JP4112665B2 - スタッド溶接の不良原因除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタッド溶接のスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接するスタッド溶接の溶接不良となるおそれがある発生原因を除去し、さらに溶接不良が発生したときは、不良の原因を表示するスタッド溶接の不良原因除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スタッド溶接は、材質、直径、形状等のスタッドの種類と下向き姿勢、横向姿勢等の溶接姿勢と被溶接材直接溶接、上板貫通溶接等の被溶接材状態(以下、スタッド及び被溶接材の種類という)によって、溶接電流値、溶接時間、切換溶接電流値、溶接ガンの移動量(引き上げ距離、押し込み距離、押し込み速度切換)等の設定(以下、溶接機器動作設定という)をしてから、スタッド溶接のスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接している。
【0004】
従来の溶接継手の良否の判定は、溶接終了後に行っていた。従来の溶接終了後の溶接継手の良否の判定方法は、溶接終了後に、余盛り量及び余盛り均一性の外観を目視によって全数良否判定する外観目視検査、押し込み距離の適否を判別する仕上がり高さの測定、ハンマーで打撃する曲げ試験等の物理的試験によって、溶接継手の良否を判定してきた。
【0006】
しかし、外観検査だけでは溶接継手の良否を正確に判定することができない、又はハンマーで溶接したスタッドを打撃する曲げ試験は、過大な労力を要するだけでなく破壊試験であるためにスタッドが無駄になる。これらを改良する従来技術として、近年、入熱量(正確に表現すると、溶接電流値と溶接電源装置の出力端子電圧値と溶接時間との積の溶接電源装置の供給電力量)の算出、引き上げ距離及び押し込み距離の電気測定によって、溶接継手の良否を判定する方法が提案されている。
【0008】
[従来技術1]
特開昭61−242766の技術は、電磁オシログラフを使用して溶接電流及び溶接電圧、特に溶接終了時の押込み中の短絡電流を測定記録して、品質判定を行っている。
[従来技術2]
特開平1−154877の技術は、スタッドの移動量とガンコイルの電圧及び溶接電流の各波形とを検出して、押込み開始点、ガンコイルの電圧の出力停止点及び溶接電流短絡時のサージ電流のピーク点の3点の内のいずれか2つの時間的位置関係から溶接結果の合否を判定してきた。
【0010】
[従来技術3]
実公平2−35409の技術は、可動部に検出回路を取付けて、引き上げ距離を測定してデジタル表示をし、正確にスタッドが引き上げられているかどうかをチェックしている。この従来技術では、引き上げ距離しか測定していないために、押し込み距離と押し込み動作とが正常であるかどうかの品質判定をするみとができない。
[従来技術4]
特公平3−72388の技術は、スタッドの移動量(押込量)を検出して、スタッド押し込み距離を標準値と比較することによって品質判定を行っている。
【0012】
[従来技術5]
特開平7−144275の技術は、アーク電圧値とスタッドの移動状態とを検出してモニタリングし、押し込み開始前0.3秒以内のアーク電圧値を測定し、短絡が発生してアーク電圧値が低下したときに、融合不良欠陥であると判定している。
【0014】
[従来技術6]
さらに、入熱を算出する方法として、特許出願公表昭58−500279の技術は、マイクロプロセッサを使用して溶接電流を制御し、溶接電流平均値、溶接電圧平均値、溶接電流通電時間の各々を計算し、これら3つの値を乗算して入熱量を計算し、溶接電流平均値、溶接電圧平均値、溶接電流通電時間、入熱量の記憶及び表示をしている。
また、溶接時間Taの終わりで、溶接電流の設定値と実際値とを比較して設定値に満たない場合は、溶接時間Taを延長して必要な入熱量Qrを確保するように制御している。
この方法では、溶接サイクル終了時点でエネルギー量を算出しているために、終了時点でエネルギー量が過大であることが判明しても、エネルギー量を制御することができないので、必要な入熱量Qrを正確に供給することができない。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
(1)発明が解決しようとする第1の課題は、従来技術では、溶接終了後に溶接不良を判定しても、手直し、追加溶接等に労力を要し、作業効率を低下させていた。
(2)発明が解決しようとする第2の課題は、従来技術では、溶接継手の良否を判定して不良と判定したときは、その不良の原因について、溶接機器からガイドがなかったので、作業者の経験に基づいてその不良の原因を究明しなければならなかった。
【0022】
上記の第1の課題の溶接不良となる主な原因は、下記のとおりである。
[A1]接ガンの移動が円滑でない(以下、不良原因A1という)。
スタッド溶接は、0.5秒から1.5秒程度の短時間の間に、機械的にスタッドを被溶接材から引き上げて、大電流を通電して、先端がアーク熱によって溶融したスタッドを被溶接材の溶融池に押し込む動作を完了してしまう。したがって、スタッド溶接は、機構的に、かなり高度の溶接であり、わずかの設定条件、周囲条件等の違いが、溶接結果に大きく影響する。
【0024】
スタッド溶接において、通常、スタッドの引き上げ距離は、スタッドの直径、材質、溶接条件等に応じて適当な値に調整する必要があり、実際に行われた溶接条件、特に引き上げ距離が、設定値のとおりにならなかった場合、良好な溶接結果を得ることができない。また、スタッドの押し込み距離も、溶接結果に重要な影響を与える。
【0026】
溶接したスタッド(以下、溶接スタッドという)が溶接不良となる原因は、スタッドの押し込み距離が適正でないか、又は押し込み時に引っかかりが生じて、押し込み距離が過小になると溶接強度が不足し、また押し込み距離が過大になっても、溶融金属が飛散して溶接強度が不足する。
【0028】
近年、電磁コイル及び可動鉄心によって引き上げる動作と圧縮バネによって押し込む動作とに代わって、サ−ボモ−タを使用して正確に位置制御をすることによって、設定値のとおりの引き上げ距離及び押し込み距離を確保することができるようになった。
【0030】
図1は、引き上げ距離L1及び押し込み距離L2を測定して測定結果を記録するための位置検出手段GN3を備えた従来方式の溶接ガン(以下、従来技術Aという)を示す図である。
【0032】
この図1の溶接ガンGNは、溶接ガン本体GN1に、電磁石GN6を配設し、圧縮バネGN7によって被溶接材W側に付勢される可動鉄心GN5に、移動軸GN8の端部に取り付けた保持具GN9にスタッドSを保持している。また、Z1又はZ2方向に位置調整自在なストッパ金具GN11を設けて、可動鉄心GN5のZ1方向の移動量を制限している。さらに、Z1又はZ2方向の設定長さが調整自在な当接部材GN2を溶接ガン本体GN1に支持している。
【0034】
位置検出手段GN3は、例えば、ポテンショメ−タGN3aであって溶接ガン本体GN1に取り付けられている。このポテンショメ−タの軸GN3bは連結板GN4を介して移動軸GN8に連結されている。
ガン移動量測定回路32は、位置検出手段GN3によって測定した移動量を、波形モニタ−、デジタル表示器等のガン移動量表示器31に表示する。
【0036】
溶接ガンGNは、上記の溶接ガン本体GN1と当接部材GN2と位置検出手段GN3と連結板GN4と可動鉄心GN5と電磁石GN6と圧縮バネGN7と移動軸GN8と保持具GN9とストッパ金具GN11とから構成される。この溶接ガンGNとガン移動量表示器31とガン移動量測定回路32と図示していない溶接電源装置と溶接制御装置とによってスタッド溶接機が構成される。
【0038】
位置検出手段GN3として、全移動範囲を有するポテンショメ−タGN3aが使用される。このポテンショメ−タの軸GN3bは、引き上げ動作及び押し込み動作に応じてスライドする。しかし、1日に1000本のスタッドを溶接するために、ポテンショメ−タの軸GN3bが摩耗しやすく、また連結板GN4のゆるみ等で正確に位置測定ができない場合もある。
【0040】
このような従来技術Aは、各スタッドを溶接するごとに、溶接中の移動量を測定した移動量測定値と適正な溶接を行うめの移動量標準値とを比較して、その差が許容値内であるか否かによって、各溶接継手の良否を判定している。しかし、この従来技術の判定方法は、溶接した後の判定であるために、溶接不良と判定された溶接スタッドを切り取って溶接し直すか追加のスタッドを溶接しなければならない。したがって、溶接ガンの移動量が不足したり、円滑な移動がされなかったことが原因で、溶接不良を発生してしまうことがあった。
そこで、溶接作業前に、溶接ガンが正常に動作するかどうかをチェックする必要がある。
【0042】
また、図1に示す電磁石GN6ではなく、溶接ガン可動部を駆動させるサ−ボモ−タ等を使用した場合、サ−ボモ−タ及びそのモ−タを駆動させる駆動回路が異常動作したときも、溶接結果が不良になる。
【0050】
[B1]アーク期間の短絡発生によって入熱が不足している(以下、不良原因B1という)。
スタッドを被溶接材から引き上げ、次に所定の押し込み距離L2だけ押し込んで溶接して、その溶接継手が良好であるためには、前述したように、必要な入熱量Qrを得ることが重要である。
入熱等の溶接条件が適正でなく、必要な入熱量Qrを得ることができない場合は、引き上げ期間中にスタッドの溶融面が被溶接材の溶融プールに接触して短絡が発生する。この短絡が発生すると、適正なア−ク電圧値が十分に継続しないために入熱不足となって、所要の押し込み距離L2だけ押し込むことができなくなり溶接不良となる。このような従来技術を、以下、従来技術Bという。
【0052】
この従来技術Bにおいて、溶接時間Taに短絡が発生して適正なア−ク電圧値Vaが十分に継続しないために入熱不足となるときには、必要な入熱量Qrを得るために、作業者が、主ア−ク電流値Ia又は溶接時間Taを増加させなければならない。しかし、入熱が過大になると、溶融金属が過大になって移動して不均一になるために、押し込み後の余盛り形状が不均一になり溶接強度が低下する。
【0054】
したがって、従来技術Bにおいては、入熱不足とならないように、作業者が、主ア−ク電流値Ia又は溶接時間Taを判断して、適正値を設定しなければならない。
【0060】
[C1]横向き溶接の溶融金属の垂れ下がりによる短絡が発生している(以下、不良原因C1という)。
【0062】
図2は、横向き溶接中のフェルール内の溶融金属Wmの状態を示す図である。同図において、被溶接材WとスタッドSとの間に図示されていないアークを発生させて被溶接材Wを溶融させるが、この溶融した溶融金属Wmが重力によってフェル−ルFの内面下部に溜まるために、スタッドの上方に溶接後のフラッシュ(以下、余盛りという)を必要量だけ形成することができない。
【0064】
図3は、従来の溶接動作において、主アーク期間Taの後半で短絡が発生したときの波形を示す図で、同図(A)は溶接電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は溶接電源装置の出力端子電圧Vdの波形を示す出力端子電圧波形図であり、同図(C)はスタッド先端の移動量Mを示すスタッド先端移動図である。
【0066】
太径のスタッドを横向き姿勢で溶接する場合、溶接時間Taの後半において、図2に示したように、スタッド先端部の溶融金属及び被溶接材表面の溶融金属Wmが、重力によってフェルールFの内面下部に集中してフェル−ル内の溶融金属Wmが片寄るために、図3(B)に示すように、溶接時間Taの後半において、ア−ク長が短くなり短絡が頻繁に発生する。このような従来技術を、以下、従来技術Cという。
【0068】
この従来技術Cにおいては、必要な入熱量Qrを得るために、作業者が、溶融金属Wmの垂れ下がりによって発生する短絡を少なくする主ア−ク電流値Ia又は溶接時間Ta(以下、主アーク期間Taという)を判断して設定しなければならない。
【0070】
なお、図3(C)において、Tmは押し込み期間であり、符号Dd及びDd0はそれぞれ、後述する上板貫通溶接の設定値どおりの押し込み距離及び押し込み不足のときの実際の押し込み距離である。
【0080】
[D1]上板貫通溶接の押し込み距離が不足している(以下、不良原因D1という)。
スタッド溶接の用途として、建築工事、建設工事等において、H型鋼、I型鋼等の鉄骨を組み立てた構築物に鋼板を配設し、鉄骨上に鋼板(デッキプレート)をスタッド溶接によって固定する上板貫通溶接がある。
【0082】
図4は、鉄骨上に鋼板を配設したときに、鋼板が波打ち、鉄骨と鋼板との間に隙間(クリアランス)が生じている状態を示す鉄骨・鋼板位置関係図である。
同図において、鉄骨Wa上に鋼板Wbを配設したときに、鋼板の板厚Dpが例えば、1.2[mm]のような薄板のときは、鋼板Wbが波打ち、鉄骨Waと鋼板Wbとの間に隙間(クリアランス)Dcが生じる。
【0084】
図5は、鉄骨と鋼板との間に隙間があるときの鋼板とスタッド先端との位置関係を示す鋼板・スタッド位置関係図である。
同図(A)は、スタッド溶接開始直後のスタッドSの先端が鋼板Wbに接触した状態を示す溶接開始位置関係図であって、スタッドSの先端が鋼板Wbに接触した位置を基準点Pとする。
同図(B)は、スタッド先端を引き上げてアークを発生させている状態を示すアーク発生位置関係図であって、スタッド先端は同図(A)の基準点Pから引き上げ距離Dupだけ引き上げられた位置にある。
【0086】
同図(C)は、溶接開始時から予め設定した時間が経過した後に、スタッドSを押し込む指令を出して、スタッド先端を押し込んで短絡させた状態を示す短絡位置関係図であって、スタッド先端は同図(A)の基準点Pから押し込み距離Ddだけ押し込まれた位置にある。
【0088】
同図(D)は、溶接開始時から溶接終了時までのスタッドSの先端位置の時間的経過を示す図であって、縦軸がスタッド先端の移動量Mを示し、符号▲1▼は同図(A)のスタッド先端の▲1▼の位置を示し、符号▲2▼は同図(B)のスタッド先端の▲2▼の位置を示し、符号▲3▼は同図(C)のスタッド先端の▲3▼の位置を示し、符号Ddは同図(A)の基準点Pからの押し込み距離を示す。
【0090】
同図(E)は、溶接開始時から溶接終了時までの出力端子電圧Vdの時間的経過を示す図である。同図(E)において、時刻ts0は、上板貫通溶接でない通常の溶接(以下、直接溶接という)のときの押し込み時短絡開始時点であり、時刻ts1は、上板貫通溶接のときの押し込み時短絡時点であり、同図(C)に示すように、溶融したスタッド先端が鋼板の板厚Dp及び隙間(クリアランス)Dcだけ移動する時間であって、時刻ts0よりも遅れる。
さらに、時刻ts2は、上板貫通溶接のときに溶融したスタッド先端が鉄骨に接触した押し込み開始時点であり、鉄骨Waと鋼板Wbとの間の隙間Dcが不定であるために時刻ts0から時刻ts2までの遅れ時間がばらつく。この押し込み開始時点が遅れると、押し込み短絡期間Ts中にアークによる入熱が含まれるために押し込み短絡期間Ts中の入熱が過大となる。
【0092】
上記の隙間Dcが不定であるために、同図(B)に示すように、アーク長Daは、Dup+(Dp+Dc)となり、直接溶接のときよりも、(Dp+Dc)だけ増加すると共に、このDcのばらつきによってアーク長Daが変動する。
さらに、上板貫通溶接のときは、同図(C)に示すように、スタッド先端が鉄骨Waに押し込まれる鉄骨表面からの押し込み距離Deは、Dd−(Dp+Dc)となり、直接溶接のときよりも、(Dp+Dc)だけ減少するだけでなく、このDcのばらつきによって鉄骨表面からの押し込み距離Deも変動する。このような従来技術を、以下、従来技術Dという。
【0094】
後述する図14に示すように、主アーク期間Ta中の短絡発生時点tasにおいて短絡が発する状態で、スタッドSを被溶接材Wに押し込むと、同図(C)に示すように、実際の押し込み距離はDd0となり、設定値どおりの押し込み距離Ddまで押し込むことができないために、押し込み不足となる。その結果、余盛りの片寄りによる融合不良等の溶接欠陥が生じる。
【0096】
この従来技術Dにおいて、押し込み不足が生じないようにするために、作業者が、押し込み距離L2及び溶接時間Taを判断して設定しなければならない。
【0098】
溶接不良の発生を防止するためには、所要の入熱を得ることが重要である。スタッド溶接の入熱は、スタッドを被溶接材から引き上げてアーク発生中の溶接電圧値と溶接電流値との時間積分値と、スタッドを被溶接材に押し込んで短絡電流通電中の溶接電圧値と溶接電流値との時間積分値との和である。
【0100】
もし溶接条件が適正でなく所要の入熱を得ることができない場合、例えば、溶接電流が適正値よりも大きい場合、引き上げ距離が短い場合又は溶接姿勢が不良の場合は、スタッドの先端の溶融面が、アーク発生中に、被溶接材の溶融プールに接触して短絡が発生する。
この短絡が頻繁に発生すると、ア−クが十分に継続しないために入熱不足となって、押し込み中に所要の押し込み距離だけ押し込むことができなくなり溶接不良となる。
【0102】
アーク発生中に短絡が発生しなくて、アーク発生中の入熱が適切な場合であっても、上記のような上板貫通溶接、溶接ガンの押し込み時の引っかかり等によって、スタッドを被溶接材に押し込む指令をしてから予め定めた時刻(以下、短絡電圧検出開始時点という)t91よりも遅れて短絡したときは、前述したように、押し込み短絡期間Ts中の入熱が過大となり溶融金属Wmが過大となって余盛り不足となり溶接強度が低下する。
【0110】
[E1]溶接回路の電圧降下が大である(以下、不良原因E1という)
現場作業では、通常、溶接電源装置1が重量物であるために移動が困難であるので、溶接電源装置を頻繁に移動させないで、ある位置に設置して「+」出力端子を溶接電源装置付近の被溶接材Wに接続し、「−」出力端子を、溶接ケーブル17及び後述する本体ケーブル17aとから成る2次ケーブルに接続する。この2次ケーブルを電圧降下が許容する範囲の溶接位置まで延長する。したがって、2次ケーブル、被溶接材等の溶接回路の抵抗値が溶接場所によって変化するために、2次ケーブル、被溶接材等の抵抗による電圧降下も変化する。
【0112】
溶接電源装置の出力端子間で出力電圧を検出する場合、2次ケーブル長が短いときは、検出した出力端子電圧値Vdとアーク電圧値Vaとの誤差は少ないが、16φ、19φ等の太径のスタッド溶接のときは、1000〜2000[A]程度の大電流を通電するので、検出した出力端子電圧値Vdとアーク電圧値Vaとの誤差が大になる。このような従来技術を、以下、従来技術Eという。
【0114】
また、2次ケーブル長を溶接箇所まで総延長100[m]延長して溶接することが可能である溶接電源装置も市販されている。このような溶接電源装置往復を使用して、2次ケーブル長を100[m]まで延長して溶接すると、2次ケーブル、被溶接材等の電圧降下(以下、溶接回路電圧降下という)V5は数十[V]になる。この溶接回路電圧降下V5は、溶接電源装置1から溶接箇所までの距離に関係する2次ケーブルの長さ、2次ケーブルの直径、被溶接材の抵抗値等の違いによって大きく変化する。
【0116】
この従来技術Eにおいて、作業者が、溶接回路電圧降下V5による電圧降下消費電力P5を補償して必要な入熱Qrを得るために、主ア−ク電流値Ia又は溶接時間Taを判断して、適正値に設定しなければならない。
【0120】
[F1]溶接機器の設定値の組み合わせが適切でない(以下、不良原因F1という)。
従来、スタッド溶接は、スタッドの直径と下向き姿勢、横向き姿勢等の溶接姿勢と被溶接材直接溶接、上板貫通溶接等の被溶接材配置とによって、溶接電流値と溶接時間、溶接ガンの移動量(引き上げ距離と押し込み距離)、押し込み速度切換等の設定(以下、溶接機器動作設定という)をしてから、溶接を開始してスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接している。
【0122】
上記の溶接機器動作設定時には、取扱説明書、ガイドブック等を手元に持参して参照し、スタッドの直径、溶接姿勢及び被溶接材配置の組み合わせを見つけなければならない。組み合わせが見つからないときは、過去のデータが必要となり、過去のデータがないときは試し打ちをして最良の溶接結果を見つけなければならない。そのために、作業者は、労力を必要とし、作業効率を低下させるだけでなく、適切な溶接機器設定値の組み合わせを見つけることが困難なために、最良の溶接結果をうることができない場合も生じる。このような従来技術を、以下、従来技術Fという。
【0124】
この従来技術Fにおいて、必要な入熱量Qrを得るために、作業者が、主アーク期間Taに短絡が発生して適正なア−ク電圧値Vaが十分に継続しないために入熱不足となるときには、主ア−ク電流値Ia又は溶接時間Taを増加させなければならない。しかし、入熱が過大になると、溶融金属が過大になって流出するために、押し込み後の余盛り形状が不均一になり、溶接強度が低下する。
【0126】
したがって、作業者は、スタッドの直径、溶接姿勢及び被溶接材配置の組み合わせに応じて、適切な溶接機器設定値を記載した取扱説明書、ガイドブック等を参照して又は試し打ち、経験等も含めて、複数の適切な溶接機器動作設定(主ア−ク電流値Ia又は溶接時間Ta)をどの程度にしなければならないかを判断して、適正値を設定しなければならない。
【0130】
[G1]溶接用の2次ケーブル素線の断線が進行している(以下、不良原因G1という)。
図6は、通常のスタッド溶接をするときの2次ケ−ブルの接続状態を示す図である。
通常、溶接ガンGNの本体ケ−ブル17aの一端は、スタッドSを保持する保持具GN9を移動させる移動軸GN8に取り付けられた本体ケーブル接続金具GN12に接続されている。
【0132】
通常のスタッド溶接をするときは、溶接ガンGNの本体ケ−ブル17aの他端を溶接電源装置1の一方の出力端子に接続し、溶接ケ−ブル17を被溶接材Wと溶接電源装置1の他方の出力端子間に接続する。
【0134】
本体ケ−ブル17a及び溶接用ケーブル17(以下、2次ケーブルという)は、通常の固定配線されたケーブルに比べて、第1に、溶接箇所まで頻繁に引き回され、屈曲と延伸との繰り返し回数(以下、屈曲回数という)及び2次ケーブルの捻れが多いために、ケーブル素線が断線(以下、部分断線という)することが多い。第2に、本体ケ−ブルは可撓性をよくするために、通常のケーブルよりも細い素線を使用しているので素線が断線しやすい。第3に、溶接箇所まで頻繁に移動させ、大電流を通電するので、固定配線されたケーブルに比べて、断面積の小さいケーブルを使用するために、電圧降下による発熱が大となり、素線の一部が断線すると残りの素線の断線が急速に進行する。したがつて、通常の固定配線されたケーブルの劣化が、電圧降下による発熱によって絶縁が低下して使用不能になるのに対して、2次ケーブルの劣化は、素線の断線が進行して異常発熱して使用不能になる。このような従来技術を、以下、従来技術Gという。
【0136】
特に、溶接箇所が建築物等の大形構造物であるときは、溶接箇所まで溶接ケーブルを本体ケ−ブルに接続延長して、総延長が100[m]に及ぶ場合もある。この2次ケ−ブルは、溶接箇所まで頻繁に引き回され、特に、本体ケ−ブルは、屈曲回数が多く、使用を繰り返すと部分断線し、しかもその部分断線数の進行が速い。
【0138】
さらに、スタッド溶接は、1000[A]以上の大電流を通電するために、2次ケーブルが発熱する。特に、屈曲回数が多い部分では、溶接作業中に、急速に部分断線数が進行して、部分断線した部分にア−クが発生することがあり危険である。この2次ケーブルの屈曲回数が多い部分は、溶接作業者近傍の位置にあるために、実際に火傷事故が発生したことがある。
そこで、定期的に又は溶接作業の開始前に、溶接ケーブル素線の断線及びその部分断線数の進行をチェック(以下、断線チェックという)する必要がある。
【0140】
本出願人は、スタッド溶接において、実際に発生した事故に対する対策(2次ケ−ブルの断線チェック)として、2次ケ−ブル自体に定電流を通電して、断線チェックしたい部分の温度上昇を確認する方法を検討した。以下、この2次ケ−ブルの検討済断線チェック方法を説明する。
【0142】
図7は、本出願人の従来方法のスタッド溶接の2次ケ−ブルの劣化状態をチェックするときの2次ケ−ブルの接続状態を示す図である。
この断線チェック方法は、2次ケーブル素線数の1/2が断線した場合を、2次ケ−ブルの寿命と定める。同図において、通常のスタッド用溶接電源装置1を使用して、2次ケ−ブル17に定電流を通電する。
本体ケ−ブル17aの劣化状態をチェックするときは、図6の状態から、本体ケーブル接続金具GN12に接続されている本体ケーブル17aを取り外し、溶接電源装置1の一方の出力端子に接続されている溶接ケーブル17に接続する。この断線チェックしたい本体ケーブル17aの断線チェック部分17bの温度上昇値を、熱電対34等を使用した温度上昇値測定器33を使用して予め測定しておき、この初回の温度上昇値を判定温度上昇値Trsとする。
【0144】
次に、実際に、スタッド溶接電流に相当する1秒間通電と5秒間休止とを1サイクルとする約1500[A]の電流を通電する。20サイクル及び100サイクル(以下、N回目という)の通電中に、温度上昇値測定器33を使用して断線チェック部分17bの温度上昇値を測定し、このN回目の測定温度上昇値Trnと判定温度上昇値Trsとを比較して、寿命を推定する。
【0146】
この本出願人の従来方法は、断線の発生しやすい屈曲部分、例えば、図7の断線チェック部分17bを特定しておき、その特定した断線チェック部分17bの温度上昇値を熱電対34等を用いて測定しなければならないために、かなりの労力を必要とする。特に、建築現場での作業では、断線の発生しやすい屈曲部分が多数あるために、多数の屈曲部分の温度上昇値を熱電対34等を用いて測定することは実用的でない。さらに、特定した箇所の温度測定時に、誤差及びバラツキが生じるために、この検討済断線チェック方法は、常に、2次ケ−ブルの被覆外観チェックと併用する必要がある。
【0150】
[H1]溶接機器から不良の原因についてガイドがなかった(以下、第2の課題H1という)。
第2の課題の「溶接機器から不良の原因についてガイドがなかった」従来技術(以下、従来技術Hという)について説明する。
作業者が、仕上がり高さの測定の代わりに、溶接電流値、溶接電源装置の出力端子電圧値、溶接時間、引き上げ距離、押し込み距離等の電気測定値によって、溶接継手の良否を判定する方法では、溶接電流値、溶接時間、溶接ガンの移動量(引き上げ距離及び押し込み距離)等の実際の測定値が、溶接機器動作設定値のとおりであったかどうかをチェックして、溶接継手の良否を判定する。不良と判定したときは、その不良の原因について、従来技術Hでは、溶接機器からガイドがなかったので、作業者の経験に基づいてその不良の原因を究明しなければならない。
【0152】
前述したように、不良発生の原因が多数あるために、作業者が、不良が発生したことを表示、警報等によって知っても、その原因の究明が容易でなく、その原因の究明に多大な労力を要し、作業効率を低下させていた。
【0154】
したがって、第2の課題を解決する目的は、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、作業者が過大な労力を要しない方法で、早い段階で、溶接不良となる原因を除去し、又は作業者が対処しやすいように溶接不良となる原因を表示することにある。
【0160】
【課題を解決するための手段】
第1の課題の不良原因(不良原因A1乃至不良原因G1)を除去する方法及び第2の課題H1の解決手段は、次のとおりである。
[A2]不良原因A1を除去する方法
【0161】
不良原因A1を除去する第1の方法は、スタッドの引き上げ距離L1及び押し込み距離L2をプリセットし、溶接開始前に、溶接ガンGNに取り付けた移動軸GN8を移動させて移動量を検出し、この移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して、その比較値が予め設定した移動許容値の範囲を越えると、異常表示又は警報し、また溶接開始動作を停止し、上記の移動許容値の範囲を越えなかったときは、溶接開始動作をする方法である。
【0162】
不良原因A1を除去する第2の方法は、上記第1の方法の移動量検出値efと移動量設定値erとの比較値が、後述する図9に示すように、移動量設定値erの上限値ermから移動量設定値erの下限値er0までの設定移動量Δer=(erm−er0)と移動量検出値efの上限値efmから移動量検出値efの下限値ef0までの検出移動量Δef=(efm−ef0)との差の移動量設定検出値差(Δer−Δef)であり、予め設定した移動許容値が、上記の移動量設定検出値差(Δer−Δef)と比較する移動量許容値γである方法である。
【0163】
不良原因A1を除去する第3の方法は、上記第1の方法の移動量検出値efと移動量設定値erとの比較値が、移動量設定値erの上限値ermと移動量検出値efの上限値efmとの差の上限移動量設定検出値差(erm−efm)及び移動量設定値erの下限値er0と移動量検出値の下限値ef0との差の下限移動量設定検出値差(er0−ef0)であり、予め設定した移動許容値が、上記の上限移動量設定検出値差(erm−efm)と比較する移動量上限許容値γ1及び下限移動量設定検出値差(er0−ef0)と比較する移動量下限許容値γ2である方法である。
【0164】
不良原因A1を除去する第4の方法は、上記第1の方法の移動量検出値efと移動量設定値erとの比較値が、後述する図10に示すように、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|であり、予め設定した移動許容値が、上記の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|と比較する移動量差許容値δである方法である。
【0165】
不良原因A1を除去する第5の方法は、上記第1の方法の移動量検出値efと移動量設定値erとの比較値が、移動量設定値erの上限値ermから移動量設定値erの下限値er0までの設定移動量Δer=(erm−er0)と移動量検出値efの上限値から移動量検出値efの下限値ef0までの検出移動量Δef=(efm−ef0)との差の移動量設定検出値差(Δer−Δef)であると共に、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|であり、予め設定した移動許容値が、上記の移動量設定検出値差(Δer−Δef)と比較する移動量許容値γであると共に、上記の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|と比較する移動量差許容値δである方法である。
【0166】
不良原因A1を除去する第6の方法は、上記第1の方法の移動量検出値efと移動量設定値erとの比較値が、移動量設定値erの上限値ermと移動量検出値efの上限値efmとの差の上限移動量設定検出値差(erm−efm)及び移動量設定値erの下限値er0と移動量検出値の下限値ef0との差の下限移動量設定検出値差(er0−ef0)であると共に、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|であり、予め設定した移動許容値が、上記の上限移動量設定検出値差(erm−efm)と比較する移動量上限許容値γ1及び下限移動量設定検出値差(er0−ef0)と比較する移動量下限許容値γ2であると共に、上記の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|と比較する移動量差許容値δである方法である。
【0175】
前述した請求項で使用した短縮用語及び以下の説明で使用する短縮用語の意味は次のとおりである。
○主アーク期間標準入熱量Qst38とは、主アーク検出主アーク期間標準入熱量Qst38をいう。
○短絡期間標準入熱量Qst9sとは、押し込み短絡検出期間全体の標準入熱量Qst9sをいう。
○主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavとは、検出間隔ごとの主ア−ク入熱量の平均値ΔQavをいう。
○主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)とは、検出間隔ごとの主ア−ク電圧の平均値Vav(Δt)をいう。
【0176】
○算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3とは、検出間隔ごとの算出平均アーク電圧V3をいう。
○押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pとは、検出間隔ごとの主ア−ク電圧の平均値Vav(Δt)から、押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5を減算した検出間隔ごとのアーク電圧の平均値V3pをいう。
○設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sとは、検出間隔ごとの主ア−ク電圧の平均値Vav(Δt)から、予め設定した設定電圧降下V5sの溶接回路電圧降下V5を減算した検出間隔ごとのアーク電圧の平均値V3sをいう。
【0177】
○検出期間入熱電圧平均値Vqaとは、出力端子電圧Vdから、溶接回路電圧降下V5を減算した実際の入熱となる検出期間中の電圧平均値Vqaをいう。
○主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nとは、上記押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3p又は上記設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを主アーク期間の間に積算した入熱電圧値Vqt3nをいう。
○主アーク電圧標準値Vst38とは、主アーク検出期間全体の主アーク電圧標準値Vst38をいう。
【0179】
○押し込み短絡電流検出間隔平均値Is(Δt)とは、検出間隔ごとの押し込み短絡電流平均値Is(Δt)をいう。
○押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)とは、検出間隔ごとの押し込み短絡電圧の平均値Vs(Δt)をいう。
○短絡電圧標準値Vst9sとは、押し込み短絡検出期間全体の短絡電圧の標準値Vst9sをいう。
○検出期間短絡電圧平均値Vs9nとは、押し込み短絡検出期間全体の短絡電圧の平均値Vs9nをいう。
【0181】
[B2]不良原因B1を除去する方法
不良原因B1を除去する第1の方法は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0182】
不良原因B1を除去する第2の方法は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を積算した主アーク期間積算電圧値Vta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38から算出した主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0183】
不良原因B1を除去する第3の方法は、検出期間主アーク電圧平均値Vav3nから算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0184】
不良原因B1を除去する第4の方法は、不良原因B1を除去する第1の方法において、溶接開始前に、主アーク期間Ta中に短絡が発生しないで良好な溶接結果が得られる(以下、「正常な溶接時の」という)主アーク期間標準入熱量Qst38を予め設定しておき、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定し、この主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)と検出期間中の溶接電流平均値Iavとの積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを積算して主アーク期間積算入熱量Qta3nを算出し、この主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0185】
不良原因B1を除去する第5の方法は、不良原因B1を除去する第2の方法において、溶接開始前に、正常な溶接時の主アーク期間標準入熱量Qst38を予め設定して主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定し、この主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を積算して主アーク期間積算電圧値Vta3nを算出し、この主アーク期間積算電圧値Vta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38を検出期間中の溶接電流平均値Iavで除算した主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0186】
不良原因B1を除去する第6の方法は、不良原因B1を除去する第3の方法において、溶接開始前に、正常な溶接時の主アーク期間標準入熱量Qst38を予め設定して主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定し、この主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を積算して主アーク期間積算電圧値Vta3nを算出し、この主アーク期間積算電圧値Vta3nを検出回数nで除算して検出期間主アーク電圧平均値Vav3n=Vta3n/nを算出し、この検出期間主アーク電圧平均値Vav3nと検出期間中の溶接電流平均値Iavと主アーク積算値検出期間T3nとの積の主アーク期間積算入熱量Qta3nを算出し、この主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0187】
不良原因B1を除去する第7の方法は、不良原因B1を除去する第4の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nと補助アーク期間積算入熱量Qta12との和の引き上げ期間(以下、補助・主ア−ク期間という)積算入熱量Qta1nが、予め設定した補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18に達した時点tnで押し込みを開始する方法であって、溶接開始前に、正常な溶接時の補助ア−ク期間Tp及び補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18を予め設定しておき、補助アーク電流・電圧検出開始時点t1から、補助ア−ク電圧平均値Vav12を測定して、この補助ア−ク電圧平均値Vav12と補助ア−ク電流値Ipと補助ア−ク検出期間T12との積の補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を算出し、次に補助ア−ク電流Ipから主ア−ク電流Iaに切り換えて、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定し、この主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)と検出期間中の溶接電流平均値Iavとの積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを、検出回数n回まで積算して主アーク期間積算入熱量Qta3nを算出し、補助ア−ク期間積算入熱量Qta12と主アーク期間積算入熱量Qta3nとの和の補助・主アーク期間の積算入熱量Qta1nが、上記補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0188】
不良原因B1を除去する第8の方法は、予め設定した補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18から補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を減算して主アーク期間標準入熱量Qst38を算出し、不良原因B1を除去する第5の主アーク期間積算電圧値Vta3nが、この主アーク期間標準入熱量Qst38から算出した主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法であって、溶接開始前に、正常な溶接時の補助ア−ク期間Tp及び補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18を予め設定しておき、補助ア−ク電流・電圧検出開始時点t1から、補助ア−ク電圧平均値Vav12を測定して、この補助ア−ク電圧平均値Vav12と補助ア−ク電流値Ipと補助ア−ク検出期間T12との積の補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を算出し、上記補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18から補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を減算して主ア−ク期間積算入熱量Qta3nを算出しておき、次に補助ア−ク電流Ipから主ア−ク電流Iaに切り換えて、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定し、この主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を積算して主アーク期間積算電圧値Vta3nを算出し、この主アーク期間積算電圧値Vta3nが、先に算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nを検出期間中の溶接電流平均値Iavで除算した主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0189】
不良原因B1を除去する第9の方法は、不良原因B1を除去する第6の検出期間主アーク電圧平均値Vav3nから算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nと補助ア−ク期間積算入熱量Qta12との和の補助・主アーク期間の積算入熱量Qta1nが、予め設定した補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18に達した時点tnで押し込みを開始する方法であって、溶接開始前に、正常な溶接時の補助ア−ク期間Tp及び補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18を予め設定しておき、補助ア−ク電流・電圧検出開始時点t1から、補助ア−ク電圧平均値Vav12を測定して、この補助ア−ク電圧平均値Vav12と補助ア−ク電流値Ipと補助ア−ク検出期間T12との積の補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を算出し、次に補助ア−ク電流Ipから主ア−ク電流Iaに切り換えて、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定し、この主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を積算して主アーク期間積算電圧値Vta3nを算出し、この主アーク期間積算電圧値Vta3nを検出回数nで除算して検出期間主アーク電圧平均値Vav3n=Vta3n/nを算出し、この検出期間主アーク電圧平均値Vav3nと検出期間中の溶接電流平均値Iavと主アーク積算値検出期間T3nとの積の主アーク期間積算入熱量Qta3nを算出し、補助ア−ク期間積算入熱量Qta12と主アーク期間積算入熱量Qta3nとの和の補助・主アーク期間の積算入熱量Qta1nが、上記補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量Qst18に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0190】
不良原因B1を除去する第10の方法は、不良原因B1を除去する第4又は第5又は第6又は第7又は第8又は第9の方法において、溶接開始前に、溶接部の欠陥になる可能性のある微小短絡の一回の発生時間よりも短い数[mSec]の検出間隔Δt及び短絡が発生しないときの検出間隔Δtごとの入熱量標準値(以下、主アーク入熱量検出間隔標準値という)ΔQar及び主アーク期間標準入熱量Qst38を確保する標準入熱許容短絡回数Nstを予め設定しておき、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定して、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)と検出期間中の溶接電流平均値Iavとの積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを算出し、この主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavが主アーク入熱量検出間隔標準値ΔQarよりも低下した短絡回数Nsを計数して、この短絡回数Nsが上記標準入熱許容短絡回数Nst以上になると溶接不良を表示するか又は予め設定した時間だけ主アーク電流Iaの通電時間を追加するか又は溶接不良を表示すると共に上記通電時間を追加する方法である。
【0191】
不良原因B1を除去する第11の方法は、不良原因B1を除去する第4又は第5又は第6又は第7又は第8又は第9又は第10の検出期間中の溶接電流平均値Iavが、定電流出力特性の溶接電源装置に設定した主ア−ク電流設定値である方法である。
【0192】
不良原因B1を除去する第12の方法は、不良原因B1を除去する第4又は第5又は第6又は第7又は第8又は第9又は第10の検出期間中の溶接電流平均値Iavが、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から後で測定した定電流出力特性の溶接電源装置から出力する主ア−ク電流測定値である方法である。
【0193】
不良原因B1を除去する第13の方法は、不良原因B1を除去する第4又は第5又は第6又は第7又は第8又は第9又は第10の検出期間中の溶接電流平均値Iavが、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔Δtごとに算出した主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を検出回数1回からn回まで積算して算出した値である方法である。
【0194】
不良原因B1を除去する第14の方法は、不良原因B1を除去する第7又は第8又は第9の補助ア−ク電流値Ipが、定電流出力特性の溶接電源装置に設定した補助ア−ク電流設定値である方法である。
【0195】
不良原因B1を除去する第15の方法は、不良原因B1を除去する第7又は第8又は第9の補助ア−ク電流値Ipが補助ア−ク電流・電圧検出開始時点t1から測定した定電流出力特性の溶接電源装置から出力する補助ア−ク電流測定値である方法である。
【0201】
[C2]不良原因C1を除去する方法
不良原因C1を除去する第1の方法は、被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、引き上げ期間の後半に、主アーク電流を増加させる方法である。
【0202】
不良原因C1を除去する第2の方法は、引き上げ期間の後半に、主アーク電流を増加させてアーク力を増大させ、溶接電源装置の過負荷時間を短くして、被溶接材の溶融を確実にする方法である。
【0203】
不良原因C1を除去する第3の方法は、上板貫通スタッド溶接の不良原因除去方法において、引き上げ期間の後半に、主アーク電流を増加させてアーク力を増大させ、鉄骨の溶融を確実にする方法である。
【0204】
不良原因C1を除去する第4の方法は、横向きスタッド溶接の不良原因除去方法において、引き上げ期間の後半に、短時間だけ主アーク電流を増加させてアーク力を増大させ、被溶接材の溶融金属を溶融プールに押しつけて、被溶接材の溶融金属とスタッド先端の溶融金属とを離し短絡を防止する方法である。
【0211】
[D2]不良原因D1を除去する方法
不良原因D1を除去する第1の方法は、押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)から算出した短絡期間積算入熱量Qta9nが、予め設定した短絡期間標準入熱量Qst9sに達した時点t9nで押し込み短絡電流を遮断する方法である。
【0212】
不良原因D1を除去する第2の方法は、短絡期間積算電圧値Vta9nが、予め設定した短絡期間標準入熱量Qst9sから算出した短絡電圧標準値Vst9sに達した時点t9nで押し込み短絡電流を遮断する方法である。
【0213】
不良原因D1を除去する第3の方法は、検出期間短絡電圧平均値Vs9nから算出した短絡期間積算入熱量Qta9nが、予め設定した短絡期間標準入熱量Qst9sに達した時点t9nで押し込み短絡電流を遮断する方法である。
【0214】
不良原因D1を除去する第4の方法は、不良原因D1を除去する第1の方法において、図18に示すように、溶接開始前に、短絡電圧検出開始時点t91までに押し込み短絡が開始するときの短絡期間標準入熱量Qst9sを予め設定しておき、短絡電圧検出開始時点t91から、押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を測定し、この押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)と検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isとの積の押し込み短絡入熱量検出間隔平均値ΔQstを積算して短絡期間積算入熱量Qta9nを算出し、この短絡期間積算入熱量Qta9nが、上記短絡期間標準入熱量Qst9sに達した時点t9nで押し込み短絡電流を遮断する方法である。
【0215】
不良原因D1を除去する第5の方法は、不良原因D1を除去する第2の方法において、溶接開始前に、短絡電圧検出開始時点t91までに押し込み短絡が開始するときの短絡期間標準入熱量Qst9sを予め設定しておき、短絡電圧検出開始時点t91から、押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を測定し、この押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を積算して短絡期間積算電圧値Vta9nを算出し、この短絡期間積算電圧値Vta9nが、上記短絡期間標準入熱量Qst9sを検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isで除算した短絡電圧標準値Vst9sに達した時点t9nで押し込み短絡電流を遮断する方法である。
【0216】
不良原因D1を除去する第6の方法は、不良原因D1を除去する第3の方法において、溶接開始前に、短絡電圧検出開始時点t91までに押し込み短絡が開始するときの短絡期間標準入熱量Qst9sを予め設定しておき、短絡電圧検出開始時点t91から、押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を測定し、この押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を積算して短絡期間積算電圧値Vta9nを算出し、この短絡期間積算電圧値Vta9nを検出回数nで除算して検出期間短絡電圧平均値Vs9n=Vta9n/nを算出し、この検出期間短絡電圧平均値Vs9nと検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isと押し込み短絡検出期間Tsdとの積の短絡期間積算入熱量Qta9nを算出し、この短絡期間積算入熱量Qta9nが、上記短絡期間標準入熱量Qst9sに達した時点t9nで押し込み短絡電流を遮断する方法である。
【0217】
不良原因D1を除去する第7の方法は、不良原因D1を除去する第4又は第6の検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isが、定電流出力特性の溶接電源装置に設定した短絡電流設定値である方法である。
【0218】
不良原因D1を除去する第8の方法は、不良原因D1を除去する第4又は第6の検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isが、短絡電圧検出開始時点t91から後で測定した定電流出力特性の溶接電源装置から出力する短絡電流測定値である方法である。
【0219】
不良原因D1を除去する第9の方法は、不良原因D1を除去する第4又は第6の検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isが、短絡電圧検出開始時点t91から、検出間隔Δtごとに算出した短絡電流検出間隔平均値Is(Δt)を検出回数1回からn回まで積算して算出した値である方法である。
【0241】
[E2]不良原因E1を除去する方法
不良原因E1を除去する第1の方法は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算して算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を算出し、この算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を基に算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
上記の構成要件の1例を式で示すと、次のとおりである。
V3=(Vav(Δt)−V5)
Qta3n=Σ[V3・Iav(Δt)]・Δt=Σ[V3・Iav]・Δt
ただし、Iav(Δt)は、主ア−ク電流検出間隔平均値、Iavは検出期間中の溶接電流平均値
【0242】
不良原因E1を除去する第2の方法は、第1の方法に記載の算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に対応する主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
上記の構成要件の1例を式で示すと、次のとおりである。
V3=(Vav(Δt)−V5)
Vqt3n=ΣV3・Δt
Vst38=Qst38/Iav
ただし、Iavは検出期間中の溶接電流平均値
【0243】
不良原因E1を除去する第3の方法は、第1の方法に記載の算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を積算し、この積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを主アーク積算値検出期間T3nで除算した検出期間入熱電圧平均値Vqaと主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を積算した主アーク期間積算電流値Ita3nを主アーク積算値検出期間T3nで除算した検出期間中の溶接電流平均値Iavと主アーク積算値検出期間T3nとの積の主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
上記の構成要件の1例を式で示すと、次のとおりである。
V3=(Vav(Δt)−V5)
Vqt3n=ΣV3・Δt
Vqa=Vqt3n/T3n
Ita3n=ΣIav(Δt)・Δt
Iav=Ita3n/T3n
Qta3n=Vqa・Iav・T3n
ただし、T3nは主アーク積算値検出期間
【0244】
不良原因E1を除去する第4の方法は、初回の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から予め設定した溶接回路電圧降下V5を減算して設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを算出し、この設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを積算した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、2回目以後の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5を減算して押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出し、この押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを積算した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、以後、上記2回目以後の溶接の工程を繰り返す方法である。
【0245】
不良原因E1を除去する第5の方法は、初回の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から予め設定した溶接回路電圧降下V5を減算して設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを算出し、この設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に対応する主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、2回目以後の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5を減算して押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出し、この押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nが、上記主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、以後、上記2回目以後の溶接の工程を繰り返す方法である。
【0246】
不良原因E1を除去する第6の方法は、初回の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から予め設定した溶接回路電圧降下V5を減算して設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを算出し、この設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを主アーク積算値検出期間T3nで除算した検出期間入熱電圧平均値Vqaを算出すると共に、主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を積算した主アーク期間積算電流値Ita3nを主アーク積算値検出期間T3nで除算した検出期間中の溶接電流平均値Iavを算出し、上記検出期間入熱電圧平均値Vqaと上記検出期間中の溶接電流平均値Iavと主アーク積算値検出期間T3nとの積の主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、2回目以後の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5を減算して押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出し、この押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを主アーク積算値検出期間T3nで除算した検出期間入熱電圧平均値Vqaを算出すると共に、主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を積算した主アーク期間積算電流値Ita3nを主アーク積算値検出期間T3nで除算した検出期間中の溶接電流平均値Iavを算出し、上記検出期間入熱電圧平均値Vqaと上記検出期間中の溶接電流平均値Iavと主アーク積算値検出期間T3nとの積の主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、以後、上記2回目以後の溶接の工程を繰り返す方法である。
【0247】
不良原因E1を除去する第7の方法は、不良原因E1を除去する第4から第6までのいずれか1の予め設定した溶接回路電圧降下V5が、予め入力した2次ケーブルの断面積及び長さから算出した設定抵抗値Rsと主ア−ク電流値Iaとの積である方法である。
【0248】
不良原因E1を除去する第8の方法は、不良原因E1を除去する第4から第6までのいずれか1の予め設定した溶接回路電圧降下V5が、溶接回路の電圧降下に相当する予め設定した設定電圧降下V5sである方法である。
【0249】
不良原因E1を除去する第9の方法は、不良原因E1を除去する第4から第6までのいずれか1の押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5が、押し込み短絡電圧平均値V2aである方法である。
【0250】
不良原因E1を除去する第10の方法は、不良原因E1を除去する第4から第6までのいずれか1の押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5が、今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値V2aに、今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)又は検出期間中の溶接電流平均値Iavと今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電流平均値I2aとの比Iav(Δt)/I2a又はIav/I2aを乗算した電圧値である方法である。
【0251】
不良原因E1を除去する第11の方法は、不良原因E1を除去する第4から第6までのいずれか1の押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5が、今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値V2aを、今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電流平均値I2aで除算して算出抵抗値Ra=V2a/I2aを算出し、この算出抵抗値Raと今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)又は検出期間中の溶接電流平均値Iavとの積の電圧値である方法である。
【0252】
不良原因E1を除去する第12の方法は、溶接回路電圧降下V5又は今回以前の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a=V2mから、今回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nを減算した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたときに、今回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2nを、N回目の溶接の押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出するときの押し込み短絡電圧平均値V2aとする不良原因E1を除去する第9の方法である。
【0253】
不良原因E1を除去する第13の方法は、溶接回路電圧降下V5又は今回以前の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a=V2mに今回以前の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)と押し込み短絡電流平均値I2aとの比Iav(Δt)/I2aを乗算した溶接回路電圧降下V5=V5mから、今回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nに今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)と押し込み短絡電流平均値I2aとの比Iav(Δt)/I2aを乗算した溶接回路電圧降下V5=V5nを減算した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたときに、今回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2nを、N回目の溶接の押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出するときの押し込み短絡電圧平均値V2aとする不良原因E1を除去する第10の方法である。
【0254】
不良原因E1を除去する第14の方法は、溶接回路電圧降下V5又は今回以前の溶接で算出した算出抵抗値Ra=Ramと主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の溶接回路電圧降下V5=V5mから、今回の溶接で算出した算出抵抗値Ra=Ranと主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の溶接回路電圧降下V5=V5nを減算した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたときに、今回の溶接で算出した算出抵抗値Ranを、N回目の溶接の押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出するときの算出抵抗値Raとする不良原因E1を除去する第11の方法である。
【0361】
[F2]不良原因F1を除去する方法
不良原因F1を除去する第1の方法は、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した所要の入熱Qrと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作する方法である。
【0362】
不良原因F1を除去する第2の方法は、作業者がスタッドの直径と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した所要の入熱Qrを供給する溶接電流値Iaと溶接時間Taと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作する方法である。
【0363】
不良原因F1を除去する第3の方法は、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した所要の入熱Qrと溶接ガンGNの移動量とを含む第1の溶接機器設定値を算出又は選定し、さらに作業者が追加入力した溶接条件と上記第1の溶接機器設定値とから第2の溶接機器設定値を算出し、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記第1及び第2の溶接機器設定値に従って動作する方法である。
【0364】
不良原因F1を除去する第4の方法は、作業者がスタッドの直径と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した所要の入熱Qrを供給する溶接電流値Iaと溶接時間Taと溶接ガンGNの移動量とからなる第1の溶接機器設定値を算出又は選定し、さらに作業者が追加入力した溶接条件と上記第1の溶接機器設定値とから第2の溶接機器設定値を算出し、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記第1及び第2の溶接機器設定値に従って動作する方法である。
【0365】
不良原因F1を除去する第5の方法は、作業者がスタッドの直径及び横向き姿勢を入力し、さらに横向き姿勢を選択したことによって入力指示される切換後の主ア−ク電流値Ibと(切換前の)主ア−ク電流値Iaとの比の切換溶接電流値比率α=Ib/Ia及び切換後通電期間Tbnと溶接時間Taとの比の切換通電期間比率τ=Tbn/Taを追加入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した所要の入熱Qrを供給する切換前の主ア−ク電流値Iaと溶接時間Taと溶接ガンGNの移動量とからなる第1の溶接機器設定値を算出又は選定し、さらに第1の溶接機器設定値の主ア−ク電流値Iaと溶接時間Taとから第2の溶接機器設定値の切換後の主ア−ク電流値Ibと切換前通電期間T3b及び切換後通電期間Tbnとを算出し、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記第1及び第2の溶接機器設定値に従って動作して、主アーク期間Taの後半に主アーク電流値Iaを増加させる方法である。
【0366】
不良原因F1を除去する第6の方法は、作業者がスタッドの直径及び上板貫通溶接を入力し、さらに上板貫通溶接を選択したことによって入力指示される切換後の主ア−ク電流値Ibと(切換前の)主ア−ク電流値Iaとの比の切換溶接電流値比率α=Ib/Ia及び切換後通電期間Tbnと溶接時間Taとの比の切換通電期間比率τ=Tbn/Taを追加入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した所要の入熱Qrを供給する切換前の主ア−ク電流値Iaと溶接時間Taと溶接ガンGNの移動量とからなる第1の溶接機器設定値を算出又は選定し、さらに第1の溶接機器設定値の主ア−ク電流値Ia及び溶接時間Taと上記追加入力値とから第2の溶接機器設定値の切換後の主ア−ク電流値Ibと切換前通電期間T3b及び切換後通電期間Tbnとを算出し、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記第1及び第2の溶接機器設定値に従って動作して、主アーク期間Taの後半に主アーク電流値Iaを増加させる方法である。
【0367】
不良原因F1を除去する第7の方法は、作業者がスタッドの直径及び上板貫通溶接を入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した所要の入熱Qrを供給する溶接電流値Iaと溶接時間Taと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作し、主アーク期間Taの後半に主アーク電流値Iaを増加させると共に、スタッドの押し込みが開始したとき、スタッドが溶融プ−ルに接触する(突っ込む)までは、比較的速い速度でスタッドを移動し、スタッドが溶融プ−ルに接触した後は、比較的遅い速度でスタッドを移動する方法である。
【0368】
不良原因F1を除去する第8の方法は、作業者がスタッドの直径及び溶接電源装置1から溶接箇所までの距離に関係する2次ケーブルの長さ及び直径、被溶接材の抵抗値等の違いによって変化する「溶接回路電圧降下を補償する」を選択して溶接回路電圧降下V5を入力すると、溶接制御装置3が、出力端子電圧値Vdから溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を算出して、算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3と主ア−ク電流値Iaと溶接時間Taとの積の(溶接回路電圧降下による消費電力P5を含まない)上記入力値に対応した所要の入熱Qr供給する溶接電流値Ia及び溶接時間Taと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定し、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作する方法である。
【0369】
不良原因F1を除去する第9の方法は、スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件と溶接機器設定値との関係を、図26に示すブロック図の溶接制御装置3の記憶回路11に記憶するスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作と、作業者が溶接制御装置3の表示に従って、スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件を入力するスタッド溶接条件選定動作と、作業者が溶接を開始すると、溶接制御装置3が上記作業者の入力した値に応じた上記溶接機器設定値を選定し、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作する溶接機器自動動作とからなる方法である。
【0370】
不良原因F1を除去する第10の方法は、作業者がスタッドの直径と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応したアーク期間全体の標準入熱量Qstと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作し、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から算出したアーク期間積算入熱量Qtaが、上記主アーク期間全体の標準入熱量Qstに達した時点tnで押し込み動作を開始する方法である。
【0371】
不良原因F1を除去する第11の方法は、作業者がスタッドの直径及び横向き姿勢又は上板貫通溶接を入力し、さらに上記横向き姿勢又は上板貫通溶接を選択したことによって入力指示される切換後の主ア−ク電流値Ibと(切換前の)主ア−ク電流値Iaとの比の切換溶接電流値比率α=Ib/Ia及び切換後標準入熱量Qstb8と主アーク期間標準入熱量Qst38との比の切換標準入熱量比率β=Qstb8/Qst38を追加入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した主アーク期間全体の標準入熱量Qstと溶接ガンGNの移動量とを含む第1の溶接機器設定値を算出又は選定し、さらに、第1の溶接機器設定値の主ア−ク電流値Ia及び主アーク期間標準入熱量Qst38と上記追加入力値とから第2の溶接機器設定値の切換後の主ア−ク電流値Ibと切換前標準入熱量Qst3b及び切換後標準入熱量Qstb8とを算出し、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記第1及び第2の溶接機器設定値に従って動作し、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から算出した主アーク期間の積算入熱量Qtaが、上記算出した切換前標準入熱量Qst3bに達した主アーク電流値切換時点tbで、主アーク電流値Iaから切換後の主ア−ク電流値Ibに切換えて通電を続け、上記主アーク期間の積算入熱量Qtaが、上記主アーク期間全体の標準入熱量Qstに達した時点tnで押し込み動作を開始する方法である。
【0372】
不良原因F1を除去する第12の方法は、作業者がスタッドの直径及び溶接電源装置1から溶接箇所までの距離に関係する2次ケーブルの長さ及び直径、被溶接材の抵抗値等の違いによって変化する「溶接回路電圧降下を補償する」を選択して溶接回路電圧降下V5を入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した主アーク期間全体の標準入熱量Qstと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定すると共に、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作し、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を基に算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0373】
不良原因F1を除去する第13の方法は、不良原因F1を除去する第8又は第12の溶接回路電圧降下V5が、作業者が入力した2次ケーブルの断面積及び長さから算出した設定抵抗値Rsと主ア−ク電流値Iaとの積である方法である。
【0374】
不良原因F1を除去する第14の方法は、不良原因F1を除去する第8又は第12の溶接回路電圧降下V5が、作業者が入力した設定電圧降下V5sである方法である。
【0375】
不良原因F1を除去する第15の方法は、不良原因F1を除去する第8又は第12の溶接回路電圧降下V5が、押し込み短絡期間Tsに測定した押し込み短絡電圧平均値V2aである方法である。
【0376】
不良原因F1を除去する第16の方法は、溶接開始前に、下向き姿勢及び横向き姿勢で、被溶接材直接溶接及び上板貫通溶接をする場合の各スタッドの呼び径に対応させた「主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1、押し込み距離L2」の適正値を、溶接条件・機器設定値対応表に書き込むと共に、図12に示すように、後述する数1乃至数3によって算出した正常な溶接時の主アーク期間全体の標準入熱量Qstを、溶接条件・機器設定値対応表に書き込むスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作と、
作業者が、スタッドの呼び径、溶接姿勢(下向き姿勢、横向き姿勢)及び被溶接材配置(被溶接材直接溶接、上板貫通溶接)を選択すると共に、上記溶接条件・機器設定値対応表の中から読み出された溶接機器設定値を選定してCPU内部の主記憶領域に書き込むスタッド溶接条件選定動作と、
溶接を開始すると、CPU内部の主記憶領域に書き込まれた溶接機器設定値に従って、スタッドSを被溶接材Wから引き上げて溶接を開始し、後述する図13に示すように、主アーク電流・電圧検出開始時点t3から測定した主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)と検出期間中の溶接電流平均値Iav又は主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを、後述する数4乃至数7によって算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する溶接機器自動動作とを実行する方法である。
【0377】
不良原因F1を除去する第17の方法は、溶接開始前に、下向き姿勢及び横向き姿勢で、被溶接材直接溶接及び上板貫通溶接をする場合の各スタッドの呼び径に対応させた「主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1、押し込み距離L2」の適正値を、後述する溶接条件・機器設定値対応表に書き込むステップと、数1乃至数3によって算出した主アーク期間全体の標準入熱量Qstを、後述する溶接条件・機器設定値対応表に書き込むステップとからなるスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作と、
作業者がスタッドの呼び径、溶接姿勢(下向き姿勢、横向き姿勢)及び被溶接材配置(被溶接材直接溶接、上板貫通溶接)を選択するステップと、
上記溶接機器設定値(主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1、押し込み距離L2及び標準入熱量Qst)を、上記溶接条件・機器設定値対応表の中から読み出すステップと、
読み出された溶接機器設定値を作業者が選定して、CPU内部の主記憶領域に書き込むステップとからなるスタッド溶接条件選定動作と、
溶接を開始すると、CPU内部の主記憶領域に書き込まれた溶接機器設定値に従って、スタッドSを被溶接材Wから引き上げて補助ア−クを発生させ、補助ア−ク期間Tpが経過した主ア−ク電流通電開始時点t2で、補助ア−ク電流Ipから主ア−ク電流Iaに切り換えて、数4乃至数7によって算出した主アーク期間積算入熱量Qtaを算出するステップと、上記主アーク期間積算入熱量Qtaが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始するステップとからなる溶接機器自動動作とを実行する方法である。
【0381】
[G2]不良原因G1を除去する方法
不良原因G1を除去する第1の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加電圧降下許容値ΔVrを予め定めておき、作業開始時の初回の溶接時に、スタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、初回の押し込み短絡電圧平均値V2a=V21を測定し、次に、溶接毎、例えばN回目にスタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、N回目の押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nを測定して、このN回目の押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nと上記初回の押
し込み短絡電圧平均値V2a=V21との差のN回目の押し込み短絡電圧増加分ΔV2n=V2n−V21を算出し、このN回目の押し込み短絡電圧増加分ΔV2nと上記抵抗増加電圧降下許容値ΔVrとを比較して、上記N回目の押し込み短絡電圧増加分ΔV2nが上記抵抗増加電圧降下許容値ΔVrを越えた時点を、2次ケーブルの交換時期とする方法である。
【0385】
不良原因G1を除去する第2の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加許容値ΔRrを予め定めておき、作業開始時の初回の溶接時に、スタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、押し込み短絡電圧平均値V2a=V21と押し込み短絡電流平均値I2a=I21とを検出して初期抵抗値R1=V21/I21を算出し、次に、溶接毎、例えばN回目にスタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nと押し込み短絡電流平均値I2a=I2nとを検出してN回目抵抗値Rn=V2n/I2nを算出して、このN回目抵抗値Rnと上記初期抵抗値R1との差のN回目抵抗値増加分ΔRn=Rn−R1を算出し、このN回目抵抗値増加分ΔRnと上記抵抗増加許容値ΔRrとを比較して、上記N回目抵抗値増加分ΔRnが上記抵抗増加許容値ΔRrを越えた時点を、2次ケーブルの交換時期とする方法である。
【0387】
不良原因G1を除去する第3の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加許容値ΔRrを予め定めておき、作業開始時の初回の溶接時に、スタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流の通電中の押し込み短絡検出期間Tsdの間、時刻tの押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)を検出して、押し込み短絡電圧瞬時値V(t)を押し込み短絡電流瞬時値I(t)で除算して瞬時抵抗値R(t)= V(t)/I(t)を算出して、この瞬時抵抗値R(t)を累積して、初回の押し込み短絡検出期間Tsdの初期抵抗値R1を算出し、次に、溶接毎、例えばN回目にスタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流の通電中の押し込み短絡検出期間Tsdの間、時刻tの押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)を検出して、押し込み短絡電圧瞬時値V(t)を押し込み短絡電流瞬時値I(t)で除算して瞬時抵抗値R(t)= V(t)/I(t)を算出して、この瞬時抵抗値R(t)を累積して、N回目の押し込み短絡検出期間Tsd内の累積抵抗値Rntを算出し、上記押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)の検出ごとに、上記累積抵抗値Rntと上記初期抵抗値R1との差のN回目溶接時の累積抵抗値増加分ΔRnt=Rnt−R1を算出し、この累積抵抗値増加分ΔRntと上記抵抗増加許容値ΔRrとを比較して、上記累積抵抗値Rntが上記抵抗増加許容値ΔRrを越えたときに、溶接電流を遮断するか、又は2次ケーブルの交換時期である表示をする方法である。
【0390】
不良原因G1を除去する第4の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、2次ケーブルの劣化チェックの保守点検時又は任意の溶接作業開始時に、新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhを予め測定又は算出すると共に、新品の2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗値変化許容値δRを予め定めておき、新品でない2次ケ−ブルを使用して、スタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、押し込み短絡電圧平均値V2a=V21と押し込み短絡電流平均値I2a=I21とを検出して初期抵抗値R1=V21/I21を算出し、上記判定基準抵抗値Rhと比較し、この差の絶対値|R1−Rh|が上記抵抗値変化許容値δRを越えた時点を、2次ケーブルの交換時期とする方法である。
【0393】
不良原因G1を除去する第5の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、2次ケーブルの劣化チェックの保守点検時又は任意の溶接作業開始時に、新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhを予め測定又は算出すると共に、新品の2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗値変化許容値δRを予め定めておき、新品でない2次ケ−ブルを使用して、スタッドを被溶接材に押し込んだ溶接毎、例えばN回目の短絡電流通電中に、N回目の押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nと押し込み短絡電流平均値I2a=I2nとを検出してN回目抵抗値Rn=V2n/I2nを算出し、上記判定基準抵抗値Rhと比較し、この差の絶対値|Rn−Rh|が上記抵抗値変化許容値δRを越えた時点を、2次ケーブルの交換時期とする方法である。
【0396】
不良原因G1を除去する第6の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、溶接開始後に算出した2次ケーブルの算出抵抗値Raのばらつきを検出して、この算出抵抗値Raのばらつきが予め定めた算出抵抗変動許容値ΔRmを超えた時点を、2次ケーブルの交換時期とする方法である。
【0397】
不良原因G1を除去する第7の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの算出抵抗変動許容値ΔRmを予め定めておき、溶接開始後の算出抵抗最大値Rmaと算出抵抗最小値Rmiとの差の算出抵抗最大変動値(Rma−Rmi)が、算出抵抗変動許容値ΔRmを超えた時点を、2次ケーブルの交換時期とする方法である。
【0398】
不良原因G1を除去する第8の方法は、2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの算出抵抗変動許容値ΔRmを予め定めておき、溶接毎、例えばN回目の溶接時に短絡電流を通電してN回目短絡電圧平均値V2a=V2nと短絡電流平均値I2a=I2nとを検出してN回目抵抗値Rn=V2n/I2nを算出して、N回目抵抗値Rnが(N−1)回目までの算出抵抗最大値Rma又は算出抵抗最小値Rmiをこえたときは、このN回目抵抗値Rnを(N−1)回目までの算出抵抗最大値Rma又は算出抵抗最小値Rmiとし、溶接開始後のN回目算出抵抗最大値Rmaと算出抵抗最小値Rmiとの差の算出抵抗最大変動値(Rma−Rmi)が、算出抵抗変動許容値ΔRmを超えた時点を、2次ケーブルの交換時期とする方法である。
【0401】
[H2]第2の課題解決手段
第2の課題解決手段の第1の方法は、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因を表示する方法である。
【0402】
第2の課題解決手段の第2の方法は、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示する方法である。
【0403】
第2の課題解決手段の第3の方法は、スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある原因を除去する方法を実行させ、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示する方法である。
【0404】
第2の課題解決手段の第4の方法は、スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある原因を除去する方法を実行させ、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出した時点で、スタッド溶接機器の次の動作を停止すると共に、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示する方法である。
【0405】
第2の課題解決手段の第5の方法は、スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある頻度の高い発生原因を除去する方法を実行させ、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出した時点で、スタッド溶接機器の次の動作を停止すると共に、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示する方法である。
【0406】
第2の課題解決手段の第6の方法は、第2の課題解決手段の第5の方法の溶接不良となるおそれがある頻度の高い発生原因を除去する方法が、入熱不足が発生しないように、主ア−ク電圧検出間隔平均値から算出した主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込み動作を開始する方法である。
【0407】
第2の課題解決手段の第7の方法は、第2の課題解決手段の第5の方法の溶接不良となるおそれがある頻度の高い発生原因を除去する方法が、スタッドの引き上げ距離L1及び押し込み距離L2をプリセットし、溶接開始前に、溶接ガンGNに取り付けた移動軸GN8を移動させて移動量を検出し、この移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して、予め設定した移動許容値の範囲を越えると、異常表示又は警報し、また溶接開始動作を停止し、上記の移動許容値の範囲を越えなかったときは、溶接開始の動作をする方法である。
【0408】
第2の課題解決手段の第8の方法は、第2の課題解決手段の第5の方法の溶接不良となるおそれがある頻度の高い発生原因を除去する方法が、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した必要な入熱Qrと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作する方法である。
【0409】
第2の課題解決手段の第9の方法は、第2の課題解決手段の第5の方法の溶接不良となるおそれがある第1の発生原因を除去する方法及び第2の発生原因を除去する方法を実行し、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、第1及び第2以外の残りの溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示する方法である。
【0410】
第2の課題解決手段の第10の方法は、第2の課題解決手段の第4の方法の溶接不良となるおそれがある複数の発生原因を除去する方法を実行し、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、実行した複数の発生原因を除去する方法以外の残りの溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示する方法である。
【0420】
【発明の実施の形態】
第1の課題を解決するために、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となる原因を除去すると共に、第2の課題を解決するために、溶接不良が発生するおそれがあるときは、下記のとおり、「不良原因表示」をする。
【0422】
(1)保守点検時又は溶接開始前に、次のとおり、溶接不良が発生しないようにし、溶接不良が発生するおそれがあるときは「不良原因表示」をする。
▲1▼保守点検時又は溶接開始前に、不良原因G1を除去する方法に記載した2次ケーブル素線の断線による抵抗値増加分が設定値を越えたときは、「2次ケーブル素線の断線が進行している」不良原因表示をする。
【0424】
▲2▼溶接開始前に、不良原因F1を除去する方法に記載した「作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが溶接機器設定値に従って動作する溶接機器動作の自動設定」をし、「不良原因表示」の代わりに、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力するための表示に従って、選択するための「設定手順表示」をする。
【0426】
(2)アークを発生して溶接を開始する前に、次のとおり、溶接不良が発生するおそれがないかどうかの確認をして、溶接不良が発生するおそれがあるときは「不良原因表示」をする。
▲1▼アーク発生前に、不良原因A1を除去する方法に記載した移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して、予め設定した移動許容値の範囲を越えると、「溶接ガン円滑移動異常表示」又は警報し、また溶接開始動作を停止する。
【0428】
(3)アークを発生して溶接を開始してから押し込み動作までに、次のとおり、溶接不良が発生する原因を除去する。
▲1▼初回溶接直後に、不良原因G1を除去する方法に記載した2次ケーブル素線の断線による抵抗値増加分が設定値を越えたときは、「2次ケーブル素線の断線が進行している」不良原因表示をする。
【0430】
▲2▼前述した溶接開始前に自動設定した主アーク期間標準入熱量Qst38になるまで通電させることによって、アークを発生してから押し込み動作までの入熱過不足による溶接不良の発生を除去することができる。
▲3▼溶接中に、不良原因E1を除去する方法に記載した「スタッド溶接のケーブル電圧降下補償方法」を実施すると、アークを発生してから押し込み動作までの溶接回路電圧降下による溶接不良の発生を除去することができる。
【0432】
▲4▼溶接中に、不良原因G1を除去する方法に記載した2次ケーブル素線の断線が設定値を越えたときは、「2次ケーブル素線の断線が進行している」不良原因表示をする。
【0440】
(4)アーク発生中に、不良発生のおそれが生じたときは、溶接電流を遮断し押し込み動作を中止して、次のとおり、「不良発生表示」をする。
▲1▼不良原因G1を除去する方法において、累積抵抗値増加分ΔRntが、抵抗増加許容値ΔRrを越えたときに、溶接電流を遮断し押し込み動作を中止して「不良発生表示」をする。
【0442】
(5)押し込み動作をして溶接を終了した後に、溶接ガンの押し込み距離が設定値の範囲を超えていたときは、溶接不良の発生の有無を判別して、溶接不良が発生したと考えられる「不良発生原因」を表示する。
【0450】
【実施例】
[3]溶接不良となる原因を除去する方法
前述した不良原因A1乃至不良原因G1に記載した溶接不良が発生しないようにするために、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となる原因を除去する方法は、次のとおりである。
【0460】
[A3]不良原因A1の除去「スタッド溶接ガン円滑移動確認」の実施例
不良原因A1を除去する方法は、前述したように、スタッド溶接のアーク発生前に、溶接ガンが設定値のとおりに、円滑かつ正確に動作することを、作業性を損なわずに自動的にチェックする方法であって、スタッドの引き上げ距離L1及び押し込み距離L2をプリセットし、溶接開始前に、溶接ガンGNに取り付けた移動軸GN8を移動させて移動量を検出し、この移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して、予め設定した移動許容値の範囲を越えると、異常表示又は警報し、また溶接開始動作を停止し、上記の移動許容値の範囲を越えなかったときは、溶接開始動作をする方法である。
【0461】
不良原因A1を除去する第1の方法を実施するガン移動確認制御装置4は、溶接ガンGNに取り付けて移動軸GN8の移動量を検出する移動量検出回路MCと、スタッドの引き上げ距離L1及び押し込み距離L2をプリセットする引き上げ距離及び押し込み距離設定回路(以下、移動量設定回路という)10と、溶接開始前に上記の移動軸GN8を確認移動させる移動量設定値erを設定する確認移動設定回路37と、溶接開始前に上記の移動軸GN8を移動させて移動量検出回路MCによって検出した移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して、予め設定した移動許容値の範囲を越えると、異常表示又は警報し、または溶接開始動作を停止する回路とを備え、上記の移動許容値の範囲を越えなかったときは、溶接開始動作をする装置である。
【0462】
不良原因A1を除去する第2の方法を実施するガン移動確認制御装置4は、予め設定した移動許容値として移動量許容値γを設定する確認移動設定回路37と、移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して比較信号を出力する比較回路44と、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0との設定移動量Δer=(erm−er0)と移動量検出値efの上限値efmと移動量検出値efの下限値ef0との検出移動量Δef=(efm−ef0)との差の移動量設定検出値差(Δer−Δef)を算出して、この移動量設定検出値差(Δer−Δef)が移動量許容値γを越えると、異常信号を出力する移動上下限異常判定回路45とを備え、この異常信号の出力によって異常表示又は警報し、または溶接開始動作を停止し、異常信号の出力がなかったときは、溶接開始動作をする装置である。
【0463】
不良原因A1を除去する第3の方法を実施するガン移動確認制御装置4は、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0と予め設定した移動許容値として移動量上限許容値γ1と移動量下限許容値γ2とを設定する確認移動設定回路37と、移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して比較信号を出力する比較回路44と、移動量設定値erの上限値ermと移動量検出値efの上限値efmとの差の上限移動量設定検出値差(erm−efm)を算出して、この上限移動量設定検出値差(erm−efm)が上記の移動量上限許容値γ1を越えると異常信号を出力し、移動量設定値erの下限値er0と移動量検出値efの下限値ef0との差の下限移動量設定検出値差(er0−ef0)を算出して、この下限移動量設定検出値差(er0−ef0)が上記の移動量下限許容値γ2を越えると異常信号を出力する移動上下限異常判定回路45とを備え、この異常信号の出力によって異常表示又は警報し、または溶接開始動作を停止し、この異常信号の出力がなかったときは、溶接開始動作をする装置である。
【0464】
不良原因A1を除去する第4の方法を実施するガン移動確認制御装置4は、移動量差許容値δを設定する確認移動設定回路37と、移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して比較信号を出力する比較回路44と、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|を算出して、この移動量比較値の絶対値|er1−ef1|が上記の移動量差許容値δを越えると異常信号を出力する移動量比較異常判定回路46とを備え、この異常信号の出力によって異常表示又は警報し、または溶接開始動作を停止し、この異常信号の出力がなかったときは、溶接開始動作をする装置である。
【0465】
不良原因A1を除去する第5の方法を実施するガン移動確認制御装置4は、予め設定した移動許容値として移動量許容値γ及び移動量差許容値δを設定する確認移動設定回路37と、移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して比較信号を出力する比較回路44と、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0との設定移動量Δer=(erm−er0)と移動量検出値efの上限値efmと移動量検出値efの下限値ef0との検出移動量Δef=(efm−ef0)との差の移動量設定検出値差(Δer−Δef)を算出して、この移動量設定検出値差(Δer−Δef)が移動量許容値γを越えると、異常信号を出力する移動上下限異常判定回路45と、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|を算出して、この移動量比較値の絶対値|er1−ef1|が上記の移動量差許容値δを越えると異常信号を出力する移動量比較異常判定回路46とを備え、これらいずれかの異常信号の出力によって異常表示又は警報し、または溶接開始動作を停止し、異常信号の出力がなかったときは、溶接開始動作をする装置である。
【0466】
不良原因A1を除去する第6の方法を実施するガン移動確認制御装置4は、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0及び予め設定した移動許容値として移動量上限許容値γ1と移動量下限許容値γ2及び移動量差許容値δを設定する確認移動設定回路37と、移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して比較信号を出力する比較回路44と、移動量設定値erの上限値ermと移動量検出値efの上限値efmとの差の上限移動量設定検出値差(erm−efm)を算出して、この上限移動量設定検出値差(erm−efm)が上記の移動量上限許容値γ1を越えると異常信号を出力し、移動量設定値erの下限値er0と移動量検出値efの下限値ef0との差の下限移動量設定検出値差(er0−ef0)を算出して、この下限移動量設定検出値差(er0−ef0)が上記の移動量下限許容値γ2を越えると異常信号を出力する移動上下限異常判定回路45と、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|を算出して、この移動量比較値の絶対値|er1−ef1|が上記の移動量差許容値δを越えると異常信号を出力する移動量比較異常判定回路46とを備え、これらいずれかの異常信号の出力によって異常表示又は警報し、または溶接開始動作を停止し、この異常信号の出力がなかったときは、溶接開始動作をする装置である。
【0470】
図8は、アナログ信号によって、移動量設定値erと移動量検出値efとを比較するスタッド溶接ガン移動装置を示す図である。以下、不良原因A1を除去する方法の実施例を図8を参照して説明する。
この図8に、溶接電源装置1と溶接制御装置3と不良原因A1を除去する方法の確認移動設定回路37及びガン移動確認制御装置4を含むスタッド溶接ガン移動装置とが記載されている。
【0472】
不良原因A1を除去する方法は、図8に示すように、溶接電源装置1と溶接制御装置3と不良原因A1を除去する方法を実施するスタッド溶接ガン移動装置とによって実施する。
不良原因A1を除去する方法を実施する制御回路は、通常の溶接制御装置3及びガン移動確認制御装置4から成る。このガン移動確認制御装置4は、通常の溶接中の溶接ガンの移動量を設定する移動量設定回路10及び不良原因A1を除去する方法の溶接作業開始前に溶接ガンの正常移動を確認する値を設定する確認移動設定回路37等及び不良原因A1を除去する方法の溶接作業開始前に溶接ガンの正常・異常移動を判定する後述する回路37及び回路43乃至48から成る。
【0474】
通常の溶接中の溶接ガンの移動量を設定する移動量設定回路10は、スタッドの引き上げ距離L1及び押し込み距離L2をプリセットして、溶接中の溶接ガンの移動量を移動指令回路43に記憶する。
【0476】
不良原因A1を除去する方法の確認移動設定回路37は、全移動範囲又は全移動範囲から正常移動を確認したい範囲(以下、確認移動範囲という)及び移動量許容値γ及び移動量上下限許容値γ12及び移動量差許容値δの少なくとも1つの移動許容値を設定して、移動指令回路43に記憶する。
【0478】
不良原因A1を除去する方法のガン移動確認制御装置4は、スタッドSを保持する移動軸GN8の移動量を検出する移動量検出回路MCを溶接ガンGNに設けると共に、この移動量検出回路MCによって検出した確認移動範囲の移動量検出値efと確認移動範囲の移動量設定値erとから、上記の設定した移動量許容値γ及び移動量上下限許容値γ12及び移動量差許容値δの範囲内にあるかどうかを判定する。
【0480】
上記のいずれか1以上の移動許容値の範囲を越えると、移動上下限異常判定回路45又は移動量比較異常判定回路46によって、溶接ガンGN及び制御装置が正常動作をしていないこと検出して、表示回又は警報回路(以下、表示回路という)12が異常表示又は警報し、また溶接動作禁止回路18が溶接開始動作を停止する。
【0482】
溶接ガン及び制御装置が正常動作をしていない異常表示又は警報がなかったときは、溶接開始動作が停止にならないので、通常の溶接作業の制御回路によってスタッド溶接をする。
通常の溶接作業は、溶接作業を開始するために、溶接ガンに保持したスタッドSの端部及びフェル−ルFを被溶接材Wに当接させ、溶接開始終了スイッチ13を押して、通電開始信号を出力してサ−ボモ−タ24を動作させるためのモ−タ駆動回路26を起動すると共に、溶接電源装置1を起動させて、スタッドSと被溶接材Wとに所定の時間、溶接出力を供給する。
【0484】
最初に、図8を参照して、通常の移動量設定回路、不良原因A1を除去する方法のガン移動確認制御装置4及び通常の溶接作業の制御回路について、順次に説明する。
【0486】
[通常の移動量設定回路]
通常の溶接中の溶接ガンの移動量を設定する移動量設定回路10は、スタッドの引き上げ距離L1及び押し込み距離L2をプリセットして、溶接中の溶接ガンの移動量を移動指令回路43に記憶する。
したがって、移動量は、プリセットした引き上げ距離L1及び押し込み距離L2から定まる。
【0490】
[不良原因A1を除去する方法の確認移動設定回路]
不良原因A1を除去する方法の確認移動設定回路37は、全移動範囲又は確認移動範囲と、移動量許容値γ及び移動量上下限許容値γ12及び移動量差許容値δの少なくとも1つの移動許容値と、確認する頻度とをプリセットして、移動指令回路43に記憶する。
【0492】
(1)確認移動範囲の設定
本来、設定した移動量だけ正常に移動すれば、設定した移動量の範囲内で、溶接ガンの移動量が不足したり、円滑な移動がされなかったことが原因で、溶接不良を発生してしまうことはない。しかし、設定した移動量の範囲内で、正常に移動することを確認した場合、潜在している異常状態を前もって、発見して未然に不良の溶接スタッドの発生を阻止する可能性が低くなる。
そこで、設定した移動量よりも大の正常移動を確認したい範囲(確認移動範囲)について、正常に移動することを確認すると、それだけ潜在している異常状態を、前もって発見して未然に不良の溶接スタッドの発生を阻止する可能性が高くなる。
【0494】
最も、望ましい確認移動範囲は全移動範囲であるが、全移動範囲について正常移動する確認をするまでもないとき、又は移動させることができないときは、確認移動範囲を、確認移動設定回路37に設定する。
全移動範囲を正常移動しないことが分かっているが、確認移動範囲又は設定した移動量の正常動作だけを、高頻度で慎重に確認してもよい。最小限必要な確認移動範囲は、設定した移動量の範囲である。
【0496】
確認移動設定回路37に、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0との設定移動量をΔer=(erm−er0)として、例えば、全移動範囲15[mm]を設定したときに、後述する移動量検出値efの上限値efmと移動量検出値efの下限値ef0との検出移動量Δef=(efm−ef0)を検出したとき、移動量設定検出値差(Δer−Δef)と比較する移動量許容値γ、例えば2[mm]を設定する。
また、例えば、8[mm]の確認移動範囲の移動を確認するときに、移動量許容値γ、例えば1[mm]を確認移動設定回路37に設定する。
【0498】
確認移動範囲の設定は、設計上、上記の全移動範囲、設定した移動量よりも大の正常移動を確認したい範囲又は設定した移動量のいずれか1つを固定したり、作業者が選択しないときは、いずれか1つをデフォルトにしたりすることもできる。
【0500】
(2)移動許容値の設定
移動量許容値γ又は移動量上下限許容値γ12又は移動量差許容値δの移動許容値の設定について説明する。
【0502】
▲1▼移動量許容値γの設定
上記の確認移動設定回路37に、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0との設定移動量をΔer=(erm−er0)として、例えば、全移動範囲15[mm]を設定したときに、後述する移動量検出値efの上限値efmと移動量検出値efの下限値ef0との検出移動量Δef=(efm−ef0)を検出したとき、移動量設定検出値差(Δer−Δef)と比較する移動量許容値γ、例えば2[mm]を設定する。このとき、検出移動量Δefが13[mm]であれば、移動量設定検出値差(Δer−Δef)=2[mm]となる。
【0504】
▲2▼移動量上下限許容値γ12の設定
例えば、全移動範囲15[mm]の移動を確認するときに、移動量設定値erの上限値ermとして15[mm]を、確認移動設定回路37に設定し、移動量設定値erの下限値er0として0[mm]を設定する。次に、後述する移動量検出値efの上限値がefmであり、移動量検出値efの下限値がef0であったとき、上限移動量設定検出値差(erm−efm)と比較する移動量上限許容値γ1として、例えば2[mm]を設定し、また下限移動量設定検出値差(er0−ef0)と比較する移動量下限許容値γ2として、例えば1[mm]を設定する。
このとき、測定した移動量検出値efのefmが14[mm]であり、移動量検出値efの下限値ef0が1[mm]であったとき、上限移動量設定検出値差(erm−efm)は1[mm]となり、下限移動量設定検出値差(er0−ef0)は1[mm]となる。
【0506】
▲3▼移動量差許容値δの設定
上記の確認移動設定回路37に、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0との設定移動量をΔer=(erm−er0)として、例えば、全移動範囲15[mm]を設定したときに、後述する移動中の任意の時点tm1において、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|として、移動量差許容値δ、例えば、0.5[mm]を設定する。
このとき、検出間隔Δtごとに測定しているときの移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|が、0.5[mm]を越えないかどうかを判定する。
【0508】
(3)確認する頻度の設定
確認移動の実施は、溶接ガンにスタッドを保持させるごとに行う必要はなく、予め設定した回数ごと又は作業休止後の最初の溶接開始直前又はこれら両者で行えばよい。この確認移動の実施は、移動指令回路43等から、「確認移動の実施」をするように、表示回路12等に信号を出力させてもよい。作業者は、この表示又は警報があったときに、移動範囲確認スイッチ19を押して正常移動をするかどうかの確認動作を実行する。
【0510】
[不良原因A1を除去する方法のガン移動確認制御装置4]
移動範囲確認スイッチ19を押すと、サ−ボモ−タ24によって、モ−タ可動部25がZ1方向に、確認移動範囲の設定値だけ移動する。
【0512】
図9(A)は移動量設定値erの時間経過を示す図であり、同図(B)は移動量検出値efが移動量設定値erに追従している移動量検出信号efの時間経過を示す図である。
同図を参照して、移動範囲確認スイッチ19を押して正常移動をするかどうかの確認動作について説明する。
【0514】
(1)設定移動量及び移動量許容値を設定した場合
設定移動量Δer=(erm−er0)、例えば、全移動範囲15[mm]を、確認移動設定回路37に設定して、検出移動量Δef=(efm−ef0)を検出したときに、この移動量設定検出値差(Δer−Δef)と移動量許容値γ、例えば2[mm]と比較する。このとき、検出移動量Δefが13[mm]であれば、移動量設定検出値差(Δer−Δef)=2[mm]となり、移動量許容値γ=2[mm]となる。
【0516】
上記の例では、確認移動範囲内での移動が正常に動作すれば、移動量設定値erと移動量検出値efとの差の移動量設定検出値差(Δer−Δef)=2[mm]は、移動量許容値γ=2[mm]を越えていないので、正常移動と判定する。
この範囲を越えると、溶接動作禁止回路18によって溶接開始動作を停止して、表示回路12によって作業者に知らせる。
【0518】
ここで、さらに、上記の移動量許容値γについて詳細に説明する。移動範囲確認スイッチ19を押して、設定移動量Δer=(erm−er0)を移動指令回路43から呼び出して、この呼び出した移動量設定信号erを出力する。
この移動量設定信号erによって、確認移動中の溶接ガンは移動して、移動量検出回路MCが出力する移動量検出信号Mc=efを出力する。
【0520】
移動量検出値efの上限値efmと移動量検出値efの下限値ef0との検出移動量Δef=(efm−ef0)を検出する。この検出した検出移動量Δefと設定移動量をΔerとを比較回路44によって比較して、その差の移動量設定検出値差(Δer−Δef)を移動上下限異常判定回路45に出力する。
【0522】
移動量設定検出値差(Δer−Δef)が予め設定した移動量許容値γを越えたとき、移動上下限異常判定回路45は移動上下限異常信号S45を出力する。OR回路47は、移動上下限異常信号S45が入力されたときに、異常信号S47を出力する。
【0524】
この異常信号S47を、表示回路12に出力して異常を作業者に知らせる。また、この異常信号S47を、NOT回路48を通じて溶接動作禁止回路18に出力して、次の溶接動作の開始を停止させる。
【0526】
移動量設定検出値差(Δer−Δef)が、移動量許容値γを越えていないときは、後述するように、作業者が溶接開始終了スイッチ13を押すことによって、記憶した移動指令回路43から、所定の溶接作業を行うための引き上げ距離L1及び押し込み距離L2の設定値を呼び出し、通常のスタッド溶接を開始することができる。
【0528】
この設定移動量及び移動量許容値を設定した場合には、ポテンショメ−タ自体又は取り付けの不良、フィードバック系回路の不良、溶接ガンの機械的な引っかかり、制御ケーブルの接続不良等を発見することができる。
【0530】
この設定移動量及び移動量許容値を設定した場合は、設定が簡単であるが、異常移動が発生したとき、移動量検出値の上限値efm側に原因があるのか、移動量検出値の下限値ef0側に原因があるのか、移動量設定値の上限値erm側に原因があるのか、移動量設定値erの下限値er0側に原因があるのかが不明であって、別の方法で調べなければならない。
次に、異常移動が発生したとき、上記4つのいずれの側のどこに原因があるのかも同時に判定する方法について説明する。
【0540】
(2)移動量設定値の上限値と移動量設定値の下限値及び移動量上下限許容値を設定した場合
例えば、全移動範囲15[mm]の移動を確認するときに、移動量設定値erの上限値ermとして15[mm]を、確認移動設定回路37に設定し、移動量設定値erの下限値er0として0[mm]を設定する。次に、移動量検出値efの上限値がefであり、移動量検出値efの下限値がef0であったとき、上限移動量設定検出値差(erm−efm)と比較する移動量上限許容値γ1として、例えば2[mm]を設定し、また下限移動量設定検出値差(er0−ef0)と比較する移動量下限許容値γ2として、例えば1[mm]を設定する。
このときに、測定した移動量検出値efのefmが14[mm]であり、移動量検出値efの下限値ef0が1[mm]であったとき、上限移動量設定検出値差(erm−efm)は1[mm]となり、下限移動量設定検出値差(er0−ef0)は1[mm]となる。
【0542】
上限移動量設定検出値差(erm−efm)が移動量上限許容値γ1を越えるか、下限移動量設定検出値差(er0−efO)が移動量下限許容値γ2を越えたとき、移動上下限異常判定回路45は移動上下限異常信号S45を出力する。OR回路47は移動上下限異常信号S45が入力されたときに、異常信号S47を出力する。
【0544】
上記のように、異常信号S47を出力する場合として、ポテンショメ−タGN3aの設置位置がずれたり、ポテンショメ−タGN3aから溶接制御装置3までの信号線の断線等が生じると、移動量検出値の下限値ef0から移動量検出値の上限値efmまでの範囲を越える。
移動上下限異常判定回路45は、例えばウインドコンパレ−タ等で構成され、ポテンショメ−タGN3aによって測定した移動量検出値efが、ef0≦ef≦efmのとき正常である。この範囲を越えると溶接動作禁止回路18によって溶接開始動作が停止して、表示回路12によって作業者に知らせる。
【0546】
この設定移動量及び移動量許容値を設定した場合には、ポテンショメ−タ自体又は取り付けの不良、フィードバック系回路の不良、溶接ガンの機械的な引っかかり、制御ケーブルの接続不良等を発見することができる。
【0548】
前述した(1)及び(2)に記載した「設定移動量及び移動量許容値を設定した場合」及び「移動量設定値の上限値と移動量設定値の下限値及び移動量上下限許容値を設定した場合」は、いずれも、前述した(1)及び(2)に記載した効果を有しているが、溶接ガンの移動が円滑に行われなく、部分的に機械的な引っかかりがあっても、確認範囲の最終位置において、移動量許容値又は移動量上下限許容値を越えていなければ正常移動と判別される。しかし、溶接ガンの移動中に部分的に機械的な引っかかりがあって、円滑に移動しないときは、スタッドが短絡したり、傾斜して片溶けを生じたりして、溶接スタッドが不良になることがある。
次に、そのような部分的に機械的な引っかかりがあったときでも、異常移動であると判定する方法について説明する。
【0550】
(3)設定移動量及び移動量差許容値を設定した場合
溶接ガン可動部が、移動量検出値の下限値ef0から移動量検出値の上限値efmまでの確認移動範囲を円滑に移動し、その全移動範囲の移動量設定値erと移動量検出値efとが、移動量差許容値δの範囲内にあるかどうかをマニュアル操作又は自動操作で確認しなければならない。
【0552】
図10は、移動量設定信号erと移動量検出信号efとの差の移動量比較値(er−ef)の絶対値が、移動量差許容値δよりも大のときの移動量設定信号er及び移動量検出信号efの時間経過を示す図である。
【0554】
移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0との設定移動量をΔer=(erm−er0)として、例えば、全移動範囲15[mm]を、確認移動設定回路37に設定したときに、図10に示すように、移動中の任意の時点tm1において、移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|として移動量差許容値δ、例えば、0.5[mm]を設定する。このとき、検出間隔Δtごとに測定しているときの移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|が、0.5[mm]を越えないかどうかを判定する。
【0556】
前述した検出間隔Δtごとに測定しているときの移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号er1と移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号ef1との差の移動量比較値の絶対値|er1−ef1|が、移動量差許容値δの範囲を越えると、図8に示す移動量比較異常判定回路46は、移動量比較異常信号S46を出力する。OR回路47は、移動量比較異常信号S46が入力されたときに、異常信号S47を出力する。
この異常状態を検出した場合は、サ−ボモ−タ24、サ−ボドライバ、移動量検出回路MC等の異常である。この異常を検出したとき、溶接動作禁止回路18は、溶接動作禁止信号S18を出力して、溶接開始動作を停止し、同時に作業者に異常を知らせるための表示回路12に出力する。
【0558】
上記の説明では、OR回路47は、移動量比較異常判定回路46から移動量比較異常信号S46が入力されるか、又は移動上下限異常判定回路45から移動量上下限異常信号S45が入力されるかのいずれか一方について説明したが、前述した(1)の設定移動量及び移動量許容値を設定した場合及び(2)の移動量設定値の上限値と移動量設定値の下限値及び移動量上下限許容値を設定した場合及び(3)の設定移動量及び移動量差許容値を設定した場合及び(1)乃至(3)の2つ又は3つを同時に採用したときには、移動上下限異常信号S45又は移動量比較異常信号S46のいずれか一方又は両方がOR回路47に入力されたときに、異常信号S47を出力する。
【0560】
[通常の溶接作業の制御回路]
図8において、溶接電源装置1は、3相交流電源Aから交流電力を入力して整流し、スタッド溶接に適した特性の直流電力に変換して出力する。溶接制御装置3は、溶接電源装置1を制御して、スタッドS及び被溶接材Wに溶接に適した出力電流及び出力電圧を供給する。
【0561】
通常の溶接作業は、溶接ガンの溶接開始終了スイッチ13を押して、通電開始信号を出力してサ−ボモ−タ24を動作させるためのモ−タ駆動回路26を起動すると共に、溶接電源装置1を起動させて、スタッドSと被溶接材Wとに所定の時間、溶接出力を供給する。
【0562】
上記モ−タ駆動回路26が起動すると、サ−ボモ−タ24によって、モ−タ可動部25がZ1方向に予め設定した引き上げ距離L1だけ移動して、スタッドSが、Z1軸方向に引き上げ距離L1だけ引き上げられ、この引き上げ直前に、溶接電流を通電してア−クを発生させる。
【0563】
設定時間が経過した後、スタッドSをZ2方向に移動させて、スタッドSを押し込み距離L2だけ押し込んでスタッド溶接を終了する。
このとき、スタッドSを設定値のとおりに正常な押し込み距離L2だけ押し込むことができないときは、適正な溶接結果を得ることはできない。
【0564】
図11は、マイクロプロセッサを用いてデジタル信号によって移動量設定値erと移動量検出値efとを比較する溶接ガン移動装置を示す図である。
前述した図8は、アナログ信号によって移動量設定値erと移動量検出値efとを比較する溶接ガン移動装置であったが、図11は、マイクロプロセッサを用いてデジタル信号で比較する溶接ガン移動装置である。
【0565】
図11において、図8と異なる回路は次のとおりである。図11の溶接ガン移動装置は、図8の移動指令回路43、比較回路44、移動上下限異常判定回路45、移動量比較異常判定回路46、OR回路47及びNOT回路48の機能も備えたマイクロプロセッサ50を使用すると共に、A/D変換回路51及びD/A変換回路52を使用している。
このマイクロプロセッサ50を使用した図11の溶接ガン移動装置の動作は、図8の移動指令回路43乃至NOT回路48の機能と同一であるので説明を省略する。
【0566】
また、図8又は図11において、移動量検出回路MCの入力信号として、ポテンショメ−タ等のアナログ出力信号の代わりに、ロ−タリエンコ−ダ等のデジタル出力信号を用いてもよい。図11の場合は、A/D変換回路51は不要になり、図8の場合は、D/A変換回路52が必要になる。
【0570】
[B3]主アーク期間中の短絡発生による入熱不足の補償
不良原因B1を除去する方法は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を基に算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法である。
【0571】
[図12の説明]
図12(A)は、正常な溶接時の検出期間中の溶接電流平均値Iavを算出する説明図であり、同図(B)は、正常な溶接時の検出間隔Δtごとに主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を算出する説明図であり、同図(C)は正常な溶接時のスタッド先端の移動量Mを示す図である。
【0572】
同図(A)に示すように、補助ア−ク電流通電開始時点t0において、溶接開始終了スイッチ13を押して補助ア−ク電流Ipの通電を開始すると共に、スタッドSを被溶接材Wから引き上げて補助ア−クを発生させる。(以下、溶接開始終了スイッチ13を押して補助ア−クを発生させる。という)
次に、主ア−ク電流通電開始時点t2において、補助ア−ク電流Ipから主ア−ク電流Iaに切り換える。前述した主ア−ク電流通電開始時点t2直後の主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点t8までの主アーク入熱標準値設定期間T38に、各時刻tの溶接電圧値V(t)を検出して、短絡が発生しないときの主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を算出する。同様に、各時刻tの溶接電流値I(t)を検出して、短絡が発生しないときの主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を算出する。
【0573】
[数1の乃至数3の説明]
図12において、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点t8までの間、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)及び主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を算出して、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを数1によって算出する。
【0574】
【数1】
【0575】
図12(A)及び(B)に示すように、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点t8までの正常な溶接時の検出期間全体の標準入熱量Qstを算出する式について説明する。
数2の右辺の1番目の式によって、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点t8まで積算して検出期間全体の標準入熱量Qstを算出する。
【0576】
【数2】
【0577】
図12(A)及び(B)に示すように、上記の主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の検出間隔Δtの検出開始時点はt01であり、主ア−ク電流・電圧検出終了時点t8の検出間隔Δtの検出開始時点はt0nである。したがって、1回目の検出間隔Δtの検出開始時点t01から検出回数n回目の検出間隔Δtの検出開始時点t0nまでの検出期間全体の標準入熱量Qstを、数2の右辺の2番目の式によって算出してもよい。
【0578】
また、検出期間全体の標準入熱量Qstを上記の数2によって算出する代わりに、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の1回目の検出間隔Δtから主ア−ク電流・電圧検出終了時点t8の検出回数n回目の検出間隔Δtまでの検出期間全体の標準入熱量Qstを、数3によって算出してもよい。この標準入熱量Qstが前述した「数1乃至数3算出の標準入熱量」である。
【0579】
【数3】
【0580】
[図13の説明]
図13(A)は、各溶接中の検出期間中の溶接電流平均値Iav又は主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を算出する説明図であり、同図(B)は、各溶接中の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を算出する説明図である。
【0581】
溶接電源装置として、サイリスタ等の半導体スイッチング素子を用いた略定電流制御方式の電源装置を使用た場合、主アーク電流通電開始時点t2から短絡電流通電終了時点t10までの間、溶接電流値Ioが略一定に制御された定電流が流れる。
【0582】
主ア−ク期間終了時点、即ち短絡期間開始時点t9で、押し込み動作を開始して短絡させると、図13(A)に示すように、正常に短絡した瞬間に急峻な電流が流れる。この急峻な電流の増加分は、主アーク電流Iaの平均値と比較して無視することができる範囲である。そこで、主アーク期間Taの溶接電流値Ioは、アーク発生時も瞬時的な短絡時も略一定値であるので、下記の数6及び数7に示すように、主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を測定しないで、数4及び数5に示すように検出期間中の溶接電流平均値Iavを測定してもよい。
【0583】
次に、図13(A)及び(B)を参照して、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から、検出期間全体の標準入熱量Qstに達した主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnまでの積算入熱量Qtaを算出する式について説明する。
【0584】
[数4乃至数7の説明]
▲1▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)及び検出期間中の溶接電流平均値Iavを測定して、数1と同様に、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを算出する。
▲2▼数4の右辺の1番目の式によって、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnまで、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを積算して、積算入熱量Qtaを算出する。
【0585】
【数4】
【0586】
上記の主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の検出間隔Δtの検出開始時点はt01であり、主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出間隔Δtの検出開始時点はt0nである。したがって、1回目の検出間隔Δtの検出開始時点t01から検出回数n回目の検出間隔Δtの検出開始時点t0nまでの積算入熱量Qtaを、数4の右辺の2番目の式によって算出してもよい。
【0587】
また、積算入熱量Qtaを上記の数4によって算出する代わりに、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の1回目の検出間隔Δtから主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出回数n回目の検出間隔Δtまでの積算入熱量Qtaを、数5によって算出してもよい。
【0588】
【数5】
【0589】
▲1▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)及び主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を測定して、数1と同様に、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを算出する。
▲2▼積算入熱量Qtaは、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnまで、数6の右辺の1番目の式によって算出する。
【0590】
【数6】
【0591】
上記の主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の検出間隔Δtの検出開始時点はt01であり、主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出間隔Δtの検出開始時点はt0nである。したがって、1回目の検出間隔Δtの検出開始時点t01から検出回数n回目の検出間隔Δtの検出開始時点t0nまでの積算入熱量Qtaを、数6の右辺の2番目の式によって算出してもよい。
【0592】
また、積算入熱量Qtaを上記の数4によって算出する代わりに、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の1回目の検出間隔Δtから主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出回数n回目の検出間隔Δtまでの積算入熱量Qtaを数7によって算出してもよい。
【0593】
【数7】
【0600】
[数8乃至数12の説明]
図13(A)及び(B)において下記のように、検出期間中の溶接電流平均値Iav及び検出期間中の溶接電圧平均値Vavを算出し、主アーク積算値検出期間T3nを乗算して積算入熱量Qtaを算出してもよい。
【0601】
主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を、検出回数1回からn回まで積算して、主アーク期間積算電圧値Vta3nを、数8によって算出する。
【0602】
【数8】
【0603】
主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を、検出回数1回からn回まで積算して、主アーク期間積算電流値Ita3nを、数9によって算出する。
【0604】
【数9】
【0605】
数8によって算出した主アーク期間積算電圧値Vta3nを検出回数nで除算して検出期間中の溶接電圧平均値Vavを、数10によて算出する。
【0606】
【数10】
【0607】
数9によって算出した主アーク期間積算電流値Ita3nを検出回数nで除算して検出期間中の溶接電流の平均値Iavを、数11によって算出する。
【0608】
【数11】
【0609】
上記数10によって算出した検出期間中の溶接電圧平均値Vavと数11によって算出した検出期間中の溶接電流の平均値Iavと主アーク積算値検出期間T3nとを乗算してから、数12によって、積算入熱量Qtaを算出する。
【0610】
【数12】
【0615】
通常のスタッド溶接においては、前述した図13に示した補助ア−ク期間Tpは0.1〜0.2[秒]であり、主アーク期間Taは0.4〜1.5[秒]であり、短絡期間Tsは0.2[秒]位であって、補助ア−ク期間Tpは主アーク期間Taに比べて1/10程度の通電時間であり、しかも補助ア−ク電流値Ipは主ア−ク電流値Iaよりも小であるので、制御回路を簡単にするために、補助アーク入熱標準値設定期間T12の補助ア−ク期間積算入熱量Qta12の算出を省略している。
【0616】
しかし、溶接条件によって、補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を主アーク期間の積算入熱量Qta3nに対して無視することができない場合は、補助ア−ク電流平均値Ipと補助ア−ク電圧平均値と補助ア−ク期間Tpとから補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を算出する。
補助ア−ク期間Tpは前述したとおり、主アーク期間Taに比べて短時間であるので、補助ア−ク電流平均値Ipと補助ア−ク電圧平均値とは、主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)及び主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)のように、検出間隔Δtごとに算出する必要はなく、補助ア−ク電流・電圧検出開始時点t1から、補助ア−ク電圧平均値Vav12を測定して、この補助ア−ク電圧平均値Vav12と補助ア−ク電流値Ipとから、補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を算出すればよい。
【0617】
補助ア−ク期間積算入熱量Qta12は、下記の式に示すとおり、補助ア−ク電流・電圧検出開始時点t1から、補助ア−ク電圧平均値Vav12を測定して、この補助ア−ク電圧平均値Vav12と補助ア−ク電流値Ipと補助ア−ク検出期間T12との積から算出する。
補助・主アーク期間の積算入熱量Qta1nは、下記の式に示すとおり、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nと補助ア−ク期間積算入熱量Qta12との和となる。
Qta12=Vav12・Ip・T12
Qta1n=Qta12+Qta3n
【0640】
[図14の説明]
図14は、主アーク期間Ta中に、引き上げ不良、異常アーク現象による片溶け等によって、スタッドSが、一時的に、溶融プールに短絡した場合の溶接電圧波形及び溶接電流波形を示す図である。
【0642】
主アーク期間Ta中に、引き上げ不良、異常アーク現象、例えば磁気吹きによる片溶け等によってスタッドSが、一時的に、溶融プールに短絡した場合、検出間隔ごとの短絡発生時の入熱量平均値ΔQasが低くなるために、主アーク期間Ta中に短絡が多く発生して積算入熱量Qtaは減少する。
【0646】
主アーク期間Ta中に短絡が発生した場合の出力端子電圧Vdは、検出間隔ごとの短絡発生時の出力端子電圧平均値Vas(Δt)となるので、検出期間中の溶接電圧平均値Vavは減少する。
また、このときの出力電流Ioは、検出間隔ごとの短絡発生時の出力電流平均値Ias(Δt)となるが、溶接電源装置の出力特性が定電流特性の場合は、検出期間中の溶接電流平均値Iavはほとんど変化することがなく、また溶接電源装置の出力特性が垂下特性のような定電流特性でない場合は、検出期間中の溶接電流平均値Iavは多少増加する。
【0650】
[図15の説明]
図15(A)は、主アーク期間Ta中に微小短絡が発生した場合の出力電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は、主アーク期間Ta中に短絡が発生した場合の出力端子電圧Vdの波形を示す図である。
【0652】
上記の図15に示すように、前述した実施例では、太径スタッド溶接のように溶接時間が長くなったとき、上板貫通溶接のとき、横向き溶接のとき等で微小短絡が頻繁に発生しても、積算入熱量Qtaはほとんど減少しない。しかし、これらの微少短絡が頻繁に発生すると、溶接部の欠陥になる可能性が大きい。
【0654】
この場合は、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを算出する検出間隔Δtを、溶接部の欠陥になる可能性のある微小短絡の一回の発生時間よりも小さい数[mSec]程度に定める。
次に、正常な溶接動作が行われた場合の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavの適正値を、溶接スタッドの直径及び被溶接材の条件及び溶接姿勢(下向き、横向き等)に応じて主アーク入熱量検出間隔標準値ΔQarとして定める。
この予め設定した主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを、検出間隔Δtごとに、主アーク入熱量検出間隔標準値ΔQarと比較する。
この主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavが主アーク入熱量検出間隔標準値ΔQarよりも低下した短絡回数Nsを計数して、この短絡回数Nsが上記標準入熱許容短絡回数Nst以上になると溶接不良と判定する。
【0656】
上記の判定結果を使用して、数4乃至数12によって算出する方法の積算入熱量Qtaで溶接したスタッド溶接終了時に、微小短絡回数が許容範囲を越えたことを表示したり、さらに入熱を加算したりする。
【0660】
[C3]横向き溶接の溶融金属の垂れ下がりによる短絡の発生防止
不良原因C1を除去する方法は、主アーク期間Taの後半に、主アーク電流値Iaを増加させる方法である。
しかし、この不良原因C1を除去する方法であっても、作業者が、主アーク期間Taの後半のどの時点で、どれだけの主アーク電流値Iaを増加させるかを判断して設定しなければならない。
【0662】
図16は、本発明の主電流切換スタッド溶接の不良原因除去方法を実施するスタッド溶接装置の出力波形図であり、同図(A)は出力電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は溶接電源装置の出力端子電圧Vdの波形を示す出力端子電圧波形図であり、同図(C)はスタッド先端の移動量Mを示すスタッド先端移動図である。
図16において、下記のように、切換前の主ア−ク電流値Iaを通電して切換前標準入熱量Qst3bに達した主アーク電流値切換時点tbで、切換後の主ア−ク電流値Ibに切り換えて通電して、切換後標準入熱量Qstb8に達した時点tnで押し込みを開始する。
【0664】
後述する図26の溶接開始終了スイッチ13をONにして補助アークを発生させ、補助アーク期間Tp経過後、補助アークから主アークに移行させる。
その後、切換前通電期間T3bの経過後に、切換後の主ア−ク電流Ibを出力電流指令回路5に出力する。
【0668】
上記の既知の主ア−ク電流値Ia、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38、切換溶接電流値比率α及び切換標準入熱量比率βから、下記の順序で、切換前標準入熱量Qst3b及び切換後標準入熱量Qstb8を算出して、主アーク期間積算入熱量Qta3nが、切換前標準入熱量Qst3bに達した主ア−ク電流値切換時点tbで、(切換前の)主ア−ク電流値Iaから切換後の主ア−ク電流Ibに切り換え、さらに切換後標準入熱量Qstb8に達した時点tnで押し込みを開始する。
【0670】
Ib=α・Ia …(式1)
Qstb8=β・Qst38 …(式2)
Qst3b+Qstb8=Qst38 …(式3)
Qst3b=k・Ia・T3b …(式4)
式2及び式4を式3に代入すると、
k・Ia・T3b=(1−β)Qst38 …(式5)
▲1▼この式5から切換前通電期間T3bが定まる。この切換前通電期間T3bが定まると、式4から切換前標準入熱量Qst3bが定まる。
▲2▼この切換前標準入熱量Qst3bが定まると、式3から切換後標準入熱量Qstb8が定まる。
【0672】
ここで、切換後の主ア−ク電流Ibは、切換前の主ア−ク電流値Iaよりも約10%増加させた電流であり、また切換後通電期間Tbnは、切換前通電期間T3bの約10%のときに、適正な溶接結果が得られることが実験の結果から確認されている。
【0674】
図16(A)及び同(B)において、Tb8は切換後標準入熱量Qstb8を算出する切換後通電期間であり、Tbnは切換後主ア−ク期間積算入熱量Qtab8を算出する切換後通電期間であり、Vaは切換前の主ア−ク電流値Iaのときの切換前の主アーク電圧値であり、Va2は切換後の主ア−ク電流値Ibのときの切換後の主アーク電圧値である。
また、図16(C)において、Tmは押し込み期間である。なお、符号Dup及びDdは、それぞれ、前述した上板貫通溶接時の引き上げ距離及び設定値どおりの押し込み距離である。
【0676】
切換後通電期間Tbnの経過後に、予め設定した押し込みパタ−ンによって、スタッドSを被溶接材Wの溶融プール内に押し込む。
ここで予め設定した押し込みパタ−ンとは、溶接ガンGNで調整又は後述する図26の溶接条件設定回路27で設定するスタッドSの引き上げ距離、押し込み距離、押し込み速度、押し込み速度切換等である。
【0678】
切換後の主ア−ク電流Ibを通電することによって、第1に、主アークの広がりを拡大させると共に、アーク圧力も増大させて、フェルールFの下部に溜まっている溶融金属Wmを被溶接材W側に押しつけて短絡を防止する。第2に、押し込みパタ−ン、被溶接材Wの溶接条件の違いによって、短絡電流Isに切り換わる押し込み時短絡開始時点ts0がばらついても、この押し込み時短絡開始時点ts0でア−クが継続し、余盛りを均一に仕上げることができる。
【0680】
図17は横向き溶接終了後の余盛り形状を示す図であって、同図の符号(A)は従来の溶接方法で溶接した余盛りが適切に形成されていないために溶接強度が不足する例を示す図であり、同図の符号(B)は本発明の溶接方法で溶接した余盛りが適切に形成されているので溶接強度が確保される例を示す図である。
【0682】
スタッドの直径が大のとき、入熱量が大になるので、被溶接材が薄板であってさらに溶接姿勢が横向きである場合は、余盛りが溶接後のスタッド周囲の上部に残りにくく溶接不良となりやすい。
【0684】
しかし、本発明によって、スタッドを押し込む前に、主アーク電流値を連続的又は断続的に増加させてアーク圧力を増大させ、短絡を引き起こす溶融金属を被溶接部側へ押しつけて短絡を防止すると共に、特に、横向き溶接において、増加させた主アーク電流によって溶融金属を追加形成した後、スタッドを被溶接材へ押し込むことによって、スタッド上部に溶融金属を残して溶接後のスタッド周囲の上部に余盛りを形成する。
【0690】
[D3]上板貫通溶接の押し込み距離不足の防止
不良原因D1を除去する方法は、上記の横向き溶接の溶融金属の垂れ下がりによる短絡の発生を解決した不良原因C1を除去する方法と同じ方法の他に、次の方法も採用すると、不良原因D1を除去する効果が相乗される。
【0692】
図18(A)は、基準にするスタッドを被溶接材に押し込む指令をしてから短絡電圧検出開始時点t91までに短絡したときの押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssの押し込み短絡電流平均値Isを算出する説明図であり、同図(B)は、そのときの押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssの押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を算出する説明図である。
【0694】
同図(A)に示すように、主ア−ク期間終了時点又は押し込み短絡期間開始時点t9において、押し込み指令信号を出力して押し込みを開始する。押し込み指令信号を出力してからスタッドSの溶融先端が被溶接材Wの溶融金属Wmに接触するまでの正常時の短絡開始時間遅れはΔT91である。
【0696】
後述する図26に示す溶接電流検出回路IC及び溶接電圧検出回路VCによって、短絡電圧検出開始時点t91から短絡電圧検出終了時点t9sまでの押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssに、各時刻tの押し込み短絡電圧瞬時値V(t)を検出して、短絡が発生しないときの押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を算出する。同様に、各時刻tの押し込み短絡電流瞬時値I(t)を検出して、短絡電圧検出開始時点t91までに押し込み短絡が開始するときの押し込み短絡電流検出間隔平均値Is(Δt)を算出する。
【0700】
[数13乃至数15の説明]
図18において、押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssの間、検出期間全体の押し込み短絡電流平均値Is又は押し込み短絡電流検出間隔平均値Is(Δt)と押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)とを算出して、押し込み短絡入熱量検出間隔平均値ΔQstを数13によって算出する。
【0702】
【数13】
【0704】
数14によって、押し込み短絡入熱量検出間隔平均値ΔQstを短絡電圧検出開始時点t91から短絡電圧検出終了時点t9sまで積算して検出期間全体の標準入熱量Qstを算出する。
【0706】
【数14】
【0708】
また、数15によって、短絡電圧検出開始時点t91の1番目の検出間隔Δtから短絡電圧検出終了時点t9sの検出回数s番目の検出間隔Δtまでの検出期間全体の標準入熱量Qstを、算出してもよい。
【0710】
【数15】
【0720】
[図19の説明]
図19(A)は、判定したいスタッドを被溶接材に押し込む指令をしてから短絡電圧検出開始時点t91よりも遅れて短絡したときの押し込み短絡検出期間Tsdの押し込み短絡電流平均値Isを算出する説明図であり、同図(B)は、そのときの押し込み短絡検出期間Tsdの押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を算出する説明図である。
同図のΔT93は、押し込み指令信号を出力してからスタッドSの溶融先端が被溶接材Wの溶融金属Wmに接触するまでの異常時の短絡開始時間遅れである。
【0722】
後述する図26の溶接電源装置1として、サイリスタ等の半導体スイッチング素子を用いた略定電流制御方式の電源装置を使用した場合、押し込み短絡期間開始時点t9から押し込み短絡電流通電終了時点t10までの間、溶接電流値Ioが略一定に制御された定電流が流れる。
【0724】
上記の略定電流制御方式の電源装置を使用し、主アーク期間終了時点t9で、押し込み指令信号を出力して押し込みを開始し、スタッドSの溶融先端が被溶接材Wの溶融金属Wmに接触した瞬間に、図19(A)に示すように、急峻な電流が流れる。
この急峻な電流の増加分は、押し込み短絡電流Isの平均値と比較して無視することができる範囲である。そこで、押し込み短絡期間Tsの溶接電流値Ioは略一定値であるので、数16及び数17に示すように、検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isを測定して積算入熱量Qtaを算出してもよい。
【0730】
[数16乃至の数19の説明]
押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)及び検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isを測定して、数16によって、短絡電圧検出開始時点t91から短絡電圧検出終了時点t9nまでの積算入熱量Qtaを算出する。
【0732】
【数16】
【0734】
押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)及び検出期間中の押し込み短絡電流平均値Isを測定して、短絡電圧検出開始時点t91の1番目の検出間隔Δtから短絡電圧検出終了時点t9nの検出回数n番目の検出間隔Δtまでの積算入熱量Qtaを、数17によって算出してもよい。
【0736】
【数17】
【0738】
押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)及び押し込み短絡電流検出間隔平均値Is(Δt)を測定して、積算入熱量Qtaを、短絡電圧検出開始時点t91の検出間隔Δtから短絡電圧検出終了時点t9nの検出間隔Δtまでの積算入熱量Qtaを、数18によって算出してもよい。
【0740】
【数18】
【0742】
押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)及び押し込み短絡電流検出間隔平均値Is(Δt)を測定して、短絡電圧検出開始時点t91の1番目の検出間隔Δtから短絡電圧検出終了時点t9nの検出回数n番目の検出間隔Δtまでの積算入熱量Qtaを、数19によって算出してもよい。
【0744】
【数19】
【0750】
[数20の説明]
溶接電源装置の出力特性が略定電流特性であるときは、各溶接中の溶接電流値Ioが一定値であるので、押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)だけを、検出回数1回からn回まで積算して、短絡期間積算電圧値Vta9nを、数20によって算出する。
【0752】
【数20】
【0754】
図18の押し込み短絡検出期間Tsdの短絡期間積算電圧値Vta9nを上記の数20によって算出し、短絡期間積算電圧値Vta9nが、図19の押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssの短絡電圧標準値Vst9sになった時点で押し込み短絡電流を遮断する。
【0756】
前述した図18において、短絡電圧検出開始時点t91までに押し込み短絡が開始するときの押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssの短絡電圧標準値Vst9sは、同図において、符号G1,G2,G3及びG4で囲まれた積算値となる。
同様に、前述した図19において、短絡電圧検出開始時点t91よりも遅れて押し込み短絡が開始したときの押し込み短絡検出期間Tsdの短絡期間積算電圧値Vta9nは、同図において、符号H1,H2,H3,H4,H5及びH6で囲まれた積算値となる。
【0758】
前述した数13乃至数20を使用して、短絡期間積算入熱量Qta9n又は短絡期間積算電圧値Vta9nが、予め設定した短絡期間標準入熱量又は短絡電圧標準値Vst9sに達した時点で押し込み短絡電流を遮断する方法は、「課題を解決するための手段」の項で説明したので省略する。
【0760】
[E3]溶接回路の電圧降下補償
不良原因E1を除去する方法は、第1が、積算入熱量Qtaが検出期間全体の標準入熱量Qstに達した時点tnで押し込みを開始させて、短絡が発生しても、必要な入熱量Qrを確保することであり、第2が、2次ケーブルによる電圧降下が変動したときでも、溶接電源装置の出力端子電圧Vdからスタッド近傍のアーク負荷電圧値を算出して溶接回路の電圧降下の変動を補償することである。この溶接回路の電圧降下の変動は、下記の周囲条件によって異なる。
【0761】
(1)周囲条件1
2次ケーブルの電圧降下の算出のために、2次ケーブルの断面積及び長さの比較的正確な値を入力するときと、入力しないときとで、溶接電源装置の出力端子から溶接位置までの電圧降下の修正が必要か必要でないかが異なる。
【0762】
上記の溶接電源装置の出力端子から溶接位置までの電圧降下は、「−」出力端子から溶接位置の溶接ガンまでを接続した2次ケーブルの電圧降下の他に、「+」出力端子から溶接位置付近の被溶接材までを接続した2次ケーブルの電圧降下又は「+」出力端子を溶接電源装置付近の被溶接物に接続したときの溶接電源装置付近から溶接位置までの被溶接材の電圧降下及び各接続部分の接触抵抗電圧降下(以下、溶接回路電圧降下(符号V5で示す)という)も含まれる。
【0763】
▲1▼溶接電源装置の「−」出力端子から溶接位置の溶接ガンまで及び「+」出力端子から溶接位置付近の被溶接材までを2次ケーブルで接続して、2次ケーブルの断面積及び長さの比較的正確な値を入力するときは、2次ケーブルの電圧降下を修正する必要がないが、溶接位置が被溶接物上で移動していくときは、被溶接物の抵抗値が変化していくので、2次ケーブルの電圧降下を修正する必要がある。▲2▼また、比較的正確な値を入力しないときは、2次ケーブルの長さを変更しないで継続して溶接する場合でも、2次ケーブルの電圧降下を正確な値に修正する必要がある。
【0764】
(2)周囲条件2
溶接電源装置の出力特性が定電流特性である場合と、定電流特性でないと場合とで、溶接回路電圧降下V5の算出方法が異なる。
▲1▼定電流特性でない場合は、押し込み短絡電圧平均値V2aを検出したときの押し込み短絡電流値I2aと溶接回路電圧降下V5を補償するときの主アーク電流値Iaとが異なるので、検出した押し込み短絡電圧平均値V2aと検出した押し込み短絡電流値I2aとから算出抵抗値Ra算出して、溶接回路電圧降下V5を補償しなければならない。
【0765】
▲2▼しかし、定電流特性であって溶接するスタッドの直径が同じで溶接電流値を変更しないで、溶接位置が被溶接物上で移動しない場合は、必ずしも、上記の算出抵抗値を算出する必要がなく、検出した押し込み短絡電圧平均値V2aをそのまま溶接回路電圧降下V5の補償に使用することができる。
【0766】
溶接回路電圧降下V5の補償方法は次のとおりである。
▲1▼主アーク期間積算供給電力量Ptaから溶接回路電圧降下V5による電圧降下消費電力量P5を減算した積算入熱量Qtaと予め設定した検出期間全体の標準入熱量Qstとを比較する方法。Qta−Qst=(Pta−P5)−Qst
▲2▼積算電力量Ptaと予め設定した検出期間全体の標準入熱量Qstに溶接回路電圧降下V5による電圧降下消費電力量P5を加算した標準供給電力量Pstとを比較する方法。Pta−Pst=Pta−(Qst+P5)
【0767】
この主アーク期間積算供給電力量Ptaの算出方法として、
▲1▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を基に算出する方法と、
▲2▼定電流特性であって、溶接するスタッドの直径が同じで溶接電流値を変更しないで、溶接位置が被溶接物上で移動しない場合は、主アーク電流値が一定であるので、主アーク期間積算供給電力量Ptaの代わりに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から算出した主アーク期間積算供給電圧値Vpt3nを基に算出する方法と、
▲3▼検出期間主アーク電圧平均値Vav3nを基に算出する方法とがある。
【0768】
上記の周囲条件、溶接回路電圧降下V5の算出方法等を組み合わせた溶接回路の電圧降下補償方法を[課題を解決するための手段]の項で列挙した。以下、列挙した溶接回路の電圧降下補償方法について説明する。
【0770】
前述した[課題を解決するための手段]の項で列挙した溶接回路の電圧降下補償方法の第4の方法において、溶接位置が被溶接物上で移動しない場合は、2回目以後の溶接の溶接回路電圧降下V5を、初回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5にすればよい。
従って、この第4の方法の「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」は、「初回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」となると共に、この第4の方法の「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」は、「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込み、」となる。上記第4の方法を、以下、第4のAの方法という。
【0771】
次に、この第4の方法において、溶接位置が被溶接物上で移動する場合は、2回目以後の溶接の溶接回路電圧降下V5は、初回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5は一定値ではなく溶接位置の移動に伴って変化する。
従って、この第4の方法の「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」は、そのままの「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」となると共に、この第4の方法の「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」は、「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」となる。上記第4の方法を、以下、第4のBの方法という。
【0772】
また、第5の方法において、第4の方法と同様に、溶接位置が被溶接物上で移動しない場合は、この第5の方法の「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」は、「初回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」となると共に、この第5の方法の「主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nが、上記主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」は、「主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込み、」となる。上記第5の方法を、以下、第5のAの方法という。
【0773】
次に、この第5の方法において、第4の方法と同様に、溶接位置が被溶接物上で移動する場合は、この第5の方法の「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」は、そのままの「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」となると共に、この第4の方法の「主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nが、上記主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」は、「主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nが、上記主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」となる。上記第5の方法を、以下、第5のBの方法という。
【0774】
この第6の方法において、第4の方法と同様に、溶接位置が被溶接物上で移動しない場合は、この第6の方法の「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」は、「初回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」となると共に、この第5の方法の「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」は、「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込み、」となる。上記第6の方法を、以下、第6のAの方法という。
【0775】
次に、この第6の方法において、第4の方法と同様に、溶接位置が被溶接物上で移動する場合は、この第6の方法の「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」は、そのままの「今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値V2a」となると共に、この第4の方法の「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」は、「主アーク期間積算入熱量Qta3nが、上記主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込んで押し込み短絡電圧平均値V2aを検出し、」となる。上記第6の方法を、以下、第6のBの方法という。
【0776】
前述した第4のAの方法において、さらに、上記の第9の方法を組み合わせると、第4のAの方法の「押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5」が、「押し込み短絡電圧平均値V2aの溶接回路電圧降下V5」となる。上記第4のAの方法を、以下、第4のAの▲1▼の方法という。以下同様に、第4のBの▲1▼の方法、第5のAの▲1▼の方法、第5のBの▲1▼の方法、第6のAの▲1▼の方法及び第6のBの▲1▼の方法となる。
【0777】
前述した第4のAの方法において、さらに、上記の第10の方法を組み合わせると、第4のAの方法の「押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5」が、「今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値V2aに、今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)又は検出期間中の溶接電流平均値Iavと今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電流平均値I2aとの比Iav(Δt)/I2a又はIav/I2aを乗算した溶接回路電圧降下V5」となる。上記第4のAの方法を、以下、第4のAの▲2▼の方法という。以下同様に、第4のBの▲2▼の方法、第5のAの▲2▼の方法、第5のBの▲2▼の方法、第6のAの▲2▼の方法及び第6のBの▲2▼の方法となる。
【0778】
前述した第4のAの方法において、さらに、上記の第11の方法を組み合わせると、第4のAの方法の「押し込み短絡電圧平均値V2aに対応した溶接回路電圧降下V5」が、「今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値V2aを、今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電流平均値I2aで除算して算出抵抗値Ra=V2a/I2aを算出し、この算出抵抗値Raと今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)又は検出期間中の溶接電流平均値Iavとの積の溶接回路電圧降下V5」となる。上記第4のAの方法を、以下、第4のAの▲3▼の方法という。以下同様に、第4のBの▲3▼の方法、第5のAの▲3▼の方法、第5のBの▲3▼の方法、第6のAの▲3▼の方法及び第6のBの▲3▼の方法となる。
【0779】
このように、第4の方法はA又はBの2つの方法を含み、さらに、各A及びBの方法は▲1▼乃至▲3▼の3つの方法になるので、第4の方法は6つの方法になる。
同様に、第5の方法及び第6の方法も、それぞれ6つの方法になる。
【0780】
前述した不良原因E1を除去する方法において、2次ケーブル長を変更するときは、溶接電源装置の電力供給用のスイッチを遮断するので、再度、電力供給用のスイッチを投入して溶接電源装置に電力を供給した後の最初の溶接を、初回の溶接であると自動的に判別するので、溶接作業者は制御装置の「初回の溶接操作」をしなくてもよい。
【0781】
また、不良原因E1を除去する方法において、2次ケーブル長を変更するときの通電休止時間は、通常の前回のスタッド溶接と今回のスタッド溶接との間の通電休止時間よりもかなり大になるので、前回のスタッド溶接と今回のスタッド溶接との間の通電休止時間が予め設定した時間を経過した後の最初の溶接を、初回の溶接であると自動的に判別するので、溶接作業者は制御装置の「初回の溶接操作」をしなくてもよい。
【0782】
さらに、不良原因E1を除去する方法において、スタッドの直径を変更するときは溶接電流の設定値を変更するので、溶接電流設定値等の予め定めた溶接条件設定値を変更した最初の溶接を、初回の溶接であると自動的に判別するので、溶接作業者は制御装置の「初回の溶接操作」をしなくてもよい。
【0783】
以下、前述した不良原因E1を除去する第14の方法に記載した溶接回路の電圧降下補償方法について詳述する。
この第14の方法は第11の方法を引用し、さらに第11の方法は第4から第6の方法を引用している。ここで、第4から第6の方法として、上記第4のBの▲3▼の方法について説明する。この第4のBの▲3▼の方法に記載した溶接回路の電圧降下補償方法の概要は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を積算した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する方法であって、下記の手順のとおりである。
【0784】
(A)標準入熱量設定ステップST1
前述した図12に示すように、数1乃至数3によって、算出した正常な溶接時の主アーク期間標準入熱量Qst38を予め設定しておく。
(B)溶接回路電圧降下設定ステップST2
溶接回路の電圧降下に相当する予め設定した設定電圧降下V5sと電圧降下誤差許容値ΔV5とを、予め設定しておく。
(C)初回主ア−ク電圧検出ステップST3
初回の溶接でスタッドを被溶接材から引き上げて主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)及び主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を検出する。
【0785】
(D)初回平均アーク電圧修正ステップST4
初回の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路の電圧降下に相当する予め設定した設定電圧降下V5sを減算した設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sを算出する。
(E)初回主アーク期間積算入熱量算出ステップST5
この設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sと検出期間中の溶接電流平均値Iav又は主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQav=V3s×Iav(tΔ)×Δtを積算して主アーク期間の積算入熱量Qta3nを算出する。
(F)初回押し込みステップST6
積算した主アーク期間積算入熱量Qta3nが主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する。
【0786】
(G)初回押し込み溶接電圧検出ステップST7
押し込み短絡検出期間Tsd中の押し込み短絡電圧平均値V2aと押し込み短絡電流平均値I2aとを検出する。
(H)初回抵抗値算出ステップST8
上記の押し込み短絡電圧平均値V2aを押し込み短絡電流平均値I2aで除算して2次ケ−ブルの算出抵抗値Ra=V2a/I2aを算出して記憶する。
(I)初回算出抵抗値修正ステップST9
初回の溶接で算出した算出抵抗値Ra=Ramと主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の溶接回路電圧降下V5=V5mから、今回の溶接で算出した算出抵抗値Ra=Ranと主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の溶接回路電圧降下V5=V5nを減算した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたときに、今回の溶接で算出した算出抵抗値Ranを、N回目の溶接の押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出するときの算出抵抗値Raとする。
【0787】
(J)継続主ア−ク電圧検出ステップST13
後述する図20に示すように、数21から数24のいずれかによって、その後のN回目の継続溶接の主アーク電流・電圧検出開始時点t3から、検出間隔ごとに、主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)及び主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定する。
(K)継続平均アーク電圧算出ステップST14
継続溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)と算出抵抗値修正ステップで算出した算出抵抗値Raとの積の溶接回路電圧降下V5を減算した押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出する。
(L)継続主アーク期間積算入熱量算出ステップST15
この押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pと検出期間中の溶接電流平均値Iav又は主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQav=V3p×Iav(tΔ)×Δt又はΔQav=V3p×Iav×Δtを積算して主アーク期間積算入熱量Qta3nを算出する。
【0788】
(M)継続押し込みステップST16
この継続主アーク期間積算入熱量Qta3nが、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tnで押し込みを開始する。
(N)継続押し込み溶接電圧検出ステップST17
押し込み短絡検出期間Tsd中の押し込み短絡電圧平均値V2aと押し込み短絡電流平均値I2aとを検出する。
(O)継続抵抗値算出ステップST18
上記の押し込み短絡電圧平均値V2aを押し込み短絡電流平均値I2aで除算して算出抵抗値Ra=V2a/I2aを算出して記憶する。
【0789】
(P)継続算出抵抗値修正ステップST19
今回以前の溶接で算出した算出抵抗値Ra=Ramと主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の溶接回路電圧降下V5=V5mから、今回の溶接で算出した算出抵抗値Ra=Ranと主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の溶接回路電圧降下V5=V5nを減算した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたときに、今回の溶接で算出した算出抵抗値Ranを、N回目の溶接の押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出するときの算出抵抗値Raとする。
(Q)以後、溶接終了まで継続主ア−ク電圧検出ステップST13から継続算出抵抗値修正ステップST19までを繰り返す方法である。
【0790】
[図20の説明]
図20(A)は、各溶接中の溶接電流値Ioから検出期間中の溶接電流平均値Iav又は主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を検出する説明図であり、同図(B)は、各溶接中の出力端子電圧Vdから、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を検出する説明図である。
【0791】
[数21乃至数24の説明]
数21の右辺の1番目の式によって、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnまで、次の順序で、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを積算して、積算入熱量Qtaを算出する。
【0792】
▲1▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)及び検出期間中の溶接電流平均値Iavを測定する。
▲2▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を算出する。
V3=Vav(Δt)−V5
上記の溶接回路電圧降下V5は、初回の溶接ではV5=V5sとなり、2回目以後の溶接ではV5=Ra×Iavとなるので、算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3は、初回の溶接ではV3=V3sとなり、2回目以後の溶接ではV3=V3pとなる。ただし、V5sは設定電圧降下であり、Raは算出抵抗値であり、Iavは検出期間中の溶接電流平均値であり、V3sは設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値であり、V3pは押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値である。
【0793】
▲3▼算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3と検出期間中の溶接電流平均値Iavとの積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを算出する。
ΔQav=V3×Iav×Δt
▲4▼主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを、数21によって積算して、積算入熱量Qtaを算出する。
【0794】
【数21】
【0795】
上記の主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の検出間隔Δtの検出開始時点はt01であり、主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出間隔Δtの検出開始時点はt0nである。したがって、1回目の検出間隔Δtの検出開始時点t01から検出回数n回目の検出間隔Δtの検出開始時点t0nまでの積算入熱量Qtaを、数21の右辺の2番目の式によって算出してもよい。
【0796】
また、積算入熱量Qtaを上記の数21によって算出する代わりに、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の1回目の検出間隔Δtから主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出回数n回目の検出間隔Δtまでの積算入熱量Qtaを、数22によって算出してもよい。
【0797】
【数22】
【0798】
さらに、積算入熱量Qtaを上記の数22によって算出する代わりに、数23の右辺の1番目の式によって、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnまで、次の順序で、主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを積算して、積算入熱量Qtaを算出してもよい。
▲1▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)及び主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を測定する。
▲2▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を算出する。
V3=Vav(Δt)−V5
【0799】
上記の溶接回路電圧降下V5は、初回の溶接ではV5=V5sとなり、2回目以後の溶接ではV5=Ra×Iav(Δt)となるので、算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3は、初回の溶接ではV3=V3sとなり、2回目以後の溶接ではV3=V3pとなる。ただし、V5sは設定電圧降下であり、Raは算出抵抗値であり、Iav(Δt)は主ア−ク電圧検出間隔平均値であり、V3sは設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値であり、V3pは押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値である。
【0800】
▲3▼算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3と主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)との積の主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを算出する。
ΔQav=V3×Iav(Δt)×Δt
▲4▼主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavを、数23によって積算して、積算入熱量Qtaを算出する。
【0801】
【数23】
【0802】
上記の主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の検出間隔Δtの検出開始時点はt01であり、主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出間隔Δtの検出開始時点はt0nである。したがって、1回目の検出間隔Δtの検出開始時点t01から検出回数n回目の検出間隔Δtの検出開始時点t0nまでの積算入熱量Qtaを、数23の右辺の2番目の式によって算出してもよい。
【0803】
また、積算入熱量Qtaを上記の数23によって算出する代わりに、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3の1回目の検出間隔Δtから主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnの検出回数n回目の検出間隔Δtまでの積算入熱量Qtaを、数24によって算出してもよい。
【0804】
【数24】
【0820】
[図21の説明]
前述した「主アーク期間積算供給電力量Ptaの「▲2▼主アーク期間積算供給電圧値Vpt3nを基に算出する方法」について説明する。
この方法は、溶接電源装置の出力特性が定電流特性であって、溶接するスタッドの直径が同じで溶接電流値を変更しないで、溶接位置が被溶接物上で移動しない場合は、主アーク電流値が一定であるので、主アーク期間積算供給電力量Ptaの代わりに、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を基に算出した主アーク期間積算供給電圧値Vpt3nから算出する方法である。
【0821】
図21(A)は、各溶接中の出力電流Ioが、定電流特性であって一定値Iavであることを示す図であり、同図(B)は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを算出する説明図である。
【0822】
[数25の説明]
主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nは、下記の手順で、主ア−ク電流・電圧検出開始時点t3から、予め設定した主アーク期間標準入熱量Qst38に対応する主アーク電圧標準値Vst38に達する主ア−ク電流・電圧検出終了時点tnまで、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)に相当する電圧を積算して算出する。
【0824】
▲1▼主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nは、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を算出する。
V3=Vav(Δt)−V5
▲2▼上記の算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を、検出回数1回からn回まで積算して、主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを、数25によって算出する。
【0826】
【数25】
【0828】
上記の溶接回路電圧降下V5は、初回の溶接では、溶接回路の電圧降下に相当する予め設定した設定電圧降下V5sであり、2回目以後の溶接では、溶接電源装置が定電流特性であるので、溶接回路の電圧降下に相当する押し込み短絡電圧平均値V2aを適用することができる。
したがって、算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3は、初回の溶接では、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から、溶接回路の電圧降下に相当する予め設定した設定電圧降下V5sを減算した設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3sとなり、2回目以後の溶接では、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路の電圧降下に相当する押し込み短絡電圧平均値V2aを減算した押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pとなる。
上記の設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3s及び押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを、検出回数1回からn回まで積算して、主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを、前述した数25によって算出する。
【0830】
上記の数25によって算出する主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを算出する式は、初回の溶接では、Vqt3n=ΣV3s・Δt=Σ[Vav(Δt)−V5s]・Δtとなり、2回目以後の溶接では、Vqt3n=ΣV3p・Δt=Σ[Vav(Δt)−V2a]・Δtとなる。
【0840】
なお、この主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを、次式のように、主アーク期間積算供給電圧値Vpt3nから主アーク期間積算溶接回路電圧降下V5(tn−t3)を減算することによって算出することもできる。
Vqt3n=Vpt3n−V5(tn−t3)
【0850】
[図22の説明]
次に、前述した主アーク期間積算供給電力量Ptaを「検出期間主アーク電圧平均値Vav3nを基に算出する方法」について説明する。
図22(A)は、各溶接中の出力電流Ioから検出期間中の溶接電流平均値Iavを算出する説明図であり、同図(B)は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを算出する説明図である。
【0852】
同図(A)及び(B)の右端の符号Iav及びVqaに示すように、検出期間中の溶接電流平均値Iav及び検出期間中の供給電圧平均値Vpa(主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt))から溶接回路電圧降下V5を減算した検出期間入熱電圧平均値Vqa(算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3)を積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを算出し、主アーク積算値検出期間T3nを乗算して積算入熱量Qtaを算出してもよい。
【0860】
[数26乃至数29の説明]
主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を、検出回数1回からn回まで積算して、主アーク期間積算電流値Ita3nを、数26によって算出する。
【0862】
【数26】
【0864】
数25によって算出した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを検出回数nで除算して、検出期間入熱電圧平均値Vqaを、数27によって算出する。
【0865】
【数27】
【0866】
数26によって算出した主アーク期間積算電流値Ita3nを検出回数nで除算して、検出期間中の溶接電流の平均値Iavを、数28によって算出する。
【0868】
【数28】
【0870】
前述した数27によって算出した検出期間入熱電圧平均値Vqaと数28によって算出した検出期間中の溶接電流の平均値Iavと主アーク積算値検出期間T3nとを乗算してから、数29によって、積算入熱量Qtaを算出する。
【0872】
【数29】
【0875】
図23は、主アーク期間Ta中に、引き上げ不良、異常アーク現象による片溶け等によって、スタッドSが、一時的に、溶融プールに短絡した場合の溶接電圧波形及び溶接電流波形を示す図である。
【0876】
主アーク期間Ta中に、引き上げ不良、異常アーク現象、例えば磁気吹きによる片溶け等によってスタッドが、一時的に、溶融プールに短絡した場合、検出間隔ごとの短絡発生時の入熱が略ゼロになるために、主アーク期間Ta中に短絡が多く発生して積算入熱量Qtaは減少する。このような場合も、前述した数21乃至数29によって算出した積算入熱量Qtaが標準入熱量Qstに達した時点tnで押し込みを開始する。
【0880】
[F3]溶接機器動作自動設定
不良原因F1を除去する方法は、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が上記入力値に対応した必要な入熱Qrと溶接ガンGNの移動量とを含む溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが上記溶接機器設定値に従って動作する。
【0882】
[スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件]
スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件は、下記のとおりである。
A.スタッド・被溶接材条件
(1)スタッドの種類(材質、直径、形状等)
(2)溶接姿勢(下向き姿勢、横向き姿勢)
(3)被溶接材配置(被溶接材直接溶接、上板貫通溶接)
(4)被溶接材の種類(材質、板厚、形状等)
【0884】
B.周囲設置条件
(1)溶接回路電圧降下(2次ケーブルの断面積、長さ)
(2)溶接位置の移動の有無
(3)溶接電源装置の外部特性(定電流特性、それ以外)
【0886】
不良原因F1を除去する方法は、作業者が、上記のスタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件を、溶接制御装置に入力するか選択する(以下、入力するという)ことによって、自動的に、下記の溶接電源装置1の出力及び溶接ガンGNの移動量(溶接機器設定値)の動作を開始し、スタッドを引き上げてアークを発生させて所要の入熱Qr又は標準入熱量Qstを供給した後に、スタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接する。
なお、上記の所要の入熱Qrとは溶接時間Taを設定する従来技術の入熱をいい、標準入熱量Qstとは本出願人が発明したスタッド溶接機器設定値を使用した実施例において、溶接時間Taを設定しないで、検出間隔ごとに積算した主アーク期間積算入熱量Qta3nと比較する入熱をいう。
【0890】
A.第1の溶接機器設定値
第1の溶接機器設定値とは、作業者が、スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件を、溶接制御装置に入力した条件によって、溶接条件・機器設定値対応表から読み出された下記に例示する溶接機器設定値をいう。
(1)主ア−ク電流値Ia
(2)引き上げ距離L1
(3)押し込み距離L2
(4)押し込み速度切換
(5)溶接時間Ta又は標準入熱量Qst
従来技術では、溶接時間Taを設定し、本出願人が発明したスタッド溶接機器設定値を使用した実施例においては、溶接時間Taを設定しないで標準入熱量Qstを設定する。
【0891】
B.第2の溶接機器設定値
第2の溶接機器設定値とは、作業者が、上記以外の追加入力した溶接条件に従って、溶接制御装置が作業者の追加入力した溶接条件と上記の第1の溶接機器設定値とを使用して、自動的に算出する下記に例示する溶接機器設定値をいう。
(1)切換後の主ア−ク電流値Ib
作業者が、追加入力した切換溶接電流値比率α=Ib/Iaに従って、溶接制御装置が(切換前の)主ア−ク電流値Iaを使用して、切換後の主ア−ク電流値Ibを自動的に算出する。
(2)切換前通電期間T3b及び切換後通電期間Tbn
作業者が、追加入力した切換通電期間比率τ=Tbn/Taに従って、溶接制御装置が(切換前の)溶接時間(主アーク期間)Taを使用して、切換後通電期間Tbn及び切換前通電期間T3bを自動的に算出する。
(3)切換前標準入熱量Qst3b及び切換後標準入熱量Qstb8
作業者が、追加入力した切換標準入熱量比率β=Qstb8/Qst38に従って、溶接制御装置が標準入熱量Qst38を使用して、切換後標準入熱量Qstb8及び切換前標準入熱量Qst3bを自動的に算出する。
【0893】
不良原因F1を除去する方法の溶接機器の動作を自動設定するスタッド溶接の不良原因除去方法は、(A)スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件と溶接機器設定値との関係を、後述する図26に示すブロック図の溶接制御装置3の記憶回路11に記憶するスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作と、
(B)溶接装置に商用電源を供給すると、表示回路12にスタッド・被溶接材条件が表示され、作業者がその表示に従って、条件設定回路27によってスタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件の選択をするスタッド溶接条件選定動作と、
(C)作業者が溶接開始終了スイッチ13を押して溶接を開始し、選定した溶接機器設定値に従って溶接電源装置1及び溶接ガンGNが動作する溶接機器自動動作とからなる。
【0894】
上記のスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作は次のステップを実行する。
(1)溶接開始前に、下向き姿勢及び横向き姿勢で、被溶接材直接溶接及び上板貫通溶接をする場合の各スタッドの呼び径に対応させた「主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1、押し込み距離L2」の適正値を、後述する溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
(2)前述した数1乃至数3算出の標準入熱量Qstを、後述する溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
【0895】
上記のスタッド溶接条件選定動作は、次のステップを実行する。
溶接装置に商用電源を供給すると、図26の表示回路12にスタッド・被溶接材条件が表示されるので、作業者がその表示に従って、条件設定回路27によって下記の選択をする。
(1)スタッドの呼び径、溶接姿勢(下向き姿勢、横向き姿勢)及び被溶接材配置(被溶接材直接溶接、上板貫通溶接)が順次に表示されるので、その中から1つを選択する。
【0896】
(2)演算処理回路CPUは、スタッドの呼び径、溶接姿勢及び被溶接材配置に該当する溶接機器設定値(主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1、押し込み距離L2及び標準入熱量Qst)を、記憶回路11に予め記憶しておいた溶接条件・機器設定値対応表(例えば、後述する図25に示す「下向き姿勢・被溶接材直接溶接」の溶接条件・機器設定値対応表)の中から読み出して、表示回路12に表示する。
【0898】
なお、図25は、下向き姿勢・被溶接材直接溶接の溶接条件・機器設定値対応表である。
【0900】
(3)作業者が表示された溶接機器設定値を選定すると、その選定した溶接機器設定値が、CPU内部の主記憶領域に書き込まれる。
【0902】
溶接開始終了スイッチ13を押して溶接を開始すると、CPU内部の主記憶領域から読み出した溶接機器設定値に従って溶接機器は自動動作をする。この溶接機器自動動作は、前述した[B3]主アーク期間中の短絡発生による入熱不足の補償の実施例の説明と同じであるので省略する。
【0910】
[図26の説明]
図26は、本発明の不良原因A1からH1を除去する方法を実施するスタッド溶接装置のブロック図である。
図26において、3相交流電源Aの商用電力を入力として出力端子電圧値Vdで溶接電流値Ioの溶接電力を出力する溶接電源装置1と溶接ガンGNと溶接制御装置3とからなる。溶接ガンGNは、スタッドSを移動させるためのサ−ボモ−タ24、スタッドSの移動量を検出するポテンショメ−タ等の移動量検出回路MC、当接部材GN2等から形成される。
【0912】
溶接電源装置1は、溶接ガンGNに供給される溶接電流値Ioを検出して溶接電流検出信号Icを出力する溶接電流検出回路ICと、
溶接電源装置1の出力端子電圧値Vdを検出して溶接電圧検出信号Vcを出力する溶接電圧検出回路VCと、
予め設定された出力電流指令信号に応じて溶接電流値Ioを制御するためのサイリスタ等の半導体スイッチング素子からなる溶接電流調整回路15とから形成される。
【0914】
溶接制御装置3は、演算処理回路CPUと、演算処理回路CPUから出力された予め設定された「溶接電流値Ioに対応するディジタル信号」をアナログ信号の予め設定された出力電流指令信号に変換するD/A変換回路6と、
上記の変換された出力電流指令信号を上記の溶接電流調整回路15に出力する出力電流指令回路5と、
検出した溶接電流検出信号Icを演算処理回路CPUに供給するA/D変換回路7と、
検出した溶接電圧検出信号Vcを演算処理回路CPUに供給するA/D変換回路8と、
演算処理回路CPUから出力された所定のスタッドの移動量Mに対応するディジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換回路21と、
変換されたスタッドの移動量Mに対応するアナログ信号に応じてサ−ボモ−タ24を駆動するモ−タ駆動回路26と、
検出した移動量検出信号Mcを演算処理回路CPUに供給するA/D変換回路20と、
主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1、押し込み距離L2等のプリセット条件を設定及び作業者がスタッド・被溶接材条件の表示に従って、スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件の選択をする条件設定回路27と、
上記プリセット条件、溶接結果デ−タ等を記憶する記憶回路11と、
プリセット条件及び溶接結果を表示するディジタルパネル等の表示回路又は作業者に異常を知らせる警報回路からなる表示回路12とから形成される。
【0916】
以下、図26の実施例のスタッド溶接装置の動作について説明する。溶接ガンGNに保持させたスタッド先端を被溶接材Wに当接する位置まで押し当て、溶接ガンGNに配設されている溶接開始終了スイッチ13を押すと、当接位置にあったスタッドSは、予め設定された引き上げ距離L1だけ引き上げられると同時に、補助アーク電流Ipを通電する。
【0920】
[実施例F1]
作業者が、厚板の鋼板上に予め定めた直径のスタッドを下向き姿勢で被溶接材直接溶接をする最も簡単な場合の本発明の溶接方法について説明する。
【0922】
第1に、前述した「発明の実施の形態」において「(A)スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件と溶接機器設定値との関係を溶接制御装置の記憶回路11に記憶するスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作」について説明する。
上記のスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作は次のステップを実行する。
(1)下向き姿勢で、被溶接材直接溶接をする場合、溶接開始前に、各スタッドの呼び径に対応させた「主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1及び押し込み距離L2」を予め設定して、図25に示す「下向き姿勢・被溶接材直接溶接」の溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
(2)数1乃至数3の主アーク期間標準入熱量Qst38をCPU内部の主記憶領域の図25に示す溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
【0924】
第2に、前述した「(B)溶接装置に商用電源を供給すると、ブロック図の表示回路12にスタッド・被溶接材条件が表示され、作業者がその表示に従って、条件設定回路27によってスタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件の選択をするスタッド溶接条件選定動作」について説明する。
【0926】
図26に示す溶接電源装置1に商用電源を供給すると、同図の表示回路12にスタッド・被溶接材条件が表示されるので、作業者はその表示に従って、条件設定回路27によって下記の選択をする。
(1)スタッドの直径の呼び径(M4,M5,M6,M8,M10,M12,M16,M18,M20,M22,φ13,φ16,φ19,φ22)が表示されるので、例えば、M20を選択する。
(2)溶接姿勢(下向き姿勢、横向き姿勢)が表示されるので、下向き姿勢を選択する。
(3)被溶接材配置(被溶接材直接溶接、上板貫通溶接)が表示されるので、被溶接材直接溶接を選択する。
【0928】
ブロック図において、CPUは、記憶回路11に予め記憶しておいた図25に示す下向き姿勢・被溶接材直接溶接の溶接条件・機器設定値対応表から、主ア−ク電流値Ia=1350[A]、主アーク期間標準入熱量Qst38=40.50[KJ]、引き上げ距離L1=2.5[mm]及び押し込み距離L2=5.0[mm]を読み出して、表示回路12に表示する。
【0930】
このとき、今回の溶接以前に同じスタッド・被溶接材条件で溶接して適正値が記憶されているときは、各溶接機器設定値の最小値、平均値、最大値等も同時に表示される。作業者は、これらの表示されたいずれかの値を選択するか、これらの表示されたいずれかの値を参考にして微調整又は作業者が希望する値を入力すると、CPU内部の主記憶領域に書き込まれる。最も簡単な選択は、作業者が実行キーを押せば上記の図25に示す標準値(デフォルト)がそのまま、CPU内部の主記憶領域に書き込まれる。
【0932】
第3に、前述した「(C)作業者が溶接開始終了スイッチ13を押して溶接を開始し、選定した値に従って溶接電源装置1及び溶接ガンGNが動作する溶接機器自動動作」は、前述した[B3]主アーク期間中の短絡発生による入熱不足の補償の実施例の説明と同じであるので省略する。
【0940】
[実施例F2]
次に、作業者が、厚板の鋼板上に予め定めた直径のスタッドを横向き姿勢で溶接する場合の不良原因F1を除去する方法について説明する。
【0942】
第1に、スタッド溶接条件・機器設定値記憶動作について説明する。
上記のスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作は次のステップを実行する。
(1)横向き姿勢で、被溶接材直接溶接をする場合、溶接開始前に、各スタッドの呼び径に対応させた「主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1及び押し込み距離L2」を、条件設定回路27によって予め設定して、記憶回路11の横向き姿勢・被溶接材直接溶接(以下、横向き溶接という)の溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
(2)数1乃至数3算出の主アーク期間標準入熱量Qst38を記憶回路11の横向き溶接の溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
【0944】
(3)切換溶接電流値比率α=Ib/Ia(例えば、α=1.1)及び切換標準入熱量比率β=Qstb8/Qst38(例えば、β=0.1)を、条件設定回路27によって予め設定して、記憶回路11の横向き溶接の溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
ただし、Ibは切換後の主ア−ク電流値であり、Qstb8は切換後標準入熱量であり、Qst38は標準入熱量である。
【0946】
第2に、前述したスタッド溶接条件選定動作について説明する。
作業者は表示に従って、条件設定回路27によって、例えば、M20を選択する。
(2)溶接姿勢(下向き姿勢、横向き姿勢)が表示されるので、横向き姿勢を選択する。
(3)被溶接材配置(被溶接材直接溶接、上板貫通溶接)が表示されるので、被溶接材直接溶接を選択する。
【0950】
(4)図26において、CPUは、記憶回路11に予め記憶しておいた横向き溶接の溶接条件・機器設定値対応表から、主ア−ク電流値Ia、主アーク期間全体の標準入熱量Qst、引き上げ距離L1及び押し込み距離L2を読み出して、表示回路12に表示する。
【0952】
(5)上記の(2)で、横向き姿勢を選択したので、切換溶接電流値比率α=Ib/Ia=1.1,1.15,1.2等が表示される。このとき、作業者は、例えば、1.1を選択する。続いて、切換標準入熱量比率β=Qstb8/Qst38=0.1,0.15,0.2等が表示されるので、作業者は、例えば、0.1を選択する。
【0954】
第3に、溶接機器自動動作は、前述した[B3]主アーク期間中の短絡発生による入熱不足の補償の実施例の説明と同じであるので省略する。
【0960】
[実施例F3]
作業者が、定電流特性でない特性の溶接電源装置を使用して、2次ケーブルを溶接位置まで延長して、溶接位置を被溶接物上で移動して、厚板の鋼板上に予め定めた直径のスタッドを下向き姿勢で被溶接材直接溶接をするときに、溶接回路の電圧降下補償をする場合の本発明の溶接方法について説明する。
【0962】
(1)2次ケーブルを溶接位置まで延長して、下向き姿勢で、被溶接材直接溶接をする場合、溶接開始前に、各スタッドの呼び径に対応させた「主ア−ク電流値Ia、引き上げ距離L1及び押し込み距離L2」を予め設定して、「下向き姿勢・被溶接材直接溶接・定電流特性以外の特性・電圧降下補償(以下、電圧降下補償という)」の溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
(2)数1乃至数3算出の主アーク期間標準入熱量Qst38をCPU内部の主記憶領域の電圧降下補償の溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
【0964】
(3) 溶接回路電圧降下V5を設定して、CPU内部の主記憶領域の電圧降下補償の溶接条件・機器設定値対応表に書き込む。
【0970】
第2に、スタッド溶接条件選定動作について説明する。
作業者は表示に従って、条件設定回路27によって下記の選択をする。ステップ(1)乃至(3)は、実施例F1と同様になるので説明を省略する。
(4)溶接回路電圧降下(補償する、補償しない)が表示されるので、補償するを選択する。
補償するを選択すると、溶接回路電圧降下の補償方法(2次ケーブルの断面積及び長さ、設定電圧降下)が表示されるので、設定電圧降下V5sを選択する。
【0972】
(5)溶接電源装置の特性(定電流特性か、それ以外か)が表示されるので、それ以外の特性を選択する。
(6)溶接位置が被溶接物上で(移動する、移動しない)が表示されるので、移動するを選択する。
【0974】
CPUは、記憶回路11に予め記憶した電圧降下補償の溶接条件・機器設定値対応表から、主ア−ク電流値Ia、主アーク期間全体の標準入熱量Qst、引き上げ距離L1及び押し込み距離L2を読み出して、表示回路12に表示する。
【0976】
第3に、前述した「(C)作業者が溶接開始終了スイッチ13を押して溶接を開始し、選定した値に従って溶接電源装置1及び溶接ガンGNが動作する溶接機器自動動作」は、前述した[B3]主アーク期間中の短絡発生による入熱不足の補償の実施例の説明と同じであるので省略する。
【0980】
[G3]溶接用の2次ケーブル素線の断線進行予測
不良原因G1を除去する方法について説明する。
前述した図26において、スタッドが引き上げられてアークが発生すると、予め設定した時間後にパイロット電流Ipを主ア−ク電流Iaに切り換える。パイロット電流Ip又は主ア−ク電流Iaの通電開始から所要の溶接電流値に達した後に、予め設定された主ア−ク期間Taが経過すると、スタッドSを被溶接材Wに向かって押し込む。その途中で、スタッドSが被溶接材Wに対して短絡し、押し込み短絡期間Tsだけ短絡電流Isが流れる。この一連の溶接動作のうちで、後述する押し込み短絡期間Tsのサンプリング時間(押し込み短絡検出期間)Tsdの間、演算処理回路CPUによって、押し込み短絡電流平均値I2a及び押し込み短絡電圧平均値V2aを検出する。これらの手順を下記の図27に示す。
【0982】
図27(A)は、溶接電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は溶接電源装置の出力端子で検出した出力端子電圧Vdの波形を示す図であり、同図(C)はスタッド先端の移動量Mを示す図である。
押し込み短絡電圧検出開始時点t91から押し込み短絡電圧検出終了時点t9nまでの押し込み短絡検出期間Tsdに、押し込み短絡電圧瞬時値V(t)を累積して、数30によって押し込み短絡検出期間Tsdで除算して押し込み短絡電圧平均値V2aを算出する。
【0984】
【数30】
【0986】
同様に、押し込み短絡検出期間Tsdに、押し込み短絡電流瞬時値I(t)を累積して、数31によって押し込み短絡検出期間Tsdで除算して押し込み短絡電流平均値I2aを算出する。
【0988】
【数31】
【0990】
上記数30によって算出した押し込み短絡電圧平均値V2aは、溶接電源装置から溶接箇所までの距離に関係する2次ケーブルの長さ及び直径、被溶接材の抵抗値等の違いによって変化する溶接回路電圧降下である。なお、本発明の目的を達成するためには、被溶接材の電圧降下が2次ケーブルの電圧降下よりも小であるほど、断線チェック精度が高くなる。
【0992】
次に、上記算出した押し込み短絡電圧平均値V2aを押し込み短絡電流平均値I2aで除算して、押し込み短絡検出期間Tsdの2次ケ−ブルの抵抗値Raを算出する。
Ra=V2a/I2a …(式6)
【0994】
作業開始時の初回の溶接で算出した押し込み短絡電圧平均値V2aをV21とし、押し込み短絡電流平均値I2aをI21とし、式6によって算出した作業開始時の初回の算出抵抗値Raを初期抵抗値R1とすると、初期抵抗値R1は式7のとおりとなる。
R1=V21/I21 …(式7)
この初期抵抗値R1を、2次ケ−ブルの抵抗値の基準値とする。
【0996】
次に、溶接作業開始して、同じ2次ケ−ブルを使用しているとき、N回目溶接時の算出抵抗値RaをN回目抵抗値Rnとすると、N回目抵抗値Rnは式8のとおりとなる。
Rn=V2n/I2n …(式8)
このとき、Rnは、溶接電流通電による温度上昇のため抵抗値が増加し、R1よりも大になる。
【0998】
N回目抵抗値Rnと初期抵抗値R1との差をN回目抵抗値増加分ΔRnとすると、N回目抵抗値増加分ΔRnは式9のとおりとなる。
ΔRn=Rn−R1 …(式9)
【1000】
ケ−ブル長さ及び直径によって2次ケ−ブルの抵抗値が異なり、2次ケ−ブルの温度上昇値が異なる。頭付きスタッド溶接(φ16〜22)において使用する2次ケ−ブルの直径は、80[mm2]又は100[mm2]であり、現場作業では、2次ケ−ブルの温度上昇値が150℃に達する場合もある。
そこで、ケ−ブル長さ及び直径に応じて、抵抗増加許容値をΔRrと定めておく。例えば100[m]の2次ケ−ブル長であれば、Rr100とし予め設定しておく。このΔRr=Rr100と上記N回目抵抗値増加分ΔRnとを比較する。
【1002】
N回目抵抗値増加分ΔRnが、抵抗増加許容値ΔRrよりも小のときは、通常の使用範囲における発熱が発生していると考えられる。しかし、N回目抵抗値増加分ΔRnが抵抗増加許容値ΔRrよりも大のときは異常発熱していると考えられる。この異常発熱は、通常の直径よりも細径の2次ケ−ブルを使用しているか、又は前述した屈曲部分が部分断線しているか、コネクタ等の接続不良が生じている場合である。このときは、溶接動作を停止し、作業者に2次ケ−ブル異常を知らせる。
【1004】
前述した図26の演算処理回路CPUは、後述する図28のフロチャ−トに示す機能を、ディジタル信号によって実行する演算処理回路であって、基準にする押し込み短絡検出期間Tsdに検出したディジタル溶接電圧検出信号Vddとディジタル溶接電流検出信号Iddとを入力して、押し込み短絡検出期間Tsdのスタッドを被溶接材に押し込んで短絡させる。
押し込み短絡検出期間Tsdのディジタル溶接電圧検出信号Vddとディジタル溶接電流検出信号Iddとを入力して、押し込み短絡検出期間Tsdの押し込み短絡電圧平均値V2aと押し込み短絡電流平均値I2aとを検出した後で、押し込み短絡電圧平均値V2aを押し込み短絡電流平均値I2aで除算して算出抵抗値Raを算出し、記憶回路11に記憶する。また、この算出抵抗値Raと予め定めておいた抵抗増加許容値ΔRrとを比較する。
【1006】
図28は、溶接用の2次ケーブル素線の断線進行を予測するための溶接毎の2次ケ−ブルの抵抗増加分をチェックする手順を示すフローチャートである。
(1)ステップST1は、接続している2次ケ−ブル(以下、判定基準2次ケ−ブルという)の断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損して全部断線にまで及ぶ危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加許容値ΔRrを設定する抵抗増加許容値設定ステップである。
(2)ステップST2は、判定基準2次ケ−ブルを使用して、スタッドを被溶接材に押し込んで短絡させ、短絡通電中に、押し込み短絡電圧平均値V21と押し込み短絡電流平均値I21とを検出する初期短絡電圧電流検出ステップである。
(3)ステップST3は、短絡電流通電中に検出した初回の押し込み短絡電圧平均値V21を初回の押し込み短絡電流平均値I21で除算して初期抵抗値R1を算出する初期抵抗値算出ステップである。
(4)ステップST4は、判定するスタッド溶接時の2次ケ−ブルにおいて、スタッドを被溶接材に押し込んで短絡させ、短絡電流通電中に、N回目の押し込み短絡電圧平均値V2nとN回目の押し込み短絡電流平均値I2nとを検出するN回目短絡電圧電流検出ステップである。
【1008】
(5)ステップST5は、上記押し込み短絡電圧平均値V2nを押し込み短絡電流平均値I2nで除算して判定したいN回目抵抗値Rnを算出するN回目抵抗値算出ステップである。
(6)ステップST6は、N回目抵抗値Rnから、初期抵抗値R1を減算して判定したいN回目抵抗値増加分ΔRn=Rn−R1を算出する抵抗値増加算出ステップである。
(7)ステップST7は、N回目抵抗値増加分ΔRnと抵抗増加許容値ΔRrとを比較して、2次ケーブル素線の断線進行を予測する判定抵抗値比較ステップである。
この判定するN回目抵抗値増加分ΔRnと抵抗増加許容値ΔRrとを比較した信号によって、表示、警報等を行うことができる。
【1010】
次に、押し込み短絡検出期間Tsdの間、時刻tの押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)を検出して、累積抵抗値Rntを算出し、この算出した累積抵抗値Rntと初期抵抗値R1との差のN回目溶接時の累積抵抗値増加分ΔRnt=Rnt−R1を算出し、この累積抵抗値増加分ΔRntが抵抗増加許容値ΔRrを越えたときに、溶接電流を遮断する方法について説明する。
【1012】
この方法の手順は次のとおりである。
(1)最初に、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加許容値ΔRrを予め定めておく。
(2)次に、作業開始時の初回の溶接時に短絡電流を通電して、初回の押し込み短絡検出期間Tsdの間、時刻tの押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)を検出する。
(3)上記押し込み短絡電圧瞬時値V(t)を押し込み短絡電流瞬時値I(t)で除算した瞬時抵抗値R(t)を式10によって算出する。
R(t)= V(t)/I(t) …(式10)
【1014】
(4)この瞬時抵抗値R(t)を累積して、初回の押し込み短絡検出期間Tsdの初期抵抗値R1を算出する。
(5)次に、溶接毎、例えばN回目の溶接時に短絡電流を通電してN回目の押し込み短絡検出期間Tsdの間、時刻tの押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)を検出する。
(6)押し込み短絡電圧瞬時値V(t)を押し込み短絡電流瞬時値I(t)で除算して瞬時抵抗値R(t)= V(t)/I(t)を算出する。
(7)この瞬時抵抗値R(t)を累積して、短絡電圧検出開始時点t91から短絡電圧検出終了時点t9nまでのN回目の押し込み短絡検出期間Tsd内の累積抵抗値Rntを算出する。この押し込み短絡検出期間Tsdの累積抵抗値Rntは、演算処理回路CPUが、数32によって算出する。
【1016】
【数32】
【1018】
(8)上記押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)の検出ごとに、累積抵抗値Rntと初期抵抗値R1との差のN回目溶接時の累積抵抗値増加分ΔRnt=Rnt−R1を算出する。
(9)この累積抵抗値増加分ΔRntと抵抗増加許容値ΔRrとを比較して、累積抵抗値増加分ΔRntが抵抗増加許容値ΔRrを越えたときに、溶接電流を遮断するか、又は2次ケーブルの交換時期である表示をする。
【1020】
本発明の溶接用の2次ケーブル素線の断線進行予測方法では、溶接作業前に、条件設定回路27に、初回の溶接時に算出する初期抵抗値R1又は新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhが、2回目以後の各溶接毎、例えばN回目の溶接時に短絡電流を通電して算出するN回目抵抗値Rnと比較するための基準値とするための設定をする。
また2次ケ−ブル長さに変更があれば、条件設定回路27によって、プリセットされた値(2次ケ−ブル長さ、抵抗増加許容値ΔRr等)を選択して、抵抗増加許容値ΔRrを設定している。
これらの両者とも、最初に新品の2次ケ−ブルを使用して、経年変化等でその抵抗値が増加する場合を想定しているが、経年変化等で抵抗値が減少する場合は適用できない。
【1021】
以下、上記の新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhを適用する方法を説明する。
第1の方法は、新品でない2次ケ−ブルの初期抵抗値R1を新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhに修正変更しておき、2次ケ−ブルが新品でないときの任意の溶接作業開始時の初期抵抗値R1を算出した後、新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhと比較し、その差の絶対値が、式11に示す予め定めた抵抗値変化許容値δRを越えた場合、抵抗値が大きく変化していることを表している。
δR<|R1−Rh| …(式11)
その差の絶対値|R1−Rh|が、抵抗値変化許容値δRを越えて変化したときに、表示回路12で作業者に知らせる方法である。
【1022】
第2の方法は、第1の方法において、2次ケーブルの劣化チェックの定期点検時又は任意の溶接作業開始時の短絡電流通電中に、短絡電圧平均値V2a=V21と短絡電流平均値I2a=I21とを検出して初期抵抗値R1=V21/I21を算出する方法である。
【1023】
第3の方法は、第1の方法において、溶接毎、例えばN回目抵抗値Rnを算出して上記判定基準抵抗値Rhと比較し、この差の絶対値|Rn−Rh|が予め定めた抵抗値変化許容値δRを越えた時点を、作業者に知らせる方法である。
【1024】
前述した新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhは、2次ケ−ブルの直径Dsと2次ケ−ブルの合計長さLsとから算出した抵抗値又は2次ケ−ブルの直径Ds及び2次ケ−ブルの合計長さLsから算出した合計ケーブル抵抗値と1接続箇所の接触抵抗値と接続箇所数との積の合計接触抵抗値との和である。
【1026】
図28は、溶接用の2次ケーブル素線の断線進行を予測するための溶接毎の2次ケ−ブルの抵抗増加分をチェックする手順を示すフローチャートである。
2次ケ−ブルで部分断線が生じた場合、素線断線部が図29(A)のように接触している場合の抵抗値は、正常時と変わらないために、2次ケ−ブルの異常を判定できない。そこで、引き回し等の状態によっては図29(B)のような状態になり、このとき算出抵抗値Raがばらつくために、このばらつきを検出して断線進行予測をしてもよい。
【1030】
この方法は、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの算出抵抗変動許容値ΔRmを予め定めておき、溶接開始後の算出抵抗最大値Rmaと算出抵抗最小値Rmiとの差の算出抵抗最大変動値(Rma−Rmi)が、算出抵抗変動許容値ΔRmを超えた時点を、作業者に知らせる方法である。
【1032】
上記の方法を具体化すると、算出抵抗変動許容値ΔRmを予め定めておき、溶接毎、例えばN回目の溶接時に短絡電流を通電してN回目短絡電圧平均値V2a=V2nと短絡電流平均値I2a=I2nとを検出してN回目抵抗値Rn=V2n/I2nを算出して、N回目抵抗値Rnが(N−1)回目までの算出抵抗最大値Rma又は算出抵抗最小値Rmiをこえたときは、このN回目抵抗値Rnを(N−1)回目までの算出抵抗最大値Rma又は算出抵抗最小値Rmiとし、溶接開始後のN回目算出抵抗最大値Rmaと算出抵抗最小値Rmiとの差の算出抵抗最大変動値(Rma−Rmi)が、算出抵抗変動許容値ΔRmを超えた時点を、作業者に知らせる方法である。
【1040】
[H3]第2の課題の解決手段
前述した第2の課題の解決手段について説明する。
溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となる原因を除去する方法は、下記のとおりである。
(1)保守点検時又は溶接開始前に、次のとおり、溶接不良が発生するおそれがないようにする。なお、溶接不良が発生するおそれがあるときは「不良原因表示」もする。
▲1▼保守点検時又は溶接開始前に、不良原因G1を除去する方法に記載した2次ケーブル素線の断線による抵抗値増加分が設定値を越えたときは、「2次ケーブル素線の断線が進行している」不良原因表示をする。
【1042】
▲2▼溶接開始前に、不良原因F1を除去する方法に記載した「作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置3が溶接機器設定値を算出又は選定して、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが溶接機器設定値に従って動作する溶接機器動作の自動設定」をする。
主アーク期間標準入熱量Qst38を自動設定してその値になるまで通電させることによって、アークを発生してから押し込み動作までの溶接不良の発生を除去することができる。
この場合の表示は、「不良原因表示」の代わりに、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力するための表示に従って、選択するための「設定手順表示」をする。
【1050】
(2)アークを発生して溶接を開始する前(以下、アーク発生前という)に、次のとおり、溶接不良が発生するおそれがないかどうかの確認をして、溶接不良が発生するおそれがあるときは「不良原因表示」をする。
▲1▼アーク発生前に、不良原因A1を除去する方法に記載した「スタッドの引き上げ距離L1及び押し込み距離L2をプリセットし、空間で、溶接ガンGNに取り付けた移動軸GN8を移動させて移動量を検出し、この移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して、予め設定した移動許容値の範囲を越える」と、「溶接ガン円滑移動異常表示」又は警報し、また溶接開始動作を停止する。
なお、上記の移動許容値の範囲を越えなかったときは、溶接を開始することができる。
【1060】
(3)アークを発生して溶接を開始してから押し込み動作まで(以下、アーク発生中という)に、次のとおり、溶接不良が発生する原因を除去する。
▲1▼初回溶接直後に、不良原因G1を除去する方法に記載した2次ケーブル素線の断線による抵抗値増加分が設定値を越えたときは、「2次ケーブル素線の断線が進行している」不良原因表示をする。
▲2▼前述した溶接開始前に自動設定した主アーク期間標準入熱量Qst38になるまで通電させることによって、アークを発生してから押し込み動作までの溶接不良の発生を除去することができる。
【1062】
▲3▼溶接中に、不良原因E1を除去する方法に記載した「スタッド溶接のケーブル電圧降下補償方法」を実施すると、アークを発生してから押し込み動作までの溶接不良の発生を除去することができる。
▲4▼溶接中に、不良原因G1を除去する方法に記載した2次ケーブル素線の断線が設定値を越えたときは、「2次ケーブル素線の断線が進行している」不良原因表示をする。
【1070】
(4)アーク発生中に、不良発生のおそれが生じたときは、溶接電流を遮断し押し込み動作を中止して、次のとおり、「不良発生表示」をする。
▲1▼不良原因G1を除去する方法において、累積抵抗値増加分ΔRntが、抵抗増加許容値ΔRrを越えたときに、溶接電流を遮断し押し込み動作を中止して「不良発生表示」をする。
【1080】
(5)押し込み動作をして溶接を終了した後(以下、溶接終了後という)に、溶接ガンの押し込み距離が設定値の範囲を超えていたときは、溶接不良の発生の有無を判別して、溶接不良が発生したと考えられる「不良発生原因」を表示する。
【1082】
不良発生の原因は多数あるために、作業者が不良が発生したことを表示、警報等によって知っても、その原因の究明が容易でない。
本発明において、頻度の高い不良の第1の発生原因を予め除去しておき、残りの原因によって不良が発生したときは、作業者が不良の発生原因を容易に究明することができるようにガイドする不良発生原因を表示する方法を実施すると、効果が大である。
【1084】
上記の頻度の高い不良の発生原因は、入熱不足であるので、入熱不足が発生しないように、主ア−ク電圧検出間隔平均値から算出した主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込み動作を開始する方法を実施すると、効果が大である。
【1086】
上記の入熱不足の次に、頻度の高い不良の第2の発生原因を予め除去しておき、第1及び第2以外の残りの原因によって不良が発生したときは、作業者が不良の発生原因を容易に究明することができるようにガイドする不良発生原因を表示する。
【1088】
以下、同様に、第3及び第4以外の残りの原因によって不良が発生したときは、作業者が不良の発生原因を容易に究明することができるようにガイドする不良発生原因を表示する。
【1090】
上記の第1乃至第4の不良の発生原因を除去する方法を実施したときは、それらに関するガイドする不良発生原因の表示をスキッブすると、作業者が不良の発生原因を究明する労力を軽減することができる。
【1100】
以下、頻度の高い不良の発生原因を予め除去したときのスタッド溶接の不良原因除去方法の具体例について説明する。
[実施例H1]
実施例H1は、不良原因B1を除去する方法を実施したときの不良原因表示を示す。
厚板の鋼板上に予め定めた直径のスタッドを下向き姿勢で被溶接材直接溶接(以下、下向き直接溶接という)をする最も簡単な場合に、この不良原因B1を除去する方法を実施したときは、短絡が発生しても、適切な入熱量を確保することができ、良好な溶接継手を得ることができる。
【1102】
したがって、この不良原因B1を除去する方法を実施した下向き直接溶接においては、短絡が発生しても、適切な入熱量を確保することができるので、入熱量の過不足で不良が発生することはない。
この下向き直接溶接において、溶接終了後に、溶接不良の発生の有無、例えば、押し込み距離L2の過不足を判別して、溶接不良が発生したときは、溶接不良発生原因は、入熱量の過不足ではなく、それ以外の残りの原因であるので、「不良発生原因表示」は、入熱量の過不足を除いた残りの原因の内、発生頻度が高いと考えられる「不良発生原因」を下記の順序で表示する。
【1110】
(1)「溶接ガンが円滑に移動しているかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
(2)「溶接回路の電圧降下が、(例えば、30[V]を越えていないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
【1112】
(3)「溶接用の2次ケーブル素線の断線が進行していないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
(4)「溶接機器設定値の組み合わせが適切かどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
【1114】
(5)「磁気吹きが発生していないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
(6)「スタッド・被溶接材の表面の付着物、変形等が発生していないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、「上記の他の原因を確認してください」。
【1120】
上記の実施例H1は、下向き直接溶接をする最も簡単な場合であるので、熟練者でなくても、適切なスタッドの直径によって、溶接電流値、溶接ガンの引き上げ距離及び押し込み距離を設定することができる。
【1122】
しかし、厚板の鋼板上に予め定めた直径のスタッドを横向き溶接する場合又は厚板の鋼板上に予め定めた直径のスタッドを上板貫通溶接(以下、上板貫通溶接という)する場合には、前述した不良原因D1の理由によって、主アーク期間標準入熱量Qst38だけを適正値に設定しても、溶接終了後の押し込み距離が設定値の範囲を超えていたときは、溶接不良と判定して「不良発生原因」を表示する。
【1124】
このように、主アーク期間標準入熱量Qst38だけを適正値に設定しても、不良原因B1を除去する方法だけでは溶接不良の発生を防ぐことができない場合が生じる。以下、このような場合に、溶接不良の発生を防ぐことができる方法を実施したときの不良原因表示について説明する。
【1126】
特に、横向き溶接又は上板貫通溶接においては、不良原因B1を除去する方法に加えて、横向き溶接の溶融金属の垂れ下がりによる短絡の発生防止のために、不良原因B1を除去する方法をも実施して、主アーク期間Taの後半に、主アーク電流値Iaを増加させると、溶接不良の発生を防ぐことができる。
【1130】
[実施例H2]
実施例H2は、横向き溶接又は上板貫通溶接においては、不良原因B1を除去する方法に加えて、不良原因C1を除去する方法を実施したときの不良原因表示を示す。
【1132】
この不良原因B1を除去する方法及び不良原因C1を除去する方法を実施した横向き溶接又は上板貫通溶接においては、短絡が発生しても、適切な入熱量を確保することができるので、入熱量の過不足で不良が発生することはない。
この横向き溶接又は上板貫通溶接において、溶接終了後に、溶接不良の発生の有無を判別して、溶接不良が発生したときは、溶接不良発生原因は、入熱量の過不足ではなく、それ以外の残りの原因であるので、「不良発生原因表示」は、入熱量の過不足を除いた残りの原因の内、発生頻度が高いと考えられる「不良発生原因」を下記の順序で表示する。
【1134】
(1)「溶接ガンが円滑に移動しているかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
(2)「溶接機器設定値の組み合わせが適切かどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
(3)「溶接回路の電圧降下が、(例えば、30[V]を越えていないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
【1136】
(4)「溶接用の2次ケーブル素線の断線が進行していないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。以下、実施例H1の(5)乃至(7)と同じなので省略する。
【1140】
[実施例H3]
実施例H3は、不良原因B1を除去する方法に加えて、不良原因F1を除去する方法を実施したときの不良原因表示を示す。
【1142】
この不良原因B1を除去する方法及び不良原因F1を除去する方法を実施した溶接においては、溶接機器設定値の組み合わせの不適切によって又は短絡が発生しても、適切な入熱量を確保することができるので、入熱量の過不足によって不良が発生することはない。
この溶接において、溶接終了後に、溶接不良の発生の有無を判別して、溶接不良が発生したときは、溶接不良発生原因は、入熱量の過不足及び溶接機器設定値の組み合わせの不適切ではなく、それ以外の残りの原因であるので、「不良発生原因表示」は、入熱量の過不足及び溶接機器設定値の組み合わせの不適切を除いた残りの原因の内、発生頻度が高いと考えられる「不良発生原因」を下記の順序で表示する。
【1144】
(1)「溶接ガンが円滑に移動しているかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
(2)「溶接回路の電圧降下が、(例えば、30[V]を越えていないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
【1146】
(3)「溶接用の2次ケーブル素線の断線が進行していないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。以下、実施例H1の(5)乃至(7)と同じなので省略する。
【1150】
[実施例H4]
実施例H4は、実施例H3の▲1▼不良原因B1を除去する方法及び▲2▼不良原因F1を除去する方法に加えて、▲3▼不良原因A1を除去する方法を実施したときの不良原因表示を示す。
【1152】
この不良原因B1を除去する方法を実施した溶接においては、短絡が発生しても、適切な入熱量を確保することができるので、入熱量の過不足で不良が発生することはない。
この実施例H4の溶接不良発生原因は、▲1▼入熱量の過不足、▲2▼溶接機器設定値の組み合わせの不適切及び▲3▼溶接ガンの移動の異常ではなく、それ以外の残りの原因であるので、「不良発生原因表示」は、入熱量の過不足及び溶接機器設定値の組み合わせの不適切及び溶接ガンの移動の異常を除いた残りの原因の内、発生頻度が高いと考えられる「不良発生原因」を下記の順序で表示する。
【1154】
(1)溶接回路の電圧降下が、(例えば、30[V]を越えていないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。
(2)「溶接用の2次ケーブル素線の断線が進行していないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。以下、実施例H1の(5)乃至(7)と同じなので省略する。
【1160】
[実施例H5]
実施例H5は、実施例H4の▲1▼不良原因B1を除去する方法、▲2▼不良原因F1を除去する方法及び▲3▼不良原因A1を除去する方法に加えて、▲4▼不良原因E1を除去する方法を実施したときの不良原因表示を示す。
【1162】
この実施例H5の溶接不良発生原因は、▲1▼入熱量の過不足、▲2▼溶接機器設定値の組み合わせの不適切、▲3▼溶接ガンの移動の異常及び▲4▼溶接回路電圧降下の過大ではなく、それ以外の残りの原因であるので、「不良発生原因表示」は、上記▲1▼乃至▲4▼を除いた残りの原因の内、発生頻度が高いと考えられる「不良発生原因」を下記の順序で表示する。
【1164】
(1)「溶接用の2次ケーブル素線の断線が進行していないかどうかを確認してください」。確認結果、異常がなければ、次の「不良発生原因」を表示させる。以下、実施例H1の(5)乃至(7)と同じなので省略する。
【1170】
[実施例H6]
実施例H6は、実施例H5の▲1▼不良原因B1を除去する方法、▲2▼不良原因F1を除去する方法、▲3▼不良原因A1を除去する方法及び▲4▼不良原因E1を除去する方法に加えて、▲5▼不良原因G1を除去する方法を実施したときの不良原因表示を示す。
【1172】
この実施例H6の溶接不良発生原因は、▲1▼入熱量の過不足、▲2▼溶接機器設定値の組み合わせの不適切、▲3▼溶接ガンの移動の異常、▲4▼溶接回路電圧降下の過大及び▲5▼溶接用の2次ケーブル素線の断線進行による電圧降下ではなく、それ以外の残りの原因であるので、「不良発生原因表示」は、上記▲1▼乃至▲5▼を除いた残りの原因の内、発生頻度が高いと考えられる「不良発生原因」を下記の順序で表示する。以下、実施例H1の(5)乃至(7)と同じなので省略する。
【1180】
上記の実施例H1乃至実施例H6で説明したように、溶接機器が、溶接不良となるおそれがある現象を検出して、溶接不良となるおそれがある原因を除去する構成を増加させるにしたがって、溶接不良と判定される比率を減少させ、手直し溶接、追加溶接の無駄を排除することができると共に、溶接不良と判定されたときも、溶接不良となるおそれがある原因が少なくなり、しかも、表示されるガイドに従って作業者が容易に対処することができる。
【1182】
溶接機器が、溶接不良となるおそれがある現象を検出して、溶接不良となるおそれがある原因を除去する方法は、前述した実施例に限定されることなく、スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件等に対応させて、任意に組み合わせ又は追加することができる。
【2001】
【発明の効果】
従来技術では、溶接終了後に溶接不良を判定しているために、溶接不良が既に発生してしまっているので、手直し、追加溶接等に労力を要し、作業効率を低下させていた。
本発明の共通の効果は、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となる原因を新規な方法で除去することによって溶接不良の発生を最小限にし、また溶接不良の発生のおそれが生じたときは、溶接機器が溶接動作を中止又は作業者に表示して、手直し又は追加溶接の労力を軽減して作業効率の向上を図ることができる。
【2010】
[不良原因A1を除去する方法の効果]
(1)不良原因A1を除去する方法は、溶接開始前に、溶接ガンGNに取り付けた移動軸GN8を移動させて移動量を検出し、この移動量検出値efと移動量設定値erとを比較して、予め設定した移動許容値の範囲を越えると、異常表示又は警報し、また溶接開始動作を停止し、移動許容値の範囲を越えなかったときは、溶接開始動作をする。
したがって、不良原因A1を除去する方法は、従来方式のように、各スタッドを溶接するごとに、溶接中の移動量を測定した検出値と適正な溶接を行うめの標準値とを比較して、その差が許容値内であるか否かによって、その各溶接スタッドの品質の合否判定する方法のように、溶接不良と判定された溶接スタッドは切り取って溶接し直すか追加のスタッドを溶接しなければならない労力を削減して、作業能率の向上を図ることができる。
【2011】
(2)不良原因A1を除去する方法は、ポテンショメ−タ自体又は取り付けの不良、フィードバック系回路の不良、溶接ガンの機械的な引っかかり、制御ケーブルの接続不良等を発見することができる。
(3)不良原因A1を除去する方法は、溶接電流通電前の簡単な動作チェックなので、現場作業において作業性を損なうことはない。
【2012】
(4)不良原因A1を除去する第2の方法は、確認移動設定回路37に、移動量設定値erの上限値ermと移動量設定値erの下限値er0との設定移動量をΔer=(erm−er0)の1つだけ設定又はデフォルト値の使用だけすればよいので、設定及び正常移動の確認が簡単である。
【2013】
(5)上記不良原因A1を除去する第2の方法は、異常移動が発生したとき、移動量検出値の上限値efm側、移動量検出値の下限値ef0側、移動量設定値の上限値erm側又は移動量設定値erの下限値er0側のどこに不良原因があるのかが不明であって、別の方法で調べなければならない。
それに対して、不良原因A1を除去する第3の方法は、異常移動が発生したとき、移動量検出値の上限値efm側、移動量検出値の下限値ef0側、移動量設定値の上限値erm側又は移動量設定値erの下限値er0側のどこに原因があるのかも同時に判定することができる。
【2014】
(6)不良原因A1を除去する第4の方法は、溶接ガンの移動が円滑に行われなく、部分的に機械的な引っかかりがあっても、確認範囲の最終位置において、移動量許容値又は移動量上下限許容値を越えていなければ正常移動と判別される。しかし、溶接ガンの移動中に部分的に機械的な引っかかりがあり、円滑に移動しないときは、スタッドが短絡したり、傾斜して片溶けを生じたりして、溶接スタッドが不良になることがある。
それに対して、不良原因A1を除去する第4の方法は、そのような部分的に機械的な引っかかりがあったときでも、異常移動であると判定することができる。
【2015】
(7)不良原因A1を除去する第5の方法は、不良原因A1を除去する第2の方法の効果と不良原因A1を除去する第4の方法の効果との両方の効果を有している。
【2016】
(8)不良原因A1を除去する第6の方法は、不良原因A1を除去する第3の方法の効果と、不良原因A1を除去する第4の方法の効果との両方の効果を有している。
【2020】
[不良原因B1を除去する方法の効果]
不良原因B1を除去する方法の共通の効果は、積算入熱量Qtaと標準入熱量Qstとを検出するごとに比較し、積算入熱量Qtaが標準入熱量Qstに達した時点tnで押し込みを開始するので、短絡が発生しても、適切な入熱量を確保することができ、良好な溶接品質を得ることができる。
また、不良原因B1を除去する方法は、良好な溶接品質を得ると共に、各スタッドの溶接ごとに得られたデータは各スタッドの溶接ごとに記憶させておき、このデータを演算処理装置CPU又は外部記憶装置(例えばメモリカード、フロッピーディスク等)又は直接にパソコン等に出力することによって、パソコン等で各スタッドの溶接作業の溶接品質を容易に確認することができる。また、この各スタッドの溶接ごとに得られたデ−タを集計して統計処理等を行って溶接品質の管理を行うことができる。
【2021】
不良原因B1を除去する第4乃至第6の方法は、▲1▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)又は検出期間主アーク電圧平均値Vav3nから算出した主アーク期間積算入熱量Qta3nが、主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点tn又は▲2▼主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を積算した主アーク電圧積算値Vst38が、主アーク電圧標準値Vst38に達した時点tnで押し込みを開始するので、短絡が発生しても、適切な入熱量を確保することができ、良好な溶接品質を得ることができる。
【2022】
不良原因B1を除去する第7乃至第9の方法は、不良原因B1を除去する第4乃至第6のそれぞれの方法の効果に加えて、補助ア−ク期間Tpの補助ア−ク電流・電圧検出開始時点t1から補助ア−ク電流値Ipを測定すると共に、補助ア−ク電圧平均値Vav12を測定して補助ア−ク期間積算入熱量Qta12を算出するので、入熱の測定精度が向上する。
【2023】
不良原因B1を除去する第10の方法は、不良原因B1を除去する第4乃至第9のそれぞれの方法の効果に加えて、溶接部の欠陥になる可能性のある微小短絡の一回の発生時間よりも短い数[mSec]の検出間隔Δtごとに算出した主アーク入熱量検出間隔平均値ΔQavが、主アーク入熱量検出間隔標準値ΔQarよりも低下する短絡回数Nsを計数して、この短絡回数Nsが予め設定した標準入熱許容短絡回数Nst以上になると、溶接不良を表示するか又は予め設定した時間だけ主アーク電流Iaの通電時間を追加するか又は溶接不良を表示すると共に上記通電時間を追加することによって、溶接不良を防止する効果を有している。
【2024】
不良原因B1を除去する第11の方法は、信号検出用のリード線を接続して主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)だけを測定すればよいので、大電流の検出期間中の溶接電流平均値Iavを測定する溶接電流検出器が不要である。溶接電源装置に故障が発生したときは、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)に異常が発生するので、この異常を表示させるか又は溶接電源装置の動作を停止させることもできる。
【2025】
不良原因B1を除去する第12の方法は、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を測定する必要がなく、主アーク安定後に検出期間中の溶接電流平均値Iavを少なくとも1回測定すればよいので、回路が簡単になる。
【2026】
不良原因B1を除去する第13の方法は、溶接電源装置の出力特性が定電流特性でない場合であっても、検出間隔Δtごとに、主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)及び主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を測定して主アーク期間積算入熱量Qta3nを算出することによって、小容量のエンジン発電機等の溶接電源装置に供給する容量が小さい電源装置を用いて、大電流を必要とする太径のスタッドを溶接する場合等で、溶接電源の入力電力の不足によって溶接電源の出力電圧及び出力電流が低下する場合でも、良好な溶接結果を得ることができる。
【2027】
不良原因B1を除去する第14の方法は、不良原因B1を除去する第7又は第8又は第9の方法において、不良原因B1を除去する第11の方法と同様に、信号検出用のリード線を接続して補助ア−ク電圧平均値Vav12だけを測定すればよいので、補助ア−ク電流値Ipを測定する溶接電流検出器が不要である。溶接電源装置に故障が発生したときは、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)に異常が発生するので、この異常を表示させるか又は溶接電源装置の動作を停止させることもできる。
【2028】
不良原因B1を除去する第15の方法は、不良原因B1を除去する第7又は第8又は第9の方法において不良原因B1を除去する第12の方法と同様に、検出間隔Δtごとに、補助ア−ク電流平均値Iav(Δt)を測定する必要がなく、補助ア−ク安定後に補助ア−ク電流値Ipを少なくとも1回測定すればよいので、回路が簡単になる。
【2030】
[不良原因C1を除去する方法の効果]
不良原因C1を除去する方法は、下記の効果がある
(1)アーク電流を増加させてアーク力を増大させ、被溶接材の溶け込み深さを大きくする。
(2)アーク電流を増加させてアークの広がりを拡大させて、被溶接材の溶け込み範囲を大きくする。
(3)アーク電流を増加させてアーク力を増大させ、被溶接材の溶融金属を被溶接材側に押しつけて短絡の発生を防止する。
(4)溶け込みに大きく影響する入熱は、引き上げ期間中の後半に必要とするので、この必要とする大きい入熱を引き上げ期間中の後半にだけ供給して、全入熱量を少なくして電力量を節減する。
【2031】
(5)必要とする大きい入熱を引き上げ期間中の後半にだけ供給して、溶接電源装置の過負荷時間を短くすることによって、溶接電源装置の出力容量に余裕がないときであっも、引き上げ期間よりも十分に短い短時間であれば、エンジン発電機又はスタッド溶接電源装置が過負荷に耐えて、増加させたアーク電流を通電することができる。
(6)必要とする大きい入熱を引き上げ期間中の後半にだけ供給して、溶接電源装置の過負荷時間を短くすることによって、溶接電源装置の出力容量に余裕がなく、溶接ケーブルを延長して溶接ケーブルの電圧降下によって主アーク電流値が制限を受けるときに、引き上げ期間よりも十分に短い短時間であれば、エンジン発電機又はスタッド溶接電源装置が過負荷に耐えて、増加させたアーク電流を通電することができる。
【2032】
不良原因C1を除去する第4の方法は、横向きスタッド溶接において、引き上げ期間の後半に、短時間だけアーク電流を増加させてアーク力を増大させ、溶融金属を被溶接材側に押しつけてスタッド先端の溶融金属から離して短絡を防止する効果がある。
【2040】
[不良原因D1を除去する方法の効果]
引き上げ期間の後半に、短時間だけアーク電流を増加させる第1の不良原因D1を除去する方法は、上記不良原因C1を除去する方法の効果(1)乃至(6)の他に、引き上げ期間中の後半に引き上げ距離を増加させる方法に比べて、アーク長が過大にならないので、アークが安定しており、アンダーカット等の溶接不良が発生しにくい効果がある。
【2043】
不良原因D1を除去する第3の方法は、上板貫通スタッド溶接において、引き上げ期間の後半に、アーク電流を増加させてアーク力を増大させ、鉄骨の溶け込み深さ及び範囲を大きくする効果がある。
この上板貫通溶接では、直接溶接よりも多くの入熱量を必要とするので、主アーク電流通電時間を長く設定する必要がある。したがって、この上板貫通溶接では、引き上げ期間の後半に短絡が頻繁に発生するために、押し込む前に、主アーク電流を増加することによって短絡を防止することができる。
【2044】
アーク発生中に短絡が発生しなくて、アーク発生中の入熱が適切な場合であっても、スタッドを被溶接材に押し込む指令をしてから予め定めた時刻t91よりも遅れて短絡したときは、入熱が過大となるが、短絡期間積算入熱量Qta9nが、予め設定した短絡期間標準入熱量Qst9sに達した時点t9nで押し込み短絡電流Isを遮断する第2の不良原因D1を除去する方法は、入熱が過大となって溶接不良を発生することがない。
【2050】
[不良原因E1を除去する方法の効果]
不良原因E1を除去する方法の共通の効果は、2次ケーブルによる電圧降下が変動したときでも、溶接電源装置の出力端子電圧値Vdからスタッド近傍のアーク負荷電圧値を算出して溶接回路の電圧降下の変動を補償すると共に、溶接回路の電圧降下の変動を補償した正確な積算入熱量Qtaが検出期間全体の標準入熱量Qstに達した時点tnで押し込みを開始させて、短絡が発生しても、必要な入熱量Qrを確保することである。
【2051】
不良原因E1を除去する第1乃至第3の溶接方法の効果は、初回の溶接で正確な値の溶接回路電圧降下V5を設定し、2回目以後の溶接電流値が変化しない場合は、2回目以後の溶接においても、溶接回路電圧降下V5を修正する必要がない。
【2052】
不良原因E1を除去する第4乃至第6の方法の効果は、周囲条件によって下記のとおりである。
(1)初回の溶接で正確な値の溶接回路電圧降下V5を設定しないで、2回目以後の溶接において溶接電流値が変化しない場合は、2回目の溶接において溶接回路電圧降下V5を修正すればよい。
(2)2回目以後の溶接において溶接電流値が変化する場合であっても、2回目以後の溶接において、溶接回路電圧降下V5を修正することができる。
【2054】
(3)初回の溶接で正確な値の溶接回路電圧降下V5を設定しない場合であっても、初回の溶接又は今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値V2aを検出して自動的に正確な値の溶接回路電圧降下V5に修正することができる。
【2055】
不良原因E1を除去する第9の方法の効果は、溶接電源装置が定電流特性である場合、初回の溶接又は今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値V2aを、正確な値の溶接回路電圧降下V5とすることができ、制御回路が単純なる。
【2056】
不良原因E1を除去する第10の方法の効果は、溶接電源装置が定電流特性でない場合でも、初回の溶接又は今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値V2aに、今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)と今回以前の押し込み短絡電流平均値I2aとの比Iav(Δt)/I2aを乗算した値を、溶接回路電圧降下V5とすることができる。
【2057】
不良原因E1を除去する第11の方法の効果は、溶接電源装置が定電流特性でない場合で、しかも溶接位置が被溶接物上で移動する等によって2回目以後の溶接において溶接電流値が変化する場合でも、今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)と初回の溶接で算出した算出抵抗値Raとの積を、溶接回路電圧降下V5とすることができる。
【2058】
この不良原因E1を除去する第7の方法の効果は、不良原因E1を除去する第1から不良原因E1を除去する第6までの溶接回路電圧降下V5を、溶接作業者が、2次ケーブルの断面積と接続長さとだけを認識して、溶接制御装置に入力すれば、溶接制御装置が設定抵抗値Rsを算出するので、初回の溶接から比較的正確な値の溶接回路電圧降下V5を設定することができる。
また、この方法の効果は、溶接電源装置が定電流特性であって、溶接するスタッドの直径が同じで溶接電流値を変更しないで、溶接位置が被溶接物上で移動しない等の2回目以後の溶接において溶接電流値が変化しない場合は、2回目以後の溶接においても、2次ケーブルの電圧降下を修正する必要がない。
さらに、この方法の効果は、溶接電源装置が定電流特性でないか、溶接するスタッドの直径を変更して溶接電流値を変更するか、溶接位置が被溶接物上で移動する等の2回目以後の溶接において溶接電流値が変化する場合であっても、初回の溶接から比較的正確な値の溶接回路電圧降下V5を設定することができると共に、2回目以後の溶接においても、溶接回路電圧降下V5を修正することができる。
【2059】
不良原因E1を除去する第12の方法の効果は、前述した第12の方法によって算出した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたとき、今回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nを、N回目の溶接の押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出するときの押し込み短絡電圧平均値V2aとする方法で、押し込み短絡電圧平均値V2aの頻繁な微小変動の攪乱を回避することができる。
【2060】
不良原因E1を除去する第13の方法の効果は、前述した第13の方法によって算出した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたとき、今回の溶接で検出した押し込み短絡電圧平均値V2a=V2nを、N回目の溶接の押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3pを算出するときの押し込み短絡電圧平均値V2aとする方法で、押し込み短絡電圧平均値V2aの頻繁な微小変動の攪乱を回避することができる。
【2061】
不良原因E1を除去する第14の方法の効果は、前述した第14の方法によって算出した絶対値が、予め設定した電圧降下誤差許容値ΔV5を越えたときに、今回の溶接で算出した算出抵抗値Ranを、N回目の溶接の溶接回路電圧降下V5を算出するときの算出抵抗値Raとする方法で、押し込み短絡電圧平均値V2aの頻繁な微小変動の攪乱を回避することができる。
【2070】
[不良原因F1を除去する方法の効果]
不良原因E1を除去する方法の共通の効果は、スタッドの種類、溶接姿勢及び被溶接材配置の組み合わせに応じた適切な溶接機器設定値を記載した取扱説明書、ガイドブック等を手元に持参して参照する必要がないので、作業効率を低下させることがない。
【2071】
溶接機器動作設定時には、取扱説明書、ガイドブック等にスタッド及び被溶接材の種類の組み合わせの溶接機器設定値を見つけることがてきないような場合であっても、試し打ちを繰り返して、最良の溶接結果を見つけ出す労力を軽減し作業効率を向上させることができる。
【2072】
スタッドの種類、溶接姿勢及び被溶接材配置の組み合わせに応じて複数の適切な溶接機器動作設定をしなければならないときでも、豊富な経験熟練者でなくても、短時間に、適切な溶接機器動作設定をすることができる。
また、豊富な経験及び試し打ちの繰り返しによる労力を必要としないで、短時間に、適切な溶接機器設定値の組み合わせを設定することができ、最良の溶接結果をうることができる。
【2074】
不良原因F1を除去する第3乃至第6及び第11の方法は、本発明の共通の効果に加えて、作業者が、スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件を溶接制御装置に入力すると、溶接制御装置が、その入力した条件によって、第1の溶接機器設定値を溶接条件・機器設定値対応表から読み出し、さらに、作業者が、上記以外の追加入力した溶接条件を溶接制御装置に入力すると、溶接制御装置が、この上記以外の追加入力した溶接条件と上記の第1の溶接機器設定値とを使用して第2の溶接機器設定値を自動的に算出して設定するので、作業者は、第1の溶接機器設定値を設定してその設定値に応じて第2の溶接機器設定値を設定する必要がなく、短時間に、適正値に溶接機器設定値を設定することができる。
【2075】
不良原因F1を除去する第10乃至第12及び第16及び第17の方法は、本発明の共通の効果に加えて、作業者がスタッドの直径、溶接姿勢及び被溶接材配置の組み合わせを選定するだけで、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが動作して、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から算出したアーク期間積算入熱量Qtaが、算出又は選定した主アーク期間全体の標準入熱量Qstに達した時点tnで押し込み動作を開始するので、引き上げ期間中にスタッドの溶融面が被溶接材の溶融プールに接触して短絡が発生しても、入熱不足となって押し込み距離L2が不足して溶接不良となることがない。
【2076】
不良原因F1を除去する第5及び第11の方法は、本発明の共通の効果に加えて、作業者がスタッドの直径及び横向き姿勢の組み合わせを選定するだけで、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが動作して、主アーク期間Taの後半に、主アーク電流値Iaを増加させるので、主アーク期間Taの後半において、スタッド先端部の溶融金属及び被溶接材表面の溶融金属が、重力によってフェルール内の下部に集中するために、短絡が頻繁に発生して入熱不足になったり、この被溶接材の溶融金属はフェル−ルF内の下部に溜まって、この重力によってスタッド上部の余盛り不足になることを防止することができる。
【2077】
従来の方法は、鋼板が波打ち、鉄骨と鋼板との間に隙間Dcが不定であるために、直接溶接のときの短絡時点ts0から上板貫通溶接のときのスタッド先端が鉄骨に押しまれる短絡時点ts2までの遅れ時間がばらつき、直接溶接よりも多くの入熱量を必要とするので、主アーク期間Taを長く設定するために、引き上げ期間の後半に短絡が頻繁に発生して入熱不足となって押し込み距離L2が不足して溶接不良となる。
不良原因F1を除去する第6及び第7及び第11の方法は、作業者がスタッドの直径及び上板貫通溶接の組み合わせを選定するだけで、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが動作して、主アーク期間Taの後半に、主アーク電流値Iaを増加させると共に、スタッドが溶融プ−ルに接触する(突っ込む)までは、比較的速い速度でスタッドを移動(クイックダウン)し、スタッドが溶融プ−ルに接触した後は、比較的遅い速度でスタッドを移動(スロ−ダウン)するので、従来の方法のような上記溶接不良となることがない。
【2078】
不良原因F1を除去する第8及び第12の方法は、本発明の共通の効果に加えて、作業者がスタッドの直径及び溶接回路電圧降下を「補償する」を選定して2次ケーブルの断面積及び長さ又は設定電圧降下を入力するだけで、溶接電源装置1及び溶接ガンGNが動作して、溶接電源装置から溶接箇所までの距離に関係する2次ケーブルの長さ、2次ケーブルの直径、被溶接材の抵抗値等の違いによって大きく変化する溶接回路電圧降下による消費電力P5を補償して必要な入熱Qrを得ることができる。
【2080】
[不良原因G1を除去する方法の効果]
不良原因G1を除去する方法の共通の効果は、以下のとおりである。
(1)2次ケーブルは、通常の固定配線されたケーブルに比べて、部分断線することが多く、また、本体ケ−ブルの可撓性をよくするために通常のケーブルよりも細い素線を使用しているので素線が断線しやすく、さらに、溶接箇所まで頻繁に移動させ、大電流を通電するので、固定配線されたケーブルに比べて、断面積の小さいケーブルを使用するために、発熱が大となり、素線の一部が断線すると残りの素線の断線が急速に進行し、異常発熱して危険である。特に、建築物等の大形構造物の溶接作業は、溶接箇所まで延長して頻繁に移動させ、特に、本体ケ−ブルは、屈曲回数が多く、使用を繰り返すと部分断線が急速に進行する。
それに対して、不良原因G1を除去する方法は、許容値を超えた時点で、2次ケーブルを交換することによって、上記の課題を解決することができる。
【2081】
(2)不良原因G1を除去する方法においては、N回目抵抗値増加分ΔRnが予め定められた抵抗増加許容値ΔRrを越える時点で表示、警報等が出力されるので、2次ケーブル又はコネクタが劣化しているかどうかを確認することができ、早期の交換等の対策が可能になる。また、使用可能なケーブル長を越えたときでも認識することができる。
【2082】
(3)不良原因G1を除去する方法においては、初期抵抗値R1が予め定められた抵抗値、例えば判定基準抵抗値Rhを越えると表示されるので、使用可能なケーブル長を越えていることを知ることができる。
【2083】
(4)不良原因G1を除去する第1の方法は、溶接電源装置の外部出力特性が定電流特性であるときは、前述した不良原因G1を除去する方法の共通の効果に加えて、短絡電圧平均値を算出して、この短絡電圧平均値の変化を自動的に監視するので、簡単な装置で、溶接用の2次ケーブル素線の断線の進行を予測することができる。
【2084】
(5)さらに、不良原因G1を除去する方法は、溶接回路電圧降下を測定する目的で短絡電流Isを通電する必要がなく、通常のスタッド溶接中に、溶接回路電圧降下を測定することができるので、溶接ガンと被溶接材の溶接すべき箇所付近との間を短絡して溶接回路電圧降下を測定する労力を省くことができる。
【2085】
(6)不良原因G1を除去する第2の方法は、不良原因G1を除去する方法の共通の効果の他に、溶接電源装置の外部出力特性が定電流特性でないときであっても、精度よく、適用することができる。
【2088】
(7)不良原因G1を除去する第3の方法は、押し込み短絡電圧瞬時値V(t)及び押し込み短絡電流瞬時値I(t)の検出ごとに、累積抵抗値Rntと初期抵抗値R1との差のN回目溶接時の累積抵抗値増加分ΔRnt=Rnt−R1を算出し、この累積抵抗値増加分ΔRntが抵抗増加許容値ΔRrを越えたときに、溶接電流を遮断することによって、2次ケーブルの過熱焼損を余裕をもって防止することができる。
【2090】
(8)不良原因G1を除去する第4の方法は、新品でない2次ケ−ブルの初期抵抗値R1を算出して新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhと比較し、この差の絶対値|R1−Rh|が、新品の2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗値変化許容値δRを越えた時点で、2次ケーブルを交換することによって、第1に、新品でない2次ケ−ブルの初期抵抗値R1を、新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhと比較するので、常に一定した判定基準に基づく結果(2次ケーブルの交換時期)を予測することができ、第2に、2次ケーブルの劣化チェックの保守点検時又は任意の溶接作業開始時にも、2次ケーブルの交換時期の予測をすることができる。
【2093】
(9)不良原因G1を除去する第5の方法は、新品でない2次ケ−ブルを使用して、N回目抵抗値Rnを算出して、溶接作業開始時に、新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhと比較し、この差の絶対値|Rn−Rh|が、新品の2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗値変化許容値δRを越えた時点で、2次ケーブルを交換することによって、2次ケーブルの劣化チェックの保守点検時又は任意の溶接作業開始時だけでなく、新品でない2次ケ−ブルのN回目溶接時のN回目抵抗値Rnを、新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値Rhと比較するので、常に一定した判定基準に基づく結果(2次ケーブルの交換時期)を予測することができる。
【2096】
(10)不良原因G1を除去する第6乃至第8の方法は、2次ケ−ブルで部分断線が生じた場合、素線断線部が図29(A)のように接触している場合は、正常時の抵抗値となるために、2次ケ−ブルの部分断線の進行を判定することができない。そこで、引き回し等の状態によっては図6(B)のような状態になり、このとき算出抵抗値Raがばらつくので、このばらつきを算出して、溶接用の2次ケーブル素線の断線の進行を予測することができる。
【2100】
[第2の課題H1の効果]
第2の課題解決手段の共通の効果は、溶接機器が自動で溶接不良となるおそれがある現象を検出し、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、この想定した複数の原因を表示するので、作業者がこの溶接機器が表示するガイドに従って、不良の発生原因を容易に究明することができる。
【2102】
第2の課題解決手段の第2の方法の効果は、第2の課題解決手段の共通の効果に加えて、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、作業者が過大な労力を要しない方法で、早い段階で、溶接不良となる原因を除去し、又は作業者が対処することができる。
スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある原因を除去する方法を実行することによって、この実行した不良原因除去方法に対応する「溶接不良となるおそれがある現象」は発生しなくなる。
【2103】
第2の課題解決手段の第3の方法の効果は、第2の課題解決手段の第2の方法の効果に加えて、スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある原因を除去する方法を実行させ、この実行した不良原因除去方法以外の「溶接不良となるおそれがある現象」を検出し、この検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定し、この想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示することによって、溶接不良を少なくすると共に、残りの原因によって不良が発生したときは、溶接不良となる原因の項目が少なくなり、作業者が不良の発生原因を究明して対処する労力を少なくすることができる。
【2104】
第2の課題解決手段の第4の方法の効果は、第2の課題解決手段の第3の方法の効果に加えて、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となるおそれがある現象を検出した時点で、スタッド溶接機器の次の動作を停止するので、手直しを少なくして作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、引き上げ距離L1及び押し込み距離L2を測定して測定結果を記録するための位置検出手段GN3を備えた従来方式の溶接ガンを示す図である。
【図2】図2は、横向き溶接中のフェルール内の溶融金属の状態を示す図である。
【図3】図3は、従来の溶接動作において、主アーク期間Taの後半で短絡が発生したときの波形を示す図で、同図(A)は溶接電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は溶接電源装置の出力端子電圧Vdの波形を示す出力端子電圧波形図であり、同図(C)はスタッド先端の移動量Mを示すスタッド先端移動図である。
【図4】図4は、鉄骨上に鋼板を配設したときに、鋼板が波打ち、鉄骨と鋼板との間に隙間(クリアランス)が生じている状態を示す鉄骨・鋼板位置関係図である。
【図5】図5は、鉄骨と鋼板との間に隙間があるときの鋼板とスタッド先端との位置関係を示す鋼板・スタッド位置関係図である。
【図6】図6は、通常のスタッド溶接をするときの2次ケ−ブルの接続状態を示す図である。
【図7】図7は、本出願人の従来方法のスタッド溶接の2次ケ−ブルの劣化状態をチェックするときの2次ケ−ブルの接続状態を示す図である。
【図8】図8は、アナログ信号によって、移動量設定値erと移動量検出値efとを比較する溶接ガン移動装置を示す図である。
【図9】図9(A)は移動量設定値erの時間経過を示す図であり、同図(B)は移動量検出値efが移動量設定値erに追従している移動量検出信号efの時間経過を示す図である。
【図10】図10は、移動量設定信号erと移動量検出信号efとの差の移動量比較値の絶対値が、移動量差許容値δよりも大のときの移動量設定信号er及び移動量検出信号efの時間経過を示す図である。
【図11】図11は、マイクロプロセッサを用いてデジタル信号によって移動量設定値erと移動量検出値efとを比較する溶接ガン移動装置を示す図である。
【図12】図12(A)は、正常な溶接時の検出期間中の溶接電流平均値Iavを算出する説明図であり、同図(B)は、正常な溶接時の検出間隔Δtごとに主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を算出する説明図であり、同図(C)は正常な溶接時のスタッド先端の移動量Mを示す図である。
【図13】図13(A)は、各溶接中の検出期間中の溶接電流平均値Iav又は主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を算出する説明図であり、同図(B)は、各溶接中の検出間隔Δtごとに主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を算出する説明図である。
【図14】図14は、主アーク期間Ta中に、引き上げ不良、異常アーク現象による片溶け等によって、スタッドSが、一時的に、溶融プールに短絡した場合の溶接電圧波形及び溶接電流波形を示す図である。
【図15】図15(A)は、主アーク期間Ta中に微小短絡が発生した場合の出力電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は、主アーク期間Ta中に短絡が発生した場合の出力端子電圧Vdの波形を示す図である。
【図16】図16は、本発明の主電流切換スタッド溶接の不良原因除去方法を実施するスタッド溶接装置の出力波形図であり、同図(A)は出力電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は溶接電源装置の出力端子電圧Vdの波形を示す出力端子電圧波形図であり、同図(C)はスタッド先端の移動量Mを示すスタッド先端移動図である。
【図17】図17は横向き溶接終了後の余盛り形状を示す図であって、同図の符号(A)は従来の溶接方法で溶接した余盛りが適切に形成されていないために溶接強度が不足する例を示す図であり、同図の符号(B)は本発明の溶接方法で溶接した余盛りが適切に形成されているので溶接強度が確保される例を示す図である。
【図18】図18(A)は、基準にするスタッドを被溶接材に押し込む指令をしてから短絡電圧検出開始時点t91までに短絡したときの押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssの押し込み短絡電流平均値Isを算出する説明図であり、同図(B)は、そのときの押し込み短絡入熱標準値設定期間Tssの押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を算出する説明図であり、同図(C)はそのときのスタッド先端の移動量Mを示す図である。
【図19】図19(A)は、判定したいスタッドを被溶接材に押し込む指令をしてから短絡電圧検出開始時点t91よりも遅れて短絡したときの押し込み短絡検出期間Tsdの押し込み短絡電流平均値Isを算出する説明図であり、同図(B)は、そのときの押し込み短絡検出期間Tsdの押し込み短絡電圧検出間隔平均値Vs(Δt)を算出する説明図である。
【図20】図20(A)は、各溶接中の溶接電流値Ioから検出期間中の溶接電流平均値Iav又は主ア−ク電流検出間隔平均値Iav(Δt)を検出する説明図であり、同図(B)は、各溶接中の出力端子電圧Vdから、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)を検出する説明図である。
【図21】図21(A)は、各溶接中の出力電流Ioが、定電流特性であって一定値Iavであることを示す図であり、同図(B)は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを算出する説明図である。
【図22】図22(A)は、各溶接中の出力電流Ioから検出期間中の溶接電流平均値Iavを算出する説明図であり、同図(B)は、主ア−ク電圧検出間隔平均値Vav(Δt)から溶接回路電圧降下V5を減算した算出主ア−ク電圧検出間隔平均値V3を積算した主アーク期間入熱積算電圧値Vqt3nを算出する説明図である。
【図23】図23は、主アーク期間Ta中に、引き上げ不良、異常アーク現象による片溶け等によって、スタッドSが、一時的に、溶融プールに短絡した場合の溶接電圧波形及び溶接電流波形を示す図である。
【図24】図24(A)は、主アーク期間Ta中に微小短絡が発生した場合の出力電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は、主アーク期間Ta中に短絡が発生した場合の出力端子電圧Vdの波形を示す図である。
【図25】図25は、下向き姿勢・被溶接材直接溶接の溶接条件・機器設定値対応表である。
【図26】図26は、本発明のスタッド溶接の不良原因除去方法を実施するスタッド溶接装置のブロック図である。
【図27】図27(A)は、溶接電流Ioの波形を示す溶接電流波形図であり、同図(B)は溶接電源装置の出力端子で検出した出力端子電圧Vdの波形を示す図であり、同図(C)はスタッド先端の移動量Mを示す図である。
【図28】図28は、溶接用の2次ケーブル素線の断線進行を予測するための溶接毎の2次ケ−ブルの抵抗増加分をチェックする手順を示すフローチャートである。
【図29】図29は(A)は、2次ケ−ブルの断線部が接触している場合の状態を示す図であり、同図(B)は、断線部の素線が離れている状態を示す図である。
【符号の説明】
1 …溶接電源装置
3 …溶接制御装置
4 …ガン移動確認制御装置
5 …出力電流指令回路
6、21…D/A変換回路
7、8、20…A/D変換回路
10…移動量設定回路
11…記憶回路
12…表示回路
13…溶接開始終了スイッチ
15…溶接電流調整回路
17…2次ケーブル/溶接ケーブル
17a…本体ケ−ブル/断線チェックしたい2次ケーブル
17b…断線チェック部分
18…溶接動作禁止回路
19…移動範囲確認スイッチ
23…当接部材
24…サ−ボモ−タ
25…モ−タ可動部
26…モ−タ駆動回路
27…条件設定回路
31…ガン移動量表示器
32…ガン移動量測定回路
33…温度上昇値測定器
34…熱電対
37…確認移動設定回路
43…移動指令回路
44…比較回路
45…移動上下限異常判定回路
46…移動量比較異常判定回路
47…OR回路
48…NOT回路
50…マイクロプロセッサ
51…A/D変換回路
52…D/A変換回路
A …3相交流電源
CPU…演算処理回路
Da…アーク長
Dc…隙間(クリアランス)
Dd…基準点Pからの押し込み距離/設定値どおりの押し込み距離
Dd0…(押し込み不足のときの)実際の押し込み距離
De…鉄骨表面からの押し込み距離
Dp…板厚
Dup…引き上げ距離
ef…移動量検出信号/移動量検出値
ef0…移動量検出値の下限値
ef1…移動中の任意の時点tm1の移動量検出信号/移動量検出値
efm…移動量検出値の上限値
er…移動量設定信号/移動量設定値
erm…移動量設定値の上限値
er1…移動中の任意の時点tm1の移動量設定信号
(er−ef)…移動量比較値
(erm−efm)…上限移動量設定検出値差
(er0−ef0)…下限移動量設定検出値差
Δer=(erm−er0)…設定移動量
Δef=(efm−ef0)…検出移動量
(Δer−Δef)…移動量設定検出値差
|er1−ef1|…移動量比較値の絶対値
F …フェル−ル
GN…溶接ガン
GN1…溶接ガン本体
GN2…当接部材
GN3…位置検出手段
GN3a…ポテンショメ−タ
GN3b…ポテンショメ−タの軸
GN4…連結板
GN5…可動鉄心
GN6…電磁石
GN7…圧縮バネ
GN8…移動軸
GN9…保持具
GN11…ストッパ金具
GN12…本体ケーブル接続金具
I(t)…各時刻tの溶接電流値
I21…初回溶接時の短絡電流平均値/初回の押し込み短絡電流平均値
I2a…押し込み短絡電流平均値/短絡電流平均値
I2n…N回目溶接時の短絡電流平均値/N回目の押し込み短絡電流平均値
Ia…主ア−ク電流/(切換前の)主ア−ク電流値
Iav…検出期間中の溶接電流平均値
Iav(Δt)…主ア−ク電流検出間隔平均値
Ib…切換後の主ア−ク電流/切換後の主ア−ク電流値
IC…溶接電流検出回路
Ic…溶接電流検出信号
Io…溶接電流/溶接電流値
Ip…補助ア−ク電流
Is…押し込み短絡電流/(検出期間全体又は検出期間中の)押し込み短絡電流平均値
Is(Δt)…押し込み短絡電流検出間隔平均値
Ita3n…主アーク期間積算電流値
I(t)…押し込み短絡電流瞬時値
L1…引き上げ距離
L2…押し込み距離
M …スタッド先端の移動量
MC…移動量検出回路
Mc…移動量検出信号
n …(検出間隔Δtの)検出回数
Ns…短絡回数
Nst…標準入熱許容短絡回数
P …基準点
P5…電圧降下消費電力
Pst…標準供給電力量
Pta…主アーク期間積算供給電力量
Qr…必要な入熱量
Qst…標準入熱量
Qst18…(予め設定した)補助・主アーク検出期間全体の標準入熱量
Qst38…主アーク期間標準入熱量
Qst3b…切換前標準入熱量
Qstb8…切換後標準入熱量
Qst9s…短絡期間標準入熱量
Qta …(主アーク期間)積算入熱量/(短絡期間)標準入熱量
Qta12…補助ア−ク期間積算入熱量
Qta1n…補助・主アーク期間積算入熱量
Qta3n…主アーク期間積算入熱量
Qtab8…切換後主ア−ク期間積算入熱量
Qta9n…短絡期間積算入熱量
ΔQar…主アーク入熱量検出間隔標準値
ΔQas…検出間隔ごとの短絡発生時の入熱量平均値
ΔQav…主アーク入熱量検出間隔平均値
ΔQst…押し込み短絡入熱量検出間隔標準値
R1 …初期抵抗値[V21/I21]
Ra …算出抵抗値[V2a/I2a]
Rh …(新品の2次ケ−ブルの)判定基準抵抗値
Rma …算出抵抗最大値
Rmi …算出抵抗最小値
(Rma−Rmi)…算出抵抗最大変動値
|R1−Rh|…初期抵抗値と判定基準抵抗値との差の絶対値
|Rn−Rh|…N回目抵抗値と判定基準抵抗値との差の絶対値
Rn…N回目抵抗値[V2n/I2n]
Rnt…累積抵抗値
Rs…設定抵抗値
R(t)…瞬時抵抗値
ΔRm…算出抵抗変動許容値
ΔRn…N回目抵抗値増加分[Rn−R1]
ΔRnt…(N回目溶接時の)累積抵抗値増加分[Rnt−R1]
ΔRr…抵抗増加許容値
S …スタッド
S18…溶接動作禁止信号
S45…移動上下限異常信号
S46…移動量比較異常信号
S47…異常信号
t0…補助ア−ク電流通電開始時点
t01乃至t0n…各検出間隔Δtの検出開始時点
t1…補助ア−ク電流・電圧検出開始時点
T12…補助アーク入熱標準値設定期間/補助アーク検出期間
t2…主ア−ク電流通電開始時点
t3…主アーク電流・電圧検出開始時点
T38…主アーク入熱標準値設定期間
T3b…切換前通電期間
T3n…主アーク積算値検出期間
t8…主ア−ク電流・電圧検出終了時点
t9…主ア−ク期間終了時点/短絡期間開始時点/(押し込み)短絡開始時点
t91…(押し込み)短絡電圧検出開始時点
t91乃至t9n…各検出間隔Δtの検出開始時点
t93…短絡電圧検出開始時点t91よりも遅れて短絡した時点
t9s…短絡電圧検出終了時点
t9n…短絡期間標準入熱量Qst9sに達した時点/短絡電圧標準値Vst9sに達した時点/(押し込み)短絡電圧検出終了時点
t10…出力電流通電終了時点/短絡電流通電終了時点/(押し込み)短絡電流通電終了時点
Ta…溶接時間/主アーク期間
tas…主アーク期間Ta中の短絡発生時点
tb…主ア−ク電流値切換時点
Tb8…切換後通電期間
Tbn…切換後通電期間
Tp…補助ア−ク期間
Tm…押し込み期間
tm1…移動中の任意の時点
tn…主アーク期間標準入熱量Qst38に達した時点/切換後標準入熱量Qstb8に達した時点
Trn…N回目の測定温度上昇値
Trs…判定温度上昇値
Ts…押し込み短絡期間
ts0…直接溶接のときの押し込み時短絡開始時点
ts1…上板貫通溶接のときの押し込み時短絡開始時点
ts2…押し込み開始時点
Tsd…押し込み短絡検出期間
Tss…押し込み短絡入熱標準値設定期間
ΔT91…正常時の短絡開始時間遅れ
ΔT93…異常時の短絡開始時間遅れ
Δt…検出間隔
V(t)…各時刻tの溶接電圧値
V21…初回の押し込み短絡電圧平均値
V2n…N回目の押し込み短絡電圧平均値
V2a…押し込み短絡電圧平均値/短絡電圧平均値
V3…算出主ア−ク電圧検出間隔平均値
V3p…押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値
V3s…設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値
V5…溶接回路電圧降下
V5s…設定電圧降下
Va…ア−ク電圧値/切換前の主アーク電圧値
Va1…切換前の主アーク電圧値
Va2…切換後の主アーク電圧値
Vas(Δt)…検出間隔ごとの短絡発生時の出力端子電圧平均値
Vav12…補助ア−ク電圧平均値
Vav3n…検出期間主アーク電圧平均値
Vav(Δt)…主ア−ク電圧検出間隔平均値
VC…溶接電圧検出回路
Vc…溶接電圧検出信号
Vd…出力端子電圧/出力端子電圧値
Vpt3n…主アーク期間積算供給電圧値
Vqa…検出期間入熱電圧平均値
Vqt3n…主アーク期間入熱積算電圧値
Vs(Δt)…押し込み短絡電圧検出間隔平均値
Vs9n…検出期間短絡電圧平均値
Vst38…主アーク電圧標準値
Vst9s…短絡電圧標準値
Vta3n…主アーク期間積算電圧値
Vta9n…短絡期間積算電圧値
V(t)…押し込み短絡電圧瞬時値
ΔV2n…N回目短絡電圧増加分[V2n−V21]
ΔV5…電圧降下誤差許容値
ΔVr…抵抗増加電圧降下許容値
W …被溶接材
Wa…鉄骨
Wb…鋼板
Wm…溶融金属
Wr…余盛り
α …切換溶接電流値比率[Ib/Ia]
β …切換標準入熱量比率[Qstb8/Qst38]
γ …移動量許容値
γ1…移動量上限許容値
γ12…移動量上下限許容値
γ2…移動量下限許容値
δ …移動量差許容値
δR…2次ケ−ブルの過熱焼損の危険を生ずる抵抗値変化許容値
τ …切換通電期間比率
Claims (45)
- スタッドを引き上げ及び押し込む移動軸の端部に取り付けた保持具にスタッドを保持して溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、スタッドの引き上げ距離及び押し込み距離をプリセットし、溶接開始前に、溶接ガンに取り付けた移動軸を移動させて移動量を検出し、前記移動量検出値と移動量設定値とを比較して、前記比較値が予め設定した移動許容値の範囲を越えると、異常表示又は警報し、または溶接開始動作を停止し、前記移動許容値の範囲を越えなかったときは、溶接開始動作をするスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項1の移動量検出値と移動量設定値との比較値が、移動量設定値の上限値から移動量設定値の下限値までの設定移動量と移動量検出値の上限値から移動量検出値の下限値までの検出移動量との差の移動量設定検出値差であり、請求項1の移動許容値が、前記移動量設定検出値差と比較する移動量許容値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項1の移動量検出値と移動量設定値との比較値が、移動量設定値の上限値と移動量検出値の上限値との差の上限移動量設定検出値差及び移動量設定値の下限値と移動量検出値の下限値との差の下限移動量設定検出値差であり、請求項1の移動許容値が、前記上限移動量設定検出値差と比較する移動量上限許容値及び下限移動量設定検出値差と比較する移動量下限許容値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項1の移動量検出値と移動量設定値との比較値が、移動中の任意の時点の移動量設定信号と移動中の任意の時点の移動量検出信号との差の移動量比較値の絶対値であり、請求項1の移動許容値が、前記移動量比較値の絶対値と比較する移動量差許容値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項1の移動量検出値と移動量設定値との比較値が、移動量設定値の上限値から移動量設定値の下限値までの設定移動量と移動量検出値の上限値から移動量検出値の下限値までの検出移動量との差の移動量設定検出値差であると共に、移動中の任意の時点の移動量設定信号と移動中の任意の時点の移動量検出信号との差の移動量比較値の絶対値であり、請求項1の移動許容値が、前記移動量設定検出値差と比較する移動量許容値であると共に、前記移動量比較値の絶対値と比較する移動量差許容値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項1の移動量検出値と移動量設定値との比較値が、移動量設定値の上限値と移動量検出値の上限値との差の上限移動量設定検出値差及び移動量設定値の下限値と移動量検出値の下限値との差の下限移動量設定検出値差であると共に、移動中の任意の時点の移動量設定信号と移動中の任意の時点の移動量検出信号との差の移動量比較値の絶対値であり、請求項1の移動許容値が、前記上限移動量設定検出値差と比較する移動量上限許容値及び下限移動量設定検出値差と比較する移動量下限許容値であると共に、前記移動量比較値の絶対値と比較する移動量差許容値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、主ア−ク電圧検出間隔平均値から算出した主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間積算電圧値が、予め設定した主アーク期間標準入熱量から算出した主アーク電圧標準値に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後にスタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、検出期間主アーク電圧平均値から算出した主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、溶接開始前に、正常な溶接時の主アーク期間標準入熱量を予め設定しておき、主アーク電流・電圧検出開始時点から、主ア−ク電圧検出間隔平均値を測定し、前記主ア−ク電圧検出間隔平均値と検出期間中の溶接電流平均値との積の主アーク入熱量検出間隔平均値を積算して主アーク期間積算入熱量を算出し、前記主アーク期間積算入熱量が、前記主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、溶接開始前に、正常な溶接時の主アーク期間標準入熱量を予め設定しておき、主アーク電流・電圧検出開始時点から、主ア−ク電圧検出間隔平均値を測定し、前記主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算して主アーク期間積算電圧値を算出し、前記主アーク期間積算電圧値が、前記主アーク期間標準入熱量を検出期間中の溶接電流平均値で除算した主アーク電圧標準値に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、溶接開始前に、正常な溶接時の主アーク期間標準入熱量を予め設定しておき、主アーク電流・電圧検出開始時点から、主ア−ク電圧検出間隔平均値を測定し、前記主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算して主アーク期間積算電圧値を算出し、前記主アーク期間積算電圧値を検出回数で除算して検出期間主アーク電圧平均値を算出し、前記検出期間主アーク電圧平均値と検出期間中の溶接電流平均値と主アーク積算値検出期間との積の主アーク期間積算入熱量を算出し、前記主アーク期間積算入熱量が、前記主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項10又は請求項11又は請求項12の方法において、溶接開始前に、溶接部の欠陥になる可能性のある微小短絡の一回の発生時間よりも短い検出間隔及び短絡が発生しないときのアーク入熱量検出間隔標準値及び主アーク期間標準入熱量を確保する標準入熱許容短絡回数を予め設定しておき、主アーク電流・電圧検出開始時点から、主ア−ク電圧検出間隔平均値を測定して、主ア−ク電圧検出間隔平均値と検出期間中の溶接電流平均値との積の主アーク入熱量検出間隔平均値を算出し、前記主アーク入熱量検出間隔平均値が前記アーク入熱量検出間隔標準値よりも低下した短絡回数を計数して、前記短絡回数が前記標準入熱許容短絡回数以上になると溶接不良を表示するか又はさらに予め設定した時間だけ主アーク電流の通電時間を追加するか又は前記溶接不良を表示すると共に通電時間を追加するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、引き上げ期間の後半に、主アーク電流を増加させる主電流切換スタッド溶接の不良原因除去方法。
- 被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、押し込み短絡電圧検出間隔平均値から算出した短絡期間積算入熱量が、予め設定した短絡期間標準入熱量に達した時点で押し込み短絡電流を遮断するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、短絡期間積算電圧値が、予め設定した短絡期間標準入熱量から算出した短絡電圧標準値に達した時点で押し込み短絡電流を遮断するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、検出期間短絡電圧平均値から算出した短絡期間積算入熱量が、予め設定した短絡期間標準入熱量に達した時点で押し込み短絡電流を遮断するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、溶接開始前に、短絡電圧検出開始時点までに押し込み短絡が開始するときの短絡期間標準入熱量を予め設定しておき、短絡電圧検出開始時点から、押し込み短絡電圧検出間隔平均値を測定し、前記押し込み短絡電圧検出間隔平均値と検出期間中の押し込み短絡電流平均値との積の押し込み短絡入熱量検出間隔平均値を積算して短絡期間積算入熱量を算出し、前記短絡期間積算入熱量が、前記短絡期間標準入熱量に達した時点で押し込み短絡電流を遮断するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、溶接開始前に、短絡電圧検出開始時点までに押し込み短絡が開始するときの短絡期間標準入熱量を予め設定しておき、短絡電圧検出開始時点から、押し込み短絡電圧検出間隔平均値を測定し、前記押し込み短絡電圧検出間隔平均値を積算して短絡期間積算電圧値を算出し、前記短絡期間積算電圧値が、前記短絡期間標準入熱量を検出期間中の押し込み短絡電流平均値で除算した短絡電圧標準値に達した時点で押し込み短絡電流を遮断するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 被溶接材からスタッドを引き上げてアークを発生させ、引き上げ期間の終了後に、被溶接材にスタッドを所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、溶接開始前に、短絡電圧検出開始時点までに押し込み短絡が開始するときの短絡期間標準入熱量を予め設定しておき、短絡電圧検出開始時点から、押し込み短絡電圧検出間隔平均値を測定し、前記押し込み短絡電圧検出間隔平均値を積算して短絡期間積算電圧値を算出し、前記短絡期間積算電圧値を検出回数で除算して検出期間短絡電圧平均値を算出し、前記検出期間短絡電圧平均値と検出期間中の押し込み短絡電流平均値と押し込み短絡検出期間との積の短絡期間積算入熱量を算出し、前記短絡期間積算入熱量が、前記短絡期間標準入熱量に達した時点で押し込み短絡電流を遮断するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後にスタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、主ア−ク電圧検出間隔平均値から溶接回路電圧降下を減算して算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を基に積算した主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後にスタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、主ア−ク電圧検出間隔平均値から溶接回路電圧降下を減算して算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間入熱積算電圧値が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に対応する主アーク電圧標準値に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後にスタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、主ア−ク電圧検出間隔平均値から溶接回路電圧降下を減算して算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間入熱積算電圧値を主アーク積算値検出期間で除算した検出期間入熱電圧平均値を算出すると共に、主ア−ク電流検出間隔平均値を積算した主アーク期間積算電流値を主アーク積算値検出期間で除算した検出期間中の溶接電流平均値を算出し、前記検出期間入熱電圧平均値と前記検出期間中の溶接電流平均値と主アーク積算値検出期間との積の主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込みを開始するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後にスタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、初回の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値から予め設定した溶接回路電圧降下を減算して設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込んで押し込み短絡電圧平均値を検出し、2回目以後の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値から今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値に対応した溶接回路電圧降下を減算して押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間積算入熱量が、前記主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値を検出し、以後、前記2回目以後の溶接の工程を繰り返すスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後にスタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、初回の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値から予め設定した溶接回路電圧降下を減算して設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間入熱積算電圧値が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に対応する主アーク電圧標準値に達した時点で押し込んで押し込み短絡電圧平均値を検出し、2回目以後の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値から今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値に対応した溶接回路電圧降下を減算して押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間入熱積算電圧値が、前記主アーク電圧標準値に達した時点で押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値を検出し、以後、前記2回目以後の溶接の工程を繰り返すスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させた後にスタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接において、初回の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値から予め設定した溶接回路電圧降下を減算して設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記設定算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間入熱積算電圧値を主アーク積算値検出期間で除算した検出期間入熱電圧平均値を算出すると共に、主ア−ク電流検出間隔平均値を積算した主アーク期間積算電流値を主アーク積算値検出期間で除算した検出期間中の溶接電流平均値を算出し、前記検出期間入熱電圧平均値と前記検出期間中の溶接電流平均値と主アーク積算値検出期間との積の主アーク期間積算入熱量が、予め設定した主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込んで押し込み短絡電圧平均値を検出し、2回目以後の溶接の主ア−ク電圧検出間隔平均値から今回の溶接以前に検出した押し込み短絡電圧平均値に対応した溶接回路電圧降下を減算して押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を算出し、前記押し込み算出主ア−ク電圧検出間隔平均値を積算した主アーク期間入熱積算電圧値を主アーク積算値検出期間で除算した検出期間入熱電圧平均値を算出すると共に、主ア−ク電流検出間隔平均値を積算した主アーク期間積算電流値を主アーク積算値検出期間で除算した検出期間中の溶接電流平均値を算出し、前記検出期間入熱電圧平均値と前記検出期間中の溶接電流平均値と主アーク積算値検出期間との積の主アーク期間積算入熱量が、前記主アーク期間標準入熱量に達した時点で押し込むか、又は押し込んで押し込み短絡電圧平均値を検出し、以後、前記2回目以後の溶接の工程を繰り返すスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項24又は請求項25又は請求項26の予め設定した溶接回路電圧降下が、予め入力した2次ケーブルの断面積及び長さから算出した設定抵抗値と主ア−ク電流値との積であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項24又は請求項25又は請求項26の予め設定した溶接回路電圧降下が、溶接回路の電圧降下に相当する予め設定した設定電圧降下V5sであるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項24又は請求項25又は請求項26の押し込み短絡電圧平均値に対応した溶接回路電圧降下が、押し込み短絡電圧平均値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項24又は請求項25又は請求項26の押し込み短絡電圧平均値に対応した溶接回路電圧降下が、今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値に、今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値又は検出期間中の溶接電流平均値と今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電流平均値との比を乗算した電圧値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 請求項24又は請求項25又は請求項26の押し込み短絡電圧平均値に対応した溶接回路電圧降下が、今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電圧平均値を、今回以前の溶接で記憶した押し込み短絡電流平均値で除算して算出抵抗値を算出し、この算出抵抗値と今回の溶接の主ア−ク電流検出間隔平均値又は検出期間中の溶接電流平均値との積の電圧値であるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させ、スタッド及び被溶接材が溶融した後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置が前記入力値に対応した所要の入熱と溶接ガンの移動量とを算出又は選定して、溶接電源装置及び溶接ガンが前記溶接機器設定値に従って動作するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させ、スタッド及び被溶接材が溶融した後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業者がスタッドの直径と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置が前記入力値に対応した所要の入熱を供給する溶接電流値と溶接時間と溶接ガンの移動量とを算出又は選定して、溶接電源装置及び溶接ガンが前記溶接機器設定値に従って動作するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させ、スタッド及び被溶接材が溶融した後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業者がスタッドの種類と溶接姿勢と被溶接材配置とを入力すると、溶接制御装置が前記入力値に対応した所要の入熱と溶接ガンの移動量とを含む第1の溶接機器設定値を算出又は選定し、さらに作業者が追加入力した溶接条件と前記第1の溶接機器設定値とから第2の溶接機器設定値を算出し、溶接電源装置及び溶接ガンが前記第1及び第2の溶接機器設定値に従って動作するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッドを被溶接材から引き上げてアークを発生させ、スタッド及び被溶接材が溶融した後に、スタッドを被溶接材に所定の押し込み距離だけ押し込んで溶接するスタッド溶接の不良原因除去方法において、スタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件と溶接機器設定値との関係を、溶接制御装置の記憶回路に記憶するスタッド溶接条件・機器設定値記憶動作と、作業者がスタッド・被溶接材条件及び周囲設置条件を入力するスタッド溶接条件選定動作と、作業者が溶接を開始すると、溶接制御装置が前記作業者の入力した値に応じた前記溶接機器設定値を選定し、溶接電源装置及び溶接ガンが前記選定した溶接機器設定値に従って動作する溶接機器自動動作とからなるスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加電圧降下許容値を予め定めておき、作業開始時の初回の溶接時に、スタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、初回の押し込み短絡電圧平均値を測定し、次に、N回目にスタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、N回目の押し込み短絡電圧平均値を測定して、前記N回目の押し込み短絡電圧平均値と前記初回の押し込み短絡電圧平均値との差のN回目の押し込み短絡電圧増加分を算出し、前記N回目の押し込み短絡電圧増加分と前記抵抗増加電圧降下許容値とを比較して、前記N回目の押し込み短絡電圧増加分が前記抵抗増加電圧降下許容値を越えた時点を、2次ケーブルの交換時期とするスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加許容値を予め定めておき、作業開始時の初回の溶接時に、スタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、押し込み短絡電圧平均値と押し込み短絡電流平均値とを検出して初期抵抗値を算出し、次に、N回目にスタッドを被溶接材に押し込んだ後の短絡電流通電中に、押し込み短絡電圧平均値と押し込み短絡電流平均値とを検出してN回目抵抗値を算出して、前記N回目抵抗値と前記初期抵抗値との差のN回目抵抗値増加分を算出し、前記N回目抵抗値増加分と前記抵抗増加許容値とを比較して、前記N回目抵抗値増加分が前記抵抗増加許容値を越えた時点を、2次ケーブルの交換時期とするスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、作業開始前に接続している2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗増加許容値を予め定めておき、作業開始時の初回の溶接時に短絡電流を通電して、初回の押し込み短絡検出期間の間、押し込み短絡電圧瞬時値及び押し込み短絡電流瞬時値を検出し、押し込み短絡電圧瞬時値を押し込み短絡電流瞬時値で除算して瞬時抵抗値を算出して前記瞬時抵抗値を累積して、初回の押し込み短絡検出期間の初期抵抗値を算出し、次に、N回目の溶接時に短絡電流を通電してN回目の押し込み短絡検出期間の間、押し込み短絡電圧瞬時値及び押し込み短絡電流瞬時値を検出し、押し込み短絡電圧瞬時値を押し込み短絡電流瞬時値で除算して瞬時抵抗値を算出して、前記瞬時抵抗値を累積して、N回目の押し込み短絡検出期間内の累積抵抗値を算出し、前記押し込み短絡電圧瞬時値及び押し込み短絡電流瞬時値の検出ごとに、前記累積抵抗値と前記初期抵抗値との差のN回目溶接時の累積抵抗値増加分を算出し、前記累積抵抗値増加分と前記抵抗増加許容値とを比較して、前記累積抵抗値増加分が前記抵抗増加許容値を越えたときに、溶接電流を遮断するか、又は2次ケーブルの交換時期である表示をするスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、2次ケーブルの劣化チェックの保守点検時又は任意の溶接作業開始時に、新品の2次ケ−ブルの判定基準抵抗値を予め測定又は算出すると共に、新品の2次ケ−ブルの断面及び長さにおける抵抗値から過熱焼損の危険を生ずる抵抗値までの抵抗値変化許容値を予め定めておき、新品でない2次ケ−ブルの初期抵抗値を算出して前記判定基準抵抗値と比較し、前記差の絶対値が予め定めた抵抗値変化許容値を越えた時点を、2次ケーブルの交換時期とするスタッド溶接の不良原因除去方法。
- 2次ケーブルの劣化をチェックして交換するスタッド溶接の不良原因除去方法において、溶接開始後に算出した2次ケーブルの算出抵抗値のばらつきを検出して、前記算出抵抗値のばらつきが予め定めた算出抵抗変動許容値を超えた時点を、2次ケーブルの交換時期とするスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッド溶接のスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接するスタッド溶接の不良原因表示方法において、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、前記検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、前記想定した複数の原因を表示するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッド溶接のスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接するスタッド溶接の不良原因表示方法において、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で溶接不良となるおそれがある現象を検出し、前記検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、前記想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッド溶接のスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接するスタッド溶接の不良原因表示方法において、スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある原因を除去する方法を実行させ、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、前記検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、前記想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッド溶接のスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接するスタッド溶接の不良原因表示方法において、スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある原因を除去する方法を実行させ、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、前記検出した時点で、スタッド溶接機器の次の動作を停止すると共に、前記検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、前記想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示するスタッド溶接の不良原因除去方法。
- スタッド溶接のスタッドを引き上げてアークを発生させ、所定時間後にスタッドを被溶接材に押しつけて短絡させて溶接するスタッド溶接の不良原因表示方法において、スタッド溶接機器に、溶接不良となるおそれがある頻度の高い発生原因を除去する方法を実行させ、溶接開始前の段階から溶接中及び溶接後までのいずれかの段階又は複数の段階で、溶接不良となるおそれがある現象を検出し、前記検出した時点で、スタッド溶接機器の次の動作を停止すると共に、前記検出値に対応した溶接不良となるおそれがある複数の原因を予め想定して、前記想定した複数の原因のうち、頻度が高いと予想される原因の順に不良原因を表示するスタッド溶接の不良原因除去方法。
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