以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接条件作成装置5を備えた溶接システム1の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1の溶接システム1を構成する抵抗溶接機2の外観を示す正面図である。図1において、溶接システム1は、抵抗溶接機2と、溶接制御装置3と、操作パネル4と、溶接条件作成装置5と、圧力検出デバイス51と、変位検出デバイス52と、電流検出デバイス53と、温度検出デバイス54と、チップ間抵抗検出デバイス55と、引張試験機56と、Webサーバ57と、データベースサーバ58と、パーソナルコンピュータ(以下、“PC”と呼ぶ)100と、を備える。Webサーバ57及びデータベースサーバ58は、クラウドコンピューティング(以下、“クラウド“と呼ぶ)59上に構築される。
抵抗溶接機2、溶接制御装置3、操作パネル4、溶接条件作成装置5、圧力検出デバイス51、変位検出デバイス52、電流検出デバイス53、温度検出デバイス54、チップ間抵抗検出デバイス55及び引張試験機56は、板金加工メーカーYY1社の設備であり、この設備と略同様の設備が他の板金加工メーカーYY2社,YY3社,…,YYn−1社,YYn社にも設置されている。なお、ここで「略同様」と記載したのは、例えば抵抗溶接機は、機種や方式に違いがあるからである。機種とは、水平ガンのみ有するもの、垂直ガンのみ有するもの、水平ガンと垂直ガンの両方を有するものを指し、方式とは、定置式かテーブル式を指す。
溶接システム1を構成する抵抗溶接機2は、水平/垂直の2つの溶接ガンを有するテーブル方式の抵抗溶接機であり、溶接制御装置3の制御に従い、対向する2つの電極の間に配置されたワークに対し、挟圧しながら溶接を行う。ワークは、例えば2枚の冷間圧延鋼板、亜鉛メッキ鋼板又はステンレス鋼板等の金属板からなる板組である。
抵抗溶接機2は、支持ポスト10と、支持アーム11,12と、水平ガン15と、垂直ガン16と、スプリングバランサ17と、二次ケーブル18,19と、電源ユニット20と、溶接トランス21と、ブスバー22と、テーブル電極23と、冷却ユニット24と、操作パネル4とを備える。支持ポスト10は、支持アーム11,12を水平方向に回動自在に支持する。支持アーム11は略L字状を成し、水平ガン15を保持する。支持アーム11は、支持ポスト10に対して水平方向に延びる水平アーム部11Aと、水平アーム部11Aの先端部分から垂直方向下向きに延びる垂直アーム部11Bとから構成される。支持アーム12は略T字状を成し、垂直ガン16を保持する。支持アーム12は、支持ポスト10に対して水平方向に延びる水平アーム部12Aと、水平アーム部12Aの先端部分から垂直方向下向きに延びる垂直アーム部12Bとから構成される。
水平ガン15は、水平方向への移動が可能な溶接ガンであり、支持アーム11の垂直アーム部11Bの先端部分に、垂直方向に弧を描くように揺動自在に取り付けられる。水平ガン15の基端部と垂直アーム部11Bの先端部分との間にはスプリングコイル15Aが張設されており、このスプリングコイル15Aの収縮力によって水平ガン15の基端部側が垂直方向上側に持ち上げられる。また、水平ガン15は、先端部分が垂直アーム部11Bの上端部分に設けられたシリンダ13によってテーブル電極23に向かう方向に加圧される。垂直アーム部11Bにはチェーン(鎖、図示略)が内蔵されており、該チェーンの一端がシリンダ13に繋がり、他端が水平ガン15の力点部分(図示略)に繋がる。該チェーンがシリンダ13によって引き上げられることで、水平ガン15が支点部分(図示略)を中心に回動し、水平ガン15の先端部分に装着された電極チップ15Cがテーブル電極23に当たる。この場合、作業時にテーブル電極23上にワーク500が載置されるので、電極チップ15Cがワーク500に圧接することになる。水平ガン15に対する加圧は、溶接開始直前(即ち、電流が供給される直前)に行われ、溶接が終了した後に解放される。なお、水平ガン15に与えられる加圧力は、後述する圧力検出デバイス50にて検出される。また、シリンダ13内に空気を入れる機構については説明を省略する。
水平ガン15の基端部分には水平ガン15を操作するためのハンドル15Bが設けられている。ハンドル15Bには起動用のスイッチ(図示略)が設けられており、このスイッチを押すことで起動信号Sw1(図7参照)が出力される。起動信号Sw1は溶接制御装置3に取り込まれる。水平ガン15の先端部分に装着される電極チップ15Cには様々な形状のものがあるが、それぞれが水平ガン15本体に対して着脱自在となっている。
垂直ガン16は、垂直方向への移動が可能な溶接ガンであり、垂直アーム部12Bの先端部分に取り付けられる。垂直ガン16は、垂直アーム部12Bの上部に設けられたシリンダ14によって把持されるとともに、垂直方向下向き(即ち、テーブル電極23に向かう方向)に加圧される。シリンダ14は、垂直アーム部12Bを把持するための把持機構及び垂直アーム部12Bを垂直方向下向きに加圧するための加圧機構を備える。スプリングバランサ17は、支持アーム12の上部に設けられ、垂直アーム部12Bを所定の力で垂直方向上向きに引き上げて、垂直アーム部12Bの上下動を補助する。なお、シリンダ14内に空気を入れる機構については説明を省略する。
垂直アーム部12Bには、垂直ガン16を、垂直アーム部12Bの軸心を中心に回転させるハンドル27が設けられている。ハンドル27には起動用の押しボタンスイッチ(図示略)が設けられており、該スイッチを押すことで起動信号Sw2(図7参照)が出力される。起動信号Sw2は溶接制御装置3に取り込まれる。垂直ガン16の先端部分には、上述した電極チップ15Cと同様の構造の電極チップ16Aが着脱自在に装着される。
二次ケーブル18,19は、冷却水を通流させる構造を有する所謂冷却ケーブルと呼ばれるものであり、内部には細い銅線を束ねた複数の導体が設けられている。二次ケーブル18は、一端がブスバー22を介して溶接トランス21の二次側出力端のプラス電極(図示略)に接続され、他端が水平ガン15に接続される。二次ケーブル19は、一端がブスバー22を介して溶接トランス21の二次側出力端のプラス電極(図示略)に接続され、他端が垂直アーム部12Bの上端部分に設けられたコンタクタ(開閉器)26に接続される。
電源ユニット20は、図示せぬ受電設備より供給される三相の交流電力を整流して直流に変換し、これにより得られた直流から高周波交流を生成する。溶接トランス21は、一次側が電源ユニット20の出力に接続され、二次側が水平ガン15及び垂直ガン16に接続される。溶接トランス21の二次側と水平ガン15及び垂直ガン16との間には切り替えスイッチ60(図7参照)が設けられており、溶接制御装置3によって制御される。切り替えスイッチ60は、水平ガン15の使用時には水平ガン選択側に切り替わり、垂直ガン16の使用時には垂直ガン選択側に切り替わる。即ち、起動信号Sw1が出力されたときは水平ガン選択側に切り替わり、起動信号Sw2が出力されたときは垂直ガン選択側に切り替わる。
なお、溶接トランス21としては、例えば本願発明者等が先に特開2012−210654号、特開2013−179205号で提案した抵抗溶接用の溶接トランスのような、短時間に大電流を供給可能なものが好適である。
テーブル電極23は、略正方形の平坦な板状に形成された銅材であり、ワーク500の載置に用いられる。テーブル電極23は、所謂オンス銅板と呼ばれる薄い銅板が複数重ね合わされた構造を有する二次ケーブル(図示略)にて、溶接トランス21の二次側出力端のマイナス電極に接続される。なお、本実施形態に係る溶接システム1の抵抗溶接機2では、溶接トランス21をテーブル電極23の直下に配置している関係上、テーブル電極23と溶接トランス21の二次側出力端のマイナス電極との間の接続にオンス銅板(図示略)を使用しているが、溶接トランス21とテーブル電極23が離間していれば、二次ケーブル18,19と同様の冷却ケーブルが使用されることもある。
冷却ユニット24は、所謂チラーと呼ばれる冷却水循環装置であり、冷却水を循環させるためのポンプ(図示略)と、冷却水で回収された熱を発散させるラジエタとを有する(図示略)。なお、冷却ユニットにはポンプやラジエタの他に冷凍機を有するものもある。冷却ユニット24は、抵抗溶接機2に電源が投入されている間は常時動作する。
なお、電源ユニット20は、抵抗溶接機2の正面側に向かって支持ポスト10の背面側に配設され、冷却ユニット24は、電源ユニット20の右隣に配設される。
溶接制御装置3は、溶接電流、通電時間及び加圧力の溶接条件に基づいて抵抗溶接機2を制御する。溶接制御装置3の詳細については後述する。操作パネル4は、液晶パネル等の表示器(図示略)と、該表示器の表示面上に取り付けられる抵抗膜方式等のタッチパネル(図示略)と、溶接制御装置3との接続を可能とするインタフェース機能とを有し、溶接条件の設定に用いられる。操作パネル4は、手動による溶接条件の入力に用いられ、入力された溶接条件を溶接制御装置3に出力する。また、操作パネル4は、溶接制御装置3にプリセットされた溶接条件の選択もでき、プリセット済みの複数の溶接条件の中の1つが選択されることで、選択された溶接条件を溶接制御装置3に出力する。溶接制御装置3は、操作パネル4から出力された溶接条件を取り込むことで、該溶接条件に従い抵抗溶接機2を制御する。
溶接条件作成装置5は、溶接システム1を購入した人又は会社(以下、“ユーザ”と呼ぶ)の要求に見合った溶接品質を確保できる溶接条件を作成できるものである。溶接条件作成装置5を使用して溶接条件を作成するときは、主に試験用のワーク(即ち、金属板試験片)を使用するが、製品用のワークを使用することも勿論可能であり、寧ろその方が実際の使用において最適な溶接条件を見出すことができると思われる。溶接条件作成装置5で作成された溶接条件は、ユーザの操作によって溶接制御装置3にプリセットされる。前述したように、溶接制御装置3の製造時にプリセットされる溶接条件は平均的な溶接品質を確保できるものであり、その溶接品質は必ずしもユーザの要求に見合ったものであるとは限らない。ユーザが自身の要求に見合った溶接品質を確保できる溶接条件を必要とする場合、溶接条件作成装置5を使用する。
溶接条件作成装置5は、溶接制御装置3との接続と、圧力検出デバイス51、変位検出デバイス52、電流検出デバイス53、温度検出デバイス54、チップ間抵抗検出デバイス55及び引張試験機56との接続を可能とするインタフェース機能と、クラウド59上のデータベースサーバ58との間で双方向通信を可能とするネットワーク通信機能と、を有している。溶接条件作成装置5は、溶接条件作成時に溶接制御装置3とデータベースサーバ58を使用する。溶接条件作成装置5が持つ機能の詳細については後述する。
圧力検出デバイス51、変位検出デバイス52、電流検出デバイス53、温度検出デバイス54及びチップ間抵抗検出デバイス55は、水平ガン15及び垂直ガン16のそれぞれに設けられるが、図1では1つの溶接ガン分しか描いていない。本実施形態では水平ガン15に設けられたものとして説明する。
圧力検出デバイス51は、水平ガン15(図2参照)を使用したときにワーク500(図2参照)に加わる加圧力を検出する。即ち、溶接時には水平ガン15の先端でワーク500が加圧されるので、そのときの加圧力を検出する。圧力検出デバイス51は、検出した加圧力を加圧力データDpとして出力する。なお、圧力検出デバイス51に用いるセンサとして、歪みゲージが好適である。
変位検出デバイス52は、溶接時のワーク500の変位を検出する。ワーク500の変位を直接検出するには困難が伴うので、本実施形態では水平ガン15の本体に変位検出デバイス52を装着し、溶接時に生ずる水平ガン15本体の撓みを検出することで間接的にワーク500の変位を検出するようにしている。変位検出デバイス52は、検出した変位を変位データDdとして出力する。なお、変位検出デバイス52に用いるセンサとして、歪みゲージやレーザ式変位センサが好適である。
電流検出デバイス53は、溶接トランス21(図2又は図7参照)の二次側に介挿され、ワーク500に流れる溶接電流を検出する。電流検出デバイス53は、検出した溶接電流を電流データDiとして出力する。
温度検出デバイス54は、水平ガン15の先端部分に設けられ、溶接時のワーク温度を検出する。温度検出デバイス54は、溶接時のワーク温度を検出することで温度データDtを出力する。温度検出デバイス54に用いるセンサとしては、レーザ式温度センサや熱電対が好適である。特にレーザ式温度センサを用いることで、ワーク500の溶接時における温度を直接検出することができる。一方、熱電対は溶接時のワーク500の温度を直接検出することが困難な先端部分に装着して間接的に検出する。
チップ間抵抗検出デバイス55は、チップ間抵抗を検出する。ここで、チップ間抵抗とは、例えば水平ガン15の場合、ワーク500が存在するときの電極チップ15Cとテーブル電極23(図2参照)との間の抵抗のことである。チップ間抵抗検出デバイス55は、検出したチップ間抵抗をチップ間抵抗データとして出力する。チップ間抵抗を検出することでワーク500における溶接性を判断することができる。
ここで、チップ間抵抗検出デバイス55について詳細に説明する。図3は、溶接システム1を構成するチップ間抵抗検出デバイス55の概略構成を示すブロック図である。同図において、チップ間抵抗検出デバイス55は、2本の電線551,552と、電流検出部553と、電圧検出部554と、演算部555と、出力部556と、を備える。電線551の一端が電極チップ15C側の電流線900に接続され、他端が電圧検出部554の一方の入力端に接続される。電線552の一端がテーブル電極23側の電流線900に接続され、他端が電圧検出部554の他方の入力端に接続される。電流検出部553は、溶接電流Ieを検出する検出器であり、電流線900に直列に介挿される。電流検出部553の出力端が演算部555の一方の入力端に接続される。電圧検出部554は、電極チップ15Cとテーブル電極23の間の抵抗(R1+R2+Rc)にて生ずる電圧Vを検出する。電圧検出部554の出力端が演算部555の他方の入力端に接続される。
電流検出部553で検出された電流Ieと電圧検出部554で検出された電圧Vは演算部555に入力されてチップ間抵抗Rcが求められる。予め電極チップ15Cの抵抗値R1とテーブル電極23の抵抗値R2を求めておけば、V/Ieで得られた抵抗値Rから抵抗R1と抵抗R2の抵抗値を引くことでチップ間抵抗Rcを求めることができる。演算部555で求められたチップ間抵抗Rcは、出力部556に入力される。出力部556は、演算部555で求められたチップ間抵抗Rcをチップ間抵抗データDrとして出力する。
引張試験機56は、溶接が行われたワーク500の引張強度を測定し、その結果を引張強度データDsとして出力する。引張試験機56は、引張強度データDsを出力する際に、ワーク500を特定するためのデータであるワーク固有データを付加する。なお、ワーク固有データとは、ワーク500を特定するためのデータである。
ここで、引張試験機56について詳細に説明する。図4は、溶接システム1を構成する引張試験機56の外観を示す正面図、図5は側面図である。また、図6は引張試験機56の概略構成を示すブロック図である。図4〜図6において、引張試験機56は、溶接が行われたワーク500を把持する上下一対のつかみ歯561,562と、これらのつかみ歯561,562を介してワーク500に引張力を付与する油圧ジャッキ563と、油圧ジャッキ563における油圧を電気信号に変換する圧力変換器564と、圧力変換器564から出力される電気信号をデジタル表示するデジタル表示計565と、デジタル表示計565に電気的に接続され、デジタル表示計565に入力されるデータを印刷するプリンタ566と、ワーク500に設けられたワーク固有情報を撮像するカメラ部573と、データを出力する出力部574と、データを記憶するメモリカード572と、デジタル表示計565、プリンタ566、カメラ部573、出力部574及びメモリカード572をそれぞれ制御するパーソナルコンピュータ(以下、“PC”と呼ぶ)571と、を備える。油圧ジャッキ563にはデジタル表示計565で加圧を表示するためのゲージ孔が開けられており、このゲージ孔に圧力変換器564が接続される。
引張試験機56では、駆動源として手動式の油圧ジャッキ563を用いており、リリースノブ568を一方向に廻して、油圧ジャッキ563内の油が抜けないようにロックさせた状態で油圧ジャッキ563の操作棒569を上下に動かすことで、油圧ジャッキ563の上部のラム570が上昇する。ラム570の上昇によってつかみ歯561,562と連結した昇降フレーム下部567が上方に押し上げられて、つかみ歯561,562で把持されているワーク500に引張力が与えられる。操作棒569の上下動を継続してワーク500に引張力を与え続けると、最終的にワーク500が破断する。
ワーク500が破断したときのデジタル表示計565の表示が引張強度の最大値となる(kN(キロニュートン)の数値で表示される)。このときデジタル表示計565から出力されるデータがプリンタ566にて印刷されるとともに、メモリカード572に記憶される。ワーク500が破断することで、このワーク500に対する引張試験が終了する。そして、次のワーク500に対する引張試験を開始する前にリリースノブ568を他方向に廻して油圧を開放する。油圧を開放することで油圧ジャッキ563のラム570が降下する。ラム570が降下した後、破断状態にあるワーク500をつかみ歯561,562から取り外し、次に試験を行うワーク500をつかみ歯561,562に取り付ける。
カメラ部573は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の撮像素子を有し、ワーク500に設けられたワーク固有情報を撮像する。カメラ部573は、撮像により得られた撮像データを解析してワーク固有情報を取得し、ワーク固有データとして出力する。ワーク500に設けられたワーク固有情報は、例えばバーコードで与えられるか、ペン書された文字や数字で与えられる。カメラ部573の取り付け位置はワーク500を撮像できる位置となる。
PC571は、引張試験を開始する操作が行われることで、カメラ部573を制御してワーク500を撮像し、これにより得られた撮像データを解析してワーク500に設けられたワーク固有情報を取得する。PC571は、ワーク固有情報を取得した後、引張強度の計測を開始し、デジタル表示計565から出力されるデータの読み込みを行う。そして、ワーク500が破断したときの引張強度の最大値を示すデータを読み込むと、ワーク固有データを含む引張強度データDsを生成して出力部574から溶接条件作成装置5に出力する。また、PC571は、生成した引張強度データDsをメモリカード572に記憶し、さらに印刷データに変換してプリンタ566に出力する。
ここで、ワーク500にワーク固有情報を付す理由について説明する。ワーク500に対する引張強度試験を溶接終了後に行う場合、ワーク500に対する溶接と引張強度試験との間に時間差が生じる。この時間差があるため、溶接結果と引張強度試験結果が同一のワーク500に対するものであるかどうか分からなくなってしまう。そのような事態になるのを回避するために、ワーク500にワーク固有情報を付けるようにしている。ワーク500にワーク固有情報を付して、それを抵抗溶接機2と引張試験機5の双方で認識するようにすれば、溶接結果と張強度試験に関連性を持たせることができる。即ち、溶接結果と引張強度試験結果が同一のワーク500に対するものであるか否かを容易に判定することができる。なお、上記した溶接結果とは、引張強度、電極変位、ナゲット径、散り、美観、割れ等のことである。また、詳細は後述するが、本実施形態の溶接システム1では、抵抗溶接機2と引張試験機5の双方にカメラを設けて、双方でワーク500のワーク固有情報を認識するようにしている。
次に、上述した抵抗溶接機2、溶接制御装置3、溶接条件作成装置5及びデータベースサーバ58について更に詳細に説明する。
(抵抗溶接機2)
図7は、図2の抵抗溶接機2の電源ユニット20及び溶接トランス21それぞれの概略構成を示すと共に、電源ユニット20及び操作パネル4と溶接制御装置3と溶接条件作成装置5の接続状態を示す図である。同図において、抵抗溶接機2の電源ユニット20は、整流器31と、平滑用コンデンサ32と、インバータ回路34と、を備える。整流器31は、6個の整流素子で構成された三相全波整流式を採用したものであり、受電設備(図示略)からの三相交流を整流して直流に変換する。平滑用コンデンサ32は、整流器31より得られた直流電圧を平滑化する。
インバータ回路34は、インバータ制御回路341と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用した4個のスイッチ342と、CT(Current Transformer)を使用した電流センサ343と、を備える。インバータ制御回路341は、溶接制御装置3から供給される指令信号Stiと電流センサ343で検出される一次電流とに基づいて4個のスイッチ342のそれぞれをオン・オフし、高周波交流を発生する。即ち、インバータ制御回路341は、PWM(Pulse Width Modulation)制御した高周波交流を発生する。インバータ制御回路341が発生する高周波交流の大きさは、4個のスイッチ342それぞれのオン・オフのデューティによって変化する。4個のスイッチ342それぞれのオン・オフのデューティを変化させることで、スイッチング波形の幅W(図8参照)が変化する。
溶接トランス21の一次コイル211は、電源ユニット20のインバータ回路34の出力端に接続される。インバータ回路34から高周波交流が出力されることで、溶接トランス21の一次コイル211に一次電流が流れる。溶接トランス21の二次コイルは、それ自体に極性を考慮する必要はないが、便宜上、溶接トランス21の二次コイルを、正側コイル212と負側コイル213を直列接続したものと呼ぶことにする。正側コイル212の一端には第1整流素子214のアノード(正極)が接続され、負側コイル213の一端には第2整流素子215のアノード(正極)が接続される。第1整流素子214のカソード(負極)と第2整流素子215のカソード(負極)がプラス電極216に共通接続される。正側コイル212の他端と負側コイル213の他端がマイナス電極217に共通接続される。プラス電極216には水平ガン15及び垂直ガン16が接続され、マイナス電極217にはテーブル電極23が接続される。なお、上述したようにプラス電極216と水平ガン15は二次ケーブル18を介して接続され、プラス電極216と垂直ガン16は二次ケーブル19を介して接続される。マイナス電極217とテーブル電極23はオンス銅板(図示略)を介して接続される。
図8は、抵抗溶接機2を構成する溶接トランス21の一次側に供給される電流を制御するためのスイッチングパルス(“制御パルス”とも言う)及び一次電流及び整流後の溶接電流を示す図である。同図において、インバータ回路34により制御された幅Wのスイッチングパルスが、一定時間H内に一定回数、ここでは正方向のパルスと負方向のパルスとで合計10回、溶接トランス21の一次コイル211に供給される。これにより、溶接トランス21の一次コイル211には、図8の(b)に示すような一次電流が流れる。溶接トランス21の一次コイル211に一次電流が流れることで溶接トランス21の二次側に発生した二次電流が整流素子214,215によって全波整流されて、図8の(c)に示すような溶接電流となって水平ガン15又は垂直ガン16を流れる。溶接電流は、電流検出デバイス53で検出される。
図8の(a)に示すスイッチングパルスの幅Wを増減することで溶接電流の大きさを調整することができる。また、スイッチングパルスの供給回数を増減すれば溶接時間を調整することができる。また、スイッチングパルスの繰り返し周波数を高くすることで、溶接時間をより細かく微調整することができる。また、溶接トランス21の1次コイル211に供給する電流を増やすことで、二次コイルの正側コイル212、負側コイル213からより大きな溶接電流を取り出すことができる。
図7に戻り、抵抗溶接機2には、上述した圧力検出デバイス51、変位検出デバイス52、電流検出デバイス53、温度検出デバイス54及びチップ間抵抗検出デバイス55と、溶接条件作成装置5のカメラ部509が配設される。溶接制御装置3は、操作パネル4で設定された溶接条件又は溶接条件作成装置5で作成された溶接条件に基づいて抵抗溶接機2を動作させる指令信号Stiを生成し、電源ユニット20のインバータ回路34に出力する。
なお、ワーク500には、ワーク仕様を表す「ワーク名」や「ワーク上の打点位置」等が与えられており、この仕様は操作パネル4にて設定されるが、本明細書ではその説明は省略する。
図9は、溶接システム1を構成する溶接制御装置3の概略構成を示すブロック図である。同図において、溶接制御装置3は、制御部301と、時計部302と、カウンタ部303と、インタフェース部304と、記憶部305と、共通バス306と、を備える。制御部301、時計部302、カウンタ部303、インタフェース部304及び記憶部305は共通バス306に接続される。制御部301は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)と、該CPUを制御するためのプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)と、該CPUの動作に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、を備える。
制御部301では、CPUが、ROMに記憶されたプログラムと協働して、指令信号Stiを生成する指令信号生成処理を実行する。なお、CPUを制御するためのプログラムを記憶する媒体として上記したROMの他にフラッシュメモリ(“EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)”とも呼ばれる)等の再書き込みを可能とした半導体メモリの使用も可能である。再書き込みを可能とした半導体メモリを用いることでプログラムの更新を容易に行うことができる。
制御部301は、操作パネル4及び溶接条件作成装置5のいずれか一方で溶接条件が設定されている状態で、インタフェース部304を介して水平ガン15からの起動信号Sw1又は垂直ガン16からの起動信号Sw2を取り込むことで、設定された溶接条件に基づいて指令信号Stiを生成し、電源ユニット20に出力する。制御部301は、溶接条件作成装置5との間で常時通信を行い、溶接条件作成装置5から手動設定切替信号が出力されると、操作パネル4の設定を優先し、操作パネル4で設定された溶接条件を溶接条件作成装置5に出力する。
時計部302は、溶接制御装置3の各部の動作に必要なクロック信号を生成する。カウンタ部303は、制御部301の制御下で溶接回数(“打点回数”)の計数や製品の生産個数の計数を行う。記憶部305は、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)等の大容量の記憶装置で構成され、前述した溶接条件等を記憶する。
なお、溶接制御装置3は、抵抗溶接機2に近接して配置されることから、抵抗溶接機2との接続は主に有線で行われる。なお、無線での接続も勿論可能であり、無線接続する手段としては、例えば無線LANやブルートゥース(登録商標)が好適である。また、溶接制御装置3と操作パネル4も互いに近接して配置されるので、これらの間の接続も有線で行われるが、無線での接続も勿論可能である。
図10は、溶接システム1を構成する溶接条件作成装置5の概略構成を示すブロック図である。同図において、溶接条件作成装置5は、制御部501と、クロック信号発生部502と、操作部503と、記憶部504と、表示制御部505と、モニタ506と、インタフェース部507と、通信部508と、カメラ部509と、共通バス510と、を備える。制御部501、クロック信号発生部502、操作部503、記憶部504、表示制御部505、インタフェース部507、通信部508及びカメラ部509は共通バス510に接続される。なお、制御部501は、溶接条件設定手段及び制御手段に対応する。また、制御部501とインタフェース部507は、溶接条件供給手段を構成するとともに、溶接条件・溶接結果収集手段を構成する。また、制御部501と表示制御部505とモニタ506は表示手段を構成する。また、通信部508は、通信手段に対応する。
溶接条件作成装置5は、主に溶接制御装置3の近傍に配置されることから、これらの装置間の接続は有線で行われるが、無線での接続も勿論可能である。溶接条件作成装置5の制御部501は、図示せぬCPUと、該CPUを制御するためのプログラムを記憶したROMと、該CPUの動作に用いられるワークメモリとしてのRAMとを備える。制御部501では、CPUが、ROMに記憶されたプログラムと協働して、(1)溶接試験条件設定処理、(2)溶接条件手動・自動設定切替処理、(3)溶接条件・溶接結果収集処理、(4)溶接条件検索処理、(5)見える化(可視化)処理、(6)溶接条件選択処理を実行する。これらの処理の詳細については後述する。
クロック信号発生部502は、溶接条件作成装置5の各部の動作に必要なクロック信号を発生する。操作部503は、キーボードとマウス(共に図示略)等を有し、制御部501を動作させるための指令を出力する。記憶部504は、制御部501がデータベースサーバ58からダウンロードした各種データを記憶する。記憶部504には、例えばハードディスク装置やSSD等の記憶装置、あるいはUSBメモリやフラッシュメモリ等の再書き込み可能な記憶媒体が用いられる。表示制御部505は、制御部501の見える化処理で生成された表示データをモニタ506に表示する制御を行う。モニタ506は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等のディスプレイを有し、見える化処理で生成された表示データを表示する。
インタフェース部507は、溶接制御装置3との接続と、上述した圧力検出デバイス51、変位検出デバイス52、電流検出デバイス53、温度検出デバイス54、チップ間抵抗検出デバイス55及び引張試験機56との接続を行う。各検出デバイス51〜55及び引張試験機56は、溶接条件作成装置5に対して着脱可能となっている。通信部508は、クラウド59上のデータベースサーバ58との間の双方向通信を可能とし、データベースサーバ58へのデータのアップロードや、データベースサーバ58からのデータのダウンロードを行う。溶接条件作成装置5とデータベースサーバ58は常時接続された状態となるので、これらの装置間の通信に用いられるプロトコルとして、例えばHTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secure)又はMQTT(MQ Telemetry Transport)が好適である。なお、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を用いることも勿論可能である。
カメラ部509は、引張試験機56のカメラ部573と同様のものであり、ワーク500に設けられたワーク固有情報を撮像する。前述したようにワーク500には、ワーク固有情報を示すバーコード又はペン書された文字や数字等が付されており、カメラ部509はそれを撮像し、得られた撮像データからワーク固有情報を解析してワーク固有データを出力する。カメラ部509は、溶接条件作成装置5の本体とは別体となっており、抵抗溶接機2側に配設される。カメラ部509の抵抗溶接機2に対する取り付け位置はワーク500を容易に撮像できる位置となる。
制御部501は、インタフェース部507を介して圧力検出デバイス51から出力される圧力データDpを入力し、「所属データ」、「圧力検出デバイス固有データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「実験番号」を含む圧力検出デバイスデータDDpを生成する。そして、生成した圧力検出デバイスデータDDpを通信部508よりデータベースサーバ58にアップロードする。ここで、図11は、制御部501で生成される圧力検出デバイスデータDDpのデータ構造を示す図である。同図において、「所属データ」は、圧力検出デバイス51が取り付けられる抵抗溶接機2を示す情報であり、「圧力検出デバイス固有データ」は、圧力検出デバイス51を特定する情報である。また、「日時データ」は、制御部501が圧力検出デバイスデータDDpを生成したときの日時を示す情報である。「ユーザ名」は、溶接条件作成装置5を使用するものの名称(例えば、ABC機械製作所)であり、「実験番号」は溶接条件を求める実験の番号(例えば、2018−03−001)である。
また、制御部501は、インタフェース部507を介して変位検出デバイス52から出力される変位データDdを入力し、「所属データ」、「変位検出デバイス固有データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「実験番号」を含む変位検出デバイスデータDDdを生成する。そして、生成した変位検出デバイスデータDDdを通信部508よりデータベースサーバ58にアップロードする。「所属データ」は、変位検出デバイス52が取り付けられる抵抗溶接機2を示す情報であり、「変位検出デバイス固有データ」は、変位検出デバイス52を特定する情報である。また、「日時データ」は、制御部501が変位検出デバイスデータDDdを生成したときの日時を示す情報である。「ユーザ名」及び「実験番号」は上記同様である。
また、制御部501は、インタフェース部507を介して電流検出デバイス53から出力される電流データDiを入力し、「所属データ」、「電流検出デバイス固有データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「実験番号」を含む電流検出デバイスデータDDiを生成する。そして、生成した電流検出デバイスデータDDiを通信部508よりデータベースサーバ58にアップロードする。「所属データ」は、電流検出デバイス53が取り付けられる抵抗溶接機2を示す情報であり、「電流検出デバイス固有データ」は、電流検出デバイス53を特定する情報である。また、「日時データ」は、制御部501が電流検出デバイスデータDDiを生成したときの日時を示す情報である。「ユーザ名」及び「実験番号」は上記同様である。
また、制御部501は、インタフェース部507を介して温度検出デバイス54から出力される温度データDtを入力し、「所属データ」、「温度検出デバイス固有データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「実験番号」を含む温度流検出デバイスデータDDtを生成する。そして、生成した温度流検出デバイスデータDDtを通信部508よりデータベースサーバ58にアップロードする。「所属データ」は、温度検出デバイス54が取り付けられる抵抗溶接機2を示す情報であり、「温度検出デバイス固有データ」は、温度検出デバイス54を特定する情報である。また、「日時データ」は、制御部501が温度検出デバイスデータDDtを生成したときの日時を示す情報である。「ユーザ名」及び「実験番号」は上記同様である。
また、制御部501は、インタフェース部507を介してチップ間抵抗検出デバイス55から出力されるチップ間抵抗データDrを入力し、「所属データ」、「チップ間抵抗デバイス固有データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「実験番号」を含むチップ間抵抗検出デバイスデータDDrを生成する。そして、生成したチップ間抵抗検出デバイスデータDDrを通信部508よりデータベースサーバ58にアップロードする。図12は、制御部501で生成されるチップ間抵抗検出デバイスデータDDrのデータ構造を示す図である。同図において、「所属データ」は、チップ間抵抗検出デバイス55が取り付けられる抵抗溶接機2を示す情報であり、「チップ間抵抗検出デバイス固有データ」は、チップ間抵抗デバイス55を特定する情報である。また、「日時データ」は、制御部501がチップ間抵抗検出デバイスデータDDrを生成したときの日時を示す情報である。「ユーザ名」及び「実験番号」は上記同様である。
また、制御部501は、インタフェース部507を介して引張試験機56から出力される引張強度データDsを入力し、「所属データ」、「引張試験機固有データ」、「ワーク固有データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「実験番号」を含むワーク引張強度データDDsを生成する。そして、生成したワーク引張強度データDDsを通信部508よりデータベースサーバ58にアップロードする。「所属データ」は、引張試験機56が付属する抵抗溶接機2を示す情報であり、「引張試験機固有データ」は、引張試験機56を特定する情報である。また、「日時データ」は、制御部501がワーク引張強度データDDsを生成したときの日時を示す情報である。「ユーザ名」及び「実験番号」は上記同様である。
また、制御部501は、溶接制御装置3に溶接条件を出力した後、該溶接条件から溶接条件データDDprを生成し、生成した溶接条件データDDprを通信部508よりデータベースサーバ58にアップロードする。図13は、制御部501で生成される溶接条件データDDprのデータ構造を示す図である。同図に示すように、溶接条件データDDprは、「管理項目」、「溶接条件」、「日時データ」、「ワーク固有データ」、「ユーザ名」、「実験番号」及び「目的」から構成される。
ところで、引張試験機56による引張試験は、溶接後のワーク500に対して行われることから、圧力検出デバイスデータDDp、変位検出デバイスデータDDd、電流検出デバイスデータDDi、温度検出デバイスデータDDt及びチップ間抵抗検出デバイスデータDDrの間で生じる出力タイミング差よりも、これらのデバイスデータDDp,DDd,DDi,DDt及びDDrとワーク引張強度データDDsとの間で生じる出力タイミング差の方が大きくなり、このままではこれらの関連性がとれなくなる虞がある。特に、引張試験を他の全ての溶接試験を終えた後に一括して行う場合、ワーク引張強度データDDsが出力されるタイミングが大幅に遅れてしまうことになる。本実施形態では、ワーク500にワーク固有情報を付して、抵抗溶接機2と引張試験機56の双方において読み取ることで、同一のワーク500に対する各種デバイスデータDDp,DDd,DDi,DDt及びDDrとワーク引張強度データDDsとの関連性を持たせるようにしている。
なお、制御部501において、CPUを制御するためのプログラムを記憶する媒体として上記したROMの他にフラッシュメモリ等の再書き込みを可能とした半導体メモリの使用も可能である。再書き込みを可能とした半導体メモリを用いることでプログラムの更新を容易に行うことができる。また、上記プログラムを光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等の記憶媒体に記憶させておいて、上記処理実行に当該記憶媒体から読み出すようにしても良い。
制御部501は、ユーザの指定の条件(以下、“ユーザ指定条件”と呼ぶ)に見合う溶接条件と該溶接条件による溶接結果をデータベースサーバ58からダウンロードし、記憶部504に記憶する。制御部501は、以下に示す各処理を実行することでユーザの要求する溶接品質に見合う溶接条件を導き出す。
(1)溶接試験条件設定処理:溶接条件の溶接電流、通電時間及び加圧力それぞれの指定範囲内で組み合わされた複数組の溶接条件をデータテーブル620(図17参照)に展開する。溶接条件のデータテーブル620への設定は、溶接電流、通電時間及び加圧力のそれぞれを操作パネル4から直接行うこともできる。
(2)溶接条件手動・自動設定切替処理:溶接条件として、溶接電流、通電時間及び加圧力それぞれの指定範囲内で組み合わせた複数組のものを使用して溶接試験を行うか、操作パネル4で設定された溶接電流、通電時間及び加圧力を使用して溶接試験を行うかの切り替えを行う。この場合、前者を自動設定と呼び、後者を手動設定と呼ぶ。ユーザは、操作部503を通して自動設定と手動設定の選択を行い、手動設定を選択した場合は、溶接条件作成装置5から溶接制御装置3に手動設定切替信号が出力される。
(3)溶接条件・溶接結果収集処理:データテーブル620(図17参照)に展開された溶接条件を、溶接が行われる毎に溶接制御装置3に供給し、又は、データテーブル620に設定された1つの溶接条件を溶接制御装置3に供給し、溶接試験が行われたときの溶接条件及び該溶接条件による溶接結果(例え、引張強度、電極変位、ナゲット径、散り、美観、割れ等)を収集する。自動設定の場合はデータテーブル620に展開された溶接条件が溶接制御装置3に供給され、手動設定の場合はデータテーブル620に設定された1つの溶接条件が溶接制御装置3に供給される。
(4)溶接条件検索処理:収集した複数の溶接条件及び該溶接条件による溶接結果に対して、ユーザ指定条件に従い、該当する溶接条件及び該溶接条件による溶接結果を検索する。
(5)見える化処理:検索によって該当する溶接条件及び該溶接条件による溶接結果が得られた場合、周辺の溶接条件及び該溶接条件による溶接結果も含めて視覚化(以後、“見える化”と呼ぶ)する。
(6)溶接条件選択処理:見える化された溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の中からユーザが選択したものを取得する。
(1)の溶接試験条件設定処理においては、溶接条件の溶接電流、通電時間及び加圧力の設定に溶接試験条件設定テーブルが用いられる。図14は、溶接条件作成装置5で生成される溶接試験条件設定テーブルの一例を示す模式図である。同図において、溶接試験条件設定テーブル600は、ユーザが溶接試験条件を作成する操作を行うことでモニタ506に表示される。溶接試験条件設定テーブル600には、「ユーザ名」を設定する設定欄、「実験番号」を設定する設定欄、「目的」を設定する設定欄、ワーク500の「材質」を設定する設定欄、ワーク500の「板厚」を設定する設定欄、抵抗溶接機2の「機種」を設定する設定欄、抵抗溶接機2の「方式」を設定する設定欄、「溶接電流」を設定する設定欄、「通電時間」を設定する設定欄、「加圧力」を設定する設定欄が、それぞれ設けられている。抵抗溶接機2の「機種」の設定欄には、水平ガン又は垂直ガンを設定し、抵抗溶接機2の「方式」の設定欄には、テーブル式又は定置式を設定する。「目的」の設定欄には、「見映え優先」、「強度優先」及び「標準」があり、この設定が必要な場合には、これらの中のいずれか1つを選択する。即ち、「目的」とは、溶接試験条件設定テーブル600で設定した溶接条件が見映えを優先としたものであるか、強度を優先としたものであるか、あるは標準としたものであるかを予め宣言するものである。例えば見映えを優先することを宣言する場合、「見映え優先」にチェックを入れる。
図14に示す例では、ワーク500の「材質」として「SPCC」、「板厚」として「1mm」が設定されている。また、抵抗溶接機2の「機種」として「水平ガン」、「方式」として「テーブル式」が設定されている。また、溶接電流として「5」kA(キロアンペア)、その調節範囲「−3,+7」kA及び間隔(ピッチ)「0.5」kAが設定されている。また、通電時間として「150」msec、その調節範囲「−100,+200」msec及び間隔「25」msecが設定されている。また、「加圧力」として「2」kN(キロニュートン)が設定されている。また、「目的」として、見映え優先にチェックが入れられている。なお、図15は、図14の溶接試験条件設定テーブルにおいて「加圧力」を「3」kNにしたときの模式図、図16は、図14の溶接試験条件設定テーブルにおいて「加圧力」を「4」kNにしたときの模式図である。
ここで、自動設定を選択した場合は、「ユーザ名」、「実験番号」、「目的」、「材質」、「板厚」、「機種」、「方式」、「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」の全てに対して設定を行うが、手動設定を選択した場合は、「ユーザ名」、「実験番号」、「目的」、「材質」、「板厚」、「機種」及び「方式」のみ設定を行い、「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」については操作パネル4にて設定を行う。操作パネル4にて「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」の設定を操作パネル4にて行うことで、これらが溶接制御装置3を通して溶接条件作成装置5に送られてくる。そして、送られてきた「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」は溶接試験条件設定テーブル600の「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」に設定される。
このように、ユーザが溶接試験条件設定テーブル600に対して溶接条件を設定することで、自動設定を選択した場合は、溶接電流、通電時間及び加圧力それぞれの指定範囲内で組み合わされた複数組の溶接条件が後述するデータテーブル620(図17参照)に展開される。また、手動設定を選択した場合は、操作パネル4より入力された「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」がデータテーブル620に設定される。
図17は、溶接条件作成装置5で生成されるデータテーブルの一例を示す模式図である。同図に示すデータテーブル620は、ユーザがデータテーブルを表示する操作を行ったときにモニタ506に表示される。データテーブル620は、「ユーザ名」、「実験番号」、「目的」、「管理項目」、「溶接条件」、「溶接結果」及び「選択」の各項目からなり、「ユーザ名」、「実験番号」、「目的」、「管理項目」及び「溶接条件」には溶接試験条件設定テーブル600に設定された内容が設定される。「溶接結果」には、引張強度及び電極変位については自動設定されるが、ナゲット径、散り、美観及び割れについてはユーザによって手動設定される。また、「選択」は自動、手動共にユーザによって手動設定される。
「ユーザ名」の設定欄にはユーザの会社名(例えば「ABC機械製作所」)が設定され、「実験番号」の設定欄には実験番号(例えば「2018−03−001」)が設定される。「目的」の設定欄には見映え優先、強度優先及び標準のうち、ユーザが指定したものが設定される。「管理項目」の設定欄にはワーク500の「材質」及び「板厚」、抵抗溶接機2の「機種」及び「方式」が設定され、「溶接条件」の設定欄には「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」の溶接条件が設定される。「溶接結果」の設定欄には「引張強度」、「電極変位」、「ナゲット径」、「散り」、「美観」、「割れ」の各種溶接結果が設定される。
「選択」の設定欄には、溶接結果がユーザの希望する溶接品質に見合う場合に丸印(印)が入れられる。即ち、ユーザが溶接結果を見て、その溶接結果が自身の希望する溶接品質を満たしていると判断すると、その溶接結果が得られるに至った溶接条件に対して丸印を入れる。図17に示す例では、溶接電流:5kA、通電時間:100msec、加圧力:2kNの溶接条件に対して丸印が入れられている。この丸印は、データとして扱われ、「ユーザ名」、「実験番号」、「目的」、「管理項目」、「溶接条件」及び「溶接結果に関連付けられてデータベースサーバ58にアップロードされる。
溶接試験条件設定テーブル600の設定内容が図14に示すような場合、「管理項目」の設定欄には材質「SPCC」、板厚「1」mm、機種「水平ガン」、方式「テーブル式」がそれぞれ設定される。さらに、自動設定が選択された場合は、「溶接条件」の設定欄に「溶接時間」、「通電時間」及び「加圧力」の組み合わせが順次設定される。また、手動設定が選択された場合は、操作パネル4で設定された1組の「溶接時間」、「通電時間」及び「加圧力」が設定される。
ここで、自動設定が選択された場合で、溶接試験条件設定テーブル600にて加圧力「2」kN、溶接電流「5」kA、調節範囲「−3,+7」kA、間隔「0.5」kA、通電時間「150」msec、調節範囲「−100,+200」msec、間隔「25」msecが設定された場合、溶接電流「2kA,2.5kA,3kA、3.5kA、4kA、4.5kA、5kA、5.5kA、6kA、6.5kA、7kA,7.5kA、8kA、8.5kA、9kA、9.5kA、10kA、10.5kA、11kA、11.5kA、12kA」のそれぞれにおいて、通電時間「50msec、75msec、100msec、125msec、150msec、175msec、200msec、225msec、250msec、275msec、300msec、325msec、350msec、375msec」の組合せが生成されて、「溶接条件」の設定欄の先頭から順に自動的に設定される。
例えば、溶接条件の1番目の組み合わせは、溶接電流「2」kA、通電時間「50」msec、加圧力「2」kNとなり、それに続く2番目の組み合わせは、溶接電流「2」kA、通電時間「75」msec、加圧力「2」kNとなり、3番目の組み合わせは、溶接電流「2」kA、通電時間「100」msec、加圧力「2」kNとなる。溶接電流「2」kAにおける全ての組み合わせが表示された後、溶接電流「2.5」kAにおける全ての組み合わせが展開される。以後同様にして、溶接電流と通電時間のそれぞれの調節範囲内で、総当たりの組み合わせが展開される。加圧力「3」kN及び「4」kNにおいても同様に総当たりの組合せが生成される。
このように、溶接試験条件設定テーブル600にて溶接電流、通電時間及び加圧力とそれぞれの調節範囲を設定することで、溶接電流、通電時間及び加圧を組み合わせて1組とする複数組がデータテーブル620に展開される。
(2)の溶接条件手動・自動設定切替処理においては、ユーザが手動設定又は自動設定に切り替える操作を行う。自動設定に切り替えられた場合、溶接試験条件設定テーブル600で設定された条件でデータテーブル620に展開された複数組の溶接条件が1組ずつ溶接制御装置3に供給される。一方、手動設定に切り替えられた場合、溶接条件作成装置5から溶接制御装置3に手動設定切替信号が出力され、溶接制御装置3は手動設定切替信号を受け取ることで、操作パネル4で設定された溶接条件を溶接条件作成装置5に出力する。溶接条件作成装置5は、溶接制御装置3から出力された溶接条件を受け取ることで、その溶接条件をデータテーブル620に設定する。このように手動設定に切り替えた場合、ユーザが操作パネル4で任意に設定した溶接電流、通電時間及び加圧力の溶接条件で溶接試験を行うことができる。手動設定を選択することで、目星を付けた溶接条件を基準とする溶接試験を行うことができるので、ユーザの要求に見合った溶接品質を確保できる溶接条件を更に短時間で作成することが可能となる。
(3)の溶接条件・溶接結果収集処理においては、まずユーザが溶接試験を開始する操作を行う。この操作により、データテーブル620に従って先頭(1番目)の溶接条件から順に溶接試験が開始される。そして、1つの溶接条件による溶接試験が行われる毎に、そのときの溶接結果がデータテーブル620の「溶接結果」の項目の各設定欄に設定される。「溶接結果」の項目の引張強度の設定欄には、引張試験機56による引張試験結果が設定される。また、「溶接結果」の項目の電極変位の設定欄には、変位検出デバイス52により検出された変位が設定される。また、「溶接結果」の項目のナゲット径の設定欄には、ユーザによって測定されたナゲット径が設定される。この際、ユーザがノギスやマイクロメータ等を使用してナゲット径を計測し、計測した値を該当する設定欄に設定する。
また、「溶接結果」の項目の散りの設定欄には、ユーザが主観的に判断した散りの飛びが設定される。また、「溶接結果」の項目の美観の設定欄には、ユーザが主観的に判断した美観の程度が設定される。また、「溶接結果」の項目の割れの設定欄には、ユーザが主観的に判断した割れの程度が設定される。
散り、美観及び割れの各設定はユーザが手動で行う。即ち、散りについては、グラフィックス化された設定器630のノブ630aを左右にスライドさせることで散りの飛びを0〜10の10段階で任意に設定することができる。この場合、散りが最も飛んだ距離を10mとして「0」(これを“0点”とする)に設定し、全く飛ばなかった距離を0mとして「10」(これを“10点”とする)に設定する。例えば5m飛んだとすると、「散り」の設定欄には「5」を設定することになる。散りが飛ぶことは溶接条件としては良くないことなので、点数としては低い値となる。
また、美観については、グラフィックス化された設定器631のノブ631aを左右にスライドさせることで焼け、凹み等による美観の程度を0〜10の10段階で任意に設定することができる。この場合、最も汚いときは「0」(これを“0点”とする)に設定し、最も綺麗なときは「10」(これを“10点”とする)に設定する。例えば美観の程度が中位のとき、「美観」の設定欄には「5」を設定する。
また、割れについては、グラフィックス化された設定器632のノブ632aを左右にスライドさせることで割れの程度を0〜10の10段階で任意に設定することができる。この場合、割れが全く無いときは「10」(これを“10点”とする)に設定し、最も割れが酷いときは「0」(これを“0点”とする)に設定する。例えば割れの程度が中位のとき、「割れ」の欄には「5」を設定する。
溶接試験開始操作後の詳細な処理は次のようになる。
ユーザが溶接試験を開始する操作を行うと、データテーブル620の1番目の溶接条件が溶接制御装置3に出力される。この状態で水平ガン15から起動信号Sw1が出力されると、溶接制御装置3は1番目の溶接条件に基づいて指令信号Stiを生成して抵抗溶接機2に出力する。抵抗溶接機2は、溶接制御装置3から出力された指令信号Stiに基づいて1個目のワーク500に対する溶接を行う。ここで、溶接試験条件設定テーブル600に設定された「溶接電流」、「通電時間」及び「加圧力」の各設定値が図14に示すような内容であれば、1個目のワーク500に対する溶接は、溶接電流「2」kA、溶接時間「50」msec、加圧力「2」kNの溶接条件で行われる。
一方、1個目のワーク500に対する溶接が行われる際に、抵抗溶接機2に配設されたカメラ部509が1個目のワーク500のワーク固有情報を撮像し、撮像データからワーク固有情報を解析してワーク固有データを溶接条件作成装置5に出力する。また、1個目のワーク500に対する溶接が行われたときに、変位検出デバイス52が変位データを溶接条件作成装置5に出力する。
溶接条件作成装置5は、変位検出デバイス52からの変位データについて、「変位データ」、「所属データ」、「変位検出デバイス固有データ」、「日時データ」、「ワーク固有データ」、「ユーザ名」及び「実験番号」を含む電極変位検出デバイスデータDDdを生成し、データテーブル620の溶接結果の「電極変位」の欄に設定する。
ユーザは、1番目の溶接条件で1個目のワーク500に対する溶接を行った際に、散りを確認して飛んだ量を主観的に判断し、その結果をデータテーブル620の溶接結果の「散り」の欄に設定する。溶接条件作成装置5は、設定された散りの飛びの距離に応じた散りの飛びデータから散りの飛びデータDDdsを生成する。この場合、散りの飛びデータDDdsには、「散りの飛びデータ」、「所属データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「試験番号」が含まれる。
また、ユーザは、溶接後のワーク500の美観の程度を主観的に判断し、判断結果をデータテーブル620の溶接結果の「美観」の欄に設定する。例えば焼け、凹み等が略皆無で綺麗なとき、「美観」の欄には「10点」を設定する。溶接条件作成装置5は、設定された美観の程度を示す美観データから美観データDDbuを生成する。この場合、美観データDDbuには、「美観データ」、「所属データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「試験番号」が含まれる。
また、ユーザは、溶接後のワーク500の溶接部分の割れの程度を主観的に判断し、その結果をデータテーブル620の溶接結果の「割れ」の欄に設定する。例えば、割れの程度が中位のとき、「割れ」の欄には「5点」を設定する。溶接条件作成装置5は、設定された割れの程度を示す割れデータから割れデータDDdvを生成する。この場合、割れデータDDdvには、「割れデータ」、「所属データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「試験番号」が含まれる。
また、ユーザは、ワーク500の溶接部分のナゲット径を測定し、その結果をデータテーブル620の溶接結果の「ナゲット径」の欄に設定する。ナゲット径は、ワーク500の材質がSPCC、厚さが1mmの場合、おおよそ2mm〜6mmとなる。なお、溶接条件によってはナゲットができない場合があり、そのときのナゲット径は0mmとなる。溶接条件作成装置5は、設定されたナゲット径を示すナゲット径データからナゲット径データDDngを生成する。この場合、ナゲット径データDDngには、「ナゲット径データ」、「所属データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「試験番号」が含まれる。
また、ユーザは、溶接後のワーク500を引張試験機56に取り付けて引張強度の測定を行う。ワーク500に対する引張強度の測定が終了すると、引張試験機56から引張試験データが出力される。また、引張試験機56からはワーク固有情報をカメラ部573が撮像して得られたワーク固有データも出力される。このワーク固有データを含む引張試験データが溶接条件作成装置5に出力される。溶接条件作成装置5は、引張試験機56からの引張試験データからワーク引張強度データDDsを生成する。ワーク引張強度データDsには、「ワーク固有データを含む引張試験データ」の他に、「所属データ」、「引張試験機固有データ」、「日時データ」、「ユーザ名」及び「試験番号」が含まれる。
1番目の溶接条件による1個目のワーク500に対する溶接試験が終了し、1番目の溶接条件と、それに関連する管理項目及び溶接結果並びにユーザ名及び実験番号がデータベースサーバ58にアップロードされる。この場合、溶接条件データDDpr、ワーク引張強度データDDs、電極変位検出デバイスデータDDd、ナゲット径データDDng、散りの飛びデータDDds、美観データDDbu及び割れデータDDdvは、これらの全てが一度にアップロードされるのではなく、生成された順でアップロードされる。但し、これらの全てのデータが揃った時点で一括してアップロードするようにしても構わない。
また、ワーク引張強度データDDsの生成時にはワーク固有データが付加されるので、引張試験を行う作業が、ナゲット径、散りの飛び、美観の程度及び割れの程度を設定する作業より時間的に離れていても、ナゲット径、散り、美観及び割れと関連付けることができる。また、電極変位検出デバイスデータDDdにも、その生成時にワーク固有データが付加されるので、ナゲット径、散り、美観及び割れと関連付けることができる。
1番目の溶接条件で1個目のワーク500に対する溶接試験が終了した後、2番目の溶接条件で2個目のワーク500に対する溶接試験が行われる。ここで、溶接試験条件設定テーブル600に設定された溶接電流、通電時間及び加圧力の各設定値が図14に示すような内容であれば、2個目のワーク500に対する溶接試験は、溶接電流「2」kA、溶接時間「75」msec、加圧力「2」kNの溶接条件で行われる。2番目の溶接条件で2個目のワーク500に対する溶接が行われることで生成される電極変位検出デバイスデータDDdは、データテーブル620の溶接結果の「電極変位」の欄に設定され、引張試験によるワーク引張強度データDDsを構成する引張試験データは、データテーブル620の溶接結果の「引張強度」の欄に設定される。また、ユーザが測定したナゲット径は、データテーブル620の溶接結果の「ナゲット径」の欄に設定される。また、ユーザが自身の主観によって判断した散りの飛びは、データテーブル620の溶接結果の「散り」の欄に設定され、美観の程度はデータテーブル620の溶接結果の「美観」の欄に設定され、割れの程度はデータテーブル620の溶接結果の「割れ」の欄に設定される。
これにより、2番目の溶接条件による2個目のワーク500に対する溶接試験が終了し、2番目の溶接条件と、それに関連する管理項目及び溶接結果並びにユーザ名及び実験番号がデータベースサーバ58にアップロードされる。
3番目以降の溶接条件による溶接試験においても1番目や2番目の溶接条件による溶接試験と同様に行われ、それぞれにおける溶接条件と、それに関連する管理項目及び溶接結果並びにユーザ名及び実験番号がデータベースサーバ58にアップロードされる。
このように、溶接試験条件設定テーブル600にて溶接電流、通電時間及び加圧力とそれぞれの調節範囲で、溶接電流、通電時間及び加圧を組み合わせて1組とする複数組がデータテーブル620に展開されて、それぞれの組み合わせの1つ1つについて溶接試験が行われる。また、溶接電流、通電時間及び加圧力のそれぞれを範囲指定しないで、単発的に値を設定することで、単発の値そのものがデータテーブル620に設定されて、溶接試験が行われる。
なお、管理項目における「材質」、「板厚」、「機種」及び「方式」を、上記した「SPCC」、「1mm」、「水平ガン」、「テーブル式」とするだけでなく様々なものとすることで、多種多様な溶接試験結果が得られる。このように数多くの試験を行うことで、溶接条件と該溶接条件による溶接結果に関するデータが大量に得られる。この大量のデータ(“ビックデータ”と呼ばれる)を利用することで、以下で説明するようにユーザの要求する溶接品質に見合う溶接条件を導き出すことができる。
(4)の溶接条件検索処理においては、まずデータベースサーバ58に蓄積されている大量のデータに対して、ユーザの要求する溶接品質に見合う溶接条件を検索するには溶接条件検索テーブルを用いる。図18は、溶接条件作成装置5で生成される溶接条件検索テーブルの一例を示す模式図である。同図において、溶接条件検索テーブル630は、ユーザが溶接条件を検索する操作を行うことでモニタ506に表示される。溶接条件検索テーブル630には、ユーザ名を設定する設定欄、実験番号を設定する設定欄、ワーク500の材質を設定する設定欄、ワーク500の板厚を設定する設定欄、抵抗溶接機2の機種を設定する設定欄、抵抗溶接機2の方式を設定する設定欄、引張強度を設定する設定欄、溶接電流を設定する設定欄、通電時間を設定する設定欄、加圧力を設定する設定欄、ナゲット径を設定する設定欄、電極変位を設定する設定欄、散りを設定する設定欄、美観を設定する設定欄、割れを設定する設定欄、目的検索対象を設定する設定欄、選択検索を設定する設定欄、検索を実行させるための検索ボタン631がそれぞれ設けられている。
溶接条件の検索においては、ユーザ指定条件を設定して検索ボタン631を押す(例えば、マウスでクリックする)。例えば、引張強度「5点以上」が得られる溶接条件を検索する場合、図18に示すように、引張強度の設定欄に「5点以上」のユーザ指定条件を設定して検索ボタン631を押す。これにより、データベースサーバ58に蓄積されている試験結果の中から、引張強度「5点以上」に該当する全ての溶接条件と、各溶接条件に関連する管理項目及び溶接結果がダウンロードされる。この場合、ユーザ名で絞りたければ、ユーザ名の設定欄に例えば「ABC機械製作所」を入力し、実験番号で絞りたければ実験番号の設定欄に例えば「2018−03−001」を入力する。
また、図19に示すように、散り「6点以上(飛んだ距離が4m以下)」が得られる溶接条件を検索する場合、散りの設定欄に「6点以上」のユーザ指定条件を設定して検索ボタン631を押す。これにより、データベースサーバ58に蓄積されている試験結果の中から、散り「6点以上」に該当する全ての溶接条件と、各溶接条件に関連する管理項目及び溶接結果がダウンロードされる。
引張強度及び散り以外のナゲット径、電極変位、美観及び割れについても同様の操作を行うことで、データベースサーバ58に蓄積されている試験結果の中から該当する全ての溶接条件と、各溶接条件に関連する管理項目及び溶接結果がダウンロードされる。ユーザ指定条件は、単独の他、組み合わせも可能である。例えば、引張強度と散りの組み合わせ、ナゲット径と美観の組み合わせも可能である。
一方、引張強度、電極変位、ナゲット径、散り、美観及び割れを指定する以外に、溶接電流、通電時間及び加圧力のそれぞれについて範囲を指定し、指定した範囲内の溶接条件を取得することも可能である。図20は、溶接条件検索テーブル630において溶接電流を5kA、その調節範囲を「−3、+7」に設定し、通電時間を150msec、その調節範囲を「−100、+200」に設定し、加圧力を2kNに設定したときの模式図である。このように設定した後、検索ボタン631を押すことで、データベースサーバ58に蓄積されている試験結果の中から、溶接電流:5kA、調節範囲:「−3、+7」、通電時間:150msec、調節範囲:「−100、+200」に該当する全ての溶接条件と、各溶接条件に関連する管理項目及び溶接結果がダウンロードされる。
また、目的検索(見映え優先、強度優先、標準)を指定することも可能である。目的検索として、例えば図21に示すように、「見映え優先」で検索する場合は、「見映え優先」にチェックを入れて検索ボタン631を押す。これにより、データベースサーバ58に蓄積されている試験結果の中から、見映えの良い溶接条件が検索されて、該当する全ての溶接条件と、該各溶接条件に関連する管理項目及び溶接結果がダウンロードされる。
また、選択検索を指定することも可能である。選択検索する場合、例えば図22に示すように、「選択」にチェックを入れて検索ボタン631を押す。これにより、データベースサーバ58に蓄積されている試験結果の中から、予め選択された溶接条件が検索されて、該当する全ての溶接条件と、該各溶接条件に関連する管理項目及び溶接結果がダウンロードされる。
本実施の形態では、データベースサーバ58に蓄積されている大量のデータの中からユーザ指定条件に該当する溶接条件及び該溶接条件による溶接結果をダウンロードする際に、該当する溶接条件の周辺の溶接条件も一緒にダウンロードする。ユーザが希望する溶接品質を満足する溶接条件の周辺の溶接条件も一緒に取得する理由は、ユーザが希望する溶接品質を満足する溶接条件の周辺の溶接条件の溶接結果を鑑みることで、ユーザが希望する溶接品質を満足する溶接条件の中で最適なものを選択できるようにするためである。例えば、ユーザ指定条件を引張強度「5」として、この引張強度「5」を満足する溶接条件が例えば10個あったとする。この10個の溶接条件の中でも周辺の溶接条件との絡みで最適なものもあれば、そうでないものもある。このため、最適なものを選択できるように、周辺の溶接条件も取得するようにしている。
ここで、以下に示す溶接条件を溶接試験条件設定テーブル600に設定して溶接試験を行い、その結果から高い引張強度が得られる溶接条件を希望したとする。
(a)ワーク500:材質SPCC、板厚1mm
(b)抵抗溶接機2の機種及び方式:水平ガン、テーブル式
(c)溶接電流の可変範囲:5kA〜7kA、0.5kA間隔
(d)通電時間の可変範囲:100msec〜200msec、25msec間隔
(e)加圧力:2kN
上記(a)〜(e)の条件を溶接試験条件設定テーブル600に設定して溶接試験を行うことで25個の溶接結果が得られ、データベースサーバ58に蓄積される。
(5)の見える化処理及び(6)の溶接条件選択処理においては、上記25個の溶接結果に対し、ユーザがユーザ指定条件として例えば「引張強度」を指定することで、引張強度に関する溶接結果が検索され、該当する引張強度があれば、それ(又はそれら)がダウンロードされて見える化表示される。
図23は、引張強度に関する溶接結果の一例を示す模式図であり、横軸は通電時間(msec)、縦軸は電流値(kA)である。同図に示すように、25個の引張強度に関する溶接結果のうち最高値が6kNで、最低値が2kNとなっている。これらの引張強度に関する溶接結果の中で、ユーザ指定条件として例えば5kNの引張強度を指定した場合、5kNの引張強度が得られる溶接条件が抽出され、それらがダウンロードされて見える化表示される。即ち、5kNの引張強度が得られる溶接条件は、通電時間150msecで溶接電流6kA,6.5kA,7kA、通電時間175msecで溶接電流6kA、通電時間200msecで溶接電流5.5kAの5個である。これらの溶接条件がダウンロードされるが、本実施形態では、ユーザ指定条件に該当する引張強度が得られる溶接条件に加えて、ユーザ指定条件に該当する引張強度の周辺の引張強度の溶接条件もダウンロードするようにしている。図23に示す例では、図24に示すように5kAの5個を含む17個の引張強度それぞれの溶接条件がダウンロードされる。図24は、ダウンロードした17個の引張強度を見える化表示した一例を示す図である。
見える化処理においては、5kNの引張強度とその周辺の引張強度を容易に判別できるように、数値(4,5,6等)を表示するか、色分けするか、あるいはその両方が行われる。図24に示すように、5kNの引張強度とその周辺の引張強度を数値化及び色分けしており、斜線を用いて色違いを示したものが5kNの引張強度であり、マス目の線を用いて色違いを示したものが5kNの引張強度以外(3kN,4kN、6kN)の引張強度である。なお、図23は、25個全ての引張強度に関する溶接結果を示したものであるが、基本的にはこれら溶接結果の全てを見える化表示する必要はない。但し、見える化表示するようにしても構わない。このように、引張強度に関する溶接結果に対し、ユーザ指定条件として引張強度を指定することで、その条件を満たす溶接条件を導き出すことができる。
上記は引張強度を例として挙げたが、引張強度以外も同様の結果を得ることができる。例えばユーザが散りを指定した場合について説明する。図25は、散りに関する溶接結果の一例を示す模式図であり、横軸は通電時間(msec)、縦軸は電流値(kA)である。上述したように、散りはユーザの主観であるので、散りの飛ぶ量を11段階に分けた値として、最も飛んだときの点数を「1」とし、全く飛ばなかったときの点数を「10」としている。溶接時に散りが飛ぶことは溶接条件としては好ましくないので、飛ぶ距離が長くなるに従い点数が小さくなるようにしている。25個の散りに関する溶接結果の中で、ユーザ指定条件を「6点以上」とした場合、6点以上を満足する溶接条件は、通電時間175msecで溶接電流5kA、通電時間150msecで溶接電流5kA,5.5kA,6kA、通電時間125msecで溶接電流5kA,5.5kA,6kA,6.5kA、通電時間100msecで溶接電流5kA,5.5kA,6kA,6.5kA,7kAの13個である。これら「6点以上」の散りに関する溶接結果がダウンロードされて見える化表示される。
散りの見える化表示においては、「6点以上」の散りの飛びを容易に認識できるように、数値(4,5,6等)を表示するか、色分けするか、あるいはその両方が行われる。図26は、ダウンロードした散りを見える化表示した一例を示す模式図である。同図では、「6点以上」の散りの飛びを数値化及び色分けしており、斜線を用いて色違いを示したものが「6点」以上の散りの飛びである。なお、図25は、25個全ての散りの飛びに関する溶接結果を示しているが、これら全てを見える化表示する必要はない。但し、見える化表示するようにしても構わない。このように、散りに関する溶接結果に対し、ユーザ指定条件を設定することで、その条件を満たす溶接条件を導き出すことができる。
その他、「電極変位」、「ナゲット径」、「美観」、「割れ」のそれぞれについても同様にしてユーザ指定条件を満たす溶接条件を導き出すことができる。なお、「美観」については、凹みや焼け等で細分化することも可能である。
また、「引張強度」、「電極変位」、「ナゲット径」、「散り」、「美観」、「割れ」の単体で溶接条件を導き出す以外に、少なくとも2つの組み合わせで溶接条件を導き出すことも勿論可能である。例えば「引張強度」と「散り」の両方を満たす溶接条件を導き出す場合、それぞれ単体で導き出した溶接条件で共通するものを選択することになる。例えば、ユーザが「5kN」の引張強度と、散りの飛びとして「6点以上」の両方をユーザ指定条件として設定した場合、上記図23に示す結果と上記図26に示す結果で共通するものが「引張強度」と「散り」の両方を満たす溶接条件となる。
図27は、「5kN」の引張強度と「6点以上」の散りの両方を満たす溶接条件と、該溶接条件の周辺の溶接条件をダウンロードして見える化処理した一例を示す模式図である。同図に示すように、「5kN」の引張強度と「6点以上」に散りの両方を満たす溶接条件は、通電時間150msecで溶接電流6kAの1個である。この溶接条件と、その周辺の溶接条件がダウンロードされて見える化表示される。なお、同図では、「5kN」の引張強度と「6点以上」の散りを数値化及び色分けしており、「5,6」の数値を示すとともに、両斜線を用いて色違いを示している。同図に示す「5,6」の数値は、先の数値が引張強度の数値(5kN)を表しており、後の数値が散り(「6点以上」)を表している。
図28は、加圧力2kN,3kN及び4kNに固定したときの引張強度と散りの両方を満足する溶接条件の生成過程を示す模式図である。同図の(a)は加圧力2kNにおける引張強度と散りの両方を満足する溶接条件の生成過程、同図の(b)は加圧力3kNにおける引張強度と散りの両方を満足する溶接条件の生成過程、同図の(c)は加圧力4kNにおける引張強度と散りの両方を満足する溶接条件の生成過程を示す。同図の(a)の加圧力2kNにおいては、引張強度でユーザ指定条件を満たす溶接条件がPaS1、散りでユーザ指定条件を満たす溶接条件がPaE1である場合、引張強度と散りの両方を満足する溶接条件がPaS1とPaE1で共通する部分であるPaSE1となる。同図の(b)の加圧力3kNにおいては、引張強度でユーザ指定条件を満たす溶接条件がPaS2、散りでユーザ指定条件を満たす溶接条件がPaE2である場合、引張強度と散りの両方を満足する溶接条件がPaS2とPaE2で共通する部分であるPaSE2となる。同図の(c)の加圧力4kNにおいては、引張強度でユーザ指定条件を満たす溶接条件がPaS3、散りでユーザ指定条件を満たす溶接条件がPaE3である場合、引張強度と散りの両方を満足する溶接条件がPaS3とPaE3で共通する部分であるPaSE3となる。
なお、本実施形態では、加圧力を2kN〜4kNに設定したが、これら以外の値を設定することも勿論可能である。また、上記例では引張強度として5kNを指定した場合、5kNのみ扱ったが、5kN以上の全てを扱うようにしても構わない。
図29は、引張強度に関する溶接結果の見える化表示の他の例で、固定した各加圧力でユーザ指定条件を満たす溶接条件を横方向に表示する例を示す模式図である。同図において、加圧力が表示されたタブ500を選択することで、選択した加圧力における溶接条件が先頭に現れる。即ち、図29は、加圧力2kNが表示されたタブ500が選択された例である。一方、図30は、引張強度に関する溶接結果の見える化表示の他の例で、固定した各加圧力でユーザ指定条件を満たす溶接条件を立体状に表示する例を示す模式図である。同図において、加圧力が表示されたタブ500を選択することで、選択した加圧力における溶接条件が先頭に現れる。立体表示することでモニタ506の表示領域を有効に活用でき、引張強度以外に、「散り」、「ナゲット径」、「電極変位」、「美観」及び「割れ」のうち少なくとも1つを同時に表示することができる。
次に、本実施形態に係る溶接システム1の溶接条件作成装置5の動作について説明する。
(溶接試験条件設定処理及び溶接条件手動・自動設定切替処理)
図31は、溶接試験条件設定処理及び溶接条件手動・自動設定切替処理の動作ステップを示すフローチャートである。なお、溶接条件作成装置5における動作は制御部501にて行われることから、主語は制御部501になるが、溶接条件作成装置5そのものの動作として説明することにするので、主語を溶接制御装置3とする。
同図において、溶接条件作成装置5は、ユーザによる溶接試験条件設定操作が有るかどうか判定し(ステップS10)、溶接試験条件設定操作が無いと判定すると(ステップS10で「NO」)、溶接試験条件設定操作があるまで本判定を繰り返す。溶接条件作成装置5は、溶接試験条件設定操作が有ると判定すると(ステップS10で「YES」)、溶接条件手動設定操作が有るかどうか判定し(ステップS11)、溶接条件手動設定操作が無いと判定すると(ステップS11で「NO」)、溶接条件を自動設定する(ステップS20)。
ステップS11で溶接条件手動設定操作が有ると判定すると(ステップS11で「YES」)、溶接試験条件設定テーブル600をモニタ506に表示する(ステップS12)。次いで、溶接制御装置3に手動設定切替信号を出力する(ステップS13)。その後、溶接試験条件設定テーブル600への溶接試験条件の入力があるかどうか判定する(ステップS14)。即ち、「ユーザ名」、「実験番号」、「目的」、「材質」、「板厚」、「機種」又は「方式」の溶接試験条件が入力されたかどうか判定する。
溶接条件作成装置5は、溶接試験条件設定テーブル600への溶接試験条件の入力が無いと判定すると(ステップS14で「NO」)、溶接試験条件が入力されるまで本判定を繰り返す。これに対し、溶接試験条件が入力されたと判定すると(ステップS15で「YES」)、入力された溶接試験条件を溶接試験条件設定テーブル600に設定する(ステップS15)。次いで、溶接条件作成装置5は、溶接試験条件の入力が終了したかどうか判定し(ステップS16)、溶接試験条件の入力が終了していないと判定すると(ステップS16で「NO」)、他の溶接試験条件を設定するためにステップS14に戻る。これに対し、溶接試験条件の入力が終了したと判定すると(ステップS16で「YES」)、溶接制御装置3から溶接条件(溶接電流、通電時間及び加圧力)が出力されたかどうか判定する(ステップS17)。溶接条件の手動設定が選択された場合、操作パネル4にて設定された溶接条件(溶接電流、通電時間及び加圧力)が溶接試験条件設定テーブル600に設定されるので、当該溶接条件が出力されたかどうか判定する。
溶接条件作成装置5は、溶接制御装置3から溶接条件が出力されていないと判定すると(ステップS17で「NO」)、溶接条件が出力されるまで本判定を繰り返す。これに対し、溶接条件が出力されたと判定すると(ステップS17で「YES」)、出力された溶接条件を溶接試験条件設定テーブル600に設定する(ステップS18)。そして、溶接試験条件設定テーブル600の内容を一時的に保存し(ステップS19)、本処理を終える。
溶接試験条件設定テーブル600には、例えば図14に示すように、ユーザ名の欄に「ABC機械製作所」、実験番号の欄には「2018−03−001」、材質の欄に「SPCC」、板厚の欄に「1mm」、機種の欄に「水平ガン」、方式の欄に「テーブル式」、溶接電流の欄に「5kA、調節範囲−3、+7、間隔0.5kA」、通電時間の欄に「150msec、調節範囲−100、+200、間隔25msec」、加圧力の欄に「2kN」がそれぞれ設定される。
図32は、溶接試験条件設定処理における溶接条件自動設定の動作ステップを示すフローチャートである。同図において、溶接条件作成装置5は、まずモニタ506に溶接試験条件設定テーブル600を表示する(ステップS200)。次いで、溶接試験条件設定テーブル600への溶接試験条件の入力があるかどうか判定する(ステップS201)。即ち、「ユーザ名」、「実験番号」、「目的」、「材質」、「板厚」、「機種」、「方式」、「溶接電流」、「通電時間」又は「加圧力」の溶接試験条件が入力されたかどうか判定する。
溶接条件作成装置5は、溶接試験条件設定テーブル600への溶接試験条件の入力が無いと判定すると(ステップS201で「NO」)、溶接試験条件が入力されるまで本判定を繰り返す。これに対し、溶接試験条件が入力されたと判定すると(ステップS201で「YES」)、入力された溶接試験条件を溶接試験条件設定テーブル600に設定する(ステップS202)。次いで、溶接条件作成装置5は、溶接試験条件の入力が終了したかどうか判定し(ステップS203)、入力が終了していないと判定すると(ステップS203で「NO」)、他の溶接試験条件を設定するためにステップS201に戻る。これに対し、溶接条件作成装置5は、溶接試験条件の入力が終了したと判定すると(ステップS203で「YES」)、溶接試験条件設定テーブル600の内容を一時的に保存し(ステップS204)、本処理を終える。
(溶接条件・溶接結果収集処理)
図33は、溶接条件・溶接結果収集処理の動作ステップを示すフローチャートである。なお、本動作説明では、引張強度試験は、全ての溶接試験が終了した後に一括して行うのではなく、1つの溶接が行われる毎に行われるものとする。同図において、溶接条件作成装置5は、まずユーザが溶接試験操作を行ったかどうか判定し(ステップS20)、溶接試験操作を行っていないと判定すると(ステップS20で「NO」)、溶接試験操作が行われるまで本判定を繰り返す。これに対し、溶接試験操作が行われたと判定すると(ステップS20で「YES」)、モニタ506にデータテーブル620を表示する(ステップS21)。次いで、溶接条件作成装置5は、溶接試験条件設定テーブル600を参照し、データテーブル620のユーザ名、実験番号及び目的の各欄と、管理項目の欄と、溶接条件の欄をそれぞれ埋める(ステップS22)。例えば図17に示すように、ユーザ名の欄に「ABC機械製作所」、実験番号の欄に「2018−03−001」を設定し、目的の欄に「見映え優先」、管理項目の材質の欄に「SPCC」、板厚の欄に「1mm」、機種の欄に「水平ガン」、方式の欄に「テーブル式」をそれぞれ設定する。
溶接条件作成装置5は、データテーブル620のユーザ名、実験番号、目的、管理項目及び溶接条件の各欄を埋めた後、溶接試験条件設定テーブル600を参照して、溶接条件の組み合わせをデータテーブル620に展開する(ステップS23)。溶接条件作成装置5は、溶接条件の組み合わせをデータテーブル620に展開した後、1組分の溶接条件を溶接制御装置3に出力する(ステップS24)。例えば、溶接電流:2kA、通電時間50msec、加圧力2kNを溶接制御装置3に出力する。なお、溶接制御装置3は、これらの溶接条件を基に指令信号Stiを生成し、抵抗溶接機2に出力する。
溶接条件作成装置5は、1組分の溶接条件を溶接制御装置3に出力した後、溶接条件データDDprを生成してデータベースサーバ58にアップロードする(ステップS25)。前述したように、溶接条件データDDprは、「管理項目」、「溶接条件」、「日時データ」、「ワーク固有データ」、「ユーザ名」、「実験番号」及び「目的」から構成される。溶接条件作成装置5は、データベースサー場58に溶接条件データDDprをアップロードした後、1組分の溶接条件による溶接結果が得られたかどうか判定する(ステップS26)。即ち、「引張強度」、「電極変位」、「ナゲット径」、「散り」、「美観」及び「割れ」の溶接結果の中で、1つでも得られたかどうか判定する。溶接条件作成装置5は、1つでも溶接結果が得られないと判定すると(ステップS26で「NO」)、1つでも溶接結果が得られるまで本判定を繰り返す。この場合、溶接結果の引張強度は引張試験機56から得られ、溶接結果の電極変位は変位検出デバイス52から得られる。また、他の溶接結果である「ナゲット径」、「散り」、「美観」及び「割れ」につては、ユーザの手動入力によって得られる。
溶接条件作成装置5は、1つでも溶接結果が得られたと判定すると(ステップS26で「YES」)、得られた溶接結果をデータテーブル620に設定する(ステップS27)。この場合、溶接条件作成装置5は、引張強度が得られた場合、データテーブル620の溶接結果の「引張強度」の欄に設定し、電極変位が得られた場合、データテーブル620の溶接結果の「電極変位」の欄に設定し、ナゲット径が得られた場合、データテーブル620の溶接結果の「ナゲット径」の欄に設定し、散りが得られた場合、データテーブル620の溶接結果の「散り」の欄に設定し、美観が得られた場合、データテーブル620の溶接結果の「美観」の欄に設定し、割れが得られた場合、データテーブル620の溶接結果の「割れ」の欄に設定する。なお、これらの溶接結果は、全てデータテーブル620に設定されるとは限らず、ユーザが任意に決めたもののみ設定される場合もある。例えば、ユーザが引張強度と美観のみ決めた場合、これらのみデータテーブル620の該当する欄に設定される。本動作説明では、全ての溶接結果がデータテーブル620に設定されるものとする。
溶接条件作成装置5は、得られた溶接結果をデータテーブル620に設定した後、データベースサーバ58にアップロードする(ステップS28)。即ち、溶接条件作成装置5は、引張強度については、引張強度データDsから引張強度データDDsを生成してデータベースサーバ58にアップロードし、電極変位については、電極変位データDdから電極変位データDDdを生成してデータベースサーバ58にアップロードし、ナゲット径については、ナゲット径データDngからナゲット径データDDngを生成してデータベースサーバ58にアップロードし、散りについては、散りの飛びデータDdsから散りの飛びデータDDdsを生成してデータベースサーバ58にアップロードし、美観については、美観データDbuから美観データDDbuを生成してデータベースサーバ58にアップロードし、割れについては、割れデータDdvから割れデータDDdvを生成してデータベースサーバ58にアップロードする。
溶接条件作成装置5は、得られた溶接結果をデータテーブル620に設定してデータベースサーバ58にアップロードした後、1組分の全ての溶接結果が得られたかどうか判定し(ステップS29)、1組分の全ての溶接結果が得られていないと判定すると(ステップS29で「NO」)、ステップS26に戻る。これに対し、1組分の全ての溶接結果が得られたと判定すると(ステップS29で「YES」)、ユーザ選択を確認する(ステップS30)。即ち、ユーザが現在の組の溶接結果を選択する場合、データテーブル620の選択欄にチェックを入れるので、そのチェックがあるかどうか確認する。溶接条件作成装置5は、データテーブル620の選択欄を確認し、現在の溶接結果をユーザが選択したと判定すると(ステップS31で「YES」)、チェックデータDDchkをデータベースサーバ58にアップロードする(ステップS32)。このチェックデータDDchkは、ユーザ名、実験番号、目的、管理項目、溶接条件及び溶接結果に関連付けられてデータベースサーバ620に保存される。
溶接条件作成装置5は、チェックデータDDchkをアップロードした後、全ての組み合わせ分の溶接が終了したかどうか判定し(ステップS33)、全ての組み合わせ分の溶接が終了していないと判定すると(ステップS33で「NO」)、ステップS24に戻る。これに対し、全ての組み合わせ分の溶接が終了したと判定すると(ステップS33で「YES」)、本処理を終える。一方、溶接条件作成装置5は、ステップS31の判定において、現在の溶接結果をユーザが選択していないと判定すると(ステップS31で「NO」)、ステップS32の処理を飛ばしてステップS33に進む。
(溶接条件検索処理及び見える化処理)
図34は、溶接条件検索処理及び見える化処理の動作ステップを示すフローチャートである。同図において、溶接条件作成装置5は、溶接条件検索操作が行われたかどうか判定し(ステップS70)、溶接条件検索操作が行われていないと判定すると(ステップS70で「NO」)、溶接条件検索操作が行われるまで本判定を繰り返す。これに対し、溶接条件検索操作が行われたと判定すると(ステップS70で「YES」)、溶接条件検索テーブル630をモニタ506に表示する(ステップS71)。次いで、溶接条件作成装置5は、ユーザ指定条件が入力されたかどうか判定し(ステップS72)、ユーザ指定条件が入力されていないと判定すると(ステップS72で「NO」)、ユーザ指定条件が入力されるまで本判定を繰り返す。これに対し、ユーザ指定条件が入力されたと判定すると(ステップS72で「YES」)、入力されたユーザ指定条件を溶接条件検索テーブル630に設定する(ステップS73)。例えば図18に示すように、ユーザ指定条件として引張強度:5点以上が入力された場合、その値が溶接条件検索テーブル630に設定される。なお、ユーザ指定条件の他に、必須要件である材質:SPCCと板厚:1mmも溶接条件検索テーブル630に設定される。
溶接条件作成装置5は、入力されたユーザ指定条件を溶接条件検索テーブル630に設定した後、検索開始操作が行われたかどうか判定し(ステップS74)、検索開始操作が行われていないと判定すると(ステップS74で「NO」)、ステップS72に戻る。これに対し、検索開始操作が行われたと判定すると(ステップS74で「YES」)、検索を開始するためにデータベースサーバ58にアクセスする(ステップS75)。
溶接条件作成装置5は、データベースサーバ58にアクセスした後、ユーザ指定条件に該当する溶接結果が有るかどうか判定し(ステップS76)、該当する溶接条件が有ると判定すると(ステップS76で「YES」)、データベースサーバ58から該当する溶接結果をダウンロードする(ステップS77)。次いで、ダウンロードした溶接結果に対して見える化処理を行い(ステップS78)、モニタ506に表示する(ステップS79)。これに対し、ステップS76でユーザ指定条件に該当する溶接結果が無いと判定すると(ステップS76で「NO」)、該当する溶接結果が無いことを示すメッセージを生成し(ステップS80)、モニタ506に表示する(ステップS79)。溶接条件作成装置5は、当該メッセージをモニタ506に表示した後、本処理を終える。
(溶接条件検索処理)
溶接条件検索処理は、データベースサーバ58に蓄積されている全てのデータの中で、予めユーザがチェックしておいたものを(印が付けられたもの)、ユーザの呼び出し指示に従って引き出し、その(又はそれらの)のデータをそのまま使用するか、あるいはその(又はそれらの中の任意の1つの)データを基準として再度溶接試験を行う場合に選択される。
図35は、溶接条件作成装置5の溶接条件検索処理で用いられる溶接条件検索テーブル630の設定状態を示す図である。同図は、データベースサーバ58に蓄積されている複数のデータの中で、チェック済みのもの(印が付けられたもの)を検索するときの溶接条件検索テーブル630の設定状態を示す図である。同図に示すように、データベースサーバ58に蓄積されている複数のデータの中で、チェック済みのものを検索する場合、材質及び板厚の他、ユーザ指定条件を設定する。同図では引張強度:5点以上が設定されている。ユーザがユーザ指定条件を設定した後、選択の欄に丸(黒丸)印を入れて検索ボタン631を押す。これにより、溶接条件作成装置5は、材質、板厚及びユーザ指定条件で、チェック済みのデータを検索する。そして、検索したデータを見える化処理し、グラフ表示や一覧表として表示する。
一方、図36は、データベースサーバ58に蓄積されている複数のデータの中で、目的が設定されたものを検索するときの溶接条件検索テーブル630の設定状態を示す図である。同図に示すように、データベースサーバ58に蓄積されている複数のデータの中で、目的が設定されたものを検索する場合、材質及び板厚の他、見映え優先、強度優先及び標準のうちの1つを選択する。例えば、見映え優先が設定されたデータを検索する場合、材質及び板厚の他、見映え優先を選択する。材質及び板厚の他、見映え優先、強度優先及び標準のうちの1つを選択した後、検索ボタン631を押す。これにより、溶接条件作成装置5は、材質、板厚及び目的で検索する。そして、検索した結果を見える化処理を行い、グラフ表示や一覧表として表示する。
なお、目的を設定して検索する際に、ユーザ指定条件を併せて設定することも可能である。例えば、「引張強度:5点以上」及び「見映え優先」で検索することも可能である。
また、選択も併せて設定することも可能である。例えば、「引張強度:5点以上」、「見映え優先」及び「選択」で検索することも可能である。このように、溶接条件検索テーブル630を用いることで様々な条件で検索することができる。
図37及び図38は、データベースサーバ58に蓄積されている複数のデータの中でチェック済みのものを検索する溶接条件検索処理の動作ステップを示すフローチャートである。同図において、溶接条件作成装置5は、溶接条件検索操作が行われたかどうか判定し(ステップS90)、溶接条件検索操作が行われていないと判定すると(ステップS90で「NO」)、溶接条件検索操作が行われるまで本判定を繰り返す。これに対し、溶接条件検索操作が行われたと判定すると(ステップS90で「YES」)、溶接条件検索テーブル630をモニタ506に表示し(ステップS91)、ユーザ指定条件の入力が有るかどうか判定する(ステップS92)。
溶接条件作成装置5は、ユーザ指定条件の入力が無いと判定すると(ステップS92で「NO」)、ユーザ指定条件の入力が有るまで本判定を繰り返す。これに対し、ユーザ指定条件の入力が有ると判定すると(ステップS92で「YES」)、入力されたユーザ指定条件を溶接条件検索テーブル630に設定する(ステップS93)。例えば、図18に示すように、ユーザ指定条件として引張強度:5点以上が入力された場合、これが溶接条件検索テーブル630に設定される。なお、ユーザ指定条件の他に、必須要件である材質:SPCCと板厚:1mmも設定される。
溶接条件作成装置5は、入力されたユーザ指定条件を溶接条件検索テーブル630に設定した後、ユーザ指定条件の入力が終了したかどうか判定し(ステップS94)、ユーザ指定条件の入力が終了していないと判定すると(ステップS94で「NO」)、ステップS92に戻る。これに対し、ユーザ指定条件の入力が終了したと判定すると(ステップS94で「YES」)、「選択」にチェックがあるかどうか判定し(ステップS95)、該チェックがあると判定すると(ステップS95で「YES」)、検索ボタン631が押されたかどうか判定する(ステップS96)。検索ボタン631が押されていないと判定すると(ステップS96で「NO」)、ステップS92に戻り、検索ボタン631が押されたと判定すると(ステップS96で「YES」)、データベースサーバ58にアクセスする(ステップS97)。
溶接条件作成装置5は、データベースサーバ58にアクセスした後、選択済みの溶接条件が有るかどうか判定し(ステップS98)、該当する溶接条件が有ると判定すると(ステップS98で「YES」)、データベースサーバ58から選択済みの溶接条件及び該溶接条件による溶接結果をダウンロードする(ステップS99)。次いで、溶接条件作成装置5は、ダウンロードした溶接条件及び該溶接条件による溶接結果に対して見える化処理を行い(ステップS100)、モニタ506に表示する(ステップS101)。これに対し、選択済みの溶接条件が無いと判定すると(ステップS98で「NO」)、選択済みの溶接条件が無いことを示すメッセージを生成し(ステップS102)、モニタ506に表示する(ステップS101)。溶接条件作成装置5は、当該メッセージをモニタ506に表示した後、本処理を終える。
一方、上記ステップS95において、「選択」にチェックが無いと判定すると(ステップS95で「NO」)、「目的」にチェックが有るかどうか判定する(ステップS103)。「目的」にチェックがないと判定すると(ステップS103で「NO」)、ステップS92に戻り、「目的」にチェックがあると判定すると(ステップS103で「YES」)、検索ボタン631が押されたかどうか判定する(ステップS104)。検索ボタン631が押されていないと判定すると(ステップS104で「NO」)、検索ボタン631が押されるまで本判定を繰り返す。これに対し、検索ボタン631が押されたと判定すると(ステップS104で「YES」)、目的が「見映え」、「強度」及び「標準」のうちいずれか1つであるか判定し(ステップS105)、いずれでもないと判定すると(ステップS105で「NO」)、本処理を終える。これに対し、目的が「見映え」、「強度」及び「標準」のうちいずれか1つであると判定すると(ステップS105で「YES」)、データベースサーバ58にアクセスする(ステップS106)。
溶接条件作成装置5は、データベースサーバ58にアクセスした後、「見映え」、「強度」及び「標準」のうちステップS105で判定したものに該当する溶接条件が有るかどうか判定し(ステップS107)、該当する溶接条件が有ると判定すると(ステップS108で「YES」)、データベースサーバ58から「見映え」、「強度」及び「標準」のうちステップS105で判定したものの溶接条件及び該溶接条件による溶接結果をダウンロードする(ステップS108)。次いで、溶接条件作成装置5は、ダウンロードした溶接条件及び該溶接条件による溶接結果に対して見える化処理を行い(ステップS109)、モニタ506に表示する(ステップS110)。これに対し、「見映え」、「強度」及び「標準」のうちステップS105で判定したものに該当する溶接条件が無いと判定すると(ステップS107で「NO」)、「見映え」、「強度」及び「標準」のいずれの溶接条件も無いことを示すメッセージを生成し(ステップS111)、モニタ506に表示する(ステップS110)。溶接条件作成装置5は、当該メッセージをモニタ506に表示した後、本処理を終える。
このように、本実施形態に係る溶接条件作成装置5は、溶接条件の溶接電流、通電時間及び加圧力それぞれの指定範囲内において組み合わされた複数組の溶接条件をデータテーブル620に展開し、展開した溶接条件の各値を溶接が行われる毎に順次溶接制御装置3に供給し、溶接制御装置3の制御によって抵抗溶接機2で溶接が行われる毎に溶接条件及び該溶接条件による溶接結果を収集し、収集した溶接条件及び該溶接条件による溶接結果をクラウド59上に構築したデータベースサーバ58に蓄積し、蓄積した複数の溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の中からユーザの要求する溶接品質を確保できるもの全てをデータベースサーバ58から取得し、所定の表示形式で見える化表示するので、抵抗溶接機2の使用経験の浅いユーザであっても、該ユーザの要求に見合った溶接品質を確保できる溶接条件を容易に且つ従来よりも短時間で作成することができ、抵抗溶接機の更なる普及促進が図れる。
また、ユーザが任意に決定した溶接電流、通電時間及び加圧力のそれぞれを1つの溶接条件としてデータテーブル620に設定できるので、おおよその見当を付けて溶接試験を行うことができ、見当を付けた溶接条件が良好なものであれば、その溶接条件を基準とする所定範囲内で溶接試験を行うことができる。これにより、ユーザの要求に見合った溶接品質を確保できる溶接条件を更に短時間で作成することが可能になる。
また、溶接条件及び該溶接条件による溶接結果を収集する毎に、収集した溶接条件及び該溶接条件による溶接結果をユーザが選択したかどうか判定し、選択された場合、選択された溶接条件及び該溶接条件による溶接結果に印を付け、印を付けた溶接条件及び該溶接条件による溶接結果をデータベースサーバ58にアップロードし、データベースサーバ58に蓄積した複数の溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の中から印が付けられたものをユーザが指定した場合、印が付けられた溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の全てをデータベースサーバ58からダウンロードし、データベースサーバ58からダウンロードしたチェック済み(印付与済み)の溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の全てを所定の表示形式で見える化表示する。これにより、一度数多くの溶接試験を行っておくことで、次回からは印を付けた溶接条件を基準とした試験ができるので、短時間でユーザの要求に見合った溶接品質を確保できる溶接条件を作成することが可能となる。
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
例えば、上記実施形態に係る溶接システム1では、圧力検出デバイス51、変位検出デバイス52、電流検出デバイス53、温度検出デバイス54、チップ間抵抗検出デバイス55及び引張試験機56を溶接条件作成装置5に接続して、それぞれのデータを溶接条件作成装置5に出力するようにしたが、それぞれにクラウド59との接続を行える通信機能を持たせてデータベースサーバ58にデータをアップロードできるようにしても構わない。
また、上記実施形態に係る溶接条件作成装置5では、溶接条件として溶接電流、通電時間及び加圧力を使用したが、その他に溶接に関する条件があれば、それ又はそれらを使用することも勿論可能である。
また、上記実施形態に係る溶接条件作成装置5において、同一溶接条件で複数回溶接試験を行うことに言及していなかったが、展開した溶接条件で複数回連続して溶接試験を行っても良いし、試験済みの溶接条件で再試験を行ってもよい。また、同じ溶接条件でも環境の変化等で溶接結果に違いが現れたりするので、試験済みの溶接条件でも再試験を行うようにしても良いし、同じ溶接条件で再試験を行っても違いが少なければ、再試験を省略するようにしても構わない。
また、上記実施形態に係る溶接条件作成装置5は、単独で存在するものであったが、溶接制御装置3に内蔵するようにしても構わないし、溶接条件作成装置5の機能を溶接制御装置3に持たせるようにしても構わない。
また、上記実施形態に係る溶接条件作成装置5の溶接条件検索処理、見える化処理及び溶接条件選択処理をアプリとしてPC100にインストールできるようにしても構わない。このようにすることで、PC100は、インストールされたアプリに従って動作し、データベースサーバ58に対して溶接条件検索処理、見える化処理及び選択済溶接条件検索処理を行う。
また、溶接システム1のPC100に、溶接条件検索処理、見える化処理及び選択済溶接条件検索処理を行わせる以外に、クラウド59上に機能ツール&データ処理ツール(図示略)を構築し、この機能ツール&データ処理ツールが溶接条件検索処理、見える化処理及び選択済溶接条件検索処理を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態に係る溶接条件作成装置5では、同じ材質で同じ板厚の2枚の鋼板を重ね合わせて成るワーク500に対する溶接条件の作成を行うようにしたが、ワーク500には、2枚の鋼板から成るものでも互いに材質が違ったり、板厚が違ったりするものもあり、また3枚以上の鋼板から成るものでも、それぞれの材質が違ったり、板厚が違ったりするものもあるので、前述した溶接試験条件設定テーブル600、データテーブル620及び溶接条件検索テーブル630それぞれの内容を適宜変更することで、様々な種類のワーク500に対する溶接条件を作成することが可能である。
図39は、溶接試験条件設定テーブル600の変形例である溶接試験条件設定テーブル600Aを示す図である。同図に示す溶接試験条件設定テーブル600Aは、ワーク500に対する溶接であるワーク溶接の他に、ナット溶接、スタッド溶接及びプロジェクション溶接に対応できるように、ナットやスタッドの寸法を入力する入力欄、プロジェクション溶接有無を入力する入力欄を有している。ナットやスタッドの寸法の入力には、JIS(Japanese Industrial Standards)規格の入力も可能である。
ワーク溶接する場合、溶接試験条件設定テーブル600Aに対し、ワーク構成枚数(構成枚数)を入力する。これにより、ワーク構成枚数に応じたワーク情報入力テーブルがモニタ506に表示される。図40は、ワーク情報入力テーブルの一例を示す図である。同図の(a)に示すワーク情報入力テーブル601A1は、ワーク構成枚数「3」を入力したときに表示されるものであり、「上」、「中」、「下」の各鋼板の材質と板厚の入力が可能となる。この例では、「上」に位置する鋼板の材質が「SPCC」、板厚が「1mm」であり、「中」に位置する鋼板の材質が「SPCC」、板厚が「1.6mm」であり、「下」に位置する鋼板の材質が「SPCC」、板厚が「2.0mm」である。なお、この例では3枚ともSPCCであるが、SPCC以外の場合も勿論ある。
同図の(b)に示すワーク情報入力テーブル601A2は、ワーク構成枚数「2」を入力したときに表示されるものであり、「上」、「下」の各鋼板の材質と板厚の指定が可能となる。この例では、「上」に位置する鋼板の材質が「SPCC」、板厚が「1mm」であり、「下」に位置する鋼板の材質が「SPCC」、板厚が「1.6mm」である。この例では2枚ともSPCCであるが、SPCC以外の場合も勿論ある。同図の(c)に示すワーク情報入力テーブル601A3は、ワーク構成枚数「2」で、SPCCとSUSの異なる材質の鋼板を入力した例である。「上」に位置する鋼板の材質が「SPCC」、板厚が「1mm」であり、「下」に位置する鋼板の材質が「SUS」、板厚が「1.6mm」である。
なお、ワーク構成枚数が「4」以上の場合は、「上」、「中1」、「中2」、…、「下」で表現すればよい。
一方、ナット溶接及びスタッド溶接では、溶接試験条件設定テーブル600Aにてナットの寸法やスタッドの寸法を入力する。また、ナットやスタッドにプロジェクションがある場合は、プロジェクション有無の入力欄に「有」を入力する。なお、プロジェクション溶接の場合、プロジェクション(突起物)の数、形状、配置間隔等を入力することも可能である。様々な情報を入力することで精度の良い溶接条件を導き出すことが可能である。
図41は、溶接試験条件設定テーブル600Aにてワーク構成枚数として「3」を入力し、ワーク情報入力テーブル601A1にて「上」に位置する鋼板に対して材質「SPCC」、板厚「1mm」を入力し、「中」に位置する鋼板に対して材質「SPCC」、板厚「1.6mm」を入力し、「下」に位置する鋼板に対して材質「SPCC」、板厚「2.0mm」を入力したときに得られるデータテーブル620Aを示す図である。同図に示す管理項目の欄に、各鋼板の材質及び板厚が表示されている。なお、データテーブル620Aにおいても、ワーク構成枚数が「4」以上の場合は、「上」、「中1」、「中2」、…、「下」で表現すればよい。
図42は、ワーク構成枚数が「3」までのワーク500に対する溶接条件検索テーブル630Aを示す図である。同図は、「上」に位置する鋼板に対して材質「SPCC」、板厚「1mm」が入力され、「中」に位置する鋼板に対して材質「SPCC」、板厚「1.6mm」が入力され、「下」に位置する鋼板に対して材質「SPCC」、板厚「2.0mm」が入力され、引張強度「5点以上」が入力された例を示している。この例に示す条件で溶接条件が検索される。なお、溶接条件検索テーブル630Aにおいても、ワーク構成枚数が「4」以上の場合は、「上」、「中1」、「中2」、…、「下」で表現すればよい。
なお、ワーク500を構成する鋼板の枚数、各鋼板の材質及び板厚の違いの他に、電極形状の違い(上側がチップ電極、下側がテーブル電極の組み合わせ、上側と下側が共にチップ電極となる組み合わせ等)や、板厚に違いがある場合で、電極に対して上側の鋼板の方が下側の鋼板より板厚が厚い/薄いなど、様々な組み合わせが考えられるが、必要に応じて試験を行うことで、最も適した溶接条件を導き出すことができる。
本発明の溶接条件作成装置は、抵抗溶接機によるワーク溶接時に溶接制御装置にて用いられる溶接電流、通電時間及び加圧力の溶接条件を作成する溶接条件作成装置であって、前記溶接条件の溶接電流、通電時間及び加圧力それぞれの指定範囲内で組み合わせた複数組の溶接条件をデータテーブルに展開する溶接条件設定手段と、前記データテーブルに展開された複数組の溶接条件を溶接が行われる毎に1組ずつ溶接制御装置に供給する溶接条件供給手段と、前記抵抗溶接機にて溶接が行われる毎に前記溶接条件及び該溶接条件による溶接結果を収集する溶接条件・溶接結果収集手段と、クラウドコンピューティング上に構築されたデータベースサーバとの間で双方向通信が可能な通信手段と、前記溶接条件・溶接結果収集手段にて収集された前記溶接条件及び該溶接条件による溶接結果を前記通信手段経由で前記データベースサーバにアップロードし、前記データベースサーバに蓄積された複数の前記溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の中からユーザの要求する溶接品質を確保できる前記溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の全てを前記通信手段経由で前記データベースサーバからダウンロードする制御手段と、前記データベースサーバからダウンロードされた前記溶接条件及び該溶接条件による溶接結果の全てを所定の表示形式で見える化表示する表示手段と、を備える。