JP6490418B2 - 金属セレンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属セレンの製造方法に関し、特に、セレン含有溶液からの金属セレンの製造方法に関する。
セレン(以降、単にSeと称することもある。)は、電子材料の製造、非鉄製錬、冶金、染色等の幅広い用途で使用される金属である。その一方で、Seは環境規制の対象となる重金属でもある。そのため、種々の用途でSeが使用され、その廃液を処理するにしても、有害な重金属であるSeを廃液から除去しておく必要がある。それと共に、Seは幅広い用途で使用される金属であるため、廃液からSeを金属として回収することにより製造された金属Seを再利用することが強く望まれる。
特許文献1においては、Se含有溶液からSeを除去しかつ当該Seの粉体を製造すべく、Se含有溶液に亜硫酸ガスを吹き込んで還元反応に付し、Se含有溶液の塩酸濃度を特定値に調整することが記載されている。
特開2009−292660号公報
特許文献1に記載の技術では、還元により、嵩密度および結晶粒径のバラツキが少なく一定で、荷造りや充填時のハンドリング性に優れた金属Se粉を高収率で製造することができると記載されている(特許文献1の[0009])。
その一方で、還元反応に要する時間は少なくとも16時間に設定するのが好ましいこと(特許文献1の[0024])、実施例においては1か月単位で金属Seの製造を行っていることが記載されている(特許文献1の[0030]や図1等)。つまり、特許文献1に記載の技術の場合、Se含有溶液から金属Seを製造するのに月単位(少なくとも1日単位)という相当な時間を要する。
本発明は、Se含有溶液から迅速かつ確実に金属Seを製造する技術を開発することを課題とするものである。
上記の知見に接した本発明者は、鋭意研究を行った。その結果、硫化水素イオン(SH、HSとも称する。)、塩酸、および還元剤を含有させるという反応系下において、Seを製造する手法を想到した。
具体的な内容としては実施例の項目でも述べるが、例えば硫化水素イオンを含有させずにSe還元工程を亜硫酸ガスおよび塩酸2Nで行う場合、Se含有溶液からの金属Seの回収率を98%以上としようとすると、960分(すなわち16時間)が必要になるところ、硫化水素イオンを含有させておくことにより還元反応に要する時間を180分(すなわち3時間)へと短縮することが可能となる。しかも本発明者の調べにより、塩酸の濃度を比較的に低くした場合だと、時間の短縮効果がさらに増大することが明らかとなっている。
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
塩酸の存在下でセレン含有溶液に還元剤を加えて金属セレンを製造する金属セレンの製造方法において、
前記セレン含有溶液に対して硫化水素イオンを含有させる、金属セレンの製造方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
塩酸の存在下でセレン含有溶液から金属セレンを製造する金属セレンの製造方法において、
前記セレン含有溶液に対して硫化水素イオンを加える工程1と、
前記工程1の後、前記セレン含有溶液に対して還元剤を加える工程2と、
前記工程2の後、沈殿した金属セレンを回収する工程3と、
を有する。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、
前記硫化水素イオンは水硫化塩から得られる。
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様に記載の発明において、
前記還元剤は亜硫酸ガスである。
本発明の第5の態様は、第1〜第4のいずれかの態様に記載の発明において、
前記硫化水素イオンの量は、前記セレン含有溶液のセレンイオンの量に対して0.01当量以上である。
本発明の第6の態様は、第1〜第5のいずれかの態様に記載の発明において、
前記塩酸の濃度は0.1〜2.5Nである。
本発明によれば、Se含有溶液から迅速かつ確実に金属Seを製造する技術を提供できる。
本実施形態における金属Seの製造方法を示すフローチャートである。 別の実施形態における金属Seの製造方法を示すフローチャートである。
本発明は、Se含有溶液に対し、還元助剤として、硫化水素イオンを反応系内に同伴させるものである。還元助剤の添加の時機は、当該溶液中のSeの還元前、還元中の何れかであれば、特に限定されない。あくまで産業上における具体的な一例示として、次に実施の形態を述べる。
まず、[実施の形態1]では、Se含有溶液から金属Seを製造する方法を説明する。
次に、[実施の形態2]では、Se含有溶液から金属Seを製造する際にHgの除去も行う応用例について説明する。
[実施の形態1]
以下、本実施形態について、次の順序で説明を行う。なお、説明においては適宜、金属Seの製造方法を示すフローチャートである図1を参照する。
1.Se含有溶液からの金属Seの製造方法
1−A)還元助剤添加工程
1−B)Se還元工程
1−C)金属Se回収工程
1−D)その他
2.実施の形態による効果
本明細書において「〜」は所定の値以上かつ所定の値以下のことを指す。
なお、Se含有溶液としては、常温だと液状であって、好ましくは酸性でありSeの少なくとも一部が溶解されている(別の言い方をするとSeの少なくとも一部がイオン化されている)液体が良いが、特に制限は無い。以降、Se含有溶液において「Se」と記載する場合は、イオン化されたSe(すなわちセレンイオン)のことを指し、還元によってSe含有溶液から析出したSeのことは金属Seと称する。また、産業上にて生じた中間物または廃液、あるいは、Seを含有するその他の溶液についてもSe含有溶液に含まれる。具体的には、電子部品を製造する装置、および材料の洗浄液、非鉄製錬の中間産物(溶液も含む)などが挙げられる。
<1.Se含有溶液からの金属Seの製造方法>
本方法においては、Se含有溶液に対し、硫化水素イオン、塩酸、および還元剤の存在下でSeを還元することにより生じた金属Seを製造する。以下、詳細を説明する。
1−A)還元助剤添加工程
本工程(工程1)においては、Seの還元処理を行う前に、Se含有溶液に対し「塩酸」と「硫化水素イオン(すなわちSH)」とを添加しておく。
なお、本工程はあくまでSeの還元処理のための準備という意味を持つ。そのため、後述の1−B)Se還元工程と別の工程とせずとももちろん構わない。つまり、後述のSe還元工程と同時に本工程を行っても構わないし、本工程として「SH」のみをSe含有溶液に添加しておき、「塩酸」については後述のSe還元工程にて使用する還元剤と共にSe含有溶液に添加しても構わない。更に言うと、本工程の前の段階でSe含有溶液に塩酸が含まれていても構わない。結局のところ、後述のセレン還元工程において、塩酸の存在下でセレンを還元させられればそれで構わない。
なお、説明の便宜上、SHのことを「イオン性硫黄」と称する場合もある。
このイオン性硫黄をもたらす化合物は任意のものでも構わないが、本発明者が調べたところ、後述の実施例の項目が示すように、水硫化塩(例えば水流化ソーダ(NaSH))をSe含有溶液に加えるのが好ましい。
その一方、イオン性硫黄には、単なる硫黄(すなわち酸化数ゼロのS)や硫酸イオン(SO 2−)のように酸化数が正となっているSは当てはまらない。その証拠に後述の実施例の項目における比較例では本工程である還元助剤添加工程を行っていない(すなわちSHが添加されていない)状態であるにもかかわらず、硫酸イオンに起因するSがSe含有溶液に含有されている。そのような状態であっても、結果として、Seの還元に要する時間は、本実施例であるところ還元助剤添加工程を行った場合の方が劇的に短縮されている。
塩酸の濃度を比較的に低くした場合、時間の短縮効果がさらに増大することが明らかとなっている。例えば塩酸の濃度すなわち規定数を2.5以下とするとSeの還元に要する時間の短縮効果が得られ、後述の実施例の項目に示すように、塩酸の規定数を2.0とするとそれが顕著なものとなる。そのため、塩酸の規定数を2.0〜2.5とするのも好ましく、2.5未満または2.0以下とするのも好ましい。なお、塩酸の規定数に下限は特にないが、0.1以上、好ましくは1.0以上とするのもよい。なお、塩酸の濃度が2.5Nよりも高い場合であっても発明の効果は発現されるが、費用対効果が希釈されてしまう。
このような時間の短縮効果をもたらすメカニズムについては本発明者が鋭意検討中である。あくまで推測ではあるが、Seを還元する際に当該イオン性硫黄が、化学平衡状態の速度論において一種の触媒のように作用していることが考えられる。だからこそ本明細書においては、本工程のことを還元助剤添加工程と称している。
後述の実施例の項目に示すように、Seが200g前後含まれるSe含有溶液に対してNaSHの量を5.4mg/Lという極めて希薄な状態としただけでも、後述するSe還元工程に要する時間を16時間から3時間へと劇的に短縮することが可能となっている。そのため、本工程におけるイオン性硫黄の添加量には特に制限は無いものの、Seに対して1当量以下であれば十分に本実施形態の効果を奏する。なお、イオン性硫黄の添加量に下限は特にないが、Seに対して0.001当量以上、好ましくは0.01当量以上とするのもよい。
1−B)Se還元工程
本工程(工程2)においては、還元助剤添加工程後にSe含有溶液におけるSeを還元し、金属Seを沈殿させる。詳しく言うと、Se含有溶液に対して還元性を有する還元剤を加えることによりSeを還元し沈殿させる。そのため本工程は、還元剤添加工程とも称する。
なお、本工程における還元剤は公知のものを用いても構わないが、好ましいのは亜硫酸ガス(SO)や重亜硫酸ソーダ(NaHSO)である。また、本工程の具体的な手法としては公知の手法を用いればよく、例えばSe含有溶液に対してSOガスの吹き込みを行っても構わない。その際、撹拌を行うと更に良い。
1−C)金属Se回収工程
本工程(工程3)においては、沈殿した金属Seを回収する。回収の手法としては、公知の固液分離の手法を用いればよい。例えば、ろ過、デカンテーション、遠心分離などが挙げられる。
1−D)その他
以上の工程により、Se含有溶液から金属Seが製造される。なお、上記の工程以外の工程を適宜設けても構わない。例えば、製造後の金属Seの洗浄、製造後の液の再利用、排水処理へ移送などの工程を設けても構わない。
<2.実施の形態による効果>
本実施形態によれば、主に以下の効果を奏する。
そもそも、特許文献1に記載の技術では、Se含有溶液から金属Seを製造するのに月単位(少なくとも1日単位)という相当な時間を要する。それに対し本実施形態の手法を採用することにより、還元反応に要する時間を劇的に短縮(例えば16時間から3時間へ短縮)することができる。なお、見方を変えて、還元反応に要する時間を本実施形態と従来とで同一と設定した場合を考えると、本実施形態においては、従来の5倍以上の時間生産性を向上したことになる。化学品の製造工程においては、時間効率を向上するため装置を増大させるのが常套手段である。そのため、本実施形態により、装置は5分の1以下の大きさでよくなり、設備投資額の抑制、ユーティリティの小規模化、安全、環境面にも優位な効果をもたらす。
塩酸の濃度を比較的に低くした場合、時間の短縮効果がさらに増大する点で、本実施形態はさらに優れている。塩酸を用いると、各種装置において腐食防止のため、耐塩酸用の追加仕様が必要となり、排ガス処理も含め、装置投資額、メンテナンスコスト、排水処理の費用の上昇を招く。このため、塩酸濃度をできるだけ低く抑えれば、費用の発生は、付随的に下降し、産業競争力の増長、環境負荷の軽減に寄与できる。
その結果、本実施形態によれば、Se含有溶液から迅速かつ確実に金属Seを製造する技術を提供できる。
[実施の形態2]
本実施形態においては、Se含有溶液から金属Seを製造する際にHgの除去も行う応用例について説明する。以下、本実施形態について、次の順序で説明を述べる。なお、説明においては適宜、別の実施形態における金属Seの製造方法を示すフローチャートである図2を参照する。
1.Se含有溶液からの金属Seの製造方法
1−A)Hg第一分離工程
1−B)還元助剤添加工程
1−C)Se還元工程
1−D)金属Se回収工程
2.実施の形態による効果
なお、[実施の形態1]と記載内容が重複する部分については記載を省略する。
<1.Se含有溶液からの金属Seの製造方法>
本実施形態におけるSe含有溶液は、硫酸殿物に対して酸化浸出が行われた後の溶液を使用する。
硫酸殿物は、非鉄製錬操業において、硫化精鉱をばい焼する際に発生するガスから硫酸を製造する硫酸工程にて発生する副生成物であり、水銀およびセレンが含まれるものである。本実施形態においては、次亜塩素酸塩(本実施形態における具体例としては次亜塩素酸ソーダ(NaClO))を用いて硫酸澱物からHgおよびSeを酸化浸出させる。
なお、酸化浸出の際の電位を900mV以上としておくことにより、Se4+を通り越してSe6+へとSeを酸化させられる。Se4+のままだと、Hgを捕集するためにZn粉末を添加した際にSeが意図せず沈殿したり、Hgを硫化して沈殿させる際にSeが意図せず沈殿してしまう。その一方、電位を900mV以上としてSe6+へとSeを酸化させておくと、意図しないSeの沈殿の発生を抑制することが可能となる。
1−A)Hg第一分離工程
本工程においては、酸化浸出後の濾液に対してZn粉末を添加し、濾液中のHgをZnにより置換することにより沈殿させ、沈殿中のHgと濾液中のSeとを分離する。すなわち、金属のZn粉末を濾液に加えると、濾液内でのZn粉末の還元作用により、Zn粉末の表面でZnとHgとでの間で置換反応が発生し、Zn粉末に同伴され、Hgが固定化される。このため安定な固定化状態となるため、ろ過性に優れかつHgの回収が容易となる。
1−B)還元助剤添加工程
本工程においては、[実施の形態1]で述べた還元助剤添加工程を行う。ただ、本実施形態においては、本工程は、後のSe還元工程のための準備以上の意味を持つ。すなわち本工程においては少なくともイオン性硫黄をSe含有溶液に加える。このことにより、Hg第一分離工程によって沈殿させきれなかった残留Hgを硫化させて沈殿させることが可能となる。その結果、Se含有溶液におけるHgの除去率を著しく向上させることが可能となる。本工程では残留Hgを硫化させる関係上、本工程では塩酸は加えず、後のSe還元工程において塩酸を加える。
なお、本工程においては、残留Hgの量に対してイオン性硫黄を過剰に加えておくのが好ましい。こうすることにより残留Hgを十分に硫化させて沈殿させることが可能となる上、余剰のイオン性硫黄が還元助剤添加工程として使用でき、後のSe還元工程に要する時間を劇的に短縮できるという一挙両得の効果がある。
ちなみに余剰のイオン性硫黄(例えばNaSHから生じたSH)を加える量であるが、残留Hgイオン量に対して6〜12当量となるようにイオン性硫黄を加えるのが好ましい。
1−C)Se還元工程 & 1−D)金属Se回収工程
上記の工程においては、[実施の形態1]で述べたのと同様の工程を行う。
<2.実施の形態による効果>
本実施形態によれば、[実施の形態1]で述べた効果に加え、以下の効果を奏する。
硫酸澱物から一連の工程でHgおよびSeをそれぞれ除去する上で、非鉄製錬の工程中における硫酸製造時に発生する硫酸澱物に対しては、NaClOを用いて900mV以上で浸出を行うことにより、Hgに関しては、溶解度が高いHg2+とすることが可能となり、Seに関しては、意図しない沈殿を避けられるSe6+へと予め変化させておくことが可能となる。
また、Zn粉末を加えることにより、ろ過性に優れかつHgの回収が容易となる。
さらに、還元助剤添加工程において、Hg第一分離工程によって沈殿させきれなかったHgを硫化させて沈殿させることが可能となる。
その結果、本実施形態によれば、比較的簡素な手法によってSe含有溶液からHgを迅速かつ確実に除去した上で、Se含有溶液から迅速かつ確実に金属Seを製造する技術を提供できる。
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例においては[実施の形態2]に係る実施例を例示、すなわち硫酸澱物に対して酸化浸出を行ったものをSe含有溶液としているが、これはあくまで一例である。
その上、本実施例においても「還元助剤添加工程〜金属Se回収工程」を行っていることには変わりはない。そのため、本実施例は[実施の形態1]に係る内容についても開示しており、本発明が[実施の形態2]に限定されることは無い。
なお、実施例1−1〜1−3および比較例1−1〜1−2においては比較的小規模な状況下(いわゆるラボレベル)で試験を行い、実施例2においては中規模の大きさでの試験を行った。
<実施例1−1>
本実施例においては、試験槽としては1Lの耐酸容器を用いた。攪拌機の羽形状は3枚傾斜パドルとし、回転数は250〜300rpmとした。なお、処理対象とする硫酸澱物は、自社から生じたものを使用した。硫酸澱物に含有されるHgの品位は20.0質量%であり、Seの品位は2.5質量%であった。その他金属成分(Zn,Pb、Ag,Cu,As、Ti,Al)の品位は38.2質量%、残りは他含有物(硫黄、酸素、ハロゲン等)である。
なお、諸々の条件については、以下の表1にまとめた。表1は工程全体に係る条件を示す。ちなみに、後述の比較例1−1および実施例2の結果についても同様に表1にまとめている。
Figure 0006490418
なお、表1について着目すべきは、「既に含有されるS量」「余剰NaSH量」の項目である。結果については後で述べるが、実施例1−1〜1−3、後述の実施例2、さらには後述の比較例1−1〜1−2においても、Se還元工程の前にSは含有されている。これは、硫酸澱物を酸化浸出させたものをSe含有溶液として使用しているためであり、SO 2−に起因するものである。それにもかかわらず、余剰NaSH量がゼロの比較例1−1〜1−2の場合のみ、Se還元工程における時間短縮効果が得られなかった。つまり、本発明にて規定した「イオン性硫黄(すなわちSH)」に大きな技術的意義が存在することの材料が表1である。
本工程においては、酸化浸出のために、NaClO溶液を1L用いた。そして、試験槽において上記の硫酸澱物をNaClO溶液へと浸し、HgおよびSeを浸出させた。その際、硫酸澱物の量は、NaClO溶液において100g/Lとなるように設定した。なお、反応時間は30分とし、終点温度は40℃とした。そして電位は900mVを超えるように設定した。なお、電位の測定条件としては、反応時間の終了時に銀/塩化銀電極を用い、終点温度を40℃とした。以降、同様とする。
その結果、HgおよびSeの浸出率は共に98〜99%となり、極めて良好な結果となっていた。なお、HgおよびSeの浸出率は、上記の硫酸澱物の組成、ならびに、反応終了後の溶液に含有されるHgおよびSeの量から求めた。また、当該HgおよびSeの量はthermo社製のICP発光分光装置を用いて求めた。以降、HgおよびSeその他の量についての測定方法は同様とする。
1−A)Hg第一分離工程
本工程においては、林金属製のZn粉末をHgに対してモル比で2.0〜2.5mol当量用いた。そして、試験槽に対して上記のZn粉末を投入し、NaClO溶液中のHgをZnにて置換させ、Hgを沈殿させた。なお、反応時間は30〜40分とし、終点温度は10〜15℃とした。そして電位は0mV近傍とした。反応終了後、固液分離として吸引濾過装置を用いて濾過を行った。
その結果、濾液を調べたところ、Hgの除去率は99%を超えた数値となっており、Hgの濃度は検量下限(1ppm)以下となり、極めて良好な結果となっていた。ちなみに、残渣となった沈殿におけるHgの品位は、thermo製のICP発光分析装置で調べたところ、45〜50%であり、重量に換算するとHgは残渣中において60重量%存在した。なお、残渣におけるHg/Znのモル比は1.8〜2.0であった。また、既に含有されるS量は各例において50g/Lとなっているが、本発明者が調べたところ、1.96g/L〜78.3g/Lの範囲において、以降に述べる各実施例および各比較例の結果が変わらなかった。
1−B)還元助剤添加工程
本工程においては、Hg第一分離工程後の濾液をCT(コーンタンク)に移し替えた。そして当該タンクに0.3%のNaSHを10mL添加し、濾液中に残存しているHgを硫化により沈殿させつつ、Se還元工程に向けての準備として濾液中にSHを含有させる処理を行った。なお、反応時間は10分とし、終点温度は20℃とした。最終的な電位は−60mVとし、pHは5.8〜6.0とした。反応終了後、Hg第一分離工程と同様に、固液分離として加圧濾過機を用いて濾過を行った。
その結果、濾液を調べたところ、Hgの濃度は検量下限(1ppm)以下となり、極めて良好な結果となっていた。なお、余剰NaSH量は残留Hgから計算した余剰当量である。
1−C)Se還元工程 & 1−D)金属Se回収工程
本工程においては、還元助剤添加工程後の濾液を元の試験槽に移し替えた後、12NのHClを濾液に加えたときにHClが3Nになるように、12NのHClを濾液に加えた。そして、自社において硫酸製造時に発生した亜硫酸ガスを流速500mL/minで180分吹き込みながら、ヒータにより80℃へと加熱し、Se6+からSeへの還元反応を行った。反応終了後、Hg第一分離工程と同様に、吸引濾過装置を用いて濾過を行った。
その結果、濾液を調べたところ、Seの除去率は99%を超えた数値となっており、極めて良好な結果となっていた。残渣となった沈殿におけるSeの品位は、thermo製のICP発光分析装置で調べたところ、90〜99%であり、極めて品位の高いメタルセレンが得られた。なお、Hgの濃度は10ppm以下であり、HgとSeとを確実に分離することができていた。
<実施例1−2および実施例1−3>
実施例1−2においては、Se還元工程の際に、HClが2.5Nになるように設定した。また、実施例1−3においては、Se還元工程の際に、HClが2Nになるように設定した。それ以外は、実施例1−1と同様とした。
<比較例1−1および比較例1−2>
本比較例においては、還元助剤添加工程を行わなかった、すなわちSe還元工程が行われるSe含有溶液に対してNaSHを含有させなかった。その点を除けば、実施例1−1と同様の条件とした。
その上で比較例1−1においては、Se還元工程の際に、HClが2.5Nになるように設定した。また、比較例1−2においては、Se還元工程の際に、HClが2Nになるように設定した。
<Se還元反応に要した時間>
上記の各実施例および各比較例について、Se還元反応の時間に対応して金属Seの回収率がどのように変化しているかについて調べ、その結果を表2に示した。
Figure 0006490418
まず、表2において、実施例1−1の場合、金属Seの回収率が98%以上となるのに要する時間は、30分という極めて短い時間だった。
次に、表2において、HClが2.5N同士の例(すなわち実施例1−2と比較例1−1)を比べてみると、金属Seの回収率が99%以上となるのに要する時間は、比較例1−1だと180分だったのに対し、実施例1−2だと120分であった。つまり比較例1−1において要する時間を2/3に短縮することができていた。
また、表2において、HClの濃度を低くした場合である2N同士の例(すなわち実施例1−3と比較例1−2)を比べてみると、金属Seの回収率が99%となるのに要する時間は、比較例1−2だと960分以上だったのに対し、実施例1−3だと180分であった。つまり実施例1−3においては、比較例1−2において要する時間を1/5以下に劇的に短縮することができていた。その結果、HClが2Nのように比較的濃度が低い状況であれば、本発明の効果が増大することが明らかとなった。
<実施例2>
実施例1−1がラボレベルの規模であったのに対し、本実施例においては、試験槽としては100Lのものを用いた。その他、実施例1−1と異なる諸々の条件については上記の表1にまとめた。なお、NaClO溶液としては廃液を用いた。
なお、各工程における液量、残渣量、Hgに関するデータ、Seに関するデータについて、以下に述べる。
まず、硫酸澱物の重量は10.27kgとした。硫酸澱物に含有されるHgの品位は20.7%であり、重量は2126gであった。Seの品位は2.3%であり、重量は239gであった。他金属(亜鉛、銅、鉛、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、貴金属、ガリウム、インジウム)24.7質量%、他含有物は、水銀、セレン、他金属以外の酸素、硫黄、ハロゲン等であり、殆どが酸素、硫黄である残余分である。
そして、本工程を行った後の后液106Lにおいて、Hgの濃度は19g/Lであり、重量は2016gであり、硫酸澱物の分配率を100%としたときに、分配率は94.8%であった。Seの濃度は2.29g/Lであり、重量は242.9gであり、硫酸澱物の分配率を100%としたときに、分配率は101.5%であった。なお、分配率の規定の仕方については以降同様とする。なお、分配率は、数値における2%以下の分析誤差はある。
また、本工程を行った後の残渣7.54kgにおいて、Hgの品位は0.4%であり、重量は27.4gであり、分配率は1.3%であった。Seの品位は0.1%であり、重量は4.3gであり、分配率は1.8%であった。
つまり、本工程を行った後の残渣には、HgもSeも殆ど含有されておらず、硫酸澱物における大半のHgおよびSeを浸出させることができた。
1−A)Hg第一分離工程
本工程を行った後の濾液106Lにおいて、Hgの濃度は0.006g/Lであり、重量は0.6gであり、分配率は0.03%であった。Seの濃度は2.2g/Lであり、重量は228.1gであり、分配率は95.3%であった。
また、本工程を行った後の残渣3.38kgにおいて、Hgの品位は58.6%であり、重量は1984.3gであり、分配率は93.3%であった。Seの品位は0%であり、重量は0gであり、分配率は0%であった。
つまり、本工程を行った後の残渣は、その大部分がHgにより構成されており、しかもSeは全くと言っていいほど含まれていなかった。その一方、濾液においてはHgが殆ど含まれておらず、HgとSeを確実に分離することができていた。
1−B)還元助剤添加工程
本工程を行った後の濾液106Lにおいて、Hgの濃度は0.002g/Lであり、重量は0.2gであり、分配率は0.010%であった。Seの濃度は2.05g/Lであり、重量は217.5gであり、分配率は90.85%であった。
また、本工程を行った後の残渣0.005kgにおいて、Hgの品位は14.9%であり、重量は0.84gであり、分配率は0.04%であった。Seの品位は0.4%であり、重量は0.023gであり、分配率は0.009%であった。
つまり、本工程を行った後に濾液に残存していたHgを除去することができた。
1−C)Se還元工程 & 1−D)金属Se回収工程
本工程を行った後の濾液140L(HCl溶液の分だけ増加)において、HClの濃度は3Nとした。そして、Seの濃度は0.00005g/Lであり、重量は0gであり、分配率は0.0029%であった。
また、本工程を行った後の残渣0.3kgにおいて、Hgの品位は0.0002%であり、重量は0gであり、分配率は0.00002%であった。その一方、Seの品位は99.2%であり、重量は0.22kgであり、分配率は90.77%であった。
つまり、本工程を行った後の残渣は、その大部分がSeにより構成されている一方、Hgは殆ど含まれておらず、Hgと金属Seを確実に分離することができていた。そして最終的に、硫酸澱物からHgおよびSeをそれぞれ、迅速かつ確実にしかも比較的簡素な手法で取り除くことに成功した。
なお、金属Seの回収率が99%以上となるのに要する時間は、60分という極めて短時間なものとなった。
以上の結果、上記の実施例によれば、Se含有溶液から迅速かつ確実に金属Seを製造する技術を提供できることが明らかとなった。

Claims (5)

  1. 塩酸の存在下でセレン含有溶液に還元剤を加えて金属セレンを製造する金属セレンの製造方法において、
    前記セレン含有溶液に対して硫化水素イオンを加える際の前記セレン含有溶液の最終電位を100mV以下とし、且つ、前記還元剤として亜硫酸ガスを加える際に前記セレン含有溶液においてセレンイオンの量に対して0.001当量以上の硫化水素イオンを含有させる、金属セレンの製造方法。
  2. 塩酸の存在下でセレン含有溶液から金属セレンを製造する金属セレンの製造方法において、
    前記セレン含有溶液に対して硫化水素イオンを加える工程1と、
    前記工程1の後、前記セレン含有溶液に対して還元剤として亜硫酸ガスを加える工程2と、
    前記工程2の後、沈殿した金属セレンを回収する工程3と、
    を有し、
    前記工程1の際に、前記セレン含有溶液において最終電位を100mV以下とし、
    前記工程2の際に、前記セレン含有溶液においてセレンイオンの量に対して0.001当量以上の硫化水素イオンを含有させる、金属セレンの製造方法。
  3. 前記硫化水素イオンは水硫化塩から得られる、請求項1または2に記載の金属セレンの製造方法。
  4. 前記塩酸の濃度は0.1〜2.5Nである、請求項1〜のいずれかに記載の金属セレンの製造方法。
  5. 前記亜硫酸ガスを加える際に前記セレン含有溶液においてセレンイオンの量に対して0.01当量以上の硫化水素イオンを含有させる、請求項1〜4のいずれかに記載の金属セレンの製造方法。
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