以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る開口部の止水装置の概略構成を表す平面図である。図1および図2に示す実施形態の開口部の止水装置1は、開口部Oから構造物Sの内部に水が浸入することを防止するものである。開口部Oは、構造物Sの壁部Wなどに形成され、構造物Sの一方の空間側(例えば、屋外側)と他方の空間側(例えば、屋内側)とを連通するように形成される。本実施形態において、開口部Oの周囲の壁部Wに後述する枠体2が配設されているものを例示するが、これに限らず、開口部Oは、構造物Sの内部を仕切る壁部に形成されたものであってもよい。なお、防止とは、阻止や抑制などの意味を含むものとする。
このような構造物Sの開口部Oには、開閉体としてシャッターや開閉扉が設置されていることが多い。例えば、地下駐車場の入口や、店舗の入口等にもシャッターや開閉扉が設置されていることが多い。シャッターは、隙間が多い構造であるため、ゲリラ豪雨や洪水時のように想定以上の降水量となるとシャッターの隙間を介して浸水して施設が被害に遭う可能性がある。また、開閉扉は、扉間および各扉と開口部との間に隙間があるため、同様に施設が被害に遭う可能性がある。
図1ないし図3に示す実施形態の開口部の止水装置1は、ビル,家屋,倉庫等の構造物を含む構造物Sに形成された開口部Oを通して構造物Sの内部に水が浸入することを防止するものである。以下の説明では、開口部Oにおいて構造物Sの内部に水が浸入することを防止するべき部分を「所定部」と称する。所定部は、開口部Oの鉛直方向下端部である。この所定部の床面Fからの鉛直方向の高さをHとする。なお、本発明でいう床面Fとは、説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、通常の床面Fのみならず、コンクリート面や地面等の開口部Oの下方に位置する面を総称する。
なお、以下の説明では、図1に示すX方向は、上流側(屋外側)から下流側(屋内側)に向かう「奥行方向」である。また、図1に示すY方向は、水平方向に沿った方向であって後述する枠体2の一対の縦枠部材(枠部材、縦方立)21が向かい合う「扉幅方向(幅方向)」である。また、図2に示すZ方向は、枠体2の一対の縦枠部材21が延在する「上下方向(鉛直方向)」である。ここで、屋内側とは、水の浸入を防止、すなわち、水の浸入を阻止や抑制したい側であり、屋外側とは、浸入可能性のある水が流れてくる側のことである。なお、屋外側や屋内側とは、水が浸入する可能性がある場合の上流側や下流側を意味する便宜上の文言である。本発明は、例えば廊下等の通路のような家屋や部屋等の概念が必ずしも明確にならない場所に設置された扉に対しても適用できる。
枠体2は、図1に示すように、開口部Oの周囲の壁部Wより厚く、防錆性を有する金属材で構成されている。枠体2は、図2に示すように、開口部Oの周囲を囲むように構造物Sに固定的に設置されている。枠体2は、左右一対の縦枠部材21と、上枠部材(不図示)と、下枠部材(幅木)22とを含んで構成される。一対の縦枠部材21と上枠部材と下枠部材22は、それぞれ板状の金属材により中空状の断面形状に形成されている。
縦枠部材21は、開口部Oの扉幅方向の両端部に対向して一対が配設され、上下方向に延在している。一対の縦枠部材21は、図1および図2に示すように、後述する開閉扉3よりも屋外側に配設されている。一対の縦枠部材21は、扉幅方向において開口部Oの空間部分を挟んで対向する対向面21aを有している。上枠部材は、開口部Oの上側に配設されている。下枠部材22は、開口部Oと隣接する壁部Wの下側において床面Fの上方に配設されている。上枠部材および下枠部材22は、扉幅方向に延在している。一対の縦枠部材21の上端部と上枠部材の両端部とは、開口部Oの内面側にて連結されている。また、一対の縦枠部材21の下端部と下枠部材22の一端部とは、連結されている。このように構成される枠体2は、全体として開口部Oに対応した形状を成す。
開閉扉3は、図1および図2に示すように、枠体2の屋内側に配設され、扉幅方向にスライド可能に支持された両開き式の一対の扉31を有する。開閉扉3は、扉31が開口部Oを閉塞させる閉塞位置と、開口部Oを開放させる開放位置とに亘って枠体2に対して扉幅方向にスライドすることで、開口部Oを開放あるいは閉塞する。具体的に、開閉扉3は、一対の扉31が互いに近付いて開口部Oを閉塞し、一対の扉31が互いに離間して開口部Oを開放する。このような扉31の移動は、手動でなされても、モータ等の駆動装置によって自動でなされてもよい。また、開閉扉3が後述する補強板4と接触しないため、開閉扉3は、補強板4を開口部Oに設置した状態で開閉可能である。
扉31は、ガイドレール(不図示)によって案内される。ガイドレールは、開口部Oの上下両端に配設され、壁部Wの表面と平行である。扉31の上下方向両端部は、それぞれガイドレールの溝部に挿入されている。溝部は、開閉方向、すなわち、扉幅方向に延在しており、扉31を扉幅方向にスライド自在に案内する。図1に示すように、扉31の扉幅方向の両端には、扉31より厚い扉側縦方立31aが配設されている。また、図2に示すように、扉31の下端部には、扉31より厚い扉側幅木31bが配設されている。扉側縦方立31aの厚みは、扉側幅木31bの厚みと等しい。
補強板4は、一対の縦枠部材21の屋外側面21bと当接した状態で屋外側の床面Fに配設される。補強板4は、防錆性を有する板状の金属材を加工してパネル状に形成されている。補強板4は、図1ないし図3に示すように、開口部Oの所定部を閉塞することが可能な幅および高さを有する。この補強板4は、人が跨ぐことで開閉扉3を介して構造物Sの出入りが可能である。具体的に、補強板4は、幅L1が開口部Oの幅Lより大きく形成されているとともに、設置時の鉛直方向の高さH1が所定部の高さHより大きく形成されている。また、補強板4の高さH1は、要求性能によっては開口部Oに設置されたシート6の上端より低い(もしくは所定部の高さHより低い)ものであってもよく、この場合、開口部の止水装置1は、高さH1と同等までの水位に対応できる。補強板4の高さH1は、人が跨げる程度であることが望ましく、例えば、16(建築基準法施行令に定められた小学校の児童の階段の蹴上げ寸法の上限)cmから38(JIS(日本工業規格) S 1021における身長150cmの人の教室用椅子4号の座面の高さ)cm程度であるのが望ましい。また、補強板4の高さH1は、止水高さの要求性能次第では椅子などを台にして跨ぐことを前提に1m程度まででもよく、脚立などを使って渡ることを前提に1.5m程度まででもよい。
補強板4は、扉幅方向において、複数の板状の部材を連結して構成されている。本実施形態において、補強板4は、第1補強板41と、第1補強板41が進退自在に挿入可能な第2補強板42とで構成されている。また、補強板4は、第1補強板41を第2補強板42に挿入して補強板4を所望の幅とした状態で固定するストッパを含む固定手段(不図示)を有する。固定手段は、補強板4の幅を数mm間隔で固定するものであっても、無段階で固定するものであってもよい。
第1補強板41は、ステンレスを含む磁石が吸着し、防錆性を有する軽量の金属板を断面形状がコの字型に加工して骨材とし、4つの骨材を組み合わせた四角形のフレームを有する。このフレームの正面および背面の開口部がアルミを含む防錆性を有する軽量の金属板で形成された四角形のパネルでそれぞれ閉塞されて、第1補強板41は、形成される。この四角形のパネルで閉塞された面は、第1補強板41における屋内側面41aと屋外側面41bになる。第1補強板41は、フレームとパネルとで囲われた内部の空間に充填剤が充填されている。第1補強板41は、その幅が幅L1より小さい。また、第1補強板41は、屋内側面41aの扉幅方向の一端部に後述する縦止水ゴム(第1止水ゴム)5が配設されている。この第1補強板41は、扉幅方向の他端部が第2補強板42内に扉幅方向に進退自在に収容可能である。また、第1補強板41は、第2補強板42から進出させて引き抜くことで、第2補強板42と分離することができる。
第2補強板42は、ステンレスを含む磁石が吸着し、防錆性を有する軽量の金属板を断面形状がコの字型に加工して骨材とし、4つの骨材を組み合わせた四角形のフレームを有する。このフレームの正面および背面の開口部がアルミを含む防錆性を有する軽量の金属板で形成された四角形のパネルでそれぞれ閉塞されて、第2補強板42は、形成される。この四角形のパネルで閉塞された面は、第2補強板42における屋内側面42aと屋外側面42bになる。第2補強板42は、フレームとパネルとで囲われた内部の空間に第1補強板41が扉幅方向に進退自在に挿入可能である。第2補強板42は、その幅が幅L1より小さい。また、第2補強板42の幅は、第1補強板41の幅と同等である。第2補強板42の高さは、第1補強板41の高さより大きい。第2補強板42の奥行方向の厚さは、第1補強板41の奥行方向の厚さより大きい。また、第2補強板42は、屋内側面42aの扉幅方向の他端部に後述する縦止水ゴム5が配設されている。
脚部43と台座44とは、後述する脚部45と台座46と対を成して補強板4を床面Fに垂直に立設させるものである。脚部43は、平板材で略矩形状に形成されている。脚部43は、第1補強板41の扉幅方向の一端面41cから奥行方向における屋外側に延設されている。台座44は、脚部43の奥行方向における屋外側から下方に延設されている。
脚部45と台座46とは、脚部43と台座44と対を成して補強板4を床面Fに垂直に立設させるものである。脚部45は、平板材で略矩形状に形成されている。脚部46は、第2補強板42の扉幅方向の他端面42cから奥行方向における屋外側に延設されている。台座46は、脚部45の奥行方向における屋外側から下方に延設されている。
このような構成の補強板4は、第1補強板41を第2補強板42に対して進退させることで、その幅L1が調節自在である。本実施形態において、補強板4は、第1補強板41を第2補強板42に対して扉幅方向に半分程挿入した状態で開口部Oに設置している。また、第1補強板41と第2補強板42とが重なり合った二重部分を重ね合せ部4aという。重ね合せ部4aは、補強板4の要求性能に応じて幅L1に対する比率を設定すればよい。本実施形態において、重ね合せ部4aは、幅L1に対して3分の1程度の幅である。補強板4は、重ね合せ部4aを有することで剛性が高くなっている。このため、補強板4は、屋外側の浸水時に屋外側から補強板4に作用する水圧によって屋内側に撓むことが許容されている。
縦止水ゴム5は、第1補強板41の屋内側面41aの扉幅方向の一端部と、第2補強板42の屋内側面42aの扉幅方向の他端部に配設されている。縦止水ゴム5は、第1補強板41および第2補強板42の短手方向(高さ方向)全長に亘って配設されている。本実施形態において、縦止水ゴム5は、水が浸入することを効果的に抑制するため、第1補強板41および第2補強板42の底面まで延在している。なお、使用上の問題がなければ、縦止水ゴム5は、第1補強板41および第2補強板42の底面まで延在していなくてもよい。第1補強板41および第2補強板42に配設された縦止水ゴム5は、一対を成す。縦止水ゴム5は、図4に示すように、補強板4が開口部Oに設置された状態で、補強板4と縦枠部材21との間に介在する。また、縦止水ゴム5は、補強板4が開口部Oに設置された状態で、第1補強板41および第2補強板42の底面と床面Fとの間に介在する。屋外側が浸水して補強板4に対して屋外側から屋内側へ水圧が作用すると、縦止水ゴム5は、縦枠部材21に押圧されて弾性変形する。このため、一対の縦止水ゴム5は、一対の縦枠部材21に密着する。このため、一対の縦止水ゴム5は、補強板4と一対の縦枠部材21の当接部との間を閉塞して水が流れることを抑制する。すなわち、一対の縦止水ゴム5は、一対の縦枠部材21において屋外側から屋内側に水が浸入することを抑制する。
シート6は、少なくとも補強板4と床面Fとの間を閉塞して止水するものである。シート6は、第1補強板41の屋外側面41bおよび第2補強板42の屋外側面42bにおける鉛直方向下端部を覆うものである。本実施形態において、シート6は、第1補強板41の屋外側面41bおよび第2補強板42の屋外側面42bにおいて屋外側に露出している全面を覆う。シート6は、補強板4の重ね合せ部4aにおける第1補強板41と第2補強板42との間の隙間を閉塞し、適切に止水する。また、シート6は、その鉛直方向下端部が床面Fに沿って屋外側に向けて延在するように保持されるものである。
なお、本明細書では、シート6の鉛直方向上側であって、シート6が後述する押圧部材7と第1マグネット8と第2マグネット9とによって構成される保持部材によって保持された状態で補強板4に沿って延在する部分を、以下「シート上部6b」と記載する。また、本明細書では、シート6の鉛直方向下側(鉛直方向下端部)であって、シート6が保持部材によって保持された状態で床面Fに沿って延在する部分を、以下「シート下部6c」と記載する。
シート6は、遮水性を有しており、開口部Oの防水シートとして機能することができる。また、シート6は、可撓性を有しており、伸縮可能であってもよい。シート6の素材は、例えば、樹脂、ゴム、表面を樹脂などでコーティングした布とすることができる。シート6は、水圧によって追従して変形可能な素材で構成されることが好ましい。シート6の形状は、例えば、矩形である。
シート6の幅は、開口部Oに設置した補強板4の幅以上の幅を有する。本実施形態において、シート6の幅は、開口部Oに設置した補強板4の幅より大きい。このため、シート6は、補強板4の幅に合わせて折り畳み部6aにおいて折り畳まれた状態で、補強板4に設置される。なお、シート6の幅が、開口部Oに設置した補強板4と同幅である場合、シート6は、折り畳まれず、シワや弛みが伸ばされて適度に張った状態で補強板4に設置される。
シート6の高さは、対応すべき水深、すなわち、所定部の高さHに基づいて定められている。すなわち、シート6の高さは、補強板4の下端から鉛直方向上側に向けてどの範囲をシート6によって覆い防水するかに基づいて定められている。より詳しくは、シート6の高さは、開口部Oの所定部の高さHより大きく、以下に示すような長さに設定している。すなわち、シート6が第1マグネット8によって保持された状態で、シート下部6cを床面F上に垂らし、床面Fに沿わせることが可能である。シート6は、このシート下部6cを床面Fに沿って屋外側に向けて延在された状態で設置される。言い換えると、シート6は、シート下部6cに設けられた床面Fと対向し、かつシート下部6cが先端側へ向かうに従い補強板4から離間するように配置される。
押圧部材7は、シート6を床面Fと、第1補強板41の屋外側面41bおよび第2補強板42の屋外側面42bとに向けて押圧するものである。押圧部材7は、図1および図2に示すように、シート下部6c上の開口部Oの扉幅方向に沿って連続的に配置される。押圧部材7は、隙間無く配置されても、隣接する押圧部材7間に所定の隙間を設けて配置されてもよい。押圧部材7は、棒状あるいは板状であることが好ましい。本実施形態に係る押圧部材7は、板状のフラットバーである。押圧部材7は、例えば、金属製であり、浮力に抗してシート下部6cを床面Fに向けて押圧することができる質量や密度を有している。押圧部材7は、シート下部6cが床面Fに沿って配置された後でシート下部6c上に設置される。押圧部材7は、床面Fにおけるシート下部6cの折り畳み部6aに該当する位置および/またはシート6が折り畳まれた位置であることが好ましい。より詳しくは、押圧部材7は、開口部Oの扉幅方向に沿って連続的に配置されていれば、シート6が折り畳まれた位置に載置されるが、押圧部材7が開口部Oの扉幅方向に沿って途切れて配置されている場合であっても、シート6が折り畳まれた位置に載置されていることが好ましい。これにより、押圧部材7は、補強板4の下端部の近傍においてシート6を床面Fに密着させておくことができる。押圧部材7は、一本でもよいし、複数に分割されていても結果として開口部Oの扉幅方向に沿って連続的に配置されていてもよい。なお、使用上における止水目的を達成できれば、連続的でなく、若干途切れている箇所があってもよい。
第1マグネット8は、シート6を補強板4よりも屋外側に位置付けて補強板4に対して保持するものである。第1マグネット8は、補強板4に吸着する。また、第1マグネット8は、シート下部6cが床面Fに沿って屋外側に向けて延在するようにシート6の扉幅方向の両端を保持する。これにより、シート6は、補強板4が重ね合せ部4aにおいて有する隙間や補強板4と床面Fとの隙間を塞ぎ、屋内側への浸水を抑制することができる。図2に示すように、第1マグネット8は、一対設けられ、補強板4に着脱自在である。なお、第1マグネット8は、補強板4に作用する水圧によってシート6が第1マグネット8よりも補強板4側に向けて撓むことを許容する。また、シート6を補強板4に対して効果的に保持するためにシート6を床面Fに密着させるように、第1マグネット8は、その下端部が床面Fに極力近接させて配設されていることが好ましい。なお、使用上の問題がなければ、第1マグネット8は、その下端部が床面Fから離間して配設されていてもよい。第1マグネット8は、このような機能を有するものであればよく、例えば、棒状、板状やシート状など取り扱いが容易な形状とすることが好ましい。また、第1マグネット8は、例えば、弾性材を含む変形自在な材料で構成されていることが好ましい。本実施形態に係る第1マグネット8は、弾性を有するシート状である。
第1マグネット8は、補強板4に取り付けられると、鉛直方向に延在し、開口部Oの所定部に対応する範囲に配置される。すなわち、第1マグネット8は、補強板4の下端から所定部の上端までの範囲に対応して配される。なお、本発明では、第1マグネット8は、開口部の止水装置1の防水性能等の使用上の問題がないような実質的な意味で開口部Oの所定部に対応していればよく、例えば、第1マグネット8の上端は必ずしも所定部の上端と一致せず、若干下側に位置していてもよい。第1マグネット8は、シート6に一体に形成されてもよい。
第2マグネット9は、シート6を補強板4よりも屋外側に位置付けて補強板4に対して保持するものである。第2マグネット9は、補強板4に吸着する。また、第2マグネット9は、シート6の上端部にシート6の扉幅方向に間隔をあけて取り付けられている。本発明では、第2マグネット9の全て又は一部を吸盤、ピンチ(クリップ)、粘着材、フック、ファスナー、ひも、鋲などの他の保持部材に置き換えてもよく、また、シート6を保持部材(例えば、第2マグネット9等)で補強板4に止着することは、シート6の撓み抑制の必要性に応じて行えばよい。
上記のように構成される開口部の止水装置1の使用方法について説明する。開口部の止水装置1を開口部Oに設置する際、作業者は、保管場所から補強板4とシート6と保持部材とを運搬する。
作業者は、開口部Oにおける補強板4の設置位置に、屋外側から補強板4を載置する。具体的に、作業者は、第1補強板41を第2補強板42内に挿入して、第1補強板41と第2補強板42と連結する。そして、作業者は、一対の縦止水ゴム5が一対の縦枠部材21と当接する位置に合うように、第1補強板41を第2補強板42に対して進退させることで補強板4の幅を調節する。そして、作業者は、補強板4の底面を補強板4の設置位置の床面Fに垂直に立設させる。また、一対の縦止水ゴム5は、一対の縦枠部材21と当接している。
そして、作業者は、シート6の一端部を第1補強板41の屋外側面41bの扉幅方向の一端部に合わせて、シート上部6bを補強板4に沿って延在させ、シート下部6cを床面Fに沿って屋外側に向けて延在させる。作業者は、シート6の一端部を第1マグネット8によって補強板4に保持させる。
そして、作業者は、シート6の一端部が第1マグネット8によって保持された状態で、シート6を扉幅方向に沿って広げていく。作業者は、シート6を広げながら、上記保持された一端部に近いものから順次第2マグネット9を補強板4に吸着させ、シート6を補強板4に仮固定する。
そして、作業者は、シート6の他端部を第2補強板42の屋外側面42bの扉幅方向の他端部に合わせて、第1マグネット8によって補強板4に保持させる。
シート6の幅が開口部Oの幅L(図2参照)より大きいので、シート6の両端が第1マグネット8によって保持された状態で、シート6は、扉幅方向の中央部において弛みを有している。そして、作業者は、シート6の幅と開口部Oの幅Lとの寸法差に応じてシート6を折り畳み部6aにおいて折り畳む。このとき、作業者は、直接補強板4を覆っている部分のシワや弛みを伸ばすように、扉幅方向の中央部に向けてシート6を扉幅方向に引っ張る。折り畳み部6aは、補強板4の重ね合せ部4a上に位置させる。なお、折り畳み部6aは、第2マグネット9によってその先端(山折り部分)が保持されることが好ましい。なお、余剰部分を2つ折りに折るときには、床面Fとシート6との間に隙間が生じることを抑制するために、シート下部6cをシート上部6bと一緒に折ることが好ましい。本実施形態において、シート下部6cは、シート上部6bと一緒に折る。
このようにして、シート6は、シワや弛み部分が伸ばされて、適度に張られた状態となる。これにより、補強板4とシート6との間に隙間が生じることや、床面Fとシート6との間に隙間が生じることが抑制される。このとき、シート6は、補強板4と床面Fとを一体に覆っている。これにより、シート6は、床面Fと補強板4との隙間を閉塞して止水する。また、シート6は、補強板4の重ね合せ部4aにおける第1補強板41と第2補強板42との間の隙間を止水する。
そして、作業者は、床面Fを覆うシート6のシート下部6cの上に押圧部材7を載せる。より詳しくは、作業者は、床面Fにおけるシート下部6cの折り畳み部6aに該当する位置および/またはシート6が折り畳まれた位置に押圧部材7を載せる。これにより、水がシート6と床面Fとの間に浸入することが抑制される。また、水がシート下部6cと床面Fとの間に浸入したとしても、シート下部6cが床面Fから浮き上がることが抑制される。また、水の流れの勢いによってシート下部6cの位置がずれてしまうことが抑制される。このように、押圧部材7によって、シート6による止水効果を高められる。また、床面F上の折り畳み部6aに押圧部材7が載置されることで、折り畳み部6aの浮き上がり等が抑制され、シート6の止水効果が高められる。
こうして、開口部の止水装置1は、シート6が補強板4と床面Fとを一体に覆いかつシート下部6cが床面Fに沿って屋外側に向けて延在した状態で、押圧部材7によりシート6を床面F、補強板4に向けて押圧する。こうして、開口部の止水装置1が開口部Oに設置される。
屋外側の浸水時に補強板4に水圧が作用すると、補強板4が縦枠部材21側に押圧されて、縦止水ゴム5は、弾性変形して縦枠部材21に密着する。また、シート6に作用する水圧により、シート上部6bは、補強板4に押圧されて密着し、シート下部6cは、床面Fに押圧されて密着する。このように、開口部の止水装置1は高い止水性が得られる。
つぎに、開口部Oに設置された開口部の止水装置1を取り外す際、作業者は、押圧部材7と第1マグネット8と第2マグネット9とを取り外す。そして、作業者は、シート6を補強板4から取り外す。そして、作業者は、補強板4を開口部Oから取り外す。そして、作業者は、第1補強板41を第2補強板42から進出させて引き抜いて、第1補強板41と第2補強板42と分離する。そして、作業者は、第1補強板41と第2補強板42とを別々に保管場所まで運搬する。また、作業者は、シート6と保持部材とを保管場所まで運搬する。そして、作業者は、第1補強板41を第2補強板42内に後退させて収納して補強板4を短縮してから保管場所に収納する。このようにして、開口部Oに設置された補強板4は、取り外される。
以上で説明した実施形態に係る開口部の止水装置1によれば、補強板4は、第1補強板41と第2補強板42とを連結して、第1補強板41を第2補強板42に対して進退させることでその幅を開口部Oの幅Lに合わせて調節することができる。また、補強板4の重ね合せ部4a上には、シート6の折り畳み部6aが配設されている。このため、開口部の止水装置1は、シート6によって、重ね合せ部4aにおける第1補強板41と第2補強板42との間の隙間を止水することができる。このように、重ね合せ部4aには、例えばパッキンなどの止水部材を配設する必要がないため、補強板4は、簡易な構成とすることができる。これにより、補強板4は、定期的に止水部材を点検、交換するなどのメンテナンスが不要となる。
また、開口部の止水装置1においては、第1補強板41を第2補強板42に対して後退させることで補強板4の幅を短縮して小型化することができる。この第2補強板42は、第1補強板41を収納するため、内部の空間に充填剤が充填されていないので軽量化することができる。また、第1補強板41は、第2補強板42から進出させて引き抜くことで、第2補強板42と分離することができる。このため、分割した第1補強板41と第2補強板42は、それぞれ小型化、軽量化することができる。このように、開口部の止水装置1は、補強板4が小型化、軽量化されているので、運搬時や収納時の取り扱いを容易にすることができる。
また、開口部の止水装置1においては、補強板4は、第1補強板41を第2補強板42に対して進退させることでその幅L1が調節自在である。このため、補強板4は、種々の開口部Oに設置可能である。
また、開口部の止水装置1においては、補強板4は、重ね合せ部4aを有することで高い剛性を得ることができる。このため、開口部の止水装置1は、屋外側の浸水時に屋外側から補強板4に作用する水圧によって補強板4が屋内側に撓むことを抑制することができる。
また、開口部の止水装置1においては、開口部Oへの補強板4の設置時に、縦止水ゴム5が補強板4と一対の縦枠部材21との間に介在し、シート6のシート下部6cが床面Fとの間に延設する。そして、一対の縦止水ゴム5は、一対の縦枠部材21に押圧されて弾性変形して密着し、シート下部6cは、床面Fに押圧されて密着する。このように、開口部の止水装置1は、縦止水ゴム5によって補強板4と一対の縦枠部材21の当接部の間を水が流れることを抑制することができる。また、開口部の止水装置1は、シート下部6cによって補強板4と床面Fの間を水が流れることを抑制することができる。このように、開口部の止水装置1は、屋外側から屋内側に水が浸入することを防止できる。
より詳しくは、洪水やゲリラ豪雨等によって屋外側の水嵩が増すと、まずシート下部6cが水に接する。シート下部6cは、水圧によって床面Fに向けて押圧されて、シート下部6cが床面Fに密着する。これにより、シート下部6cは、床面Fとの間から水が浸入することを抑制することができる。また、押圧部材7によってシート下部6cが床面Fに向けて押圧されていることで、シート下部6cは、低水位の場合であっても床面Fとの隙間を介した浸水をより確実に抑制することができる。また、押圧部材7は、水流等によってシート下部6cが浮き上がることを抑制することが可能である。このようにシート6は、水圧によって所定部と、所定部に隣接する床面Fとを一体に覆うことができる。
また、シート6は、水圧によって補強板4に対して押圧される。このため、シート6は、水位が増加するにともなって補強板4に対する密着性が増し、また隙間を閉塞する閉塞性が増す。これにより、シート6は、シート6と補強板4との間および補強板4の重ね合せ部4aにおける第1補強板41と第2補強板42との間の隙間に水が浸入することを抑制することができる。このように、シート6は、水位に応じて遮水性が増し、適切に屋内側への浸水を抑制することができる。
また、このような構成の開口部の止水装置1においては、止水性を確保するために、定期的に縦止水ゴム5およびシート6を定期的に点検、交換するなどのメンテナンスを実施すればよく、メンテナンスに要する手間と時間とコストとを削減することができる。
また、開口部の止水装置1においては、開口部Oへの補強板4の設置時に、補強板4を縦枠部材21に当接させた状態で、床面Fに載置するだけで、補強板4は、開口部Oに容易に設置される。このように、開口部の止水装置1は、補強板4の設置、取り外しに工具を必要とせず、誰でも短時間で容易に設置、取り外しができる。また、補強板4を開口部Oに設置する際に、保持手段がなくてよいため、簡易な構造とすることができる。
また、開口部の止水装置1においては、シート6を保持部材によって補強板4に保持することができるので、工具を必要とせず、誰でも短時間で容易に設置、取り外しができる。また、シート6は、簡易な構造とすることができる。
また、開口部の止水装置1においては、補強板4が一対の縦枠部材21に立て掛けられていて開閉扉3と接触していないため、開閉扉3の開閉状態に関わらずシート6に作用する水圧を補強板4が支えることができる。すなわち、開口部の止水装置1は、開口部Oの中央部を通して構造物Sに出入りすることができる。このために、開口部の止水装置1は、開口部Oに設置した状態であっても、図1に示すように、開口部Oを開閉して構造物Sに出入りすることができる。
また、開口部の止水装置1は、補強板4が構造物Sに固定的に配設された縦枠部材21の全面で支持されるように立て掛けられているので、水圧を分散して支持することができる。このため、開口部の止水装置1は、簡易な構成でも水圧に耐え得る強度を有するので、設置後に補強板4が倒れることを抑制して開口部Oからの浸水を抑制することができる。開口部の止水装置1は、補強板4の高さH1は、16cmから38cmであるので、開口部Oへの設置後に、開口部Oから出入りすることを確実に可能とすることができる。
しかも、開口部の止水装置1は、既存の構造物Sに改修工事を必要としない。そのため、開口部の止水装置1は、既設の構造物Sを含む様々な構造物Sに適用することができる。
[実施形態2]
図5を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。実施形態2に係る開口部の止水装置100は、補強板110の設置位置が実施形態1の補強板4の設置位置と異なる。
補強板110は、一対の縦枠部材21における対向面21a間を押し広げる方向に押圧して、一対の縦枠部材21の対向面21a間に配設される。補強板110は、扉幅方向において、複数の板状の部材を連結して構成されている。本実施形態において、補強板110は、第1補強板111と、第1補強板111が進退自在に挿入可能な第2補強板112とで構成されている。第1補強板111と第2補強板112は、実施形態1の第1補強板41と第2補強板42と同様に構成されている。さらに、第2補強板112の内側には、第1補強板111を第2補強板112に挿入した状態で、常時、第1補強板111を後退させる方向、すなわち、補強板110の幅を広げる方向に付勢する付勢手段(不図示)を有する。この付勢手段の付勢力は、補強板110を開口部Oに設置した際に補強板110に作用する水圧に抗することができるものである。
シート120は、扉幅方向において、一対の縦枠部材21の屋外側面21b側に延在する。すなわち、シート120は、開閉部Oの所定部と、構造物Sのうち所定部に隣接する部分である一対の縦枠部材21を一体に覆うものである。すなわち、シート120は、補強板110および一対の縦枠部材21に保持された状態で開口部Oの幅Lより大きく、一対の縦枠部材21まで張り出している。本実施形態において、シート120は、第1補強板111の屋外側面111bおよび第2補強板112の屋外側面112bにおいて屋外側に露出している全面を覆う。シート下部120cは、補強板110の屋外側面111bにおける鉛直方向下端部と一対の縦枠部材21のうち補強板110の屋外側面111bにおける鉛直方向下端部に隣接する部分とを一体に覆う。シート120は、床面Fと補強板110との隙間を閉塞して止水し、かつ、補強板110と一対の縦枠部材21との間を閉塞して止水するように補強板110および一対の縦枠部材21に保持される。このようなシート120は、実施形態1のシート6と同様の素材で構成され、同様の形状に形成されている。
押圧部材7は、実施形態1の押圧部材7と同様に構成されている。なお、本実施形態において、押圧部材7は、シート120を床面Fと、第1補強板111の屋外側面111bおよび第2補強板112の屋外側面112bと、一対の縦枠部材21とに向けて押圧するものである。
第1マグネット8は、実施形態1の第1マグネット8と同様に構成されている。なお、本実施形態において、第1マグネット8は、一対の縦枠部材21に着脱自在である。第1マグネット8は、開口部Oの所定部と、構造物Sのうち所定部に隣接する部分である一対の縦枠部材21とを一体に覆うことで開口部Oの所定部を閉塞させるようにシート120を保持するものである。
以上で説明した実施形態に係る開口部の止水装置100によれば、実施形態1と同様に、補強板110は、簡易な構成とすることができる。
また、開口部の止水装置100においては、実施形態1と同様に、補強板110が小型化、軽量化されているので、運搬時や収納時の取り扱いを容易にすることができる。
また、開口部の止水装置100においては、シート120が、床面Fと補強板110と一対の縦枠部材21とを一体に覆っている。したがって、シート120は、床面Fと補強板110との隙間および一対の縦枠部材21と補強板110との隙間を閉塞して止水することが可能である。これらにより、シート120は、補強板110が重ね合せ部110aにおいて有する隙間や補強板110と一対の縦枠部材21との隙間を塞ぎ、屋内側への浸水を抑制することができる。すなわち、開口部の止水装置100においては、止水ゴムを有していないため、止水性を確保するために、定期的にシート120のみを定期的に点検、交換するなどのメンテナンスを実施すればよく、メンテナンスに要する手間と時間とコストとを大幅に削減することができる。
上記実施形態においては、開口部の止水装置1,100を開閉扉3が配設される開口部Oに設置するものとして説明したが、開閉扉3は補強板4,110と接触しないため、開閉扉3が配設されない開口部Oであっても開口部の止水装置1,100を適用することができる。
また、上記実施形態において、補強板4,110の設置時における開閉扉3の開閉が要求されない場合は、補強板4,110が開閉扉3と接触するように配設してもよい。例えば、補強板4,110の扉幅方向の中央部を、開閉扉3と接触させた状態で設置する。これにより、屋外側の浸水時に補強板4,110に作用する水圧は、開閉扉3によっても支持される。このため、補強板4,110に要求される強度を低減することができる。
また、上記実施形態において、第1補強板41,111を第2補強板42,112内に進退自在に挿入可能であるものとして説明したが、第1補強板41,111と第2補強板42,112とは、例えば、ネジなどの締結部材を含む連結部材を介して連結して組み立ててもよい。
また、上記実施形態において説明したシート6,120は、開口部Oの所定部の高さHがゼロである場合、補強板4,110と床面Fとの間のみを閉塞して止水すればよい。すなわち、補強板4,110の屋外側面の下端から床面Fに沿って屋外側に向けて延在するように保持されていればよい。
また、上記実施形態1において、縦止水ゴム5は、短手方向(高さ方向)全長に亘って配設されているものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、開口部の止水装置1が適用される場所の所定部の高さHより高くなればよい。すなわち、縦止水ゴム5は、補強板4の底面から所定部の高さH+αの高さまで配設されていればよい。
さらに、上記実施形態1において説明した開口部の止水装置1に、図6に示すように、補強板4の重ね合せ部4aとシート6の折り畳み部6aとを上方から覆う補強カバー140を設けて開口部の止水装置130としてもよい。これにより、補強板4は、補強カバー140によって剛性を高めることができる。また、シート6の折り畳み部6aは、補強カバー140によって挟持されることで位置ずれを抑制することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る開口部の止水装置1,100は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る開口部の止水装置1,100は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。