JP6504027B2 - 軟磁性粉末用の原料粉末並びに圧粉磁芯用軟磁性粉末およびその製造方法 - Google Patents

軟磁性粉末用の原料粉末並びに圧粉磁芯用軟磁性粉末およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、渦電流損が低く、高周波用途で優れた磁気特性を有する圧粉磁芯が得られる圧粉磁芯用軟磁性粉末と、その軟磁性粉末を得るための原料粉末に関するものである。
圧粉磁芯用粉末を加圧成形してできる圧粉磁芯は、たとえば、車両の駆動用モーターのステータコアやロータコア、電力変換回路を構成するリアクトルコアなどに適用されており、電磁鋼板を積層してなるコア材に比して、高周波鉄損が少ない磁気特性を有していること、形状バリエーションに対して臨機にかつ安価に対応できること、材料費が廉価となることなど、多くの利点を有している。
近年、上述したモーターやリアクトル等の使用環境では高周波化が加速しており、圧粉磁芯に要求される高周波鉄損の要求も日々厳しくなってきている。
鉄芯の鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損に分離されるが、高周波では特に鉄損に占める渦電流損の比率が高い。そのため、高周波鉄損低減の為には渦電流損の低減が特に重要となってくる。
この様な背景から、圧粉磁芯の渦電流損を低減する様々な取り組みが試みられている。
圧粉磁芯の渦電流損は、さらに粒子内を流れる粒内渦電流損と、粒子間を流れる粒子間渦電流損に分離される。
ここで、粒子間を流れる粒子間渦電流損の低減方法としては、粒子表面へ絶縁被覆を施す手法がすでに知られているが、絶縁被覆の種類は、特許文献1に示されるようにリン酸を用いたものや、特許文献2に示されるようにシリコーン樹脂を用いたもの、更には特許文献3に示されるようなリン酸とシリコーン樹脂を組み合わせた被覆などがある。
このように、粒子間渦電流損を低減する技術については、種々の技術が提案されており、粒子間渦電流損の十分な低減が可能となっている。
これに対して、粒内渦電流損については、渦電流損低減のための十分な技術が提案されているとは言い難い。
例えば、非特許文献1では、鉄粒子にSiを添加し、高合金化することで粒子内の電気抵抗が上昇して、渦電流損が低減されるとしている。
また、特許文献4では、純鉄粉に対してSiCl4を用いたCVD法によってSiを表層に濃化し、渦電流損を低減する技術が開示されている。これらの技術は、Siの表層濃化による磁束の粉末表層への集中を利用して、粒内渦電流損の低減を試みている。
さらに、特許文献5では、軟磁性粉末の表層に、Siを濃化させる過程で残留したSiO2の微粒子を鉄粉表面に拡散付着させることで、電気抵抗が高く、渦電流損が低い圧粉磁芯を得る技術が開示されている。
上記技術は、Siの表層濃化による磁束の粉末表層への集中を利用した粒子内の渦電流損低減と、残留SiO2による粒子間渦電流損低減の2つを組み合わせたものである。
また、Fe-Si合金への浸珪による傾斜分布技術としては、特許文献6が開示されている。この技術はSiCl4によるCVD法で浸珪を行なっているが、浸珪熱処理温度を低温化することでSiの拡散を抑制し、Fe-Si合金における表層へのSi濃化に成功している。
特表2010−511791号公報 特開2013−187480号公報 特開2008−63651号公報 特開2008−297606号公報 特開2011−146604号公報 特開平11−87123号公報
電気製鋼_第82巻1号 pp.57
しかしながら、非特許文献1に記載されたSiの多量添加は、素材の飽和磁化の低下や、粉末の硬化による成形時の圧縮性低下を招くが、圧縮性の低下は、さらに成形体密度の低下による磁芯の飽和磁化の低下を招く。
加えて、粉末を実用材に用いるには、磁芯としたときの飽和磁化が1.8T以上必要であり、そのためには素材となる軟磁性粉末の飽和磁気モーメントが180emu/g以上必要である。このような制約から、現状、FeへのSi添加による渦電流損低減は、3mass%程度のSi添加による効果を得るに留まっている。
また、特許文献4に記載された技術は、純鉄粉へのSi濃化技術であるが、ベースの電気抵抗がFe-Si合金ほど高くないため、Si表層濃化による渦電流損低減の効果を十分には得られていない。加えて、特許文献4に記載された技術でFe-Si合金へのSi表層濃化を行なおうとした場合には、Siによって浸珪温度域でα相が安定化されているために、Siの拡散が極めて速くなっていて、表層への的確なSi濃化は極めて困難である。
特許文献5に記載された技術もまた、特許文献4と同様に、ベース粉末へSiを添加すると浸珪温度域でα相が安定化するので、Siの拡散が極めて速くなり、表層へのSi濃化は極めて困難である。
さらに、特許文献6に記載されたCVD処理温度の低温化は、反応時に生成したCl2の軟磁性粉末中への残留を引き起こすが、Cl2の残留はヒステリシス損の大幅な増加を招いてしまう。このため、粒子表層にSiが濃化したFe-Si合金粉末を用いることで粒内渦電流損を低減することができるものの、ヒステリシス損の大幅な増加を招き、結局のところ、高周波鉄損を増加させてしまうと考えられる。
従って、従来技術ではいずれも、高まる高周波鉄損低減に対する要求に応えるのは困難である。
本発明は、上記の従来技術の課題を解消して、高周波鉄損、特に渦電流損の低い圧粉磁芯が得られる圧粉磁芯用軟磁性粉末とその原料粉末を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決するために、圧粉磁芯の渦電流損につき鋭意検討を重ねた。その結果、軟磁性粉末中のSi拡散は、母相の鉄がα相である場合とγ相である場合で大きく異なっていて、γ相中をSiが拡散するスピードは、α相中を拡散するスピードに比べて極めて遅いこと、ベースとなる鉄粉の組成をSiが粒子表層濃化する熱処理を行う際に、γ相が安定となるように調整することで、中心のSi量を高めても、粒子表層のSi量が粒子中心層のSi量よりも高Si量となるように、Siを粒子表層に濃化させることが可能であること、さらには、粒子中心層のSi量を増加させることで、Siが粒子表層に濃化した鉄粉としたときの渦電流損が効果的に低減することをそれぞれ見出した。
本発明は上記知見を基に得られたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.γ安定化元素、Si:1.0〜6.5mass%、およびC:1.0〜2.0mass%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする軟磁性粉末用の原料粉末。
2.前記γ安定化元素が、Ni:1.5〜20.0mass%、およびMn:3.0〜8.0mass%のうちから選ばれる1種または2種であることを特徴とする前記1に記載の軟磁性粉末用の原料粉末。
3.見掛密度が3.0Mg/m3以上であることを特徴とする前記1または2に記載の軟磁性粉末用の原料粉末。
4.γ安定化元素およびSi:1.0〜6.7mass%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに粉末の粒子表層のSi濃度が粉末の粒子中心層のSi濃度よりも0.5mass%以上高いことを特徴とする圧粉磁芯用軟磁性粉末。
5.Ni:1.5〜20.0mass%およびMn:3.0〜8.0mass%のうちから選ばれる1種または2種、およびSi:1.0〜6.7mass%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに粉末の粒子表層のSi濃度が粉末の粒子中心層のSi濃度よりも0.5mass%以上高いことを特徴とする圧粉磁芯用軟磁性粉末。
6.見掛密度が3.0Mg/m3以上であることを特徴とする前記4または5に記載の圧粉磁芯用軟磁性粉末。
7.前記4〜6のいずれかに記載の圧粉磁芯用軟磁性粉末の製造方法であって、前記1〜3のいずれかに記載の原料粉末に、珪素酸化物粉末を混合して混合粉末とし、該混合粉末を、200Pa以下の減圧中、1050℃以上の温度で加熱し、原料粉末中のCで珪素酸化物粉末を還元し、還元により生じたSiを、上記原料粉末中へ浸透拡散させることで原料粉末の粒子表層へ濃化させることを特徴とする圧粉磁芯用軟磁性粉末の製造方法。
本発明によれば、渦電流損の低い圧粉磁芯用軟磁性粉末が得られる原料粉末および圧粉磁芯用軟磁性粉末を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に用いる圧粉磁芯用軟磁性粉末の原料粉末(以下、単に、原料粉末とも称する)は、アトマイズ法を用いて製造することが好ましい。その理由は、酸化物還元法、電解析出法によって得られる粉末は、粒子が不定形であり、たとえ本発明の要件を満たして、粒内渦電流損を低減していたとしても、その不定形な形状に起因する成形時の粒子同士の接触が粒子間渦電流損の増加を招き易いためである。
具体的には、JIS Z 2504に準拠して測定したときの原料粉末の見掛密度が好ましくは3.0Mg/m3以上、さらに好ましくは3.5Mg/m3以上であるのが良い。無論、粒子形状が球状に近い粉末が得られるものであれば、アトマイズ法以外の方法であっても構わない。また、工業的に得られる見掛密度の上限は5.0Mg/m3である。
アトマイズ法であれば、ガスや、水、ガス+水、遠心法など、その種類は問わないが、実用面を考えると安価な水アトマイズ法、もしくは水アトマイズ法よりは高価であるものの、比較的大量に生産が可能なガスアトマイズ法を用いるのが好ましい。
原料粉末の比表面積はBET値で、好ましくは70m2/kg以下が良い。比表面積が70m2/kg超の場合、その不定形な形状に起因する成形時の粒子同士の接触が粒子間渦電流損の増加を招き易いためである。
なお、原料粉末の比表面積の下限値に特に制限はないが、10m2/kg程度であるのが良い。
以下、代表例として、水アトマイズ法を適用した場合の原料粉末を用いた圧粉磁芯用軟磁性粉末(以下、単に、軟磁性粉末または粉末と称する)の製造方法について述べる。
まず、アトマイズを行なう溶鋼の組成は、鉄を主成分として、Ni、Mn、Cu、およびNなどのγ相安定化元素と、電気抵抗を向上させる元素、さらには、後工程でSiを浸透拡散させる為に必要なCが添加されている必要がある。この溶鋼を、水アトマイズすることで、本発明に従う原料粉末が得られる。ここで主成分とは、粉末中、鉄を78mass%以上含有することを意味する。
さらに、γ相安定化元素としてNiまたはMnを、電気抵抗を上げる元素としてSiを選択した場合の、それぞれに好適な範囲を説明する。
[Ni、またはMn]
原料粉末から軟磁性粉末を得るためには、加熱処理で電気抵抗を上げる元素を粉末の粒子表層(以下、単に表層とも称する)へ浸透拡散させる必要がある。
その際、粉末の結晶構造が、電気抵抗を上げる元素の拡散しやすいα相であると、加熱処理中に元素が粉末の粒子中心層(以下、単に中心層とも称する)まで拡散してしまい、粉末の表層と中心層が均一な濃度となってしまう。
本発明では、これを防ぐために、γ相安定化元素であるNiまたはMnを適量添加して加熱処理中にγ相を安定化させる必要があるが、その添加量は、Niの場合は1.5mass%以上20.0mass%以下で、Mnの場合は3.0mass%以上8.0mass%以下である。いずれの元素においても、前記範囲を下回るとγ相が安定化せず、熱処理中に均一なα相となってしまう一方で、前記範囲を上回ると飽和磁束密度が低下してしまうからである。
[Si]
Siは、粉末の中心層の電気抵抗を向上させて渦電流損を低減させるために少なくとも1.0mass%以上含有させることが必要であり、好ましくは1.4mass%以上である。一方、6.5mass%を超えると、ヒステリシス損に悪影響を及ぼし、圧縮性も著しく低下するため、Siの添加量の上限は6.5mass%である。
[C]
Cは、後工程の熱処理中に珪素酸化物を還元し、Siを浸透拡散させるために必要で、1.0mass%以上含有させる必要がある。一方、含有量が2.0mass%を超えると熱処理中の焼結が進行して、熱処理後の解砕の負荷が大きくなるうえに、未反応のCが鋼中に残留しやすくなる。よって、Cの含有量は1.0〜2.0mass%である。
上記の原料粉末を用いて得られる軟磁性粉末に対して、粉末の表層から電気抵抗を上げる元素を浸透拡散させることによって、電気抵抗を上げる元素の濃度が中心層よりも表層で高くなる。ここで、本発明において、表層とは、粉末の粒子の断面の直径(粉末の粒径と同じ値となる)をD(μm)とすると、粒子表面から0.2D(μm)中に入った部分までの領域のことをいい、中心層とはそれよりも粒子の中心部分をいう。
粒内渦電流損は、粉末内部を渦電流が流れることにより発生する損失であり、粉末全体の電気抵抗が均一である場合、渦電流が流れる経路が長くなる粉末表層の方が、渦電流損は大きくなる。
しかしながら、上記の様な元素を添加して組織を造りこみ、表層の電気抵抗を上げることで、渦電流が流れる経路が長い粉末表層の電気抵抗が上昇し、中心層に比べて損失の大きい粉末表層での電流が大幅に低減することで、結果として粒内渦電流損が低下する。このような効果を得るためには、表層と中心層とのSi濃度差は0.5mass%以上が必要で、好ましくは1.0mass%以上とするのがよい。なお、上記Si濃度差の上限値に特に制限はないが、工業上6.0mass%程度である。
上記のような組織を造りこむ方法として、本発明では、鋼中のCを用いて粉末の表層もしくは粉末に接している酸化物を還元する固相拡散によって浸透拡散させる手法を用いる。
以下に、上記浸透拡散させる手法について説明する。
まずは上記の手順で得られた原料粉末と珪素酸化物の微粒子を混合する。混合する珪素酸化物微粒子の粒子径は細かい方がよく、少なくとも平均粒子径が1μm以下とするのが良い。珪素酸化物の添加量は、C量によって決まり、以下の式(1)で与えられる。
Figure 0006504027
なお、珪素酸化物の添加量は、上掲式(1)で与えられる量より多くて良い。しかしながら、混合粉末のハンドリング等を考慮すると、工業的には、珪素酸化物の添加量の上限は、式(1)で与えられる量+0.01程度(+1mass%程度)であることが好ましい。
例えば、鉄粉質量:1kg、鉄粉中のC含有率:1mass%(=0.01)、C原子量:12、酸化物がSiO2(分子量:60、酸素原子数:2)の場合、適正な添加量は35g、すなわち鉄粉質量:1000gに対して3.5mass%(=35/1000)添加するのが適正な珪素酸化物の添加量となる。この場合、珪素酸化物の添加量の上限は、4.5mass%であることが好ましい。
次に、混合物の熱処理を行い、珪素酸化物を鋼中のCで還元、Siを鋼中へ浸透拡散させる。この反応は、酸素分圧が低い条件でなければ起こらないため、雰囲気圧力を200Pa以下とした減圧雰囲気中で実施する。
また、熱処理温度は1050℃以上1400℃以下で実施するのが好ましい。熱処理温度が1050℃を下回ると、前記還元反応が起こらなくなり、Siを鋼中に拡散させることができない。また、鋼中にCが残留するため、鉄損の増加を招くおそれがある。一方、熱処理温度が1400℃を超えると、熱処理中の焼結が進むため、後工程での解砕が困難になるからである。なお、熱処理時間については特に指定はないが、反応を十分に進めるためには30〜180min程度実施するのが良い。
なお、軟磁性粉末の成分は、原料粉末と比べてSi以外に変動はなく、Siについても、最大で0.2mass%程度増加するだけである。従って、軟磁性粉末のSi量の範囲は、最大で1.0〜6.7mass%であり、好ましくは1.2〜6.7mass%である。また、軟磁性粉末の見掛密度および比表面積(BET値)は、熱処理条件にもよるが、軟磁性粉末の方が原料粉末よりも僅かに見掛密度が減少し、比表面積が増加する傾向にある。
さらに、前記した軟磁性粉末は絶縁被覆を施して成形することにより圧粉磁芯となる。
粉末に施す絶縁被覆は、粒子間の絶縁性を保てるものであれば公知公用のものが使用できる。その様な絶縁被覆としては、例えば、シリコーン樹脂、リン酸金属塩やホウ酸金属塩をベースとしたガラス質の絶縁性アモルファス層や、MgO、フォルステライト、タルクおよびAl2O3などの金属酸化物、あるいはSiO2をベースとした結晶質の絶縁層などがある。
粉末を加圧成形する際には、必要に応じて、潤滑材を金型壁面に塗布するかあるいは粉末に添加することができる。これにより、加圧成形時に金型と粉末との間の摩擦を低減することができるので、成形体密度の低下を抑制するとともに、金型から抜出す際の摩擦も併せて低減することができ、金型から抜出す際の成形体(圧粉磁芯)の割れを効果的に防止することができる。なお、好ましい潤滑材としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸、脂肪酸アミド等のワックスが挙げられる。
かくして成形された圧粉磁芯は、加圧成形後に、歪取りによるヒステリシス損の低減や成形体強度の増加を目的とした熱処理を行なう。この熱処理の均熱温度は500〜800℃、熱処理時間は5〜120分程度とすることが好ましい。なお、加熱雰囲気としては、大気中、不活性雰囲気中、還元雰囲気中あるいは真空中が考えられるが、いずれを採用してもなんら問題はない。また、雰囲気露点は、用途に応じ適宜決定すればよい。さらに、熱処理中の昇温、あるいは降温時に一定の温度で保持する段階を設けても良い。すなわち、上記した以外の圧粉磁芯を得るための方法は、公知のものが適用できる。
原料記号:1−1〜1−4および2〜11の14種類の組成の原料粉末(鉄粉)を用いた。原料粉末に添加した元素および原料粉末の見掛密度等を表1に示す。これら原料記号:1−1〜1−4および2〜11の鉄粉に対して、珪素酸化物(SiO2)微粒子を混合した。
珪素酸化物微粒子は平均一次粒子径:50nmのものを用い、珪素酸化物の添加量については、Cを1.0mass%含有するものに対しては鉄粉に対して3.5mass%、Cを1.5mass%含有するものに対しては鉄粉に対して4.75mass%、Cを1.8mass%含有するものに対しては鉄粉に対して5.5mass%、Cを2.0mass%含有するものに対しては鉄粉に対して6.0mass%、それぞれ添加した。
Figure 0006504027
上記添加後、混合を、容積:2LのV型混合機で、15min行った。その後、熱処理中の最大圧力が180Paの減圧雰囲気中での熱処理を実施した。
浸透拡散処理の条件を表2に示す。なお、原料記号:1-1についてはA、BおよびCの3条件、それ以外についてはB、Cの2条件で熱処理を行った。
Figure 0006504027
浸透拡散処理を行った粉末を熱可塑性の樹脂に埋め込み断面研磨を行なった後に、直径が100μm程度の粉末を選び、その粉末の断面の中心を横切るようにEPMAによるラインマッピングを行なった。
その後、粉末の粒子表面から0.2Dまでの深さの平均Si濃度と、中心層の平均Si濃度を算出した。
また、粉末の見掛密度はJIS Z 2504記載の方法で測定した。
算出したSi濃度、および見掛密度測定結果を、熱処理条件等と併せて表3に示す。
Figure 0006504027
原料記号:1−1を熱処理条件Aで熱処理したもの(試験No.1)は、熱処理前とSi量が変化しておらず、反応が全く進行していなかった。また、原料記号:4を熱処理条件Bで熱処理したもの(試験No.8)は、焼結が進み、解砕が困難となって、見掛密度が大幅に低下していた。
また、熱処理条件Cで熱処理を行なった試料は全て焼結が進み、解砕が困難となっていたため、Si濃度及び飽和磁気モーメントの測定は行わなかった。
原料記号:9を熱処理条件Bで熱処理したもの(試験No.13)は、γ安定化元素を含有していないため、Siの浸透拡散は進むがSi濃度が均一となっていた。それ以外のものについては、Siが表層に濃化した組織となっていた。
かくして得られた粉末と、比較材として上記熱処理を行わない原料記号:11のFe-3mass%Si粉とに対して、シリコーン樹脂による絶縁被覆をそれぞれ施した。シリコーン樹脂は、トルエンに溶解させて、樹脂分が1.0mass%となるような樹脂希釈溶液を作製し、ついで、粉末に対する樹脂添加率が0.5mass%となるように、粉末と樹脂希釈溶液とを混合し、大気中で乾燥させた。乾燥後に、大気中で、200℃、120分の樹脂焼付け処理を行うことにより被覆鉄粉を得た。
さらに、成形圧:15t/cm2(1.47GN/m2)で、金型潤滑を用いて外形:38mm、内径:25mm、高さ:6mmのリング状試験片を作製した。
かかる手順で作製した試験片に、窒素中で750℃、30分の熱処理を行い、圧粉磁芯とした。その後、巻線を行い(1次巻:100ターン、二次巻:40ターン)、直流磁化装置によるヒステリシス損測定(0.2T、メトロン技研製 直流磁化測定装置)と鉄損測定装置による鉄損測定(0.2T、20kHz、メトロン技研製 高周波鉄損測定装置)を行なった。得られた鉄損とヒステリシス損の差分から渦電流損を求めた。
渦電流損の測定結果を表4に示す。なお、渦電流損の合否判定は、400kW/m3以下のものを◎(合格)、400kW/m3超500kW/m3以下のものを○(合格)、500kW/m3超のものを×(不合格)とした。
また、同様の試料を用いて、高磁場での磁束密度測定を行った。高磁場測定は、上記の直流磁化測定装置を用いて、1次巻数を1050ターンに増やすことで行なった。また、磁束密度は磁場が50000A/mのときの値とした。
Figure 0006504027
同表より、本発明を満足する発明例は合格基準である500kW/m3以下をいずれも満たしていることが分かる。特に、軟磁性粉末用の原料粉末の見掛密度および軟磁性粉末の見掛密度がいずれも3.0Mg/m3以上である発明例は、渦電流損が400kW/m3以下となっており、極めて低い渦電流損となっていることが分かる。
また、磁束密度に着目すると、全ての発明例が、比較例の中のFe-3mass%Siをベースとする試験No.30よりも、高い磁束密度を有していることが分かった。

Claims (5)

  1. γ安定化元素、Si:1.0〜6.5mass%、およびC:1.0〜2.0mass%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、前記γ安定化元素が、Ni:1.5〜20.0mass%、およびMn:3.0〜8.0mass%のうちから選ばれる1種または2種であることを特徴とする軟磁性粉末用の原料粉末。
  2. 見掛密度が3.0Mg/m3以上であることを特徴とする請求項に記載の軟磁性粉末用の原料粉末。
  3. Ni:1.5〜20.0mass%およびMn:3.0〜8.0mass%のうちから選ばれる1種または2種、およびSi:1.0〜6.7mass%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに粉末の粒子表層のSi濃度が粉末の粒子中心層のSi濃度よりも0.5mass%以上高いことを特徴とする圧粉磁芯用軟磁性粉末。
  4. 見掛密度が3.0Mg/m3以上であることを特徴とする請求項に記載の圧粉磁芯用軟磁性粉末。
  5. 請求項3または4に記載の圧粉磁芯用軟磁性粉末の製造方法であって、請求項1または2に記載の原料粉末に、珪素酸化物粉末を混合して混合粉末とし、該混合粉末を、200Pa以下の減圧中、1050℃以上の温度で加熱し、原料粉末中のCで珪素酸化物粉末を還元し、還元により生じたSiを、上記原料粉末中へ浸透拡散させることで原料粉末の粒子表層へ濃化させることを特徴とする圧粉磁芯用軟磁性粉末の製造方法。

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