JP6299196B2 - 転写ベルトおよび画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、転写ベルトおよびそれを有する画像形成装置に関する。
中間転写体を有する画像形成装置では、感光体で形成されたトナー画像は、中間転写体に転写され、次いで普通紙などの記録媒体に転写される。中間転写体には、無端状の転写ベルトが知られている。当該転写ベルトには、弾性層とその上に配置される表面層とを有し、弾性層および表面層の微小マルテンス硬度が特定された転写ベルトが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−113074号公報
上記転写ベルトの表面層は、弾性層の弾性による変形に適切に対応して変形可能であり、かつ適度な硬度を有する。このような表面層の物性は、実質的には、ウレタン−イソシアネート系組成物という特定の材料によって表面層を構成することによって実現されている。しかしながら、転写ベルトの表面層の好適な材料には、上記組成物以外の他の材料も知られている。よって、特定の材料を用いなくても、転写ベルトの耐摩耗性、耐クラック性および転写性を高められることが求められている。
本発明の第1の目的は、耐摩耗性、耐クラック性および転写性に優れる新規な転写ベルトを提供することである。
また、本発明の第2の目的は、上記転写ベルトを有する画像形成装置を提供することである。
本発明に係る転写ベルトは、弾性層と表面層とがこの順で重なって構成される。当該表面層のナノインデンテーション法で測定される硬さは、70〜120MPaであり、当該弾性層の粘弾性率は、65〜80%である。
また、本発明に係る画像形成装置は、感光体に形成されたトナー画像を記録媒体に転写するための上記転写ベルトを少なくとも有する。
本発明によれば、上記表面層は、弾性層の弾性による変形に適切に対応して変形可能であり、かつ適度な硬度を有する。よって、本発明によれば、耐摩耗性、耐クラック性および転写性に優れる新規な転写ベルトを提供することができる。
図1Aは、本発明の一実施形態における転写ベルトを模式的に示す図であり、図1Bは、当該転写ベルトの層構造を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態における画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
[転写ベルト]
本実施の形態に係る転写ベルトの一例を図1Aおよび図1Bに示す。転写ベルト1の形状は、図1Aに示されるように、無端状である。転写ベルト1は、図1Bに示されるように、基層2、弾性層3および表面層4によって構成されている。弾性層3は、基層2上に配置され、表面層4は、弾性層3上に配置されている。
なお、本発明において、転写ベルトの形状は、無端状に限定されず、シート状であってもよい。また、本発明において、当該転写ベルトは、基層のような、弾性層および表面層以外の他の層をさらに有していてもよい。
[基層]
基層2は、弾性層3および表面層4などの他の機能的な層を支持するための層である。基層2の形状は、無端ベルト状である。基層2は、単層構造を有していてもよいし、2層以上の複数層構造を有していてもよい。基層2の厚さは、機械的強度、画質、製造コストなどの観点から、50〜250μmであることが好ましい。
基層2の材料は、転写ベルトの用途や形態などに応じた、耐久性や柔軟性などの所期の物性を有する公知の材料から適宜に選ばれる。基層2の材料の例には、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合、ポリ塩化ビニル、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステルおよびポリアミドが含まれる。基層2の材料は、ポリイミドであることが、耐久性の観点から好ましい。
基層2は、導電性を有することが好ましい。導電性を有する基層2は、上記材料の樹脂中に導電剤を分散させることによって構成される。
上記導電剤は、一種でもそれ以上でもよい。導電剤の例には、イオン導電剤および電子導電剤が含まれる。イオン導電剤の例には、ヨウ化銀、ヨウ化銅、過塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフロオロメタンスルホン酸リチウム、有機ホウ素錯体のリチウム塩、リチウムビスイミド((CFSONLi)およびリチウムトリスメチド((CFSOCLi)が含まれる。電子導電剤の例には、銀や銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、ステンレス鋼などの金属;およびグラファイトや、カーボンブラック、カーボンナノファイバーカーボンナノチューブなどの炭素化合物;が含まれる。基層2中の上記導電剤の含有量は、例えば、基層2の所期の導電性と導電剤の種類とに応じて適宜に決めることができる。
[弾性層]
弾性層3は、弾性を有する層であり、転写時における記録媒体への転写ベルト1の接触性を高める。弾性層3の厚さは、機械的強度、画質、製造コストなどの観点から、200〜500μmであることが好ましい。
弾性層3の粘弾性率は、65〜80%である。当該粘弾性率は、下記式から求められる。下記式中、Rvは弾性層の粘弾性率を、Svは弾性層の粘性ひずみ量を、Seは弾性層の弾性ひずみ量を表す。
Rv(%)=Sv/(Se+Sv)×100
弾性層の粘性ひずみ量とは、弾性層に外力を与えた後に弾性層を当該外力から開放したときに、当該外力からの開放だけでは回復しない、当該外力の向きへの歪みの量である。弾性層の弾性ひずみ量とは、当該外力からの開放によって回復する、当該外力の向きへの歪みの量である。
上記粘弾性率は、市販の粘弾性測定装置を用いて測定することが可能である。たとえば、弾性層の粘弾性率は、株式会社ウェイブサイバー製の粘弾性測定機「ベスメータ」を用いて測定することが可能である。
測定される弾性層の厚さは、1mm以上であることが好ましい。よって、厚さ1mm以上の弾性層3の測定用サンプルから、上記測定装置を用いて上記粘弾性率を測定することが好ましい。しかしながら、上記粘弾性率は、上記測定装置を用いて、弾性層3を含む積層体から測定することも可能である。たとえば、弾性層3の粘弾性率は、基層2上に弾性層3を形成した転写ベルト1の半製品や、転写ベルト1から基層2または表面層4を剥離して弾性層3を露出させた転写ベルト1の加工品などから測定することが可能である。
弾性層3の粘弾性率が上記範囲よりも大きいと、弾性層3の弾性による形状の変化が起こりやすいが弾性層3の元の形状に戻りにくく、転写ベルト1の転写性が不十分となることがある。弾性層3の粘弾性率が上記範囲よりも小さいと、弾性層3の弾性による形状の変化からの戻りが早すぎ、表面層4に亀裂が生じることがある。
弾性層3の粘弾性率は、応力の平均化によるストレス低減の観点から、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。また、弾性層3の粘弾性率は、(画像品質)の観点から、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。
弾性層3の上記粘弾性率は、例えば、弾性層3を構成する、弾性を有する材料の種類や、当該材料の架橋度などによって調整することが可能である。
弾性層3を構成する材料は、一種でもそれ以上でもよい。当該材料の例には、ゴム、エラストマーおよび樹脂が含まれる。当該材料は、ゴム材料であること好ましく、架橋系のゴム材料であることが、弾性層3の圧縮永久ひずみを十分に小さくする観点からより好ましい。上記架橋系のゴム材料の例には、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)およびエピクロルヒドリンゴム(ECO)が含まれる。
弾性層3は、本発明の効果が得られる範囲において、他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分の例には、上記導電剤、充填剤、老化防止剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤が含まれる。
[表面層]
表面層4は、転写ベルト1の摩耗を抑制し、転写ベルト1の耐久性を高めるための層である。表面層4の厚さは、機械的強度、画質、製造コストなどの観点から、1〜5μmであることが好ましい。
表面層4のナノインデンテーション法で測定される硬さは、70〜120MPaである。当該硬さは、ナノインデンテーション法用の圧子を用い、表面層4に対する当該圧子の押し込み荷重と押し込み深さとを連続して測定し、得られた測定結果から算出される。たとえば、圧子の押し込み荷重を0.1〜30μNまで0.3μN刻みで変化させて、圧子の押し込み深さが表面層4の厚さを十分に超える程度(例えば50μm)まで測定し、当該圧子を押し込んだ際の荷重曲線から、上記硬さは算出される。
上記硬さは、例えば、ナノインデンター(微小硬度計)、具体的には「Triboscope」(Hysitron社製)または「NanoNaviII」(SIIナノテクノロジー社製)を用いて測定される。表面層4の上記硬さは、例えば、転写ベルト1の表面をランダムに10点測定し、得られた測定値の平均値として求められる。
表面層4の上記硬さが70MPa未満であると、表面層4の硬さなどの機械的強度が不十分となり、表面層4が摩耗することがある。表面層4の上記硬さが120MPaを超えると、表面層4の変形のしやすさが不十分となり、弾性層3の弾性による変形によって表面層4にクラックが生じ、また、転写ベルト1の転写性が不十分となることがある。
表面層4の上記硬さは、(耐摩耗性)の観点から、70MPa以上であることが好ましく、90MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。また、表面層4の上記硬さは、(耐クラック性)の観点から、120MPa以下であることが好ましく、115MPa以下であることがより好ましく、110MPa以下であることがさらに好ましい。
表面層4の上記硬さは、例えば、表面層4を構成する樹脂の種類や、当該樹脂の架橋度などによって調整することが可能である。
表面層4の材料は、弾性層3を保護するのに十分な機械的強度と、記録媒体に対する弾性層3の変形に対応して変形するのに十分な可撓性とを有する表面層4を構成する材料から、適宜に決めることができる。このような観点から、表面層4は、硬化性組成物の硬化物によって構成されていることが好ましい。
上記硬化性組成物は、活性エネルギー線が照射されることによって硬化する組成物である。上記硬化物は、活性エネルギー線の照射によって硬化した成分である。たとえば、ラジカル重合性官能基を有する化合物は、上記硬化性組成物に含まれ、そのラジカル重合体は、上記硬化物である。当該硬化性組成物の例には、多官能(メタ)アクリレートおよびポリウレタン(メタ)アクリレートを含有する組成物が含まれる。
[多官能(メタ)アクリレート]
上記多官能(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する。上記多官能(メタ)アクリレートは、表面層4の耐摩耗性、強靱性、密着性を発現させるのに好適である。
多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量は、より高い密度の硬化した樹脂を形成し、高い強度の表面層4を得る観点から、1,000以下であることが好ましく、200〜600であることがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)法により測定される。
上記硬化性組成物中の多官能(メタ)アクリレートの含有量は、20〜60質量%であることが好ましい。多官能(メタ)アクリレートは、一種でもそれ以上でもよい。
上記多官能(メタ)アクリレートの例には、2官能単量体および3官能以上の多官能単量体が含まれる。上記多官能(メタ)アクリレートが上記多官能単量体を含むことは、表面層4の機械的強度を高める観点から好ましい。
上記2官能単量体の例には、ビス(2−アクリロキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、およびウレタンアクリレートが含まれる。
上記多官能単量体の例には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ウレタンアクリレート、および、多価アルコールと多塩基酸および(メタ)アクリル酸とから合成されるエステル化合物(例えばトリメチロールエタン/コハク酸/アクリル酸=2/1/4モルから合成されるエステル化合物)が含まれる。
[ポリウレタン(メタ)アクリレート]
上記ポリウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有し、かつ、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する高分子化合物である。ポリウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、主鎖にウレタン結合を有し、1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基が主鎖の末端に結合し、または主鎖から分枝している高分子化合物である。上記ポリウレタン(メタ)アクリレートは、弾性層3の変形に対応する適度な可撓性を表面層4に付与するのに好適である。
上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、10,000〜20,000であることがより好ましい。また、上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの伸び率は、250%以上であることが好ましく、250〜400%であることがより好ましい。さらに、上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの引張強度は、200kg/cm(19.6MPa)以上であることが好ましく、250〜350kg/cm(24.5〜36.7MPa)であることがより好ましい。上記記載の特性を持つ材料を使用することで、じん性に優れた耐久性の高い硬化膜を得ることができる。
上記の物性を有する上記ポリウレタン(メタ)アクリレートは、表面層4に上記可撓性および耐傷性の両方を付与するのに好適である。上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される。上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの伸び率および引張強度は、例えば、厚み30±10μm、幅15mmのポリウレタン(メタ)アクリレート単体の試料を用いて、「オートグラフAGS−J」(株式会社島津製作所製)によって測定される。
上記硬化性組成物中の上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、20〜50質量%であることが好ましい。上記ポリウレタン(メタ)アクリレートは、一種でもそれ以上でもよい。
上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの例には、AU−3110(株式会社トクシキ)、UV−3000BおよびUV−3520TL(日本合成化学工業株式会社)が含まれる。
[低表面エネルギー基を有する重合性化合物]
上記硬化性組成物は、低表面エネルギー基を有する重合性化合物をさらに含有することが、例えば転写ベルトのトナーに対するクリーニング性を高める観点から好ましい。
上記低表面エネルギー基を有する重合性化合物は、低表面エネルギー基と重合性官能基とを有する。低表面エネルギー基は、表面層4の表面自由エネルギーを低減する機能を有する官能基である。上記低表面エネルギー基を有する重合性化合物は、例えば、シリコーン変性またはフッ素変性された(メタ)アクリレートであり、上記低表面エネルギー基は、例えば、当該(メタ)アクリレートにおけるシリコーン変性またはフッ素変性された部位である。上記重合性官能基は、例えば、炭素間二重結合などのラジカル重合性二重結合である。上記低表面エネルギー基を有する重合性化合物は、表面層4の表面エネルギーを小さくし、転写ベルトのクリーニング性を高めるのに好適である。
上記シリコーン変性された部位の例には、ジメチルポリシロキサンまたはメチルハイドロジェンポリシロキサンから一つ以上の置換基が除かれた一価または多価の基が含まれる。上記フッ素変性された部位には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)から一つ以上の置換基が除かれた一価または多価の基が含まれる。
上記低表面エネルギー基を有する重合性化合物の例には、1つ以上のポリオルガノシロキサン鎖またはポリフルオロアルキル鎖、および、3つ以上のラジカル重合性官能基を有する、数平均分子量5,000〜100,000の化合物(以下、「重合性高分子化合物」ともいう。)が含まれる。
上記重合性高分子化合物の数平均分子量が5,000未満であると、重合性高分子化合物が結晶化しやすくなり、当該重合性高分子化合物の生産性が低下することがある。上記重合性高分子化合物の数平均分子量が100,000を超えると、表面層4の硬度が低下し、転写ベルト1の転写性が不十分となることがある。上記重合性高分子化合物の数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される。
上記重合性高分子化合物は、例えば、ビニル重合体(A)と化合物(B)とを反応させることによって得られる。上記ビニル重合体(A)は、ラジカル重合性二重結合とポリオルガノシロキサン基またはポリフルオロアルキル基とを有する単量体(a)と、ラジカル重合性二重結合および第1の反応性官能基を有する、単量体(a)以外の単量体(b)と、をラジカル重合させることによって得られる。上記化合物(B)は、上記第1の反応性官能基と反応可能な第2の反応性官能基とラジカル重合性二重結合とを有する。すなわち、上記重合性高分子化合物は、上記第1の反応性官能基と上記第2の反応性官能基とが反応してなる化合物である。
上記ビニル重合体(A)のラジカル重合させるべき原料は、単量体(a)および単量体(b)以外の、ラジカル重合性二重結合を有する単量体(c)をさらに含んでいてもよい。
または、上記重合性高分子化合物は、上記単量体(a)と、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有する単量体(c’)とラジカル重合させることによって得られる。この場合も、ラジカル重合させるべき原料は、上記単量体(c)をさらに含んでいてもよい。上記単量体(c’)の使用量を少なくすると、上記重合性高分子化合物の生成時におけるゲル化を防止することが可能となる。また、単量体(c’)のラジカル重合性二重結合の一部を保護基で保護すると、上記ゲル化を抑制することが可能となる。
[単量体(a)]
上記単量体(a)は、ラジカル重合性二重結合とポリオルガノシロキサン基またはポリフルオロアルキル基とを有する上記単量体(a)は、表面層4の表面自由エネルギーを低くするのに好適である。単量体(a)は、一種でもそれ以上でもよい。当該単量体(a)のうち、ラジカル重合性二重結合とポリオルガノシロキサン基とを有する単量体(a)の例には、下記式(1)で表される化合物が含まれる。
Figure 0006299196
式(1)中、Rは、CH=CHCH−COO−(CH)m−、CH=C(CH)−COO−(CH)m−、CH=CH−(CH)m−、または、CH=C(CH)−(CH)m−、(mは、それぞれ0〜10の整数)を示す。Rは、水素原子、メチル基、またはRと同じ官能基を示す。R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を示す。nは正の整数を示す。R〜R中の水素原子は、本発明の効果が得られる範囲で、水素原子以外の公知の置換基に置換されていてもよい。
市販されている上記単量体(a)の例には、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTSL9705などの片末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサン化合物、および、JNC株式会社製のサイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725などの片末端(メタ)アクリロキシ基含有ポリオルガノシロキサン化合物、が含まれる。なお、「サイラプレーン」は、JNC株式会社の登録商標である。
上記ビニル重合体(A)中の当該単量体(a)に由来する構造単位の含有量は、表面層4の表面自由エネルギー、上記硬化性組成物に含まれる他の成分との相溶性、弾性層3に対する表面層4の密着性、表面層4の強靭性などの、表面層4の性能および上記ビニル重合体(A)の溶媒への溶解性などの観点から、総量で、1〜80質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、10〜45質量%であることがさらに好ましい。
上記単量体(a)のうち、ラジカル重合性二重結合とポリフルオロアルキル基とを有する単量体(a)の例には、パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートなどのフッ素変性(メタ)アクリレートが含まれる。
上記フッ素変性(メタ)アクリレートは、例えば、フッ素樹脂またはその単量体とポリ(メタ)アクリル酸の単量体とが、ラジカル重合性官能基が保存された状態で反応した生成物の構造を有する。フッ素樹脂の単量体の例には、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニルエーテルなどのフッ素化オレフィンモノマーが含まれる。上記ポリ(メタ)アクリル酸の単量体には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、および、グリシジル(メタ)アクリレート、が含まれる。市販されているフッ素変性(メタ)アクリレートの例には、メガファックRS−72−K(DIC株式会社製)が含まれる。なお、「メガファック」は、DIC株式会社の登録商標である。
上記(メタ)アクリル酸のアルキルエステルにおけるアルキル基の例には、エチル、ブチル、オクチルおよびドデシルが含まれる。上記(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルにおける上記ヒドロキシアルキル基の例には、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシブチルが含まれる。
上記フッ素変性(メタ)アクリレートは、低エネルギー成分であるフッ素を表面層4の表面からある程度の深さまで導入することができる。したがって、表面層4の表面がある程度の深さまで摩耗しても所期の低表面エネルギー特性が発現される。このような安定した低表面エネルギー特性を得る観点から、上記フッ素変性(メタ)アクリレートは、フッ素化オレフィンモノマーとしてテトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンを用いた、数平均分子量が10,000以上の上記フッ素変性(メタ)アクリレートであることが好ましい。
上記ビニル重合体(A)中における当該フッ素変性(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、上記の安定した低表面エネルギー特性を得る観点から、10〜40質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。当該含有量が10質量%未満であると、上記の安定した低表面エネルギー特性が不十分となることがある。上記含有量が40質量%を超えると、表面層4の硬さなどの機械的強度が不十分となることがあり、また、後述する硬化性組成物の塗布性が不十分となることがある。
[単量体(b)]
上記単量体(b)は、上記ラジカル重合性二重結合と第1の反応性官能基とを有する、上記単量体(a)以外の化合物である。単量体(b)は、一種でもそれ以上でもよい。単量体(b)におけるラジカル重合性二重結合の数、および、単量体(b)における第1の反応性官能基の数は、それぞれ、単数でも複数でもよい。単量体(b)は、上記ビニル重合体(A)にラジカル重合性二重結合を導入する起点となる。上記ビニル重合体(A)に導入されたラジカル重合性二重結合は、活性エネルギー線の照射によって互いに架橋する。当該架橋により、表面層4からの当該ビニル重合体(A)のブリードがより一層抑制され、より一層強靭な表面層4が構成される。
上記第1の反応性官能基は、単量体(a)に含まれるいずれかの基と反応して化学的に結合する。たとえば、第1の反応性官能基は、上記式(1)のR〜Rのいずれかと反応する基である。第1の反応性官能基の例には、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基およびエポキシ基が含まれる。
ヒドロキシ基を有する単量体(b)の例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびヒドロキシスチレンが含まれる。
カルボキシル基を有する単量体(b)の例には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸などが挙げられる。
イソシアネート基を有する単量体(b)の例には、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、および、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとの反応生成物、が含まれる。当該ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが含まれる。当該ポリイソシアネートの例には、トルエンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが含まれる。
エポキシ基を有する単量体(b)の例には、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイドおよび1,3−ブタジエンモノエポキサイドが含まれる。
上記ビニル重合体(A)中の当該単量体(b)に由来する構造単位の含有量は、表面層4の耐擦傷性、硬度、表面自由エネルギーなどの観点から、総量で、10〜90質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、40〜85質量%であることがさらに好ましい。
[単量体(c)]
上記単量体(c)は、上記ラジカル重合性官能基を有する、上記単量体(a)および上記単量体(b)以外の化合物である。単量体(c)は、一種でもそれ以上でもよい。単量体(c)中のラジカル重合性官能基の数は、単数でも複数でもよい。上記ビニル重合体(A)が単量体(c)に由来する構造単位を含むことは、上記硬化性組成物中の他の成分に対する相溶性を向上させる観点や、表面層4の硬度、強靭性、耐擦傷性などの物性を付与しまたは高める観点などから、好適である。
上記単量体(c)の例には、(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニル単量体、オレフィン系炭化水素単量体、ビニルエステル単量体、ビニルハライド単量体およびビニルエーテル単量体が含まれる。
上記(メタ)アクリル酸誘導体の例には、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートおよびベンジル(メタ)アクリレートが含まれる。
上記芳香族ビニル単量体の例には、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロメチルスチレンおよびトリフルオロメチルスチレンなどのスチレン類が含まれる。
上記オレフィン系炭化水素単量体の例には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレンおよび1,4−ペンタジエンが含まれる。
上記ビニルエステル単量体の例には、酢酸ビニルが含まれる。
上記ビニルハライド単量体の例には、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが含まれる。
上記ビニルエーテル単量体の例には、ビニルメチルエーテルが含まれる。
上記ビニル重合体(A)中の当該単量体(c)に由来する構造単位の含有量は、上記相溶性の向上の観点から、総量で、0〜89質量%から決められる。
上記ビニル重合体(A)は、公知の方法、例えば、溶液重合で合成することができる。重合時の溶媒は、一種でもそれ以上でもよい。当該溶媒の例には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエチル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、および、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、が含まれる。重合時の溶媒の仕込み量は、重合反応に供される組成物において、0〜80質量%から決められる。
上記重合時には、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤は、一種でもそれ以上でもよい。当該重合開始剤の例には、重合開始剤として通常使用される過酸化物およびアゾ化合物が含まれる。当該過酸化物の例には、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエートおよびクメンヒドロキシペルオキシドが含まれる。当該アゾ化合物の例には、アゾイソブチルバレノニトリルおよびアゾビスイソブチロニトリルが含まれる。
重合温度は、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜140℃である。
上記ビニル重合体(A)の好ましい数平均分子量は、5,000〜100,000である。
[化合物(B)]
上記化合物(B)は、上記ラジカル重合性官能基と第2の反応性官能基とを有する化合物である。化合物(B)は、一種でもそれ以上でもよく、化合物(B)中のラジカル重合性官能基の数、および、化合物(B)中の上記第2の反応性官能基の数は、ぞれぞれ、単数でも複数でもよい。
上記第2の反応性官能基は、前述した第1の反応性官能基と反応する基である。第1の反応性官能基および第2の反応性官能基の組み合わせ、当該第2の反応性官能基を有する化合物(B)、および、当該化合物(B)および上記ビニル重合体(A)からの上記重合性高分子化合物の合成は、例えば、以下の通りである。
第1の反応性官能基がヒドロキシ基である場合、第2の反応性官能基の例には、酸ハロゲン基およびイソシアネート基が含まれる。当該第2の反応性官能基を有する化合物(B)の例には、(メタ)アクリル酸クロライドおよび(メタ)アクリロキシエチルイソシアネートが含まれる。
(メタ)アクリル酸クロライドを用いる上記重合性高分子化合物の合成の例には、上記ビニル重合体(A)の溶液に触媒を添加し、(メタ)アクリル酸クロライドをされに添加し、加熱すること、が含まれる。当該溶液に含まれる溶媒の例には、2−ブタノン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルなどのエステル、および、エチレングリコールジメチルエーテルおよびジオキソランなどのエーテル、が含まれる。上記触媒の例には、トリエチルアミンおよびジメチルベンジルアミンが含まれる。上記の合成における当該触媒の量は、例えば、反応に供される組成物の固形分に対して0.1〜1質量%である。当該合成反応は、ゲル化抑制の観点から、空気下で行うことが好ましく、反応温度は、例えば80〜120℃であり、反応時間は、例えば1〜24時間である。
(メタ)アクリロキシエチルイソシアネートを用いる上記重合性高分子化合物の合成の例には、上記ビニル重合体(A)の溶液に触媒を添加し、加熱下、(メタ)アクリロキシエチルイソシアネートをさらに添加すること、が含まれる。当該溶液に含まれる溶媒は、例えば上記の溶媒である。上記触媒の例には、オクチル酸スズ、ジブチルジラウリン酸錫、オクチル酸亜鉛などの金属化合物、および、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどの3級アミン、が含まれる。上記の合成における当該触媒の量は、例えば、0.05〜1PHR(Per Hundred Resin)である。
第1の反応性官能基がエポキシ基である場合、第2の反応性官能基の例には、カルボキシル基が含まれる。当該第2の反応性官能基を有する化合物(B)の例には、(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールトリアクリレート無水コハク酸付加物および(メタ)アクリロキシエチルフタレートが含まれる。
例えば、当該化合物(B)として(メタ)アクリル酸を用いる上記重合性高分子化合物の合成の例には、上記ビニル重合体(A)の溶液に触媒を添加し、(メタ)アクリル酸をさらに添加して加熱すること、が含まれる。当該合成は、前述した第1の反応性官能基がヒドロキシ基である場合と同様に行うことが可能である。当該合成における触媒は、3級アミンが好ましい。
第1の反応性官能基がイソシアネート基である場合、第2の反応性官能基の例には、ヒドロキシ基が含まれる。当該第2の反応性官能基を有する化合物(B)の例には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、が含まれる。当該合成は、前述した第1の反応性官能基がヒドロキシ基である場合と同様の条件で行うことが好ましい。
前述のように、上記ビニル重合体(A)に上記化合物(B)を反応させることにより、上記重合性高分子化合物が得られる。
化合物(B)は、ビニル重合体(A)が有する第1の反応性官能基の数に対し、化合物(B)の数が100%となる量で、ビニル重合体(A)と反応させることが好ましい。十分な光反応性が得られる範囲であれば、当該数の割合が100%未満となる量で、化合物(B)をビニル重合体(A)と反応させてもよい。
上記重合性高分子化合物中の上記単量体(a)に由来する構造単位の含有量は、上記硬化性組成物の固形分に対して、0.01〜10質量%とすることができる。上記重合性高分子化合物は、上記硬化性組成物が弾性層3に塗布された時に表面に濃縮される性質がある。このため、表面層4は、上記硬化性組成物の上記単量体(a)の量が少なくても、十分に低い表面自由エネルギーを発現することができる。
[単量体(c’)]
単量体(c’)は、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有する化合物である。単量体(c’)と上記単量体(a)とをラジカル重合させることによっても、ビニル重合体(A)を得ることが可能である。単量体(c’)は、一種でもそれ以上でもよい。単量体(c’)は、前述した単量体(a)〜(c)および化合物(B)の中から選ぶことが可能である。また、当該単量体(c’)を用いるビニル重合体(A)の合成は、前述した条件のうちのいずれかの条件によって行うことが可能である。
上記重合性高分子化合物は、市販品であってもよい。当該市販品の例には、「メガファック」(DIC株式会社製)および「フルシェード」(東洋インキ株式会社製)が含まれる。なお、「メガファック」は、DIC株式会社の登録商標であり、「フルシェード」は、東洋インキSCホールディングス株式会社の登録商標である。
上記低表面エネルギー基を有する重合性化合物の上記硬化性組成物中における含有量は、1〜30質量%であることが好ましい。
表面層4中における、上記多官能(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、20〜60質量%であることが好ましく、上記ポリウレタン(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、20〜50質量%であることが好ましく、上記低表面エネルギー基を有する重合性化合物に由来する構造単位の含有量は、1〜30質量%であることが好ましい。
[金属酸化物微粒子]
表面層4は、表面処理された金属酸化物微粒子をさらに含有していてもよい。表面層4に当該金属酸化物微粒子が含有されていることは、表面層4の強靱性を高め、表面層4の耐久性を高める観点から好適である。当該金属酸化物微粒子は、金属酸化物微粒子(以下、表面処理されていない金属酸化物微粒子を特に「未処理金属酸化物微粒子」とも言い、表面処理された金属酸化物微粒子を単に「金属酸化物微粒子」とも言う)を、表面処理剤によって表面処理することにより得ることができる。
上記未処理金属酸化物微粒子は、金属の酸化物であればよい。当該金属は、遷移金属を含む。当該金属の酸化物の例には、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデンおよび酸化バナジウムが含まれる。中でも、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛および酸化錫がより好ましく、アルミナおよび酸化錫が特に好ましい。
上記未処理金属酸化物微粒子は、気相法、塩素法、硫酸法、プラズマ法、電解法などの一般的な製造法で作製される。
上記未処理金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、1〜300nmであることが好ましく、3〜100nmであることがより好ましい。当該数平均一次粒径が小さすぎると、表面層4の耐摩耗性が不十分となることがある。また、当該数平均一次粒径が大きすぎると、表面層4を光硬化によって作製する際の光が金属酸化物微粒子によって遮られ、硬化不足によって表面層4の耐摩耗性が不十分となることがある。
上記未処理金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子株式会社製)により10000倍の拡大写真を撮影し、凝集粒子を除く300個の粒子をスキャナーによりランダムに取り込んだ写真画像を、自動画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ)ソフトウェアバージョン Ver.1.32を使用して処理することによって求めることが可能である。
上記表面処理剤は、例えば、ラジカル重合性官能基を有する化合物(D)である。当該化合物(D)は一種でもそれ以上でもよい。当該ラジカル重合性官能基の例には、アクリロイル基およびメタクリロイル基((メタ)アクリロイル基)が含まれる。また、上記表面処理剤は、例えば、シリコーンオイルやポリフルオロアルキル基を有する撥液性の化合物(E)である。当該化合物(E)は、表面層4に低表面エネルギー性を付与する観点から好適である。当該シリコーンオイルの例には、ストレートシリコーンオイル(例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン(MHPS)など)および変性シリコーンオイルが含まれる。
上記金属酸化物微粒子は、その表面に少なくとも上記ラジカル重合性官能基および低表面エネルギー官能基のいずれかが導入されていることが好ましい。ここで、低表面エネルギー官能基とは、上記化合物(E)によって導入された撥液性の官能基であって、例えば、シランカップリングされたシリコーンオイル基やポリフルオロアルキル基などである。ラジカル重合性官能基および低表面エネルギー官能基の両者を上記金属酸化物微粒子の表面に導入する場合のラジカル重合性官能基と低表面エネルギー官能基との比率は、2:1〜1:2であることが好ましい。
上記化合物(D)は、炭素間二重結合などのラジカル重合性官能基と、未処理金属酸化物微粒子の表面のヒドロキシ基とカップリングするアルコキシ基などの極性基とを同一分子中に有する化合物であることが好ましい。
上記化合物(D)は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により重合(硬化)して、ポリスチレンやポリ(メタ)アクリレートなどの樹脂となることが好ましい。中でも、少ない光量または短い時間での硬化が可能であることから、化合物(D)は、(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物であることがより好ましい。
上記化合物(D)の例には、下記式(2)で表される化合物が含まれる。
Figure 0006299196
式(2)中、Rは、独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアラルキル基を表し、R10は、ラジカル重合性官能基を含む有機基を表し、Xは、独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基またはフェノキシ基を表し、mは、1〜3の整数を表す。
上記式(2)で表される化合物(D)の例には、下記式S−1〜S−30で表される化合物が含まれる。
Figure 0006299196
また、上記化合物(D)は、上記式(2)で表される化合物以外の化合物であってもよい。このような化合物(D)の例には、下記式S−31〜S−33で表される化合物が含まれる。
Figure 0006299196
また、上記化合物(D)は、エポキシ系化合物であってもよい。このような化合物(D)の例には、下記式S−34〜S−36で表される化合物が含まれる。
Figure 0006299196
上記金属酸化物微粒子の製造方法は、例えば、未処理金属酸化物微粒子100質量部、表面処理剤0.1〜200質量部および溶媒50〜5000質量部を、湿式メディア分散型装置で混合する方法である。
また、上記金属酸化物微粒子の製造方法は、例えば、未処理金属酸化物微粒子および表面処理剤を含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を攪拌する方法である。当該攪拌により、未処理金属酸化物微粒子の凝集体が解砕されると同時に、未処理金属酸化物微粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して金属酸化物微粒子が取り出されるので、表面処理剤により均一でより微細に表面処理された金属酸化物微粒子を得ることが可能である。
表面処理剤の表面処理量(未処理金属酸化物微粒子における表面処理剤の被覆量)は、金属酸化物微粒子に対し0.1〜60質量%であることが好ましい。特に好ましくは、5〜40質量%である。
上記表面処理剤の表面処理量は、例えば、金属酸化物微粒子を550℃で3時間熱処理し、その強熱残分を蛍光X線にて定量分析し、上記表面処理剤に由来する元素の量、例えばSi量、を上記表面処理剤の分子量に換算することによって求めることが可能である。
上記湿式メディア分散型装置は、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクを高速回転させることにより、金属酸化物微粒子の凝集粒子を砕いて粉砕・分散することができる装置である。当該湿式メディア分散型装置の構成は、未処理金属酸化物微粒子に表面処理を行う際に未処理金属酸化物微粒子を十分に分散させ、かつ表面処理できる構成であれば問題ない。当該構成の例には、縦型、横型、連続式、回分式など、種々の様式が含まれる。上記湿式メディア分散型装置の例には、サンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミルおよびダイナミックミルが含まれる。
上記湿式メディア分散型装置において、上記メディアは、衝撃圧壊、摩擦、剪断、ズリ応力などにより微粉砕や分散などを行う。当該メディアの例には、ボールおよびビーズが含まれる。当該ビーズの例には、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが含まれる。特にジルコニア製やジルコン製のボールが好ましい。また、上記ビーズの直径は、通常は1〜2mm程度であるが、本発明では0.3〜1.0mm程度であることが好ましい。
上記攪拌ディスクや上記容器の材料は、例えば、ステンレス鋼、ナイロン、セラミックなどである。本発明では、上記攪拌ディスクや上記容器の材料は、セラミックであることが好ましい。当該セラミックの例には、ジルコニアおよびシリコンカーバイドが含まれる。
上記分散の終点は、例えば、分散液を、PETフィルム上にワイヤーバーで塗布した液を自然乾燥後、405nmの光透過率の1時間前との変化率が3%以下となること、より好ましくは1%以下になること、によって確認することができる。
前述した湿式処理により、表面処理剤で表面処理された金属酸化物微粒子を得ることができる。上記硬化性組成物中の上記金属酸化物微粒子の含有量は、表面層4の耐久性を高める観点や、表面層4の十分な可撓性を確保する観点などから、5〜25質量%であることが好ましい。また、表面層4中の上記金属酸化物微粒子の含有量は、上記の観点から、5〜25質量%であることが好ましい。
[その他の添加剤]
表面層4は、他の添加剤をさらに含有していてもよい。当該他の添加剤は、例えば、上記硬化性組成物に添加することによって、表面層4に適宜に添加される。当該他の添加物は、硬化性組成物に、表面層4の製造に適当な物性を付与するために添加されてもよい。当該他の添加剤の例には、重合開始剤、有機溶剤、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤および表面改質剤が含まれる。
上記重合開始剤の例には、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物およびベンゾフェノン系化合物などのカルボニル化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物およびホスフィンオキサイド系化合物が含まれる。重合開始剤は、一種でもそれ以上でもよい。
上記カルボニル化合物の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが含まれる。
上記硫黄化合物の例には、テトラメチルチウラムモノスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィドが含まれる。
上記アゾ化合物の例には、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビス−2,4−ジメチルバレロが含まれる。
上記パーオキサイド化合物の例には、ベンゾイルパーオキサイドおよびジ−t−ブチルパーオキサイドが含まれる。
上記重合開始剤は、光安定性、光開裂の高効率性、表面硬化性、硬化樹脂との相溶性、低揮発性および低臭気性が得られるという観点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンまたは1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンであることが好ましい。
上記硬化性組成物中の上記重合開始剤の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、十分な硬度と弾性層への高い密着性との両方を有する表面層が得られる観点から、2〜8質量%であることがより好ましく、3〜6質量%であることがさらに好ましい。
上記有機溶剤は、上記硬化性組成物の均一溶解性、分散安定性、表面層4の弾性層3への密着性、当該硬化性組成物の塗膜の平滑性、当該硬化性組成物の均一性などの観点から、当該硬化性組成物中に添加される。上記有機溶剤は、例えば、上記性能を満足する成分が選ばれる。上記有機溶剤の例には、アルコール系、炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、多価アルコール誘導体などの有機溶剤が含まれる。上記有機溶剤の具体例には、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルが含まれる。
[転写ベルトの製造方法]
転写ベルト1は、基層2、弾性層3および表面層4の順で、前者の層の上に後者の層を形成することによって作製される。基層2は、円筒状の金型などの適当な基体の表面に形成される。各層は、画像形成装置を構成する部材に含まれる層を形成するための公知の方法を利用して作製することが可能である。
基層2は、例えば、円筒状基体の周面に基層用の塗料を塗布し、成膜化する公知の方法によって製造することが可能である。基層用の塗料は、例えば、基層2を構成するための樹脂を有機溶剤に溶解または分散した液体である。たとえば、ポリイミド製の基層2は、ポリアミド酸溶液の管状の塗膜を乾燥し、さらに加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化することによって、製造される。当該管状の塗膜を形成する方法の例には、ポリアミド酸溶液に円筒状の金型を浸漬する方法、円筒状の金型の内周面に当該ポリアミド酸溶液を塗布する方法、および、形成された塗膜にさらに遠心力を作用させる方法、が含まれる。
弾性層3は、例えば、円筒状基体の周面上に形成された基層2に、弾性層用の塗料を塗布し、成膜化する公知の方法によって製造することが可能である。弾性層用の塗料は、例えば、弾性層3を構成するための樹脂を有機溶剤に溶解または分散した液体である。弾性層用の塗料の塗布方法の例には、ノズルによるスパイラル塗布方法が含まれる。
表面層4は、例えば、円筒状基体の周面上の基層2上の弾性層3に、表面層用の塗料を塗布し、成膜化する公知の方法によって製造することが可能である。当該表面層用の塗料の塗布方法の例には、スプレー塗布方法が含まれる。表面層用の塗料は、例えば、硬化性組成物、その溶液、またはその分散液である。
上記硬化性組成物の粘度は、10〜100cP(0.01〜0.1Pa秒)であることが好ましい。また、上記硬化性組成物の固形分濃度は、3〜10質量%であることが好ましい。当該固形分は、例えば、前述した金属酸化物微粒子、多官能(メタ)アクリレート、ポリウレタンアクリレートおよび低表面エネルギー基を有する重合性成分、である。
表面層4は、硬化性組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射することにより、作製することができる。
上記活性エネルギー線は、当該硬化性組成物を硬化させる電磁波であり、例えば、紫外線、電子線またはγ線である。当該活性エネルギー線は、紫外線または電子線であることがより好ましく、取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという観点から紫外線であることがさらに好ましい。紫外線の光源の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプおよびシンクロトロン放射光が含まれる。
上記電子線の例には、電子線加速器から放出される、50〜1000keVのエネルギーを有する電子線が含まれる。当該エネルギーは、100〜300keVであることがより好ましい。上記電子線加速器の例には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器が含まれる。
上記活性エネルギー線の照射光量は、上記硬化性組成物の硬化ムラ、硬度、硬化時間、硬化速度などの観点から、100mJ/cm以上であることが好ましく、120〜200mJ/cmであることがより好ましく、150〜180mJ/cmであることがさらに好ましい。照射光量は、例えば、UIT250(ウシオ電機株式会社製)で測定することが可能である。
活性エネルギー線の照射時間は、0.5秒間から5分間であることが好ましく、上記硬化性組成物の硬化効率や作業効率などの観点から、3秒間から2分間であることがより好ましい。
上記硬化性組成物に活性エネルギー線を照射するときの雰囲気中の酸素濃度は、上記硬化性組成物の硬化ムラや硬化時間などの観点から、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。当該酸素濃度は、例えば、当該雰囲気への窒素ガスの導入によって調整することが可能である。上記酸素濃度は、例えば、雰囲気ガス管理用酸素濃度計「OX100」(横河電機株式会社製)によって促成することが可能である。
弾性層3に塗布された上記硬化性組成物は、乾燥されることが好ましい。当該乾燥により、当該硬化性組成物の塗膜から溶剤が除去される。当該乾燥は、上記硬化性組成物中のラジカル重合性成分の重合の前後、およびその重合中のいずれに行われてもよい。当該乾燥は、上記塗膜の流動性がなくなる程度までの一次乾燥と、上記ラジカル重合性成分の重合後に、さらに表面層中の揮発性物質の量を規定量にするために二次乾燥と、であることが好ましい。上記乾燥の方法は特に限定されない。乾燥温度は、例えば40〜100℃であることが好ましく、より好ましくは60℃程度である。乾燥時間は、例えば1〜5分間であることが好ましく、より好ましくは3分間程度である。
[画像形成装置]
本実施の形態に係る画像形成装置は、感光体に形成されたトナー画像を記録媒体に転写するための転写ベルトとして、上記転写ベルトを有する。上記画像形成装置は、例えば、感光体、感光体を帯電させる帯電装置、帯電した感光体に光を照射して静電潜像を形成する露光装置、静電潜像が形成された感光体にトナーを供給して静電潜像に応じたトナー画像を形成する現像装置、静電潜像に形成されたトナー画像を記録媒体に転写するための中間転写ベルトを含む転写装置、および、トナー画像を記録媒体に定着させる定着装置、を有する。上記転写ベルトは、電子写真方式の画像形成装置における上記中間転写ベルトとして好適に用いることができる。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
上記画像形成装置は、例えば、図2に示されるように、複数組の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkと、中間転写部10と、定着装置30とを有する。
画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkは、静電潜像担持体である感光体11Y、11M、11C、11Bkと、感光体11Y、11M、11C、11Bkの表面に一様な電位を与える帯電装置23Y、23M、23C、23Bkと、一様に帯電された感光体11Y、11M、11C、11Bk上に所望の形状の静電潜像を形成する露光装置22Y、22M、22C、22Bkと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色トナーを感光体11Y、11M、11C、11Bk上に搬送して上記静電潜像を顕像化する現像装置21Y、21M、21C、21Bkと、感光体11Y、11M、11C、11Bkの表面における、後述する一次転写ローラに対向する部分と、上記帯電装置に対向する部分との間において、感光体11Y、11M、11C、11Bk上に残留したトナーを回収するためのクリーニング装置25Y、25M、25C、25Bkと、を有する。
中間転写部10は、感光体11Y、11M、11C、11Bkに当接可能に配置された中間転写ベルト16と、感光体11Y、11M、11C、11Bkに対向して配置されている一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkと、中間転写ベルト16の、中間転写ベルト16の駆動方向における上記感光体よりも上流側の表面に残留したトナーを回収するためのクリーニング装置12と、を有する。
中間転写ベルト16の形状は、無端ベルト状である。中間転写ベルト16は、複数のローラにより張架され、回動可能に支持されている。中間転写ベルト16は、本実施形態に係る転写ベルトであり、例えば、転写ベルト1である。
一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkは、中間転写ベルト16を上記感光体に当接させて、一次転写ニップ部を形成する。
定着装置30は、例えば、加熱ローラと、当該加熱ローラに当接して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、を有する。
また、上記画像形成装置は、二次転写ローラ17と、レジストローラ46と、搬送ベルト47と、を有している。二次転写ローラ17は、中間転写ベルト16に当接して二次転写ニップ部を形成する。
レジストローラ46は、画像支持体Pを上記二次転写ニップ部に搬送する。搬送ベルト47は、画像支持体Pを上記二次転写ニップ部から上記定着ニップ部に搬送する。画像支持体Pは、所期のトナー画像を最終的に担持する、いわゆる記録媒体である。画像支持体Pの例には、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙やコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙、はがき用紙、OHP用のプラスチックフィルムおよび布が含まれる。
また、上記現像装置に収容される現像剤は、磁性または非磁性のトナーによる一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとが混合された二成分現像剤であってもよい。上記トナーは、特に限定されないが、例えば、体積基準のメジアン径が3〜9μmであり、重合法によって得られた、いわゆる重合トナーが好ましい。重合トナーを用いることにより、高い解像度および安定した画像濃度を有する画像が得られると共に、画像カブリの発生が極力抑制される。
上記キャリアは、特に限定されないが、例えば、体積基準のメジアン径が30〜65μmであり、磁化量が20〜70emu/gであるフェライトキャリアが好ましい。上記メジアン径が30μm未満であると、キャリア付着による白抜け画像が生じることがある。上記メジアン径が65μmよりも大きいと、画像濃度にムラが生じることがある。
上記画像形成装置による画像の形成を説明する。
感光体11Y、11M、11C、11Bkは、それぞれ、帯電装置23Y、23M、23C、23Bkによって一様に帯電される。帯電した感光体11Y、11M、11C、11Bkには、露光装置22Y、22M、22C、22Bkから、例えばレーザー光が照射され、各色に対応した所期の画像の静電潜像が感光体11Y、11M、11C、11Bkに形成される。静電潜像が形成された感光体11Y、11M、11C、11Bkには、現像装置21Y、21M、21C、21Bkからトナーが供給され、各色のトナー画像が感光体11Y、11M、11C、11Bkに担持される。一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkは、トナー画像を担持する感光体11Y、11M、11C、11Bkに接近して中間転写ベルト16を当接させ、一次転写ニップ部を形成する。
一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkは、一次転写ニップ部に、上記感光体の表面のトナー画像を中間転写ベルト16に転写させる電界を発生させる。画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Bkにより形成された各色のトナー画像は、一次転写ニップにおいて、一次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkにより、回動する中間転写ベルト16上に逐次転写される。この一次転写によって、各色トナー画像が重ねられたフルカラーのトナー画像が中間転写ベルト16上に形成される。一次転写後の感光体11Y、11M、11C、11Bkの表面に残留するトナーは、クリーニング装置25Y、25M、25C、25Bkによって感光体11Y、11M、11C、11Bkから除去される。
画像支持体Pは、給紙カセットから給紙搬送手段によりレジストローラ46を経て二次転写ローラ17に搬送される。二次転写ローラ17は、二次転写ニップ部に、中間転写ベルト16の表面のトナー画像を画像支持体Pに転写させる電界を発生させる。上記二次転写ニップ部において、中間転写ベルト16から画像支持体Pへ、トナー画像が転写される。
トナー画像を担持した画像支持体Pは、搬送ベルト47によって定着装置30へ搬送され、定着装置30による加熱加圧処理によって、トナー画像が画像支持体Pに定着される。その後、画像支持体Pは、排紙ローラに挟持されて機外の排紙トレイ上に載置される。
なお、二次転写ローラ17により画像支持体Pにトナー画像を転写した後の中間転写ベルト16に残留するトナーは、クリーニング装置12により、中間転写ベルト16から除去される。
上記画像形成装置は、本実施の形態に係る転写ベルトを中間転写ベルトとして有する。当該中間転写ベルトは、優れた転写機能を有しながらも、高い耐久性を有する。このため、上記画像形成装置は、長期間にわたって画像品質の高い画像を形成することができる。
本実施の形態に係る転写ベルト1は、弾性層3と表面層4とがこの順で重なって構成される。表面層4のナノインデンテーション法で測定される硬さは、70〜120MPaであり、弾性層3の粘弾性率は、65〜80%である。このため、弾性層3は、記録媒体の厚さや表面の凹凸に対応して十分に変形することが可能であり、表面層4は、十分な硬さを発現しつつも、弾性層3の変形に対応して変形することが可能である。
この理由は、以下の通りと考えられる。上記範囲の粘弾性率を有する弾性層3は、粘性ひずみ量が弾性ひずみ量に比べて大きい。このため、弾性層3の変形に伴う応力は、弾性層3内により一層分散されやすい。よって、当該変形による表面層4への応力が緩和される。したがって、弾性層3の弾性によって転写ベルト1が変形しやすく、かつ表面層4の割れの発生が抑制される。
また、ナノインデンテーション法によって求められる硬さは、表面層4の変形前、変形中、および変形後のいずれの状態でも発現される硬さを表している。すなわち、ナノインデンテーション法によって求められる表面層4の硬さは、弾性層3によって変形する表面層4が常に発現し得る硬さである。本実施の形態では、転写ベルト1の摩耗を防止するのに十分な表面層4の硬さが、ナノインデンテーション法による硬さによって規定されていることから、転写ベルト1の使用に伴って表面層4が変形しても、表面層4の当該硬さによる転写ベルト1の摩耗防止効果が常に奏される。
よって、転写ベルト1は、密着性に優れ、かつ耐久性にも優れている。したがって、本実施の形態によれば、耐摩耗性、耐クラック性および転写性に優れる転写ベルトを提供することができる。
弾性層3がゴム材料で構成されていることは、転写ベルト1の長期にわたる形状安定性を維持する観点からより一層効果的である。
表面層4が活性エネルギー線で照射されて硬化する硬化性組成物の硬化物によって構成されており、当該硬化性組成物が多官能(メタ)アクリレートおよびポリウレタン(メタ)アクリレートを含有することは、画像形成装置の中間転写ベルトとして好適な耐摩耗性、耐クラック性および転写性を実現する観点からより一層効果的である。
上記硬化性組成物が低表面エネルギー基を有する重合性化合物をさらに含有することは、上記中間転写ベルトとして用いたときの転写残トナーによる画像不良を防止する観点から、より一層効果的である。
上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が10000以上であり、上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの伸び率が250%以上であり、上記ポリウレタン(メタ)アクリレートの引張強度が200kg/cm以上であることは、上記ポリウレタン(メタ)アクリレートを表面層4の原料とする上記中間転写ベルトとして好適な耐摩耗性、耐クラック性および転写性を実現する観点からより一層効果的である。
そして、画像形成装置は、上記転写ベルトを、感光体に形成されたトナー画像を記録媒体に転写するための上記中間転写ベルトとして有することによって、優れた転写性と高い耐久性とを実現することができる。このため、当該画像形成装置は、長期にわたって高品質の画像を形成することができる。
[転写ベルトの製造例1]
(1)無端ベルト状基層の作製
「U−ワニス−S(固形分18質量%)」(宇部興産株式会社製)に、乾燥した酸化処理カーボンブラック「SPECIAL BLACK4」(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0%)を、上記ワニス中の固形分100質量部に対して23質量部添加し、混合して、カーボンブラック入りポリアミド酸溶液を得た。
「ユーワニスS」は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液である。また、上記ワニスと上記カーボンブラックとの混合には、衝突型分散機「GeanusPY」(株式会社ジーナス社製)を用いた。混合条件は、圧力が200MPa、混合物の通路の最小面積が1.4mm、当該混合物を当該通路に通過させる回数が5回、であった。
上記カーボンブラック入りポリアミド酸溶液を、円筒状金型の内周面に、ディスペンサーを介して0.5mmに塗布し、当該金型を1500rpmで15分間回転させて、上記溶液の均一な厚みを有する展開層を形成した。次いで、上記金型を250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間に上記金型にあてた。次いで、上記金型を150℃で60分間加熱した。次いで、上記金型を360℃まで2℃/分の昇温速度で加熱し、さらに360℃で30分間加熱して、上記展開層から溶媒および脱水閉環に伴い発生した水を除去し、および上記展開層におけるイミド転化反応を完結させた。
次いで、上記金型を室温に戻し、上記イミド転化反応によって形成されたポリイミド層を上記金型から剥離することにより、厚み0.1mmの無端ベルト状の基層を得た。
(2)弾性層の作製
30質量部のファーネスブラック「旭#50」(旭カーボン株式会社製)と100質量部のクロロプレンゴム「PS−40A」(電気化学工業株式会社製)とを混錬し、得られた混練物を、固形分濃度が20質量%となるよう、トルエンに溶解、分散させることにより、弾性層用の塗料Ce1を調製した。
上記基層を、円筒状の回転自在な金型の外周面に被せ、当該金型を、その中心軸を回転軸として回転させながら、上記基層の外周面上に、ノズルから、スパイラル塗布により塗料Ce1を塗布し、乾燥させ、架橋工程を経て、乾燥膜厚が200μmの弾性層1を作製した。弾性層1の粘弾性率Rvを、粘弾性測定機ベスメータ(株式会社ウェイブサイバー製)で測定したところ、当該弾性層1の粘弾性率Rvは、65%であった。
(3)表面層の作製
以下に示す成分を以下に示す量で、固形分濃度が10質量%となるよう、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)中に溶解、分散させて、表面層用の塗料Cs1を調製した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 40質量部
UV−3520TL(日本合成化学株式会社製) 45質量部
メガファックRS−72−K(DIC株式会社製) 10質量部
表面処理酸化錫粒子 5質量部
なお、上記DPHAは、多官能(メタ)アクリレートであり、上記UV−3520TLは、ポリウレタンアクリレートであり、数平均分子量14,000、伸び率320、引張強度は408kgf/cm(40MPa)である。上記メガファックRS−72−Kは、低表面エネルギー基を有する重合性化合物(フッ素変性された(メタ)アクリレート)であり、上記表面処理酸化錫粒子は、前述の表面処理剤S−5で表面処理された金属酸化物微粒子である。また、「メガファック」は、DIC株式会社の登録商標である。
弾性層1の外周面上に、塗料Cs1を、塗布装置を使用して浸漬塗布方法によって塗布し、乾燥膜厚が2μmとなるように塗膜を形成した。上記塗布装置では、塗料Cs1は、弾性層1が浸漬される槽の内外を循環しており、塗料Cs1の当該槽への供給量は、1L/分とした。
得られた塗膜に、活性エネルギー線である紫外線を、下記の照射条件で照射することにより、上記塗膜を硬化させて表面層1を作製した。こうして、基層、弾性層および表面層をこの順に重ねてなる無端ベルト状の転写ベルト1を得た。
(照射条件)
光源の種類:高圧水銀ランプ「H04−L41」(アイグラフィックス株式会社製)
照射口から塗膜の表面までの距離:100mm
照射光量:1J/cm
塗膜の移動(回転)速度:60mm/秒
照射時間(塗膜が回転している時間):240秒間
なお、表面層1のナノインデンテーション法による硬さHnを測定したところ、表面層1の硬さHnは、100MPaであった。
上記硬さHnは、「Triboscope」(Hysitron社製)または「NanoNaviII」(SIIナノテクノロジー社製)を用いて、以下の測定条件で測定した。具体的には、プローブの負荷荷重を0.1μNから30μNまで0.3μN刻みで変化させて、プローブの押し込み深さが200μmを超えるまで測定データを収集し、当該押し込む深さが50μmまでの荷重曲線から算出した。ランダムに10点測定したときの各算出値の平均値をHnとした。
(測定条件)
測定圧子:ダイヤモンドBerkovich圧子
測定圧子の先端形状:正三角形
測定環境:20℃、60%RH
[転写ベルトの製造例2]
クロロプレンゴムを「DCR−66」(電気化学工業株式会社製)に変更した以外は、転写ベルトの製造例1と同様にして、転写ベルト2を作製した。転写ベルト2の弾性層の粘弾性率Rvは、80%であり、転写ベルト2の表面層の硬さHnは、100MPaであった。
[転写ベルトの製造例3]
DPHA(多官能(メタ)アクリレート)の量を60質量部、UV−3520TL(ポリウレタンアクリレート)の量を30質量部、そして、表面層用の塗料中の表面処理酸化錫粒子の量を0質量部、にそれぞれ変更した以外は、転写ベルトの製造例1と同様にして、転写ベルト3を作製した。転写ベルト3の弾性層の粘弾性率Rvは、65%であり、転写ベルト3の表面層の硬さHnは、120MPaであった。
[転写ベルトの製造例4]
表面層用の塗料中の表面処理酸化錫粒子の量を1質量部に変更した以外は、転写ベルトの製造例1と同様にして、転写ベルト4を作製した。転写ベルト4の弾性層の粘弾性率Rvは、65%であり、転写ベルト4の表面層の硬さHnは、60MPaであった。
[転写ベルトの製造例5]
DPHA(多官能(メタ)アクリレート)の量を60質量部、UV−3520TL(ポリウレタンアクリレート)の量を30質量部、表面層用の塗料中の表面処理酸化錫粒子の量を20質量部に変更し、クロロプレンゴムを「DCR−66」(電気化学工業株式会社製)に変更した以外は、転写ベルトの製造例1と同様にして、転写ベルト5を作製した。転写ベルト5の弾性層の粘弾性率Rvは、80%であり、転写ベルト5の表面層の硬さHnは、150MPaであった。
[転写ベルトの製造例6]
クロロプレンゴムを「S−40A」(電気化学工業株式会社製)に変更した以外は、転写ベルトの製造例1と同様にして、転写ベルト6を作製した。転写ベルト6の弾性層の粘弾性率Rvは、50%であり、転写ベルト6の表面層の硬さHnは、100MPaであった。
[転写ベルトの製造例7]
弾性層用の塗料に30質量部の増粘剤(「アロンA−7185」(東亜合成株式会社製)、不揮発分18質量%)をさらに添加した以外は、転写ベルトの製造例1と同様にして、転写ベルト7を作製した。転写ベルト7の弾性層の粘弾性率Rvは、90%であり、転写ベルト7の表面層の硬さHnは、100MPaであった。なお、「アロン」は、東亜合成株式会社の登録商標である。
[評価]
(1)表面層の摩耗
転写ベルト1〜7のそれぞれを、画像形成装置「C6000」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社製)に、中間転写体として搭載し、印字率10%の画像を100万枚形成した。この耐久試験後の各転写ベルトの表面の状態を顕微鏡で観察し、下記の基準により評価した。
○:摩耗なし
×:摩耗あり
上記基準の「摩耗なし」とは、表面層に、摩耗に特異的な傷や削れなどの損傷が認められないことを意味し、「摩耗あり」とは、表面層に、摩耗に特異的な傷や削れなどの損傷が認められたことを意味する。また、「○」は、実用上問題ないことを意味する。
(2)表面層のクラック
上記耐久試験後の各転写ベルトにおける任意の10箇所の単位面積(1mm)内のクラック数を数え、上記単位面積当たりのクラック数の平均値を求め、下記の基準により評価した。「○」は、実用上問題ないことを意味する。
○:クラックなし
△:クラックが10個未満
×:クラックが10以上
(3)凹凸紙に対する転写性
新規の転写ベルト1〜7を上記画像形成装置に中間転写体として搭載し、凹凸紙(レザック紙)を用いて、トナー濃度100%画像(ベタ画像)を10枚出力した。得られたベタ画像をスキャナでデジタル情報化し、画像編集、加工ソフト「フォトショップ」(アドビ システムズ社製)を用い、画像処理により各ベタ画像の画像濃度の平均値を求めた。そして、各ベタ画像における、当該平均値の90%以下の領域の面積率を求め、当該面積率の転写ベルトごとの平均値を算出し、転写ベルトごとの上記面積率とした。求められた当該面積率を下記の基準により評価した。「○」は、実用上問題ないことを意味する。なお、「フォトショップ」は、アドビ システムズ社の登録商標である。
○:画像濃度90%以下の面積率が3%以下
△:画像濃度90%以下の面積率が3%超5%以下
×:画像濃度90%以下の面積率が5%超
転写ベルト1〜7における弾性層の粘弾性率Rv、表面層のナノインデンテーション法で測定される硬さHn、および、上記評価結果、を以下の表2に示す。
Figure 0006299196
表2に示されるように、転写ベルト1〜3では、表面層の摩耗およびクラックが発生しなかった。これは、表面層が十分な硬さを有しているため、と考えられる。また、転写ベルト1〜3は、凹凸紙に対する良好な転写性を有していた。これは、弾性層が良好な粘弾性を有するので、弾性層がその弾性によって良好に変形するとともに、表面層が当該変形
対応して割れることなく十分に変形したため、と考えられる。以上より、上記Rvが65〜80%であり、上記Hnが70〜120MPaである転写ベルトは、耐摩耗性、耐クラック性および転写性に優れることが明らかになった。
一方、転写ベルト4は、表面層の摩耗が発生した。これは、表面層の硬さHnが不十分であったため、と考えられる。また、転写ベルト5は、表面層のクラックが発生し、また凹凸紙に対する転写性が不十分であった。これは、表面層が硬すぎ、弾性層の変形に対して表面層の変形が不十分であったため、と考えられる。
また、転写ベルト6は、表面層にクラックが発生した。これは、弾性層が変形してから元の形状に回復するまでが表面層にとっては速すぎ、表面層が弾性層の形状の変化に対応できず、部分的に割れたため、と考えられる。
また、転写ベルト7は、表面層のクラックが発生し、また凹凸紙に対する転写性が不十分であった。転写ベルト7において表面層のクラックが発生した理由は、弾性層が変形してから元の形状に戻るまでが表面層にとっては遅すぎ、変形した状態を強いられた表面層の内部の歪みによって表面層が割れたため、と考えられる。また、転写ベルト7において凹凸紙に対する転写性が不十分であった理由は、弾性層が変形してから元の形状に戻るまでが画像形成のプロセス速度に対して遅すぎ、転写ベルトの表面が凹凸紙の表面に十分に密着しなかったため、と考えられる。
本発明に係る転写ベルトは、ゴム材料による柔軟性と硬化樹脂による表面の硬さとの両方を常に発揮する。このため、当該転写ベルトは、種々の記録媒体に対する密着性に優れ、かつ耐久性に優れる。よって、当該転写ベルトを有する電子写真方式の画像形成装置は、高品質の画像を長期にわたって形成することができる。本発明は、当該画像形成分野に留まらず、良好な接触性と高い耐久性とを両立するシート部材の用途の開拓や当該シート部材を要する技術の発展などに寄与することが期待される。
1 転写ベルト
2 基層
3 弾性層
4 表面層
10 中間転写部
11Y、11M、11C、11Bk 感光体
12 クリーニング装置
13Y、13M、13C、13Bk 一次転写ローラ
16 中間転写ベルト
17 二次転写ローラ
20Y、20M、20C、20Bk 画像形成ユニット
21Y、21M、21C、21Bk 現像装置
22Y、22M、22C、22Bk 露光装置
23Y、23M、23C、23Bk 帯電装置
25Y、25M、25C、25Bk クリーニング装置
30 定着装置
46 レジストローラ
47 搬送ベルト
P 画像支持体

Claims (5)

  1. 弾性層と表面層とがこの順で重なって構成される転写ベルトであって、
    前記表面層のナノインデンテーション法で測定される硬さは、70〜120MPaであり、
    前記弾性層の粘弾性率は、65〜80%であ
    前記表面層は、活性エネルギー線を照射されることで硬化する硬化性組成物の硬化物によって構成されており、
    前記硬化性組成物は、多官能(メタ)アクリレートおよびポリウレタン(メタ)アクリレートを含有する、
    転写ベルト。
  2. 前記弾性層は、ゴム材料で構成されている、請求項1に記載の転写ベルト。
  3. 前記硬化性組成物は、低表面エネルギー基を有する重合性化合物をさらに含有する、請求項に記載の転写ベルト。
  4. 前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は、10000以上であり、
    前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの伸び率は、250%以上であり、
    前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの引張強度は、200kgf/cm以上である、請求項3に記載の転写ベルト。
  5. 感光体に形成されたトナー画像を記録媒体に転写するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の転写ベルトを少なくとも有する画像形成装置。
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