本発明に係る制御システムの実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下に説明する実施形態では、車両の走行駆動源として、エンジンと電動モータとを有するハイブリッド車両に搭載される各種の車載機器に対して、本発明による制御システムを適用した例について説明する。しかしながら、本発明による制御システムは、ハイブリッド車両における車載機器の制御に適用されるばかりでなく、エンジンのみを有する通常の車両や、電動モータのみを有する電動車両の各種の車載機器の制御に適用されても良い。また、便宜上、ドメイン分けをして説明しているが、このドメイン分けは制御システムの制御構造に密接に関係するため、必ずしも以下に説明する例と同一のドメイン分けを行う必要なく、適宜、最適なドメイン分けを行えば良い。
図1は、上述したハイブリッド車両における各種の車載機器のための制御システム10が有する各種機能の一例を機能ブロック図として表したものである。ただし、図1には、制御システム10が有する機能の全てが示されている訳ではない。これは、説明の便宜のため、図1には、本実施形態に係る制御システム10の特徴を説明するために必要な構成の一例しか示していないためである。
図1において、制御システム10は、車載機器としてのエンジン31、モータジェネレータ(MG)32、高圧バッテリ33、エアコン装置34、シートヒータ35、ブレーキ装置36、ステアリング装置37を制御するための機能を有する。なお、上述したように、制御システム10は、さらに、トランスミッション、サスペンション、車室内照明などの他の車載機器を制御するための機能を有していても良い。
図1に示すように、制御システム10は、各種の車載機器31〜37を制御するための機能が予め複数の論理ブロック(機能ブロック)20〜30に区分けされ、それら複数の論理ブロック20〜30間の連結関係を規定することによって構成されている。すなわち、制御システム10における各種の車載機器31〜37を制御するための論理構造が、論理ブロック20〜30と、それら論理ブロック20〜30間の連結関係によって規定されている。そして、制御システム10は、複数の論理ブロック20〜30が、規定された連結関係に従って連携して動作することにより、各種の車載機器31〜37を制御する。
本実施形態に係る制御システム10では、各車載機器31〜37の役割(機能)に応じて、複数のドメインに区分けされ、それら各ドメインにおいて、それぞれ、車載機器31〜37を制御するための機器制御部24〜30と、機器制御部24〜30を統括するドメイン制御部21〜23とに階層化されている。
具体的には、図1に示す例では、エンジン31及びMG32が、車両を加速させたり、減速させたり、あるいは速度を一定に保つための動力を車両に作用させる役割を担う。また、高圧バッテリ33が、MG32に駆動電力を供給したり、MG32によって発電された電力を蓄電したりする役割を担う。このため、これらの車載機器31〜33は、車両の走行エネルギーに関するものとしてエネルギードメインに区分けされる。このエネルギードメインには、機器制御部として、エンジン31を制御するエンジン制御部(EMS制御部)24、MG32を制御するMG制御部25、高圧バッテリ33を制御するバッテリ制御部26が設けられている。さらに、EMS制御部24、MG制御部25、バッテリ制御部26の制御を統括するドメイン制御部として、エネルギードメイン制御部21が設けられている。
また、車室内の空調を行うエアコン装置34やシートヒータ35などは車室内の環境を調節する役割を担うため、これらの車載機器34、35はボデードメインに区分けされる。このボデードメインには、機器制御部として、エアコン装置34を制御するエアコン制御部27、シートヒータ35を制御するシートヒータ制御部28が設けられ、ドメイン制御部として、ボデードメイン制御部22が設けられている。さらに、ブレーキ装置36やステアリング装置37などは、車両の挙動の安定化や車両の進行方向を決定する役割を担うため、これらの車載機器36、37は運動ドメインに区分けされる。この運動ドメインには、機器制御部として、ブレーキ装置36を制御するブレーキ制御部29、ステアリング装置37を制御するステアリング制御部30が設けられ、ドメイン制御部として、運動ドメイン制御部23が設けられている。
さらに、制御システム10は、上記の各ドメイン制御部21〜23による制御を連携、協調させるための統合制御部20を備えている。この統合制御部20は、ドメイン間で連携する制御を担うものであり、必ずしも独立して存在せず、緊密性が高いドメインに一体化して存在しても良い。
なお、制御システム10は、実際には、各論理ブロック20〜30を、プログラムやデータベースとして、電子制御装置(ECU)に実装することにより具現化される。この際、論理ブロック20〜30間の連結関係(上下関係)が維持できる限り、各論理ブロック20〜30を実装する電子制御装置の数は任意である。ただし、少なくとも各ドメインごとに、論理ブロック20〜30を実装する電子制御装置を異ならせることが好ましい。
次に、図1に論理ブロック20〜30として例示した、制御システム10が有する各種の機能について詳しく説明する。
制御システム10には、各論理ブロック20〜30が所与の機能を発揮するために必要な種々の情報が入力される。例えば、図示しない各種のセンサによって、ハイブリッド車両の運転のため、運転者によって操作される各種の操作部(アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイールなど)の操作が検出され、その操作検出信号が制御システム10に入力される。また、車両の走行状態(例えば、速度、加速度、ヨーレートなど)や、各種の車載機器の動作状態(例えば、エンジン回転数、モータ回転数、ブレーキ油圧、操舵角など)を検出するセンサからの動作検出信号も、制御システム10に入力される。
その他にも、スポーツモード、エコモード、ノーマルモードから車両の走行モードを選択するためのスイッチからの信号や、エアコン装置34などの車載機器を操作するためのスイッチからの信号も、制御システム10に入力される。
さらに、本実施形態による制御システム10は、例えばアダプティブクルーズコントロールや、レーンキープアシストコントロールなどの半自動運転や、車両の周囲の状況をカメラ等により認識して、交通規制の遵守及び障害物の回避などを行いつつ、地図データに基づき、車両を目的地に到達させる完全自動運転を行うことが可能なものである。そのため、自動運転と手動運転との選択スイッチが設けられており、その選択スイッチからの信号も制御システム10に入力される。
上述した各種の信号は、制御システム10の統合制御部20や各ドメイン制御部21〜23に与えられる。例えば、エネルギードメイン制御部21には、アクセルペダル及びシフトレバーの操作検出信号の他、エンジン31やMG32の動作状態を検出する動作検出信号が与えられる。そして、エネルギードメイン制御部21は、それら操作検出信号及び動作検出信号に基づいて、車両を加速させたり、車速を維持させたりするための、車両全体としての必要駆動トルクを算出する。そして、エネルギードメイン制御部21は、車両全体の必要駆動トルクからエンジン31及びMG32が分担すべき駆動トルクを算出して、EMS制御部24及びMG制御部25に出力する。また、エネルギードメイン制御部21は、車両の減速時等において、MG32が発生すべき回生電力量を定め、MG制御部25に出力する。この際、エネルギードメイン制御部21は、MG32による回生ブレーキでは、必要な制動トルクが得られない場合、その不足する制動トルクの発生を運動ドメイン制御部23に指示する。すると、運動ドメイン制御部23は、ブレーキ制御部29を介してブレーキ装置36を作動させ、不足制動トルクを発生させる。なお、このような回生ブレーキと機械ブレーキとの連携制御は、統合制御部20において指揮されても良い。
EMS制御部24は、エネルギードメイン制御部21から出力された目標エンジントルクを達成するために必要な制御信号をエンジン31に出力する。より詳細には、EMS制御部24は、エンジン31の運転状態を検出する各種のセンサ(回転数、温度、空気流量等)からのセンサ信号を入力する。そして、センサ信号から把握されるエンジンの運転状態から現状の発生トルクを算出する。そして、EMS制御部24は、目標エンジントルクとの差分のトルクを増減するためのエンジン運転状態を算出する。EMS制御部24は、算出したエンジン運転状態を達成するための燃料噴射量と燃料噴射時期、及び点火時期を算出し、これらに応じた噴射制御信号及び点火制御信号をエンジン31に出力する。
MG制御部25も、エネルギードメイン制御部21から出力された目標MGトルクを実現するための制御信号をMG32に出力する。例えば、MG制御部25は、MG32が発生する駆動トルクによりエンジントルクをアシストする場合、MG32が目標MGトルクを発生するように、例えばベクトル制御によりMG32の各ステータコイルへの通電電流を制御する。また、MG制御部25は、回生ブレーキ時には、エネルギードメイン制御部21において定められた回生電力量が得られるように、MG32のインバータを制御する。
バッテリ制御部26は、複数のセルからなる高圧バッテリ33に対し、各セルの充電量が均一となるように均等化処理を行ったり、高圧バッテリ33の充電率(SOC)を算出したり、図示しない冷却ファンなどを用いて高圧バッテリ33の温度管理を行ったりする。
なお、高圧バッテリ33は、外部充電設備によって充電可能なものであり、高圧バッテリ33が外部充電設備によって充電されるとき、バッテリ制御部26は、高圧バッテリ33が過充電状態に陥らないように、高圧バッテリ33の充電状態を監視し、必要に応じて、充電の停止処理なども実行する。
ボデードメイン制御部22には、車両のメインスイッチ信号、エアコン装置34の操作信号、シートヒータ35の操作信号、乗員検出信号の他、車室内外の温度検出信号、日射量の検出信号、シートの温度検出信号などが与えられる。そして、車両に乗員が乗車しており、エアコン装置34やシートヒータ35などの操作信号が検出された場合には、その操作信号や各種の検出信号に基づいて、車室内環境を、車両の乗員によって指示された環境に一致させるべく、エアコン装置34やシートヒータ35などを制御する際の目標状態を示す目標信号を生成し、エアコン制御部27及びシートヒータ制御部28に出力する。
エアコン制御部27は、ボデードメイン制御部22からの目標信号に基づき、エアコン装置34のファンの回転数や、エアミックスドアの開度を制御することにより、目標状態に近づくように車室内の温度や湿度を制御する。また、シートヒータ制御部28は、ボデードメイン制御部22からの目標信号に基づき、シートに内蔵されたヒータ35への通電電流を制御することによりシート温度を制御する。
運動ドメイン制御部23には、自動運転と手動運転との選択スイッチからの信号の他、車両の周囲の状況を検出するための検出信号などが与えられる。そして、運動ドメイン制御部23は、自動運転が選択された場合、検出された車両周囲の状況に応じて、速度の調節や、進行方向の制御を行うべく、ブレーキ制御部29及びステアリング制御部30に制御信号を出力する。さらに、運動ドメイン制御部23は、速度の調節を行う場合には、その速度調節に関する情報をエネルギードメイン制御部21にも与えることにより、車両に発生する駆動力の調節を指示する。このようにして、運動ドメイン制御部23は、必要に応じて、ブレーキ制御と、エンジン制御及びモータ制御を連携させる。また、運動ドメイン制御部23は、手動運転が選択された場合、原則として、車両の運転操作に従って、操舵や制動が行われるように、ブレーキ制御部29及びステアリング制御部30に制御信号を出力する。
ブレーキ制御部29は、運動ドメイン制御部23から出力された制御信号に従い、ブレーキ装置36の動作を制御する。また、ステアリング制御部30も、運動ドメイン制御部23から出力された制御信号に従い、ステアリング装置37の動作を制御する。
ここで、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、及び機器制御部24〜30の内部論理構造の一例について説明する。なお、以下においては、制御システム10により車両の自動運転を行う例について説明する。
図2は、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜30、及び機器制御部24〜30が実装されるECUにおける、階層化された内部論理構造を示している。図2に示すように、統合制御部20は、指針層20a、制約層20b、及びシステム動作層20cの3層に階層化される。なお、統合制御部20に機器挙動層が設けられない理由は、統合制御部20が直接的に制御の実行責任を担う車載機器が、統合制御部20に割り当てられていないためである。もし、そのような車載機器が統合制御部20に割り当てられた場合、統合制御部20は機器挙動層20dを持ち、その機器挙動層20dにおいて、車載機器に出力する制御信号を生成する。
図3は、統合制御部20の指針層20a、制約層20b、及びシステム動作層20cのそれぞれの状態設定の一例を示している。まず、指針層20aは、制御システム全体の制御指針として予め複数の制御指針が定められており、その複数の制御指針の中から1つの制御指針を選択して、制御システム全体の制御指針を設定する。
図3に示す例では、統合制御部20の制御指針として「快適優先」、「燃費優先」、「走行優先」の3つが予め定められている。指針層20aは、例えば、車両の走行モード(スポーツモード、エコモード、ノーマルモード)を選択するためのスイッチからの信号に基づいて、いずれかの制御指針を選択する。なお、スポーツモードが選択された場合、制御指針は「走行優先」となり、エコモードが選択された場合、制御指針は「燃費優先」となり、ノーマルモードが選択された場合、制御指針は「快適優先」となる。ただし、制御指針は、これら例示の制御指針に限られるものではなく、別の制御指針を追加したり、別の制御指針で置き換えたりすることも可能である。この点は、後述するドメイン制御部21〜23、及び機器制御部24〜30も同様である。
次に、制約層20bについて説明する。制約層20bは、下位層となるシステム動作層20cにおけるシステム制御モードの設定、及び/又は設定されたシステム制御モードによる制御内容に対して制約条件を設定する。
例えば、図3に示す例では、制御指針として「燃費優先」が選択された場合に、制約層20bは、「加減速度制限」、「電力生成燃料最小化」、「熱生成燃料最小化」の3つの制約条件の中から1つの制約条件を選択して設定する。例えば、「加減速度制限」が選択されると、車両の最大加速度や最大減速度が、それぞれ所定値以下に制限される。また、「電力生成燃料最小化」が選択されると、エンジン31における燃料消費を極力少なくするため、MG32による駆動トルクの発生及び電力回生をより積極的に行うように制約を課す。例えば、回生ブレーキの作動条件を緩和し、回生ブレーキにより回生電力が得られやすくする。同時に、MG32による作動領域を拡大して、MG32の作動比率を高める。「熱生成燃料最小化」が選択されると、熱エネルギーを発生するためにエンジン31にて消費される燃料が極力少なくなるよう制約を課す。具体的には、例えば、エアコン装置34がエンジン31によって駆動されるコンプレッサを使用する場合には、コンプレッサの駆動を禁止したり、制限したりする。あるいは、エアコン装置34が電動コンプレッサを使用する場合には、その電動コンプレッサによる電力消費を禁止したり、制限したりする。
上記の例において、制約層20bが、いずれの制約条件を課すかは、高圧バッテリ33のSOCや、エアコン装置34の動作状態に基づいて決定することができる。例えば、制約層20bは、高圧バッテリ33のSOCが下限値に近い場合には、MG32によって発生可能な駆動トルクが制限されるので、燃料消費を抑制するための制約条件として、「加減速度制限」を選択する。一方、高圧バッテリ33のSOCが十分に高い場合には、制約層20bは、MG32によるトルクアシストを積極的に活用して燃料消費の抑制を図るべく、「電力生成燃料最小化」を選択する。また、制約層20bは、エアコン装置34がオフされていたり、コンプレッサを低能力で駆動可能であったりする場合には、「熱生成燃料最小化」を選択する。
次に、システム動作層20cについて説明する、システム動作層20cには、制御指針及び制約条件毎に、選択可能なシステムの制御モードとして複数のシステム制御モードが予め定められている。システム動作層20cは、指針層20aにて設定された制御指針及び制約層20bにて設定された制約条件の下で選択可能な複数のシステム制御モードの中から、車両の走行環境や走行状態、車載機器の動作状態などに応じて、1つのシステム制御モードを選択して、システムの制御モードを設定する。
例えば、図3に示す例では、制御指針として「燃費優先」が選択され、かつ制約条件として「加減速度制限」が選択された場合に、システム動作層20cは、「経路予測制御」、「目的地変更過渡制御」、「経路変更対応制御」の3つのシステム制御モードの中から1つのシステム制御モードを選択して設定する。
「経路予測制御」は、車両が目的地に達するまでの走行予想経路を算出し、その算出した走行予想経路において、車両にて消費される、もしくは生成されるエネルギーを予測しつつ、消費されるエネルギーと生成されるエネルギーとの差が極力小さくなるように、エンジン31、MG32などの制御状態を定める制御モードである。「目的地変更過渡制御」は、車両の乗員によって、途中で目的地が変更された場合に、新たな目的地への走行予想経路を算出し、その走行予想経路に基づいて、消費されるエネルギーと生成されるエネルギーとの差が極力小さくなるように、エンジン31、MG32などの制御状態を定める制御モードである。「経路変更対応制御」も、例えば走行予想経路が工事などで走行できない場合や渋滞で混雑している場合に、当初の走行予想経路から別の走行予想経路に変更するとともに、その変更後の走行予想経路に基づいて、消費されるエネルギーと生成されるエネルギーとの差が極力小さくなるように、エンジン31、MG32などの制御状態を定める制御モードである。
なお、図3では、「燃費優先」の制御指針の下で選択される制約条件、「加減速度制限」の制約条件の下で選択されるシステム制御モードの一例を示した。しかし、他の制御指針が選択された場合、選択対象となる制約条件は、異なることもあるし、同じであることもある。同様に、制約条件が異なる場合であっても、選択対象となるシステム制御モードが、異なることもあるし、同じであることもある。これは、以下に説明するドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜30の場合も同様である。
次に、各ドメイン制御部21〜23の内部論理構造について説明する。なお、各ドメイン制御部21〜23は、同様の内部論理構造を有しているため、以下においては、エネルギードメイン制御部21を代表例として説明する。
エネルギードメイン制御部21は、図4に示すように、指針層21a、制約層21b、システム動作層21c、及び機器挙動層21dの4層に階層化されている。図4は、エネルギードメイン制御部21の指針層21a、制約層21b、システム動作層21c、及び機器挙動層21dのそれぞれの状態設定の一例を示している。
図4に示す例では、エネルギードメイン制御部21の制御指針として「所定時間内追従」、「所定距離範囲内追従」、「エネルギー変動抑制優先」の3つが予め定められている。「所定時間内追従」とは、先行車両が加速や減速などを行った場合に、その先行車両の速度変化に対して、所定時間内で追従するように制御する制御指針である。「所定距離範囲内追従」とは、先行車両が加速や減速などを行った場合に、基準とする車間距離の変化が所定距離範囲内に収まるように制御する制御指針である。「エネルギー変動抑制優先」とは、高圧バッテリ33のSOCの変動の抑制を主眼とした制御指針である。
指針層21aは、例えば、先行車両への追従が早い、普通、遅いを選択する選択スイッチからの信号に基づいて、いずれかの制御指針を選択する。なお、「先行車両への追従:早い」が選択された場合、制御指針は「所定時間内追従」となり、「先行車両への追従:普通」が選択された場合、制御指針は「所定距離範囲内追従」となり、「先行車両への追従:遅い」が選択された場合、制御指針は「エネルギー変動抑制優先」となる。
また、図3に示す例では、制御指針として「所定距離範囲内追従」が選択された場合に、制約層21bは、「目標SOC上下制約」、「目標SOC上限制約」、「目標SOC下限制約」の3つの制約条件の中から1つの制約条件を選択して設定する。この制約条件の選択は、高圧バッテリ33の状態に加え、統合制御部20の制約層20bの設定内容の影響を受ける。
「目標SOC上下限制約」が選択されると、高圧バッテリ33のSOCが通常の上限、及び下限よりも厳しく制限される。また、「目標SOC上限制約」が選択されると、高圧バッテリ33のSOCの上限のみが厳しく制限される。さらに、「目標SOC下限制約」が選択されると、高圧バッテリ33のSOCの下限のみが厳しく制限される。
さらに、図4に示す例では、制約条件として「目標SOC上下限制約」が選択された場合に、システム動作層21cは、「ENG再起動制御」、「停止制御」、「駆動/回生制御」の3つのシステム制御モードの中から1つのシステム制御モードを選択して設定する。このシステム制御モードの選択は、車両の走行状態に加え、制約層20bの場合と同様に、統合制御部20のシステム動作層20cの設定内容の影響を受ける。
「ENG再起動制御」とは、車両が停止して、エンジン31がアイドリングストップにより停止されている場合に、運転者の走行開始意図を予測して、MG32によりエンジン31の再起動を行う制御モードである。「停止制御」とは、車両が惰性走行(Coasting)可能な場合に、エンジン31及びMG32の駆動を停止させる制御モードである。「駆動/回生制御」とは、MG32の駆動トルクにより車両を発進させたり、エンジン31の発生駆動トルクをアシストしたり、MG32により回生電力を発生させたりする制御モードである。
本実施形態の制御システム10においては、エネルギードメイン制御部21は、機器制御部を介することなく、直接的に制御の実行責任を担う車載機器が割り当てられている。その車載機器は、図示しないが、エンジン31とMG32のインバータとの冷却系を統合した統合冷却装置である。統合冷却装置は、同じ冷却液がエンジン31とMG32のインバータとに循環するようにして、エンジン31の冷却系と、MG32のインバータの冷却系とを共通化したものである。統合冷却装置は、それぞれの温度調節(冷却等)の必要性に応じて、ポンプ及び流路切換弁などを用いて、冷却液がエンジン31だけを循環する状態、冷却液がインバータだけを循環する状態、及び冷却液がエンジン31及びインバータを循環する状態のいずれかに切り換え可能に構成される。
そして、エンジン31の温度調節だけが必要である場合には、エネルギードメイン制御部21の機器挙動層21dが、「WPオン、ENG冷却」の車載機器制御モードとなり、ポンプ及び流路切換弁を制御して、冷却液がエンジン31だけを循環するようにする。これにより、エンジン31の発熱温度が適切となるように、温度調節制御を行うことができる。一方、インバータの温度調節だけが必要である場合には、機器挙動層21dが、「WPオン、MG冷却」の車載機器制御モードとなり、ポンプ及び流路切換弁を制御して、冷却液がインバータだけを循環するようにする。これにより、MG32の駆動電流を調節するために動作するインバータの温度調節を適切に行うことが可能となる。さらに、エンジン31及びインバータの双方の温度調節が必要である場合には、機器挙動層21dが、「WPオン、ENG/MG冷却」の車載機器制御モードとなり、エンジン31及びインバータの双方を冷却液が循環するようにする。
このように、機器挙動層21dは、システム動作層21cにより設定されたシステム制御モードの下で選択可能な、当該システムを構成する車載機器の複数の制御モードの中から1つの車載機器制御モードを選択して設定する。さらに、機器挙動層21dは、設定した車載機器制御モードに従って車載機器を作動させるために、車載機器に対して実行する制御内容を定め、その制御内容に応じた制御信号を出力する。
なお、ドメイン制御部21〜23に対して、直接的に制御の実行責任を担う車載機器が割り当てられていない場合には、ドメイン制御部21の機器挙動層21dは省略可能である。また、統合制御部20が、機器挙動層を有していない場合には、ドメイン制御部21の機器挙動層21dは、統合制御部20の機器挙動層からの影響を受けることはない。
次に、機器制御部としてMG制御部25を例にとり、その内部論理構造を説明する。MG制御部25は、図5に示すように、指針層25a、制約層25b、システム動作層25c、及び機器挙動層25dの4層に階層化されている。図5は、MG制御部25の指針層25a、制約層25b、システム動作層25c、及び機器挙動層25dのそれぞれの状態設定の一例を示している。
図5に示す例では、MG制御部25の制御指針として「エンジン停止禁止」、「エンジン停止許可」、「エンジン起動禁止」の3つが予め定められている。指針層25aは、例えば、エンジン31の温度に基づいて、いずれかの制御指針を選択する。例えば、エンジン31の温度が所定の下限温度よりも低い場合には、エンジン31を暖気するために、「エンジン停止禁止」の制御指針を選択する。そして、エンジン31の温度が所定の下限温度以上に上昇すると、「エンジン停止許可」の制御指針を選択する。ただし、エンジン31の温度が所定の上限温度以上に上昇すると、オーバーヒートを防止するため、「エンジン起動禁止」の制御指針を選択する。
また、図5に示す例では、制御指針として「エンジン停止許可」が選択された場合に、制約層25bは、「エンジン暖気不要」、「エンジン暖気必要」、「エンジン加熱防止」の3つの制約条件の中から1つの制約条件を選択して設定する。この制約条件の選択は、エンジン31の温度に加え、上位層であるエネルギードメイン制御部21の制約層21bの設定内容の影響を受ける。
制約条件として「エンジン暖気不要」が選択されると、エンジン31の始動、停止をなんらの制限もなく行うことができる。「エンジン暖気必要」が選択されると、エンジン31の停止や、エンジン回転数が制約を受ける。「エンジン加熱防止」が選択されると、停止しているエンジン31の起動の他、エンジン31が起動中である場合には、エンジン回転数が所定回転数以下に制限される。
さらに、図5に示す例では、制約条件として「ENG暖気不要」が選択された場合に、システム動作層25cは、「所定車速以下でアイドリングストップ(IS)制御」、「車両停止でアイドリングストップ制御」、「ENG起動・連携制御」の3つのシステム制御モードの中から1つのシステム制御モードを選択して設定する。「所定車速以下でIS制御」とは、車両の走行速度が所定車速以下に低下した場合、車両が停止していなくとも、エンジン31を停止させる制御モードである。「車両停止でIS制御」とは、車両が停止してから、エンジン31も停止させる制御モードである。「ENG起動・連携制御」とは、IS制御で停止したエンジン31の起動を行うとともに、起動したエンジン31とMG32とを連携して制御する制御モードである。
例えば、エンジン31の暖気が十分になされている場合には、エンジン31の停止期間を延ばすために「所定車速以下でIS制御」が選択される。一方、エンジン31の暖気の程度が不十分である場合には、「車両停止でIS制御」が選択される。また、アイドリングストップによりエンジン31が停止しているときから、車両が減速して停止するまでは、「ENG起動・連携制御」が選択される。
さらに、図5に示す例では、システム制御モードとして「ENG起動・連携制御」が選択された場合に、機器挙動層25dは、「MGでENG再始動」、「MG休止」、「MGによる回生」、「MG駆動」の4つの車載機器制御モードの中から1つの車載機器制御モードを選択して設定する。この車載機器制御モードの選択は、主として、車両の走行状態に基づいて選択されるが、エネルギードメイン制御部21の機器挙動層21dの影響を受ける場合がある。そして、機器挙動層25dは、設定した車載機器制御モードに従いつつ、目標とする動作状態に応じた制御信号をMG32に出力する。
次に、MG制御部25が実装されるECU40の状態管理について説明する。ECU40は、図6に示すように、制約層40b、システム動作層40c、及び機器挙動層40dの3層に階層化されている。図6は、ECU40の制約層40b、システム動作層40c、及び機器挙動層40dのそれぞれの状態設定の一例を示している。なお、この状態管理は、例えばAUTOSARなどの車載ソフトウエアプラットフォームにおけるベーシックソフトウエアにより実行される。
図6に示す例では、ECU40の制約層40bにおいて、「省電力縮退許可」、「省電力縮退禁止」、「起動停止」の3つの制約条件が定められている。制約層40bは、ECU40に実装されるMG制御部25の制約層25bの設定内容の影響を受けて、いずれかの制約条件を設定する。なお、「省電力縮退許可」とは、ECU40の機能の一部を休止して、ECUにおける電力消費を低減することを許可することを意味する。この場合、ECU40は動作可能であるが、処理速度や処理能力などの性能が低下する。「省電力縮退禁止」とは、ECU40の処理能力を確保するため、ECU40の機能の一部休止を禁止することを意味する。「起動停止」とは、いわゆるスリープなど、ECU40の主要な機能を停止することを意味する。
また、図6に示す例では、制約条件として「省電力縮退許可」が選択された場合に、システム動作層40cは、「EMS単独」、「EMS‐MG連携」、「EMS−MG−BAT連携」の3つのシステム制御モードの中から1つのシステム制御モードを選択して設定する。このシステム制御モードの選択は、MG制御部25のシステム動作層25cの設定内容に基づき行われる。
「EMS単独」とは、EMS制御部24だけがエンジン31の駆動制御を実行し、MG制御部25によるMG32の駆動は休止される制御モードである。「EMS‐MG連携」とは、EMS制御部24とMG制御部25とが連携して、エンジン31及びMG32を駆動する制御モードである。「EMS‐MG‐BAT連携」とは、MG32以外に高圧バッテリ33の電力を消費する場合に、MG32にて使用可能な高圧バッテリ33のSOCを予測しつつ、EMS制御部24とMG制御部25とが連携して、エンジン31及びMG32を駆動する制御モードである。
さらに、図6に示す例では、システム制御モードとして「ENG−MG連携」が選択された場合に、機器挙動層40dは、「全制御用MPUコア作動」、「一部制御用MPUコア作動」、「他ECUの制御値流用」の3つの車載機器制御モードの中から1つの車載機器制御モードを選択して設定する。この車載機器制御モードの選択は、MG制御部25の機器挙動層25dの影響を受けて行われる。
「全制御用MPUコア作動」は、エンジン31とMG32とを連携して制御する際に、例えば目標とする制御状態を予測するための制御用MPUコアの全てを作動させる制御モードである。「一部制御用MPUコア作動」は、上記の制御用MPUコアの一部を作動させる制御モードである。「他ECUの制御値流用」は、ECU40にて、制御状態の予測を行わず、他のECUからの制御値を流用する制御モードである。これらの制御モードは、MG制御部25の機器挙動層25dにおけるMG制御のための処理内容や処理負荷に応じて選択される。
以上、図2から図6を用いて、制御システム10の統合制御部20、エネルギードメイン制御部21、MG制御部25、及びECU40の各層にて設定される制御指針や、制御モードの状態について説明した。さらに、図7に、あるタイミングにおいて、制御システム10の統合制御部20、エネルギードメイン制御部21、MG制御部25、及びECU40の各層にて設定され得る状態の一例を示す。
このような各層における状態は、図2に示すように、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜29、及びECU40において、それぞれ、指針層、制約層、システム動作層、機器挙動層の順番で、上位層の設定内容に応じて、設定されていく。さらに、図2に示すように、ドメイン制御部の制約層及びシステム動作層、機器制御部の制約層、システム動作層、及び機器挙動層、ECUのシステム動作層及び機器挙動層は、上位の制御部の隣接層での設定内容の影響を受ける。
以下に、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜29、及びECU40における、各層の設定の流れの一例を説明する。なお、ドメイン制御部21〜23に関してはエネルギードメイン制御部21、機器制御部24〜30に関してはMG制御部25を代表例として説明する。
最初に、図2に示すように、統合制御部20の指針層20a、エネルギードメイン制御部21の指針層21a、及びMG制御部25の指針層25aにおいて、それぞれの制御指針が設定される。このように、統合制御部20の指針層20a、エネルギードメイン制御部の指針層21a、及びMG制御部25の指針層25aは、相互に独立して、制御指針を設定する。
次に、統合制御部20の制約層20b、エネルギードメイン制御部21の制約層21b、MG制御部25の制約層25b、及びECU40の制約層40bの状態設定が行われる。ただし、これら制約層20b、21b、25b、40bの状態設定に関しては、統合制御部20の制約層20bの設定、エネルギードメイン制御部21の制約層21bの設定、MG制御部25の制約層25bの設定、ECU40の制約層40bの設定の順序で実施される。エネルギードメイン制御部21の制約層21bの設定は、上位の制御部の隣接層として、統合制御部20の制約層20bの設定内容の影響を受けるためである。同様に、MG制御部25の制約層25bの設定は、エネルギードメイン制御部21の制約層21bの設定内容の影響を受け、ECU40の制約層40bの設定は、MG制御部25の制約層25bの設定内容の影響を受けるためである。
例えば、統合制御部20の制約層20bにおいて、「加減速度制限」が設定された場合、エネルギードメイン制御部21の制約層21bでは、指針層21aにて設定された制御指針の下で選択可能な制約条件の中から、その「加減速度制限」に整合する選択肢を選定する。具体的には、加速度及び減速度の双方を制限する必要があるため、例えば、エネルギードメイン制御部21の制約層21bでは、「SOC上下限制約」を選定する。
その後、統合制御部20のシステム動作層20c、エネルギードメイン制御部21のシステム動作層21c、MG制御部25のシステム動作層25c、及びECU40のシステム動作層40cの状態設定に移行する。このシステム動作層20c、21c、25c、40cの状態設定においても、制約層20b、21b、25b、40bの場合と同様に、統合制御部20のシステム動作層20c、エネルギードメイン制御部21のシステム動作層21c、MG制御部25のシステム動作層25c、ECU40のシステム動作層40cの順序で状態設定が行われる。
最後に、エネルギードメイン制御部21の機器挙動層21d、MG制御部25の機器挙動層25d、及びECU40の機器挙動層40dの状態設定に移行する。この機器挙動層21d、25d、40dの状態設定においても、エネルギードメイン制御部21の機器挙動層21d、MG制御部25の機器挙動層25d、ECU40の機器挙動層40dの順序で状態設定が行われる。
上述したように、本実施形態に係る制御システム10によれば、複数の車載機器31〜37の機能に応じて予め複数のドメインに区分けしているので、車載機器の追加、変更、削除等により、車載機器構成が変更される場合であっても、その影響の及ぶ範囲を、主として、その車載機器が属するドメインの範囲に留めることができる。従って、車載機器構成が相違する場合でも、比較的容易に本実施形態の制御システム10を提供することが可能となる。
また、本実施形態に係る制御システム10では、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜30、及び各機器制御部24〜30が実装されるECUにおいて、階層化された内部論理構造を採用している。このため、上述した車載機器構成の変更の他、制御機能の改良、追加などのバージョンアップを行う場合に、制御ソフトウエアの変更が必要な範囲を容易に絞り込むことができる。
ところで、近年では、車両が市場に投入された後に、点検等のためにディーラーに持ち込まれたとき、あるいは、ディーラーに持ち込まれずとも、オンラインで、特定の制御部やECUにて、バージョンアップ用制御ソフトウエアへの更新が行われることがある。また、例えば、車両が充電設備などの外部サーバを含む外部機器と通信を行い、車両から外部機器へ所望の情報(例えば、電池残量など)を提供することが求められる場面も増えつつある。
このような場合、バージョンアップ用制御ソフトウエアの適用先となる制御部やECUを速やかに特定したり、外部機器へ提供する情報を保有している制御部等を速やかに突き止めたりするために、本実施形態に係る制御システム10は、制御システム10の構成情報を保有している。ただし、制御システム10の構成情報を、特定の制御部(例えば、統合制御部20)に集約して保有した場合、対象とする制御システムの規模が大きくなるにつれて、構成情報を保存しておくため、より大きなメモリ容量が必要になる。さらに、他のECU等にて、構成情報を参照する必要が生じる度に、情報を保有している制御部との通信が必要になり、通信負荷の増加を招く虞もある。
そこで、本実施形態では、構成情報の保有の仕方について工夫することにより、規模の大きな制御システムにおいても、構成情報を適切に管理することを可能とした。以下に、本実施形態に係る制御システム10における、構成情報の保有の仕方について詳細に説明する。
なお、本実施形態に係る制御システム10が保有する構成情報には、各制御部20〜30の制御機能に関する情報、車載機器31〜37の種類を示す情報などが含まれる。制御機能に関する情報とは、その制御機能の特徴を示すものであって、制御機能そのものの他、制御指針、制御条件、制御に用いる演算式、駆動用信号、制御学習値、制御対象となる車載機器の特性、車載機器との接続に使用するインターフェース、制御ソフトウエアのバージョンなど、制御機能に関するあらゆる情報を含む概念を示す。
本実施形態に係る制御システム10においては、まず、統合制御部20と各ドメイン制御部21〜23とのそれぞれにおいて、自身の制御機能に関する情報と、自身の下位の制御部の制御機能に関する情報とを保有するように構成される。つまり、統合制御部20は、統合制御部20の制御機能に関する情報と、自身の下位の制御部である各ドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報とを保有する。また、各ドメイン制御部21〜23は、該当するドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報と、自身の下位の制御部である同じドメインに属する機器制御部24〜30の制御機能に関する情報とを保有する。
このように、本実施形態では、複数の車載機器31〜37を制御するため、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、及び機器制御部24〜30に階層化されるような大規模な制御システム10において、その制御システム10の構成情報が、少なくとも統合制御部20とドメイン制御部21とに分散して保有される。このため、統合制御部20及び各ドメイン制御部21〜23について、個別に見れば、構成情報を保存しておくためのメモリ容量は少なくて済む。
また、本実施形態に係る制御システム10では、統合制御部20とドメイン制御部21〜23とに分散して保有される構成情報は、自身の制御機能に関する情報と、自身の下位の制御部の制御機能に関する情報とを含んでいる。このため、例えば、必要な情報が、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜30のいずれの制御部に保有されているか、あるいは、いずれの機器制御部が特定の制御を実行するかなどを確認する必要が生じた場合に、上位の制御部から、それぞれが保有している構成情報を参照することにより該当する制御部を特定することが可能になる。
例えば、充電設備の外部サーバから、充電残量の問い合わせがあった場合、統合制御部20が、保有している構成情報の内、エネルギードメイン制御部21の制御機能に関する情報を参照することにより、エネルギードメイン内のいずれかの制御部が、充電残量情報を保有していると判別することができる。この場合、統合制御部20は、エネルギードメインを確認対象ドメインに設定し、エネルギードメイン制御部21に、充電残量の問い合わせを行う。
エネルギードメイン制御部21は、保有している構成情報を参照することにより、バッテリ制御部26が、問い合わせのあった充電残量に関する情報を保有していることが判る。すなわち、バッテリ制御部26を、情報保有制御部として特定する。この場合、エネルギードメイン制御部21は、充電残量をバッテリ制御部26に問い合わせし、バッテリ制御部26から充電残量を示す情報(例えば、SOC)を取得する。
このように、機器制御部24〜30が所望の情報を保有している場合、統合制御部20は、下位のドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報を参照することで、該当する機器制御部が属するドメインを判別することができる。さらに、ドメイン制御部21〜23は、下位の機器制御部の制御機能に関する情報を参照することで、所望の情報を保有している該当の機器制御部を特定することが可能になる。
さらに、本実施形態に係る制御システム10では、機器制御部24〜30も、制御システム10の構成情報として、自身の制御機能に関する情報と、制御対象である車載機器31〜37の種類を示す情報とを保有している。これにより、車載機器の種類に関する問い合わせがあった場合にも、その問い合わせに応じることが可能になる。
図8は、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、及び機器制御部24〜30が、それぞれ保有する構成情報の一例を示している。上述したように、本実施形態に係る制御システム10では、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜30、及び機器制御部24〜30が実装されるECUの内部論理構造が、それぞれ、指針層、制約層、システム動作層、及び機器挙動層に階層化されている。このため、本実施形態に係る制御システム10では、内部論理構造の各階層に対応した「指針」、「制約」、「システム動作」、及び「機器挙動」を一方の軸とし、制御システム10の各階層に対応した「統合制御部」、「ドメイン制御部」、「機器制御部」、及び「ECU」を他方の軸とした2次元テーブルを想定し、その2次元テーブルにおいて、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜30が保有すべき構成情報を定めている。
すなわち、図8に示す例では、統合制御部20は、統合制御部20の制御指針及び各ドメイン制御部21〜23の制御指針を構成情報として保有している。また、各ドメイン制御部21〜23は、該当するドメイン制御部21〜23の制御制約及びシステム動作情報と、同じドメインに属する機器制御部24〜30の制御制約及びシステム動作情報を構成情報として保有している。さらに、各機器制御部24〜30は、該当する機器制御部24〜30のシステム動作情報及び機器挙動情報と、実装されるECUのシステム動作情報及び機器挙動情報を構成情報として保有している。
ただし、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、及び機器制御部24〜30が、それぞれ保有する構成情報は、図2に示す内部論理構造における各層の状態設定と1対1に対応している必要はない。つまり、本実施形態では、制御システム10が、図2に示す内部論理構造を有しているので、同様の構造を有する図8の2次元テーブルをベースとして、構成情報を定めただけであり、その内容まで完全に一致している必要はない。
例えば、機器制御部であるバッテリ制御部26が保有する構成情報の一部を図9に示し、MG制御部25が保有する構成情報の一部を図10に示す。図9に示されるように、バッテリ制御部26は、ECUの機器挙動情報として、バッテリの種類を保有している。また、図10に示されるように、MG制御部25は、ECUの機器挙動情報として、制御対象機器がISG(Integrated starter generator)であることを保有している。これらは、図2に示す内部論理構造には含まれない情報であり、構成情報として独自の情報である。
要するに、統合制御部20及びドメイン制御部21〜23は、構成情報として、自身の制御機能に関する情報と、下位の制御部の制御機能に関する情報とを保有していれば良く、その構成情報の内容に関しては任意に定めることができる。また、機器制御部24〜30は、構成情報として、自身の制御機能に関する情報と、制御対象である車載機器31〜37の種類を示す情報を保有していればよく、その構成情報における自身の制御機能に関する情報は任意に定めることができる。
例えば、図8には、統合制御部20が、統合制御部20及びドメイン制御部21の制御指針を、それぞれの制御機能に関する情報として保有する例を示したが、統合制御部20及びドメイン制御部21のシステム動作情報も、制御機能に関する情報に含めて保有するようにしても良い。あるいは、図8のような2次元テーブルをベースとすることなく、統合制御部20は、統合制御部20及びドメイン制御部21の制御機能を端的に示す情報を、構成情報として保有するようにしても良い。これは、ドメイン制御部21〜23及び機器制御部24〜30に関しても同様である。
ところで、本実施形態に係る制御システム10において、例えば、機器制御部の制御機能をより高度なものとしたり、機器制御部に新たな制御機能を追加したりするために、機器制御部の制御ソフトウエアをバージョンアップ版に更新する場合がある。このような場合、機器制御部が保有する構成情報については、高度化された、もしくは新規に追加された機能を反映した新たな構成情報が用意される。そして、機器制御部において制御ソフトウエアが更新されるときに、同時に、構成情報も書き換えられる。
しかしながら、上述したように、機器制御部の上位のドメイン制御部も、構成情報として、機器制御部の制御機能に関する情報を保有している。そのため、機器制御部の制御機能が更新されたり、新たな機能が追加されたりした場合、ドメイン制御部が保有する、機器制御部の制御機能に関する情報も更新することが好ましい。ただし、ドメイン制御部が、構成情報として、学習値を保有している場合、単に従前の構成情報を、新たな構成情報に置き換えるだけでは、それまでに学習した学習値を引き継ぐことができなくなってしまう。そのため、機器制御部の制御機能の更新、追加に応じた、ドメイン制御部が保有する構成情報の好ましい更新の手法を、図11及び図12に基づいて、以下に説明する。
図11は、例えば、ISGを制御する機器制御部であるMG制御部25において、車両が惰性走行するときに、ISGの駆動を停止させる制御モードを追加したケースを想定した場合の、ドメイン制御部であるエネルギードメイン制御部21での構成情報の更新処理を説明するための図である。また、図12は、そのエネルギードメイン制御部21での構成情報の更新処理のフローチャートを示している。
図12のステップS100では、エネルギードメイン制御部21が保有している構成情報の少なくとも一部について変更する必要があるか否かを判定する。この判定は、例えば、MG制御部25の制御ソフトウエアの更新を行った外部ツールからの指示に基づいて判定することができる。構成情報を変更する必要があると判定した場合、ステップS110の処理に進み、変更する必要がないと判定した場合、図12のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS110では、変更する必要があると判定された構成情報に、学習値が含まれているか否かを判定する。図11に示す例では、エネルギードメイン制御部が保有する構成情報の内、エネルギードメイン制御部21の制御制約、システム動作情報、MG制御部25の制御制約、システム動作情報の全てが変更対象となっている。そして、それらの情報の全部が学習値(ISGでのENG変動許容制限、トルク分配時のISG動作特性、ISG動作上下限出力制限、ENG毎停止位置特性)を含んでいる。そのため、図11に示す例の場合、ステップS110にて、変更が必要な構成情報に学習値が含まれるとの判断がなされ、ステップS120の処理に進むことになる。一方、ステップS110にて、構成情報に学習値が含まれないと判断されると、ステップS120の処理はスキップされ、ステップS130の処理に進む。
ステップS120では、学習値の引継処理を実行する。この引継処理により、例えば、図11に示す例では、エネルギードメイン制御部21の制御制約及びシステム動作情報、さらに、MG制御部25の制御制約及びシステム動作情報におけるそれぞれの学習値が、新たな構成情報に引き継がれる。
ステップS130では、変更が必要と判定された構成情報の中で、最初に保有されていた基本構成情報から変更されているものがあるか否かを判定する。つまり、変更が必要と判定された構成情報が、既にいずれかの機器制御部の制御ソフトウエアの更新がなされ、その更新に応じて、基本構成情報から変更されているか否かを判定する。この判定は、例えば、エネルギードメイン制御部21が記憶している構成情報の更新履歴に基づいて行うことができる。ステップS130において、基本構成情報から変更されていると判定されると、ステップS140の処理に進み、変更されていないと判定されると、ステップS140の処理をスキップして、ステップS150の処理に進む。
ステップS140では、基本構成情報から変更されている部分について、基本構成情報に初期化する。これは、構成情報を更新する際に、過去の更新情報の影響を受けないようにするためである。例えば、図11に示す例では、エネルギードメイン制御部21の制御制約に関するISG分配上限、システム動作情報に関するトルク分配制御、MG制御部25の制御制約に関するISG始動時間上限、システム動作情報に関するエンジン動作モードが、それぞれ初期化されている。
最後に、ステップS150では、エネルギードメイン制御部21が保有する構成情報の内、変更を必要とする構成情報が、新たな構成情報に変更される。この変更処理は、機器制御部25の制御ソフトウエアの更新をおこなった外部ツールから、変更を必要とする構成情報を取得し、メモリの所定のエリアに記憶することによってなされる。
なお、上述した機器制御部24〜30の制御ソフトウエアの更新に伴い、その上位のドメイン制御部21〜23が保有する構成情報の変更処理は、例えば、ドメイン制御部21〜23の制御ソフトウエアが更新されたときにおける、統合制御部20が保有する構成情報の変更処理にも、同様に適用可能である。
次に、上述したように、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、及び機器制御部24〜30に分散して保有される構成情報が、どのように利用されるかに関して、幾つかのケースを事例として説明する。
まず、第1のケースとして、構成情報が、外部から統合制御部20に対して所定の情報の提供が要求されたときに、その所定の情報の保有先を探索するために利用される例について説明する。この第1のケースに該当する具体的事例としては、例えば、車両が充電設備の外部サーバ60と通信を行い、外部サーバ60からの電池残量の確認要求に応じて、制御システム10内のバッテリ制御部26から電池残量を示す情報を取得し、外部サーバ60に回答することが考えられる。以下、第1のケースについて、図13及び図14を用いて説明する。
図13は、例えば、車両が、非接触にて又は充電ケーブルを介して車両の高圧バッテリ33を充電可能な充電機能を備えた駐車スペースに駐車された場合、その充電機能を司る充電設備が、充電の必要があるかを確認するため、車両に電池残量の確認を行う場合の動作説明図である。また、図14は、外部サーバ60からの情報提供要求に対して、その情報を保有している制御部を探索するための処理を示すフローチャートである。以下、図13の動作説明図を適宜参照しつつ、図14のフローチャートに基づき、情報保有制御部探索処理について説明する。
図14のフローチャートのステップS200では、外部サーバ60からの情報提供要求の受付処理を行う。例えば、図13に示すように、外部サーバ60からの電池残量の確認要求は、通信制御部50によって受信される。この受信された確認要求は、車内通信により、通信制御部50から統合制御部20に伝達される。このような通信制御部50による受信及び統合制御部20への伝達が、ステップS200の受付処理に該当する。
続くステップS210では、統合制御部20が、提供要求のあった情報をキーワードとして用いて、保有している構成情報に含まれる情報と照合することにより、提供要求のあった情報を保有している制御部が属している可能性があるドメイン(確認対象ドメイン)があるか否かを判定する。このステップS210において、提供要求のあった情報を保有している制御部が属している可能性があるドメインがあると判定されると、ステップS220の処理に進み、そのようなドメインがないと判定されると、ステップS310の処理に進む。
ステップS210において、確認対象ドメインがあるか否かは、例えば、以下に説明するような手法にて判定することができる。すなわち、統合制御部20は、提供要求のあった情報をキーワードとして用いて、統合制御部20の制御機能に関する情報及び各ドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報とをそれぞれ照合する。この際、統合制御部20は、照合した制御機能に関する情報に、提供要求のあった情報と一致する情報が含まれていれば、確認対象ドメインがあると判定し、すべての制御機能に関する情報に、提供要求のあった情報と一致する情報が含まれていなければ、確認対象ドメインがないと判定することができる。
そして、統合制御部20の制御機能に関する情報に、提供要求のあった情報と一致する情報が含まれていれば、ステップS220において、統合制御部20を確認対象ドメインに設定する。また、各ドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報に、提供要求のあった情報と一致する情報が含まれていれば、ステップS220において、その一致する情報を有するドメイン制御部を確認対象ドメインに設定する。
なお、統合制御部20が確認対象ドメインに設定された場合、後述するステップS230の処理は省略され、ステップS240にて、統合制御部20が情報保有制御部として決定される。あるいは、統合制御部20が、直属の機器制御部を備えており、その機器制御部が情報を保有している場合には、その機器制御部が情報保有制御部として決定される。
また、複数のドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報が、提供要求のあった情報と一致した場合には、それら複数のドメイン制御部21〜23のいずれも確認対象ドメインとして設定しても良い。さらに、例えば、提供要求のあった情報と一致する情報の数に応じて、設定する確認対象ドメインに優先順位を付与しても良い。この場合、より高い優先順位を持つ確認対象ドメインから、情報保有制御部の探索を行えば良い。
続くステップS230では、確認対象ドメイン内において、情報を保有している制御部があるか否かを判定する。例えば、図13に示す例のように、エネルギードメイン制御部21が確認対象ドメインに設定された場合、提供要求のあった情報が、統合制御部20からエネルギードメイン制御部21に伝達される。そして、エネルギードメイン制御部21は、提供要求のあった情報と、エネルギードメイン制御部21の制御機能に関する情報及びエネルギードメイン内の各機器制御部24〜26の制御機能に関する情報とをそれぞれ照合する。以下、図13に示す事例に従い、エネルギードメイン制御部21が確認対象ドメインに設定されたものとして説明を続ける。
なお、統合制御部20が構成情報として保有しているドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報と、各ドメイン制御部21〜23が構成情報として保有しているドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報とは、通常、異なっている。具体的には、各ドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報として、統合制御部20よりも各ドメイン制御部21〜23の方が、より詳細な情報を保有している。ただし、統合制御部20と各ドメイン制御部21〜23とは、各ドメイン制御部21〜23の制御機能に関する情報として、同じ情報を保有していても良い。
そして、エネルギードメイン制御部21は、照合した制御機能に関する情報に、提供要求のあった情報と一致する情報が含まれていれば、提供要求のあった情報を保有する制御部がエネルギードメイン内に存在すると判定する。この場合、処理はステップS240に進む。一方、エネルギードメイン制御部21は、すべての制御機能に関する情報に、提供要求のあった情報と一致する情報が含まれていなければ、エネルギードメイン内には、提供要求のあった情報を保有する制御部が存在しないと判定する。この場合、処理はステップS310に進む。
ステップS240では、エネルギードメイン制御部21が、提供要求のあった情報を含む制御機能を備えた制御部を、情報保有制御部として決定する。図13には、バッテリ制御部26が、情報保有制御部として決定される例が示されている。以下、バッテリ制御部26が情報保有制御部に決定されたものとして説明を続ける。
続くステップS250では、情報保有制御部が起動中であるか否かを判定する。各制御部20〜30は、車載電源の消耗を防ぐため、通常、処理を実行する必要がないときスリープ状態に設定されるようになっている。情報保有制御部がスリープ状態であると、その情報保有制御部から情報を取得することができない。そのため、ステップS250では、情報保有制御部であるバッテリ制御部26が、起動状態であるか、スリープ状態であるかを判定し、スリープ状態であれば、ステップS260において、バッテリ制御部26を起動する。
続くステップS270では、提供要求のあった情報を、情報保有制御部であるバッテリ制御部26に問い合わせし、バッテリ制御部26から保有情報を取得する。そして、ステップS280において、エネルギードメイン制御部21、統合制御部20、及び通信制御部50を介して、外部サーバ60に対し、提供要求のあった情報を回答する。
続くステップS290では、以前の情報保有制御部の状態が、起動状態であったか、スリープ状態であったかを判定する。以前の状態がスリープ状態であった場合には、その以前の状態に戻すべく、ステップS300に進んで、情報保有制御部であるバッテリ制御部26をスリープさせる。
また、ステップS310では、統合制御部20は、通信制御部50を介して、提供要求のあった情報を保有していない旨を外部サーバ60に回答する。
このように、統合制御部20及び各ドメイン制御部21〜23に分散して保有される構成情報を用いて、外部から問い合わせのあった情報を保有している制御部を特定することができる。
なお、上述した例では、外部サーバ60から提供要求のあった情報をキーワードとして用いて、統合制御部20及び確認対象ドメイン制御部が保有する構成情報と照合した。しかしながら、外部サーバ60から提供要求のあった情報をそのまま用いるのではなく、統合制御部20及び/又は確認対象ドメインであるドメイン制御部において、提供要求のあった情報を、事前に用意した意味変換リストに基づき、少なくとも1つの用語に変換しても良い。そして、その変換した用語を用いて、統合制御部20や各ドメイン制御部21〜23が、保有している構成情報に含まれる情報と照合することにより、確認対象ドメインを判別するとともに、情報保有制御部の特定を行っても良い。
このように用語の変換を行った上で、確認対象ドメインを判別したり、情報保有制御部を特定したりする場合の具体的な処理の一例を、図15のフローチャートに基づき説明する。なお、図15のフローチャートにおいて、図14のフローチャートと同様の処理に対しては、同じ参照番号を付与することにより、説明を省略する。
図15に示すように、ステップS200において、外部サーバ60からの情報提供要求の受付処理を行った後、ステップS205で、統合制御部20が、用語の変換処理を行う。この用語変換処理は、予め用意している意味変換リストに基づいて行われる。意味変換リストは、統合制御部20及び各ドメイン制御部21〜23が保有している構成情報に含まれる情報を示す用語と、同義の用語とを関連付けたものである。従って、この意味変換リストを用いた用語変換により、提供要求のあった情報を示す用語が、統合制御部20及びドメイン制御部21〜23が保有している構成情報に含まれる情報を示す用語とは異なっていたとしても、それらの用語が同義であれば、構成情報に含まれる情報を示す用語に変換される。このため、情報の表現方法の違いのみで、情報提供ができないといった事態の発生を避けることができる。
なお、意味変換リストは、提供要求のあった情報を示す用語に対して、構成情報に含まれる情報を示す用語として、1つの用語だけでなく、複数の用語を関連付けても良い。逆に、提供要求のあった情報を示す幾つかの用語に対して、構成情報に含まれる情報を示す用語として、共通の用語を関連付けても良い。
また、意味変換リストに、提供要求のあった情報を示す用語と一致する用語がなかった場合、意味変換を行わずに、提供要求のあった情報を示す用語をそのまま用いても良い。あるいは、意味変換リストにおいて、最も近似する用語を選択し、その選択した用語に関連付けられる用語を用いるようにしても良い。
さらに、統合制御部20と各ドメイン制御部21〜23とにおいて、それぞれ意味変換リストを備え、双方で意味変換を行っても良い。このようにすれば、統合制御部20と各ドメイン制御部21〜23との構成情報に含まれる情報の表現方法が異なっていても、情報の問い合わせや、その問い合わせに対する回答を正しく行うことが可能になる。
再び、図15のフローチャートに戻り説明を続ける。ステップS270において保有情報を取得した後であって、ステップS280において提供要求のあった情報を外部サーバ60に回答する前に、ステップS275において、保有情報を示す用語を、提供要求の合った情報に変換する。これにより、外部サーバ60は、提供要求に対する回答であることを正しく認識することができる。
次に、第2のケースとして、構成情報が、制御システム10にて、外部からの要求に応じた所望の制御を実行する制御部を特定するために利用される例について説明する。この第2のケースに該当する具体的事例としては、例えば、充電設備の外部サーバ60からの要求に応じて、制御システム10内のバッテリ制御部26が、高圧バッテリ33の充電制御を行うことが考えられる。以下、第2のケースについて、図16及び図17を用いて説明する。
図16は、例えば、上述した第1のケースにより、外部サーバ60が電池残量を確認した結果、その電池残量が高圧バッテリ33の電池容量に対して低下していることが判明したときに、外部サーバ60から、高圧バッテリ33への充電を行う旨を制御システム10に通知した際、制御システム10が、構成情報を用いて、高圧バッテリ33の充電制御を司る制御部を特定し、その制御部を充電制御可能な状態にする場合の動作説明図である。また、図17は、制御システム10が図16に示した動作を実施する際の、概略的な処理の流れを示す説明図である。
図16に示すように、外部サーバ60からの外部充電実行通知は、通信制御部50を介して、統合制御部20に伝達される。すると、統合制御部20は、実行通知の合った外部充電をキーワードとして用いて、保有している構成情報に含まれる情報と照合する。これにより統合制御部20は、外部充電に対し、高圧バッテリ33の充電状態を制御する制御部が属している可能性があるドメイン(確認対象ドメイン)を判別する。この場合、図16、図17に示すように、エネルギードメイン制御部21が、確認対象ドメインに設定される。このため、統合制御部20は、エネルギードメイン制御部21に外部充電実行通知を伝達する。
エネルギードメイン制御部21は、実行通知のあった外部充電をキーワードとして用いて、保有している構成情報に含まれる情報と照合する。これにより、エネルギードメイン制御部21は、高圧バッテリ33の充電制御を司る制御部を特定する。具体的には、図16に示すように、エネルギードメイン制御部21は、バッテリ制御部26を、充電制御を司る制御部として特定する。そして、エネルギードメイン制御部21は、図17に示すように、外部充電が行われる場合に対応して、各制御部を起動状態にすべきか、スリープ状態にすべきかを選別し、起動状態にすべき制御部に対して起動振動を出力する。具体的には、図16に示すように、EMS制御部24及びMG制御部25は、スリープ状態に維持され、バッテリ制御部26に対してのみ起動信号を出力して、バッテリ制御部26を起動状態にする。
これにより、バッテリ制御部26は、高圧バッテリ33が外部充電設備によって充電されるとき、高圧バッテリ33が過充電状態に陥らないように、高圧バッテリ33の充電状態を監視し、必要に応じて、充電の停止処理を実行することが可能になる。
なお、上述した第2のケースにおいても、第1のケースと同様に、統合制御部20及び/又は確認対象ドメインであるドメイン制御部において、実行通知のあった制御情報を、事前に用意した意味変換リストに基づき、少なくとも1つの用語に変換するようにしても良い。
次に、第3のケースとして、構成情報が、制御システム10の内部の制御部から統合制御部20に対して所定の情報の提供が要求されたときに、その所定の情報の保有先を探索するために利用される例について説明する。この第3のケースでは、統合制御部20は、外部のサーバ60も含めて、所定の情報の保有先を探索し、外部のサーバ60が所定の情報を保有していると判定したとき、外部のサーバ60と通信を行い、所定の情報を取得することも可能である。
この第3のケースに該当する具体的事例としては、例えば、エネルギードメイン制御部21からのエネルギー需給予測情報の提供要求に対して、統合制御部20が、外部のサーバ60に問い合わせを行い、外部のサーバ60から情報を取得することが考えられる。以下、この具体的事例について、図18及び図19に基づいて説明する。
エネルギードメイン制御部21は、高圧バッテリ33の電池残量に基づいて、MG32が発生可能なトルクを予測した上で、エンジン31とMG32とのトルク配分を決定する。この際、通常は、高圧バッテリ33の性能への影響などを考慮し、高圧バッテリ33の充電残量の上下限を定め、その上下限の範囲内で、MG32により駆動トルクを発生させる。しかしながら、高圧バッテリ33の電池残量が近い将来にMG32の回生制御により回復することが判っていれば、通常範囲よりも低いレベルまで高圧バッテリ33の電力を使用し、より積極的に、MG32が発生するトルクを活用することが可能となる。
そのため、エネルギードメイン制御部21は、図18及び図19に示すように、エネルギー需給予測情報を統合制御部20に問い合わせる。統合制御部20は、エネルギー需給予測情報に該当する情報をいずれかの制御部が保有しているか判断するために、保有している構成情報に含まれる情報を確認するとともに、外部サーバ60にも、提供可能な情報を確認する。このような確認の結果、統合制御部20は、外部サーバ60が、エネルギー需給予測情報に関連する情報を保有していると判断すると、外部サーバ60に対して情報の提供を求める。
この際、統合制御部20は、例えば図19に示すように、外部サーバ60に情報提供を求める前に、意味変換リストを用いて、提供を求める情報を表す用語を変換しても良い。このように、構成情報の確認後であって、情報の提供を要求する前に用語の変換を行っても良い。なお、図19に示す例では、統合制御部20は、エネルギー需給予測情報を、回生に影響する情報に変換している。
このような統合制御部20からの情報提供要求に対し、外部サーバ60においても、意味変換を行い、要求された情報に対する回答として、車両の走行経路における渋滞箇所情報、及び道路勾配情報を返信する。すると、統合制御部20では、さらに意味変換を行い、渋滞箇所情報、及び道路勾配情報から、エネルギーの需給予測に基づくSOC目標値を算出し、エネルギードメイン制御部21に出力する。このSOC目標値は、統合制御部20において、車両の走行に応じて変化するように算出される。このため、エネルギードメイン制御部21において、与えられたSOC目標値となるように、MG32の駆動トルクの発生と電力の回生制御を行うことにより、MG32による駆動トルクをより有効に活用して、車両を走行させることが可能になる。
なお、上述した第3のケースにおいて、SOC目標値の算出は、統合制御部20ではなくエネルギードメイン制御部21において行うようにしても良い。また、上述した実施形態では、統合制御部20において、提供要求のあった情報や、外部サーバから取得した情報の意味変換を行う例について説明したが、提供要求のあった情報をそのままキーワードとして用いて、情報の保有先を探索するようにしても良い。
次に、第4のケースとして、車外サーバ60が、最適なエネルギー補充手段の選択のために、車両におけるエネルギー残量を確認する例について図20を用いて説明する。
例えば、車両が走行しながら高圧バッテリ33の非接触充電が可能に構成されており、さらに、道路側にもその非接触充電に対応した道路が設けられているとともに、車両は、給油によっても走行エネルギーの補充が可能である場合に、車両に残されたエネルギーとそれぞれのエネルギーの補充場所から、車外サーバ60が最適なエネルギーの補充手段を決定し、車両に通知することが考えられる。
この場合、図20に示すように、車外サーバ60は、エネルギー残量の確認要求を車両に通知する。この確認要求は、通信制御部50によって受信され、統合制御部20に伝達される。統合制御部20は、エネルギー残量を、意味変換リストを用いて、エネルギー残量に該当する各制御部が保有している情報に意味変換する。例えば、統合制御部20は、エネルギー残量を電力量、使用予定電力に意味変換し、エネルギードメイン制御部21及びボデードメイン制御部22にそれぞれ問い合わせる。
エネルギードメイン制御部21は、電力量を、さらに、燃料残量と、電池残量とに意味変換し、それぞれEMS制御部24とバッテリ制御部26とに問い合わせる。そして、エネルギードメイン制御部21は、EMS制御部24から得た燃料残量を電力量に換算するとともに、バッテリ制御部26から得た電池残量と合計して電力量を算出する。このようにして算出した電力量が、統合制御部20からの問い合わせに対する回答として、統合制御部20に与えられる。また、ボデードメイン制御部22は、統合制御部20からの使用予定電力に関する問い合わせに対し、エアコン装置34やシートヒータ35の使用状況に基づいて、予測される使用電力量を回答する。
統合制御部20は、エネルギードメイン制御部21及びボデードメイン制御部22からの回答が得られると、エネルギードメイン制御部21から取得した電力量に対して、ボデードメイン制御部22による予測使用電力量分を減じて、電力残量を算出し、外部サーバ60に回答する。
このように、意味変換により、問い合わせのあった情報を複数の用語に変換することで、より正しい情報を提供することが可能になる。
次に、第5のケースとして、車外サーバ60よりバージョンアップ用制御ソフトウエアを取得し、そのバージョンアップ用制御ソフトウエアの適用先となる制御部を、構成情報を用いて特定する例を図21を用いて説明する。
図21に示すように、統合制御部20は、車外サーバ60から、機能の向上等のためのバージョンアップ用制御ソフトウエアを取得する。この際、統合制御部20は、取得したバージョンアップ用制御ソフトウエアを示す情報と、自身が保有している構成情報とを照合する。これにより、バージョンアップ用制御ソフトウエアが適用される制御部が属する可能性があるドメインを判別する。なお、バージョンアップ用制御ソフトウエアが適用される制御部が属する可能性があるドメインが見つからない場合、その制御ソフトウエアは適用されることなく破棄される。
そして、バージョンアップ用制御ソフトウエアが適用される可能性があるドメインのドメイン制御部が、バージョンアップ用制御ソフトウエアを示す情報と、自身が保有している構成情報とを照合して、バージョンアップ用制御ソフトウエアが適用される制御部を特定する。このようにして、バージョンアップ用制御ソフトウエアの適用先となる制御部が特定されると、ドメイン制御部は、特定された制御部に対して、バージョンアップ用制御ソフトウエアを適用して、制御ソフトウエアの更新を行う。なお、ドメイン制御部が、バージョンアップ用制御ソフトウエアの適用先となる制御部を特定できない場合、その制御ソフトウエアは適用されることなく破棄される。
あるいは、統合制御部20が、自身が保有している構成情報及び複数のドメイン制御部21〜23が保有している構成情報に基づいて、制御システム10に含まれる各制御部の制御機能を外部サーバ60に事前に通知しても良い。この場合、外部サーバ60において、制御システム10に適用可能な制御ソフトウエアを選別し、統合制御部20に送信することができる。
このようにして、制御システム10に適用可能な制御ソフトウエアを取得すると、統合制御部20は、上述した場合と同様に、自身が保有している構成情報を参照して、制御ソフトウエアの適用先となる制御部が、いずれのドメインに属しているかを判別する。さらに、その判別したドメインに属するドメイン制御部が、自身が保有している構成情報を参照して、制御ソフトウエアの適用先となる制御部を特定する。
図21に示す例では、ソフトウエアの適用先がEMS制御部24であり、属するドメインはエネルギードメインである。このため、統合制御部20は、エネルギードメイン制御部21に対して、制御ソフトウエアの適用先となる制御部の特定を指示する。エネルギードメイン制御部21は、自身の構成情報を参照して、制御ソフトウエアの適用先がEMS制御部24であると特定し、その制御ソフトウエアを適用する。
なお、上述した第5のケースにおいても、第1のケースと同様に、統合制御部20及び/又はドメイン制御部において、制御ソフトウエアを示す情報を、事前に用意した意味変換リストに基づき、少なくとも1つの用語に変換するようにしても良い。
次に、第6のケースとして、統合制御部20が、複数のドメインに渡って制御を同期させる必要がある場合に、構成情報を参照して、各ドメイン制御部21〜23との同期手法を取得し、その取得した同期手法に従って、各ドメイン制御部21〜23にそれぞれ同期信号を出力する例を、図22及び図23に基づき説明する。
例えば、エネルギードメインに属するMG制御部25が回生制御を実行している間、実際にMG25により電力が発生されるタイミングに同期して、ボデードメインに属する車載機器に動作電力を供給するようにすれば、電力の入出力のバランスを取ることができ、その結果、高圧バッテリ33の容量は小さくて済むようになる。
このため、図22に示すように、統合制御部20は、必要に応じて、エネルギードメイン制御部21とボデードメイン制御部22とに同期信号を配布する。ただし、エネルギードメイン制御部21とボデードメイン制御部22とは、同じ同期手法に対応しているとは限らない。例えば、同期手法の代表的な例として、トリガ同期と、時間同期とがあるが、エネルギードメイン制御部21とボデードメイン制御部22とが相互に異なる同期手法にしか対応していないこともありえる。
そのため、図23に示すように、例えばエネルギードメイン制御部21から、ボデードメイン制御部22との同期信号の要求があった場合、統合制御部20は、自身が保有する構成情報を参照して、各ドメイン制御部21、22の同期手法を確認する。この際、統合制御部20が保有する構成情報からは各ドメイン制御部21、22の同期手法が判明しない場合、統合制御部20は、各ドメイン制御部21、22に同期手法を問い合わせても良い。この場合、各ドメイン制御部21、22は、自身が保有する構成情報を参照して同期手法を取得し、統合制御部20に回答する。
統合制御部20は、確認した同期手法に従い、各ドメイン制御部21、22用の同期信号を選定する。図23に示す例では、同期信号として、エネルギードメイン制御部21用に同期トリガを選定し、ボデードメイン制御部22用に同期時刻を選定している。そのため、統合制御部20は、まず同期時刻を設定し、この設定した同期時刻をボデードメイン制御部22に与える。ボデードメイン制御部22は、与えられた同期時刻まで待機し、同期時刻となったときに、同期して実行すべき所定の制御を実行する。
その一方で、統合制御部20は、設定した同期時刻に同期トリガを生成して、エネルギードメイン制御部21に与える。エネルギードメイン制御部21は、この同期トリガに応じて、同期して実行すべき所定の制御を実行する。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能なものである。
例えば、上述した実施形態では、統合制御部20、ドメイン制御部21〜23、機器制御部24〜30、及び機器制御部24〜30が実装されるECUの内部論理構造として、それぞれ、4階層に階層化された例について説明した。しかしながら、これらの制御部及びECUの内部論理構造としては、必ずしも4層に階層化されていなくとも良い。
また、上述した第1〜第5のケースにおいて、統合制御部20が外部サーバとの通信を行う例を説明したが、ドメイン制御部21〜23が、外部サーバとの通信を行うように構成しても良い。