本明細書に開示されるいくつかの実施例は、一つまたはそれ以上の態様において、増幅器入力または出力信号を追跡して、増幅器出力信号の必要性によって要求される場合に増幅器に電力供給する電源電圧信号を一時的にブーストする電力ブーストシステムまたは回路を一般的に対象とする。これらの実施例のうちの少なくともいくつかは、架橋増幅器構成を必ずしも使用することなく、または高周波スイッチング電源を必要とすることなく、供給電圧またはバッテリ電圧のたとえば3倍を越える大きなピークトゥピーク電圧振幅を可能とするように設計されている。これらの実施例のいくつかはまた、特にオーディオ信号増幅に関し、標準的な増幅器構成よりも大きい効率を提供し、それによってヒートシンク要件を低減させることができる。高い出力電圧振幅も、少なくともいくつかの場合には、比較的通常の負荷インピーダンスを使用することを可能にする。
本明細書に開示される様々な実施例によれば、増幅器用のトラッキング電源は、正の、および/または、負の電源レールを一時的にブーストするように構成された一つまたはそれ以上のカスケード配列される電力ブースト回路を含む。各電力ブースト回路は、利得要素と蓄積エネルギ源(コンデンサまたはバッテリのような)とを含んでもよく、複数の電力ブースト回路はカスケード配列態様に連結されて、必要とされるときにより大きな度合いの電圧ブーストを提供する。任意の制御回路が、増幅器出力信号レベル、または別々に増幅された入力信号レベル、を監視して電力ブースト制御信号を電力ブースト回路に提供し、電力ブースト回路は、増幅器(単数または複数)からのそれぞれ最も高いおよび最も低い出力信号とともに、公称電圧レールよりも上にまたは下に正の、および/または、負の供給電圧を一時的に引き上げまたは引き下げる。
本明細書に開示した実施例は、様々な用途に使用されることができ、出力電力の一時的なブーストを得ることが望まれる状況に特によく適することができる。特に、本明細書に記載される様々な実施例は、主として公称電圧レールの範囲内で動作するが場合によっては公称電圧レールを超えるピーク電圧振幅を必要とするオーディオ増幅システムによく適することができる。
図1は、従来知られている単一チャンネル電力増幅システム100のハイレベルの図であり、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7,834,702号に一般的に詳細に記載されているもので、本明細書において完全に記載されたと同様に、参照によって援用される。図1において、主増幅器104(「A1」と示す)がソース信号102を増幅する。主増幅器104は従来の設計のどれでもよいが、好ましくは高い電源除去比(PSRR)を有する。この例では主増幅器104は従来の方法で拡声器150に、任意のカップリングコンデンサ115(「C3」)を介して、接続される。主増幅器104は、電源ライン128(Vs+)および138(Vs−)に、それぞれダイオード129(「D1」)および139(「D2」)を介して、結合する。ダイオード129および139は、早いスイッチング時間を提供しかつ電位ブーストレベルも最大化するように、ショットキー形ダイオードであってもよい。
正電力ブースト増幅器120(正の供給電圧に関連するため、部分的に「B+」と表示される)および負電力ブースト増幅器130(負の供給レールに関連するため、部分的に「B−」と表示される)が、電源ライン128(Vs+)および138(Vs-)にそれぞれ結合される。正および負の電力ブースト増幅器120および130は、蓄電コンデンサ125(「C1」)および135(「C2」)を介して、主電力増幅器104の電源入力107、108(図1においてVboost+およびVboost−と表示される)に結合される。オフセット信号入力121、131が電力ブースト増幅器120および130にそれぞれ結合される。オフセット信号121は、正電力ブースト増幅器120からの出力信号122が、そのブースト機能が非アクティブであるときVs−(負の供給レール)にあるように提供され、オフセット信号131は、出力信号132が、そのブースト機能が非アクティブであるときVs+(正の供給レール)にあるように提供される。結果として、第1の蓄電コンデンサ125は、正ブースト機能が必要でないときに通常フル充電され、その両端の電圧は(Vs+−Vs-−VD1)となる。ここでVD1はD1両端の電圧降下である。同様に、第2の蓄電コンデンサ135は、負ブースト機能が必要でないときに通常フル充電され、その両端の電圧は(Vs+−Vs-−VD2)となる。ここでVD2はD2両端の電圧降下である。14.4Vの電源では、蓄電コンデンサ125、135の各々の両端の電圧は、かくして典型的には約13.9Vとなる。
動作において、電力ブースト増幅器120および130は、主増幅器104の出力を検知し、蓄電コンデンサ125(「C1」)および135(「C2」)を介して主増幅器104の電源入力107、108を駆動する出力信号122、132を生成する。静止条件下では、電力が供給されるべき主増幅器104のDC出力電圧は通常、正および負の電源レールVs+およびVs-の中間にある。主増幅器104の必要とされる出力が電源レールVs+およびVs-によって課される限度を下回るときは、増幅システム100は従来の増幅器として動作する。言い換えれば、主増幅器104はそれぞれD1、D2を介して正および負の供給ライン128、138から電力を引き出し、ソース信号102は従来の方法で主増幅器104によって増幅される。
しかしながら、出力信号105が電源レール128(Vs+)および/または138(Vs-)に近づくかそれを超えるようになることが要求されるような振幅にソース信号102が達したとき、増幅システム100の動作は電力出力を増やせるように変化する。主増幅器104は通常ダイオードD1およびD2(129および139)を介して電源レールVs+およびVs-から電流を引き出し、電力を負荷、すなわち拡声器150、に供給する。したがって、正または負の電力ブースト増幅器120、130の効果が無い場合は通常の条件で最大のピークトゥピーク出力電圧は、式:(Vs+−Vs-)−(VD1+VD2)によって一般的に与えられる。すなわち、最大のピークトゥピーク出力電圧は正および負の供給レール間の差からダイオード129、139によって生じる電圧降下を差し引いた値となる。増幅システム100において、主増幅器104からの出力電圧が正または負の供給レールに近づくと、電力ブースト増幅器120または130(信号の極性に応じて)が、必要に応じて電源入力(単数または複数)107および/または108を強制的に一時的に増大させ、主増幅器104がその出力信号105の振幅を増加させその全体の電力出力を増大させることを可能にする。
増幅器システム100の電力ブースト動作をより詳細に以下で説明するが、ソース信号102が正であって正電源入力107のブーストを必要とする場合の例をまず挙げて説明する。主増幅器104からの出力信号105が、Vs+の特定の範囲(典型的には1.5ボルト)内で正供給レールVs+に近づくと、電力ブースト増幅器120(B+)の出力122が、Vs−の電位にあるその静止状態から上昇しはじめる。その静止状態では、電力ブースト増幅器120は蓄電コンデンサ125(C1)を(Vs+−VD1)の電圧まで充電する。ここでVD1はダイオード129(D1)の両端の電圧降下である。主増幅器出力信号105の上昇によってもたらされた出力信号122の上昇は、蓄電コンデンサ125(C1)を介して主増幅器104の正電源入力107に伝達され、その電位(Vboost+)を上昇させる。これがおきると、ダイオード129(D1)が遮断され、そのため主増幅器104の正電源入力107は正電源レールVs+から分離され、その代わりにその入力電流が蓄電コンデンサ125(C1)を介して電力ブースト増幅器120(B+)の出力から導出される。結果として、主増幅器出力信号105はもはや正電源レールVs+による制限を受けない。
電力ブースト増幅器120(B+)がたとえば単位利得を有する場合、主増幅器104への正電源入力107の電圧レベルは、或るオフセット量を伴うけれども、主増幅器104の出力電圧に追従し、そのため主増幅器出力信号105の電圧レベルとその供給電圧、Vboost+との差が相対的に一定に、たとえば約1.5ボルトに保たれる。このようにして主増幅器104の出力105は、飽和および/またはクリッピングを回避しながら正電源電圧Vs+より上に上昇することが可能になる。
この動作の振舞いは、電力ブースト増幅器120の出力122が正レール電圧Vs+に達しクリップするまで継続することができる。主増幅器の正電源入力107(Vboost+)はそのときそれ以上は上昇せず、そして主増幅器104の出力105はそのときほんの僅か高く上昇することができるだけで(2Vs+−VD1)の最終電位にそれもまたクリップする。
主増幅器104からの出力信号105の電圧が他の方向、すなわち負、に振れる場合は、同様の効果が負電力ブースト増幅器130(B-)、蓄電コンデンサ135(C2)およびダイオード139(D2)に生じる。これらの構成要素は正供給の構成要素と同様に動作するが、代わりに負電源入力108(Vboost−)を負供給レールVs−の電位より下に動かす。この動作の振舞いは、負電力ブースト増幅器130の出力132が負レール電圧Vs-に達しクリップするまで継続することができる。主増幅器の負電源入力108(Vboost―)はそのときそれ以上は降下せず、そして主増幅器104の出力105はそのときほんの僅か低く降下することができるだけで(2Vs-+VD2)の最終電位にこれもまたクリップする。
正電源入力107を正供給レールVs+を上回ってブーストするとともに負電源入力108を負供給レールVs-を下回ってブーストすることによって、主増幅器104の正および負の電源入力107および108の両方を独立してブーストできることがこれで分かるであろう。この効果は、主増幅器104に大きな電圧振幅能力を提供する。図1に従って構成される増幅システム100は、架橋増幅器構成なしで、またスイッチング電源なしで構築することができ、それでもなお大きな電圧振幅能力を有する。
図1に図示される増幅システム100の原理は、2以上のチャンネルを有する、および/または、2以上の主増幅器を有するシステムに拡張することができる。従来知られているこのタイプの一実施形態の一例を、ある程度単純化した形式で図2に図示する。図2に示すように、多チャンネル増幅システム200は、この例では二つの、電力供給されるべき主増幅器204、254(「A1」および「A2」とも示す)および、図1におけるような二つの電力ブースト増幅器220、230を含む。第1の電力ブースト増幅器220の出力が両方の主増幅器204、254の正電源入力に結合され、一方第2の電力ブースト増幅器230の出力が両方の主増幅器204、254の負電源入力に結合される。換言すれば、主増幅器204、254は共通の電源入力を有する。第1の主増幅器204は、第1の入力ソース信号202を増幅し、拡声器250および制御器260に与えられる出力信号205を生成する。同様に、第2の主増幅器254は、第2の入力ソース信号203を増幅し、別の拡声器251および制御器260に与えられる出力信号255を生成する。
動作において、増幅システム200は図1の増幅システム100と非常に似たやり方で動作する。しかしながらここでは二つの主増幅器204、254があるので、制御器260は主増幅器204または254のうちのもっとも大きい出力を必要とする方に応答してそれに基づき必要とされる供給電圧を与えるように電力ブースト増幅器220、230を動作させる。制御器260は、増幅器出力信号205、255のうちの大きい方に応答し、2つの増幅器出力信号205、255のうち正の方向に大きい方を、制御ライン261を通して第1のブースト増幅器220に与え、また2つの増幅器出力信号205、255のうち負の方向に大きい方を、制御ライン262を通して第2のブースト増幅器230に与える。正および負の電源入力ブースト信号は従って独立してアクティブになる。正および負の電源入力ブースト信号は両方を同時にアクティブにすることができる。
図2の増幅システム200の動作のさらなる説明を、図3を参照して行うが、図3は一つの特定の例による様々な単純化された波形を図示したものである。図3において、「A1」で示される実線の波形は第1の主増幅器204からの出力信号205を表し、「A2」で示される点線の波形は第2の主増幅器254からの出力信号255を表し、Vboost+およびVboost-でそれぞれ示される実線および点線は、図2の符号表記と同じ電力入力信号207、208を表す。図3に示されるように、出力信号205、255のうちの一方の電圧レベルが正の供給レール電圧(BAT+で示される)に近づくと、正の電力入力信号Vboost+はそれに追従し、あるオフセット量だけ出力信号レベルより上にとどまる。実際の応用形態では、オフセットレベルが経時的にいくらか垂下または減退することがありうる。同様に、出力信号205、255のうちの一方の電圧レベルが負の供給レール電圧(BAT-で示される)に近づくと、負の電力入力信号Vboost-はそれに追従し、あるオフセット量だけ出力信号レベルより下にとどまるが、オフセット量は潜在的に垂下または減退を受ける可能性がある。図3に図示されるように、所与の時点で最も大きな大きさを有する増幅器出力信号205、255が、ブースト信号が提供されるか否かを決定する。増幅器出力信号205、255は所与の時点で異なる極性であることができるので、正および負の電源レールの両方のためのブースト信号が同時に生成されることが可能である。
図4は、従来知られている増幅システム400の別の例を図示するもので、図2の原理に一般的に従っているがいくつかの詳細が加わっているものである。しかしながら、図4は、図1に図示され説明された蓄電コンデンサ425、435、ダイオード429、439およびオフセット回路421、431をも示しており、これらは図1に示された構成要素と同一の目的を果たすものである。
図1、2および4に示された増幅システムでは、電力ブースト増幅器B+およびB−の利得を1に設定することができ、それによって、電力ブースト増幅器B+またはB−が動作状態になると、主増幅器A1(または、多チャンネルもしくは多増幅器システムでは複数の主増幅器)の出力とその供給端子との間の差が、一般的に、一定に維持される。電力ブースト増幅器B+およびB−の利得を1よりも僅かに大きく設定することができ、その場合、電圧の差は主増幅器の出力信号レベルとともに増大することも知られている。電力ブースト増幅器B+およびB−の利得を非線形にして、この効果を最大化することもでき、それによって電力ブースト増幅器B+およびB−が動作状態になる前に、主増幅器(単数または複数)A1および/またはA2が正および負の供給レール、Vs+およびVs−、の近くまで振れることができ、したがって主増幅器(単数または複数)A1および/またはA2の効率を最大化することができ、さらに、高い電流を供給する必要があるときに主増幅器(単数または複数)A1および/またはA2の両端間に充分な差を確保することができる。
ある種の状況においては、これまでに記載してきた増幅システムのいくつかでは性能に限度があることがある。高い出力が必要とされる時間が長引き、それによって蓄電コンデンサからの電圧の減退または垂下が顕著な影響を与え始めるような場合である。主増幅器(単数または複数)に対する電源レールがブーストされているとき、主増幅器(単数または複数)への電流は蓄電コンデンサ(図1におけるC1またはC2)のうちの一方を介して供給されている。電力ブーストを供給することは、タップされている蓄電コンデンサに蓄積されている電荷を減らすことになり、蓄電コンデンサの両端の電圧が低下する。電力ブーストがかなり長い期間にわたって必要になる場合、電圧降下は蓄積されているピーク電圧のかなりの割合になり、増幅器の出力能力が一般的に低減する。これによって、低い周波数の信号の出力電圧振幅が低減する。蓄電コンデンサの両端の電圧降下が、電力ブースト増幅器B+またはB−が場合によって正または負の電圧供給レール、Vs+またはVs-、まで完全に振れてしまう前に、主増幅器(たとえばA1)がクリップするほど充分である場合、主増幅器の出力は上昇を停止し、したがって電力ブースト増幅器B+またはB−の出力も上昇を停止する。蓄電コンデンサの両端の電圧は、当該蓄電コンデンサから電流が依然として引き出されている限り効果し続け、したがってVboost+/−が降下し始め、それによって主増幅器の出力も降下し始める。この降下は電力ブースト増幅器、B+またはB−、に伝えられ、正のフィードバック動作が発生することになり、出力電圧が急速に崩壊する。この状況は、たとえば、このような環境下で入力電圧を制限することができるような適切な保護回路を設けることで阻止することができる。
このような状況に対処するための別の手法が、従来知られているように、図5に図示される。電力ブースト増幅器520および530(すなわち、B+およびB−)に適切な駆動信号をもたらすために主増幅器A1(図5において504、また図1において104で示される)の出力を検知する代わりに、主増幅器504と同じ利得特性を好ましくは有する利得ブロック570を介して、主増幅器504に対する入力ソース信号502を検知し、利得ブロック570からの出力571を電力ブースト増幅器520、530への入力として提供する。この構成は蓄電コンデンサ525または535の両端の電圧の減退によって引き起こされる潜在的な正のフィードバックループを遮断し、蓄電コンデンサ525または535の両端の電圧が過度に降下するときに出力が崩壊するのを防止する。主増幅器504の出力は依然としてクリップすることができるが、それはゼロへの急速な降下ではなく、蓄電コンデンサ525または535の放電に一般的に追従するものとなる。
図6は、多チャンネルシステムに適用した同様の方式を示す。電力ブースト増幅器620および630(すなわち、B+およびB−)に適切な駆動信号をもたらすために主増幅器A1およびA2の出力を検知する代わりに、利得ブロック670および680を介して、主増幅器604、654に対する入力ソース信号602、603を個別に検知し、利得ブロック670、680からの出力671、681を制御器660に与え、制御器は適切な入力信号661、662を電力ブースト増幅器620、630に提供する。図2および図4の例と同様に、入力ソース信号602、603からもたらされる、利得ブロック出力信号671、681のうちの大きい方が電力ブースト増幅器661、662に向けて通される。利得ブロック670、680または制御器660のいずれかがこの事実を考慮するとすれば、主増幅器604、654は異なる利得を有することができる。
電力ブースト増幅器B+およびB−の利得を主増幅器A1とほぼ同じになるようにマッチングする必要性を回避しながら、上に述べた過負荷問題を回避するさらに別の知られている技術が、図7Aに示される。図7Aにおける増幅システムの手法の背後にある一般的な前提は、主増幅器704の出力電圧とその供給電圧との間の差を直接検知し、この差を一定に維持するように電力ブースト増幅器720、730の出力を駆動することである。この目的のために、電力ブースト増幅器720、730は高利得タイプの増幅器として一般的に実施され、主増幅器704の出力端子および電源端子を負のフィードバックループに組み込む。
この例において、正供給電圧検知回路723および負供給電圧検知回路733が正および負の供給電圧のレベルを検知する。これらの値は通常の固定オフセットと組み合わされ、図7Aに示す可変オフセット回路724、734によって反映される可変オフセット値に達する。主増幅器704の出力が電源レールから所定の電圧差以内に達すると、負のフィードバックループが動作状態になる。低い出力レベルでは、前記の実施例のように、電力ブースト増幅器720、730は正および負の供給レールVs+およびVs−にそれぞれ維持され、主増幅器704は電源レールVs+およびVs−から通常の増幅器として動作する。しかし、主増幅器704の出力が正供給レールVs+の一定量(たとえば、1.5ボルト)以内に達すると直ちに、フィードバックループが電力ブースト増幅器720の出力を正に駆動し始める(主増幅器704の出力が負供給レールの一定量以内に達すると、同様の現象が他方の電力ブースト増幅器730について起きる)。この動作は、電源入力信号707、すなわちVboost+、を、蓄電コンデンサ725を介して正方向に駆動し、したがって、主増幅器704の出力705とその正電源入力707との間の電圧差を減らすように働く。この効果は、次いで正の側の電力ブースト増幅器720への駆動信号を低減する。
上記の効果は、負のフィードバックループの動作の結果として生じ、このループが安定であるように設計されていると仮定すると、主増幅器704の出力705とその正供給電圧との間の差が基準レベルを下回ることを防ぐように動作する。主増幅器704の出力信号705の電圧レベルは、その入力に対して印加される信号によって、その動作が線形領域にある増幅器にとって通常であるように決定され、したがって、フィードバックループが動作可能になると、その動作は、電源電圧が主増幅器704の出力電圧を上回る所定のオフセット(たとえば、1.5ボルト)で追従することを可能にする。結果として、主増幅器704はクリップせず、主増幅器704は、電力ブースト増幅器720、730がクリップしていない限り、負荷への増大する電圧を駆動し続ける。したがってこの効果は、増大した出力能力および最大クリップレベルならびに主増幅器704の効率に関して、これまでの例と同様である。
電力ブースト増幅器720、730の有限の利得が、大きな電圧振幅で電圧差を低減させることになるのを防ぎ、その代わりに大きな出力レベルで電圧差を増大させるようにするために、図7Aの増幅システムに修正を加えることができる。前に説明したように、図7Aに示されるシステム700は、主増幅器704の出力とその供給端子との間の差を検知し、その差がある基準レベルを下回るのを防ぐように動作する。基準レベルを一定とする代わりに、その基準が、可変オフセット回路724、734において実施されるように、出力レベルに比例して増大するようにされるとすると、その効果は電力ブースト増幅器720、730の有限の利得に起因する誤りをオフセットすることになろう。比例定数が適切に選ばれたならば、限定された利得の効果は正確に相殺されることができ、それによって、ひとたびフィードバックループが動作すると、主増幅器704の出力705とその電源端子との間の差が一定の電圧に維持される。比例定数がこの量よりも高いならば、電圧差は、電力ブースト増幅器120および130(B+およびB−)が1よりも大きい利得を与えられていた図1の実施例のもとの変形例で得られていた特性を模倣して、出力レベルとともに増大する。
図7Aに関して記載されたフィードバック構成は、蓄電コンデンサ電圧の潜在的な垂下をも克服する。蓄電コンデンサ725、735はフィードバックループ内に閉じ込められているために、垂下は最初は何の効果も持たない。電力ブースト増幅器720または730が自動的により強く駆動されてこの垂下を補償する。ひとたび電力ブースト増幅器720または730がその供給レールで飽和すると、この補正はもはや行われず、主増幅器704の出力はクリップまで駆動されるが、一般的に出力レベルの崩壊は生じない。図7Aの手法は、たとえば図8Aに図示される多チャンネル構成に使われることができ、ここでも、二つ以上の主増幅器が一組の電力ブースト増幅器B+/B―から電力供給される。図7Aでのように、ひとつの増幅器の出力および供給電圧端子を検知して差の電圧を取り出すのではなく、制御器860によって決定される、供給電圧と図8Aの主増幅器804、854のいずれかの最も大きい出力との間の差が、フィードバックループを駆動するのに使われる。このようにして、電源電圧が、主増幅器804、854のいずれもがクリップするのを防ぐのに充分なだけ常に大きいことを確保することができる。
図7Aおよび8Aについて記載されたアプローチの変形例も知られており、それによれば、供給電圧と主増幅器(単数または複数)の出力との間の差を検知するのではなく、供給電圧と、主増幅器(単数または複数)の入力が適切に増幅されたものとの間の差を代わりに使用してフィードバックループを駆動するものである(図7Aおよび8Aを修正したものにそれぞれ対応する、図7Bおよび8Bを見ること)。かくして、図7Bにおいて、電力増幅器790は、入力信号702を増幅するために利得Gを有する利得段770を含み、主増幅器出力705の代わりに増幅された入力信号771が電力ブースト増幅器720、730に与えられる。同様に、図8Bにおいて、電力増幅器890は、入力信号802および803を増幅するために利得係数G1、G2をそれぞれ有する利得段870、880を含み、増幅された入力信号871および881が、前に記載したように動作する制御器860に与えられる。
図9は、図8Bのフィードバック制御手法を使用した、従来知られているトラッキング電源の一例を示す。これは、一組の電力ブースト増幅器920、930を依然使用しつつN個の増幅器904a...nの一般的な事例に拡張したものである。さまざまな増幅器出力905a...nからの最も大きな正の電圧値(「最良のN」)およびさまざまな増幅器出力905a...nからの最も大きな負の電圧値(「最小のN」)を決定し、これらの値(図9においてVNHIGHおよびVNLOWで示す)を電力ブースト増幅器920、930に与える比較制御器960を含む。正または負の供給電圧と、図9の主増幅器904a...nのうちいずれかの最大正/負出力との間の差が、フィードバックループを駆動するために用いられる。このようにして、電源電圧が、主増幅器904a...nのいずれもがクリップするのを防ぐのに充分なだけ常に大きいことを確保することができる。
従来知られているトラッキング増幅器システムの更なる詳細は、米国特許7,834,702に記載されている。同特許は、前に相互参照され、参照によって本明細書に組み込まれている。
図10は、本明細書に開示されている一つの例示的構成にしたがう、カスケード配列されたまたは多段の電力ブースト増幅器1000の一実施例を図示するブロック図である。図10は単一チャンネルの電力増幅器のみを図示しているが、その原理は多チャンネル増幅器にも適用可能である。図10に示すように、主増幅器1004(「A1」で示す)はソース信号1002を増幅する。主増幅器1004は従来の設計のどれでもよいが、好ましくは高い電源除去比(PSRR)を有する。この例では主増幅器104は従来の方法で拡声器1070に(図示していないカップリングコンデンサを任意で介して)接続される。主増幅器1004は、電源ライン1028(Vs+)および1038(Vs−)に、それぞれダイオード1040および1050を介して、結合する。ダイオード1040および1050は、早いスイッチング時間を提供しかつ電位ブーストレベルを最大化するように、好ましくは(ただしそれである必要はないが)ショットキー形ダイオードであるか、またはそれと同様の特性を有するものとする。
図10にさらに図示されているように、主増幅器1004は、電源ライン1028、1038からだけでなく電力ブースト回路からも電力供給を受ける。電力ブースト回路は、正の電源ライン1028に関連付けられた、第1の組のカスケード配列されたブースト回路または段1020、1021、1022(B1+、B2+、B3+でも示される)と、負の電源ライン1038に関連付けられた、第2の組のカスケード配列されたブースト回路または段1030、1031、1032(B1―、B2−、B3―でも示される)とを含む。各電源ライン1028、1038に対して三つの電力ブースト回路が図10には図示されているが、同じ原理はもっと少ない(たとえば、二つ)またはもっと多い(たとえば、四つまたはそれ以上)の電力ブースト回路を持つ設計にも適用できる。したがって、図10に関して説明される概念、ならびに本明細書に開示される他の実施例は、カスケード配列のやり方で構成される任意の数の電力ブースト回路に応用することができる。以下においてより詳細に説明されるように、カスケード配列された電力ブースト回路1020、1021、1022の組および1030、1031、1032の組は、主増幅器1004への正および/または電源入力を一時的にブーストするように動作する。
正の電源ライン1028のための各電力ブースト回路1020、1021、1022は、利得および蓄積エネルギ源1025、1026、1027(コンデンサまたはバッテリーのような)を備えていてよく、電力ブースト回路1020、1021、1022は、カスケード様式で連結されていて、必要なときにより大きな度合の電圧ブーストを正の電源ライン1028に提供する。同様に、負の電源ライン1038のための各電力ブースト回路1030、1031、1032は、利得および蓄積エネルギ源1035、1036、1037(コンデンサまたはバッテリーのような)を備えていてよく、電力ブースト回路1030、1031、1032は、カスケード様式で連結されていて、必要なときにより大きな度合の電圧ブーストを負の電源ライン1038に提供する。ダイオード1040、1041、1042は、これらの構成要素の各々のための電源入力が一時的にブーストされるときに、とりわけて、正の電源ライン1028が主増幅器1004の電源入力、第1の正の電力ブースト回路1020および第2の正の電力ブースト回路1021からそれぞれ一時的に切り離されるようにする。同様に、ダイオード1050、1051、1052は、これらの構成要素の各々のための電源入力が一時的にブーストされるときに、とりわけて、負の電源ライン1038が主増幅器1004の電源入力、第1の負の電力ブースト回路1030および第2の負の電力ブースト回路1031からそれぞれ一時的に切り離されるようにする。電力ブースト回路1020、1021、1022および1030、1031、1032の各々は、主増幅器1004からの出力信号1005(またはその代わりに、入力信号1002を増幅したもののように、その代理となるもの)を好ましくは監視または追跡し、出力信号1005が関連する供給レールへ向かって増加しつつ上昇するに従い、主増幅器1004への正の電源入力または負の電源入力のいずれかに対して順次電力ブーストを提供する。
一つの例では、出力信号1005が第1の閾値(好ましくは、正の供給電力ライン1028の固定電圧に近い値に設定される)を上回ると、第1の電力ブースト回路1020がアクティブになり、主増幅器1004の正の電源入力に追加的なブーストを与える。これは、出力信号1005が、正の供給電力ライン1028の電圧の3倍にほとんど等しいレベルに達するのを許す−なぜなら、第1の電力ブースト回路1020は正および負の電圧ラインの間の広がりにほとんど等しい量だけブーストすることができるからである。出力信号1005が第2の閾値(好ましくは、正の供給電力ライン1028の固定電圧の3倍に近い値に設定される)を上回ると、第2の電力ブースト回路1021がアクティブになり、第1の電力ブースト回路1020の正の電源入力に追加的なブーストを与える。第1の電力ブースト回路1020は、今度はこれによって主増幅器1004に同様の追加的なブーストを与えることができ、出力信号1005が第2の閾値を上回って正の供給電力ライン1028の電圧のほとんど5倍に等しいレベルに上昇するのを許す。出力信号1005が第3の閾値(好ましくは、正の供給電力ライン1028の固定電圧の5倍に近い値に設定される)を上回ると、第3の電力ブースト回路1022がアクティブになり、第2の電力ブースト回路1021の正の電源入力に追加的なブーストを与える。第2の電力ブースト回路1021は、今度はこれによって第1の電力ブースト回路1020に同様の追加的なブーストを与えることができ、第1の電力ブースト回路1020は、今度はこれによって主増幅器1004に同様の追加的なブーストを与えることができる。結果として、出力信号1005は第3の閾値を上回って正の電源ライン1028の電圧のほとんど7倍に等しいレベルに上昇することを許される。
類似した仕方で、同じ例によれば、出力信号1005が第1の負の閾値(好ましくは、負の供給電力ライン1038の固定電圧に近い値に設定される)を上回ると、負の電源ライン1038に連携する第1の電力ブースト回路1030がアクティブになり、主増幅器1004の負の電源入力に追加的なブーストを与える。これは、出力信号1005が、負の供給電力ライン1038の電圧の3倍に、負の方向で、ほとんど等しいレベルに達するのを許す。出力信号1005が第2の負の閾値(好ましくは、負の供給電力ライン1038の固定電圧の3倍に近い値に設定される)を上回ると、第2の電力ブースト回路1031がアクティブになり、第1の電力ブースト回路1030の負の電源入力に追加的なブーストを与える。第1の電力ブースト回路1030は、今度はこれによって主増幅器1004に同様の追加的なブーストを与えることができ、出力信号1005が負の供給電力ライン1038の電圧のほとんど5倍に等しいレベルまで第2の負の閾値を上回るのを許す。出力信号1005が第3の負の閾値(好ましくは、負の供給電力ライン1038の固定電圧の5倍に近い値に設定される)を上回ると、第3の電力ブースト回路1032がアクティブになり、第2の電力ブースト回路1031の負の電源入力に追加的なブーストを与える。第2の電力ブースト回路1031は、今度はこれによって第1の電力ブースト回路1030に同様の追加的なブーストを与えることができ、第1の電力ブースト回路1030は、今度はこれによって主増幅器1004に同様の追加的なブーストを与えることができる。結果として、出力信号1005は第3の負の閾値を越えて負の電源ライン1038の電圧のほとんど7倍に等しいレベルに進むことを許される。
したがって、この例においては、出力信号1005は正および負の供給ライン1028、1038の通常の固定電圧のほぼ7倍の一時的なピーク電圧に達することを許され、主増幅器1004に対する使用可能な信号の範囲が大幅に増大するという結果をもたらす。
図16は、カスケード配列された電力ブースト回路を備えるトラッキング電源の別の実施例のブロック図であり、各電力ブースト段の出力は下流の電力ブースト段の入力に結合しているものである。図16において、「16xx」として番号を付けられた要素は、図10において同様に番号付けられた要素「10xx」に一般的に対応する。図10でと同様に、図16のトラッキング電源1600は、主増幅器1604を備え、主増幅器は、電源ライン1628、1638から、および電力ブースト回路から、選択的に電力供給を受ける。電力ブースト回路は、正の電源ライン1628に関連付けられた、第1の組のカスケード配列されたブースト回路または段1620、1621、1622(B1+、B2+、B3+でも示される)と、負の電源ライン1638に関連付けられた、第2の組のカスケード配列されたブースト回路または段1630、1631、1632(B1―、B2−、B3―でも示される)とを含む。図16のトラッキング電源1600は図10のものと同様に動作するが、違うのは、下流の正の電力ブースト回路1621、1622(B2+、B3+)および負の電力ブースト回路1631、1632(B2―、B3―)が主増幅器出力信号1605に直接応答する代わりに、第2段の正の電力ブースト回路1621(B2+)が第1段の正の電力ブースト回路1620(B1+)からの電源出力信号1691に反応し、第3段の正の電力ブースト回路1622(B3+)が第2段の正の電力ブースト回路1621(B2+)からの電源出力信号1693に反応することである。電源出力信号1691および1693が、主増幅器出力信号1605と共にではあるが異なるレベルで上昇させられるので、効果は主増幅器出力信号1605のピーク要求に応答する下流の正のブースト回路1621、1622と同様である。
同様に、第2段の負の電力ブースト回路1631(B2−)は、第1段の負の電力ブースト回路1630(B1−)からの電源出力信号1692に反応し、第3段の負の電力ブースト回路1632(B3−)は、第2段の負の電力ブースト回路1631(B2−)からの電源出力信号1694に反応する。
図10および16に図示されているカスケード配列された電力ブースト手法は、たとえば、図3、4、6、8A、8Bまたは9に図示されているものに類似の多増幅器環境に適用することができる。増幅器出力信号を監視するかまたは増幅器の各々に対する入力信号を増幅したもののレベルを個別に監視し、電力ブースト制御信号を様々な電力ブースト回路に与えるために、任意で制御回路(図示しない)を設けてもよい。その場合その様々な電力ブースト回路は、増幅器(単数または複数)からの最も高いおよび最も低い出力信号とそれぞれ連係して、正のおよび/または負の供給電圧を通常の電圧レールより上にまたは下に一時的に上昇または下降させる。
図11は、本明細書に開示された一つまたはそれ以上の実施例に従い、図10に図示されたカスケード配列電力ブースト回路の諸原理に一般的に従う、単一チャンネルのカスケード配列ブーストの電力増幅システム1100のハイレベルの図であるが、一つの代表的な実施例に従って追加的な実施上の詳細を示すものである。図11の設計は、正および負の電源ラインの各々に対してカスケード配列の電力ブースト回路二つだけを図示しているが、その原理は、たとえば三つまたはそれ以上のカスケード配列された電力ブースト回路(たとえば図10に図示されたような)にも適用可能である。さらに、図11は単一チャンネルの電力増幅器のみを図示しているが、その原理は多チャンネル増幅器にも同様に適用可能である。
図11の例に示されるように、主増幅器1104(「A1」で示す)はソース信号1102を増幅する。主増幅器1104は従来の設計のどれでもよいが、好ましくは高い電源除去比(PSRR)を有する。この例では主増幅器1104は一般的に従来の方法で負荷(たとえば、拡声器1170)に、任意でカップリングコンデンサ1115(「C1」)を介して、接続される。負荷の他方の入力1138が接地に接続されている実施例では、たとえば、カップリングコンデンサ1115は無し、ですませてもよい。主増幅器1104は、好ましくは電源ライン1128(Vs+)および1138(Vs−)に、それぞれダイオード1129(「D2」)および1139(「D8」)を介して、結合する。ダイオード1129および1139は、早いスイッチング時間を提供しかつ電位ブーストレベルも最大化するように、好ましくはショットキー形ダイオードであり、あるいは、それと同様の特性を有するものとする。
第1の正の電力ブースト回路と連携する第1の正の電力ブースト増幅器1120(正の供給電圧に関係しているので一部では「B1+」で示される)は、好ましくは、ダイオード1147(「D1」)を介して正の電源ライン1128(Vs+)に、また直接負の電源ライン1138(Vs−)に、結合する。そしてそれらの供給源から第1の正の電力ブースト増幅器1120はその電力を引き出す。第1の負の電力ブースト回路と連携する第1の負の電力ブースト増幅器1130(負の供給電圧に関係しているので一部では「B1―」で示される)は、好ましくは、直接正の電源ライン1128(Vs+)に、またダイオード1157(「D8」)を介して負の電源ライン1138(Vs―)に、結合する。そしてそれらの供給源から第1の負の電力ブースト増幅器1130はその電力を引き出す。第1の正のおよび第1の負の電力ブースト増幅器1120および1130は、蓄電コンデンサ1125(「C2」)および1135(「C4」)を介して主増幅器1104の電源入力1107、1108(図11でVboost1+およびVboot1−で示す)にそれぞれ結合する。第1の正の電力ブースト増幅器1120からの出力信号1122は、第1の正の電力ブースト機能がアクティブでないとき、電圧レベルVs−(負の供給レール)にあり、第1の負の電力ブースト増幅器1130からの出力信号1132は、第1の負の電力ブースト機能がアクティブでないとき、電圧レベルVs+(正の供給レール)にある。結果として、蓄電コンデンサ1125は、第1の正の電力ブースト機能が必要でないときに通常フル充電され、コンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD2)となる。ここでVD2はD2両端の電圧降下である。同様に、蓄電コンデンサ1135は、第1の負電力ブースト機能が必要でないときに通常フル充電され、コンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD8)となる。ここでVD8はD8両端の電圧降下である。14.4Vの電源では、蓄電コンデンサ1125、1135の各々の両端の電圧は、かくして典型的には約13.9Vとなる。別の実施例において、蓄電コンデンサ1125(「C2」)および1135(「C4」)は小さいバッテリのような他の蓄積エネルギ源と置き換えても良いし、あるいはスーパーコンデンサまたはウルトラコンデンサのようなハイブリッドを含んでもよい。
第2の正の電力ブースト回路と連携する第2の正の電力ブースト増幅器1140(正の供給電圧に関係しているので一部では「B2+」で示される)および第2の負の電力ブースト回路と連携する第2の負の電力ブースト増幅器1150(負の供給電圧に関係しているので一部では「B2―」で示される)は、それぞれ、電源ライン1128(Vs+)および1138(Vs−)に結合する。第2の正の電力ブースト増幅器1140は、蓄電コンデンサ1142(「C3」)を介して第1の正の電力ブースト増幅器1120の電源入力1141(図11でVboost2+で示す)に結合する。第2の負の電力ブースト増幅器1150は、蓄電コンデンサ1152(「C5」)を介して第1の負の電力ブースト増幅器1130の負の電源入力1151(図11でVboost2―で示す)に結合する。第2の正の電力ブースト増幅器1140からの出力信号1143は、第2の正の電力ブースト機能がアクティブでないとき、電圧レベルVs−(負の供給レール)にあり、第2の負の電力ブースト増幅器1150からの出力信号1153は、第2の負の電力ブースト機能がアクティブでないとき、電圧レベルVs+(正の供給レール)にある。結果として、蓄電コンデンサ1142は、第2の正の電力ブースト機能が必要でないときに通常フル充電され、コンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD1)となる。ここでVD1はダイオード1147(「D1」)両端の電圧降下である。同様に、蓄電コンデンサ1152は、第2の負電力ブースト機能が必要でないときに通常フル充電され、コンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD7)となる。ここでVD7はダイオード1157(「D7」)両端の電圧降下である。14.4Vの電源では、蓄電コンデンサ1142、1152の各々の両端の電圧は、かくして典型的には約13.9Vとなる。
第1の正の電力ブースト増幅器1120および第1の負の電力ブースト増幅器1130は、それぞれの電圧オフセット回路を介して主増幅器1104の出力を検知する。電圧オフセット回路は、この例では、第1の正の電力ブースト増幅器1120に対してはツエナーダイオード1181(「D3」)およびダイオード1183(「D5」)を含み、第1の負の電力ブースト増幅器1130に対してはツエナーダイオード1191(「D9」)およびダイオード1193(「D11」)を含む。ツエナーダイオード1181および1191は、好ましくは、主増幅器出力信号1105が、ダイオード1183(「D5」)および1193(「D11」)によって提供されるそれ以上の電圧降下を考慮に入れて、前に記載したように予め定義されたオフセット以内で、それぞれ正の電源レール電圧または負の電源レール電圧に近づくと、それぞれ第1の正の電力ブースト増幅器1120および第1の負の電力ブースト増幅器1130がアクティブになるように選択された逆バイアス電圧を有する。このようにして、たとえば、ツエナーダイオード1181(「D3」)の逆バイアス電圧は約12ボルトとなるように選択されてよく、そのために、第1の正の電力ブースト増幅器1120は5.4ボルト(ダイオード1183(「D5」)の両端の電圧降下約0.6ボルトを考慮して)でアクティブになる。これはすなわち、電源入力信号1107(Vboost+)より約1.3ボルト下であり、あるいは7.2ボルトの通常の正の電源レール(Vs+)より約1.8ボルト下である。同様に、ツエナーダイオード1191(「D9」)の逆バイアス電圧は約12ボルトとなるように選択されてよく、そのために、第1の負の電力ブースト増幅器1130は-5.4ボルト(ダイオード1193(「D11」)の両端の電圧降下約0.6ボルトを考慮して)でアクティブになる。これはすなわち、負の電源入力信号1108(Vboost−)より約1.3ボルト少なく、あるいは公称-7.2ボルトの負の電源レール(Vs−)より1.8ボルト少ない。
同様に、第2の正の電力ブースト増幅器1140および第2の負の電力ブースト増幅器1150は、それぞれの電圧オフセット回路を介して主増幅器1104の出力を検知する。電圧オフセット回路は、この例では、第2の正の電力ブースト増幅器1140に対してはツエナーダイオード1182(「D4」)およびダイオード1184(「D6」)を含み、第2の負の電力ブースト増幅器1150に対してはツエナーダイオード1192(「D10」)およびダイオード1194(「D12」)を含む。ツエナーダイオード1182および1192は、好ましくは、主増幅器出力信号1105が、ダイオード1184(「D6」)および1194(「D12」)によって提供されるそれ以上の電圧降下を考慮に入れて、前に記載したように予め定義されたオフセット以内で、それぞれ正の電源レール電圧または負の電源レール電圧の3倍に近づくと、それぞれ第2の正の電力ブースト増幅器1140および第2の負の電力ブースト増幅器1150がアクティブになるように選択された逆バイアス電圧を有する。このようにして、たとえば、ツエナーダイオード1182(「D4」)の逆バイアス電圧は約24.6ボルトとなるように選択されてよく、そのために、第2の正の電力ブースト増幅器1140は18.0ボルト(ダイオード1184(「D6」)の両端の電圧降下を考慮して)でアクティブになる。これはすなわち、電力ブースト増幅器1120がクリップするレベルより約1.3ボルト下である。ツエナーダイオード1192(「D10」)の逆バイアス電圧も約24.6ボルトとなるように選択されてよく、そのために、第2の負の電力ブースト増幅器1150は-18.0ボルト(ダイオード1194(「D12」)の両端の電圧降下を考慮して)でアクティブになる。これはすなわち、電力ブースト増幅器1130がクリップするレベルより約1.3ボルト下である。
ツエナーダイオード1181、1182、1191および1192について選択される逆バイアス電圧値は多数の要素に依存し得るが、その要素は、望まれるオフセット値、ツエナーダイオード電圧定格の精度および許容誤差、ピーク信号レベルの予期される期間、ブーストが持続している間の予想される電圧垂下、ならびに特定の電圧定格を持つツエナーダイオード商品の入手し易さ、を含む。
図11に示されるように、主増幅器出力信号1105の大きさに連携する代わりに、第2の正のおよび負の電力ブースト増幅器1140、1150のための電圧オフセット回路は、正の電源入力信号1107および負の電源入力信号1108にそれぞれ連携してもよく、そうでなければ、第1の正のおよび負の電力ブースト増幅器1120、1130からの出力信号1122および1132にそれぞれ連携してもよい−前に記載した図16のブロック図に一般的に従って。このような場合は、ツエナーダイオード1182および1192の値は、第1の正または負の電力ブースト増幅器1120、1130のクリップする場合の一定の閾値(たとえば、1.3ボルト)以内にこれらの信号が近づくと、第2の正および負の電力ブースト増幅器1140、1150をアクティブにするように選択されることになる。総体的な効果は、正の電源入力信号1107または負の電源入力信号1108の上昇が主増幅器出力信号1105の対応する上昇を反映するので、大部分は同一となろう。この場合、ツエナーダイオード1182および1192は、たとえば、第1の正または負の電力ブースト増幅器1120、1130の出力信号1122、1132に接続される場合は12ボルトの逆バイアス電圧、正および負の電源入力1107、1108に接続される場合は25.9ボルトの逆バイアス電圧、を持ってよい。
動作において、第1の正の電力ブースト増幅器1122および第1の負の電力ブースト増幅器1132は、主増幅器1104の出力を検知し、蓄電コンデンサ1125(「C2」)および1135(「C4」)を介して主増幅器1104の電源入力信号1107、1108を駆動する出力信号1122、1132を生成する。第2の正の電力ブースト増幅器1140は、主増幅器1104の出力を検知し、蓄電コンデンサ1142(「C3」)を介して第1の正の電力ブースト増幅器1120の電源入力信号1141を駆動する出力信号1143を生成し、第2の負の電力ブースト増幅器1150は、主増幅器1104の出力を検知し、蓄電コンデンサ1152(「C5」)を介して第1の負の電力ブースト増幅器1130の電源入力信号1151を駆動する出力信号1153を生成する。
静止条件下では、主増幅器1104のDC出力電圧は通常、正および負の電源レールVs+およびVs-の中間にある。主増幅器1104の必要とされる出力が電源レールVs+およびVs-によって課される限度を下回るときは、増幅システム1100は従来の増幅器として動作する。言い換えれば、主増幅器1104はそれぞれダイオードD2およびD8を介して正および負の供給ライン1128、1138から電力を引き出し、ソース信号1102は従来の方法で主増幅器1104によって増幅される。
また、静止条件下では、第1の正の電力ブースト増幅器1120および第2の正の電力ブースト増幅器1140のそれぞれ出力1122および1143でのDC出力電圧は、第1の正の電力ブースト増幅器1120および第2の正の電力ブースト増幅器1140への入力がそれぞれ抵抗R2およびR3を介しておおよそVs−に維持されていると、ダイオード1181(「D3」)、1182(「D4」)、1183(「D5」)および1184(「D6」)が非導通なので、実質的にVs−に等しい。その結果、蓄電コンデンサ1125はこの時点で充電され、そのコンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD2)となる。ここでVD2はダイオード1129(「D2」)両端の電圧降下である。同様に、蓄電コンデンサ1142はこの時点で充電され、そのコンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD1)となる。ここでVD1はダイオード1147(「D1」)両端の電圧降下である。
同様に、静止条件下では、第1の負の電力ブースト増幅器1130および第2の負の電力ブースト増幅器1150のそれぞれ出力1132および1153でのDC出力電圧は、第1の負の電力ブースト増幅器1130および第2の負の電力ブースト増幅器1150への入力がそれぞれ抵抗R6およびR7を介しておおよそVs+に維持されていると、ダイオード1191(「D9」)、1192(「D10」)、1193(「D11」)および1194(「D12」)が非導通なので、実質的にVs+に等しい。その結果、蓄電コンデンサ1135は充電され、そのコンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD8)となる。ここでVD8はダイオード1139(「D8」)両端の電圧降下である。同様に、蓄電コンデンサ1152は充電され、そのコンデンサ電圧差は(Vs+−Vs-−VD7)となる。ここでVD7はダイオード1157(「D7」)両端の電圧降下である。
主増幅器1104の必要とされる出力が電源レールVs+およびVs-によって課される限度を下回るときは、増幅システム1100は従来の増幅器として動作する。言い換えれば、主増幅器1104はそれぞれダイオードD2およびD8を介して正および負の供給ライン1128、1138から電力を引き出し、ソース信号1102は従来の方法で主増幅器1104によって増幅される。
しかしながら、主増幅器出力信号1105が電源レール1128(Vs+)および/または1138(Vs-)に近づくかそれを超えるようになることが要求されるような振幅にソース信号1102が達したとき、増幅システム1100の動作は電力出力を増やせるように変化する。主増幅器1104は通常ダイオード1129および1139(D2およびD8)を介して電源レールVs+およびVs-から電流を引き出し、電力を負荷、たとえば、拡声器1170、に供給する。したがって、電力ブースト回路の効果が無い場合は通常の条件で最大のピークトゥピーク出力電圧は、式:(Vs+−Vs-)−(VD1+VD2)によって一般的に与えられる。すなわち、最大のピークトゥピーク出力電圧は正および負の供給レール間の差からダイオード1129、1139によって生じる電圧降下を差し引いた値となる。増幅システム1100において、主増幅器1104からの出力電圧が正または負の供給レールに近づくと、電力ブースト増幅器1120または1130(信号の極性に応じて)が、必要に応じて電源入力信号(単数または複数)1107および/または1108を強制的に一時的に増大させ、主増幅器出力信号1105の電圧振幅を増加させることを可能にする。
増幅器システム1100の電力ブースト動作をより詳細に以下で説明するが、ソース信号1102が正であって正電源入力1107のブーストを必要とする場合の例をまず挙げて説明する。主増幅器出力信号1105が、Vs+の特定の範囲(1.3ボルトなど)以内で正供給レールVs+に近づくか、あるいは第1の正の閾値を超えると、ツエナーダイオードD3およびダイオードD5からなる電圧オフセット回路が導通しはじめて、第1の正の電力ブースト増幅器1120の入力1145が、主増幅器1104の出力に追従しはじめる。その結果、第1の正の電力ブースト増幅器1120(B1+)の出力1122が、Vs−の電位にあるその静止状態から上昇しはじめる。前に言及したように、その静止状態では、第1の正の電力ブースト増幅器1120は蓄電コンデンサ1125(C2)を(Vs+−VD2)の電圧まで充電している。主増幅器出力信号1105の上昇によってもたらされた出力信号1122の上昇は、蓄電コンデンサ1125(C2)を介して主増幅器1104の正電源入力1107に伝達され、その電位(Vboost1+)を上昇させる。これが起きると、ダイオード1129(D2)が遮断され、そのため主増幅器1104の正電源入力1107は正電源レールVs+から分離され、その代わりに主増幅器1104入力電流が蓄電コンデンサ1125(C2)を介して第1の正の電力ブースト増幅器1120(B1+)の出力から導出される。結果として、主増幅器出力信号1105はもはや正電源レールVs+による制限を受けない。
第1の正の電力ブースト増幅器1120(B1+)がたとえば単位利得を有する場合、主増幅器1104への正電源入力1107の電圧レベルは、或るオフセット量を伴うけれども、主増幅器1104出力電圧に追従し、そのため主増幅器出力信号1105の電圧レベルとその供給電圧、Vboost1+、との間の差が相対的に一定に、たとえば約1.3ボルトに、保たれる。このようにして主増幅器出力信号1105は、飽和および/またはクリッピングを回避しながら第1の閾値および正電源電圧Vs+より上に上昇することが可能になる。
この動作の振舞いは、主増幅器の出力が正レール電圧Vs+のレベルの3倍に近づく点に対応して、第1の正の電力ブースト増幅器1120の出力1122が正レール電圧Vs+近くに達するまで継続することができる。かくして、第1の正の電力ブースト増幅器1120からの出力信号1122が、Vs+の特定の範囲(1.3ボルトなど)以内で正供給レールVs+に近づくと、あるいは別の言い方では、主増幅器出力信号1105が3Vs+より少し下の第2の正の閾値を超えると、ツエナーダイオードD4およびダイオードD6からなる電圧オフセット回路が導通しはじめて、第2の正の電力ブースト増幅器1140の入力1146が、第1の正の電力ブースト増幅器1120の出力に追従しはじめる。その結果、第2の正の電力ブースト増幅器1140(B2+)の出力1143が、Vs−の電位にあるその静止状態から上昇しはじめる。前に言及したように、その静止状態では、第2の正の電力ブースト増幅器1140は蓄電コンデンサ1142(C3)を(Vs+−VD1)の電圧まで充電している。主増幅器出力信号1105の上昇によってもたらされた出力信号1143の上昇は、蓄電コンデンサ1142(C3)を介して第1の正の電力ブースト増幅器1120の正電源入力1141に伝達され、その電位(Vboost2+)を上昇させる。これが起きると、ダイオード1147(D1)が遮断され、そのため第1の正の電力ブースト増幅器1120の正電源入力1141は正電源レールVs+から分離され、その代わりに、その入力は蓄電コンデンサ1142を介して第2の正の電力ブースト増幅器1140(B2+)の出力から導出される。結果として、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1122はもはや正電源レールVs+による制限を受けない。
カスケード効果で、主増幅器出力信号1105の上昇によってもたらされた、出力信号1122の正電源レールVs+を超えての上昇は、蓄電コンデンサ1125(C2)を介して主増幅器1104の正電源入力1107に伝達され、その電位(Vboost1+)を上昇させる。ダイオード1129(D2)は遮断を維持し、そのため主増幅器1104の正電源入力1107は正電源レールVs+からの分離を継続し、その代わりに主増幅器1104入力電流が蓄電コンデンサ1125(C2)を介して第1の正の電力ブースト増幅器1120(B1+)の出力から導出される。結果として、主増幅器出力信号1105は、飽和および/またはクリッピングを避けつつ、今度は3Vs+より上に上昇することができる。対照的に、図1に示されたような同様の概念を用いた従来のトラッキングシステムでは、最大の電圧ブーストは供給レールのレベルをほぼ2Vs+上回るにすぎない。
上に述べた動作の振舞いは、第2の正の電力ブースト増幅器1140の出力1143が正の電源レール電圧Vs+に達してクリップするまで続くことができる。第1の正の電力ブースト増幅器1120の正電源入力1141(Vboost2+)は、それからはそれ以上は上昇せず、第1の正の電力ブースト増幅器1120の出力1122は、それからは僅か高く上昇することができるだけで(3Vs+−VD1)の最終電位にそれもまたクリップする。主増幅器の正電源入力1107(Vboost1+)は、それからはそれ以上は上昇せず、主増幅器出力信号1105は、それからは僅か高く上昇することができるだけで(5Vs+−VD2)の最終電位にそれもまたクリップする。
主増幅器出力信号1105が他の方向、すなわち負、に振れる場合は、同様の効果が第1の負電力ブースト増幅器1130(B1-)、蓄電コンデンサ1135(C4)およびダイオード1139(D8)に生じる。これらの構成要素は正供給の構成要素と同様の振舞いで動作するが、代わりに負電源入力1108(Vboost1−)を負供給レールVs−の電位より下に動かす。この動作の振舞いは、第1の負電力ブースト増幅器1130の出力1132が負レール電圧Vs-に達するまで継続することができる。
より詳細には、主増幅器出力信号1105が、Vs-の特定の範囲(1.3ボルトなど)以内で負供給レールVs-に近づくか、あるいは第1の負の閾値を超えると、ツエナーダイオードD9およびダイオードD11からなる電圧オフセット回路が導通しはじめて、第1の負の電力ブースト増幅器1130の入力1155が、主増幅器1104の出力に追従しはじめる。その結果、第1の負の電力ブースト増幅器1130(B1―)の出力1132が、Vs+の電位にあるその静止状態から(負の方向に)上昇しはじめる。前に言及したように、その静止状態では、第1の負の電力ブースト増幅器1130は蓄電コンデンサ1135(C4)を(Vs-+VD8)の電圧まで充電している。主増幅器出力信号1105の上昇によってもたらされた出力信号1132の上昇は、蓄電コンデンサ1135(C4)を介して主増幅器1104の負電源入力1108に伝達され、その電位(Vboost1-)を上昇させる。これが起きると、ダイオード1139(D8)が遮断され、そのため主増幅器1104の負電源入力1108は負電源レールVs-から分離され、その代わりに主増幅器1104入力電流が蓄電コンデンサ1135(C4)を介して第1の負の電力ブースト増幅器1130(B1-)の出力から導出される。結果として、主増幅器出力信号1105はもはや負電源レールVs-による制限を受けない。
第1の負の電力ブースト増幅器1130(B1-)がたとえば単位利得を有する場合、主増幅器1104への負電源入力1108の電圧レベルは、或るオフセット量を伴うけれども、主増幅器出力電圧1105の電圧レベルに追従し、そのため主増幅器出力信号1105の電圧レベルとその負の供給電圧、Vboost1-、との間の差が相対的に一定に、たとえば約1.3ボルトに、保たれる。このようにして主増幅器出力信号1105は、飽和および/またはクリッピングを回避しながら第1の負の閾値および負の電源電圧Vs-より下に下降することが可能になる。
第1の負の電力ブースト増幅器1130からの出力信号1132が、Vs-の特定の範囲(1.5ボルトなど)以内で負供給レールVs-に近づくと、すなわちそのことは、主増幅器1104の出力信号1105が負供給レールVs-の3倍の電圧レベルに近づくかまたは第2の負の閾値を超えると、に対応するが、そうすると、ツエナーダイオードD10およびダイオードD12からなる電圧オフセット回路が導通しはじめて、第2の負の電力ブースト増幅器1150の入力1156が、第1の負の電力ブースト増幅器1130の出力に追従しはじめる。その結果、第2の負の電力ブースト増幅器1150(B2―)の出力1153が、通常はVs+の電位にあるその静止状態から(負の方向へ)増大しはじめる。前に言及したように、その静止状態では、第2の負の電力ブースト増幅器1150は蓄電コンデンサ1152(C5)を(-Vs-+VD7)の電圧まで充電している。ここで、VD7はダイオード1157(D7)の両端の電圧降下である。主増幅器出力信号1105の下降によってもたらされた第2の負の電力ブースト増幅器の出力信号1153の下降は、蓄電コンデンサ1152(C5)を介して第1の負の電力ブースト増幅器1130の負電源入力1151に伝達され、その電位を負の供給レール(Vs-)より下に低下させる。これが起きると、ダイオード1157(D7)が遮断され、そのため第1の負の電力ブースト増幅器1130の負電源入力1151は負電源レールVs-から分離され、その代わりに、その入力は蓄電コンデンサ1152(C5)を介して第2の負の電力ブースト増幅器1150(B2-)の出力から導出される。結果として、第1の負の電力ブースト増幅器出力信号1132はもはや負電源レールVs-による制限を受けない。
主増幅器出力信号1105の下降によってもたらされた、負電源レールVs-を超えての出力信号1132の下降は、蓄電コンデンサ1135(C4)を介して主増幅器1104の負電源入力1108に伝達され、その電位(Vboost1-)を低下させる。ダイオード1139(D8)は遮断を維持し、そのため主増幅器1104の負電源入力1108は負電源レールVs-からの分離を継続し、その代わりに主増幅器1104入力電流が蓄電コンデンサ1135(C4)を介して第1の負の電力ブースト増幅器1130(B1-)の出力から導出される。かくして、主増幅器出力信号1105は、飽和および/またはクリッピングを避けつつ、3Vs-のレベルより下に下降することができる。
この動作の振舞いは、第2の負の電力ブースト増幅器1150の出力1153が負の電源レール電圧Vs-に達してクリップするまで続くことができる。第1の負の電力ブースト増幅器1130の負電源入力1151(Vboost2-)は、それからはそれ以上は下降せず、第1の負の電力ブースト増幅器1130の出力1132は、それからは僅かに低く下降することができるだけで(3Vs-+VD7)の最終電位にそれもまたクリップする。主増幅器の負電源入力1107(Vboost1-)は、それからはそれ以上は下降せず、主増幅器出力信号1105は、それからは僅かに低く下降することができるだけで(5Vs-+VD8)の最終電位にそれもまたクリップする。
カスケード配列された第1および第2の正の電力ブースト増幅器1120、1140によって正電源入力1107を正供給レールVs+を上回ってブーストするとともに、カスケード配列された第1および第2の負の電力ブースト増幅器1130、1150によって負電源入力1108を負供給レールVs-を下回ってブーストすることによって、主増幅器1104の正および負の電源入力1107および1108の両方を独立してブーストできることがこれで分かるであろう。この効果は、この例では、電力ブースト回路を持たない場合に比べて5倍の大きさの電圧振幅能力を主増幅器1104に提供する。
図12を参照して、図11の増幅システム1100の動作のさらなる説明を行うが、図12は、特定の一例による、単純化された様々な波形を図示する関連する一組のグラフを示している。図12において、一番上のグラフ1205は、信号波形1210によって図示された主増幅器A1の出力を図示するとともに、主増幅器A1の電源入力に与えられる正の電力ブースト信号1211に連携する、信号ピーク1212、1213の間の様々なブースト信号をも示している。図12にはまた、この例による第1および第2のカスケード配列された電力ブースト回路の動作を示すグラフ1215および1225も示されている。信号波形1210は、図11の主増幅器1104の出力1105を表し、実線の波形ライン1220(「B1+」でも示される)は図11における第1の正の電力ブースト増幅器1120からの出力信号1122を表し、また実線の波形ライン1230(「B2+」でも示される)は図11における第2の正の電力ブースト増幅器1140からの出力信号1143を表す。信号1211および1222(Vboost1+およびVboost2+でも示される)はそれぞれ、図11において同一の参照数字を有する電源入力信号1107、1141を表す。
図12に示すように、静止状態を表している時間T0−T1の期間の間は、グラフ1215における第1の正の電力ブースト増幅器出力1220(波形B1+)およびグラフ1225における第2の正の電力ブースト増幅器出力1230(波形B2+)はVs-電位にあり、グラフ1205における主増幅器電源入力1211(波形Vboost1+)およびグラフ1215における第1の正の電力ブースト増幅器電源入力1222(波形Vboost2+)はVs+電位にあり、また主電源出力信号1210(波形A1)は(Vs++Vs-)/2の電位にある。Vs+およびVs-が大きさは等しいが極性が反対である場合、主増幅器出力信号1210は期間T0−T1の間は接地電位にあることになる。
時間T1で、主増幅器出力信号1210は変化を開始する。時間T0からT3までの全期間にわたって、主増幅器出力信号1210(波形A1)は、やはりVs+で示した正の供給レール電圧とやはりVs-で示した負の供給レール電圧との間にとどまり、波形B1+、B2+,Vboost1+、およびVboost2+)は、電力ブーストがまだ必要とされないので静止電圧レベルを維持し続ける。
期間T3−T4においては、主増幅器出力信号1210(波形A1)が正の供給レール電圧Vs+に近づき、最終的に3Vs+より少ない第1のピーク1212に達すると、電圧オフセット回路ダイオードD3およびD5が導通し、第1の正のブースト増幅器1120への入力1145が主増幅器出力信号1210(波形A1)に追従し始める。したがって、第1の電力ブースト増幅器出力信号1220(波形B1+)は上昇し、主増幅器電源入力信号1211(波形Vboost1+)はそれを追跡し、たとえばオフセットΔ1に等しいかまたはそれに対応するあるオフセット量だけ波形A1より上にとどまる。かくして、主増幅器出力信号1210(波形A1)はクリッピングを回避し、上昇を続けることができる。
時間T4−T5の期間については、主増幅器出力信号1210(波形A1)が下降すると、主増幅器電源入力信号1211(波形Vboost1+)は、波形Vboost1+が正の電源レールVs+に等しい電位にもう一度なるまで追従し、そしてその地点で波形Vboost1+はダイオードD2の導通によって再びクランプする。主増幅器出力信号1210(波形A1)の電圧レベルがさらに下降すると、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1220(波形B1+)はVs−の電位に向かって下降し、それによってコンデンサC2を再充電する。
時間T6−T8の期間の間、主増幅器出力信号1210(波形A1)のレベルが3Vs+の電位を超えてそのレベルより上の第2のピーク1213に近づくと、第1の正のブースト増幅器出力信号1220(波形B1+)のレベルは、主増幅器1104に適切に電力供給できるように、それに応じてVs+より上に上昇する必要がある。したがって、期間T6−T8の間に主増幅器出力信号1210が上昇すると、電圧オフセット回路ダイオードD4およびD6が導通し始め、第2の正の電力ブースト増幅器出力信号1230(波形B2+)を、たとえばオフセットΔ2に等しいかまたはそれに対応するある閾値量だけオフセットして、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1220からの出力とともに、上昇させる。この動作は、第1の正の電力ブースト増幅器電源入力1222(波形Vboost2+)を増大させ、それは、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1220(波形B1+)がクリップするのを防止して主増幅器電源入力1211(波形Vboost1+)を引き続き増大させ、それによって主増幅器出力信号1210(波形A1)がクリップするのをも同様に防止する。この動作は、第2の正の電力ブースト増幅器出力信号1230(波形B2+)のレベルがVs+の電位でクリップするまで続き、そしてその地点で第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1220(波形B1+)または主増幅器出力信号1210(波形A1)はそれ以上大きな出力となることはなく、波形A1は最終的に5Vs+の正の出力電圧でクリップする。
実際の応用形態では、すでに述べたように、時間経過とともにオフセットレベルがある程度垂下または減退することがありうるが、本明細書で前に記載した実施例で、何らかの垂下または減退の効果を軽減するための技法について言及している。
カスケード配列された負の電力ブースト増幅器1130、1150についての電力ブーストも、類似の方法で動作する。したがって、主増幅器出力信号(波形A1)の電圧レベルがVs―で示される負の供給レール電圧に近づくと、負の電源入力信号1108(Vboost1-)はそれを追跡し、本明細書で前に記載したように潜在的に垂下または減退を受けることはありうるが、オフセットΔ1のようなあるオフセット量だけ出力信号レベルを超えてとどまる。主増幅器出力信号1210(波形A1)の電圧レベルが負の供給レール電圧の3倍(3Vs―)に近づくと、負の電源入力信号1108(Vboost1-)はそれを追跡し続け、オフセットΔ1のようなあるオフセット量だけ出力信号レベルを超えてとどまるが、一方で第2の電力ブースト増幅器1150は負の電源入力信号1108を追跡し、第1の電力ブースト増幅器1130への負の電源入力信号1151(Vboost2-)を上昇させ、それでオフセットΔ2のようなある量だけ負の電源入力信号1108より上にとどまる。この動作は、第2の負の電力ブースト増幅器出力信号1153がVs―の電位でクリップするまで続き、そしてその地点で主増幅器出力信号1210は5Vs―の負の出力電圧でクリップする。実際の応用形態では、すでに述べたように、時間経過とともにオフセットレベルがある程度垂下または減退することがありうるが、本明細書で前に記載した実施例で、何らかの垂下または減退の効果を軽減するための技法について言及している。
同様の結果を達成するために、図11に表されたのと同一の原理を利用して、様々な変形形態および代替回路構成がなされうること、そしてそのような変形形態および代替形態は本明細書に開示した発明概念の範囲内に含まれること、は当業者にとって理解されかつ認められるところであろう。たとえば、図11に示された増幅システム1100では、第2の正の電力ブースト増幅器1140への入力信号1146は主増幅器出力信号1105から駆動されているが、それに代えて、ツエナーダイオードD4およびダイオードD6の電圧オフセット回路がVs+のオフセット電位を持つようにして、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1122から駆動されるようにしてもよい。同様の構成を第2の負の電力ブースト増幅器1150への入力信号1156について用いてもよい。
また、増幅器におけるクリッピングの開始を検出してそれを阻止するためのフィードバック回路構成について本明細書において言及している既に記載された実施例に関連して使用されている概念は、カスケード配列された電力ブースト回路構成に必要に応じて適合させるために適切な修正をして、図11の増幅システム1100に用いられることもできる。
前に指摘したように、本願の図10の説明に合致させて、電力ブースト回路を追加して設けて、同様のやり方でカスケード配列させることができ、それによって、システム全体の電力ブースト範囲を増大させることができる。いくつかの場合には、システムの状況および必要性に依存して、電力ブースト回路を正の供給レールのみに設けて負の供給レールには設けない、あるいはその逆、としてもよい。
図13は、図11の原理と一致する特定の利用形態の追加的な回路詳細を図示するもので、一つの代表的な実施例による単一チャンネルの、ブーストをカスケード配列した電力増幅システム1300を示す。図13は単一チャンネルの電力増幅器のみを図示しているが、その原理は多チャンネルの増幅器にも同様に適用できるものである。
一般的に図13で「13xx」と表示した要素は、図11で「11xx」と表示した同様の要素に対応している。かくして、図13の例で示される通り、主増幅器1304(「A1」で示す)はソース信号1302を増幅する。主増幅器1304は従来の設計のどれでもよいが、前にも述べたように、好ましくは高い電源除去比(PSRR)を有するものとする。主増幅器1304は出力信号1305を有し、それはたとえば拡声器(図示せず)に、任意でカップリングコンデンサ1315(「C1」)を介して、接続されている。図11でと同じように、主増幅器1304は、好ましくは電源ライン1328(Vs+)および1338(Vs−)に、それぞれダイオードD2およびD8を介して、結合している。第1の正の電力ブースト回路と連携する第1の正の電力ブースト増幅器1320(B1+)の電源入力は、好ましくは、ダイオードD1を介して正の電源ライン1328(Vs+)に、また直接負の電源ライン1338(Vs−)に、結合する。そしてそれらから第1の正の電力ブースト増幅器1320はその電力を引き出す。第1の負の電力ブースト回路と連携する第1の負の電力ブースト増幅器1330(B1―)の電源入力は、好ましくは、直接正の電源ライン1328(Vs+)に、またダイオードD8を介して負の電源ライン1338(Vs―)に、結合する。そしてそれらから第1の負の電力ブースト増幅器1330はその電力を引き出す。第1の正のおよび第1の負の電力ブースト増幅器1320および1330は、蓄電コンデンサC2およびC4をそれぞれ介して主増幅器1304の電源入力1307、1308(図13でVboost1+およびVboot1−で示す)にそれぞれ結合する。
第2の正の電力ブースト回路と連携する第2の正の電力ブースト増幅器1340(B2+)および第2の負の電力ブースト回路と連携する第2の負の電力ブースト増幅器1350(B2―)の電源入力は、それぞれ、電源ライン1328(Vs+)および1338(Vs−)に結合する。第2の正の電力ブースト増幅器1340は、蓄電コンデンサC3を介して第1の正の電力ブースト増幅器1320の電源入力1341(Vboost2+)に結合する。第2の負の電力ブースト増幅器1350は、蓄電コンデンサC5を介して第1の負の電力ブースト増幅器1330の負の電源入力1351(Vboost2―)に結合する。
動作において、図13の回路は、一般的に図11の回路について前に記載したのと同じように動作し、その結果、通常利用可能な電圧振幅の5倍までを主増幅器1304に与える。
図11および13に示した実施例では電圧オフセット回路を構成するのにツエナーダイオードを用いたが、代替の実施例では、発明の範囲および精神から逸脱しない限り、他の電圧基準回路を使用してもよい。
図10、11、12および13に関して上に記載した概念は、前に記載したのと同じ技法を用いて多チャンネル増幅器に適用できる。一つの例として、図14Aは、一般的にN個の増幅器1404a...nの場合に拡張して図8Bおよび9のフィードバック制御手法を使用し、かつ主増幅器1404a...nのための正および負の供給レールの両方に対して一組のカスケード配列した電力ブースト増幅器を用いた、増幅器用電力ブースト回路の実施例を示す。図9と同様に、図14Aの増幅システム1400は比較制御器1460を含み、その比較制御器1460は、さまざまな増幅器出力1405a...nからの最も大きな正の電圧値(「最良のN」)およびさまざまな増幅器出力1405a...nからの最も大きな負の電圧値(「最小のN」)を決定し、これらの値(図14AにおいてVNHIGHおよびVNLOWで示す)をカスケード配列された正の電力ブースト増幅器1420、1440およびカスケード配列された負の電力ブースト増幅器1430、1450に与える。この例では、主増幅器1404a...nの信号出力レベルは、前に記載した例と同様に、対応する入力信号1402a...nに、それぞれの利得ブロック1470a...nを介して主増幅器1404a...nの各々の利得に合う適切な利得値G1..Gnを掛けることによって得られる。正または負の供給電圧と、図14Aの主増幅器1404a...nのうちいずれかの最大正/負出力との間の差が、フィードバックループを駆動するために用いられる。このようにして、電源電圧が、主増幅器1404a...nのいずれもがクリップするのを防ぐのに充分なだけ常に大きいことを確保することができる。
図14Aにおける増幅システム1400の手法の背後にある一つの一般的な前提は、主増幅器1404a...nの最大出力電圧と作動供給電圧との間の差を直接検知し、(最も単純な実用形態では、少なくとも)電力ブースト機能を提供するときに、この差を一定に維持するように電力ブースト増幅器1420、1430、1440、1450の出力を駆動することである。この目的のために、電力ブースト増幅器1420、1430、1440、1450は好ましくは高利得タイプの増幅器として実施され、主増幅器1404の出力端子および電源端子を負のフィードバックループに組み込む。
この実施例において、正供給電圧検知回路1423、1483および負供給電圧検知回路1433、1493がそれぞれ正および負の供給電圧のレベルを検知する。これらの値は通常の固定オフセットと組み合わされ、図14Aに示す正の可変オフセット回路1424,1484および負の可変オフセット回路1434、1494によって反映される可変オフセット値に達する。主増幅器1404a...nの最大出力が電源レールから所定の電圧差以内に達すると、負のフィードバックループが動作状態になる。低い出力レベルでは、電力ブースト増幅器1420、1430、1440、1450は正および負の供給レール、Vs+およびVs−にそれぞれ維持され、主増幅器1404a...nは電源レールVs+およびVs−から通常の通り動作する。しかし、主増幅器1404a...nの最大出力が正供給レールVs+の一定量(たとえば、1.3ボルト)以内に達すると直ちに、フィードバックループが第1の正の電力ブースト増幅器1420の出力を正に駆動し始める(主増幅器1404a...nの負の最大出力が負供給レールVs−の一定量以内に達すると、同様の現象が第1の負の電力ブースト増幅器1430について起きる)。この動作は、電源入力信号1407、すなわちVboost+、を、蓄電コンデンサ1425を介して正方向に駆動し、したがって、主増幅器1404a...nの最大出力1461と正電源入力1407の作動レベルとの間の電圧差を減らすように働く。この効果は、次いで第1の正の電力ブースト増幅器1420への駆動信号を低減する。
上記の効果は、負のフィードバックループの動作の結果として生じ、このループが安定であるように設計されていると仮定すると、主増幅器1404a...nの最大出力1461と作動正供給電圧との間の差が基準レベルを下回ることを防ぐように動作する。主増幅器1404a...nの出力信号の電圧レベルは、それぞれの入力に対して印加される信号1402a...nによって、その動作が線形領域にある増幅器にとって通常動作するように決定され、したがって、フィードバックループが動作可能になると、その動作は、電源電圧が主増幅器1404a...nの最大出力電圧信号1461を上回る所定のオフセット(たとえば、1.3ボルト)で追跡することを可能にする。結果として、主増幅器1404a...nはクリップせず、主増幅器1404a...nは、電力ブースト増幅器1420、1430がクリップしていない限り、負荷への増大する電圧を駆動し続ける。この効果は、増大した出力能力、最大クリップレベルおよび主増幅器1404a...nの効率に関して、図11に示されたシステム1100に関して記載したものと同様である。電力ブースト増幅器1420、1430の利得を、主増幅器1404a...nのどれの利得にも合わせる必要はない。
理想的には、電圧差が一定のレベルに維持されるのであれば、第1の正および負の電力ブースト増幅器1420、1430の利得は無限となろう。しかしながら、これは実際的ではないし、有限の利得では電圧差は大きな電圧振幅で減少することになる。このような状況は、望まれるものとは典型的に正反対である。かえって、電圧差を高い出力レベルで増大させることがしばしば好ましい。このような効果は、主増幅器信号出力レベルが増大するとともに変化するような基準レベルを用いることによって達成することができる。前に説明したように、図14Aにおけるシステム1400は、主増幅器1404a...nの最大出力とその供給端子との間の差を検知し、その差がある基準レベルを下回るのを防ぐように動作する。この基準レベルは、電力ブースト増幅器1420、1430の有限の利得に起因する誤りをオフセットするように動作する可変オフセット回路1424、1434を用いて、主増幅器信号出力レベルに比例して増大するように好ましくはなされる。比例定数が適切に選ばれたならば、限定された利得の効果は正確に相殺されることができ、それによって、ひとたびフィードバックループが動作すると、主増幅器1404a...nの最大出力信号1461または1462とそれぞれの正または負の電源端子との間の差が一定の電圧に維持される。比例定数がこの量よりも高いならば、電圧差は、電力ブースト増幅器1420および1430(B1+およびB1−)が1よりも大きい利得を有するときに得られるであろう効果を模倣して、出力レベルとともに増大する。
図14Aに関して記載されたフィードバック構成は、蓄電コンデンサ電圧の垂下で発生する潜在的な問題をも克服する。蓄電コンデンサ1425、1435はフィードバックループ内に閉じ込められているために、垂下は最初は何の効果も持たない。電力ブースト増幅器1420または1430が自動的により強く駆動されてこの垂下を補償する。ひとたび電力ブースト増幅器1420または1430がその供給レールで飽和すると、この補正はもはや行われず、主増幅器1404a...nの最大の出力はクリップまで駆動される(本明細書で詳述されたようなカスケード配列された電力ブースト回路によって与えられるそれ以上のブーストなしに)が、一般的に出力電圧の壊滅的崩壊は生じない。
同様の動作が、第2の正および負の電力ブースト回路についても生じる。すなわち、主増幅器1404a...nの最大出力が正供給レールの3倍(すなわち、3Vs+)の一定量(たとえば、1.5ボルト)以内に達すると、第2の正ブーストのフィードバックループが第2の正の電力ブースト増幅器1440の出力を正に駆動し始める(主増幅器1404a...nの負の最大出力が負供給レールの3倍、すなわち3Vs−、の一定量以内に達すると、同様の現象が第2の負の電力ブースト増幅器1450について起きる)。この動作は、第1の正の電力ブースト増幅器1420の電源入力信号1441を、蓄電コンデンサ1442を介して、正方向に駆動し、一方それは第1の正の電力ブースト増幅器1420がクリップするのを防止し、主増幅器1404a...nの電源入力1407(Vboost+)を正の方向へ引き続き上昇させる。これは、主増幅器1404a...nの最大出力1461と第1の正の電力ブースト増幅器1420の正電源入力1441の作動レベルとの間の電圧の差を減らすように働く。この効果は、次いで第2の正の電力ブースト増幅器1440への駆動信号を低減する。
上記の効果は、負のフィードバックループ(すなわち、第2の正ブーストのフィードバックループ)の動作の結果として生じ、このループが安定であるように設計されていると仮定すると、主増幅器1404a...nの最大出力1461と第1の正の電力ブースト増幅器1420の作動正供給電圧1441との間の差が基準レベルを下回ることを防ぐように動作する。同じことが第2の負の電力ブースト増幅器1450についても起こる。第2の負の電力ブースト増幅器1450は、類似のやり方で、第2の負ブーストのフィードバックループの一部である可変オフセット回路1494から電力供給を受け、主増幅器1404a...nの最大の負の出力1462と第1の負の電力ブースト増幅器1430の負電源入力1451の作動レベルとの間の電圧の差を維持する。結果として、主増幅器1404a...nはクリップせず、そして主増幅器1404a...nは、電力ブースト増幅器1420、1430がクリップしていない限り、負荷への増大する電圧を正または負のいずれかの方向へ駆動し続ける。この効果はまた、増大した出力能力、最大クリップレベルおよび主増幅器1404a...nの効率に関して、図11に示されたシステム1100に関して記載したものと同様である。第2の正または負の電力ブースト増幅器1440、1450の利得を、主増幅器1404a...nのどれの利得にも合わせる必要はない。
理想的には、電圧差が一定のレベルに維持されるのであれば、第2の正および負の電力ブースト増幅器1440、1450の利得は無限となろう。第1の正および負の電力ブースト増幅器1420、1430に関して説明したように、主増幅器信号出力レベルの増加とともに変化する基準レベルを用いることによって、高い出力レベルで電圧差を増大させることが可能である。図14Aにおける第2の正および負の電力ブースト回路は、主増幅器1404a...nの最大出力(それぞれ正または負)とその供給端子との間の差を検知し、その差がある基準レベルを下回るのを防ぐように動作する。この基準レベルは、前と同様に、電力ブースト増幅器1440、1450の有限の利得に起因する誤りをオフセットするように動作する可変オフセット回路1484、1494を用いて、主増幅器信号出力レベルに比例して増大するように好ましくはなされる。比例定数が適切に選ばれたならば、限定された利得の効果は正確に相殺されることができ、それによって、ひとたび第2の正ブースト/負ブーストのフィードバックループが動作すると、主増幅器1404a...nの最大出力信号1461または1462とそれぞれの正の電力ブーストの電源入力信号1441または負の電力ブーストの電源入力信号1451との間の差が一定の電圧に維持される。比例定数がこの量よりも高いならば、電圧差は、電力ブースト増幅器1440および1450(B2+およびB2−)が1よりも大きい利得を有するときに得られるであろう効果を模倣して、出力レベルとともに増大する。
図14Aに関して記載されたフィードバック構成は、蓄電コンデンサ電圧の垂下で発生する潜在的な問題をも克服する。蓄電コンデンサ1442、1452は第2の正ブースト/負ブーストのフィードバックループ内にそれぞれ閉じ込められているために、垂下は最初は何の効果も持たない。電力ブースト増幅器1440または1450が自動的により強く駆動されてこの垂下を補償する。ひとたび電力ブースト増幅器1440または1450がその供給レールで飽和すると、この補正はもはや行われず、主増幅器1404a...nの最大の出力はクリップまで駆動されるが、一般的に出力電圧の壊滅的崩壊は生じない。
図14Bは、他の実施例による、カスケード配列された電力ブースト回路を含むNチャンネルの電力増幅器1400’の他の例を示す図である。図14Bにおいて、
「14xx」と表示した要素は、図14Aで「14xx」と表示した同様の要素に一般的に対応している。基本的な違いは、図14Bでは、第2段の正の電力ブースト増幅器1440’および第2段の負の電力ブースト増幅器1450’の電圧オフセット回路が最も高いおよびもっとも低い増幅器信号1461’、1462’にそれぞれ結合する代わりに、第1段の正および負の電力ブースト増幅器1420’、1430’によってそれぞれ制御される、主増幅器1404a’..n’への正の電源信号1407’および主増幅器1404a’..n’への負の電源信号1408’に、第2段の正の電力ブースト増幅器1440’および第2段の負の電力ブースト増幅器1450’がそれぞれ結合することである。したがって、第2段の正および負の電力ブースト増幅器1440’、1450’は、最も高いおよびもっとも低い主増幅器出力信号1461’、1462’のピーク振幅に間接的に反応することになり、一般的な効果は同じである。
図14Aおよび14Bについて記載されたフィードバックアプローチの変形例も採用することができる。それによれば、電源電圧と主増幅器1404a...n(または1404a’..n’)の入力を増幅したものとの間の差を検知するのではなく、電源電圧と、主増幅器1404a...n(または1404a’..n’)からの直接出力との間の差を代わりに使用、してフィードバックループを駆動するものである。このような場合、利得段1470a...n(または1470a’..n’)は不要となろう。
本明細書に記載された他の多チャンネルの実施例のいくつかでと同様に、より低い出力電圧を有する主増幅器1404a...n(または1404a’..n’)は典型的には必要な供給電圧より大きくなってしまい、したがってそれらの効率はある程度落ちることになるが、これは許容しうるトレードオフであろう。
図14Aおよび14Bにおけるシステムのものと同じ原理は、三つ以上のカスケード配列された電力ブースト回路を有するカスケード配列電力ブーストシステムにも適用することができる。
別の実施例では、最も高いまたは最も低い主増幅器出力信号を出力する図14Aおよび14Bにおける比較制御器1460、1460’の代わりに、第1および第2の正および/または負の電力ブースト回路を起動させるような適切な閾値レベルに最も高いまたは最も低い主増幅器出力信号を比較する、やや高度な制御器によって、比較制御器を置き換えても良い。そのような場合、電圧オフセット回路は使用せず、制御器内の比較回路で置き換えることになる。図14Aにおいて、信号1461および1462は、二つの起動信号にそれぞれ置き換えてもよい。起動信号の一つは第1段の正または負の電力ブースト増幅器に対するもので、もう一つは第2段の正または負の電力ブースト増幅器に対するものである。一方、図14Bでは、信号1461’および1462’は、第1段の正または負の電力ブースト増幅器に対する単一の起動信号で置き換えることになる。なぜなら、第2段の正または負の電力ブースト増幅器1440’、1450’は第1段の正または負の電力ブースト増幅器1420’、1430’の出力に直接応答するからである。
本明細書で図示しあるいは記述した多数の実施例は正および負の電源レールに関して一般的に記載してきたが、負の電源レールは等価的に接地に設定することができ、および/または、電力ブースト回路は一つの電力レールもしくは電力源で動作するようにしてもよいことが理解され認識されなければならない。図15は、本明細書に開示した実施例によるカスケード配列電力ブースト回路を有するトラッキング電源の一例を図示する回路概略図であり、図17は、図15の電力ブースト回路の動作に関する特定の電圧波形および相互関係の一例を図示する一組のグラフを示す。図15の実施例において、「15xx」と表示した要素は、図13で「13xx」と同様の数字を付けた要素に一般的に対応している。かくして、図13と同様に、図15の実施例は主増幅器1504(「A1」で示す)を含み、それはソース信号1502を増幅する。主増幅器1504は出力信号1599を有し、それはたとえば拡声器(図示せず)に、任意でカップリングコンデンサ1515(「C1」)を介して、接続されてよい。図13でと同じように、主増幅器1504は、好ましくは電力レール1528(V1)にダイオードD2を介して結合しているが、負の電源ラインに接続するかわりに、ダイオードD8を介して接地1538に接続している。第1の正の電力ブースト回路と連携する第1の正の電力ブースト増幅器1520(B1+)の電源入力は、好ましくは、ダイオードD1を介して電力レール1528(V1)に、そして直接、接地1538に結合している。第1の負の電力ブースト回路と連携する第1の負の電力ブースト増幅器1530(B1―)の電源入力は、好ましくは、直接電力レール1528(V1)に、またダイオードD8を介して接地1538に、結合する。第1の正のおよび第1の負の電力ブースト増幅器1520および1530は、蓄電コンデンサC2およびC4(または他の蓄積エネルギ源)をそれぞれ介して主増幅器1504の電源入力1507、1508(Vboost1+およびVboot1−としても引用する)にそれぞれ結合する。
第2の正の電力ブースト回路と連携する第2の正の電力ブースト増幅器1540(B2+)および第2の負の電力ブースト回路と連携する第2の負の電力ブースト増幅器1550(B2―)の電源入力は、それぞれ、電力レール1528(V1)および接地1538に結合する。第2の正の電力ブースト増幅器1540は、蓄電コンデンサC3を介して第1の正の電力ブースト増幅器1520の電源入力1541(Vboost2+)に結合する。第2の負の電力ブースト増幅器1550は、蓄電コンデンサC5を介して第1の負の電力ブースト増幅器1530の負の電源入力1551(Vboost2―)に結合する。
動作において、図15の回路は、一般的に図11および13の回路について前に記載したのと同じように動作し、その結果、通常利用可能な電圧振幅の大幅な増大を主増幅器1504に与える。図17は、特定の一例による、単純化された様々な波形を図示する関連する一組のグラフを示しており、図11の電源実施例に関連する波形を示す図12の例と極めて似ている。図17において、図12と同様に、一番上のグラフ1705は、信号波形1710によって図示された主増幅器A1の出力を図示するとともに、主増幅器A1の電源入力に与えられる電力ブースト信号1711をも示している。図17にはまた、この例による第1および第2段のカスケード配列された電力ブースト回路の動作を示すグラフ1715および1725も示されている。信号波形1710は、図15の主増幅器1504の出力1505を表し、実線の波形ライン1720(「B1+」でも示される)は図15における第1の正の電力ブースト増幅器1520からの出力信号1522を表し、また実線の波形ライン1730(「B2+」でも示される)は図15における第2の正の電力ブースト増幅器1540からの出力信号1543を表す。信号1711および1722(Vboost1+およびVboost2+でも示される)はそれぞれ、図15において同一の参照数字を有する電源入力信号1507、1541を表す。
図17に示すように、静止状態を表している時間T0−T1の期間の間は、グラフ1715における第1の正の電力ブースト増幅器出力1720(波形B1+)およびグラフ1725における第2の正の電力ブースト増幅器出力1730(波形B2+)は接地電位にあり、グラフ1705における主増幅器電源入力1711(波形Vboost1+)およびグラフ1715における第1の正の電力ブースト増幅器電源入力1722(波形Vboost2+)はV1電位にあり、また主電源出力信号1710(波形A1)0.5・V1の電位にある。
時間T1で、主増幅器出力信号1710は変化を開始する。時間T0からT3までの全期間にわたって、主増幅器出力信号1710(波形A1)は、電源レール電圧V1の下、接地までの間にとどまり、波形B1+、B2+,Vboost1+、およびVboost2+は、電力ブーストがまだ必要とされないので静止電圧レベルを維持し続ける。
期間T3−T4においては、主増幅器出力信号1710(波形A1)が正の供給レール電圧V1に近づき、最終的に電圧レベルでV1の2倍より少ない第1のピーク1712に達すると、電圧オフセット回路ダイオードD3およびD5が導通し、第1の正のブースト増幅器1520への入力1545(図15)が主増幅器出力信号1710(波形A1)に追従し始める。したがって、第1の電力ブースト増幅器出力信号1720(波形B1+)は上昇し、主増幅器電源入力信号1711(波形Vboost1+)はそれを追跡し、たとえば、図12に関連して先に述べたようなオフセットΔ1に等しいかまたはそれに対応するあるオフセット量だけ波形A1より上にとどまる。かくして、主増幅器出力信号1710(波形A1)はクリッピングを回避し、上昇を続けることができる。
時間T4−T5の期間については、主増幅器出力信号1710(波形A1)が下降すると、主増幅器電源入力信号1711(波形Vboost1+)は、波形Vboost1+が正の電源レールV1に等しい電位にもう一度なるまで追従し、そしてその地点で波形Vboost1+はダイオードD2の導通によって再びクランプする。主増幅器出力信号1710(波形A1)の電圧レベルがさらに下降すると、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1720(波形B1+)は接地電位に向かって下降し、それによってコンデンサC2を再充電する。
時間T6−T8の期間の間、主増幅器出力信号1710(波形A1)のレベルがV1の2倍の電位を超えてV1のほぼ3倍のレベルより上の第2のピーク1713に近づくと、第1の正のブースト増幅器出力信号1720(波形B1+)のレベルは、主増幅器1504に適切に電力供給できるように、それに応じてV1より上に上昇する必要がある。したがって、期間T6−T8の間に主増幅器出力信号1710が上昇すると、電圧オフセット回路ダイオードD4およびD6が導通し始め、第2の正の電力ブースト増幅器出力信号1730(波形B2+)を、たとえば、図12に関連して先に述べたようなオフセットΔ2に等しいかまたはそれに対応するある閾値量だけオフセットして、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1720からの出力とともに、上昇させる。この動作は、第1の正の電力ブースト増幅器電源入力1722(波形Vboost2+)を増大させ、それは、第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1720(波形B1+)がクリップするのを防止して主増幅器電源入力1711(波形Vboost1+)を引き続き増大させ、それによって主増幅器出力信号1710(波形A1)がクリップするのをも同様に防止する。この動作は、第2の正の電力ブースト増幅器出力信号1730(波形B2+)のレベルがV1の電位でクリップするまで続き、そしてその地点で第1の正の電力ブースト増幅器出力信号1720(波形B1+)または主増幅器出力信号1710(波形A1)はそれ以上大きな出力となることはなく、波形A1は最終的にV1の3倍の正の出力電圧でクリップする。
実際の応用形態では、別のところで述べたように、時間経過とともにオフセットレベルがある程度垂下または減退することがありうるが、本明細書で前に記載した実施例で、何らかの垂下または減退の効果を軽減するための技法について言及している。
カスケード配列された負の電力ブースト回路についての電力ブーストは、同様の、ただし逆の、やり方で動作することになる。
図10乃至16のいずれかにしたがって構成された増幅システムは、架橋増幅器構成を使わずに、またスイッチング電源を使わずに、構築することができ、それでもなお、大きな電圧振幅能力を有する。増大した電圧振幅は、二つの電力ブースト回路のカスケード配列の場合、14.4ボルト電源から69ボルトのオーダー(もっと大きなカスケード配列の場合はもっと大きい)であり、これは、8オームの負荷に、従来の増幅器の典型的な3ワット、あるいは架橋増幅器のほぼ12ワットと比較して、およそ74ワットを供給することができることを意味する。14.5オームの負荷については、8オームの負荷よりも少ない電流しか引き出せないが(そのため、出力信号に対して約2.4アンペアに制限される)、本明細書に記載した実施例のどれかを使用した二つの電力ブースト回路のカスケード配列を用いて、41ワットを供給することができる(架橋モードで用いた場合は82ワット)。比較のために、最大電流容量(典型的な設定の増幅システムではおよそ2.4アンペアの範囲にある)を制限係数としてとると、従来の増幅器では3オームに対して約8.5ワットのみが、また架橋増幅器からは6オームに対して約17ワットが利用可能であるが、増幅器に与えられる負荷インピーダンスが低くなることに起因して歪が増えることになる。
実際のシステムでは、図10乃至16のカスケード配列された電力ブースト回路がそれらの最大レール電圧まで完全に振れる、または主増幅器(単数または複数)が最大にブーストされたレール電圧まで完全に振れる能力には制限がありうる。しかしながら、注意深く設計することによって、特に本明細書において後述する技法にしたがって、このような制限を最小限にすることができる。
図10乃至16の電力ブーストシステムによって提供することができる別の利点は、電力散逸の低減である。主増幅器(単数または複数)は、その出力電力トランジスタの両端の電圧損失がより少ないため、同じ出力電力容量の従来の増幅器よりも散逸する散逸する電力が一般的にはるかに少ない。したがって、主増幅器(単数または複数)の電力トランジスタは従来の増幅器よりも低い電圧および/または電力定格を有することができるが、それでも出力電流をフルに流すことが可能である。電力ブースト増幅器に使用される電力トランジスタも、一般的に供給レール間の差(すなわち、Vs+−Vs-)よりも大きな電圧を受けないため、低い電圧/電力定格を有することができる。図10乃至16のシステムの様々な増幅器におけるピーク電力散逸は、時として比較的高くなりうるが、全体の電力散逸は、特に、入力ソース信号(単数または複数)がたまにだけ高い出力電力を必要とするような設定では、低く維持することができる。たとえば、オーディオ再生システムでは、カスケード配列された電力ブースト回路によって提供されるブースとモードは、典型的な状況では、オーディオ再生における平均信号レベルがピークレベルよりも著しく低いため、たまにしか利用されないであろう。たいていの場合、カスケード配列された電力ブースト回路は実質的に電力を散逸せず、したがってそれらの平均電力散逸は低い。電力効率がよいことに加えて、カスケード配列電力ブースト回路は、平均電力散逸が低いので、より小さなヒートシンクで足りるという利点も有する。
先に述べた通り、すでに明示的に記載していない限り、図10乃至16に図示される増幅システムの原理を二つ以上のチャンネルおよび/または二つ以上の主増幅器を有するシステムに拡張することができる。多チャンネルまたは多増幅器システムにおいて、正および/または負のカスケード配列電力ブースト回路を、チャンネルおよび/または主増幅器ごとに設けることが可能であろう。代替的に、カスケード配列された正および/または負の電力ブースト回路を、多チャンネルおよび/または多増幅器の間で、全体的にまたは部分的に共有することが可能である。
本明細書において記載した様々な電力ブースト回路は、オーディオ増幅システムに有用な用途を見出すことができるが、このような用途に限定されることは決してない。むしろ、それらは様々な異なる状況または環境で使用されることができ、たとえば一時的な電力ブーストが必要なところならばどこにでも用いることができる。
本発明の好ましい実施例を本明細書において記載してきたが、本発明の概念および範囲の内に留まる多くの変形形態が可能である。そのような変形形態は、当業者には本明細書および図面を検討すれば明らかになるであろう。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲のいずれもの精神および範囲の内でなければ限定されないものである。