以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明の実施の形態を得るに至った経緯について説明する。
溶接機をネットワークに接続して、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」等の溶接機の稼働状態を示す情報を収集することで、溶接機から離れた場所に居ても稼働状態を把握することができる。溶接機の稼働状態を示す情報を常時収集することで、初期の不具合を発見でき、生産性を低下させてしまう稼働停止状態に陥るのを未然に防ぐことが可能となる。
しかしながら、抵抗溶接を行う溶接機においては、使用の際に被溶接物の「材質」及び「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」等を含む溶接条件を設定することになるが、設定する溶接条件がユーザのノウハウになることがあるため、ネットワークに接続することによるノウハウの漏洩が問題となる。溶接機をネットワークに接続できるようにすることでメンテナンス性が良くなる反面、秘匿性を確保でき難くなることから、必ずしも全てのユーザに受け入れられるとは限らない。
また、溶接機を導入した板金加工メーカーが複数社ある場合、それらの業者間でノウハウが漏洩するようなことがあれば差別化が図れ難くなるなど、競争上の優位性を保つことが困難になることもある。また、製品の生産台数が漏洩した場合には、生産性が判明してしまう虞もある。なお、溶接機を導入した板金加工メーカーは、顧客である発注元のメーカー(以下、“エンドユーザ”と呼ぶ)の社名が公表されるのを嫌う傾向にある。
このように、溶接機をネットワークに接続できるようにすることで、メンテナンス性の向上が図れるものの、溶接機を使用する上でのノウハウ等の重要情報の秘匿性を確保できない場合がある。そして、重要情報の秘匿性を確保できなければ、ネットワークへの接続を可能にした溶接機の普及が進まない虞が十分に考えられる。
以下、ネットワークに接続できるようにしても、溶接機を使用する上でのノウハウ等の重要情報の秘匿性を確保できる溶接機及び溶接システムについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接システム1の概略構成を示すブロック図である。同図において、本実施形態に係る溶接システム1は、複数の溶接機2−1〜2−nと、クラウド3上に設けられるWebサーバ4、データベースサーバ5及び機能ツール&データ処理ツール6と、Webサーバ4及びデータベースサーバ5それぞれにアクセス可能なWebブラウザを備えた監視装置7と、を備える。
各溶接機2−1〜2−nは、国を問わず板金加工メーカーで使用される。例えば、同図に示すように、溶接機2−1はA国の板金加工メーカーのYY1社で使用され、溶接機2−2はB国の板金加工メーカーYY2社で使用される。なお、本明細書では、YY1社で使用される溶接機2−1をテーブル式溶接機として、これを例に挙げて説明することとする。
溶接機2−1は、1打溶接する毎に、エンドユーザ(YY1社の顧客)の社名及び製品名と、溶接条件(「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」)と、「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力値」等の各実測値とを含むモニタ値を生成し、それにヘッダを付加した送信データをデータベースサーバ5へ送信する。溶接機2−1の通信部45は、HTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secure)又はMQTT(MQ Telemetry Transport)のプロトコルを使用して送信データをデータベースサーバ5へ送信する。
なお、溶接条件には、上述した「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」及び「加圧力」の他に、「初期加圧時間」、「アップスロープ時間」、「冷却時間」、「保持時間」及び「チップ形状」等もあるが、本実施形態では「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」及び「加圧力」のみに限定する。また、実測値も「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力値」以外のものもあるが、本実施形態ではこれらに限定することとする。
図2は、溶接機2−1の外観を示す側面図である。同図において、溶接機2−1は、冷却ユニット10と、電源ユニット11と、支持ポスト12と、支持アーム13と、溶接ガン14と、導電ケーブル15A,15Bと、板状電極(以下、“テーブル電極”と呼ぶ)16と、テーブル駆動部17と、操作パネル18と、溶接トランス19と、を備える。
冷却ユニット10は、溶接ガン14、導電ケーブル15A,15B、支持アーム13、テーブル電極16、溶接トランス19、その他電流が流れる部分を冷却する冷却水の供給を行う。冷却ユニット10は、溶接機2−1に電源が投入されている間は常時動作して溶接ガン14との間で冷却水を循環させる。電源ユニット11は、受電設備(図示略)より供給される三相の交流電力を整流して直流に変換し、これにより得られた直流から高周波交流を生成する。電源ユニット11の詳細な構成については後述する。
支持ポスト12は、冷却ユニット10と電源ユニット11の近傍にて垂直方向に立設され、支持アーム13を水平方向に回動可能に支持する。支持アーム13は、略L字状に形成されており、溶接ガン14を保持する。支持アーム13は、支持ポスト12に対して水平方向に延びる水平アーム部13Aと、水平アーム部13Aの先端部分から垂直方向下向きに延びる垂直アーム部13Bと、を備える。
溶接ガン14は、支持アーム13の垂直アーム部13Bの先端部分に、垂直方向に弧を描くように揺動自在に保持される。溶接ガン14の基端部と垂直アーム部13Bの先端部分との間にはスプリングコイル13Cが張設されており、このスプリングコイル13Cの収縮力により、溶接ガン14の基端部側が垂直方向上側に持ち上げられる。また、溶接ガン14は、先端部分が、水平アーム部13Aの先端部分に設けられたシリンダ26により、テーブル電極16に向かう方向に加圧される。垂直アーム部13B内には、チェーン(図示略)が内蔵されており、そのチェーンの一端がシリンダに繋がっており、他端が溶接ガン14の力点部分(図示略)に繋がっている。シリンダ26によってチェーンが引き上げられることで、溶接ガン14の先端部分がテーブル電極16に圧接する。溶接ガン14に対する加圧は、溶接が開始される直前(即ち、溶接電流が供給される直前)に行われ、溶接が終了した後に解放される。溶接ガン14に対する加圧力は、後述する加圧力センサ61(図3参照)にて検出される。なお、シリンダ26内に空気を入れる機構については説明を省略する。
また、溶接ガン14は、基端部に溶接ガン14を操作するためのハンドル14Aを有している。ハンドル14Aにはレバー式の起動スイッチ(図示略)が内蔵されており、レバーが握られることでオンし、起動信号が出力される。起動スイッチからの起動信号は、後述する溶接制御装置33(図3参照)に取り込まれる。溶接ガン14の先端部分には着脱自在なキャップチップ25が装着される。
電源ユニット11は、操作パネル18の操作により動作を開始し、PWM(Pulse Width Modulation)制御した高周波交流を出力する。電源ユニット11から出力される高周波交流は、テーブル駆動部17の前面部に内蔵された溶接トランス19の1次コイル191(図3参照)に供給される。導電ケーブル15Aは、一端が溶接トランス19の2次側出力端のプラス電極に接続され、他端が溶接ガン14に接続される。導電ケーブル15Bは、一端が溶接トランス19(図3参照)の2次側出力端のマイナス電極に接続され、他端がテーブル電極16に接続される。導電ケーブル15A,15Bには、銅材等の導電性及び熱伝導性に優れた金属材が用いられる。テーブル電極16は、銅材等の導電性及び熱伝導性に優れた金属材を用いて略正方形の平坦な板状に形成されている。テーブル電極16には、溶接対象である被溶接物500(図3参照)が載置される。被溶接物500は、上述したように、2枚の鋼板等の金属板からなる板組である。テーブル駆動部17は、テーブル電極16を垂直方向に上下動させる。
操作パネル18は、液晶パネル等の表示器(図示略)及び該表示器の表示面上に取り付けられる抵抗膜方式等のタッチパネル(図示略)を有している。操作パネル18のタッチパネルを通して、被溶接物500に対する溶接条件(「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」)の設定や、エンドユーザの社名や製品名等に関する数値や文字の入力が行われる。また、操作パネル18の表示器には、設定された溶接条件値の表示や、実測されたモニタ値(「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力」)の表示が行われる。
溶接トランス19は、本願発明者等が先に特開2012−210654号、特開2013−179205号で提案した抵抗溶接用の溶接トランスである。短時間に大電流を供給することができるものである。
図3は、溶接機2−1を構成する電源ユニット11及び溶接トランス19それぞれの概略構成を示すと共に、各種センサ60〜62及び電源ユニット11と操作パネル18の接続状態を示す図である。同図において、電源ユニット11は、整流器31と、平滑用コンデンサ32と、溶接制御装置33と、インバータ回路34と、を備える。整流器31は、6個の整流素子で構成された単相全波整流式を採用したものであり、受電設備(図示略)からの三相交流を整流して直流に変換する。平滑用コンデンサ32は、整流器31より得られた直流電圧を平滑にする。溶接制御装置33は、溶接ガン14からの起動信号Swを取り込むことで、被溶接物500に対する溶接条件に応じたタイミング信号Stiを生成し、インバータ回路34へ出力する。また、溶接制御装置33は、1打点の溶接が行われる毎に、エンドユーザの社名及び製品名や、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」及び「加圧力」等の溶接条件、「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力値」等の実測値のなかで内容の置き換えが必要なものは置き換えを行い、置き換え後のこれらの情報にヘッダを付加して送信データを生成し、データベースサーバ5へ送信する。溶接制御装置33の詳細は後述する。
インバータ回路34は、インバータ制御回路341と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用した4個のスイッチ342と、CT(Current Transformer)を使用した電流センサ343と、を備える。インバータ制御回路341は、溶接制御装置33で生成されたタイミング信号Stiと電流センサ343で検出された1次電流とに基づいて4個のスイッチ342のそれぞれをオン・オフ制御し、高周波交流を発生する。インバータ制御回路341が発生する高周波交流の大きさは、4個のスイッチ342それぞれのオン・オフのデューティによって変化する。4個のスイッチ342それぞれのオン・オフのデューティを変化させることで、スイッチング波形の幅W(図4参照)が変化する。
溶接トランス19の1次コイル191は、電源ユニット11のインバータ回路34の出力端に接続される。インバータ回路34から高周波交流が出力されることで、溶接トランス19の1次コイル191に1次電流が流れる。溶接トランス19の2次コイルは、それ自体に極性を考慮する必要はないが、便宜上、溶接トランス19の2次コイルを、正側コイル192と負側コイル193とを直列接続したものと呼ぶことにする。正側コイル192の一端には第1整流素子194のアノード(正極)が接続され、負側コイル193の一端には第2整流素子195のアノード(正極)が接続される。第1整流素子194のカソード(負極)と第2整流素子195のカソード(負極)がプラス電極196に共通接続される。正側コイル192の他端と負側コイル193の他端とがマイナス電極197に共通接続される。プラス電極196には溶接ガン14が接続され、マイナス電極197にはテーブル電極16が接続される。なお、言うまでもないが、プラス電極196と溶接ガン14は導電ケーブル15Aにより接続され、マイナス電極197とテーブル電極16は導電ケーブル15Bにより接続される。
上述した各種センサ60〜62のうち、センサ60は溶接トランス19の2次側に発生する2次電流を検出するための電流センサ、センサ61は被溶接物500を加圧する加圧力を検出するための加圧力センサ(例えば、歪ゲージ)、センサ62は冷却水の温度を検出するための温度センサである。以下、電流センサ60から出力される電気信号を電流信号Siと呼び、加圧力センサ61から出力される電気信号を加圧力信号Spと呼び、温度センサ62から出力される電気信号を温度信号Stと呼ぶ。
図4は、溶接機2−1を構成する溶接トランス19の1次側に供給される電流を制御するための制御パルス、1次電流及び整流後の溶接電流を示す図である。同図において、インバータ回路34により制御された幅Wのパルス(スイッチングパルス)が、一定時間H内に一定回数、ここでは正方向のパルスと負方向のパルスとで合計10回、溶接トランス19の1次コイル191に供給される。これにより、溶接トランス19の1次コイル191には、図4の(b)に示すような1次電流が流れる。溶接トランス19の1次コイル191に1次電流が流れることで溶接トランス19の2次側に発生した2次電流が整流素子194,195によって全波整流されて、図4の(c)に示すような溶接電流となって溶接ガン14を流れる。
図4の(a)に示すパルスの幅Wを増減することで溶接電流の大きさを調整することができる。また、パルスの供給回数を増減すれば溶接時間を調整することができる。パルスの繰り返し周波数を高くすることで、溶接時間をより細かく微調整することができる。また、溶接トランス19の1次コイル191に供給する電流を増やすことで、2次コイルの正側コイル192、負側コイル193からより大きな溶接電流を取り出すことができる。
図5は、電源ユニット11に内蔵された溶接制御装置33の概略構成を示すブロック図である。同図において、溶接制御装置33は、制御部40と、計時部41と、カウンタ部42と、インタフェース部43と、記憶部44と、通信部45と、を備える。制御部40、計時部41、カウンタ部42、インタフェース部43、記憶部44及び通信部45は、共通バス50に接続される。
制御部40は、制御用のプログラムを記憶しており、このプログラムに従って装置各部を制御する。制御部40の詳細については後述する。計時部41は、制御部40が「通電時間」を計測するとき等で用いられる。カウンタ部42は、制御部40が溶接回数を計測するときに用いられる。インタフェース部43は、電流センサ60から出力される電流信号Si、加圧力センサ61から出力される加圧力信号Sp、温度センサ62から出力される温度信号St、操作パネル18から出力される操作信号Ss及び溶接ガン14から出力される起動信号Swをそれぞれ入力する。そして、入力した各信号のうち、電流信号Si、加圧力信号Sp及び温度信号Stについては、増幅・整形するとともにA/D(Analog/Digital)を行って、制御部40が扱える信号に変換する。また、インタフェース部43は、制御部40で生成された表示信号Sdを操作パネル18へ出力する。なお、操作パネル18から出力される操作信号Ssは、溶接条件(「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」)を設定する内容のものや、エンドユーザの会社名や製品名等の数値や文字を示すものなどがある。
記憶部44は、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」及び「加圧力」を1組とする溶接条件を複数記憶している。記憶部44が記憶している複数の溶接条件のうち、ユーザによって指定されたものが読み出される。即ち、ユーザが操作パネル18にて被溶接物500の「材質」及び「板厚」を指定する操作を行うことで、それらに対応する溶接条件が記憶部44から読み出される。以下に溶接条件の一例を挙げる。
溶接条件例(1)
材質:冷間圧延鋼板、板厚:0.8、電流値:5000(A)、通電時間(サイクル):12、加圧力(N):0.3
溶接条件例(2)
材質:冷間圧延鋼板、板厚:1.2、電流値:6500(A)、通電時間(サイクル):15、加圧力(N):0.4
溶接条件例(3)
材質:冷間圧延鋼板、板厚:2.3、電流値:8500(A)、通電時間(サイクル):25、加圧力(N):0.5
溶接条件例(4)
材質:電気亜鉛メッキ鋼板、板厚:0.8、電流値:5000(A)、通電時間(サイクル):12、加圧力(N):0.3
溶接条件例(5)
材質:電気亜鉛メッキ鋼板、板厚:1.2、電流値:6500(A)、通電時間(サイクル):20、加圧力(N):0.4
溶接条件例(6)
材質:電気亜鉛メッキ鋼板、板厚:2.3、電流値:8500(A)、通電時間(サイクル):25、加圧力(N):0.5
溶接条件例(7)
材質:ステンレス鋼板、板厚:1.0、電流値:3200(A)、通電時間(サイクル):8、加圧力(N):0.4
溶接条件例(8)
材質:ステンレス鋼板、板厚:1.5、電流値:3500(A)、通電時間(サイクル):10、加圧力(N):0.5
溶接条件例(9)
材質:ステンレス鋼板、板厚:2.5、電流値:4500(A)、通電時間(サイクル):10、加圧力(N):0.5
溶接条件例(10)
材質:亜鉛メッキ鋼板、板厚:1.0、電流値:1回目4000(A)、2回目6000(A)、通電時間(サイクル):1回目10、2回目15、加圧力(N):0.4
溶接条件例(11)
材質:亜鉛メッキ鋼板、板厚:1.6、電流値:1回目5000(A)、2回目7000(A)、通電時間(サイクル):1回目12、2回目20、加圧力(N):0.5
溶接条件例(12)
材質:亜鉛メッキ鋼板、板厚:2.3、電流値:1回目6500(A)、2回目8500(A)、通電時間(サイクル):1回目15、2回目25、加圧力(N):0.5
溶接条件には、上記した予め用意されたもの以外に、ユーザが自身の経験に基づいて設定したものもあり、ユーザが設定した溶接条件も記憶部44に記憶される。ユーザが自身の経験に基づいて設定した溶接条件は所謂ノウハウと言える。
また、記憶部44には、さらにエンドユーザの「会社名」及び「製品名」、「カウント値(打点数)」、計時部41を用いて計測された「通電時間」、電流センサ60で検出された「電流値」、加圧力センサ61で検出された「加圧力値」及び温度センサ62で検出された「温度値」も記憶される。なお、記憶部44には大量のデータが蓄積されることから、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量の記憶媒体を用いたものが望ましい。
図6は、溶接制御装置33の制御部40の機能の一部を示すブロック図である。同図において、制御部40は、溶接条件選択機能を実現する溶接条件選択部401と、情報開示可否選択機能を実現する情報開示可否選択部402と、情報置き換え機能を実現する情報置き換え部403とを有する。なお、制御部40は、図5に示すように、タイミング信号生成機能を実現するタイミング信号生成部400も有している。このタイミング信号生成部400は、上述したように、溶接ガン14からの起動信号Swを取り込むことで、被溶接物500に対する溶接条件に応じたタイミング信号Stiを生成し、インバータ回路34へ出力する。
図6に戻り、溶接条件選択部401は、記憶部44に記憶された複数の溶接条件からなる溶接条件群441の中からユーザが指定した「材質(物性)」及び「板厚(形状)」に対応するものを選択する。即ち、ユーザが溶接を行おうとする被溶接物500の「材質」及び「板厚」を指定することで、その「材質」及び「板厚」に対応する溶接条件が選択される。図7は、溶接条件選択部401で選択された溶接条件の一例を示す図である。同図の(a)に示す溶接条件は、板厚2.3mmの冷間圧延鋼板に用いられるものである。また、同図の(b)に示す溶接条件は、板厚1.0mmの亜鉛メッキ鋼板に用いられるものである。また、同図の(c)に示す溶接条件は、板厚2.3mmの亜鉛メッキ鋼板に用いられるものである。なお、溶接条件の選択において、ユーザが溶接を行おうとする被溶接物500の「材質」及び「板厚」を指定することで選択するのではなく、単純にユーザが所望のものを選択できるようにしても構わない。
図6に戻り、情報開示可否選択部402は、開示可否チェック表442を基にエンドユーザの「会社名」及び「製品名」、打点数を示す「カウント値」、溶接条件選択部401で選択された溶接条件の各項目に対し、開示可及び開示不可のいずれか一方を選択する。図8は、情報開示可否選択部402により開示可否選択される情報開示可否チェック表442の一例を示す図である。同図に示す情報開示可否チェック表442では、「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「電流値」、「加圧力」及び「カウント値」が開示否に設定され、「板厚」と「通電時間」が開示可に設定されている。情報開示可否チェック表442の初期値は全ての項目において開示可に設定されているので、ユーザは作業開始前に必要に応じて開示否設定を行う。情報開示可否チェック表442は記憶部44に記憶され、ユーザの操作によって操作パネル18に表示される。
なお、開示可否チェック表442の各項目に対して、開示可又は開示不可を選択するのではなく、予め各項目に開示可又は開示不可が設定された複数の開示可否チェック表を用意しておき、その中からユーザが望むものを選択できるようにすることも可能である。このようにすれば、1項目ずつ開示可又は開示不可を選択する場合よりも短時間で開示可否選択を行うことが可能となる。
図6に戻り、情報置き換え部403は、情報開示可否選択部402にて開示否に設定された全ての項目に対し、溶接機2−1を所有するユーザのノウハウに直結せず、且つ監視装置7側で必要な情報のみ推測可能な内容に置き換える処理を行う。情報置き換え部403は、「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」及び「カウント値」の全ての項目に対し、開示否が設定されたものに対して内容の置き換えを行う。なかでも電流値の置き換えにおいては、置き換えパターン群443の中からユーザが選択されたものに基づいて行われる。
溶接条件の「電流値」又は「加圧力」が置き換えられた場合には、モニタ値の「電流値」又は「加圧力」もそれに従って置き換えられる。即ち、溶接条件の「電流値」のみ置き換えられた場合は、モニタ値も「電流値」のみが置き換えられる。また、溶接条件の「加圧力」のみ置き換えられた場合は、モニタ値も「加圧力」のみが置き換えられる。また、溶接条件の「電流値」と「加圧力」の双方が置き換えられた場合は、モニタ値の「電流値」と「加圧力」も共に置き換えられる。
本実施形態の溶接機2−1では、「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「板厚」については数字等の記号で置き換えるようにしており、「通電時間」、「加圧力」及び「カウント値」については係数を掛けることで置き換えるようにしている。一方、「電流値」については、1つの溶接個所に対して1回だけ電流を流す場合や2回以上電流を流す場合があるので、置き換え方法の異なる複数のパターン(上述した置き換えパターン群443)を用いて置き換える。「電流値」の置き換えの具体的として、1つの溶接個所に対して1回だけ電流を流す場合は、電流値に係数を掛けるパターンが挙げられる。1つの溶接個所に対して2回以上電流を流す場合は、複数の電流値の平均値を求めるパターン、複数の電流値の実効値(熱的等価電流)を求めるパターン、複数の電流値の中で最も大きいものを選択するパターン、所定の基準値(非公開とする)に対する相対値を求めるパターン等が挙げられる。なお、2回以上電流を流す場合では、時間を加味した平均値や実効値を求める場合もあり、また時間を加味した電流値を求める場合もある。
本実施形態の溶接機2−1では、1つの溶接個所に対して1回だけ電流を流す場合は1/10の係数を掛けるパターン(これを“パターンP1”と呼ぶ)を使用する。また、1つの溶接個所に対して2回以上電流を流す場合は、時間を加味した平均値を求めるパターン(これを“パターンP2”と呼ぶ)と、時間を加味した実効値を求めるパターン(これを“パターンP3”と呼ぶ)と、時間を加味して電流値が最も大きいもの選択するパターン(これを“パターンP4”と呼ぶ)とを使用する。これらのパターンP1〜P4を記憶部44に記憶させておいて、溶接時に制御部40が読み出すようにする。また、パターンP1〜P4の中でどのパターンを使用したかが監視装置7側で分かるように、使用したパターンを監視装置7に通知する。
なお、「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」に対して使用する記号については、1スポット溶接毎に異なる値に変更しても構わない。また、「電流値」で使用するパターンP2〜P4については、1スポット溶接毎に使用したパターンを監視装置7に通知することから、1スポット溶接毎に変更するようにしても構わない。即ち、自動でランダム選択するようにしても構わない。
図9は、制御部40の情報置き換え部403による溶接条件の置き換えの一例を示す図である。同図に示す例では、情報開示可否選択設定において全ての項目に対して「開示否」が選択されるものとし、また1つの溶接個所に対して2回電流を流す溶接が行われるものとする。また、置き換えパターンとしてはパターンP2が使用されるものとする。
図9において、溶接機2−1のユーザは、情報開示可否選択設定を行った後、「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」及び「カウント値」の設定を行う。上述したように、情報開示可否選択設定において全ての項目に対して「開示否」が選択されており、この状態でエンドユーザの会社名「AAA社」が入力されると、例えば「1000」に置き換えられ、製品名「建材a」が入力されると、例えば「2000」に置き換えられる。また、材質「亜鉛メッキ鋼板」が入力されると、例えば「3000」に置き換えられる。
次いで、「板厚2.3」が入力されると、例えば「4」に置き換えられる。この場合、「亜鉛メッキ鋼板」の板厚として、例えば「1.0」、「1.2」、「1.6」及び「2.3」の4種類用意し、これらに「1」〜「4」の記号を割り当てることで、板厚「2.3」が「4」に置き換えられる。
次いで、電流値W1「6500」及び電流値W2「8500」が入力されると、約「7750」に置き換えられる。ここでは電流値の置き換えにパターンP2を用いているので、約「7750」は時間を加味した平均値である。
図10は、電流値W1が6500(A)、電流値W2が8500(A)の電流波形の一例を示す図である。同図に示す電流波形では、電流値W1の通電時間T1が15サイクル、電流値W2の通電時間T2が25サイクルとなっており、電流値W1と電流値W2との間には冷却期間Tcが設けられている。ここで、1サイクルを50Hzとすると、T1サイクル:15は300(msec)、T2サイクル:25は500(msec)となる。これにより、電流値W1:6500と電流値W2:8500の平均値は、
(6500×300+8500×500)/(300+500)≒7750となる。但し、ここでは冷却期間Tcを除外している。このように、電流値W1「6500」と電流値W2「8500」は約「7750」に置き換えられる。
図9に戻り、電流値の置き換えが行われた後、通電時間T1「15」及び通電時間T2「25」が入力されると、「200((15+25)×5)」に置き換えられる。次いで、加圧力「0.5」が入力されると、「4(0.5×8)」に置き換えられる。
カウント値においては、溶接機2−1の稼働当日の最後の溶接が終了した時点で1/100にした値に置き換えられる。例えば、最後の溶接におけるカウント値が「100」であるとすると、「1(100/100)」に置き換えられる。なお、カウント値は、溶接毎にデータベースサーバ5へ送信されるのではなく、最後の溶接が終了した時点で送信するようにしている。その理由は、溶接毎にカウント値をデータベースサーバ5へ送信すると製品の生産台数が判明してしまう虞があるからである。このため、最後の溶接が終了した時点におけるカウント値をデータベースサーバ5へ送信するようにしている。勿論、送信前に置き換えを行うことは言うまでもない。
カウント値を開示しても生産台数を把握できない場合や、カウント値を開示しなくても生産台数を把握できる場合がある。カウント値を開示しても生産台数を把握できない場合とは、ある一定の溶接条件で溶接が行われた場合が挙げられる。この場合、順次出力される溶接条件が同じ内容になるので、1台当たりの溶接数(打点数)が分からず、生産台数を把握し難い。
これに対し、カウント値を開示しなくても生産台数を把握できる場合とは、一定の手順で溶接条件を変えて溶接が行われた場合が挙げられる。一定の手順で溶接条件を変えて溶接が行われた場合は、明らかに1つの製品が何打点の溶接で完成しているかが分かり、生産台数を推測することが可能である。ここで、この問題について図を用いて説明する。
図11は、一定の手順で溶接条件を変えて溶接が行われた場合に生ずる問題を説明するための図である。図12は、図11に示す溶接で使用される溶接条件と打点のカウント値を示す図である。図11に示すように、1台の被溶接物(製品)501に対して、3つの異なる溶接条件で10打溶接を行うものとし、溶接位置WP1〜WP6のそれぞれについて溶接条件WC1(上記した溶接条件例(10)に対応)を使用し、溶接位置WP7〜WP9のそれぞれについて溶接条件WC2(上記した溶接条件例(11)に対応)を使用し、溶接位置WP10について溶接条件WC3(上記した溶接条件例(12)に対応)を使用し、溶接位置WP1〜WP3のグループG1→溶接位置WP4〜WP6のグループG2→溶接位置WP7〜WP9のグループG3→溶接位置WP10の順で溶接を行うと、図12に示す順で溶接条件が使用されることになる。同様の手順で次以降の被溶接物501に対して溶接を行うと、同様の溶接条件が周期的に使用される。この周期を調べることでカウント値が開示されなくても1台の被溶接物501に対する打点数が分かってしまう。即ち、生産台数の推測が可能になる。
一定の手順で溶接条件を変えて溶接が行われても生産台数を推測できないようにするためには、上記した溶接順に使用する溶接条件の出力順(即ち、データベースサーバ5へ送信する順)をランダムに変えるようにすればよい。例えば、溶接位置WP1〜WP3のグループG1→溶接位置WP4〜WP6のグループG2→溶接位置WP7〜WP9のグループG3→溶接位置WP10の順で溶接を行った場合、溶接条件の出力順も当然ながらグループG1→グループG2→グループG3→溶接位置WP10となるが、溶接順はそのままにして溶接条件の出力順をランダムに変えることで、溶接条件の出力に規則性が無くなり、結果的に生産台数の推測ができ難くなる。なお、溶接条件の出力順を変える関係上、複数の溶接条件を一時的に記憶させる必要があることから、溶接条件の送信にリアルタイム性が得られなくなるが、大量の情報を得てその中から不具合点を見出すような解析を行う用途では問題とはならない。また、1製品毎に溶接条件の出力順をランダムにしても、溶接機の稼働状態を長時間あるいは長期間に亘って監視することになるため、変化を見出すのに大きな影響はない。
図13は、溶接制御装置33の制御部40の情報置き換え部403による溶接条件の置き換えの他の例を示す図である。同図に示す例では、情報開示可否選択設定において全ての項目に対して「開示否」が選択されるものとし、また1つの溶接個所に対して2回電流を流す溶接が行われるものとする。また、置き換えパターンとしてはパターンP3が使用されるものとする。
溶接機2−1のユーザによって、エンドユーザの会社名「BBB社」が入力されると、例えば「5000」に置き換えられる。次いで、製品名「建材b」が入力されると、例えば「6000」に置き換えられる。更に、材質「亜鉛メッキ鋼板」が入力されると、例えば「7000」に置き換えられる。
次いで、「板厚1.0」が入力されると、例えば「1」に置き換えられる。その後、電流値W1「4000」及び電流値W2「6000」が入力されると、「5292」に置き換えられる。本例では、電流値の置き換えにパターンP3を使用するので、時間を加味した実効値が求められる。図9での説明と同様に1サイクルを50Hzとした場合、T1サイクル:10は200(msec)となり、T2サイクル:15は300(msec)となるので、平均値は、√((4000)2×200+(6000)2×300)/(200+300)=5292となる。このように、電流値W1「4000」と電流値W2「6000」は「5292」に置き換えられる。
電流値の置き換え後、通電時間T1「10」と通電時間T2「15」が入力されると、「50((10+15)×2)」に置き換えられる。その後、加圧力「0.4」が入力されると、「4(0.4×10)」に置き換えられる。カウント値においては、図9で説明したように、溶接機2−1の稼働当日の最後の溶接が終了した時点で1/100にした値に置き換えられる。例えば、最後の溶接が終了した時点でのカウント値が「500」であるとすると、「5(100/500)」に置き換えられる。
以上は溶接条件における置き換え処理であったが、モニタ値の「電流値」及び「加圧力」においても溶接条件の「電流値」及び「加圧力」と同様にして置き換えが行われる。図14は、図9で示した例に対応するモニタ値の置き換えの一例を示す図である。同図に示すように、「電流値」については「7750」に置き換えられ、「加圧力」については「4」に置き換えられる。一方、図15は、図13で示した例に対応するモニタ値の置き換えの他の例を示す図である。同図に示すように、「電流値」については「5292」に置き換えられ、「加圧力」については「4」に置き換えられる。なお、モニタ値は実測値なので、固定値である溶接条件の「電流値」や「加圧力」と必ずしも一致するものではない。
このように、制御部40の情報置き換え部403は、情報開示可否選択部402で開示否に設定された「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」及び「カウント値」のうちの少なくとも1つの項目に対し、溶接機2−1のユーザのノウハウに直結せず、且つ監視装置7側で必要な情報のみ推測可能な内容に置き換えるとともに、「電流値」及び/又は「加圧力」が置き換えられた場合には、モニタ値の「電流値」及び/又は「加圧力」も置き換える。置き換え方は様々あって、置き換えたことによって得られる結果が少ない場合もあるが、それでも何かがあれば溶接機の稼働状況を推測することができる。
なお、上記した置き換え処理において、所定の係数を掛ける項目(「通電時間」、「加圧力」、「カウント値」の他、パターンP1における「電流値」)については、溶接機2−1のユーザがそれらの係数を知っておいた方が監視側から指摘があった場合に、指摘された項目を確認するうえで都合が良いと言える。そこで、1製品毎に図9の(a)や図13の(a)で示す置き換えパターンを保存するようにしてもよい。
「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」及び「カウント値」と、置き換えに使用されたパターンP1、P2,P3又はP4と、モニタ値(「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力」)とが1スポット溶接毎に得られ、これらの情報がヘッダとともに1つの送信データとして生成されてクラウド3上のデータベースサーバ5へ送信される。この送信データは溶接機2−1を構成する通信部45で生成される。即ち、通信部45は、クラウド3上のデータベースサーバ5にデータを送信する機能を有しており、制御部40からの送信指示に従って「会社名(エンドユーザ)」及び「製品名」と、溶接条件と、パターンP1〜P4と、モニタ値とを組み合わせてヘッダを付加した送信データを生成し、生成した送信データをHTTPS又はMQTTを使用して、クラウド3上のデータベースサーバ5へ送る。
図16は、通信部45から送信される送信データを示す図である。同図に示すように、最初の溶接で送信データD1が生成され、次の溶接で送信データD2が生成される。以後同様にして1溶接毎に送信データD3、…、Dnの順で生成される。送信データを構成する各情報は常に一定の順番で配置される。例えば、「会社名(エンドユーザ)」→「製品名」→「材質」→「板厚」→「電流値」→「通電時間」→「加圧力」→「カウント値」→パターンP1〜P4→モニタ値の「電流値」→「冷却水温度」→「加圧力」の順で配置される。送信データを構成する各情報を一定の順番で配置することで、監視装置7側での管理が容易になる。
次に、溶接制御装置33の動作について説明する。
図17は、溶接制御措置33のメイン動作を説明するためのフローチャートである。同図において、電源が投入されると、制御部40は、ネットワーク55への接続を行い(ステップS10)、クラウド3上のデータベースサーバ5にデータを送信できる状態にする。制御部40は、その後、ユーザによる情報開示可否操作が有るかどうか判定する(ステップS11)。制御部40は、情報開示可否操作が有ると判定すると(即ち、ステップS11で「YES」と判定すると)、情報開示可否チェック表(図8参照)を作成する(ステップS12)。
ここで、情報開示可否チェック表を作成する処理について説明する。
図18は、溶接制御装置33のサブ動作である情報開示可否チェック表作成処理を説明するためのフローチャートである。同図において、制御部40は、まず操作パネル18に初期設定された情報開示可否チェック表を表示する(ステップS50)。次いで、制御部40は、操作パネル18において情報開示を可否する操作が有るかどうか判定する(ステップS51)。制御部40は、情報開示を可否する操作が無いと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、現在の操作が本処理を抜ける操作であるかどうか判定する(ステップS57)。制御部40は、現在の操作が本処理を抜ける操作でないと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、ステップS50に戻る。これに対し、現在の操作が本処理を抜ける操作であると判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、図17のメインフローに戻る。
制御部40は、ステップS51において、情報開示を可否する操作が有ると判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、その操作が「否指定」で有るかどうか判定する(ステップS52)。制御部40は、否指定の操作と判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、否指定された項目を「否」に設定し(ステップS53)、否指定の操作で無いと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、可指定であると判断して、可指定された項目を「可」に設定する(ステップS54)。なお、初期状態では、全項目が「可」に設定されているので、ステップS54の処理は行われるものの、内容的に変化は無い。
制御部40は、ステップS53において「否」に設定又はステップS54において「可」に設定した後、全項目について可否設定が行われたかどうか判定する(ステップS55)。制御部40は、全項目について可否設定が行われていないと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、ステップS51〜54の処理を繰り返し、全項目について可否設定が行われたと判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、情報開示可否チェック表を更新し(ステップS56)、図17のメインフローに戻る。
制御部40は、メインフローに戻ると、溶接条件を選択する(ステップS13)。溶接条件の選択は、制御部40の溶接条件選択部401により行われる。溶接条件選択部401は、溶接機2−1のユーザが指定した「材質」及び「板厚」に対応する溶接条件を記憶部44に格納された溶接条件群441の中から選択する。
制御部40は、溶接条件を選択した後、溶接ガン14からの起動信号Swが有るか(即ち、起動信号Swが来ているか)どうか判定する(ステップS14)。制御部40は、起動信号Swが無いと判定すると(即ち、来ていないとして「NO」と判定すると)、起動信号Swが有るまで(即ち、来るまで)本ステップを繰り返す。これに対し、制御部40は、溶接ガン14からの起動信号Swが有ると判定すると(即ち、来たとして「YES」と判定すると)、1スポット分の溶接処理を行う(ステップS15)。即ち、制御部40は、ユーザが指定した「材質」及び「板厚」に対応する溶接条件に従い、被溶接物500に対して加圧と通電を行う。また、制御部40は、溶接を行っている最中にモニタ値の「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力」を記録する。
制御部40は、1スポット溶接を行った後、先に作成しておいた情報開示可否チェック表を参照し、「否」指定された項目があるかどうか判定する(ステップS16)。制御部40は、情報開示可否チェック表中に「否」指定された項目があると判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、該当する項目に対して情報置き換え処理を行う(ステップS17)。この置き換え処理は、制御部40の情報置き換え部403により行われる。例えば、図8に示す情報開示可否チェック表452の場合、「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「電流値」、「加圧力」及び「カウント値」の各項目が否設定されているので、これらの項目に対して置き換え処理を行う。この置き換え処理における前後の様子は、図9又は図13で示した通りである。一方、モニタ値においては、「電流値」と「加圧力」が置き換え対象となるので、情報置き換え部403は、これらに対しても置き換え処理を行う。モニタ値の置き換え処理における前後の様子は、図14又は図15で示した通りである。
制御部40は、情報置き換え処理を行った後、「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」及び「カウント値」、置き換えに使用されたパターンP1、P2,P3又はP4、モニタ値(「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力」)の各情報を通信部45へ出力し、さらに通信部45にデータ送信指示を与える(ステップS18)。
次いで、制御部40は、1製品分の溶接が終了したかどうか判定する(ステップS19)。制御部40は、1製品分の溶接が終了したと判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、ステップS11に戻り、次の製品に対する溶接処理を行う。これに対し、1製品分の溶接が終了していないと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、溶接条件の変更が無いかどうか判定する(ステップS20)。制御部40は、溶接条件の変更が無いと判定すると(「YES」と判定すると)、ステップS14に戻り、次の1スポット分の溶接処理を行う。これに対し、制御部40は、溶接条件の変更が有ると判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、ステップS13に戻り、溶接条件を選択して、ステップS14〜ステップS19までの処理を行う。
一方、制御部40は、ステップS11で、情報開示可否操作が無いと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、前回の情報開示可否チェック表を使用するかどうか判定する(ステップS21)。制御部40は、前回の情報開示可否チェック表を使用すると判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、ステップS13に進み、溶接条件を選択して、ステップS14〜ステップS19までの処理を行う。これに対し、制御部40は、ステップS21で、前回の情報開示可否チェック表を使用しないと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、本処理を終了するかどうか判定し(ステップS22)、本処理を終了すると判定すると(即ち、「YES」と判定すると)、本処理を終え、本処理を終了しないと判定すると(即ち、「NO」と判定すると)、ステップS11に戻る。
以上のように、溶接機2−1では、データベースサーバ5へ送信する各種情報(「会社名(エンドユーザ)」、「製品名」、「材質」、「板厚」、「電流値」、「通電時間」、「加圧力」、「カウント値」と、パターンP1、P2,P3又はP4と、モニタ値(「電流値」、「冷却水温度」及び「加圧力」))の中に秘匿性を保つ必要のものがあれば、ユーザのノウハウに直結せず、且つ監視側で必要な情報のみ推測可能な内容に置き換えてからデータベースサーバ5へ送信する。
図1に戻り、クラウド3上のWebサーバ4は、HTML(Hyper Text Markup Language)で書かれたHTMLファイルの他、画像ファイルを蓄積し、監視装置7のWebブラウザからのリクエストがあればそれを解釈してHTMLファイルや画像ファイル等を転送する。また、Webサーバ4は、監視装置7のWebブラウザからのリクエストがデータベースサーバ5に蓄積されているデータを取得するものであれば、データベースサーバ5から必要なデータを取りに行き、取り出したデータを監視装置7のWebブラウザに渡す。
また、Webサーバ4は、監視装置7のWebブラウザから各溶接機2−1〜2−nの稼働状態に関する解析要求があれば、機能ツール&データ処理ツール6に解析要求を与える。機能ツール&データ処理ツール6は、データベースサーバ5に蓄積されたデータ(即ち、各溶接機2−1〜2−nからアップロードされてきた稼働状態を示す情報)を用いて溶接機2−1〜2−nそれぞれの稼働状態に関する解析を行う。Webサーバ4は、機能ツール&データ処理ツール6で解析された結果を監視装置7のWebブラウザに渡す。監視装置7のWebブラウザは、機能ツール&データ処理ツール6で解析された結果を監視装置7のモニタ(図示略)に表示する。監視装置7で例えば1日にどれ位の頻度で電流が流れているかを解析させることで、ケーブル15A,15Bの劣化等を推測することができる。また、加圧力のモニタ値の設定値に対する変化を解析させることで、溶接機2−1のシリンダ26(図2参照)に接続されたチェーンの引っ張り強度を推測することができる。
監視装置7は、例えばパソコンであり、上述したWebブラウザがインストールされている。監視装置7のWebブラウザとWebサーバ4との間でHTMLファイルや画像ファイル等を転送するためのプロトコルとして、例えばHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)が用いられる。監視装置7のWebブラウザは、Webサーバ4へのアクセス時にWebサーバ4との間でTCP(Internet Protocol)のコネクションを確立した後、Webサーバ4からHTMLファイル、画像ファイル等を取得し、Webブラウザを使用してモニタ画面上に表示する。
監視装置7は、Webブラウザが取得した各溶接機2−1〜2−nの稼働状態に関する解析結果から必要があれば、該当する溶接機のユーザに対してメンテナンス情報を提供する。メンテナンス情報の提供は、監視装置7から該当する溶接機に対してネットワーク経由で行う場合や、監視員が直接電話等で行う場合等がある。
本実施形態の溶接機2−1では、ユーザの名称(会社名)を送信するようにはしていないが、監視装置7で割り振ったグローバルIPアドレスにより溶接機2−1のユーザを把握することができる。
溶接機2−1〜2−nそれぞれの稼働状態を示す情報を大量に取得することにより、各溶接機2−1〜2−nにおける僅かな異常や、使用上のミスを予見することが可能となり、各ユーザに対してメンテナンスや案内や最良の使用方法を提案することが可能となる。そして、使用不能状態となる前に対処できるので、溶接機が稼働停止に陥る期間を短縮でき、製品の生産性向上が図れる。
このように、本実施形態に係る溶接機2−1によれば、記憶部44に記憶する複数の溶接条件の中から、溶接を行おうとする被溶接物に適用可能なものに対して、ユーザが開示不可と指定した溶接条件の項目及び該項目と共通するモニタ値に対して、ユーザのノウハウに直結せず、且つ監視側で必要な情報のみ推測可能な内容に置き換えるので、溶接機2−1の使用に関するノウハウ等の重要情報の秘匿性を保つことができる。勿論、この重要情報には製品の生産台数に関する情報も含まれるため、第三者に生産実績を把握される虞もない。
また、本実施形態に係る溶接システム1によれば、データベースサーバ5に対し、蓄積されたユーザ毎の溶接条件及びモニタ値を基にユーザ毎の溶接機の稼働状態を解析させ、ユーザ毎の解析結果に基づくメンテナンス情報をユーザ毎に提供する監視装置7を有するので、ユーザ毎の溶接機使用に関する情報の秘匿性を保ちつつ、ユーザ毎の溶接機の稼働状態を把握することができ、IoTを活用した溶接機の普及を図ることができる。
なお、複数の製品(ワーク)があって、それぞれの製品において複数の溶接個所がある場合、それぞれ同じ溶接位置で得られるモニタ値(「電流値」、「通電時間」、「加圧力」)を解析させることで、溶接機の状況を正確に把握することができる。その理由は、1つの製品において、ある箇所を溶接すると、その箇所が導通状態となるので、隣接する箇所を溶接したときに分流することから、その箇所における実際の電流値が前の箇所における実際の電流値と異なってしまうからである。因みに、1つの製品に対して複数の溶接箇所がある場合、それらの溶接個所に対してどのような順番で溶接を行ったことを知ることができれば、溶接機のより詳しい稼働状態と、より詳しい溶接条件とが分かる。
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。