JP2013045991A - 圧粉軟磁性体、その製造方法及びモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】鉄損の増加を抑制し、曲げ強度の高い圧粉軟磁性体及びその製造方法を提供し、またその圧粉軟磁性体を用いたモータを提供すること。
【課題を解決する手段】鉄粉又は鉄を主成分とする鉄合金粉の圧粉軟磁性体の表面部にて、個々の鉄粉表面に鉄を主体とする酸化相が形成され、かつ鉄粉界面に鉄酸化相及び無機絶縁物を含む、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層が形成され、前記酸化影響層の内部の圧粉軟磁性体は非酸化状態である組織を有することを特徴とする圧粉軟磁性体、その製造方及び上記圧粉軟磁性体を用いたモータ。
【選択図】図1
【課題を解決する手段】鉄粉又は鉄を主成分とする鉄合金粉の圧粉軟磁性体の表面部にて、個々の鉄粉表面に鉄を主体とする酸化相が形成され、かつ鉄粉界面に鉄酸化相及び無機絶縁物を含む、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層が形成され、前記酸化影響層の内部の圧粉軟磁性体は非酸化状態である組織を有することを特徴とする圧粉軟磁性体、その製造方及び上記圧粉軟磁性体を用いたモータ。
【選択図】図1
Description
本発明は、圧粉軟磁性体、その製造方法及び前記圧粉軟磁性体を用いたモータに関する。
軟磁性粉末を高圧下で圧縮成形することにより製造する圧粉軟磁性体は、モータや電源回路用リアクトル等の磁心に利用されている。圧粉の磁心は、一般に磁気特性が等方的で且つ3次元形状への成形が容易であり、例えば珪素鋼板を積層して製造する積層型磁心に比べて、モータ等の電動機に適用した場合その小型化、軽量化に寄与すると期待されている。特に軟磁性粉末としてFe粉末を使った圧粉軟磁性体は、安価であると共に、Fe粉の延性が高いため高密度となり磁束密度が増加する長所があるため、近年実用化に向けての開発が活発化している。
圧粉軟磁性体に必要な特性として磁束密度が高いことに加えて、鉄損と呼ばれる交流磁場下での使用時に生じるエネルギー損失が低いことが重要である。鉄損は主として渦電流損失とヒステリシス損失の和で表される。渦電流損失は、圧粉軟磁性体を構成するFe粉末粒子間を流れる渦電流により生じるエネルギー損失である。渦電流損失を低下する工夫として、磁性体用のFe粉末の表面に薄い絶縁皮膜をコーティングすることが必要となる。
一方ヒステリシス損失は、Fe粉末内部の磁壁の移動に伴い発生する損失であり、Fe粉末内部の格子歪、すなわちそれを発生させる構造欠陥である空孔や格子間原子(所謂、点欠陥)、転位及び粒界等の格子欠陥、また化学欠陥であるFe以外の不純物原子やそれらで構成される析出物の存在に強く影響される。ヒステリシス損失の低下には、Fe粉末の圧縮成形後の成形体に熱処理を行い、成形加工で導入されたFe粉末内部の歪を低減する必要がある。
また圧粉軟磁性体の欠点として、圧粉成形のみで形状を決定するため、鉄心としての抗折強度が著しく低い問題がある。圧粉軟磁性体を用いてモータを構成する場合、圧粉軟磁性体の抗折強度は10〜30MPaと電磁鋼板等の鉄叛より著しく低く、衝撃にも弱い。そこで、少なくともモータとして製造される時のハンドリングの荷重、モータとして動作する場合の固定子と回転子の間で生じるトルク反力、および外部からの衝撃、振動などに耐えられる強度対策が必要とされる。
圧粉軟磁性体の強度を向上する方法として、鉄心を樹脂で埋め込んで使用する方法(特許文献1:特開2008−029142号公報)や、金属磁性粉末の粒径やその粉末の絶縁コーティング材を工夫することによる強度向上方法(特許文献2:特開2007−129045号公報)が開示されている。
圧粉軟磁性体の強度向上のもう一つの方法として、圧粉成形後に水蒸気や大気雰囲気等の酸化雰囲気中における熱処理を行う方法がある。例えば特許文献3:特表2008−544520A号公報において、絶縁性無機材による被覆後に有機潤滑剤を混合した鉄粉末を圧粉成型し、これを300〜600℃の温度で、水蒸気中で熱処理する事例が示されている。ここでは圧粉成型後の磁性体に520℃の水蒸気中の熱処理を実施することで、抗折強度が100MPa以上の圧粉軟磁性体として比較的高強度、低鉄損の優れた特性の材料が得られた結果が報告されている。特許文献3によると、水蒸気中の熱処理による圧粉軟磁性体の強度向上の理由として、鉄粉表面に酸化による皮膜が形成され、酸化皮膜を媒介として鉄粉間の結合力が増加するため、と説明されている。
特許文献3においては、個々の鉄粉は無機絶縁被覆で被覆された圧粉成形体の表面に酸化層(クラスタ)が形成され、その内部は非酸化鉄又は鉄基合金の芯であると記載されているが、その酸化層が鉄粉の粒界に充填されてできる酸化影響層の厚さがどのようになっているかについての記載はない。
これらの圧粉軟磁性体の強度を向上する従来技術にはいずれも課題がある。圧粉軟磁性体を樹脂で埋め込む場合は、モータとしての質量が増加する、製造工程が複雑になる等の課題がある。また、水蒸気や大気雰囲気等の酸化雰囲気中における圧粉体の熱処理では、酸化皮膜の成長により鉄損が増大する課題がある。本発明者等は、絶縁性無機被覆を施した鉄粉末に0.4%の潤滑剤を混合、成形した圧粉軟磁性体に対し、300℃以上の高温での大気、水蒸気等の酸化雰囲気にて60分以上の熱処理を行った場合、磁束密度1T、周波数400Hz の交流磁場中における圧粉軟磁性体の鉄損W10/400の値は、不活性雰囲気の窒素ガス中熱処理と比較して20%以上増加する結果が多く得られた。
酸化雰囲気中で熱処理する場合の鉄損の増加は、圧粉軟磁性体の表面部から酸素が鉄粉界面を通じて圧粉体内部に拡散し、鉄粉と酸化反応することで鉄末表面の絶縁皮膜を破壊して渦電流損失を増加する、鉄粉内部へ酸素が拡散し不純物となり磁壁移動を阻害してヒステリシス損失を増加する、等の現象が生じるためと考えられる。
従って本発明の目的は、鉄損の増加を抑制し、曲げ強度の高い圧粉軟磁性体及びその製造方法を提供し、またその圧粉軟磁性体を用いたモータを提供することである。
本発明は、鉄粉又は鉄を主成分とする鉄合金粉(以下、単に鉄粉と称することがある)の圧粉軟磁性体の表面部に、個々の鉄粉表面に酸化相が形成され、かつ鉄粉粒界に酸化相及び無機絶縁物を含む、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層が充填され、前記酸化影響層の内部の圧粉軟磁性体は非酸化状態である組織を有することを特徴とする圧粉軟磁性体に関する。
本発明によれば、圧粉軟磁性体の鉄損の増加を防ぐと共に、モータ部品としての製造、使用時に必要な強度を有する圧粉軟磁性体を提供することができる。
本発明により以下の実施態様が開示される。
(1)鉄を主成分とする圧粉軟磁性体であって、個々の鉄粉表面に鉄を主体とする酸化相及び有機物層、特に潤滑剤層が形成され、鉄粉同士の境界の隙間に前記酸化相が充填された酸化影響層が該圧粉軟磁性体の表面部において形成され、前記圧粉軟磁性体の内部は非酸化状態が保たれた組織を有し、上記酸化影響層の厚さは0.4〜1.4mmであることを特徴とする。れにより、鉄損が低く、曲げ強度の大きい圧粉軟磁性体が得られる。
非酸化状態ではあっても、圧粉軟磁性体の表面からわずかに酸素が内部に侵入することがあり得るので、内部領域が常に完全に非酸化状態であることを意味するものではない。発明の目的を損なわない範囲において、内部の鉄粉がわずかに酸化することは許される。本発明で用いる鉄又は鉄基合金の粉末の平均粒径は70〜300μm、特に100〜250μmが好ましい。
また、圧粉成形体を製造する際に、無機絶縁処理された粉末成形体原料重量の0.05〜2wt%の潤滑剤を添加する。この潤滑剤として、本発明の属する技術分野でよく知られた潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛などの他、たとえば特許文献3に記載の物質を用いることができる。この潤滑剤は、圧粉成形体を形成したときに、圧粉成形体内の粉末の界面に有機物相として存在するが、成形体の熱処理によって、炭化し界面に残留する。この状態が図3に示されている。また、図2において、酸化相は鉄が酸化して形成されるFe3O4が主成分で、鉄粉の絶縁処理に用いた無機絶縁膜(リン酸ガラスなど)は熱処理の際に凝集して、界面に粒状又は塊状で存在し、鉄粉の表面に無機絶縁膜としてはほとんど存在しなくなる。
圧粉軟磁性体内部の非酸化状態の組織において、個々の鉄粉表面には絶縁被膜が存在し、鉄粉界面には有機物層たとえば潤滑剤層が存在することを特徴とする圧粉軟磁性体である。
本発明は、圧粉成形後に大気、水蒸気あるいは20%以下の酸素を含む不活性ガスなどの酸化性雰囲気において、450〜550℃で熱処理を行うことを特徴とする圧粉軟磁性体の製造方法を提供する。圧粉軟磁性体を熱処理する際の最高温度での保持時間を除く昇温、冷却の過程において、圧粉軟磁性体が300℃以上の高温に置かれる時間が120min以下とすることが望ましい。
本発明の方法によれば、圧粉軟磁性体を酸化雰囲気中で熱処理する際の、鉄粉表面に生じる酸化相の成長及び圧粉軟磁性体内部への酸化進行を適切に制御することができる。
(2)上記圧粉軟磁性体において、前記圧粉軟磁性体内部の非酸化状態の組織において、個々の鉄粉表面に絶縁被膜が存在し、かつ鉄粉界面には潤滑剤の有機物層が存在する。
(3)上記圧粉軟磁性体において、その鉄損の値が43W/kg以下であり、実用的な特性である。
(4)鉄を主成分とする粉末の表面に無機絶縁層と有機物層を形成し、これを圧縮成形し、得られた圧縮成形体を酸化雰囲気中で加熱して、前記圧縮成形体の表面領域の粉末の表面に鉄を主体とする酸化相を形成し、これにより鉄粉同士の境界の隙間に前記酸化相が充填された、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層が該圧粉軟磁性体の表面部に形成され、かつ前記圧粉軟磁性体の内部は非酸化状態が保たれた組織を形成する圧粉軟磁性体の製造方法。
(5)圧粉軟磁性体の製造方法において、前記加熱の雰囲気は大気、水蒸気あるいは20%以下の酸素を含有する不活性ガスであって、加熱温度は450〜550℃である。
(6)上記圧粉軟磁性体の製造方法において、前記圧粉軟磁性体を熱処理する際の最高温度での保持時間を除く昇温、冷却の過程において、300℃以上の高温に置かれる時間が120min以下である。圧粉軟磁性体が過剰に長い時間高温にさらされると、鉄損が増加する。
(7)鉄を主成分とする圧粉軟磁性体であって、個々の鉄粉表面に鉄を主体とする酸化相が形成され、鉄粉同士の境界の隙間に前記酸化相が充填された、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層が該圧粉軟磁性体の表面部において形成され、前記圧粉軟磁性体の内部は非酸化状態が保たれた組織を有する圧粉軟磁性体をステータコアとするモータ。
本発明の圧粉軟磁性体の特徴は、圧粉成形後に酸化雰囲気において適切な温度条件下で適切な時間熱処理を実施することにより、圧粉軟磁性体の表面近傍部に適切な厚さ(0.4〜1.4mm)の酸化影響層の酸化影響層及びその内部に非酸化部を形成することにある。本発明で定義する酸化影響層とは、圧粉軟磁性体を構成する個々の鉄粉表面にFe3O4を主体とする鉄を主体とする酸化物層が形成され、鉄粉同士の境界、即ち鉄粉界面の隙間を鉄を主体とする酸化相が充填した状態の組織を意味する。
図1には本発明による圧粉軟磁性体4の断面構造を示し、図2及び図2には、圧粉磁性体の断面ミクロ構造を示した。図1において、圧粉成形体の表面1から或る深さの酸化影響層2が形成され、その内部には酸化されていない非酸化部3が形成される。
図2は鉄粉粒子の界面に酸化影響層即ち酸化相を含む層が形成されている状態を示し、図3は鉄粒子の界面に無機絶縁層10と有機炭化物層11が形成されていることを示す。なお、絶縁層10は無機絶縁物(リン酸ガラス)と鉄が反応してできた物で、さらに潤滑剤(ステアリン酸亜鉛)の亜鉛が含まれることがある。図2は図1に示す酸化影響層における組織を示し、図3は非酸化部の組織を示す。
この鉄を主体とする酸化相は、成形前の鉄粉個々の表面に被覆した絶縁皮膜とは異なり、圧粉成形後の酸化雰囲気中の熱処理の過程で、絶縁皮膜の下部にある純鉄の部分が酸化して、絶縁皮膜の隙間や局所的な欠陥等の箇所から鉄粉表面に成長、拡大することで形成される。
鉄粉間の界面を、鉄を主体とする酸化相が充填する結果、その酸化相がバインダの役割を果たすことで鉄粉同士の結合力を強化して、圧粉軟磁性体の強度は増加する。また圧粉軟磁性体に外力を加えた場合、圧粉体表面の鉄粉界面から亀裂が生じて、鉄粉界面を通じて圧粉体内部に亀裂が伝播し、破壊に至ると考えられるが、鉄粉界面が酸化相で充填されている場合は、亀裂の発生と圧粉軟磁性体内部への亀裂の伝播が抑制され、強度を高める効果もある。
一方で酸化影響層が形成された際の課題として、Fe3O4を主体とする酸化相の成長により、初期の鉄粉表面を覆っていた絶縁皮膜の大部分が剥離、脱落し、絶縁性が低下することで渦電流損失が増加する、あるいは鉄粉内部に酸素が拡散してヒステリシス損失が増加する、等の鉄損の増加が生じる。熱処理による酸化の影響が圧粉軟磁性体内部のすべてに及ぶと、圧粉軟磁性体の強度は最大となるが、鉄損の増加も最大となり磁気特性が低下し好ましくない。
熱処理後の圧粉軟磁性体の鉄損を低く保つには、酸化影響層を圧粉体の表面近傍に限定し、圧粉体の内部は非酸化の状態を保てばよい。本発明における非酸化の状態とは圧粉軟磁性体を構成する個々の鉄粉表面における、酸化雰囲気中熱処理時に形成されるFe3O4等の鉄を主体とする酸化相が存在しない、あるいは酸化相の厚みが0.5μm未満と非常に薄いことにより、鉄粉界面内部をFe3O4等の鉄を主体とする酸化相が充填してない状態を意味する。
図3に鉄粉の界面に形成された非酸化部のミクロ断面構造を示す。非酸化部における鉄粉表面には絶縁被膜が健全な形で残っている。例えばリン酸ガラス系の絶縁材料を用いた場合には、非酸化部における鉄粉表面にはFe−P複合酸化物の形で絶縁層が存在する。また鉄粉界面には、成形前に添加する潤滑剤が加熱変化して形成される有機炭化物層が存在する。このような組織的特徴により、非酸化部においては渦電流損失が低下して優れた磁気特性を発揮する。
非酸化の領域(非酸化部)の鉄粉界面は酸化皮膜によるバインダ効果が期待できないため、圧粉軟磁性体の強度は酸化影響層に比べて低い。本発明では圧粉軟磁性体の表面部のみに強度の高い酸化影響層を形成することにより、圧粉軟磁性体に外力が加わった際に強度の低い非酸化部までの亀裂伝播を抑制し、強度低下を最小限に留めることが出来る。本発明では、強度は高いが鉄損が大きく磁気特性に劣る表面部の酸化影響層と、強度は低いが低鉄損で磁気特性に優れる磁性体内部の非酸化領域の体積比率を最適に制御することで、高強度且つ優れた磁気特性を兼ね備えた圧粉軟磁性体の提供が可能となる。
圧粉軟磁性体における酸化影響層の最適厚さについて以下に説明する。酸化影響層の厚さは、圧粉軟磁性体の鉄損値、及び強度に密接に関係することが本発明者の検討により明らかになった。酸化影響層は圧粉軟磁性体の表面から内部に向かって形成され、その適切な厚さは、0.4〜1.4mmの範囲にあることが分かった。その具体的なデータについては追って説明する。
本発明者の実験によれば、酸化影響層の厚さが0.4mm未満であると、熱処理時間が短いことが推測され、ひずみ回復が不十分となり鉄損増加を招くことから好ましくない。また、酸化影響層の厚さが1.4mmを越えると、圧粉軟磁性体の体積に占める非酸化領域の比率が小さくなる。この場合は圧粉軟磁性体の鉄損が増加して磁気特性が低下することから好ましくない。
圧粉軟磁性体をモータコアに適用する際には、断面が円形、矩形などの単純なリング形状ではなく、爪などの突起を有する三次元複雑形状を有する場合がある。複雑形状の圧粉軟磁性体では形状の違いにより、圧粉軟磁性体における酸化物影響層の厚みに差が生じる場合がある。
本発明において、圧粉軟磁性体表面部の酸化影響層の厚さは、磁性体断面のミクロ組織観察による。圧粉軟磁性体の任意の箇所を切断し、断面部を樹脂埋込み、研磨を実施後に断面組織をEDS(エネルギー分散X線分光)分析機能等を備えたSEM等で観察することで、酸化影響層と非酸化領域との組織を明瞭に確認・区別できる。酸化影響層では鉄粉界面にFeを主体とする酸化物が形成されているが、非酸化領域の鉄粉界面にはFeを主体とする酸化物は存在しない。このため軟磁性体断面のミクロ組織観察において、鉄粉界面にFeを含む酸化物が存在する領域の軟磁性体表面からの幅を複数個所で測定することで、酸化影響層の厚さを直接評価することが可能となる。
圧粉軟磁性体の表面に酸化影響層を形成するための熱処理は、大気、水蒸気、あるいは窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスに体積比で0.5〜20%の酸素ガスを加えた酸化雰囲気中において、450〜550℃の温度で実施することが好ましい。熱処理温度が450℃未満の場合は熱処理時の歪低減が十分でなく、磁性体を構成する鉄粉内部に多くの歪が残留してヒステリシス損失が増加することから好ましくない。熱処理温度が550℃を越える場合は、酸化の影響が過大となり、圧粉体内部の非酸化領域の割合が低下すし、鉄損が増加することから好ましくない。
圧粉軟磁性体を熱処理する際の保持時間も、酸化影響層の厚さ制御に重要となる。保持時間は圧粉体の形状、寸法により異なるが、酸化影響層の厚さが、圧粉体厚さの最小箇所、最大箇所の双方において、0.4mm以上、1.4mm以下となるように、最適化することが好ましい。設定温度が高温になるにつれて酸化影響層の成長が促進されることから、保持時間も短縮化する必要がある。例えば酸化影響層の厚さを1mm以下に抑制する熱処理条件としては、設定温度が500℃の場合は、保持時間は最長30min以下、設定温度が550℃の場合は保持時間は10min以下とすることが好ましい。従って、酸化影響層の厚さを0.4mmとするには、設定温度が500℃で保持時間は5min以下、1.4mmにするには、設定温度が500℃で保持時間は60min以下、設定温度が550℃で保持時間は20min以下が考えられ、本発明は上記の範囲で実施することが好ましいであろう。
熱処理時の昇温速度や保持終了後の冷却速度も、酸化影響層の厚さ制御に重要となる。熱処理温度が300℃以上の高温では酸化速度は増加するが、昇温速度を過度に遅くして加熱を行う場合は、最高温度で保持する時間以外に300℃以上の高温に置かれる時間が長くなる。結果として酸化影響層を必要以上に成長させ、鉄損増加につながるため好ましくない。同様の理由で、保持終了後に冷却速度を過度に遅くして冷却を行うことも、酸化影響層を過度に成長させ、鉄損増加につながることから好ましくない。本発明において圧粉軟磁性体の熱処理を行う際には、最高温度における保持を除く昇温、冷却の過程において、圧粉軟磁性体が300℃以上の高温に置かれる時間を120min以下に留めることが好ましい。
例えば昇温速度、冷却速度を共に5℃/minの一定速度として、500℃で保持を行う場合、昇温、冷却の段階で300℃以上の高温に圧粉軟磁性体が置かれる時間は約80minとなり、本発明で規定する条件の120min以下を満足する。しかし昇温、冷却のどちらかの段階で、例えば400℃で60minの保持を別途加えた場合は、300℃以上に圧粉軟磁性体が置かれる時間が140minとなり、本発明の条件から外れるため好ましくない。より好ましくは、予め設定温度(450〜550℃)に保持した加熱炉中に圧粉軟磁性体を投入して設定温度まで昇温・保持し、冷却時には加熱炉から直ちに圧粉軟磁性体を取出して、300℃以下まで空冷することが好ましい。
本発明の圧粉軟磁性体の原料となる鉄粉は、Mn、Cr、Si、P、S等のFe以外の元素の含有量が出来る限り少ない純鉄粉とし、水アトマイズ、またはガスアトマイズ処理により作製されることが好ましい。好ましくは、Fe以外の元素は合計で5質量%以下、特に1質量%以下である。
アトマイズ処理後の鉄粉は、酸素、炭素、窒素等のガス不純物を多く含むことから、水素を含む還元雰囲気における熱処理を800〜1000℃で実施して、鉄粉を純化することが必要となる。鉄粉中のOの含有量は500ppm以下に低減することが、鉄損の増加を防ぐ目的から好ましい。同様にCの含有量は30ppm以下、Nの含有量は10ppm以下にそれぞれ低減することが、鉄損の増加を防ぐ目的から好ましい。
アトマイズ処理後の鉄粉は、酸素、炭素、窒素等のガス不純物を多く含むことから、水素を含む還元雰囲気における熱処理を800〜1000℃で実施して、鉄粉を純化することが必要となる。鉄粉中のOの含有量は500ppm以下に低減することが、鉄損の増加を防ぐ目的から好ましい。同様にCの含有量は30ppm以下、Nの含有量は10ppm以下にそれぞれ低減することが、鉄損の増加を防ぐ目的から好ましい。
圧粉軟磁性体を構成する鉄粉の大きさ(粒径)は、熱処理後の磁気特性に影響を及ぼす。粒径が50μmを下回る微細な鉄粉の占める割合が高いと、ヒステリシス損失が増加して好ましくない。粒径が400μm上回る粗大な鉄粉の占める割合が高いと、渦電流損失が増加して好ましくない。以上の考えより、重量比で80%以上の鉄粉が粒径50〜400μmの範囲に含まれることが磁気特性の観点からは好ましい。平均粒径は70〜300μmとすることが好ましく、100〜250μmとすることがより好ましい。上記の鉄粉粒度の調整は、アトマイズ処理後の鉄粉をメッシュにより篩分けることで実施される。
本発明では、鉄粉表面への絶縁皮膜として、十分な絶縁性と、鉄粉への密着性を備える必要を考慮して、リン酸ガラスかそれに化学組成が近い無機系材料を用いる。この無機絶縁処理は本発明の属する技術分野においてよく知られている方法である。化成処理によりリン酸絶縁被覆を施工する際には、鉄粉表面層が酸化により溶解すると共に、リン酸と反応してFe−P系の複合酸化相を形成する。Fe−P系の複合酸化相は基材の純鉄との密着性が非常に高い一方で、SiO2、Al2O3等の他の酸化物系皮膜層と比較して、鉄粉の変形に対する追随性にも非常に優れており、圧粉成形時の表面変形の際にも、剥離、破壊などの絶縁低下を招くような損傷を受けることはない。
Fe−P系の複合酸化相は、約550℃まではガラス(非晶質)構造を有しており、550℃を超える温度の加熱により結晶化するが、皮膜が鉄粉表面に安定に存在しており、表面からの剥離等の著しい損傷が生じない限り被膜の絶縁性は保持される。
圧粉成形の際の成形性を付与する目的で、絶縁被覆処理後の鉄粉に潤滑剤を混入してから成形に用いることが好ましい。潤滑剤の材質は特に規定を設けないが、従来からの公知のものを使用すればよく、具体的にはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属塩粉末およびその他のワックス等が挙げられる。潤滑剤の添加量を過度に増やすと、圧粉成型体の密度が低下して磁気特性を阻害する要因となる。また添加量が少ないと成形型からの成形体の抜出しが困難になる等の問題がある。特に成形粉末質量に対し、0.05〜0.8質量%の範囲での潤滑剤の添加が好ましい。
上記の複合粉末を金型成形にて高圧下で過度の塑性変形をさせ、圧粉軟磁性体とする。成形圧力は通常800MPa以上として、圧粉軟磁性体に占める金属Feの割合が体積比で90%以上(理論密度比)になるように、圧粉軟磁性体の密度を高めることが好ましい。
以下、実施例で更に詳細を説明する。
純鉄インゴット素材を大気溶解後に水アトマイズ処理して粉末化した。アトマイズ後の鉄粉を950℃において2時間の水素還元熱処理を2回繰り返すことにより粉末を純化した。純化後に不純物として含まれる酸素濃度は500質量ppm以下、窒素濃度は10質量ppm以下であった。
純化後の鉄粉をメッシュにより100〜300μmの粒度に篩分けした後、鉄粉表面に絶縁層としてリン酸ガラス層を化学的手法で被覆した。リン酸ガラス絶縁層の厚さは50〜100nmの範囲とした。絶縁被覆後の鉄粉の平均粒径は160μmであった。さらにステアリン酸亜鉛系の潤滑剤を0.4質量%添加してVミキサーにより混合して、複合磁性粉末とした。
上記の複合磁性粉を、プレスを用いて圧粉軟磁性体とした。成形圧1200MPaにおいて磁気測定評価用の外径50mm、内径40mm、厚さ5mmのリング形状試料と、3点曲げによる強度測定用の11×30×5mmの板状試料を作製した。
アルキメデス法により測定した成形後のリング試料の密度は7.54g/cm3であった。成形後のリング材を大気熱処理炉にて加熱して軟磁性圧粉体とした。大気熱処理の保持温度を500℃とし、室温から昇温速度5℃/minで500℃まで昇温して、10min保持後に炉から取出し室温にて空冷した。熱処理後の試料表面は全体に酸化による影響で黒色を帯びていた。
前述の本発明材に対し、比較材として不活性雰囲気のN2ガス中(酸素無添加)で昇温速度5℃/minで500℃まで加熱し、10min保持後に炉冷した成形体(リング試料及び板状試料)を準備した。比較材の熱処理後の試料表面は、本発明材に比べて色の薄い灰色を帯びた外観であった。
磁気特性評価は、0.5mmの銅線を用いて熱処理後のリング試料に対し、1次側200ターン,2次側60ターンの巻線を実施して、周波数400Hzにおける鉄損W(W/kg)を求めた。測定結果はそれぞれ、本発明材:38W/kg、比較材:37W/kgとなり、大気中500℃で10min保持した本発明材は、N2ガス中で熱処理した比較材とほぼ同じ鉄損値を示した。
次に熱処理後の板状試料を用いて、3点曲げによる抗折試験を実施して強度を比較した。曲げ応力値は本発明材:74MPa、比較材:33MPaとなり、本発明材の強度はN2雰囲気中で熱処理した比較材よりも2倍以上高い値を示した。
同じく比較材のリング材の亀裂断面部の組織を実態顕微鏡にて観察したところ、N2熱処理した比較材2においては、断面の全域が白色組織となり酸化影響層に該当する黒色組織は確認されなかった。
以上の結果から、本発明材の鉄損は比較材と同程度である一方で、曲げ強度は比較材2の2倍以上の強度を確保できることがわかった。本発明材は試料表面部の酸化影響層の作用で一定水準の強度を保つと共に、内部の非酸化部の特性から酸化による鉄損の増加も抑制できると考えられる。
実施例1において観察した本発明の圧粉軟磁性体の断面組織を詳細に調べる目的から、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面のミクロ組織観察を行った。観察個所は図1の断面模式図における酸化影響層(表面近傍)と非酸化部(内部)の2箇所に相当する個所とした。SEM観察用の試料作製は以下の手順で実施した。本発明材のリングを切断後に樹脂埋め込みし、SiC研磨紙による粗研磨、ダイヤモンド粒子(粒径1〜3μm)及びコロイダルシリカ(粒径<1μm)による仕上げ研磨を経て断面を鏡面仕上げした。観察には電解放出型の電子線源を有するSEM(FE−SEM)装置を用いた。
本発明材のリング断面の表面近傍の黒色部を拡大して、鉄粉同士の境界の界面を観察した結果では、界面厚さは1〜2μmであり界面内部には充填層が存在し、鉄粉同士の隙間を緻密に充填している様子を確認した。界面充填層の構成元素を分析するため、SEM装置に付属するエネルギー分散型X線分光(EDS)装置を用いた分析を実施した。
EDS分析時には電子線のプローブ径をφ0.5μm以下まで絞り、充填層内部を点分析した。得られたEDSスペクトルから充填層は主にFeとO(酸素)により構成され、EDSの定量分析から得られた両元素の比率から、充填層はFe3O4であることがわかった。
同様に本発明材のリング断面中央部の白色部の組織を拡大してSEM観察を行った結果、鉄粉同士の界面部の多くは黒色部で確認された充填層が無く、隙間が空いた状態であった。界面内部に一部残存した物質に対してEDS分析を実施した結果、スペクトルにおいてFeとOの他にP、Zn、Cを検出した。界面の残存物質はFe3O4とは異なり、P及びZnを含むことからリン酸絶縁層および潤滑剤(ステアリン酸亜鉛)が熱処理により変質した物質と考えられる。絶縁及び潤滑材の変質層にはFe3O4に比べて非常に脆いことが推測され、試料研磨の過程で多くが脱落した結果、界面内部に隙間が生じたと推測される。
本発明材断面のSEM観察及びEDS分析の結果より、表面近傍の黒色部においては熱処理時の酸化作用より鉄粉界面にFe3O4が形成され、界面内部を緻密に充填していることがわかった。一方で断面内部の白色部の界面には、Fe3O4の充填層は存在せず、絶縁・潤滑剤の熱処理による変質層が残っていることがわかった。本発明時における酸化影響層と非酸化部の区分については、断面部における組織の色合いの違い(黒色部:酸化影響層、白色部:非酸化領域)、及びSEM観察した際の界面充填層(Fe3O4)の有無の手法で確認できることがわかった。
実施例1と同じ複合磁性粉末を同じ条件で成形したリング形状及び板状成形体に対して、大気中で350〜650℃の範囲で保持温度を50℃間隔で変えて熱処理を実施した。室温から保持温度までの昇温速度は5℃/minの一定とし、設定温度で10min保持後に成形体を炉から取出し室温で空冷した。熱処理後の成形体に対し、実施例1と同じ方法により鉄損及び曲げ強度を評価して、熱処理温度との関係について検討した。
表1に得られた結果の一覧を示す。ここでNo.4の保持温度550℃の事例は実施例1で示した結果と同一である。熱処理温度が350℃より上昇するにつれて、鉄損は55W/kgから徐々に低下し500℃では38W/kgに達する。この温度上昇に伴う鉄損低下は、成形体のひずみ低減に伴い、ヒステリシス損失が低下したためと考える。一方で550℃以上では温度上昇に伴い鉄損が増加する傾向が見られる。高温では酸化の影響が徐々に増加して、絶縁性の低下、渦電流損失の増加が生じたと考える。
表1の7種のリング成形体に対し、切断後に断面の埋込、研磨を実施して、SEM観察とEDS分析による酸化影響層の厚さの測定を行った。保持温度の上昇に伴い酸化影響層の厚さは増加し、650℃においては成形体内部全域で酸化が進行し非酸化領域は完全に消失した。成形体の曲げ強度も保持温度の上昇に伴い増加し、酸化の進行につれて成形体強度が増加する傾向を確認した。
軟磁性材料の特性としては鉄損が低いことが好ましく、鉄損が45W/kg以下となる保持温度450〜550℃(試料No.3,4,5)での熱処理実施が適切であることを、本結果から確認した。成形体強度は600℃以上の高温熱処理により100MPaを越える値まで増加するが、鉄損との関係を考えると、70〜90MPaの強度を有するNo.3,4,5が最もバランスの良い特性と考える。
実施例1と同じ複合磁性粉末を同じ条件で成形したリング形状及び板状成形体に対して、大気中500、550℃において保持時間を10、30、60minと変えて熱処理を実施した。室温から保持温度までの昇温速度は5℃/minとし、保持終了後に成形体を炉から取出し室温にて空冷した。熱処理後の成形体において実施例1、3と同じ方法により鉄損及び曲げ強度を評価した。リング成形体における酸化影響層の厚さを実施例3と同じ方法で評価した。
表2に得られた結果の一覧を示す。No.4、5は実施例3の表1に示す事例と同じである。保持温度が500℃、550℃の両方の場合で、保持時間が長くなるにつれて、鉄損、曲げ強度、酸化影響層厚さが増加する傾向が見られる。この結果はいずれも高温大気中での酸化の進行による影響と考えられる。実施例3と同様に、鉄損の値の目安を45W/kg以下の範囲と考えると、500℃の場合は保持時間は30分以下、高温の550℃の場合は、保持時間は10分以下とすることが、軟磁性材料としてバランスの良い特性が得られる熱処理条件と考える。
実施例1と同じ複合磁性粉末を同じ条件で成形したリング形状成形体に対し、大気中500℃にて保持時間10minの熱処理を実施する際に、昇温、冷却の段階で別途400℃での保持を加えた。表3に示すようにNo.13、14では昇温段階にて400℃で20min、60minの保持を行い、その後に500まで昇温し10min保持した。室温から400℃、および400℃から500℃までの昇温速度は5℃/minとした。保持終了後には成形体を加熱炉中に残して5℃/minで300℃まで冷却後に、加熱炉から取出し室温にて空冷した。No.15、16では昇温速度5℃/minで500℃まで成形体を昇温して10min保持し、その後に5℃/minで400℃まで冷却して20min、60minの保持を実施した。400℃保持終了後は加熱炉中で300℃まで5℃/minで冷却してから成形体を取出し、室温にて空冷した。
表3において400℃の保持を行わないNo.4の鉄損は38W/kgであるが、昇温時に400℃保持を実施したNo.13、14では、鉄損は40W/kg以上に増加する。400℃保持が20minのNo.13(鉄損42W/kg)に比べて、保持時間60minのNo.14の方が鉄損は47W/kgと大きい。No.4、13、14と鉄損が増えるにつれて酸化影響層の厚さも増す傾向にあることから、昇温時の400℃保持の実施と保持時間が長くなるにつれて、リング成形体の酸化が進行すると考えられる。冷却時に400℃保持を実施したNo.15、16でも同様に、400℃保持の長時間化に伴い、鉄損が増加する結果となっている。
表3の結果は大気中熱処理において、設定温度における保持以外に、昇温、冷却過程における過度の加熱が、圧粉軟磁性体の酸化を促進して鉄損を増加させることを示している。表3の各事例において、500℃での保持時間を除く昇温、冷却過程において、リング成形体が300℃を越える高温で加熱された時間を比較した。400℃保持を行わないNo.4の場合、500℃保持後に成形体を炉から取出して空冷しているが、冷却時に300℃以下に達する時間は10min未満であった。300℃以上の加熱時間は、400℃で20min保持したNo.13、14では100min、400℃で60min保持したNo.15、16では140minであり、No.15、16の鉄損は45を越える値まで増加している。本結果から圧粉軟磁性体を大気熱処理する際には、保持時間を除く昇温、冷却過程における300℃以上の加熱時間を短くする、目安として120min以下とすることが、圧粉軟磁性体の鉄損の低下に有効であることがわかった。
本発明の知見に基づき、実施例1で得た圧粉軟磁性体を用いて実機モータ用の圧粉コアを試作し、ステータコア及びモータを作製した。図4にステータコアの構造を示す概略図を示す。爪状の突起16を有する3次元形状のリングコア(圧粉コア12、15;クローティースコア)2個の間に、リング形状に巻線した銅コイル14を挟みこむことで単相ステータとし、3相に重ねてロータと組み合わせることでモータを構成する。
圧粉コアの作製は、実施例1と同じ複合磁性粉末を1200MPaで3次元形状に成形後、熱処理は大気中で実施し、480℃に保持した加熱炉中にコアを投入し、コア温度が480℃に到達後に5min保持し、加熱炉から取出した。熱処理後のコア断面の酸化影響層の厚さを実施例3と同様の方法で評価した結果、0.4mmであった。
本発明の圧粉軟磁性材料およびその製造方法は、例えばモータコア、電磁弁、リアクトル、もしくは電磁部品一般に利用される。
1…圧粉軟磁性体表面、2…酸化影響層、3…非酸化部、4…圧粉軟磁性体、6…酸化相、7…鉄粉、8…鉄粉界面、10…無機絶縁層、11…有機物相。
Claims (8)
- 鉄粉又は鉄を主成分とする鉄合金粉の圧粉軟磁性体の表面部に、個々の鉄粉又は鉄合金粉の表面に酸化相が形成され、かつ鉄粉又は鉄合金粉の粒界に酸化相及び無機絶縁物を含む、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層が充填され、前記酸化影響層の内側の圧粉軟磁性体は非酸化状態である組織を有することを特徴とする圧粉軟磁性体。
- 請求項1に記載された圧粉軟磁性体であって、前記圧粉軟磁性体内部の非酸化状態の組織において、個々の鉄粉表面に無機絶縁層が存在し、かつその外側には有機炭化物層が存在することを特徴とする圧粉軟磁性体。
- 鉄損の値が43W/kg以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉軟磁性体。
- 鉄を主成分とする粉末又は鉄合金の粉末の表面に無機絶縁層と有機物層を形成し、これを圧縮成形し、得られた圧縮成形体を酸化雰囲気中で加熱して、前記圧縮成形体の表面領域の粉末の表面に鉄を主体とする酸化相を形成し、これにより鉄粉同士の境界の隙間に前記酸化相及び凝集した無機絶縁物が充填された、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層を該圧粉軟磁性体の表面部に形成し、かつ前記圧粉軟磁性体の内部には非酸化状態が保たれた組織を形成することを特徴とする圧粉軟磁性体の製造方法。
- 前記圧粉軟磁性体の内部の鉄粉又は鉄基合金粉を被覆する無機絶縁膜と有機炭化物層が存在することを特徴とする請求項4記載の圧粉軟磁性体の製造方法。
- 前記加熱の雰囲気は大気、水蒸気あるいは20%以下の酸素を含有する不活性ガスであって、加熱温度は450〜550℃であることを特徴とする請求項4又は5記載の圧粉軟磁性体の製造方法。
- 請求項4〜6のいずれかに記載された圧粉軟磁性体の製造方法において、前記圧粉軟磁性体を熱処理する際の最高温度での保持時間を除く昇温、冷却の過程において、300℃以上の高温に置かれる時間が120min以下であることを特徴とする圧粉軟磁性体の製造方法。
- 鉄粉又は鉄を主成分とする鉄合金粉の圧粉軟磁性体の表面部に、個々の鉄粉表面に酸化相が形成され、かつ鉄粉粒界に酸化相及び無機絶縁物を含む、厚さ0.4〜1.4mmの酸化影響層が充填され、前記酸化影響層の内部の圧粉軟磁性体は非酸化状態である組織を有する圧粉軟磁性体をステータコアとすることを特徴とするモータ。
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