φ21mm、内径φ17mm、厚さ10mmの円環平板のスラスト面に膜厚20μmの摺動層を形成した。円環平板を脱脂した後、ショットブラストを用いて1.5μmRaに調整し、その後、石油ベンジンに浸漬し、5分程度超音波脱脂を行った。下地層はダイキン社製プライマー塗料(型番:EK−1909S21R)、第二のフッ素樹脂層にはダイキン社製トップ塗料(型番:EK−3700C21R)を用いて、下地層および第二のフッ素樹脂層の層厚さがそれぞれ10μmとなるよう成膜した。各塗料を、上述した、再分散した水系塗布液を濾過して行うスプレー法により塗布した。乾燥時間はそれぞれ90℃の恒温槽内で30分間乾燥し、380℃の加熱炉内で30分間焼成した。
摺動層を形成した試験片を電子線照射装置の加熱プレートに置き、以下の条件で摺動層側から電子線照射を行なった。照射条件の照射線量を変更して複数の試験片を得た。
使用装置:浜松ホトニクス株式会社製 EBエンジン
照射条件:加速電圧 70kV
温度 340℃
照射時のチャンバー内雰囲気 加熱窒素(酸素濃度1000ppm以下)
(2)架橋率の算出
各試験片の第二のフッ素樹脂層を、最表面から5μmの深さまで削り取り、削り取った試料を測定試料とした。各測定試料のNMR測定の結果から、架橋率として、最表面(深さ0μm)から深さ5μmまでの平均架橋率を算出した。
架橋率は19F Magic angle Spinning(MAS)核磁気共鳴(NMR)法(High speed magic angle nuclear magnetic resonance)によって測定および算出した。参考文献(Beate Fuchs and Ulrich Scheler., Branching and Cross−Linking in Radiation−Modified Poly(tetrafluoroethylene):A Solid−State NMR Investigation.Macromolecules,33,120−124.2000年)によるとNMR測定の化学シフトから、以下に記す下線部のF原子を帰属することができる。
A:−70ppm : =CF−CF 3
B:−82ppm : −CF2−CF 3
C:−186ppm : ≡CF
各試験片の第二のフッ素樹脂層を、最表面から5μmの深さまで削り取り、削り取った試料を測定試料とした。各測定試料のNMR測定の結果から、架橋率として、最表面(深さ0μm)から深さ5μmまでの平均架橋率を算出した。
架橋率は19F Magic angle Spinning(MAS)核磁気共鳴(NMR)法(High speed magic angle nuclear magnetic resonance)によって測定および算出した。参考文献(Beate Fuchs and Ulrich Scheler., Branching and Cross−Linking in Radiation−Modified Poly(tetrafluoroethylene):A Solid−State NMR Investigation.Macromolecules,33,120−124.2000年)によるとNMR測定の化学シフトから、以下に記す下線部のF原子を帰属することができる。
A:−70ppm : =CF−CF 3
B:−82ppm : −CF2−CF 3
C:−186ppm : ≡CF
ここで、図4(a)に電子線を照射していない未架橋PTFEのNMRスペクトルを示し、図4(b)に1000kGy照射した架橋PTFEのNMRスペクトルを示す。図4に示すように、電子線を照射することで上記Bのシグナルの強度が増加し、上記Aおよび上記Cのシグナルが現れていることが分かる。
上記A〜Cの各シグナルの面積比をそれぞれSA、SB、SCとすると、架橋率は下記式で算出することができる。
上記A〜Cの各シグナルの面積比をそれぞれSA、SB、SCとすると、架橋率は下記式で算出することができる。
上記式は、全ての≡CFの構造の炭素原子からそれぞれ伸びる3本の分子鎖のうち、架橋構造になっていない=CF−CF3および=CF−(CF2)m−CF3の分子鎖を差し引いて、架橋鎖である=CF−(CF2)n−CF=の割合を架橋率として算出している。なお、mおよびnは任意の整数である。図4および上記式を照らし合わせると、電子線を照射することで架橋率が増加することがわかる。
(3)スラスト摩耗試験
上記(1)で得た試験片(実施例1〜3、比較例2〜3)、第二のフッ素樹脂層が架橋されていない試験片(比較例1)、ショットブラスト処理および摺動層の形成を行っていない試験片(比較例4)、および二硫化モリブデン被膜を形成した試験片(比較例5)を用いて、スラスト試験を実施した。スラスト試験は、スラスト型摩耗試験機を用い、面圧0.39MPa、滑り速度0.5m/s、相手材:S53C製ディスク(外径φ30mm、内径φ6mm、厚さ5mm、表面粗さ0.1μmRa)、無潤滑条件下、運転時間50時間で行い、50時間後の試験片の摩耗量(摩耗深さ)を求めた。また、試験終了前10分間の平均摩擦係数を求めた。結果を表1に示す。
上記(1)で得た試験片(実施例1〜3、比較例2〜3)、第二のフッ素樹脂層が架橋されていない試験片(比較例1)、ショットブラスト処理および摺動層の形成を行っていない試験片(比較例4)、および二硫化モリブデン被膜を形成した試験片(比較例5)を用いて、スラスト試験を実施した。スラスト試験は、スラスト型摩耗試験機を用い、面圧0.39MPa、滑り速度0.5m/s、相手材:S53C製ディスク(外径φ30mm、内径φ6mm、厚さ5mm、表面粗さ0.1μmRa)、無潤滑条件下、運転時間50時間で行い、50時間後の試験片の摩耗量(摩耗深さ)を求めた。また、試験終了前10分間の平均摩擦係数を求めた。結果を表1に示す。
表1より、平均架橋率9〜25%の架橋フッ素樹脂層を形成した実施例1〜3は、長時間の無潤滑条件下でも摩耗量が抑えられており、摩擦係数にも優れていた。一方、平均架橋率が9%未満の比較例2では、架橋による効果が現れず摩耗量は大きくなり基材が露出する結果となった。また、未架橋の比較例1も比較例2と同様の結果であった。一方、平均架橋率が25%を超えると架橋により被膜が脆くなり、剥離が発生した。比較例4は、金属接触によって凝着が生じた。また、比較例5の二硫化モリブデン被膜は、摩耗が大きく基材が露出する結果となった。
このように本発明にかかる実施例の摺動層は、無潤滑条件下でも長時間の耐摩耗性に優れ、また摩擦係数が小さいので、スラスト軸受の摺接面に形成することで、加締部と肩部間の異音の発生を好適に抑制できる。
本発明の駆動車輪用軸受装置は、装置の軽量化、コンパクト化を図るとともに、ハブ輪の加締部と継手外輪の肩部との当接面に発生する異音を長期間にわたって防止できるので、駆動車輪用軸受装置として広く利用できる。
1 ハブ輪
2 内輪
3 外方部材
4 転動体
5 シール部材
6 シール部材
7 スラスト軸受
8 固定ボルト
9 座金
10 等速自在継手
11 継手内輪
12 継手外輪
13 ケージ
14 ボール
15 金属基材
16 摺動層
17 下地層
18 架橋フッ素樹脂層
2 内輪
3 外方部材
4 転動体
5 シール部材
6 シール部材
7 スラスト軸受
8 固定ボルト
9 座金
10 等速自在継手
11 継手内輪
12 継手外輪
13 ケージ
14 ボール
15 金属基材
16 摺動層
17 下地層
18 架橋フッ素樹脂層
Claims (5)
- 内周に複列の外側軌道面が形成された外方部材と、外周に前記複列の外側軌道面の一方に対向する内側軌道面が形成されたハブ輪、および外周に前記複列の外側軌道面の他方に対向する内側軌道面が形成され、前記ハブ輪の端部の加締部に圧入された内輪からなる内方部材と、前記両側の軌道面間に収容された複列の転動体と、前記ハブ輪とトルク伝達可能に嵌合されるとともに着脱自在に締結された継手外輪と、該継手外輪の肩部と前記ハブ輪の加締部との間に介在された円環平板状のスラスト軸受とを備え、
前記スラスト軸受は、前記肩部または前記加締部と摺接するスラスト面に、金属基材上に直接または金属多孔質層を介して形成された摺動層を有し、
前記摺動層は、表面にフッ素樹脂を含むフッ素樹脂層を有し、
前記フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋された架橋フッ素樹脂層であり、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であることを特徴とする駆動車輪用軸受装置。 - 前記摺動層は、前記金属基材の表面に形成される耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む下地層と、この下地層表面に形成される第二のフッ素樹脂を含む第二のフッ素樹脂層とからなり、
前記耐熱性樹脂は、炭素原子と共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つの原子を高分子構造の少なくとも主鎖に含む樹脂であり、
前記第二のフッ素樹脂層が前記架橋フッ素樹脂層であることを特徴とする請求項1記載の駆動車輪用軸受装置。 - 前記耐熱性樹脂が、ポリアミドイミド樹脂またはポリエーテルサルホン樹脂であることを特徴とする請求項2記載の駆動車輪用軸受装置。
- 前記架橋フッ素樹脂層の層厚さが5〜20μmであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の駆動車輪用軸受装置。
- 前記架橋フッ素樹脂層に含まれるフッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の駆動車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018178201A JP2020051444A (ja) | 2018-09-24 | 2018-09-24 | 駆動車輪用軸受装置 |
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ID=69996376
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JP (1) | JP2020051444A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
IT202200014698A1 (it) | 2022-07-13 | 2024-01-13 | Skf Ab | Gruppo mozzo ruota ad alta silenziosità per veicoli, unità mozzo ruota, cuscinetto di rotolamento e metodo associati |
DE102023212198A1 (de) | 2022-12-21 | 2024-06-27 | Aktiebolaget Skf | Ultra-leise Radnabeneinheit |
-
2018
- 2018-09-24 JP JP2018178201A patent/JP2020051444A/ja active Pending
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DE102023205995A1 (de) | 2022-07-13 | 2024-01-18 | Aktiebolaget Skf | Ultraleise Radnabenanordnung für Fahrzeuge und zugehörige Radnabenanordnung,Wälzlager und Verfahren |
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