JP5954315B2 - 変異体および該変異体の培養方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸性条件下でも非性的凝集性を有するシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)変異体、および該シゾサッカロミセス・ポンベ変異体の培養方法に関する。
酵母を宿主とした発現系を利用して、タンパク質および有機酸等の有用成分を製造する技術が開発されている。該発現系において酵母によって製造された有用成分を精製するためには、一般的に、遠心分離法等の固液分離処理によって酵母と培養液を分離する工程を要する。非性的凝集性(非性的に凝集する性質)を有する酵母は、培養終了後の培養液から凝集した酵母菌体と培養液とを容易に分離できるため、前記発現系においては、非性的凝集性を有する酵母を宿主とすることが好ましい。
非性的凝集性を有する酵母としては、出芽酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)においてFLO変異株が知られている。また、分裂酵母シゾサッカロミセス・ポンベ(以下、S.ポンベともいう)でも、非性的凝集性を有する変異株も報告されている(特許文献1)。
S.ポンベは、出芽酵母とは系統進化的にきわめて異なる酵母であり、細胞増殖機構、染色体構造、RNAスプライシング機構、糖蛋白質糖鎖へのガラクトース残基の付加等の諸性質が複雑で動物細胞と類似している利点がある。そのため、前記発現系の良き宿主として近年注目されてきている。
特開2000−106867号公報
酵母の培養中に、培養液のpHが酸性にシフトしてしまうことがある。特に、前記発現系において、有機酸または分泌性の酸性蛋白質を大量に合成させた場合には、培養終了時の培養液のpHが2〜4の酸性となる場合が多い。このため、たとえばpH5以上の比較的pHの高い培養液中では凝集性を有するが、pH2〜4の酸性条件下では凝集しない場合には、酵母を凝集させるために、培養終了後にpHを中性付近に調整する中和処理を行わなくてはならない。
特許文献1に記載の酵母は、非性的凝集性を有するS.ポンベ変異株であり、前記発現系の宿主として好適と考えられる。しかし、該S.ポンベ変異株は、YPD培地(通常、pH5.6〜6.0)中で非性的に凝集することが確認されているものの、酸性条件下でも充分な凝集性を有しているか否か、不明である。
そこで本発明では、pH2〜4の酸性条件下でも充分な凝集性を有するS.ポンベ変異体、および該S.ポンベ変異体の培養方法の提供を目的とする。
本発明のS.ポンベ変異体は、外来のgsf2遺伝子が組み込まれており、かつピルビン酸転移酵素Pvg1をコードする遺伝子が欠損している、若しくはピルビン酸転移酵素Pvg1にPvg1の酵素活性が低下若しくは失活する変異が導入されていることを特徴とする。
本発明のS.ポンベ変異体においては前記外来のgsf2遺伝子は、シゾサッカロミセス・ポンベが本来有するgsf2遺伝子であることが好ましい。また、外来のgsf2遺伝子は、遺伝子工学的方法により宿主の染色体に組み込まれていることが好ましい。
また、本発明のS.ポンベ変異体は、pH2.0〜4.0において、カルシウムイオン、リチウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、および亜鉛イオンからなる群より選択される1種以上の陽イオンに依存して非性的に凝集する性質を有することが好ましい。
さらに、本発明のS.ポンベ変異体は、カルシウムイオン含有乳酸緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム、pH2.0)中で非性的に凝集する性質を有し、乾燥菌体の濃度が3.6g/Lの場合に、該カルシウムイオン含有乳酸緩衝液中における沈降速度が2.0m/h以上であることが好ましい。前記沈降速度は、6.0m/h以上であることが好ましい。
また、本発明の非性的に凝集する性質を有する変異体の製造方法は、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)を宿主とし、遺伝子工学的方法により、外来のgsf2遺伝子を組み込み、かつピルビン酸転移酵素Pvg1をコードする遺伝子を欠失する、若しくは該遺伝子にPvg1の酵素活性が低下若しくは失活する変異を導入することを特徴とする。
さらに、本発明のシゾサッカロミセス・ポンベ変異体の培養方法は、本発明のS.ポンベ変異体を、pH5以下で培養することを特徴とする。
本発明のS.ポンベ変異体は、pH2〜4の酸性条件下でも充分な非性的凝集性を有している。このため、該S.ポンベ変異体を用いた本発明の培養方法により、培養終了時の培養液のpHが5以下になる場合であっても、アルカリによる中和を必要とせずに、酵母同士の凝集を利用して容易に酵母菌体と培養液とを分離できる。
例1において、各pH条件下の変異体の凝集の有無を示す写真図である。
本発明において、「非性的凝集性」とは、S.ポンベが本来有する性的に凝集する性質(性的凝集性)とは異なる凝集性を有する性質をいう。しかし、本来有する性的凝集性が失われていることを意味するものではない。また、「構成的凝集性」とは非性的凝集性と同一の性質をいうが、特に増殖過程において増殖と同時に(非性的に)凝集する性質を指していう。
本発明において、「Gsf活性」とは、S.ポンベが通常培養されるpH(例えば、pH5〜6)において示される非性的凝集性を意味する。また、Gsf活性に関連する遺伝子を凝集素遺伝子という。
gsf2遺伝子は、S.ポンベにおいては凝集素遺伝子である。S.ポンベのgsf2遺伝子の正式名称はSPCC1742.01である。
Pvg1は、ピルビン酸転移酵素である。S.ポンベのPvg1をコードするpvg1遺伝子の正式名称はSPAC8F11.10cである。
なお、S.ポンベの染色体の全塩基配列は、サンガー研究所のデータベース「GeneDB」に「Schizosaccharomyces pombe Gene DB(http://www.genedb.org/genedb/pombe/)」として、収録され、公開されている。本明細書記載のS.ポンベの遺伝子の配列データは上記データベースから遺伝子名または系統名で検索して、入手できる。
本発明のS.ポンベ変異体は、S.ポンベの遺伝子の少なくとも一部が改変された結果、Gsf活性が増大しており、かつピルビン酸転移酵素Pvg1の酵素活性が低下または失活している変異体である。S.ポンベにおいて、Gsf活性が増大し、かつPvg1の酵素活性が低下または失活すると、pH2〜4において非性的に凝集する形質が獲得される。以下、「pH2〜4において非性的に凝集する性質」を、耐酸性非性的凝集性ともいう。すなわち、本発明のS.ポンベ変異体は、耐酸性非性的凝集性を獲得した変異体である。
S.ポンベは本来フェロモンで誘導される性的凝集性を有する。たとえば、増殖過程において栄養不足をきたすと性的凝集を生じやすい。しかし、タンク培養等による人工的大量培養においては通常充分な量の栄養を有する培養液中で培養が行われることより性的凝集を起こすことは少ない。一方、本発明のS.ポンベ変異株は非性的凝集性を有すため、充分な量の栄養を有する培養液中で培養が行われても、増殖とともに凝集(構成的凝集)を起こす。
S.ポンベのGsf活性は、例えば、gsf2遺伝子の発現量を増大させることにより、増大させられる。また、S.ポンベのPvg1の酵素活性は、Pvg1をコードするpvg1遺伝子を欠失する、若しくは該遺伝子にPvg1の酵素活性が低下若しくは失活する変異を導入することにより、低下または失活させられる。このため、本発明のS.ポンベ変異株は、遺伝子工学的方法により、野生株等の耐酸性非性的凝集性を有さないS.ポンベを宿主とし、遺伝子工学的方法により、外来のgsf2遺伝子を組み込み、かつPvg1をコードする遺伝子を欠失する、若しくは該遺伝子にPvg1の酵素活性が低下若しくは失活する変異を導入することで製造できる。
gsf2遺伝子の発現量は、遺伝子工学的方法で外来のgsf2遺伝子を組み込むことにより、増大させられる。また、mbx2遺伝子を過剰発現させることよりgsf2遺伝子の発現量を増大させることもできる。Mbx2遺伝子(pvg4遺伝子の別名)は他の遺伝子の転写を制御する転写活性化因子と考えられ、gsf2遺伝子はこの転写活性化因子によりその発現が制御さていると考えられる。
宿主にgsf2遺伝子を新たに導入することが好ましく、導入されるgsf2遺伝子は、宿主の内在性のgsf2遺伝子と同種であってもよく、異種生物由来のgsf2遺伝子であってもよい。なお、宿主に内在するgsf2遺伝子と同一のgsf2遺伝子を遺伝子工学的方法で宿主に組み込む場合、組み込む当該gsf2遺伝子も本発明においては外来のgsf2遺伝子という。
遺伝子工学的方法で宿主にgsf2遺伝子を導入する方法としては公知の方法を使用できる。S.ポンベを宿主としてこれに外来の構造遺伝子を導入する方法としては、たとえば、特開平5−15380号公報、国際公開第95/09914号、特開平10−234375号公報、特開2000−262284号公報、特開2005−198612号公報、国際公開第2010/087344号等に記載の方法を使用できる。
gsf2遺伝子はS.ポンベの染色体に導入することが好ましい。染色体にgsf2遺伝子を導入することにより継代の維持安定性に優れた形質転換体が得られる。また、gsf2遺伝子は染色体に複数導入することもできる。gsf2遺伝子を複数導入することにより、gsf2遺伝子の発現効率を高めることができる。本発明のS.ポンベ変異体において、染色体に組み込まれたgsf2遺伝子の数は1〜20が好ましく、特に1〜8が好ましい。
染色体にgsf2遺伝子を導入する方法としては公知の方法を使用できる。たとえば、前記特開2000−262284号公報に記載の方法で染色体にgsf2遺伝子を複数導入できる。また、この方法で染色体にgsf2遺伝子を1個導入することもできる。また、後述のように、染色体の複数の箇所に1個または複数のgsf2遺伝子を導入することもできる。
gsf2遺伝子をS.ポンベの染色体に導入する方法としては、gsf2遺伝子を有する発現カセットと組換え部位とを有するベクターを用い、相同組換え法により導入する方法が好ましい。
ベクターは、gsf2遺伝子を有する発現カセットと組換え部位を有する。
発現カセットとは、Gsf2を発現するために必要なDNAの組み合わせであり、gsf2遺伝子とS.ポンベ内で機能するプロモーターとS.ポンベ内で機能するターミネーターを含む。さらに、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域のいずれか1つ以上が含まれていてもよい。さらに、前記栄養要求性相補マーカーが含まれていてもよい。好ましい発現カセットは、gsf2遺伝子、プロモーター、ターミネーター、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域、栄養要求性相補マーカーを含む発現カセットである。発現カセットには複数のgsf2遺伝子が存在していてもよい。発現カセット中のgsf2遺伝子の数は1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。
S.ポンベ内で機能するプロモーターとターミネーターは、pH2〜4の酸性条件下においても形質転換により得られる変異体内で機能してGsf2の発現を維持できるものであればよい。S.ポンベ内で機能するプロモーターとしては、S.ポンベが本来有するプロモーター(転写開始活性が高いものが好ましい)またはS.ポンベが本来有しないプロモーター(ウイルス由来のプロモーター等)を使用できる。プロモーターはベクター内に2種以上存在していてもよい。
S.ポンベが本来有するプロモーターとしては、たとえば、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、チアミンの代謝に関与するnmt1遺伝子プロモーター、グルコースの代謝に関与するフルクトース−1、6−ビスホスファターゼ遺伝子プロモーター、カタボライト抑制に関与するインベルターゼ遺伝子のプロモーター(国際公開第99/23223号参照)、熱ショック蛋白質遺伝子プロモーター(国際公開第2007/26617号参照)等が挙げられる。S.ポンベが本来有しないプロモーターとしては、たとえば、特開平5−15380号公報、特開平7−163373号公報、特開平10−234375号公報に記載されている動物細胞ウイルス由来のプロモーター等が挙げられる。該プロモーターのうち、発現効率が良好なnmt1遺伝子プロモーターおよびその改変プロモーター(たとえば、nmt1、nmt41)、hCMVプロモーター、SV40プロモーターが好ましい。
S.ポンベ内で機能するターミネーターとしては、S.ポンベが本来有するターミネーターまたはS.ポンベが本来有しないターミネーターを使用できる。ターミネーターはベクター内に2種以上存在していてもよい。
ターミネーターとしては、たとえば、特開平5−15380号公報、特開平7−163373号公報、特開平10−234375号公報に記載されているヒト由来のターミネーターが挙げられ、ヒトリポコルチンIのターミネーターが好ましい。
ベクターの組換え部位は、S.ポンベの染色体における相同組換えの標的部位に対して相同組換えを行わせることのできる塩基配列を有する部位である。また、標的部位は、S.ポンベの染色体内で発現カセットを組み込む標的となる部位である。標的部位は、ベクターの組換え部位を該標的部位に対して相同組換えを行わせる塩基配列とすることにより自由に設定できる。
前記組換え部位の塩基配列と標的部位の塩基配列との相同性は70%以上とすることが必要である。また、組換え部位の塩基配列と標的部位の塩基配列との相同性は、相同組換えが起きやすくなる点から、90%以上とすることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。このような組換え部位を有するベクターを用いることにより、発現カセットが相同組換えにより標的部位に組み込まれる。
組換え部位の長さ(塩基数)は、20〜2000bpであることが好ましい。組換え部位の長さが20bp以上であれば、相同組換えが起きやすくなる。また、組換え部位の長さが2000bp以下であれば、ベクターが長くなりすぎて相同組換えが起き難くなることを防ぎやすい。組換え部位の長さは100bp以上であることがより好ましく、200bp以上であることがさらに好ましい。また、組換え部位の長さは800bp以下であることがより好ましく、400bp以下であることがさらに好ましい。
ベクターは、前記発現カセットと組換え部位以外に他のDNA領域を有していてもよい。たとえば、大腸菌内での複製のために必要な「ori」と呼ばれる複製開始領域、抗生物質耐性遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子等)等が挙げられる。これらは大腸菌を使用してベクターを構築する場合に通常必要とされる遺伝子である。ただし、上記複製開始領域は後述のようにベクターを宿主の染色体に組み込む際には除去されることが好ましい。
ベクターは、環状DNA構造または線状DNA構造を有するベクターであり、S.ポンベの細胞に導入する際には線状DNA構造で導入することが好ましい。すなわち、通常用いられるプラスミドDNA等の環状DNA構造を有するベクターである場合には、制限酵素でベクターを線状に切り開いた後にS.ポンベの細胞に導入することが好ましい。
この場合、環状DNA構造を有するベクターを切り開く位置は、組換え部位内とする。これにより、切り開かれたベクターの両端にそれぞれ組換え部位が部分的に存在することとなり、相同組換えによりベクター全体が染色体の標的部位に組み込まれる。
ベクターは、両端それぞれに組換え部位の一部が存在するような線状DNA構造とすることができれば、環状DNA構造を有するベクターを切り開く方法以外の方法で構築してもよい。
ベクターとしては、たとえば、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等の大腸菌由来のプラスミドを好適に用いることができる。
この場合、相同組換えに用いる際のプラスミドベクターは、大腸菌内での複製のために必要な「ori」と呼ばれる複製開始領域が除去されていることが好ましい。これにより、上述したベクターを染色体に組み込む際に、その組み込み効率を向上させることができる。
複製開始領域が除去されたベクターの構築方法は特に限定されないが、特開2000−262284号公報に記載されている方法を用いることが好ましい。すなわち、組換え部位内の切断箇所に複製開始領域が挿入された前駆体ベクターを構築しておき、前述のように線状DNA構造とすると同時に複製開始領域が切り出されるようにする方法が好ましい。これにより、簡便に複製開始領域が除去されたベクターを得ることができる。
また、特開平5−15380号公報、特開平7−163373号公報、国際公開第96/23890号、特開平10−234375号公報等に記載された発現ベクターおよびその構築方法を適用して、発現カセットおよび組換え部位を有する前駆体ベクターを構築し、さらに通常の遺伝子工学的手法で該前駆体ベクターから複製開始領域を除去して相同組換えに用いるベクターを得る方法であってもよい。
ベクターを組み込む標的部位は、S.ポンベの染色体中の1箇所のみに存在していてもよく、2箇所以上に存在していてもよい。標的部位が2箇所以上存在している場合、S.ポンベの染色体に組み込まれるベクターを2箇所以上にできる。また、発現かセット中のgsf2遺伝子を複数とした場合には、標的部位の1箇所に複数のgsf2遺伝子を組み込むことができる。さらに、2種以上の標的部位に、それぞれの標的部位に対応する組換え部位を有する2種以上のベクターを用いて、発現カセットを組み込むこともできる。該方法で、S.ポンベの染色体に複数のgsf2遺伝子を組み込むことができ、これにより乳酸脱水素酵素の発現量を増大させ、乳酸の生産性を向上させることができる。
1箇所の標的部位に発現カセットを組み込む場合、たとえば特開2000−262284号公報に記載の方法記載の標的部位を使用できる。異なる組込み部位を有する2種以上のベクターを用いて、異なる標的部位にそれぞれベクターを組み込むことができる。しかし、染色体の2箇所以上にベクターを組み込む場合、この方法は煩雑である。
染色体中に複数箇所存在する互いに実質的に同一の塩基配列部分を標的部位として、この複数箇所の標的部位にそれぞれベクターを組み込むことができれば、1種類のベクターを使用して染色体の2箇所以上にベクターを組み込むことができる。互いに実質的に同一の塩基配列とは、塩基配列の相同性が90%以上であることを意味する。標的部位同士の相同性は95%以上であることが好ましい。また、互いに実質的に同一である塩基配列の長さは、前記ベクターの組換え部位を包含する長さであり、1000bp以上であることが好ましい。1箇所の標的部位に複数のgsf2遺伝子が組み込まれている場合に比較して、gsf2遺伝子の組み込み数が同一であっても、複数存在する標的部位にgsf2遺伝子が分散して組み込まれている場合には、形質転換体が増殖する際にgsf2遺伝子が染色体から1度に脱落することが少なくなり、形質転換体の継代における維持安定性が向上する。
染色体中に複数箇所存在する標的部位としては、トランスポゾン遺伝子Tf2が好ましい。Tf2は、S.ポンベの3本(一倍体)の染色体それぞれに合計13箇所存在するトランスポゾン遺伝子であり、長さ(塩基数)は約4900bpであり、それらの遺伝子間における塩基配列相同性は99.7%であることが知られている(下記文献参照)。
Nathan J. Bowen et al, “Retrotransposons and Their Recognition of pol II Promoters: A Comprehensive Survey of the Transposable Elements From the Complete Genome Sequence of Schizosaccharomyces pombe”, Genome Res. 2003 13: 1984-1997
染色体に13箇所存在するTf2の1箇所のみにベクターを組み込むことができる。この場合、2個以上のgsf2遺伝子を有するベクターを組み込むことにより、2個以上のgsf2遺伝子を有する形質転換体を得ることができる。また、Tf2の2箇所以上にベクターを組み込むことにより、2個以上のgsf2遺伝子を有する形質転換体を得ることができる。この場合、2個以上のgsf2遺伝子を有するベクターを組み込むことにより、さらに多くのgsf2遺伝子を有する形質転換体を得ることができる。Tf2の13箇所すべてにベクターが組み込まれると、形質転換体の生存や増殖に対する負荷が大きくなりすぎるおそれがある。13箇所のTf2の8箇所以下にベクターが組み込まれることが好ましく、5箇所以下にベクターが組み込まれることがより好ましい。
遺伝子工学的方法により本発明のS.ポンベ変異株を製造する場合に宿主として使用するS.ポンベには、形質転換体を選択するためのマーカーを有するものを用いることが好ましい。たとえば、ある遺伝子が欠落していることにより特定の栄養成分が生育に必須である宿主を使用することが好ましい。ベクターにこの欠落している遺伝子(栄養要求性相補マーカー)を組み込んでおくことにより、形質転換体は宿主の栄養要求性が消失する。この宿主と形質転換体の栄養要求性の相違により、両者を区別して形質転換体を得ることができる。
たとえば、オロチジンリン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(ura4遺伝子)が欠失または失活してウラシル要求性となっているS.ポンベを宿主とし、ura4遺伝子(栄養要求性相補マーカー)を有するベクターにより形質転換した後、ウラシル要求性が消失したものを選択することにより、ベクターが組み込まれた形質転換体を得ることができる。宿主において欠落により栄養要求性となる遺伝子は、形質転換体の選択に用いられるものであればura4遺伝子には限定されず、イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(leu1遺伝子)等であってもよい。
通常、相同組換えを行った後、得られた形質転換体を選択する。選択する方法としては、たとえば、以下に示す方法が挙げられる。前記栄養要求性マーカーにより形質転換体を選択できる培地によりスクリーニングし、得られたコロニーから複数を選択する。次に、それらを別々に液体培養した後、それぞれの菌体当たりのgsf2遺伝子の発現量を調べ、該発現量がより多い変異体を選択する。また、それら選択した変異体に対してパルスフィールドゲル電気泳動法によるゲノム解析を行うことにより、染色体に組み込まれたベクターの数および発現カセットの数を調べることができる。
染色体に組み込まれるベクターの数は組み込み条件等を調整することによりある程度は調整できるが、ベクターの大きさ(塩基数)および構造により、組み込み効率および組み込み数も変化すると考えられる。
遺伝子工学的方法でpvg1遺伝子を欠損させる、またはpvg1遺伝子にPvg1の酵素活性が低下または失活する変異を導入することにより、宿主であるS.ポンベのPvg1の酵素活性を低下または失活できる。確実にPvg1の酵素活性を失活できるため、pvg1遺伝子自身を染色体から欠損させることが好ましい。
pvg1遺伝子の欠失または失活は、公知の方法で行うことができる。たとえば、Latour法(Nucreic Acids Res誌、2006年、34巻、e11頁、国際公開第2007/063919号等に記載)を用いることによりpvg1遺伝子を欠失させることができる。
また、pvg1遺伝子の塩基配列の一部に欠失、挿入、置換、付加を起こすことにより、該pvg1遺伝子を失活させることもできる。該遺伝子の欠失、挿入、置換、付加による変異は、それらのいずれか1つのみを起こしてもよく、2つ以上を起こしてもよい。
pvg1遺伝子の一部に前記変異を導入する方法は、公知の方法を用いることができる。たとえば、変異剤を用いた突然変異分離法(酵母分子遺伝学実験法、1996年、学会出版センター)、PCRを利用したランダム変異法(ピーシーアール・メソッズ・アプリケーション(PCR Methods Appl.)、1992年、第2巻、p.28−33.)等が挙げられる。
本発明のS.ポンベ変異株は、たとえば非性的凝集性を有しない通常のS.ポンベから人工的突然変異手段によっても取得できる。すなわち、非性的凝集性を有しないS.ポンベを突然変異処理し、処理されたS.ポンベから、野生株よりもGsf活性が増大しており、かつPvg1の酵素活性が低下または失活している菌を選択し、さらに選択された菌からGsf活性増大やPvg1の酵素活性の低下等が優性変異であるものを選択することにより作製できる。
S.ポンベに対する突然変異処理は、EMS(メタンスルホン酸エチル)等の突然変異誘発物質を用いてもよく、紫外線等の短波長の光を照射してもよい。また、突然変異処理後のS.ポンベからの耐酸性非性的凝集性を有する菌の選抜は、カルシウムイオン等の陽イオンの存在下で行ってもよい。
S.ポンベのGsf活性は、沈降速度を指標として評価することができる。このため、突然変異処理されたS.ポンベを固体培地上で培養し、形成されたコロニーを適当な溶媒中に投入した場合に、野生株のコロニーよりも有意に早く沈降した(沈降速度が速い)場合には、該コロニーを形成する菌は、野生株よりもGsf活性が増大していると評価できる。野生株のコロニーと突然変異処理された菌のコロニーをほぼ同時に溶媒へ投入し、沈降の速さを比較してもよく、特定の条件における野生株の沈降速度を予め測定し、得られた結果から決定された閾値と、突然変異処理された菌のコロニーの沈降速度とを比較してもよい。コロニーの沈降試験に用いる溶媒は、酵母が生存可能な溶液であれば特に限定されるものではないが、カルシウムイオン、リチウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、および亜鉛イオンからなる群より選択される1種以上の陽イオンを含むバッファーであることが好ましい。例えば、乾燥菌体の濃度が3.6g/Lの場合に、カルシウムイオン含有乳酸緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム、pH6.0)中における沈降速度が1.0m/h以上である菌を、Gsf活性が増大した変異株として選抜できる。
たとえば、以下の操作により耐酸性非性的凝集株を得る事が出来る。まず、S.ポンベに対してEMSを用いて突然変異を誘発した後、それらを単離し培養する。その後、上清を除去して回収された菌体を、乳酸−水酸化ナトリウム緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム、pH2.0)に乾燥菌体の濃度が3.6g/Lとなるよう懸濁させ、沈降速度を測り、沈降速度が2.0m/hを超える菌株を、耐酸性非性的凝集株として選択する。
Gsf活性が増大した変異体は、gsf2遺伝子の発現量を指標として選抜することもできる。gsf2遺伝子の発現量は、S.ポンベのgsf2遺伝子の発現量は、RT−PCR、標識済みプローブを用いたノザンブロッティング等の遺伝子発現解析に通常用いられる測定方法により測定できる。
Pvg1の酵素活性が低下または失活すると、細胞表層のピルビン酸の存在量が有意に低下する傾向がある。このため、S.ポンベのPvg1の酵素活性は、細胞表層ピルビン酸の存在量を指標として評価できる。すなわち、突然変異処理されたS.ポンベから、細胞表層ピルビン酸が欠失している菌を、Pvg1の酵素活性が低下または失活している変異体として選抜できる。
細胞表層ピルビン酸の欠失変異体は、Andreishchevaらの方法(The Journal of biological chemistry 2004 Aug 20;279(34):35644-55)を参考にして作製できる。まず、ポンベに対してEMSを用いて突然変異を誘発した後、それらを適切な液体培地で48時間培養する。その後、培養物から陽電荷を帯びたQ−セファロースを用いて吸着する菌体を取り除き、上清に残った菌体を回収する。該Q−セファロースによる選別を何度か繰返した後、得られた培養液上清をプレートに塗布し、単離培養する事で、細胞表層ピルビン酸の欠失変異体が得られる。
Pvg1の酵素活性が低下または失活している変異体は、突然変異処理された各菌のPvg1の酵素活性を測定することによっても選抜できる。S.ポンベのPvg1の酵素活性は、標識した基質を用いた測定方法等、他の転移酵素の酵素活性の測定に通常用いられる測定方法により測定できる。
本発明のS.ポンベ変異株は、遺伝子工学的方法と突然変異処理とを組み合わせて製造してもよい。例えば、突然変異処理によりgsf2遺伝子の発現量が増大した変異株に対して、遺伝子工学的方法によりPvg1の酵素活性を低下または失活させてもよく、突然変異処理によりPvg1の酵素活性が低下または失活した変異株に対して、遺伝子工学的方法によりgsf2遺伝子の発現量を増大させてもよい。遺伝子工学的方法によりPvg1の酵素活性を低下または失活させた変異体に対して突然変異処理を行い、gsf2遺伝子の発現量が増大した変異株を選抜してもよい。
本発明のS.ポンベ変異株は、耐酸性非性的凝集性を維持し得る限り、その他の遺伝子に変異を有していてもよく、さらに、染色体中または染色体外に外来の構造遺伝子が導入されていてもよい。
本発明のS.ポンベ変異株が備える耐酸性非性的凝集性は、培養液中の酸の種類には影響されない。すなわち、培養液のpHを2〜4にたらしめている酸が乳酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸であろうと、塩酸および硫酸等の鉱酸であろうと、本発明のS.ポンベ変異株は非性的に凝集する。
本発明のS.ポンベ変異株が備える非性的凝集性の強さは、たとえば、沈降速度を指標にできる。酵母の沈降速度は、たとえば、試験管等の透明な容器に分注した酵母菌体を懸濁処理後に静置して沈降を開始させた後、液表面から固液界面(沈降した酵母菌体と上清との界面)までの距離を沈降開始からの経過時間で除することにより、求められる。本明細書における沈降速度の単位m/hは、1時間あたりのメートルで表わした距離をいう。
本発明のS.ポンベ変異株は、カルシウムイオン含有乳酸緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム、pH2.0)中で非性的に凝集する性質を有する。本発明のS.ポンベ変異株の該カルシウムイオン含有乳酸緩衝液中における沈降速度は、乾燥菌体の濃度が3.6g/Lの場合に、2.0m/h以上であることが好ましく、4.0m/h以上であることがより好ましく、6.0m/h以上であることがさらに好ましい。
また、本発明のS.ポンベ変異株は、カルシウムイオン含有乳酸緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム、pH4.0)中で非性的に凝集する性質を有する。本発明のS.ポンベ変異株の該カルシウムイオン含有乳酸緩衝液中における沈降速度は、乾燥菌体の濃度が3.6g/Lの場合に、2.0m/h以上であることが好ましく、4.0m/h以上であることがより好ましく、8.0m/h以上であることがさらに好ましい。pH4.0における沈降速度が8.0m/h以上であることにより、pH4よりもさらに低いpHにおいても、充分な凝集性が示される。
本発明のS.ポンベ変異株が備える耐酸性非性的凝集性は、カルシウムイオン、リチウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、および亜鉛イオンからなる群より選択される1種以上の陽イオンに依存していてもよい。耐酸性非性的凝集性がカルシウムイオン等に依存する場合には、EDTA等のキレート剤を培養液に添加することにより、本発明のS.ポンベ変異株の凝集を阻害できる。
本発明のS.ポンベ変異株が備える耐酸性非性的凝集性は、ガラクトースにより阻害される性質であってもよい。耐酸性非性的凝集性がガラクトースにより阻害される場合には、培養液中に最終濃度が5mM以上となるようにガラクトースを添加することにより、本発明のS.ポンベ変異株の凝集を阻害できる。
本発明のS.ポンベ変異株は、酸性(たとえば、pH2〜4)条件下で強力な非性的凝集性を示す。このため、本発明のS.ポンベ変異株は、特に、酸性蛋白質および有機酸等を合成するための発現系の宿主として好適である。本発明のS.ポンベ変異株への外来の構造遺伝子の導入は、gsf2遺伝子の導入と同様にして行える。
本発明のS.ポンベ変異株を宿主として酸性蛋白質および有機酸等を大量製造するための形質転換体を作製し、該形質転換体をタンク培養等で培養した場合に、培養終了時に培養液のpHが2〜4となった場合でも、遠心分離、濾過等の固液分離処理や中和反応等を行うことなく、菌体を凝集させることができ、それにより菌体と培養液を容易に分離できる。なお、本発明のS.ポンベ変異株は、酸性条件下のみならず、弱酸性〜アルカリ性(たとえば、pH5〜10)条件下でも非性的に凝集可能であってもよい。
本発明のS.ポンベ変異株およびその形質転換体は、公知の酵母培養方法によって培養でき、たとえば振とう培養、攪拌培養等により行うことができる。また、培養は、回分培養であってもよく、連続培養であってもよい。培養温度は、23〜37℃であることが好ましい。培養時間は適宜決定できる。培養培地は、MA培地、EMM培地、MM培地、YES培地、YPD培地、SD培地等の酵母の培養に通常用いられる培地またはそれらの改変培地を使用できる。
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[例1]
<gsf2株(gsf2遺伝子発現増大株)の作製>
Bahlerらの方法(Yeast誌、1998年、14巻、943−951頁)に従い、S.ポンベのウラシル要求性株(ARC010、遺伝子型:h leu1−32 ura4−D18、東京大学大学院理学系研究科附属遺伝子実験施設・飯野雄一教授より供与)にnmt41プロモーターを含む遺伝子断片を導入し、形質転換した。形質転換後に得られた変異体を培養し、パルスフィールドゲル電気泳動法によるゲノム解析を行い、gsf2遺伝子が組み込まれたことを確認した。nmt41プロモーターの情報はナショナルバイオリソースプロジェクトのホームページ(アドレス:http://yeast.lab.nig.ac. jp/nig/index.html)より入手できる。
nmt41プロモーターを含む遺伝子断片は、以下の様に作製した。まず、nmt41プロモーターの5’−末端側にgsf2プロモーター配列とUra4配列とを含み、3’−末端側にgsf2−ORFを含む配列を鋳型とし、上記遺伝子断片をPCRによって増幅した。
<Δpvg1gsf2株(pvg1遺伝子欠損+gsf2遺伝子発現増大株)の作製>
gsf2株をLatour法(Nucleic Acids Res.誌、2006年、34巻、e11頁、国際公開第2007/063919号に記載)に従って形質転換し、pvg1遺伝子を削除したΔpvg1gsf2株を作製した。得られた変異体を培養し、パルスフィールドゲル電気泳動法によるゲノム解析を行い、pvg1遺伝子が欠損したことを確認した。
削除断片の作製には、S.ポンベの野生株であるARC032株(遺伝子型:h、東京大学大学院理学系研究科附属遺伝子実験施設・飯野雄一教授より供与)よりDNeasy(キアゲン社製)によって調製した全ゲノムDNAを鋳型とし、PCR法により行った。より具体的には、削除断片をUP領域、OL領域、およびDN領域に分け、各領域のDNA断片をそれぞれKOD−Dash(東洋紡社製)を用いたPCR法によって作製したのち、さらにそれらを鋳型として、同様のPCR法によって全長の削除断片を作製した。
<培養試験>
得られた各変異体をロイシン含有MA液体培地に植菌して、温度30℃、振盪速度100rpmの条件下で20時間培養した。培養後の菌体をEDTA(10mM)で洗浄した後、滅菌水でさらに洗浄した。洗浄後の菌体を96ウェルプレートの20ウェルに等量ずつ分注した。各ウェルに、pH2.0〜6.0のクエン酸バッファー(100mM)、pH6.5〜8.0のMOPSバッファー(100mM)、pH5.0または6.0のEDTA含有クエン酸バッファー(100mM クエン酸、100mM EDTA)、pH8.5〜12.5のグリシンバッファー(100mM)のいずれかを分注した。その後、全てのウェルに、最終濃度が100mMとなるように塩化カルシウムを添加し、菌体の凝集の有無を観察した。
図1に、各ウェルの写真を示す。この結果、pH2.0〜5.0では、Δpvg1gsf2株は酵母の凝集塊がウェルの底に沈殿しているのが観察されたのに対して、gsf2株はほとんど凝集が観察されなかった。pH5.5〜12.5では、両株とも凝集が観察されたが、Δpvg1gsf2株のほうがgsf2株よりもより凝集性が強かった。また、EDTA(100mM)を含有させたバッファーでは、両株とも凝集は観察されず、両株の非性的凝集性がカルシウムイオン依存性であることが確認された。
[例2]
<沈降速度の測定>
例1で得られたgsf2株およびΔpvg1gsf2株、S.ポンベARC032株(野生株)、並びに特許文献1に記載のS.ポンベARC028株(非性的凝集性を有する変異株)について、pH2.0、4.0、6.0、および9.5の緩衝液、水、ガラクトース溶液、酢酸溶液、並びにL−乳酸溶液中における沈降速度をそれぞれ測定した。測定用溶液としては、pH2.0の乳酸−水酸化ナトリウム緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム)、pH4.0の乳酸−水酸化ナトリウム緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム)、pH6.0のクエン酸−水酸化ナトリウム緩衝液(80mM クエン酸、100mM 塩化カルシウム)、pH9.5のグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(80mM グリシン、100mM 塩化カルシウム)、塩化カルシウム水溶液(100mM 塩化カルシウム)、ガラクトース溶液(100mM ガラクトース、100mM 塩化カルシウム)、酢酸溶液(800mM 酢酸、100mM 塩化カルシウム)およびL−乳酸溶液(1M L−乳酸、100mM 塩化カルシウム)を用いた。
ARC032株およびARC028株は、YES固体培地で72時間培養後、コロニーを5mLのYES液体培地に植菌して24時間前培養した後、得られた前培養液を100mLのYES液体培地に植菌して24時間培養したものを、沈降速度の測定に用いた。
gsf2株およびΔpvg1gsf2株は、ロイシン含有MA固体培地で72時間培養後、コロニーを5mLのEMM液体培地に植菌して24時間前培養した後、得られた前培養液を100mLのEMM液体培地に植菌して24時間培養したものを、沈降速度の測定に用いた。
各株の培養物をEDTA溶液(100mM)で洗浄した後、乾燥菌体重量を測定した。菌体を水で洗浄した後、2倍希釈したときに乾燥菌体の濃度が3.6g/Lとなるように、透明な試験管に高さ25mmまで分注した。その後、沈降速度の測定用溶液の2倍濃縮液をそれぞれ添加した。各試験管を充分に懸濁させた後静置して沈降を開始させた後、液表面から固液界面(沈降した酵母菌体と上清との界面)までの領域を95%沈降済み領域とし、液表面から固液界面までの距離を沈降開始からの経過時間で除することにより沈降速度(m/h)を算出した。
沈降速度の測定結果を表1に示す。また、表2に、pH6.0の時の沈降速度に対する、pH2.0、4.0、9.5における沈降速度の相対値を示す。この結果、ARC028株は、pH9.5および6.0では沈降速度が8m/h以上であり、非常に強い凝集性を示したが、pH2.0では1m/h程度であり、凝集性が小さく、乳酸溶液では0.07m/hしかなく、ほとんど凝集しなかった。一方でgsf2株は、pH4.0〜9.5ではいずれも2.5m/h程度であり、弱い凝集性を示した。また、pH6.0の沈降速度に対する相対沈降速度はpH2〜9.5においていずれも70%以上であり、pHによる影響はあまり観察されなかった。しかし、pH2.0および酢酸バッファー中では、0.5未満でしかなく、ほとんど凝集しなかった。これに対してΔpvg1gsf2株では、pH2.0〜9.5ではいずれも6.0m/h以上であり、酸性条件下で充分な凝集性を示した。また、酢酸溶液およびL−乳酸溶液中でも4.5m/h以上であり、充分な凝集性を有していた。但し、ガラクトース溶液中では、gsf2株およびΔpvg1gsf2株はいずれも凝集が阻害されており、両株の非性的凝集性はガラクトースにより阻害されることが確認された。
Figure 0005954315
Figure 0005954315
本発明のS.ポンベ変異体および該S.ポンベ変異体の培養方法は、酸性条件下でも強い凝集性を有するため、特に、酵母を利用した発現系の宿主として好適に用いることができる。
なお、2011年2月21日に出願された日本特許出願2011−034964号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (8)

  1. シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)を宿主とし、遺伝子工学的方法により、外来のgsf2遺伝子を組み込み、かつピルビン酸転移酵素Pvg1をコードする遺伝子を欠失する、若しくは該遺伝子にPvg1の酵素活性が低下若しくは失活する変異を導入することを特徴とする非性的に凝集する性質を有する変異体の製造方法。
  2. 外来のgsf2遺伝子が組み込まれており、かつピルビン酸転移酵素Pvg1をコードする遺伝子が欠損している、若しくはピルビン酸転移酵素Pvg1にPvg1の酵素活性が低下若しくは失活する変異が導入されていることを特徴とするシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)変異体
  3. 前記外来のgsf2遺伝子が、シゾサッカロミセス・ポンベが本来有するgsf2遺伝子である、請求項に記載のシゾサッカロミセス・ポンベ変異体。
  4. 前記外来のgsf2遺伝子が、遺伝子工学的方法により宿主の染色体に組み込まれている、請求項またはに記載のシゾサッカロミセス・ポンベ変異体。
  5. pH2.0〜4.0において、カルシウムイオン、リチウムイオン、マンガンイオン、銅イオン、および亜鉛イオンからなる群より選択される1種以上の陽イオンに依存して非性的に凝集する性質を有する、請求項2〜4のいずれか一項に記載のシゾサッカロミセス・ポンベ変異体。
  6. カルシウムイオン含有乳酸緩衝液(80mM 乳酸、100mM 塩化カルシウム、pH2.0)中で非性的に凝集する性質を有し、乾燥菌体の濃度が3.6g/Lの場合に、該カルシウムイオン含有乳酸緩衝液中における沈降速度が2.0m/h以上である、請求項2〜5のいずれか一項に記載のシゾサッカロミセス・ポンベ変異体。
  7. 乾燥菌体の濃度が3.6g/Lの場合に、前記カルシウムイオン含有乳酸緩衝液における沈降速度が6.0m/h以上である、請求項に記載のシゾサッカロミセス・ポンベ変異体。
  8. 請求項2〜7のいずれか一項に記載のシゾサッカロミセス・ポンベ変異体を、pH5以下で培養することを特徴とするシゾサッカロミセス・ポンベ変異体の培養方法。
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