以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の概略図である。また、図2は、図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図であり、図3は、図1に示すガイドカバーの斜視図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、外殻部材としてのハウジング10およびホルダ20を備えている。ハウジング10は、両端が開口した長尺円筒状の円筒状部材11と、円筒状部材11の一端を閉塞する閉塞部材15とを含んでおり、全体として有底長尺円筒状の形状を有している。ホルダ20は、ハウジング10の開口端を閉塞するように当該開口端に組付けられている。
ハウジング10およびホルダ20からなる外殻部材の内部には、内部構成部品としての点火器30、密閉容器40、ガス発生剤50、クッション材51、指向性付与部材としてのガイドカバー60、固定部材としてのコイルバネ70A、および、フィルタ80が収容されている。また、ハウジング10の内部には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤50が主として収容された燃焼室S1と、フィルタ80が配置されたフィルタ室S2とが設けられている。
円筒状部材11は、所定の部位に後述するガス噴出口13およびかしめ部14a,14bが設けられた周壁部12を有している。閉塞部材15は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、その周面に後述するかしめ固定のための環状溝部16を有している。ホルダ20は、ハウジング10の軸方向と同方向に沿って延びる中空開口部21を有する筒状の部材からなり、その外周面に後述するかしめ固定のための環状溝部22を有している。これらかしめ固定のための環状溝部16,22は、いずれも閉塞部材15の周面およびホルダ20の外周面に周方向に沿って延びるように形成されている。
閉塞部材15は、円筒状部材11の軸方向の一方の開口端を閉塞するように円筒状部材11に組付けられている。具体的には、円筒状部材11の上記一方の開口端に閉塞部材15が内挿された状態で、当該閉塞部材15の周面に設けられた環状溝部16に対応する部分の円筒状部材11の周壁部12が径方向内側に向けて縮径させられて当該環状溝部16に係合されることにより、閉塞部材15が円筒状部材11に対してかしめ固定されている。
ホルダ20は、円筒状部材11の軸方向の他方の開口端(すなわち、ハウジング10の開口端)を閉塞するように円筒状部材11に組付けられている。具体的には、円筒状部材11の上記開口端にホルダ20が内挿された状態で、当該ホルダ20の外周面に設けられた環状溝部22に対応する部分の円筒状部材11の周壁部12が径方向内側に向けて縮径させられて当該環状溝部22に係合されることにより、ホルダ20が円筒状部材11に対してかしめ固定されている。
これらかしめ固定は、円筒状部材11の周壁部12を径方向内側に向けて略均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、円筒状部材11の周壁部12には、かしめ部14a,14bが設けられることになり、当該かしめ部14a,14bがそれぞれ環状溝部16,22に密着することになる。これにより、円筒状部材11と閉塞部材15との間および円筒状部材11とホルダ20との間に隙間が生じることが防止されている。
円筒状部材11は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで円筒状に成形したプレス成形品にて構成されていてもよいし、STKMに代表される電縫管にて構成されていてもよい。特に、円筒状部材11を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管にて構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易に円筒状部材11を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。一方、閉塞部材15およびホルダ20は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
図1および図2に示すように、点火器30は、ホルダ20によって保持されている。点火器30は、ガス発生剤50を燃焼させるためのものであり、ハウジング10の内部の空間に面するように設置されている。より詳細には、ホルダ20は、点火器30をかしめ固定するためのかしめ部23をハウジング10の内部の空間に面する方の軸方向端部に有しており、点火器30が中空開口部21に内挿されてホルダ20の中空開口部21を規定する部分の壁部に当て留めされた状態で上述したかしめ部23がかしめられることにより、点火器30がホルダ20に挟持されて固定されている。
点火器30は、点火部31と、一対の端子ピン32とを含んでいる。点火部31の内部には、一対の端子ピン32に接続するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられており、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するように点火部31内に点火薬が充填されている。また、点火部31内には、必要に応じて伝火薬が装填されていてもよい。
ここで、抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が用いられ、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。また、伝火薬としては、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5−アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。なお、点火部31の外表面を規定するスクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン32を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の熱粒子は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
ホルダ20の外部に露出する方の軸方向端部には、上述した中空開口部21に連続して凹部24が設けられている。凹部24は、点火器30とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れる雌型コネクタ部を形成しており、当該凹部24内には、点火器30の端子ピン32の先端寄りの部分が露出して位置している。当該雌型コネクタ部としての凹部24には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン32との電気的導通が実現される。
図1に示すように、ハウジング10の内部の空間のうち、ホルダ20およびこれに組付けられた点火器30が配置された空間に隣接する空間には、密閉容器40が配置されている。密閉容器40は、カップ体41と、当該カップ体41の開口を閉塞するキャップ体42とを含んでおり、円筒状部材11の周壁部12に内挿されている。密閉容器40においては、カップ体41とキャップ体42とが組み合わされて接合されることにより、密閉容器40の内部に形成される収容空間43が当該密閉容器40の外部から気密に封止されている。
密閉容器40は、ガス発生剤50の燃焼によって少なくともその一部が破裂または溶融するように、機械的強度が低い材料からなる部材にて構成されている。より具体的には、カップ体41およびキャップ体42は、たとえば銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属製のプレス成形品や、射出成形やシート成形等によって形成された樹脂成形品等からなる。また、カップ体41とキャップ体42との接合には、ろう付けや接着、溶着、巻き締め(かしめ)等が好適に用いられる。当該接合の際に別途シール剤を使用することとすれば、気密性をさらに高めることもできる。
密閉容器40のカップ体41は、頂壁部41aと側壁部41bとを含んでいる。頂壁部41aは、ハウジング10の内部の空間を軸方向に区画するように位置することで密閉容器40のフィルタ室S2側に位置する軸方向端部を構成しており、側壁部41bは、頂壁部41aの外周側端部から円筒状部材11の内周面に沿ってホルダ20側に向けて延設されている。
なお、密閉容器40は、円筒状部材11の周壁部12に対して嵌合または遊嵌されており、円筒状部材11の周壁部12には、当該密閉容器40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、密閉容器40の外周面が円筒状部材11の内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、密閉容器40の外周面と円筒状部材11の内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。なお、組立ての容易化の観点からは、密閉容器40を円筒状部材11の周壁部12に対して遊嵌することが好ましい。
密閉容器40の収容空間43には、ガス発生剤50およびクッション材51が収容されている。より詳細には、密閉容器40の点火器30が位置する側の端部には、クッション材51が配置されており、当該クッション材51が配置された部分を除く部分には、ガス発生剤50が配置されている。
ガス発生剤50は、点火器30が作動することによって生じた熱粒子によって着火されて燃焼することでガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤50としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として構成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤50の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤50の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤50の形状の他にもガス発生剤50の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
クッション材51は、成形体からなるガス発生剤50が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等が利用される。このクッション材51は、点火器30が作動することによって生じた熱粒子によって開口または分断し、場合によっては焼失する。なお、クッション材51に代えて、たとえばコイルバネを利用することもできる。
図1および図2に示すように、ホルダ20と密閉容器40との間には、点火器30の点火部31を取り囲むようにガイドカバー60およびコイルバネ70Aが配置されている。ここで、ガイドカバー60およびコイルバネ70Aは、円筒状部材11の軸方向に沿ってホルダ20と密閉容器40とによって挟み込まれている。
ガイドカバー60は、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時において、点火器30にて発生する熱粒子を効率的にガス発生剤50に導くためのものであり、点火器30の点火部31にて発生する熱粒子の進行方向に指向性を与えるものである。また、コイルバネ70Aは、主としてガイドカバー60をホルダ20に固定するためのものである。
図3に示すように、ガイドカバー60は、円筒状の筒状部61と、当該筒状部61の軸方向の一方の端部から径方向外側に向けて延設されたフランジ状の鍔部62とを有している。また、筒状部61の内周面は、点火器30の点火部31を収容可能な挿通部63を規定している。
図1および図2に示すように、ガイドカバー60は、上述した挿通部63に点火器30の点火部31が収容されることとなるように、燃焼室S1のホルダ20が位置する側の端部において円筒状部材11および点火器30と略同軸上に配置されている。ここで、ガイドカバー60は、その鍔部62が設けられた方の端部がホルダ20側に配置されることとなるように、その向きが調整されている。
これにより、上述したように、径方向において点火器30の点火部31がガイドカバー60の筒状部61によって取り囲まれることになり、シリンダ型ガス発生器1Aの作動時において、当該ガイドカバー60によって点火器30の点火部31にて発生する熱粒子の進行方向に指向性が与えられることになる。
より詳細には、点火部31がガイドカバー60の筒状部61によって取り囲まれていることにより、点火部31の外表面を規定するスクイブカップの破裂の際に、当該スクイブカップのうちのガス発生剤50側に位置する先端部において主として開口が形成されることになり、これに伴って点火部31にて発生する熱粒子の進行方向が円筒状部材11の軸方向に絞られることになる。
換言すれば、ハウジング10の周壁部12と点火部31との間の隙間を埋めるようにハウジング10の内部にガイドカバー60が配置されることにより、ガイドカバー60の筒状部61が点火部31の径方向外側に位置することになり、点火部31にて発生する熱粒子の当該径方向外側への進行がこの筒状部61によって阻害されることとなり、結果として熱粒子の進行方向が上記軸方向に絞られることになる。
そのため、上述したように、点火器30で発生する熱粒子を効率的にガス発生剤50に導くことが可能になり、ガス発生剤50の着火遅れが未然に防止可能になるとともに、点火薬の使用量が減らせることでシリンダ型ガス発生器1Aの小型化や軽量化、さらには製造コストの削減等にも寄与することになる。
なお、ガイドカバー60は、点火部31の破裂の際の衝撃に耐えられるよう、機械的強度の比較的高い金属製の材料にて構成されていることが好ましく、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていることが好ましい。
図1および図2に示すように、コイルバネ70Aは、金属線材が軸周りに螺旋状に巻回されることで構成されたバネ部71を有しており、燃焼室S1のホルダ20が位置する側の端部において円筒状部材11、点火器30およびガイドカバー60と略同軸上に配置されることでガイドカバー60の筒状部61に外挿されている。これにより、コイルバネ70Aは、ハウジング10の周壁部12と点火部31との間に配置されることになり、上述したように点火器30の点火部31を取り囲むとともに、ガイドカバー60の筒状部61をも取り囲むように位置している。
コイルバネ70Aのホルダ20側の端部とは反対側に位置する端部(すなわち、閉塞部材15側の端部)は、点火部31よりも円筒状部材11の軸方向に沿った中央部側に位置することで密閉容器40に当接している。一方、コイルバネ70Aのホルダ20側に位置する端部は、ガイドカバー60の鍔部62に当接している。ここで、コイルバネ70Aは、密閉容器40と鍔部62とによって挟み込まれることにより、その軸方向において圧縮された状態とされている。
そのため、コイルバネ70Aは、その復元力(弾性力)に基づいてガイドカバー60をホルダ20に向けて押圧することになり、ガイドカバー60は、当該コイルバネ70Aによって移動不能にホルダ20に固定されることになる。
なお、コイルバネ70Aは、上述したガイドカバー60をホルダ20に固定する機能のみならず、密閉容器40およびフィルタ80をハウジング10の内部において軸方向に固定する機能をも有しているとともに、さらにこれら構成部品の軸方向長さのばらつきを吸収する機能も有している。したがって、上記構成を採用することにより、密閉容器40、ガイドカバー60およびフィルタ80を一括して固定することが可能になり、その組付作業が容易化するばかりでなく、これら構成部品の寸法精度を必要以上に厳格に管理する必要もなくなり、製造コストの大幅な削減が可能になる。
図1に示すように、ハウジング10の内部の空間のうち、密閉容器40が配置された空間に隣接する空間であってかつ当該密閉容器40と閉塞部材15とによって挟まれた空間には、フィルタ80が配置されている。フィルタ80は、円筒状部材11の軸方向と同方向に延びる中空部81を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の一方の端面が密閉容器40頂壁部41aに当接しており、その軸方向の他方の端面が閉塞部材15に当接している。
フィルタ80は、ガス発生剤50が燃焼することによって発生したガスがこのフィルタ80中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ(残渣)等を除去する除去手段としても機能する。上述したように円筒状の部材からなるフィルタ80を利用することにより、作動時においてフィルタ室S2を流動するガスに対する流動抵抗が低く抑えられることになり、効率的なガスの流動が実現可能となる。
フィルタ80としては、好適にはステンレス鋼や鉄鋼等からなる金属線材または金属網材の集合体にて構成されたものが利用できる。具体的には、メリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体、またはこれらをプレスにより押し固めたもの等が利用できる。また、これに代えて、孔あき金属板を巻き回したもの等も利用できる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用できる。
フィルタ室S2を規定する部分の円筒状部材11の周壁部12には、ガス噴出口13が当該周壁部12の周方向および軸方向に沿って複数設けられている。これら複数のガス噴出口13は、フィルタ80を通過した後のガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
ここで、図1に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、密閉容器40が、カップ体41の頂壁部41aに相対的に厚みの薄い薄肉部41a1と相対的に厚みの厚い厚肉部41a2とを含んでいる。
薄肉部41a1は、フィルタ80の中空部81に対向する部分に位置しており、厚肉部41a2は、フィルタ80の中空部81を除く軸方向端面に対向する部分に位置している。すなわち、カップ体41の頂壁部41aとフィルタ80とを円筒状部材11の軸方向に沿って当該軸方向と直交する面に投影した場合に、薄肉部41a1と厚肉部41a2との境界は、フィルタ80の中空部81を除く部分の内縁(すなわち中空部81の外縁)に重なることになる。これにより、厚肉部41a2は、フィルタ80の燃焼室S1側に位置する軸方向端面の外縁部に対向することになる。
なお、薄肉部41a1は、ガス発生剤50の燃焼によって破裂または溶融するように十分に薄く形成されており、その厚みは、密閉容器40がアルミニウム合金製である場合にたとえば0.1[mm]以上1.0[mm]以下とされる。一方、厚肉部41a2は、ガス発生剤50の燃焼によっても破裂および溶融することがないように薄肉部41a1の厚みよりも厚く形成されており、その厚みは、密閉容器40がアルミニウム合金製である場合にたとえば0.4[mm]以上4.0[mm]以下とされる。
このように構成した場合には、作動時において厚肉部41a2が残存することになり、厚肉部41a2が燃焼室S1とフィルタ室S2とを仕切る圧力隔壁として機能することになるとともに、当該厚肉部41a2と円筒状部材11との間に隙間が生じることがなくなるため、当該部分を経由したガスの漏れ出しが防止できることになる。
次に、図1を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。
図1を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器30が作動する。
点火器30が作動すると、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することによって点火部31内の圧力が上昇し、これによって点火部31が破裂して熱粒子が点火部31の外部へと流出する。その際、上述したように、点火部31がガイドカバー60によって取り囲まれていることにより、点火部31にて発生する熱粒子に指向性が与えられ、当該熱粒子は、円筒状部材11の軸方向に沿って進行することになる。
流出した熱粒子により、密閉容器40のキャップ体42が破裂または溶融し、当該熱粒子がクッション材51へと至る。クッション材51へと達した熱粒子は、クッション材51を燃焼させてこれを開口または分断し、これによって熱粒子がガス発生剤50へと至る。
ガス発生剤50に達した熱粒子は、ガス発生剤50を燃焼させ、これにより多量のガスが発生する。これに伴い、燃焼室S1の圧力および温度が上昇し、カップ体41の頂壁部41aのうちの薄肉部41a1が破裂または溶融し、これにより頂壁部41aの一部が開口する。
頂壁部41aの一部が開口することにより、燃焼室S1にて発生したガスは、フィルタ室S2に流れ込む。フィルタ室S2に流れ込んだガスは、フィルタ80の中空部81を軸方向に沿って流動した後に径方向に向けて向きを変え、フィルタ80の内部を通過する。その際に、フィルタ80によって熱が奪われてガスが冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ80によって除去される。
そして、フィルタ80を通過した後のガスは、ガス噴出口13を介してシリンダ型ガス発生器1Aの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、指向性付与部材としてのガイドカバー60が、固定部材としてのコイルバネ70Aによってホルダ20に向けて押圧された状態で移動不能に固定されている。したがって、当該構成を採用することにより、製造コストの増大を抑制しつつ指向性付与部材を安定的に組付けることが可能になる。
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように固定部材としてのコイルバネ70Aを指向性付与部材としてのガイドカバー60の筒状部61を取り囲むようにこれに外挿している。したがって、当該構成を採用することにより、指向性付与部材とこれを固定するための固定部材とをハウジングの軸方向に沿って並べて配置した場合に比べ、ハウジングの軸方向長さを短尺化することができ、全体としての小型化にも寄与できることになる。
さらには、上記構成を採用することにより、コイルバネ70Aの軸方向長さを調整することで点火器30と密閉容器40との間に所望の大きさのクリアランスを形成することも可能になる。したがって、作動時におけるスクイブカップの破裂が妨げられてしまうことが防止でき、迅速な熱粒子の移動が実現され、結果として所望の燃焼特性を達成することができる。ここで、当該クリアランスを必要最小限の大きさとすることにより、ハウジング10の軸方向長さが長尺化することも回避できる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の概略図であり、図5は、図4に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。まず、これら図4および図5を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bの構成について説明する。
図4および図5に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、密閉容器40に代えて仕切り部材90を備えている点、コイルバネ70Aに代えて異なる構成のコイルバネ70Bを備えている点、クッション材51を備えていない点において、主としてその構成が相違している。
図4に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、ハウジング10の内部の空間の所定位置に仕切り部材90が配置されている。当該仕切り部材90は、ハウジング10の内部の空間を軸方向に仕切るための部材であり、所定の厚みを有する略円盤状の形状を有している。仕切り部材90は、上述した閉塞部材15およびホルダ20と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
仕切り部材90は、その主面が円筒状部材11の軸方向と直交するようにハウジング10の内部に配置されている。仕切り部材90の中央部には、軸方向に沿って貫通して延びる連通孔91が設けられており、仕切り部材90の外周面には、周方向に沿って延びる環状溝部92が設けられている。
仕切り部材90は、円筒状部材11の軸方向の途中位置に配置されて円筒状部材11に固定されている。具体的には、円筒状部材11に仕切り部材90が内挿された状態で、当該仕切り部材90の外周面に設けられた環状溝部92に対応する部分の円筒状部材11の周壁部12を径方向内側に向けて縮径させて当該環状溝部92に係合させることにより、仕切り部材90が円筒状部材11に対してかしめ固定されている。
当該かしめ固定も、上述した八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、円筒状部材11の周壁部12には、かしめ部14cが設けられることになり、当該かしめ部14cが環状溝部92に密着することになる。これにより、円筒状部材11と仕切り部材90との間に隙間が生じることが防止されている。
ここで、環状溝部92には、Oリング等からなるシール部材94が収容されている。これにより、仕切り部材90に設けられた環状溝部92内に収容されたシール部材94が、上記かしめ固定の際に仕切り部材90と円筒状部材11の周壁部12とによって挟み込まれることになり、当該部分における気密性が確保されることになる。
また、仕切り部材90の一対の主面のうち、ガス発生剤50側に位置する主面には、シールテープ93が貼付されている。当該シールテープ93は、仕切り部材90に設けられた連通孔91を閉塞するためのものであり、このシールテープ93としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用できる。
図4および図5に示すように、ホルダ20の外周面には、かしめ固定のための環状溝部22に加えて、さらに他の環状溝部25が設けられており、当該環状溝部25には、Oリング等からなるシール部材26が収容されている。シール部材26は、ホルダ20と円筒状部材11の周壁部12とによって挟み込まれており、これにより当該部分における気密性が確保されている。
また、点火器30とホルダ20との間には、Oリング等からなるシール部材27が介装されている。シール部材27は、点火器30とホルダ20との間に隙間が生じることを防止するためのものであり、これによってハウジング10の内部の空間が気密に封止されることになる。
ここで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいても、点火器30の点火部31を取り囲むように指向性付与部材としてのガイドカバー60が配置されており、当該ガイドカバー60の筒状部61を取り囲むように当該筒状部61にコイルバネ70Bが介装されている。
コイルバネ70Bは、金属線材が軸周りに螺旋状に巻回されることで構成されたバネ部71と、当該バネ部71の一方の端部をさらに平面的に曲げることによって形成された底部72とを有している。底部72は、たとえば渦巻き状あるいは蛇行状に金属線材が曲げられることで形成されており、これにより底部72には、点火部31にて発生する熱粒子が通過可能な隙間が設けられることになる。
コイルバネ70Bは、燃焼室S1のホルダ20が位置する側の端部において円筒状部材11、点火器30およびガイドカバー60と略同軸上に配置されることでガイドカバー60の筒状部61に外挿されている。なお、コイルバネ70Bは、その底部72が設けられた方の端部が上述した仕切り部材90が位置する側に配置されることとなるように、その向きが調整されている。
コイルバネ70Bのホルダ20側の端部とは反対側に位置する端部(すなわち、底部72が設けられた側の端部)は、点火部31よりも円筒状部材11の軸方向に沿った中央部側に位置することでガス発生剤50に当接している。一方、コイルバネ70Bのホルダ20側に位置する端部は、ガイドカバー60の鍔部62に当接している。ここで、コイルバネ70Bは、ガス発生剤50と鍔部62とによって挟み込まれることにより、その軸方向において圧縮された状態とされている。
そのため、コイルバネ70Bは、その復元力(弾性力)に基づいてガイドカバー60をホルダ20に向けて押圧することになり、ガイドカバー60は、当該コイルバネ70Bによって移動不能にホルダ20に固定されることになる。
ここで、コイルバネ70Bは、上述したガイドカバー60をホルダ20に固定する機能のみならず、ガス発生剤50をハウジング10の内部において軸方向に固定する機能をも有しているとともに、さらにこれら構成部品の軸方向長さのばらつきを吸収する機能も有している。したがって、上記構成を採用することにより、ガス発生剤50およびガイドカバー60を一括して固定することが可能になり、その組付作業が容易化するばかりでなく、ガイドカバー60の寸法精度を必要以上に厳格に管理する必要もなくなり、製造コストの大幅な削減が可能になる。
加えて、コイルバネ70Bは、さらに成形体からなるガス発生剤50が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する機能も有することになり、別途上述した実施の形態1において示した如くのクッション材51等を設ける必要もなくなるため、この点においても製造コストの大幅な削減が可能になる。
次に、図4を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bの作動時における動作について説明する。
図4を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器30が作動する。
点火器30が作動すると、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することによって点火部31内の圧力が上昇し、これによって点火部31が破裂して熱粒子が点火部31の外部へと流出する。その際、上述したように、点火部31がガイドカバー60によって取り囲まれていることにより、点火部31にて発生する熱粒子に指向性が与えられ、当該熱粒子は、円筒状部材11の軸方向に沿って進行することになる。
流出した熱粒子は、コイルバネ70Bの底部72に設けられた隙間を通過し、ガス発生剤50へと至る。ガス発生剤50に達した熱粒子は、ガス発生剤50を燃焼させ、これにより多量のガスが発生する。これに伴い、燃焼室S1の圧力および温度が上昇し、仕切り部材90に貼付されているシールテープ93が破裂または溶融する。
シールテープ93が破裂または溶融することにより、燃焼室S1にて発生したガスは、仕切り部材90に設けられた連通孔91を介してフィルタ室S2に流れ込む。フィルタ室S2に流れ込んだガスは、フィルタ80の中空部81を軸方向に沿って流動した後に径方向に向けて向きを変え、フィルタ80の内部を通過する。その際に、フィルタ80によって熱が奪われてガスが冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ80によって除去される。
そして、フィルタ80を通過した後のガスは、ガス噴出口13を介してシリンダ型ガス発生器1Bの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1Bに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいても、指向性付与部材としてのガイドカバー60が、固定部材としてのコイルバネ70Bによってホルダ20に向けて押圧された状態で移動不能に固定されているため、上述した実施の形態1の場合と同様に、製造コストの増大を抑制しつつ指向性付与部材を安定的に組付けることが可能になる。
上述した本発明の実施の形態1および2においては、ハウジングの開口端にホルダを内挿して固定した場合を例示して説明を行なったが、ハウジングの開口端にホルダを外挿して固定してもよく、また、ハウジングの開口端にホルダを内挿および外挿することなく、ホルダとハウジングとを突き当ててこれらを固定することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1および2においては、円筒状部材と閉塞部材とをかしめ固定することで連結するとともに、円筒状部材とホルダとをかしめ固定することで連結した場合を例示して説明を行なったが、円筒状部材と閉塞部材との固定および/または円筒状部材とホルダとの固定に溶接等を利用することも当然に可能である。
また、上述した本発明の実施の形態1および2においては、別部材からなる円筒状部材および閉塞部材を用いて有底長尺略円筒状のハウジングを構成した場合を例示して説明を行なったが、これらを一体的に構成することにより、単一の部材にてハウジングを構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1および2においては、点火器の点火部内に点火薬のみまたは点火薬と伝火薬とが装填された場合を例示して説明を行なったが、伝火薬を装填する場合にこれが点火器の点火部内に装填されている必要は必ずしもなく、点火器の点火部とガス発生剤との間の位置にたとえばカップ状の部材や容器等を用いてこれが装填されていてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1においては、バネ部のみを有するコイルバネにて固定部材を構成した場合を例示して説明を行なったが、これに代えて、本発明の実施の形態2において示した如くのバネ部および底部を有するコイルバネにて固定部材を構成することとしてもよい。
さらには、本発明の実施の形態2においては、バネ部および底部を有するコイルバネにて固定部材を構成した場合を例示して説明を行なったが、ガス発生剤がたとえばハウジングの軸方向に沿って積層されたディスク状の積層体にて構成される場合等においては、これに代えて、本発明の実施の形態1において示した如くのバネ部のみを有するコイルバネにて固定部材を構成することとしてもよい。
加えて、上述した本発明の実施の形態1および2においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、助手席用エアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状の外形を有するいわゆるT字型ガス発生器にもその適用が可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。