以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図2は、図1中に示すII-II線に沿った模式断面図である。また、図3は、図1に示す燃焼制御部材の斜視図であり、図4は、図1に示す仕切り部の組付構造を示す分解斜視図である。まず、これら図1ないし図4を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの構成について説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aは、いわゆるデュアル構造を有するものである。
図1および図2に示すように、ディスク型ガス発生器1Aは、軸方向の一端および他端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての第1点火器組立体30、第2点火器組立体40、第1ガス発生剤51、第2ガス発生剤52、下側支持部材61、上側支持部材62、フィルタ70等が収容されてなるものである。
図1に示すように、ハウジングは、下部側シェル10および上部側シェル20を含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20の各々は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等からなる金属板が利用され、好適には440[MPa]以上780[MPa]以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とフランジ部23とを有している。
下部側シェル10の周壁部12の上端は、上部側シェル20の周壁部22の下端に挿入されることで圧入されている。さらに、下部側シェル10の周壁部12と上部側シェル20の周壁部22とが、それらの当接部またはその近傍において接合されることにより、下部側シェル10と上部側シェル20とが固定されている。ここで、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
これにより、ハウジングの周壁部のうちの底板部11寄りの部分は、下部側シェル10の周壁部12によって構成されており、ハウジングの周壁部のうちの天板部21寄りの部分は、上部側シェル20の周壁部22によって構成されている。また、ハウジングの軸方向の一端および他端は、それぞれ下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21によって閉塞されている。
上部側シェル20に設けられたフランジ部23は、ディスク型ガス発生器1Aを外部の部材(たとえば、エアバッグ装置に設けられたリテーナ等)に固定するための部位である。フランジ部23の所定位置には、周壁部22の軸方向と平行な方向に沿って貫通するように貫通孔(図中において当該貫通孔は現われていない)が設けられている。当該貫通孔には、ボルト等の締結部材が挿入されることになり、これによりディスク型ガス発生器1Aが外部の部材に対して固定されることになる。
下部側シェル10の底板部11の所定位置には、第1開口部11aおよび第2開口部11bが設けられている。下部側シェル10の底板部11には、第1開口部11aを閉塞するように第1点火器組立体30が組付けられているとともに、第2開口部11bを閉塞するように第2点火器組立体40が組付けられている。ここで、第1開口部11aは、第1点火器組立体30の下端に設けられた後述する第1雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位であり、第2開口部11bは、第2点火器組立体40の下端に設けられた後述する第2雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位である。
第1点火器組立体30は、第1ホルダ31と、第1点火器32と、第1シール部材33と、カップ体34Aと、伝火薬36と、燃焼制御部材37とを主として含んでいる。第1ホルダ31は、第1点火器組立体30のベースを構成するものであり、当該第1ホルダ31に、第1点火器32、カップ体34Aおよび燃焼制御部材37等が組付けられることにより、第1点火器組立体30が一体の部品として構成されている。
第1ホルダ31は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aが設けられており、底板部11側に位置する第1ホルダ31の下面には、下側凹部31bが設けられている。また、上側凹部31aの底部ならびに下側凹部31bの底部を構成する部分の第1ホルダ31には、これら上側凹部31aおよび下側凹部31bに達するように貫通孔31cが設けられている。
また、第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aを取り囲むようにかしめ部31dが設けられている。かしめ部31dは、第1点火器32を第1ホルダ31にかしめ固定するための部位である。
第1点火器32は、火炎を発生させるためのものであり、基部32aと、点火部32bと、一対の端子ピン32cとを有している。基部32aは、点火部32bおよび一対の端子ピン32cを保持する部位であり、また第1ホルダ31に対して固定される部位でもある。点火部32bは、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン32cは、点火薬を着火させるために点火部32bに接続されている。
より詳細には、点火部32bは、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン32cが挿通されてこれを保持する塞栓とを含んでおり、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン32cの先端を連結するように上述した抵抗体が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび塞栓は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン32cを介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから第1点火器32が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合に一般に2[ms]以下である。
第1点火器32は、第1ホルダ31の貫通孔31cに一対の端子ピン32cが上方から挿入されるとともに第1ホルダ31の上側凹部31aに基部32aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部31dが折り曲げられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
ここで、第1ホルダ31と第1点火器32との間には、Oリング等からなる第1シール部材33が介装されており、これによって第1ホルダ31と第1点火器32との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第1点火器32の固定方法は、上述したかしめ部31dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
カップ体34Aは、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、内部に伝火薬36が収容された伝火室35を含んでいる。カップ体34Aは、伝火室35を規定する頂壁部34aおよび側壁部34bと、側壁部34bの開口端側の部分から径方向外側に向けて延設されたフランジ部34cとを有している。
カップ体34Aは、その内部に形成された伝火室35が第1点火器32の点火部32bに面するように第1ホルダ31に組付けられており、より詳細には、フランジ部34cが第1ホルダ31の上面に当て留めされた状態において、当該フランジ部34cが後述する燃焼制御部材37の押さえ部37dによって第1ホルダ31に向けて押し付けられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
カップ体34Aは、頂壁部34aおよび側壁部34bのいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室35を取り囲んでいる。このカップ体34Aは、第1点火器32が作動することによって伝火薬36が着火された場合に伝火室35内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融する脆弱な部材からなる。
そのため、カップ体34Aとしては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
伝火室35に充填された伝火薬36は、第1点火器32が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬36としては、第1ガス発生剤51を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
伝火薬36としては、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬36の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
図1ないし図3に示すように、燃焼制御部材37は、略円筒状の形状を成しており、障壁部37aと、開放部37bと、被固定部37cと、押さえ部37dとを有している。燃焼制御部材37は、伝火薬36の燃焼によっても破裂または溶融しない非脆弱な部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材にて構成される。また、この他にも、融点が300[℃]を超える耐熱性樹脂にて燃焼制御部材37を構成してもよく、当該耐熱性樹脂としては、たとえばポリイミド樹脂やポリアミド樹脂等が挙げられる。
燃焼制御部材37は、その軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように配置されており、底板部11側に位置する開口端が、底板部11に組付けられた第1ホルダ31に固定された被固定部37cとして機能している。より詳細には、被固定部37cは、略円筒状の形状を有しており、当該被固定部37cが、底板部11から後述する第1燃焼室SA1側に向けて突出して位置する部分の第1ホルダ31に圧入されることにより、燃焼制御部材37が、当該第1ホルダ31を介して底板部11に組付けられている。
燃焼制御部材37は、伝火薬36の燃焼によって着火される後述する第1ガス発生剤51の燃え広がりを制御する燃焼制御機構に該当し、より詳細には、伝火薬36が燃焼することで生じる火炎が伝火室35から所定の方向に向けて噴き出すように指向性を与えるものである。この伝火薬36が燃焼することで生じる火炎に指向性を与える機能は、燃焼制御部材37に設けられた障壁部37aと開放部37bとによって主として発揮される。
すなわち、障壁部37aは、伝火室35を規定するカップ体34Aの頂壁部34aおよび側壁部34bのうち、ハウジングの中心軸寄りに位置する部分とは反対側に位置する部分の側壁部34bを直接的に覆うように位置しており、開放部37bは、頂壁部34aと、ハウジングの中心軸寄りに位置する部分の側壁部34bとを露出させるように位置している。ここで、図3においては、燃焼制御部材37から見た場合におけるハウジングの中心軸が位置する方向を、矢印Aにて表わしている。なお、本実施の形態に係る燃焼制御部材37は、当該燃焼制御部材37の周方向における開放部37bの開口角度を約120°に設定し、その上端が、燃焼制御部材37の上端開口に達するように構成したものである。
これにより、伝火薬36の燃焼時においては、伝火薬36が燃焼することでカップ体34Aの頂壁部34aおよび側壁部34bのうちの開放部37bによって露出された部分が破裂または溶融することになり、これによって伝火薬36が燃焼することで生じた火炎が、所定の方向に向けて第1燃焼室SA1に噴き出すことになる。
なお、押さえ部37dは、障壁部37aと被固定部37cとの間において燃焼制御部材37を折り曲げることで形成されており、当該押さえ部37dによってカップ体34Aのフランジ部34cが第1ホルダ31の上面に押し付けられることにより、上述したようにカップ体34Aが第1ホルダ31に固定されている。
図1に示すように、第1ホルダ31の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第1開口部11aに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第1ホルダ31に予め第1点火器32、カップ体34Aおよび燃焼制御部材37等が組付けられることで一体化された第1点火器組立体30が、下部側シェル10に対して固定されることになる。
そのため、第1ホルダ31は、底板部11からハウジングの内部の空間に向けて突出して位置するように構成されることになり、特に第1点火器組立体30の内部に設けられた伝火室35が、ハウジングの内部の空間に配置されることになる。ここで、底板部11と第1ホルダ31との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第1ホルダ31の下側凹部31bには、第1点火器32の一対の端子ピン32cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部31bおよび一対の端子ピン32cによって上述した第1雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第1雌型コネクタ部は、第1点火器32とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第1雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第1雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン32cとの電気的導通が実現されることになる。
図1に示すように、第2点火器組立体40は、第2ホルダ41と、第2点火器42と、第2シール部材43と、仕切り部44と、第2ガス発生剤52とを主として含んでいる。第2ホルダ41は、第2点火器組立体40のベースを構成するものであり、当該第2ホルダ41に、第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることにより、第2点火器組立体40が一体の部品として構成されている。
第2ホルダ41は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aが設けられており、底板部11側に位置する第2ホルダ41の下面には、下側凹部41bが設けられている。また、上側凹部41aの底部ならびに下側凹部41bの底部を構成する部分の第2ホルダ41には、これら上側凹部41aおよび下側凹部41bに達するように貫通孔41cが設けられている。
また、第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aを取り囲むようにかしめ部41dが設けられている。かしめ部41dは、第2点火器42を第2ホルダ41にかしめ固定するための部位である。
第2点火器42は、火炎を発生させるためのものであり、基部42aと、点火部42bと、一対の端子ピン42cとを有している。基部42aは、点火部42bおよび一対の端子ピン42cを保持する部位であり、また第2ホルダ41に対して固定される部位でもある。なお、第2点火器42は、基本的には上述した第1点火器32と同様の構成のものであるため、ここではその詳細な説明は省略する。
第2点火器42は、第2ホルダ41の貫通孔41cに一対の端子ピン42cが上方から挿入されるとともに第2ホルダ41の上側凹部41aに基部42aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部41dが折り曲げられることにより、第2ホルダ41に固定されている。
ここで、第2ホルダ41と第2点火器42との間には、Oリング等からなる第2シール部材43が介装されており、これによって第2ホルダ41と第2点火器42との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第2点火器42の固定方法は、上述したかしめ部41dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
仕切り部44は、隔壁部材45と、カバー部材46と、キャップ部材47とを有しており、これら隔壁部材45、カバー部材46およびキャップ部材47が組み合わされることで全体としてカップ状の形状を成している。仕切り部44は、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間である燃焼室を2室に仕切る圧力隔壁として機能する。
図1および図2に示すように、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間である燃焼室は、仕切り部44によって当該仕切り部44よりも外側の空間と当該仕切り部44よりも内側の空間とに仕切られており、このうちの前者の空間が第1燃焼室SA1として規定されるとともに、このうちの後者の空間が第2燃焼室SA2として規定される。
図1に示すように、仕切り部44は、その内部に形成された第2燃焼室SA2が第2点火器42の点火部42bに面するように第2ホルダ41に組付けられている。より詳細には、後述するように、仕切り部44のうちの隔壁部材45の下端に設けられた被固定部45aが第2ホルダ41に圧入されることにより、仕切り部44が第2ホルダ41を介して底板部11に固定されている。
仕切り部44の内部に位置する第2燃焼室SA2には、第2ガス発生剤52が収容されている。第2ガス発生剤52は、第2点火器42が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。なお、第2ガス発生剤52の詳細については、後述することとする。
図1、図2および図4に示すように、隔壁部材45は、軸方向の両端に開口を有する筒状の形状を成している。隔壁部材45は、その軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように配置されており、底板部11側に位置する開口端が、底板部11に組付けられた第2ホルダ41に固定された被固定部45aとして機能している。
より詳細には、当該被固定部45aは、上述したように第2ホルダ41に圧入されており、これによって隔壁部材45が第2ホルダ41に固定されることで当該隔壁部材45を含む仕切り部44が底板部11に組付けられている。なお、隔壁部材45は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等の金属製の部材にて構成される。
カバー部材46は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられている。カバー部材46は、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等の金属製の部材にて構成される。
カバー部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の第1覆い部46aと、当該第1覆い部46aの周縁から底板部11側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の外周面を覆う円筒状の第2覆い部46bとを含んでいる。
カバー部材46は、隔壁部材45の上述した開口端に外挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、カバー部材46の第2覆い部46bは、隔壁部材45のうちの上述した外周面に密着している。
キャップ部材47は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成し、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分に挿入されている。これにより、キャップ部材47は、隔壁部材45およびカバー部材46によって規定される空間(すなわち第2燃焼室SA2に相当)に収容されている。キャップ部材47は、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金等の金属製の部材にて構成されるが、その厚みは、隔壁部材45に比べて十分に薄く構成される。
キャップ部材47は、第2ガス発生剤52とカバー部材46の第1覆い部46aとの間に配置された円盤状の頂板部47aと、当該頂板部47aの周縁から底板部11側に向けて延設された円筒状の周板部47bとを含んでいる。
キャップ部材47は、隔壁部材45の上述した開口端に内挿されることで隔壁部材45に収容されており、より詳細には、隔壁部材45に対して圧入または遊嵌されている。ここで、遊嵌とは、隔壁部材45に嵌め込まれたキャップ部材47が、隔壁部材45との間で所定のクリアランスをもった状態にあることを意味し、本実施の形態においては、この遊嵌によってキャップ部材47が隔壁部材45に組付けられている。
キャップ部材47の周板部47bには、周方向に沿って点列状に複数のガス通過孔47cが設けられている。この複数のガス通過孔47cは、第2ガス発生剤52の燃焼時において、第2燃焼室SA2にて発生したガスを仕切り部44の外側の空間に向けて通過させるためのものであり、周板部47bの厚み方向に沿って当該周板部47bを貫通するように設けられている。
図1に示すように、第2ホルダ41の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第2開口部11bに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第2ホルダ41に予め第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることで一体化された第2点火器組立体40が、下部側シェル10に対して固定されることになる。
そのため、第2ホルダ41は、底板部11からハウジングの内部の空間に向けて突出して位置するように構成されることになり、特に第2点火器組立体40の内部に設けられた第2燃焼室SA2が、ハウジングの内部の空間に配置されることになる。ここで、底板部11と第2ホルダ41との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第2ホルダ41の下側凹部41bには、第2点火器42の一対の端子ピン42cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部41bおよび一対の端子ピン42cによって上述した第2雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第2雌型コネクタ部は、第2点火器42とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第2雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第2雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン42cとの電気的導通が実現されることになる。
図1および図2に示すように、ハウジングの内部の空間には、上述した第1点火器組立体30および第2点火器組立体40に加え、フィルタ70が収容されている。フィルタ70は、円筒状の形状を成し、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と合致するようにハウジングと同軸上に配置されている。これにより、フィルタ70は、その外周面がハウジングの周壁部の内周面に対向している。
フィルタ70は、その内側の空間に第1点火器組立体30および第2点火器組立体40が配置されるように、これら第1点火器組立体30および第2点火器組立体40を取り巻くように配置されている。これにより、フィルタ70の内側の空間であってかつ仕切り部44の外側の空間に、第1ガス発生剤51が収容される第1燃焼室SA1が形成されることになる。なお、フィルタ70は、ハウジングの周壁部から所定の距離をもって配置されており、これによりハウジングの周壁部とフィルタ70との間には、ガス排出室SBが形成されている。
フィルタ70としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの等が利用できる。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用できる。
また、フィルタ70として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ70は、第1燃焼室SA1および第2燃焼室SA2にて発生したガスがこのフィルタ70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。
ここで、第1点火器組立体30は、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されており、第2点火器組立体40も、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されている。このように構成することにより、ハウジングの内部にデッドスペースが生じることが防止でき、ディスク型ガス発生器1Aを全体として小型に構成することができる。
第1燃焼室SA1には、第1ガス発生剤51が収容されている。第1ガス発生剤51は、第1点火器32が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤であり、第1点火器組立体30の周囲に位置している。
より具合的には、第1ガス発生剤51は、フィルタ70の内側の空間であってかつ第1点火器組立体30のカップ体34Aの頂壁部34aおよび側壁部34bに隣り合う空間、ならびに、フィルタ70の内側の空間であってかつ第2点火器組立体40の仕切り部44の側壁に隣り合う空間に配置されている。
ただし、上述したように、第1燃焼室SA1には、第1点火器組立体30の燃焼制御部材37が配置されているため、当該燃焼制御部材37の障壁部37aが位置する部分においては、カップ体34Aの側壁部34bが直接的に第1ガス発生剤51に面しておらず、その間に障壁部37aが介在することになる。
上述した第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてこれら第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52が形成される。
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や塩基性炭酸銅等の塩基性炭酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。また、この他にも、バインダとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の多糖誘導体や、二硫化モリブデン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、アルミナ等の無機バインダも好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
ここで、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの組成が同じものであってもよいし、それらの組成が異なるものであってもよい。また、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの形状や大きさが同じものであってもよいし、それらの形状や大きさが異なるものであってもよい。
フィルタ70に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス排出室SBに面するように複数のガス噴出口24が設けられている。より具体的には、複数のガス噴出口24は、上部側シェル20の周壁部22の周方向に沿って互いに間隔を空けて点列状に設けられており、ハウジングの内部の空間を取り巻くように位置している。これら複数のガス噴出口24は、フィルタ70を通過したガスをガス排出室SBを介してハウジングの外部に導出するためのものである。
また、上部側シェル20の周壁部22の内周面には、上記複数のガス噴出口24を閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ25が貼り付けられている。このシールテープ25としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ25によってハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。
図1に示すように、第1燃焼室SA1のうち、底板部11側に位置する端部には、下側支持部材61が配置されている。下側支持部材61は、環状の形状を成し、フィルタ70と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と底板部11とに宛がわれて配置されている。これにより、下側支持部材61は、第1燃焼室SA1の上記端部近傍において、底板部11と第1ガス発生剤51との間に位置している。
下側支持部材61は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室SA1および第2燃焼室SA2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。下側支持部材61は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
第1燃焼室SA1のうち、天板部21側に位置する端部には、上側支持部材62が配置されている。上側支持部材62は、略円盤状の形状を成し、フィルタ70と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上側支持部材62は、第1燃焼室SA1の上記端部近傍において、天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置している。
上側支持部材62は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室SA1および第2燃焼室SA2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。上側支持部材62は、上述した下側支持部材61と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
この上側支持部材62の内部には、第1燃焼室SA1に収容された第1ガス発生剤51に接触するように平面視略C字状のクッション材63が配置されている。これにより、クッション材63は、第1燃焼室SA1の天板部21側の部分において天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置することになり、第1ガス発生剤51を底板部11側に向けて押圧している。
クッション材63は、成形体からなる第1ガス発生剤51が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。なお、クッション材63は、第1ガス発生剤51の燃焼によって焼失するものである。
なお、第2ガス発生剤52の振動による破砕を防止する何らかの手当てが必要な場合には、第1ガス発生剤51の場合と同様に、これをクッション材を用いることで実現することができる。その場合には、円盤状のクッション材を仕切り部44の天板部21側に位置する閉塞端と第2ガス発生剤52との間に配置するか、あるいは、円環板状のクッション材を第2点火器42を取り囲む部分の第2ホルダ41の上面と第2ガス発生剤52との間に配置するか、のいずれかとすることができる。
前者の構成を採用した場合には、クッション材によって第2ガス発生剤52が底板部11側に向けて押圧されることになり、後者の構成を採用した場合には、クッション材によって第2ガス発生剤52が天板部21側に向けて押圧されることになる。なお、前者の構成および後者の構成の双方を採用することとしてもよい。ここで、上述した第2ガス発生剤52を押圧するクッション材としては、第1ガス発生剤51を押圧するクッション材63と同様の材質ものを利用することができる。
図5は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第1段階を示す模式断面図であり、図6は、図5中に示すVI-VI線に沿った模式断面図である。また、図7は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第2段階を示す模式断面図である。次に、これら図5ないし図7を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの動作について説明する。
ディスク型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電を受け、まずは第1点火器32が作動する。
図5および図6に示すように、第1点火器32が作動した第1段階においては、第1点火器32の点火部32bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部32bが破裂する。これにより、カップ体34Aの内部に収容された伝火薬36が着火されて燃焼する。
伝火薬36が燃焼することにより、伝火室35の内部において多量の熱粒子が発生し、伝火室35の温度および圧力が上昇することで脆弱な部材からなるカップ体34Aが破裂または溶融する。このカップ体34Aの破裂または溶融に伴い、伝火室35が第1燃焼室SA1に通じることになり、上述した多量の熱粒子が第1燃焼室SA1へと流れ込む。
このとき、カップ体34Aの頂壁部34aおよび側壁部34bのうち、側壁部34bの一部が燃焼制御部材37の障壁部37aによって覆われていることに伴い、頂壁部34aと側壁部34bの残る一部(すなわち、カップ体34Aのうちの燃焼制御部材37の開放部37bによって第1燃焼室SA1に向けて露出されている部分)のみが破裂または溶融し、障壁部37aによって覆われた部分は、破裂または溶融せずに残存する。
これにより、伝火薬36が燃焼することで生じた火炎は、図中において矢印AR1にて示すように、上部側シェル20の天板部21側およびハウジングの中心軸側に向けて噴き出すことになり、伝火室35から見て障壁部37aが位置する側に噴き出すことが防止される。そのため、第1点火器組立体30の周囲に位置する第1ガス発生剤51のうち、伝火室35から見て障壁部37aが位置する方向を除く方向に位置する第1ガス発生剤51が着火されて燃焼を開始する。
なお、第1点火器組立体30の周囲に位置する第1ガス発生剤51のうち、伝火室35から見て障壁部37a側に位置する第1ガス発生剤51は、先に燃焼を開始した第1ガス発生剤51の燃え広がりに伴って遅れたタイミングで燃焼を開始することになる。
この第1ガス発生剤51の燃焼に伴い、第1燃焼室SA1において多量のガスが発生する。第1燃焼室SA1にて発生したガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室SBへと流れ込む。
このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、複数のガス噴出口24を閉鎖していたシールテープ25が開裂する。これにより、第1燃焼室SA1にて発生したガスの複数のガス噴出口24を介してのハウジングの外部に向けての噴出が開始される(矢印AR2参照)。
一方で、この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室SA1の圧力上昇に起因して、カバー部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、カバー部材46の第1覆い部46aによって閉塞されるとともに、隔壁部材45の天板部21寄りの部分の外周面にカバー部材46の第2覆い部46bが密着することで当該部分が覆われた状態が維持される。
これにより、当該第1段階においては、第1燃焼室SA1と第2燃焼室SA2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
次に、上述した第1点火器32の作動から所定時間遅れたタイミングで、上述したコントロールユニットからの通電を受けて第2点火器42が作動する。
図7に示すように、第2点火器42が作動した第2段階においては、第2点火器42の点火部42bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部42bが破裂する。これにより、第2燃焼室SA2に収容された第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼を開始する。
ここで、第2ガス発生剤52の燃焼の開始に先立って、第1ガス発生剤51が予め着火されて燃焼していることにより、ディスク型ガス発生器1Aが全体として既に高温に加熱された状態にあるため、点火部42bと第2ガス発生剤52との間に伝火薬を設けずとも、第2ガス発生剤52の燃焼がスムーズに開始されることになり、また当該第2ガス発生剤52の燃焼が途切れ難くなる。
このとき、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室SA2の圧力上昇に起因して、第2燃焼室SA2に収容されたキャップ部材47に圧力が付与されることになり、キャップ部材47のうちの頂板部47aには、主としてハウジングの軸方向に沿った方向に当該圧力が作用し、キャップ部材47のうちの周板部47bには、主としてハウジングの径方向に沿った方向に当該圧力が作用する。
これにより、キャップ部材47は、その全体が上部側シェル20の天板部21側に向けて移動することになるとともに、その周板部47bが径方向外側に向けて拡がるように変形することになる。したがって、周板部47bの下端寄りの部分が隔壁部材45の内周面に周方向に沿って密着した状態とされつつ、キャップ部材47が、天板部21側に向けて移動する。これにより、第2燃焼室SA2の内圧が適切に上昇することになり、第2ガス発生剤52の燃焼が途切れることなく持続する。
キャップ部材47の上述した移動に伴い、カバー部材46は、キャップ部材47によって押し上げられることで天板部21側に向けて移動することになる。これにより、キャップ部材47は、隔壁部材45の天板部21側の開口端から離脱する。そのため、カバー部材46が隔壁部材45から離脱した時点で、キャップ部材47の周板部47bに設けられたガス通過孔47cは、隔壁部材45の天板部21側の位置において第1燃焼室SA1に面するように露出する。
ここで、本実施の形態においては、この第2段階におけるカバー部材46およびキャップ部材47の移動が所定量だけ生じた時点で、これらカバー部材46およびキャップ部材47の移動が、天板部21によって制限されるように構成されている。すなわち、カバー部材46が、上側支持部材62を介して天板部21に当接するとともに、キャップ部材47が、カバー部材46および上側支持部材62を介して天板部21に当接することにより、これらカバー部材46およびキャップ部材47が停止することになる。
これにより、図中において矢印AR3にて示すように、第2燃焼室SA2にて発生したガスが、周板部47bに設けられた複数のガス通過孔47cを通過することで第1燃焼室SA1へと導入されることになる。
第2燃焼室SA2にて発生し、その後第1燃焼室SA1に導入されたガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室SBへと流れ込み、さらにその後、複数のガス噴出口24を介してのハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR2参照)。
なお、上述した第1および第2段階において、複数のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Aの外部へと噴出されたガスは、当該ディスク型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
ここで、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、当該ディスク型ガス発生器1Aが置かれた周囲環境の影響(特に上述した環境温度の影響)を受け難くすることで作動時において安定したガス出力が得られることとなるように、ハウジングに設けられた複数のガス噴出口24の開放圧(すなわち、複数のガス噴出口24の各々を閉鎖する部分のシールテープ25の開裂圧)が調整されており、これが第1燃焼室SA1の内圧に応じて多段階的に開放されるように構成している。
一方で、複数のガス噴出口24が多段階的に開放されるように構成した場合にも、安定したガス出力を確実に得るためには、これら複数のガス噴出口24の各々が予め設定された開放圧にて精度よく開放されることが必要不可欠であり、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、従来に比してこの点の改善が行われている。以下、その詳細について比較例を参照しつつ説明する。
図8(A)は、比較例に係るディスク型ガス発生器におけるガス噴出口の構成例を示す概念図であり、図8(B)は、本実施の形態に係る示すディスク型ガス発生器におけるガス噴出口の構成例を示す概念図である。ここで、図8(A)および図8(B)においては、開口面積が大きく調整されることでその開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口を符号24aにて表わし、開口面積が小さく調整されることでその開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口を符号24bにて表わしている。
図8(A)に示す比較例に係るディスク型ガス発生器1A’においては、第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、これにフィルタ70を介して直接対面する部分に設けられたガス噴出口のうちの一部をその開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口24aとし、その他のガス噴出口(第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、燃焼制御部材37および第2点火器組立体40によって遮られた部分のガス噴出口を含む)をその開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24bとしている。
このように構成した場合には、その開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口24aは、当該ガス噴出口24aの近傍においてガスの流速が局所的に極端に速まってしまったり、当該ガス噴出口24aの近傍において局所的に極端に温度が上昇してしまったり、これらの双方が生じてしまったりすることにより、設定された開放圧よりも低い圧力によって開放されてしまうおそれがある。そのため、当該構成を採用した場合には、特に低温環境下においては、第1燃焼室SA1の内圧が十分に高まらずに所望のガス出力が得られない可能性が生じ得る。
一方、図8(B)に示す本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、これにフィルタ70を介して直接対面する部分に設けられたガス噴出口をその開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24bとし、第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、燃焼制御部材37および第2点火器組立体40によって遮られた部分のガス噴出口をその開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口24aとしている。
このように構成した場合には、その開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口24aは、当該ガス噴出口24aの近傍においてガスの流速が局所的に極端に速まってしまったり、当該ガス噴出口24aの近傍において局所的に極端に温度が上昇してしまったり、これらの双方が生じてしまったりすることがないため、設定された開放圧よりも低い圧力によって開放されてしまうおそれがなくなる。一方、その開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24bは、当該ガス噴出口24bの近傍においてガスの流速が局所的に極端に速まってしまったり、当該ガス噴出口24bの近傍において局所的に極端に温度が上昇してしまったり、これらの双方が生じてしまったりするおそれはあるものの、その開放圧がそもそも相対的に高く設定されているため、その影響は殆ど受けずにおおよそ設定された開放圧にて開放されることになる。
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、複数のガス噴出口24のうちの伝火室35から見てハウジングの中心軸側とは反対側に位置するガス噴出口ならびに伝火室35から見て第2点火器組立体40によって遮られたガス噴出口(すなわち、図中において符号24aで示すガス噴出口)の開放圧が、他のガス噴出口(すなわち、図中において符号24bで示すガス噴出口)の開放圧よりも低く設定されていることにより、より設定値に近い状態でガス噴出口24が多段階的に開放されることになる。そのため、当該構成を採用することにより、周囲環境の影響を受け難くすることが可能になり、より安定したガス出力を得ることが可能になる。
なお、本発明者は、上記比較例に係るディスク型ガス発生器1A’および上記本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aを実際に試作して、ガス噴出口の開放圧にどのような違いが生じるかを実験によって確認した。ここで、その開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口24aの開放圧は、設定値で7.2[MPa]とし、その開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24bの開放圧は、設定値で10[MPa]とした。
その結果、比較例に係るディスク型ガス発生器1A’においては、開放圧が設定値で7.2[MPa]に設定されたガス噴出口24aの開放圧の実測値が、平均で6.8[MPa]になり、開放圧が設定値で10[MPa]に設定されたガス噴出口24bの開放圧の実測値が、平均で8.2[MPa]になり、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、開放圧が設定値で7.2[MPa]に設定されたガス噴出口24aの開放圧の実測値が、平均で7.6[MPa]になり、開放圧が設定値で10[MPa]に設定されたガス噴出口24bの開放圧の実測値が、平均で8.8[MPa]になった。
すなわち、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aとすることにより、比較例に係るディスク型ガス発生器1A’とした場合よりも、より設定値に近い状態でガス噴出口24が多段階的に開放されることが実験的にも確認された。
図9は、第1ないし第6変形例に係る燃焼制御部材の斜視図である。以下、この図9を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおける燃焼制御部材の想定される変形例のうちの幾つかについて説明する。
図9(A)に示す第1変形例に係る燃焼制御部材37Aは、当該燃焼制御部材37Aの周方向における開放部37bの開口角度を約180°に設定し、その上端が、燃焼制御部材37Aの上端開口に達するように構成したものである。
図9(B)に示す第2変形例に係る燃焼制御部材37Bは、当該燃焼制御部材37Bの周方向における開放部37bの開口角度を下端から上端に向けて徐々に大きくし、下端において約120°に設定し、上端において約180°に設定し、その上端が、燃焼制御部材37Bの上端開口に達するように構成したものである。
図9(C)に示す第3変形例に係る燃焼制御部材37Cは、当該燃焼制御部材37Cの周方向における開放部37bの開口角度を約120°に設定し、当該開放部37bを障壁部37aに窓状に形成したものである。
図9(D)に示す第4変形例に係る燃焼制御部材37Dは、当該燃焼制御部材37Dの周方向における開放部37bの開口角度を約180°に設定し、当該開放部37bを障壁部37aに窓状に形成したものである。
図9(E)に示す第5変形例に係る燃焼制御部材37Eは、当該燃焼制御部材37Eの周方向において2つの開放部37bが並ぶように配置し、その各々の開放部37bの開口角度を約60°に設定し、これら2つの開放部37bを障壁部37aにそれぞれ窓状に形成したものである。
図9(F)に示す第6変形例に係る燃焼制御部材37Fは、障壁部37aを有底略円筒状に形成し、当該燃焼制御部材37Fの周方向における開放部37bの開口角度を約120°に設定し、当該開放部37bを障壁部37aに窓状に形成したものである。
これら第1ないし第6変形例に係る燃焼制御部材37A~37Fとした場合にも、上述した本実施の形態に係る燃焼制御部材37とした場合と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図11は、図10に示すカップ体の斜視図である。また、図12は、本実施の形態に係る示すディスク型ガス発生器におけるガス噴出口の構成例を示す概念図である。以下、これら図10ないし図12を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bも、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと同様に、いわゆるデュアル構造を有するものである。
図10および図11に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、燃焼制御部材37(図1等参照)を備えていない点、上述したカップ体34A(図1等参照)とは異なる構成のカップ体34Bを備えている点、ならびに、当該カップ体34Bの底板部11への組付構造が異なる点において、主としてその構成が相違している。
具体的には、カップ体34Bは、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成しており、頂壁部34a、側壁部34bおよびフランジ部34cを有している。カップ体34Bは、上述したカップ体34Aとは異なり、伝火薬36の燃焼によっても破裂または溶融しない非脆弱な部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材にて構成される。
カップ体34Bの側壁部34bの所定位置には、複数の連通孔34dが設けられている。この複数の連通孔34dは、伝火薬36の燃焼時において発生する火炎を第1燃焼室SA1に向けて噴き出させるためのものであり、側壁部34bの厚み方向に沿って当該側壁部34bを貫通するように設けられている。すなわち、当該複数の連通孔34dは、伝火薬36の燃焼によって着火される第1ガス発生剤51の燃え広がりを制御する燃焼制御機構に該当する。
ここで、複数の連通孔34dは、いずれもカップ体34Bのうちのハウジングの中心軸寄りに位置する部分に設けられており、カップ体34Bのうちのハウジングの中心軸寄りに位置する部分とは反対側の部分には設けられていない。なお、図11においては、カップ体34Bから見た場合におけるハウジングの中心軸が位置する方向を、矢印Aにて表わしている。
カップ体34Bの側壁部34bの内周面には、上記複数の連通孔34dを閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ34eが貼り付けられている。このシールテープ34eとしては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ34eにより、ディスク型ガス発生器1Aの非作動時において伝火薬36が当該複数の連通孔34dを介して第1燃焼室SA1に漏れ出してしまうことが防止されている。
カップ体34Bは、その内部に形成された伝火室35が第1点火器32の点火部32bに面するように第1ホルダ31に組付けられており、より詳細には、フランジ部34cが第1ホルダ31の上面に当て留めされた状態において、第1ホルダ31に設けられたかしめ部31eが折り曲げられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
このように構成されたディスク型ガス発生器1Bにおいては、第1点火器32が作動した第1段階において伝火室35に収容された伝火薬36が燃焼した際にも、カップ体34Bが破裂または溶融することはなく、伝火室35の温度および圧力の上昇することに伴い、複数の連通孔34dを閉鎖する部分のシールテープ34eが開裂することになる。
これにより、伝火薬36が燃焼することで生じた火炎は、ハウジングの中心軸側に向けて噴き出すことになる。そのため、第1点火器組立体30の周囲に位置する第1ガス発生剤51のうち、伝火室35から見て複数の連通孔34dが位置する側に配置された第1ガス発生剤51が、当該火炎によって着火されて燃焼を開始することになる。
ここで、図12に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bにおいても、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと同様に、第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、これにフィルタ70を介して直接対面する部分に設けられたガス噴出口をその開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24bとし、第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、第1点火器組立体30および第2点火器組立体40によって遮られた部分のガス噴出口をその開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口24aとしている。
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、より設定値に近い状態でガス噴出口24が多段階的に開放されることになり、周囲環境の影響を受け難くすることが可能となってより安定したガス出力を得ることが可能になる。
図13は、第7ないし第9変形例に係るカップ体の斜視図である。以下、この図13を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bにおけるカップ体の想定される変形例のうちの幾つかについて説明する。
図13(A)に示す第7変形例に係るカップ体34B1は、上述した連通孔34dに代えて、カップ体34B1の側壁部34bの所定位置に、当該カップ体34B1の軸方向に沿って直線状に延びるスコア34fが形成されてなるものである。当該スコア34fは、側壁部34bの厚みを他の部分よりも極端に薄くすることで形成されており、伝火薬36の燃焼時においては、当該スコア34fを起点にカップ体34B1が破断する。すなわち、スコア34fは、伝火薬36の燃焼によって着火される第1ガス発生剤51の燃え広がりを制御する燃焼制御機構に該当する。なお、当該カップ体34B1には、上述したシールテープ34eを設ける必要はない。
図13(B)に示す第8変形例に係るカップ体34B2は、上述したカップ体34B1とは異なる形状のスコア34fが設けられたものであり、側壁部34bの所定位置に平面視略H字状にスコア34fが設けられてなるものである。
図13(C)に示す第9変形例に係るカップ体34B3は、上述したカップ体34B1とは異なる位置に異なる形状のスコア34fが設けられたものであり、頂壁部34aの所定位置に互いに交差するように延びる3つの直線部を有するスコア34fが設けられてなるものである。当該スコア34fは、頂壁部34aの中央部から、所定方向に向けて放射状に延びている。
これら第7ないし第9変形例に係るカップ体34B1~34B3とした場合にも、上述した本実施の形態に係るカップ体34Bとした場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3に係るディスク型ガス発生器の概略図である。また、図15は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器におけるガス噴出口の構成例を示す概念図である。以下、これら図14および図15を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aとは異なり、いわゆるシングル構造を有するものである。
図14に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、第2点火器組立体40(図1等参照)を備えていない点において、主としてその構成が相違している。これに伴い、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間は、第1ガス発生剤51が収容された燃焼室SAとして規定されている。
第1点火器組立体30は、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されており、第1ガス発生剤51は、第1点火器組立体30の周囲に位置している。カップ体34Aおよび燃焼制御部材37は、上述した実施の形態1におけるカップ体34Aおよび燃焼制御部材37(図1等参照)と同様の構成のものであり、いずれもその軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように燃焼室SAの内部に配置されている。
燃焼制御部材37の障壁部37aは、伝火室35を規定するカップ体34Aの頂壁部34aおよび側壁部34bのうち、ハウジングの中心軸寄りに位置する部分とは反対側に位置する部分の側壁部34bを直接的に覆うように位置しており、燃焼制御部材37の開放部37bは、頂壁部34aと、ハウジングの中心軸寄りに位置する部分の側壁部34bとを露出させるように位置している。
これにより、燃焼制御部材37の障壁部37aが位置する部分においては、カップ体34Aの側壁部34bが直接的に第1ガス発生剤51に面しておらず、その間に障壁部37aが介在している。
このように構成することにより、伝火薬36の燃焼時においては、伝火薬36が燃焼することでカップ体34Aの頂壁部34aおよび側壁部34bのうちの開放部37bによって露出された部分が破裂または溶融することになり、これによって伝火薬36が燃焼することで生じた火炎が、所定の方向に向けて(すなわち、ハウジングの中心軸側に向けて)燃焼室SAに噴き出すことになる。
ここで、図15に示すように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cにおいては、第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、これにフィルタ70を介して直接対面する部分に設けられたガス噴出口をその開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24bとし、第1点火器組立体30の伝火室からの火炎を直接的に受けて着火する部分の第1ガス発生剤から見て、燃焼制御部材37によって遮られた部分のガス噴出口をその開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24aとしている。
このように構成することにより、その開放圧が相対的に低く設定されたガス噴出口24aは、当該ガス噴出口24aの近傍においてガスの流速が局所的に極端に速まってしまったり、当該ガス噴出口24aの近傍において局所的に極端に温度が上昇してしまったり、これらの双方が生じてしまったりするうことがないため、設定された開放圧よりも低い圧力によって開放されてしまうおそれがなくなる。一方、その開放圧が相対的に高く設定されたガス噴出口24bは、当該ガス噴出口24bの近傍においてガスの流速が局所的に極端に速まってしまったり、当該ガス噴出口24bの近傍において局所的に極端に温度が上昇してしまったり、これらの双方が生じてしまったりするうおそれはあるものの、その開放圧がそもそも相対的に高く設定されているため、その影響は殆ど受けずにおおよそ設定された開放圧にて開放されることになる。
したがって、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cにおいては、上述したように、複数のガス噴出口24のうちの伝火室35から見てハウジングの中心軸側とは反対側に位置するガス噴出口(すなわち、図中において符号24aで示すガス噴出口)の開放圧が、他のガス噴出口(すなわち、図中において符号24bで示すガス噴出口)の開放圧よりも低く設定されていることにより、より設定値に近い状態でガス噴出口24が多段階的に開放されることになる。そのため、当該構成を採用することにより、周囲環境の影響を受け難くすることが可能になり、より安定したガス出力を得ることが可能になる。
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態1ないし3ならびにその変形例においては、複数のガス噴出口の開放圧を調整する方法として、これら複数のガス噴出口の開口面積を相互に異ならしめた場合を例示して説明を行なったが、他の方法にてこれを調整することも可能である。すなわち、ガス噴出口の開放圧は、当該ガス噴出口の開口面積および周囲長、当該ガス噴出口を閉鎖するシールテープの材質および厚み等によって主として決定されるため、これらのいずれかまたは幾つかを相互に異ならしめることとすればよい。
また、上述した本発明の実施の形態1および2ならびにその変形例においては、第1点火器および第2点火器が異なるタイミングで通電されることにより、第2点火器が第1点火器の作動のタイミングから遅れたタイミングで作動するように構成された場合を例示して説明を行なったが、これらが同時のタイミングで通電されることにより、同時のタイミングで作動するように構成されていてもよい。また、第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電する場合であっても、第2点火器の点火部に点火薬の着火を遅らせる延時薬を設けることにより、第2点火器の通電から点火薬の着火までに要する時間を延長し、これによって第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電しつつも、第2ガス発生剤の燃焼開始のタイミングを第1ガス発生剤の燃焼開始のタイミングよりも遅らせるように構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1および2ならびにその変形例においては、第1燃焼室および第2燃焼室の双方にガス発生剤を充填した場合を例示して説明を行なったが、第2燃焼室については、これを伝火室とし、当該伝火室に伝火薬を充填することとしてもよい。このように構成した場合には、第2点火器が作動することで当該伝火薬が燃焼し、当該伝火薬が燃焼することによって当該伝火室の内部において多量の熱粒子が発生するとともに当該伝火室の圧力が上昇する。これにより、キャップ部材およびカップ部材が天板部側に向けて移動し、キャップ部材に設けられたガス通過孔が第1燃焼室に面するように露出することで上述した多量の熱粒子が第1燃焼室へと流れ込む。したがって、当該構成を採用した場合には、隔壁部材、カップ部材およびキャップ部材からなる仕切り部の内部に充填された伝火薬により、第1ガス発生剤の燃焼を促進させることができる。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし3ならびにその変形例においては、点火器を金属製のホルダを介してハウジングの底板部に組付けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、点火器をいわゆるインサート成形によってハウジングの底板部に組付けるように構成してもよい。
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし3ならびにその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて相互にこれらを組み合わせることができる。
このように、今回開示した上記実施の形態ならびにその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。