JP6506613B2 - 建築物構造 - Google Patents

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Description

本発明は、主に鉄筋コンクリート造等の集合住宅における建築物構造に関するものである。
主に鉄筋コンクリート造の集合住宅における従来の工法の一例として、図5に示すように、排水立て管10を壁4により仕切られた居室(居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。以下同じ。)外に配置する工法が知られている。この工法では、水廻り器具30a〜30cからの排水をそれぞれ、排水立て管10に排出させるため、配管の一部としての管体40a〜40cに勾配を設けるとともに当該管体40a〜40cをそれぞれ壁4に貫通させている。
また、水廻り器具の排水システムとしては、サイホン力を利用して排水を行うサイホン排水システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−315036号公報
サイホン排水システムは、スラブの上面に対して、ほぼ勾配なく小口径で排水が可能なサイホン排水管を配置することができる。このため、階高を下げたり、居室内の高さ方向の空間を広げる場合に有効である。
しかしながら、図5に示す、従来の建築物構造に採用した場合、管体40aと同様、サイホン排水管の一部を、壁4に形成した貫通孔(横孔)4a´に貫通させる必要があり、この場合、以下のような問題がある。
例えば、図6に示すように、居室部分と居室外部分とを壁4で仕切る場合、壁4を挟んで居室部分と反対側の居室外部分の側が屋外となるため、スラブ50の上面に防水対策(ウレタンによる防水等)を施し、壁4の側面に沿って防水対策部分60の端部60aを立ち上げる必要がある。この場合、壁4に形成される貫通孔4a´は、防水対策部分60と干渉しないよう、防水対策部分60の端部60aよりも高い位置に形成する必要がある。
また、壁4が所謂従来のRC壁の場合、壁4の貫通孔4a´周りに開口補強筋を入れて当該壁4を補強する必要がある場合がある。この場合、壁4の貫通孔4a´よりも下側の壁部分に開口補強筋を入れるスペースを確保するため、貫通孔4a´をスラブ50の上面50fから高い位置に形成する必要がある。また、壁4がALC等のPC壁である場合、当該壁4をスラブ50に対して固定する必要があるので、壁4の貫通孔4a´よりも下側の壁部分に固定具を取り付けるためのスペースを確保する必要がある。この場合も、貫通孔4a´を固定具よりも高い位置に形成する必要がある。
ところが、上記のように、貫通孔をスラブ50の上面50fから高い位置に形成した場合、配管の一部が登り勾配となり、サイホン排水能力が悪化するという問題があった。
本発明の課題は、配管の登り勾配を小さく抑えつつ、壁に形成した貫通孔よりも下側に一定の壁部分を確保することが可能な、新規の建築物構造を提供することにある。
本発明に係る建築物構造は、第1スラブと、前記第1スラブの上面よりも低い位置に上面がある第2スラブと、前記第2スラブの上面上に形成された壁と、前記壁に形成された貫通孔を通して当該壁を貫通するサイホン排水管とを備え、
前記貫通孔の下端の前記第2スラブの上面からの高さが、30mm以上であることを特徴とする。
本発明に係る建築物構造によれば、壁に形成した貫通孔よりも下側に一定の壁部分を確保しつつ、配管の登り勾配を小さく抑えることが可能となる。
本発明に係る建築物構造は、前記貫通孔の中心軸の前記第1スラブの上面からの高さが、0mm以上であることが好ましい。
この場合、壁に形成した貫通孔よりも下側に、壁部分をより十分に確保することができる。
本発明に係る建築物構造は、前記貫通孔の下端の前記第1スラブの上面からの高さが、50mm以下であることが好ましい。
この場合、配管の登り勾配を小さく抑えることができる。
本発明に係る建築物構造では、前記サイホン排水管の上流側に連設される水廻り器具の排水トラップが、前記第1スラブの上面を上方から視た平面視で、前記第1スラブの上面の上方に設置されることが好ましい。
この場合、居室内の第2スラブの領域を極小化させて第1スラブの領域を拡大することにより、当該居室内で天井高が落ち込む第2スラブの領域の拡大を抑制できる。なお、本発明において、「サイホン排水管の上流側に連設される水廻り器具の排水トラップ」という意味には、排水トラップがサイホン排水管の上流側で直結されている場合は勿論、排水トラップとサイホン排水管との間に貯留槽などの他の部材を介在させている場合も含まれる。
本発明に係る建築物構造では、前記壁は、前記壁と向かい合う前記第1スラブの端から間隔を置いて前記第2スラブの上面上に設置されたものであることが好ましい。
この場合、例えばRC壁の場合に開口補強筋を入れやすくなり、ALC等のPC壁の場合は前記壁の両壁面の側に壁の固定具を固定するためのスペースを確保することができる。
本発明によれば、配管の登り勾配を小さく抑えつつ、壁に形成した貫通孔よりも下側に一定の壁部分を確保することができる、新規の建築物構造を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る建築物構造を、一部断面として模式的に示す図である。 図1の要部拡大図である。 (a)は、第2スラブ上に設置された壁の貫通孔付近を、第2スラブを断面とした状態で、その壁面の側から模式的に示した図であり、(b)は(a)のI−I断面を、一部側面図で示した図であり、(c)は、第2スラブ上に設置された壁の貫通孔と第1スラブの上面との関係を模式的に示す断面図であり、(d)は、本発明の他の実施形態に係る建築物構造に採用される、第1および第2スラブと壁とを模式的に示す断面図である。 本発明のさらに他の実施形態に係る建築物構造を、一部断面として示す模式図である。 従来のSI型マンションに係る建築物構造を、一部断面として示す模式図である。 壁が起立するスラブの上面に施された防水対策を例示的に示す模式断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係る建築物構造を詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下方向(鉛直方向)とは重力方向を意味し、図面上下方向を示す。すなわち、図面上側から下側に向かう方向が物体に働く重力の方向となる。また、水平方向とは、上下方向に対して直交する方向を意味する。
図1に示す実施形態に係る建築物構造は、主として複数階で構成された集合住宅等の建築物などの配管システムに採用される。以下、サイホン力を使用して、集合住宅の各階の排水を下方に流すサイホン排水配管システムを例に、本実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る建築物構造では、スラブは2つの部分で構成されている。符号1は、第1スラブであり、符号2は、第2スラブである。第2スラブ2は、第1スラブ1の上面1fよりも低い位置、すなわち、下方にある、第1の上面2f1 と、第1スラブ1の上面1fと同一の高さにある、第2の上面2f2 と、を有している。本実施形態では、第1スラブ1の上面1fおよび第2スラブ2の第1の上面2f1 ならびに第2の上面2f2 は、それぞれ、水平方向に伸びる平坦な水平面で構成されている。すなわち、第1スラブ1の上面1fと第2スラブ2の第1の上面2f1 および第2の上面2f2とは平行に配置されている。さらに本実施形態では、第1スラブ1の一方の端3(以下、「第1スラブ1の端3」ともいう)が第2スラブ2との間に段差を形成している。本実施形態では、第1スラブ1の端3は、鉛直方向に延在している。なお、本実施形態では、第1スラブ1および第2スラブ2は一体に形成されている。
符号4は、第2スラブ2上に設置された壁である。本実施形態では、壁4は、第2スラブ1の第1の上面2f1 から起立するRC壁である。壁4は、第1スラブ1の側を住居等の居室部分として区画する一方、壁4を挟んで居室部分と反対の側の第2スラブ2の側を共用廊下等の居室外部分として区画している。本実施形態では、居室部分には床材5が配置されており、当該居室部分が二重床として構成されている。本実施形態では、床材5は、緩衝材や支持ボルト等の支持材6を介して、第1スラブ1の上面1f上に配置されている。これにより、本実施形態では、床材5の下方に形成される床下ふところは、床材5と第1スラブ1との間に形成された第1床下ふところS1と、床材5と第2スラブ2との間に形成された第2床下ふところS2からなる。
壁4には、貫通孔4aが形成されている。本実施形態では、壁4に形成された貫通孔4aは、第2スラブ2の上面2f1 の上方に、無勾配で、ほぼ水平(好適には、水平)に形成されている。また、本実施形態では、壁4は、当該壁4と向かい合う第1スラブ1の端3から間隔Dを置いて、すなわち、壁4の第1スラブ1の側の壁面と当該壁4と対向する位置に配置された第1スラブ1の端3との間に間隔Dが置かれて、第2スラブ2の上面2f1 上に設置されており、鉛直方向に延在している。これにより、図1および図2に示すように、第1スラブ1の端3と壁4との間には、隙間Cが形成される。なお、壁4に形成された貫通孔4aは、本実施形態のように、水平に形成されたものに限定されるものではなく、水平でなくともよい。また、本実施形態では、壁4は、RC壁として説明したが、予め工場生産された壁を現場に搬入してスラブ等に連結する、いわゆるPC壁であってもよい。
第1スラブ1および第2スラブ2は、集合住宅の各階を上下に区画する床スラブを構成している。本実施形態では、第2スラブ2には、第2スラブ2を上下に貫通する貫通孔2a、2bが形成されている。
符号10は、排水を下方に流す排水立て管である。排水立て管10は、第2スラブ2に形成された貫通孔2aを通って、集合住宅の各階の第2スラブ2を貫通している。なお、本実施形態では、排水立て管10を配置した貫通孔2aの内側はモルタルM等で封止されている。また、本実施形態では、壁4と、第2スラブ2の第1の上面2f1 と第2の上面2f2 との間に形成された段差との間には窪みが形成されており、この窪みはモルタルM等で埋め戻されている。より具体的には、モルタルM等で埋め戻された部分の上面は、メータボックスMB等が配置される空間の床面を構成し、第2スラブ2の第1の上面2f2 は共用廊下の床面を構成している。モルタルM等で埋め戻された部分の上面は、第2スラブ2の第2の上面2f2 と同一の面とし、または、第2スラブ2の第2の上面2f2 よりも高くすることができる。この場合、モルタルM等で埋め戻された部分の上面に水溜りが生じることを抑制できる。さらに、モルタルM等で埋め戻された部分において、モルタルMと第2スラブを貫通する貫通孔(図示せず)を設けることで、水溜りの発生を更に抑制することが出来る。
なお、窪みはモルタルM等によって埋め戻されなくてもよく、その場合は第2スラブを貫通する貫通孔(図示せず)を設けることで雨水等が窪みに溜まる水溜りの発生を抑制することが出来る。
図1中、符号20は、その一部が壁4に形成された貫通孔4aを通して当該壁4aを貫通するサイホン排水管である。本実施形態では、サイホン排水管20は、横引き管21および竪管22で形成されている。また、符号30は、洗面台や浴室(ユニットバス)等の水廻り器具である。本実施形態では、図1に示すように、水廻り器具30は、例示的に、浴室(ユニットバス)30aである。水廻り器具30は、その直下に悪臭や害虫などの進入を防止するための排水トラップ31を有している。本実施形態では、排水トラップ31は、床材5よりも下方の、水廻り器具30の下端に配置されている。また、本実施形態では、排水トラップ31は、第1スラブ1の上面1fを上方から視た平面視で、第1スラブ1の上面1fの上方に配置されている。好適には、壁4と当該壁4と向かい合う第1スラブ1の端3との間、すなわち、壁4の第1スラブ1の側の壁面と当該壁4と対向する位置に配置された第1スラブ1の端3との間の間隔Dを、壁4と水廻り器具30との間、すなわち、壁4の第1スラブ1の側の壁面と当該壁4と向かい合う水廻り器具30の壁4の側の端との間の間隔よりも短くなるように配置する。本実施形態では、水廻り器具30も含め、浴室全体が第1スラブ1の上方に配置されている。
排水トラップ31は、水で通路を遮断する水封式、逆止弁等を用いた自封式その他様々なものを採用することができる。また、排水トラップ31は、接続管32を介して貯留槽33に連通する。図1に示すように、サイホン排水管20の一方の端部(横引き管21の端部)20aは、貯留槽33に連設されている。すなわち、本実施形態では、排水トラップ31を有する水廻り器具30は、貯留槽33および接続管32を介して、サイホン排水管20の上流側に間接的に連設されている。そして、サイホン排水管20の他方の端部(竪管22の端部)は、排水立て管10に連設されている(ここでは、図示省略)。
上述のとおり、本実施形態では、サイホン排水管20は、貯留槽33に繋がる横引き管21を有する。横引き管21は、壁4に形成された貫通孔4aを通して、第1床下ふところS1内および第2床下ふところS2内(床下空間)の第1スラブ1の上面1fを、当該第1スラブ1の上面1fに沿って配置されている。横引き管21は、図2に示すように、第1スラブ1の上面1f上を無勾配で水平に配設されている。さらに、本実施形態では、横引き管21に繋がる竪管22は、第2スラブ2に形成された貫通孔2bを通して上下方向に貫通している。本実施形態では、竪管22は、排水立て管10に連設されている(ここでは、図示省略)。すなわち、竪管22は、横引き管21よりも低い位置で排水立て管10と合流している。サイホン排水管20は、サイホン排水管20内の流通が確保されるものであれば、複数の管体を組み付けて構成されたものでも、1つの管体として構成されたものでもよい。
貫通孔4aは、1つの貫通孔4aに1つの横引き管21を配置する構成とすることができるが、後述するように、1つの貫通孔4aに複数の横引き管21を配置する構成とすることもできる。さらに、壁4に複数の貫通孔4aを形成し、そのうち少なくとも1つの貫通孔4aに1つの横引き管21を配置し、他の少なくとも1つの貫通孔4aに複数の横引き管21を配置する構成とすることができる。本実施形態では一例として、図3(a)に示すように、貫通孔4aは、壁4の壁面の側から見た外観形状が長方形状の開口部として形成されている。これにより、貫通孔4aには、複数(本実施形態では、例示的に4本)のサイホン排水管20の横引き管21を貫通させることができる。
本実施形態では、貫通孔4aの下端の第2スラブ2の第1の上面2f1 からの高さh4(以下、「貫通孔下端高さh4」ともいう)が、30mm以上(h4≧30mm)とされている。
この場合、第2スラブ2の第1の上面2f1 と壁4の下端面との接続面に対して防水対策を施すときに、貫通孔4aの直下の壁4の壁面および第2スラブ2の第1の上面2f1 に、当該貫通孔4aと干渉させることなく、例えば、ウレタン樹脂等の防水材料を塗布することができる。さらに、貫通孔下端高さh4を30mm以上とすれば、壁4を第2スラブ2の第1の上面2f1 に取り付けるとき、貫通孔4aの直下の壁4の壁面および第2スラブ2の第1の上面2f1 に、当該貫通孔4aと干渉させることなく、固定具(図示省略)を配置することができる。また、貫通孔下端高さh4を30mm以上とすれば、壁4がRC壁であって、貫通孔4aの周りを補強する必要がある場合、例えば、図3(a)、(b)に示すように、壁4の貫通孔4a周りに、開口補強筋Rを入れて当該壁4の貫通孔4a周辺を部分的に補強することができる。
加えて、本実施形態では、図3(c)に示すように、第1スラブ1の端3と壁4との間には隙間Cが形成されているため、居室部分の隙間C(第2床下ふところS2)の側からも、居室外部分(壁4を挟んで隙間Cと反対)の側からも、防水対策等の作業を行うことができる。
加えて、図1に示すように、本実施形態では、第1スラブ1の上面1fが第2スラブ2の第1の上面2f1 よりも高い位置にあるため、サイホン排水管20の横引き管21を第1スラブ1の上面1f1 に沿わせて配置するときも、居室部分では、第2スラブ2の第1の上面2f1 から貫通孔4aまでの高さ分よりも小さい、第1スラブ1の上面1fから貫通孔4aまでの高さ分だけ、サイホン排水管20の横引き管21を立ち上げさせて貫通孔4aに通せばよい。すなわち、本実施形態では、居室部分が第2スラブのみからなる、従来の建築物構造のように、第2スラブ2の第1の上面2f1 からサイホン排水管20の横引き管21を壁4に沿って大きく立ち上げさせて貫通孔4aに通す必要がない。これにより、本実施形態では、サイホン排水管20の横引き管21を第1スラブ1の上面1fに沿うように配置して、所望の高さの貫通孔4aに通しても、排水性能を確保することができる。本発明の最も好適な実施形態は、本実施形態のように、サイホン排水管20の横引き管21が水平になるように設定されたものである。
さらに、本実施形態では、貫通孔4aの中心軸Oの第1スラブ1の上面1fからの高さが、0mm以上とされている。すなわち、貫通孔4aの中心軸Oが、第1スラブ1の上面1fの高さ以上の高さ位置にある。図3(c)を参照して説明すると、貫通孔4aの中心軸Oの第2スラブ2の第1の上面2f1 からの高さh0(以下、「貫通孔中心高さh0」ともいう)が、第1スラブ1の上面1fの第2スラブ2の第1の上面2f1 からの高さh1(以下、「第1スラブ高さh1」ともいう)以上(h0≧h1、すなわち、h0−h1≧0mm)となるように、貫通孔4aが形成されている。この場合、壁4に形成した貫通孔4aよりも下側に、壁部分をより十分に確保することができる。
さらに、第1スラブ1の上面1fに沿ってサイホン排水管20の横引き管21を配置する場合には、図3(c)に示すように、壁4に形成される貫通孔4aの下端は、第1スラブ1の上面1fの高さと同一となる高さ位置にある、すなわち、貫通孔下端高さh4が第1スラブ高さh1と同一である(h4=h1)ことがより好ましい。これにより、図2に示すように、貫通孔4aを通るサイホン排水管20の横引き管21は、第1スラブ1の上面1fとほぼ水平(好適には、水平)に無勾配で配設される。
また、本発明は、貫通孔下端高さh4が第1スラブ高さh1を超えることを許容しているが、本実施形態では、貫通孔4aの下端の第1スラブ1の上面1fからの高さが、50mm以下とされている。すなわち、貫通孔下端高さh4から第1スラブ高さh1を減じた高さが50mm以下(h4−h1≦50mm)となるように、貫通孔4aが形成されている。
この場合、効率的なサイホン排水能力を維持することができる。なお、本発明では、貫通孔4aの下端が第1スラブ1の上面1fより下方(h4<h1,h4−h1<0)にあってもよい。
このように、本実施形態に係る、新規の建築物構造によれば、サイホン排水管20の横引き管(配管)21の登り勾配を小さく抑えつつ、壁4に形成した貫通孔4aよりも下側に一定の壁部分を確保することできる。
また、本実施形態に係る建築物構造では、図1に示すように、サイホン排水管20の上流側に連設される水廻り器具30の排水トラップ31を、第1スラブ1の上面1fを上方から視た平面視で、第1スラブ1の上面1fの上方に配置している。この場合、居室内の第2スラブ2の領域(すなわち、図面右側の天井高hrで規定される空間領域)を壁4の側に極小化させて第1スラブ1の領域(すなわち、図面左側の天井高hrで規定される空間領域)を壁4の側に拡大することにより、当該居室内で天井高hrが落ち込む第2スラブ2の領域の拡大を抑制できる。これにより、図1に示すように、居室内では、階高Hそのものを高めなくとも、天井高hrの高い領域を広く確保することができる。
また、本実施形態に係る建築物構造では、壁4は、壁4と向かい合う第1スラブ1の端3から間隔Dを置いて第2スラブ2の第1の上面2f1 上に設置されている。この場合、壁4の両壁面の側に防水対策等のためのスペースを確保することができる。なお、間隔Dの値は、任意に定めることができるが、壁4の両壁面の側に防水対策等のためのスペースを確保することができる範囲で、小さく抑えることが好ましい。ただし、本発明によれば、図3(d)に示す他の実施形態のように、壁4は、第1スラブ1の端3から間隔Dを置かずに(隙間Cを作らずに)、第1スラブ1の端3と接触させた状態で、第2スラブ2の上面2f上に設置することも可能である。なお、本実施形態では、第2スラブ2の上面2fは、図1に示すような、段差を有しない平坦な面として形作られている。
また、本発明によれば、天井高hrは、サイホン排水管20の位置に特化して高めることができる。例えば、図1の実施形態に係る建築物構造は、主としてバリアフリーを想定し、床材5に段差を設けることなく、床材5の上面を水平面として構成している。これに対し、図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る建築物構造である。本実施形態は、床材5に段差を設けることを許容するものである。さらに詳細には、床材5の段差は、貯留槽33の近傍に形成されている。この場合、サイホン排水管20が配置される部分の床下ふところ(第1床下ふところS1´)だけを、さらに小さく(低く)抑えることができる。
上述したところは、本発明の幾つかの実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、サイホン排水管20(横引き管21)は、少なくとも1本とすることができる。また、上記の各実施形態では、水廻り器具30として、例えば、図5に例示する洗濯機30bを適用することができる。また、上記の各実施形態では、排水トラップ31は、水廻り器具30と別体に構成していたが、図5の洗面台30c(水廻り器具30)のように、当該水廻り器具30の下端に一体に設けることができる。また上記の各実施形態では、サイホン排水管20を貯留槽33に連結させているが、貯留槽33は省略することができる。さらに、上記の各実施形態では、サイホン排水管20は、排水立て管10に合流させているとして説明したが、サイホン排水管20は、排水立て管10に合流させることなく、サイホン排水能力が保持されるようにすることもできる。さらに、上記の各実施形態では、集合住宅で説明したが、一般建築など、様々な建築物に適用できる。また、上記の各実施形態に採用された個々の構成は、他の実施形態に対して適宜組み合わせて使用することができる。
様々な建築物においても、本発明に係る新規の建築物構造における構成を適用してスラブ上に形成した壁に貫通孔を形成し当該貫通孔にサイホン排水管を通して前記壁に貫通させて配置することが可能である。
1 第1スラブ
1f 第1スラブの上面
2 第2スラブ
2f 第2スラブの上面
2f1 第2スラブの上面
2f2 第2スラブの上面
3 第1スラブの端
4 壁
4a 貫通孔
5 床材
6 支持材
10 排水立て管
20 サイホン排水管
20a 一方の端部
21 横引き管(サイホン排水管(配管))
22 竪管(サイホン排水管)
30 水廻り器具
31 排水トラップ
32 接続管
33 貯留槽
C 隙間
D 間隔
O 貫通孔の中心軸
R 開口補強筋
H 階高
0 貫通孔の中心軸の第2スラブの上面からの高さ(貫通孔中心高さ)
1 第1スラブの上面のから第2スラブの上面からの高さ(第1スラブ高さ)
4 貫通孔の下端のから第2スラブの上面からの高さ(貫通孔下端高さ)
r 天井高
1 第1床下ふところ
1 ´ 第1床下ふところ
2 第2床下ふところ

Claims (4)

  1. 第1スラブと、
    前記第1スラブの上面よりも低い位置に上面がある第2スラブと、
    前記第2スラブの上面上に形成された壁と、
    前記壁に形成された貫通孔を通して当該壁を貫通するサイホン排水管と
    を備え、
    前記貫通孔の下端の前記第2スラブの上面からの高さが、30mm以上であって、
    前記サイホン排水管の上流側に連設される水廻り器具の排水トラップが、前記第1スラブの上面を上方から視た平面視で、前記第1スラブの上面の上方に設置されたことを特徴とする、建築物構造。
  2. 請求項1において、前記貫通孔の中心軸の前記第1スラブの上面からの高さが、0mm以上である、建築物構造。
  3. 請求項1または2において、前記貫通孔の下端の前記第1スラブの上面からの高さが、50mm以下である、建築物構造。
  4. 請求項1乃至のいずれか1項において、前記壁は、前記壁と向かい合う前記第1スラブの端から間隔を置いて前記第2スラブの上面上に設置されたものである、建築物構造。
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