JP6476513B2 - 天吊り機器の減震構造と減震構造用減震器 - Google Patents
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Description
この天吊り構造体100は、天井構造物101に埋め込むように取り付けたインサート102を介して天井構造物101から4本の吊りボルト104を吊り下げ、各吊りボルト104の下端部に設けた連結金具103によって設備機器Wの底部を支持している。
例えば、地震が発生することで図14に示すように設備機器Wに対し加速度による力Fが作用した場合、吊りボルト104に図15の2点鎖線に示すように曲げ変形が作用する。地震の規模が小さい場合は吊りボルト104が自身の剛性で揺れに耐えるが、地震の規模が大きく、加速度が大きくなると、天井構造物101から下方に突出した吊りボルト104の基端部側、吊りボルト104の天井構造物近くの根本部分に応力が集中し、地震の規模によっては吊りボルト104が破断するおそれがある。
これらの場合、地震の震動が大きいほど影響が大きく、大規模の地震によっては設備機器Wの落下につながるおそれがある。例えば、2011年3月に東北地方に発生した巨大地震の際には、設備機器Wの落下が多数発生したので、現状では、天吊り構造の更なる強化策が求められている。
ところが、設備機器106の上方空間にダクトや他の機器などが混在しているとこれらの機器と干渉してブレース110を設置できないおそれがある。また、仮に設置できたとしても、他の機器との干渉を避けつつブレース110を配置しなくてはならないので、ブレース110の設置作業が極めて煩雑な問題がある。
また、図17に示す構造を採用したとして、設備機器106の近傍に配管や他の機器が混在していた場合、これら機器との干渉を避けつつハンガーロッド116を取り付ける作業は容易ではない問題がある。また、取付金具118を天井スラブ107に固定し、それに支持させてハンガーロッド116を取り付ける作業自体、極めて煩雑な現場作業となる問題がある。
その結果、吊りボルトの破断や変形等の発生を抑制することができ、設備機器を安定に天吊り支持して保護することができる。更に、減震効果を得るための減震器は吊りボルトの天井駆体部分に取り付けることで特別な設置スペースは殆ど不要であり、天吊り機器の周囲に配管や他の機器が設置されている設備環境としても、適用が容易で設置し易い特徴を有する。
また、減震器の支持部において挿通孔の開口部側を均一内径としていることにより、ナット部と挿通孔を挿通している吊りボルトの変形時において、小変形時はナット部のねじ孔の下端位置に曲げモーメントを作用させ、大変形時は支持部の挿通孔の下端位置に曲げモーメントを作用できる。このため、振動の大小に応じて吊りボルトに作用する曲げモーメントの位置を変更することが可能となり、吊りボルトに対する曲げモーメントの集中を抑制できる。
挿通孔の開口側に着色された鍔部が設けられていると、着色された鍔部の存在を作業者が容易に確認できる。このため、作業者は、鍔部の色を確認することで減震器を取り付けてあることを容易に確認できる。よって、減震器を取り付けた構造が複数存在している場合の点検作業が容易にできる。
挿通孔の開口側に着色された突出部が設けられていると、着色された突出部の存在を作業者が容易に確認できる。このため、作業者は、突出部の色を確認することで減震器を取り付けてあることを容易に確認できる。よって、減震器を取り付けた構造が複数存在している場合の点検作業が容易にできる。
(3)本発明において、前記支持部の挿通孔の内周面が前記支持部の長さ方向に沿って同一内径とされ、前記支持部の挿通孔の内周面とその内側に位置する前記吊りボルトの外周面との間に均一厚さの筒型の減衰部材が配置された構造でも良い。
この構造により、地震発生等によって設備機器に対し外部から振動が入力されると、吊りボルトは小変形時にナット部の下端位置に曲げモーメントを受け、大変形時に支持部の挿通孔の開口部側で曲げモーメントを受ける。このため、吊りボルトの一点に応力が集中することを回避できる。
ヒンジ接合による支持部半体を開いてから吊りボルトに装着し、ヒンジ接合部分を閉じて支持部半体により吊りボルトを囲むように装着することで、側方から吊りボルトに減震器を容易に装着できる。従って、既設の吊りボルトに減震器の支持部を装着することで減震構造とすることが容易にできる。
(6)本発明の減震器は、設備機器を吊りボルトにより天吊り支持した天吊り機器の減震構造に適用され、天井駆体から吊り下げられた吊りボルトの基端側に螺合される減震器であって、前記吊りボルトを螺合するねじ孔を有するナット部と、該ナット部をその中心軸方向に延長するように形成されて前記吊りボルトを挿通自在な筒型の支持部と、該支持部に内挿されて前記吊りボルトを囲む筒型の減衰部材を備え、前記支持部において前記吊りボルトを挿通する挿通孔の内径が前記ナット部のねじ孔の内径より大きくされ、前記挿通孔の開口部側が均一内径に形成され、前記減衰部材が、ゴム硬度:60度以上のゴム系あるいはエラストマー系の減衰材からなり、前記減衰部材において前記挿通孔の開口側に該開口から外側に突出する着色された突出部が形成されたことを特徴とする。
(7)本発明の減震器において、前記支持部の挿通孔の内周面が前記支持部の長さ方向に沿って同一内径とされ、前記支持部の挿通孔の内周面とその内側に位置する前記吊りボルトの外周面との間に均一厚さの筒型の減衰部材が配置されたことが好ましい。
図1は本発明に係る天吊り機器の減震構造の第一実施形態を示すもので、本実施形態の天吊り機器の減震構造1において、天井躯体F(例えば、天井コンクリート構造物)の底部に埋設されたインサート(固定具)2を介して上端部を螺着した4本の吊りボルト3が鉛直方向に吊り下げられ、これら4本の吊りボルト3の下端部にそれぞれ設けられた連結具5を介し、設備機器6が吊り下げ支持されている。なお、天井駆体Fの底部にはデッキプレート4が設けられているので、各吊りボルト3がデッキプレート4を貫通して吊り下げられている。
なお、設備機器6を吊り下げ支持する吊りボルト3の本数は設備機器6の規模や長さによって任意の本数で良く、設備機器6がダクトなどの長尺物である場合はダクトの長さ方向に必要間隔で複数の吊りボルト3が設置される。また、設備機器6が小規模配管や配線などのように幅の小さい構造物である場合は、配管や配線の上に吊り下げた1本の吊りボルト3を配管や配線の長さ方向に複数本配置して吊り下げる構造となる。また、1本の吊りボルト3で支持可能な設備機器の場合にも本願構造を適用できるのは勿論である。
本実施形態の減震構造と減震器は上述したいずれの形態に適用された吊りボルト3に対しても適用することができる。
減震器11は、吊りボルト3に螺合可能なナット部12と、ナット部12をその中心軸方向(図2の上下方向あるいはナット部12の厚さ方向)に延長するように形成された筒型の支持部13からなる長ナット型の本体部15と、支持部13に嵌合された鍔付き筒型の減衰部材17からなる。ナット部12は外形が断面視多角形状、例えば6角形状に形成されている。
本体部15は、一例としてねじ孔を有する長ナットを内面加工し、ねじ孔内周面の長さ方向一部を削り取ってねじ部が形成されていない、挿通孔を形成することで作製される。ナット部12の内側にはねじ孔12aが形成され、支持部13の内側にはねじ部を有していない滑らかな内周面を有する挿通孔13aが形成され、ねじ孔12aの内径より挿通孔13aの内径が若干大きく形成されている。このため、本体部15の内周側において、ねじ孔12aから挿通孔13aに至る部分には周段部13bが形成されている。
なお、本体部15を金属製とする場合は市販の金属製長ナットを上述のように加工して作製することが容易であるが、本体部15を樹脂成形などにより硬質樹脂で一体成形しても良く、また、金属パイプに対しねじ孔と挿通孔を別途形成する方法を採用するなど、いずれの製造方法を用いても良い。
減震器11において、減衰部材17は、JISK6253に規定されるデュロメータータイプAによるゴム硬度60度以上、例えば、60〜90度であって、常温時の損失係数(tanδ):0.5以上のゴム系あるいは熱可塑性エラストマー系の高減衰材からなる。ゴム硬度については70度以上、90度以下の範囲がより好ましい。
前記ゴム系の高減衰材であるならば、ゴム系減衰材料の型取りにより製造することができ、エラストマー系の高減衰材料であるならば、射出成形などにより大量に低価格で製造することができる。
吊りボルト3がM10のサイズの場合、減震器11の各部サイズの一例として本体部15の全長30mm、ねじ孔12aの内径10mm、ナット部12の長さ10mm、挿通孔の長さ20mm、挿通孔の内径14mm、減衰部材17の筒部17aと鍔部17bの肉厚を2mmに設定することができる。
なお、地震等の震動により設備機器6が横揺れする際の変動量は大きいが、吊りボルト3が天井駆体Fから突出した位置での変動量はごくわずかであるため、上述の肉厚の減衰部材17であっても有効に減震作用を奏する。
上述のように吊りボルト3の変形が小さい場合と大きい場合に吊りボルト3が減震器11の内部で撓みの支点とする位置が変動するので、減震器11の内部の吊りボルト3の震動の支点を1点ではなく、複数点とすることができる。このため、震動の大小に応じ吊りボルト3に対する応力集中位置をずらすことができる。
その結果、吊りボルト3に生じる曲げ変形を効果的に抑制でき、設備機器6を過度に揺らすことなく安定支持できる。また、吊りボルト3の破断を防止し、設備機器6の落下を防止して設備機器6を安定支持できる。
この点において上述の実施形態の構造では、減震器11の内側に設けている筒型の減衰部材17の震動減衰機能と減震器11において均一内径とした挿通孔13aの形状効果、並びに、減衰部材17を構成する材料をゴム硬度:60度以上、損失係数(tanδ):0.5以上の高減衰材から構成した効果と相俟って、震動の大小に応じて吊りボルト3の応力集中点を効果的にずらす構造とすることができる。これにより、設備機器6を天吊りした構造において設備機器6の落下を防止できる効果を奏する。
なお、後述する加振試験において、気象庁が定めている震度7の地震において建物に印加されると想定される加速度400Galを超える約500Galを印加した条件であっても、減震器11を設けた天吊り支持構造であれば、有効に減震できることを確認できている。
次に、上述の天吊り機器の減震構造に対し適用する減震器の第2実施形態について図5を基に説明する。
図5は第2実施形態の減震器20の部分断面図であり、この減震器20は、先の第1実施形態の減震器11と同等構造のナット部12、支持部13を有しているが、減衰部材21の構成が異なる。この実施形態の減衰部材21は、支持部13の挿通孔13aに挿入自在な筒部21aを有するが、鍔部は有しておらず、挿通孔13aの開口から外側に筒部21aを長さ方向に所定長さ延在させた筒型の突出部21bが形成されている。
減衰部材21は先の実施形態の減衰部材17と同等の高減衰材からなり、着色されていることが好ましい。
減衰部材21を下側に、ナット部12を上側にして吊りボルト3に減震器20を螺合することで天吊り機器の減震構造を実現できる。
この第2実施形態の減震器20を用いることで図1に示す天吊り機器の減震構造1と同様、地震時の吊りボルト3の震動を減震し、設備機器6を過度に揺らすことなく安定支持できるとともに、設備機器6の落下を防止して設備機器6を保護できる。
また、吊りボルト3に減震器20を取り付けてあるか否かについて、着色した筒型の突出部21bを作業者が目視確認することで、認識し、確認できる効果について先の第1実施形態の構造と同様に得ることができる。
次に、上述の天吊り機器の減震構造に対し適用する減震器の第3実施形態について図6(A)、(B)を基に説明する。
図6(A)は第3実施形態の減震器40の側面図であり、この減震器40は、高ナット42を備え、この高ナット42に筒型の減衰部材43を嵌合してなる。
この形態の減衰部材43は、6角型の高ナット42の外側に嵌合自在な上側筒部41aとこの上側筒部41aの下側に延在された下側筒部41bからなる。
上側筒部41aの内部中央には6角型の高ナット42の下部側を嵌合可能な上部挿通孔41cが形成され、下側筒部41bの内部中央には吊りボルト3を挿通可能な下部挿通孔41dが形成されている。
第3実施形態の構造において、減衰部材43の全体がJISK6253に規定されるデュロメータータイプAによるゴム硬度60度以上であって、常温時の損失係数(tanδ):0.5以上のゴム系あるいはエラストマー系の高減衰材からなる。即ち、減衰部材43は先の実施形態の減衰部材17と同等の高減衰材からなり、先の実施形態の減衰部材17と同様、着色されていることが好ましい。また、この実施形態において、樹脂製の上側筒部41aと下側筒部41bに着色が施されていることが好ましい。
減衰部材43を下側に、高ナット42を上側にして吊りボルト3の天井駆体隣接部分に高ナット42を螺合することで天吊り機器の減震構造を実現できる。
この第4実施形態の減震器40を用いることで図1に示す天吊り機器の減震構造1と同様、地震時の吊りボルト3の震動を減震し、設備機器6を過度に揺らすことなく安定支持できるとともに、設備機器6の落下を防止して設備機器6を保護できる。
また、半割筒型の支持部半体41A、41Aをヒンジ部41Bを介し開閉自在に設けている。このため、減震器40を吊りボルト3に取り付ける際、支持部半体41A、41Aを開いた状態で吊りボルト3の側方から高ナット42に装着し、支持部半体41A、41Aを筒状に閉じてから係止片41fと突起部41gを嵌合することで、吊りボルト3に螺合した高ナット42に容易に装着できる効果を有する。従って、既設の吊りボルトに対し装着して減震構造とすることが容易にできる効果がある。
次に、上述の天吊り機器の減震構造に対し適用する減震器の第4実施形態について図7を基に説明する。
図7は第4実施形態の減震器50の側断面図であり、この減震器50は、外形4角柱型の鋼材あるいは硬質樹脂からなる外筒51の内上部に内筒52を挿入してなる本体部53と、図7に示す本体部53の起立状態で外筒51の下部側に嵌着された鍔付き筒型の減衰部材54を備えている。
内筒52は金属あるいは硬質樹脂からなり、その内周面にねじ部52aが形成されている。内筒52の長さは外筒51の長さより若干短く形成され、外筒51の下部側において内筒51が挿入されていない部分に挿通孔51aが形成され、この挿通孔51aに先の第1実施形態で用いられている減衰部材17と同等構造の減衰部材54が嵌着されている。減衰部材54は筒部54aと鍔部54bとからなり、筒部54aを挿通孔51aに嵌入するとともに鍔部54bを外筒51の下端開口部に被せて外筒51に嵌着されている。
減衰部材54は先の実施形態の減衰部材17と同等の高減衰材からなり、先の実施形態の減衰部材17と同様、着色されていることが好ましい。
減衰部材54を下側に、内筒52を上側にして吊りボルト3の天井駆体隣接部分にねじ部52aを螺合することで天吊り機器の減震構造を実現できる。
この第5実施形態の減震器50を用いることで図1に示す天吊り機器の減震構造1と同様、地震時の吊りボルト3の震動を減震し、設備機器6を過度に揺らすことなく安定支持できるとともに、設備機器6の落下を防止して設備機器6を保護できる。
ねじ部などを有していない直管状の外筒51と予めねじ部52aを形成しておいた内筒52を嵌め込み一体化するのみで本体部53を作製可能なので、第1実施形態の減震器11よりも更に低コストで製造が可能となる。
勿論、外筒51と内筒52を樹脂で一体成形しても良く、いずれも金属で構成して接着等の手段で両者を一体化しても良い。
次に、上述の天吊り機器の減震構造に対し適用する減震器の第5実施形態について図8を基に説明する。
図8は第5実施形態の減震器60の側断面図であり、この減震器60は、高ナット62を備え、この高ナット62に筒型の減衰部材61を嵌合してなる。
この形態の減衰部材61は、6角型の高ナット62の外側に嵌合自在な上側筒部61aとこの上側筒部61aの下側に先窄まり型に延在された下側筒部61bからなる。
上側筒部61aの内部中央には6角型の高ナット62の下部側を嵌合可能な上部孔61cが形成され、下側筒部61bの内部中央には吊りボルト3を挿通可能な下部孔61dが形成されている。また、上側筒部61aの外周を囲むように金属リングあるいは硬質樹脂バンドやリングなどからなる拘束部材65が装着されている。
減衰部材61を下側に、高ナット62を上側にして吊りボルト3の天井駆体隣接部分に高ナット62を螺合することで天吊り機器の減震構造を実現できる。
この第6実施形態の減震器60を用いることで図1に示す天吊り機器の減震構造1と同様、地震時の吊りボルト3の震動を減震し、設備機器6を過度に揺らすことなく安定支持できるとともに、設備機器6の落下を防止して設備機器6を保護できる。なお、拘束部材65は減衰部材61の強度が不足すると想定される場合に上側筒部61aの外周部を拘束し、吊りボルト3の震動や変形による上側筒部61aの変形を抑制し、上側筒部61aが高ナット62から脱落しないように保持する。
また、吊りボルト3に減震器60を取り付けてあるか否かについて、着色した減衰部材61を目視確認することで、減震構造の適用を確認できる効果について先の第1実施形態の構造と同様に得ることができる。
次に、上述の天吊り機器の減震構造に対し適用する減震器の第6実施形態について図9を基に説明する。
図9は第6実施形態の減震器70の側断面図であり、この減震器70は、高ナット72を備え、この高ナット72に筒型の減衰部材71を嵌合し、その周囲を金属製の外筒73で覆ってなる。
この形態の減衰部材71は、6角型の高ナット72の外側に嵌合自在な上側筒部71aとこの上側筒部71aの下側に延在された下側筒部71bからなる。外筒73は金属製の筒体であり、高ナット72に嵌合する上端周壁73aと、上側筒部71aの周囲を囲む上部周壁73bと下側筒部71bの周囲を囲む下部周壁73cとからなる。
上側筒部71aの上部中央には6角型の高ナット72の下部側を嵌合可能な上部孔71cが形成され、下側筒部71bの内部中央には吊りボルト3を挿通可能な下部孔71dが形成されている。
外筒73の上端周壁73aの内部中央には6角型の高ナット72を押し込み嵌合可能な嵌合孔73dが形成され、外筒73が高ナット72に対し嵌合一体化されている。
減衰部材71を下側に、高ナット72を上側にして吊りボルト3の天井駆体隣接部分に高ナット72を螺合することで天吊り機器の減震構造を実現できる。
この第6実施形態の減震器70を用いることで図1に示す天吊り機器の減震構造1と同様、地震時の吊りボルト3の震動を減震し、設備機器6を過度に揺らすことなく安定支持できるとともに、設備機器6の落下を防止して設備機器6を保護できる。なお、外筒73は上側筒部71aの外周部と下側筒部71bを拘束し、吊りボルト3の震動や変形による上側筒部71aの変形を抑制し、上側筒部71aが高ナット72から脱落しないように保持する。
また、吊りボルト3に減震器70を取り付けてあるか否かについて、着色した減衰部材71と外筒73を目視確認することで、減震構造の適用を確認できる効果について先の第1実施形態の構造と同様に得ることができる。
次に、天吊り機器の減震構造の第二実施形態について図10を基に説明する。
図10に示す天吊り機器の減震構造は、天井駆体Fから吊り下げた吊りボルト3により設備機器6を天吊り支持する構造において、天井駆体Fから吊りボルト3を突出させた部分に減震器11を取り付けた構造について先の第一実施形態の構造と同等である。
図10の構造では、吊りボルト3が設備機器6を支持する部分にコイルスプリング80を内蔵したスプリングハンガー81を設けた点に特徴を有する。
スプリングハンガー81は、図10に示すように設備機器6の側面に沿って上下に延在された縦長長方形板状の本体壁部82と、この本体壁部82の上端部と下端部にそれぞれ水平に接続された上部支持板83および下部支持板84を有している。
上部支持板83を吊りボルト3の下端部が上下に貫通するように接続され、吊りボルト3の下端側にコイルスプリング80が巻装され、吊りボルト3の下端にワッシャ85とナット86が取り付けられてコイルスプリング80が抜け止めされている。
また、下部支持板84は、設備機器6の側面に取り付けられた支持片6aに沿わせられ、下部支持板84と支持片6aを貫通するボルト87とこのボルト87に螺合されたナット88、89により支持片6aと一体化されている。
また、図10に示す減震構造では、スプリングハンガー81を介し吊りボルト3により設備機器6を天吊り支持しているので、地震の震動が設備機器6に作用しようとした場合、コイルスプリング80の弾性を利用して減震できる。このため、減震器11の減震作用とスプリングハンガー81の減震作用の両方を利用して設備機器6に作用する地震の振動を抑制できる。
次に、天吊り機器の減震構造の第三実施形態について図11を基に説明する。
図11に示す天吊り機器の減震構造は、天井駆体Fから吊り下げた吊りボルト3により設備機器6を天吊り支持する構造において、天井駆体Fから吊りボルト3を突出させた部分に減震器11を取り付けた構造について先の第一実施形態の構造と同等である。
図11の構造では、吊りボルト3の途中部分に筒状の弾性体90を内蔵した防振ハンガー91を設けた点に特徴を有する。この例では吊りボルト3が上部ボルト3Aと下部ボルト9Bに分割され、それらの間に防振ハンガー91が設けられている。
上部支持板93を上部ボルト3Aの下端部が上下に貫通するように接続され、上部支持板93の下方であって上部ボルト3Aの下端側にナット95が螺合され、上部ボルト3Aに対し上部支持板93が抜け止めされている。
下部支持板94とその上に設置されている筒状の弾性体90を下部ボルト3Bの上端部が貫通し、下部ボルト3Bの上端にナット96を螺合することで下部支持板94が抜け止めされている。下部ボルト3Bの下端部は設備機器6の側面に形成されている支持片84を貫通し、ナット97、98により支持片84に接合されている。
また、図11に示す減震構造では、防振ハンガー91を介し吊りボルト3により設備機器6を天吊り支持しているので、地震の震動が設備機器6に作用しようとした場合、弾性体90の弾性を利用して減震できる。このため、減震器11の減震作用と防振ハンガー91の減震作用の両方を利用して設備機器6に作用する地震の振動を抑制できる。
図12(B)に示すようにH型鋼材からなる脚部120を2本、平行に敷設し、この脚部120上に支柱部121、121と梁部122からなる門型フレーム123をそれぞれ組み立て、2つの門型フレーム123の梁部122によって水平に支持されるように平面視長方形状の天井板124を取り付け、実験用架台を構成した。
天井板124の四隅をそれぞれ貫通するように4本の吊りボルト3を垂下し、天井板124の上に突出した吊りボルト3の上端を長ナット125により抜け止めした。
4本の吊りボルト3の下端部に平ブロック型の錘体126(質量80kg)を吊り下げ、試験用構造体を構成した。試験用構造体の各部寸法を図12(A)、(B)にそれぞれ示す。各部寸法の単位はmmである。吊りボルト3はM10を用いた。錘体126は、平面視長方形状の厚板盤126aの上に3枚の補助錘体126bを積層した構造体であり、厚板盤126aのコーナー部4箇所にL字型の支持片126cが取り付けられ、これらの支持片126cをM10の吊りボルト3で支持する構造とした。また、最上部の補助錘体126bの上面に加速度センサを取り付けた。
試験の種別に応じ、吊りボルト3の上部側であって、天井板124の下面直下に図2に示す構造の減震器11を螺合した。ナット部12を上に、減衰部材17を下にして減震器11を吊りボルト3に螺合した。
各試験結果を以下の表1に記載する。
表1において、「実験項目1.従来構造」とは図1に示す天吊り機器の減震構造から減震器11を除いた構造に相当する。吊りボルトのみで破断実験した結果を示す。
表1において、「実験項目2.市販高ナット」とは図1に示す天吊り機器の減震構造において減震器11を除き、代わりに市販高ナット(長さ40mm)を用いた構造に相当する。
表1において、「実験項目4.減震器(高減衰材A+ゴム硬度70度)」とは、ゴム硬度70度の高減衰材Aから減衰部材を構成した試験例である。
表1において、「実験項目5.減震器(汎用ゴム+ゴム硬度70度)」とは、ゴム硬度70度の汎用ゴム(天然ゴム)から減衰部材を構成した試験例である。
高ナットを吊りボルトに螺合した実験項目2の例に対し減震器を備えた実験項目3の例は吊りボルトが破断するまでの繰り返し回数を367回から4725回まで、13倍に延命できた。また、実験項目2と実験項目3の対比から、質量体の水平変位量を88.2cmから54.6cmに減少できたので、変位量を0.62に低減できた。
このことから、ゴム硬度70度の減衰材からなる減衰部材を備えた図1に示す減震構造を採用することで地震などの震動を受けても吊りボルトに曲げモーメントの応力集中が起こり難く、低サイクル疲労による吊りボルトの破断が起こり難い天吊り機器の減震構造を提供できることがわかる。
また、実験項目5に示すように高減衰材ではない汎用ゴムの減衰部材を用いた場合、破断までの繰り返し回数の増加が少ないこともわかった。
天吊機器は、床入力振動周期と上記天吊り機器の固有周期の関係に依存する。
従来構造では、高さ30m程度の中高層階までの屋上R階機器の天吊り構造においてピークで3〜3.5Gの高い応答加速度が作用するのに対し、減震器を設けた本発明構造では、上述の試験結果から、屋上R階機器の天吊り構造においてピークでも2〜2.5Gの応答加速度に抑制されることがわかる。
図13は、天吊り構造の応答に関する条件を示すもので、(A)は工学基礎と地盤種別スペクトルの一例を示すグラフ、図13(B)は震度階と加速度の関係を示すグラフ、図13(C)は建物の固有値解析結果の一例を示すグラフである。これらの関係から上述の応答加速度が把握される。
Claims (8)
- 設備機器を吊りボルトにより天吊り支持した天吊り機器の減震構造において、
天井駆体から吊り下げられた吊りボルトと、
前記吊りボルトの下端部に設けられ、前記設備機器を支持する連結具と、前記天井駆体の下面側であって、前記天井駆体から前記吊りボルトが突出された部分に螺合された減震器を備え、
前記減震器が、前記吊りボルトを螺合するねじ孔を有するナット部と、該ナット部をその中心軸方向に延長するように形成されて前記吊りボルトを挿通自在な筒型の支持部と、該支持部に内挿されて前記吊りボルトを囲む筒型の減衰部材を備え、
前記支持部において前記吊りボルトを挿通する挿通孔の内径が前記ナット部のねじ孔の内径より大きくされ、前記挿通孔の開口部側が均一内径に形成され、
前記減衰部材が、ゴム硬度:60度以上のゴム系あるいはエラストマー系の減衰材からなり、
前記減衰部材において前記挿通孔の開口側に着色された鍔部が形成されたことを特徴とする天吊り機器の減震構造。 - 設備機器を吊りボルトにより天吊り支持した天吊り機器の減震構造において、
天井駆体から吊り下げられた吊りボルトと、
前記吊りボルトの下端部に設けられ、前記設備機器を支持する連結具と、前記天井駆体の下面側であって、前記天井駆体から前記吊りボルトが突出された部分に螺合された減震器を備え、
前記減震器が、前記吊りボルトを螺合するねじ孔を有するナット部と、該ナット部をその中心軸方向に延長するように形成されて前記吊りボルトを挿通自在な筒型の支持部と、該支持部に内挿されて前記吊りボルトを囲む筒型の減衰部材を備え、
前記支持部において前記吊りボルトを挿通する挿通孔の内径が前記ナット部のねじ孔の内径より大きくされ、前記挿通孔の開口部側が均一内径に形成され、
前記減衰部材が、ゴム硬度:60度以上のゴム系あるいはエラストマー系の減衰材からなり、
前記減衰部材において前記挿通孔の開口側に該開口から外側に突出する着色された突出部が形成されたことを特徴とする天吊り機器の減震構造。 - 前記支持部の挿通孔の内周面が前記支持部の長さ方向に沿って同一内径とされ、前記支持部の挿通孔の内周面とその内側に位置する前記吊りボルトの外周面との間に均一厚さの筒型の減衰部材が配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の天吊り機器の減震構造。
- 設備機器を吊りボルトにより天吊り支持した天吊り機器の減震構造において、
天井駆体から吊り下げられた吊りボルトと、
前記吊りボルトの下端部に設けられ、前記設備機器を支持する連結具と、前記天井駆体の下面側であって、前記天井駆体から前記吊りボルトが突出された部分に螺合された減震器を備え、
前記減震器が、前記吊りボルトを螺合するねじ孔を有するナット部と、該ナット部をその中心軸方向に延長するように形成されて前記吊りボルトを挿通自在な筒型の支持部と、該支持部に内挿されて前記吊りボルトを囲む筒型の減衰部材を備え、
前記支持部において前記吊りボルトを挿通する挿通孔の内径が前記ナット部のねじ孔の内径より大きくされ、前記挿通孔の開口部側が均一内径に形成され、
前記減衰部材が、ゴム硬度:60度以上のゴム系あるいはエラストマー系の減衰材からなり、
前記減震器が前記ナット部を囲むように前記ナット部の一端側に装着された樹脂製または金属製の筒型の支持部を備え、該支持部の内側に減衰部材を備え、前記樹脂製または金属製の筒型の支持部が半割筒型の支持部半体を開閉自在にヒンジ接合してなることを特徴とする天吊り機器の減震構造。 - 設備機器を吊りボルトにより天吊り支持した天吊り機器の減震構造に適用され、天井駆体から吊り下げられた吊りボルトの基端側に螺合される減震器であって、
前記吊りボルトを螺合するねじ孔を有するナット部と、該ナット部をその中心軸方向に延長するように形成されて前記吊りボルトを挿通自在な筒型の支持部と、該支持部に内挿されて前記吊りボルトを囲む筒型の減衰部材を備え、
前記支持部において前記吊りボルトを挿通する挿通孔の内径が前記ナット部のねじ孔の内径より大きくされ、前記挿通孔の開口部側が均一内径に形成され、
前記減衰部材が、ゴム硬度:60度以上のゴム系あるいはエラストマー系の減衰材からなり、
前記減衰部材において前記挿通孔の開口側に着色された鍔部が形成されたことを特徴とする天吊り機器の減震構造用減震器。 - 設備機器を吊りボルトにより天吊り支持した天吊り機器の減震構造に適用され、天井駆体から吊り下げられた吊りボルトの基端側に螺合される減震器であって、
前記吊りボルトを螺合するねじ孔を有するナット部と、該ナット部をその中心軸方向に延長するように形成されて前記吊りボルトを挿通自在な筒型の支持部と、該支持部に内挿されて前記吊りボルトを囲む筒型の減衰部材を備え、
前記支持部において前記吊りボルトを挿通する挿通孔の内径が前記ナット部のねじ孔の内径より大きくされ、前記挿通孔の開口部側が均一内径に形成され、
前記減衰部材が、ゴム硬度:60度以上のゴム系あるいはエラストマー系の減衰材からなり、
前記減衰部材において前記挿通孔の開口側に該開口から外側に突出する着色された突出部が形成されたことを特徴とする天吊り機器の減震構造用減震器。 - 前記支持部の挿通孔の内周面が前記支持部の長さ方向に沿って同一内径とされ、前記支持部の挿通孔の内周面とその内側に位置する前記吊りボルトの外周面との間に均一厚さの筒型の減衰部材が配置されたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の天吊り機器の減震構造用減震器。
- 設備機器を吊りボルトにより天吊り支持した天吊り機器の減震構造において、
天井駆体から吊り下げられた吊りボルトと、
前記吊りボルトの下端部に設けられ、前記設備機器を支持する連結具と、前記天井駆体の下面側であって、前記天井駆体から前記吊りボルトが突出された部分に螺合された減震器を備え、
前記減震器が、前記吊りボルトを螺合するねじ孔を有する高ナットと、該高ナットの下部側を嵌合自在な上部挿通孔と該上部挿通孔に連続し前記吊りボルトを挿通自在な下部挿通孔を有する筒型の減衰部材とを備え、前記減衰部材が、ゴム硬度:60度以上のゴム系あるいはエラストマー系の減衰材からなることを特徴とする天吊り機器の減震構造。
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