以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接システム1の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1の溶接システム1を構成する抵抗溶接機2の外観を示す正面図である。図1において、本実施形態に係る溶接システム1は、抵抗溶接機2と、溶接制御装置3と、Webサーバ4と、データベースサーバ5と、監視装置6と、PC(パーソナルコンピュータ)7と、を備える。抵抗溶接機2及び溶接制御装置3は、主に板金加工メーカーで使用される。例えば同図に示すように、抵抗溶接機2−1及び溶接制御装置3−1は板金加工メーカーYY1社で使用され、抵抗溶接機2−2及び溶接制御装置3−2は板金加工メーカーYY2社で使用され、…、抵抗溶接機2−n及び溶接制御装置3−nは板金加工メーカーYYn社で使用される。なお、本明細書では、抵抗溶接機と溶接制御装置を単数で扱うときは、「抵抗溶接機2」、「溶接制御装置3」と表記し、複数で扱うときは、「抵抗溶接機2−1,2−2〜2−n」、「溶接制御装置3−1,3−2〜3−n」と表記する。
抵抗溶接機2は、水平ガン15及び垂直ガン16(図2参照)の2つの溶接ガンを有し、溶接制御装置3の制御に従って、対向する2つの電極の間に配置されたワーク(被溶接物)500(図2参照)に対し、挟圧しながら溶接を行う。溶接制御装置3は、溶接条件である、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」を含む各種設定値に基づいて抵抗溶接機2を制御する。溶接制御装置3は、クラウドコンピューティング(以下、“クラウド“と呼ぶ)8への接続を可能とする通信機能を有している。監視装置6は、抵抗溶接機2−1〜2−nそれぞれの冷却水循環構造の経路(即ち、冷却水循環経路)上の詰まりを監視する。以下、抵抗溶接機2、溶接制御装置3、Webサーバ4、データベースサーバ5、監視装置6、PC7の順で、それぞれについて詳細に説明する。
図2において、抵抗溶接機2は、支持ポスト10と、支持アーム11,12と、水平ガン15と、垂直ガン16と、スプリングバランサ17と、二次ケーブル18,19と、電源ユニット20と、溶接トランス21と、ブスバー22と、テーブル電極23と、冷却ユニット24と、操作パネル25とを備える。支持ポスト10は、支持アーム11,12を水平方向に回動自在に支持する。支持アーム11は略L字状を成し、水平ガン15を保持する。支持アーム11は、支持ポスト10に対して水平方向に延びる水平アーム部11Aと、水平アーム部11Aの先端部分から垂直方向下向きに延びる垂直アーム部11Bとから構成される。支持アーム12は略T字状を成し、垂直ガン16を保持する。支持アーム12は、支持ポスト10に対して水平方向に延びる水平アーム部12Aと、水平アーム部12Aの先端部分から垂直方向下向きに延びる垂直アーム部12Bとから構成される。
水平ガン15は、水平方向への移動が可能な溶接ガンであり、支持アーム11の垂直アーム部11Bの先端部分に、垂直方向に弧を描くように揺動自在に取り付けられる。水平ガン15の基端部と垂直アーム部11Bの先端部分との間にはスプリングコイル15Aが張設されており、このスプリングコイル15Aの収縮力により、水平ガン15の基端部側が垂直方向上側に持ち上げられる。また、水平ガン15は、先端部分が、垂直アーム部11Bの上端部分に設けられたシリンダ13によってテーブル電極23に向かう方向に加圧される。垂直アーム部11Bにはチェーン(鎖、図示略)が内蔵されており、該チェーンの一端がシリンダ13に繋がり、他端が水平ガン15の力点部分(図示略)に繋がる。該チェーンがシリンダ13によって引き上げられることで、水平ガン15が支点部分(図示略)を中心に回動し、水平ガン15の先端部分に装着された電極チップ15Cがテーブル電極23に当たる。この場合、作業時にはテーブル電極23上にワーク500が載置されるので、電極チップ15Cがワーク500に圧接することになる。水平ガン15に対する加圧は、溶接開始直前(即ち、電流が供給される直前)に行われ、溶接が終了した後に解放される。水平ガン15に与えられる加圧力は、圧力センサ61(図3参照)にて検出される。なお、シリンダ13内に空気を入れる機構については説明を省略する。
水平ガン15の基端部分には水平ガン15を操作するためのハンドル15Bが設けられている。ハンドル15Bには起動用の押しボタンスイッチ(図示略)が設けられており、該押しボタンスイッチを押すことでオンし、起動信号Sw1(図3参照)を出力する。起動用の押しボタンスイッチから出力された起動信号Sw1は溶接制御装置3に取り込まれる。
水平ガン15の先端部分に装着される電極チップ15Cには様々な形状のものがあり、それぞれが水平ガン15本体に対して着脱自在となっている。電極チップ15Cは、先端部分を除く内部が空洞構造で冷却水が通流するようになっている。なお、電極チップ15Cは、水平ガン15の先端部分に装着されるが、一般的にはシャンクと呼ばれる部品を介して装着される。そのシャンクも内部が空洞で冷却水が通流する構造となっている。電極チップ15Cもシャンクも通電経路の一部であり、それぞれが持つ抵抗値によって溶接時に発熱する。この熱を回収できるようにすることは勿論のこと、溶接時にワーク500から発熱する熱を回収できるように、電極チップ15C及びシャンクそれぞれの内部が空洞になっている。
垂直ガン16は、垂直方向への移動が可能な溶接ガンであり、垂直アーム部12Bの先端部分に取り付けられる。垂直ガン16は、垂直アーム部12Bの上部に設けられたシリンダ14によって把持されるとともに、垂直方向下向き(テーブル電極23に向かう方向)に加圧される。シリンダ14は、垂直アーム部12Bを把持する把持機構と、垂直アーム部12Bを垂直方向下向きに加圧する加圧機構とを有する。スプリングバランサ17は、支持アーム12の上部に設けられ、垂直アーム部12Bを所定の力で垂直方向上向きに引き上げて、垂直アーム部12Bの上下動を補助する。垂直ガン16に与えられる加圧力は、圧力センサ62(図3参照)にて検出される。なお、シリンダ14内に空気を入れる機構については説明を省略する。
垂直アーム部12Bには、垂直ガン16を、垂直アーム部12Bの軸心を中心に回転させるハンドル27が設けられている。ハンドル27には起動用の押しボタンスイッチ(図示略)が設けられており、該スイッチを押すことで起動信号Sw2(図3参照)が出力される。起動用のスイッチから出力された起動信号Sw2は溶接制御装置3に取り込まれる。垂直ガン16の先端部分には、水平ガン15に装着される電極チップ15Cと同様の構造の電極チップ16Aが着脱自在に装着される。電極チップ16Aも電極チップ15Cと同様にシャンク(図示略)を介して垂直ガン16の先端部分に接続される。また、電極チップ16A及びシャンクも内部が空洞で、冷却水が通流する構造となっている。上述した水平ガン15の電極チップ15C及びシャンクと同様に、電極チップ16A及びシャンクも通電経路の一部であり、それぞれが持つ抵抗値によって溶接時に発熱する。この熱を回収できるようにすることは勿論のこと、溶接時にワーク500から発熱する熱を回収できるように、電極チップ16A及びシャンクそれぞれの内部が空洞になっている。
二次ケーブル18,19は、冷却水を通流させる構造を有する所謂冷却ケーブルと呼ばれるものであり、内部には細い銅線を束ねた複数の導体が設けられている。二次ケーブル18は、一端が板状のブスバー22を介して溶接トランス21の二次側出力端のプラス電極(図示略)に接続され、他端が水平ガン15に接続される。二次ケーブル19は、一端がブスバー22を介して溶接トランス21の二次側出力端のプラス電極(図示略)に接続され、他端が垂直アーム部12Bの上端部分に設けられたコンタクタ(開閉器)26に接続される。
電源ユニット20は、図示せぬ受電設備より供給される三相の交流電力を整流して直流に変換し、これにより得られた直流から高周波交流を生成する。溶接トランス21は、一次側が電源ユニット20の出力に接続され、二次側が水平ガン15及び垂直ガン16に接続される。溶接トランス21の二次側と水平ガン15及び垂直ガン16との間には切り替えスイッチ59(図3参照)が設けられている。この切り替えスイッチ59は、水平ガン15の使用時には水平ガン選択側に切り替わり、垂直ガン16の使用時には垂直ガン選択側に切り替わる。この切り替えは溶接制御装置3によって行われる。
なお、溶接トランス21としては、例えば本願発明者等が先に特開2012−210654号、特開2013−179205号で提案した抵抗溶接用の溶接トランスのような、短時間に大電流を供給可能なものが好適である。
テーブル電極23は、略正方形の平坦な板状に形成された銅材であり、ワーク500の載置に用いられる。テーブル電極23は、所謂オンス銅板と呼ばれる薄い銅板が複数重ね合わされた構造を有する二次ケーブル(図示略)にて、溶接トランス21の二次側出力端のマイナス電極に接続される。なお、本実施形態に係る溶接システム1の抵抗溶接機2では、溶接トランス21をテーブル電極23の直下に配置している関係上、テーブル電極23と溶接トランス21の二次側出力端のマイナス電極との間の接続にオンス銅板(図示略)を使用しているが、溶接トランス21とテーブル電極23が離れていれば、二次ケーブル18,19と同様の冷却ケーブルが使用されることもある。テーブル電極23は冷却水を通流させる構造を有している。
ワーク500は、2枚の冷間圧延鋼板、亜鉛メッキ鋼板又はステンレス鋼板等の金属板からなる板組である。冷却ユニット24は、所謂チラーと呼ばれる冷却水循環装置であり、冷却水を循環させるためのポンプ(図示略)と、冷却水で回収された熱を発散させるラジエタ(図示略)とを有する。なお、冷却ユニットにはポンプやラジエタの他に冷凍機を有する冷却効果の高いものもある。冷却水循環経路上には、溶接トランス21、水平ガン15、垂直ガン16、二次ケーブル18,19及びテーブル電極23があり、これらの部品中を冷却水が流れるようになっている。冷却ユニット24は、これらの部品からの熱を回収し、外気中に発散させた後、再び冷却水として送り出す働きをする。冷却ユニット24は、抵抗溶接機2に電源が投入されている間は常時動作する。
なお、電源ユニット20は、抵抗溶接機2の正面側に向かって支持ポスト10の背面側に配設され、冷却ユニット24は、電源ユニット20の右隣に配設される。
また、市場に流通している抵抗溶接機には、本実施形態の抵抗溶接機2のように冷却ユニット24を持っているものもあれば、冷却ユニット24を持たず、外部の冷却ユニットを利用するタイプのものもある。
操作パネル25は、液晶パネル等の表示器(図示略)及び該表示器の表示面上に取り付けられる抵抗膜方式等のタッチパネル(図示略)を有する。操作パネル25にて「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「材質」、「板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値が設定される。操作パネル25の表示器には、設定された各種設定値が表示される。また、操作パネル25の表示器には、ワーク500に対する溶接が行われたときに溶接制御装置3にて計測された「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「使用率(PWMデューティ)」及び「冷却水温度」等の各種モニタ値が表示される。
図3は、図2の抵抗溶接機2の電源ユニット20及び溶接トランス21それぞれの概略構成を示すと共に、電源ユニット20及び操作パネル25と溶接制御装置3との接続状態を示す図である。同図において、電源ユニット20は、整流器31と、平滑用コンデンサ32と、インバータ回路34とを備える。整流器31は、6個の整流素子で構成された三相全波整流式を採用したものであり、受電設備(図示略)からの三相交流を整流して直流に変換する。平滑用コンデンサ32は、整流器31より得られた直流電圧を平滑化する。
インバータ回路34は、インバータ制御回路341と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用した4個のスイッチ342と、CT(Current Transformer)を使用した電流センサ343とを備える。インバータ制御回路341は、溶接制御装置3から供給される指令信号Stiと電流センサ343で検出される一次電流とに基づいて4個のスイッチ342のそれぞれをオン・オフし、高周波交流を発生する。即ち、インバータ制御回路341は、PWM(Pulse Width Modulation)制御した高周波交流を発生する。インバータ制御回路341が発生する高周波交流の大きさは、4個のスイッチ342それぞれのオン・オフのデューティによって変化する。4個のスイッチ342それぞれのオン・オフのデューティを変化させることで、スイッチング波形の幅W(図4参照)が変化する。
溶接トランス21の一次コイル211は、電源ユニット20のインバータ回路34の出力端に接続される。インバータ回路34から高周波交流が出力されることで、溶接トランス21の一次コイル211に一次電流が流れる。溶接トランス21の二次コイルは、それ自体に極性を考慮する必要はないが、便宜上、溶接トランス21の二次コイルを、正側コイル212と負側コイル213とを直列接続したものと呼ぶことにする。正側コイル212の一端には第1整流素子214のアノード(正極)が接続され、負側コイル213の一端には第2整流素子215のアノード(正極)が接続される。第1整流素子214のカソード(負極)と第2整流素子215のカソード(負極)がプラス電極216に共通接続される。正側コイル212の他端と負側コイル213の他端がマイナス電極217に共通接続される。プラス電極216には水平ガン15及び垂直ガン16が接続され、マイナス電極217にはテーブル電極23が接続される。なお、上述したように、プラス電極216と水平ガン15は二次ケーブル18を介して接続され、プラス電極216と垂直ガン16は二次ケーブル19を介して接続される。マイナス電極217とテーブル電極23はオンス銅板(図示略)を介して接続される。
図4は、抵抗溶接機2を構成する溶接トランス21の一次側に供給される電流を制御するためのスイッチングパルス(“制御パルス”とも言う)及び一次電流及び整流後の溶接電流を示す図である。同図において、インバータ回路34により制御された幅Wのスイッチングパルスが、一定時間H内に一定回数、ここでは正方向のパルスと負方向のパルスとで合計10回、溶接トランス21の一次コイル211に供給される。これにより、溶接トランス21の一次コイル211には、図4の(b)に示すような一次電流が流れる。溶接トランス21の一次コイル211に一次電流が流れることで溶接トランス21の二次側に発生した二次電流が整流素子214,215によって全波整流されて、図4の(c)に示すような溶接電流となって水平ガン15又は垂直ガン16を流れる。
図4の(a)に示すスイッチングパルスの幅Wを増減することで溶接電流の大きさを調整することができる。また、スイッチングパルスの供給回数を増減すれば溶接時間を調整することができる。また、スイッチングパルスの繰り返し周波数を高くすることで、溶接時間をより細かく微調整することができる。また、溶接トランス21の1次コイル211に供給する電流を増やすことで、二次コイルの正側コイル212、負側コイル213からより大きな溶接電流を取り出すことができる。
図3に戻り、抵抗溶接機2は、溶接トランス21の二次側に発生する二次電流を検出する電流センサ60と、水平ガン15がワーク500を加圧したときの加圧力を検出する圧力センサ(例えば、歪ゲージ)61と、垂直ガン16がワーク500を加圧したときの加圧力を検出する圧力センサ(例えば、歪ゲージ)62と、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれを流れる冷却水の温度を検出するための温度センサ63〜66とを有している。ここで、温度センサ63は、水平ガン15を流れる冷却水の温度の検出に用いられ、温度センサ64は、垂直ガン16を流れる冷却水の温度の検出に用いられる。また、温度センサ65は、溶接トランス21を流れる冷却水の温度の検出に用いられ、温度センサ66は、テーブル電極23を流れる冷却水の温度の検出に用いられる。電流センサ60から出力されるセンサ信号Siと、圧力センサ61,62から出力されるセンサ信号Sp1,Sp2と、温度センサ63〜66から出力されるセンサ信号St1〜St4は、溶接制御装置3に取り込まれる。
図5は、抵抗溶接機2の冷却水循環経路の一例と温度センサ63〜66の配置の一例を示す図である。同図に示すように、冷却ユニット24の冷却水の出力口と水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23の各入力口との間には冷却ユニット24の出力口から流出する冷却水を4つに分流させる配管マニホールド70が配置されている。また、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23の各出力口と冷却ユニット24の戻り口との間には水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれから流出する冷却水を合流させる配管マニホールド71が配置されている。冷却ユニット24の出力口から流出した冷却水は、配管マニホールド70によって4つに分流されて、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23に流入する。水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれから流出した冷却水は、配管マニホールド71によって合流されて冷却ユニット24の戻り口に流入する。
温度センサ63〜66は、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれの下流側である、配管マニホールド71の各入力口の近傍に配置される。即ち、温度センサ63は、水平ガン15から流出した冷却水が流入する配管マニホールド71の入力口の近傍に配置され、温度センサ64は、垂直ガン16から流出した冷却水が流入する配管マニホールド71の入力口の近傍に配置される。また、温度センサ65は、溶接トランス21から流出した冷却水が流入する配管マニホールド71の入力口の近傍に配置され、温度センサ66は、テーブル電極23から流出した冷却水が流入する配管マニホールド71の入力口の近傍に配置される。温度センサ63は、水平ガン15を通過した冷却水の温度を検出し、温度センサ64は、垂直ガン16を通過した冷却水の温度を検出し、温度センサ65は、溶接トランス21を通過した冷却水の温度を検出し、温度センサ66は、テーブル電極23を通過した冷却水の温度を検出する。
なお、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれにおける冷却水の温度は、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれの出力口で測定するのが望ましいが、そのようにすると温度センサ63〜66から引き出す配線が長くなることと、その配線処理(固定、結束及び絶縁等)に手間がかかることから、コストを引き上げる原因となってしまう。このため、多少の温度差はあるが、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれの下流側である、配管マニホールド71の入力口の近傍で測定するようにしている。
図3に戻り、溶接制御装置3には操作パネル25が接続される。操作パネル25にて溶接条件が設定される。即ち、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値が設定される。溶接制御装置3は、これらの設定値に基づいて抵抗溶接機2を動作させる指令信号Stiを生成し、電源ユニット24のインバータ回路34に出力する。なお、ワーク500には、予めワーク仕様を表す「ワーク名」、「ワーク上の打点位置」等が与えられており、この仕様が操作パネル25にて設定される。
また、溶接制御装置3は、抵抗溶接機2で溶接が行われたときに、電流センサ60のセンサ信号Si、圧力センサ61,62のセンサ信号Sp1,Sp2、温度センサ63〜66のセンサ信号St1〜St4及びインバータ回路34のインバータ制御回路341で得られるPWMデューティ値を示すPWM信号Spwmをそれぞれ取り込み、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「冷却水温度」及び「PWMデューティ値」を計測する。溶接制御装置3は、計測した「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「冷却水温度」及び「PWMデューティ値」のそれぞれをモニタ値として扱う。溶接時に得られる「冷却水温度」は、電流値の大きさと通電時間の長さに応じた値となる。
図6は、図1の溶接システム1を構成する溶接制御装置3の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、溶接制御装置3は、制御部301と、時計部302と、カウンタ部303と、インタフェース部304と、記憶部305と、通信部306と、共通バス307とを有する。制御部301は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)と、CPUを制御するためのプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)と、CPUの動作に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを有する。制御部301、時計部302、カウンタ部303、インタフェース部304、記憶部305及び通信部306は共通バス307に接続されている。該ROMに記憶されたプログラムには、抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり前兆を検出するためのプログラムが含まれる。
制御部301では、CPUがROMに記憶されたプログラムと協働して、指令信号Stiを生成する指令信号生成処理、溶接時に電流センサ60のセンサ信号Siを基に電流値を計測する電流値計測処理、溶接時に通電時間を計測する通電時間計測処理、溶接時に圧力センサ61のセンサ信号Sp1又は圧力センサ62のセンサ信号Sp2を基にワーク500に加圧された圧力を計測する加圧力計測処理、溶接時にインバータ制御回路341のPWM信号Spwmを基に使用率(PWMデューティ値)を計測する使用率計測処理と、温度センサ63〜66のセンサ信号St1〜St4を基に水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23を通過した冷却水の温度を計測する冷却水温度計測処理等の各種処理を実行する。なお、制御部301において、CPUを制御するためのプログラムを記憶する媒体として上記したROMの他にフラッシュメモリ(“EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)”とも呼ばれる)等の再書き込みを可能とした半導体メモリの使用も可能である。再書き込みを可能とした半導体メモリを用いることでプログラムの更新を容易に行うことができる。
時計部302は、装置各部の動作に必要なクロック信号を生成するとともに、制御部301の制御の下で通電時間を計測する。カウンタ部303は、制御部301の制御の下で溶接回数(“打点回数”)の計数や、製品の生産個数の計数を行う。インタフェース部304は、電源ユニット20及び操作パネル25を接続するとともに、各種センサ(電流センサ60、加圧力センサ61,62及び温度センサ63〜66)、水平ガン15の起動スイッチ(図示略)及び垂直ガン16の起動スイッチ(図示略)を接続する。
記憶部305は、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)等の大容量の記憶装置で構成され、前述した各種設定値や各種モニタ値を記憶する。通信部306はクラウド8への接続を行う。制御部301は通信部306を制御して、データベースサーバ5にデータを送信する。データベースサーバ5に送信するデータは、溶接時に計測された「電流値」、「加圧力」、「使用率」、「冷却水温度」及び「通電時間」の各種モニタ値と、溶接直前に設定された「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値であり、これらが関連付けられて1つのデータ(当然ながらヘッダが付加されている)としてデータベースサーバ5に送信される。
溶接制御装置3では、抵抗溶接機2で溶接が行われるごとに各種設定値及び各種モニタ値をデータベースサーバ5に送信するため、データベースサーバ5と常時接続された状態となる。溶接制御装置3とデータベースサーバ5との間の通信に用いるプロトコルとしては、HTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secure)又はMQTT(MQ Telemetry Transport)が好適であるが、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)でもよい。
制御部301は、インタフェース部304を介して水平ガン15から出力される起動信号Sw1又は垂直ガン16からの起動信号Sw2を取り込むことで、操作パネル25にて設定された各種設定値(「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「材質」、「板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」)を読み込み、読み込んだ各種設定値及び各種モニタ値に基づいて指令信号Stiを生成して電源ユニット24に出力する。
溶接制御装置3は、抵抗溶接機2に近接配置されることから、抵抗溶接機2と有線で接続されるが、無線で接続することも勿論可能である。無線接続する手段としては、例えば無線LANやブルートゥース(登録商標)が好適である。また、溶接制御装置3と操作パネル25も互いに近接して配置されるので、これらの間の接続も有線で行われるが、無線での接続も勿論可能である。
図1において、Webサーバ4、データベースサーバ5及び監視装置6は、それぞれクラウド8上に構築され、互いに双方向にデータの授受が可能となっている。Webサーバ4は、HTML(Hyper Text Markup Language)で書かれたHTMLファイルの他、画像ファイルを蓄積し、PC7のWebブラウザからのリクエストがあれば、そのリクエストに応じたHTMLファイルや画像ファイル等をPC7に送信する。Webサーバ4は、例えばPC7のWebブラウザからのリクエストが監視装置6の処理結果を求めるものであれば、その処理結果を示すHTMLファイルや画像ファイル等をPC7に送信する。Webサーバ4とPC7のWebブラウザの間で通信を行うためのプロトコルとして、例えばHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)が用いられる。PC7のWebブラウザは、Webサーバ4へのアクセス時にWebサーバ4との間でTCP(Transmission Control Protocol)のコネクションを確立した後、Webサーバ4からHTMLファイル、画像ファイル等を取得する。Webブラウザが取得したHTMLファイル、画像ファイル等はPC7によって、PC7のモニタ画面上に表示される。データベースサーバ5は、各抵抗溶接機2にて1打溶接が行われるごとに溶接制御装置3から送信されてくる各種設定値及び各種モニタ値を受信し蓄積する。
監視装置6は、抵抗溶接機2−1〜2−nそれぞれにおける冷却水循環経路の詰まりを監視するものであり、主に抵抗溶接機2−1〜2−n及び溶接制御装置3−1〜3−nを製造したメーカーで使用される。
図7は、図1の溶接システム1を構成する監視装置6の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、監視装置6は、制御部601と、記憶部602と、操作部603と、表示部604と、通信部605と、共通バス606とを有する。制御部601、記憶部602、表示部603、操作部604及び通信部605は共通バス606に接続されている。制御部601は、図示せぬCPUと、CPUを制御するためのプログラムを記憶したROMと、CPUの動作に用いられるワークメモリとしてのRAMとを有する。該ROMに記憶されたプログラムには、抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり前兆を検出するためのプログラムが含まれる。CPUは、ROMに記憶されているプログラムと協働して、データベースサーバ5に蓄積されている各種設定値及び各種モニタ値を取得するデータ取得処理、冷却水温度をグループ分けするグループ分け処理、冷却水温度のグループごとに閾値を設定する閾値設定処理、閾値を補正する閾値補正処理及び閾値を超えるグループがある場合に冷却水循環経路に詰まりが生じつつあることを抵抗溶接機2のユーザに通知する詰まり通知処理等の各種処理を実行する。
なお、制御部601において、CPUを制御するためのプログラムを記憶する媒体としてROMの他にフラッシュメモリ等の再書き込みを可能とした半導体メモリの使用も可能である。再書き込みを可能とした半導体メモリを用いることでプログラムの更新を容易に行うことができる。また、上記プログラムを光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等の記憶媒体に記憶させておいて、上記処理実行時に当該記憶媒体から読み出すようにしてもよい。
記憶部602は、データベースサーバ5から取得された抵抗溶接機2からの複数の各種設定値及び各種モニタ値を記憶する。記憶部602には、例えばハードディスク装置やSSD等の記憶装置、あるいはフラッシュメモリ等の再書き込み可能な記憶媒体が用いられる。
操作部603は、監視装置6の操作に用いられる。制御部601は、操作部603にて操作が有った場合、当該操作に従った処理を行う。例えば、閾値を手動設定する操作があった場合、当該操作に従って閾値の設定を行う。また、制御部601は、処理結果等を視覚表示する操作があった場合、処理結果等を表示部604に表示する。
監視装置6が抵抗溶接機2から各種設定値及び各種モニタ値を取得する期間は、基本的には抵抗溶接機2の使用開始時(抵抗溶接機2を購入して最初に使用したとき)から現在までであるが、任意の期間を指定することも勿論可能である。
抵抗溶接機2の冷却水循環経路に詰まりが生じてくると、詰まりが生じてきた箇所の冷却水温度が上昇するので、冷却水温度に対して閾値を設定することで冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定することができる。但し、以下で詳細に説明するが、単に冷却水温度に対して閾値を設定しても冷却水温度に変動があるため、設定した閾値を冷却水温度が超えないことがある。そうなると、冷却水循環経路が詰まりつつあるにも関わらず、その状態を判定することができない。そのため、本発明は、冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定できるように、所定の条件に基づいて冷却水温度をグループ分けして変動幅が狭くなるようにしている。
監視装置6は、1台分の抵抗溶接機2で得られる複数の冷却水温度(水平ガン15を通過した冷却水温度、垂直ガン16を通過した冷却水温度、溶接トランス21を通過した冷却水温度、テーブル電極23を通過した冷却水温度)のそれぞれについて、各種設定値及び各種モニタ値のうちの少なくともいずれか1つを用いて、値が近似するもの同士にグループ分けする。即ち、水平ガン15を通過した冷却水温度に対するグループ分けと、垂直ガン16を通過した冷却水温度に対するグループ分けと、溶接トランス21を通過した冷却水温度に対するグループ分けと、テーブル電極23を通過した冷却水温度に対するグループ分けとを行う。監視装置6は、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23のそれぞれを通過する冷却水の温度についてグループ分けを行った後、グループごとに閾値を設定し、抵抗溶接機2の冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定する。冷却水温度は、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「材質」、「板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」等の各種設定値に応じた値となるため、これらの設定値に応じてグループ分けを行うことができる。
監視装置6は、複数台の抵抗溶接機2のそれぞれについて冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定するので、1台目の抵抗溶接機2に対して判定を行った後、2台目の抵抗溶接機2に対して判定を行う。その後、残りの全ての抵抗溶接機2についても順次同様の判定を行う。
図8は、溶接を行ったときの冷却水温度の時間的推移を示すとともに、冷却水温度波形の20℃及び40℃付近の一部分を拡大した図であり、横軸は打点数、縦軸は温度(℃)である。同図に示すように、溶接を行うことで冷却水温度は指数関数的に増加する波形となるが、波形自体を拡大するとコンデンサの充放電波形に似た鋸歯状となる。この鋸歯状部分は、溶接時の冷却水温度の上昇分である。溶接時の冷却水温度の上昇は、冷却水循環経路が詰まることでも当然増加する。なお、冷却水温度波形の立ち上がり部分(20℃から約38℃までの部分)のベースが傾斜しているが、拡大した場合、部分的には、打点数軸方向と略並行になっていると見なすことができるので、図8の下方の部分拡大図では20℃のときのベースを、40℃のときのべースと同様に打点数軸方向と並行に描いている。
図9は、抵抗溶接機2の冷却水循環経路に詰まりが生じていない正常時と詰まりが生じつつある異常時における冷却水温度の上昇分の変化の一例を示す図であり、横軸は打点数、縦軸は温度(℃)である。同図は、同一ワークに対して17KAの電流値で4打点溶接し、その後、10KAの電流値で2打点溶接した例を示している。1ワーク目や2ワーク目のように、初期の頃は冷却水循環経路に詰まりが生じていないため、17KAの電流値で溶接を行ったときの冷却水温度は「Tpv1」であり、10KAの電流値で溶接を行ったときの冷却水温度は「Tpv2」である。その後、ワークの数が増えてくると、冷却水循環経路に詰まりが生じてくる。1000ワーク目や1001ワーク目では、17KAの電流値で溶接を行ったときの冷却水温度が「Tpv1’」(Tpv1’>Tpv1)、10KAの電流値で溶接を行ったときの冷却水温度が「Tpv2’」(Tpv2’>Tpv2)となる。このように冷却水循環経路に詰まりが生じてくると冷却水温度が高くなる。
次に、冷却水温度のグループ分けと閾値の設定の仕方について詳細に説明する。
(冷却水温度のグループ分けの詳細)
監視装置6は、データベースサーバ5から1台分の抵抗溶接機2で得られた複数の各種設定値及び各種モニタ値に基づいて、抵抗溶接機2の冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定する。即ち、上述したように監視装置6は、1台の抵抗溶接機2の冷却水循環経路の複数箇所における冷却水温度(即ち、水平ガン15における冷却水温度、垂直ガン16における冷却水温度、溶接トランス21における冷却水温度、テーブル電極23における冷却水温度)のそれぞれについて、各種設定値及び各種モニタ値のなかの少なくともいずれか1つを用いて、値が近似するもの同士にグループ分けし、その後、グループごとに閾値を設定して抵抗溶接機2の冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定する。即ち、水平ガン15における冷却水温度についてグループ分けを行って、グループごとに閾値を設定して水平ガン15に対する詰まり判定を行い、また垂直ガン16を通過した冷却水温度についてグループ分けを行って、グループごとに閾値を設定して垂直ガン16に対する詰まり判定を行い、また溶接トランス21を通過した冷却水温度についてグループ分けを行って、グループごとに閾値を設定して溶接トランス21に対する詰まり判定を行い、またテーブル電極23を通過した冷却水温度についてグループ分けを行って、グループごとに閾値を設定してテーブル電極23に対する詰まり判定を行う。
例えば、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値のなかの1つである「電流値」を基に水平ガン15を通過した冷却水温度をグループ分けする場合で、電流値10KA、12KA及び17KAでグループ分けするものとする。図10は、電流値の大きさの違いによる冷却水温度の時間的推移を示す図であり、横軸は打点数、縦軸は温度(℃)である。同図は、冷却水循環経路に詰まりの無い正常時の波形を示している。冷却ユニット24から流出する冷却水の温度は、溶接開始直前までは例えば室温の20℃程であるが、1打溶接を行うごとに徐々に上昇して行く。言うまでもないが、冷却水温度の立ち上がりは電流値が大きいほど早くなる。
その後、水平ガン15が詰まりつつある状態になってくると、水平ガン15を通過した冷却水の温度が正常時より高くなる。同様に垂直ガン16が詰まりつつある状態になってくると、垂直ガン16を通過した冷却水の温度が正常時より高くなる。また同様に溶接トランス21が詰まりつつある状態になってくると、溶接トランス21を通過した冷却水の温度が正常時より高くなる。また同様にテーブル電極23が詰まりつつある状態になってくると、テーブル電極23を通過した冷却水の温度が正常時より高くなる。
本実施形態の監視装置6では、冷却水循環経路が詰まりつつある状態になることによる冷却水の温度増加を、通電時の冷却水温度の上昇分(図8に示す波高値Tpv)で判断するようにしている。通電時の冷却水温度の上昇分(波高値Tpv)は、ベースとなる温度との差分で得ることができる。例えば図8において、40℃のときの温度がベースとなる温度であり、この40℃との差分が上昇分となる。
図11は、10KA、12KA及び17KAの電流値でグループ分けしたときの打点ごとの冷却水温度の溶接時の上昇分の推移の一例を示す図であり、横軸は打点数、縦軸は温度(℃)である。同図において、10KAの電流値のときの冷却水温度のグループが「G1」であり、12KAの電流値のときの冷却水温度のグループが「G2」であり、17KAの電流値のときの冷却水温度のグループが「G3」である。また、グループG1〜G3は変動幅がある。グループG1における冷却水温度の上昇分の変動幅が「W1」であり、グループG2における冷却水温度の上昇分の変動幅が「W2」である。また、グループG3における冷却水温度の上昇分の変動幅が「W3」である。なお、図11ではグループG1〜G3の冷却水温度の上昇分の推移を縦軸方向に並べて描いているが、実際は打点ごとの冷却水温度の上昇分の推移となるので、グループG1〜G3の冷却水温度の上昇分の推移が打点数軸方向に並ぶことになる。その様子を図12に示す。
図12は、10KA、12KA、17KAの電流値の順で溶接を行ったときの冷却水循環経路における冷却水温度の上昇分の推移の一例を示す図であり、横軸は打点数、縦軸は温度(℃)である。同図に示す例は、1打点〜100打点の溶接を10KAの電流値で行い、101打点〜200打点の溶接を12KAの電流値で行い、201打点〜300打点の溶接を17KAの電流値で行ったときの、冷却水温度の上昇分の推移を示している。同図に示すように、グループG1〜G3の冷却水温度の上昇分の推移が打点数軸方向に並ぶことになる。
ここで、冷却水温度をグループ分けする理由について説明する。図13は、冷却水温度をグループ分けしなかった場合の冷却水温度の上昇分の推移の一例を示す図であり、横軸は打点数、縦軸は温度(℃)である。同図に示すように、冷却水温度をグループ分けしなかった場合、冷却水温度に対する閾値の設定は電流値の最も大きな17KAに対して行われることになり、グループ分けした場合と比べて冷却水温度の上昇分の変動幅が広くなる。この変動幅の上限の直上に閾値Thを設定した場合で、変動幅の下方となる10KAや12KAの電流値のみで溶接を行っていると、冷却水循環経路が詰まりつつある状態になっても冷却水温度が閾値Thを超えることがなかったり、超えてもそれまでに時間がかかってしまったりする。
図14は、冷却水温度をグループ分けしなかった場合で、冷却水循環経路が詰まりつつある状態における冷却水温度の推移の一例を示す図であり、横軸は打点数、縦軸は温度(℃)である。同図に示すように、17KAの電流値を基準に設定した閾値Thに対し、17KAの電流値のときの冷却水温度の上昇分はT1時間で閾値Thを超えているが、10KAの電流値のときの冷却水温度の上昇分はT1時間よりも長いT2時間で閾値Thを超えている。このように、17KAの電流値を基準に閾値Thを設定すると、10KAの電流値のときの冷却水温度の上昇分が閾値Thに達するまで時間がかかってしまい、冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定することが難しくなる。なお、図12及び図13では12KAの電流値の場合を省略している。このように、冷却水温度をグループ分けしなかった場合、冷却水循環経路が詰まりつつあるかどうかを判定することは難しい。
ところで、同じグループに振り分けられた冷却水温度でも、通電時間が違ったり、加圧力が違ったり、ワークの材質や板厚が違ったり、ワーク名が違ったり、ワーク上の打点位置が違ったりすると、冷却水温度が大きく異なる場合がある(即ち、グループの変動幅が大きくなる場合がある)。例えば17KAの電流値でも、通電時間が50msecのときと、200msecのときとでは冷却水温度が異なり、17KAの電流値のときの冷却水温度のグループG3の変動幅が広くなる。冷却水温度の変動幅が広くなると、上述したように、冷却水循環経路が詰まりつつある状態を検出することが困難になる。このような場合は、新たなグループ分け条件を追加することで、同じ17KAの電流値でも異なるグループに分けることができる。新たなグループ分け条件として例えば通電時間を用いると、17KAの電流値+通電時間50msecのグループと、17KAの電流値+通電時間200msecのグループに分けることができる。それぞれの変動幅は17KAの電流値のみの場合と比べて狭くなるので、冷却水循環経路が詰まりつつあることを検出することができるようになる。このように、グループ分け条件を増やしていくことで、より細かなグループ分けが可能となり、それぞれの変動幅を狭くできて、冷却水循環経路が詰まりつつあることを検出することができる。
グループ分け条件には、上述した「電流値」や「通電時間」の他に、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」、「ワーク上の打点位置」等があり、条件を増やして行くことで変動幅を狭くしていくことができる。但し、冷却水温度をグループ分けする条件は少ない方が管理しやすいので、以下に示す順でグループ化するとよい。また、冷却水温度のグループ分けに用いる条件には優劣があるため、その点についても記載する。
(1)電流値(設定値又はモニタ値)のみでグループ化する。通電時間が異なるものが含まれる点が劣る。
(2)電流値(設定値又はモニタ値)と通電時間でグループ化する。冷却水循環経路が詰まりつつあることを、(1)の条件の場合よりも確実に判定できる。
(3)ワーク名のみでグループ化する。ワーク名のみでは異なる溶接条件が含まれるので、冷却水循環経路が詰まりつつあることの判定の確実性が劣る。
(4)ワーク名とワーク上の打点位置でグループ化する。冷却水循環経路が詰まりつつあることの判定を確実にできる。
(5)ワーク名、電流値、通電時間でグループ化する。冷却水循環経路が詰まりつつあることの判定を確実にできるが、(4)の条件の場合よりも劣る。
(6)ワーク名と電流値でグループ化する。冷却水循環経路が詰まりつつあることの判定を確実にできるが、(3)や(5)の条件の場合よりも劣る。
なお、グループ分けは、冷却水温度に応じて分けることから「層別」という意味でもある。また、冷却水温度のグループ分けを抵抗溶接機ごとに行うのは、冷却水循環経路の詰まり具合が抵抗溶接機個々において異なるため、他の抵抗溶接機で得られる冷却水温度をグループ分けしても意味がないからである。
(閾値Thの設定の詳細)
監視装置6は、以上のようにして冷却水温度のグループ分けを行った後、グループごとに閾値Th1〜Th3を設定する。閾値Thの設定は、図8で示した溶接時の冷却水温度の上昇分(波高値Tpv)に対して行われる。グループごとに設定する閾値Th1〜Th3は、冷却水温度に対して冷却水循環経路が詰まっていると誤検出する値に設定する処理と、誤検出しない値に設定する処理を繰り返して適正な値に設定する。
監視装置6は、グループG1〜G3における冷却水温度の上昇分がそれぞれの閾値Thを超えるかどうか監視する。図15は、冷却水温度をグループ分けしたグループG1〜G3に対して設定した閾値の一例を示す図である。同図に示すように、グループG1には閾値Th1が設定されており、グループG2には閾値Th2が設定されており、グループG3には閾値Th3が設定されている。監視装置6は、グループG1〜G3に対して冷却水温度の上昇分が閾値Th1〜TH3を超えるかどうか監視する。即ち、グループG1に対して冷却水温度の上昇分が閾値Th1を超えるかどうか監視し、グループG2に対して冷却水温度の上昇分が閾値Th2を超えるかどうか監視し、グループG3に対して冷却水温度の上昇分が閾値Th3を超えるかどうか監視する。
図16は、冷却水循環経路に詰まりが生じていない正常時と詰まりが生じている異常時とにおける冷却水温度の上昇分と該上昇分に対して設定した閾値の一例を示す図である。同図の(a)は10KAの電流値における冷却水温度の上昇分と閾値Th1を示し、同図の(b)は12KAの電流値における冷却水温度の上昇分と閾値Th2を示し、同図の(c)は17KAの電流値における冷却水温度の上昇分の波形と閾値Th2を示している。冷却水循環経路に詰まりが生じていない正常時は、各電流値における冷却水温度の上昇分の波高値Tpv1〜Tpv3が閾値Th1〜Th3未満となるが、詰まりが生じている異常時は、各電流値における冷却水温度の上昇分の波高値Tpv1’〜Tpv3’が閾値Th1〜Th3を超えることになる。冷却水循環経路に詰まりが生じてくると冷却水温度が上昇してくるので、監視装置6は、グループG1における冷却水温度の上昇分が閾値Th1を超えた場合、グループG2における冷却水温度の上昇分が閾値Th2を超えた場合又はグループG3における冷却水温度の上昇分が閾値Th3を超えた場合、冷却水循環経路が詰まりつつあることを検出する。
この場合、10KAの電流値で使用される機会が多ければ、10KAの電流値のグループG1で冷却水循環経路が詰まりつつあることを検出できる。また、12KAの電流値で使用される機会が多ければ、12KAの電流値のグループG2で冷却水循環経路がつまりつつあることを検出できる。また、17KAの電流値で使用される機会が多ければ、17KAの電流値のグループG3で冷却水循環経路がつまりつつあることを検出できる。このように、冷却水温度をグループ分けすることで、冷却水循環経路が詰まりつつあることを確実に検出することが可能となる。
監視装置6は、10KA,12KA,17KAの各電流値のグループG1〜G3の中で、冷却水温度の上昇分が閾値を超えるグループが1つでもあれば、抵抗溶接機2のユーザに対して冷却水循環経路に詰まりが生じつつあることを通知する。抵抗溶接機2のユーザへの通知方法としては、該ユーザの溶接制御装置3にメンテナンス情報を送信する方法、該ユーザのパソコンや携帯端末等の情報機器にメールでメンテナンス情報を送信する方法、該ユーザに直接電話する方法等がある。抵抗溶接機2のユーザにメンテナンス情報を提供する場合、抵抗溶接機2に接続された操作パネル25に冷却水のクリーニングを知らせる表示をさせたり、冷却水のクリーニングを知らせるブザーを鳴動させたり、音声合成で音声を発生させたりする方法が考えられる。
ところで、冷却水温度の上昇分が一回でも閾値を超えると詰まりが生じつつあると判定してしまうと誤判定になりかねないため、冷却水温度の上昇分が閾値を例えば3回超えた場合に詰まりが生じつつあると判定するようにすれば、誤判定する割合を低く抑えることができる。
なお、冷却水温度は、ワーク500上の打点位置、作業員の入れ替わり(作業員の体調も含む)及び室温などによって変化することから、その変化に対して閾値を追従させる(補正する)必要がある。ワーク500上の打点位置や作業員の入れ替わりは打点間隔を監視することで把握することができ、室温は温度センサを設けることで把握することができる。
上述したように本実施形態では、通電時の温度上昇をベースとなる温度との差分で検出しているが、この差分検出のベースとなる温度がワーク500上の打点位置、作業員の入れ替わり、室温等によって変化する。図8や図9では1回の溶接による温度上昇が、次の溶接を行うまでにベースとなる温度に戻るように描いているが、実際には完全に戻ることはなく多少残ってしまう。打点間隔が長ければ元に戻るが、その戻り具合はワーク500上の打点位置により異なる。例えば形状の大きなワーク500で、両端を溶接する場合、溶接ガンの移動に時間がかかってしまうので、大概ベースとなる温度に戻ることになる。また、例えば2打点のみ溶接を行うワークの場合、先のワークに対する2打点目の溶接が終わると該ワークの搬出が行われ、その後、次のワークの搬入が行われるため、搬出搬入時間によってベースとなる温度に戻ることになる。このように、ベース温度が変化することがそれなりの頻度で生じるため、ベース温度の変化に対して閾値を追従させる必要がある。但し、閾値の追従速度を冷却水温度の変化よりも遅くしなければ、誤判定してしまう虞が大なので、閾値の設定においてその点を考慮する必要がある。
また、閾値の設定はグループごとに行うが、誤検出の多いグループは監視対象から外すようにしてもよい。また、閾値の設定は、監視装置6が自動的に冷却水温度の変動幅を判断して設定するが、手動で設定できるようにすることも勿論可能である。閾値設定を手動で行う場合、冷却水温度をグラフ化してモニタ表示することで、監視員がマウス等のポインティングデバイスを使用し、各グループに対して閾値を設定する。手動、自動を問わず閾値の設定当初は、余裕を見た範囲(早めに検出できる範囲)で決定すればよい。例えば、誤検出に対して余裕があるところに設定し、その後、冷却水温度の変動範囲を見て、誤検出する範囲を狭くして余裕を減らして行く。冷却水温度の短期的な変動及び長期的な変動に応じて閾値を常に補正することになるので、その補正処理にAI(Artificial Intelligence)を活用することも勿論可能である。また、グループ分けした中で、安定して変化しているグループに対してのみ閾値を設定するようにしてもよい。
このように、監視装置6は、1台分の抵抗溶接機2から得られた複数の各種設定値及び各種モニタ値に基づいて抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり状態を監視し、冷却水循環経路が詰まりつつあることを検出すると、その旨を抵抗溶接機2のユーザに通知する。
次に、溶接制御装置3及び監視装置6の動作について説明する。
(溶接制御装置3の動作)
図17は、溶接制御装置3の動作を説明するためのフローチャートである。なお、溶接制御装置3における動作は制御部301にて行われることから、主語は制御部301になるが、溶接制御装置3そのものの動作として説明することにするので、主語を溶接制御装置3とする。
溶接制御装置3は、まずクラウド8に接続する(ステップS10)。溶接制御装置3は、クラウド8との接続が確立すると、操作パネル25にて、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値が設定されたかどうか判定し(ステップS11)、各種設定値が設定されていないと判定すると(即ち、ステップS11で「NO」と判定すると)、当該各種設定値が設定されるまで本処理を繰り返す。溶接制御装置3は、ステップS11において各種設定値が設定されたと判定すると(即ち、ステップS11で「YES」と判定すると)、設定された各種設定値を一時的に記憶する(ステップS12)。
溶接制御装置3は、設定された各種設定値を一時的に記憶した後、起動信号Sw1又は起動信号Sw2が出力されたかどうか判定し(ステップS13)、起動信号Sw1又は起動信号Sw2が出力されたと判定すると(即ち、ステップS13で「YES」と判定すると)、一時的に記憶している各種設定値を基に指令信号Stiを生成する(ステップS14)。溶接制御装置3は、ステップS13において起動信号Sw1又は起動信号Sw2が出力されていないと判定すると(即ち、ステップS13で「NO」と判定すると)、ステップS11に戻る。ステップS11に戻ると、各種設定値が設定されたかどうか判定するが、ここで各種設定値の1つでも変更されれば、一時的に記憶している各種設定値を更新する。
溶接制御装置3は、指令信号Stiを生成した後、その指令信号Stiを抵抗溶接機2の電源ユニット20に出力する(ステップS15)。これにより、抵抗溶接機2にて1打点分の溶接が行われる。溶接制御装置3は、指令信号Stiの出力後、溶接が行われたときに各種モニタ値を計測する(ステップS16)。即ち、溶接制御装置3は、電流センサ60のセンサ信号Siを取り込んで「電流値」を計測し、また圧力センサ61,62のセンサ信号Sp1,Sp2を取り込んで「加圧力」を計測し、また温度センサ63〜66のセンサ信号St1〜St4を取り込んで「冷却水温度」を計測する。さらに、インバータ回路34で得られるPWMデューティ値であるPWM信号Spwmを取り込んで「使用率」を計測し、また時計部302からのクロック信号を基に通電時間を計測する。なお、温度センサ63のセンサ信号St1は、水平ガン15を通過した後の冷却水温度を示すものである。また、温度センサ64のセンサ信号St2は、垂直ガン16を通過した後の冷却水温度を示すものである。また、温度センサ65のセンサ信号St3は、溶接トランス21を通過した後の冷却水温度を示すものである。また、温度センサ66のセンサ信号St4は、テーブル電極23を通過した後の冷却水温度を示すものである。
溶接制御装置3は、溶接時に計測した「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「使用率」及び「冷却水温度」のそれぞれをモニタ値として扱い、一時的に記憶している各種設定値と共に記憶部305に記憶し(ステップS17)、さらに1打点分のデータとして、各種モニタ値と各種設定値を関連付けて通信部306からクラウド8上のデータベースサーバ5に送信する(ステップS18)。溶接制御装置3は、1打点分の各種モニタ値と各種設定値をデータベースサーバ5に送信した後、ステップS11に戻る。以後、上記ステップS11〜ステップS18までの処理は繰り返し行われる。
以上のように、操作パネル25にて、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値が設定されて、抵抗溶接機2にて1打点溶接が行われるごとに「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「使用率」及び「冷却水温度」が計測されて、これらの各種モニタ値と各種設定値とが関連付けられてデータベースサーバ5に送信される。
(監視装置6の動作)
図18は、監視装置6の動作を説明するためのフローチャートである。なお、監視装置6における動作は制御部601にて行われることから、主語は制御部601になるが、監視装置6そのものの動作として説明することにするので、主語を監視装置6とする。さて、監視装置6は、まずクラウド8に接続する(ステップS30)。監視装置6は、クラウド8との接続が確立すると、グループ分け条件が指定されたかどうか判定する(ステップS31)。即ち、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値と、「電流値」、「通電時間」及び「加圧力」の各種モニタ値のうちの少なくともいずれか1つ指定されたかどうか判定する。
監視装置6は、グループ分け条件が指定されていないと判定すると(即ち、ステップS31で「No」と判定すると)、グループ分け条件が指定されるまで本処理を繰り返す。これに対し、グループ分け条件が指定されたと判定すると(即ち、ステップS31で「YES」と判定すると)、指定されたグループ分け条件を一時的に記憶する(ステップS32)。ここで、グループ分け条件として例えば設定値の「電流値」が指定された場合、その「電流値」が一時的に記憶される。
監視装置6は、指定されたグループ分け条件を一時的に記憶した後、データベースサーバ5に蓄積されている抵抗溶接機2の所定期間分(例えば、使用開始時から現在まで)のデータ(即ち、各種設定値及び各種モニタ値)を取得する(ステップS33)。なお、データを取得する期間は、抵抗溶接機2の使用開始時から現在までに限定されず、監視員が任意に決定することも勿論可能である。例えば、抵抗溶接機2の冷却水循環経路のクリーニングを前回行ったときから現在までとしてもよい。監視装置6は、抵抗溶接機2の所定期間分の各種設定値及び各種モニタ値を取得した後、取得した各種設定値及び各種モニタ値を記憶する(ステップS34)。
監視装置6は、各種設定値及び各種モニタ値を記憶した後、指定されたグループ分け条件を用いて冷却水温度をグループ分けする(ステップS35)。即ち、監視装置6は、指定されたグループ分け条件を用いて、値が近似する冷却水温度同士にグループ分けをする。この場合、各種モニタ値には、水平ガン15を通過した後の冷却水の温度、垂直ガン16を通過した後の冷却水の温度、溶接トランス21を通過した後の冷却水の温度、テーブル電極23を通過した後の冷却水の温度が含まれるので、それぞれの冷却水温度についてグループ分けが行われる。
ここで、グループ分け条件として設定値の「電流値」が指定された場合、監視装置6は、該「電流値」を用いて冷却水温度のグループ分けを行う。また、グループ分け条件が複数ある場合は、複数の条件を用いて冷却水温度のグループ分けを行う。例えば、グループ分け条件が設定値の「電流値」の他に「通電時間」であれば、「電流値」と「通電時間」を用いて冷却水温度のグループ分けを行う。なお、設定値以外にモニタ値もグループ分け条件となる。例えばモニタ値の「電流値」と「通電時間」が指定された場合、監視装置6は、モニタ値の「電流値」と「通電時間」を用いて冷却水温度のグループ分けを行う。このように、監視装置6は、冷却水温度に対し、各種設定値及び各種モニタ値の中の少なくともいずれか1つを用いて、値が近似するもの同士にグループ分けを行う。
監視装置6は、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23のそれぞれについて、冷却水温度のグループ分けを行った後、各グループに対して閾値を設定する(ステップS36)。各グループに対する閾値の設定は、異常であると誤検出する値に設定する処理と、誤検出しない値に設定する処理を繰り返して適正な閾値を設定する。また、適正な閾値を設定した後、ワーク500上の打点位置、作業員の入れ替わり(作業員の体調も含む)及び室温などによる変化に追従するように閾値を補正する。
監視装置6は、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23のそれぞれにおける各グループに対して閾値を設定した後、閾値を超えるグループがあるかどうか判定する(ステップS37)。監視装置6は、いずれか1つのグループでも閾値を超えると判定すると(即ち、ステップS37で「YES」と判定すると)、閾値を超えた回数が所定回数以上かどうか判定する(ステップS38)。監視装置6は、閾値を超える回数が所定回数以上であると判定すると(即ち、ステップS38で「YES」と判定すると)、抵抗溶接機2のユーザに対し、冷却水循環経路上に詰まりが生じつつあることを抵抗溶接機2のユーザに通知する(ステップS39)。この場合、水平ガン15において閾値を超える回数が所定回数以上であった場合は、冷却水循環経路上の水平ガン15において詰まりが生じつつあることを抵抗溶接機2のユーザに通知する。また、垂直ガン16において閾値を超える回数が所定回数以上であった場合は、冷却水循環経路上の垂直ガン16において詰まりが生じつつあることを抵抗溶接機2のユーザに通知する。また、溶接トランス21において閾値を超える回数が所定回数以上であった場合は、冷却水循環経路上の溶接トランス21において詰まりが生じつつあることを抵抗溶接機2のユーザに通知する。また、テーブル電極23において閾値を超える回数が所定回数以上であった場合は、冷却水循環経路上のテーブル電極23において詰まりが生じつつあることを抵抗溶接機2のユーザに通知する。監視装置6は、閾値を超える回数が所定回数以上であると判定して、抵抗溶接機2のユーザに水詰まりが生じつつあることを通知した後、ステップS31の処理に戻る。
一方、監視装置6は、閾値を超える回数が所定回数以上でないと判定すると(即ち、ステップS38で「NO」と判定すると)、抵抗溶接機2のユーザへの通知を行わず、ステップS31の処理に戻る。また、監視装置6は、ステップS37の判定において、閾値を超えるグループが無いと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、そのままステップS31の処理に戻る。ステップS31〜ステップS39の処理は、監視装置6が監視する全ての抵抗溶接機2に対して繰り返し行われる。
このように、本実施形態に係る溶接システム1によれば、監視装置6は、データベースサーバ5から、各種設定値及び各種モニタ値を複数取得し、取得した複数の各種モニタ値それぞれに含まれる冷却水温度について、各種設定値及び各種モニタ値の中の少なくとも1つを用いて、値が近似するもの同士にグループ分けするので、それぞれのグループにおける冷却水温度の変動幅を狭くでき、抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まりの前兆(即ち、詰まりつつある状態)を検出することができる。
また、監視装置6は、グループごとに最適な閾値を設定し、各グループにおいて閾値を超える場合に、冷却水循環経路が詰まりつつある状態になっている旨を抵抗溶接機2のユーザに通知するので、該ユーザは、抵抗溶接機の冷却水循環経路が完全に詰まる前にクリーニングを行うことができる。これにより、製品の生産がストップすることが無くなり、生産性の向上が図れる。
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
例えば、上記実施形態に係る溶接システム1では、水平ガン15、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23それぞれの下流側に温度センサ63〜66を設けて、冷却水の温度を検出するようにしたが、冷却ユニット24の戻り口にのみ温度センサ67(図5参照)を設けて、冷却ユニット24に戻る冷却水の温度を検出するようにしてもよい。但し、このようにすると、詰まりが生じている箇所が、水平ガン15か、垂直ガン16か、溶接トランス21か、テーブル電極23かを特定することができない。また、例えば水平ガン15で詰まりが生じた場合、水平ガン15を通過する冷却水の流量が減少する反面、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23のそれぞれを通過する冷却水の流量が増加し、垂直ガン16、溶接トランス21及びテーブル電極23のそれぞれを通過する冷却水の温度が水平ガン15に詰まりが生じる前の正常時より低くなる。このため、冷却ユニット24の戻り口における冷却水の温度が水平ガン15で詰まりが生じる前に略近くなり、冷却水温度の上昇による詰まりを検出し難くなる。しかしながら、完全には同じにならず多少は高くなるので、検出精度は望めないものの、温度センサの数を減らしてコストアップを低く抑えたい場合は、1個の温度センサを冷却ユニット24の戻り口に設置することも可能である。
また、冷却水の流量の少ない冷却ユニット24を使用するためや、抵抗溶接機の必要とする流量を少なくしたりするために、抵抗溶接機内部でガン選択により選択されている側のみ冷却水が循環する機構を持つ抵抗溶接機があるが、この種の抵抗溶接機では、温度センサを減らしても同性能で冷却水循環経路が詰まりつつある状態を検出することができる。
また、上記実施形態に係る溶接システム1では、各抵抗溶接機2が設定した閾値を補正することなくそのまま用いたが、多数の他の抵抗溶接機2−2,2−3,…2−nのうち、同じ仕様のものにおいて設定された閾値を参照して補正するようにしてもよい。このようにすることで、閾値の設定精度を高めることができ、冷却水循環経路が詰まりつつある状態をより早期に検出することができる。
また、上記実施形態に係る溶接システム1では、冷却水温度の上昇分が所定の閾値を超える場合に冷却水循環経路が詰まりつつあることを検出するようにしたが、ある一定の傾きを持って増加して行ったときの冷却水温度の傾きを閾値として設定し、実際の冷却水温度の傾きが該閾値を超える場合に冷却水循環経路が詰まりつつあることを検出するようにしてもよい。
また、上記実施形態に係る溶接システム1では、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「ワークの材質」、「ワークの板厚」、「ワーク名」及び「ワーク上の打点位置」の各種設定値、及び「電流値」、「通電時間」及び「加圧力」の各種モニタ値の中の少なくとも1つの値を用いて冷却水温度をグループ分けするようにしたが、各種設定値及び各種モニタ値の中で、抵抗溶接機2のユーザが表に出したくないデータ(例えば「電流値」)があれば、当該データを用いた詰まり検出を行わないようにしてもよい。すなわち、抵抗溶接機2のユーザが表に出しても良いと思っているデータのみで詰まり検出を行うようにしても良い。
また、上記本実施形態に係る溶接システム1では、抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり検出を監視装置6が行ったが、監視装置6の機能をPC7に持たせて、PC7が抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり検出を行うようにしてもよい。例えば、監視装置6の機能をプログラム化したアプリをPC7にインストールすればよい。PC7は、インストールされたアプリに従って動作し、データベースサーバ5から各種設定値及び各種モニタ値を取得して、抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり検出を行う。
また、PC7にて抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり検出を行わせる以外に、クラウド8上に機能ツール&データ処理ツール(図示略)を構築し、この機能ツール&データ処理ツールが抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり検出を行うようにしてもよい。この場合、機能ツール&データ処理ツールがデータベースサーバ5から各種設定値及び各種モニタ値を取得することになる。監視装置6は、機能ツール&データ処理ツールにて抵抗溶接機2の冷却水循環経路の詰まり状態が検出された場合、抵抗溶接機2のユーザに抵抗溶接機2の冷却水循環経路が詰まりつつあることを通知する。
また、上記実施形態に係る溶接システム1では、抵抗溶接機2と溶接制御装置3を別体としたが、溶接制御装置3を抵抗溶接機2に内蔵させてもよい。