JP6504378B1 - ハイブリッドキャパシタ - Google Patents

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Abstract

このハイブリッドキャパシタは、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上であって、正極が、黒鉛を含む正極活物質と、アルミニウム材からなる集電体とを備え、アルミニウム材が、60nm以上300nm以下の厚みを有する非晶質炭素被膜で被覆され、非晶質炭素被膜と正極活物質との間に、さらに導電性炭素層が設けられている。

Description

本発明は、ハイブリッドキャパシタに関する。
本願は、2017年7月18日に、日本に出願された特願2017−139522号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、電気エネルギーを貯蔵する技術として、電気二重層キャパシタ(例えば、特許文献1参照)や二次電池が知られている。電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric double layer capacitor)は、寿命、安全性、出力密度が二次電池よりも格段に優れている。しかしながら、電気二重層キャパシタは、二次電池に比べてエネルギー密度(体積エネルギー密度)が低いという課題がある。
ここで、電気二重層キャパシタに蓄積されるエネルギー(E)は、キャパシタの静電容量(C)と印加電圧(V)を用いてE=1/2×C×Vと表され、エネルギーは静電容量と印加電圧の二乗とに比例する。従って、電気二重層キャパシタのエネルギー密度を改善するために、電気二重層キャパシタの静電容量や印加電圧を向上する技術が提案されている。
電気二重層キャパシタの静電容量を向上する技術としては、電気二重層キャパシタの電極を構成する活性炭の比表面積を増大させる技術が知られている。現在、知られている活性炭は、比表面積が1000m/g〜2500m/gである。このような活性炭を電極に用いた電気二重層キャパシタでは、電解液として第四級アンモニウム塩を有機溶媒に溶解させた有機電解液や、硫酸等の水溶液電解液等が用いられている。
有機電解液は使用できる電圧範囲が広いため、印加電圧を高めることができ、エネルギー密度を向上することができる。
電気二重層キャパシタの原理を利用して印加電圧を向上させたキャパシタとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。負極にリチウムイオンをインターカーレート、ディインターカーレートできる黒鉛あるいは炭素を用い、正極に電解質イオンを吸脱着できる電気二重層キャパシタの電極材と同等の活性炭を用いるものは、リチウムイオンキャパシタと呼ばれている。また、正極あるいは負極のいずれか一方に電気二重層キャパシタの電極材と同等の活性炭を用い、もう一方の電極にファラデー反応が起こる電極として、金属酸化物、導電性高分子を用いるものについては、ハイブリッドキャパシタと呼ばれている。リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタを構成する電極のうち、負極がリチウムイオン二次電池の負極材料である黒鉛やハードカーボン等で構成され、その黒鉛やハードカーボン内にリチウムイオンが挿入された電極である。リチウムイオンキャパシタは、一般的な電気二重層キャパシタ、すなわち、両極が活性炭で構成されるものよりも印加電圧が大きくなるという特徴がある。
しかし、電極に黒鉛を用いた場合、電解液の溶媒として知られる、プロピレンカーボネートを用いることができないという課題がある。電極に黒鉛を用いた場合、プロピレンカーボネートが電気分解して、黒鉛の表面にプロピレンカーボネートの分解生成物が付着し、リチウムイオンの可逆性が低下するためである。プロピレンカーボネートは、低温でも動作可能な溶媒である。プロピレンカーボネートを電気二重層キャパシタに適用した場合、その電気二重層キャパシタは−40℃でも作動することができる。そこで、リチウムイオンキャパシタでは、プロピレンカーボネートが分解し難いハードカーボンが電極材料に用いられている。しかし、ハードカーボンは、黒鉛に比べて電極の体積当たりの容量が低く、電圧も黒鉛に比べて低くなる(貴な電位になる)。そのため、リチウムイオンキャパシタのエネルギー密度が低くなる等の課題がある。
低温特性を重視した場合、高容量の黒鉛を負極に使用するのが難しいリチウムイオンキャパシタの更なる高エネルギー密度化は難しい。さらに、リチウムイオンキャパシタでは、リチウムイオン二次電池の負極と同様に集電体に銅箔を用いているため、2V以下の過放電を行った場合に銅が溶出して短絡を起こす、あるいは充放電容量が低下する等の課題がある。したがって、リチウムイオンキャパシタは、0Vまで放電できる電気二重層キャパシタに比べると使用方法が限定されている等の課題がある。
新しい概念のキャパシタとして、活性炭の代わりに黒鉛を正極活物質に用いて黒鉛の層間に電解質イオンを挿入脱離する反応を利用したキャパシタが開発された(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、正極活物質に活性炭を用いる従来の電気二重層キャパシタでは正極に2.5Vを超える電圧を印加すると電界液の分解が生じてガスが発生するのに対して、正極活物質に黒鉛を用いる新しい概念のキャパシタでは3.5Vの充電電圧でも電界液の分解を招来せず、正極活物質に活性炭を用いる従来の電気二重層キャパシタよりも高い電圧で動作できることが記載されている。サイクル特性や低温特性、出力特性に関しても従来の電気二重層キャパシタと同等以上となる。黒鉛の比表面積は活性炭の比表面積の数百分の1であり、この電解液分解作用の違いはこの大きな比表面積の違いに起因する。
黒鉛を正極活物質に用いる新しい概念のキャパシタでは、耐久性が十分ではないため、実用化が阻まれていたが、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材を集電体に用いる技術(特許文献3参照)により、高温耐久性能を実用化レベルまで改善できることが分かっている。なお、この新しい概念のキャパシタは、正極に黒鉛の層間に電解質イオンを挿入脱離する反応を用いたキャパシタであり、厳密には電気二重層キャパシタではないが、特許文献3では広義の意味で電気二重層キャパシタと呼んでいる。
ここで、耐久性の試験は通常、温度を高めて加速試験(高温耐久性試験、充放電サイクル試験)によって行う。その試験はJIS D 1401:2009に記載されている「耐久性(高温連続定格電圧印加)試験」に準じた方法で行うことができる。温度を室温から10℃上昇させると劣化速度が約2倍になると言われている。高温耐久性試験としては例えば、60℃の恒温槽で2000時間、所定の電圧(本発明では、3V以上)で保持(連続充電)し、その後室温に戻して充放電を行ない、そのときの放電容量を測定する試験がある。この高温耐久性試験後に、初期の放電容量に対して放電容量維持率が80%以上を満足することが望ましいと考えられる。
特開2011−046584号公報 特開2010−040180号公報 国際公開第2017/216960
アルミニウム材を被覆するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等の非晶質炭素被膜上に、直接黒鉛や活性炭等の活物質を塗布して作製した電極は、非晶質炭素被膜と黒鉛や活性炭等の活物質との接触抵抗が高いため、放電率が低く、出力特性も低くなるという課題がある。
本発明に係るハイブリッドキャパシタは上記事情に鑑みてなされたものであり、集電体と正極活物質との接触抵抗を低減し、放電率を高め、出力特性を高めるとともに高温耐久性を高めることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提供する。
(1)本発明の一態様に係るハイブリッドキャパシタは、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上であるハイブリッドキャパシタであって、正極は、正極活物質として黒鉛を含み、正極側の集電体はアルミニウム材であり、前記アルミニウム材は非晶質炭素被膜で被覆され、前記非晶質炭素被膜の厚みが、60nm以上300nm以下であって、前記非晶質炭素被膜と前記正極活物質との間に、さらに導電性炭素層が設けられている。
(2)上記(1)のハイブリッドキャパシタにおいて、前記導電性炭素層は、黒鉛を含んでいてもよい。
(3)上記(1)または(2)のハイブリッドキャパシタにおいて、前記導電性炭素層は、バインダーを含んでいてもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかのハイブリッドキャパシタにおいて、前記バインダーは、セルロース、アクリル、ポリビニルアルコール、熱可塑性樹脂、ゴム、有機樹脂からなる群から選択されたものであってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかのハイブリッドキャパシタにおいて、負極側の集電体は、非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜と負極活物質との間に設けられたアルミニウム材、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材、エッチドアルミニウム、および、アルミニウム材からなる群から選択されたものであってもよい。
本発明のハイブリッドキャパシタによれば、導電性炭素層を設けることで、集電体と正極活物質との接触抵抗を低減し、放電率を高め、出力特性を高めるとともに高温耐久性能を高めることができる。
また、非晶質炭素被膜にピンホールがある場合でも、本発明のように導電性炭素層を非晶質炭素被膜と正極活物質との間に設けることで、それらを封孔することができる。
本発明の実施例1、比較例2、および比較例5に係るハイブリッドキャパシタの放電特性(60℃での定電流定電圧連続充電試験を行った際の放電容量維持率)を示すグラフである。
以下、本発明を適用した実施形態に係るハイブリッドキャパシタについて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本発明の一実施形態に係るハイブリッドキャパシタは、60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において、80%以上の放電容量維持率を1000時間以上維持できるハイブリッドキャパシタであって、正極、負極、電解液、セパレータを備え、正極は正極活物質として黒鉛を含み、正極側の集電体はアルミニウム材であり、アルミニウム材は非晶質炭素被膜で被覆され、非晶質炭素被膜の厚みが60nm以上、300nm以下であり、非晶質炭素被膜と正極活物質との間に、さらに導電性炭素層が設けられていることを特徴とする。
正極は、集電体(正極側の集電体)上に正極活物質層が形成されてなる。
正極活物質層は、バインダーと、必要に応じた量の導電材とを含むペースト状の正極材料を、正極側の集電体上に塗布し、乾燥して、形成することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、アクリル系、オレフィン系、カルボキシメチルセルロース(CMC)系の単独、もしくは2種類以上の混合系を用いることができる。
導電材も、正極活物質層の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電材を使用できる。例えば、カーボンブラック、炭素繊維(カーボンナノチューブ(CNT)、VGCF(登録商標)等を含み、カーボンナノチューブに限らない)等を用いることができる。
正極側の集電体は、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材である。
基材であるアルミニウム材としては一般的に集電体用途で使用されるアルミニウム材を用いることができる。
アルミニウム材の形状としては、箔、シート、フィルム、メッシュなどの形態をとることができる。集電体としては、アルミニウム箔を好適に用いることができる。
また、アルミニウム材としてプレーンなものの他、後述するエッチドアルミニウムを用いてもよい。
アルミニウム材が箔、シートまたはフィルムである場合の厚みについては、特に限定されない。セル自体のサイズが同じ場合、薄いほどセルケースに封入する活物質を多くすることができるというメリットはあるが、強度が低下するというデメリットを伴う。従って、セルケースに入れる活物質を多くでき、且つ、強度を損なわないよう適正な厚みを選択することが好ましい。実際の厚みとしては、10μm〜40μmが好ましく、15μm〜30μmがより好ましい。厚みが10μm未満の場合、アルミニウム材の表面を粗面化する工程、または、他の製造工程中において、アルミニウム材の破断または亀裂を生じるおそれがある。
非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材として、エッチドアルミニウムを用いてもよい。
エッチドアルミニウムは、エッチングによって粗面化処理されたものである。エッチングは一般的に塩酸等の酸溶液に浸漬(化学エッチング)する方法や、塩酸等の酸溶液中でアルミニウムを陽極として電解(電気化学エッチング)する方法等が用いられる。電気化学エッチングでは、電解の際の電流波形、溶液の組成、温度等によりエッチング形状が異なるので、キャパシタ性能の観点で選択できる。
アルミニウム材は、表面に不動態層を備えているもの、備えていないもののいずれも用いることができる。アルミニウム材は、その表面に自然酸化膜である不動態膜が形成されている場合、非晶質炭素被膜層をこの自然酸化膜の上に設けてもよいし、自然酸化膜を例えば、アルゴンスパッタリングにより除去した後に設けてもよい。
アルミニウム材上の自然酸化膜は不動態膜であり、それ自体、電解液に浸食されにくいという利点がある一方、集電体の抵抗の増大につながるため、集電体の抵抗の低減の観点では、自然酸化膜がない方がよい。
本明細書において、非晶質炭素被膜とは、非晶質の炭素膜または水素化炭素膜であり、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、カーボン硬質膜、アモルファスカーボン(a−C)膜、水素化アモルファスカーボン(a−C:H)膜等を含む。非晶質炭素被膜の成膜方法としては、炭化水素系ガスを用いたプラズマCVD法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法、真空アーク蒸着法等の公知の方法を用いることができる。なお、非晶質炭素被膜は、集電体として機能する程度の導電性を有することが好ましい。
例示した非晶質炭素被膜の材料のうち、ダイヤモンドライクカーボンは、ダイヤモンド結合(sp)とグラファイト結合(sp)の両方が混在したアモルファス構造を有する材料であり、高い耐薬品性を有する。ただし、集電体の被膜に用いるには導電性が低いため、導電性を高めるためにホウ素や窒素をドーピングするのが好ましい。
非晶質炭素被膜の厚みは60nm以上、300nm以下であることが好ましい。非晶質炭素被膜の膜厚は、60nm未満であると薄すぎて非晶質炭素被膜の被覆効果が小さくなり、定電流定電圧連続充電試験での集電体の腐食を十分抑制できない。300nmを超えて厚すぎると非晶質炭素被膜が抵抗体になって活物質層との間の抵抗が高くなってしまう。従って、非晶質炭素被覆の被覆効果が小さくならず、且つ、非晶質炭素被膜と活物質層との間の抵抗が大きくならないように、適正な厚みを適宜選択することが好ましい。非晶質炭素被膜の具体的な厚みは80nm以上、300nm以下であればより好ましく、120nm以上、300nm以下であればさらに好ましい。炭化水素系ガスを用いたプラズマCVD法によって非晶質炭素被膜を成膜する場合、アルミニウム材へ注入するエネルギー、具体的には印加電圧、印加時間、温度を制御することで非晶質炭素被膜の厚みは制御することができる。
非晶質炭素被膜層の上には、さらに導電性炭素層が設けられている。導電性炭素層の厚みは5000nm以下であれば好ましく、3000nm以下であればより好ましい。厚みが5000nmを超えると、セルや電極になったとき、エネルギー密度が小さくなるからである。導電性炭素層の材料としては、導電性が高い炭素ならば種類を問わないが、導電性が高い炭素として黒鉛が含まれていることが好ましく、黒鉛のみであればより好ましい。
導電性炭素層の材料の粒径は、活物質である黒鉛や活性炭の大きさに比べて1/10以下であることが好ましい。これは、粒径がこの範囲にあれば、導電性炭素層と活物質層が接する界面での接触性が高くなり、界面(接触)抵抗を低減できるからである。具体的には導電性炭素層の炭素材料の粒径が、1μm以下であれば好ましく、0.5μm以下であればより好ましい。
また、導電性炭素層を形成する際、溶媒と共にバインダーを加えて塗料化し、DLCコーティングしたアルミニウム箔(以下、「DLCコートアルミニウム箔」ということがある)上に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、コンマコーター(登録商標)、スピンコーター等を用いることができる。バインダーとしては、セルロース、アクリル、ポリビニルアルコール、熱可塑性樹脂、ゴム、有機樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはポリエチレンやポリプロピレン、ゴムとしてはSBR(スチレンーブタジエンラバー)やEPDM、有機樹脂としてはフェノール樹脂やポリイミド樹脂等を用いることができる。
導電性炭素層は、粒子間の隙間が少なく、接触抵抗が低い方が好ましい。また、上記の導電性炭素層を形成するためのバインダーを溶かすための溶剤としては、水溶液と有機溶剤の2種類がある。電極活物質層を形成するためのバインダーが有機溶剤に溶解するものであれば、導電性炭素層には水溶液に溶解するバインダーを用いることが好ましい。逆に電極活物質層を形成するためのバインダーが水溶液の場合は導電性炭素層には有機溶剤に溶解するバインダーを用いるのが好ましい。これは同種の溶剤を電極活物質層と導電性炭素層に用いると、電極活物質層を塗布する際に導電性炭素層のバインダーが溶けやすく、不均一になりやすいからである。
本実施形態のハイブリッドキャパシタで用いる正極活物質は黒鉛を含むものである。黒鉛としては、人造黒鉛、天然黒鉛のいずれも用いることができる。また、天然黒鉛としては鱗片状のものと土状のものが知られている。天然黒鉛は、採掘した原鉱石を粉砕し、浮遊選鉱と呼ばれる選鉱を繰り返すことによって得られる。また、人造黒鉛は例えば、高温度によって炭素材料を焼成する黒鉛化工程を経て製造されるものである。より具体的には例えば、原料のコークスにピッチなどの結合剤を加えて成形し、1300℃付近まで加熱することで一次焼成し、次に一次焼成品をピッチ樹脂に含浸させ、更に3000℃に近い高温で二次焼成することで得られる。また、黒鉛粒子表面を炭素でコーティングしているものも用いることができる。
また、黒鉛の結晶構造は大きく分けて、ABABからなる層構造の六方晶と、ABCABCからなる層構造の菱面体晶がある。これらは条件によってそれらの構造単独、あるいは混合状態になるが、いずれの結晶構造のものも混合状態のものも用いることができる。例えば、後述する実施例で用いたイメリス・ジーシー・ジャパン株式会社製KS−6(商品名)の黒鉛は菱面体晶の比率が26%であり、大阪ガスケミカル株式会社製の人造黒鉛であるメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)は菱面体晶の比率0%である。
本実施形態で用いている黒鉛は、従来のEDLCで用いられている活性炭とは静電容量の発現メカニズムが異なる。活性炭の場合には、比表面積が大きいことを活かし、その表面に電解質イオンが吸脱着することにより、静電容量を発現するものである。これに対して黒鉛の場合は、その層間において、電解質イオンであるアニオンが挿入脱離(インターカーレーション−ディインターカーレーション)することにより、静電容量を発現するものである。このような違いから、本実施形態に係る黒鉛を用いるハイブリッドキャパシタは、特許文献3においては広義の意味で電気二重層キャパシタと呼ばれていたが、電気二重層を有する活性炭を用いるEDLCと区別されるものである。
本発明の集電体はアルミニウム材の表面に非晶質炭素被膜を有するので、アルミニウム材が電解液に接することを阻止して、高電圧充電時において電解液による集電体の腐食を防止することができ、さらに集電体は導電性炭素層をも有するので、耐腐食性能がより一層高く、より安定的なハイブリッドキャパシタを得ることができる。
負極は、集電体(負極側の集電体)上に負極活物質層が形成されてなる。
負極活物質層は主に、負極活物質、バインダー、および、必要に応じた量の導電材と、を含むペースト状の負極材料を、負極側の集電体上に塗布し、乾燥して、形成することができる。
負極活物質としては、電解質イオンであるカチオンを吸脱着あるいは、挿入脱離(インターカーレーション−ディインターカーレーション)できる材料、例えば、炭素質材料である活性炭、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンおよび炭素質材料より卑な電極電位材料であるチタン酸リチウムを用いることができる。
負極側の集電体としては公知のものを用いることができる。例えば、非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜と負極活物質との間に設けられたアルミニウム材、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材、エッチドアルミニウム、および、アルミニウム材、からなる群から選択されたものを用いることができる。負極側においても非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜と負極活物質との間に設けられたアルミニウム材や非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材を用いた場合、ハイブリッドキャパシタを高電圧で作動させたときに、高温耐久性能を向上できる点で好ましい。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、アクリル系、オレフィン系、カルボキシメチルセルロース(CMC)系の単独、もしくは2種類以上の混合系を用いることができる。
導電材としては、負極活物質層の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電材を用いることができる。例えば、カーボンブラック、炭素繊維(カーボンナノチューブ(CNT)、VGCF(登録商標)等を含み、カーボンナノチューブに限らない)等を用いることができる。
電解液としては、有機溶媒を用いた有機電解液を用いることができる。電解液は、電極に吸脱着可能な電解質イオンを含む。電解質イオンは、そのイオン径ができるだけ小さいものの方が好ましい。具体的には、アンモニウム塩やホスホニウム塩、あるいはイオン液体、リチウム塩等を用いることができる。
アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウム(TEA)塩、トリエチルアンモニウム(TEMA)塩等を用いることができる。また、ホスホニウム塩としては、二つの五員環を持つスピロ化合物等を用いることができる。
イオン液体としては、その種類は特に問わないが、電解質イオンを移動し易くする観点から、粘度ができる限り低く、また、導電性(導電率)が高い材料が好ましい。イオン液体を構成するカチオンとしては、例えばイミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。イミダゾリウムイオンとしては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(1−ethyl−3−methylimidazolium)(EMIm)イオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム(1−methyl−1−propylpyrrolidinium)(MPPy)イオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウム(1−methyl−1−propylpiperidinium)(MPPi)イオン等が挙げられる。また、リチウム塩としては四フッ化ホウ酸リチウムLiBF、六フッ化リン酸リチウムLiPF等を用いることができる。
ピリジニウムイオンとしては、例えば、1−エチルピリジニウム(1−ethylpyridinium)イオン、1−ブチルピリジニウム(1−buthylpyridinium)イオン等が挙げられる。
イオン液体を構成するアニオンとしては、BFイオン、PFイオン、[(CFSON]イオン、FSI(ビス(フルオロスルホニル)イミド、bis(fluorosulfonyl)imide)イオン、TFSI(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)イオン等が挙げられる。
溶媒としてはアセトニトリルやプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、エチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、γブチロラクトン、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の単独もしくは混合溶媒を用いることができる。
セパレータとしては、正極と負極の短絡防止や電解液保液性の確保等の理由から、セルロース系の紙状セパレータや、ガラス繊維セパレータ、ポリエチレンやポリプロピレンの微多孔膜等が好適である。
本実施形態に係るハイブリッドキャパシタは、導電性炭素層を設けることで、集電体を被覆する非晶質炭素被膜と正極活物質との接触抵抗を低減し、放電率を高め、出力特性を高めるとともに高温耐久性を高めることができる。
また、非晶質炭素被膜にピンホールがある場合でも、本実施形態のように導電性炭素層を非晶質炭素被膜と正極活物質との間に設けることで、それらを封孔することができる。
本実施形態において、非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜層と正極活物質との間に導電性炭素層が設けられたアルミニウム材を用いた黒鉛正極は、ハイブリッドキャパシタでの使用に限定されるものではない。この黒鉛正極は、例えば負極に、ハードカーボン、ソフトカーボン、黒鉛、リチウム金属、錫やケイ素等のリチウムと合金化する材料、チタン酸リチウムを用いることにより、リチウムイオンキャパシタの電極としても使用可能である。
なお、本実施形態で用いている非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜と正極活物質との間に設けられたアルミニウム材は、活性炭を正極活物質に用いた場合にも前述の効果を発揮して、従来より高電圧化することが可能となる。しかしながら、活性炭は、比表面積が黒鉛に比べて二桁から三桁と高い。そのため、電極反応面積が広く、電解液の分解、活性炭自身の分解、あるいは活性炭表面の官能基等の分解により、ガスが発生してセルの内圧が高められる等の影響がある。したがって、活性炭と非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜と正極活物質との間に設けられたアルミニウム材との組み合わせだけでは、本実施形態と同等の効果を得ることができない。
以下、実施例により、本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その効果を奏する範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施例1>
まず、正極側の集電体として、導電性炭素層を被覆したDLCコートアルミニウム箔を、次のようにして作製した。DLCコートアルミニウム箔(厚さ20μm)上に、スクリーン印刷機を用いて、日本黒鉛工業株式会社製の黒鉛製導電性ペースト(商品名:バニーハイトT−602U、セルロース系樹脂バインダー、水溶液)を塗布することで導電性炭素層を形成した後、100℃で20分間熱風乾燥機中で乾燥させたものを集電体とした。 DLCコートアルミニウム箔は非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材に相当する。また、導電性炭素層を被覆したDLCコートアルミニウム箔は、非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜と正極活物質との間に設けられたアルミニウム材に相当する。DLCコートアルミニウム箔の製造法としては、純度99.99%のアルミニウム箔に対して、アルゴンスパッタリングでアルミニウム箔表面の自然酸化膜を除去した後、そのアルミニウム表面近傍にメタン、アセチレンおよび窒素の混合ガス中で放電プラズマを発生させ、アルミニウム材に負のバイアス電圧を印加することによりDLC膜を生成させた。DLCをコーティング(被覆)したアルミニウム箔上のDLC膜の厚みを、ブルカー(BRUKER)社製触針式表面形状測定器DektakXTを用いて計測したところ、135nmであった。
次に、正極活物質としてイメリス・ジーシー・ジャパン株式会社製黒鉛(商品名:KS−6、平均粒径6μm)、アセチレンブラック(導電材)、ポリフッ化ビニリデン(有機溶剤系バインダー)を、重量パーセント濃度(wt%)の比率が80:10:10となるように秤量し、N−メチルピロリドン(有機溶剤)で溶解混合することで得たペーストを、先に作製した集電体上に、ドクターブレードを用いて塗布したものを正極とした。マイクロメーターを用いて正極側の集電体を計測したところ、0.08mmであった。
次に、負極活物質として関西熱化学株式会社製活性炭(商品名:MSP−20)、アセチレンブラック(導電材)、ポリフッ化ビニリデン(有機溶剤系バインダー)を、重量パーセント濃度(wt%)の比率が80:10:10となるように秤量し、N−メチルピロリドン(有機溶剤)で溶解混合することで得たペーストを、日本蓄電器工業株式会社製エッチドアルミニウム箔(厚さ20μm)上に、ドクターブレードを用いて塗布したものを負極とした。
次に、上記正極と負極を直径16mmの円板状に打ち抜いたものを150℃で24時間真空乾燥した後、アルゴングローブボックスへ移動した。これらを、ニッポン高度紙工業株式会社製紙セパレータ(商品名:TF40−30)を介して積層し、電解質に1MのTEA−BF(四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム)、溶媒にSL+DMS(スルホラン(Sulfolane)+硫化ジメチル)を用いた電解液0.1mLを加えて、アルゴングローブボックス中で2032型コインセルを作製した。
<実施例2>
実施例1で正極側の集電体として用いた導電性炭素層を塗布したDLCコートアルミニウム箔を、負極側の集電体として用いたこと以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
<実施例3>
正極活物質として大阪ガスケミカル株式会社製人造黒鉛(商品名:MCMB6−10)を用いたこと以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
<実施例4>
負極活物質としてチタン酸リチウムLiTi12を用い、電解質に1Mの四フッ化ホウ酸リチウムLiBF、溶媒にプロピレンカーボネート(PC)を用いた電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
<実施例5>
実施例1と同様の手順でDLCコートアルミニウム箔を作製し、これに日本黒鉛工業株式会社製の黒鉛製導電性ペースト(商品名:バニーハイトUCC−2、ゴム系バインダー、トルエン溶剤)を塗布し、正極側の集電体とした。また、正極のバインダーに、水溶液系バインダーである日本ゼオン株式会社製ポリアクリル酸(商品名:AZ−9001)10wt%および日本ゼオン株式会社製CMC(カルボキシメチルセルロース、商品名:BM−400)3wt%を用いた。それ以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
なお、正極側の集電体として導電性炭素層の厚みが0nm(導電性炭素層なし)のアルミニウム箔を用いた場合は本発明の実施例ではなく、後述する比較例2、比較例4および比較例5にあたる。
<比較例1>
実施例1で負極活物質として用いた活性炭(商品名:MSP−20)を、正極活物質としても用いた(すなわち、活性炭を正極活物質にも負極活物質にも用いた)こと以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
<比較例2>
正極側の集電体として、導電性炭素層で被覆されていないDLCコートアルミニウム箔を用いたこと以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
<比較例3>
実施例1で負極活物質として用いた活性炭(商品名:MSP−20)を正極活物質として用い、正極のバインダーとして水溶液系バインダーであるポリアクリル酸(商品名:AZ−9001)10wt%およびCMC(カルボキシメチルセルロース、商品名:BM−400)3wt%を用いたこと以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
<比較例4>
正極側の集電体として、導電性炭素層で被覆されていないDLCコートアルミニウム箔を用いたこと以外は、実施例5と同様の2032型コインセルを作製した。
<比較例5>
実施例1で負極側の集電体として用いた日本蓄電器工業株式会社製エッチドアルミニウム箔(厚さ20μm)を、正極側の集電体として用いた(すなわち、エッチドアルミニウム箔を正極側の集電体にも負極側の集電体にも用いた)こと以外は、実施例1と同様の2032型コインセルを作製した。
(試験1)評価(エネルギー、放電容量)
作製した実施例1、実施例3、実施例4、実施例5、比較例1、および比較例3のセルに対し、株式会社ナガノ製充放電試験装置BTS2004を用いて、25℃の恒温槽中で、0.4mA/cmの電流密度、0V〜3.5Vの範囲の電圧で充放電試験を行った。その結果として得られた放電容量と平均放電電圧より、エネルギー(Wh)を算出した結果を表1に示す。表1においては、実施例1、実施例3、実施例4、および実施例5のエネルギーと放電容量を各々比較例1または比較例3で規格化した値を示した。この際、比較例1または比較例3の結果を100として規格化した。
なお、印加電圧の上限について、黒鉛を正極活物質として用いた実施例1、実施例3、実施例4、および実施例5では3.5Vまで印加できたが、活性炭を正極に用いた比較例1および比較例3では、2.5Vまでで測定した。
Figure 0006504378
活性炭を正極活物質に用いた比較例1に対して、黒鉛を正極活物質に用いた実施例1および実施例3のセルのエネルギー(放電容量と放電平均電圧の積)は、それぞれ4.2倍、3.1倍になり、高エネルギー化を図ることができた。これは、黒鉛はその層と層の間(層間)で電解質イオンを挿入脱離することができ、電解質イオンを細孔表面のみで吸脱着する活性炭に比べて、放電容量を大きくすることができるためと考えられる。実際、放電容量について、比較例1のセルに対して実施例1の場合は3.0倍、実施例3の場合は2.2倍と高容量化することができた。黒鉛を正極活物質に用いた場合、活性炭を正極活物質に用いた場合に比べて、電圧を高くできたこともエネルギーを向上できた要因である。
また、黒鉛を正極活物質に用いたことに加え、チタン酸リチウムを負極活物質に用いた実施例4では、正極活物質、負極活物質ともに活性炭を用いた比較例1に対してエネルギーが6.0倍、放電容量が3.5倍となった。黒鉛を正極活物質に用いた点は同じだが、活性炭を負極活物質に用いた実施例1に比べて、実施例4は負極活物質に用いたチタン酸リチウムの放電電位がより平坦になるため、平均電圧が高くなって高エネルギー化を図ることができ、さらに放電容量が活性炭に比べて大きくなった効果によって高容量化を図ることもできた。
また、正極のバインダーに水溶液系バインダーであるポリアクリル酸とCMCを用い、導電性炭素層に有機溶剤系バインダーであるゴムを用いた実施例5および比較例3のセルは、実施例1と逆の構成、すなわち、正極活物質層のバインダーに水溶液系バインダー、導電性炭素層に有機溶剤系バインダーを使用した構成となっている。これらに関する結果を見ると、実施例1のセルと同様に、エネルギー、放電容量共に、比較例3に比べて高く、バインダーの溶剤の違いによる影響を受けることなく、高エネルギー化、高容量化できたことが分かった。
実施例1と実施例3の違いは正極活物質の黒鉛の種類が異なるだけであるが、エネルギーおよび放電容量で表1に示す通りの違いがある。
イメリス・ジーシー・ジャパン株式会社製黒鉛(商品名:KS−6)は菱面体晶が26%含まれる(従って、六方晶は76%)のに対して、大阪ガスケミカル株式会社製のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)は菱面体晶が含まれていない。
菱面体晶はABCABCからなる層構造であり、六方晶はABABからなる層構造であり、結晶構造の違いが上記の性能に影響していると考えられる。すなわち、菱面体晶の方が六方晶よりも、イオンの挿入に伴う構造の変化が大きいため、イオンの挿入が起きにくいことが影響しているものと考えられる。
表1に示した結果に基づくと、エネルギーおよび放電容量の観点では、正極活物質の黒鉛としては菱面体晶が含まれることが好ましい。
(試験2)評価(放電容量改善率)
作製した実施例1、実施例2、実施例4、実施例5、および比較例1〜5のセルに対し、充放電試験装置(株式会社ナガノ製、BTS2004)を用いて、60℃の恒温槽中で、電流密度0.4mA/cm、電圧3.5Vで2000時間連続充電試験(定電流定電圧連続充電試験)を行った。具体的には、充電の途中、所定の時間で充電を止め、セルを25℃の恒温槽に移した後、試験1と同様に0.4mA/cmの電流密度、0V〜3.5Vの範囲の電圧で充放電試験を5回行うことで放電容量を得た。その後、60℃の恒温槽に戻して連続充電試験を再開し、連続充電試験時間の総計が2000時間になるまで試験を実施した。
その結果として得られた放電容量改善率を表2に示す。放電容量改善率とは、定電流定電圧連続充電試験開始前の放電容量に対して、定電流定電圧連続充電試験後の放電容量維持率が80%以下になった充電時間を寿命とし、それぞれ比較例1、比較例2、または比較例4での寿命になった時間を100として規格化したものである。すなわち、比較例1の活性炭を正極活物質にも負極活物質にも用い、エッチドアルミニウム箔を負極側の集電体に用いた場合や、比較例2および比較例4の導電性炭素層で被覆されていないDLCコートアルミニウム箔を用いた場合を100として規格化した。
Figure 0006504378
正極活物質に黒鉛を用い、かつ、正極側の集電体に導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いた実施例1では、2000時間の定電流定電圧(3.5V)連続充電試験後に放電容量維持率は92%であった。
また、正極活物質に黒鉛を用い、かつ、正極側の集電体に導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いたことに加え、負極活物質にチタン酸リチウムを用いた実施例4では、2000時間の定電流定電圧連続充電試験後に放電容量維持率は83%であった。
さらに、正極活物質に黒鉛を用い、かつ、正極側の集電体に導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いたことに加え、導電性炭素層に有機溶剤系であるゴム系バインダーを用い、正極活物質層に水溶液系バインダーであるポリアクリル酸とCMCを用いた実施例5では、2000時間の定電流定電圧連続充電試験後に放電容量維持率は93%であった。
本発明のハイブリッドキャパシタによって、3V以上の電圧、特に3.5Vという高電圧で、60℃で2000時間の定電流定電圧連続充電試験後の放電容量維持率80%以上という規格を満足することができるようになった。
これに対して、正極活物質に活性炭を用い、かつ、正極側の集電体に導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いた比較例1や比較例3では、それぞれ21時間、16時間で放電容量維持率が80%以下になった。これは、連続充電試験中、集電体自身の耐食性は保つことができるが、3.5Vという高電圧において活性炭と電解液が反応することによって、活性炭表面が電解液分解物に覆われることが原因である。
また、正極活物質に黒鉛を用い、かつ、正極側の集電体にエッチドアルミニウム箔を用いた比較例5では、65時間で放電容量維持率が80%以下になった。
実施例1や実施例4では、いずれも正極活物質に黒鉛を用い、かつ、正極側の集電体に導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いた。一方、比較例1では正極活物質に活性炭を用い、かつ、正極側の集電体に導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いた。表2に示した通り、実施例1および実施例4は、比較例1に対して放電容量改善率が45倍、31倍と大幅に改善できた。
この結果は、活性炭と本発明の導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を単に組み合わせだけでは、本実施形態と同等の効果を得ることができないことを示す。
また、正極活物質に黒鉛を用い、かつ、正極側の集電体にも負極側の集電体にも導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いた実施例2では、比較例1に対して放電容量維持率が49倍となり、高温耐久性能をさらに高めることができた。
この結果は、負極側においても集電体の腐食が耐久性を阻む主な要因であることを示す。
さらに、正極側の集電体に、本発明の導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いた実施例1では、導電性炭素層で被覆されていないDLCコートアルミニウム箔を用いた比較例2に対して、放電容量維持率が1.06倍に向上したことが分かる。加えて、実施例1と逆の構成、すなわち、正極活物質層に水溶液系バインダーを用い、導電性炭素層に有機溶剤系バインダーを用いた構成である実施例5についても放電容量維持率は1.08倍となり、実施例1と同様の効果を確認することができた。
この結果は電極層や導電性炭素層のバインダーの溶剤の違いによる影響を受けることなく、導電性炭素層を設けることにより非晶質炭素被膜と正極活物質との接触抵抗を低くすることができたことを示す。
(試験3)
対象とするセルが、作製した実施例1、比較例2、および比較例5のセルであること以外は、試験2と同様の連続充電試験(定電流定電圧連続充電試験)を行った。その結果を図1のグラフに示す。グラフは、試験開始前の放電容量を100とし、試験開始後、各充電時間経過後の放電容量を、その100の放電容量に対する割合で示したものであり、グラフの横軸は60℃定電流定電圧連続充電時間(h)を示し、グラフの縦軸は放電容量維持率(%)を示している。
エッチドアルミニウム箔を集電体として用いた比較例5では、放電容量を400時間以上維持できていない。これに対し、DLCコートアルミニウム箔を集電体として用いた実施例1および比較例2は、1000時間以上にわたって80%以上の高い放電容量維持率を示している。これは、DLC膜によって、電解液が直接アルミニウム箔に接触するのを防ぎ、電解液によるアルミニウム箔の腐食を抑制できているためと考えられる。
また、実施例1と比較例2を比較すると、実施例1の方がより高い放電容量維持率を示している。この違いは、DLCコートアルミニウム箔のDLC膜の上に、さらに導電性炭素層が設けられているか否かに起因するものと考えられる。導電性炭素層の粒子はDLC膜よりも凹凸があり、導電性も高いため、導電性炭素層が設けられることによって、集電体と正極活物質層との接触抵抗の上昇を抑制できたためと考えられる。
(試験4)
対象とするセルが、作製した実施例1および実施例5のセルであること、また電流密度が0.4mA/cmおよび4.0mA/cmであること以外は、試験1と同様の充放電試験を行い、放電容量を得た。実施例1および実施例5について、0.4mA/cmでの放電容量に対する4.0mA/cmでの放電容量の比率を算出し、放電率を得た。その結果を表3に示す。表3においては、実施例1および実施例5の放電率を各々比較例2または比較例4で規格化した値を示した。この際、比較例2または比較例4の結果を100として規格化した。
Figure 0006504378
正極側の集電体に、導電性炭素層で被覆されていないDLCコートアルミニウム箔を用いた比較例2に対して、本発明の導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を用いた実施例1の放電率性能は1.32倍となり、放電率性能の向上を図ることができた。これは、DLCコートアルミニウム箔の上に形成した導電性炭素層中の黒鉛がサブミクロンの微粒子であるため、平均粒径6μmの黒鉛活物質をDLCコートアルミニウム箔に直接塗布した場合に比べて、DLCコートアルミニウム箔との密着性(接触性)が高まり、集電体と黒鉛正極活物質層との接触抵抗が低くなったこと、かつ、DLC膜に比べて導電性炭素層は凹凸が大きいため、その上に形成された黒鉛活物質層との密着性が高まり、集電体と黒鉛正極活物質層との接触抵抗が低くなったことによると考えられる。
また、実施例1と逆の構成、すなわち正極活物質層に水溶液系バインダーを用い、導電性炭素層に有機溶剤系バインダーを用いた構成である実施例5についても放電率特性は1.42倍となり、実施例1の構成よりもさらに高い効果を得ることができた。
以上のように、本発明に係る実施形態の導電性炭素層で被覆されたDLCコートアルミニウム箔を集電体に用いることで、導電性炭素層で被覆されていないDLCコートアルミニウム箔を用いる場合に比べて、集電体と正極活物質との接触抵抗を低減し、放電率を高め、出力特性を高めるとともに高温耐久性を高めることができた。
集電体と正極活物質との接触抵抗を低減し、放電率を高め、出力特性を高めるとともに、高温耐久性を高めることができ、蓄電デバイス等の電気エネルギーを貯蔵する手段として適用できる。

Claims (5)

  1. 60℃、3.5Vの定電流定電圧連続充電試験において放電容量維持率が80%以上を維持できる時間が1000時間以上であるハイブリッドキャパシタであって、
    正極は正極活物質として黒鉛を含み、
    正極側の集電体はアルミニウム材であり、
    前記アルミニウム材は非晶質炭素被膜で被覆され、
    前記非晶質炭素被膜の厚みが60nm以上、300nm以下であって、
    前記非晶質炭素被膜と前記正極活物質との間に、さらに導電性炭素層が設けられており、
    前記導電性炭素層の材料の粒径は、前記正極活物質の大きさに比べて1/10以下であり、
    電解液は電解質イオンを含み、
    前記黒鉛の層間において、前記電解質イオンであるアニオンが挿入脱離することにより、静電容量を発現することを特徴とするハイブリッドキャパシタ。
  2. 前記導電性炭素層は、黒鉛を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドキャパシタ。
  3. 前記導電性炭素層は、バインダーを含んでいることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のハイブリッドキャパシタ。
  4. 前記バインダーは、セルロース、アクリル、ポリビニルアルコール、熱可塑性樹脂、ゴム、有機樹脂からなる群から選択されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のハイブリッドキャパシタ。
  5. 負極側の集電体は、非晶質炭素被膜で被覆され、かつ、導電性炭素層が非晶質炭素被膜と負極活物質との間に設けられたアルミニウム材、非晶質炭素被膜で被覆されたアルミニウム材、エッチドアルミニウム、および、アルミニウム材からなる群から選択されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のハイブリッドキャパシタ。
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