そこで、本発明は、高齢者や要介護者などが、トイレや玄関、浴槽などの空間において、立ち上がり姿勢や座位姿勢をとるのを容易にするため、立ち上がり姿勢や座位姿勢をとる際に支柱や手摺りを介して支柱へモーメントを加えられても、支柱の固定がズレたり、支柱の固定が外れたりすることがなく、特に支柱や手摺りが回転したり、或いは支柱の回転により固定が外れたりすることがなく、さらに天井を変形させることなく強固に支柱を架設することができる手摺り装置を提供することを目的とする。
トイレや玄関、浴槽などの空間において、天井や側壁の強度を調べると、一般に側壁と天井とが交差するコーナー部が、側壁を支える支柱や筋交い、天井を支える横梁などの強度部材が最も集中することから強度が高いことが判った。そこで、本発明者らは、前記調査結果を基礎としてトイレや玄関、浴槽などの空間における支柱の固定方法について鋭意研究を重ねた結果、床面へ立設される支柱の上端付近に横梁を連結し、そして該横梁の両端部には、側壁に沿って略水平に側方に延びており且つ対向する側壁のコーナー部近傍を突っ張ることができる側壁当接部を設けることが、前記支柱の据付強度を向上させるのに最も効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、伸縮手段を有する横梁部と、前記横梁部の一の端部において前記横梁部から側方へ延出しており、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接される第1の上部側壁当接部を有する第1の天井コーナー固定部と、前記横梁部の他の端部において前記横梁部から側方へ延出しており、対向する前記側壁のうち他方の側壁に当接される第2の上部側壁当接部を有する第2の天井コーナー固定部と、そして前記横梁部から下方へ延びており、床面へ立設される支柱部と、を備えている手摺り装置が提供される。
床面に立設される支柱部は床面から略天井付近まで延びる棒形状を成しており、支柱部の長さ(高さ)を可変とするため、或いは床面と天井との間で突っ張ることができるように、支柱部は伸縮手段を備えていることが好ましい。また、支柱部が傾いた時でも、支柱部による突っ張り状態を維持することができるように、支柱部又は伸縮手段にはバネなどの付勢手段が補助的に取り付けられていてもよい。このように支柱部が棒形状であると、使用者は、立ち上がり姿勢や座位姿勢をとる際に支柱部をどの方向からも容易に掴むことができるので便利である。また、支柱部が棒形状であると、トイレや玄関、浴槽などの空間において支柱部による圧迫感を低減することができる。
また、支柱部の伸縮手段は特に限定されるものではなく、公知の技術を採用することができる。例えば支柱部を外筒と、該外筒の中にスライド可能に挿入される内筒とへ分割し、外筒の外周部には、回動することにより外筒の挿入口を縮径又は拡径させることができる回動部を設けることによって伸縮手段を構成することができる。この構成の場合、外筒から内筒を引き出すことにより、支柱部をある目的とする長さへ、或いは支柱部の上端又は上部取付け部品を天井へ当接させるために適した長さへ調節した後、外筒の挿入口を縮径させる方向へ回動部を回転することにより、外筒に対して内筒を固定することができる。
また、支柱部の伸縮手段は、例えば支柱部を下部支柱部と上部支柱部とへ分割し、下部支柱部の上端部領域と上部支柱部の下端部領域にはそれぞれ反対向きの雄ネジ溝を形成し、さらに前記両端部領域の雄ネジ溝とそれぞれに螺合する雌ネジ溝を有する筒状の回動部を外装することによっても構成することができる。この構成の場合、下部支柱部及び上部支柱部の雄ネジ溝と螺合した回動部を一方向へ回転させることにより、下部支柱部と上部支柱部を離間させたり又は接近させたりすることにより、支柱部をある目的とする長さへ、又は支柱部の上端又は上部取付け部品を天井へ当接させるために適した長さへ調節し、そのまま固定することができる。
支柱部は、支柱部から側方へ延びており、支柱部へ取り付けられる手摺り部を備えていることが好ましい。手摺り部の形状は特に限定されないが、使用者が手摺り部を容易に握ることができるように棒形状を成していることが好ましく、または使用者が手摺り部を簡単に抱かかえることができるように幅狭のテーブル形状を成していてもよい。また幅狭のテーブルは、棒形状の手摺り部へ着脱自在に取り付けられていてもよい。手摺り部が支柱部から略水平方向に側方へ延びていると、使用者は手摺り部を引き寄せる又は抱き寄せるようにして、容易に立ち上がり姿勢や座位姿勢をとることができるようになる。
また、手摺り部は、支柱部に対して略水平方向に回動及び固定可能、或いは支柱部に対して略鉛直方向に回転(跳ね上げ)及び固定可能に取り付けられていることが好ましく、さらに支柱部に対して高さ調節可能に取り付けられていることがより好ましい。手摺り部の回動及び固定手段及び高さ調節手段は特に限定されるものではなく、公知の技術を採用することができる。例えば手摺り部の回動及び固定手段は、外周面の周方向に複数の係止孔を設けた支柱部へ、手摺り部を取り付けた筒状のスリーブを回動自在に装着し、スリーブに設けたピン孔と支柱部の係止孔とが一致した回動位置において、外部より係止ピンを抜き差しできるようにすることにより構成することができる。手摺り部が支柱部へ跳ね上げ又は回動自在に取り付けられていると、高齢者や要介護者らがトイレや玄関、浴槽などへアクセスする時または手摺り装置を使用しない時などに手摺り部を退避させることができるので、邪魔となることがない。
また、手摺り部の高さ調節手段は、例えば外周面の長手方向に複数の係止孔を設けた支柱部へ、手摺り部を取り付けた筒状のスリーブをスライド自在に装着し、スリーブに設けたピン孔と支柱部の係止孔とが一致したスライド位置において、外部より係止ピンを抜き差しできるようにすることにより構成することができる。手摺り部が支柱部へ高さ調節自在に取り付けられていると、使用者の体格に合わせて手摺り部の高さを調節できるので、手摺り部の取り扱いがより一層容易になり、手摺り部を使用する利用者の安全性もより一層向上する。
支柱部は、床面に設置される基部を介して床面へ立設されていることが好ましい。上述したように、本発明では支柱部が棒形状であることが好ましいので、床面と当接する支柱部の下端部には、支柱部の断面よりも大きな面積を有する板状の基部、または支柱部の根元から放射状に延びた脚状の基部を設けると、床面を傷付けることなく安定して支柱部を立設することができる。また、支柱部は、鉛直方向に基部へ固定されていることが好ましく、溶接などにより直接的に基部へ固定されていても、若しくはジョイントなどを介して間接的に基部へ固定されてもよい。
基部は、床面に設置される基部プレートと、床面から延びており、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接される第1の下部側壁当接部を有する第1の床面コーナー固定部と、対向する側壁のうち他方の側壁に当接される第2の下部側壁当接部を有する第2の床面コーナー固定部とを備えており、第1の床面コーナー固定部および/または第2の床面コーナー固定部は、第1の床面コーナー固定部と第2の床面コーナー固定部との間の距離を調節可能に基部プレートへ取り付けられていることが好ましい。
トイレや玄関、浴槽などの床面は段差を極力減らすことが重要となるので、基部プレートおよび基部プレートへ取り付けられる第1の床面コーナー固定部、第2の床面コーナー固定部は板状であることが好ましく、剛性のある鋼板、内部にハニカム構造を有する軽量パネル、プレスなどにより筋状の凹凸を設けたリブ付きパネルなどを使用することができる。また、基部プレート、床面コーナー固定部の裏面には、床面との摩擦力を増大させるために樹脂性のラバーなどを配設してもよく、また基部プレート、床面コーナー固定部の表面には、肌触りや見栄えを良くするために樹脂性のラバーやカーペット生地を配設してもよい。
第1の床面コーナー固定部および/または第2の床面コーナー固定部は、例えば基部プレートへスライド及び固定可能に取り付けることにより、第1の床面コーナー固定部と第2の床面コーナー固定部との間の距離を調節することができるようになる。例えば基部プレート又は床面コーナー固定部のいずれか一方にはスリットを設け、他方の床面コーナー固定部又は基部プレートにはネジ孔を設け、そしてそれらを重ね合わせて、ネジを、一方の部材のスリットを通して他方の部材のネジ孔に螺合させることにより、床面コーナー固定部を基部プレートへスライド及び固定可能に取り付けることができる。
また、第1の床面コーナー固定部と第2の床面コーナー固定部との間の距離の調節手段は上記の構成に限定されるものではなく、例えば床面コーナー固定部の下部側壁当接部にボルト軸を固定し、該ボルト軸と螺合し且つ基部プレートへ回動自在に取り付けたナットを回動することにより、下部側壁当接部を螺進退させることができるようにする等の公知の技術を採用することができる。
ただし、第1の床面コーナー固定部の第1の下部側壁当接部および第2の床面コーナー固定部の第2の下部側壁当接部は、いずれも側壁に沿って略水平に横方向へ延びている板形状又は棒形状を有していることが好ましい。第1の下部側壁当接部および第2の下部側壁当接部が側壁に沿って横方向に延びていると、第1の下部側壁当接部を、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接させ、第2の下部側壁当接部を、対向する側壁のうち他方の側壁に当接させ、そして第1の床面コーナー固定部及び/又は第2の床面コーナー固定部を基部プレートへ固定すると、基部プレートは対向する側壁に対して物理的に回転することができなくなる。このため、基部プレートへ固着するように立設された支柱部および該支柱部に取り付けられた手摺り部は、基部を介してその回転や捻りが強力に防止されることになる。
次に、支柱部の上端付近に取り付けられる横梁部、該横梁部の端部に取り付けられる第1の天井コーナー固定部および第2の天井コーナー固定部について詳しく説明する。
支柱部の上端付近には、横梁部が支柱部を中心として回転しないように取り付けられる。また、横梁部の長さを可変とするため、或いは対向する側壁の間で、後述する第1の天井コーナー固定部と第2の天井コーナー固定部を介して突っ張ることができるように、横梁部は伸縮手段を備えている。さらに、第1の天井コーナー固定部又は第2の天井コーナー固定部が、当接する側壁から動いてしまった時でも、横梁部による突っ張り状態を維持することができるように、横梁部又は伸縮手段にはバネなどの付勢手段が補助的に組み込まれていてもよい。なお、支柱部は、横梁部に対して回転しないように横梁部へ固定されていれば、横梁部に対する取付け位置を変えられるように接合されていてもよい。
横梁部の伸縮手段は特に限定されるものではなく、公知の技術を採用することができる。支柱部の伸縮手段と同様に、例えば横梁部を棒状の外筒と、該外筒の中にスライド可能に挿入される棒状の内筒とへ分割し、外筒の外周部には、回動することにより外筒の挿入口を縮径又は拡径させることができる回動部を設けることによって伸縮手段を構成することができる。この構成の場合、外筒から内筒を引き出すことにより、横梁部の端部に取り付けられた第1の天井コーナー固定部と第2の天井コーナー固定部を側壁へ当接させるために適した長さへ調節した後、外筒の挿入口を縮径させる方向へ回動部を回転することにより、外筒に対して内筒を固定することができる。
また、横梁部の伸縮手段は、例えば横梁部を第1の横梁部と第2の横梁部とへ分割し、第1の横梁部の第2の横梁側端部領域と、第2の横梁部の第1の横梁側端部領域にはそれぞれ反対向きの雄ネジ溝を形成し、さらに前記両端部領域の雄ネジ溝とそれぞれに螺合する雌ネジ溝を有する筒状の回動部を外装することによっても構成することができる。この構成の場合、第1の横梁部及び第2の横梁部の雄ネジ溝と螺合した回動部を一方向へ回転させることにより、第1の横梁部と第2の横梁部を離間させたり又は接近させたりすることにより、横梁部の端部に取り付けられた第1の天井コーナー固定部と第2の天井コーナー固定部を側壁へ当接させるために適した長さへ調節し、そのまま固定することができる。
また、横梁部が、T字型の筒状のジョイントなどを介して、横梁部が支柱部を中心として回転しないが、横梁部の軸方向へスライド可能に間接的に取り付けられている場合、横梁部はT字型の筒状のジョイントを通過して全体の長さを変化させることができるので、伸縮手段が横梁部に1箇所設けられていれば、横梁部は、対向する側壁の間で、第1の天井コーナー固定部と第2の天井コーナー固定部を介して突っ張るように長さ調節をすることができる。
一方、横梁部が、溶接などにより、横梁部が支柱部を中心として回転せず、且つ横梁部の軸方向へもスライドしないように直接的に取り付けられている場合、横梁部は、支柱部から第1又は第2の天井コーナー固定部までの長さはそれぞれ個別に調節できるのみであるので、伸縮手段は、支柱部との接続部位を挟んで横梁部に2箇所以上設けなければ、横梁部は、支柱部を平面上の任意の位置に立脚させながら、対向する側壁の間で第1の天井コーナー固定部と第2の天井コーナー固定部を介して突っ張るように長さ調節をすることができなくなる。
平面視において、横梁部に対して連結角度を変えられないように横梁部へ固定されている第1の天井コーナー固定部は、横梁部の一の端部において横梁部から側方へ延出しており、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接される第1の上部側壁当接部を有していることが好ましい。また、第1の天井コーナー固定部と同様に、平面視において、横梁部に対して連結角度を変えられないように横梁部へ固定されている第2の天井コーナー固定部も、横梁部の他の端部において横梁部から側方へ延出しており、対向する2つの側壁のうち他方の側壁に当接される第2の上部側壁当接部を有していることが好ましい。なお、第1及び第2の天井コーナー固定部は、横梁部に対して連結角度を変えられないように横梁部へ固定されていれば、横梁部に対する取付け位置を変えられるように接合されていてもよい。
第1の上部側壁当接部および第2の上部側壁当接部が側壁に沿って横方向に延びていると、第1の上部側壁当接部を、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接させ、第2の上部側壁当接部を、対向する側壁のうち他方の側壁に当接させ、そして第1の天井コーナー固定部及び/又は第2の天井コーナー固定部を横梁部へ固定すると、横梁部は対向する側壁に対して物理的に回転することができなくなる。
すなわち、横梁部から側壁に沿って側方に延びている第1及び第2の上部側壁当接部は、それぞれ横梁部に対して水平方向に角度不変に固定されるので、水平方向への回転が規制されて、特に横梁部の水平方向への回転が強力に防止される。
その結果、横梁部へ回転不能に接合された支柱部および該支柱部に取り付けられた手摺り部は、横梁部および該横梁部へ接合された第1及び第2の上部側壁当接部を介してその回転や捻りが強力に防止されることになる。また、第1及び第2の上部側壁当接部は、側壁を支える支柱や筋交い、天井を支える横梁などの強度部材が集中することにより比較的強度が高いコーナー部へ当接されるので、側壁中央付近や天井中央部付近を利用して支柱を固定する従来の手摺り装置よりも据付強度が高く、また側壁や天井を変形させることがないという優れた効果を奏する。特に第1の上部側壁当接部、第2の上部側壁は、それらの前記延出長さが長ければ長いほど、横梁部及び支柱部の水平方向への回転をより一層強力に防止することができる。
また、第1の天井コーナー固定部は、一方の側壁から延びている天井に当接される第1の天井当接部を有していることが好ましく、また第2の天井コーナー固定部も、他方の側壁から延びている天井に当接される第2の天井当接部を有していることが好ましい。第1の天井コーナー固定部および/または第2の天井コーナー固定部が第1の天井当接部、第2の天井当接部を有していると、横梁部へ接合された支柱部は、横梁部および該横梁部へ接合された第1及び第2の天井当接部を介して、床面及び天井との間で強力に突っ張ることができるようになる。
すなわち、第1及び第2の天井当接部は、それぞれに横梁部から天井に沿って側方に延びており、横梁部に対して鉛直方向に角度不変に固定されるので、鉛直方向に回転すると摩擦力が働いて、支柱部の鉛直方向への回転が強力に防止される。
また、上記の効果は、支柱部の上端に天井に当接される補助当接部を取り付けることによっても得ることができる。この場合、補助当接部は横梁部との接合部から天井に沿って側方に延びていることが好ましく、第1の天井当接部および/または第2の天井当接部と併用しても、或いは併用しなくても構わない。
補助当接部は、横梁部と接合されている支柱部に対して鉛直方向に角度不変に固定されるので、天井当接部を天井コーナー固定部に設けた場合と同様に、鉛直方向に回転すると摩擦力が働いて、支柱部の鉛直方向への回転が強力に防止される。
その結果、横梁部へ回転不能に接合された支柱部および該支柱部に取り付けられた手摺り部は、横梁部および該横梁部へ接合された第1及び第2の天井当接部を介してその転倒が強力に防止されることになる。また、第1及び第2の天井当接部は、側壁を支える支柱や筋交い、天井を支える横梁などの強度部材が集中することにより比較的強度が高いコーナー部へ当接されるので、側壁中央付近や天井中央部付近を利用して支柱を固定する従来の手摺り装置よりも据付強度が高く、また側壁や天井を変形させることがないという優れた効果を奏する。
特に、第1の天井当接部が横梁部の一の端部において横梁部から側方へ延出しており、第2の天井当接部が横梁部の他の端部において横梁部から側方へ延出している場合は、第1の天井当接部、第2の天井当接部は、それらの前記延出長さが長ければ長いほど、横梁部及び支柱部の鉛直方向への回転防止効果がより一層強化される。
第1及び第2の上部側壁当接部、第1及び第2の天井当接部は、横梁部との接合部から側方に延びていれば、板状、角柱状又は円柱状などの部材を使用することができ、第1の天井コーナー固定部および/または第2の天井コーナー固定部の全体形状としては、棒状であることが好ましい。このため、第1の天井コーナー固定部の断面形状および/または第2の天井コーナー固定部の断面形状は、L字型、ロの字型又は略円形などであることが好ましい。
天井コーナー固定部が上述したような形状、断面形状を有していると、簡単かつ比較的軽量な構造であるにもかかわらず、側壁と天井とのコーナー部を確実かつ強力に押圧することが可能となり、またコーナー部における見栄えもスッキリしてよくなる。特に天井コーナー固定部の断面形状がL字型、ロの字型又は略円形を有していると、第1の上部側壁当接部の当接面と第1の天井当接部の当接面、および/または第2の上部側壁当接部の当接面と第2の天井当接部の当接面は、互いに略直交する当接面を含むことになる。
このため、天井コーナー固定部を、1つの部材において側壁と天井とへ同時に当接させることができるので、強度的にも重量的にも極めて有利となる。また、天井コーナー固定部の断面形状が略円形を有している場合、或いは断面形状がL字型又はロの字型であっても、その表面にスペーサーを備えている場合は、側壁と天井とのコーナー部に回り縁が設置されていても、側壁と天井とへ同時に容易に当接させることができる。
さらに、第1の天井コーナー固定部および/または第2の天井コーナー固定部が棒状であるような場合、または該天井コーナー固定部の断面形状がL字型、ロの字型又は略円形などであるような場合であって、第1の上部側壁当接部の当接面と第1の天井当接部の当接面は互いに連続して形成されているような場合、および/または第2の上部側壁当接部の当接面と第2の天井当接部の当接面は互いに連続して形成されているような場合は、部材の強度がより一層向上し、一般に側壁と天井とのコーナー部をより確実に且つより強力に押圧することが可能となる。
なお、上述した第1及び第2の上部側壁当接部、第1及び第2の天井当接部は、その全部の面が一様に側壁、天井と接する必要はなく、横梁部との接合部から側方へ離れた位置において側壁、天井と接触可能であれば、点接触近似の接触形態であってもよい。側壁、天井へ接触する部分が横梁部との接合部から側方へ離れていれば、第1及び第2の上部側壁当接部、第1及び第2の天井当接部が横梁部との接合部から延びた方向への回転を効果的に防止できるからである。
また、第1及び第2の天井コーナー固定部と同様に、横梁部も棒状であることが好ましい。横梁部も棒状であると、簡単かつ比較的軽量な構造であるにもかかわらず、強い強度を得ることができるばかりでなく、天井に設置されている照明器具や感知器などを簡単に避けて配置することができるようになるので、手摺り装置の取り付けの自由度が高まり、また取り付け自体も容易になる。
また、本発明の手摺り装置では、上述した支柱部及び該支柱部に取り付けた手摺り部を複数個設けてもよい。この場合、2つ目の支柱部を、1つ目の支柱部が取り付けられている横梁部や基部とは別の横梁部や基部へ取り付けてもよいし、1つ目の支柱部が取り付けられている横梁部や基部へ取り付けてもよい。後者のように、支柱部を接続する横梁部や基部を共通化すると、手摺り装置全体の一体化により、構造体として、手摺り装置全体の剛性及び強度がより一層向上する。また、支柱部及び該支柱部に取り付けた手摺り部を複数個設けることにより、支柱部を1つ設けた場合に比べて、必要とされる手摺り部の腕の長さを1/2以下にできるので、支柱部に加わる曲げモーメントを大幅に低減することができ、支柱部や手摺り部の回転や捻りを効果的に防止することができる。
本発明の手摺り装置によれば、高齢者や要介護者などが、トイレや玄関、浴槽などの空間において、立ち上がり姿勢や座位姿勢をとるのを容易にするため、立ち上がり姿勢や座位姿勢をとる際に支柱や手摺りを介して支柱へモーメントを加えられても、支柱の固定がズレたり、支柱の固定が外れたりすることがなく、特に支柱や手摺りが回転したり、或いは支柱の回転により固定が外れたりすることがなく、さらに天井を変形させることなく強固に支柱を架設することができる。
また、本発明の手摺り装置は躯体構造がシンプルで、部材の形状も棒状などの省スペース部材を選ぶことができるので、手摺り装置の設置場所は、トイレや浴槽など閉空間などに限定されるものではなく、玄関や廊下など、床面と天井と、該天井から下方へ延びた2以上の側壁を有すれば、開いた空間であっても設置することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る手摺り装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
[第1の実施形態]
図1には、トイレのような空間に設置された本発明の第1の実施形態に係る手摺り装置1の斜視図が示されている。
本実施形態の手摺り装置1は、伸縮手段20を有する横梁部2と、横梁部2の一の端部において横梁部2から側方へ延出しており、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接される第1の上部側壁当接部30Lを有する第1の天井コーナー固定部3Lと、横梁部2の他の端部において横梁部2から側方へ延出しており、対向する側壁のうち他方の側壁に当接される第2の上部側壁当接部30Rを有する第2の天井コーナー固定部3Rと、そして横梁部2から下方へ延びており、基部5を介して床面へ立設される支柱部4を備えている。
本実施形態において、支柱部4は伸縮手段40を有しており、さらに支柱部4から側方へ延びており、支柱部4に対して水平方向に回動及び固定可能であり且つ高さ調節可能に取り付けられている手摺り部41を含んでいる。
本実施形態において、基部5は、床面に設置される基部プレート50と、床面から延びており、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接される第1の下部側壁当接部51Lを有する第1の床面コーナー固定部52Lと、対向する側壁のうち他方の側壁に当接される第2の下部側壁当接部51Rを有する第2の床面コーナー固定部52Rとを備えており、第1の床面コーナー固定部52Lおよび第2の床面コーナー固定部52Rは、第1の床面コーナー固定部52Lと第2の床面コーナー固定部52Rとの間の距離を調節可能に基部プレート50へ取り付けられている。
次に、本実施形態の手摺り装置1の各構成部品について、以下に詳しく説明をする。床面に立設される支柱部4は床面から略天井付近まで延びる棒形状を成しており、支柱部4の長さ(高さ)を可変とするため、或いは床面と天井との間で突っ張ることができるように、支柱部4は伸縮手段40を備えている。また、支柱部4が傾いた時でも、支柱部4による突っ張り状態を維持することができるように、支柱部4又は伸縮手段40にはバネなどの付勢手段(図示せず)が補助的に取り付けられていてもよい。このように支柱部4が棒形状であると、使用者は、立ち上がり姿勢や座位姿勢をとる際に支柱部4をどの方向からも容易に掴むことができるので便利である。また、支柱部4が棒形状であると、トイレや玄関、浴槽などの空間において支柱部4による圧迫感を低減することができる。
また、支柱部4の伸縮手段40は特に限定されるものではなく、公知の技術を採用することができる。本実施形態の手摺り装置1では、支柱部4の伸縮手段40は、支柱部4を下部支柱部と上部支柱部とへ分割し、下部支柱部の上端部領域と上部支柱部の下端部領域にはそれぞれ反対向きの雄ネジ溝を形成し、さらに前記両端部領域の雄ネジ溝とそれぞれに螺合する雌ネジ溝を有する筒状の回動部を外装することによって構成されている。この構成の場合、下部支柱部及び上部支柱部の雄ネジ溝と螺合した回動部を一方向へ回転させることにより、下部支柱部と上部支柱部を離間させたり又は接近させたりすることにより、支柱部4をある目的とする長さへ、又は支柱部4の上端又は上部取付け部品を天井へ当接させるために適した長さへ調節し、そのまま固定することができる。
手摺り部41の形状は特に限定されないが、本実施形態の手摺り装置1では、使用者が手摺り部41を簡単に抱かかえることができるように、幅狭のテーブル410が備え付けられている。また、幅狭のテーブル410は棒形状の手摺り部材(図示せず)へ着脱自在に取り付けられており、さらに手摺り部材には、下向きの荷重に対向するため、支柱部4の下部外周に回動自在に装着された筒状のスリーブ43へ連結された傾斜梁部42が設けられている。本実施形態の手摺り装置1では、手摺り部41が支柱部4から水平方向に側方へ延びているので、使用者は手摺り部41を引き寄せる又は抱き寄せるようにして、容易に立ち上がり姿勢や座位姿勢をとることができるようになる。
手摺り部41の回動及び固定手段及び高さ調節手段は特に限定されるものではなく、公知の技術を採用することができる。本実施形態の手摺り装置1では、手摺り部41の回動及び固定手段は、外周面の周方向に複数の係止孔(図示せず)を設けた支柱部4へ、手摺り部41を取り付けた筒状のスリーブ44を回動自在に装着し、スリーブ44に設けたピン孔(図示せず)と支柱部4の係止孔とが一致した回動位置において、外部より係止ピン(図示せず)を抜き差しできるようにすることにより構成されている。本実施形態の手摺り装置1では、手摺り部41が回動自在に取り付けられているので、高齢者や要介護者らがトイレや玄関、浴槽などへアクセスする時または手摺り装置1を使用しない時などに手摺り部41を退避させることができるので、邪魔となることがない。
また、手摺り部41の高さ調節手段は、外周面の長手方向に複数の係止孔(図示せず)を設けた支柱部4へ、手摺り部41を取り付けた筒状のスリーブ43,44をスライド自在に装着し、スリーブ44に設けたピン孔(図示せず)と支柱部4の係止孔とが一致したスライド位置において、外部より係止ピン(図示せず)を抜き差しできるようにすることにより構成されている。本実施形態の手摺り装置1では、手摺り部41が支柱部4へ高さ調節自在に取り付けられているので、使用者の体格に合わせて手摺り部41の高さを調節することができ、手摺り部41の取り扱いがより一層容易になり、手摺り部41を使用する利用者の安全性もより一層向上する。
本実施形態の手摺り装置1では、床面と当接する支柱部4の下端部には、支柱部4の断面よりも大きな面積を有する板状の基部5が設けられているので、床面を傷付けることなく安定して支柱部4を立設することができる。また、支柱部4は、鉛直方向に溶接により直接的に基部5へ固定されていているので、特に支柱部4を転倒させる力に対して頑丈にできている。
基部5は、床面に設置される基部プレート50と、床面から延びており、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接される第1の下部側壁当接部51Lを有する第1の床面コーナー固定部52Lと、対向する側壁のうち他方の側壁に当接される第2の下部側壁当接部51Rを有する第2の床面コーナー固定部52Rとを備えており、第1の床面コーナー固定部52Lおよび第2の床面コーナー固定部52Rは、第1の床面コーナー固定部52Lと第2の床面コーナー固定部52Rとの間の距離を調節可能に基部プレート50へ取り付けられている。
基部プレート50および基部プレート50へ取り付けられる第1の床面コーナー固定部52L、第2の床面コーナー固定部52Rは板状であり、素材として剛性のある鋼板が使用されている。また、基部プレート50、床面コーナー固定部52L,52Rの裏面には、床面との摩擦力を増大させるために樹脂性のラバー(図示せず)が取り付けられており、また基部プレート50、床面コーナー固定部52L,52Rの表面には、肌触りや見栄えを良くするために薄手のカーペット生地(図示せず)が取り付けられている。
本実施形態の手摺り装置1では、基部プレート50にはスリット(図示せず)を設け、他方の床面コーナー固定部52L,52Rにはネジ孔(図示せず)を設け、そしてそれらを重ね合わせて、ネジ500を、基部プレート50のスリットを通して床面コーナー固定部52L,52Rのネジ孔に螺合させることにより、基部プレート50を床面コーナー固定部52L,52Rへスライド及び固定可能に取り付けている。このため、本実施形態の手摺り装置1では、第1の床面コーナー固定部52Lと第2の床面コーナー固定部52Rとの間の距離を容易に調節することができる。
本実施形態の手摺り装置1では、第1の床面コーナー固定部52Lの第1の下部側壁当接部51Lおよび第2の床面コーナー固定部52Rの第2の下部側壁当接部51Rは、いずれも側壁に沿って水平に横方向へ延びている板形状であるので、第1の下部側壁当接部51Lを、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接させ、第2の下部側壁当接部51Rを、対向する側壁のうち他方の側壁に当接させ、そして第1の床面コーナー固定部52L及び第2の床面コーナー固定部52Rを基部プレート50へ固定すると、基部プレート50は対向する側壁に対して物理的に回転することができなくなる。このため、基部プレート50へ固着するように立設された支柱部4および該支柱部4に取り付けられた手摺り部41は、基部5を介してその回転や捻りが強力に防止される。
次に、支柱部4の上端に取り付けられる横梁部2、該横梁部2の端部に取り付けられた第1の天井コーナー固定部3Lおよび第2の天井コーナー固定部3Rについて詳しく説明する。
本実施形態の手摺り装置1では、支柱部4の上端には、横梁部2が支柱部4を中心として回転しないように取り付けられている。また、横梁部2の長さを可変とするため、或いは対向する側壁の間で、第1の天井コーナー固定部3Lと第2の天井コーナー固定部3Rを介して突っ張ることができるように、横梁部2は伸縮手段20を備えている。さらに、第1の天井コーナー固定部3L又は第2の天井コーナー固定部3Rが、当接する側壁から動いてしまった時でも、横梁部2による突っ張り状態を維持することができるように、横梁部2又は伸縮手段20にはバネなどの付勢手段(図示せず)が補助的に組み込まれていてもよい。なお、図示しないが、支柱部4は、横梁部2に対して水平方向に回転しないように横梁部2へ固定されていれば、横梁部2に対する取付け位置を変えられるように接合されていてもよい。
横梁部2の伸縮手段20は特に限定されるものではなく、公知の技術を採用することができる。本実施形態の手摺り装置1では、横梁部2の伸縮手段20は、支柱部4の伸縮手段40と同様に、横梁部2を第1の横梁部と第2の横梁部とへ分割し、第1の横梁部の第2の横梁側端部領域と、第2の横梁部の第1の横梁側端部領域にはそれぞれ反対向きの雄ネジ溝を形成し、さらに前記両端部領域の雄ネジ溝とそれぞれに螺合する雌ネジ溝を有する筒状の回動部を外装することによって構成されている。この構成の場合、第1の横梁部及び第2の横梁部の雄ネジ溝と螺合した回動部を一方向へ回転させることにより、第1の横梁部と第2の横梁部を離間させたり又は接近させたりすることにより、横梁部2の端部に取り付けた第1の天井コーナー固定部3Lと第2の天井コーナー固定部3Rを側壁へ当接させるために適した長さへ調節し、そのまま固定することができる。
本実施形態の手摺り装置1では、横梁部2が、T字型の筒状のジョイント21を介して、横梁部2が支柱部4を中心として回転しないが、横梁部2の軸方向へスライド可能に間接的に取り付けられている。このため、横梁部2はT字型の筒状のジョイント21を通過して全体の長さを変化させることができるので、図示されているように、伸縮手段20が横梁部2に1箇所設けられていれば、横梁部2は、対向する側壁の間で、第1の天井コーナー固定部3Lと第2の天井コーナー固定部3Rを介して突っ張るように長さ調節をすることができる。
また、本実施形態の手摺り装置1では、横梁部2は棒状であるので、簡単かつ比較的軽量な構造であるにもかかわらず、強い強度を得ることができるばかりでなく、天井に設置されている照明器具や感知器などを簡単に避けて配置することができ、手摺り装置1の取り付けの自由度が高まり、また取り付け自体も容易になる。
なお、図示しないが、横梁部2が、溶接などにより、横梁部2が支柱部4を中心として回転せず、且つ横梁部2の軸方向へもスライドしないように直接的に取り付けられている場合、横梁部2は、支柱部4から第1又は第2の天井コーナー固定部3L,3Rまでの長さはそれぞれ個別に調節できるのみであるので、伸縮手段20は、支柱部4との接続部位を挟んで横梁部2に2箇所以上設けなければ、横梁部2は、支柱部4を平面上の任意の位置に立脚させながら、対向する側壁の間で第1の天井コーナー固定部3Lと第2の天井コーナー固定部3Rを介して突っ張るように長さ調節をすることができなくなる。
平面視において、横梁部2に対して連結角度を変えられないように横梁部2へ固定されている第1の天井コーナー固定部3Lは、横梁部2の一の端部において横梁部2から側方へ延出しており、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接される第1の上部側壁当接部30Lを有している。また、第1の天井コーナー固定部3Lと同様に、平面視において、横梁部2に対して連結角度を変えられないように横梁部2へ固定されている第2の天井コーナー固定部3Rも、横梁部2の他の端部において横梁部2から側方へ延出しており、対向する2つの側壁のうち他方の側壁に当接される第2の上部側壁当接部30Rを有している。なお、図示しないが、第1及び第2の天井コーナー固定部3L,3Rは、横梁部2に対して連結角度を変えられないように横梁部2へ固定されていれば、横梁部2に対する取付け位置を変えられるように接合されていてもよい。
本実施形態の手摺り装置1では、第1の上部側壁当接部30Lおよび第2の上部側壁当接部30Rが側壁に沿って横方向に延びているので、第1の上部側壁当接部30Lを、対向する2つの側壁のうち一方の側壁に当接させ、第2の上部側壁当接部30Rを、対向する側壁のうち他方の側壁に当接させ、そして第1の天井コーナー固定部3L及び第2の天井コーナー固定部3Rを横梁部2へ固定すると、横梁部2は対向する側壁に対して物理的に回転することができなくなる。
すなわち、横梁部2から側壁に沿って側方に延びている第1及び第2の上部側壁当接部30L,30Rは、それぞれ横梁部2に対して水平方向に角度不変に固定されているので、水平方向への回転が規制されて、特に横梁部2の水平方向への回転が強力に防止される。
図6には、平面視において、天井コーナー固定部3L、3Rの取付け配置の例が模式的に示されている。図6(a),(b)を参照して理解されるように、第1及び第2の天井コーナー固定部3L、3Rは、対向する2つの側壁のそれぞれに対して対向するように当接させることができれば、図6(a)に示すように、室内の幅方向に対向するように配置することもできれば、図6(b)に示すように、室内の長手方向に対向するように配置することもできる。
また、図6(c)に示すように、第1及び第2の天井コーナー固定部3L’、3R’を、平面視において室内の対角線上で対向するように、隣り合う側壁同士のコーナー部を利用して配置することもできる。特に第1及び第2の天井コーナー固定部3L’、3R’を、隣り合う側壁同士のコーナー部を利用して配置した場合は、横梁部2の伸縮手段20’により、押圧力を与えられた第1及び第2の上部側壁当接部30L’,30R’が、水平方向へ回転不能に側壁のコーナー部へ当接し嵌り込むので、梁部2の水平方向への回転をより一層強力に防止することができる。
以上の結果、本実施形態の手摺り装置1では、横梁部2へ回転不能に接合された支柱部4および該支柱部4に取り付けられた手摺り部41は、横梁部2および該横梁部2へ接合された第1及び第2の上部側壁当接部30L,30L’30R,30R’を介してその回転や捻りが強力に防止される。また、第1及び第2の上部側壁当接部30L,30L’30R,30R’は、側壁を支える支柱や筋交い、天井を支える横梁などの強度部材が集中することにより比較的強度が高いコーナー部へ当接されるので、側壁中央付近や天井中央部付近を利用して支柱を固定する従来の手摺り装置よりも据付強度が高く、また側壁や天井を変形させることがないという優れた効果を奏する。特に第1の上部側壁当接部30L,30L’、第2の上部側壁30R,30R’は、それらの前記延出長さが長ければ長いほど、或いは図6(c)に示されるように、隣り合う側壁同士のコーナー部を利用することによっても、横梁部2及び支柱部4の水平方向への回転をより一層強力に防止することができる。
次に、本実施形態の手摺り装置1の設置方法について説明する。本実施形態の手摺り装置1は、先ず基部5を床面に載置することにより、基部5に立設された支柱部4及び該支柱部4に回動自在に取り付けられた手摺部41の位置決める。次に床面に載置した基部プレート50から第1及び第2の床面コーナー固定部52L,52Rを、それぞれの側壁に当接するまで引き出し、ネジ500によって基部プレート50へ固定する。
そして、横梁部2を介して支柱部4の上端に取り付けられている第1及び第2の天井コーナー固定部3L,3Rが天井に当接するように、支柱部4の長さ(高さ)を伸縮手段40によって調節し固定する。支柱部4を床面と天井との間で突っ張るように、支柱部4の長さ(高さ)を固定した後、第1及び第2の天井コーナー固定部3L,3Rがそれぞれの側壁に当接し、対向する側壁間で突っ張るように、横梁部2の長さ(高さ)を伸縮手段20によって調節し固定する。最後に、支柱部4に取り付けられている手摺部41の高さ調節を行うことにより、本実施形態の手摺り装置1の設置が完了する。
このように、本実施形態の手摺り装置1では、極めて簡単な手順でトイレのような空間に設置することができ、それでいて支柱部4及び手摺部41の回転や捻りが強力に防止され、また据付強度が高く、また側壁や天井を変形させることがないという優れた特徴を有している。また、本実施形態の手摺り装置1は躯体構造がシンプルで、部材の形状も棒状などの省スペース部材を選ぶことができるので、手摺り装置1の設置場所も、トイレや浴槽など閉空間などに限定されるものではなく、玄関や廊下など、床面と天井と、該天井から下方へ延びた2以上の側壁を有すれば、開いた空間であっても設置することができる。
[第2の実施形態]
図2には、トイレのような空間に設置された本発明の第2の実施形態に係る手摺り装置1aの斜視図が示されている。
本実施形態の手摺り装置1aは、第1の天井コーナー固定部3aLが、一方の側壁から延びている天井に当接される第1の天井当接部31Lを有しており、また第2の天井コーナー固定部3aRも、他方の側壁から延びている天井に当接される第2の天井当接部31Rを有していること以外は、第1の実施形態に係る手摺り装置1と同じ構成を備えている。このため、本実施形態の手摺り装置1aは、第1の実施形態に係る手摺り装置1と同じ効果を奏することができる。また、本実施形態の手摺り装置1aにおいて、第1の実施形態に係る手摺り装置1と重複する構成および効果、設置方法については、それらの説明を省略する。
本実施形態の手摺り装置1aは、第1の天井コーナー固定部3aLが、一方の側壁から延びている天井に当接される第1の天井当接部31Lを有しており、また第2の天井コーナー固定部3aRも、他方の側壁から延びている天井に当接される第2の天井当接部31Rを有している。このため、本実施形態の手摺り装置1aでは、横梁部2へ接合された支柱部4は、横梁部2および該横梁部2へ接合された第1及び第2の天井当接部31L,31Rを介して、床面及び天井との間で強力に突っ張ることができる。
すなわち、第1及び第2の天井当接部31L,31Rは、それぞれに横梁部2から天井に沿って側方に延びており、横梁部2に対して鉛直方向に角度不変に固定されているので、鉛直方向に回転すると摩擦力が働いて、支柱部4の鉛直方向への回転が強力に防止される。
その結果、横梁部2へ回転不能に接合された支柱部4および該支柱部4に取り付けられた手摺り部41は、横梁部2および該横梁部2へ接合された第1及び第2の天井当接部31L,31Rを介してその転倒が強力に防止される。また、第1及び第2の天井当接部31L,31Rは、側壁を支える支柱や筋交い、天井を支える横梁などの強度部材が集中することにより比較的強度が高いコーナー部へ当接されるので、側壁中央付近や天井中央部付近を利用して支柱を固定する従来の手摺り装置よりも据付強度が高く、また側壁や天井を変形させることがないという優れた効果を奏する。
特に、第1の天井当接部31Lが横梁部2の一の端部において横梁部2から側方へ延出しており、第2の天井当接部31Rが横梁部2の他の端部において横梁部2から側方へ延出している場合は、第1の天井当接部31L、第2の天井当接部31Rは、それらの前記延出長さが長ければ長いほど、横梁部2及び支柱部4の鉛直方向への回転防止効果がより一層強化される。
図7には、天井コーナー固定部3aL、3aRの断面形状の例が模式的に示されている。本実施形態の手摺り装置1aでは、第1及び第2の上部側壁当接部30L,30R、第1及び第2の天井当接部31L,31Rは、横梁部2との接合部から側方に延びていれば、板状、角柱状又は円柱状などの部材を使用することができ、第1の天井コーナー固定部3aLおよび第2の天井コーナー固定部3bLの全体形状としては、棒状である。このため、第1の天井コーナー固定部3aLの断面形状および第2の天井コーナー固定部3aRの断面形状は、図7(a),(b)に示されるL字型、図7(c)に示されるロの字型又は図7(d)に示される略円形を有している。
天井コーナー固定部3aL、3aRが上述したような形状、断面形状を有していると、簡単かつ比較的軽量な構造であるにもかかわらず、側壁と天井とのコーナー部を確実かつ強力に押圧することが可能となり、またコーナー部における見栄えもスッキリしてよくなる。特に天井コーナー固定部3aL、3aRの断面形状が、図7(a),(b)に示されるL字型、図7(c)に示されるロの字型又は図7(d)に示される略円形を有していると、第1の上部側壁当接部30Lの当接面と第1の天井当接部31Lの当接面、および第2の上部側壁当接部30Rの当接面と第2の天井当接部31Rの当接面は、互いに略直交する当接面を含むことになる。
このため、本実施形態の手摺り装置1aでは、天井コーナー固定部3aL、3aRを、1つの部材において側壁と天井とへ同時に当接させることができるので、強度的にも重量的にも極めて有利である。また、天井コーナー固定部3aL、3aRの断面形状が、図7(c)に示されるように略円形を有している場合、或いは断面形状がL字型又はロの字型であっても、図7(b)に示されるように、当接面の表面にスペーサー7を備えている場合は、側壁と天井とのコーナー部に回り縁6が設置されていても、側壁と天井とへ同時に容易に当接させることができる。
さらに、本実施形態の手摺り装置1aでは、第1の天井コーナー固定部3aLおよび第2の天井コーナー固定部3aRは、該天井コーナー固定部3aL、3aRの断面形状がL字型の棒状であるため、第1の上部側壁当接部30Lの当接面と第1の天井当接部31Lの当接面は互いに連続して形成されており、そして第2の上部側壁当接部30Rの当接面と第2の天井当接部31Rの当接面も互いに連続して形成されているので、部材の強度がより一層向上し、一般に側壁と天井とのコーナー部をより確実にかつより強力に押圧することが可能となる。
なお、第1及び第2の上部側壁当接部30L,30R、第1及び第2の天井当接部31L,31Rは、本実施形態の手摺り装置1aのように、それらの全部の面が一様に側壁、天井と接する必要はなく、横梁部2との接合部から側方へ離れた位置において側壁、天井と接触可能であれば、点接触近似の接触形態であってもよい。側壁、天井へ接触する部分が横梁部2との接合部から側方へ離れていれば、第1及び第2の上部側壁当接部30L,30R、第1及び第2の天井当接部31L,31Rが横梁部2との接合部から延びた方向への回転を効果的に防止することができる。
[第3の実施形態]
図3には、トイレのような空間に設置された本発明の第3の実施形態に係る手摺り装置1bの斜視図が示されている。
本実施形態の手摺り装置1bは、支柱部4の上端に天井に当接される補助当接部8を有していること以外は、第1の実施形態に係る手摺り装置1と同じ構成を備えている。このため、本実施形態の手摺り装置1bは、第1の実施形態に係る手摺り装置1と同じ効果を奏することができる。また、本実施形態の手摺り装置1bにおいて、第1の実施形態に係る手摺り装置1と重複する構成および効果、設置方法については、それらの説明を省略する。
本実施形態の手摺り装置1bでは、補助当接部8は、横梁部2と接合されている支柱部4に対して鉛直方向に角度不変に固定されるので、鉛直方向に回転すると摩擦力が働いて、支柱部4の鉛直方向への回転が強力に防止される。
[第4の実施形態]
図4には、トイレのような空間に設置された本発明の第4の実施形態に係る手摺り装置1cの斜視図が示されている。
本実施形態の手摺り装置1cは、第2及び第3の実施形態に係る手摺り装置1a,1bを併用したものであって、第1の天井コーナー固定部3aLが、一方の側壁から延びている天井に当接される第1の天井当接部31Lを有しており、また第2の天井コーナー固定部3aRも、他方の側壁から延びている天井に当接される第2の天井当接部31Rを有しており、さらに支柱部4の上端に天井に当接される補助当接部8を有していること以外は、第1の実施形態に係る手摺り装置1と同じ構成を備えている。このため、本実施形態の手摺り装置1cは、第1の実施形態に係る手摺り装置1および第2,3の実施形態に係る手摺り装置1a,1bと同じ効果を奏することができる。また、本実施形態の手摺り装置1cにおいて、第1〜3の実施形態に係る手摺り装置1,1a,1bと重複する構成および効果、設置方法については、それらの説明を省略する。
本実施形態の手摺り装置1bでは、支柱部4を突っ張ることにより天井を押圧する部分が、第1の天井当接部31L、第2の天井当接部31Rおよび補助当接部8とへ分散されるので、天井を変形させることがない。それでいて、支柱部4を鉛直方向に回転させる力が働く時は、支柱部4の基部5の端部と、第1の天井当接部31Lの端部、第2の天井当接部31Rの端部または補助当接部8の端部がそれぞれに天井及び床面へ強く押し付けられ、その反力で支柱部4が圧縮されることになるので、第1の天井当接部31L、第2の天井当接部31R及び/又は補助当接部8には支柱部4の圧縮により増加した摩擦力が働いて、支柱部4の鉛直方向への回転がより一層強力に防止される。
[第5の実施形態]
図5には、トイレのような空間に設置された本発明の第5の実施形態に係る手摺り装置1dの斜視図が示されている。
本実施形態の手摺り装置1dは、2本目の第2の支柱部4Rおよび第2の手摺り部41Rを含んでいること以外は、第1の実施形態に係る手摺り装置1と同じ構成を備えている。このため、本実施形態の手摺り装置1dは、第1の実施形態に係る手摺り装置1と同じ効果を奏することができる。また、本実施形態の手摺り装置1dにおいて、第1の実施形態に係る手摺り装置1と重複する構成および効果、設置方法については、それらの説明を省略する。
本実施形態の手摺り装置1dは、伸縮手段40Lを有しており、さらに支柱部4Lから側方へ延びており、支柱部4Lに対して水平方向に回動及び固定可能であり且つ高さ調節可能に取り付けられている手摺り部41Lを含んでいる支柱部4Lと、支柱部4Lと平行して、第2の伸縮手段40Rを有しており、さらに第2の支柱部4Rから側方へ延びており、第2の支柱部4Rに対して水平方向に回動及び固定可能であり且つ高さ調節可能に取り付けられている第2の手摺り部41Rを含んでいる第2の支柱部4Rを有している。
本実施形態の手摺り装置1dにおいて、支柱部4L及び手摺り部41Lなどの構成と、第2の支柱部4R及び第2の手摺り部41Rなどの構成とは同じである。また、本実施形態の手摺り装置1dにおける上記の支柱4L,4R及び手摺部41L,41Rなどの構成は、手摺部41L,41Rの腕の長さが、第1の実施形態に係る手摺り装置1の手摺部41の腕の長さよりも短いこと以外は、第1の実施形態に係る手摺り装置1の支柱部4及び手摺部41などの構成と同じである。
本実施形態の手摺り装置1dでは、2つ目の支柱部4Rは、1つ目の支柱部4Lが取り付けられている横梁部2および基部5へ取り付けられているので、手摺り装置1d全体の一体化により、構造体として、手摺り装置1d全体の剛性及び強度がより一層向上する。また、支柱部4L,4R及び該支柱部4L,4Rに取り付けた手摺り部41L,41Rを2個設けることにより、第1の実施形態に係る手摺り装置1の手摺部41と比べて、手摺り部41L,41Rの腕の長さを1/2以下とすることができたので、それぞれの支柱4L,4Rに加わる曲げモーメントを大幅に低減することができ、支柱部4L,4Rや手摺り部41L,41Rの回転や捻りを効果的に防止することができる。