以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるデュアル構造のディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図2は、図1中に示すII−II線に沿った模式断面図である。また、図3は、図1中に示す蓋部材の一部破断側面図であり、図4は、図1に示す仕切り部の組付構造を示す分解斜視図である。まず、これら図1ないし図4を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの構成について説明する。
図1および図2に示すように、ディスク型ガス発生器1Aは、軸方向の一端および他端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての第1点火器組立体30、第2点火器組立体40、第1ガス発生剤51、第2ガス発生剤52、下側支持部材61、上側支持部材62、フィルタ70等が収容されてなるものである。
図1に示すように、ハウジングは、下部側シェル10および上部側シェル20を含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20の各々は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440[MPa]以上780[MPa]以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とフランジ部23とを有している。
下部側シェル10の周壁部12の上端は、上部側シェル20の周壁部22の下端に挿入されることで圧入されている。さらに、下部側シェル10の周壁部12と上部側シェル20の周壁部22とが、それらの当接部またはその近傍において接合されることにより、下部側シェル10と上部側シェル20とが固定されている。ここで、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
これにより、ハウジングの周壁部のうちの底板部11寄りの部分は、下部側シェル10の周壁部12によって構成されており、ハウジングの周壁部のうちの天板部21寄りの部分は、上部側シェル20の周壁部22によって構成されている。また、ハウジングの軸方向の一端および他端は、それぞれ下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21によって閉塞されている。
上部側シェル20に設けられたフランジ部23は、ディスク型ガス発生器1Aを外部の部材(たとえば、エアバッグ装置に設けられたリテーナ等)に固定するための部位である。フランジ部23の所定位置には、周壁部22の軸方向と平行な方向に沿って貫通するように貫通孔(図中において当該貫通孔は現われていない)が設けられている。当該貫通孔には、ボルト等の締結部材が挿入されることになり、これによりディスク型ガス発生器1Aが外部の部材に対して固定されることになる。
下部側シェル10の底板部11の所定位置には、第1開口部11aおよび第2開口部11bが設けられている。下部側シェル10の底板部11には、第1開口部11aを閉塞するように第1点火器組立体30が組付けられているとともに、第2開口部11bを閉塞するように第2点火器組立体40が組付けられている。ここで、第1開口部11aは、第1点火器組立体30の下端に設けられた後述する第1雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位であり、第2開口部11bは、第2点火器組立体40の下端に設けられた後述する第2雌型コネクタ部を外部に向けて露出させるための部位である。
第1点火器組立体30は、第1ホルダ31と、第1点火器32と、第1シール部材33と、カップ体34と、伝火薬36とを主として含んでいる。第1ホルダ31は、第1点火器組立体30のベースを構成するものであり、当該第1ホルダ31に、第1点火器32およびカップ体34等が組付けられることにより、第1点火器組立体30が一体の部品として構成されている。
第1ホルダ31は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aが設けられており、底板部11側に位置する第1ホルダ31の下面には、下側凹部31bが設けられている。また、上側凹部31aの底部ならびに下側凹部31bの底部を構成する部分の第1ホルダ31には、これら上側凹部31aおよび下側凹部31bに達するように貫通孔31cが設けられている。
また、第1ホルダ31の上面には、上側凹部31aを取り囲むようにかしめ部31d,31eが設けられている。このうちの内側に配置されたかしめ部31dは、第1点火器32を第1ホルダ31にかしめ固定するための部位であり、このうちの外側に配置されたかしめ部31eは、カップ体34を第1ホルダ31にかしめ固定するための部位である。
第1点火器32は、火炎を発生させるためのものであり、基部32aと、点火部32bと、一対の端子ピン32cとを有している。基部32aは、点火部32bおよび一対の端子ピン32cを保持する部位であり、また第1ホルダ31に対して固定される部位でもある。点火部32bは、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン32cは、点火薬を着火させるために点火部32bに接続されている。
より詳細には、点火部32bは、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン32cが挿通されてこれを保持する塞栓とを含んでおり、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン32cの先端を連結するように上述した抵抗体が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび塞栓は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン32cを介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから第1点火器32が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合に一般に2[ms]以下である。
第1点火器32は、第1ホルダ31の貫通孔31cに一対の端子ピン32cが上方から挿入されるとともに第1ホルダ31の上側凹部31aに基部32aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部31dが折り曲げられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
ここで、第1ホルダ31と第1点火器32との間には、Oリング等からなる第1シール部材33が介装されており、これによって第1ホルダ31と第1点火器32との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第1点火器32の固定方法は、上述したかしめ部31dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
カップ体34は、底板部11側の端部が開口したカップ状の形状を成しており、内部に伝火薬36が収容された伝火室35を含んでいる。カップ体34は、伝火室35を規定する頂壁部34aおよび側壁部34bと、側壁部34bの開口端側の部分から径方向外側に向けて延設されたフランジ部34cとを有している。
カップ体34は、その内部に形成された伝火室35が第1点火器32の点火部32bに面するように第1ホルダ31に組付けられており、より詳細には、フランジ部34cが第1ホルダ31の上面に当て留めされた状態において、上述したかしめ部31eが折り曲げられることにより、第1ホルダ31に固定されている。
カップ体34は、頂壁部34aおよび側壁部34bのいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室35を取り囲んでいる。このカップ体34は、第1点火器32が作動することによって伝火薬36が着火された場合に伝火室35内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
そのため、カップ体34としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
なお、カップ体34としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部に開口を有し、当該開口を閉鎖するようにシール部材が設けられたもの等を利用することもできる。この場合においては、伝火薬36の燃焼により、当該シール部材が開裂または溶融することで上述した開口が開放されることになる。ここで、上述したシール部材としては、開口を閉鎖するようにカップ体に貼り付けが可能なシールテープや、開口を閉鎖するようにカップ体に対して圧入による組付けが可能なリング状シール体等が利用できる。シールテープとしては、たとえば片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、リング状シール体としては、上述した開口を閉鎖する薄板筒状の部位を含むアルミニウム製のプレス成形品等が好適に利用できる。また、カップ体34の固定方法も、上述したかしめ部31eを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
伝火室35に充填された伝火薬36は、第1点火器32が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬36としては、第1ガス発生剤51を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5−アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
伝火薬36としては、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬36の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
第1ホルダ31の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第1開口部11aに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第1ホルダ31に第1点火器32およびカップ体34等が組付けられることで一体化された第1点火器組立体30が、下部側シェル10に対して固定されるとともに、特に第1点火器組立体30の内部に設けられた伝火室35が、ハウジングの内部の空間に向けて突出して配置されることになる。ここで、底板部11と第1ホルダ31との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第1ホルダ31の下側凹部31bには、第1点火器32の一対の端子ピン32cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部31bおよび一対の端子ピン32cによって上述した第1雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第1雌型コネクタ部は、第1点火器32とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第1雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第1雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン32cとの電気的導通が実現されることになる。
第2点火器組立体40は、第2ホルダ41と、第2点火器42と、第2シール部材43と、仕切り部44と、第2ガス発生剤52とを主として含んでいる。第2ホルダ41は、第2点火器組立体40のベースを構成するものであり、当該第2ホルダ41に、第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることにより、第2点火器組立体40が一体の部品として構成されている。
第2ホルダ41は、外形が略円柱状の部材からなり、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。天板部21側に位置する第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aが設けられており、底板部11側に位置する第2ホルダ41の下面には、下側凹部41bが設けられている。また、上側凹部41aの底部ならびに下側凹部41bの底部を構成する部分の第2ホルダ41には、これら上側凹部41aおよび下側凹部41bに達するように貫通孔41cが設けられている。
また、第2ホルダ41の上面には、上側凹部41aを取り囲むようにかしめ部41dが設けられている。かしめ部41dは、第2点火器42を第2ホルダ41にかしめ固定するための部位である。
第2点火器42は、火炎を発生させるためのものであり、基部42aと、点火部42bと、一対の端子ピン42cとを有している。基部42aは、点火部42bおよび一対の端子ピン42cを保持する部位であり、また第2ホルダ41に対して固定される部位でもある。なお、第2点火器42は、基本的には上述した第1点火器32と同様の構成のものであるため、ここではその詳細な説明は省略する。
第2点火器42は、第2ホルダ41の貫通孔41cに一対の端子ピン42cが上方から挿入されるとともに第2ホルダ41の上側凹部41aに基部42aが収容されて当て留めされた状態において、上述したかしめ部41dが折り曲げられることにより、第2ホルダ41に固定されている。
ここで、第2ホルダ41と第2点火器42との間には、Oリング等からなる第2シール部材43が介装されており、これによって第2ホルダ41と第2点火器42との間の隙間が閉塞されることで当該部分における気密性が確保されている。なお、第2点火器42の固定方法は、上述したかしめ部41dを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
仕切り部44は、隔壁部材45と蓋部材46とを有しており、これら隔壁部材45および蓋部材46が組み合わされることで全体としてカップ状の形状を成している。仕切り部44は、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間を2室に仕切る圧力隔壁として機能する。
図1および図2に示すように、ハウジングの内部の空間であってかつフィルタ70の内側の空間は、仕切り部44によって当該仕切り部44よりも外側の空間と当該仕切り部44よりも内側の空間とに仕切られており、このうちの前者の空間が第1燃焼室S1として規定されるとともに、このうちの後者の空間が第2燃焼室S2として規定される。
図1に示すように、仕切り部44は、その内部に形成された第2燃焼室S2が第2点火器42の点火部42bに面するように第2ホルダ41に組付けられている。より詳細には、後述するように、仕切り部44のうちの隔壁部材45の下端に設けられた固定部45aが第2ホルダ41に圧入されることにより、仕切り部44が第2ホルダ41を介して底板部11に固定されている。
仕切り部44の内部に位置する第2燃焼室S2には、第2ガス発生剤52が収容されている。第2ガス発生剤52は、第2点火器42が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。なお、第2ガス発生剤52の詳細については、後述することとする。
図1および図4に示すように、隔壁部材45は、軸方向の両端に開口を有する筒状の形状を成している。隔壁部材45は、その軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように配置されており、底板部11側に位置する開口端が、底板部11に組付けられた第2ホルダ41に固定された固定部45aとして機能している。
より詳細には、当該固定部45aは、上述したように第2ホルダ41に圧入されており、これによって隔壁部材45が第2ホルダ41に固定されることで当該隔壁部材45を含む仕切り部44が底板部11に組付けられている。なお、隔壁部材45は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。
図1、図3および図4に示すように、蓋部材46は、底板部11側の端部が開口した有底筒状の形状を成しており、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられている。蓋部材46は、隔壁部材45と同様に、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。ここで、本実施の形態においては、蓋部材46を鍛造加工および切削加工を組み合わせることで成形した鍛造切削加工品にて構成している。
蓋部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の閉塞部46aと、当該閉塞部46aの周縁から底板部11側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の内周面を覆う円筒状の筒状部46bとを含んでいる。また、蓋部材46の閉塞部46aの周縁には、径方向外側に向けて突出することで隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に当接する当て留め部46cが設けられている。
蓋部材46は、隔壁部材45の上述した開口端に内挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、蓋部材46の筒状部46bの外周面は、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の内周面に密着している。ここで、上述した当て留め部46cは、蓋部材46を隔壁部材45に組付ける際の位置決め部として機能するものであり、当該当て留め部46cが隔壁部材45の上述した軸方向端部に当接することにより、蓋部材46の隔壁部材45に対する組付位置が適正化されることになる。
筒状部46bのうちの隔壁部材45に密着する外周面には、複数のガス通過溝46b1が設けられている。複数のガス通過溝46b1は、筒状部46bの周方向において互いに離間するように位置しており、いずれも筒状部46bの軸方向に沿って延在している。複数のガス通過溝46b1の各々の一端は、筒状部46bの底板部11側の端部に達しており、複数のガス通過溝46b1の各々の他端は、筒状部46bの天板部21側の端部近傍に位置している。
ここで、図3に示すように、蓋部材46の筒状部46bは、当該筒状部46bの軸方向において2つの領域R1,R2に区分される。領域R1は、筒状部46bの周方向のいずれかの位置においてガス通過溝46b1が設けられてなる領域であり、筒状部46bの底板部11側の端部寄りに位置している。一方、領域R2は、筒状部46bの周方向のいずれの位置においてもガス通過溝46b1が設けられていない領域であり、筒状部46bの天板部21側の端部寄りに位置している。
このうちの領域R1は、蓋部材46が隔壁部材45に組付けられた後の状態において、周方向に沿って交互に、隔壁部材45および蓋部材46が密着した部分と、隔壁部材45および蓋部材46が密着していない部分とを形成する。このうちの隔壁部材45および蓋部材46が密着していない部分には、上述したガス通過溝46b1ならびにこれに対向する部分の隔壁部材45の壁面によって規定される隙間が位置することになる。この隙間が、第2点火器42の作動時(すなわち、ディスク型ガス発生器1Aの動作後であってかつ後述する第2段階)において、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2を連通させる流路となるが、その詳細については、後において詳述することとする。
一方、このうちの領域R2は、蓋部材46が隔壁部材45に組付けられた後の状態において、仕切り部44の周方向の全周にわたって隔壁部材45と蓋部材46とが密着する全周密着領域を形成する。この全周密着領域を仕切り部44に設けることにより、第2点火器42の非作動時(すなわち、ディスク型ガス発生器1Aの動作前、ならびに、ディスク型ガス発生器1Aの動作後であってかつ後述する第1段階)において、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが非連通の状態がより確実に維持されることになるが、その詳細については、後において詳述することとする。
図1に示すように、第2ホルダ41の下端は、下部側シェル10の底板部11に設けられた第2開口部11bに上方から挿入されており、その外周縁が底板部11に対して接合されることで固定されている。これにより、当該第2ホルダ41に第2点火器42および仕切り部44等が組付けられることで一体化された第2点火器組立体40が、下部側シェル10に対して固定されるとともに、特に第2点火器組立体40の内部に設けられた第2燃焼室S2が、ハウジングの内部の空間に向けて突出して配置されることになる。ここで、底板部11と第2ホルダ41との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
第2ホルダ41の下側凹部41bには、第2点火器42の一対の端子ピン42cが露出して位置している。これにより、当該下側凹部41bおよび一対の端子ピン42cによって上述した第2雌型コネクタ部が構成されることになる。
当該第2雌型コネクタ部は、第2点火器42とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位である。第2雌型コネクタ部は、ハウジングの外部に向けて露出しており、当該第2雌型コネクタ部に上述した雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン42cとの電気的導通が実現されることになる。
図1および図2に示すように、ハウジングの内部の空間には、上述した第1点火器組立体30および第2点火器組立体40に加え、フィルタ70が収容されている。フィルタ70は、円筒状の形状を成しており、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と合致するようにハウジングと同軸上に配置されている。これにより、フィルタ70は、その外周面がハウジングの周壁部の内周面に対向している。
フィルタ70は、その内側の空間に第1点火器組立体30および第2点火器組立体40が配置されるように、これら第1点火器組立体30および第2点火器組立体40を取り巻くように配置されている。これにより、フィルタ70の内側の空間であってかつ仕切り部44の外側の空間に、第1ガス発生剤51が収容される第1燃焼室S1が形成されることになる。なお、フィルタ70は、ハウジングの周壁部から所定の距離をもって配置されており、これによりハウジングの周壁部とフィルタ70との間には、ガス排出室S3が形成されている。
フィルタ70としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの等が利用できる。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用できる。
また、フィルタ70として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ70は、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがこのフィルタ70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつ残渣が外部に放出されないようにするためには、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスが確実にフィルタ70中を通過するように構成することが必要になる。
ここで、第1点火器組立体30は、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されており、第2点火器組立体40も、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように(すなわち、仕切り部44の中心軸(より厳密には隔壁部材45の中心軸)がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように)偏心配置されている。このように構成することにより、ハウジングの内部(特にフィルタ70の内側の空間)にデッドスペースが生じることが防止でき、ディスク型ガス発生器1Aを全体として小型に構成することができる。
第1燃焼室S1には、第1ガス発生剤51が収容されている。より具合的には、第1ガス発生剤51は、フィルタ70の内側の空間であってかつ第1点火器組立体30のカップ体34の頂壁部34aおよび側壁部34bに隣り合う空間、ならびに、フィルタ70の内側の空間であってかつ第2点火器組立体40の仕切り部44の側壁部に隣り合う空間に配置されている。第1ガス発生剤51は、第1点火器32が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。
上述した第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてこれら第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52が形成される。
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。また、この他にも、バインダとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の多糖誘導体や、二硫化モリブデン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、アルミナ等の無機バインダも好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
ここで、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの組成が同じものであってもよいし、それらの組成が異なるものであってもよい。また、第1ガス発生剤51および第2ガス発生剤52は、それらの形状や大きさが同じものであってもよいし、それらの形状や大きさが異なるものであってもよい。
フィルタ70に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス排出室S3に面するように複数個のガス噴出口24が設けられている。この複数個のガス噴出口24は、フィルタ70を通過したガスをガス排出室S3を介してハウジングの外部に導出するためのものである。
また、上部側シェル20の周壁部22の内周面には、上記複数個のガス噴出口24を閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ25が貼り付けられている。このシールテープ25としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ25によってハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。
図1に示すように、第1燃焼室S1のうち、底板部11側に位置する端部には、下側支持部材61が配置されている。下側支持部材61は、環状の形状を成しており、フィルタ70と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と底板部11とに宛がわれて配置されている。これにより、下側支持部材61は、第1燃焼室S1の上記端部近傍において、底板部11と第1ガス発生剤51との間に位置している。
下側支持部材61は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。下側支持部材61は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
第1燃焼室S1のうち、天板部21側に位置する端部には、上側支持部材62が配置されている。上側支持部材62は、略円盤状の形状を成しており、フィルタ70と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上側支持部材62は、第1燃焼室S1の上記端部近傍において、天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置している。
上側支持部材62は、フィルタ70をハウジングに固定するための部材であるとともに、作動時において、第1燃焼室S1および第2燃焼室S2にて発生したガスがフィルタ70の内部を経由することなくフィルタ70の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。上側支持部材62は、上述した下側支持部材61と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
この上側支持部材62の内部には、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51に接触するように平面視略C字状のクッション材63が配置されている。これにより、クッション材63は、第1燃焼室S1の天板部21側の部分において天板部21と第1ガス発生剤51との間に位置することになり、第1ガス発生剤51を底板部11側に向けて押圧している。
クッション材63は、成形体からなる第1ガス発生剤51が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。なお、クッション材63は、第1ガス発生剤51の燃焼によって焼失するものである。
なお、第2ガス発生剤52の振動による破砕を防止する何らかの手当てが必要な場合には、第1ガス発生剤51の場合と同様に、これをクッション材を用いることで実現することができる。その場合には、円盤状のクッション材を蓋部材46の閉塞部46aと第2ガス発生剤52との間に配置するか、あるいは、円環板状のクッション材を第2点火器42を取り囲む部分の第2ホルダ41の上面と第2ガス発生剤52との間に配置するか、のいずれかとすることができる。前者の構成を採用した場合には、クッション材によって第2ガス発生剤52が底板部11側に向けて押圧されることになり、後者の構成を採用した場合には、クッション材によって第2ガス発生剤52が天板部21側に向けて押圧されることになる。なお、前者の構成および後者の構成の双方を採用することとしてもよい。ここで、上述した第2ガス発生剤52を押圧するクッション材としては、第1ガス発生剤51を押圧するクッション材63と同様の材質ものを利用することができる。
図5および図6は、それぞれ本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の動作時の第1および第2段階を示す模式図である。次に、これら図5および図6を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aの動作について説明する。
ディスク型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電を受け、まずは第1点火器32が作動する。
図5に示すように、第1点火器32が作動した第1段階においては、第1点火器32の点火部32bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部32bが破裂する。これにより、カップ体34の内部に収容された伝火薬36が着火されて燃焼する。
伝火薬36が燃焼することにより、伝火室35の内部において多量の熱粒子が発生し、伝火室35の温度および圧力が上昇することで脆弱な部材からなるカップ体34が破裂または溶融する。カップ体34が破裂または溶融することにより、上述した多量の熱粒子が第1燃焼室S1へと流れ込む。
多量の熱粒子が第1燃焼室S1へと流れ込むことにより、第1燃焼室S1に収容された第1ガス発生剤51が順次着火されて燃焼し、これによって第1燃焼室S1において多量のガスが発生する。第1燃焼室S1にて発生したガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込む。
ここで、第1ガス発生剤51が燃焼することで発生するスラグは、後述する第2ガス発生剤52が燃焼することで発生するスラグよりも相対的にその外形が大きい。そのため、フィルタ70の密度を極端に高密度にせずとも、この第1ガス発生剤51が燃焼することで発生したスラグは、フィルタ70によって効果的に捕集されることになり、当該スラグがフィルタ70を通過してしまうことが十分に抑制できることになる。
次いで、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、複数個のガス噴出口24を閉鎖していたシールテープ25が開裂する。これにより、第1燃焼室S1にて発生したガスの複数個のガス噴出口24を介してのハウジングの外部に向けての噴出が開始される(矢印AR1参照)。
なお、上述した第1段階において、複数個のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Aの外部へと噴出されたガスは、当該ディスク型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
このとき、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じるハウジングの内部の圧力上昇に起因して、下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21は、外側に向けて膨らむように変形する。これにより、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられた蓋部材46の閉塞部46a(すなわち、仕切り部44の閉塞端)と、天板部21との間の距離が増加することになる。
一方で、この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室S1の圧力上昇に起因して、蓋部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、蓋部材46の閉塞部46aによって閉塞されるとともに、蓋部材46の筒状部46bの外周面が隔壁部材45の天板部21寄りの内周面に密着した状態が維持され、さらには蓋部材46の当て留め部46cが隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に密着した状態となる。
これにより、当該第1段階においては、仕切り部44に設けられた複数のガス通過溝46b1の各々が第2燃焼室S2には連通しているものの、第1燃焼室S1には連通していない状態にある。そのため、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
次に、上述した第1点火器32の作動から所定時間遅れたタイミングで、上述したコントロールユニットからの通電を受けて第2点火器42が作動する。
図6に示すように、第2点火器42が作動した第2段階においては、第2点火器42の点火部42bに充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで着火され、当該点火薬が燃焼することで点火部42bが破裂する。これにより、第2燃焼室S2に収容された第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼を開始する。
ここで、第2ガス発生剤52の燃焼の開始に先立って、第1ガス発生剤51が予め着火されて燃焼していることにより、ディスク型ガス発生器1Aが全体として既に高温に加熱された状態にあるため、点火部42bと第2ガス発生剤52との間に伝火薬を設けずとも、第2ガス発生剤52の燃焼がスムーズに開始されることになり、また当該第2ガス発生剤52の燃焼が途切れ難くなる。
このとき、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、隔壁部材45に組付けられた蓋部材46に圧力が付与されることになり、蓋部材46のうちの閉塞部46aには、主としてハウジングの軸方向に沿った方向に当該圧力が作用する。これにより、蓋部材46は、筒状部46bが隔壁部材45に密着した状態が維持されつつ、その全体が上部側シェル20の天板部21側に向けて移動することになる。
この蓋部材46の移動に伴い、当該蓋部材46の筒状部46bに設けられた領域R2(図3参照)が隔壁部材45から外れて隔壁部材45に非接触となることになり、仕切り部44に設けられていた全周密着領域による隔壁部材45と蓋部材46との密着が解除される(ただし、当該蓋部材46の筒状部46bに設けられた領域R1(図3参照)の隔壁部材45に対する密着は維持される)とともに、蓋部材46の当て留め部46cと隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部との当接も解除される。
したがって、筒状部46bの天板部21側の端部寄りの部分の外周面が第1燃焼室S1に向けて露出することになり、これに伴って複数のガス通過溝46b1の各々の天板部21側の端部も第1燃焼室S1に面するように露出することになる。そのため、当該第2段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが複数のガス通過溝46b1を介して連通した状態となる。
これにより、第2燃焼室S2にて発生したガスが、これら複数のガス通過溝46b1を通過して第1燃焼室S1に導入される。より詳細には、第2燃焼室S2にて発生したガスは、図中において矢印AR2にて示すように、蓋部材46の筒状部46bの外周面に設けられた複数のガス通過溝46b1の各々の底板部11側の端部から当該複数のガス通過溝46b1の内部へと進入し、当該複数のガス通過溝46b1の各々の内部を通過した後に、図中において矢印AR3にて示すように、複数のガス通過溝46b1の各々の天板部21側の端部から当該複数のガス通過溝46b1の外部へと放出され、これにより第1燃焼室S1へと導入される。
なお、本実施の形態においては、この第2段階における蓋部材46の移動が所定量だけ生じた時点で、この蓋部材46の移動が、天板部21によって制限されるように構成されている。より詳細には、蓋部材46が上側支持部材62を介して天板部21に当接することにより、蓋部材46が停止する。したがって、これにより蓋部材46が隔壁部材45から離脱することはない。
また、このとき、第1燃焼室S1に面するように露出した複数のガス通過溝46b1の各々の天板部21側の端部は、それぞれ上側支持部材62に面するように位置することになるため、特にフィルタ70により近い位置に配置された部分の当該端部から放出されたガスは、上側支持部材62に噴き付けられることでその進行方向が変更されることになり、もっぱら下部側シェル10の底板部11側に向けて噴き出すことになる。
そのため、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、第2燃焼室S2にて発生したガスが第1燃焼室S1に導入されるに際して、直接的にフィルタ70の内周面に向けて噴き付けられることがなくなる。したがって、フィルタ70の破損が未然に防止できることになる。
第2燃焼室S2にて発生し、その後第1燃焼室S1に導入されたガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数個のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR1参照)。
なお、上述した第2段階において、複数個のガス噴出口24からディスク型ガス発生器1Aの外部へと噴出されたガスは、上述した第1段階の場合と同様に、当該ディスク型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開させる。
ここで、第2ガス発生剤52が燃焼することで発生するスラグは、前述の第1ガス発生剤51が燃焼することで発生するスラグよりも相対的にその外形が小さい微細な粒子状となる。しかしながら、第2燃焼室S2にて発生した当該スラグは、流路断面積が十分に小さく構成された複数のガス通過溝46b1の各々を通過する際に互いに集められて付着し合うことになり、結果としてより大きな外形のスラグとなって複数のガス通過溝46b1の各々から放出される。
そのため、より大きな外形となって放出された当該スラグは、フィルタ70を通過する際に当該フィルタ70によって効果的に捕集されることになり、第2燃焼室S2にて発生したスラグがフィルタ70を通過してしまうことが十分に抑制できることになる。
このような効果は、第2ガス発生剤52の燃焼時において、複数のガス通過溝46b1の各々によって規定されるガスの流路の長さが十分に大きく構成されていることで得られるものである。すなわち、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とを結ぶ部分の流路を従来の如くのガス通過孔(すなわち単なる貫通孔)にて構成した場合には、当該流路の長さが必然的に短くなってしまい、上述した効果は殆ど得られないものとなってしまう。一方、本実施の形態の如く複数のガス通過溝46b1にて当該流路を構成することにより、その長さを十分に大きく確保することが可能になり、上述した効果が得られることになる。
また、第2ガス発生剤52が燃焼することで発生するスラグは、複数のガス通過溝46b1の各々を通過する際に、ガス通過溝46b1を規定する蓋部材46の壁面およびこれに対向する部分の隔壁部材45の壁面に付着することで捕集されることにもなる。そのため、上側支持部材62を介して天板部21に当接することで蓋部材46が停止した状態において、複数のガス通過溝46b1の各々によって規定されるガスの流路の長さが十分に大きくなるように構成することにより、この意味においてもスラグの捕集効果を大幅に高めることができる。
なお、蓋部材46が停止した状態における上記流路の長さ(すなわち、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とを結ぶ部分のガス通過溝46b1の長さ)は、蓋部材46の筒状部46bの軸方向長さ、当該筒状部46bに設けるガス通過溝46b1の形状やレイアウト、蓋部材46の移動しろ等によって主として決定されるため、上記効果を得るためには、これらを設計段階において適切に設定することとすればよい。
ここで、蓋部材46の移動しろには、ディスク型ガス発生器1Aの作動時における底板部11および天板部21の変形に伴う天板部21と蓋部材46の閉塞部46aとの間の距離の増加分が含まれるため、ディスク型ガス発生器1Aの動作前の状態において、当該閉塞部46aは、天板部21に宛がわれた上側支持部材62から離間して位置していてもよいし、当該上側支持部材62に当接していてもよい。
以上において説明したように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aとすることにより、フィルタ70の密度を極端に高密度にせずとも、第2ガス発生剤52が燃焼することで発生する微細な粒子状のスラグを当該ディスク型ガス発生器1Aの内部において効果的に捕集することが可能になる。そのため、スラグがエアバッグに導入されてしまうことが抑制できることになり、結果としてフィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Aとすることが可能になる。
ここで、第2ガス発生剤52の持続的な燃焼を確実ならしめるためには、上述した第2段階における第2燃焼室S2の内圧を十分に高めることが必要になるが、そのためには、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とを結ぶ複数のガス通過溝46b1の流路断面積の総和を十分に小さく絞ればよい。この点、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、蓋部材46が隔壁部材45から完全に離脱しない限りにおいては、蓋部材46の移動量に拘わらず、当該流路断面積の総和が一定に維持される。したがって、上記構成を採用することにより、第2ガス発生剤52を確実に持続的に燃焼させることができる。
また、上述した構成を採用しつつ蓋部材46の筒状部46bの軸方向長さを適切に調節することにより、第2ガス発生剤52全体としての燃焼時間の長短を制御することができるという副次的な効果を得ることができる。これは、蓋部材46の筒状部46bの軸方向長さを変更することにより、複数のガス通過溝46b1の各々の底板部11側の端部の位置を第2燃焼室S2に対して種々変更することができることによる。
すなわち、筒状部46bの軸方向長さを短くした場合には、第2燃焼室S2にて発生したガスの当該第2燃焼室S2からの排出部となる、上述した複数のガス通過溝46b1の各々の底板部11側の端部が、第2燃焼室S2のより天板部21側に近い位置に配置されることになる。そのため、この場合においては、第2点火器42によってより早期に着火される部分の第2ガス発生剤52(すなわち、第2燃焼室S2のうちのより底板部11側に近い位置に配置された第2ガス発生剤52)が燃焼することで発生したガスが、燃焼によって生じる熱粒子を伴って第2燃焼室S2のうちのより天板部21側に近い空間を経由して上記排出部に至ることになる。これにより、第2ガス発生剤52の燃焼初期段階における天板部21側に向けての燃え広がりが促進されることになり、結果として第2ガス発生剤52全体としての燃焼時間を短くすることができる。
一方、筒状部46bの軸方向長さを長くした場合には、第2燃焼室S2にて発生したガスの当該第2燃焼室S2からの排出部となる、上述した複数のガス通過溝46b1の各々の底板部11側の端部が、第2燃焼室S2のより底板部11側に近い位置に配置されることになる。そのため、この場合においては、第2点火器42によってより早期に着火される部分の第2ガス発生剤52(すなわち、第2燃焼室S2のうちのより底板部11側に近い位置に配置された第2ガス発生剤52)が燃焼することで発生したガスが、第2燃焼室S2のうちのより天板部21側に近い空間(すなわち、筒状部46bによって囲まれた空間)を経由することなく上記排出部に至ることになる。これにより、第2ガス発生剤52の燃焼初期段階における天板部21側に向けての燃え広がりが抑制されることになり、結果として第2ガス発生剤52全体としての燃焼時間を長くすることができる。
したがって、上述した構成を採用しつつ蓋部材46の筒状部46bの軸方向長さを適切に設定することにより、第2ガス発生剤52全体としての燃焼時間の長短が制御できることになり、結果として所望のガス出力が得られることになる。そのため、搭載されるエアバッグ装置の仕様に応じた最適のガス出力が得られるディスク型ガス発生器1Aとすることができる。
なお、上述した構成を採用することにより、第2燃焼室S2にて発生したガスが複数のガス通過溝46b1を介して第1燃焼室S1に噴き出される際に、上側支持部材62に衝突することでその進行方向が変更されることになるため、この衝突の際に当該ガス中に含まれるスラグが効果的に上側支持部材62の内壁面によって捕捉されるというさらなる副次的な効果を得ることもできる。
また、上述したように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Aにおいては、第2点火器組立体40が、その中心軸がハウジングの周壁部の中心軸と重ならないように偏心配置されている。このように構成した場合には、第2点火器組立体40をハウジングの周壁部と同軸上に配置した場合に比べ、第2点火器組立体40とフィルタ70とが近接配置される部分が自ずと生じることになるが、上述のとおりの構成を採用することにより、第2点火器組立体40とフィルタ70とを近接配置しつつフィルタ70の破損を効果的に防止することが可能になる。
なお、本実施の形態においては、蓋部材46に当て留め部46cを設けた場合を例示して説明を行なったが、当該当て留め部46cは必須の構成ではなく、これを設けない構成としてもよい。
また、本実施の形態においては、蓋部材46の筒状部46bに上述した領域R2を設けることで仕切り部44に全周密着領域が設けられるように構成した場合を例示して説明を行なったが、当該構成の全周密着領域は必須の構成ではなく、たとえば蓋部材46に当て留め部46cを設けた場合には、当該構成の全周密着領域を設けないこととしてもよい。
さらには、本実施の形態においては、蓋部材46に複数のガス通過溝46b1を設けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもガス通過溝46b1は複数である必要はなく、これを単数のみ設けることとしてよい。
図7は、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器の変形例に係る蓋部材の一部破断側面図である。上述した蓋部材46は、鍛造切削加工品にて構成されたものであったが、これを図7に示す如くのプレス成形品からなる蓋部材46’に置き換えることも可能である。
図7に示すように、プレス成形品からなる蓋部材46’は、金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたものであり、上述した鍛造切削加工品からなる蓋部材46よりも軽量にかつ安価にこれを製造することができる。その場合にも、蓋部材46’に、上述した閉塞部46a、筒状部46bおよび当て留め部46cを設け、このうちの筒状部46bの外周面に複数のガス通過溝46b1を設けることにより、上述した効果を得ることが可能になる。
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2に係るディスク型ガス発生器の概略図である。以下、この図8を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部44の構成において相違するものである。
図8に示すように、ディスク型ガス発生器1Bにおいては、蓋部材46の筒状部46bに上述した領域R2(図3参照)が設けられておらず、筒状部46bの全体が上述した領域R1(図3参照)にて構成されている。すなわち、隔壁部材45と蓋部材46の筒状部46bとの間には、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域は形成されていない。
その一方で、ディスク型ガス発生器1Bの蓋部材46には、当て留め部46cの周縁から下部側シェル10の底板部11側に向けて環状突出部46dが延設されている。当該環状突出部46dは、隔壁部材45の天板部21側の開口端に外挿されることで圧入されており、これにより環状突出部46dの内周面は、隔壁部材45の天板部21側の端部の外周面に密着している。すなわち、この環状突出部46dが設けられた位置において、仕切り部44には、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域が形成されている。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになり、フィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Bとすることができる。また、上述のとおり、仕切り部44の所定位置に、周方向の全周にわたって隔壁部材45と蓋部材46とが密着する全周密着領域が形成されることになるため、第2点火器42の非作動時において、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが非連通の状態がより確実に維持できることになる。
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図10は、当該ディスク型ガス発生器の動作時の第2段階を示す模式図である。以下、これら図9および図10を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cの構成および動作について説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部44の構成において相違するものである。
図9に示すように、ディスク型ガス発生器1Cにおいては、蓋部材46が、下部側シェル10の底板部11側の端部が開口した有底筒状の形状を成しており、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられている。蓋部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の閉塞部46aと、当該閉塞部46aの周縁から底板部11側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の外周面を覆う円筒状の筒状部46bとを含んでいる。また、蓋部材46の閉塞部46aの周縁には、隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に当接する当て留め部46cが設けられている。
蓋部材46は、隔壁部材45の上述した開口端に外挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、蓋部材46の筒状部46bの内周面は、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の外周面に密着している。
筒状部46bのうちの隔壁部材45に密着する内周面には、複数のガス通過溝46b1が設けられている。複数のガス通過溝46b1は、筒状部46bの周方向において互いに離間するように位置しており、いずれも筒状部46bの軸方向に沿って延在している。複数のガス通過溝46b1の各々の一端は、筒状部46bの底板部11側の端部に達しており、複数のガス通過溝46b1の各々の他端は、筒状部46bの天板部21側の端部近傍に位置している。
ここで、蓋部材46の筒状部46bは、上述した実施の形態1の場合と同様に、当該筒状部46bの軸方向において2つの領域R1,R2(図3参照)に区分され、筒状部46bの周方向のいずれかの位置においてガス通過溝46b1が設けられてなる領域R1と、筒状部46bの周方向のいずれの位置においてもガス通過溝46b1が設けられていない領域R2とを含んでいる。領域R1は、筒状部46bの底板部11側の端部寄りに位置しており、領域R2は、筒状部46bの天板部21側の端部寄りに位置している。
このように構成されたディスク型ガス発生器1Cにおいても、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aの場合と同様に、その動作時において、第1ガス発生剤51が燃焼する第1段階と、主として第2ガス発生剤52が燃焼する第2段階とを経ることになる。
第1段階においては、第1点火器32が作動することで伝火薬36が着火されて燃焼し、これによって第1ガス発生剤51が順次着火されて燃焼することで第1燃焼室S1にて多量のガスが発生し、第1燃焼室S1において発生したガスが、フィルタ70の内部を通過することでガス排出室S3へと導入され、その後、複数個のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される。
この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室S1の圧力上昇に起因して、蓋部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、蓋部材46の閉塞部46aによって閉塞されるとともに、蓋部材46の筒状部46bの内周面が隔壁部材45の天板部21寄りの外周面に密着した状態が維持され、さらには蓋部材46の当て留め部46cが隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に密着した状態となる。
これにより、当該第1段階においては、仕切り部44に設けられた複数のガス通過溝46b1の各々が第1燃焼室S1には連通しているものの、第2燃焼室S2には連通していない状態にある。そのため、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
図10に示すように、第2段階においては、第2点火器42が作動することで第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼し、これにより第2燃焼室S2にて多量のガスが発生する。このとき、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、隔壁部材45に組付けられた蓋部材46に圧力が付与されることになり、蓋部材46のうちの閉塞部46aには、主としてハウジングの軸方向に沿った方向に当該圧力が作用する。これにより、蓋部材46は、筒状部46bが隔壁部材45に密着した状態が維持されつつ、その全体が上部側シェル20の天板部21側に向けて移動することになる。
この蓋部材46の移動に伴い、当該蓋部材46の筒状部46bに設けられた領域R2が隔壁部材45から外れて隔壁部材45に非接触となることになり、仕切り部44に設けられていた全周密着領域による隔壁部材45と蓋部材46との密着が解除される(ただし、当該蓋部材46の筒状部46bに設けられた領域R1の隔壁部材45に対する密着は維持される)とともに、蓋部材46の当て留め部46cと隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部との当接も解除される。
したがって、筒状部46bの天板部21側の端部寄りの部分の内周面が第2燃焼室S2に向けて露出することになり、これに伴って複数のガス通過溝46b1の各々の天板部21側の端部も第2燃焼室S2に面するように露出することになる。そのため、当該第2段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが複数のガス通過溝46b1を介して連通した状態となる。
これにより、第2燃焼室S2にて発生したガスが、これら複数のガス通過溝46b1を通過して第1燃焼室S1に導入される。より詳細には、第2燃焼室S2にて発生したガスは、図中において矢印AR2にて示すように、蓋部材46の筒状部46bの内周面に設けられた複数のガス通過溝46b1の各々の天板部21側の端部から当該複数のガス通過溝46b1の内部へと進入し、当該複数のガス通過溝46b1の各々の内部を通過した後に、図中において矢印AR3にて示すように、複数のガス通過溝46b1の各々の底板部11側の端部から当該複数のガス通過溝46b1の外部へと放出され、これにより第1燃焼室S1へと導入される。
第2燃焼室S2にて発生し、その後第1燃焼室S1に導入されたガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数個のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR1参照)。
したがって、このように構成した場合にも、第2燃焼室S2にて発生したスラグは、流路断面積が十分に小さく構成された複数のガス通過溝46b1を経由して第1燃焼室S1に導入されることになる。そのため、上述した実施の形態1の場合と同様に、フィルタ70の密度を極端に高密度にせずとも、第2ガス発生剤52が燃焼することで発生する微細な粒子状のスラグを当該ディスク型ガス発生器1Cの内部において効果的に捕集することが可能になる。
このように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Cとすることにより、スラグがエアバッグに導入されてしまうことが抑制できることになり、結果としてフィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Cとすることが可能になる。
なお、本実施の形態においては、蓋部材46の筒状部46bに上述した領域R2を設けることで仕切り部44に全周密着領域が設けられるように構成した場合を例示して説明を行なったが、当該構成の全周密着領域は必須の構成ではなく、これを設けないこととしてもよい。
また、本実施の形態においては、蓋部材46に複数のガス通過溝46b1を設けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもガス通過溝46b1は複数である必要はなく、これを単数のみ設けることとしてよい。
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4に係るディスク型ガス発生器の概略図である。以下、この図11を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Dは、上述した実施の形態3に係るディスク型ガス発生器1Cと比較した場合に、仕切り部44の構成において相違するものである。
図11に示すように、ディスク型ガス発生器1Dにおいては、蓋部材46の筒状部46bに上述した領域R2が設けられておらず、筒状部46bの全体が上述した領域R1にて構成されている。すなわち、隔壁部材45と蓋部材46の筒状部46bとの間には、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域は形成されていない。
その一方で、ディスク型ガス発生器1Dの蓋部材46には、閉塞部46aの周縁から下部側シェル10の底板部11側に向けて環状突出部46dが延設されている。当該環状突出部46dは、隔壁部材45の天板部21側の開口端に内挿されることで圧入されており、これにより環状突出部46dの外周面は、隔壁部材45の天板部21側の端部の内周面に密着している。すなわち、この環状突出部46dが設けられた位置において、仕切り部44には、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域が形成されている。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態3において説明した効果と同様の効果が得られることになり、フィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Dとすることができる。また、上述のとおり、仕切り部44の所定位置に、周方向の全周にわたって隔壁部材45と蓋部材46とが密着する全周密着領域が形成されることになるため、第2点火器42の非作動時において、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが非連通の状態がより確実に維持できることになる。
(実施の形態5)
図12は、実施の形態5に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図13は、図12に示す仕切り部の組付構造を示す分解斜視図である。また、図14は、当該ディスク型ガス発生器の動作時の第2段階を示す模式図である。以下、これら図12ないし図14を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Eについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Eは、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、仕切り部44の構成において相違するものである。
図12および図13に示すように、ディスク型ガス発生器1Eにおいては、仕切り部44が、隔壁部材45と蓋部材46とを有しており、これら隔壁部材45および蓋部材46が組み合わされることで全体としてカップ状の形状を成している。
隔壁部材45は、軸方向の両端に開口を有する筒状の形状を成している。隔壁部材45は、その軸方向がハウジングの軸方向と平行となるように配置されており、下部側シェル10の底板部11側に位置する開口端が、当該底板部11に組付けられた第2ホルダ41に固定された固定部45aとして機能している。
隔壁部材45の天板部21側の端部寄りの部分の外周面には、複数のガス通過溝45bが設けられている。複数のガス通過溝45bは、隔壁部材45の周方向において互いに離間するように位置しており、いずれも隔壁部材45の軸方向に沿って延在している。複数のガス通過溝45bの各々の一端は、隔壁部材45の天板部21側の端部に達しており、複数のガス通過溝45bの各々の他端は、固定部45aに達することなく隔壁部材45の軸方向の途中位置で途切れている。
蓋部材46は、底板部11側の端部が開口した有底筒状の形状を成しており、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられている。蓋部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の閉塞部46aと、当該閉塞部46aの周縁から底板部11側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の外周面を覆う円筒状の筒状部46bとを含んでいる。また、蓋部材46の閉塞部46aの周縁には、隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に当接する当て留め部46cが設けられている。
蓋部材46は、隔壁部材45の上述した開口端に外挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、蓋部材46の筒状部46bの内周面は、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の外周面に密着している。
ここで、蓋部材46の筒状部46bは、隔壁部材45の上述した複数のガス通過溝45bが設けられた天板部21側の端部寄りの外周面を覆っており、より詳細には、筒状部46bは、複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部よりもさらに下方(すなわち底板部11に近い部分)にまで達するように延設されている。
これにより、蓋部材46の筒状部46bと隔壁部材45との間には、隔壁部材45の周方向のいずれかの位置においてガス通過溝45bが設けられてなる領域(すなわち、実施の形態1における領域R1に相当する領域)と、隔壁部材45の周方向のいずれの位置においてもガス通過溝45bが設けられていない領域(すなわち、実施の形態1における領域R2に相当する領域)とが含まれることになり、前者の領域が、筒状部46bの天板部21側の端部寄りに位置しており、後者の領域が、筒状部46bの底板部11側の端部寄りに位置することになる。なお、このうちの後者の領域が、仕切り部44の周方向の全周にわたって隔壁部材45と蓋部材46とが密着する全周密着領域を形成することになる。
このように構成されたディスク型ガス発生器1Eにおいても、上述した実施の形態1に係るディスク型ガス発生器1Aの場合と同様に、その動作時において、第1ガス発生剤51が燃焼する第1段階と、主として第2ガス発生剤52が燃焼する第2段階とを経ることになる。
第1段階においては、第1点火器32が作動することで伝火薬36が着火されて燃焼し、これによって第1ガス発生剤51が順次着火されて燃焼することで第1燃焼室S1にて多量のガスが発生し、第1燃焼室S1において発生したガスが、フィルタ70の内部を通過することでガス排出室S3へと導入され、その後、複数個のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される。
この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室S1の圧力上昇に起因して、蓋部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、蓋部材46の閉塞部46aによって閉塞されるとともに、蓋部材46の筒状部46bの内周面が隔壁部材45の天板部21寄りの外周面に密着した状態が維持され、さらには蓋部材46の当て留め部46cが隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に密着した状態となる。
これにより、当該第1段階においては、仕切り部44に設けられた複数のガス通過溝45bの各々が第1燃焼室S1および第2燃焼室S2のいずれにも連通していない状態にある。そのため、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
図14に示すように、第2段階においては、第2点火器42が作動することで第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼し、これにより第2燃焼室S2にて多量のガスが発生する。このとき、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、隔壁部材45に組付けられた蓋部材46に圧力が付与されることになり、蓋部材46のうちの閉塞部46aには、主としてハウジングの軸方向に沿った方向に当該圧力が作用する。これにより、蓋部材46は、筒状部46bが隔壁部材45に密着した状態が維持されつつ、その全体が上部側シェル20の天板部21側に向けて移動することになる。
この蓋部材46の移動に伴い、隔壁部材45に設けられた上述した後者の領域(すなわち、全周密着領域を形成する部分)が露出することになり、仕切り部44に設けられていた全周密着領域による隔壁部材45と蓋部材46との密着が解除される(ただし、隔壁部材45に設けられた上述した前者の領域の筒状部46bに対する密着は維持される)とともに、蓋部材46の当て留め部46cと隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部との当接も解除される。
したがって、隔壁部材45の外周面に設けられた複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部が第1燃焼室S1に面するように露出するとともに、当該複数のガス通過溝45bの各々の天板部21側の端部が第2燃焼室S2に面するように露出することになる。そのため、当該第2段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが複数のガス通過溝45bを介して連通した状態となる。
これにより、第2燃焼室S2にて発生したガスが、これら複数のガス通過溝45bを通過して第1燃焼室S1に導入される。より詳細には、第2燃焼室S2にて発生したガスは、図中において矢印AR2にて示すように、隔壁部材45の外周面に設けられた複数のガス通過溝45bの各々の天板部21側の端部から当該複数のガス通過溝45bの内部へと進入し、当該複数のガス通過溝45bの各々の内部を通過した後に、図中において矢印AR3にて示すように、複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部から当該複数のガス通過溝45bの外部へと放出され、これにより第1燃焼室S1へと導入される。
第2燃焼室S2にて発生し、その後第1燃焼室S1に導入されたガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数個のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR1参照)。
したがって、このように構成した場合にも、第2燃焼室S2にて発生したスラグは、流路断面積が十分に小さく構成された複数のガス通過溝45bを経由して第1燃焼室S1に導入されることになる。そのため、上述した実施の形態1の場合と同様に、フィルタ70の密度を極端に高密度にせずとも、第2ガス発生剤52が燃焼することで発生する微細な粒子状のスラグを当該ディスク型ガス発生器1Eの内部において効果的に捕集することが可能になる。
このように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Eとすることにより、スラグがエアバッグに導入されてしまうことが抑制できることになり、結果としてフィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Eとすることが可能になる。
なお、本実施の形態においては、複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部よりもさらに下方(すなわち底板部11に近い部分)にまで達するように蓋部材46の筒状部46bを延設することにより、仕切り部44に全周密着領域が設けられるように構成した場合を例示して説明を行なったが、当該構成の全周密着領域は必須の構成ではなく、たとえば蓋部材46に当て留め部46cを設けた場合には、これを設けないこととしてもよい。
また、本実施の形態においては、隔壁部材45に複数のガス通過溝45bを設けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもガス通過溝45bは複数である必要はなく、これを単数のみ設けることとしてよい。
(実施の形態6)
図15は、実施の形態6に係るディスク型ガス発生器の概略図である。以下、この図15を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Fについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Fは、上述した実施の形態5に係るディスク型ガス発生器1Eと比較した場合に、仕切り部44の構成において相違するものである。
図15に示すように、ディスク型ガス発生器1Fにおいては、隔壁部材45と蓋部材46の筒状部46bとの間に、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域は形成されていない。すなわち、隔壁部材45の外周面に設けられた複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部は、第1燃焼室S1に面するように露出している。
その一方で、ディスク型ガス発生器1Fの蓋部材46には、閉塞部46aの周縁から下部側シェル10の底板部11側に向けて環状突出部46dが延設されている。当該環状突出部46dは、隔壁部材45の天板部21側の開口端に内挿されることで圧入されており、これにより環状突出部46dの外周面は、隔壁部材45の天板部21側の端部の内周面に密着している。すなわち、この環状突出部46dが設けられた位置において、仕切り部44には、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域が形成されている。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態5において説明した効果と同様の効果が得られることになり、フィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Fとすることができる。また、上述のとおり、仕切り部44の所定位置に、周方向の全周にわたって隔壁部材45と蓋部材46とが密着する全周密着領域が形成されることになるため、第2点火器42の非作動時において、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが非連通の状態がより確実に維持できることになる。
(実施の形態7)
図16は、実施の形態7に係るディスク型ガス発生器の概略図であり、図17は、当該ディスク型ガス発生器の動作時の第2段階を示す模式図である。以下、これら図16および図17を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Gの構成および動作について説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Gは、上述した実施の形態5に係るディスク型ガス発生器1Eと比較した場合に、仕切り部44の構成において相違するものである。
図16に示すように、ディスク型ガス発生器1Gにおいては、蓋部材46が、下部側シェル10の底板部11側の端部が開口した有底筒状の形状を成しており、隔壁部材45の天板部21側の開口端に組付けられている。蓋部材46は、隔壁部材45の天板部21側に位置する開口を覆うことで仕切り部44の閉塞端を構成する円盤状の閉塞部46aと、当該閉塞部46aの周縁から底板部11側に向けて延設されることで隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の内周面を覆う円筒状の筒状部46bとを含んでいる。また、蓋部材46の閉塞部46aの周縁には、径方向外側に向けて突出することで隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に当接する当て留め部46cが設けられている。
蓋部材46は、隔壁部材45の上述した開口端に内挿されることで隔壁部材45に組付けられており、好ましくは隔壁部材45に対して圧入によって固定されている。これにより、蓋部材46の筒状部46bの外周面は、隔壁部材45のうちの天板部21寄りの部分の内周面に密着している。
隔壁部材45の天板部21側の端部寄りの部分の内周面には、複数のガス通過溝45bが設けられている。複数のガス通過溝45bは、隔壁部材45の周方向において互いに離間するように位置しており、いずれも隔壁部材45の軸方向に沿って延在している。複数のガス通過溝45bの各々の一端は、隔壁部材45の天板部21側の端部に達しており、複数のガス通過溝45bの各々の他端は、固定部45aに達することなく隔壁部材45の軸方向の途中位置で途切れている。
ここで、蓋部材46の筒状部46bは、隔壁部材45の上述した複数のガス通過溝45bが設けられた天板部21側の端部寄りの内周面を覆っており、より詳細には、筒状部46bは、複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部よりもさらに下方(すなわち底板部11に近い部分)にまで達するように延設されている。
これにより、蓋部材46の筒状部46bと隔壁部材45との間には、上述した実施の形態5の場合と同様に、隔壁部材45の周方向のいずれかの位置においてガス通過溝45bが設けられてなる領域(すなわち、実施の形態1における領域R1に相当する領域)と、隔壁部材45の周方向のいずれの位置においてもガス通過溝45bが設けられていない領域(すなわち、実施の形態1における領域R2に相当する領域)とが含まれることになり、前者の領域が、筒状部46bの天板部21側の端部寄りに位置しており、後者の領域が、筒状部46bの底板部11側の端部寄りに位置することになる。なお、このうちの後者の領域が、仕切り部44の周方向の全周にわたって隔壁部材45と蓋部材46とが密着する全周密着領域を形成することになる。
このように構成されたディスク型ガス発生器1Gにおいても、上述した実施の形態5に係るディスク型ガス発生器1Eの場合と同様に、その動作時において、第1ガス発生剤51が燃焼する第1段階と、主として第2ガス発生剤52が燃焼する第2段階とを経ることになる。
第1段階においては、第1点火器32が作動することで伝火薬36が着火されて燃焼し、これによって第1ガス発生剤51が順次着火されて燃焼することで第1燃焼室S1にて多量のガスが発生し、第1燃焼室S1において発生したガスが、フィルタ70の内部を通過することでガス排出室S3へと導入され、その後、複数個のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される。
この第1段階においては、第1ガス発生剤51が燃焼することで生じる第1燃焼室S1の圧力上昇に起因して、蓋部材46が隔壁部材45に対して押し付けられることになる。そのため、隔壁部材45の天板部21側の開口が、蓋部材46の閉塞部46aによって閉塞されるとともに、蓋部材46の筒状部46bの外周面が隔壁部材45の天板部21寄りの内周面に密着した状態が維持され、さらには蓋部材46の当て留め部46cが隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部に密着した状態となる。
これにより、当該第1段階においては、仕切り部44に設けられた複数のガス通過溝45bの各々が第1燃焼室S1および第2燃焼室S2のいずれにも連通していない状態にある。そのため、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが連通した状態とはならず、未だ燃焼が開始されていない第2ガス発生剤52に第1ガス発生剤51の燃焼の影響が及ぶことがなくなる。
図17に示すように、第2段階においては、第2点火器42が作動することで第2ガス発生剤52が順次着火されて燃焼し、これにより第2燃焼室S2にて多量のガスが発生する。このとき、第2ガス発生剤52が燃焼することで生じる第2燃焼室S2の圧力上昇に起因して、隔壁部材45に組付けられた蓋部材46に圧力が付与されることになり、蓋部材46のうちの閉塞部46aには、主としてハウジングの軸方向に沿った方向に当該圧力が作用する。これにより、蓋部材46は、筒状部46bが隔壁部材45に密着した状態が維持されつつ、その全体が上部側シェル20の天板部21側に向けて移動することになる。
この蓋部材46の移動に伴い、隔壁部材45に設けられた上述した後者の領域(すなわち、全周密着領域を形成する部分)が露出することになり、仕切り部44に設けられていた全周密着領域による隔壁部材45と蓋部材46との密着が解除される(ただし、隔壁部材45に設けられた上述した前者の領域の筒状部46bに対する密着は維持される)とともに、蓋部材46の当て留め部46cと隔壁部材45の天板部21側の軸方向端部との当接も解除される。
したがって、隔壁部材45の内周面に設けられた複数のガス通過溝45bの各々の天板部21側の端部が第1燃焼室S1に面するように露出するとともに、当該複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部が第2燃焼室S2に面するように露出することになる。そのため、当該第2段階においては、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが複数のガス通過溝45bを介して連通した状態となる。
これにより、第2燃焼室S2にて発生したガスが、これら複数のガス通過溝45bを通過して第1燃焼室S1に導入される。より詳細には、第2燃焼室S2にて発生したガスは、図中において矢印AR2にて示すように、隔壁部材45の内周面に設けられた複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部から当該複数のガス通過溝45bの内部へと進入し、当該複数のガス通過溝45bの各々の内部を通過した後に、図中において矢印AR3にて示すように、複数のガス通過溝45bの各々の天板部21側の端部から当該複数のガス通過溝45bの外部へと放出され、これにより第1燃焼室S1へと導入される。
第2燃焼室S2にて発生し、その後第1燃焼室S1に導入されたガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてガス排出室S3へと流れ込み、さらにその後、複数個のガス噴出口24を介してハウジングの外部に向けて噴出される(矢印AR1参照)。
したがって、このように構成した場合にも、第2燃焼室S2にて発生したスラグは、流路断面積が十分に小さく構成された複数のガス通過溝45bを経由して第1燃焼室S1に導入されることになる。そのため、上述した実施の形態5の場合と同様に、フィルタ70の密度を極端に高密度にせずとも、第2ガス発生剤52が燃焼することで発生する微細な粒子状のスラグを当該ディスク型ガス発生器1Gの内部において効果的に捕集することが可能になる。
このように、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Gとすることにより、スラグがエアバッグに導入されてしまうことが抑制できることになり、結果としてフィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Gとすることが可能になる。
また、上述した構成を採用しつつ蓋部材46の筒状部46bの軸方向長さを適切に調節することにより、上述した実施の形態1の場合と同様に、第2ガス発生剤52全体としての燃焼時間の長短を制御することもできる。したがって、搭載されるエアバッグ装置の仕様に応じた最適のガス出力が得られるディスク型ガス発生器1Gとすることもできる。
なお、本実施の形態においては、蓋部材46に当て留め部46cを設けた場合を例示して説明を行なったが、当該当て留め部46cは必須の構成ではなく、これを設けない構成としてもよい。
また、本実施の形態においては、複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部よりもさらに下方(すなわち底板部11に近い部分)にまで達するように蓋部材46の筒状部46bを延設することにより、仕切り部44に全周密着領域が設けられるように構成した場合を例示して説明を行なったが、当該構成の全周密着領域は必須の構成ではなく、たとえば蓋部材46に当て留め部46cを設けた場合には、これを設けないこととしてもよい。
さらには、本実施の形態においては、隔壁部材45に複数のガス通過溝45bを設けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもガス通過溝45bは複数である必要はなく、これを単数のみ設けることとしてよい。
(実施の形態8)
図18は、実施の形態8に係るディスク型ガス発生器の概略図である。以下、この図18を参照して、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Hについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスク型ガス発生器1Hは、上述した実施の形態7に係るディスク型ガス発生器1Gと比較した場合に、仕切り部44の構成において相違するものである。
図18に示すように、ディスク型ガス発生器1Hにおいては、隔壁部材45と蓋部材46の筒状部46bとの間に、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域は形成されていない。すなわち、隔壁部材45の内周面に設けられた複数のガス通過溝45bの各々の底板部11側の端部は、第2燃焼室S2に面するように露出している。
その一方で、ディスク型ガス発生器1Hの蓋部材46には、当て留め部46cの周縁から下部側シェル10の底板部11側に向けて環状突出部46dが延設されている。当該環状突出部46dは、隔壁部材45の天板部21側の開口端に外挿されることで圧入されており、これにより環状突出部46dの内周面は、隔壁部材45の天板部21側の端部の外周面に密着している。すなわち、この環状突出部46dが設けられた位置において、仕切り部44には、周方向の全周にわたって隔壁部材45と筒状部46bとが密着する全周密着領域が形成されている。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態7において説明した効果と同様の効果が得られることになり、フィルタの重量の増加を抑制しつつスラグの捕集機能を高めることができるデュアル構造のディスク型ガス発生器1Hとすることができる。また、上述のとおり、仕切り部44の所定位置に、周方向の全周にわたって隔壁部材45と蓋部材46とが密着する全周密着領域が形成されることになるため、第2点火器42の非作動時において、第1燃焼室S1と第2燃焼室S2とが非連通の状態がより確実に維持できることになる。
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態1および7等においては、第2点火器が作動した第2段階であって、蓋部材の移動が天板部によって制限された後の状態において、複数のガス通過溝の天板部側の端部が上側支持部材に対向して位置するように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成する必要はなく、当該制限後の状態において、複数のガス通過溝の天板部側の端部が上側支持部材に対向しないように構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし8においては、第1点火器および第2点火器が異なるタイミングで通電されることにより、第2点火器が第1点火器の作動のタイミングから遅れたタイミングで作動するように構成された場合を例示して説明を行なったが、これらが同時のタイミングで通電されることにより、同時のタイミングで作動するように構成されていてもよい。また、第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電する場合であっても、第2点火器の点火部に点火薬の着火を遅らせる延時薬を設けることにより、第2点火器の通電から点火薬の着火までに要する時間を延長し、これによって第1点火器と第2点火器とを同時のタイミングで通電しつつも、第2ガス発生剤の燃焼開始のタイミングを第1ガス発生剤の燃焼開始のタイミングよりも遅らせるように構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし8においては、第2燃焼室にガス発生剤のみを充填した場合を例示して説明を行なったが、第2燃焼室にガス発生剤に加えて伝火薬を収容することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし8においては、第1点火器および第2点火器をそれぞれ金属製の第1ホルダおよび第2ホルダを介してハウジングの底板部に組付けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、これら第1点火器および第2点火器の双方をいわゆるインサート成形によってハウジングの底板部に組付けるように構成してもよい。その場合には、ディスク型ガス発生器は、上述した第1ホルダおよび第2ホルダに代えて、樹脂成形部からなる第1保持部および第2保持部を有することになり、第1点火器および第2点火器は、それぞれこれら第1保持部および第2保持部を介してハウジングの底板部に組付けられることになる。
具体的には、第1保持部は、型を用いた射出成形によって形成することができ、下部側シェルと第1点火器との間の空間を充填するように流動性樹脂材料を流し込んでこれを固化させることで設けることができる。より詳細には、上述した流動性樹脂材料を、下部側シェルの底板部に設けられた第1開口部を経由して底板部の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように当該底板部に付着させるとともに、第1点火器の基部にもこれを付着させ、この状態において流動性樹脂材料を固化させることにより、第1点火器を第1保持部を介してハウジングの底板部に組付けることができる。
これにより、第1開口部は、第1保持部によって埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が第1保持部によって確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保できることになる。なお、第1点火器の端子ピンは、その一部が第1保持部を貫通して外部に引き出されるように構成すればよい。また、この場合において、たとえばカップ体の開口端を第1保持部に外挿することでカップ体を圧入等によって第1保持部に固定することとすれば、伝火薬を第1点火器の点火部に面するように配置することもできる。
また、第2保持部も、第1保持部と同様に、型を用いた射出成形によって形成することができ、下部側シェルと第2点火器との間の空間を充填するように流動性樹脂材料を流し込んでこれを固化させることで設けることができる。より詳細には、上述した流動性樹脂材料を、下部側シェルの底板部に設けられた第2開口部を経由して底板部の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように当該底板部に付着させるとともに、第2点火器の基部にもこれを付着させ、この状態において流動性樹脂材料を固化させることにより、第2点火器を第2保持部を介してハウジングの底板部に組付けることができる。
これにより、第2開口部は、第2保持部によって埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が第2保持部によって確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保できることになる。なお、第2点火器の端子ピンは、その一部が第2保持部を貫通して外部に引き出されるように構成すればよい。また、この場合において、たとえば有底略円筒状の隔壁部材の開口端を第2保持部に外挿することで隔壁部材を圧入等によって第2保持部に固定することとすれば、第2ガス発生剤を第2点火器の点火部に面するように配置することもできる。
ここで、下部側シェルの第1開口部および第2開口部が設けられた部分をハウジングの内側に向けて筒状に突出させることとすれば、第1保持部および第2保持部と底板部との間の固着面積を増加させることでこれらの接合強度を高めることができるとともに、ハウジングの筒状に折り曲げた部分の内側に雌型コネクタ部を形成するスペースを確保することもできる。
射出成形によって形成される第1保持部および第2保持部の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において第1保持部および第2保持部の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
また、第1保持部および第2保持部によって覆われることとなる部分の底板部の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェルを用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させること等により、その形成が可能である。
このようにすれば、底板部と第1保持部および第2保持部との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる第1保持部および第2保持部をより強固に底板部に固着させることが可能になる。したがって、底板部に設けられた第1開口部および第2開口部を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することもできる。
ここで、底板部に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を原料として含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
なお、第1点火器および第2点火器の一方を金属製のホルダを介してハウジングに固定するとともに、第1点火器および第2点火器の他方を樹脂成形部からなる保持部を介してハウジングに固定することとしてもよい。
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし8において示した特徴的な構成は、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて相互にこれらを組み合わせることができる。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。