以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるサスペンション装置Sは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2とを備えたダンパDと、ポンプ4と、ポンプ4の吸込側に接続されるリザーバRと、ダンパDとポンプ4およびリザーバRとの間に設けられる流体圧回路FCとを備えて構成されている。
また、流体圧回路FCは、ポンプ4の吐出側に接続される供給路5と、リザーバRに接続される排出路6と、伸側室R1に接続される伸側通路7と、圧側室R2に接続される圧側通路8と、伸側通路7に設けた伸側減衰弁15と、圧側通路8に設けた圧側減衰弁17と、供給路5、排出路6、伸側通路7および圧側通路8の間に設けた4ポート4位置の差圧制御弁9と、供給路5の途中であって差圧制御弁9とポンプ4との間に設けられてポンプ4側から差圧制御弁9側へ向かう流れのみを許容する供給側チェック弁12と、供給路5の途中であって差圧制御弁9と供給側チェック弁12の間と排出路6とを接続する吸込通路10と、吸込通路10の途中に設けられて排出路6から供給路5へ向かう流体の流れのみを許容する吸込チェック弁11とを備えて構成されている。
このサスペンション装置Sにあっては、ダンパDは、シリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるロッド3を備えており、このロッド3が伸側室R1内のみに挿通されていて、ダンパDは、所謂、片ロッド型のダンパとされている。なお、リザーバRは、図1に示したところでは、ダンパDとは独立して設けられているが、詳しくは図示しないが、ダンパDにおけるシリンダ1の外周側に配置される外筒を設けて、シリンダ1と外筒との間の環状隙間で形成されてもよい。
サスペンション装置Sを車両に用いるには、図2に示すように、シリンダ1を車両のばね上部材BOおよびばね下部材Wのうち一方に連結し、ロッド3をばね上部材BOおよびばね下部材Wのうち他方に連結して、ばね上部材BOとばね下部材Wとの間に介装すればよい。
そして、伸側室R1および圧側室R2には流体として、たとえば、作動油等の液体が充満され、リザーバR内にも液体と気体が充填される。伸側室R1、圧側室R2およびリザーバR内に充填される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用できる。また、本発明では、伸長行程時に圧縮される室を伸側室R1とし、収縮行程時に圧縮される室を圧側室R2としてある。
ポンプ4は、吸込側から流体を吸い込んで吐出側から流体を吐出する一方向吐出型に設定され、モータ13によって駆動されるようになっている。モータ13には、直流、交流を問わず、種々の形式のモータ、たとえば、ブラシレスモータ、誘導モータ、同期モータ等を採用できる。
そして、ポンプ4の吸込側はポンプ通路14によってリザーバRに接続されており、吐出側は供給路5に接続されている。したがって、ポンプ4は、モータ13によって駆動されると、リザーバRから液体を吸い込んで供給路5へ液体を吐出するようになっている。排出路6は、前述の通り、リザーバRに連通されている。
伸側通路7の途中には、伸側室R1から差圧制御弁9に向かう液体の流れに対し抵抗を与える伸側減衰弁15の他に、当該伸側減衰弁15に並列されて差圧制御弁9から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェック弁16が設けられている。よって、伸側室R1から差圧制御弁9へ向けて移動する液体の流れに対しては、伸側チェック弁16は閉じた状態に維持されるため、液体は、伸側減衰弁15のみを通過して差圧制御弁9側へ向かって流れる。差圧制御弁9から伸側室R1へ向けて移動する液体の流れに対して伸側チェック弁16が開き、伸側チェック弁16は伸側減衰弁15に比較して液体の流れに与える抵抗が小さいので、液体は、伸側チェック弁16を優先的に通過して伸側室R1側へ向かって流れる。伸側減衰弁15は、双方向流れを許容する絞り弁とされてもよいし、伸側室R1から差圧制御弁9に向かう流れのみを許容するリーフバルブやポペット弁といった減衰弁とされてもよい。
圧側通路8の途中には、圧側室R2から差圧制御弁9に向かう流れに対し抵抗を与える圧側減衰弁17の他に、当該圧側減衰弁17に並列されて差圧制御弁9から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェック弁18が設けられている。よって、圧側室R2から差圧制御弁9へ向けて移動する液体の流れに対しては、圧側チェック弁18は閉じた状態に維持されるため、液体は、圧側減衰弁17のみを通過して差圧制御弁9側へ向かって流れる。差圧制御弁9から圧側室R2へ向けて移動する液体の流れに対して圧側チェック弁18が開き、圧側チェック弁18は圧側減衰弁17に比較して液体の流れに与える抵抗が小さいので、液体は、圧側チェック弁18を優先的に通過して圧側室R2側へ向かって流れる。圧側減衰弁17は、双方向流れを許容する絞り弁とされてもよいし、圧側室R2から差圧制御弁9に向かう流れのみを許容するリーフバルブやポペット弁といった減衰弁とされてもよい。
さらに、供給路5と排出路6とを接続する吸込通路10が設けられている。この吸込通路10の途中には、排出路6から供給路5へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェック弁11が設けられており、吸込通路10が排出路6から供給路5へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
供給路5の途中であって差圧制御弁9とポンプ4との間には、供給側チェック弁12が設けられている。より詳しくは、供給路5の途中であって吸込通路10の接続点よりもポンプ4側に供給側チェック弁12が設けられており、この供給側チェック弁12は、ポンプ4側から差圧制御弁9側へ向かう流れのみを許容し、その反対の流れを阻止するようになっている。よって、ポンプ4の吐出圧より差圧制御弁9側の圧力が高圧となっても、供給側チェック弁12が閉じてポンプ4側へ液体が逆流しないようになっている。
差圧制御弁9は、伸側通路7に接続されるAポートaと、圧側通路8に接続されるBポートbと、供給路5に接続されるPポートpと、排出路6に接続されるTポートtの4ポートを有してAポートaとBポートbの差圧を制御するとともに、非通電時に伸側通路7、圧側通路8、供給路5および排出路6を互いに連通するフェールポジションを採る4ポート4位置の電磁差圧制御弁とされている。
具体的には、AポートaとPポートpとを連通するとともにBポートbとTポートtを連通する伸側供給ポジションXと、Aポートa、Bポートb、PポートpおよびTポートtの全ポートを相互に連通させるニュートラルポジションNと、AポートaとTポートtとを連通するとともにBポートbとPポートpを連通する圧側供給ポジションYと、全ポートa,b,p,tを相互に連通させるフェールポジションFとを備えたスプールSPと、スプールSPを附勢するばねCsと、前記ばねCsに対抗する推力をスプールSPに与えるソレノイドSolとを備えている。つまり、伸側供給ポジションXでは、供給路5を伸側通路7へ連通し、かつ、排出路6を圧側通路8へ連通させ、ニュートラルポジションNおよびフェールポジションFでは、供給路5、排出路6、伸側通路7および圧側通路8を相互に連通し、圧側供給ポジションYでは、供給路5を圧側通路8へ連通し、かつ、排出路6を伸側通路7へ連通させる。なお、伸側供給ポジションX、ニュートラルポジションNおよび圧側供給ポジションYは、スプールSPの移動により、連続的に切換わるようになっている。
また、伸側通路7からの圧力をパイロット圧としてスプールSPの一端側へ導いており、伸側通路7の圧力でスプールSPを図1中下方へ附勢できるようになっている。さらに、圧側通路8からの圧力をパイロット圧としてスプールSPの他端側へ導いており、圧側通路8の圧力でスプールSPを図1中上方へ附勢できるようになっている。伸側通路7の圧力によってスプールSPを図1中下方へ押す力と、圧側通路8の圧力によってスプールSPを図1中上方へ押す力は、互いにスプールSPを反対に向けて押す力であり、これらの合力を流体圧フィードバック力として利用している。ソレノイドSolへ通電すると、スプールSPは、前記ポジションX,Y,Nのうち、ソレノイドSolからの推力、伸側通路7および圧側通路8の圧力による流体圧フィードバック力と、ばねCsの附勢力の釣り合いによって、伸側供給ポジションX、ニュートラルポジションNおよび圧側供給ポジションYのいずれかのポジションに切換わる。ソレノイドSolの推力の大小によって、この推力と前記流体圧フィードバック力とばねCsの附勢力が釣り合うスプールSPの位置が変化するので、ソレノイドSolの推力調整によって、伸側通路7と圧側通路8の差圧を制御できる。このように、差圧制御弁9が伸側供給ポジションX、圧側供給ポジションYおよびニュートラルポジションNとを有しており、通電時には、流体圧フィードバックによって伸側供給ポジションX、圧側供給ポジションYおよびニュートラルポジションNのいずれかを採ってAポートaとBポートbの差圧を一意的に決められた差圧に制御できる。
他方、ソレノイドSolへ電力供給しない非通電時には、スプールSPは、ばねCsによって押されてフェールポジションFを採る。なお、本例では、伸側通路7をAポートaに接続し、圧側通路8をBポートbに接続しているが、伸側通路7をBポートbに接続し、圧側通路8をAポートaに接続してもよい。
差圧制御弁9は、具体的には、たとえば、図3に示すように、スプールSPと、スプールSPが軸方向移動自在に挿入されるハウジングHと、ハウジングH内に収容される反力ピンPと、スプールSPを一端側から他端側(図3中左側から右側)へ向けて附勢するコイルばねであるばねCsと、スプールSPを他端側から一端側(図3中右側から左側)へ向けて押す推力を発揮可能なソレノイドSolとを備えて構成されている。
スプールSPは、図3に示すように、円筒状であって、外周に四つのランド40,41,42,43と、ランド間に設けた三つの溝44,45,46と、左端の中央から開口する縦孔47と、縦孔47の先端から径方向へ延びて最も右側の溝46に通じる横孔48とを備えて構成されている。ランド40,41,42,43の外径は、同一径に設定されている。
反力ピンPは、円盤状の基部50と、基部50の右端中央から延びてスプールSPの縦孔47に摺動自在に挿入される軸部51とを備えている。軸部51は、スプールSPの軸方向である左右方向へのストロークを妨げず、かつ、スプールSPのストローク中に縦孔47から抜け出ないような長さに設定されている。また、軸部51が縦孔47内に挿入されて、この縦孔47の出口端を閉塞し、縦孔47が圧力室Pr3として機能するようになっている。
ハウジングHは、有底筒状であって、内周径がランド40,41,42,43の外周に摺接できる径に設定されている。そして、ハウジングH内には、スプールSPが摺動自在に挿入されており、スプールSPは、ハウジングH内を軸方向となる図3中左右方向へ移動してストロークできるようになっている。そして、スプールSPのハウジングHへの挿入により、ハウジングH内であってスプールSPの両側に圧力室Pr1,Pr2が形成されている。また、ハウジングHの内周には、環状溝で形成した四つのリセス60,61,62,63が設けられており、図3中左端内方の底部には、反力ピンPの基部50が嵌合されている。
また、反力ピンPの基部50とスプールSPとの間には、ばねCsが介装されており、スプールSPは、このばねCsによって図3中右方向へ附勢されている。
ハウジングHの右端開口端には、ソレノイドSolが取り付けられており、ソレノイドSolにおけるプランジャPPをスプールSPの右端へ当接させていて、ソレノイドSolの推力をスプールSPに作用させるようになっている。
さらに、ハウジングHには、伸側通路7に接続されてAポートに対応するポート64と、圧側通路8に接続されてBポートに対応するポート65と、供給路5に接続されてPポートに対応するポート66,67と、排出路6に接続されてTポートに対応するポート68,69と、ポート64に接続されて伸側通路7をスプールSPの両側の圧力室Pr1,Pr2に連通する連通路70が設けられている。
ポート64は、ハウジングHの外周から開口してハウジングHの内周であって、リセス61,62間に通じている。ポート65は、ハウジングHの外周から開口してハウジングHの内周であって、リセス62,63間に通じている。ポート66は、ハウジングHの外周から開口してリセス62に通じている。ポート67は、ポート66から分岐してリセス60に通じている。ポート68は、ハウジングHの外周から開口してリセス61に通じている。ポート69は、ポート68から分岐してリセス63に通じている。
図3に示した差圧制御弁9は、以上のように、構成されている。図3では、スプールSPがニュートラルポジションNに配置されている状態を示している。スプールSPは、最大幅でストロークしても、ランド40およびランド43がハウジングHの内周に摺接するので、圧力室Pr1,Pr2がリセス60,61,62,63に通じないようになっている。圧力室Pr1および圧力室Pr2には、連通路70を通じて伸側通路7の圧力が導かれている。圧力室Pr1内の圧力は、スプールSPの断面積から反力ピンPの軸部51の断面積を除いた面積を受圧面積としてスプールSPの図3中左端に作用する。反対に、圧力室Pr2の圧力は、スプールSPの断面積を受圧面積としてスプールSPの図3中右端に作用する。よって、スプールSPは、伸側通路7の圧力に軸部51の断面積を乗じた力によって図3中左方へ附勢される。他方、圧側通路8の圧力は、ポート65を通じて、スプールSPの縦孔47でなる圧力室Pr3内に導かれるようになっている。よって、スプールSPは、圧側通路8の圧力に軸部51の断面積を乗じた力によって図3中右方へ附勢される。つまり、軸部51の断面積を受圧面積として伸側通路7の圧力と圧側通路8の圧力が互いにスプールSPを反対向きに押すように作用している。
そして、ニュートラルポジションNでは、ランド41がリセス60,61間のハウジングHの内周に対向していて、リセス60とリセス61との連通が絶たれる。他方、ランド41,42は、ハウジングHの内周であってリセス61,62間とリセス62,63間には摺接しないのでリセス61、リセス62およびリセス63が相互に連通される。また、ランド41,42がハウジングHの内周であってリセス61,62間とリセス62,63間には摺接しないので、ポート64,65は開放される。よって、ポート64,65は、リセス61,63を介してポート68,69へ連通され、リセス62を介してポート66に連通されるので、供給路5、排出路6、伸側通路7および圧側通路8が相互に連通される。
スプールSPが図3に示した位置から右方へ移動すると、ランド41がハウジングHのリセス61,62間の内周に対向しリセス61とリセス62の連通を絶ち、ランド42がハウジングHのリセス62,63間の内周に対向しリセス62とリセス63の連通を絶つ。すると、ポート64とポート66が連通され、ポート65とポート69とが連通される。この状態では、供給路5と伸側通路7が連通され、排出路6と圧側通路8とが連通されるので、差圧制御弁9は、伸側供給ポジションXを採る。
他方、スプールSPが図3に示した位置から左方へ移動すると、ランド42がハウジングHのリセス61,62間の内周に対向しリセス61とリセス62の連通を絶ち、ランド43がハウジングHのリセス62,63間の内周に対向しリセス62とリセス63の連通を絶つ。すると、ポート65とポート66が連通され、ポート64とポート68とが連通される。この状態では、供給路5と圧側通路8が連通され、排出路6と伸側通路7とが連通されるので、差圧制御弁9は、圧側供給ポジションYを採る。
図4に示すように、ソレノイドSolに通電して、ソレノイドSolに流れる電流量がIMとなると、スプールSPが図3に示すニュートラルポジションNの位置に位置決められる。電流量は、通常制御中は、図4中、ILからIHまでの範囲で供給される。
そして、ポンプ4から供給路5およびポート66へ供給される流量は、リセス62から溝45およびリセス61を通ってポート68および排出路6を介してリザーバRへ戻る流れと、リセス62から溝46およびリセス63を通ってポート69および排出路6を介してリザーバRへ戻る流れとに分流される。リセス62とランド42、リセス61とランド41、リセス63とランド43で形成される流路における流路面積は等しく、そこで発生する圧力損失も等しい。よって、溝45に対向しているAポートに対応するポート64の圧力Paと、溝46に対向しているBポートに対応するポート65の圧力Pbは、等しくなる。したがって、ニュートラルポジションNでは、スプールSPに作用する流体圧フィードバック力は0となり、ソレノイドSolの推力とばねCsの附勢力のみで釣り合った状態にある。
ソレノイドSolへ供給される電流量がIMよりも小さくなると、力の釣り合いが崩れ、スプールSPは図3に示した位置から一時的に右方へ移動する。すると、ランド43とリセス63で形成される流路面積が増加して圧側通路8から排出路6へ向かうルートにおける圧力損失が小さくなり、ランド41とリセス61で形成される流路面積が減少し、伸側通路7から排出路6へ向かうルートにおける圧力損失が大きくなる。よって、Pa>Pbとなる。その結果、伸側通路7の圧力は上昇し、圧側通路8の圧力は低下し、図3中左方向に流体圧フィードバック力が作用して、最終的に、ソレノイドSolの推力とばねCsの附勢力と流体圧フィードバック力が釣り合う位置にスプールSPが停止する。
ソレノイドSolへ供給される電流量がIMよりも大きくなると、力の釣り合いが崩れ、スプールSPは図3に示した位置から一時的に左方へ移動する。すると、ランド43とリセス63で形成される流路面積が減少して圧側通路8から排出路6へ向かうルートにおける圧力損失が大きくなり、ランド41とリセス61で形成される流路面積が増加し、伸側通路7から排出路6へ向かうルートにおける圧力損失が小さくなる。よって、Pa<Pbとなる。その結果、圧側通路8の圧力は上昇し、伸側通路7の圧力は低下し、図3中右方向に流体圧フィードバック力が作用して、最終的に、ソレノイドSolの推力とばねCsの附勢力と流体圧フィードバック力が釣り合う位置にスプールSPが停止する。
よって、ソレノイドSolへ供給する電流量の調整によって、伸側通路7の圧力と圧側通路8の圧力の差圧を制御できる。なお、ダンパDが伸縮するとダンパDの伸側室R1と圧側室R2へ液体が出入りするため、差圧制御弁9を通過する流量は、ポンプ流量からダンパDの伸縮による流量分だけ増減する。このようにダンパDの伸縮によって流量が増減しても、流体圧フィードバック力によってスプールSPが自動的に移動して、前記差圧は、ソレノイドSolへ供給する電流量によって一意的に決められた差圧に制御される。
なお、伸側通路7の圧力と圧側通路8の圧力の差圧を適切に制御できるのは、高圧側の圧力がリザーバ圧より高く保たれる場合であって、ポンプ流量が不足、或いは、ポンプ4が停止状態でリザーバRから吸込チェック弁11を介して液体の供給を受けなければならない状態では、差圧は0となる。
サスペンション装置Sは、以上のように構成されており、続いて、その作動について説明する。まず、モータ13、ポンプ4、差圧制御弁9を正常に動作させられる通常時における作動を説明する。
基本的には、ポンプ4をモータ13によって駆動し、差圧制御弁9によって伸側室R1と圧側室R2との差圧を制御すれば、ダンパDが積極的に伸長或いは収縮するアクチュエータとして機能できる。ダンパDに発生させる推力がダンパDの伸長方向である場合には、差圧制御弁9を圧側供給ポジションYとして、圧側室R2を供給路5へ接続し伸側室R1をリザーバRへ接続する。反対に、ダンパDに発生させる推力がダンパDの収縮方向である場合には、差圧制御弁9を伸側供給ポジションXとして、伸側室R1を供給路5へ接続し圧側室R2をリザーバRへ接続する。そして、差圧制御弁9によって伸側室R1と圧側室R2の差圧を調節すれば、ダンパDの伸長方向或いは収縮方向の推力の大きさを制御できる。
推力の制御にあたっては、たとえば、図2に示すように、車両の振動抑制に適する制御則に必要な車両の振動状況を把握できる情報、たとえば、ばね上部材BOやばね下部材Wの上下方向の加速度、速度といった情報や、ダンパDの伸縮速度や伸縮加速度といった情報等の車両情報を得て、前記制御則に則ってダンパDに発生させるべき目標推力を求め、目標推力通りにダンパDに推力を発生させるために必要な差圧制御弁9に与える電流量とポンプ4を駆動するモータ13へ与える電流量を決定するコントローラCと、コントローラCからの指令を受けてコントローラCで決定した通りに差圧制御弁9およびモータ13へ電流を供給するドライバDrとを設ければよい。ドライバDrは、たとえば、差圧制御弁9におけるソレノイドSolをPWM駆動する駆動回路と、モータ13をPWM駆動する駆動回路を備えている。そして、ドライバDrは、コントローラCからの指令を受けると、コントローラCで決定した通りにソレノイドSolおよびモータ13へ電流を供給する。ダンパDの推力の制御は、差圧制御弁9によって行うため、モータ13でポンプ4を駆動する場合、ポンプ4を一定回転数で回転駆動できればよい。なお、ドライバDrにおける各駆動回路は、PWM駆動を行う駆動回路以外の駆動回路であってもよい。そして、ダンパDに発生させる目標推力がダンパDの伸長方向では、ドライバDrは、ダンパDの推力に応じて差圧制御弁9のソレノイドSolへ電流量IM未満の電流を供給する。反対に、ダンパDに発生させる目標推力がダンパDの収縮方向では、ドライバDrは、ダンパDの推力に応じて差圧制御弁9のソレノイドSolへ電流量IMを超える電流を供給する。サスペンション装置Sにおける推力の制御に用いる制御則については、車両に適するものを選択すればよく、たとえば、スカイフック制御等といった車両の振動抑制に優れる制御則を採用するとよい。また、この場合、コントローラCとドライバDrを別体として説明しているが、コントローラCとドライバDrの機能を有する一つの制御装置でサスペンション装置Sを制御するようにしてもよい。また、コントローラCに入力する情報は、コントローラCで採用する制御則に適した情報であればよく、図示はしないが、当該情報についてはセンサ等で検知してコントローラCに入力すればよい。
以上、ダンパDを積極的に伸縮させる場合の作動について説明したが、車両走行中には、ダンパDが路面の凹凸により外乱を受けて伸縮するので、以下に、ダンパDが外乱を受けて伸縮する点を踏まえた作動について説明する。
ダンパDが外乱を受けて伸縮する場合、ダンパDが推力を発生する方向とダンパDの伸縮方向で場合分けすると、四つのケースが考えられる。Aポートaの圧力をPaとし、Bポートbの圧力をPbとすると、第一のケースとして、Pa>Pbとなるように制御し、ピストン2を下方に押し下げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合で、ダンパDが外力によって伸長作動する場合について説明する。ダンパDの伸長により伸側室R1の容積が減少し、伸側室R1から排出された液体は伸側減衰弁15を通り、差圧制御弁9のAポートaに流れる。他方、ダンパDの伸長により圧側室R2の容積が膨張し、圧側室R2には、ポンプ4からBポートbを経て圧側チェック弁18を通り、液体が補充される。
伸長速度が速くなり、圧側室R2に補充されるべき液体流量がポンプ4の吐出流量を上回ると、吸込チェック弁11を介してリザーバRからも液体が供給される。Aポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧は、差圧制御弁9により一定に保たれるので、伸側室R1の圧力は伸側減衰弁15で生じる圧力損失分だけAポートaの圧力よりも高くなる。よって、伸側室R1の圧力は、差圧制御弁9によって調節される差圧に伸側減衰弁15で生じる圧力損失分の圧力を加えた値だけ圧側室R2よりも高くなり、ダンパDは、伸長を抑制する推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図5に示した、縦軸にダンパDの推力を採り、横軸にダンパDの伸縮速度を採ったグラフでは、図5中の線(1)で示す特性となる。
第二のケースとして、Pa>Pbとなるように制御し、ピストン2を下方に押し下げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合であって、ダンパDが外力によって収縮作動している場合について説明する。ダンパDの収縮により圧側室R2の容積が減少し、圧側室R2から排出された液体は圧側減衰弁17を通り、差圧制御弁9のBポートbに流れる。他方、ダンパDの収縮により伸側室R1の容積が膨張し、伸側室R1には、ポンプ4からAポートaを経て伸側チェック弁16を通り、液体が補充される。Aポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧は、差圧制御弁9により一定に保たれるので、圧側室R2の圧力は、圧側減衰弁17で生じる圧力損失分だけBポートbの圧力よりも高くなる。よって、伸側室R1の圧力は、差圧制御弁9によって調節される差圧から圧側減衰弁17で生じる圧力損失分の圧力を差し引いた値だけ圧側室R2よりも高くなり、ダンパDは、収縮を助成する推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図5中の線(2)で示す特性となる。
さらに、収縮速度が速くなり、伸側室R1に補充されるべき液体流量がポンプ4の吐出流量を上回ると、吸込チェック弁11を介してリザーバRからも液体が供給される。このような状態となると、ポンプ4の吐出流量ではAポートaを加圧できず、Aポートaの圧力Paは、リザーバRの圧力よりも若干低くなり、差圧制御弁9によってAポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧を制御できなくなって両者の差圧は0となる。すると、ダンパDは、圧側室R2から排出される液体が圧側減衰弁17を通過する際に生じる圧力損失によって生じる伸側室R1と圧側室R2の差圧で推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図5中の線(3)で示す特性となり、線(2)で示した特性とは不連続となる。このように、伸側室R1に補充されるべき液体流量がポンプ4の吐出流量を上回るとダンパDがパッシブなダンパとして機能し、収縮速度に依存して推力が変化する特性となる。
次に、第三のケースとして、Pb>Paとなるように制御し、ピストン2を上方に押し上げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合であって、ダンパDが外力によって収縮作動している場合について説明する。ダンパDの収縮により圧側室R2の容積が減少し、圧側室R2から排出された液体は圧側減衰弁17を通り、差圧制御弁9のBポートbに流れる。他方、ダンパDの収縮により伸側室R1の容積が膨張し、伸側室R1には、リザーバRからAポートaを経て伸側チェック弁16を通り、液体が補充される。
Aポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧は、差圧制御弁9により一定に保たれるので、圧側室R2の圧力は圧側減衰弁17で生じる圧力損失分だけBポートbの圧力よりも高くなる。よって、圧側室R2の圧力は、差圧制御弁9によって調節される差圧に圧側減衰弁17で生じる圧力損失分の圧力を加えた値だけ伸側室R1よりも高くなり、ダンパDは、収縮を抑制する推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図5中の線(4)で示す特性となる。
第四のケースとして、Pb>Paとなるように制御し、ピストン2を上方に押し上げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合であって、ダンパDが外力によって伸長作動している場合について説明する。ダンパDの伸長により伸側室R1の容積が減少し、伸側室R1から排出された液体は伸側減衰弁15を通り、差圧制御弁9のAポートaに流れる。他方、ダンパDの伸長により圧側室R2の容積が膨張し、圧側室R2には、ポンプ4からBポートbを経て圧側チェック弁18を通り、液体が補充される。Aポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧は、差圧制御弁9により一定に保たれるので、伸側室R1の圧力は、伸側減衰弁15で生じる圧力損失分だけAポートaの圧力よりも高くなる。よって、圧側室R2の圧力は、差圧制御弁9によって調節される差圧から伸側減衰弁15で生じる圧力損失分の圧力を差し引いた値だけ伸側室R1よりも高くなり、ダンパDは、伸長を助成する推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図5中の線(5)で示す特性となる。
さらに、伸長速度が速くなり、圧側室R2に補充されるべき液体流量がポンプ4の吐出流量を上回ると、吸込チェック弁11を介してリザーバRからも液体が供給される。このような状態となると、ポンプ4の吐出流量ではBポートbを加圧できず、Bポートbの圧力Pbは、リザーバRの圧力よりも若干低くなり、差圧制御弁9によってAポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧を制御できなくなって両者の差圧は0となる。すると、ダンパDは、伸側室R1から排出される液体が伸側減衰弁15を通過する際に生じる圧力損失によって生じる伸側室R1と圧側室R2の差圧で推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図5中の線(6)で示す特性となり、線(5)で示した特性とは不連続となる。このように、圧側室R2に補充されるべき液体流量がポンプ4の吐出流量を上回るとダンパDがパッシブなダンパとして機能し、伸長速度に依存して推力が変化する特性となる。
なお、ダンパDは、収縮側では図5中線(2)から線(3)へ推力が変化する特性を示し、伸長側では図5中線(5)から線(6)へ推力が変化する特性を示すが、特性の変化はごく瞬間的に生じるものであり、乗り心地に与える影響は軽微である。
以上から、差圧制御弁9による差圧制御により、図5中、線(1)から線(3)をつなげたラインから線(4)から線(6)までをつなげたラインまでの間の範囲でダンパDの推力を可変にできる。また、ポンプ4の駆動によって、ポンプ4の吐出流量を伸側室R1と圧側室R2のうち拡大する側の室へ供給する場合には、ポンプ4の吐出流量が拡大する室の容積増大量以上である場合には、ダンパDの伸縮方向と同方向に推力を発揮させられる。
引き続き、ポンプ4を駆動しない停止状態にした場合のサスペンション装置Sの作動を説明する。この場合についても、ダンパDが外乱を受けて伸縮する方向とダンパDが推力を発生する方向とで場合分けすると、四つのケースが考えられる。
第一のケースとして、Pa>Pbとなるように制御し、ピストン2を下方に押し下げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合で、ダンパDが外力によって伸長作動する場合について説明する。ダンパDの伸長により伸側室R1の容積が減少し、伸側室R1から排出された液体は伸側減衰弁15を通り、差圧制御弁9のAポートaに流れる。他方、ダンパDの伸長により圧側室R2の容積が膨張し、圧側室R2には、リザーバRからBポートbを経て圧側チェック弁18を通り、液体が補充される。
Aポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧は、差圧制御弁9により一定に保たれるので、伸側室R1の圧力は伸側減衰弁15で生じる圧力損失分だけAポートaの圧力よりも高くなる。よって、伸側室R1の圧力は、差圧制御弁9によって調節される差圧に伸側減衰弁15で生じる圧力損失分の圧力を加えた値だけ圧側室R2よりも高くなり、ダンパDは、伸長を抑制する推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図6に示した、縦軸にダンパDの推力を採り、横軸にダンパDの伸縮速度を採ったグラフでは、図6中の線(1)で示す特性となる。
第二のケースとして、Pa>Pbとなるように制御し、ピストン2を下方に押し下げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合であって、ダンパDが外力によって収縮作動している場合について説明する。ダンパDの収縮により圧側室R2の容積が減少し、圧側室R2から排出された液体は圧側減衰弁17を通り、差圧制御弁9のBポートbに流れる。他方、ダンパDの収縮により伸側室R1の容積が膨張し、伸側室R1には、リザーバRから吸込チェック弁11、Aポートaを経て伸側チェック弁16を通り、液体が補充される。Aポートaの圧力Paは、リザーバRの圧力よりも若干低くなり、差圧制御弁9によってAポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧を制御できなくなって両者の差圧は0となる。すると、ダンパDは、圧側室R2から排出される液体が圧側減衰弁17を通過する際に生じる圧力損失によって生じる伸側室R1と圧側室R2の差圧で推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図6中の線(2)で示す特性となる。
次に、第三のケースとして、Pb>Paとなるように制御し、ピストン2を上方に押し上げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合であって、ダンパDが外力によって収縮作動している場合について説明する。ダンパDの収縮により圧側室R2の容積が減少し、圧側室R2から排出された液体は圧側減衰弁17を通り、差圧制御弁9のBポートbに流れる。他方、ダンパDの収縮により伸側室R1の容積が膨張し、伸側室R1には、リザーバRからAポートaを経て伸側チェック弁16を通り、液体が補充される。
Aポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧は、差圧制御弁9により一定に保たれるので、圧側室R2の圧力は圧側減衰弁17で生じる圧力損失分だけBポートbの圧力よりも高くなる。よって、圧側室R2の圧力は、差圧制御弁9によって調節される差圧に圧側減衰弁17で生じる圧力損失分の圧力を加えた値だけ伸側室R1よりも高くなり、ダンパDは、収縮を抑制する推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図6中の線(3)で示す特性となる。
第四のケースとして、Pb>Paとなるように制御し、ピストン2を上方に押し上げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合であって、ダンパDが外力によって伸長作動している場合について説明する。ダンパDの伸長により伸側室R1の容積が減少し、伸側室R1から排出された液体は伸側減衰弁15を通り、差圧制御弁9のAポートaに流れる。他方、ダンパDの伸長により圧側室R2の容積が膨張し、圧側室R2には、リザーバRから吸込チェック弁11、Bポートbを経て圧側チェック弁18を通り、液体が補充される。Bポートbの圧力Pbは、リザーバRの圧力よりも若干低くなり、差圧制御弁9によってAポートaの圧力PaとBポートbの圧力Pbの差圧を制御できなくなって両者の差圧は0となる。すると、ダンパDは、伸側室R1から排出される液体が伸側減衰弁15を通過する際に生じる圧力損失によって生じる伸側室R1と圧側室R2の差圧で推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図6中の線(4)で示す特性となる。
よって、ポンプ4を停止した状態では、差圧制御弁9による差圧制御により、図6中において、第一象限内では、線(1)から線(4)までの範囲で、第三象限内では、線(3)から線(2)までの範囲でダンパDの推力を可変にできる。
また、ポンプ4が停止状態では、ピストン2を下方に押し下げる推力をサスペンション装置Sに発揮させようとする場合、ダンパDが外力によって収縮作動すると、差圧制御弁9の差圧制御によらず、ダンパDの推力は、図6中の線(2)で示す特性となる。これは、減衰力可変ダンパにおいて、圧側減衰力を最も低い減衰力に制御しているのと同等の効果をもたらしている。さらに、ポンプ4が停止状態では、ピストン2を上方に押し上げる推力をサスペンション装置Sに発揮させようとする場合、ダンパDが外力によって伸長作動すると、差圧制御弁9の差圧制御によらず、ダンパDの推力は、図6中の線(4)で示す特性となる。これは、減衰力可変ダンパにおいて、伸側減衰力を最も低い減衰力に制御しているのと同等の効果をもたらしている。
ここで、セミアクティブサスペンションにあっては、減衰力可変ダンパを用いてカルノップ則に従ってスカイフック制御を実行する場合を考える。伸側減衰力(ピストンを押し下げる方向の力)が必要である場合、伸長作動時には減衰力可変ダンパの減衰力が目標推力を得られる減衰力に制御され、収縮作動時には、伸側減衰力が得られないから圧側へ最も低い減衰力を発揮するように制御される。他方、圧側減衰力(ピストンを押し上げる方向の力)が必要な場合、収縮作動時には減衰力可変ダンパの減衰力が目標推力を得られる減衰力に制御され、伸長作動時には、圧側減衰力が得られないから伸側へ最も低い減衰力を発揮するように制御される。本発明のサスペンション装置Sでは、ポンプ4を停止した状態でダンパDにピストン2を押し下げる推力を発揮させる場合、伸長時にはダンパDの推力が差圧制御弁9によって出力可能範囲内で制御され、収縮時には、ダンパDは最も低い推力を発揮する。反対に、本発明のサスペンション装置Sでは、ポンプ4を停止した状態でダンパDにピストン2を押し上げる推力を発揮させる場合、収縮時にはダンパDの推力が差圧制御弁9によって出力可能範囲内で制御され、伸長時には、ダンパDは最も低い推力を発揮する。したがって、本発明のサスペンション装置Sでは、ポンプ4を停止中である場合、自動的に、セミアクティブサスペンションと同じ機能を発揮ができる。よって、ポンプ4が駆動中であってもポンプ4の吐出流量が拡大する伸側室R1或いは圧側室R2の容積増大量未満となると、自動的に、サスペンション装置Sがセミアクティブサスペンションとして機能できる。
最後に、サスペンション装置Sのモータ13および差圧制御弁9への通電が何らかの異常により通電不能な失陥時におけるサスペンション装置Sの作動について説明する。こうした失陥には、たとえば、モータ13および差圧制御弁9への通電ができない場合のほか、コントローラCやドライバDrに異常が見られた場合にモータ13および差圧制御弁9への通電を停止する場合も含まれる。
失陥時には、モータ13および差圧制御弁9への通電が停止されるか、或いは通電不能な状態であり、ポンプ4は停止し、差圧制御弁9は、ばねCsに附勢されてフェールポジションFを採る状態となる。
この状態で、ダンパDが外力によって伸長作動する場合、伸側室R1の容積が減少するため、減少分の流体は、伸側減衰弁15を通じて伸側室R1から排出される。容積が膨張する圧側室R2に対しては、伸側室R1およびリザーバRから液体が補充される。
よって、伸側室R1の圧力は、伸側室R1から排出される流体が伸側減衰弁15を通過する際に生じる圧力損失分だけ圧側室R2の圧力よりも高くなり、ダンパDは、伸側室R1と圧側室R2の差圧で推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図7中の線(1)で示す特性となる。
反対に、ダンパDが外力によって収縮作動する場合、圧側室R2の容積が減少するため、減少分の流体は、圧側減衰弁17を通じて圧側室R2から排出される。容積が膨張する伸側室R1に対しては、圧側室R2およびリザーバRから液体が補充される。
よって、圧側室R2の圧力は、圧側室R2から排出される流体が圧側減衰弁17を通過する際に生じる圧力損失分だけ伸側室R1の圧力よりも高くなり、ダンパDは、伸側室R1と圧側室R2の差圧で推力を発揮する。この時のダンパの伸縮速度と発揮される推力の特性は、図7中の線(2)で示す特性となる。
このようにサスペンション装置Sが失陥した状態では、ダンパDはパッシブなダンパとして機能して、ばね上部材BOおよびばね下部材Wの振動を抑制するので、失陥時にはフェールセーフ動作が確実に行われる。
このように、本発明のサスペンション装置Sでは、ダンパDを積極的に伸縮させてアクティブサスペンションとして機能できるだけでなく、セミアクティブサスペンションとしての推力の発揮が期待される場面では、ポンプ4の駆動が必須ではなく、ポンプ4の駆動が必要なときにのみ駆動すればよいので、エネルギ消費が少なくなる。よって、本発明のサスペンション装置Sによれば、アクティブサスペンションとして機能できるとともに、エネルギ消費が少なくなる。
そして、本発明のサスペンション装置Sにあっては、ダンパDの推力の制御を差圧制御弁9のみで行えるので、電磁弁が二つ必要であった従来のサスペンション装置に比較して、装置全体のコストが安価となるだけでなく、流体圧回路の配管の取り回しも簡素化できる。
さらに、このサスペンション装置Sにあっては、アクティブサスペンションとして機能できるだけでなく、ソレノイドを搭載した差圧制御弁9を一つ設けるだけで、失陥時におけるフェールセーフ動作を行える。
加えて、差圧制御弁9を駆動するためのドライバDrにあっても、ソレノイドSolを駆動する駆動回路を備えていれば足りるので、従来の電磁弁が二つ必要なサスペンション装置に比し、ドライバDrで保有する駆動回路数が少なくて済む。よって、サスペンション装置Sを駆動するドライバDrのコストも低減される。
また、本実施の形態のサスペンション装置Sにあっては、伸側室R1から差圧制御弁9に向かう流れに対し抵抗を与える伸側減衰弁15と、伸側減衰弁15に並列されて差圧制御弁9から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する伸側チェック弁16と、圧側室R2から差圧制御弁9に向かう流れに対し抵抗を与える圧側減衰弁17と、圧側減衰弁17に並列されて差圧制御弁9から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する圧側チェック弁18とを有している。よって、ポンプ4から伸側室R1或いは圧側室R2へ流体を供給する際には、伸側チェック弁16或いは圧側チェック弁18を介してほとんど抵抗なく流体を伸側室R1或いは圧側室R2へ供給でき、ダンパDの伸縮方向と発生させる推力の方向とが一致する際にポンプ4の負荷を軽減できる。また、伸側室R1或いは圧側室R2から流体が排出される場合には、伸側減衰弁15或いは圧側減衰弁17が通過する流体の流れに抵抗を与えるので、伸側室R1と圧側室R2の差圧を差圧制御弁9で設定可能な差圧以上にして大きな推力を得られ、差圧制御弁9におけるソレノイドSolの推力を小さくしてもサスペンション装置Sに大きな推力を発生させられる。よって、差圧制御弁9を小型化できるとともにコストをより安価にできる。なお、伸側減衰弁15或いは圧側減衰弁17が流体の流れる方向にかかわりなく流体の流れに抵抗を与えるものであってもよく、伸側減衰弁15および圧側減衰弁17が双方向流れを許容するものであれば伸側チェック弁16および圧側チェック弁18を省略できる。
また、本例のサスペンション装置Sにあっては、差圧制御弁9が伸側供給ポジションX、圧側供給ポジションYおよびニュートラルポジションNとを有して、通電時に、伸側供給ポジションX、圧側供給ポジションYおよびニュートラルポジションNのいずれかを採ってAポートaとBポートbの差圧を制御する。よって、AポートaとBポートbの差圧を一意的に決められた差圧に制御でき、ダンパDの推力を適切に制御できる。
最後に、前記したサスペンション装置Sでは、一つのポンプ4で一つのダンパDを駆動するようにしているが、図8、9に示すように、複数のダンパDとポンプ4およびリザーバRとの間にそれぞれ流体圧回路FCを設けると、一つのポンプ4で複数のダンパDの推力を発生させられる。具体的には、図8の第二実施の形態におけるサスペンション装置S1では、一つのポンプ4に対して二つのダンパDを駆動するために、ポンプ4と各流体圧回路FCとの間に分流弁80を設けており、ポンプ4が吐出する流体を分流弁80で各流体圧回路FCへ分配するようにしている。分流弁80は、ポンプ4の吐出流量を等分して二つの流体圧回路FCへ分配するようにしているが、比率を変えて分配するようにしてもよい。
図9の第三の実施の形態におけるサスペンション装置S2では、一つのポンプ4に対して四つのダンパDを駆動するために、ポンプ4と四つの流体圧回路FCとの間に三つの分流弁90,91,92を設けており、ポンプ4が吐出する流体を分流弁90,91,92で四つの流体圧回路FCへ分配するようにしている。分流弁90,91,92は、ポンプ4の吐出流量を等分して四つの流体圧回路FCへ分配するようにしているが、比率を変えて分配するようにしてもよい。
このように、分流弁80,90,91,92を用いて、ポンプ4からの吐出流量をダンパDごとに設けた流体圧回路FCへ分配すれば、一つのポンプ4の駆動で、各ダンパDの推力の発生に必要な流量を供給できる。よって、複数のダンパDの推力の発生にあたりモータ数が一つで済み、ドライバDrにおけるモータ13を駆動する駆動回路も一つで済むため、ダンパDが増加してもシステム全体としてコストを低減できる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。