以下、この出願の発明の複数の実施の形態に係る回転加熱型調理器の構成および作用について、詳細に説明する。
<この出願の発明の複数の実施の形態に共通な回転加熱型調理器本体部分の構成及び基本的な制御システム>
まず図1〜図12は、この出願の発明の後述する複数の実施の形態に共通な回転加熱型調理器本体部分の全体及び要部の構成を、また図13は、同回転加熱型調理器本体部分における制御システムの構成を、さらに図14は、同図13の制御システムを利用した、パンこね作業、パン焼き上げ調理およびパン回転加熱調理の内容を示している。
この実施の形態では、すでに述べた、調理容器、調理容器内の調理物を回転させる調理物回転手段、調理容器を加熱する加熱手段等を備えた、たとえばホームベーカリー、フードプロセッサーなどの回転加熱型調理器の中から、一例として、家庭用のパン焼き器であるホームベーカリーを採用して、本願発明を実施しようとしている。
<ホームベーカリーの基本的な構成>
まず、この実施の形態のホームベーカリーでは、たとえば図1〜図4に示されるように、その基本的な構成部分として、ベーカリー本体の外壁部および筐体部を構成する有底筒状の外ケース1と、該外ケース1内にあって該外ケース1との間に所定の空間を保って支持固定され、ベーカリー本体の内壁部および焼成室を構成する有底筒状の保護枠(内ケース)2とからなるベーカリー本体Aと、該ベーカリー本体Aの上端側開口部後端側にヒンジ機構16を介して後端側を回動可能に枢着され、水平な閉状態においては当該ベーカリー本体Aの上端側開口部を覆う一方、ほぼ垂直な開状態においては当該ベーカリー本体Aの開口部を上方側に開放する上下方向に開閉可能な蓋体Bとの2つの部分から構成されている。
<外ケース部分の構成>
そして、外ケース1は、例えば上下方向に延びる断面略方形の筒状の側壁部1aと、該側壁部1aの平面略方形の底部開口面にあって外ケース1の底面部を構成する平面略方形の底壁部1bと、上記側壁部1aの上端側開口縁部内側にあって、同開口縁部と上記保護枠2の上端側開口縁部とを連結一体化し、上記ベーカリー本体Aの上端側開口部(開口縁部)を形成する肩部材1cとから構成されている。この実施形態の場合、これら側壁部1a、底壁部1b、肩部材1cは、それぞれ一例として合成樹脂材により成型して構成されている。
この実施の形態の場合、例えば側壁部1aおよび底壁部1bは一体成型により形成されている。また、外ケース1a中央部上端の左右両側には、携帯用の取っ手13の左右一対の基端部が枢着されている。
<保護枠部分の構成>
一方、上記ベーカリー本体Aの内壁部および焼成室を形成する保護枠(内ケース)2は、合成樹脂材により成型された有底筒状の第1の保護枠(下部部材)21と、該第1の保護枠21の上端側開口部21cの水平方向への拡大縁部21d上に同軸状態で連結一体化された金属製の発熱板220を有する同じく筒状の第2の保護枠(上部部材)22とからなり、それぞれその断面形状は共に略方形を成し、上記前後方向に少し長い外ケース1の側壁部1a内にあって、その中心部より所定寸法後方側に偏倚して設けられており、前方側外ケース1の側壁部1aとの間に所定のスペースの空間部を形成する状態で、上記外ケース1の底壁部1b上に後述する回転駆動機構10を介して水平に支持固定されている。
回転駆動機構10は、所定の筐体Z内に確実に固定して設けられており、上記第1の保護枠21は、その底部側複数本の脚部21g、21g・・を同筐体Z上部の対応する連結部に連結することにより、正確に位置決めした上で固定されている。
この第1の保護枠21と上記第2の保護枠22とを合わせた保護枠2全体の高さは、例えば図2、図3に示すように、上記外ケース1の底壁部1b上に支持固定された状態において、ほぼ上記外ケース1の側壁部1aの高さになるように形成されており、同状態において、第2の保護枠22の小径部(上部側側壁部)22aの上端と外ケース1の側壁部1aの上端との間に上述した肩部材1cが介装され、該肩部材1cを介して第2の保護枠22の小径部22a上端と外ケース1の側壁部1a上端とが周方向の全体に亘って連結一体化されて、ベーカリー本体Aの上端側開口部(開口縁部)が形成されている。
<肩部材部分の構成>
肩部材1cは、たとえば図2〜図4、図6、図7に示されるように、上記ベーカリー本体Aの開口部(開口縁部)を形成する断面逆U字状の肩枠部(本体部)51aと、後端側ヒンジブラケット部51eと、前端側操作パネル設置部51cとから構成されている。肩枠部51aの上部側は、周方向の全体に亘って所定の幅の平坦部(水平部)51bに形成されており、該平坦部51bの内周端には所定の高さ上方に突出する環状の凸部(リブ)51fが設けられている。この環状の凸部51fは、後述するように、蓋体B下面側の凸部18cと内外方向に位置をずらせて対向するようになっており、蓋体Bが閉じられた状態では、相互に内と外に近接する状態で隣接され、焼成室であるパン膨出空間Y側からの蒸気が漏れ出すのをシールするようになっている。
また、肩枠部51a後端側のヒンジブラケット部51eは、その上端部にヒンジ軸枢支部16を有する一方、下端部に上述した取っ手13の支持片を有して構成されている。さらに、肩枠部51aの前端には、たとえば図1〜図4のように組みつけられた時に、後述する操作パネル11側とベーカリー本体Aの開口部側とを仕切る仕切り壁51dが設けられている。
<操作パネルおよび操作パネル設置部の構成>
上記ベーカリー本体A前部の上記外ケース1の側壁部1a上端と上記第2の保護枠22の小径部(上部側側壁部)22a上端との間は、前後方向および上下方向に所定スペース以上広く開放されており、この開放スペース部分を利用して、例えば図1〜図4に示すように、上記肩部材1c前端側の平面視半月状の操作パネル設置部51cが介装され、同操作パネル設置部51cの上部に操作パネル11および操作基板12が上下に位置して設けられている。
操作パネル11には、図1に示すように、中央部の液晶ディスプレイ11aを囲む形で、右側にスタートスイッチ11b、取消スイッチ11c、左側にメニュー選択スイッチ11d、焼色スイッチ11e、ミックススイッチ11f、中央部側に予約スイッチ11g、タイマー設定用の時・分スイッチ11hがそれぞれ設けられている。
これら各スイッチの操作設定状態は、その下部側にある操作基板12上の図示しないマイコン制御ユニットに入力され、やがて上記スタートスイッチ11bがON操作されると、それに対応して、上記メニュー選択スイッチ11d等により選択設定された所望のメニューのパンの焼き上げ制御、所望のメニューの加熱回転調理制御が開始される。
<第1の加熱手段であるワークコイルおよびワークコイル設置部の構成>
さらに、上記保護枠2の下部側、断面略方形の第1の保護枠21の側壁部21aの外周(具体的には、上下方向略中間位置よりも若干下方の位置)には、同側壁部21aの周方向の全体に亘って延びる同じく断面略方形で上下方向に所定の幅の帯状のコイルボビン(ワークコイル券成用合成樹脂成形部材)5が設けられており、該コイルボビン5を介して上記第1の保護枠21の側壁部21aの外周に第1の加熱手段であるワークコイル6が設置されている。
このワークコイル6が券成されたコイルボビン5は、たとえば図8に示されるように、上記第1の保護枠21とは別体に構成されており、たとえばワークコイル6側の、内部にフェライトコア7を嵌装したコイル台8により、上記第1の保護枠21の側壁部21aの外周面(前後左右4つの側面の中央)に対して固定されるようになっている。
すなわち、この実施形態におけるコイル台8は、上記コイルボビン5の上下方向の幅よりも所定寸法上下に長く、かつ左右方向の幅が小さいボックス構造に形成され、その内側に上記フェライトコア7を嵌め込んで収納している一方、上記第1の保護枠21の例えば前後左右各側壁面部(平面部)の幅方向中央部に位置して設けられており、その上端側にあって外方側に向けて部分的に所定幅突出した取付部8aを上記第1の保護枠21の上端側開口部21cの水平方向外方に向けて所定幅以上に大きく拡大された平面視方形の拡大縁部21dの下面側に設けられたコイル台取付用ボス部21eの上下方向に延びる螺合溝部に下方側からネジ14、14・・介して螺合締結して固定されている。
また、コイルボビン5には、上下方向に所定の幅を有するワークコイル券成面部5aの上下両端側に位置して所定の高さコイル台8側に突出するリブ(凸部)5b、5bが設けられており、他方コイル台8内側の対向する上下両端部分には同リブ5b、5bの下方側に係合して、コイルボビン5を係止する係合部(凸部)8b、8bが設けられている。したがって、コイル台8を上記第1の保護枠21の拡大縁部21d下面のコイル台取付用ボス部21eに螺合締結した時には、上記コイル台8の係合部8b、8bがコイルボビン5のリブ5b、5b部分に係合して、確実にコイルボビン5を係合固定すると共に、同係合部8b、8bの内の上部側のもの8bの下端側部分的な凸部が、さらにワークコイル6の上端部分を押えて固定するようになる。
これにより、上記コイルボビン5のワークコイル券成面部5aの上下幅一杯に均一に巻かれたワークコイル(リッツ線)6が、適正なギャップと位置関係をもって確実に第1の保護枠21の側壁部21a外周面に対して固定され、同第1の保護枠21内側のパンケース収納室(下部側焼成室)Xに収納セットされたパンケース3に対しても適正なギャップと位置関係をもって対応することになる。その結果、パンケース3全体の均一な電磁誘導加熱が可能となる。
また、同構成では、第1の保護枠21(保護枠2)の側壁部21aに対して、ワークコイル6を設置するに際して、予め、上記第1の保護枠21とは別体の構造である(第1の保護枠21に嵌装される前の)コイルボビン5にワークコイル6を巻きつけて、コイルボビン5およびワークコイル6が一体の独立したワークコイルユニットを形成しておき、組付け時に、それを上記第1の保護枠21の側壁部21aの略中間部より下方の所定の位置に下方側から嵌装し、拡大縁部21dの下面側から下方に延びる周方向に複数本配設されたリブ21f、21f・・の下端で位置決めし、その後、コイル台8により上記第1の保護枠21の側壁部21a外周面に固定するだけで、上述のように正確に位置決めした状態で固定することができる。したがって、その取り付けは極めて容易である。
また、符号9は、たとえばアルミ金属材料よりなる断面略方形の形状の帯状の磁気遮蔽板であり、上記ワークコイル6及びコイルボビン5の外周を覆うに十分な上下幅を有して断面略方形の環状帯に構成されている。そして、その前後左右各平面部の幅方向中間部の上縁部9aには、同上縁部9aの一部を内側に折り曲げることにより上記第1の保護枠21のコイル台取付用ボス部21eにコイル台8の取り付け部8aとともに重合して締結固定されるネジ穴つきの取り付け用フランジ9bを有し、コイル台8(4本)と共に第1の保護枠21の拡大縁部21dの下面部に取り付けられている。
そして、それによって、励磁状態における上記ワークコイル6からの磁束が周囲に漏れるのを防止している。
したがって、この実施の形態の場合、電磁誘導加熱手段であるワークコイル6、その磁束収束手段であるフェライトコア7(4本)、ワークコイル6からの磁気の遮蔽手段である磁気遮蔽板9等の設置が、実質的に第1の保護枠21に対するコイル台8(4本)の取り付けのみによって容易に実現できることになり、電磁誘導加熱手段部分の構成、組みつけが非常に簡単になる。
また、コイル台8そのものも、ストレートな左右一対の側壁部間の細長いフェライトコア挿入空間8c部分に上方側からストレートな角棒構造のフェライト7を挿入固定するだけで、フェライトコア7を収納一体化することができるようになるので、その本体構造が著しく小型化され、また金型代も大幅に低下する。
さらに、コイル台8の上部側係合部8bの下端側凸部でワークコイル6を押えることもできるので、ワークコイル6自体の固定状態も安定する。
また、上記の構成では、パンケース3の発熱によって一定程度の高温になる第1の保護枠21側からの熱が所定の厚さを有するコイルボビン5によって断熱され、直接ワークコイル6に伝わるのを防止できるとともに、さらにコイルボビン5と第1の保護枠21の側壁面との間に所定の隙間を形成している。したがって、同隙間により保護枠2側からの熱がコイルボビン5およびワークコイル6に直接伝わることがないだけでなく、同隙間を後述する冷却ファン20からの風が通るようになるので、よりワークコイル6の冷却性能が向上する。
このコイルボビン5と第1の保護枠21の側壁面21aとの間の隙間は、例えば第1の保護枠21の側壁部21aの上部にあって、上記水平方向に張出された拡大縁部21dの下面部から下方に延びる上記コイルボビン5の位置決め機能を有した複数本のリブ21f,21f・・の一部(4面のもの)を下方に延ばし、それらの上にコイルボビン5を嵌装することなどによって容易に実現される。
また、上記のように第1の保護枠21(保護枠2)と別体のコイルボビン5に予めワークコイル6を巻いて第1の保護枠21(保護枠2)から独立したワークコイルユニットとし、該第1の保護枠21(保護枠2)から独立したワークコイルユニットとを最終的に第1の保護枠21(保護枠2)に組み付けるようにすると、通常想定される第1の保護枠21自体に直接巻装する構成の場合に比べて、保護枠がないためにワークコイルユニットが遥かに小さなものとなる。
<第2の保護枠部分の構成>
以上のように、この回転加熱型調理器の構成では、焼成室を形成する保護枠(内ケース)2を、合成樹脂製の第1、第2の保護枠21、22を上下に組み合わせて構成されているが、第2の保護枠22は、上記第1の保護枠21の上端側拡大縁部21dの上端部側に、同第1の保護枠21と同軸の状態で略筒状に連結される形で、同じく断面略方形のステンレス等の金属板よりなる発熱板220を介して設けられている。
この第2の保護枠22は、その側壁部分が、上部側小径部22aと下部側大径部22bとの2段構造となっており、下部側大径部22bは、4隅コーナー部を含めて前部側と後部側の側壁22c、22c(図2参照)部分のみが下方に長く延び(左右の側壁部は短く形成されている)、その4隅コーナー部に形成した連結部22d、22d・・が上記下部側第1の保護枠21の拡大縁部21dの4隅コーナー部に形成した連結部21h、21h・・に連結されている一方、上部側小径部22aの上端が、上述した断面逆U字状の肩部材1cの内周壁部分(環状の凸部51fを形成した部分)の下端側に連結されている。
一方、発熱板220は、たとえば帯状の金属板の両端部を周知のハゼ加工(図示省略)により連結一体化して断面略方形の筒状に構成されていて(もちろん、可能ならハゼ加工のない筒体構造の採用が好ましい)、上記第1の保護枠21の上端側拡大縁部21dの上面と上記第2の保護枠22の小径部22aの下面との間に支持され、少なくとも上記パンケース3の上端部部分から、上記第2の保護枠22の小径部22aの下面側に至る上下幅を有し、この発熱板220の内側に位置して、上記第1の保護枠21内のパンケース収納室(下部側焼成室)X内に収納セットされた上記パンケース3の開口部3cの上方に、その高さおよび直径を含めて十分に広いパン膨出空間(上部側焼成室)Yが形成されている。
<第2の加熱手段である電気ヒーターと電気ヒーター設置部の構成>
そして、上記発熱板220の中間部より上部の外周面には、パン焼き上げ工程その他の加熱調理工程の進行に応じてパンケース3の開口部3cから上方に膨出したパンの天面部を含む上方部分等を効率よく加熱するための第2の加熱手段である電気ヒーターHが設けられている。この電気ヒーターHは、たとえば図5に示すような扁平な帯状の構造のマイカヒータが採用されており、同構造のマイカヒータよりなる電気ヒーターHを上記発熱板220の外周面上に巻き付け、その左右両端80a、80b側を連結部材81で連結することにより、所定の締め付け力を維持した状態で方形の環状に装着されるようになっている。
すなわち、同電気ヒーターHは、そのために左右両端80a、80bにかぎ状の連結片81a、81b、該連結片81a、81b同士を相互に連結するネジ部材(トラスネジ)81c、81cよりなる連結部材81を設けて構成されている。
この電気ヒーターHの連結部は、たとえば上述した発熱板220にハゼ加工部があるような場合には、同ハゼ加工部対応させて、左右両端部80a、80b相互の間の空間部分が同ハゼ加工部に位置するように設け、複数枚の板厚寸法の厚みのあるハゼ加工部の存在により、電気ヒーターHの帯状の発熱部が発熱板220に面接触できなくなることを回避するようにする。この場合、ハゼ加工部は、ベーカリー本体Aの前部側に位置させるようにし、上記電気ヒーターHの連結部も、同ベーカリー本体Aの前部側に位置させるようにする。
また、内側ヒータ線(発熱リボン)の両端側には、絶縁チューブ83、83を巻いた給電用のリード線82、82が設けられている。絶縁チューブ83、83の基端は、碍管84、84を介して、シリコン樹脂でヒータプレート面に固定されている。
そして、上記発熱板220外周面の上記電気ヒーターHの左右両端80a、80b間、より広く言うと、その内側の直接発熱するヒーター線の左右両端間に隣接する下方位置には、上述したパン膨出空間Yの温度(パン膨出空間Yの温度およびパン膨出空間Yに於けるパンの温度)を検出し、上記電気ヒーターHの発熱量(出力)を制御する、たとえばサーミスタよりなる庫内温度センサー85が設けられている。
この庫内温度センサー85が取り付けられている上記ヒーター線の左右両端間の下方位置は、上記のように発熱体であるヒーター線が無く、ヒーター線からの熱による直接の影響が少なく、しかもパンケース3の上端から膨出したパン膨出部の側方への膨らみが最も大きくて、パン表面の温度を正確に検出できる位置となっている。
このサーミスタよりなる庫内温度センサー85は、そのセンサー部をフッ素チューブで被覆して構成されており、リード線を介して検出された温度を、図13に示すワークコイル出力、ヒータ出力、モータ回転速度等制御用のマイコン制御ユニット100に入力するようになっている。そして、センサー部本体は、発熱板220上への取り付けプレートを介して取り付けられるようになっている。
この結果、以上の構成によれば、上記第1の保護枠21内のパンケース収納室X内に収納セットされたパンケース3は、上記電磁誘導加熱手段であるワークコイル6の電磁誘導加熱により、その底部および側部の全体が均一に効率良く加熱されるとともに、同パンケース3上方のパン膨出空間Yも、上記発熱板220を介して第2の加熱手段である電気ヒーターHからの放射熱が有効、かつ均一に作用し、効率よく加熱される。
したがって、パンケース3上方のパン膨出空間Y部にふっくらと膨出したパン(図4中に仮想線Pで示す)の天面部を含む外周面全体に、発熱板220を介して電気ヒータHからの放射熱が直接作用し、同放射熱により均一かつ有効に焼き上げられるようになり、効果的な焼き色をつけることができる。
しかも、以上の構成では、同発熱板220には、上記パンケース3の上方に位置して、上記パン膨出空間Yの温度、さらには上記パンケース3から上方に膨出したパン表面の温度を検出する温度検出手段である庫内温度センサー85を設けており、該庫内温度センサー85によって検出された庫内温度およびパン膨出部の温度に応じて上気第2の加熱手段である電気ヒータHの出力やワークコイル6の出力を適切に調節制御するようにしている。
このように、パンケース3の上方に位置して、パン膨出空間Yおよびパンの温度を検出する庫内温度センサー85を設けると、この庫内温度センサー85により膨出したパンの実際の表面温度をも正確に検出できるようになる。ここで検出されるパン表面の温度は、当該パン表面の加熱レベルを示すから、同庫内温度センサー85により検出された温度をパラメータとして上気第2の加熱手段である電気ヒータHの加熱出力を制御するようにすると、当該パン表面への加熱状態、焦げ色レベルを適切に調節できるようになる。
その結果、同構成によると、パン上部の焦げ過ぎや加熱不足を解消することができ、ふっくらと膨らみ、こんがりと良い焼き色が付いた美味しいパンを焼き上げることが可能となる。
しかも、この構成では、上記2の加熱手段である電気ヒーターHは、周方向の所定の位置に非発熱部である左右両端部間の連結部を有し、上記パン表面の温度検出手段である庫内温度センサー85は、同電気ヒーターHの非発熱部である左右両端側連結部の近傍に位置して設けられている。
第2の発熱手段である電気ヒーターHを、上述のような帯状の構造にして、パンケース3上方のパン膨出空間Yの外周に設置するようにした場合、その両端側を連結する連結部分では、発熱部のない非発熱部が形成される。そして、この非発熱部は、発熱部に比べて相当に温度が低くなる。
一方、温度検出手段である庫内温度センサー85は、そのリード線部分やフッ素チューブ部分の耐熱性には一定の限界があり、その耐熱基準温度は一般に発熱部の発熱温度よりも低い。
そこで、同温度検出手段ある庫内温度センサー85は、上記のように、第2の発熱手段である電気ヒーターHの非発熱部である左右両端側連結部の近傍に位置して設けるようにし、耐熱基準温度以下での安定した作動状態を確保する。
これらの結果、以上の構成では、パンケース3内はもちろん、パンケース3の上方に膨らんだパンの上部部分をも適切に加熱することができ、パン全体の均一な焼き上げに加えて、パン上部の適切な焼き色調節を可能とすることができる。
<熱反射部材部分の構成>
以上のような構成のホームベーカリーでは、すでに述べたようにパンケース3内に水、強力粉、糖、塩、油脂、卵等を入れ、さらにイースト菌を投入した後、捏ね工程、発酵工程を経て、焼きあげ工程で焼き上げられる。
したがって、加熱を伴う焼き上げ工程では、当然ながらパン生地中から一定量の蒸気が発生し、焼成室内に充満する。焼成室上方は蓋体Bによって閉じられているが、ホームベーカリーの場合、沸騰状態を維持する電気ポットなどのように、相互に対向する蓋体B下面の外周とベーカリー本体Aの上端側開口部外周との間にシール用のパッキンなどは設けられておらず、相互の間には所定の隙間が形成されている。
そのため、上記焼成室上方の蒸気は、徐々に同隙間から外方に漏れ出すが、外部に出る前に外気により冷やされて、同隙間部分や開口部内周面、蓋体Bの下面などに結露水を生じさせる問題がある。
そこで、この実施の形態では、これらの問題を解決するために、後述するように、蓋体Bを閉じた状態では、ベーカリー本体Aの内周側上端部と同ベーカリー本体Aの内周側上端部に対応する蓋体Bの下面部とを可及的に近接するものとし、パッキン等を設けなくても焼成室内の蒸気が外周側に漏出しにくくすることに加えて(この点については、後の蓋体部分の構成のところで詳しく説明する)、次に述べるように、パンケース3上方のパン膨出空間Yを加熱する上記電気ヒーターHからの放射熱を上記のような結露発生部に効果的に作用させるようにし、可及的に結露発生部の温度を上げることにより、蓋体Bおよびベーカリー本体A対向部の構造を複雑にすることなく、結露水の発生を防止するようにしている。
すなわち、この実施の形態における上記第2の保護枠22部分には、すでに述べたように、その大径部22bの内周側に位置してパン膨出空間Yを加熱する発熱板220が設けられており、その外周面側の極めて加熱効率の高いマイカヒータよりなる電気ヒータHは、まず同発熱板220を加熱し、同発熱板220を介してパン膨出空間Yの全体を可能な限り均一に加熱するようになっている(図4参照)。
したがって、電気ヒータHをはじめ、発熱板220は、パン膨出空間Y方向だけでなく、その背面側にも熱を放射することになる。この放射熱は、本来的に無駄な熱損失であり、可能な限り、これを有効に活用することが望まれる。
そこで、この実施の形態では、たとえば図4に示すように、まず上記電気ヒーターHの左右および後部の背面側外周に金属製の熱反射板よりなる第1の熱反射部材221、221、221さらに第2の保護枠大径部22bの左右および後部の背面側外周の外ケース1の側壁部1a内周面部分に熱反射シールよりなる第2の熱反射部材222の複数の熱反射部材が設けられている。
第1の熱反射部材221、221、221は、たとえば上記第2の保護枠22の上記大径部22b部分の、左右および後部3面部分に各々1枚ごとに分割した平板状態で設置されており、その上下方向の幅は、ほぼ発熱板220の上下方向の幅に対応したものとなっている。また、第2の熱反射部材222も、ほぼ発熱板220の上下方向の幅に対応した幅のものとなっている。
この結果、上記電気ヒーターHの背面側および発熱板220の背面側からパン膨出空間Yと反対側の半径方向外方に放射される熱が、まず左右および後部3面の熱反射板よりなる第1の熱反射部材221、221、221によってパン膨出空間Y側(電気ヒーターHの背面側および発熱板220の背面側)に反射され、パン膨出空間Yへの加熱効率が向上する一方、発熱部材である電気ヒーターHが設けられている発熱板220と第1の熱反射部材221との間の空間部223の空気温度を大きく上昇させ、同空間部223に放射熱を蓄熱する。
このとき、上記第2の保護枠22の小径部(上部側側壁部)22aには、すでに上記発熱板220上端からの熱が直接伝達されていて、一定のレベルに加熱昇温されている。
したがって、同構成では、これまでの上記発熱板220上端からの熱に加えて、上記電気ヒーターHおよび発熱板220からの放射熱を受けて加熱昇温された第1の熱反射部材221自体の熱が第2の保護枠22の小径部22aに伝達され、さらに、それに加えて発熱板220と第1の熱反射部材221との間の空間部223部分に蓄熱された空気の熱が第2の保護枠22の小径部22aに伝達されることになり、第2の保護枠22の小径部22a部分には、それら3つの部分からの熱が集中することになり、それらの熱の合計量が略全周方向において同第2の保護枠22の小径部22aを介して上端側肩部材1cの肩枠部51aの全体に伝達され、ベーカリー本体Aの上端部を形成している肩枠部51aの全体を有効に加熱昇温させる。そして、それにより、第2の保護枠22の小径部22aの内外周面、肩枠部51aの上下左右各外周面の温度を上げる。
一方、上記左右および後部の第1の熱反射部材221、221、221の外周側には、それぞれ所定の板厚を有する上記第2の保護枠22の大径部(下部側側壁部)22bがあり、上記第1の熱反射部材221、221、221から外方への放射熱は、同大径部22bに作用して吸収蓄熱されるとともに、同大径部22bに吸収された熱が、さらに上記小径部22aに伝達される。また、このとき、第1の熱反射部材221、221、221と大径部22bとの間の空間部224にも第1の熱反射部材221、221、221からの放射熱が蓄熱され、この熱も上記小径部22aに伝達される。
そして、同大径部22bの外周側である上記外ケース1側壁部1aの内周面には、さらにシール部材よりなる第2の熱反射部材222が貼設されている。したがって、上記第1の熱反射部材221、221、221および大径部22bから、さらに外方へ放射される放射熱は、この第2の熱反射部材222で最終的に内方に反射され、殆ど外部には放出されなくなる。また、それにより、第2の保護枠22の大径部22bおよび小径部22aと外ケース1の側壁部1aとの間の空間部225の空気温度も高くなり、同空気が対流により上方に上昇して、上記小径部22aおよび肩枠部51aを加熱する。
これらの結果、上記ベーカリー本体Aの上端側開口部を形成する肩枠部51a部分はもちろん、蓋体Bとベーカリー本体Aとの当接部において内周側近接部から外周側に漏出した蒸気が滞留しやすい隙間や空間部分の空気も有効に加熱昇温され、従来のような結露発生現象が確実に解消される。また、ベーカリー本体A上端側開口部の加熱昇温は、さらに蓋体Bの熱反射板19cの下面をも加熱昇温させるので、蓋体B下面側の結露も防止することができる。
この場合、たとえば上記第2の保護枠22側第2の加熱手段が第1の加熱手段と同様の電磁誘導式のものであるような場合には、上記第2の保護枠22下部側の大径部22b部分を全周に形成し、同大径部22b部分にワークコイルを設け、上記金属製の発熱板220を電磁誘導によって発熱させるようにすれば良い
そして、そのようにした場合にも、上記同様の熱反射部材221、222の設置による結露防止構造を採用することができる。
また、これらの場合において、さらに後述するように、電装品等冷却用のファン20からの風を上記第1の保護枠21内に導入するようにし、同冷却風によって、十分過ぎる発熱量があり、かつパンケース3の外周面から外方に無駄に放射されている渦電流による発熱量を有効に回収し、それを下方から上方に向けて高温の熱風の形で効率よく供給するようにすることもできる。
そのようにすると、同高温の熱風によって上記パンケース3上方のパン膨出空間Yの加熱効率をさらに大きく向上させることが可能となる。そして、それと同時に、同高温の熱風が蒸気を加熱乾燥させるので、外部に出てゆく蒸気自体が消失し、より結露が生じにくくなる。また、同高温の熱風が、蒸気排出通路18cだけでなく、ベーカリー本体Aの上端側開口部と蓋体Bの下面との間の隙間をも流れることから、それらの部分も有効に加熱される。したがって、さらに結露解消効果が向上する。
<第1の保護枠底部におけるパンケースの設置構造>
たとえば図3および図10に示すように、上記第1の保護枠21の底部中央には、下方側に開口突出した筒状の開口部(凹溝部)37が設けられており、該開口部37が上記外ケース1の底壁部1b上に設けられている回転機構駆動10最終段の回転軸10e部分に臨まされている。この回転軸10eには、その上端側に平面視S字形の回転係合部材38が取り付けられており、同回転係合部材38両端の係合片38a,38a部分に、パンケース3底部のパン羽根取付軸36下端側の直交方向の係合部材36aの両端側係合部が係合してパン羽根取付軸36に回転駆動機構10側からの回転力が伝達されるようになっている。
パンケース3のパン羽根取付軸36は、当該パンケース3の底部3bの中央にあって、軸受け部35aおよびシール部35bを介して上下方向に貫通しており、その上端側にパン羽根(図示省略)が着脱可能な形で取り付けられるようになっている一方、下端側に上記係合部材36aが直交状態で取り付けられている。また、パンケース3の底部裏面側には、上記第1の保護枠21底部の筒状の開口部(凹溝部)37の内側に嵌り合う筒状部(連結用スリーブ)3hが下方に突出して設けられており、パンケース3は同筒状部3hを上記第1の保護枠21の筒状の開口部(受け溝)37に嵌め合わせることによって収納セットされるようになっている。
この場合、パンケース3の筒状部3h外周面には、例えば図11、図12に示されるように、90°間隔で周方向に4つの縦長の凸条部39a、39a・・が、他方第1の保護枠21側筒状の開口部37の内周面には、例えば図10に示されるように、同じく周方向に90°間隔で上記パンケース3側筒状部3hの凸条部39a、39a・・が嵌め合わされる同じく縦長の4つの凹条部37a、37a・・が、それぞれ設けられており、それらの係合によって上記第1の保護枠21のパンケース収納室X内に収納セットされたパンケース3の下部側がパン羽根回転方向に確実に固定されるようになっている。
また、他方、上記第1の保護枠21の開口部21c部分には、そのアール面部よりも少し下方に位置して、例えば所定の高さ内方に突出するゴム製の保護枠固定部材80、80・・が設けられている。この保護枠固定部材80、80・・は、上記断面略方形の第1の保護枠21開口部の前後左右各側壁面の内側から見た面の中央部よりも左側に寄った部分(回転時の移動振幅が最も大きく、回転時に最も大きな当接方向の押圧力が作用する部分)に位置して設けられており、それによって、例えば図10の平面視状態で右方向に回転するパン羽根(パン羽根取付軸36)の回転力の影響によるパンケース3の右方向への回転力を効果的に受け止め、より確実な形で、しかも振動させることなくパンケース3本体を正確な収納位置に固定するようになっている。
したがって、これによりパンケース3は、上下両端側で確実に水平方向に固定されることになる。この結果、上述したワークコイル6とパンケース3との電磁的な誘導ギャップも常に適正な寸法に維持されるようになる。この結果、常にパンケース3の全体を均一に電磁誘導加熱することができ、より信頼性の高い電磁誘導加熱方式のホームベーカリーを提供することができることになる。
さらに、この実施形態の場合、たとえば図8に示すように、上記第1の保護枠21下部の4隅コーナー部の一角(第1の保護枠21自身から見て前部左側コーナー部/換言すると、向かって右側のコーナー部)には、その前面側から左側面側までの所定の幅に亘って、当該第1の保護枠21内に後述する冷却用ファン20からの冷却空気を対角線方向に導入するためのグリル構造の空気導入口15が形成されている。
そして、このように構成された第1の保護枠21内に、上述のように、底部にパン羽根が取り付けられるパン羽根取付軸36を備えたパンケース3が取り出し可能な状態で収納セットされている。そして、この収納セット状態では、上述したパン羽根取付軸36の下方に設けた直交方向の係合部材36a、最終段の回転軸10eに固定されたS字形の回転係合部材38を介して後述する回転駆動機構10側からの回転駆動力が伝達され、それによってパン羽根が回転し、パンケース3内のパン生地を捏ねる作業が行なわれる。なお、パンケース3の内周面には、捏ね工程においてパン生地に係合力を作用させる凸状部3e、3eが設けられている。
上記パン羽根取付軸36に回転力を伝達する回転駆動機構10は、例えば次のように構成されている。すなわち、例えば図3および図6に示すように、駆動源であるパン羽根駆動モーターMの出力軸10aの回転を駆動側プーリー10b、ベルト10c、従動側プーリー10dを介して上述した最終段の回転軸10eに伝達し、該最終段の回転軸10eにより上記S字形の回転係合部材38を回転させる。
他方、図2、図6、図9において、符号25は、当該ホームベーカリーにおけるパン製造工程を制御する制御プログラムを実行する制御基板であり、上述した外ケース1の前面側側壁部1aと保護枠2の前面部との間の空間部に位置し、かつ保護枠2の前面側に平行に隣接して上下方向に立設された制御基板カバー27の前面側(外ケース側)に取り付けられている。この制御基板25の外ケース1側部品取り付け面上には、上記ワークコイル6の駆動を行なうIGBT(パワートランジスタ)28、同IGBT28の放熱を行うヒートシンク29等の発熱部品が設けられている。この制御基板25および制御基板カバー27は、断面略方形の形状を成す上記保護枠2の前面部側にあって、その一側端(図示左側端)が上記断面略方形の形状の保護枠2の左側面部位置となるような位置関係で設けられている。
そして、これら制御基板25および制御基板カバー27と保護枠2の下部(特に下部側第1の保護枠21の下部)の前面部および左側面部間のコーナー部に形成された上述の空気導入口15の各々に共通に対応して、たとえば図2、図3、図9に示すような位置関係で、それらの左側面側に所定の間隔を置いて、それらの略全体をカバーすることができるファン径の冷却用のファン20が、その吹出し軸中心を制御基板カバー27と保護枠2前面部との間の空間部分に向けた状態で平行に設置されている。そして、例えば外ケース1の左側面側側壁部のファン吸込み軸に対応する部分に設けた外気吸入口から吸い込んだ外気をファン羽根車20bにより前方に吹き出し、上記対応する所要部分に吹き付けるようになっている。
一方、上記制御基板カバー27のファン端部側には、保護枠2側に位置して、上記冷却ファン20の空気吹き出し口20aから吹き出される冷却風を、その風向を変えて上述したワークコイル6側に供給する第1の冷却風ガイド31と、上述した第2の保護枠21の空気導入口15側に供給する第2の冷却風ガイド32とが、上下に分けて設けられている。
この結果、上記冷却ファン20の空気吹出口20aから吹出された冷却風は、その左側領域部分の風が上記制御基板25および制御基板25上のIGBT28、ヒートシンク29等を、また中央部左側領域の風が制御基板25の裏面側を、中央部領域および中央部領域から右側の広領域の風が上部側ではワークコイル6の前面側から右側面側、左側面側から背面側に、また下部側では上記第1の保護枠21の前面部側と左側面部側とのコーナー部にある第1の保護枠21内パンケース収納室Xへの空気導入口15部分に効率よく供給されるようになり、1台の冷却ファン20で上記各部に十分な風量の冷却風を供給できるようになる。
この実施形態のようなホームベーカリーの場合、電気炊飯器などと異なって、上記パンケース3内にパン生地を入れて捏ねる「捏ね工程」では、たんぱく質の良好なグルテン化を図るためにパンケース3を冷却する必要があり(グルテン化に有効な適温は10〜27℃のため)、また「焼き上げ工程」では、誘導加熱されたパンケース3の熱が外部に逃げないように、第1の保護枠内21内に導入した空気を断熱材としてパンケース3の全体を包むとともに、パンケース3外周の放射熱を吸収して昇温し高温になった空気(熱風)でパンケース3の全体およびパンケース3上方のパン膨出空間Y部分を均一に加熱することによって、「焼き工程途中」のパンケース3内はもちろん、「焼き工程最後」のパンケース3から上方に膨出したパン生地部分をも十分に加熱し、有効な焼き色をつける。その結果、熱効率が向上し、省エネ効果も得られる。
また、冷却風によって保護枠2との間の空間部分が断熱され、保護枠2自体の温度上昇も小さくて済むようになるので、ワークコイル6の耐久性も向上する。
なお、図10に示されるように、上記第1の保護枠21の底壁部21b部分には、収納されたパンケース3ないしパンケース3内のパン生地の温度を検出する例えばサーミスタなどからなる容器温度センサー(底センサー)49が、そのセンサ部をパンケース3に直接接触させる形で設けられている。この容器温度センサー49のセンサー部により検出されたパンケース3ないしパン生地の温度は、後述するパン焼き上げ制御の焼き上げ工程(こね工程および焼き上げ工程)、蕨餅や葛餅等液状または半液状の粘性調理物の調理工程等における、パン羽根駆動モーターの回転数制御、ワークコイル6および電気ヒーターHの通電率制御(温調制御)等に利用される。
<蓋体部分の構成>
次に、上述のように外ケース1の側壁部1aの上端および第2の保護枠22の小径部22aの上端を肩部材1cを介して連結一体化したベーカリー本体Aの上端側開口部には、上述のように蓋体Bが上下方向に開閉可能にヒンジ機構16を介して後端側で枢着されている。
この蓋体Bは、例えば図2、図3、図11、図12に示されるように、上部外装面を形成する合成樹脂製の外カバー18と、その内側天井面を形成する合成樹脂製の内カバー19との2つの成型部材からなり、それらの端部18a、19a,18b、19b同士を相互に接合一体化し、それらの間に所定断面積の断熱空間15を形成して構成されている。そして、その外カバー18後端部分には、例えば蒸気排出口Sが設けられており、その内側に設けられた蒸気排出通路18cを通して焼成室であるパンケース収納室Xおよびパン膨出空間Y内に生じた蒸気(およびその他のガス)が適宜排出されるようになっている。
また、上記合成樹脂製の内カバー19の下面には、例えば上述した電気ヒーターHからの放射熱をパン側に反射させる金属製の熱反射板(インナーカバー)19cが略全面に亘って設けられている。そして、それにより、上記第2の保護枠22の発熱板220を介してパン膨出空間Y部分に放射される電気ヒーターHからの上方への放射熱が同熱反射板19cで効果的に下方側に反射されて、上述のようにパンケース3の開口部3cから上方に膨出したパンの天面部に効果的に作用するようになっている。この結果、同パン膨出部の焼き上がりも良好になり、適度な焼き色が形成される。
ところで、すでに述べたように、蓋体Bの下面側を受ける上記肩枠部51aの上面部側は、周方向の全体に亘って所定の幅の平坦部(水平部)51bに形成されており(図3、図4、図7、図10等を参照)、該平坦部51bの内周端(内周側開口縁部)には、その全周に亘って所定の高さ上方に突出する所定の幅の環状の凸部(リブ)51fが設けられている。一方、蓋体Bの閉状態において、同環状の凸部51fの外周側に位置することになる当該蓋体Bの下面側には、同蓋体Bの閉状態において、上記環状の凸部51fの外周側に隣接する所定の高さ、所定の幅の環状の凸部(リブ)18dが全周に亘って設けられている。
そして、これら環状の凸部51fと18dは、蓋体Bが閉じられると、同一水平面状態で、相互に内周側と外周側に隣接され、相互の間の隙間を可及的に小さなものとして、パッキン等を使用することなく焼成室であるパン膨出空間Y側からの蒸気が本体外方に漏れ出すのをシールするようになっている。
他方、同状態において、それよりも半径方向外方の蓋体(外カバー)Bの外周縁部下面とベーカリー本体Aの開口部上端面との間G部分は、たとえば図4、図11、図12に示すように、比較的に大きな隙間に形成されており、上記環状の凸部51f、18d間の小さな隙間を通して漏出した僅かな蒸気が、結露を生じることなくスムーズに本体より外部に排出されるように構成されている。
この結果、パン膨出空間Y内の蒸気は、その殆どすべてが蒸気排出通路18cを介して蒸気排出口Sから外部に排出されるようになり、従来のような結露が生じにくくなる。
しかも、この実施の形態の場合、先に述べたように、このような基本的な構成に加えて、さらに第1、第2の熱反射部材221、222による結露防止構造が採用されている。したがって、その結露防止性能は極めて高いものとなる。
<具材投入装置部分の構成>
さらに、この実施の形態では、上記蓋体Bにおけるパンケース3の開口部3cの上方に対応する上記熱反射板19cの内側(裏面側略中央部位置)には、たとえば図11、図12に示すように、下方側(パンケース3の開口部3c側)に2段階で開放可能となった具材収納ケース61を有する具材投入装置60が着脱可能な状態で設けられている。
上記具材収納ケース61は、そのケース本体の下面側に下方側に弧回動する底板(蓋板)62を備え、該底板62を必要に応じて水平な収納ケース閉状態から下方側に略垂直な第1のケース開状態(図11)に略90°弧回動させ、それによってケース本体の底部を開放することによって、ケース本体内に収納されている具材を下方側パンケース3内に投入し、その後所定の時間を置いて、さらに後方側パンケース3の開口部3c後方位置(図12)まで大きく回動して停止するようになっている。
この底板62の下方側への第1、第2の2段階の開放動作(弧回動動作)は、例えばケース本体一端側の底板支持軸付近に設けた係合状態コントロール用の底板開放ボタン63を、対抗する位置に設置した図示しない電磁プランジャのプランジャロッドのON、OFFによって制御するようになっている。
上記のような一旦下方側に開放されると元の閉状態に戻らない底板62を備えた具材投入装置60を用いてパンケース3内に具材を投入するようにした場合、具材投入後のパンの焼き上がりに応じたパンケース3上方へのパンの膨出量を考慮すると、上述のように底板62をパンケース3の開口部3c上方位置を避けた後方位置(図12に示す2段階目の回動位置)まで大きく弧回動させた状態で停止させなければならない。
ところが、上記ケース本体内に具材が入っている状態(底板62上に具材が乗っている状態)で、いきなり上記パンケース3の開口部3c後方の最大回動位置まで弧回動させてしまうと、ケース本体内の具材が全てパンケース3内に落とし込まれず、勢いでパンケース3外に毀れてしまう問題がある。
そこで、この実施の形態では、上述のように、一旦パンケース3の開口部3c上方位置まで弧回動させた上で止め(図11の状態)、その後、所定の時間を置きケース本体61内の具材がパンケース3内に投入されるのを待ってから、最終的に上記パンケース3の開口部3c後方の最大開放位置(図12)まで回動させて停止させるようにしている。
このような構成によると、焼き上がりに応じたパンケース3上方へのパン膨出時における底板62との干渉を回避しながら、パンケース3内への確実な具材の投入を可能とすることができ、保護枠2およびパンケース3の上部から蓋体Bにかけての高さ寸法を可能な限りコンパクトにしながら、自動的な具材投入装置60を設置することができ、また、それらの結果、膨出部に損傷がなく、見映えの良い外観のパンを焼き上げることができる。
この具材投入装置を使用した具材の投入は、以下に述べるように「こね工程」の後段において、パン羽根を停止させた状態で行われる。
<制御システム部分の構成>
次に、図13は、この発明の実施の形態におけるホームベーカリーのマイコン制御ユニット100を中心として構成された制御システム部分の構成を示している。この発明の実施の形態における回転加熱型調理器としてのホームベーカリーは、以上に述べたように、基本的にはパンの焼き上げ機能を中心として構成されているが、それ以外にも、例えば蕨餅、葛餅、カスタードクリーム、シュー生地、シチュー、カレーなどの粘性のある液状、半液状調理物の加熱・撹拌調理機能をも有して構成されている。そして、上記メニュー選択スイッチ11dによって選択される調理メニュー中にも、これらの調理メニューが含まれており、当該制御システムにも、各種パンの焼き上げ制御シーケンスに加えて、それらに対応した加熱・撹拌調理シーケンスが設定されている。
この図13の制御システムでは、上記操作基板12に設けられたマイコン制御ユニット100を中心とし、上述したスタートスイッチ11b、取消スイッチ11c、メニュー選択スイッチ11d、焼き色スイッチ11e、ミックススイッチ11f、タイマー予約スイッチ11g、タイマー予約用の時・分スイッチ11h等の操作・設定信号、容器温度センサー49によるパンケース(パン生地)3の温度検出信号、庫内温度センサー85によるパン膨出空間Yの温度(およびパン膨出空間Yに膨出したパン表面温度)の検出信号、室温センサー86による室温検出信号、パン羽根駆動モーター回転数検出手段MSによるパン羽根駆動モーターMの回転数検出信号等を入力して、選択・設定された調理メニュー(パンの種類に応じたパンの焼き上げメニュー、蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物の加熱・撹拌調理メニュー)、設定された焼き色(パン焼き上げメニューの場合)に応じて、何段階かに区分された複数の制御工程(焼き制御工程/図14、加熱・撹拌制御工程など)ごとに、上記第1の加熱手段であるワークコイル6および第2の加熱手段である電気ヒーターHの加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)、上記第1の加熱手段であるワークコイル6の加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)、上記パン羽根駆動モーターMの回転状態、回転数を適切にフィードバック制御するようになっている。
たとえばパン焼き上げメニューの場合には、パンの種類によって異なる複数の焼き制御工程ごとに、上記パン羽根を回転させるパン羽根駆動モーターMの駆動状態や駆動回転数(こね工程など)、第1の加熱手段であるワークコイル6および第2の加熱手段である電気ヒーターHの加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)などを適切に調節する。また、たとえば蕨餅、葛餅等の液状または半液状の粘性調理物の加熱・撹拌調理メニューの場合には、複数の加熱・撹拌制御工程ごとに、上記第1の加熱手段であるワークコイル6の加熱状態(ON/OFF)および加熱量(電力および通電率)に加えて、上記パン羽根駆動モーターMの回転数(撹拌力)を適切に調節する。また、マイコン制御ユニット100は、そのような制御の実行に際して、上記各種メニューの選択・設定に必要な情報、選択・設定された設定内容その他の必要な情報を、上記液晶ディスプレイ11a部分にわかり易く表示する表示制御機能も備えている。
これらの制御内容の詳細に関し、まず基本となるパン焼き上げ制御の内容から説明する。
<基本的なパン焼き上げ制御の全体的な制御シーケンス>
図14の制御フローは、上記図13の制御システムを用いたこの出願の発明の実施の形態におけるパン焼き上げ制御の基本となる制御内容を示している。
すなわち、まず同制御システムの電源回路に電源が入っている電源ON状態において、メニュー選択スイッチ11dにより所望のメニュー(焼き上げるべきパンの種類)が選択設定される(ステップS1)。
この実施の形態の場合、選択できるメニューとして、たとえば次の4種類のパンが準備されている。
・ 小麦粉製の通常食パン
・ 米粉製の食パン
・ ブリオッシュ
・ フランスパン
次に、上記スタートスイッチ11aがオン操作されると(ステップS2)、まず上記ステップS1で設定されているメニューが何であるかが判定される(ステップS3)。そして、判定されたメニューに応じたパン生地作製調理が開始され、まず上述のパン羽根を使用したパン生地のこね工程(ステップS4)が開始される。
このパン生地の「こね工程」は、たんぱく質のグルテン化を図る重要な工程であり、そのために同工程ではパン生地の温度を同たんぱく質のグルテン化に有効な温度範囲(一般に発酵不足および過発酵を防止するために、10〜27℃程度が良いとされている)に維持するために、特にパン生地の温度制御(ステップS5)が行われる。
このパン生地の温度制御には、たとえば上記パン羽根を駆動するパン羽根駆動モーターMの回転数を連続的に可変制御できるDCモーターを採用し、同DCモーターの回転数を可変することにより上記パン羽根の回転数を任意に調整する方法、また必要に応じて冷却ファン20や電気ヒーターHを駆動し、上記パン羽根の回転数制御と併用する方法が採用される。DCモーターの場合、直流電流の入力を制御することによって、容易に、かつ低コストに回転数を可変制御することができる。
そして、これらのパン生地温度の制御には、その制御パラメータとして、たとえば上記容器温度センサー49によって検出されたパン生地の温度、また必要に応じて同パン生地の温度に影響を与える室温センサ−86によって検出された室温などが使用される。これらパン生地こね工程におけるパン生地温度の制御の詳細については、後述する。
そして、同こね工程における所定の作業時間(蛋白質のグルテン化に必要な工程時間:図17のタイムチャートを参照)が経過すると、同こね工程が完了したか否かが判定される(ステップS6)。判定の結果、YESと判定され、パン生地のこね工程が完了すると、上述したパン生地温度の制御(パン羽根駆動モーターMの回転数制御や冷却ファン20の駆動制御、電気ヒーターHの駆動制御)を停止し(ステップS7)、次に発酵工程に進んで所定時間イースト菌を発酵させる(ステップS8)。この発酵工程で、イースト菌が糖類を分解し、エタノールおよび二酸化炭素を発生し、二酸化炭素がパン生地を効果的に膨張させる。
そして、同所定時間が経過すると、当該発酵工程が完了したか否かを判定し(ステップS9)、YESと判定されて発酵工程が完了したことが確認されると、上記冷却ファン20を駆動し(ステップS10)、焼き上げ工程の制御を開始する(ステップS11)。
そして、焼き上げ工程の制御では、まず上記ユーザーにより選択設定され、ステップS3で判定されたメニュー、すなわち焼き上げるべきパンの種類(1)〜(4)に応じて、経時的にタクト時間を異にして複数の工程に区分された各焼き工程ごとに上述した第1の加熱手段であるワークコイル6、および第2の加熱手段である電気ヒーターHの各加熱量(電力および通電率)を個別に設定し、パンケース3およびパン膨出空間(パン上部)Yを所定の目標温度に温調制御しながら焼き上げる(ステップS12)。
そして、同焼き上げが完了すると、保温工程に移行する(ステップS13)。
<従来の「パン生地こね工程」における問題点>
ところで、上記図1〜図12のようなホームベーカリー(回転加熱型の調理器)の場合、上記ステップS4〜S5に示すような「パン生地こね工程」でパン生地を捏ね上げる場合、例えば図17のタイムチャートに示すように、作業を開始して間がない初期の工程(こね工程1〜3)では、もともとパン生地自体の温度も高くなく、パン羽根自体の回転数も低く設定されていて、ゆっくりとした「こね作業」が行われるので、「こね作業」の進行によるパン生地自体の温度の上昇率も大きくはない。
しかし、「こね作業」を開始して、所定時間以上の作業時間が経過すると(こね工程4−1〜4−3)、「こね作業」によるパン生地内の摩擦熱の発生量が多くなり、パン生地自体の温度が相当に上昇してくる。
この時の「こね作業」によるパン生地の温度の上昇は、その時の室温やパン羽根の回転数に比例してパン生地自体に発生する摩擦熱の影響が大きい。したがって、室温が高く、パン羽根の回転数が高いと、パン生地の温度は大きく上昇し、上記発酵に最適な温度範囲(たとえば10〜27℃)を超えてしまう。これでは、たんぱく質の最適なグルテン化を図ることができず、美味しいパンを焼き上げることができなくなる。
この場合において、例えば室温およびパン生地自体の温度が一定であるとすると、その時のパン生地の温度の上昇率は結局上記パン羽根の回転数に比例し、パン羽根の回転数が高いほどパン生地の温度も高く上昇することになる。したがって、パン生地の温度を当該こね工程における適切な設定温度(以後の発酵に最適な温度)に維持しようと思えば、その時のパン生地の温度を検出しながら、当該検出温度がその後の発酵に最適な所定の設定温度に収束させるようにパン羽根駆動モーターMの回転数を制御すれば良い。
しかし、従来のパン羽根駆動モーターMには、一般にACモーターが採用されており、該ACモーターの場合において、その回転数を制御しようとすると、その最大定格回転数をON,OFF制御するしか方法がなく、室温やパン生地の温度変化に対応して連続的に回転数を可変制御するということが構成上できなかった。モーター最大回転数のON,OFF制御を採用した場合、室温やパン生地の温度が変わると、その都度、パン羽根駆動モーターMがON,OFFされ、それに応じてパン生地自体の温度が断続的に上下するので、その後の発酵工程における発酵度合がバラツイテしまい、焼き上がったがパンの仕上がり具合も一定しない。もちろん、最近では、サイリスタインバーターなどの周波数制御による回転数の制御装置も提供されているが、価格が高く、ホームベーカリーなどでは採用できない。
また、従来、このような「こね工程」においては、上述したパンケース冷却用ファン20を駆動してパンケース3を冷却し、パン生地温度の上昇を避ける制御が行われているが、単に冷却用ファン20の駆動によるパン生地に対する冷却機能の応答性は低く、こね作業に伴うパン生地の摩擦熱による温度変化の抑制コントロール手段としては間接的であり、必ずしも十分ではない。
この出願の発明の以下に述べる各実施の形態は、それぞれこのような技術的課題を解決するためになされたもので、上述のような回転加熱型の調理器であるホームベーカリーにおいて、上述のように「こね作業」が必要とされる「調理物」、すなわち「パン生地」の温度を当該「こね工程」における所定の設定温度に制御するに際し、パン羽根を介したパン生地回転手段であるパン羽根駆動モーターMの回転数を連続的に可変制御することができるDCモーターを採用し、その回転数をその時の室温やパン生地の温度を制御要素として適切に可変制御するようにしたことを特徴としている。
<「パン生地こね工程」におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御の実施の形態1(基本形態)>
まず図15のフローチャートは、この出願の発明の実施の形態1(基本となる形態)に係るパン生地こね工程(図14の制御フローにおけるステップS4〜S5)のパン羽根駆動モーターMの基本的な回転数制御の内容を示している。
すなわち、同制御では、パン生地こね工程に入ると、まず上述の容器温度センサー49によりパンケース3の温度、すなわちパンケース3内のパン生地の温度を検出し、入力する。そして、ステップS1で同検出されたパン生地の温度が「こね工程」において許容される所定の上限基準温度28℃以上となっているか否かを判定する。その結果、Noの検出されたパン生地の温度が上限基準温度28℃よりも低い場合には、ステップS2に進んで、パン羽根駆動モーターの回転数を当該「こね工程」における最大目標回転数350rpmに設定してパン羽根を回転駆動し、こね作業を継続する。この結果、当該「こね工程」におけるパン生地の温度がパン羽根の回転数の上昇に応じて上昇し、予め定められている本来の目標温度28℃以下(10〜27度℃)に維持される。この結果、適切なグルテン化と適切な発酵作用が実現される。
他方、YESの検出されたパン生地の温度が上記所定の上限基準温度28℃以上となっており、そのままでは上述のような適正なグルテン化、適正な発酵作用が期待できなくなるような場合には、ステップS3に進んで、上記パン羽根駆動モーターMの目標回転数を最大目標回転数350rpmから最低目標回転数250rpmに下げて、パン羽根を回転駆動し、検出されるパン生地の温度が適正なグルテン化、適正な発酵作用が期待できる所定の上限基準温度28℃よりも低くなるように制御する。この結果、当該「こね工程」におけるパン生地温度の上昇がパン羽根回転数の低下により抑制されて、予め定められている本来の目標温度27℃以下(10〜27度℃)に維持される。この結果、適切な発酵作用が実現される。
そして、これらステップS2,S3の制御は、当該「こね工程」の予め設定されている一定の工程時間が経過するまでなされる。
そして、所定の周期ごとにステップS4で同予め定められた一定の工程時間の経過を判定し、同予め定められた一定の工程時間の経過が判定されると、当該パン羽根駆動モーターMの回転数制御を終える。
このように、パン羽根駆動モーターMに回転数の連続的な可変制御が可能なDCモーターを採用し、当該こね工程における最適なパン生地温度(こねあげ温度)を設定し、常に同目標設定温度になるように、実際に検出されるパン生地の温度が同目標設定温度よりも高ければ回転数を下げ、逆に低ければ回転数を上げ、実際に検出されるパン生地の温度が常に同目標設定温度に維持されるように制御すると、所定のこね工程又は各こね工程における捏ね上げ温度が当該工程に応じた一定の「こねあげ温度」でこね上げられるようになり、その後の発酵工程の進行状況も安定し、焼き上げられたパンの仕上がり状態も一定する。
<「パン生地こね工程」におけるパン羽根駆動モーターの回転数制御の実施の形態2(第1の発展形態)>
次に、図16のフローチャートおよび図17のタイムチャ−トは、この出願の発明の実施の形態の第2の形態(基本形態の第1の発展形態)に係るパン生地こね工程(図14の制御フローにおけるステップS4〜S5)のパン羽根駆動モーターMの回転数制御の内容を示している。
この第2の形態では、例えば図17のタイムチャートに示すように、上述した図14の「こね工程」(ステップS4〜S5)の全体を、「こね工程1」〜「こね工程3」、「こね工程4−1」〜「こね工程4−3」、「こね工程5−1」、「こね工程5−2」、「こね工程6」の複数の工程に分割し、初期工程である「こね工程1」〜「こね工程3」や終期工程である「こね工程5−2」、「こね工程6」では、それぞれ室温やパン生地温度自体を特別に問題にすることなく、パン羽根駆動モーター回転数検出手段MSにより実際に検出されるパン羽根駆動モーターMの回転数が予め設定された工程ごとの所定の目標回転数40rpm、80rpm、120rpm、50rpm、280rpmになるようにパン羽根駆動モーターMの回転数をフィードバック制御する一方、こね作業の進行によりパン生地の温度が上がってきて、室温やパン羽根の回転数による温度変化の影響が大きくなる「こね工程4−1」〜「こね工程4−3」においては、上記パン生地の温度を検出する容器温度センサー49によって検出された実際のパン生地温度に基づいて、同パン生地の温度が当該「こね工程4−1」〜「こね工程〜4−3」における所定の目標温度(図17参照)に維持されるように、上記パン羽根駆動モーターMの目標回転数そのものを当該工程内において連続的に可変制御するようにしている。 他方、それとともに、上述の具材投入装置を用いた具材投入工程である続く「こね工程5−1」では、パン羽根駆動モーターMを停止させ、その後具材の投入が完了した「こね工程5−2」では、パン羽根駆動モーターMの回転数を特に低速回転とすることにより、投入された具材を飛び散らせることなく、効果的にパン生地中に混合してゆくようにしている(この制御については、追って図18の制御フローで詳細に説明する)。
すなわち、この形態の制御では、たとえば図16のフローチャートに示すように、初期工程であるこね工程1〜3を経てパン生地「こね工程4−1」に入ると、まず上述の容器温度センサー49によりパンケース3の温度、すなわちパンケース3内のパン生地の温度を検出し、入力する。そして、ステップS1で同検出されたパン生地の温度が当該「こね工程4−1」における所定の上限基準温度24℃以上となっているか否かを判定する。その結果、Noの検出されたパン生地の温度が同所定の上限基準温度24℃よりも低い設定目標温度範囲内(23℃以下)にある場合には、ステップS2に進んで、予め設定されている当該「こね工程4−1」の最高目標回転数350rpmに設定してパン羽根モーターMを回転駆動し、こね作業を継続する。
他方、YESの検出されたパン生地の温度が所定の上限基準温度24℃以上となっており、そのままの回転数でこね作業を続けたのでは、パン生地の温度が上がりすぎて、その後の適正な発酵作用が期待できなくなるような時は、ステップS3に進んで、上記パン羽根駆動モーターMの回転数を最高目標回転数350rpmから最低目標回転数250rpmに下げて、パン羽根駆動モーターMを回転駆動し、検出されるパン生地の温度が上述のような問題のない上限基準温度24℃を超えないように制御する。
そして、これらステップS2,S3の制御は、当該「こね工程4−1」の予め設定されている一定の工程時間t4が経過するまでなされる。
このように、当該「こね工程4−1」における最適なパン生地温度(こねあげ温度)23℃以下を設定し、常に同目標設定温度になるように、実際に検出されるパン生地の温度が同目標設定温度よりも高ければパン羽根の回転数を下げ、逆に低ければ回転数を上げるようにし、パン羽根の回転数(パン羽根駆動モーターの回転数)を制御要素として実際に検出されるパン生地の温度が常に同目標設定温度以下に維持されるように制御すると、当該こね工程におけるこね上げ温度が当該こね工程に応じた一定の「こねあげ温度」による安定した状態でこね上げられるようになり、その後の発酵工程の進行状況も安定したものとなり、焼き上げられたパンの仕上がり状態も一定する。
そして、所定の周期ごとにステップS4で、上記予め定められた当該こね工程4−1の一定の工程時間t4の経過を判定し、同予め定められた一定の工程時間t4の経過が判定されると、当該「こね工程4−1」におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御を終えて、次に「こね工程4−2」に進む。
「こね工程4−2」に入ると、まず上述の容器温度センサー49によりパンケース3の温度、すなわちパンケース3内のパン生地の温度を検出し、入力する。そして、ステップS5で同検出されたパン生地の温度が所定の上限基準温度26℃以上となっているか否かを判定する。その結果、Noの検出されたパン生地の温度が同所定の上限基準温度26℃よりも低い設定目標温度範囲内(25℃以下)にある場合には、ステップS6に進んで、予め設定されている当該「こね工程4−2」の最高目標回転数350rpmに設定してパン羽根モーターMを回転駆動し、こね作業を継続する。
他方、YESの検出されたパン生地の温度が所定の上限基準温度26℃以上となっており、そのままの回転数でこね作業を続けたのでは、パン生地の温度が上がりすぎて、その後の適正な発酵作用が期待できなくなるような時は、ステップS7に進んで、上記パン羽根駆動モーターMの回転数を最高目標回転数350rpmから最低目標回転数250rpmに下げて、パン羽根駆動モーターMを回転駆動し、検出されるパン生地の温度が上述のような問題のない上限基準温度26℃を超えないように制御する。
そして、これらステップS6,S7の制御は、当該「こね工程4−2」の予め設定されている一定の工程時間t5が経過するまでなされる。
このように、当該「こね工程4−2」における最適なパン生地温度(こねあげ温度)25℃以下を設定し、常に同目標設定温度になるように、実際に検出されるパン生地の温度が同目標設定温度よりも高ければパン羽根の回転数を下げ、逆に低ければ回転数を上げるようにし、パン羽根の回転数(パン羽根駆動モーターの回転数)を制御要素として実際に検出されるパン生地の温度が常に同目標設定温度以下に維持されるように制御すると、当該こね工程におけるこね上げ温度が当該こね工程に応じた一定の「こねあげ温度」による安定した状態でこね上げられるようになり、その後の発酵工程の進行状況も安定したものとなり、焼き上げられたパンの仕上がり状態も一定する。
そして、所定の周期ごとにステップS8で、上記予め定められた当該こね工程4−2の一定の工程時間t5の経過を判定し、同予め定められた一定の工程時間t5の経過が判定されると、当該「こね工程4−2」におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御を終えて、次に「こね工程4−3」に進む。
「こね工程4−3」に入ると、まず上述の容器温度センサー49によりパンケース3の温度、すなわちパンケース3内のパン生地の温度を検出し、入力する。そして、ステップS9で同検出されたパン生地の温度が所定の上限基準温度28℃以上となっているか否かを判定する。その結果、Noの検出されたパン生地の温度が同所定の上限基準温度28℃よりも低い設定目標温度範囲内(27℃以下)にある場合には、ステップS10に進んで、予め設定されている当該「こね工程4−2」の最高目標回転数350rpmに設定してパン羽根駆動モーターMを回転駆動し、こね作業を継続する。
他方、YESの検出されたパン生地の温度が所定の上限基準温度28℃以上となっており、そのままの回転数でこね作業を続けたのでは、パン生地の温度が上がりすぎて、その後の適正な発酵作用が期待できなくなるような時は、ステップS11に進んで、上記パン羽根駆動モーターMの回転数を最高目標回転数350rpmから最低目標回転数250rpmに下げて、パン羽根駆動モーターMを回転駆動し、検出されるパン生地の温度が上述のような問題のない上限基準温度28℃を超えないように制御する。
そして、これらステップS10,S11の制御は、当該「こね工程4−3」の予め設定されている一定の工程時間t6が経過するまでなされる。
このように、当該「こね工程4−3」における最適なパン生地温度(こねあげ温度)27℃以下を設定し、常に同目標設定温度になるように、実際に検出されるパン生地の温度が同目標設定温度よりも高ければパン羽根の回転数を下げ、逆に低ければ回転数を上げるようにし、パン羽根の回転数(パン羽根駆動モーターの回転数)を制御要素として実際に検出されるパン生地の温度が常に同目標設定温度以下に維持されるように制御すると、当該こね工程におけるこね上げ温度が当該こね工程に応じた一定の「こねあげ温度」による安定した状態でこね上げられるようになり、その後の発酵工程の進行状況も安定したものとなり、焼き上げられたパンの仕上がり状態も一定する。
そして、所定の周期ごとにステップS12で、上記予め定められた当該「こね工程4−3」の一定の工程時間t6の経過を判定し、同予め定められた一定の工程時間t6の経過が判定されると、当該「こね工程4−3」におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御を終える。
<パン生地こね工程におけるパン羽根駆動モーターの回転数制御の実施の形態3(第2の発展形態)>
次に、図18のフローチャートは、この出願の発明の実施の形態3(第2の発展形態)に係るパン生地こね工程(図14の制御フローにおけるステップS4〜S5)の具材投入工程におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御の内容を示している。
上述のように、パン生地のこね工程では、基本的にはパン羽根を回転させた「こね作業」が中心となり、パン羽根駆動モーターも基本的には常時駆動される。
しかし、焼き上げられるパンの中には、すでに述べたように各種の具材が投入されるものもある。このような場合、たとえば図17に示すように、「こね工程」の途中に「具材投入用のこね工程5−1」と「具材混合用のこね工程5−2」が設けられる。このような工程では、その目的に応じ、図18の制御フローのようにパン羽根駆動モーターの回転状態および回転数が制御される。
すなわち、まず具材投入工程である「こね工程5−1」(ステップS1)に入ると、まず上記パン羽根駆動モーターを停止させる。そして、同パン羽根駆動モーターおよびパン羽根の回転が停止した状態において、前述の具材投入装置(図11および図12参照)を用いてパン生地上に具材を投入する(ステップS2)。
この結果、投入された具材が飛び散ることなく、確実にパン生地上に投入されるようになる。この具材投入工程は、投入に必要な一定の時間t7をかけて行われる。
そこで、続くステップS3で同具材投入時間t7の経過を判定し、同具材投入時間t7が経過したYESの場合には、次に具材混合工程である「こね工程5−2」(ステップS4)に進む。
「こね工程5−2」では、例えば上記パン羽根駆動モーターの回転数を、図17のタイムチャートに示すように、50rpmの低速に設定してゆっくりと回転させることによって、上記投入された具材をこね上げられたパン生地中に確実に練りこませる。この「こね工程5−2」も同具材の混合に必要な一定の時間t8内行われる。
そこで、続くステップS6で同具材混合時間t8の経過を判定し、同一定の具材混合時間t8が経過したYESの場合には、同具材投入工程、混合工程におけるパン羽根駆動モーターの回転状態、回転数制御を終える。これらの工程では、上述のように、パン羽根駆動モーターの回転数が低いため、上述したパン生地の温度は上記上限基準温度28℃よりも少し低下する。
そして、これらの工程が終了すると、図17のタイムチャートに示すように、最後の「こね工程6」に進み、パン羽根駆動モーターの回転数を仕上げの回転数250rpmに設定して、所要の一定時間t9内駆動制御する。
このような制御によると、安定した具材の投入と確実なパン生地中への混入が可能となる。
<パン生地こね工程におけるパン羽根駆動モーターの回転数制御の実施の形態4(第3の発展形態)>
さらに、図19のフローチャートは、この出願の発明の実施の形態の形態4(第3の発展形態)に係るパン生地こね工程(図14の制御フローにおけるステップS4〜S5)におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御および冷却用ファン20並びに電気ヒーターHの駆動制御の内容を示している。
この第4の形態でも、上述の図17のタイムチャートに示すように、上述した図14の制御フローの「こね工程」(ステップS4〜S5)の全体を、「こね工程1」〜「こね工程3」、「こね工程4−1」〜「こね工程4−3」、「こね工程5−1」、「こね工程5−2」、「こね工程6」の複数の工程に分割し、初期工程である「こね工程1」〜「こね工程3」や終期工程である「こね工程5−2」、「こね工程6」では、それぞれ室温やパン生地温度自体を特に問題にすることなく、実際に検出されるパン羽根駆動モーターMの回転数が予め設定された所定の目標回転数になるようにパン羽根駆動モーターMの回転数をフィードバック制御する一方、「こね工程4−1」〜「こね工程4−3」においては、上記容器温度センサー49によって検出された実際のパン生地温度に基づいて、同パン生地の温度が当該「こね工程4−1」〜「こね工程4−3」における所定の目標温度に維持されるように、上記パン羽根駆動モーターMの回転数そのものを当該各こね工程内において一定のものではなく連続的に可変制御するようにしているが、その場合において、同各こね工程における所定の目標温度を基準として、実際に検出された温度が同目標温度よりも低くて当該パン羽根駆動モーターMの回転数を上げる時には、それに合わせて上述した電気ヒータHをもONにして速やかに目標温度に上昇させるようにしている一方、実際に検出されたパン生地の温度が同目標温度よりも高くて当該パン羽根駆動モーターMの回転数を下げる時には、それに合わせて上述したパン生地冷却用のファン20をも同時に駆動することによって、より降温効果を高くするようにしたことを得徴としている。
すなわち、同制御では、たとえば図19のフローチャートに示すように、こね工程1〜3を経て「こね工程4−1」に入ると、まず上述の容器温度センサー49によりパンケース3の温度、すなわちパンケース3内のパン生地の実際の温度を検出し、入力する。そして、ステップS1で同検出された実際のパン生地の温度が当該「こね工程4−1」の目標温度範囲内の所定の上限基準温度20℃以上となっているか否かを判定する。その結果、Noの実際に検出されたパン生地の温度が同「こね工程4−1」における所定の上限基準温度20℃よりも低い場合には、ステップS2に進んで、制御すべきパン羽根駆動モーターMの目標回転数を予め設定されている当該「こね工程4−1」に対応した最高目標回転数350rpmに設定してパン羽根モーターMを回転駆動するとともに、電気ヒーターHをONにして、こね作業を実行する。これにより、パン生地の温度は速やかに上昇し、実際に検出されるパン生地の温度が当該「こね工程4−1」における目標温度に収束される。
他方、YESの実際に検出されたパン生地の温度が上記所定の上限基準温度20℃以上となっており、そのままでは上述のような発酵上の問題がある場合には、ステップS3に進んで、制御すべき上記パン羽根駆動モーターMの目標回転数を上記最高目標回転数350rpmから最低目標回転数250rpmに下げてパン羽根駆動モーターMを回転駆動するとともに、上記パンケース冷却用のファン20をも駆動することによって、効果的にパン生地の温度を低下させ、最終的に検出されるパン生地の温度が上述のような発酵上の問題のない所定の上限基準温度20℃よりも低くなるように制御する。
そして、これらステップS2,S3の制御は、当該「こね工程4−1」の予め設定されている一定の工程時間t4が経過するまでなされる。
このように、当該「こね工程4−1」における最適なパン生地温度(こねあげ温度)19℃以下を設定し、常に同目標設定温度になるように、実際に検出されるパン生地の温度が同目標設定温度よりも低ければパン羽根駆動モーターMの回転数を上げるとともに電気ヒーターHを駆動し、逆に高ければパン羽根駆動モーターMの回転数を下げるとともにパンケース冷却用のファン20を駆動し、実際に検出されるパン生地の温度が常に同目標設定温度に維持されるように制御すると、当該「こね工程4−1」における「こね上げ温度」が当該「こね工程4−1」に適した一定の「こねあげ温度」でこね上げられるようになり、その後の発酵工程の進行状況も安定し、焼き上げられたパンの仕上がり状態も一定する。
そして、所定の周期ごとにステップS4で同予め定められた一定の工程時間t4の経過を判定し、同予め定められた一定の工程時間t4の経過が判定されると、当該「こね工程4−1」におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御、電気ヒーターHの駆動制御、冷却用ファン20の駆動制御を終えて、次に「こね工程4−2」に進む。
「こね工程4−2」に入ると、まず上述の場合と同様に、容器温度センサー49によりパンケース3の温度、すなわちパンケース3内のパン生地の温度を検出し、入力する。
そして、ステップS1で同検出された実際のパン生地の温度が当該「こね工程4−2」の目標温度範囲内の所定の上限基準温度25℃以上となっているか否かを判定する。その結果、Noの実際に検出されたパン生地の温度が同「こね工程4−1」における所定の上限基準温度25℃よりも低い場合には、ステップS2に進んで、制御すべきパン羽根駆動モーターMの目標回転数を予め設定されている当該「こね工程4−2」に対応した最高目標回転数350rpmに設定してパン羽根モーターMを回転駆動するとともに、電気ヒーターHをONにして、こね作業を実行する。これにより、パン生地の温度は速やかに上昇し、実際に検出されるパン生地の温度が当該「こね工程4−2」における目標温度に収束される。
他方、YESの実際に検出されたパン生地の温度が上記所定の上限基準温度25℃以上となっており、そのままでは上述のような発酵上の問題がある場合には、ステップS3に進んで、制御すべき上記パン羽根駆動モーターMの目標回転数を上記最高目標回転数350rpmから最低目標回転数250rpmに下げてパン羽根駆動モーターMを回転駆動するとともに、上記パンケース冷却用のファン20をも駆動することによって、効果的にパン生地の温度を低下させ、最終的に検出されるパン生地の温度が上述のような発酵上の問題のない所定の上限基準温度25℃よりも低くなるように制御する。
そして、これらステップS2,S3の制御は、当該「こね工程4−2」の予め設定されている一定の工程時間t5が経過するまでなされる。
このように、当該「こね工程4−2」における最適なパン生地温度(こねあげ温度)24℃以下を設定し、常に同目標設定温度になるように、実際に検出されるパン生地の温度が同目標設定温度よりも低ければパン羽根駆動モーターMの回転数を上げるとともに電気ヒーターHを駆動し、逆に高ければパン羽根駆動モーターMの回転数を下げるとともにパンケース冷却用のファン20を駆動し、実際に検出されるパン生地の温度が常に同目標設定温度に維持されるように制御すると、当該「こね工程4−2」におけるこね上げ温度が当該「こね工程4−2」に適した一定の「こねあげ温度」でこね上げられるようになり、その後の発酵工程の進行状況も安定し、焼き上げられたパンの仕上がり状態も一定する。
そして、所定の周期ごとにステップS4で同予め定められた一定の工程時間t5の経過を判定し、同予め定められた一定の工程時間t5の経過が判定されると、当該「こね工程4−2」におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御、電気ヒーターHの駆動制御、冷却用ファン20の駆動制御を終えて、次に「こね工程4−3」に進む。
「こね工程4−3」に入ると、やはり上述の場合同様に容器温度センサー49によりパンケース3の温度、すなわちパンケース3内のパン生地の温度を検出し、入力する。
そして、まずステップS9で、同検出された実際のパン生地の温度が当該「こね工程4−3」の目標温度範囲内の所定の上限基準温度28℃以上となっているか否かを判定する。その結果、Noの実際に検出されたパン生地の温度が同「こね工程4−3」における所定の上限基準温度28℃よりも低い場合には、ステップS10に進んで、制御すべきパン羽根駆動モーターMの目標回転数を予め設定されている当該「こね工程4−3」に対応した最高目標回転数350rpmに設定してパン羽根モーターMを回転駆動するとともに、電気ヒーターHをONにして、こね作業を実行する。これにより、パン生地の温度は速やかに上昇し、実際に検出されるパン生地の温度が当該「こね工程4−3」における目標温度に収束される。
他方、YESの実際に検出されたパン生地の温度が上記所定の上限基準温度28℃以上となっており、そのままでは上述のような発酵上の問題がある場合には、ステップS11に進んで、制御すべき上記パン羽根駆動モーターMの目標回転数を上記最高目標回転数350rpmから最低目標回転数250rpmに下げてパン羽根駆動モーターMを回転駆動するとともに、合わせて上記パンケース冷却用のファン20をも駆動することによって、効果的にパン生地の温度を低下させ、最終的に検出されるパン生地の温度が上述のような発酵上の問題のない所定の上限基準温度28℃を超えないように制御する。
そして、これらステップS10、S11の制御は、当該「こね工程4−3」の予め設定されている一定の工程時間t6が経過するまでなされる。
このように、当該「こね工程4−3」における最適なパン生地温度(こねあげ温度)27℃以下を設定し、常に同目標設定温度になるように、実際に検出されるパン生地の温度が同目標設定温度よりも低ければパン羽根駆動モーターMの回転数を上げるとともに電気ヒーターHを駆動し、逆に高ければパン羽根駆動モーターMの回転数を下げるとともにパンケース冷却用のファン20を駆動し、実際に検出されるパン生地の温度が常に同目標設定温度27℃以下に維持されるように制御すると、当該「こね工程4−3」におけるこね上げ温度が当該「こね工程4−3」に適した一定の「こねあげ温度」でこね上げられるようになり、その後の発酵工程の進行状況も安定し、焼き上げられたパンの仕上がり状態も一定する。
そして、所定の周期ごとにステップS12で同予め定められた一定の工程時間t6の経過を判定し、同予め定められた一定の工程時間t6の経過が判定されると、当該「こね工程4−3」におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御、電気ヒーターHの駆動制御、冷却用ファン20の駆動制御、電気ヒーターHの駆動制御を終える。
<パン生地こね工程におけるパン羽根駆動モーターの回転数制御の第5の形態(第4の発展形態)>
上述の各実施の形態のように、この出願の発明のパン焼き器の特徴である容器温度センサー49を用いて、直接パンケース3の温度、すなわちパン生地の温度を検出し、それをパラメーターとして、上記パン羽根駆動モーターの回転数を制御し、また、それに電気ヒーターHや冷却用ファン20の制御を組み合わせるようにすると、こね作業の進展に応じたこね工程個々の適切な「こね上げ温度」を実現することができ、以後の適切な発酵工程を実現することができるようになる。
そして、その場合において、上記容器温度センサ−49によって検出されるパン生地の温度は、当然ながら初期室温の影響も受けたものであるが、よく検討してみると、こね工程が始まってからも室温自体は継時的に変化しやすい。したがって、可能ならば各こね工程ごとに室温を検出し、それを上述したパン羽根駆動モーターMの回転数制御に反映させることが好ましい。特に、この出願の発明の実施の形態に係るパン焼き器では、上述のように室温センサ86が設けられているので、室温の検出は容易である。
そこで、この出願の発明の実施の形態に係るパン焼き器では、パン生地こね工程におけるパン羽根駆動モーターの回転数制御の第5の形態(第4の発展形態)として、特に図示はしないものの、上述の図15の制御フロー、図16の制御フロー、図19の制御フローのパン羽根駆動モーターMの回転数制御要素として、当該室温センサー86により検出された室温をも組み合わせたものを構成する。
このような構成を採用すると、高室温時の温度上昇によるパン生地の過発酵を防止し、また低室温時の昇温不足によるパン生地のこね不足、発酵不足を解消することができ、美味しいパンを焼き上げることができる。
<パン生地こね工程におけるパン羽根駆動モーターMの回転数制御の第6の形態(第5の発展形態)>
もちろん、上記室温センサ−86を用いたパン羽根駆動モーターの回転数制御は、上述のように必ずしもパン生地温度の検出による制御と組み合わせなければならないものではなく、室温その物を制御パラメータとして、パン羽根駆動モーターの回転数を制御するようにしても良いことは言うまでもない。
<この出願の発明の実施の形態におけるパン生地こね工程制御の作用と効果>
以上のように、この出願の発明の実施の形態の構成では、調理容器と、該調理容器内の調理物を回転させる調理物回転手段と、上記調理容器を加熱する加熱手段と、該加熱手段の加熱状態を制御する加熱制御手段と、上記調理物回転手段の回転状態を制御する回転制御手段とを備えてなる回転加熱型調理器であって、上記回転制御手段は、上記調理物回転手段の回転数を連続的に可変制御するように構成されていることを特徴としている。
パン生地のこねメニューのような調理物の回転数が調理物の温度を左右するような調理メニューにおいて、調理工程が進行すると、最初は温度が低かった調理物の温度も高まり、その時の回転数に応じた温度の変化幅も次第に大きくなってくる。したがって、そのまま同じ回転数での回転制御を続けたのでは、その時の調理工程に応じた適切な調理物温度を実現することができず、良好な調理ができなくなる。
そこで、この出願の発明の実施の形態の構成では、そのような場合、当該調理工程に応じた適切な設定温度が実現されるように、調理物回転手段の回転状態を制御する回転制御手段を、調理物回転手段の回転数を連続的に可変制御できるように構成することによって、調理物の温度が高いときには調理物回転手段の回転数を下げて調理物の温度を設定温度まで低下させ、また調理物の温度が低いときには調理物回転手段の回転数を上げて調理物の温度を設定温度まで上げる。
このような構成および作用によると、調理物の温度が、その時の調理工程において適切温度に維持されるようになり、常に調理物の良好な仕上がり状態を実現することができるようになる。
特に、この出願の発明の実施の形態の構成では、その場合において、調理物の温度を検出する調理物温度検出センサを設け、該調理物温度検出センサによって調理物の温度を検出しながら調理物の温度が当該調理工程における所定の設定温度になるように調理物回転手段の回転数を制御するようにしたことを特徴としている。
このような構成によると、パン生地のこね工程における所定の調理工程等、少なくとも調理物の温度コントロールが必要な調理工程において、常に調理物の温度を正確に監視しながら、当該調理工程において適切とされる目標調理物温度に維持することができるようになり、調理物の仕上がり状態が良好となる。
この出願の発明の実施の形態の構成では、以上の構成において、さらに周囲の室温を検出する室温検出センサを設け、該室温検出センサによって検出された室温に応じて調理物回転手段の回転数を制御するようにしたことを特徴としている。
このような構成によると、パン生地のこね工程における所定の調理工程等、少なくとも調理物の温度コントロールが必要な所定の調理工程において、常に調理物の温度を正確に監視しながら、当該調理工程において適切とされる目標調理物温度に維持することができるようになり、調理物の仕上がり状態が良好となる。
また、この出願の発明の実施の形態の構成では、上記調理物温度検出センサにより検出された調理物の温度が所定の設定温度よりも高いとき又は室温検出センサにより検出された室温が所定の設定温度よりも高いときには、調理物回転手段の回転数を下げて調理物の温度を低下させる一方、調理物温度検出センサにより検出された調理物の温度が所定の設定温度よりも低いとき又は室温検出センサにより検出された室温が所定の温度よりも低いときには、調理物回転手段の回転数を上げて調理物の温度を上げるようにしたことを特徴としている。
このような構成によると、パン生地のこね工程等の所定の調理工程における調理物の温度が、その時の調理物自体の温度又は該調理物の温度に影響を与えるその時の室温をも考慮したうえで、その調理工程において適切とされる設定温度に維持されるようになり、常に調理物の良好な仕上がり状態を実現することができるようになる。
また、この出願の発明の実施の形態の構成では、上記の構成において、所定の調理工程から次の調理工程に移行した場合において、移行した調理工程がそれまでとは調理作業の内容を異にする調理工程である場合には、調理物回転手段の回転を止めるか、又は回転数を下げるようにしたことを特徴としている。
このような構成によると、当該移行した調理工程が、少なくともそれまでとは調理作業の内容を異にする調理工程である場合、たとえば、それまでの調理工程がパン生地のこね工程であり、次に移行した工程が当該パン生地に対する具材の投入工程であるような場合、当該具材投入工程では、調理物の回転を止めるか、又は緩やかな遅い回転状態として、投入された具材の飛び散りを防止し、確実に具材が混入されるようにする。
以上の結果、この出願の発明の実施の形態の構成によると、回転加熱型の調理器におけるパン生地のこね調理等、調理物の回転数が調理物の温度を左右するような調理メニューの調理工程において、常に調理物の温度を調理に適切な温度に維持することができるようになり、調理物の仕上がり状態を非常に良好なレベルのものとすることができる。