JP6515284B2 - 酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法及び酸素吹き込みランス - Google Patents

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Description

本発明は、酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法及び酸素吹き込みランスに関し、具体的には、粒状及び/又は粉状の酸化鉄含有鉄原料を回転炉床炉などの還元炉により加熱・還元処理した後、溶解炉の溶融鉄浴に投入して溶解する酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法と、かかる還元・溶解方法で用いられる酸素吹き込みランスに関するものである。
粒銑、型銑、製鉄所発生スクラップや製鉄ダスト等の固形含鉄材料を原料とする、酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法として、以下の特許文献1には、種湯の存在する溶解炉に、未還元の酸化鉄分を含有する還元鉄、炭材及び酸素を供給して溶銑を得るに際し、溶解炉内に存在するスラグ量について、溶解開始前の残留スラグ量を溶解終了時のスラグ量で除することにより得られる比率を0.1〜0.5に制御する、溶銑製造方法が開示されている。
また、以下の特許文献2には、鉄を主成分とし、酸化鉄、酸化物および炭素含有物質を含有する酸化鉄含有鉄原料を、予備還元炉により平均金属化率が70%以上になるまで加熱・還元処理した後、当該鉄原料を溶解製錬炉における溶融鉄浴に投入し、炭素含有燃料を添加しつつ酸素の吹き込みを行う、酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法が開示されている。
特開2007−177294号公報 特開2006−104501号公報
ここで、上記特許文献1には、酸素吹き込みランスとの関係について、上吹き酸素による火点がスラグ層を突き破らない範囲で酸素吹き込みを行うことが好ましいことが開示されているが、酸素吹き込みランスのノズル条件については、具体的に開示されていない。
また、上記特許文献2に記載の技術は、溶解製錬炉上部から投入した溶解原料の溶融鉄浴表面での投入範囲を、酸素吹き込みランスからの酸素噴流が溶融鉄浴表面で形成するガス噴流の到達範囲とし、原料を酸素噴流に巻き込ませることのみを目的としており、酸素吹き込みランスのノズル条件については、具体的に開示されていない。
本発明は、従来の技術の有するこのような不都合な点に鑑みてなされたものであって、その目的は、二次燃焼率が高く、吹き込み酸素量や炭材等の使用量を低減することが可能であり、かつ、経済的である酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法と、かかる還元・溶解方法に用いられる酸素吹き込みランスと、を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
[1]鉄を主成分とし、酸化鉄、CaO、SiOを含む酸化物、並びに、炭素含有物質を含有した粒及び/又は粉状の酸化鉄を含有する鉄原料を、予備還元炉により加熱還元処理した後、当該鉄原料を溶解精錬炉の溶融鉄浴に投入し、炭素含有燃料を添加しつつ酸素の吹き込みを行うことにより還元及び溶解する方法において、酸素の吹き込みを行う酸素吹き込みランスに、相対的に前記酸素吹き込みランスの中心軸側に位置する内側ノズル吐出孔と、当該内側ノズル吐出孔の外側に位置する外側ノズル吐出孔と、を同心円上に設け、外側ノズル吐出孔数n1と、内側ノズル吐出孔数n2とが、以下の関係式(1)を全て満足し、前記外側ノズル吐出孔が、ストレートノズルである、酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法。
n1≧3、n2≧1、n1+n2≧5 ・・・(1)
[2]外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔のスロート径D1tと、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔のスロート径D2tと、の間に、以下の関係式(2)が成立する、[1]に記載の酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法。
1.1≦D1t/D2t≦2.0 ・・・(2)
[3]外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ1と、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ2と、の間に、以下の関係式(3)が成立する、[1]又は[2]に記載の酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法。
15°≦θ1−θ2≦25° ・・・(3)
[4]鉄を主成分とし、酸化鉄、CaO、SiOを含む酸化物、並びに、炭素含有物質を含有した粒及び/又は粉状の酸化鉄を含有する鉄原料を、予備還元炉により加熱還元処理した後、当該鉄原料を溶解精錬炉の溶融鉄浴に投入し、炭素含有燃料を添加しつつ酸素の吹き込みを行うことにより還元及び溶解する方法で用いられる、酸素の吹き込みを行うための酸素吹き込みランスであって、前記酸素吹き込みランスの端部では、相対的に前記酸素吹き込みランスの中心軸側に位置する内側ノズル吐出孔と、当該内側ノズル吐出孔の外側に位置する外側ノズル吐出孔と、が、それぞれ同心円上に配設されており、外側ノズル吐出孔数n1と、内側ノズル吐出孔数n2とが、以下の関係式(1)を全て満足し、前記外側ノズル吐出孔が、ストレートノズルである、酸素吹き込みランス。
n1≧3、n2≧1、n1+n2≧5 ・・・(1)
[5]外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔のスロート径D1tと、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔のスロート径D2tと、の間に、以下の関係式(2)が成立する、[4]に記載の酸素吹き込みランス。
1.1≦D1t/D2t≦2.0 ・・・(2)
[6]外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ1と、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ2と、の間に、以下の関係式(3)が成立する、[4]又は[5]に記載の酸素吹き込みランス。
15°≦θ1−θ2≦25° ・・・(3)
以上説明したように本発明によれば、酸素ジェットを合体することなく広角かつソフトブローで吹き込むことができ、鉄の燃焼を最少に抑えた状態で火点を鉄浴湯面全体に形成することができる。その際、炉底からキャリアーガスとともに吹き込まれた炭材がスラグ中で燃焼するため、炉内へ飛散する無効炭材が減少する。その結果、ソリューションロスが低減する。加えて、ノズル吐出孔数を5以上とし、外側ノズル吐出孔をストレートノズルとするため、炉内で発生したCOガスを酸素ジェットへ大量に巻き込むことができるため、二次燃焼率が高くなる。また、前述したソリューションロスの低減によって二次燃焼率を高くすることができる。その結果、吹き込み酸素量や炉底からの炭材の吹き込み量を低減することも併せて可能となるため、酸素原単位や炭材原単位を低減することができる。加えて、炉内湯面全体で火点を形成することでスラグの滓化も改善することができる。
還元溶解炉における炉内状況の概略を示す模式図である。 ノズル吐出孔数と酸素ジェットの衝突面積比との関係を示す図であり、横軸はノズル吐出孔数(n1+n2)を示し、縦軸は酸素ジェットの衝突面積比を示す。 酸素吹き込みランスのノズル吐出孔の配置例を示す平面図、及び、ノズルスロート径と出口径とを示す立面図である。 外側ノズル形状と酸素ジェットのコア長さとの関係を示す図であり、横軸は出口径/スロート径比(D1e/D1t)を示し、縦軸は酸素ジェットのコア長さを示す。 酸素吹き込みランスのノズル吐出角度を説明する正面図である。 ノズル吐出孔スロート径比と酸素ジェットの到達距離比との関係を示す図であり、横軸はノズル吐出孔スロート径比(D1t/D2t)を示し、縦軸は酸素ジェットの到達距離比を示す。 ノズル吐出角度差と酸素ジェットの到達距離比との関係を示す図であり、横軸はノズル吐出角度差(θ1−θ2)を示し、縦軸は酸素ジェットの到達距離比を示す。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
《還元溶解炉における反応メカニズムについて》
図1に示す還元溶解炉1においては、炉上から還元鉄が装入され、炉底から炭材が吹込まれる。酸素吹き込みランス2から吹き込まれた酸素ジェットが溶鉄面に衝突することで、溶鉄面では火点3を形成するとともに、下記の表1に示すように、(1)スラグ層4中では炭材の燃焼(COガス生成)、酸化鉄の還元(COガス生成)及びCOガスの燃焼(CO生成)が行われ、(2)酸素吹き込みランス2の周囲の炉内空間では、火点3中やスラグ層4中で生成したCOガスが酸素ジェットに巻き込まれることによるCOガスの燃焼(COの生成)や、炉内に飛散した炭材によるCOガスの還元(ソリューションロス)が起きる。
酸化鉄含有鉄原料の溶解に必要なエネルギーを高効率で得るためには、炉底から吹き込まれた炭材の系外への飛散を最小限に抑えつつ炭材を燃焼させるとともに、酸素吹き込みランスの周囲ではCOガスをさらに燃焼させることでCOガスを生成すること、すなわち、高い二次燃焼率を得ることが必要である。そのためには、酸素ジェットを炉内に多数形成することで溶鉄面及びスラグ面に広く衝突させること、並びに、酸素ジェット周囲から酸素ジェットへのCOガスの巻き込み量を多くすること、が必要である。
Figure 0006515284
《ノズル吐出孔数について》
そこで、酸素吹き込みランスに設けられるノズル吐出孔数をできるだけ多くし、かつ、酸素吹き込みランスからみた立体角を有効に利用するために、本発明では、酸素吹き込みランスの中心軸を含み、同心円上に外側ノズル吐出孔と内側ノズル吐出孔とを配置する場合の条件について、以下のように検討した。ここで、内側ノズル吐出孔とは、酸素吹き込みランスの端部において、相対的に酸素吹き込みランスの中心軸側に位置するノズル吐出孔をいい、外側ノズル吐出孔とは、酸素吹き込みランスの端部において、上記内側ノズル吐出孔の外側(中心軸に向かう方向とは逆の方向)に位置するノズル吐出孔をいう。
[ノズル吐出孔数と配置]
「内側に配置するノズル吐出孔(すなわち、内側ノズル吐出孔)の数n2を0として外側に配置するノズル吐出孔(すなわち、外側ノズル吐出孔)の数n1を変化させる」条件1と、「内側ノズル吐出孔の数n2を1以上として外側ノズル吐出孔の数n1を変化させる」条件2の2つの条件において、内側ノズル吐出孔から吐出される酸素ジェットと外側ノズル吐出孔から吐出される酸素ジェットとが合体することなく酸素ジェットを形成できる条件について、検討した。
ノズル吐出孔数が増えるほど、鉄浴湯面に衝突する酸素ジェットの面積(火点面積に相当する。)を増やすことができるため好ましい。そこで、汎用熱流体解析ソフトウェアであるアンシス・ジャパン(株)製のFLUENT(登録商標)を使用して数値流体解析を行い、鉄浴湯面位置での酸素ジェットの衝突面積比を調査した。ここで、酸素ジェットの衝突面積比とは、鉄浴湯面での酸素ジェットの流速が20m/s以上である領域の面積の総和と、炉の全鉄浴湯面面積と、の比をいう。
その結果、図2に示すように、「n1+n2」が5以上で酸素ジェットの衝突面積比が顕著に増加し、「n1+n2」が7を超えると、その増加代は飽和することがわかった。また、条件1(白い丸)に比べて内側にノズルを配置した条件2(黒い丸)の方が、酸素ジェットの衝突面積比を大きくすることができることが明らかとなった。また、内側に配置するノズルから吐出された酸素ジェットが鉄浴湯に衝突して生成したCOガスは、上昇中に、外側に配置するノズルから吐出された酸素ジェットと近接するため、効率的に巻込まれて燃焼される。ここで、図2における条件2の結果は、n2の値を1としてn1の値を変化させた結果であるが、n1及びn2の値を条件2に則して共に変化させた場合であっても、図2と同様の傾向を示した。なお、外側に配置するノズル吐出孔数n1は、酸素吹き込みランス中心軸に対して直交する面内の噴流分布の均一性を確保する点から、3以上とすることが必要である。
以上の検討結果から、本実施形態に係る酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法で用いられる酸素吹き込みランスのノズル条件として、以下の式(1)で表わされる条件を全て満足することが重要であることが明らかとなった。
n1≧3、n2≧1、n1+n2≧5 ・・・(1)
なお、外側ノズル吐出孔の数n1と、内側ノズル吐出孔の数n2の具体的な値については、上記式(1)で表わされる条件を全て満たしさえすれば、特に限定されるものではないが、酸素吹き込みランスの中心軸に対して対称に外側ノズル吐出孔及び内側ノズル吐出孔を配置することが可能な数とすることが好ましい。
《外側ノズル吐出孔スロート径と出口径》
還元溶解炉の上吹きランスノズルは、ガス圧を有効に流速へと変換して溶鉄に酸素を供給するために、ラバールノズルという形状をとる。図3にその形状を示すように、断面積が最小の部分をスロート部と呼び、その径をスロート径と呼ぶ。また、ノズル出口の最大径を出口径と呼ぶ。ノズルの最小断面積の部分での流れの速度が音速に等しくなったスロート部(マッハ数=1)で、質量流量は最大となる。更に流量を増加させたい場合は、スロート部から出口に向かうにつれて断面積を拡大することで、超音速(マッハ数>1)となり、最大の質量流量を供給することができる。この超音速ジェットのノズル出口での圧力と、超音速ジェットが噴出していく場の雰囲気圧と、が等しい場合の膨張挙動のことを、適正膨張という。適正膨張の場合、超音速ジェットはそのまま雰囲気場にスムーズに流れていき、衝撃波の発生といった大きな変化は生じない。
図3(a)に示すように、「外側ノズル吐出孔の数n1(白丸)が4で、内側ノズル吐出孔の数n2(斜線)が1(中心軸上に配置)である」条件3の条件において、外側ノズル吐出孔の出口径(D1e)とスロート径(D1t)との比を変化させて、酸素ジェットのコア長さを短くし、COガス巻込みやすい自由噴流を長くできる条件について、検討した。出口径とスロート径の比を正しく制御し、噴流を適正に膨張する場合を除き、ジェットの吹きだし口の圧力が雰囲気圧より小さく(大きく)なり、外側の圧力と一致させるために、衝撃波が発生し、外側の雰囲気圧力に等しくなるように調整される。この衝撃波が発生することでエネルギーロスが生じ、酸素ジェットのコア長さが短くなり、COガスの巻込みやすい条件となる。汎用熱流体解析ソフトウェアであるアンシス・ジャパン(株)製のFLUENT(登録商標)を使用して数値流体解析を行い、酸素ジェットのコア長さと出口径とスロート径との比(D1e/D1t)の関係を調査した。
その結果、図4に示すように、適正膨張から離れるに従って、コア長さが短くなることが分かる。特に、ストレートノズルにすることによって極端にコア長さが低減する。過膨張によってもコア長さが低減するが、過膨張の場合にはノズル内が極端に低圧になるため、飛散粒鉄の侵入を招き、ノズル損耗が発生する恐れがある。
《ノズル吐出孔スロート径比率と吐出角度》
次に、図3(a)に示すように、「外側ノズル吐出孔の数n1(白丸)が4で、内側ノズル吐出孔の数n2(斜線)が1(中心軸上に配置)である」条件3と、図3(b)に示すように、「外側ノズル吐出孔の数n1(白丸)が3で、内側ノズル吐出孔の数n2(斜線)が3である」条件4の2つの条件において、ノズル吐出孔スロート径と吐出角度とを変化させて、酸素ジェットを合体させることなく、酸素ジェットを形成できる条件について検討した。
以下において、外側に同心円上に配置する外側ノズルの吐出孔スロート径をD1tとし、内側に同心円上に配置する内側ノズルの吐出孔スロート径をD2tとする。また、図5に示したように、外側に同心円上に配置する外側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度をθ1とし、内側に同心円上に配置する内側ノズルの吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度をθ2とする。また、以下に示す図6及び図7において、白い四角で表わしたプロットが条件3に対応し、黒い四角で表わしたプロットが条件4に対応している。
《ノズル吐出孔スロート径比について》
酸化鉄含有鉄原料の溶解に必要なエネルギーを高効率で得るためには、鉄浴湯面及びスラグ面に対して、均一に酸素ジェットを衝突させることが好ましい。そのためには、ノズル吐出孔スロート径の比「D1t/D2t」を適切に制御することが重要である。そこで、汎用熱流体解析ソフトウェアであるアンシス・ジャパン(株)製のFLUENT(登録商標)を使用して数値流体解析を行い、鉄浴湯面高さでの酸素ジェットの広がった距離(半径)を鉄浴湯面高さにおける半径で除した値(以下、酸素ジェットの到達距離比という。)と、ノズル吐出孔スロート径比(D1t/D2t)との関係を調査した。
得られた結果を、図6に示す。かかる検討結果から、以下の式(2)に示したように、ノズル吐出孔スロート径比「D1t/D2t」を1.1以上2以下とすることで、鉄浴湯面及びスラグ面に分散して酸素ジェットを衝突させることができることがわかった。ノズル吐出孔スロート径比「D1t/D2t」が1.1未満である場合には、内側の酸素ジェットが強すぎるため、外側の酸素ジェットを内側に引き寄せてしまい、その結果、酸素ジェットの広がりが小さくなる。一方、ノズル吐出孔スロート径比「D1t/D2t」が2超過となる場合には、中心の酸素ジェットの意味がなくなり、火点面積の増加が図れず、また、炉壁の溶損が顕著となるため、好ましくない。なお、ノズル吐出孔スロート径比「D1t/D2t」は、より好ましくは、1.4以上1.8以下である。
1.1≦D1t/D2t≦2.0 ・・・(2)
[ノズル吐出角度について]
次に、上記流体解析手法により、外側に同心円上に配置する外側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ1、及び、内側に同心円上に配置する内側ノズルの吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ2と、酸素ジェットが半径方向にどこまで広がって鉄浴湯面に衝突したかを示す指標である酸素ジェットの到達距離比と、の関係について調査した。
得られた結果を、図7に示す。かかる検討結果から、ノズル吐出角度差「θ1−θ2」が15°以上であれば、酸素ジェットの合体を抑制できることがわかった。また、ノズル吐出角度差「θ1−θ2」が25°超過となる場合には、炉の側壁に衝突する可能性があり、酸素ジェットの合体を抑制できない可能性があることが明らかとなった。従って、ノズル吐出角度差「θ1−θ2」の最大値は25°とすることが好ましい。上記の関係を関係式として示すと、以下の(3)のようになる。なお、ノズル吐出角度差「θ1−θ2」は、より好ましくは、15°以上20°以下である。
15°≦θ1−θ2≦25° ・・・(3)
以上の結果から、鉄を主成分とし、酸化鉄、CaO、SiOを含む酸化物、並びに、炭素含有物質を含有した粒及び/又は粉状の酸化鉄を含有する鉄原料を、予備還元炉により加熱還元処理した後、当該鉄原料を溶解精錬炉の溶融鉄浴に投入し、炭素含有燃料を添加しつつ酸素の吹き込みを行うことにより還元及び溶解する方法で用いられる、酸素の吹き込みを行うための酸素吹き込みランスとして、以下のようなノズル条件を満たすものを用いることが好ましいことが明らかとなった。
すなわち、酸素吹き込みランスの端部では、相対的に酸素吹き込みランスの中心軸側に位置する内側ノズル吐出孔と、当該内側ノズル吐出孔の外側に位置する外側ノズル吐出孔と、が、それぞれ同心円上に配設されており、外側に同心円上に配置される外側ノズル吐出孔のノズル吐出孔数n1と、内側に同心円上に配置される内側ノズル吐出孔のノズル吐出孔数n2とが、上記関係式(1)を全て満足し、外側ノズル吐出孔が、ストレートノズルである酸素吹き込みランスである。
このような酸素吹き込みランスを、酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法に利用することで、かかる還元・溶解方法では、酸素ジェットを合体することなく広角かつソフトブローで酸素を吹き込むことができ、鉄の燃焼を最少に抑えた状態で火点を鉄浴湯面全体に形成することができる。その際、炉底からキャリアーガスとともに吹き込まれた炭材がスラグ中で燃焼するため、炉内へ飛散する無効炭材が減少する。その結果、ソリューションロスが低減する。加えて、炉内で発生したCOガスを酸素ジェットへ大量に巻き込むことができるため、二次燃焼率が高くなる。また、前述したソリューションロスの低減によって二次燃焼率を高くすることができる。その結果、吹き込み酸素量や炉底からの炭材の吹き込み量を低減することも併せて可能となるため、酸素原単位や炭材原単位を低減することができる。加えて、炉内湯面全体で火点を形成することでスラグの滓化も改善することができる。
また、このような酸素吹き込みランスにおいて、更に、上記関係式(2)や関係式(3)が更に満たされることで、より効率良く二次燃焼率を向上させるとともに、吹き込み酸素量や炭材等の使用量をより低減することが可能となる。
以上、本発明の実施形態に係る酸素吹き込みランス、及び、かかる酸素吹き込みランスを利用した酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法について、詳細に説明した。
以下に本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を超えないかぎり、様々な変更や修正が可能であることは言うまでもない。
100トン規模の転炉型溶解炉において、溶解試験を実施した。種湯に炉の上方から、鉄含有原料を投入して溶解を行ったが、主たる鉄含有原料として、還元鉄を使用した。還元鉄は、主原料として溶解炉、転炉、電気炉等から発生するダストを用い、還元剤としてCを含有する炭材を配合、混錬、造粒したものを、還元炉にて溶解、還元処理することにより得た。また、造粒は、双ロール型のブリケットマシーンを使用して行ったが、ブリケットではなく、転動法によるペレット造粒であってもよい。還元炉は、炉直径20mの回転床炉型の炉を使用し、LNGバーナーで還元温度を1300〜1400℃に制御して還元を行った。還元鉄中の鉄分の金属化率は、78〜83%であった。
転炉型溶解炉の溶解試験では、上吹きランスから10000Nm/hで酸素を供給するとともに、溶解後の温度を1390〜1410℃、溶銑のC濃度を4.0〜4.3%に維持できるように、底吹きノズルからNガスをキャリアーガスとして炭材供給を行った。スラグは、溶解終了後のスラグ排出量を調整するとともに炭材や還元鉄から発生するスラグの成分調整を行うために、石灰やMgOを添加し、スラグの塩基度(CaO/SiO)が1.5〜1.7になるように副材添加量を調整した。以下の表2に、上吹きランスとして利用した酸素吹き込みランスの形状(すなわち、ノズル条件)と、溶解吹錬した際の平均の二次燃焼率、溶銑1トン当たりの製造に要した酸素使用量の比率、及び溶解吹錬時の耐火物の溶損量の比率を示した。
なお、以下に示す表2において、各酸素吹き込みランスのノズル径は、溶解吹錬時のノズル前圧がほぼ一定になるように、ノズル総断面積をほぼ一定とするように決定した。また、ランス高さ(溶銑面とランス先端との距離)を、一定(3.0m)とした。また、表2に示す各酸素吹き込みランスにおいて、比較例1〜2、及び、実施例1〜5は、外側ノズル吐出孔をストレートノズルに設計し、比較例3〜6は、外側ノズル吐出孔をストレートノズルに設計しなかった。ここで、以下の表2において、ノズル吐出孔径の欄におけるD1e,D2eは、それぞれ外側ノズル吐出孔の出口径、及び、内側ノズル吐出孔の出口径を表わしている。
Figure 0006515284
表2に示すように、比較例1〜6に比べ、ノズル吐出孔数「n1+n2」を5以上、かつ外側ノズルをストレートノズルに設計した実施例1〜5の二次燃焼率は、29%以上であり、実施例1〜5のそれぞれのノズルをストレートノズルに設計しなかった比較例3〜6の場合に比べて、酸素原単位が2%以上増加している。
また、ノズル吐出孔スロート径比「D1t/D2t」を1.1以上とした実施例2〜5は、実施例1に比べて、さらに、二次燃焼率及び酸素使用量が改善できた。加えて、ノズル吐出角度差「θ1−θ2」を15°以上とした実施例4と5は、実施例1〜3に比べて二次燃焼率が1%以上、酸素使用量が1%以上も改善できており、本発明の適用により溶解熱効率を顕著に向上できることを確認できた。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 還元溶解炉
2 酸素吹き込みランス
3 火点
4 スラグ層

Claims (6)

  1. 鉄を主成分とし、酸化鉄、CaO、SiOを含む酸化物、並びに、炭素含有物質を含有した粒及び/又は粉状の酸化鉄を含有する鉄原料を、予備還元炉により加熱還元処理した後、当該鉄原料を溶解精錬炉の溶融鉄浴に投入し、炭素含有燃料を添加しつつ酸素の吹き込みを行うことにより還元及び溶解する方法において、
    酸素の吹き込みを行う酸素吹き込みランスに、相対的に前記酸素吹き込みランスの中心軸側に位置する内側ノズル吐出孔と、当該内側ノズル吐出孔の外側に位置する外側ノズル吐出孔と、を同心円上に設け、
    外側ノズル吐出孔数n1と、内側ノズル吐出孔数n2とが、以下の関係式(1)を全て満足し、
    前記外側ノズル吐出孔が、ストレートノズルである、酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法。

    n1≧3、n2≧1、n1+n2≧5 ・・・(1)
  2. 外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔のスロート径D1tと、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔のスロート径D2tと、の間に、以下の関係式(2)が成立する、請求項1に記載の酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法。

    1.1≦D1t/D2t≦2.0 ・・・(2)
  3. 外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ1と、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ2と、の間に、以下の関係式(3)が成立する、請求項1又は2に記載の酸化鉄含有鉄原料の還元・溶解方法。

    15°≦θ1−θ2≦25° ・・・(3)
  4. 鉄を主成分とし、酸化鉄、CaO、SiOを含む酸化物、並びに、炭素含有物質を含有した粒及び/又は粉状の酸化鉄を含有する鉄原料を、予備還元炉により加熱還元処理した後、当該鉄原料を溶解精錬炉の溶融鉄浴に投入し、炭素含有燃料を添加しつつ酸素の吹き込みを行うことにより還元及び溶解する方法で用いられる、酸素の吹き込みを行うための酸素吹き込みランスであって、
    前記酸素吹き込みランスの端部では、相対的に前記酸素吹き込みランスの中心軸側に位置する内側ノズル吐出孔と、当該内側ノズル吐出孔の外側に位置する外側ノズル吐出孔と、が、それぞれ同心円上に配設されており、
    外側ノズル吐出孔数n1と、内側ノズル吐出孔数n2とが、以下の関係式(1)を全て満足し、
    前記外側ノズル吐出孔が、ストレートノズルである、酸素吹き込みランス。

    n1≧3、n2≧1、n1+n2≧5 ・・・(1)
  5. 外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔のスロート径D1tと、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔のスロート径D2tと、の間に、以下の関係式(2)が成立する、請求項4に記載の酸素吹き込みランス。

    1.1≦D1t/D2t≦2.0 ・・・(2)
  6. 外側に同心円上に配置される前記外側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ1と、内側に同心円上に配置される前記内側ノズル吐出孔の中心線と酸素吹き込みランスの中心線とがなす角度θ2と、の間に、以下の関係式(3)が成立する、請求項4又は5に記載の酸素吹き込みランス。

    15°≦θ1−θ2≦25° ・・・(3)
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