以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるデュアル構造のディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図2は、図1中に示すII−II線に沿った模式断面図である。また、図3は、図1に示す仕切り部の組付構造を示す分解斜視図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの構成について説明する。
図1および図2に示すように、ディスク型ガス発生器1Aは、軸方向の一端および他端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての第1点火器組立体30、第2点火器組立体40、第1ガス発生剤51、第2ガス発生剤52、下側支持部材61、上側支持部材62、フィルタ70等が収容されてなるものである。
図1に示すように、ハウジングは、下部側シェル10および上部側シェル20を含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20の各々は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440[MPa]以上780[MPa]以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とフランジ部23とを有している。
下部側シェル10の周壁部12の上端は、上部側シェル20の周壁部22の下端に挿入されることで圧入されている。さらに、下部側シェル10の周壁部12と上部側シェル20の周壁部22とが、それらの当接部またはその近傍において接合されることにより、下部側シェル10と上部側シェル20とが固定されている。ここで、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
これにより、ハウジングの周壁部のうちの底板部11寄りの部分は、下部側シェル10の周壁部12によって構成されており、ハウジングの周壁部のうちの天板部21寄りの部分は、上部側シェル20の周壁部22によって構成されている。また、ハウジングの軸方向の一端および他端は、それぞれ下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21によって閉塞されている。
上部側シェル20に設けられたフランジ部23は、ディスク型ガス発生器1Aを外部の部材(たとえば、エアバッグ装置に設けられたリテーナ等)に固定するための部位である。フランジ部23の所定位置には、周壁部22の軸方向と平行な方向に沿って貫通するように貫通孔(図中において当該貫通孔は現われていない)が設けられている。当該貫通孔には、ボルト等の締結部材が挿入されることになり、これによりディスク型ガス発生器1Aが外部の部材に対して固定されることになる。
下部側シェル10の底板部11の所定位置には、第1開口部11aおよび第2開口部11bが設けられている。下部側シェル10の底板部11には、第1開口部11aを閉塞するように第1点火器組立体30が組付けられているとともに、第2開口部11bを閉塞するように第2点火器組立体40が組付けられている。ここで、第1開口部11aは、第1点火器組立体30の下端に設けられた後述する第1雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位であり、第2開口部11bは、第2点火器組立体40の下端に設けられた後述する第2雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位である。
第1点火器組立体30は、第1ホルダ31と、第1点火器32と、第1シール部材33と、カップ体34と、伝火薬36とを主として含んでいる。第1ホルダ31は、第1点火器組立体30のベースを構成するものであり、当該第1ホルダ31に、第1点火器32およびカップ体34等が組付けられることにより、第1点火器組立体30が一体の部品として構成されている。
第1ホルダ31は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aが設けられており、底板部11側に位置する第1ホルダ31の下面には、下側凹部31bが設けられている。また、上側凹部31aの底部ならびに下側凹部31bの底部を構成する部分の第1ホルダ31には、これら上側凹部31aおよび下側凹部31bに達するように貫通孔31cが設けられている。
また、第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aを取り囲むようにかしめ部31d,31eが設けられている。このうちの内側に配置されたかしめ部31dは、第1点火器32を第1ホルダ31にかしめ固定するための部位であり、このうちの外側に配置されたかしめ部31eは、カップ体34を第1ホルダ31にかしめ固定するための部位である。
第1点火器32は、火炎を発生させるためのものであり、基部32aと、点火部32bと、一対の端子ピン32cとを有している。基部32aは、点火部32bおよび一対の端子ピン32cを保持する部位であり、また第1ホルダ31に対して固定される部位でもある。点火部32bは、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン32cは、点火薬を着火させるために点火部32bに接続されている。
より詳細には、点火部32bは、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン32cが挿通されてこれを保持する塞栓とを含んでおり、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン32cの先端を連結するように上述した抵抗体が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび塞栓は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン32cを介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから第1点火器32が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合に一般に2[ms]以下である。
第1点火器32は、第1ホルダ31の貫通孔31cに一対の端子ピン32cが上方から挿入されるとともに第1ホルダ31の上側凹部31aに基部32aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部31dが折り曲げられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
ここで、第1ホルダ31と第1点火器32との間には、Oリング等からなる第1シール部材33が介装されており、これによって第1ホルダ31と第1点火器32との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第1点火器32の固定方法は、上述したかしめ部31dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
カップ体34は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、内部に伝火薬36が収容された伝火室35を含んでいる。カップ体34は、伝火室35を規定する頂壁部34aおよび側壁部34bと、側壁部34bの開口端側の部分から径方向外側に向けて延設されたフランジ部34cとを有している。
カップ体34は、その内部に形成された伝火室35が第1点火器32の点火部32bに面するように第1ホルダ31に組付けられており、より詳細には、フランジ部34cが第1ホルダ31の上面に当て留めされた状態において、上述したかしめ部31eが折り曲げられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
カップ体34は、頂壁部34aおよび側壁部34bのいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室35を取り囲んでいる。このカップ体34は、第1点火器32が作動することによって伝火薬36が着火された場合に伝火室35内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
そのため、カップ体34としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
なお、カップ体34としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部34bに開口を有し、当該開口を閉鎖するようにシールテープが貼着されたもの等を利用することも可能である。また、カップ体34の固定方法も、上述したかしめ部31eを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
伝火室35に充填された伝火薬36は、第1点火器32が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬36としては、第1ガス発生剤51を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5−アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
伝火薬36としては、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬36の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
第1ホルダ31の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第1開口部11aに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第1ホルダ31に予め第1点火器32およびカップ体34等が組付けられることで一体化された第1点火器組立体30が、下部側シェル10に対して固定されるとともに、特に第1点火器組立体30の内部に設けられた伝火室35が、ハウジングの内部の空間に向けて突出して配置されることになる。ここで、底板部11と第1ホルダ31との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第1ホルダ31の下側凹部31bには、第1点火器32の一対の端子ピン32cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部31bおよび一対の端子ピン32cによって上述した第1雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第1雌型コネクタ部は、第1点火器32とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第1雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第1雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン32cとの電気的導通が実現されることになる。
第2点火器組立体40は、第2ホルダ41と、第2点火器42と、第2シール部材43と、仕切り部44と、第2ガス発生剤52とを主として含んでいる。第2ホルダ41は、第2点火器組立体40のベースを構成するものであり、当該第2ホルダ41に、第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることにより、第2点火器組立体40が一体の部品として構成されている。
第2ホルダ41は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aが設けられており、底板部11側に位置する第2ホルダ41の下面には、下側凹部41bが設けられている。また、上側凹部41aの底部ならびに下側凹部41bの底部を構成する部分の第2ホルダ41には、これら上側凹部41aおよび下側凹部41bに達するように貫通孔41cが設けられている。
また、第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aを取り囲むようにかしめ部41dが設けられている。かしめ部41dは、第2点火器42を第2ホルダ41にかしめ固定するための部位である。
第2点火器42は、火炎を発生させるためのものであり、基部42aと、点火部42bと、一対の端子ピン42cとを有している。基部42aは、点火部42bおよび一対の端子ピン42cを保持する部位であり、また第2ホルダ41に対して固定される部位でもある。なお、第2点火器42は、基本的には上述した第1点火器32と同様の構成のものであるため、ここではその詳細な説明は省略する。
第2点火器42は、第2ホルダ41の貫通孔41cに一対の端子ピン42cが上方から挿入されるとともに第2ホルダ41の上側凹部41aに基部42aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部41dが折り曲げられることにより、第2ホルダ41に固定されている。
ここで、第2ホルダ41と第2点火器42との間には、Oリング等からなる第2シール部材43が介装されており、これによって第2ホルダ41と第2点火器42との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第2点火器42の固定方法は、上述したかしめ部41dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
仕切り部44は、隔壁部材45と、カバー部材46と、キャップ部材47とを有しており、これら隔壁部材45、カバー部材46およびキャップ部材47が組み合わされることで全体としてカップ状の形状を成している。仕切り部44は、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間を2室に仕切る圧力隔壁として機能する。
図1および図2に示すように、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間は、仕切り部44によって当該仕切り部44よりも外側の空間と当該仕切り部44よりも内側の空間とに仕切られており、このうちの前者の空間が第1燃焼室S1として規定されるとともに、このうちの後者の空間が第2燃焼室S2として規定される。
図1に示すように、仕切り部44は、その内部に形成された第2燃焼室S2が第2点火器42の点火部42bに面するように第2ホルダ41に組付けられている。より詳細には、後述するように、仕切り部44のうちの隔壁部材45の下端に設けられた固定部45aが第2ホルダ41に圧入されることにより、仕切り部44が第2ホルダ41を介して底板部11に固定されている。
仕切り部44の内部に位置する第2燃焼室S2には、第2ガス発生剤52が収容されている。第2ガス発生剤52は、第2点火器42が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。なお、第2ガス発生剤52の詳細については、後述することとする。
図1および図3に示すように、隔壁部材45は、軸方向の両端に開口を有する筒状の形状を成している。隔壁部材45は、その軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように配置されており、底板部11側に位置する開口端が、底板部11に組付けられた第2ホルダ41に固定された固定部45aとして機能している。
より詳細には、当該固定部45aは、上述したように第2ホルダ41に圧入されており、これによって隔壁部材45が第2ホルダ41に固定されることで当該隔壁部材45を含む仕切り部44が底板部11に組付けられている。なお、隔壁部材45は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
カバー部材46は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられている。カバー部材46は、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
カバー部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の第1覆い部46aと、当該第1覆い部46aの周縁から底板部11側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の外周面を覆う円筒状の第2覆い部46bとを含んでいる。
カバー部材46は、隔壁部材45の上述した開口端に外挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、カバー部材46の第2覆い部46bは、隔壁部材45のうちの上述した外周面に密着している。ここで、カバー部材46に設けられた第2覆い部46bの軸方向長さは、比較的短く構成することができ、隔壁部材45の上述した開口端が封止可能な必要最小限の長さとすることができる。
キャップ部材47は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分に挿入されている。これにより、キャップ部材47は、隔壁部材45およびカバー部材46によって規定される空間(すなわち第2燃焼室S2に相当)に収容されている。キャップ部材47は、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
キャップ部材47は、第2ガス発生剤52とカバー部材46の第1覆い部46aとの間に配置された円盤状の頂板部47aと、当該頂板部47aの周縁から底板部11側に向けて延設された円筒状の周板部47bとを含んでいる。
キャップ部材47は、隔壁部材45の上述した開口端に内挿されることで隔壁部材45に収容されており、本実施の形態においては、キャップ部材47が隔壁部材45に対して遊嵌されている。ここで、遊嵌とは、隔壁部材45に嵌め込まれたキャップ部材47が、隔壁部材45との間で所定のクリアランスをもった状態にあることを意味し、換言すれば、キャップ部材47の外径は、隔壁部材45の内径よりも僅かに小さい。
すなわち、本実施の形態においては、キャップ部材47は、隔壁部材45に対して圧入されておらず、キャップ部材47の周板部47bは、ディスク型ガス発生器1Aの非動作時において隔壁部材45の内周面に密着していない。これにより、本実施の形態においては、キャップ部材47が隔壁部材45に対して相対的に移動可能でかつ変形可能に組付けられることになり、第2ガス発生剤52の燃焼時において、後述するキャップ部材47の移動および変形が生じることになる。
キャップ部材47の周板部47bには、周方向に沿って点列状に複数個のガス通過孔47cが設けられている。この複数個のガス通過孔47cは、第2ガス発生剤52の燃焼時において、第2燃焼室S2にて発生したガスを仕切り部44の外側の空間に向けて通過させるためのものであり、周板部47bの厚み方向に沿って当該周板部47bを貫通するように設けられている。
図1に示すように、第2ホルダ41の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第2開口部11bに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第2ホルダ41に予め第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることで一体化された第2点火器組立体40が、下部側シェル10に対して固定されるとともに、特に第2点火器組立体40の内部に設けられた第2燃焼室S2が、ハウジングの内部の空間に向けて突出して配置されることになる。ここで、底板部11と第2ホルダ41との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第2ホルダ41の下側凹部41bには、第2点火器42の一対の端子ピン42cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部41bおよび一対の端子ピン42cによって上述した第2雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第2雌型コネクタ部は、第2点火器42とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第2雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第2雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン42cとの電気的導通が実現されることになる。
図1および図2に示すように、ハウジングの内部の空間には、上述した第1点火器組立体30および第2点火器組立体40に加え、フィルタ70が収容されている。フィルタ70は、円筒状の形状を成し、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と合致するようにハウジングと同軸上に配置されている。これにより、フィルタ70は、その外周面がハウジングの周壁部の内周面に対向している。
フィルタ70は、その内側の空間に第1点火器組立体30および第2点火器組立体40が配置されるように、これら第1点火器組立体30および第2点火器組立体40を取り巻くように配置されている。これにより、フィルタ70の内側の空間であってかつ仕切り部44の外側の空間に、第1ガス発生剤51が収容される第1燃焼室S1が形成されることになる。なお、フィルタ70は、ハウジングの周壁部から所定の距離をもって配置されており、これによりハウジングの周壁部とフィルタ70との間には、ガス排出室S3が形成されている。
フィルタ70としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの等が利用できる。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用できる。
また、フィルタ70として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ70は、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがこのフィルタ70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつ残渣が外部に放出されないようにするためには、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスが確実にフィルタ70中を通過するように構成することが必要になる。
ここで、第1点火器組立体30は、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されており、第2点火器組立体40も、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように(すなわち、仕切り部44の中心軸(より厳密には隔壁部材45の中心軸)がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように)偏心配置されている。このように構成することにより、ハウジングの内部にデッドスペースが生じることが防止でき、ディスク型ガス発生器1Aを全体として小型に構成することができる。
第1燃焼室S1には、第1ガス発生剤51が収容されている。より具合的には、第1ガス発生剤51は、フィルタ70の内側の空間であってかつ第1点火器組立体30のカップ体34の頂壁部34aおよび側壁部34bに隣り合う空間、ならびに、フィルタ70の内側の空間であってかつ第2点火器組立体40の仕切り部44の側壁部に隣り合う空間に配置されている。第1ガス発生剤51は、第1点火器32が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。
上述した第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてこれら第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52が形成される。
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。また、この他にも、バインダとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の多糖誘導体や、二硫化モリブデン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、アルミナ等の無機バインダも好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
ここで、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの組成が同じものであってもよいし、それらの組成が異なるものであってもよい。また、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの形状や大きさが同じものであってもよいし、それらの形状や大きさが異なるものであってもよい。
フィルタ70に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス排出室S3に面するように複数個のガス噴出口24が設けられている。この複数個のガス噴出口24は、フィルタ70を通過したガスをガス排出室S3を介してハウジングの外部に導出するためのものである。
また、上部側シェル20の周壁部22の内周面には、上記複数個のガス噴出口24を閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ25が貼り付けられている。このシールテープ25としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ25によってハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。
図1に示すように、第1燃焼室S1のうち、底板部11側に位置する端部には、下側支持部材61が配置されている。下側支持部材61は、環状の形状を成し、フィルタ70と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と底板部11とに宛がわれて配置されている。これにより、下側支持部材61は、第1燃焼室S1の上記端部近傍において、底板部11と第1ガス発生剤51との間に位置している。
下側支持部材61は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。下側支持部材61は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
第1燃焼室S1のうち、天板部21側に位置する端部には、上側支持部材62が配置されている。上側支持部材62は、略円盤状の形状を成し、フィルタ70と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上側支持部材62は、第1燃焼室S1の上記端部近傍において、天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置している。
上側支持部材62は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。上側支持部材62は、上述した下側支持部材61と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
この上側支持部材62の内部には、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51に接触するように平面視略C字状のクッション材63が配置されている。これにより、クッション材63は、第1燃焼室S1の天板部21側の部分において天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置することになり、第1ガス発生剤51を底板部11側に向けて押圧している。
クッション材63は、成形体からなる第1ガス発生剤51が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。なお、クッション材63は、第1ガス発生剤51の燃焼によって焼失するものである。
図4および図5は、それぞれ本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第1および第2段階を示す模式図である。次に、これら図4および図5を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの動作について説明する。
ディスク型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電を受け、まずは第1点火器32が作動する。
図4に示すように、第1点火器32が作動した第1段階においては、第1点火器32の点火部32bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部32bが破裂する。これにより、カップ体34の内部に収容された伝火薬36が着火されて燃焼する。
伝火薬36が燃焼することにより、伝火室35の内部において多量の熱粒子が発生し、伝火室35の温度および圧力が上昇することで脆弱な部材からなるカップ体34が破裂または溶融する。カップ体34が破裂または溶融することにより、上述した多量の熱粒子が第1燃焼室S1のうちの第1ガス発生剤51が収容された部分へと流れ込む。
多量の熱粒子が第1燃焼室S1の当該部分へと流れ込むことにより、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51が順次着火されて燃焼し、これによって第1燃焼室S1において多量のガスが発生する。第1燃焼室S1にて発生したガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込む。
このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、複数個のガス噴出口24を閉鎖していたシールテープ25が開裂する。これにより、第1燃焼室S1にて発生したガスの複数個のガス噴出口24を介してのハウジングの外部に向けての噴出が開始される(矢印AR1参照)。
また、このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21は、外側に向けて膨らむように変形する。これにより、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられたカバー部材46の第1覆い部46a(すなわち、仕切り部44の閉塞端)と、天板部21との間の距離が増加することになる。
一方で、この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室S1の圧力上昇に起因して、カバー部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、カバー部材46の第1覆い部46aによって閉塞されるとともに、隔壁部材45の天板部21寄りの部分の外周面にカバー部材46の第2覆い部46bが密着することで当該部分が覆われた状態が維持される。
これにより、当該第1段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
次に、上述した第1点火器32の作動から所定時間遅れたタイミングで、上述したコントロールユニットからの通電を受けて第2点火器42が作動する。
図5に示すように、第2点火器42が作動した第2段階においては、第2点火器42の点火部42bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部42bが破裂する。これにより、第2燃焼室S2に収容された第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼を開始する。
ここで、第2ガス発生剤52の燃焼の開始に先立って、第1ガス発生剤51が予め着火されて燃焼していることにより、ディスク型ガス発生器1Aが全体として既に高温に加熱された状態にあるため、点火部42bと第2ガス発生剤52との間に伝火薬を設けずとも、第2ガス発生剤52の燃焼がスムーズに開始されることになり、また当該第2ガス発生剤52の燃焼が途切れ難くなる。
このとき、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、第2燃焼室S2に収容されたキャップ部材47に圧力が付与されることになり、キャップ部材47のうちの頂板部47aには、主としてハウジングの軸方向に沿った方向に当該圧力が作用し、キャップ部材47のうちの周板部47bには、主としてハウジングの径方向に沿った方向に当該圧力が作用する。
これにより、キャップ部材47は、その全体が上部側シェル20の天板部21側に向けて移動することになるとともに、その周板部47bが径方向外側に向けて拡がるように変形することになる。したがって、周板部47bの下端寄りの部分が隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態とされつつ、キャップ部材47が、天板部21側に向けて移動する。
そのため、周板部47bの下端寄りの部分が隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態が維持されるため、当該部分におけるガスの漏れ出しが防止できることになる。したがって、隔壁部材45およびキャップ部材47によって圧力隔壁が確実に構成されることになり、第2燃焼室S2の内圧を適切に上昇させることができ、結果として第2ガス発生剤52の燃焼が途切れることなく持続することになる。
また、キャップ部材47の上述した移動に伴い、カバー部材46は、キャップ部材47によって押し上げられることで天板部21側に向けて移動することになる。これにより、キャップ部材47は、隔壁部材45の天板部21側の開口端から離脱する。そのため、カバー部材46が隔壁部材45から離脱した時点で、キャップ部材47の周板部47bに設けられたガス通過孔47cは、隔壁部材45の天板部21側の位置において第1燃焼室S1に面するように露出する。
ここで、本実施の形態においては、この第2段階におけるカバー部材46およびキャップ部材47の移動が所定量だけ生じた時点で、これらカバー部材46およびキャップ部材47の移動が、天板部21によって制限されるように構成されている。すなわち、カバー部材46が、上側支持部材62を介して天板部21に当接するとともに、キャップ部材47が、カバー部材46および上側支持部材62を介して天板部21に当接することにより、これらカバー部材46およびキャップ部材47が停止することになる。
以上により、図中において矢印AR2にて示すように、第2燃焼室S2にて発生したガスが、周板部47bに設けられた複数個のガス通過孔47cを通過することで第1燃焼室S1へと導入されることになる。このとき、当該ガスは、隔壁部材45から離脱したカバー部材46によってその進行方向が変更されることになり、もっぱら下部側シェル10の底板部11側に向けて噴き出すことになる。
そのため、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、第2燃焼室S2にて発生したガスが第1燃焼室S1に導入されるに際して、直接的にフィルタ70の内周面に向けて噴き付けられることがなくなる。したがって、フィルタ70の破損が未然に防止できることになる。
第2燃焼室S2にて発生し、その後第1燃焼室S1に導入されたガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数個のガス噴出口24を介してのハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR1参照)。
なお、上述した第1および第2段階において、複数個のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Aの外部へと噴出されたガスは、当該ディスク型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
ここで、上述したように、第2燃焼室S2にて発生したガスが、キャップ部材47の周板部47bに設けられた複数個のガス通過孔47cを通過することで第1燃焼室S1へと導入されるためには、第2ガス発生剤52の燃焼に伴ってカバー部材46が隔壁部材45から離脱する一方、キャップ部材47が隔壁部材45から離脱しないことが必要になる。また、上述したように、第2燃焼室S2にて発生しその後第1燃焼室S1へと導入されるガスが、底板部11側に向けて噴き出すように構成するためには、カバー部材46およびキャップ部材47の移動が天板部21によって制限された後の状態において、複数個のガス通過孔47cが、カバー部材46に対向して位置していることが必要になる。
これら条件を満たすためには、上述したカバー部材46およびキャップ部材47の移動しろや変形の程度を適切に調整しておくことが必要になる。ここで、上述したカバー部材46およびキャップ部材47の移動しろや変形の程度は、ディスク型ガス発生器1Aの動作前の状態における第2点火器組立体40と天板部21(より厳密には、当該天板部21宛がわれた上側支持部材62)との間の距離や、カバー部材46の第2覆い部46bの軸方向長さ、キャップ部材47の周板部47bの軸方向長さ、キャップ部材47の周板部47bに設けるガス通過孔47cの位置、ハウジング(特に天板部21および底板部11等)の厚みや形状、材質、カバー部材46およびキャップ部材47の厚みや形状、材質等によって主として決定されるものであり、上記条件を満たすためには、具体的にこれらを適切に設計しておけばよい。
なお、上述したようにカバー部材46およびキャップ部材47の移動しろには、ディスク型ガス発生器1Aの作動時における底板部11および天板部21の変形に伴う天板部21とカバー部材46の第1覆い部46aとの間の距離の増加分が含まれるため、ディスク型ガス発生器1Aの動作前の状態において、当該第1覆い部46aは、天板部21に宛がわれた上側支持部材62から離間して位置していてもよいし、当該上側支持部材62に当接していてもよい。
以上により、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aとすることにより、カバー部材46の第2覆い部46bにガス通過孔が設けられた構成とすることなく、第1燃焼室S1における第1ガス発生剤51の燃焼時において、未だ燃焼が開始されていない第2燃焼室S2に収容された第2ガス発生剤52に影響を及ぼすことがなく、かつ、第2燃焼室S2における第2ガス発生剤52の燃焼時において、キャップ部材47に設けたガス通過孔47cを介して第2燃焼室S2と第1燃焼室S1とが連通するように構成することができる。
そのため、カバー部材46の第2覆い部46bにガス通過孔が設けられていない分だけ、当該第2覆い部46bの軸方向の長さを短くすることができ、隔壁部材45に対するカバー部材46の圧入しろを従来に比して短縮化することができる。これにより、隔壁部材45の固定部45aに、第2ガス発生剤52の燃焼時において大きな力が作用してしまうことが回避でき、結果として当該固定部45aが破損してしまうことが防止できる。また、カバー部材46を移動させるために必要となる力が従来に比して十分に小さくなることに伴い、製品間での当該力にもばらつきが生じ難くなり、結果として所望のガス出力を安定して得ることが可能になる。
したがって、上記構成を採用することにより、従来に比して、高い信頼性が確保できるとともに、所望のガス出力が安定して得られるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Aとすることができる。
なお、上述した構成を採用することにより、第2燃焼室S2にて発生したガスがガス通過孔47cを介して第1燃焼室S1に噴き出される際に、カバー部材46に衝突することでその進行方向が変更されることになるため、この衝突の際に当該ガス中に含まれるスラグが効果的にカバー部材46の内壁面によって捕捉されるという副次的な効果を得ることもできる。
また、上述したように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、第2点火器組立体40が、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されている。このように構成した場合には、第2点火器組立体40をハウジングの周壁部と同軸上に配置した場合に比べ、第2点火器組立体40とフィルタ70とが近接配置される部分が自ずと生じることになるが、上述のとおりの構成を採用することにより、第2点火器組立体40とフィルタ70とを近接配置しつつフィルタ70の破損を効果的に防止することが可能になる。
(第1変形例)
図6は、上述した実施の形態1に基づいた第1変形例に係るディスク型ガス発生器の概略図である。以下、この図6を参照して、本変形例に係るディスク型ガス発生器1A1について説明する。
図6に示すように、本変形例に係るディスク型ガス発生器1A1は、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、キャップ部材47が、隔壁部材45に対して軽圧入されている点においてのみ相違している。ここで、軽圧入とは、隔壁部材45に嵌め込まれたキャップ部材47が、隔壁部材45に実質的な意味において圧接触していない状態にあり、これにより隔壁部材45とキャップ部材47との間にクリアランスがない状態にあることを意味し、換言すれば、キャップ部材47の外径は、隔壁部材45の内径とほぼ同等(同じかあるいは極めて僅かに大きい場合を含む)である。
すなわち、本変形例においては、キャップ部材47が、隔壁部材45に対して軽圧入されていることにより、キャップ部材47の周板部47bは、ディスク型ガス発生器1A1の非動作時において隔壁部材45の内周面に当接してはいるものの、大きい圧力をもってこれに圧接触してはいない。これにより、本変形例においては、キャップ部材47が隔壁部材45に対して相対的に移動可能に組付けられることになり、第2ガス発生剤52の燃焼時において、キャップ部材47の移動が生じることになる。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、第2点火器42が作動した第2段階において、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、第2燃焼室S2に収容されたキャップ部材47に圧力が付与されることになり、周板部47bが隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態とされつつ、キャップ部材47が、天板部21側に向けて移動する。
そのため、カバー部材46の第2覆い部46bにガス通過孔が設けられていない分だけ、隔壁部材45に対するカバー部材46の圧入しろを従来に比して短縮化することができ、結果として隔壁部材45の固定部45aが破損してしまうことが防止できるとともに製品間でのガス出力のばらつきの発生が抑制できることになる。
したがって、上記構成を採用することにより、上述した実施の形態1の場合と同様に、従来に比して、高い信頼性が確保できるとともに、所望のガス出力が安定して得られるデュアル構造のディスク型ガス発生器1A1とすることができる。
(第2変形例)
図7は、上述した実施の形態1に基づいた第2変形例に係るディスク型ガス発生器の概略図である。以下、この図7を参照して、本変形例に係るディスク型ガス発生器1A2について説明する。
図7に示すように、本変形例に係るディスク型ガス発生器1A2は、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、キャップ部材47の周板部47bが、底板部11側に向かうにつれて拡径する円錐台状の斜板部にて構成されている点においてのみ相違している。
このように構成した場合には、第2点火器42が作動した第2段階において、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、第2燃焼室S2に収容されたキャップ部材47に圧力が付与される際に、キャップ部材47の周板部47bにその径方向外側に向けて拡がる変形がより生じ易くなる。そのため、周板部47bの下端寄りの部分が隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態がより確実に維持されることになり、当該部分におけるガスの漏れ出しがさらに確実に防止できることになる。
したがって、上記構成を採用することにより、上述した実施の形態1の場合と同様の効果が得られるばかりでなく、さらに高い信頼性が確保できるとともに、所望のガス出力がより安定して得られるデュアル構造のディスク型ガス発生器1A2とすることができる。
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図9は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第2段階を示す模式図である。以下、これら図8および図9を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bについて説明する。
図8に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、キャップ部材47の周板部47bが、底板部11側に向かうにつれて拡径する円錐台状の斜板部47b1を当該周板部47bの上端部に有している点においてのみ相違している。ここで、キャップ部材47の周板部47bに形成される複数個のガス通過孔47cは、この斜板部47b1に周方向に沿って点列状に設けられている。
このように構成した場合には、図9に示すように、第2点火器42が作動した第2段階において、キャップ部材47の斜板部47b1に設けられたガス通過孔47cが、上述した実施の形態1の場合と比較してより天板部21側を向いた状態となり、当該ガス通過孔47cから噴き出されるガスが、直接的にフィルタ70の内周面に向けて噴き付けられることがさらに確実に回避できることになる。そのため、フィルタ70の破損がより確実に防止できることになるとともに、さらに効果的にカバー部材46の内壁面によってスラグを捕捉することが可能になる。
したがって、上記構成を採用することにより、上述した実施の形態1の場合と同様の効果が得られるばかりでなく、さらに高い信頼性が確保できるとともに、所望のガス出力がより安定して得られるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Bとすることができる。
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3に係るディスク型ガス発生器の概略図である。以下、この図10を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cについて説明する。
図10に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、カバー部材46の形状および隔壁部材45に対する組付構造のみが相違している。
具体的には、カバー部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の第1覆い部46aと、当該第1覆い部46aの周縁から天板部21側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の内周面を覆う円筒状の第2覆い部46bと、当該第2覆い部46bの軸方向の先端部から径方向外側に向けて延設されることで隔壁部材45の天板部21側の端部を覆う円環板状の第3覆い部46cとを含んでいる。
カバー部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口端に内挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、カバー部材46の第2覆い部46bは、隔壁部材45のうちの上述した内周面に密着している。ここで、カバー部材46に設けられた第2覆い部46bの軸方向長さは、比較的短く構成することができ、隔壁部材45の上述した開口端が封止可能な必要最小限の長さとすることができる。
キャップ部材47は、上述した実施の形態1の場合と同様の構成のものであり、隔壁部材45の上述した開口端に内挿されることで隔壁部材45に収容されている。これにより、キャップ部材47は、隔壁部材45およびカバー部材46によって規定される空間(すなわち第2燃焼室S2に相当)に収容されており、このうちの円盤状の頂板部47aが、第2ガス発生剤52とカバー部材46の第1覆い部46aとの間に配置されている。なお、本実施の形態においても、キャップ部材47は、隔壁部材45に対して遊嵌されている。
このように構成した場合にも、第2点火器42が作動した第2段階において、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、第2燃焼室S2に収容されたキャップ部材47に圧力が付与されることになり、周板部47bが隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態とされつつ、キャップ部材47が、天板部21側に向けて移動する。
これに伴い、カバー部材46は、キャップ部材47によって押し上げられることで天板部21側に向けて移動し、隔壁部材45の天板部21側の開口端から離脱する。これにより、キャップ部材47の周板部47bに設けられたガス通過孔47cは、隔壁部材45の天板部21側の位置において第1燃焼室S1に面するように露出することになり、当該ガス通過孔47cを介して第2燃焼室S2にて発生したガスが第1燃焼室S1へと噴き出されることになる。
そのため、カバー部材46の第2覆い部46bにガス通過孔が設けられていない分だけ、隔壁部材45に対するカバー部材46の圧入しろを従来に比して短縮化することができ、結果として隔壁部材45の固定部45aが破損してしまうことが防止できるとともに製品間でのガス出力のばらつきの発生が抑制できることになる。
したがって、上記構成を採用することにより、上述した実施の形態1の場合と同様に、従来に比して、高い信頼性が確保できるとともに、所望のガス出力が安定して得られるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Cとすることができる。
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図12は、図11に示す仕切り部の組付構造を示す分解斜視図である。まず、これら図11および図12を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dの構成について説明する。
図11に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、主として仕切り部44の構成において相違している。仕切り部44は、隔壁部材45と、カバー部材46と、キャップ部材47とを有しており、これら隔壁部材45、カバー部材46およびキャップ部材47が組み合わされることで全体としてカップ状の形状を成している。
図11および図12に示すように、隔壁部材45は、軸方向の両端に開口を有する筒状の形状を成している。隔壁部材45は、その軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように配置されており、底板部11側に位置する開口端が、底板部11に組付けられてなる第2ホルダ41に固定された固定部45aとして機能している。
より詳細には、当該固定部45aは、第2ホルダ41に圧入されており、これによって隔壁部材45が第2ホルダ41に固定されることで当該隔壁部材45を含む仕切り部44が底板部11に組付けられている。なお、隔壁部材45は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
カバー部材46は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられている。カバー部材46は、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成され、好ましくは金属製の板状部材をプレス加工したプレス成形品にて構成される。
カバー部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の第1覆い部46aと、当該第1覆い部46aの周縁から底板部11側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の内周面を覆う円筒状の第2覆い部46bとを含んでいる。ここで、より厳密には、カバー部材46の第1覆い部46aは、その周縁に隔壁部材45の天板部21側の端部を覆う円環板状の第3覆い部46cを有しており、上述した第2覆い部46bは、この第3覆い部46cの内周縁から底板部11側に向けて延設されている。
カバー部材46は、隔壁部材45の上述した開口端に内挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、カバー部材46の第2覆い部46bは、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分によって覆われており、好ましくは隔壁部材45のうちの上述した内周面に密着している。ここで、カバー部材46に設けられた第2覆い部46bの軸方向長さは、比較的短く構成することができ、隔壁部材45の上述した開口端が封止可能な必要最小限の長さとすることができる。
カバー部材46の第2覆い部46bには、貫通孔形状の複数個の第1開放部46dが周方向に沿って点列状に設けられている。この複数個の第1開放部46dは、第2点火器42の作動前の状態において隔壁部材45によって覆われることで閉鎖されている。当該複数個の第1開放部46dは、ディスク型ガス発生器1Dの動作時において、カバー部材46が何らかの理由によって予定している挙動を示さなかった場合に、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが非連通の状態のままとなることを防止するために、これら第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とを連通させるためのものであるが、その詳細については後述することとする。
キャップ部材47は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分に挿入されている。これにより、キャップ部材47は、隔壁部材45およびカバー部材46によって規定される空間(すなわち第2燃焼室S2に相当)に収容されている。キャップ部材47は、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
キャップ部材47は、第2ガス発生剤52とカバー部材46の第1覆い部46aとの間に配置された円盤状の頂板部47aと、当該頂板部47aの周縁から底板部11側に向けて延設された円筒状の周板部47bとを含んでいる。周板部47bは、底板部11側に向かうにつれて拡径する円錐台状の斜板部47b1を当該周板部47bの上端部に有している。
キャップ部材47は、隔壁部材45の上述した開口端に内挿されることで隔壁部材45に収容されている。本実施の形態においては、キャップ部材47は、隔壁部材45に対して圧入されておらず、隔壁部材45に対して遊嵌されている。これにより、キャップ部材47の周板部47bは、ディスク型ガス発生器1Dの非動作時において隔壁部材45の内周面に密着していない。そのため、本実施の形態においては、キャップ部材47が隔壁部材45に対して相対的に移動可能でかつ変形可能に組付けられることになり、第2ガス発生剤52の燃焼時において、後述するキャップ部材47の移動および変形が生じることになる。
なお、上述した第1変形例の如く、キャップ部材47を隔壁部材45に軽圧入してもよい。この場合においても、キャップ部材47が隔壁部材45に対して相対的に移動可能に組付けられることになり、第2ガス発生剤52の燃焼時において、キャップ部材47の移動が生じることになる。
ここで、上述したように、キャップ部材47の周板部47bの上端部に円錐台状の斜板部47b1が設けられることにより、キャップ部材47の斜板部47b1と隔壁部材45の天板部21側の端部との間には、環状の隙間が形成されることになる。この隙間は、上述したカバー部材46の第2覆い部46bを隔壁部材45の天板部21側の端部に内挿するための挿入しろとなる。
すなわち、当該隙間を設けなかった場合には、カバー部材46とキャップ部材47とが干渉することでこれらを共に隔壁部材45の天板部21側の端部の内側に配置することができなくなってしまうが、上記構成を採用することにより、これらカバー部材46とキャップ部材47とを共に隔壁部材45の天板部21側の端部の内側に配置することが可能になる。
ここで、隔壁部材にカバー部材を圧入によって外挿するとともに、隔壁部材にキャップ部材を遊嵌または軽圧入によって内挿する構成(たとえば上述した実施の形態1の如くの構成)とした場合には、カバー部材とキャップ部材とを隔壁部材に組付けるに際し、そもそもこれらが干渉することがないようにすることができる。しかしながら、当該構成を採用した場合には、隔壁部材の天板部側の端部における外径寸法および内径寸法を非常に高精度に管理することが必要になってしまい、これが大幅な製造コストの増大に繋がってしまう。
この点、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dにおいては、上述したように、隔壁部材45にカバー部材46を圧入によって内挿するとともに、隔壁部材45にキャップ部材47を遊嵌または軽圧入によって内挿する構成であるため、隔壁部材45の天板部21側の端部における内径寸法のみを高精度に管理すれば足り、大幅に製造コストを削減することができることになる。
キャップ部材47の斜板部47b1には、複数個のガス通過孔47cが周方向に沿って点列状に設けられている。この複数個のガス通過孔47cは、第2ガス発生剤52の燃焼時において、第2燃焼室S2にて発生したガスを仕切り部44の外側の空間に向けて通過させるためのものである。
一方、上述した斜板部47b1を除く部分のキャップ部材47の周板部47bには、貫通孔形状の複数個の第2開放部47dが周方向に沿って点列状に設けられている。複数個の第2開放部47dは、いずれも上述した複数個のガス通過孔47cよりも底板部11側に位置している。これら複数個の第2開放部47dは、第2ガス発生剤52の燃焼時において、第2燃焼室S2の圧力が必要以上に高圧になった場合に、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とを連通させる流路断面積を増加させることにより、第2燃焼室S2にて発生したガスを仕切り部44の外側の空間に向けてより多く通過させるためのものであるが、その詳細については後述することとする。
なお、図11に示すように、ディスク型ガス発生器1Dにおいては、キャップ部材47の内部に略円盤状のクッション材64が配置されている。クッション材64は、キャップ部材47の頂板部47aと第2ガス発生剤52との間に位置するように設けられており、これによりクッション材64は、第2ガス発生剤52を底板部11側に向けて押圧している。当該クッション材64は、成形体からなる第2ガス発生剤52が振動等によって破砕することを防止する目的で設けられるものであり、上述した第1ガス発生剤51を押圧するクッション材63と同様の材質のものにて構成される。
図13および図14は、それぞれ本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第1および第2段階を示す模式図である。次に、これら図13および図14を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dの動作について説明する。
ディスク型ガス発生器1Dが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電を受け、まずは第1点火器32が作動する。
図13に示すように、第1点火器32が作動した第1段階においては、第1点火器32の点火部32bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部32bが破裂する。これにより、カップ体34の内部に収容された伝火薬36が着火されて燃焼する。
伝火薬36が燃焼することにより、伝火室35の内部において多量の熱粒子が発生し、伝火室35の温度および圧力が上昇することで脆弱な部材からなるカップ体34が破裂または溶融する。カップ体34が破裂または溶融することにより、上述した多量の熱粒子が第1燃焼室S1のうちの第1ガス発生剤51が収容された部分へと流れ込む。
多量の熱粒子が第1燃焼室S1の当該部分へと流れ込むことにより、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51が順次着火されて燃焼し、これによって第1燃焼室S1において多量のガスが発生する。第1燃焼室S1にて発生したガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込む。
このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、複数個のガス噴出口24を閉鎖していたシールテープ25が開裂する。これにより、第1燃焼室S1にて発生したガスの複数個のガス噴出口24を介してのハウジングの外部に向けての噴出が開始される(矢印AR1参照)。
また、このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21は、外側に向けて膨らむように変形する。これにより、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられたカバー部材46の第1覆い部46a(すなわち、仕切り部44の閉塞端)と、天板部21との間の距離が増加することになる。
一方で、この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室S1の圧力上昇に起因して、カバー部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、カバー部材46の第1覆い部46aによって閉塞されるとともに、隔壁部材45の天板部21側の端部にカバー部材46の第3覆い部46cが密着することで当該部分が覆われた状態が維持される。なお、このとき、カバー部材46の第2覆い部46bに設けられた貫通孔形状の複数個の第1開放部46dは、いずれも隔壁部材45によって閉鎖された状態が維持されている。
これにより、当該第1段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
次に、上述した第1点火器32の作動から所定時間遅れたタイミングで、上述したコントロールユニットからの通電を受けて第2点火器42が作動する。
図14に示すように、第2点火器42が作動した第2段階においては、第2点火器42の点火部42bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部42bが破裂する。これにより、第2燃焼室S2に収容された第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼を開始する。
ここで、第2ガス発生剤52の燃焼の開始に先立って、第1ガス発生剤51が予め着火されて燃焼していることにより、ディスク型ガス発生器1Dが全体として既に高温に加熱された状態にあるため、点火部42bと第2ガス発生剤52との間に伝火薬を設けずとも、第2ガス発生剤52の燃焼がスムーズに開始されることになり、また当該第2ガス発生剤52の燃焼が途切れ難くなる。
このとき、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、第2燃焼室S2に収容されたキャップ部材47に圧力が付与されることになり、キャップ部材47のうちの頂板部47aには、主としてハウジングの軸方向に沿った方向に当該圧力が作用し、キャップ部材47のうちの周板部47bには、主としてハウジングの径方向に沿った方向に当該圧力が作用する。
これにより、キャップ部材47は、その全体が上部側シェル20の天板部21側に向けて移動することになるとともに、その周板部47bが径方向外側に向けて拡がるように変形することになる。したがって、周板部47bの下端寄りの部分が隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態とされつつ、キャップ部材47が、天板部21側に向けて移動する。
そのため、周板部47bの下端寄りの部分が隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態が維持されるため、当該部分におけるガスの漏れ出しが防止できることになる。したがって、隔壁部材45およびキャップ部材47によって圧力隔壁が確実に構成されることになり、第2燃焼室S2の内圧を適切に上昇させることができ、結果として第2ガス発生剤52の燃焼が途切れることなく持続することになる。
また、キャップ部材47の上述した移動に伴い、カバー部材46は、キャップ部材47によって押し上げられることで天板部21側に向けて移動することになる。これにより、キャップ部材47は、隔壁部材45の天板部21側の開口端から離脱する。そのため、カバー部材46が隔壁部材45から離脱した時点で、キャップ部材47の周板部47bに設けられたガス通過孔47cは、隔壁部材45の天板部21側の位置において第1燃焼室S1に面するように露出する。
ここで、本実施の形態においては、この第2段階におけるカバー部材46およびキャップ部材47の移動が所定量だけ生じた時点で、これらカバー部材46およびキャップ部材47の移動が、天板部21によって制限されるように構成されている。すなわち、カバー部材46が、上側支持部材62を介して天板部21に当接するとともに、キャップ部材47が、カバー部材46および上側支持部材62を介して天板部21に当接することにより、これらカバー部材46およびキャップ部材47が停止することになる。
以上により、図中において矢印AR2にて示すように、第2燃焼室S2にて発生したガスが、周板部47bに設けられた複数個のガス通過孔47cを通過することで第1燃焼室S1へと導入されることになる。このとき、当該ガスは、隔壁部材45から離脱したカバー部材46によってその進行方向が変更されることになり、もっぱら下部側シェル10の底板部11側に向けて噴き出すことになる。
そのため、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dにおいては、第2燃焼室S2にて発生したガスが第1燃焼室S1に導入されるに際して、直接的にフィルタ70の内周面に向けて噴き付けられることがなくなる。したがって、フィルタ70の破損が未然に防止できることになる。
第2燃焼室S2にて発生し、その後第1燃焼室S1に導入されたガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数個のガス噴出口24を介してのハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR1参照)。
なお、上述した第1および第2段階において、複数個のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Dの外部へと噴出されたガスは、当該ディスク型ガス発生器1Dに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
このように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dとした場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、第2点火器42が作動した第2段階において、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、第2燃焼室S2に収容されたキャップ部材47に圧力が付与されることになり、周板部47bが隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態とされつつ、キャップ部材47が、天板部21側に向けて移動する。
そのため、カバー部材46の第2覆い部46bの軸方向の長さを短くすることができ、隔壁部材45に対するカバー部材46の圧入しろを従来に比して短縮化することができる。これにより、隔壁部材45の固定部45aに、第2ガス発生剤52の燃焼時において大きな力が作用してしまうことが回避でき、結果として当該固定部45aが破損してしまうことが防止できる。また、カバー部材46を移動させるために必要となる力が従来に比して十分に小さくなることに伴い、製品間での当該力にもばらつきが生じ難くなり、結果として所望のガス出力を安定して得ることが可能になる。
したがって、上記構成を採用することにより、上述した実施の形態1の場合と同様に、従来に比して、高い信頼性が確保できるとともに、所望のガス出力が安定して得られるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Dとすることができる。
ここで、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dにあっては、上述した第2段階におけるカバー部材46およびキャップ部材47の移動が停止した時点において、カバー部材46が隔壁部材45から離脱していることに伴い、当該カバー部材46の第2覆い部46bに設けられた貫通孔形状の複数個の第1開放部46dは、いずれ第1燃焼室S1中において露出した状態で位置することになる。一方、上記時点において、キャップ部材47の周板部47bが隔壁部材45の内周面に密着していることに伴い、当該キャップ部材47の周板部47bに設けられた貫通孔形状の複数個の第2開放部47dは、いずれも隔壁部材45によって閉鎖された状態とされている。
そのため、ディスク型ガス発生器1Dが上述した動作を行なう限りにおいては、これら複数個の第1開放部46dおよび複数個の第2開放部47dは、ハウジングの内部を流動するガスの流れに特に大きな影響を与えることはない。
しかしながら、一般に、ガス発生器の出力特性は、当該ガス発生器が置かれた周囲環境の影響を受け、特にその環境温度に依存し、高温環境下において出力特性が強まり、低温環境下において出力特性が弱まる傾向にある。すなわち、高温環境下においては、ガスがより早くかつより強く噴出することになり、低温環境下においては、ガスがより遅くかつより弱く噴出することになる。これに伴い、天板部の変形量は、その環境温度に依存して大きくなったり小さくなったりすることがある。
ここで、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dにおいては、上述したように、第2段階におけるカバー部材46およびキャップ部材47の移動が、天板部21によって制限されるように構成されているため、第1段階において生じた天板部21の変形の程度に応じてこれらカバー部材46およびキャップ部材47の第2段階における挙動が主として決定されることになる。
したがって、たとえばディスク型ガス発生器1Dの動作時における環境温度が極端に低温である場合等には、当該天板部21の変形量が小さくなり、上述した如くの動作が再現されないおそれがある。
この点、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dは、このような状況下においてもその動作が補償されることとなるように、カバー部材46の第2覆い部46bに複数個の貫通孔形状の第1開放部46dが設けられている。以下、当該状況下における動作について説明する。図15は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第2段階の他の例を示す模式図であり、当該模式図は、上記状況下における第2段階の動作状態を示している。
図15に示すように、第1段階における天板部21の変形量が小さい場合には、これに伴ってカバー部材46およびキャップ部材47の天板部21側に向けての移動量も小さくなる。その場合、カバー部材46が隔壁部材45から十分に離脱せず、カバー部材46と隔壁部材45との間に隙間が生じないおそれがある。
ここで、カバー部材46に孔部等を一切設けていない場合には、カバー部材46と隔壁部材45とによって第2燃焼室S2が密閉された状態が維持されてしまい、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが、キャップ部材47に設けられた複数個のガス通過孔47cを介して連通した状態とならず、第2燃焼室S2の内圧が必要以上に上昇してしまうことになる。
しかしながら、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dにおいては、上述のとおりカバー部材46の第2覆い部46bに複数個の貫通孔形状の第1開放部46dが設けられているため、この場合においても、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが、複数個の第1開放部46dおよび複数個のガス通過孔47cを介して連通した状態となり、第2燃焼室S2における内圧を相当程度に高めつつ、第2燃焼室S2において発生したガスを第1燃焼室S1へとスムーズに導出させることができる。
なお、当該複数個の第1開放部46dは、必ずしもカバー部材46が隔壁部材45から離脱しない場合においてのみその機能を発揮するものではなく、たとえばカバー部材46が隔壁部材45から離脱したものの、当該カバー部材46によってキャップ部材47の斜板部47b1が覆われてしまった場合等においてもその機能を発揮するものである。
一方で、たとえばディスク型ガス発生器1Dの動作時における環境温度が極端に高温である場合等には、キャップ部材47に設けられた複数個のガス通過孔47cの総開口面積が小さく絞られていることに伴い、必要以上に第2燃焼室S2の内圧が上昇してしまうおそれがある。
この点、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dは、このような状況下においてもその動作が補償されることとなるように、キャップ部材47の周板部47bに複数個の貫通孔形状の第2開放部47dが設けられている。以下、当該状況下における動作について説明する。図16は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第2段階のさらに他の例を示す模式図であり、当該模式図は、上記状況下における第2段階の動作状態を示している。
図16に示すように、第1段階における天板部21の変形量が大きい場合には、これに伴ってカバー部材46およびキャップ部材47の天板部21側に向けての移動量も大きくなる。これに伴い、キャップ部材47に設けられた複数個のガス通過孔47cのみならず複数個の第2開放部47dも、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2の双方に面するように露出することになる。
そのため、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とは、複数個のガス通過孔47cの総開口面積と複数個の第2開放部47dの総開口面積の総和分だけの流路断面積をもって連通することになり、第2燃焼室S2の内圧が必要以上に上昇してしまうことが未然に防止できることになる。
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dにおいては、上述のとおりキャップ部材47の周板部47bに複数個の貫通孔形状の第2開放部47dが設けられているため、この場合においても、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが、複数個のガス通過孔47cおよび複数個の第2開放部47dを介して連通した状態となり、第2燃焼室S2における内圧を相当程度に高めつつ、第2燃焼室S2において発生したガスを第1燃焼室S1へとスムーズに導出させることができる。
以上において説明したように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dとした場合には、環境温度の相違の影響を可能な限り排除しつつ、作動時において所望のガス出力を確実に得ることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Dとすることができる。
なお、一般に、ガス発生器においては、ガス発生剤の製造時における製造条件の避けられないばらつきや、ガス発生剤のハウジング内部への充填作業の際の避けられない充填状態の違い等に基づき、製品間において動作時におけるガス出力に僅かながらばらつきが生じ得る。この点、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dとすれば、このような原因に基づくガス出力のばらつきに対しても有効にこれを抑制することができ、この意味においても、作動時において所望のガス出力を確実に得ることが可能になる。
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態1ないし4ならびにその変形例においては、第2点火器が作動した第2段階において、カバー部材およびキャップ部材の移動が天板部によって制限された後の状態において、複数個のガス通過孔がカバー部材に対向して位置するように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成する必要はなく、当該制限後の状態において、複数個のガス通過孔がカバー部材に対向しないように構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4ならびにその変形例においては、第1点火器および第2点火器が異なるタイミングで通電されることにより、第2点火器が第1点火器の作動のタイミングから遅れたタイミングで作動するように構成された場合を例示して説明を行なったが、これらが同時のタイミングで通電されることにより、同時のタイミングで作動するように構成されていてもよい。また、第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電する場合であっても、第2点火器の点火部に点火薬の着火を遅らせる延時薬を設けることにより、第2点火器の通電から点火薬の着火までに要する時間を延長し、これによって第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電しつつも、第2ガス発生剤の燃焼開始のタイミングを第1ガス発生剤の燃焼開始のタイミングよりも遅らせるように構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4ならびにその変形例においては、第1燃焼室および第2燃焼室の双方にガス発生剤を充填した場合を例示して説明を行なったが、第2燃焼室については、これを伝火室とし、当該伝火室に伝火薬を充填することとしてもよい。このように構成した場合には、第2点火器が作動することで当該伝火薬が燃焼し、当該伝火薬が燃焼することによって当該伝火室の内部において多量の熱粒子が発生するとともに当該伝火室の圧力が上昇する。これにより、キャップ部材およびカップ部材が天板部側に向けて移動し、キャップ部材に設けられたガス通過孔が第1燃焼室に面するように露出することで上述した多量の熱粒子が第1燃焼室へと流れ込む。したがって、当該構成を採用した場合には、隔壁部材、カップ部材およびキャップ部材からなる仕切り部の内部に充填された伝火薬により、第1ガス発生剤の燃焼を促進させることができる。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4ならびにその変形例においては、第1点火器および第2点火器をそれぞれ金属製の第1ホルダおよび第2ホルダを介してハウジングの底板部に組付けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、これら第1点火器および第2点火器の双方をいわゆるインサート成形によってハウジングの底板部に組付けるように構成してもよい。その場合には、ディスク型ガス発生器は、上述した第1ホルダおよび第2ホルダに代えて、樹脂成形部からなる第1保持部および第2保持部を有することになり、第1点火器および第2点火器は、それぞれこれら第1保持部および第2保持部を介してハウジングの底板部に組付けられることになる。
具体的には、第1保持部は、型を用いた射出成形によって形成することができ、下部側シェルと第1点火器との間の空間を充填するように流動性樹脂材料を流し込んでこれを固化させることで設けることができる。より詳細には、上述した流動性樹脂材料を、下部側シェルの底板部に設けられた第1開口部を経由して底板部の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように当該底板部に付着させるとともに、第1点火器の基部にもこれを付着させ、この状態において流動性樹脂材料を固化させることにより、第1点火器を第1保持部を介してハウジングの底板部に組付けることができる。
これにより、第1開口部は、第1保持部によって埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が第1保持部によって確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保できることになる。なお、第1点火器の端子ピンは、その一部が第1保持部を貫通して外部に引き出されるように構成すればよい。また、この場合において、たとえばカップ体の開口端を第1保持部に外挿することでカップ体を圧入等によって第1保持部に固定することとすれば、伝火薬を第1点火器の点火部に面するように配置することもできる。
また、第2保持部も、第1保持部と同様に、型を用いた射出成形によって形成することができ、下部側シェルと第2点火器との間の空間を充填するように流動性樹脂材料を流し込んでこれを固化させることで設けることができる。より詳細には、上述した流動性樹脂材料を、下部側シェルの底板部に設けられた第2開口部を経由して底板部の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように当該底板部に付着させるとともに、第2点火器の基部にもこれを付着させ、この状態において流動性樹脂材料を固化させることにより、第2点火器を第2保持部を介してハウジングの底板部に組付けることができる。
これにより、第2開口部は、第2保持部によって埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が第2保持部によって確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保できることになる。なお、第2点火器の端子ピンは、その一部が第2保持部を貫通して外部に引き出されるように構成すればよい。また、この場合において、たとえば有底略円筒状の隔壁部材の開口端を第2保持部に外挿することで隔壁部材を圧入等によって第2保持部に固定することとすれば、第2ガス発生剤を第2点火器の点火部に面するように配置することもできる。
ここで、下部側シェルの第1開口部および第2開口部が設けられた部分をハウジングの内側に向けて筒状に突出させることとすれば、第1保持部および第2保持部と底板部との間の固着面積を増加させることでこれらの接合強度を高めることができるとともに、ハウジングの筒状に折り曲げた部分の内側に雌型コネクタ部を形成するスペースを確保することもできる。
射出成形によって形成される第1保持部および第2保持部の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において第1保持部および第2保持部の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
また、第1保持部および第2保持部によって覆われることとなる部分の底板部の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェルを用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させること等により、その形成が可能である。
このようにすれば、底板部と第1保持部および第2保持部との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる第1保持部および第2保持部をより強固に底板部に固着させることが可能になる。したがって、底板部に設けられた第1開口部および第2開口部を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することもできる。
ここで、底板部に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を原料として含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
なお、第1点火器および第2点火器の一方を金属製のホルダを介してハウジングに固定するとともに、第1点火器および第2点火器の他方を樹脂成形部からなる保持部を介してハウジングに固定することとしてもよい。
加えて、上述した本発明の実施の形態1ないし4ならびにその変形例の場合と同様に、第1点火器組立体および第2点火器組立体のベースを第1ホルダおよび第2ホルダにてそれぞれ構成する反面、第1ホルダと第1点火器との間を樹脂成形部にて接合することで第1点火器組立体を構成し、第2ホルダと第2点火器との間を樹脂成形部にて接合することで第2点火器組立体を構成し、第1ホルダおよび第2ホルダをそれぞれ底板部に溶接等によって接合することとしてもよい。
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし4ならびにその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて相互にこれらを組み合わせることができる。
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。