JP6488666B2 - クローニングベクター、発現ベクターおよび形質転換体の製造方法 - Google Patents

クローニングベクター、発現ベクターおよび形質転換体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、様々な栄養要求性相補マーカー遺伝子および薬剤耐性遺伝子を選択マーカーとして再利用可能なクローニングベクター、該クローニングベクターに外来遺伝子を導入した発現ベクター、および該発現ベクターを利用した形質転換体の製造方法に関する。
宿主細胞の染色体に相同組換えを利用して外来遺伝子を組込む際、該遺伝子を有する細胞を選択できる選択マーカー遺伝子を外来遺伝子と共に組込む。選択マーカー遺伝子としては、薬剤耐性遺伝子や栄養要求性相補マーカー遺伝子が挙げられる。たとえば、栄養要求性細胞を宿主とし、外来遺伝子と共に栄養要求性相補マーカー遺伝子を組込む。形質転換処理後の細胞群から、栄養要求性が解消された細胞のみが生存可能な環境で培養することにより、形質転換がなされた細胞のみを選択する。1の宿主に多数の外来遺伝子を組込む場合には、従来、外来遺伝子の種類ごとに栄養要求性相補マーカー遺伝子が必要になるが、実際には使用可能な栄養要求性相補マーカー遺伝子の数は限られている。
そこで、近年、オロチジンリン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(ura遺伝子)を選択マーカー遺伝子として利用し、選択マーカーを再利用するマーカーリサイクル法が開示されている。ura遺伝子は、ウラシル要求性相補マーカー遺伝子であり、かつ該遺伝子が欠損または破壊された細胞を選択可能なカウンター選択マーカー遺伝子である。ura遺伝子が欠損したウラシル要求性細胞を宿主とし、該宿主の染色体に、外来遺伝子と共に、互いに相同的な塩基配列で挟まれたura遺伝子を組込み、ウラシル要求性が回復した形質転換体のみを選択する。選択された形質転換体をFOA(5−フルオロオロチン酸)処理することにより、相同組換えによりura遺伝子が脱落しているが、外来遺伝子はそのまま組込まれている形質転換体のみを選択できる(たとえば、特許文献1、非特許文献1参照。)。該マーカーリサイクリング法は、外来遺伝子の組込みのみならず、染色体中の遺伝子破壊にも利用できる(たとえば、非特許文献2参照。)。
国際公開第2009/139349号
Mudge, et al., Current Genetics, 2012, vol.58, p.59〜64. Akada, et al., Yeast, 2002, vol.19, p.393〜402.
現在までに、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(以下、S.ポンベともいう)において選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子の両方として利用可能な遺伝子はura遺伝子のみである。各種選択マーカーを用いた場合であっても、マーカーリサイクリング法により選択マーカーを再利用することができれば、形質転換の作製方法に幅ができ、好ましい。
本発明の目的は、様々な栄養要求性相補マーカー遺伝子や薬剤耐性遺伝子を選択マーカーとして再利用可能なクローニングベクター、該クローニングベクターに外来遺伝子を導入した発現ベクター、および該発現ベクターを利用した形質転換体の製造方法を提供することにある。
本発明に係るクローニングベクター、発現ベクター、および形質転換体の製造方法は下記[1]〜[19]である。
[1]宿主の染色体中の標的部位と相同組換えを行うための1組の組換え部位の間に、第1の領域と第2の領域とクローニングサイトとを有し、該第1の領域の下流側に該第2の領域が位置しており、該第1の領域と第2の領域は互いに90%以上の相同性を有し、該クローニングサイトは、該第1の領域の上流側または該第2の領域の下流側に位置しており、該第1の領域と該第2の領域の間に、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子し、該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子が連結されており、かつ該連結された遺伝子の上流に、該連結された遺伝子の発現を制御するプロモーターを有することを特徴とするクローニングベクター。
[2]該カウンター選択マーカー遺伝子がura遺伝子である、前記[1]のクローニングベクター。
]該第1の領域が、該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子のうちの上流側の遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能する領域である、前記[]または[]のクローニングベクター。
]該第2の領域が、該マーカー遺伝子のターミネーターとして機能する領域である、前記[1]〜[]のいずれかのクローニングベクター。
]該クローニングサイトが該第1の領域の上流側に位置し、該クローニングサイトの上流に該クローニングサイトに導入される外来遺伝子の発現を制御するプロモーターを有し、該第1の領域および該第2の領域が、いずれも、該外来遺伝子のターミネーターとして機能しうる領域である、前記[1]〜[]のいずれかのクローニングベクター。
]該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子のターミネーターおよび該マーカー遺伝子のターミネーターとして機能しうる領域である、前記[]のクローニングベクター。
]宿主の染色体中の標的部位と相同組換えを行うための1組の組換え部位の間に、第1の領域と第2の領域とクローニングサイトとを有し、該第1の領域の下流側に該第2の領域が位置しており、該第1の領域と第2の領域は互いに90%以上の相同性を有し、該クローニングサイトは該第2の領域の下流側に位置しており、該第1の領域と該第2の領域の間に、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子またはura遺伝子からなるマーカー遺伝子を有し、該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子の発現を制御しうるプロモーターとして機能しうる領域であることを特徴とするクローニングベクター。
]該カウンター選択マーカー遺伝子がura遺伝子である、前記[]のクローニングベクター。
]選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子を有し、該選択マーカー遺伝子の上流に、該選択マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーターを有しており、該カウンター選択マーカー遺伝子の上流に、該カウンター選択マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーターを有しており、該選択マーカー遺伝子のプロモーターと、該カウンター選択マーカー遺伝子のプロモーターが、互いに相同性が90%未満の配列からなる、前記[]または[]のクローニングベクター。
10]選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子を有し、該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子が連結されており、かつ該連結された遺伝子の上流に、該連結された遺伝子の発現を制御するプロモーターを有する、前記[]または[]のクローニングベクター。
11]該第1の領域が、該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子のうちの上流側の遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能する領域である、前記[]または[10]のクローニングベクター。
12]ura遺伝子からなるマーカー遺伝子を有し、該ura遺伝子の上流に該ura遺伝子の発現を制御するプロモーターを有する、前記[]のクローニングベクター。
13]該第1の領域が、ura遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能する領域である、前記[12]のクローニングベクター。
14]該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子のプロモーターおよび該マーカー遺伝子のプロモーターとして機能しうる領域である、前記[]のクローニングベクター。
15]該クローニングサイトがマルチクローニングサイトである、前記[1]〜[14]のいずれかのクローニングベクター。
16]前記[1]〜[15]のいずれかのクローニングベクターのクローニングサイトに外来遺伝子を導入してなる発現ベクター。
17]シゾサッカロミセス・ポンベの染色体に相同組換えにより外来遺伝子を組込むために用いられる、前記[16]の発現ベクター。
18]前記[15]のクローニングベクターまたは前記[16]の発現ベクターを宿主細胞に導入した後、該選択マーカー遺伝子を利用して該マーカー遺伝子を有する形質転換体のみを選択するベクター導入工程と、該ベクター導入工程により選択された形質転換体から、該カウンター選択マーカー遺伝子またはura遺伝子を利用して該マーカー遺伝子が脱落した形質転換体のみを選択するカウンター選択工程と、
を有することを特徴とする、形質転換体の製造方法。
19]該カウンター選択マーカーがura遺伝子である、または該マーカー遺伝子がura遺伝子である該発現ベクターを使用し、該カウンター選択工程において、該ベクター導入工程により選択された形質転換体をFOA処理し、ura遺伝子が脱落した形質転換体のみを選択する、前記[18]の形質転換体の製造方法。
本発明に係るクローニングベクターは、標的の外来遺伝子を組込むためのクローニングサイトと共に、宿主の染色体中の標的部位と相同組換えを行うための1組の組換え部位によって挟まれた領域に、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子またはura遺伝子からなるマーカー遺伝子を有している。このため、該クローニングベクターのクローニングサイトに外来遺伝子を組込んだ発現ベクターは、形質転換により宿主の染色体に組込まれた後、相同組換えにより、外来遺伝子は残しつつ、マーカー遺伝子を脱落させられる。このため、該クローニングベクター、該発現ベクターおよびこれを用いた形質転換体の製造方法により、様々な選択マーカー遺伝子を再利用できる。
図1は、発現ベクターpSEl−EGFPの構造の模式図である。 図2は、発現ベクターpSHa−EGFPの構造の模式図である。 図3は、組換えベクターpSEの構造の模式図である。 図4は、組換えベクターpSLhの構造の模式図である。 図5は、ベクターpSM−HsLDHベクターの構造の模式図である。 図6は、ベクターpSN−HsLDHベクターの構造の模式図である。
<クローニングベクター>
本発明に係るクローニングベクターは、宿主の染色体中の標的部位と相同組換えを行うための1組の組換え部位の間に、第1の領域と第2の領域とクローニングサイトとを有し、該第1の領域の下流側に該第2の領域が位置しており、該第1の領域と第2の領域は互いに90%以上の相同性を有し、該クローニングサイトは、該第1の領域の上流側または該第2の領域の下流側に位置しており、該第1の領域と該第2の領域の間に、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子またはura遺伝子からなるマーカー遺伝子を有することを特徴とする。該クローニングベクターの該クローニングサイトに外来遺伝子を導入した発現ベクター(本発明に係る発現ベクター)は、宿主の染色体に、外来遺伝子と共に、相同性の高い領域(第1の領域と第2の領域)に挟まれた状態のマーカー遺伝子を組込む発現ベクターである。該発現ベクターが宿主の染色体に組込まれた後、該第1の領域と該第2の領域による相同組換えが生じることによって、該染色体から該マーカー遺伝子が脱落した形質転換体が得られる。
なお、本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターのうち、宿主の染色体に組込まれる領域を、組込み領域という。すなわち、該組込み領域は、宿主の染色体中の標的部位と相同組換えを行うための1組の組換え部位によって挟まれた領域である。本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターは、組込み領域のみからなる線状または環状のDNAであってもよく、組込み領域以外の領域を含む線状または環状のDNAであってもよい。
本発明に係る発現ベクターの組込み領域が宿主の染色体に組込まれた後、該第1の領域と該第2の領域の間で相同組換えが生じる結果、該第1の領域と該第2の領域で挟まれた領域は脱落し、宿主の染色体中には、該第1の領域と該第2の領域のハイブリッドな領域が残留する。「第1の領域と第2の領域のハイブリッドな領域」とは、該領域の先端からある位置までが第1の領域であり、該位置から末端までが第2の領域である領域を意味する。該位置は領域の末端であってもよい。すなわち、「第1の領域と第2の領域のハイブリッドな領域」には、該領域全体が第2の領域である、または該領域全体が第1の領域であるものも含まれる。
第1の領域と第2の領域の塩基配列の相同性は、90%以上であり、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることが特に好ましい。第1の領域と第2の領域の長さ(塩基数)は、染色体に組込まれた後に、相同組換えを起こすことが可能な長さであればよく、たとえば、20〜2000bpであることが好ましい。第1の領域と第2の領域の長さが20bp以上であれば、相同組換えが起きやすくなる。また、第1の領域と第2の領域の長さが2000bp以下であれば、組換え用DNA断片が長くなりすぎて相同組換えが起き難くなることを防ぎやすい。第1の領域と第2の領域の長さは100bp以上であることがより好ましく、200bp以上であることがさらに好ましい。また、第1の領域と第2の領域の長さは800bp以下であることがより好ましく、400bp以下であることがさらに好ましい。
本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターは、マーカー遺伝子として、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成される遺伝子、またはura遺伝子を有する。
ura遺伝子は、選択マーカーとしての機能とカウンター選択マーカーとしての機能の両方を備える蛋白質をコードし、選択マーカー遺伝子としてもカウンター選択マーカー遺伝子としても機能する。
本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターが有する選択マーカー遺伝子は、該遺伝子が染色体に組込まれている細胞のみを選抜可能な遺伝子であれば、特に限定されるものではなく、形質転換体の製造に用いられることが公知の各種遺伝子の中から適宜選択して用いられる。選択マーカー遺伝子としては、たとえば、栄養要求性相補マーカー遺伝子、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子が挙げられる。このうち、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、および呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子は、野生株を宿主とした場合でも選択マーカー遺伝子として機能する。栄養要求性相補マーカー遺伝子は、特定の栄養要求性細胞を宿主とした場合にのみ、選択マーカー遺伝子として機能する。
栄養要求性相補マーカー遺伝子は、特定の栄養成分が生育に必須である宿主に該遺伝子を組込むことによって、該宿主の栄養要求性を解消し得る遺伝子である。栄養要求性相補マーカー遺伝子としては、オロチジンリン酸デカルボキシラーゼ遺伝子等のウラシル要求性相補遺伝子、イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子等のロイシン要求性相補遺伝子、ヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子、ホスホリボシルAMPシクロヒドラーゼ遺伝子等のヒスチジン要求性相補遺伝子、およびホスホリボシルアミノイミダゾール−サクシノカルボキサミドシンターゼ遺伝子等のアデニン要求性相補遺伝子が挙げられる。
薬剤耐性遺伝子としては、たとえば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、フェロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
蛍光タンパク質遺伝子としては、たとえば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子等が挙げられる。
呈色反応を触媒する酵素をコードする遺伝子としては、たとえば、ルシフェラーゼ遺伝子、β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、lacZ遺伝子が挙げられる。
宿主がS.ポンベの場合には、S.ポンベが本来有している遺伝子のうち、選択マーカー遺伝子として使用可能な遺伝子としては、たとえば、ura4遺伝子、ura5遺伝子、leu1遺伝子、his3遺伝子、his7遺伝子、ade6遺伝子が挙げられる。
本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターが有するカウンター選択マーカー遺伝子は、染色体から該遺伝子が欠損または破壊された細胞のみを選抜可能な遺伝子であれば、特に限定されるものではなく、形質転換体の製造に用いられることが公知の各種遺伝子の中から適宜選択して用いられる。カウンター選択マーカー遺伝子のうち、宿主が本来有している遺伝子としては、たとえば、オロチジンリン酸デカルボキシラーゼ遺伝子等のウラシル要求性相補遺伝子、およびリジン生合成酵素遺伝子等のリジン要求性相補遺伝子が挙げられる。これらの要求性相補遺伝子は、相当する特定の栄養要求性細胞を宿主とした場合にのみ、カウンター選択マーカー遺伝子として機能する。その他、特定の条件で発現が誘導されるように制御された細胞毒性を引き起こす遺伝子も、カウンター選択マーカー遺伝子として用いられる。該遺伝子としては、たとえば、非特許文献2に記載されている、ガラクトース誘導型GIN11遺伝子が挙げられる。
宿主がS.ポンベの場合には、S.ポンベが本来有している遺伝子のうち、カウンター選択マーカー遺伝子として使用可能な遺伝子としては、たとえば、ura4遺伝子、ura5遺伝子、lys1遺伝子、lys7遺伝子が挙げられる。
本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターにおいては、宿主の染色体に、第1の領域と第2の領域の間に挟まれた状態で、選択マーカーとして機能する蛋白質とカウンター選択マーカーとして機能する蛋白質を発現させられる遺伝子を組込めるベクターであればよい。このため、第1の領域と第2の領域の間に有するマーカー遺伝子としては、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子の2個の遺伝子に代えて、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子が連結された1個の遺伝子が存在していてもよい。選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子が連結された遺伝子としては、選択マーカーとして機能する蛋白質とカウンター選択マーカーとして機能する蛋白質を直接連結した蛋白質をコードする遺伝子であってもよく、両蛋白質を適当な連結部によって連結した蛋白質をコードする遺伝子であってもよい。
本発明において用いられるマーカー遺伝子は、それぞれ、該遺伝子の発現を制御するプロモーターを有していることが好ましい。該プロモーターとしては、宿主細胞内で機能するプロモーターであればよく、宿主が本来有するプロモーターであってもよく、宿主が本来有していないプロモーターであってもよい。該プロモーターとしては、転写開始活性が高いものが好ましい。
本発明において用いられるマーカー遺伝子は、ターミネーターを有していてもよい。該ターミネーターとしては、宿主細胞内で機能するターミネーターであればよく、宿主が本来有するターミネーターであってもよく、宿主が本来有していないターミネーターであってもよい。
宿主がS.ポンベの場合、該プロモーターとしては、たとえば、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、チアミンの代謝に関与するnmt1遺伝子プロモーター、グルコースの代謝に関与するフルクトース−1、6−ビスホスファターゼ遺伝子プロモーター、カタボライト抑制に関与するインベルターゼ遺伝子のプロモーター(国際公開第99/23223号パンフレット参照)、および熱ショック蛋白質遺伝子プロモーター(国際公開第2007/26617号パンフレット参照)等のS.ポンベが本来有するプロモーター、ならびに、特開平5−15380号公報、特開平7−163373号公報、特開平10−234375号公報に記載されている動物細胞ウイルス由来のプロモーターが挙げられ、hCMVプロモーター、SV40プロモーター等のS.ポンベが本来有していないプロモーターが挙げられる。また、該ターミネーターとしては、たとえば、特開平5−15380号公報、特開平7−163373号公報、特開平10−234375号公報に記載されているヒト由来のターミネーターが挙げられ、ヒトリポコルチンIのターミネーターが好ましい。
本発明において用いられるマーカー遺伝子が2種の遺伝子からなる場合、すなわち、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子からなる場合、本発明に係るクローニングベクター等の中の組込み領域が宿主の染色体に組込まれた後、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子のプロモーター同士で相同組換えが生じると、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子のうち、両プロモーターの間に位置する遺伝子が、他方の遺伝子とは別個に宿主の染色体から脱落してしまうおそれがある。このため、選択マーカー遺伝子のプロモーターとカウンター選択マーカー遺伝子のプロモーターは、互いに塩基配列の相同性が90%未満の配列からなるものが好ましく、互いに塩基配列の相同性が70%以下の配列からなるものがより好ましい。
本発明において用いられるマーカー遺伝子が選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子からなる場合であって、選択マーカー遺伝子の下流とカウンター選択マーカー遺伝子の下流にそれぞれターミネーターを有する場合、両ターミネーター同士で相同組換えが生じると、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子のうち、両ターミネーターの間に位置する遺伝子が、他方の遺伝子とは別個に宿主の染色体から脱落してしまうおそれがある。このため、選択マーカー遺伝子のターミネーターとカウンター選択マーカー遺伝子のターミネーターは、互いに塩基配列の相同性が90%未満の配列からなるものが好ましく、互いに塩基配列の相同性が70%以下の配列からなるものがより好ましい。
選択マーカー遺伝子、カウンター選択マーカー遺伝子、およびura遺伝子のプロモーターは、組込み領域のうち、各遺伝子の上流にあればよく、第1の領域と第2の領域に挟まれた領域内にあってもよく、該領域の外にあってもよい。同様に、選択マーカー遺伝子、カウンター選択マーカー遺伝子、およびura遺伝子のターミネーターは、組込み領域のうち、各遺伝子の下流にあればよく、第1の領域と第2の領域に挟まれた領域内にあってもよく、該領域の外にあってもよい。
組込み領域が宿主の染色体に組込まれた形質転換体から、第1の領域と第2の領域に挟まれた領域を脱落させる際に、該マーカー遺伝子のプロモーターおよびターミネーターも共に脱落させるほうが好ましい。このため、本発明に係る発現ベクターにおいては、該マーカー遺伝子のプロモーターは、いずれも、第1の領域と第2の領域に挟まれた領域内にあることが好ましい。同様に、該マーカー遺伝子のターミネーターは、いずれも、第1の領域と第2の領域に挟まれた領域内にあることが好ましい。
第1の領域と第2の領域は、該マーカー遺伝子のプロモーターまたはターミネーターを兼ねていてもよい。たとえば、該マーカー遺伝子が選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とからなる場合、第1の領域は、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子のうち、該第1の領域に近い方に位置する遺伝子を制御するプロモーターであってもよく、第2の領域は、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子のうち、該第2の領域に近い方に位置する遺伝子のターミネーターとして機能するものであってもよい。また、該マーカー遺伝子が1種の遺伝子からなる場合、すなわち、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子が連結された1の遺伝子またはura遺伝子の場合、第1の領域は、該マーカー遺伝子を制御するプロモーターであってもよく、第2の領域は、該マーカー遺伝子のターミネーターとして機能するものであってもよい。
本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターが有する1組の組換え部位のうち、該第1の領域の上流にあるものを上流側組換え部位といい、該第2の領域の下流にあるものを下流側組換え部位という。本発明に係るクローニングベクター等中、上流側組換え部位と下流側組換え部位に挟まれた領域が、相同組換えにより宿主の染色体に組込まれる組込み領域である。
該組換え部位が相同組換えを起こす宿主の染色体中の標的部位の設定は、相同組換えによる遺伝子導入技術において公知の手法により適宜行える。宿主の染色体中の標的部位は、染色体中の1箇所のみに存在していてもよく、2箇所以上に存在していてもよい。標的部位が2箇所以上存在している場合、本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターの組込み領域を、宿主の染色体の2箇所以上に組み込める。
該組換え部位の塩基配列と標的部位の塩基配列との相同性は70%以上とすることが必要である。また、組換え部位の塩基配列と標的部位の塩基配列との相同性は、相同組換えが起きやすくなる点から、90%以上とすることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
組換え部位の長さ(塩基数)は、20〜2000bpであることが好ましい。組換え部位の長さが20bp以上であれば、相同組換えが起きやすくなる。また、組換え部位の長さが2000bp以下であれば、該組込み領域が長くなりすぎて相同組換えが起き難くなることを防ぎやすい。組換え部位の長さは100bp以上であることがより好ましく、200bp以上であることがさらに好ましい。また、組換え部位の長さは800bp以下であることがより好ましく、400bp以下であることがさらに好ましい。
染色体中に複数箇所存在する互いに実質的に同一の塩基配列部分を標的部位として、該複数箇所の標的部位にそれぞれ該組込み領域を組み込むことができれば、1種類のベクターを使用して染色体の2箇所以上にベクターを組み込める。互いに実質的に同一の塩基配列とは、塩基配列の相同性が90%以上であることを意味する。標的部位同士の相同性は95%以上であることが好ましい。また、互いに実質的に同一である塩基配列の長さは、該組込み領域を包含する長さであり、1000bp以上であることが好ましい。
染色体中に複数箇所存在する標的部位としては、トランスポゾン遺伝子Tf2が挙げられる。S.ポンベの場合、Tf2は、3本(一倍体)の染色体それぞれに合計13箇所存在するトランスポゾン遺伝子であり、長さ(塩基数)は約4900bpであり、それらの遺伝子間における塩基配列相同性は99.7%であることが知られている(下記文献参照)。
Nathan J. Bowen et al, “Retrotransposons and Their Recognition of pol II Promoters: A Comprehensive Survey of the Transposable Elements From the Complete Genome Sequence of Schizosaccharomyces pombe”, Genome Res. 2003 13: 1984-1997
S.ポンベを宿主とする場合、標的部位としては、leu1遺伝子座およびその近傍、ura4遺伝子座およびその近傍、gpd1遺伝子座およびその近傍、ef1a−a遺伝子座およびその近傍、eno101遺伝子座およびその近傍、eno102遺伝子座およびその近傍、fba1遺伝子座およびその近傍、gpd3遺伝子座およびその近傍、gpm1遺伝子座およびその近傍、hht2遺伝子座およびその近傍、pgk1遺伝子座およびその近傍、tpi1遺伝子座およびその近傍、およびubi4遺伝子座およびその近傍等が挙げられる。なお、本願明細書において、「X遺伝子座」には、染色体中のX遺伝子の転写領域を意味する。また、「X遺伝子座およびその近傍」とは、染色体中のX遺伝子のORFの上流端から上流10kbp(10000bp)から、該ORFの下流端から下流10kbpまでの範囲内である領域を意味する。
本発明に係る発現ベクターは、該組込み領域に外来遺伝子を有するため、宿主の染色体に、外来遺伝子と選択マーカー遺伝子等を1のDNA断片として組み込める。外来遺伝子は、選択マーカー遺伝子等が脱落した場合でも宿主の染色体に残存する必要がある。このため、外来遺伝子は、該第1の領域と該第2の領域で挟まれていない状態で、宿主の染色体に組込まれることが好ましい。具体的には、本発明に係るクローニングベクターは、該第1の領域の上流側または該第2の領域の下流側にクローニングサイトを有しており、該クローニングサイトに外来遺伝子を導入した本発明に係る発現ベクターは、外来遺伝子を、該組込み領域であって、該第1の領域の上流または該第2の領域の下流に有する。
本発明に係る発現ベクターにおいて、外来遺伝子は、該組込み領域内に、該遺伝子の発現を制御するプロモーターと共に存在していることが好ましく、該遺伝子の発現を制御するプロモーターとターミネーターと共に存在していることがより好ましい。このため、本発明に係るクローニングベクターが該第1の領域の上流にクローニングサイトを有する場合、該組込み領域内でありかつ該クローニングサイトの上流に、該クローニングサイトに導入した外来遺伝子の発現を制御するプロモーターを有していることが好ましい。同様に、該第2の領域の下流にクローニングサイトを有する場合、該組込み領域内でありかつ該クローニングサイトの下流に、該クローニングサイトに導入した外来遺伝子のターミネーターを有していることが好ましい。外来遺伝子の発現を制御するプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主内で機能するものであればよく、たとえば、選択マーカー遺伝子のプロモーターおよびターミネーターとして列挙されたものと同様のものを使用できる。
本発明に係る発現ベクターにおいて、外来遺伝子の発現を制御するプロモーターおよびターミネーターは、該発現ベクター中の組込み領域が宿主の染色体に組込まれた後、該第1の領域と該第2の領域の間で相同組換えが生じた場合であっても染色体から脱落せずに残留している必要がある。たとえば、該第2の領域の下流に、導入した外来遺伝子の発現を制御するプロモーターと、外来遺伝子を導入するクローニングサイトとターミネーターとを有するクローニングベクター、または、該第1の領域の上流に、導入した外来遺伝子の発現を制御するプロモーターと、外来遺伝子を導入するクローニングサイトとターミネーターとを有するクローニングベクターを用いることにより、該第1の領域と該第2の領域の間で相同組換えが生じた後にも、宿主の染色体中に残留する外来遺伝子が発現可能な発現ベクターが得られる。
本発明に係る発現ベクターが、該第2の領域の下流に外来遺伝子が導入されたものの場合、該発現ベクター中の組込み領域を宿主の染色体中に組込んだ後、該第1の領域と該第2の領域の間で相同組換えが生じることによって形成された該第1の領域と該第2の領域のハイブリッドな領域が、該外来遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能することが好ましい。たとえば、該クローニングサイトが該第2の領域の下流側に位置し、該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子の発現を制御しうるプロモーターとして機能しうる領域であるクローニングベクターを用いることにより、該発現ベクターを形成できる。
また、本発明に係る発現ベクターが、宿主の染色体に組込まれた際に、第1の領域と第2の領域のハイブリッドな領域が該外来遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能するものである場合に、該第1の領域がマーカー遺伝子(該マーカー遺伝子が選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成される場合には、より上流側の遺伝子)の発現を制御するプロモーターとして機能することも好ましい。たとえば、該クローニングサイトが該第2の領域の下流側に位置し、該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子のプロモーターおよび該マーカー遺伝子のプロモーターとして機能しうる領域であるクローニングベクターを用いることにより、該発現ベクターを形成できる。
本発明に係る発現ベクターが、該第1の領域の上流に外来遺伝子が導入されたものの場合、該発現ベクター中の組込み領域を宿主の染色体中に組込んだ後、該第1の領域と該第2の領域の間で相同組換えが生じることによって形成された該第1の領域と該第2の領域のハイブリッドな領域が、該外来遺伝子の発現のターミネーターとして機能してもよい。たとえば、該クローニングサイトが該第1の領域の上流側に位置し、該クローニングサイトの上流に該クローニングサイトに導入される外来遺伝子の発現を制御するプロモーターを有し、該第1の領域および該第2の領域が、いずれも、該外来遺伝子のターミネーターとして機能しうる領域であるクローニングベクターを用いることにより、該発現ベクターを形成できる。
また、本発明に係る発現ベクターが、宿主の染色体に組込まれた際に、第1の領域と第2の領域のハイブリッドな領域が該外来遺伝子のターミネーターとして機能するものである場合に、該第2の領域がマーカー遺伝子(該マーカー遺伝子が選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成される場合には、より下流側の遺伝子)のターミネーターとして機能することも好ましい。たとえば、該クローニングサイトが該第1の領域の上流側に位置し、該クローニングサイトの上流に該クローニングサイトに導入される外来遺伝子の発現を制御するプロモーターを有し、該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子のターミネーターおよび該マーカー遺伝子のターミネーターとして機能しうる領域であるクローニングベクターを用いることにより、該発現ベクターを形成できる。
該クローニングサイトは、ベクター中、該クローニングサイトにのみ存在する制限酵素部位である。該クローニングサイトは制限酵素部位を1個のみ有していてもよく、2個以上の制限酵素部位を有するマルチクローニングサイトであってもよい。該マルチクローニングサイトとしては、公知のクローニングベクターや発現ベクターが備えるマルチクローニングサイトをそのまま使用でき、また、公知のマルチクローニングサイトを適宜改変したものを使用できる。その他、本発明に係るクローニングベクターにおいては、クローニングサイトの下流に終始コドンを備えていてもよい。
本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターは、線状DNA構造であり、かつARSを有していないものとして、宿主細胞へ導入されることが好ましい。たとえば、該ベクターは、線状DNAからなるベクターであってもよく、宿主への導入時に、線状DNAに切り開くための制限酵素認識配列を備える環状DNA構造のベクターであってもよい。該ベクターがARSを有するプラスミドの場合、ARS部分を削除して線状DNA構造、またはARS部分を開裂させることによりARSの機能を失活させた線状DNA構造とした後、宿主へ導入できる。
該ベクターが通常用いられるプラスミドDNA等の環状DNA構造であり、制限酵素でベクターを線状に切り開いた後に宿主細胞に導入する場合には、環状DNA構造を有するベクターを切り開く位置は、該上流側組換え部位と該下流側組換え部位が切り開かれたベクターの両端にそれぞれ位置するように設けることが好ましい。
該ベクターは、両端それぞれに組換え部位の一部が存在するような線状DNA構造とすることができれば、環状DNA構造を有するベクターを切り開く方法以外の方法で構築してもよい。
該ベクターは、該組込み領域以外に他のDNA領域を有していてもよい。たとえば、大腸菌内での複製のために必要な「ori」と呼ばれる複製開始領域や抗生物質耐性遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子等)が挙げられる。これらは大腸菌を使用してベクターを構築する場合に通常必要とされる遺伝子である。ただし、複製開始領域は後述のようにベクターを宿主の染色体に組込む際には除去されることが好ましい。
本発明に係るクローニングベクターおよび発現ベクターは、たとえば、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等の大腸菌由来のプラスミドベクターに、該組込み領域を挿入することにより製造できる。
この場合、該プラスミドベクターは、大腸菌内での複製のために必要な「ori」と呼ばれる複製開始領域が除去されていることが好ましい。これにより、上述したベクターを染色体に組込む際に、その組込み効率を向上させられる。
複製開始領域が除去されたベクターの構築方法は特に限定されないが、特開2000−262284号公報に記載されている方法を用いることが好ましい。すなわち、線状化のための切断箇所に複製開始領域を挿入しておくことにより、線状DNA構造とすると同時に複製開始領域が切り出されるようにする方法が好ましい。これにより、簡便に複製開始領域が除去されたベクターを得られる。
また、特開平5−15380号公報、特開平7−163373号公報、国際公開第96/23890号パンフレット、特開平10−234375号公報等に記載された発現ベクターやその構築方法を適用して、該組込み領域を有する前駆体ベクターを構築し、さらに通常の遺伝子工学的手法で該前駆体ベクターから複製開始領域を除去して相同組換えに用いるベクターを得る方法であってもよい。
<形質転換体の製造方法>
本発明に係る形質転換体の製造方法は、本発明に係るクローニングベクターまたは発現ベクターを、宿主細胞に導入した後、該選択マーカー遺伝子を利用して該マーカー遺伝子を有する形質転換体のみを選択するベクター導入工程と、該ベクター導入工程により選択された形質転換体から、該カウンター選択マーカー遺伝子またはura遺伝子を利用して該マーカー遺伝子が脱落した形質転換体のみを選択するカウンター選択工程と、を有することを特徴とする。
宿主は、野生型であってもよく、用途に応じて特定の遺伝子を欠失または失活させた変異型であってもよい。特定の遺伝子を欠失または失活させる方法としては、公知の方法を用いられる。具体的には、Latour法(Nucleic Acids Research誌、第34巻、e11ページ、2006年;国際公開第2007/063919号パンフレット等に記載)を用いることにより遺伝子を欠失させられる。また、変異剤を用いた突然変異分離法(酵母分子遺伝学実験法、1996年、学会出版センター)や、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を利用したランダム変異法(PCR Methods Application誌、第2巻、28-33ページ、1992年)等により遺伝子の一部に変異を導入することにより該遺伝子を失活させられる。特定遺伝子を欠失または失活させたシゾサッカロミセス属酵母宿主としては、たとえば、国際公開第2002/101038号、国際公開第2007/015470号等に記載されている。
また、特定の遺伝子の削除または不活性化を行う部分はORF(オープンリーディングフレーム)部分であってもよく、発現調節配列部分であってもよい。特に好ましい方法は、構造遺伝子のORF部分をマーカー遺伝子に置換するPCR媒介相同組換え法(Yeast誌、第14巻、943-951ページ、1998年)による削除または不活性化の方法である。
宿主に本発明に係るクローニングベクターまたは発現ベクターを導入して、相同組み換え法により該ベクター内の該組込み領域を宿主の染色体に組込んで形質転換する方法としては、公知の相同組み換え法を使用できる。該形質転換方法としては、たとえば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、ガラスビーズ法等の従来周知の方法や、特開2005−198612号公報記載の方法が挙げられる。また、市販の酵母形質転換用キットを用いてもよい。
本発明に係るクローニングベクターまたは発現ベクターを導入して相同組換えを行った後、得られた形質転換体を、選択マーカー遺伝子を利用して、該組込み領域が染色体に導入された形質転換体を選択する。選択する方法としては、たとえば、選択マーカー遺伝子が栄養要求性相補マーカー遺伝子の場合には、ベクター導入処理後の宿主を相当する栄養を除去した培地によりスクリーニングし、得られたコロニーから複数を選択する。該組込み領域内の外来遺伝子が構造遺伝子の場合には、選択されたコロニーを別々に液体培養した後、それぞれの培養液における該外来遺伝子がコードする蛋白質の発現量を調べ、該蛋白質の発現量がより多い形質転換体を選択する。それら選択した形質転換体に対してパルスフィールドゲル電気泳動法によるゲノム解析を行うことにより、染色体に組込まれたベクターの数や発現カセットの数を調べられる。
染色体に組込まれるベクターの数は組込み条件等を調整することによりある程度は調整できる。ベクターの大きさ(塩基数)や構造により、組込み効率や組込み数も変化すると考えられる。
選択マーカー遺伝子を利用して選択された形質転換体から、さらにカウンター選択遺伝子が染色体から脱落した形質転換体のみを選択する。カウンター選択遺伝子がura遺伝子等のウラシル要求性相補遺伝子の場合、形質転換体をFOAとウラシルを含有する培地で培養することにより、ウラシル要求性相補遺伝子が脱落した形質転換体のみを選択的に生育させてコロニーを形成させられる。
該組込み領域に外来遺伝子を有している発現ベクターを用いることにより、該カウンター選択工程においては、該外来遺伝子を有し、該マーカー遺伝子を有さない形質転換体が選択される。複数の外来遺伝子が組込まれた形質転換体は、たとえば、宿主の染色体に組込む目的の1個または2個の外来遺伝子を有する複数の発現ベクターを用い、発現ベクターごとにベクター導入工程とカウンター選択工程とを繰り返すことにより製造できる。
複数の外来遺伝子が組込まれた形質転換体を製造するために、1の宿主細胞に複数の発現ベクターを導入する場合、該複数の発現ベクターにおける選択マーカー遺伝子は、同種の遺伝子同士であってもよく、異種の遺伝子同士であってもよい。異種類の選択マーカー遺伝子を有する発現ベクターは、一度の形質転換操作で同時に宿主細胞に導入できる。目的の複数の外来遺伝子が染色体に組込まれた形質転換体の製造に必要な工程を短くできるため、該複数の発現ベクターにおける選択マーカー遺伝子は、異種の遺伝子同士であることが好ましい。
また、該複数の発現ベクターにおけるカウンター選択マーカー遺伝子は、同種の遺伝子同士であってもよく、異種の遺伝子同士であってもよい。同種類のカウンター選択マーカー遺伝子を有する発現ベクターで形質転換した場合、一度のカウンター選択工程で、カウンター選択マーカー遺伝子と選択マーカー遺伝が脱落した形質転換体を選択できる。目的の複数の外来遺伝子が染色体に組込まれた形質転換体の製造に必要な工程を短くできるため、該複数の発現ベクターにおけるカウンター選択マーカー遺伝子は、同種の遺伝子同士であることが好ましい。
たとえば、5種類の外来遺伝子を組込んだ形質転換体を製造する場合に、マーカー遺伝子として1個のウラシル要求性相補遺伝子のみを用いる従来のマーカーリサイクリング法では、各外来遺伝子を組込んだ5種類の発現ベクターについて、順次ベクター導入工程とカウンター選択工程を行う。つまり、少なくとも5回のベクター導入工程と4回のカウンター選択工程を行う必要があり、非常に長期間を要する。これに対して、たとえば、互いに異なる種類の選択マーカー遺伝子と同種のカウンター選択マーカー遺伝子を備える5種類のクローニングベクターに、それぞれ外来遺伝子を組込んだ発現ベクターを用いて本発明に係る形質転換体の製造方法を行った場合には、カウンター選択工程は1度でまとめて行えるため、形質転換処理を発現ベクターの種類ごとに別個に行った場合であっても、5回のベクター導入工程と1回のカウンター選択工程を行えばよく、より短期間で製造できる。
本発明に係る形質転換体の製造方法により製造された形質転換体は、天然の宿主と同様に培養できる。
たとえば、宿主がシゾサッカロミセス属酵母の場合、該形質転換体の培養のための培養液には、公知の酵母培養培地を用いることができ、シゾサッカロミセス属酵母が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、シゾサッカロミセス属酵母の培養を効率良く行えるものであればよい。培養液としては、天然培地を用いてもよく、合成培地を用いてもよい。
炭素源としては、たとえば、グルコース、フルクトース、スクロース等の糖が挙げられる。
窒素源としては、たとえば、アンモニア、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機酸または無機酸のアンモニウム塩、ペプトン、カザミノ酸が挙げられる。
無機塩類としては、たとえば、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムが挙げられる。
具体的には、YPD培地等の栄養培地(M.D.Rose et al.,"Methods In Yeast Genetics",Cold Spring Harbor LabolatoryPress(1990) )またはMB培地等の最少培地(K.Okazaki et al.,Nucleic AcidsRes.,18,6485-6489(1990))等を使用できる。
培養には公知の培養方法を用いることができ、たとえば振盪培養、攪拌培養等により行える。また、回分培養であってもよく、連続培養であってもよい。
培養温度は、宿主がシゾサッカロミセス属酵母の場合、23〜37℃であることが好ましい。また、培養時間は適宜決定できる。
以下、実施例等を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
<発現ベクターpSEl−EGFPの製造>
選択マーカー遺伝子としてleu1遺伝子を、カウンター選択マーカー遺伝子としてura4遺伝子を、外来遺伝子としてEGFP遺伝子を有するS.ポンベを宿主とする発現ベクターpSEl−EGFP(図1)を製造した。pSEl−EGFPは、DNA合成により配列番号1に示す塩基配列からなるDNA断片として作製できる。
pSEl−EGFPは、上流端と下流端に、それぞれ、S.ポンベのef1a−a遺伝子座の下流に相同組換えによりpSEl−EGFPを組込むための上流側組換え部位(ef1a−a up)および下流側組換え部位(ef1a−a down)を有し、その間に、上流側から、hCMVプロモーター、leu1遺伝子とura4遺伝子が連結されたキメラ遺伝子、hCMVプロモーター、EGFP遺伝子、LPIターミネーターを有する。leu1遺伝子とura4遺伝子が連結されたキメラ遺伝子は、hCMVプロモーターに挟まれているため、pSEl−EGFPを組込んだ形質転換体をFOA処理することにより、該キメラ遺伝子は1個のhCMVプロモーターと共にゲノム上から脱落する。残った1個のhCMVプロモーターは、その下流にあるEGFP遺伝子とLPIターミネーターと共にFOA処理後もゲノム上に残る発現カセットとして機能する。
[実施例2]
<発現ベクターpSHa−EGFPの製造>
選択マーカー遺伝子としてade6遺伝子を、カウンター選択マーカー遺伝子としてura4遺伝子を、外来遺伝子としてEGFP遺伝子を有するS.ポンベを宿主とする発現ベクターpSHa−EGFP(図2)を製造した。pSHa−EGFPは、DNA合成により配列番号2に示す塩基配列からなるDNA断片として作製できる。
pSHa−EGFPは、上流端と下流端に、それぞれ、S.ポンベのhht2遺伝子座の下流に相同組換えによりpSHa−EGFPを組込むための上流側組換え部位(hht2 up)および下流側組換え部位(hht2 down)を有し、その間に、上流側から、hCMVプロモーター、ade6遺伝子とura4遺伝子が連結されたキメラ遺伝子、hCMVプロモーター、EGFP遺伝子、LPIターミネーターを有する。ade6遺伝子とura4遺伝子が連結されたキメラ遺伝子は、hCMVプロモーターに挟まれているため、pSHa−EGFPを組込んだ形質転換体をFOA処理することにより、該キメラ遺伝子は1個のhCMVプロモーターと共にゲノム上から脱落する。残った1個のhCMVプロモーターは、その下流にあるEGFP遺伝子とLPIターミネーターと共にFOA処理後もゲノム上に残る発現カセットとして機能する。
[実施例3]
<形質転換体の製造>
S.ポンベのウラシル要求性株ARC019株(遺伝子型:h 、leu1−32、ura4−D18、Ade6−M216)(Strain name: JY741, NBRPID: FY7512)を宿主とし、pSE1−EGFP、pSHa−EGFP、Leu1−EGFP断片、およびAde6−EGFP断片の4種類のDNA断片でそれぞれ形質転換した。Leu1−EGFP断片は、pSE1−EGFPからura4遺伝子配列を除去したDNA断片であり、Ade6−EGFP断片はpSHa−EGFPからura4遺伝子配列を除去したDNA断片である。
具体的には、ARC019株を、各DNA断片で、Bahlerらの方法(Yeast誌、1998年、14巻、943−951頁)に従い形質転換した。pSE1−EGFPまたはLeu1−EGFP断片で形質転換処理した酵母をロイシン不含培地で培養し、形質転換体を得た。pSHa−EGFPまたはAde6−EGFP断片で形質転換処理した酵母をアデニン不含培地で培養し、形質転換体を得た。
得られた4種の形質転換体を5−FOA含有培地で培養し(FOA処理)、得られたコロニーからそれぞれ8つを選択した。得られたコロニーを、それぞれ別個に、YPD培地(イーストエキス1%/ペプトン2%/グルコース2%)に植え継ぎ25℃にて培養し、菌体を回収した。
回収された菌体から抽出されたDNAを鋳型とし、配列番号3の塩基配列からなるプライマーと配列番号4の塩基配列からなるプライマーとからなるプライマーセットを用いてPCRを行い、選択マーカー遺伝子(leu1遺伝子またはade6遺伝子)の脱落を確認した。この結果、pSE1−EGFPまたはpSHa−EGFPで形質転換した形質転換体では、FOA処理により得られた8個の形質転換体の全てにおいて、選択マーカー遺伝子の脱落が確認された。一方で、Leu1−EGFP断片またはAde6−EGFP断片で形質転換した形質転換体では、FOA処理により得られた8個の形質転換体の全てにおいて、選択マーカー遺伝子は脱落していなかった。
[実施例4]
<形質転換体の製造>
ARC019株を、pSE1−EGFPのみ、pSHa−EGFPのみ、pSE1−EGFPとpSHa−EGFPの混合物、ならびにLeu1−EGFP断片とAde6−EGFP断片の混合物の4種類のDNA断片でそれぞれ形質転換した。形質転換の方法は、実施例3と同様にして行った。
得られた4種の形質転換体を5−FOA含有培地で培養し(FOA処理)、得られたコロニーからそれぞれ8つを選択した。実施例3と同様にして、得られたコロニーを培養し、菌体を回収し、回収された菌体から抽出されたDNAを鋳型としてPCRを行い、選択マーカー遺伝子(leu1遺伝子またはade6遺伝子)の脱落を確認した。
この結果、pSE1−EGFPのみ、pSHa−EGFPのみ、またはpSE1−EGFPとpSHa−EGFPの混合物で形質転換した形質転換体では、FOA処理により得られた8個の形質転換体の全てにおいて、選択マーカー遺伝子の脱落が確認された。一方で、Leu1−EGFP断片とAde6−EGFP断片の混合物で形質転換した形質転換体では、FOA処理により得られた8個の形質転換体の全てにおいて、選択マーカー遺伝子は脱落していなかった。
[実施例5]
(1)
<S.ポンベPDC2遺伝子削除株の作製>
S.ポンベのウラシル要求性株ARC010株(遺伝子型:h 、leu1−32、ura4−D18)(国際公開第2007/015470号パンフレット参照。)をLatour法(Nucleic Acids Res.誌、2006年、34巻、e11頁、国際公開第2007/063919号パンフレットに記載)に従って形質転換し、PDC2遺伝子(系統名:SPAC1F8.07c)を削除した削除株(IGF543株)を作製した。
削除断片の作製には、S.ポンベのARC032株(遺伝子型:h)(国際公開第2007/015470号パンフレット参照。)からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表1に示す塩基配列を有する8種の合成オリゴDNA(オペロン社製)を使用した。
Figure 0006488666
具体的には、UFとURでUP領域を、OFとORでOL領域を、DFとDRでDN領域をそれぞれKOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって作製したのち、さらにそれらを鋳型として、それぞれFFとFRを用いた同様のPCR法によって全長の削除断片を作製した。全長の削除断片作製時には、表2に示す塩基配列を有する2種の合成オリゴDNA(オペロン社製)を用い、ARC032株より同様に調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、同様のPCR法によって調製したS.ポンベのウラシル要求性マーカーura4(GeneDB収載の系統名SPCC330.05c、オロチジン−5’−リン酸脱炭酸酵素遺伝子)領域断片も鋳型として合わせて使用した。
Figure 0006488666
得られたS.ポンベPDC2遺伝子削除株(IGF543株、h leu1−32 ura4−D18 pdc2−D23)は生育速度が遅いものであった。そこで、その生育速度を回復すべく、IGF543株をYESプレート(イーストエキス0.5%/グルコース3%/SPサプリメント)にストリークして25℃にて培養し、得られたコロニーをYPD培地(イーストエキス1%/ペプトン2%/グルコース2%)に植え継ぎ25℃にて培養し、充分に生育した培養液を用いてグリセロールストックを作製し、−80℃にて保存した。該作業を適切な生育速度が得られるまで繰り返し、生育速度の回復した株を作製した(名称はIGF543を継承)。
(2)
<S.ポンベLDH遺伝子1コピー導入株の作製>
PaDLDH遺伝子、PpDLDH遺伝子、LbDLDH遺伝子、LbrDLDH遺伝子、LpDLDH遺伝子、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)のD−LDH遺伝子(LfDLDH遺伝子)(GenBank accession number:BAG28106.1.)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)のD−LDH遺伝子(LcDLDH遺伝子)(GenBank accession number:CAQ67405.1.)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)のD−LDH遺伝子(LplDLDH遺伝子)(GenBank accession number:CCC79301.1.)、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のD−LDH遺伝子(SaDLDH遺伝子)(GenBank accession number:BAB96309.1.)、またはロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)のD−LDH遺伝子(LmDLDH遺伝子)(GenBank accession number:ABJ62843.1.)を導入したポンベ形質転換株を作製した(表13)。
具体的には、例1で作製したIGF543株(S.ポンベの遺伝子削除株)を、PaDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−PaDLDH、PpDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−PpDLDH、LbDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LbDLDH、LbrDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LbrDLDH、LpDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LpDLDH、LfDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LfDLDH、LcDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LcDLDH、LplDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LplDLDH、SaDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSE−SaDLDH、またはLmDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSE−LmDLDHの制限酵素BsiWI消化物で、Bahlerらの方法(Yeast誌、1998年、14巻、943−951頁)に従い形質転換した。
単座組込型組換えベクターpSEは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、分裂酵母用組込型ベクターpTL2M5(国際公開第2011/021629号参照。)を制限酵素AflIIIとXbaIで二重消化して得られたDNA断片に、S.ポンベゲノムを鋳型とし配列番号15、16に示すプライマーセットによるPCRにて増幅したura4−ORF断片をライゲーションして、ベクターpTL2M5−ura4を得た。pTL2M5−uraを制限酵素Bst1107Iで消化して得られたDNA断片と、全合成した制限酵素PmeIとPmaCIの認識配列を含む配列番号17のDNA断片をライゲーションしてpRUベクターとした。得られたpRUベクターを制限酵素PmeIで消化し得られた断片に、S.ポンベゲノムを鋳型とし配列番号18、19に示すプライマーセットによるPCRにて増幅したef1−DW断片を制限酵素PmeIで消化して得られた断片をライゲーションして、ベクターpRU−efdを得た。さらに得られたpRU−efdベクターを制限酵素SpeIで消化し得られた断片に、S.ポンベゲノムを鋳型とし配列番号20、21に示すプライマーセットによるPCRにて増幅したef1−UP断片を制限酵素NheIで消化して得た断片をライゲーションして、配列番号22にその配列(5’→3’、環状)を示すベクターpSE(7180bp、図3)を作製した。
単座組込型組換えベクターpSLhは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、DNA全合成により作製された配列番号23に示す配列Y1を含むベクターを鋳型とし、配列番号24、25に示すプライマーセットによるPCR反応を行い、増幅したPCR産物を制限酵素KpnIとSnaBIで二重消化してDNA断片を得た。該DNA断片と、pSL1ベクターを制限酵素BsiWIで消化し得られた断片と、pSL6ベクターを鋳型とし配列番号26、27に示すプライマーセットによるPCR反応により得たPCR産物を制限酵素BsiWIで消化し再び制限酵素KpnIとSnaBIで二重消化して得られたDNA断片をライゲーションし、配列番号28にその配列(5’→3’、環状)を示すpSLh(5936bp、図4)を作製した。
pSLh−PaDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ペディオコッカス・アシディラクティシNBRC3076株(NBRC(Biological Resource Center, NITE)より入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表3に記載の2種の合成オリゴDNA(PaDLDH−F、PaDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、PaDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、PaDLDH(配列番号31)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In−Fusion(登録商標)HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて、pSLhに組み込んで、pSLh−PaDLDHを作製した。In−Fusion法の方法は該キットのマニュアルに則り行った。すなわち、得られたPCR産物をスピンカラムにより精製し、pSLhと共にIn−Fusion反応液に加え、50℃、15分間反応させた。
pSLh−PpDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ペディオコッカス・ペントサセウスNBRC107768株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表4に記載の2種の合成オリゴDNA(PpDLDH−F、PpDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、PpDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、PaDLDH(配列番号34)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−PpDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSLh−LbDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ラクトバチルス・ブルガリクスNBRC13953株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表5に記載の2種の合成オリゴDNA(LbDLDH−F、LbDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、LbDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、LbDLDH(配列番号37)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSLh−LbrDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ラクトバチルス・ブレビスNBRC107147株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表6に記載の2種の合成オリゴDNA(LbrDLDH−F、LbrDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、LbrDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、LbrDLDH(配列番号40)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSLh−LpDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ラクトバチルス・ペントーサスNBRC106467株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表7に記載の2種の合成オリゴDNA(LpDLDH−F、LpDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、LpDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、LpDLDH(配列番号43)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSLh−LfDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ラクトバチルス・ファーメンタムNBRC3956株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表8に記載の2種の合成オリゴDNA(LfDLDH−F、LfDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、LfDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、LfDLDH(配列番号46)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSLh−LplDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ラクトバチルス・プランタラムNBRC15891株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表9に記載の2種の合成オリゴDNA(LplDLDH−F、LplDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、LplDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、LplDLDH(配列番号49)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSLh−LcDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ラクトバチルス・カゼイNBRC15883株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表10に記載の2種の合成オリゴDNA(LcDLDH−F、LcDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、LcDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、LcDLDH(配列番号52)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSE−SaDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、スタヒロコッカス・アウレウスNBRC102135株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表11に記載の2種の合成オリゴDNA(SaDLDH−F、SaDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、SaDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、SaDLDH(配列番号55)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
pSE−LmDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、まず、ロイコノストック・メセンテロイデスNBRC100496株(NBRCより入手)の培養物からDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、表12に記載の2種の合成オリゴDNA(LmDLDH−F、LmDLDH−R、オペロン社製)を使用し、KOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって、LmDLDH遺伝子のORF断片を得た。当該ORF断片は、LmDLDH(配列番号58)をコードしていた。
Figure 0006488666
得られた増幅断片を、In-fusion法によりpSLhに組み込んで、pSLh−LbDLDHを作製した。In-fusion法は、pSLh−PaDLDHの作製と同様にして行った。
Figure 0006488666
<培養試験>
得られた各形質転換体をYPD6液体培地(イーストエキス1%、ペプトン2%、グルコース6%)に植菌して、温度32℃、振盪速度100rpmの条件下で24時間培養を行った。培養終了後、菌体を回収し、4.5mLの11.1%グルコース水溶液に初発菌体濃度を36g(乾燥菌体換算)/Lになるように接種し、温度32℃、振盪速度100rpmの条件下で3または7時間培養を行い、終了後、培養液中のグルコース、エタノールおよび乳酸の濃度(g/L)を測定した。測定結果ならびに該測定結果より計算した、乳酸生産速度(g/(L・h))、乳酸の対糖収率(選択率、%)、培養終了後の乾燥菌体濃度(g/L)、および乾燥菌体あたりの乳酸生産速度(g/(g・h))を、発酵(培養)時間とともに表14に示す。
Figure 0006488666
(3)
<D−LDH遺伝子2コピー導入株の作製>
例1で作製したIGF543株の染色体中の2箇所に、同種または異種の生物由来のD−LDH遺伝子を導入した形質転換体を作製し、それぞれの乳酸産生能を調べた。ウラシル要求性およびロイシン要求性を回復させた株であって、PaDLDH遺伝子が2コピー導入された株をASP4707株、PaDLDH遺伝子とLpDLDH遺伝子が1コピーずつ導入された株をASP4156株、PaDLDH遺伝子とLbDLDH遺伝子が1コピーずつ導入された株をASP4703株、PaDLDH遺伝子とLbrDLDH遺伝子が1コピーずつ導入された株をASP4704株、PaDLDH遺伝子とPpDLDH遺伝子が1コピーずつ導入された株をASP4708株、LfDLDH遺伝子とLpDLDH遺伝子が1コピーずつ導入された株をASP4752株とした。
具体的には、まず、例1で作製したIGF543株(S.ポンベの遺伝子削除株)を、PaDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSE−PaDLDH、またはLpDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSE−LpDLDHの制限酵素BsiWI消化物で、Bahlerらの方法(Yeast誌、1998年、14巻、943−951頁)に従い形質転換し、PaDLDH遺伝子が1コピー導入されたS.ポンベLDH遺伝子1コピー導入株(ASP3472株)またはLpDLDH遺伝子が1コピー導入されたS.ポンベLDH遺伝子1コピー導入株(ASP3468株)を作製した。
pSE−PaDLDHは、以下に示す工程で作製した。すなわち、例2で作製したpSLh−PaDLDHより発現カセット(hCMVプロモーター/PaDLDH−ORF/LPIターミネ―ター)を制限酵素SpeIおよびBst1107Iを用いた二重消化によって切り出し、pSEに組み込んで、pSE−PaDLDHを作製した。
同様にして、例2で作製したpSLh−LpDLDHより発現カセット(hCMVプロモーター/LpDLDH−ORF/LPIターミネ―ター)を制限酵素SpeIおよびBst1107Iを用いた二重消化によって切り出し、pSEに組み込んで、pSE−LpDLDHを作製した。
得られたS.ポンベLDH遺伝子1コピー導入株に対して、それぞれFOA(5−フルオロオロチン酸)処理を行ってura4遺伝子を除去した後、PaDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−PaDLDH、PpDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−PpDLDH、LpDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LpDLDH、LbDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LbDLDH、LbrDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LbrDLDH、またはLfDLDH遺伝子発現カセットを保持した単座組込型組換えベクターpSLh−LfDLDHを用い、岡崎らの方法(Okazakiほか、Nucleic Acids Res.誌、1990年、18巻、6485−6489頁)により形質転換し、Leu1座近傍にhCMVプロモーターによって制御されたPaDLDH遺伝子、PpDLDH遺伝子、LpDLDH遺伝子、LbDLDH遺伝子、LbrDLDH遺伝子、またはLfDLDH遺伝子をさらに1コピー導入したS.ポンベD−LDH遺伝子2コピー導入株を作製した。
pSLh−PaDLDH、pSLh−PpDLDH、pSLh−LpDLDH、pSLh−LbDLDH、pSLh−LbrDLDH、およびpSLh−LfDLDHは、それぞれ、例2で作製したpTL2−PaDLDH、pTL2−PpDLDH、pTL2−LpDLDH、pTL2−LbDLDH、pTL2−LbrDLDH、およびpTL2−LfDLDHから各D−LDHのORF断片を制限酵素NcoIおよびSalIを用いた二重消化によって切り出し、以下に示す工程で作製した単座組込型組換えベクターpSLhに組み込んで作製した。
得られたS.ポンベLDH遺伝子2コピー導入株に対して、それぞれFOA処理を行ってura4遺伝子を除去した後、leu1遺伝子断片(配列番号59)およびura4遺伝子断片(配列番号60)を用いて形質転換を行い、ウラシル要求性およびロイシン要求性を回復させた株を作製した。
<培養試験>
例2と同様にして、各S.ポンベLDH遺伝子2コピー導入株をそれぞれYPD6液体培地に植菌して培養し、回収した菌体を11.1%グルコース水溶液中で培養を行い、終了後、培養液中のグルコース、エタノールおよび乳酸の濃度(g/L)を測定した。また、乳酸の光学純度を、配位子交換型カラムを用いて光学異性体を分離し測定した。光学純度は、各光学異性体のピークエリア面積から、下記式([D体]:D−乳酸のピークエリア面積、[L体]:L−乳酸のピークエリア面積)により算出して求めた。
式:[光学純度(%ee)]=([D体]−[L体])/([D体]+[L体])×100
発酵(培養)時間、測定結果ならびに該測定結果より計算した、D−乳酸の対糖収率(選択率、%)およびD−乳酸の光学純度(%ee)を表15に示す。対照として、FOA処理を行ったPaDLDH遺伝子1コピー導入株(ASP3472株)についても同様に培養試験を行った。
Figure 0006488666
[実施例6]
<S.ポンベHsLDH遺伝子1コピー導入株の作製>
S.ポンベの染色体のgpm1遺伝子座およびその近傍に、ヒト由来のLDH遺伝子(HsLDH遺伝子)を組込むための発現ベクターpSM−HsLDHベクター(4562bp、図5)を作製した。pSM−HsLDHベクターは、DNA合成により、配列番号61に示す塩基配列からなるDNA断片として作製した。
次いで、IGF543株を、pSM−HsLDHベクターで形質転換した。該操作により、HsLDH発現カセットがゲノム上のgpm1遺伝子座近傍に導入された。該形質転換株(HsLDH遺伝子1コピー導入株)をASP3494株とした。
<S.ポンベHsLDH遺伝子2コピー導入株の作製>
ASP3494株を、HsLDH遺伝子発現カセットを保持し、ihc1プロモーターを有する発現ベクターpSL17−HsLDH(国際公開第2014/030655号参照。)の制限酵素BsiWI消化物で、Bahlerらの方法(Yeast誌、1998年、14巻、943−951頁)に従い形質転換した。該操作により、該発現カセットがゲノム上のleu1遺伝子座近傍に導入され、gpm1遺伝子座近傍にhCMVプロモーターによって制御されたHsLDH遺伝子を1コピーと、Leu1遺伝子座近傍にihcプロモーターによって制御されたHsLDH遺伝子を1コピーとの合計2コピーのHsLDH遺伝子が導入された形質転換株を作製した。該形質転換株(HsLDH遺伝子2コピー導入株)をASP4121株とした。
<ウラシル要求性の復帰>
pSM−HsLDHベクターによりS.ポンベのゲノムに導入されたura4遺伝子は、2つのhCMVプロモーター配列に挟まれている為、ホモロガスリコンビネーションによりゲノム上から脱落しやすい。
そこで、ASP4121株をFOA処理し、ウラシルの要求性を復帰させた。
<S.ポンベHsLDH遺伝子3コピー導入株の作製>
まず、HsLDH遺伝子発現カセットを保持し、S.ポンベの染色体のeno101遺伝子座近傍にHsLDH遺伝子を組込むための発現ベクターpSN−HsLDHベクター(4535bp、図6)を作製した。pSN−HsLDHベクターは、DNA合成により、配列番号62に示す塩基配列からなるDNA断片として作製した。
次いで、ASP4121株をFOA処理してウラシルの要求性を復帰させた形質転換株を、pSN−HsLDHベクターで形質転換した。該操作により、HsLDH発現カセットがゲノム上のeno101遺伝子座近傍に導入され、gpm1遺伝子座近傍にhCMVプロモーターによって制御されたHsLDH遺伝子を1コピーと、Leu1遺伝子座近傍にihcプロモーターによって制御されたHsLDH遺伝子を1コピーと、eno101遺伝子座近傍にhCMVプロモーターによって制御されたHsLDH遺伝子を1コピーとの合計3コピーのHsLDH遺伝子が導入された形質転換株を作製した。該形質転換株(HsLDH遺伝子3コピー導入株)をASP4956株とした。
<ウラシル要求性の復帰>
pSM−HsLDHベクターによる場合と同様に、pSN−HsLDHベクターによりS.ポンベのゲノムに導入されたura4遺伝子は、2つのhCMVプロモーター配列に挟まれている為、ホモロガスリコンビネーションによりゲノム上から脱落しやすい。
そこで、ASP4956株をFOA処理し、ウラシルの要求性を復帰させた。
<ウラシル要求性の補完>
ASP4956株をFOA処理してウラシルの要求性を復帰させた形質転換株を、ura4遺伝子を含むDNA断片(3277bp、配列番号63)で形質転換し、ウラシル要求性が補完された形質転換株を作製した。該形質転換株(HsLDH遺伝子3コピー導入栄養要求補完株)をASP5019株とした。
<培養試験>
ASP5019株の増殖能と乳酸産生能を調べた。具体的には、形質転換株をYPD6液体培地(イーストエキス1%、ペプトン2%、グルコース6%)に植菌して、温度32℃、振盪速度100rpmの条件下で24時間培養を行った。培養終了後、菌体を回収し、4.5mLの11.1%グルコース水溶液に初発菌体濃度を36g(乾燥菌体換算)/Lになるように接種し、温度32℃、振盪速度100rpmの条件下で3または20時間培養を行い、終了後、培養液のOD660および培養液中の乳酸の濃度(g/L)を測定した。この結果、ASP5019株の20時間培養後の培養液のOD660は22.5であり、3時間培養(発酵)後の乳酸濃度は91.0g/Lであった。

Claims (19)

  1. 宿主の染色体中の標的部位と相同組換えを行うための1組の組換え部位の間に、第1の領域と第2の領域とクローニングサイトとを有し、
    該第1の領域の下流側に該第2の領域が位置しており、該第1の領域と第2の領域は互いに90%以上の相同性を有し、
    該クローニングサイトは、該第1の領域の上流側または該第2の領域の下流側に位置しており、
    該第1の領域と該第2の領域の間に、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子し、
    該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子が連結されており、かつ該連結された遺伝子の上流に、該連結された遺伝子の発現を制御するプロモーターを有することを特徴とするクローニングベクター。
  2. 該カウンター選択マーカー遺伝子がura遺伝子である、請求項1に記載のクローニングベクター。
  3. 該第1の領域が、該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子のうちの上流側の遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能する領域である、請求項またはに記載のクローニングベクター。
  4. 該第2の領域が、該マーカー遺伝子のターミネーターとして機能する領域である、請求項1〜のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
  5. 該クローニングサイトが該第1の領域の上流側に位置し、該クローニングサイトの上流に該クローニングサイトに導入される外来遺伝子の発現を制御するプロモーターを有し、該第1の領域および該第2の領域が、いずれも、該外来遺伝子のターミネーターとして機能しうる領域である、請求項1〜のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
  6. 該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子のターミネーターおよび該マーカー遺伝子のターミネーターとして機能しうる領域である、請求項に記載のクローニングベクター。
  7. 宿主の染色体中の標的部位と相同組換えを行うための1組の組換え部位の間に、第1の領域と第2の領域とクローニングサイトとを有し、
    該第1の領域の下流側に該第2の領域が位置しており、該第1の領域と第2の領域は互いに90%以上の相同性を有し、
    該クローニングサイトは該第2の領域の下流側に位置しており、
    該第1の領域と該第2の領域の間に、選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子またはura遺伝子からなるマーカー遺伝子を有し、
    該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子の発現を制御しうるプロモーターとして機能しうる領域であることを特徴とするクローニングベクター。
  8. 該カウンター選択マーカー遺伝子がura遺伝子である、請求項に記載のクローニングベクター。
  9. 選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子を有し、
    該選択マーカー遺伝子の上流に、該選択マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーターを有しており、
    該カウンター選択マーカー遺伝子の上流に、該カウンター選択マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーターを有しており、
    該選択マーカー遺伝子のプロモーターと、該カウンター選択マーカー遺伝子のプロモーターが、互いに相同性が90%未満の配列からなる、請求項またはに記載のクローニングベクター。
  10. 選択マーカー遺伝子とカウンター選択マーカー遺伝子とから構成されるマーカー遺伝子を有し、
    該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子が連結されており、かつ該連結された遺伝子の上流に、該連結された遺伝子の発現を制御するプロモーターを有する、請求項またはに記載のクローニングベクター。
  11. 該第1の領域が、該選択マーカー遺伝子と該カウンター選択マーカー遺伝子のうちの上流側の遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能する領域である、請求項または10に記載のクローニングベクター。
  12. ura遺伝子からなるマーカー遺伝子を有し、該ura遺伝子の上流に該ura遺伝子の発現を制御するプロモーターを有する、請求項に記載のクローニングベクター。
  13. 該第1の領域が、ura遺伝子の発現を制御するプロモーターとして機能する領域である、請求項12に記載のクローニングベクター。
  14. 該第1の領域と該第2の領域が、いずれも、該クローニングサイトに導入される外来遺伝子のプロモーターおよび該マーカー遺伝子のプロモーターとして機能しうる領域である、請求項に記載のクローニングベクター。
  15. 該クローニングサイトがマルチクローニングサイトである、請求項1〜14のいずれか一項に記載のクローニングベクター。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載のクローニングベクターのクローニングサイトに外来遺伝子を導入してなる発現ベクター。
  17. シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)の染色体に相同組換えにより外来遺伝子を組込むために用いられる、請求項16に記載の発現ベクター。
  18. 請求項15に記載のクローニングベクターまたは請求項16に記載の発現ベクターを宿主細胞に導入した後、該選択マーカー遺伝子を利用して該マーカー遺伝子を有する形質転換体のみを選択するベクター導入工程と、
    該ベクター導入工程により選択された形質転換体から、該カウンター選択マーカー遺伝子またはura遺伝子を利用して該マーカー遺伝子が脱落した形質転換体のみを選択するカウンター選択工程と、
    を有することを特徴とする、形質転換体の製造方法。
  19. 該カウンター選択マーカーがura遺伝子である、または該マーカー遺伝子がura遺伝子である該発現ベクターを使用し、
    該カウンター選択工程において、該ベクター導入工程により選択された形質転換体をFOA処理し、ura遺伝子が脱落した形質転換体のみを選択する、請求項18に記載の形質転換体の製造方法。
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