JP6503689B2 - 静電チャック装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
静電チャック装置は、誘電体の厚みを一定とし、静電吸着用内部電極を板状試料とほぼ同等の大きさとすることにより、板状試料の全面に亘ってほぼ均一に静電気力を発生させることができる。これにより、静電チャック装置は、板状試料の加工表面が平坦になるように、板状試料を精度良く固定することができる。また、静電チャック装置は、静電気力を用いるために周囲の雰囲気の影響を受け難く、真空下にても使用可能であることから、半導体ウエハ等の板状試料に成膜処理、エッチング処理、露光処理等を施す半導体の製造工程にて広く利用されている。
従来の静電チャック装置では、板状試料を載置する基台が誘電体の絶縁性セラミックスから構成されているため、板状試料を吸着する際、板状試料および基台の載置面それぞれに極性の異なる電荷が帯電して、静電気力が発現する。そのため、板状試料を離脱させる際に印加電圧を停止しても、板状試料および基台の載置面に帯電した電荷を直ちに放電することができず、吸着力が持続された状態、いわゆる、残留吸着力が発生した状態となり、板状試料を直ちに離脱させることができず、スループットを向上させることができないという問題があった。
このような静電チャック装置では、板状試料を離脱させる際、板状試料や基台の載置面に帯電した電荷を、導電部材により直ちにアースへ逃がして、吸着力(静電気力)を消失させることにより、短時間で載置面より板状試料を離脱させ、スループットの向上を図っている。
この静電チャック装置にあっては、残留電荷放電用端子により、板状試料に帯電した電荷を効率よくかつ確実に逃がすことができるので、短時間で載置面より板状試料を離脱させることができ、スループットの向上を図っている。
また、特許文献2の静電チャック装置では、残留電荷放電用端子が基台の積載面となる材料と異なる組成であるため、残留電荷放電用端子と基台の境界部でクラックが発生しやすいという問題、製造工程が煩雑になりコストが増加するという問題、残留電荷放電用端子を多数設置することができないため、残留電荷放出の効果に限界があるという問題があった。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1は、本実施形態の静電チャック装置の一実施形態を示す概略図であり、(a)は断面図、(b)は静電チャック装置を構成する静電チャック部材の全体を示す平面図、(c)は(b)のα部の拡大図である。
本実施形態の静電チャック装置10は、上面(一主面)11aをウエハ(板状試料)Wを載置する載置面とした静電チャック部材(本発明における基体)11、および、この静電チャック部材11の下面(他の一主面)11b側に設けられた静電吸着用電極12を備える静電チャック部13と、静電チャック部13を支持するとともに、ウエハWを冷却するベース部(基台)14とから概略構成されている。
静電チャック部材11の厚さは、0.3mm以上かつ1.0mm以下が好ましい。静電チャック部材11の厚さが、この範囲内であることが好ましい理由は、静電チャック部材11の厚さが0.3mm未満では、静電チャック部材11の機械的強度を確保することができず、一方、静電チャック部材11の厚さが1.0mmを超えると、ウエハWを吸着する際に必要な電圧が高くなり過ぎるからである。
また、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aには、その一主面11aから、静電チャック部材11の厚さ方向上方に突出する円柱状の突起部18が多数形成されている。多数の突起部18は、ウエハWを支持するための部位である。突起部18は、静電チャック部材11の表面をショット・ブラスト加工等の研削加工をすることで形成される。
静電チャック部材11の一主面(載置面)11aに突起部18が形成されている場合、少なくとも突起部18が、後述する第1領域19と第2領域20を有する。
さらに、ベース部14および有機系接着剤層17を厚さ方向に貫通し、静電吸着用電極12の下面中央部に接続され、静電吸着用電極12に直流電圧を印加する給電用端子21が設けられている。
第2領域20は、第1領域19よりも導電性が高い。
第1領域19となる原料に、第2領域20となる原料を混合し、焼結して、静電チャック部材11を製造した場合、焼結や変形により第2領域20は不定形となるが、ウエハWの電荷を均一に放出させるためには、第2領域20のアスペクト比(長辺/短辺)が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
また、第2領域20を構成する多結晶体の平均粒子径は、第1領域19を構成する多結晶体の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。多結晶体の平均粒子径が小さいと、静電チャック部材11に帯電した電荷を放出し易くなる効果があるが、静電チャック部材11の耐電圧特性が低くなるため、静電チャック装置10として機能させるための電圧を印加できなくなり、第1領域19では一定程度粒子径を大きくする必要があり、第2領域20では電荷を効率よく放出するため平均粒子径を小さくすることが好ましいからである。
また、第2領域20は、第1領域19を構成する第1絶縁性粒子よりも平均粒子径が小さい第2絶縁性粒子と、第1領域19を構成する第1導電性粒子よりも平均粒子径が小さい第2導電性粒子と、の多結晶体で構成されていることが好ましい。
第1絶縁性粒子と第2絶縁性粒子とは、同じ組成の形成材料である。また、第1導電性粒子と第2導電性粒子とは、同じ組成の形成材料であることが好ましい。同じ組成の形成材料を用いることで、第1領域19と第2領域20の境界における物性の不連続性を緩和することができるため、静電チャック部材11において、熱膨張差による破損や強度などの信頼性を高めることができる。
第1絶縁性粒子の平均粒子径が0.5μm未満では、静電チャック部材11の耐電圧や機械的強度が低下することがある。一方、第1絶縁性粒子の平均粒子径が10μmを超えると、ウエハWの表面処理を行う際のプラズマにより、静電チャック部材11の一主面11aの表面粗さが変化し易くなることがある。
第2絶縁性粒子の平均粒子径が0.1μm未満では、焼結が充分に進んでいないため、静電チャック部材11の機械的強度を確保することができないことがある。一方、第2絶縁性粒子の平均粒子径が5.0μm以上では、電荷を放出する効果が小さくなる問題がある。
第1導電性粒子の平均粒子径が0.05μm未満では、原材料の価格が高くなってしまう問題がある。一方、第1導電性粒子の平均粒子径が5.0μmを超えると、ウエハWの表面処理を行う際のプラズマにより、静電チャック部材11の一主面11aの表面粗さが変化し易くなることがある。
第2導電性粒子の平均粒子径が小さいと、同じ体積の場合でも粒子の個数が多くなるため、第1絶縁性粒子の粒界に存在する第2導電性粒子同士の導電パスができ易くなるため、導電性が高くなり、効率的に電荷を放出することができる。第2導電性粒子の平均粒子径が0.01μm未満では、原材料の価格が高くなってしまう問題がある。一方、第2導電性粒子の平均粒子径が1.0μm以上であると、導電性を高める効果が得難くなる他、ウエハWの表面処理を行う際のプラズマにより、静電チャック部材11の一主面11aの表面粗さが変化し易くなることがある。
これらの中でも、酸化アルミニウム(Al2O3)は、安価で耐熱性に優れ、複合焼結体の機械的特性も良好であることから、静電チャック部材11に好適に用いられる。
また、アルミニウム(Al)含有量が少ない絶縁性セラミックスを使用したい場合や耐食性をさらに高めたい場合には、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:3Y2O3・5Al2O3)等を用いることもできる。
平均粒子径が0.5μm以下の酸化アルミニウム粉体を用いることが好ましい理由は、平均粒子径が0.5μmを超える酸化アルミニウム粉体を用いて得られた焼結体(静電チャック部材11)においては、第2領域20の大きさが大きくなり電荷の放電が充分に起こらなくなるためである。
酸化アルミニウム(Al2O3)の原料粉体としては、平均粒子径が0.5μm以下で高純度のものであれば、特段限定されない。
導電性セラミックス粒子としては、例えば、導電性炭化珪素(SiC)粒子等が挙げられる。
高融点金属粒子としては、例えば、モリブデン(Mo)粒子、タングステン(W)粒子、タンタル(Ta)粒子等が挙げられる。
これらのなかでも、導電性炭化珪素(SiC)粒子は、これを酸化アルミニウム(Al2O3)粒子と複合化した場合、得られる複合焼結体は、電気的特性の温度依存性が小さく、ハロゲンガスに対する耐蝕性に優れ、耐熱性、耐熱衝撃性に富み、かつ高温下の使用においても熱応力による損傷の危険性が小さいので好ましい。
静電吸着用電極12の厚さは、特に限定されないが、プラズマ発生用電極として用いる場合、5μm以上かつ200μm以下であることが好ましく、10μm以上かつ100μm以下であることがより好ましい。静電吸着用電極12の厚さが前記の範囲内であることが好ましい理由は、静電吸着用電極12の厚さが5μm未満では、充分な導電性を確保することができないからである。一方、静電吸着用電極12の厚さが200μmを超えると、静電チャック部材11と静電吸着用電極12との間の熱膨張率差に起因して、静電チャック部材11と静電吸着用電極12との接合界面に亀裂が入り易くなるとともに、静電チャック部材11と静電吸着用電極12との間の段差を有機系接着剤層15で覆うことができなくなり、静電チャック部材11および静電吸着用電極12の側面方向の絶縁性が低下するからである。
ベース部14は、外部の高周波電源(図示略)に接続されており、ベース部14の内部には、必要に応じて、加熱用、冷却用もしくは温度調節用の水、または、絶縁性の熱媒もしくは冷媒を循環させる流路が形成されている。
ベース部14では、少なくともプラズマに曝される面に、アルマイト処理または絶縁膜が成膜されていることにより、耐プラズマ性が向上する上に、異常放電が防止され、耐プラズマ安定性が向上する。また、アルマイト処理または絶縁膜が成膜されていることにより、ベース部14の表面に傷が付き難くなるので、傷の発生を防止することができる。
その理由は、熱圧着式の有機系接着剤シートまたはフィルムは、静電吸着用電極12上に重ね合わせて、真空引きした後、熱圧着することにより、静電吸着用電極12との間に気泡等が生じ難くいため、剥がれ難く、静電チャック部13の吸着特性や耐電圧特性を良好に保持することができるからである。
有機系接着剤層15の厚さが上記の範囲内であれば、有機系接着剤層15と静電吸着用電極12の下面との間の接着強度が向上する上に、有機系接着剤層15の厚さがより均一になる。その結果、静電チャック部13とベース部14との間の熱伝達率が均一になり、静電チャック部13に載置されたウエハWの加熱特性または冷却特性が均一化され、ウエハWの面内温度が均一化される。
このように、有機系接着剤層15をシート状またはフィルム状の接着剤としたことにより、有機系接着剤層15の厚さが均一化され、静電チャック部13とベース部14との間の熱伝達率が均一になる。よって、静電チャック部13に載置されたウエハWの加熱特性または冷却特性が均一化され、ウエハWの面内温度が均一化される。
絶縁層16の外周部は、静電チャック部13を平面視した場合、静電チャック部材11の外周部より内側に設けられている。
このように、絶縁層16の外周部を静電チャック部材11の外周より内側に設けることにより、絶縁層16は、酸素系プラズマに対する耐プラズマ性、腐食性ガスに対する耐腐食性が向上し、パーティクル等の発生も抑制される。
絶縁層16の厚さが40μm未満では、静電吸着用電極12に対する絶縁性が低下し、静電吸着力も弱くなり、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aに、ウエハWを良好に固定することができなくなる。一方、絶縁層16の厚さが200μmを超えると、静電チャック部13とベース部14との間の熱伝達性を充分に確保することができなくなり、静電チャック部13に載置されたウエハWの加熱効率あるいは冷却効率が低下する。
ここで、熱硬化温度が70℃未満のシリコーン樹脂は、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14とを接合する際、接合過程の途中で硬化が始まってしまい、接合作業に支障を来すおそれがある。一方、熱硬化温度が140℃を超えるシリコーン樹脂は、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との熱膨張差を吸収することができず、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aにおける平坦度が低下するばかりでなく、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との間の接合力が低下し、これらの間で剥離が生じるおそれがある。
有機系接着剤層17の熱伝導率が0.25W/mk以上であることが好ましい理由は、熱伝導率が0.25W/mk未満では、ベース部14からの加熱効率あるいは冷却効率が低下し、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aに載置されるウエハWを効率的に加熱あるいは冷却することができなくなるからである。
有機系接着剤層17の厚さが50μm未満では、有機系接着剤層17が薄くなり過ぎてしまい、その結果、接着強度を充分に確保することができず、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との間で剥離等が生じるおそれがある。一方、有機系接着剤層17の厚さが500μmを超えると、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との間の熱伝達性を充分に確保することができなくなり、ベース部14からの加熱効率あるいは冷却効率が低下するおそれがある。
表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、シリコーン樹脂の熱伝導性を改善するために混入されるもので、その混入率を調整することにより、有機系接着剤層17の熱伝達率を制御することができる。
次に、本実施形態の静電チャック装置の製造方法を説明する。
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、上述の本実施形態の静電チャック装置を製造する方法であって、第1領域19中に、第1領域19よりも導電性の高い第2領域20が分散して存在している静電チャック部材(基体)11を形成する工程を有する。
第1領域19よりも第2領域20の導電性を高くする方法としては、第2領域20を構成する材料として、導電性の高い材料を用いる方法、第1領域19における第1導電性粒子の配合比よりも、第2領域20における第2導電性粒子の配合比を多くする方法等が挙げられる。第1領域19よりも第2領域20の導電性を高くする方法としては、特に、第1領域19と第2領域20に用いる材料や配合比を同じまたは近くし、粒子径や分散状態等の微細構造を変化させて、第1領域19よりも第2領域20の導電性を高くする方法が好ましい。
静電チャック部材11の第1領域19となる第1顆粒を形成する。
第1絶縁性粒子の原料粉体と第1導電性粒子の原料粉体と混合して、スラリーを調製する。
第1絶縁性粒子の原料粉体としては、平均粒子径が0.5μm以下の酸化アルミニウム粉体を用いることが好ましい。
第1導電性粒子の原料粉体としては、平均粒子径が0.1μm以上かつ5.0μm以下の炭化珪素(SiC)粉体を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等の一価アルコール類およびその変性体;α−テルピネオール等の単環式モノテルペンに属するアルコール類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの有機溶媒のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して混合溶媒として用いてもよい。
噴霧乾燥装置としては、スプレードライヤー等が好適に用いられる。
ここでは、スラリーを加熱された気流中に噴霧し乾燥することにより、スラリー中の第1絶縁性粒子の原料粉体と、第1導電性粒子の原料粉体とが均一に分散された状態で、分散媒のみが飛散し、第1絶縁性粒子の原料粉体中に第1導電性粒子の原料粉体が均一に分散した第1顆粒が得られる。アトマイザーの回転数やディスクの形状、スラリーを送る速度等のスプレードライ条件により、第1顆粒の大きさを制御でき、第1顆粒の大きさは、5μm以上かつ1000μm以下であることが好ましく、10μm以上かつ200μm以下であることがより好ましい。
静電チャック部材11の第2領域20となる第2顆粒を形成する。
第2絶縁性粒子の原料粉体と第2導電性粒子の原料粉体と混合して、スラリーを調製する。
第2絶縁性粒子の原料粉体としては、第1絶縁性粒子の原料粉体よりも平均粒子径が小さい酸化アルミニウム粉体を用いることが好ましい。
第2導電性粒子の原料粉体としては、平均粒子径が0.01μm以上かつ0.1μm以下の炭化珪素(SiC)粉体を用いることが好ましく、0.02μm以上かつ0.06μm以下の炭化珪素を用いることがより好ましい。
分散媒および分散剤としては、第1顆粒の形成に用いられたものと同様のものが用いられる。
第2顆粒の大きさは、5μm以上かつ1000μm以下であることが好ましい。
また、第2顆粒の形成におけるスラリーの調製条件および噴霧乾燥の条件を変えて、第2顆粒の硬さを、第1顆粒の硬さよりも硬くすることにより、第2領域20の形状を揃えることができる。
さらに、第1顆粒の平均粒子径と第2顆粒の平均粒子径を揃えた場合、それぞれの顆粒の硬さを変えることにより、第1顆粒と第2顆粒の混合物を焼結して、焼結体を作製したとき、第1領域19と第2領域20の大きさを好適に制御することができる。
第1顆粒と第2顆粒を公知の方法で混合し、第1顆粒と第2顆粒の混合物を調製する。
ここで、第2顆粒の混合割合を、第1顆粒と第2顆粒の混合物を焼結して得られた焼結体において、第2領域20が、その大きさが5μm以上200μm以下であり、かつ静電チャック部材11の一主面11aに1mm2当たり0.1個以上1000個以下存在するように調整する。
次いで、第1顆粒と第2顆粒の混合物を公知の成形手段により、所定形状に成形して、成形体を得る。
第1顆粒と第2顆粒の混合物の調整において分散剤を使用した場合、混合物を成形する前または後に、混合物の脱脂を行ってもよい。
成形体を1500℃以上かつ1900℃以下にて焼成することが好ましい理由は、焼成温度が1500℃未満では、成形体の焼結が不充分となり、緻密なセラミックス焼結体が得られなくなるおそれがあるからである。一方、焼成温度が1900℃を超えると、成形体の焼結が進みすぎて、異常粒成長等が生じる等のおそれがあり、その結果、緻密なセラミックス焼結体が得られなくなるおそれがあるからである。
第2領域の大きさや個数を測定する方法としては、焼結体を薄く研削した後、微細な測定端子で導電性の分布を測定する方法の他、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いる方法、光学顕微鏡を用いる方法を使用することができる。
第2領域の大きさの測定方法としては、画像解析ソフト等を用いて面積を測定し、同じ面積となる円の直径に換算する方法を用いることが好ましい。第2領域の面積の平均値から換算された円の直径を、第2領域の大きさとする。
「セラミックス誘電体材料の作製」
平均粒子径が0.15μmの酸化アルミニウム(Al2O3)粉体が92質量%、平均粒子径が0.1μmのSiC粉体が8質量%となるように、酸化アルミニウム(Al2O3)粉体とSiC粉体を秤量して、スラリーを調製した。
このスラリーを、湿式ジェットミル装置を用いて、100MPaの圧力で加圧し、スラリー同士を斜向衝突させることで、水中に分散する分散処理を行い、分散液を調整した。
この分散液を、スプレードライヤーを用いて200℃にて乾燥し、第1顆粒を形成した。
次いで、平均粒子径が0.1μmの酸化アルミニウム(Al2O3)粉体が92質量%、平均粒子径が0.03μmのSiC粉体が8質量%となるように、酸化アルミニウム(Al2O3)粉体とSiC粉体を秤量して、スラリーを調製した。
このスラリーを、湿式ジェットミル装置を用いて、100MPaの圧力で加圧し、スラリー同士を斜向衝突させることで、水中に分散する分散処理を行い、分散液を調整した。
この分散液を、スプレードライヤーを、第1顆粒よりも小さい顆粒となる条件を用いて200℃にて乾燥し、第2顆粒を形成した。
次いで、乾式の撹拌混合容器を用いて、第1顆粒と第2顆粒を混合し、第1顆粒と第2顆粒の混合物(Al2O3−SiC複合粉体)を調製した。ここで、第1顆粒と第2顆粒との混合比を、質量比で93:7とした。
次いで、第1顆粒と第2顆粒の混合物を、公知の成形手段により、所定形状に成形した。
次いで、その成形体を、表面粗さRaが0.1mmの平面度を有するカーボン板に挟んで、ホットプレスを用いて、アルゴン(Ar)雰囲気下、1650℃、圧力25MPaにて2時間焼成を行い、Al2O3−SiC複合焼結体を作製した。
次いで、得られたAl2O3−SiC複合焼結体を、直径300mm、厚さ0.5mmの円板状に加工し、実施例1のAl2O3−SiC複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製した。
実施例1で作製したセラミックス誘電体材料の表面を光学顕微鏡で観察した結果を、図2に示す。なお、微細な測定端子を使用した電気的特性の評価結果から、暗く写っているところが第2領域となっていることが確認されている。同様の写真を10枚撮り、画像解析ソフトを用いて第2領域の大きさを測定したところ、24μmであり、個数は199個/mm2であった。
実施例1で作製したセラミックス誘電体材の表面を鏡面研磨し、エッチング処理をした面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察した。結果を、図3、図4および図5に示す。図3では、コントラストが暗い部分が第2領域であり、第2領域の大きさは光学顕微鏡で観察されたものと同等であった。図4は、第2領域を拡大して観察した写真。図5は、第1領域を拡大した写真である。第1領域よりも第2領域の粒径が小さいことが確認できる。なお、エッチング処理した面では、炭化珪素粒子の大部分は消失しているため、観察される粒子は酸化アルミニウムがほとんどであり、孔のあいている部分はエッチングにより消失した炭化珪素粒子もしくは脱落した酸化アルミニウム粒子、または最初から存在している気孔である。
平均粒子径が0.05μmのSiC粉体を用いて第1顆粒を形成し、平均粒子径が0.03μmのSiC粉体を用いて、第2顆粒の大きさが実施例1と比べて大きくなるように、スプレードライヤーのディスク式アトマイザーの形状および回転数を選択して、第2顆粒を形成し、第1顆粒と第2顆粒の混合比が質量比で97:3となるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のAl2O3−SiC複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製した。
実施例2で作製したセラミックス誘電体材料の表面を光学顕微鏡で観察した結果を、図6に示す。なお、微細な測定端子を使用した電気的特性の評価結果から、暗く写っているところが第2領域となっていることが確認されている。同様の写真を10枚撮り、画像解析ソフトを用いて第2領域の大きさを測定したところ、78μmであり、個数は5.8個/mm2であった。
実施例1で形成した第1顆粒のみを用い、実施例1と同様にして、比較例1のAl2O3−SiC複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製した。
実施例1で形成した第2顆粒のみを用い、実施例1と同様にして、比較例2のAl2O3−SiC複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製した。
実施例1、2および比較例1、2で得られたセラミックス誘電体材料を用いて、図1に示すような静電チャック装置を作製し、試料載置面の温度25℃にて、印加電圧1.5kV、印加時間60秒、真空中(<0.5Pa)の条件で、2インチのシリコンウエハに対する静電チャックの吸着力を測定した。吸着力の測定は、ロードセルを用いたシリコンウエハの引き剥がしにより行い、そのときに発生した引き剥がし応力を吸着力とした。
また、実施例1、2および比較例1、2で得られたセラミックス誘電体材料を用いて、図1に示すような静電チャック装置を作製し、試料載置面の温度25℃にて、1.5kVの印加電圧を60秒間付与した後、電圧の印加を解除して、その直後に、1インチのシリコンウエハに対する静電チャックの吸着力を測定した。吸着力の測定は、ロードセルを用いたシリコンウエハの引き剥がしにより行い、そのときに発生した引き剥がし応力を残留吸着力とした。
一方、残留吸着力に関して、実施例1、2は、比較例1と比べて電圧印加を解除した直後に小さくなっており、スループットが短縮できることが分かった。
なお、比較例2では、静電吸着用電極に直流1.5kVの電圧を印加すると、静電吸着用電極の間が絶縁破壊をしてしまい、静電チャックとして機能しなかった。
Claims (3)
- 基体の一主面に板状試料を静電吸着する静電チャック装置であって、
前記一主面は、第1領域と、前記第1領域の間に分散する複数の第2領域と、を有し、
前記第2領域は、前記第1領域よりも導電性が高く、前記第2領域の面積の平均値から換算された円の直径が5μm以上200μm以下であり、かつ前記一主面に1mm2当たり0.1個以上1000個以下存在し、
前記第1領域および前記第2領域は、それぞれセラミックスの多結晶体で構成され、
前記第2領域を構成する多結晶体の平均粒子径は、前記第1領域を構成する多結晶体の平均粒子径よりも小さく、
前記第1領域は、第1絶縁性粒子と第1導電性粒子の多結晶体で構成され、
前記第2領域は、前記第1絶縁性粒子よりも平均粒子径が小さい第2絶縁性粒子と、前記第1導電性粒子よりも平均粒子径が小さい第2導電性粒子と、の多結晶体で構成され、
前記第1絶縁性粒子と前記第2絶縁性粒子とは、同じ組成の形成材料であり、
前記第1導電性粒子と前記第2導電性粒子とは、同じ組成の形成材料であることを特徴とする静電チャック装置。 - 前記第1絶縁性粒子と前記第2絶縁性粒子とは、Al2O3を形成材料とし、
前記第1導電性粒子と前記第2導電性粒子とは、SiCを形成材料とすることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック装置。 - 基体の一主面に板状試料を静電吸着する静電チャック装置の製造方法であって、
第1導電性粒子および絶縁性粒子を含むスラリーを、水中に分散する分散処理を施して分散液を調製し、該分散液を乾燥して第1顆粒を形成する工程と、
第2導電性粒子および絶縁性粒子を含むスラリーを、水中に分散する分散処理を施して分散液を調製し、該分散液を前記第1顆粒よりも小さい顆粒となる条件を用いて乾燥して第2顆粒を形成する工程と、
前記第1顆粒と、前記第2顆粒と、を混合し、前記第1顆粒と前記第2顆粒の混合物を調製する工程と、
前記混合物を、所定形状に成形して成形体を形成する工程と、
前記成形体を焼成して複合焼結体を作製する工程と、
前記複合焼結体を所定形状に加工し、前記複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製する工程と、を有することを特徴とする静電チャック装置の製造方法。
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