JP4614352B2 - ブローチ加工装置及びブローチ加工方法 - Google Patents
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Description
従来のブローチ加工装置は、ブローチ加工を複数の工程に分けて工程毎の電流波形データを取り、これをもとに不良工具の良否判断を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
そのため、既に加工が行われたワークが、誤って或いは何らかの理由により再加工され、なお且つ、最初の加工時と再加工時とでワークに対してブローチがその中心線方向について回転角度変化を生じていた場合に、新たな部分がさらに切削されて不良ワークとなってしまうという問題があった。
前述した従来のブローチ加工装置は、不良工具の検出を行うことはできるが、このような再加工の実行を発見することはできなかった。
従って、これまでは、ユーザーの作業マニュアルでの再加工防止、または、加工後の目視確認等にて判断していた。しかしながら、再加工したものの、位相のずれ量が微小だと目視では判断つかない場合があり、その結果、再加工したワークが後工程に流れ、品質低下を発生させるおそれがあった。
本発明は、係る従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ブローチ加工におけるワークの再加工の発見を可能とすることをその目的とする。
ここで、監視期間は、加工作業実行時の経過時間に基づいて定めても良いし、加工作業において移動するブローチの位置に基づいて定めても良い。つまり、ブローチが加工時に所定位置に到達したときから別の所定位置に到達するまでの間を監視期間としても良い。他の請求項に記載の発明についても同様とする。
駆動手段の負荷電流値は切削による負荷が大きければこれに伴って大きくなるが、再加工されるワークは初回加工されるワークよりも切削負荷が小さく、実負荷電流値も小さくなる傾向を示す。
従って、加工の開始から終了までの間で定められた監視期間において初回加工であれば到達し再加工であれば到達しない範囲で設定電流値を適宜選択し、監視期間に検出された実負荷電流値と設定負荷電流値とを比較する。その結果、監視期間を通じて実負荷電流値が設定負荷電流値を超えない場合に再加工の実行を見つけることができる。
このため、黙視作業に依存せず、安定して高い信頼性で再加工の監視を行うことが可能となる。
これにより、再加工の発見に加えて、例えば実負荷電流値の低下からブローチの摩耗、或いは実負荷電流値の上昇によりブローチの破損に基づくワークへの引っかかり等、種々の異常の発生を発見することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態であるブローチ加工装置10について図1乃至図13に基づいて説明する。図1はブローチ加工装置10の全体の概略構成を示す斜視図である。
ブローチ加工装置10は、ワークWの孔部内側に挿入されて孔部内周を切削するブローチ11,11と、切削開始前と切削完了後に各ブローチ11を個別に保持するリフター装置20,20と、各リフター装置20,20に保持されたいずれのブローチ11,11を使用するかを切り替える切替装置30と、各リフター装置20の下方に配置され、ワークWが載置されるワーク台12と、いずれかのリフター装置20からブローチ11を受け取ると共にワークWに対して切削方向に牽引するブローチ牽引装置40と、上記各構成を保持する図示しない本体フレームと、各リフター装置20、切替装置30及びブローチ牽引装置40の動作制御を行う制御装置50とを備えている。
なお、以下の説明において、各構成の説明で上又は下の方向を示す語は、本体フレームが水平面に設置された状態において上又は下となる状態を示すものとする。
なお、各ブローチ11は、先端部11aを下方に向け、後端部11bを上方に向けた状態でリフター装置20又はブローチ牽引装置40に保持される。
スライド体21によるブローチ11の保持と解除の切替及びエアシリンダ23の上位置と下位置との切替は、制御装置50の制御により行われる。即ち、エアシリンダ23を下位置としてスライド体21による保持状態の解除を行うことでブローチ牽引装置40にブローチ11の受け渡しが行われる。
エアシリンダ32の駆動は制御装置50の制御により行われ、エアシリンダ32の駆動により、ブローチ牽引装置40に対するブローチ11の受け渡しが可能な位置への二つのリフター装置20,20の位置切替が行われるようになっている。
なお、このブローチ加工装置10はワークWの内径の切削のため、ブローチ11が挿入されることでワークWの位置が調整されるため、ワーク台12上での精密な位置決めが不要となる。
プルヘッド46によるブローチ11の保持と解除の切替及び駆動モータ42の駆動は、制御装置50の制御により行われる。
また、ラム41のブローチ受け渡し位置と切削時下降停止位置とには、それぞれ第一及び第二の近接センサ44,45が設けられ、各位置にラム41が到達したことを検出し制御装置50に出力するようになっている。
そして、リフター装置20により下降してきたブローチ11の先端部がワーク台12上のワークWの孔部を通過してラム41のプルヘッド46に挿入されると、ラム41ではブローチ11の先端部の保持を行い、かかる状態で駆動モータ42を逆回転させてリフター装置20から解放されたブローチ11を下降させる。そして、ラム41が切削時下降停止位置まで下降すると、第二の近接センサ45により検出され、駆動モータ42の駆動が停止される。
これにより、ワーク台12上のワークWの孔部を通過しながらブローチ11の下降移動が行われ、ワークWの孔部の内側の切削が行われる。
図3はブローチ加工装置10の制御系を示すブロック図である。図3に示すように、ブローチ加工装置10の制御装置50は、各種のプログラムを記憶するメモリを備えると共に当該各プログラムに従ってブローチ加工装置10の各構成の動作制御を行うPLC(プログラマブルコントローラ)51と、PLC51の制御指令に従って駆動モータ42の駆動を制御するインバータ52と、インバータ52から駆動モータ42への負荷電流値を検出する検出手段としての負荷電流検知メータリレー53とを備えている。
具体的には、インバーター52は、PLC51からのラム上昇指令又は下降指令に従い駆動モータ42を正回転又は逆回転に駆動するように駆動電流を制御し、PLC52からの減速時の速度選択指令に従い電源周波数を制御して駆動モータ42の駆動速度を調節する。
また、インバーター52からPLC51に対しては、駆動モータ42の制御の準備完了や異常の発生を通知したり、PLC51の速度選択指令に対して目標速度の到達を通知する。
なお、負荷電流検知メータリレー53の接続については、本実施形態ではインバータ52の負荷電流出力に接続しているが、そのほか、動力線に直結、CT(変流器)を通して接続、トランスジューサを通して接続等、各種の方法を採っても良い。
図4はブローチ加工におけるタイミングチャートである。図4において「ラム」はブローチ牽引装置40のラム41の上昇と下降のタイミングを示し、「リフタ」はリフタ装置20のスライド体21の上位置と下位置との切替タイミングを示し、「ワーク入れ」はワーク台12の待避位置と加工作業位置との切替タイミングを示している。
かかる図4に示すように、PLC51は、アクチュエータを作動させてワーク台12を待避位置に移動し(線図において下降)、その後、駆動モータ42を駆動してラム41を上昇させる。次いで、リフタ装置20に保持されたブローチ11を下位置から上位置に移動し、その間にワーク台12のアクチュエータを作動させてワークWを待避位置から下降作業位置に移動する。これにより、ブローチ11の下方にワークWが配置され、次にリフタ装置20に保持されたブローチ11を上位置から下位置に移動することで、ワークWの孔部にブローチ11の先端部を挿入し、さらに、ラム41上のプルヘッド46に挿入させる。その後、リフタ装置20からブローチ11を解放し、駆動モータ42を駆動してラム41を下降させる。これにより、ブローチ11の切削歯11cがワークWの孔部の内面を切削しながら加工し、所定の切削が実行される。
即ち、駆動モータ42に対する負荷電流値は、ブローチ11の切削負荷に応じて増減する。図5〜図9はブローチ11を駆動モータ42の駆動により下降させた場合の負荷電流値の変化を示す線図であり、図5はワークWなし、図6はワークWに対する一回目の切削、図7はワークWに対する二回目の切削(再加工)、図8はワークWに対する三回目の切削、図9はワークWに対する四回目の切削を行った場合をそれぞれ示している。
上記傾向から、PLC51では、一回目の切削で負荷電流値が山なりの変化を示す期間を再加工の監視有効時間T1と定め、この期間に一回目の加工で生じる山なりの頂上付近の負荷電流値を初回切削負荷電流W1と定め、監視有効時間T1中に実際に検出される実負荷電流W0が初回切削負荷電流W1を超えるか否かにより再加工(二回以上の加工)の実行の監視を行っている。なお、期間T1の間、W0<W1が継続したら再加工と判定する。
即ち、一般に、切削の開始から減速までの区間でブローチ11に破損などの不良を生じている場合に切削負荷が過度に大きくなり、これに伴い駆動モータ42に対する負荷電流値が過度に大きくなる傾向を示す。
従って、PLC51では、切削の開始から減速までの期間をブローチの異常発生の監視有効時間T2と定め、この期間に正常なブローチ11では加工中に発生し得ない負荷電流値を切削限界電流W2と定め、監視有効時間T2中に実際に検出される実負荷電流W0が切削限界電流W2を超えるか否かによりブローチ11の異常発生の監視を行っている。なお、期間T2の間、W0>W2が一度でも発生したら異常と判定する。
なお、初回切削負荷電流W1及び切削限界電流W2の設定については、例えば、前述した図5〜図9に示す実測データを参照して、再加工では生じ得ない負荷電流値を試験的に求め、或いはブローチ異常でしか生じ得ない負荷電流値を試験的に求め、統計的に好ましい値を選択することが望ましい。
また、監視有効時間T1及びT2の時期の設定についても、例えば、実測データを参照して、上記負荷電流W1,W2の監視を行うに際し、実負荷電流値に判定の根拠となる顕著な傾向が現れる期間や外乱等の影響によりノイズ等が発生しない期間を試験的に求め、統計的に好ましい期間を選択することが望ましい。
なお、設定入力手段54から入力された負荷電流W1,W2及び監視有効時間T1,T2の値は、PLC51内に設けられた図示しない記憶手段としてのメモリに記憶されるようになっている。
図示のように、PLC51は、設定入力手段55から初回切削負荷電流W1と切削限界負荷電流W2の設定入力を受けて各電流W1,W2を記憶する(ステップS1)。
そして、負荷電流検知メータリレー53に対して初回切削負荷電流W1を設定値Aに、また、切削限界負荷電流W2を設定値Bにセットする(ステップS2)。
同様に、PLC51は、設定入力手段55から切削限界負荷電流W2と実負荷電流W0とを比較する監視有効時間T2の設定入力を受けてこれを記憶する(ステップS4)。かかる監視有効時間T2も、その開始と終了のタイミングが切削動作の開始からの経過時間に基づいて設定される。
なお、PLC51は、監視有効時間T1,T2を判定するための計時回路を備え、加工開始と共に計時の開始を行う。
なお、初回切削完了記憶とは、PLC51における再加工の判定結果の記録であり、後述する処理で、判定結果が再加工ではないときには1に更新される。また、刃具の正常状態記憶とは、PLC51におけるブローチ11の異常発生の監視結果の記録であり、後述する処理で、ブローチ11が異常ではないときには1に更新される。
そして、期間内ではないときには(ステップS8:NO)、予め設定された、加工に要する通常的な所要時間の上限値であるサイクルタイムを超えているか判定する(ステップS9)。そして、サイクルタイムを超えている場合には(ステップS9:YES)、報知手段55により異常報知を行い、加工作業を終了する(ステップS14)。また、サイクルタイムを超えていないときにはステップS8に処理を戻す。
そして、処理をステップS22に進める。
そして、期間内ではないときには(ステップS15:NO)、サイクルタイムを超えているか判定する(ステップS16)。そして、サイクルタイムを超えている場合には(ステップS16:YES)、報知手段55により異常報知を行い、加工作業を終了する(ステップS21)。また、サイクルタイムを超えていないときにはステップS15に処理を戻す。
そして、処理をステップS22に進める。
また、K2=1の場合には(ステップS23:YES)、PLC51は、一回目の加工であり、ブローチ11に異常もないものと判定し(ステップS24)、その後の加工動作を完了まで継続して実行し処理を終了する。
上記ブローチ加工装置10では、加工の開始から終了までの間で定められた監視有効時間T1において、PLC51が負荷電流検知メータリレー53を通じて、初回加工であれば到達し再加工であれば到達しない範囲で設定された初回切削負荷電流W1と実負荷電流W0とを比較することで再加工の実行を見つけることができる。
従って、黙視作業に依存せず、安定して高い信頼性で再加工の監視を行うことが可能となる。
これにより、切削異常のよる不良ワークWを発見することが可能となる。
駆動モータ42は、例えばサーボモータのように、その出力トルクが負荷電流値で検出可能なあらゆる形式の電動機を使用しても良い。
また、上記ブローチ加工装置10では、加工時においてブローチ11のみが移動する構成としたが、これに限らず、ワークWが静止したブローチに対して移動して切削加工を行われる構成としても良いし、ブローチとワークWの双方が互いに切削が行われる方向に移動する構成としても良い。
また、ブローチ加工装置10では、孔部を有するワークWの内側の切削を行う場合を例示したが、これに限らず、孔部の有無にかかわらず、ワークの外側の切削も上記構成のブローチ加工装置10により行うことが可能である。ただし、ブローチは内側に刃具を有する筒状又は環状のものが使用される。なお、その場合も、ワーク台12上においてワークWの正確な位置決めと固定は不要である。
さらに、上記ブローチ加工装置10としてブローチ又はワークが上下方向に移動するいわゆる縦型のものを例示したが、ブローチ又はワークが水平方向に移動するいわゆる横型のブローチ加工装置についても、上述した再加工の監視及びブローチの異常検出の手法を用いても良い。
また、ブローチ牽引装置40のラム41の位置決めは近接センサ44,45の検出により行っているが、例えば、ブローチ加工装置をNC機器としてサーボモータを用いた数値制御でラムの位置決めを行っても良い。その他のリフター装置20、切替装置30、ワーク台12についても同様である。
11 ブローチ
42 駆動モータ(駆動手段)
50 制御装置
51 PLC(再加工監視手段,異常状態監視手段)
53 負荷電流検知メータリレー(検出手段)
54 設定入力手段(期間設定手段,負荷電流設定手段)
T1,T2 監視有効時間(監視期間)
W ワーク
W0 実負荷電流
W1 初回切削負荷電流(設定負荷電流)
W2 切削限界電流(設定負荷電流)
Claims (6)
- ブローチとワークとの相対的な移動を行わせるための駆動手段と、前記駆動手段の実負荷電流値を検出する検出手段とを備え、前記ブローチとワークとの相対的な移動により当該ワークの内側又は外側を切削加工するブローチ加工装置であって、
前記切削の開始から終了までの作業期間中に定められた監視期間において、前記検出手段により検出された前記駆動手段の実負荷電流と予め定められた設定負荷電流とを比較することにより、切削加工済みのワークに対する再加工の実行を監視する再加工監視手段とを備えることを特徴とするブローチ加工装置。 - 前記監視期間の開始から終了までの時期を任意に設定する期間設定手段と、
前記設定負荷電流の値を任意に設定する負荷電流設定手段と、
設定された監視期間と設定負荷電流値とを記憶する記憶手段とを備えることを特徴とする請求項1記載のブローチ加工装置。 - 前記記憶手段は、前記監視期間及び設定負荷電流値の組み合わせを少なくとも二種以上記憶し、
前記再加工監視手段の監視に用いる前記監視期間及び設定負荷電流値の組み合わせ以外の組み合わせに基づいて、前記駆動手段の実負荷電流と予め定められた設定負荷電流とを比較することにより、切削加工時の異常の発生を監視する異常状態監視手段を備えることを特徴とする請求項2記載のブローチ加工装置。 - ブローチとワークとの相対的な移動を行わせるための駆動手段と、前記駆動手段の実負荷電流値を検出する検出手段とを備え、前記ブローチとワークとの相対的な移動により当該ワークの内側又は外側を切削加工するブローチ加工装置によるブローチ加工方法であって、
前記切削の開始から終了までの作業期間中に定められた監視期間において、前記検出手段により検出された前記駆動手段の実負荷電流と予め定められた設定負荷電流とを比較することにより、切削加工済みのワークに対する再加工の実行を監視する再加工監視工程を備えることを特徴とするブローチ加工方法。 - 前記再加工監視工程では、任意に設定された前記監視期間の開始から終了までの時期及び任意に設定された設定負荷電流の値により再加工の発生の監視を行うことを特徴とする請求項4記載のブローチ加工方法。
- 前記監視期間及び設定負荷電流の組み合わせを少なくとも二種以上設定し、
前記再加工監視工程での監視に用いる前記監視期間及び設定負荷電流の組み合わせ以外の組み合わせに基づいて、前記駆動手段の実負荷電流と予め定められた設定負荷電流とを比較することにより、切削加工時の異常の発生を監視する異常状態監視工程を備えることを特徴とする請求項5記載のブローチ加工方法。
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