JP6424563B2 - 静電チャック装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
静電チャック装置は、誘電体の厚みを一定とし、静電吸着用内部電極を板状試料とほぼ同等の大きさとすることにより、板状試料の全面に亘ってほぼ均一に静電気力を発生させることができる。これにより、静電チャック装置は、板状試料の加工表面が平坦になるように、板状試料を精度良く固定することができる。また、静電チャック装置は、静電気力を用いるために周囲の雰囲気の影響を受け難く、真空下にても使用可能であることから、半導体ウエハ等の板状試料に成膜処理、エッチング処理、露光処理等を施す半導体の製造工程にて広く利用されている。
従来の静電チャック装置では、板状試料を載置する基台が誘電体の絶縁性セラミックスから構成されているため、板状試料を吸着する際、板状試料および基台の載置面それぞれに極性の異なる電荷が帯電して、静電気力が発現する。そのため、板状試料を離脱させる際に印加電圧を停止しても、板状試料および基台の載置面に帯電した電荷を直ちに放電することができず、吸着力が持続された状態、いわゆる、残留吸着力が発生した状態となり、板状試料を直ちに離脱させることができず、スループットを向上させることができないという問題があった。
このような静電チャック装置では、板状試料を離脱させる際、板状試料や基台の載置面に帯電した電荷を、導電部材により直ちにアースへ逃がして、吸着力(静電気力)を消失させることにより、短時間で載置面より板状試料を離脱させ、スループットの向上を図っている。
この静電チャック装置にあっては、残留電荷放電用端子により、板状試料に帯電した電荷を効率よくかつ確実に逃がすことができるので、短時間で載置面より板状試料を離脱させることができ、スループットの向上を図っている。
また、特許文献2の静電チャック装置では、残留電荷放電用端子が基台の積載面となる材料と異なる組成であるため、残留電荷放電用端子と基台の境界部でクラックが発生しやすいという問題、製造工程が煩雑になりコストが増加するという問題、残留電荷放電用端子を多数設置することができないため、残留電荷放出の効果に限界があるという問題があった。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1は、本実施形態の静電チャック装置の一実施形態を示す概略断面図である。図2は、本実施形態の静電チャック装置を構成する静電チャック部材を示す概略平面図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のα部の拡大図である。図3は、本実施形態の静電チャック装置を構成する静電チャック部材の一主面の組成を示す模式図である。
本実施形態の静電チャック装置10は、上面(一主面)11aをウエハ(板状試料)Wを載置する載置面とした静電チャック部材(本発明における基体)11、および、この静電チャック部材11の下面(他の一主面)11b側に設けられた静電吸着用電極12を備える静電チャック部13と、静電チャック部13を支持するとともに、ウエハWを冷却するベース部(基台)14とから概略構成されている。
静電チャック部材11の厚さは、0.3mm以上かつ5.0mm以下が好ましく、0.4mm以上かつ3.0mm以下がより好ましい。静電チャック部材11の厚さが、この範囲内であることが好ましい理由は、静電チャック部材11の厚さが0.3mm未満では、静電チャック部材11の機械的強度を確保することができず、一方、静電チャック部材11の厚さが5.0mmを超えると、静電吸着用電極12と静電チャック部材11の一主面(載置面)11aとの間の距離が増加し、ウエハWを吸着する吸着力が低下するとともに、静電チャック部材11の熱容量が大きくなり、載置されるウエハWとの熱交換効率が低下し、ウエハWの面内温度を所望の温度パターンに維持することが難しくなるからである。
そこで、静電チャック部材11の一主面11aからのパーティクルの発生を防ぐために、静電チャック部材11の一主面11aは鏡面研磨されていることが好ましく、静電チャック部材11の一主面11aの表面粗さRaは0.5μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましい。
静電チャック部材11の一主面(載置面)11aに突起部18が形成されている場合、少なくとも突起部18が、後述する非凝集部19と凝集部20を有する。
さらに、ベース部14および有機系接着剤層17を厚さ方向に貫通し、静電吸着用電極12の下面中央部に接続され、静電吸着用電極12に直流電圧を印加する給電用端子21が設けられている。
静電チャック部材11は、絶縁性材料(第1絶縁性粒子22、第2絶縁性粒子23)の中に導電性粒子24が分散した複合焼結体を形成材料とする。
絶縁性材料は、絶縁性セラミックスを形成材料とし、平均粒子径が0.5μm以上かつ2.0μm以下であり、焼結体粒子からなる第1絶縁性粒子22と、絶縁性セラミックスを形成材料とし、平均粒子径が0.1μm以上かつ0.5μm未満の第2絶縁性粒子23と、を含む。
第1絶縁性粒子22は、静電チャック部材11の一主面11aに分散し、非凝集部19を構成している。
導電性粒子24は、平均粒子径が0.01μm以上かつ0.1μm以下である。また、導電性粒子24のうち、平均粒子径が0.01μm以上かつ0.03μm以下の粒子は、静電チャック部材11の一主面11aに分散し、かつ第2絶縁性粒子23とともに0.5μm以上かつ5.0μm以下の大きさで凝集した凝集部20を構成している。また、導電性粒子24のうち、平均粒子径が0.05μm以上かつ0.1μm以下の粒子は、第2絶縁性粒子23と凝集することなく、第1絶縁性粒子22の中に分散していることもある。
静電チャック部材11は、平均粒子径が0.1μm以上かつ0.5μm未満の第2絶縁性粒子23を含む凝集部20によって、多くの粒界を有するため、その粒界にて電荷の放電が良好に起こり、静電気力による吸着力を消失させて、被吸着物であるウエハWの脱離を素早く行い、スループットを向上する。
導電性粒子と第2絶縁性粒子23から構成される凝集部20の大きさが0.5μm以上かつ5.0μm以下である理由は、凝集部20の大きさが0.5μm未満では、充分に電荷の放電が起こらないからである。また、凝集部20の大きさが5.0μmを超えると、凝集部20の耐食性や耐摩耗性が他の部分と異なるため、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aの平面度を低下させたり、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aの表面粗さRaが大きくなる原因になったりするからである。
凝集部20の面積が占める割合が5%未満では、凝集部20によって、充分に電荷の放電が起こらない。一方、凝集部20の面積が占める割合が30%を超えると、凝集部20の耐食性や耐摩耗性が他の部分と異なるため、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aの平面度を低下させたり、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aの表面粗さRaが大きくなる原因になったりする。
これらの中でも、酸化アルミニウム(Al2O3)は、安価で耐熱性に優れ、複合焼結体の機械的特性も良好であることから、静電チャック部材11に好適に用いられる。
また、アルミニウム(Al)含有量が少ない絶縁性セラミックスを使用したい場合や耐食性をさらに高めたい場合には、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:3Y2O3・5Al2O3)等を用いることもできる。
平均粒子径が0.5μm以下の酸化アルミニウム粉体を用いることが好ましい理由は、平均粒子径が0.5μmを超える酸化アルミニウム粉体を用いて得られた焼結体(静電チャック部材11)においては、導電性粒子と、平均粒子径が0.1μm以上かつ0.5μm未満の第2絶縁性粒子23が凝集してなる0.5μm以上かつ5.0μm以下の凝集部20を充分に形成することが難しくなり、凝集部20からの電荷の放電が充分に起こらなくなるためである。
酸化アルミニウム(Al2O3)の原料粉体としては、平均粒子径が0.5μm以下で高純度のものであれば、特に限定されない。
導電性セラミックス粒子としては、例えば、導電性炭化珪素(SiC)粒子等が挙げられる。
高融点金属粒子としては、例えば、モリブデン(Mo)粒子、タングステン(W)粒子、タンタル(Ta)粒子等が挙げられる。
これらの中でも、導電性炭化珪素(SiC)粒子は、これを酸化アルミニウム(Al2O3)粒子と複合化した場合、得られる複合焼結体は、電気的特性の温度依存性が小さく、ハロゲンガスに対する耐蝕性に優れ、耐熱性、耐熱衝撃性に富み、かつ高温下の使用においても熱応力による損傷の危険性が小さいので好ましい。
導電性炭化珪素(SiC)粒子の原料粉体としては、プラズマCVD法、前駆体法、熱炭素還元法、レーザー熱分解法等の各種の方法により得られた炭化珪素粉体を用いることができる。特に、静電チャック部材11を半導体プロセスにて用いる場合、半導体プロセスでの悪影響を防ぐために、純度の高い炭化珪素粉体を用いることが好ましい。
静電吸着用電極12の厚さは、特に限定されないが、プラズマ発生用電極として用いる場合、5μm以上かつ200μm以下であることが好ましく、10μm以上かつ100μm以下であることがより好ましい。静電吸着用電極12の厚さが前記の範囲内であることが好ましい理由は、静電吸着用電極12の厚さが5μm未満では、充分な導電性を確保することができないからである。一方、静電吸着用電極12の厚さが200μmを超えると、静電チャック部材11と静電吸着用電極12との間の熱膨張率差に起因して、静電チャック部材11と静電吸着用電極12との接合界面に亀裂が入り易くなるとともに、静電チャック部材11と静電吸着用電極12との間の段差を有機系接着剤層15で覆うことができなくなり、静電チャック部材11および静電吸着用電極12の側面方向の絶縁性が低下するからである。
ベース部14は、外部の高周波電源(図示略)に接続されており、ベース部14の内部には、必要に応じて、加熱用、冷却用もしくは温度調節用の水、または、絶縁性の熱媒もしくは冷媒を循環させる流路が形成されている。
ベース部14では、少なくともプラズマに曝される面に、アルマイト処理または絶縁膜が成膜されていることにより、耐プラズマ性が向上する上に、異常放電が防止され、耐プラズマ安定性が向上する。また、アルマイト処理または絶縁膜が成膜されていることにより、ベース部14の表面に傷が付き難くなるので、傷の発生を防止することができる。
その理由は、熱圧着式の有機系接着剤シートまたはフィルムは、静電吸着用電極12上に重ね合わせて、真空引きした後、熱圧着することにより、静電吸着用電極12との間に気泡等が生じ難くいため、剥がれ難く、静電チャック部13の吸着特性や耐電圧特性を良好に保持することができるからである。
有機系接着剤層15の厚さが上記の範囲内であれば、有機系接着剤層15と静電吸着用電極12の下面との間の接着強度が向上する上に、有機系接着剤層15の厚さがより均一になる。その結果、静電チャック部13とベース部14との間の熱伝達率が均一になり、静電チャック部13に載置されたウエハWの加熱特性または冷却特性が均一化され、ウエハWの面内温度が均一化される。
このように、有機系接着剤層15をシート状またはフィルム状の接着剤としたことにより、有機系接着剤層15の厚さが均一化され、静電チャック部13とベース部14との間の熱伝達率が均一になる。よって、静電チャック部13に載置されたウエハWの加熱特性または冷却特性が均一化され、ウエハWの面内温度が均一化される。
絶縁層16の外周部は、静電チャック部13を平面視した場合、静電チャック部材11の外周部より内側に設けられている。
このように、絶縁層16の外周部を静電チャック部材11の外周より内側に設けることにより、絶縁層16は、酸素系プラズマに対する耐プラズマ性、腐食性ガスに対する耐腐食性が向上し、パーティクル等の発生も抑制される。
絶縁層16の厚さが40μm未満では、静電吸着用電極12に対する絶縁性が低下し、静電吸着力も弱くなり、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aに、ウエハWを良好に固定することができなくなる。一方、絶縁層16の厚さが200μmを超えると、静電チャック部13とベース部14との間の熱伝達性を充分に確保することができなくなり、静電チャック部13に載置されたウエハWの加熱効率あるいは冷却効率が低下する。
ここで、熱硬化温度が70℃未満のシリコーン樹脂は、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14とを接合する際、接合過程の途中で硬化が始まってしまい、接合作業に支障を来すおそれがある。一方、熱硬化温度が140℃を超えるシリコーン樹脂は、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との熱膨張差を吸収することができず、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aにおける平坦度が低下するばかりでなく、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との間の接合力が低下し、これらの間で剥離が生じるおそれがある。
有機系接着剤層17の熱伝導率が0.25W/mk以上であることが好ましい理由は、熱伝導率が0.25W/mk未満では、ベース部14からの加熱効率あるいは冷却効率が低下し、静電チャック部材11の一主面(載置面)11aに載置されるウエハWを効率的に加熱あるいは冷却することができなくなるからである。
有機系接着剤層17の厚さが50μm未満では、有機系接着剤層17が薄くなり過ぎてしまい、その結果、接着強度を充分に確保することができず、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との間で剥離等が生じるおそれがある。一方、有機系接着剤層17の厚さが500μmを超えると、静電チャック部13および絶縁層16と、ベース部14との間の熱伝達性を充分に確保することができなくなり、ベース部14からの加熱効率あるいは冷却効率が低下するおそれがある。
表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、シリコーン樹脂の熱伝導性を改善するために混入されるもので、その混入率を調整することにより、有機系接着剤層17の熱伝達率を制御することができる。
次に、本実施形態の静電チャック装置の製造方法を説明する。
本実施形態の静電チャック装置の製造方法は、上述の本実施形態の静電チャック装置を製造する方法であって、絶縁性セラミックスを形成材料とする絶縁性粒子と、第1導電性粒子と、第1導電性粒子よりも平均粒子径が小さい第2導電性粒子と、を用いて製造した顆粒を焼成する工程と、得られるセラミックス焼結体を用いて静電チャック部材(基体)を形成する工程と、を有する。
導電性粒子の原料粉体としては、平均粒子径が異なる2種の粒子、すなわち、第1導電性粒子と、第1導電性粒子よりも平均粒子径が小さい第2導電性粒子との原料粉体を用いる。
平均粒子径が異なる2種の導電性粒子の原料粉体を用いて、絶縁性粒子の原料粉体の焼結時の粒成長をそれぞれ制御することにより、平均粒子径が0.5μm以上かつ2.0μm以下の焼結体粒子からなる第1絶縁性粒子と、平均粒子径が0.1μm以上かつ0.5μm未満の第2絶縁性粒子とを形成する。したがって、平均粒子径の異なる2種の導電性粒子の原料粉体の混合割合を調整することにより、導電性粒子と第2絶縁性粒子が凝集してなる凝集粒子の割合が決定される。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等の一価アルコール類およびその変性体;α−テルピネオール等の単環式モノテルペンに属するアルコール類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの有機溶媒のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して混合溶媒として用いてもよい。
分散剤やバインダーとしては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム塩等のポリカルボン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の有機高分子等が用いられる。
噴霧乾燥装置としては、スプレードライヤー等が好適に用いられる。
ここでは、スラリーを加熱された気流中に噴霧し乾燥することにより、スラリー中の導電性粒子の原料粉体と、絶縁性粒子の原料粉体とが均一に分散された状態で、分散媒のみが飛散し、絶縁性材料中に導電性粒子が均一に分散した顆粒が得られる。
次いで、得られた成形体を、表面粗さRaが0.2mm以下の平面度を有するカーボン板で挟んで、所定の焼成雰囲気にて、1MPa以上かつ100MPa以下の加圧下にて焼成し、セラミックス焼結体からなる静電チャック部材を作製する。
成形体を1500℃以上かつ1900℃以下にて焼成することが好ましい理由は、焼成温度が1500℃未満では、成形体の焼結が不充分となり、緻密なセラミックス焼結体が得られなくなるおそれがあるからである。一方、焼成温度が1900℃を超えると、成形体の焼結が進みすぎて、異常粒成長等が生じる等のおそれがあり、その結果、緻密なセラミックス焼結体が得られなくなるおそれがあるからである。
平均粒子径が0.03μmのSiC粉体と、平均粒子径が0.05μmのSiC粉体とを、質量比で2:8の割合で混合した炭化珪素(SiC)粉体が8質量%、平均粒子径が0.1μmの酸化アルミニウム(Al2O3)粉体が92質量%となるように秤量して、スラリーを調製した。
このスラリーを、湿式ジェットミル装置を用いて、150MPaの圧力で加圧し、スラリー同士を斜向衝突させることで、水中に分散する分散処理を行い、分散液を調整した。
この分散液を、スプレードライヤーを用いて200℃にて乾燥し、Al2O3−SiC複合粉体を得た。
次いで、このAl2O3−SiC複合粉体を、公知の成形手段により、所定形状に成形した。
次いで、その成形体を、表面粗さRaが0.1mmの平面度を有するカーボン板に挟んで、ホットプレスを用いて、アルゴン(Ar)雰囲気下、1650℃、圧力25MPaにて2時間焼成を行い、Al2O3−SiC複合焼結体を作製した。
次いで、得られたAl2O3−SiC複合焼結体を、直径300mm、厚さ1.0mmの円板状に加工し、実施例1のAl2O3−SiC複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製した。
実施例1のセラミックス誘電体材料の表面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察した。走査型電子顕微鏡像を図4に示す。図4に示す走査型電子顕微鏡像から、粒子径1μm〜2μmの焼結体粒子と、その間に粒子径0.5μm未満の粒子が集まって凝集体を形成している構造となっているのが確認できた。
平均粒子径が0.03μmのSiC粉体と、平均粒子径が0.05μmのSiC粉体とを、質量比で1:9の割合で混合した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のAl2O3−SiC複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製した。
平均粒子径が0.05μmの炭化珪素(SiC)粉体が8質量%、平均粒子径が0.1μmの酸化アルミニウム(Al2O3)粉体が92質量%となるように秤量して、スラリーを調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例のAl2O3−SiC複合焼結体からなるセラミックス誘電体材料を作製した。
比較例のセラミックス誘電体材料の表面を、走査型電子顕微鏡で観察した。走査型電子顕微鏡像を図5に示す。図5に示す走査型電子顕微鏡像から、比較例のセラミックス誘電体材料は、粒子径0.5μm〜2μmの焼結体粒子のみからなる構造となっているのが確認できた。
実施例1、2および比較例で得られたセラミックス誘電体材料を用いて、図1に示すような静電チャック装置を作製した。
得られた静電チャック装置の静電チャック部材の一主面(載置面)に、Siウエハを静電吸着させ、この静電チャックの静電吸着力、静電吸着時間および離脱時間をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
なお、静電吸着時間とは、静電吸着用電極に、直流2500Vの電圧を印加したときに静電吸着力が9800Pa(100gf/cm2)になるまでの時間であり、離脱時間とは、静電吸着用電極に、直流2500Vの電圧を1分間印加した後に印加を中止し、その時から静電吸着力が980Pa(10gf/cm 2)になるまでの時間である。
一方、離脱時間に関して、実施例1、2は、比較例と比べて早く、スループットが約1/5〜1/10に短縮できることが分かった。
Claims (4)
- 基体の一主面に板状試料を静電吸着する静電チャック装置であって、
前記基体は、絶縁性材料の中に導電性粒子が分散した複合焼結体を形成材料とし、
前記絶縁性材料は、絶縁性セラミックスを形成材料とし、平均粒子径が0.5μm以上2.0μm以下の第1絶縁性粒子と、絶縁性セラミックスを形成材料とし、平均粒子径が0.1μm以上0.5μm未満の第2絶縁性粒子と、を含み、
前記導電性粒子は、前記一主面に分散し、かつ前記第2絶縁性粒子とともに0.5μm以上5.0μm以下の平均粒子径で凝集した凝集部を構成していることを特徴とする静電チャック装置。 - 前記一主面の面積に対する前記凝集部の面積が占める割合が5%以上30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック装置。
- 前記絶縁性セラミックスはAl2O3であり、
前記導電性粒子はSiCを形成材料とすることを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック装置。 - 基体の一主面に板状試料を静電吸着する静電チャック装置の製造方法であって、
絶縁性セラミックスを形成材料とする絶縁性粒子と、第1導電性粒子と、前記第1導電性粒子よりも平均粒子径が小さい第2導電性粒子と、を用いて製造した、平均粒子径が0.5μm以上2.0μm以下の第1絶縁性粒子と平均粒子径が0.1μm以上0.5μm未満の第2絶縁性粒子とを含む顆粒を焼成する工程と、
得られるセラミックス焼結体を用いて、前記第1導電性粒子と前記第2導電性粒子が、前記一主面に分散し、かつ前記第2絶縁性粒子とともに0.5μm以上5.0μm以下の平均粒子径で凝集した凝集部を構成する前記基体を形成する工程と、を有することを特徴とする静電チャック装置の製造方法。
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