JP6503976B2 - 多層転写ベルト及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多層転写ベルト及びその製造方法に関する。
電子写真方式の画像形成装置においては、例えば、像担持体(感光体)上に形成された潜像をトナーにより現像し、得られたトナー像を無端ベルト状の転写部材(以下、「中間転写ベルト」とも称する。)に一時的に保持させ、中間転写ベルト上のトナー像を紙などの記録媒体上に転写することが行われている。
このような中間転写ベルトを用いた画像形成装置における更なる高画質化の手段として、弾性を有する素材を使用して凹凸紙との密着性を改善することにより、転写性を向上させる技術が提案されている。また、耐久性が劣る弾性層上に表面層として樹脂層を形成し、耐久性を向上させるベルトが提案されている。
例えば、弾性材料からなる基材上に、フッ素系樹脂からなる表面コート層を備えた転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、異なる2種類以上の弾性材を混合したベルト基材と、当該ベルト基材の片面又は両面にフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂を主成分とする保護層と、を備えた中間弾性転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の転写ベルトにおいては、弾性層の主成分であるゴム材料と表面層の主成分である樹脂との間の接着力が弱いため、弾性層と表面層との層間で剥離しやすい。
また、画像形成装置中の中間転写ベルトは、紙やクリーニングブレード、ロール等のベルト表面に接触する摺動部材等から外力を受けるため、このような中間転写ベルトを画像形成装置に搭載して、長期間にわたって使用した場合に、これらの層間での剥離が発生し、部分的に表面層が離脱して露出した弾性層が劣化するなどして、凹凸紙転写性が低下するという問題がある。
特開2000−310912号公報 特開2007−25288号公報
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その解決課題は、弾性層と表面層との間に強固な接着性が得られて高い耐久性を有し、その結果、長期間にわたって、凹凸紙への転写性に優れた多層転写ベルト及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明の一態様によれば、
少なくとも、基材層と、弾性層と、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する表面層と、からなる多層転写ベルトであって、
前記弾性層と前記表面層とが、下記一般式(1)で表される構造を介して結合され、
前記樹脂が、シランカップリング剤のビニル基に由来する構造単位を有していることを特徴とする多層転写ベルトが提供される。
Figure 0006503976
(一般式(1)中、a及びpは、それぞれ0〜10の整数である。b、c、q及びrは、それぞれ0又は1である。)
また、本発明の他の態様によれば、
少なくとも、基材層と、弾性層と、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する表面層と、からなる多層転写ベルトの製造方法であって、
前記弾性層の表面に、プラズマ照射による活性化処理を行う工程と、
前記活性化処理を行った弾性層の表面に、ビニル基を有するシランカップリング剤を反応させる工程と、
前記シランカップリング剤を反応させた弾性層の表面に、ビニル基を有するモノマーが含有された表面層用塗布液を塗布して乾燥した後、硬化処理を行い表面層を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層転写ベルトの製造方法が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、
少なくとも、基材層と、弾性層と、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する表面層と、からなる多層転写ベルトの製造方法であって、
前記弾性層の表面に、プラズマ照射による活性化処理を行う工程と、
前記活性化処理を行った弾性層の表面に、ビニル基を有するモノマーと、ビニル基を有するシランカップリング剤とが含有された表面層用塗布液を塗布して乾燥した後、硬化処理を行い表面層を形成する工程と、
を有することを特徴とする多層転写ベルトの製造方法が提供される。
本発明の上記手段により、長期間にわたって、凹凸紙への転写性に優れた多層転写ベルト及びその製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明の多層転写ベルトは、弾性層と表面層とが所定の構造を介した化学結合により結合されている。これにより、弾性層と表面層との間の接着性が向上した多層転写ベルトを提供することができる。このような多層転写ベルトは、中間転写ベルトとして画像形成装置に搭載して用いられる場合に、優れた耐久性を発揮するものである。すなわち、本発明の多層転写ベルトを中間転写ベルトとして搭載する画像形成装置によれば、長期間の使用にわたり優れた凹凸紙への転写性が得られ、高品質の画像を安定的に形成することができるものと考えられる。
本発明の多層転写ベルトの構成の一例を示す断面図である。 本発明の多層転写ベルトを中間転写ベルトとして備えた画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
〔多層転写ベルト〕
本発明の一形態によれば、少なくとも、基材層と、弾性層と、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する表面層と、からなり、弾性層と表面層とが下記一般式(1)で表される構造を介して結合され、表面層に含有されている樹脂がシランカップリング剤のビニル基に由来する構造単位を有していることを特徴とする多層転写ベルトが提供される。
Figure 0006503976
一般式(1)中、a及びpは、それぞれ0〜10の整数である。b、c、q及びrは、それぞれ0又は1である。
図1は、本発明の多層転写ベルトの構成の一例を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の多層転写ベルト1は、基材層2上に弾性層3が形成され、この弾性層3上に表面層4が形成されてなるものである。
なお、本発明においては、表面層4の構成材料である樹脂のビニル基を介して結合している、シランカップリング剤のビニル基に由来する構造単位までを含めた領域を表面層とする。
〔基材層〕
本発明に係る基材層は、導電剤等を分散した合成樹脂からなるものであり、単層構成であっても、2層以上の複数層構成であってもよい。また、基材層は、無端ベルト状のものであることが好ましい。
基材層の構成材料である合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。合成樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂のうちの少なくとも1種以上からなるものであることが好ましい。また、基材層を上記のような樹脂に導電剤を分散させた構成とすることで、基材層の電気抵抗を調整することができるため好ましい。
導電剤としては、カーボン、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化チタン等の金属酸化物、第4級アンモニウム塩含有ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアニリン、ポリビニルピロール、ポリジアセチレン、ポリエチレンイミン、含ホウ素高分子化合物、ポリピロール等の導電性高分子化合物等の1種又は2種以上が用いられうる。この導電剤は、多層転写ベルトを構成する他の層にも同様に添加されうる。
基材層の厚さは特に制限されないが、機械的強度、画質、製造コストなどを考慮し、50〜250μmの範囲内であることが好ましい。
〔弾性層〕
本発明に係る弾性層は、基材層上に形成される。
弾性層は、導電剤等を分散したゴムを主成分として構成されていることが好ましい。
ここで、「主成分」とは、弾性層を構成する材料の全質量を100質量%としたとき、ゴムが50質量%以上含有されていることをいう。
弾性層を構成するゴムとしては従来公知のゴム材料が適宜用いられうるが、特に耐久性の観点から、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムのうち少なくとも1種以上からなるものであることが好ましい。
弾性層の厚さは特に制限されないが、機械的強度、画質、製造コストなどを考慮し、150〜250μmの範囲内であることが好ましい。
〔表面層〕
本発明に係る表面層は、弾性層上に形成される。
表面層は、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する。
表面層中、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂は、表面層を構成する材料の全質量を100質量%としたとき、20質量%以上含有されていることが好ましく、また、表面層中の全樹脂成分の全質量を100質量%としたとき、50質量%以上含有されていることが好ましい。
ビニル基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ビス(2−アクリロキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ウレタンアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられる。
ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂としては、硬化(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。硬化(メタ)アクリル樹脂は、多官能(メタ)アクリレート、ポリウレタンアクリレートを有する重合性成分の少なくとも2種を含有する硬化型組成物を硬化することによって得られるものであることが好ましい。これらの材料の具体的な構成についてとくに制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
表面層中には必要に応じて、有機溶剤、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤、表面改質剤などの添加成分を含ませることができる。
また、表面層の厚さは、機械的強度、画質、製造コストなどを考慮し、1〜5μmの範囲内であることが好ましい。
〔弾性層と表面層との結合態様〕
本発明の多層転写ベルトの特徴の一つは、上述したように、弾性層と表面層とが下記一般式(1)で表される構造を介して結合されていることにある。
Figure 0006503976
一般式(1)中、a及びpは、それぞれ0〜10の整数である。b、c、q及びrは、それぞれ0又は1である。
一般式(1)において、a及びpは、それぞれ0〜10の整数であるが、それぞれ2〜4の整数が好ましく、最も好ましくは3である。
b、c、q及びrは、それぞれ0又は1であるが、b又はqは、0であることが好ましく、c又はrは、1であることが好ましい。
c又はrが1であると好ましい理由は、エステル基を有することで、後述する当該エステル基に隣接するシランカップリング剤のビニル基と、樹脂を構成するビニル基との反応性が高まり、シランカップリング剤と表面層との接着性が向上するためである。
後述するように、本発明の多層転写ベルトの製造方法における第1の製造方法及び第2の製造方法では、ビニル基を有するシランカップリング剤で弾性層の表面を処理するが、この際に用いられるビニル基を有するシランカップリング剤が1種のみである場合には、得られる多層転写ベルトにおける上記一般式(1)で表される構造中のaとp、bとq、及びcとrは、それぞれ同一の整数となる。一方、ビニル基を有するシランカップリング剤として異なるものを併用すると、aとp、bとq、及びcとrは、それぞれ異なる整数となりうる。
一般式(1)において、ケイ素(Si)原子の左側に位置する酸素(O)原子は、弾性層を構成するゴム材料と化学結合している。一方、一般式(1)において、ケイ素(Si)原子、アルキレン基の炭素(C)原子、芳香族炭化水素環基の炭素(C)原子又はエステル基の炭素(C)原子は、シランカップリング剤のビニル基に由来する構造単位を有する、表面層中の樹脂と化学結合している。そして、一般式(1)において、ケイ素(Si)原子の上下に位置する酸素(O)原子(一部省略)は、他の(隣接する)ケイ素(Si)原子と化学結合している。ここで、上記化学構造は、通常は共有結合により形成される。
このような一般式(1)で表される構造を介して弾性層と表面層とが結合されることにより、弾性層の表面を被覆するように上記構造が配置され、更にその表面に表面層が形成された構造をとることになる。このような構造を有する本発明の多層転写ベルトは、弾性層と表面層とが化学結合を介して強固に結合されることになるため、これらの層間の接着性を飛躍的に向上させることができる。
〔多層転写ベルトの製造方法〕
本発明の他の形態によれば、多層転写ベルトの製造方法も提供される。本発明の他の形態に係る多層転写ベルトの製造方法としては、以下の二つの方法が挙げられる。
第1の製造方法(以下、「製造方法1」とも称する。)は、ゴム材料を主成分とする弾性層の表面にプラズマ照射を行い活性化処理する工程(活性化処理工程)と、活性化処理の後、弾性層の表面に、ビニル基を有するシランカップリング剤を反応させる工程(シランカップリング処理工程)と、シランカップリング剤を反応させた後、ビニル基を有するモノマーが含有された表面層用塗布液を弾性層の表面に塗布して乾燥した後、硬化処理を行い表面層を形成する工程(表面層形成工程)と、を含むことを特徴とするものである。
一方で、第2の製造方法(以下、「製造方法2」とも称する。)は、ゴム材料を主成分とする弾性層の表面にプラズマ照射を行い活性化処理する工程(活性化処理工程)と、活性化処理の後、弾性層の表面に、ビニル基を有するモノマー及びビニル基を有するシランカップリング剤とが含有された表面層用塗布液を塗布して乾燥した後、硬化処理を行い表面層を形成する工程(表面層形成工程)と、を有することを特徴とする。
製造方法1と製造方法2においては、シランカップリング剤の使用方法が異なっている。具体的には、製造方法1では、後述のように、シランカップリング剤を含む水溶液の形態の塗布液を、ビニル基を有するモノマーが含有された表面層用塗布液とは別に調整して使用する一方で、製造方法2では、ビニル基を有するモノマーが含有された表面層用塗布液にシランカップリング剤を添加して使用する。
製造方法1では、弾性層の表面にシランカップリング処理を行った後で、表面層用塗布液を塗布するため、弾性層とシランカップリング剤とが効率よく接着する。一方、製造方法2では、弾性層表面にシランカップリング剤が含有された表面層用塗布液を塗布することにより、製造工程が単純化し、簡易に弾性層と表面層との間の接着性を高めることができる。
〈製造方法1〉
(基材層の形成)
基材層は、合成樹脂を主成分として含み、必要に応じて導電剤を含む原料から、従来公知の手法により作製されうる。例えば、基材層の構成材料としてポリイミド樹脂を用いる場合には、ポリアミド酸溶液を円筒状金型の外周面に浸漬する方式や、内周面に塗布する方式や更に遠心する方式、注形型に充填する方式、ノズルによるスパイラル塗布法式などの手法によってリング状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベル卜形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドへと転化して型より回収する方法などの手法が挙げられる(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等参照。)。また、無端ベルト状の基材層の製造に際しては、型の離型処理や脱泡処理などの適宜な処理を施すことができる。
(弾性層の形成)
弾性層は、基材層の表面にゴムを主成分とする弾性層材料を含む塗布液(弾性層用塗布液)を塗布した後、架橋処理を行うことにより、形成することができる。
弾性層用塗布液の調整方法としては、例えば、弾性層を構成する弾性層材料を溶剤に固形分濃度20〜30質量%の割合で添加する方法が挙げられる。
弾性層用塗布液の塗布方法としては、例えば、ノズルによるスパイラル塗布などが挙げられる。
(活性化処理工程)
活性化処理工程では、弾性層と表面層との接着強度を強固なものにするために、プラズマ照射を行うことが好ましい。弾性層の表面にプラズマ照射を行うことにより、弾性層の表面が親水化され、多数のヒドロキシ基(−OH基)が、カルボキシ基やケトン基などとともに形成される。
プラズマ照射としては従来公知の技術を採用することができ、中でも装置構成が簡易かつ安価なことから、コロナ放電処理によるものが好ましい。この際、コロナ放電処理による弾性層への印加エネルギーは、好ましくは50〜1000kJ/mの範囲内であり、より好ましくは70〜500kJ/mの範囲内である。
(シランカップリング処理工程)
上記活性化処理工程に続いて、シランカップリング処理工程では、プラズマ照射を施された弾性層の表面を、ビニル基を有するシランカップリング剤で処理する。
ビニル基を有するシランカップリング剤の具体的な構成は特に制限されず、弾性層と表面層との間に介在して上記一般式(1)で表される構造を形成しうるものであればよく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
ビニル基を有するシランカップリング剤は、一般式[X−Si(OR)]で表される化合物である。ここで、Xは、ビニル基を末端に有する官能基であり、ビニル基以外の他の官能基、例えば、アルキル基、芳香族炭化水素環基、エステル基等を更に含んでいてもよい。Rは、それぞれ独立にアルキル基を表す。
このようなビニル基を有するシランカップリング剤としては、表1に示すように、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。表面層を形成する硬化(メタ)アクリル樹脂との反応性が高いことから、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。なお、ビニル基を有するシランカップリング剤の市販品としては「KBM−5103」(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学工業社製)などがあり、市場から容易に入手できる。
Figure 0006503976
弾性層の表面を、ビニル基を有するシランカップリング剤で処理する際には、当該シランカップリング剤を0.5〜2.0質量%程度含む水溶液の形態の塗布液を調製し、これを活性化処理済みの弾性層の表面に刷毛塗り等して塗膜を形成し、この塗膜を室温(25℃)〜100℃程度の温度で5〜30分間程度乾燥させればよい。
塗布液は、カップリング剤の水への溶解性の観点から、酢酸等の酸を用いてpH3.5〜4.5(液温25℃換算)程度の酸性とすることが好ましい。
なお、シランカップリング剤が水に不溶であると(例えば、上記したp−スチリルトリメトキシシラン)、水溶液の形態での塗布液調整が困難となる。この場合には、後述する製造方法2において、表面層用塗布液に当該シランカップリング剤を添加して使用する。
このシランカップリング処理においては、シランカップリング剤におけるアルコキシ基(−OR基)と活性化処理によって弾性層の表面に多数形成されたヒドロキシ基(−OH基)との間において、加水分解による縮合反応が生じることによって、上記一般式(1)においてケイ素(Si)原子の左側に位置する酸素(O)原子を含むエーテル結合(−O−)が生成される。また、これと同時に、隣接するシランカップリング剤における、基材層の表面のヒドロキシ基(−OH基)と結合されなかったアルコキシ基(−OR基)同士においても加水分解による縮合反応が生じ、これにより、上記一般式(1)においてケイ素(Si)原子の上下に位置する酸素(O)原子を含むエーテル結合(−O−)が生成される。上記一般式(1)において、ケイ素(Si)原子の上下に位置する〜は、加水分解縮合反応によりシランカップリング剤同士が結合していることを示す。この結果、弾性層の表面を、ビニル基を有するシランカップリング剤が被覆したような被膜が形成されることになる。
なお、上記加水分解縮合反応により形成されるエーテル結合(上記一般式(1)においてケイ素(Si)原子の左側に位置する酸素(O)原子を含むもの)を介して、一般式(1)で表される構造は弾性層の表面に位置するゴム材料と化学結合を形成する。
(表面層形成工程)
上記シランカップリング処理工程に続いて、表面層形成工程では、ビニル基を有するモノマーが含有された表面層用塗布液を弾性層の表面に塗布して乾燥した後、硬化処理を施す。
表面層用塗布液の調整方法としては、例えば、ビニル基を有するモノマーと重合開始剤とを溶剤に固形分濃度10質量%の割合で添加し、更に、表面張力調整剤を液の総質量(100質量%)に対して1質量%の割合で添加する方法が挙げられる。
表面層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレー塗布などが挙げられる。
表面層形成工程では、弾性層の表面に表面層用塗布液を塗布して乾燥した後に硬化処理を施す。
硬化処理においては、樹脂を構成するビニル基を有するモノマーとシランカップリング剤のビニル基とをラジカル重合反応により化学結合させる。硬化処理では、例えば、照射光量1J/cm程度、照射時間240秒間程度、紫外線を照射すればよい。紫外線以外の他の硬化処理方法としては、電子線、γ線などの活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
表面層形成工程では、上述したような硬化処理によって、シランカップリング剤のビニル基が、樹脂を構成するビニル基中の不飽和二重結合部位等の反応性に富む部位と反応して化学結合が形成される。その結果、一般式(1)で表される構造を介した弾性層と表面層との結合が達成され、これらの層間の接着性に優れた多層転写ベルトが得られる。
〈製造方法2〉
(基材層の形成)
製造方法1と同様の手法により、基材層を形成する。
(弾性層の形成)
製造方法1と同様の手法により、弾性層を形成する。
(活性化処理工程)
製造方法1と同様の手法により、弾性層の表面に活性化処理を行う。
(表面層形成工程)
製造方法2においては、製造方法1のシランカップリング処理工程の代わりとして、表面層用塗布液にシランカップリング剤を0.5〜2.0質量%の割合で添加して混合し、これを表面層用塗布液として活性化処理工程後の弾性層の表面に塗布して乾燥した後に、製造方法1と同様の手法により硬化処理を施し、ビニル基を有するモノマーとシランカップリング剤のビニル基とを化学結合させる。
製造方法2においても、製造方法1と同様に、一般式(1)で表される構造を介した弾性層と表面層との結合が達成され、これらの層間の接着性に優れた多層転写ベルトが得られる。
〔画像形成装置〕
以上説明したような本発明の多層転写ベルトは、モノクロの画像形成装置やフルカラーの画像形成装置など電子写真方式の公知の種々の画像形成装置における、中間転写ベルトとして好適に用いられうる。
図2は、本発明の多層転写ベルトを中間転写ベルトとして備えた画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
図2に示すとおり、画像形成装置100は、複数組の画像形成ユニット20Y、20M、20C及び20Bkと、これらの画像形成ユニット20Y、20M、20C及び20Bkにおいて形成されたトナー像を画像支持体P上に転写する中間転写部10と、画像支持体Pに対して加熱しながら加圧してトナー像を定着させてトナー層を得る定着処理を行う定着装置30とを有する。
画像形成ユニット20Yにおいてはイエロー色のトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Mにおいてはマゼンタ色のトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Cにおいてはシアン色のトナー像形成が行われ、画像形成ユニット20Bkにおいては黒色のトナー像形成が行われる。
画像形成ユニット20Y、20M、20C及び20Bkは、それぞれ、静電潜像担持体である感光体11Y、11M、11C及び11Bkと、当該感光体11Y、11M、11C及び11Bkの表面に一様な電位を与える帯電手段23Y、23M、23C及び23Bkと、一様に帯電された感光体11Y、11M、11C及び11Bk上に所望の形状の静電潜像を形成する露光手段22Y、22M、22C及び22Bkと、有彩色トナーを感光体11Y、11M、11C及び11Bk上に搬送して静電潜像を顕像化する現像手段21Y、21M、21C及び21Bkと、一次転写後に感光体11Y、11M、11C及び11Bk上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段25Y、25M、25C及び25Bkとを備えるものである。
中間転写部10は、循環移動する中間転写ベルト16と、画像形成ユニット20Y、20M、20C及び20Bkによって形成されたトナー像を中間転写ベルト16に転写する、一次転写手段としての一次転写ローラー13Y、13M、13C及び13Bkと、一次転写ローラー13Y、13M、13C及び13Bkによって中間転写ベルト16上に転写された有彩色トナー像を画像支持体P上に転写する、二次転写手段としての二次転写ローラー13Aと、中間転写ベルト16上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段12とを有する。
中間転写ベルト16としては、本発明の多層転写ベルトが用いられている。この中間転写ベルト16は、複数の支持ローラー16a〜16dにより張架され、回動可能に支持された無端ベルト状のものである。
画像形成ユニット20Y、20M、20C及び20Bkにより形成された各色のトナー像は、一次転写ローラー13Y、13M、13C及び13Bkにより、回動する無端の中間転写ベルト16上に逐次転写されて、重畳されたカラー像が形成される。給紙カセット41内に収容された画像支持体Pは、給紙搬送手段42により給紙され、複数の給紙ローラー44a〜44d、レジストローラー46を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー13Aに搬送され、画像支持体P上にカラー像が一括転写される。
カラー像が転写された画像支持体Pは、熱ローラー定着器が装着された定着装置30により定着処理され、排紙ローラーに挟持されて機外の排紙トレイ上に載置される。
一方、二次転写ローラー13Aにより画像支持体Pにカラー像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト16は、クリーニング手段12により残留トナーが除去される。
以上のような画像形成装置によれば、中間転写ベルトが本発明の多層転写ベルトからなることにより、当該中間転写ベルトが、優れた転写機能を有しながらも、高い耐久性を有するので、長期間にわたって高品質の画像を形成することができる。
〔現像剤〕
画像形成装置において用いられる現像剤は、磁性又は非磁性のトナーによる1成分現像剤であってもよく、トナーとキャリアとが混合された2成分現像剤であってもよい。
現像剤を構成するトナーとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができるが、例えば、体積基準のメジアン径が3〜9μmの範囲内であり、重合法によって得られたいわゆる重合トナーを用いることが好ましい。重合トナーを用いることにより、形成される画像において高い解像力及び安定した画像濃度が得られるとともに、画像カブリの発生が極めて抑制される。
2成分現像剤を構成する場合のキャリアとしては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができるが、例えば、体積基準のメジアン径が30〜65μmの範囲内であり、磁化量が20〜70emu/gの範囲内である磁性粒子からなるフェライトキャリアが好ましい。体積基準のメジアン径が30μm未満のキャリアを用いた場合は、キャリア付着が発生して白抜け画像が生じるおそれがあり、また、体積基準のメジアン径が65μmよりも大きなキャリアを用いた場合は、均一な画像濃度の画像が形成されない場合が生じうる。
〔画像支持体〕
画像形成装置に使用される画像支持体Pとしては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。以下の実施例においては、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。なお、本発明は、以下実施例に限定されるものではない。
≪多層転写ベルトの作製≫
<実施例1>
(1)基材層の形成
ポリアミドイミドワニス「HR−16NN」(東洋紡社製)の樹脂成分100質量部に対し、カーボンブラック「SPECIAL BLACK4」(Degussa社製)19質量部を添加してミキサーを用いて混合することにより、基材層用塗布液を調製した。
ステンレス製の円筒状金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させつつ、当該ノズルから基材層用塗布液を吐出して金型の外周面上にらせん状に塗布し、それらがつながった塗膜を形成した。次いで、円筒形状金型を回転させながら100℃で1時間加熱することにより大部分の溶媒を揮発させ、その後、250℃で1時間加熱することにより、無端ベルト状の基材層を形成した。形成された基材層の厚さは、65μmであった。
(2)弾性層の形成
クロロプレンゴム(電気化学工業社製)100質量部に対し、ファーネスブラック(旭カーボン社製)30質量部を添加して混錬し、弾性体材料を得た。この弾性体材料を、固形分濃度が20質量%となるよう、溶剤(トルエン)中に溶解、分散させることにより、弾性層用塗布液を調製した。
基材層上に、弾性層用塗布液を、基材層用塗布液と同様の方法によって塗布して、基材層の外周面を覆う塗膜を形成した。次いで、円筒形状金型を回転させながら50℃で1時間加熱することにより大部分の溶媒を揮発させ、その後、170℃で20分間加熱することにより架橋させて、弾性層を形成した。形成された弾性層の厚さは、200μmであった。
(3)活性化処理
円筒形状金型を接地状態とするとともに、コロナ放電処理機の電極を弾性層から2mm離間した位置に設置して、弾性層の表面への単位面積あたりの印加エネルギーが365kJ/mとなる条件でコロナ放電処理を行った。
(4)シランカップリング処理
pH4.0に調整した酢酸水溶液に、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−5103」(信越化学工業社製)を濃度が1.0質量%となるように添加し、30分間撹拌することにより、シランカップリング剤水溶液を調製した。
このシランカップリング剤水溶液を、コロナ放電処理済みの弾性層上に刷毛によって塗布し、80℃で15分間加熱して乾燥させた。
(5)表面層の形成
ペンタエリスリトールトリアクリレート「M−305」(東亜合成社製)50質量部、ポリウレタンアクリレート「UV−3520TL」(日本合成化学工業社製)50質量部、重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン「IRGACURE 184」(BASFジャパン社製)5質量部からなる固形分を、固形分濃度が10質量%となるよう、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA))中に溶解、分散した。さらに、上記の液に、表面張力調整剤としてシルフェイス「SAG008」(日信化学工業社製)を液の総質量に対して1質量%添加することにより、表面層用塗布液を調整した。
次いで、弾性層の外周面上に、表面層用塗布液を、ワイディー・メカトロソリューションズ社製のスプレー装置を用い、下記の塗布条件で乾燥膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布することによって塗膜を形成し、この塗膜を80℃で10分乾燥した後に活性エネルギー線として紫外線を、下記の照射条件で照射することにより、塗膜を硬化して表面層を形成し、多層転写ベルト101を作製した。紫外線の照射は、光源を固定し、弾性層の外周面上に塗膜が形成された基材層を回転しながら行った。
(スプレー塗布条件)
ノズルスキャン速度:1〜10mm/sec
ノズル距離:100〜150mm
ノズル数:1
塗布液供給量:1〜5mL/min
流量:2〜6L/min
(紫外線の照射条件)
光源の種類:高圧水銀ランプ「H04−L41」(アイグラフィックス社製)
照射口から塗膜の表面までの距離:100mm
照射光量:1J/cm
照射時間(基材層を回転させている時間):240秒間
<実施例2>
(1)基材層の形成から(3)活性化処理までは、実施例1と同様にして行った。
次に、上記(3)活性化処理に続けて、実施例1(5)表面層の形成において、表面層用塗布液に1質量%3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103)(信越化学工業社製)を添加して混合した。これを表面層用塗布液として、実施例1(5)と同様の手法により表面層を形成し、多層転写ベルト102を作製した。
<実施例3>
実施例2の多層転写ベルト102の作製において、表面層用塗布液への3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103)(信越化学工業社製)の添加量を0.5質量%に変更したこと以外は同様にして、多層転写ベルト103を作製した。
<実施例4>
実施例1の多層転写ベルト101の作製において、シランカップリング処理におけるシランカップリング剤を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)(信越化学工業社製)に変更したこと以外は同様にして、多層転写ベルト104を作製した。
<実施例5>
実施例1の多層転写ベルト101の作製において、シランカップリング処理におけるシランカップリング剤をビニルトリメトキシシラン(KBM−1003)(信越化学工業社製)に変更したこと以外は同様にして、多層転写ベルト105を作製した。
<実施例6>
実施例1の多層転写ベルト101の作製において、弾性層を以下のようにして形成した以外は同様にして、多層転写ベルト106を作製した。
(2)弾性層の形成
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(日本ゼオン社製)100質量部に対し、ファーネスブラック(旭カーボン社製)30質量部を添加して混錬し、弾性体材料を得た。この弾性体材料を、固形分濃度が20質量%となるよう、溶剤(シクロヘキサノン)中に溶解、分散させることにより、弾性層用塗布液を調製した。
基材層上に、この弾性層用塗布液を、基材層用塗布液と同様の方法によって塗布して、基材層の外周面を覆う塗膜を形成した。次いで、円筒形状金型を回転させながら80℃で1時間加熱することにより大部分の溶媒を揮発させ、その後、175℃で20分間加熱することにより架橋させて、弾性層を形成した。形成された弾性層の厚さは、200μmであった。
<比較例1>
実施例1の多層転写ベルト101の作製において、シランカップリング処理を行わなかったこと以外は同様にして、多層転写ベルト107を作製した。
<比較例2>
実施例1の多層転写ベルト101の作製において、活性化処理(コロナ放電処理)を行わなかったこと以外は同様にして、多層転写ベルト108を作製した。
<比較例3>
実施例1の多層転写ベルト101の作製において、活性化処理(コロナ放電処理)及びシランカップリング処理を行わなかったこと以外は同様にして、多層転写ベルト109を作製した。
<参考例>
実施例1の多層転写ベルト101の作製において、(3)活性化処理(コロナ放電処理)に代えて、下記UV処理を実施したこと以外は同様にして、多層転写ベルト110を作製した。
(3)活性化処理
紫外線の照射は、光源を固定して、下記の照射条件で、弾性層が形成された基材層を回転しながら行った。
(紫外線の照射条件)
光源の種類:高圧水銀ランプ「H04−L41」(アイグラフィックス社製)
照射口から塗膜の表面までの距離:100mm
照射光量:1J/cm
照射時間(基材層を回転させている時間):240秒間
≪多層転写ベルトの評価≫
<評価1:クロスカットセロテープ剥離試験>
作製した多層転写ベルト101〜110について、下記の測定条件において「クロスカット法JIS K 5600」に準拠して、剥離の際の弾性層からの表面層の剥離接着強さを下記のように評価した。
具体的には、試験面にカッターナイフを用いて、縦横方向に素地に達する11本の切り傷をつけ100個の碁盤目を作った。カッターガイドを使用し、切り傷の間隔は1mmとした。碁盤目部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、剥離せずに残った碁盤目の数を評価した。
評価結果を表2にしめす。なお、表2には、多層転写ベルト101〜110に係る結果として、剥離せずに残った碁盤目の数を示している。
<評価2:凹凸紙転写性>
作製した多層転写ベルト101〜110について、それぞれを画像形成装置「bizhub PRESS C1100」(コニカミノルタ株式会社製)の中間転写体として搭載し、印字率が5.0%の画像を中性紙に100万枚印字し、この100万枚印刷の後に、トナー濃度100%のベタ画像を、凹凸紙(レザック紙)に出力した。次いで、この画像濃度を、スキャナーを用いて取り込み、フォトショップ(Adobe製)を用いた画像処理により平均濃度を算出して、以下の評価基準により凹凸紙への転写性を下記評価基準に従って評価した。
評価結果を表2に示す。なお、評価基準の〇は凹凸紙への転写性に優れるレベル、△は凹凸紙への転写性にほとんど問題がないと考えられるレベル、×は実用上問題が生じるレベルである。
(評価基準)
○:平均濃度90%以下の面積率が3%以下
△:平均濃度90%以下の面積率が3%超5%以下
×:平均濃度90%以下の面積率が5%超
Figure 0006503976
表2に示すように、本発明の多層転写ベルト101〜106は、100万枚印字後の凹凸紙転写性が優れていた。これは、クロスカットセロテープ剥離試験の評価結果によって裏付けられているように、本発明の構成を有する多層転写ベルトにおいては、弾性層と表面層との間の接着性が、比較例の多層転写ベルト107〜109と比較して向上していることによるものと考えられる。
さらに、本発明の多層転写ベルト101〜106は、比較例の多層転写ベルト107〜109と比べて、初期の凹凸紙転写性が向上した。
なお、参考例の多層転写ベルト110においては、クロスカットセロテープ剥離試験の結果が83/100(NG)、初期の凹凸紙転写性が△、100枚印字後の凹凸紙転写性が×であった。この結果より、活性化処理としてUV照射を適用した場合、コロナ放電処理を施した場合と比較して、100枚印字後の凹凸紙転写性及び初期の凹凸紙転写性が劣ることがわかる。これは、クロスカットセロテープ剥離試験の結果から明らかなように、UV照射を適用した場合には、コロナ放電処理を施した場合よりも、弾性層と表面層の接着性が劣るためだと考えられる。
1 多層転写ベルト
2 基材層
3 弾性層
4 表面層
10 中間転写部
11Y、11M、11C、11Bk 感光体
12 クリーニング手段
13Y、13M、13C、13Bk 一次転写ローラー
13A 二次転写ローラー
16 中間転写ベルト
16a〜16d 支持ローラー
20Y、20M、20C、20Bk 画像形成ユニット
21Y、21M、21C、21Bk 現像手段
22Y、22M、22C、22Bk 露光手段
23Y、23M、23C、23Bk 帯電手段
25Y、25M、25C、25Bk クリーニング手段、
30 定着装置
41 給紙カセット
42 給紙搬送手段
44a、44b、44c、44d 給紙ローラー
46 レジストローラー
100 画像形成装置
P 画像支持体

Claims (7)

  1. 少なくとも、基材層と、弾性層と、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する表面層と、からなる多層転写ベルトであって、
    前記弾性層と前記表面層とが、下記一般式(1)で表される構造を介して結合され、
    前記樹脂が、シランカップリング剤のビニル基に由来する構造単位を有していることを特徴とする多層転写ベルト。
    Figure 0006503976
    (一般式(1)中、a及びpは、それぞれ0〜10の整数である。b、c、q及びrは、それぞれ0又は1である。)
  2. 前記弾性層には、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム及びクロロプレンゴムの中から選択されるゴムが主成分として含有されていることを特徴とする請求項1に記載の多層転写ベルト。
  3. 前記一般式(1)におけるc又はrが、1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層転写ベルト。
  4. 少なくとも、基材層と、弾性層と、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する表面層と、からなる多層転写ベルトの製造方法であって、
    前記弾性層の表面に、プラズマ照射による活性化処理を行う工程と、
    前記活性化処理を行った弾性層の表面に、ビニル基を有するシランカップリング剤を反応させる工程と、
    前記シランカップリング剤を反応させた弾性層の表面に、ビニル基を有するモノマーが含有された表面層用塗布液を塗布して乾燥した後、硬化処理を行い表面層を形成する工程と、
    を有することを特徴とする多層転写ベルトの製造方法。
  5. 少なくとも、基材層と、弾性層と、ビニル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する樹脂を含有する表面層と、からなる多層転写ベルトの製造方法であって、
    前記弾性層の表面に、プラズマ照射による活性化処理を行う工程と、
    前記活性化処理を行った弾性層の表面に、ビニル基を有するモノマーと、ビニル基を有するシランカップリング剤とが含有された表面層用塗布液を塗布して乾燥した後、硬化処理を行い表面層を形成する工程と、
    を有することを特徴とする多層転写ベルトの製造方法。
  6. 前記プラズマ照射による活性化処理が、コロナ放電による活性化処理であることを特徴とする請求項4又は5に記載の多層転写ベルトの製造方法。
  7. 前記コロナ放電による活性化処理では、弾性層に対する印加エネルギーを50〜1000kJ/mの範囲内とすることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の多層転写ベルトの製造方法。
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