[中間転写体]
本発明に係る中間転写体の一実施形態としての中間転写ベルトを図1に示す。中間転写ベルト10は、図1に示されるように、無端ベルト状の基材12と、ゴム材料で構成される弾性層14と、アクリル系の材料で構成される表層16と、がこの順で重なって構成される。
基材12は、所期の導電性と可撓性を有する無端状のベルトである。基材12は、例えば、可撓性を有する樹脂によって構成され、弾性層14を支持する。基材12は、中間転写ベルト10の機械的強度や耐久性などを高める観点から好ましいため、配置されている。基材12の厚さは、例えば50〜100μmである。基材12の樹脂材料の例には、ポリイミドなどの耐熱性樹脂が含まれる。基材12は、導電性を有する円筒状のスリーブであってもよい。基材12に円筒状のスリーブを採用すると、中間転写体の他の態様である中間転写ドラムが構成される。
弾性層14は、基材12の外周面上に形成される、所期の導電性と弾性を有する層である。弾性層14は、ゴム材料で構成される。弾性層14の厚さは、例えば50〜500μmである。ゴム材料の例には、ウレタンゴム、クロロプレンゴム(CR)およびニトリルゴム(NBR)などのゴム弾性を有する樹脂が含まれる。上記ゴム材料は、クロロプレンゴムまたはニトリルブタジエンゴムを含むことが、中間転写ベルト10の電気抵抗を制御する観点から好ましい。
基材12および弾性層14は、いずれも、所期の導電性を発現するために、導電剤をさらに含有していてもよい。上記導電剤には、中間転写体の樹脂材料に導電性を付与するための公知の材料が用いられる。導電剤は、一種でもそれ以上でもよい。導電剤の例には、イオン導電剤および電子導電剤が含まれる。イオン導電剤の例には、ヨウ化銀、ヨウ化銅、過塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフロオロメタンスルホン酸リチウム、有機ホウ素錯体のリチウム塩、リチウムビスイミド((CF3SO2)2NLi)およびリチウムトリスメチド((CF3SO2)3CLi)が含まれる。電子導電剤の例には、銀や銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、ステンレス鋼などの金属;およびグラファイトや、カーボンブラック、カーボンナノファイバーカーボンナノチューブなどの炭素化合物;が含まれる。基材12および弾性層14における導電剤の含有量は、総量で、中間転写ベルト10の所期の体積抵抗率を実現する量である。中間転写ベルト10の所期の体積抵抗率は、例えば1012〜108Ω・cmである。
表層16は、弾性層14の表面上に形成される、アクリル系の材料で構成される層である。表層16は、弾性層14の表面を保護するための層であり、接触に対する十分な耐久性を中間転写ベルト10に付与する。アクリル系の材料は、一種でもそれ以上でもよい。上記アクリル系の材料の例には、アクリル系モノマーの重合体、および、アクリル系モノマーとこのアクリル系モノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、が含まれる。当該モノマーの重合は、加熱や活性エネルギー線の照射などの公知の方法によって行うことが可能である。
アクリル系モノマーの例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、それらの誘導体、および、多官能(メタ)アクリレート、が含まれる。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、アクリル酸およびメタクリル酸の一方又は両方を意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートの総称であり、メタクリレートおよびアクリレートの一方又は両方を意味する。不飽和結合を有するモノマーの例には、ビニル共重合体が含まれる。ビニル共重合体の例には、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルおよびシロキサン系ビニル共重合体が含まれる。アクリル系の材料におけるアクリル系モノマー由来の構成単位の割合は、表層の接着強度を十分に向上させる観点から、20質量%以上であることが好ましい。当該割合の上限は、特に限定されないが、例えば、上記効果の向上の度合いや経済性などの観点から、30質量%とすることができる。表層16の厚さは、例えば1〜7μmである。
表層16は、上記シロキサン系ビニル共重合体、多官能(メタ)アクリレート、および、上記表面処理剤で表面処理された金属酸化物微粒子、を含む塗料の、活性エネルギー線の照射による硬化膜であることが、表層16の機械的強度と耐久性を高める観点からより好ましい。
また、表層16が上記の硬化膜である場合では、表層16の表面から表層16の総厚に対して2〜5%の深さの表層16におけるSi濃度が1〜10%であることが、中間転写体の耐フィルミング性、転写率および耐キズ性をより高める観点から好ましく、4〜10%であることがより好ましい。上記Si濃度は、例えば、X線光電子分光法(ESCA)における、アルゴンイオンを用いるデプスプロファイル測定によって測定することができる。また、上記Si濃度は、例えば、上記塗料におけるシロキサン系ビニル共重合体の含有量によって調整することができる。
さらに、表層16が上記の硬化膜である場合では、表層16における金属酸化物微粒子の含有量は、100体積部の表層16に対して、10〜100体積部であることが好ましい。金属酸化物微粒子の含有量が少なすぎると、表層の機械的強度を高める効果が十分に得られないことがあり、多すぎると表層が脆くなることがある。
多官能(メタ)アクリレートは、表層の硬度を高める観点から好ましい。多官能(メタ)アクリレートは、一分子中に二個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する。多官能(メタ)アクリレートは、一種でもそれ以上でもよい。多官能(メタ)アクリレートの例には、二官能(メタ)アクリレートおよび三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが含まれる。多官能(メタ)アクリレートは、表層の硬度を高める観点から、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
二官能(メタ)アクリレートの例には、ビス(2−アクリロキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートおよびウレタンアクリレートが含まれる。
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの例には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンアクリレート、および、多価アルコールと多塩基酸および(メタ)アクリル酸とから合成されるエステル化合物(例えばトリメチロールエタン/コハク酸/アクリル酸=2/1/4モルから合成されるエステル化合物)が含まれる。
シロキサン系ビニル共重合体は、一つ以上のポリオルガノシロキサン鎖Aおよび三つ以上のラジカル重合性二重結合を含むことが、中間転写ベルト10におけるフィルミングを防止する観点、および、表層の低い表面自由エネルギーを維持する観点、から好ましい。このようなシロキサン系ビニル共重合体は、例えば、ラジカル重合性二重結合とポリオルガノシロキサン鎖Aとを有する単量体(a)、および、ラジカル重合性二重結合と反応性官能基とを有する単量体(b)、をラジカル重合させてなる中間共重合体と、上記反応性官能基に反応可能な官能基Dおよびラジカル重合性二重結合を有する化合物(d)との反応生成物の構造を有する。
上記中間共重合体は、単量体(a)、(b)、および、単量体(a)および(b)以外の単量体であってラジカル重合性二重結合を有する単量体(c)をラジカル重合させてなる共重合体であってもよい。「ラジカル重合性二重結合」とは、例えばビニル基における炭素間二重結合である。単量体(a)〜(c)および化合物(d)は、いずれも、一種でもそれ以上でもよい。また、単量体(a)〜(c)および化合物(d)のそれぞれにおけるラジカル重合性二重結合の数は、一以上であればよい。
単量体(a)が有するポリオルガノシロキサン鎖Aの数は、一以上であればよい。単量体(a)の例には、片末端(メタ)アクリロキシ基含有ポリオルガノシロキサン化合物が含まれる。単量体(a)の市販品の例には、JNC株式会社製のサイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725;および、信越化学工業株式会社製のX−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475;が含まれる。ポリオルガノシロキサン鎖Aの分子量は、例えば、単量体(a)の重量平均分子量が1,000〜10,000となる範囲にある。なお、「サイラプレーン」は、JNC株式会社の登録商標である。
中間共重合体における単量体(a)の共重合比率は、上記中間共重合体を構成する単量体の総量に対して、1〜80質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜45質量%である。
単量体(b)が有する反応性官能基の数は、一以上であればよい。反応性官能基は、エステル結合およびその加水分解によって生成する基(例えば水酸基やカルボキシル基など)のように、アクリル系の材料中に含まれる官能基に対する反応性を有する官能基である。反応性官能基の例には、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基およびエポキシ基が含まれる。
水酸基を有する単量体(b)の例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびヒドロキシスチレンが含まれる。
カルボキシル基を有する単量体(b)の例には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸が含まれる。
イソシアネート基を有する単量体(b)の例には、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート;(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート;および、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの反応生成物;が含まれる。「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート」の例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが含まれる。「ポリイソシアネート」の例には、トルエンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが含まれる。
エポキシ基を有する単量体(b)の例には、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイドおよび1,3−ブタジエンモノエポキサイドが含まれる。
上記中間共重合体における単量体(b)の共重合比率は、中間共重合体を構成する単量体の総量に対して、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、40〜85質量%であることがさらに好ましい。
単量体(c)の例には、(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニル単量体、オレフィン系炭化水素単量体、ビニルエステル単量体、ビニルハライド単量体およびビニルエーテル単量体が含まれる。
(メタ)アクリル酸誘導体の例には、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;および、ベンジル(メタ)アクリレートが含まれる。
芳香族ビニル単量体の例には、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロ−メチルスチレン、トリフルオロメチルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体が含まれる。
オレフィン系炭化水素単量体の例には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレンおよび1、4−ペンタジエンが含まれる。
ビニルエステル単量体の例には、酢酸ビニルが含まれる。
ビニルハライド単量体の例には、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが含まれる。
ビニルエーテル単量体の例には、ビニルメチルエーテルが含まれる。
上記中間共重合体における単量体(c)の共重合比率は、中間共重合体を構成する単量体の総量に対して、0〜89質量%であることが好ましい。
化合物(d)が有する官能基Dの数は、一以上であればよい。官能基Dは、反応性官能基の種類に応じて適宜に決められる。たとえば、反応性官能基が水酸基である場合の官能基Dの例には、酸ハロゲン基およびイソシアネート基が含まれる。この場合の化合物(d)の例には、(メタ)アクリル酸クロライドおよびメタクリロキシエチルイソシアネートが含まれる。
反応性官能基がカルボキシル基である場合の官能基Dの例には、エポキシ基が含まれる。この場合の化合物(d)の例には、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイドおよび1,3−ブタジエンモノエポキサイドが含まれる。
反応性官能基がイソシアネート基である場合の官能基Dの例には、水酸基が含まれる。この場合の化合物(d)の例には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、および、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の2−ヒドロキシエチルアクリレート付加体が含まれる。
反応性官能基がエポキシ基である場合の官能基Dの例には、カルボキシル基が含まれる。この場合の化合物(d)の例には、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレート無水コハク酸付加物および(メタ)アクリロキシエチルフタレートが含まれる。
化合物(d)は、上記中間共重合体が有する反応性官能基の数に対して100個数%以上の官能基Dを有することが好ましい。上記シロキサン系ビニル共重合体のラジカル重合反応性が得られる範囲において、化合物(d)中の官能基Dの数は、上記反応性官能基の数に対して100個数%未満であってもよい。
その他にも、シロキサン系ビニル共重合体には、特開2007−77188号公報に記載のビニル共重合体を用いることができる。
シロキサン系ビニル共重合体の重量平均分子量は、5,000〜100,000であることが、後述する塗料におけるシロキサン系ビニル共重合体の相溶性を高める観点から好ましい。シロキサン系ビニル共重合体の重量平均分子量が5,000よりも小さいと、シロキサン系ビニル共重合体が結晶化しやすく、生産性が著しく低下することがある。シロキサン系ビニル共重合体の重量平均分子量が100,000よりも大きいと、表層の硬度が低下し、中間転写体の機能が損なわれることがある。
表層16は、金属酸化物微粒子をさらに含有することが、表層の摩耗を防止し、表層を補強する観点から好ましい。金属酸化物微粒子の形状は、特に限定されない。金属酸化物微粒子の粒径は、1〜100nmであることが好ましい。この粒径は、例えば数平均粒子径であってもよいし、カタログ値であってもよい。金属酸化物微粒子の例には、アルミナ、酸化スズおよびチタニアが含まれる。より好ましくはアルミナである。
金属酸化物微粒子は、ポリオルガノシロキサン鎖Bを含む表面処理剤で表面処理されていることが、表層中における金属酸化物微粒子の分散性を高める観点から好ましい。上記ポリオルガノシロキサン鎖Bは、シロキサン系ビニル共重合体に含まれるポリオルガノシロキサン鎖Aと、同じ構造を有していてもよいし、異なる構造を有していてもよい。また、上記表面処理剤中のポリオルガノシロキサン鎖Bの数は、一以上であればよい。
ポリオルガノシロキサン鎖Bを有する表面処理剤の例には、メチルハイドロジェンポリシロキサンおよび変性シリコーンオイルが含まれる。これらのケイ素化合物の分子量は、表面処理剤としての所望の特性の発現と表面処理時の取り扱いの容易さの観点から、例えば300〜20,000である。
変性シリコーンオイルは、例えば、ポリオルガノシロキサン鎖に有機基が導入されてなるケイ素化合物である。上記有機基は、ポリオルガノシロキサン鎖における側鎖であってもよいし、片末端および両末端のいずれの位置に導入されていてもよい。変性シリコーンオイルの例には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーンおよびカルボキシル変性シリコーンが含まれる。
中間転写ベルト10は、下記式を満足する。
I3450/I2950≧0.5
上記ピーク強度比「I3450/I2950」が0.5以上であることは、弾性層14の表面に十分量の水酸基が存在することを表す。この弾性層14の表面の水酸基は、表層16を構成するアクリル系の材料中のエステル基などの極性基と相互に作用し、強い結合力を発現する、と考えられる。
ここで、「I3450」は、弾性層14の表層16側表面をFT−IR ATR法によって測定したときの赤外吸収スペクトルの3400±50cm−1に現れる最大の吸収のピーク強度である。当該ピーク強度は、弾性層14の表層16側表面における水酸基(O−H結合)の存在量を表す。また、「I2950」は、弾性層14の表層16側表面をFT−IR ATR法によって測定したときの赤外吸収スペクトルの2950±50cm−1に現れる最大の吸収のピーク強度である。当該ピーク強度は、弾性層14の表層16側表面における炭化水素基(C−H結合)の存在量を表す。I3450およびI2950は、いずれも、図2に示されるように、上記赤外吸収スペクトルの上記最大の吸収のピーク強度からベースラインの強度を差し引くことによって求められる。図2中、A1は、3400±50cm−1の領域を示し、A2は、2950±50cm−1の領域を示している。ベースラインは、赤外吸収スペクトルの2500cm−1の強度と4000cm−1の強度とを結ぶ直線である。
FT−IRとは、フーリエ変換赤外分光光度計(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)であり、ATR法とは、減衰全反射法(attenuated total reflection)である。FT−IR ATR法は、Spectrum One フーリエ変換赤外吸収ATR装置(パーキンエルマー社製)などの、ATR法を適用可能なFT−IRによって行われる。
上記ピーク強度比「I3450/I2950」が0.5よりも小さいと、弾性層14に対する表層16の接着強度が不十分となることがある。上記強度ピーク強度比は、大きすぎると、表層16の接着強度の向上効果が頭打ちとなる。このような観点から、上記ピーク強度比は、2以下であることが好ましい。
上記ピーク強度は、中間転写ベルト10の弾性層14の表層16側表面を露出させることによって、測定することができる。弾性層14の表層16側表面は、集束イオンビーム(FIB)加工観察装置を用いて表層16を掘削することによって露出させることが可能である。または、当該表面は、中間転写ベルト10を溶媒に浸漬して表層16を膨潤させ、弾性層14から剥がすことによって露出させることが可能である。膨潤用の溶媒の例には、水、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどの水溶性低級アルコール、アセトンやアセトニトリルなどの水溶性有機溶剤、およびこれらの混合液、が含まれる。
上記ピーク強度比「I3450/I2950」は、弾性層14の表層16側表面におけるゴム材料中の二重結合を開列させて酸化することによって大きくすることが可能である。上記酸化は、弾性層14の当該表面を、硫酸や、塩酸と次亜塩素酸ナトリウムの混合液などの酸性処理液によって化学的に酸化処理することにより、行うことが可能である。または、上記の酸化は、弾性層14の上記表面を、大気中において紫外線で照射することによって行うことが可能である。
[中間転写体の製造方法]
本発明に係る中間転写体は、以下の方法によって製造されうる。
この方法は、無端状の弾性層の外周側の表面に酸化処理を施す第一の工程と、酸化処理が施された弾性層の外周面に、前述した表層の材料を含有する塗料を塗布する第二の工程と、弾性層の外周面に形成された塗料の塗膜を加熱するか活性エネルギー線で照射して上記塗膜を硬化させる第三の工程と、を含む。
第一の工程は、前述した酸性処理液による化学的な酸化処理や、大気中における紫外線での照射などによって行うことが可能である。当該酸化処理または紫外線の照射の終点は、例えば、弾性層の外周面の上記ピーク強度比を測定し、当該比が0.5以上であることを確認することによって決められる。
第二の工程において、上記塗料は、前述した表層の材料を含有する。当該塗料は、塗布性の向上の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。溶剤は、一種でもそれ以上でもよい。溶剤の例には、アルコール、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、および、多価アルコール誘導体などの各種有機溶剤が含まれる。
また、上記塗料は、硬化促進の観点から、重合開始剤をさらに含有してもよい。重合開始剤は、一種でもそれ以上でもよい。重合開始剤は、塗膜の硬化方法に応じて選択される。たとえば、第三の工程において、活性エネルギー線での照射によって塗膜を硬化させる場合では、重合開始剤には、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエール、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどのカルボニル化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシドなどのパーオキシド化合物;および、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド化合物;が含まれる。上記塗料における光重合開始剤の含有量は、例えば、樹脂固形分の総量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
前述したシロキサン系ビニル共重合体、多官能(メタ)アクリレートおよび金属酸化物微粒子を含有する塗料の場合では、シロキサン系ビニル共重合体の含有量は、当該塗料における樹脂系固形分100体積部に対して、5〜75体積部であることが好ましく、5〜50体積部であることがより好ましい。ここで、「樹脂系固形分」とは、上記塗料中における樹脂を構成するモノマーおよび樹脂成分を含み、例えば、シロキサン系ビニル共重合体、多官能(メタ)アクリレート、および任意に配合される樹脂や固形分となる有機成分である。シロキサン系ビニル共重合体の含有量が5体積部よりも小さいと、表層の表面自由エネルギーが十分に小さくならないことがある。シロキサン系ビニル共重合体の含有量が75体積部よりも多いと、表層の十分な強度および硬度が得られないことがある。
また、上記塗料における多官能(メタ)アクリレートの含有量は、表層の硬度を高める観点から、上記樹脂系固形分100体積部に対して、25〜95体積部であることが好ましく、50〜95体積部であることがより好ましい。
さらに、上記塗料における金属酸化物微粒子の含有量は、金属酸化物微粒子による表層の補強効果を実現するとともに、塗料における金属酸化物微粒子の良好な分散状態を実現する観点から、上記樹脂系固形分100体積部に対して、10〜70体積部であることが好ましく、10〜50体積部であることがより好ましい。上記塗膜における金属酸化物微粒子の含有量は、例えば、当該塗料の塗布量や塗布回数などによって調整することが可能である。
上記塗料は、浸漬や噴霧、塗布などの公知の方法によって無端ベルト状の弾性層の少なくとも外周面に塗布される。たとえば、浸漬塗布であれば、上記塗料は、浸漬塗布装置によって上記弾性層の外周面に塗布される。この浸漬塗布装置は、例えば、塗料と上記弾性層とが収容される浸漬槽と、浸漬槽に塗料を連続して供給するとともに浸漬槽から溢れ出た塗料を回収、再供給する塗料供給装置と、浸漬すべき上記弾性層を浸漬槽に収容し、引き上げるベルト搬送装置と、を有する。弾性層を引き上げる速度は、塗料の粘度に応じて適宜に決められる。たとえば、上記塗料の粘度が10〜200mPa・sである場合では、上記塗料の塗膜の厚さや均一性、乾燥速度の適正化などの観点から、弾性層を引き上げる速度は、0.5〜15mm/秒であることが好ましい。
第三の工程では、上記塗料の塗膜を硬化させるのに十分なエネルギーが塗膜に付与される。たとえば、活性エネルギー線の照射であれば、照射線量は、塗膜の硬化ムラの防止、硬度や硬化時間、硬化速度などの適正化、の観点から、100mJ/cm2以上であることが好ましく、120〜200mJ/cm2であることがより好ましく、150〜180mJ/cm2であることがさらに好ましい。照射線量は、例えば、UIT250(ウシオ電機株式会社製)で測定することが可能である。塗膜への活性エネルギー線の照射は、活性エネルギーの照射源を有する照射装置によって行うことが可能である。
この照射装置は、例えば、上記塗膜がその外周面に形成された無端ベルト状の弾性層を回転自在に支持する支持装置と、回転する当該弾性層の外周面の塗膜に向けて活性エネルギー線を照射する照射源と、を有する。上記支持装置における弾性層の回転速度(周速度)は、硬化ムラの防止、硬度や硬化時間の適正化などの観点から、例えば、10〜300mm/秒であることが好ましい。
活性エネルギー線の例には、紫外線、電子線およびγ線が含まれる。活性エネルギー線は、紫外線または電子線であることが好ましい。取り扱いの簡便さの観点から、紫外線が好ましい。紫外線の照射源の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプおよびシンクロトロン放射光の発生装置が含まれる。紫外線は、例えば、波長が400nm以下の紫外線である。
電子線の照射源の例には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器が含まれる。電子線の例には、50〜1000keV、好ましくは100〜300keV、のエネルギーを有する電子線が含まれる。
活性エネルギー線の照射時間は、塗膜の硬化効率や作業効率などの観点から適宜に決められる。上記照射時間は、0.5秒から5分であることが好ましく、3秒から2分であることがより好ましい。
第三の工程の活性エネルギー線の照射における雰囲気中の酸素の濃度は、形成された表層の酸化を防止する観点から、5体積%以下であることが好ましく、1体積%以下であることがより好ましい。上記酸素濃度は、当該雰囲気中へ窒素ガスなどの他のガスを供給することによって調整される。酸素濃度は、雰囲気ガス管理用酸素濃度計OX100(横河電機株式会社製)で測定することが可能である。
また、上記塗膜は、ハロゲンヒータや赤外線ヒータ、温風加熱器などの公知の加熱装置で加熱することによって硬化することが可能である。塗膜を有する無端ベルト状の上記弾性層が加熱のために収容される加熱室内の温度は、例えば、140〜160℃である。
上記の方法は、本発明の効果が得られる範囲において、第一から第三の工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。このような他の工程の例には、第二の工程で形成された塗膜を加熱し、乾燥させる工程が含まれる。この乾燥工程における加熱方法は、例えば、温風の吹き付けである。温風の温度は、例えば、塗料中の溶剤を蒸発させ、かつ塗膜への影響を抑える観点から、40〜100℃であることが好ましくに40〜80℃であることがより好ましく、40〜60℃であることがさらに好ましい。
また、上記の他の工程の例には、第一の工程の前に、前述した基材を作製する工程が含まれる。無端ベルト状の基材を作製する工程の例には、例えば、特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報および特開平3−180309号公報に記載されているような、円筒状基体の表面に塗布されたポリアミド酸の塗膜を加熱してポリアミド酸をイミド化し、得られた無端ベルト状の膜を基材として回収する工程、が含まれる。
水酸基をその表面全体に有する弾性層14の表面に、アクリル系材料の表層16を作製すると、水酸基を表面に有さない弾性層の表面に表層16を作製した場合に比べて、弾性層14に対する表層16の接着強度が高くなる。これは、弾性層14の表面の水酸基が、表層16を構成するアクリル系材料中のエステル結合、エーテル結合、カルボニル基、カルボキシル基および水酸基などの極性基と相互に作用し、これらの間に水素結合が形成されるため、と考えられる。このため、ゴム材料とアクリル系材料という、接着性が必ずしもよくない材料で構成される層同士(弾性層および表層)が、接着剤を介さずに直接、十分な接着強度で接着する。このような弾性層14および表層16を有する中間転写ベルト10は、画像形成装置における中間転写体に好適に用いられる。
[画像形成装置]
本発明に係る画像形成装置は、感光体に形成されたトナー画像を記録媒体に転写するための中間転写体を少なくとも有する。本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る中間転写体を有する以外は、中間転写体を有する公知の画像形成装置と同様に構成されうる。本発明に係る画像形成装置は、例えば、感光体、感光体を帯電させる帯電装置、帯電した感光体に光を照射して静電潜像を形成する露光装置、静電潜像が形成された感光体にトナーを供給して静電潜像に応じたトナー画像を形成する現像装置、静電潜像に形成されたトナー画像を記録媒体に転写するための中間転写体を含む転写装置、および、トナー画像を記録媒体に定着させる定着装置、を有する。「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
図3は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を概略的に示す図である。図3に示されるように、画像形成装置1は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50および定着装置60を有する。
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。感光体ドラム413は、例えば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム413の表面は、光導電性を有する。感光体ドラム413は、感光体に相当する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成される。現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置である。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、中間転写ベルト421を感光体ドラム413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は無端状のベルトである。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。中間転写ベルト421は、中間転写体に相当する。
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
定着装置60は、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト63と、用紙Sを定着ローラー62および発熱ベルト63に向けて押圧する加圧ローラー64と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
画像形成装置1は、さらに、画像読取部110、画像処理部30および用紙搬送部50を有する。画像読取部110は、給紙装置111およびスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
画像形成装置1による画像の形成を説明する。
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光を感光体ドラム413に照射する。こうして感光体ドラム413の表面には、静電潜像が形成される。現像装置412は、感光体ドラム413の表面にトナーを付着させることにより静電潜像が可視化される。こうして感光体ドラム413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。
感光体ドラム413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接することにより、中間転写ベルト421に各色のトナー画像が順次重なって転写される。
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、転写ニップが形成される。この転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
転写ニップに用紙Sが搬送されると二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
定着装置60は、搬送されてきた用紙Sをニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
なお、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。
中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接すると、中間転写ベルト421の前述した弾性層の弾性によって、感光体ドラム413の表面形状に合わせて変形する。弾性層上の表層は、弾性層の表面全体に接着するとともに、弾性層の変形に十分に追従する。よって、中間転写ベルト421は、感光体ドラム413に密着する。中間転写ベルト421がバックアップローラー423Aに押圧されている用紙Sに圧接したときも、中間転写ベルト421は、同様に用紙Sに密着する。このように、中間転写ベルト421は、感光体ドラム413および用紙Sへの接触性に優れる。
さらに、中間転写ベルト421は、前述した表層を有することから、感光体ドラム413および用紙Sとの接触における耐久性に優れる。そして、表層が弾性層に対して十分な接着強度で接着していることから、上記の圧接に伴い中間転写ベルト421へストレスがかかっても、表層は弾性層から剥がれない。よって、画像形成装置1は、高品質の画像を長期にわたって安定して形成することができる。
中間転写ベルト421が前述したシロキサン系ビニル共重合体と金属酸化物微粒子をさらに含有する表層を有する場合には、中間転写ベルト421の耐フィルミング性と耐久性をさらに向上させ、またその表面自由エネルギーをより低く維持する観点からより一層効果的である。
[樹脂基体の準備]
前述した導電剤を含有するポリアミドイミドからなる厚さ60μmのシームレスベルトを準備した。これを「樹脂基体」とする。
[表層用塗料の調製]
下記A成分を容器に入れ、攪拌翼で攪拌、分散し、次いで下記B成分をさらに添加し、表層用塗料を調製した。なお、「フルシェードRS」は、片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物を含有する組成物である。また、「イルガキュアー」はBASF社の、「フルシェード」は東洋インキSCホールディングス株式会社の、登録商標である。
(A成分)
アクリル系モノマー(フルシェードRS、トーヨーケム株式会社製) 100質量部
ウレタンアクリレート(AU−3110、株式会社トクシキ製) 25質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1000質量部
(B成分)
光開始剤(イルガキュアー379、BASF社製) 5質量部
[実施例1]
(1.弾性層ベルト1の作製)
上記樹脂基体の外周面に、クロロプレンゴム(CR)からなる厚さ150μmの弾性層をディッピング塗布法により作製し、弾性層ベルト1を得た。
(2.表面処理弾性層ベルトの作製)
弾性層ベルト1を円筒状基体に外嵌し、円筒状基体を回転させながら、下記の光照射条件1で弾性層の表面を光で照射し、弾性層ベルト1の表面を処理した。下記光照射条件1において、「照射距離」は、光の照射口から弾性層の表面までの距離である。また、「照射時間」は、円筒状基体を回転させている時間である。表面処理された弾性層ベルト1を「表面処理弾性層ベルト1」とする。
(光照射条件1)
光源の種類:高圧水銀ランプ(H04−L41、アイグラフィックス株式会社製)
照射距離:100mm
照射光量:1J/cm2
照射時間:15分間
(3.赤外吸収ピーク強度の測定)
パーキンエルマー社製、Spectrum One フーリエ変換赤外吸収ATR装置を用い、表面処理弾性層ベルト1の表面の赤外線吸収スペクトルを、分解能4cm−1、積算回数4回、で測定した。そして、2950±50cm−1に現れる最大の吸収のピーク強度I2950に対する、3400±50cm−1に現れる最大の吸収のピーク強度I3450の比(I3450/I2950)を求めた。各ピーク強度は、最大の吸収の強度値からベースラインの強度値を差し引いた値である。ベースラインは、当該スペクトルにおける2500cm−1の強度値と4000cm−1の強度値とを結んだ直線である。表面処理弾性層ベルト1のI3450/I2950は、0.60であった。
(4.表層の作製)
次いで、表面処理弾性層ベルト1の表面に、前述したような浸漬塗布装置を用いて、浸漬塗布方法によって、乾燥膜厚が2μmとなるように、表層用塗料を塗布し、当該塗布液の塗膜を作製した。表層用塗料の塗布条件を以下に示す。
(塗布条件)
塗布液供給量(循環量):1L/分
表面処理弾性層ベルト1の引き上げ速度:4.5mm/分
次いで、塗膜が形成された表面処理弾性層ベルト1を円筒状基体に外嵌し、円筒状基体を回転させながら下記の光照射条件2で上記塗膜を光で照射し、硬化させ、表層を作製した。こうして、無端ベルト状の中間転写体1を得た。
(光照射条件2)
光源の種類:高圧水銀ランプ(H04−L41、アイグラフィックス株式会社製)
照射距離:100mm
照射光量:1J/cm2
照射時間:240秒間
なお、クライオ集束イオンビーム(FIB)加工観察装置を用いて、液体窒素循環下、−192℃で中間転写体1の表層における直径数μmの領域を削り、当該領域の当該表層を除去して、弾性層の表層側表面を露出させた。そして、露出した部分の赤外線吸収スペクトルを、前述のように測定した。その結果、当該露出した部分におけるI3450/I2950は、0.60であった。以上より、中間転写体1の表層を削って露出させた弾性層の表層側表面の上記比は、中間転写体1の製造過程で測定される弾性層の表層側表面の上記比と実質的に同じであることが確認された。また、前述したように上記比が実質的に同じであることから、弾性層の水酸基の形態の変化は生じていないことが確認された。
[実施例2]
CRに代えてNBR(ニトリルブタジエンゴム)を用いる以外は、弾性層ベルト1と同様にして、弾性層ベルト2を得た。そして、弾性層ベルト1に代えて弾性層ベルト2を用いる以外は、実施例1と同様にして、中間転写体2を得た。表面処理弾性層ベルト2のI3450/I2950は、0.55であった。
[比較例1〜4]
弾性層ベルト1の表面処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、中間転写体3を得た。弾性層ベルト1のI3450/I2950を測定したところ、当該比は0であった。
また、弾性層ベルト1の表面処理における照射時間を1分間とした以外は実施例1と同様にして、中間転写体4を得た。表面処理弾性層ベルト4のI3450/I2950は、0.40であった。
同様に、弾性層ベルト2の表面処理を行わなかった以外は実施例2と同様にして、中間転写体5を得た。弾性層ベルト2のI3450/I2950を測定したところ、当該比は0.15であった。
また、弾性層ベルト2の表面処理における照射時間を1分間とした以外は実施例2と同様にして、中間転写体6を得た。表面処理弾性層ベルト6のI3450/I2950は、0.45であった。
中間転写体1〜6の材料、照射時間および上記ピーク強度比を表1に示す。
[中間転写体の評価]
図3に示されるようなフルカラー画像形成装置を評価機として用意した。この評価機は、コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社製bizhub PRO C6500(レーザー露光、反転現像、中間転写体のタンデムカラー複合機)を、中間転写体1〜6を搭載可能に改造した装置である。
(1)転写率
上記評価機における露光量を適正化し、評価機に中間転写体1〜6をそれぞれ搭載し、20℃、50%RHで、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の各色の印字率が2.5%の画像を、中性紙に100万枚印刷した。
次いで、吸引装置を用いて、一次転写後であって二次転写前の中間転写体1の表面の所定の面積の領域(10mm×50mmを三点)のトナーを採取し、二次転写前のトナーの重量A(g)を測定した。
次いで、二次転写後の中間転写体1上の転写残トナーを、ブッカーテープにより採取し、白色用紙に貼り付けた。そして、白色用紙を測色し、予め検量していたトナー重量と測色値の関係から、転写残トナーの重量B(g)を求めた。白色用紙の測色には、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM−2002)を用いた。
そして、転写率η(%)を下記式から求め、下記の基準に基づいて、中間転写体1〜6のそれぞれの転写率を評価した。
(式)
η(%)={1−(B/A)}×100
(転写率の評価基準)
◎:転写率が98%以上100%以下
〇:転写率が95%以上98%未満
△:転写率が90%以上95%未満
×:転写率が90%未満
(2)耐キズ性
「(1)転写率」の評価と同じ方法で100万枚の印刷を行った。印刷前後に中間転写体1〜6のそれぞれの表面状態を観察し、表面における100mm×100mmの部分にあるキズを数えた。そして、下記の基準に基づいて、中間転写ベルト1の耐キズ性を評価した。
(耐キズ性の評価基準)
◎:キズの発生なし
〇:キズの発生数が1以上6未満
△:キズの発生数が6以上11未満
×:キズの発生数が11以上
(3)耐剥がれ性
「(1)転写率」の評価と同じ方法で300万枚の印刷を行った。印刷前後に中間転写体の表面状態を観察し、表面における100mm×100mmの部分にある表層が剥がれている部分の面積Sp(cm2)を測定し、下記式によって剥がれ面積比率Rp(%)を算出した。
(式) Rp={Sp(cm2)/100cm2}×100
そして、下記の基準に基づいて、中間転写体1の耐剥がれ性を評価した。
(耐剥がれ性の評価基準)
◎:Rpが0.1%未満
○:Rpが0.1%以上1.0%未満
△:Rpが1.0%以上5.0%未満
×:Rpが5.0%以上
(4)耐フィルミング性
「(1)転写率」の評価と同じ方法で100万枚の印刷を行った。印刷前後の中間転写体1〜6のそれぞれの色の差(色差)ΔEを求めた。印刷前後の中間転写体の色の測定には、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM−2002)を用いた。そして、印刷前後の色の値の差ΔEを算出した。算出したΔEから、下記の基準に基づいて、中間転写体1〜6それぞれの耐フィルミング性を評価した。耐フィルミング性が良好であることは、低表面自由エネルギー特性を有することを意味する。
(耐フィルミング性の評価基準)
◎:ΔEが0以上1未満
〇:ΔEが1以上4未満
△:ΔEが4以上6未満
×:ΔEが6以上
中間転写体1〜6の評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、中間転写体1および2では、転写率、耐キズ性、耐剥がれ性および耐フィルミング性の全てにおいて、良好な結果が得られた。これは、弾性層の表面に十分量の水酸基が存在し、この水酸基が表層のアクリル系材料と相互に作用し、高い接着性を発現した、と考えられる。特に、中間転写体1は、中間転写体2よりも良好な性能を示している。よって、ピーク強度比が高いほど上記接着性が高まる、と考えられる。
一方、中間転写体3〜6では、転写率、耐キズ性、耐剥がれ性および耐フィルミング性のいずれも、良好な結果が得られなかった。これは、弾性層の表面に水酸基が実質的に存在しなかったか、または当該表面における水酸基の存在量が不十分だったため、と考えられる。また、中間転写体4および6における紫外線の照射時間は1分間と短いが、ピーク強度比はそれぞれ0.4および0.45と、中間転写体1および2のそれに近い。このことから、弾性層の表面を紫外線でわずかに照射するだけでも、弾性層と表層との接着性を高めることが可能であること、しかしながら、中間転写体として使用できるほどの弾性層と表層との接着性を得るためには、弾性層の表面を紫外線でさらに十分に照射する必要があること、がわかる。