JP6473561B2 - エチレン−ビニルアルコール共重合体含有樹脂組成物、フィルム、積層体、包装材料及びフィルムの製造方法 - Google Patents
エチレン−ビニルアルコール共重合体含有樹脂組成物、フィルム、積層体、包装材料及びフィルムの製造方法 Download PDFInfo
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Description
また、EVOH樹脂組成物には、他の熱可塑性樹脂と積層する際や、アルミニウム、酸化ケイ素等を蒸着加工する際のフィルム巻きだし工程や加工時に、ロール間の張力によって起こり得るフィルム破断を低減できること(耐フィルム破断性)や、フィルムロールとして保管する際のフィルム間での滑り性(耐ブロッキング性)やラミネート加工時の製造工程のロールとEVOHフィルムとの滑り性が高いことも求められる。
また上記蒸着層を有する積層体においては、蒸着層とEVOHフィルムとの密着強度を向上させ、外観不良の原因となるデラミネーション等を抑制することも要求されている。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)(以下、「EVOH(A)」ともいう)、無機粒子(B)及び不飽和アルデヒド(C)を含有し、上記無機粒子(B)の含有量が50ppm以上5,000ppm以下であり、上記不飽和アルデヒド(C)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下である樹脂組成物である。
当該樹脂組成物が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが例えば以下のように推察することができる。すなわち、無機粒子(B)及び不飽和アルデヒド(C)の各含有量を上記特定範囲とすることで、無機粒子(B)によるフィルム表面の耐ブロッキング性及び滑り性の向上と、不飽和アルデヒド(C)によるゲル・ブツ等の発生抑制とがそれぞれ発揮されると共に、無機粒子(B)の表面に不飽和アルデヒド(C)が効果的に相互作用して、無機粒子(B)を当該樹脂組成物中に分散させることができると考えられ、上記無機粒子(B)の効果を増大させることができ、その結果、当該樹脂組成物の溶融成形後の外観特性、耐フィルム破断性、蒸着欠点抑制性及び蒸着層の密着強度を向上させることができる。
また、上記他の成分からなる層が金属蒸着層であり、この金属蒸着層の厚みが30nm以上150nm以下であることが好ましい。当該積層体は、上記特定範囲の厚みの金属蒸着膜を有するので、蒸着欠点が少なく、また金属蒸着層と他の樹脂層との密着強度に優れる。
当該包装材料は、上述の当該フィルム又は当該積層体を備えているので、外観特性及び耐フィルム破断性に優れる。
また、本発明の別のフィルムの製造方法は、当該樹脂組成物から得られるフィルムを延伸する工程を有する。
当該フィルムの製造方法によれば、上記工程を有することで、外観特性、耐フィルム破断性及び耐ブロッキング性により優れるフィルムを得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)、無機粒子(B)及び不飽和アルデヒド(C)を含有し、上記無機粒子(B)の含有量が50ppm以上5,000ppm以下であり、上記不飽和アルデヒド(C)の含有量が0.01ppm以上100ppm以下である。また、当該樹脂組成物は、カルボン酸及び/又はカルボン酸イオン、金属イオン、リン化合物並びにホウ素化合物を好適成分として含有する。なお、本発明の効果を損なわない限り、当該樹脂組成物は、これら以外のその他の任意成分を含有していてもよい。以下に、EVOH(A)、無機粒子(B)、不飽和アルデヒド(C)、カルボン酸及び/又はカルボン酸イオン、金属イオン、リン化合物並びにホウ素化合物並びにその他の任意成分について詳述する。
(エチレン−ビニルアルコール共重合体(A))
EVOH(A)は本発明の樹脂組成物の主成分である。EVOH(A)は、主構造単位として、エチレン単位及びビニルアルコール単位を有する共重合体である。なお、EVOH(A)は、エチレン単位及びビニルアルコール単位以外に、他の構造単位を1種又は複数種含んでいてもよい。EVOH(A)は、通常、エチレンとビニルエステルとを重合し、得られるエチレン−ビニルエステル共重合体をけん化して得られる。
プロピレン、ブチレン等の不飽和炭化水素;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸又はそのエステル;
N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドン等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、無機粒子(B)を必須成分として含有する。無機粒子とは、無機物を主成分とする粒子をいう。無機粒子(B)の含有量の下限としては、樹脂組成物に対して50ppmであり、100ppmが好ましく、150ppmがより好ましい。一方、無機粒子(B)の含有量の上限としては、樹脂組成物に対して5,000ppmであり、4,000ppmが好ましく、3,000ppmがより好ましい。無機粒子(B)の含有量を上記範囲とすることで、当該樹脂組成物から形成されるフィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)が適度なものとなり、耐ブロッキング性及び滑り性が向上する。その結果、当該樹脂組成物は、耐フィルム破断性及び蒸着欠点抑制性に優れ、また、得られるフィルムの密着強度を向上させることができる。無機粒子(B)としては、1種又は2種以上の粒子を含んでいてもよい。また、1個の粒子が1種又は2種以上の無機物から形成されていてもよい。
本発明の樹脂組成物は、不飽和アルデヒド(C)を必須成分として含有する。不飽和アルデヒド(C)とは、分子内に炭素−炭素二重結合又は三重結合を有するアルデヒドをいう。不飽和アルデヒド(C)の含有量の下限としては、樹脂組成物に対して、0.01ppmであり、0.05ppmが好ましく、0.1ppmがより好ましい。一方、不飽和アルデヒド(C)の含有量の上限としては、樹脂組成物に対して、100ppmであり、50ppmが好ましい。不飽和アルデヒド(C)の含有量が上記下限未満だと、溶融成形において経時的なゲルやブツの発生の増加を抑制することが不十分となる。逆に不飽和アルデヒド(C)の含有量が上記上限を超えると、溶融成形時に不飽和アルデヒド同士の縮合やEVOHが不飽和アルデヒド同士の縮合物と架橋し、フィッシュアイやスジの発生を誘発するおそれがあり、また、当該樹脂組成物が着色し易くなるおそれがある。ここで、当該樹脂組成物中の不飽和アルデヒド(C)の含有量とは、当該樹脂組成物の全固形分質量に対する割合で表し、具体的には、乾燥させた当該樹脂組成物に含有される不飽和アルデヒド(C)を定量して得られた値をいう。
アクロレイン、クロトンアルデヒド、メタクロレイン、2−メチルブテナール、2−ヘキセナール、2,6−ノナジエナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4,6−オクタトリエナール、5−メチル−2−ヘキセナール、シクロペンテニルアルデヒド、シクロヘキセニルアルデヒド等の分子内に炭素−炭素二重結合を有するアルデヒド;プロピオルアルデヒド、2−ブチン−1−アール、2−ペンチン−1−アール等の炭素−炭素三重結合を有するアルデヒドなどの不飽和脂肪族アルデヒド、
シンナムアルデヒド、ジフェニルアクロレイン等の不飽和芳香族アルデヒドなどが挙げられる。
カルボン酸及び/又はカルボン酸イオンは、本発明のEVOH樹脂組成物に含有されることで、当該EVOH樹脂組成物の溶融成形時の耐着色性を向上させる。
本発明の樹脂組成物はさらに金属イオンを含有していてもよい。この金属イオンは、1種単独の金属種からなるものであってもよく、複数の金属種からなるものであってもよい。当該樹脂組成物は、金属イオンを含有することで、包装材料等を成形した場合に層間の接着性を向上させることができ、その結果、包装材料等の耐久性を向上させることができる。かかる金属イオンが層間接着性を向上させる理由としては、必ずしも明らかではないが、隣接する層の一方が、EVOH(A)のヒドロキシル基と反応し得る官能基を分子内に有する場合等に、このヒドロキシル基と上記官能基との間の結合生成反応が金属イオンの存在によって加速されること等が考えられる。上記金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、さらにリン酸化合物を含有していてもよい。当該樹脂組成物は、リン酸化合物をさらに含有することで、溶融成形時のロングラン性を向上させることができる。
本発明の樹脂組成物は、ホウ素化合物をさらに含有することができる。当該樹脂組成物は、ホウ素化合物をさらに含有することで、溶融成形時のロングラン性を改善することができ、その結果、ゲル・ブツ等の発生が抑制され、外観特性を向上させることができる。当該樹脂組成物にホウ素化合物が配合された場合、EVOH(A)とホウ素化合物との間にホウ酸エステルを生成すると考えられ、その結果、溶融成形時のロングラン性が向上すると考えられる。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、共役ポリエン化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、乾燥剤、架橋剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、各種繊維等の補強剤などを適量添加することも可能である。
当該樹脂組成物は、共役ポリエン化合物をさらに含有してもよい。当該樹脂組成物は、共役ポリエン化合物をさらに含有することにより、溶融成形時の酸化劣化を抑制することができる。これにより、当該樹脂組成物は、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色をより抑制し、成形品の外観性を向上させることができる。
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物等が挙げられる。なお、上記共役ポリエン化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキトシキベンゾフェノン等が挙げられる。
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、例えば、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等が挙げられる。
上記滑剤としては、例えば、エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
上記着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等が挙げられる。
上記充填剤としては、例えば、グラスファイバー、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
上記熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
当該樹脂組成物の製造方法としては、EVOH(A)、無機粒子(B)、不飽和アルデヒド(C)を均一にブレンドできる方法であれば特に限定されない。
エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造する方法における
(1)エチレンとビニルエステルとを共重合させる工程、及び
(2)工程(1)により得られた共重合体をケン化する工程において、例えば、
上記工程(1)において特定量の無機粒子(B)又は不飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
上記工程(2)において特定量の無機粒子(B)又は不飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOHに特定量の無機粒子(B)又は不飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOHを溶融成形する際に特定量の無機粒子(B)又は不飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
これらの方法を併用する方法等が挙げられる。
当該樹脂組成物は、溶融成形等により、フィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形体に成形される。フィルムとは、通常300μm程度未満の厚みを有するものをいい、シートとは、通常300μm程度以上の厚みを有するものをいう。溶融成形の方法としては、例えば、押出成形、キャスト成形、インフレーション押出成形、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形、射出ブロー成形等が挙げられる。溶融成形温度としては、EVOH(A)の融点等により異なるが、150℃〜270℃程度が好ましい。当該成形体は、上述の当該樹脂組成物から形成されるので、外観特性に優れる。これらの成形体は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。上記溶融成形等により得られた成形体は、必要に応じて、曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等の二次加工成形を行って、目的とする成形体にしてもよい。
本発明のフィルムは、当該樹脂組成物から形成される。当該フィルムは、上述の樹脂組成物から形成されるので、外観特性及び耐フィルム破断性に優れる。当該フィルムとしては、単層フィルム及び多層フィルムが含まれる。
当該フィルムのJIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)の上限としては、1μmが好ましく、0.8μmがより好ましく、0.6μmがさらに好ましく、0.4μmが特に好ましい。また、JIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)の下限としては、0.05μmが好ましく、0.10μmがより好ましく、0.15μmがさらに好ましく、0.20μmが特に好ましい。JIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)を上記範囲とすることで、耐フィルム破断性がより優れる。
当該フィルムのJIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)の上限としては、1,000μmが好ましく、800μmがより好ましく、600μmがさらに好ましく、400μmが特に好ましい。また、JIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)の下限としては、50μmが好ましく、100μmがより好ましく、150μmがさらに好ましく、200μmが特に好ましい。JIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)を上記範囲とすることで、耐フィルム破断性がより優れる。上記JIS−B0601とは、例えば、JIS−B0601−2001である。
当該フィルムは、上述の成形体を製造する方法として示したものと同様の方法で製造することができる。これらの中でも、上記樹脂組成物をキャスティングロール上に溶融押出するキャスト成形工程を有する方法、上記樹脂組成物から得られるフィルムを延伸する工程(一軸延伸工程、逐次二軸工程、同時二軸延伸工程、インフレーション成形工程)を有する方法が好ましい。
当該フィルムの製造方法によれば、これらの工程を有することで、耐フィルム破断性を向上させることができる。
上記成形体としては、当該樹脂組成物から形成されるバリア層(以下、「バリア層」ともいう)のみからなる単層構造の成形体としてもよいが、機能向上の観点から、バリア層の少なくとも一方の面に他の成分からなる層を有する積層体とすることが好ましい。上記成形体は上述の性質を有する樹脂組成物から形成されるバリア層もしくは積層体を備えているので、ボイル殺菌用又はレトルト殺菌用に好適に用いることができる。
上記積層体を構成する他の成分からなる層としては、例えば、熱可塑性樹脂から形成される熱可塑性樹脂層が好ましい。積層体は、バリア層と熱可塑性樹脂層とを備えることで、外観性、耐レトルト性及び加工特性に優れる。
また、上述の当該フィルムの少なくとも一方の表面上に蒸着層を積層することにより、積層体を形成することもできる。また、この積層体は、蒸着層側及び/又はその反対側の表面に、他の樹脂層が積層していてもよい。当該フィルムを上記積層体とすることで、ガスバリア性及び防湿性を高めることができる。また、得られる積層体は、上述の当該樹脂組成物から形成されるフィルムを用いているので、蒸着欠点が少なく、蒸着層とEVOHフィルム層との密着強度に優れる。
以上のようにして得られたフィルム及び積層体を包装材料として用いることができる。さらに上記フィルム及び積層体を二次加工することにより、包装材料(フィルム、シート、チューブ、ボトル等)を得てもよい。この二次加工することで得られる包装材料としては例えば、(1)フィルム及び積層体を一軸又は二軸方向に延伸、熱処理することにより得られる多層共延伸シート又はフィルム、(2)フィルム及び積層体を圧延することにより得られる多層圧延シート又はフィルム、(3)フィルム及び積層体を真空成形、圧空成形、真空圧空成形等、熱成形加工することにより得られる多層トレーカップ状容器、(4)積層体にストレッチブロー成形等を行って得られるボトル、カップ状容器等が挙げられる。
なお、二次加工法は、上記に例示した各方法に限定されることなく、例えば、ブロー成形等の上記以外の公知の二次加工法を適宜用いることができる。
メトラー・トレド社製のハロゲン水分率分析装置「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件で、含水EVOHペレットの含水率を測定した。以下に示す含水EVOHの含水率は、EVOHの乾燥質量基準の質量%である。
核磁気共鳴装置(超伝導核磁気共鳴装置「Lambda500」、日本電子株式会社製)を用い、DMSO−d6を測定溶媒として、1H−NMRにより求めた。
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS−Z8801−1〜3準拠)で分けた。上記ふるいを通過したEVOH粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌した。得られた溶液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。上記希釈した溶液を、横河電機株式会社製イオンクロマトグラフィー「ICS−1500」を用い、下記測定条件に従ってカルボン酸イオンの量を定量することで、カルボン酸及びカルボン酸イオンの量を算出し、カルボン酸根を得た。なお、定量に際しては各モノカルボン酸又は多価カルボン酸を用いて作成した検量線を用いた。
カラム :IonPAC ICE−AS1(9φx250mm、DIONEX社製、検出器 電気伝導度検出器)
溶離液 :1.0mmol/L オクタンスルホン酸水溶液
測定温度 :35℃
溶離液流速 :1mL/min.
分析量:50μL
乾燥EVOHペレット0.5gをアクタック製のテフロン(登録商標)製耐圧容器に仕込み、和光純薬工業製の精密分析用硝酸5mLをさらに加えた。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、アクタック社製マイクロウェーブ高速分解システム「スピードウェーブ MWS−2」にて150℃10分、次いで180℃10分処理し、乾燥EVOHペレットを分解させた。乾燥EVOHペレットの分解が完了できていない場合は、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、すべての液を50mLのメスフラスコに移し取り、イオン交換水で定容し、分解物溶液を得た。
上記得られた分解物溶液を、パーキンエルマージャパン製ICP発光分光分析装置「Optima 4300 DV」を用い、以下に示す各観測波長で定量分析することで、各無機粒子(B)、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の量を定量した。各無機粒子(B)の含有量は、金属元素を定量し、酸化物換算値として算出した。すなわち、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化モリブデンとして算出した。複数の金属を含む場合は、複数の金属酸化物量として算出した。リン酸化合物の量は、リン元素を定量しリン酸根換算値として算出した。ホウ素化合物の含有量は、ホウ素元素換算値として算出した。
Na :589.592nm
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
P :214.914nm
B :249.667nm
Si :251.611nm
Al :396.153nm
Zr :343.823nm
Ce :413.764nm
W :207.912nm
Mo :202.031nm
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを加え、DNPH溶液を作製した。その後、乾燥樹脂組成物ペレット1gをDNPH溶液20mLに添加し、35℃にて1時間攪拌溶解させた。この溶液にアセトニトリルを添加してEVOHを析出させてから濾過後、濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、不飽和アルデヒド(C)を定量した。なお、定量に際しては、対応する不飽和アルデヒド(C)をDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。当該測定における不飽和アルデヒド(C)の含有量の測定下限値は0.01ppmである。
ケイ素原子を含む無機粒子(B)の場合、富士シリシア化学製サイリシア380(平均粒径9.0μm)又はサイリシア310P(平均粒子径2.7μm)を粉砕及びふるいによる分級を行い、所望のサイズに調整した。
同様に市販のSiO2・Al2O3、SiO2・MgO、CeO2、ZrO2、WO3、MoO3を粉砕及びふるいによる分級を行い、所望のサイズに調整した。
無機粒子(B)の平均粒子径は、株式会社島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200」を用いて測定を行った。評価サンプルは、ガラスビーカーに50ccの純水と測定する無機粒子(B)を5g添加して、スパチュラを用いて撹拌し、その後超音波洗浄機で10分間、分散処理を行った。次に、分散処理を行った無機粒子(B)を含む液を、装置のサンプラ部に添加し吸光度が安定になった時点で測定を行い、粒子の回折/散乱光の光強度分布データから粒子径分布(粒子径と相対粒子量)を計算した。平均粒子径は、測定された粒子径と相対粒子量とを掛けて、相対粒子量の合計で割って求めた。なお、平均粒子径は粒子の平均直径である。
乾燥EVOHペレットを用いて、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押出すと同時にエアーナイフを用いて空気を風速30m/秒で吹き付け、厚さ170μmのEVOH未延伸フィルムを得た。このEVOH未延伸フィルムを、80℃の温水に10秒接触させ、テンター式同時二軸延伸機を用い、90℃雰囲気下で縦方向に3.2倍、横方向に3.0倍延伸し、さらに170℃に設定したテンター内にて5秒間熱処理を行い、フィルム端部をカットすることにより以下の二軸延伸フィルムを得た。
フィルム厚み :12μm
フィルム幅 :50cm
フィルム巻長さ:4,000m
本数 :100本
(9)フィルム端部の色の測定
上記得られた二軸延伸フィルムを紙管に巻き取り、フィルム端部の色を肉眼で以下のように判定した。
(判定基準)
A:着色なし
B:うすい黄色
C:着色
上記得られた二軸延伸フィルムの表面について、キーエンス製「形状測定レーザマイクロスコープ VK−X200」を用い、JIS−B0610−2001に準拠し、算術平均粗さ(Ra)と輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)の測定を行った。測定はn=100で行い、その平均値を各測定値とした。Ra及びRSmのそれぞれについて以下のように判定した。
(判定基準)
算術平均粗さ(Ra)
A:0.20μm以上0.40μm以下
B:0.15μm以上0.20μm未満又は0.40μmを超え0.60μm以下
C:0.10μm以上0.15μm未満又は0.60μmを超え0.80μm以下
D:0.05μm以上0.10μm未満又は0.80μmを超え1.00μm以下
E:0.05μm未満又は1.00μmを超えた場合
輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)
A:200μm以上400μm以下
B:150μm以上200μm未満又は400μmを超え600μm以下
C:100μm以上150μm未満又は600μmを超え800μm以下
D:50μm以上100μm未満又は800μmを超え1,000μm以下
E:50μm未満又は1,000μmを超えた場合
(11)フィルム破断回数の測定
上記得られた二軸延伸フィルムをスリッターにかけ、フィルムロールに100N/mの張力をかけて巻きとったときの破断回数を評価し、以下のように判定した。
(判定基準)
A:0〜1回/100本
B:2〜4回/100本
C:5〜7回/100本
D:8〜10回/100本
E:11回以上/100本
上記得られた100本の二軸延伸フィルムを用い、日本真空技術製バッチ式蒸着設備EWA−105を使用して、フィルム走行速度200m/分で、フィルム片側にアルミニウムを蒸着させ、積層体を得た。
上記得られた積層体を、ミクロトームでカットし、断面を露出させた。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、金属蒸着層の厚みを測定した。SEM観察はエス・アイ・アイナノテクノロジー製ZEISS ULTRA 55を使用し、反射電子検出器を用いて行った。
(14)蒸着欠点数の測定(1)
上記得られた積層体の1本目のロールをスリッターにかけて、フィルム下部から100Wの蛍光灯を当てながら巻きだし、幅0.5m長さ2mに渡ってn=10で蒸着欠点数を数え、その平均値を1m2あたりの蒸着欠点数とし、以下のように判定した。
A:0〜20個/m2
B:21〜40個/m2
C:41〜60個/m2
D:61〜80個/m2
E:81〜100個/m2
F:101個以上/m2
上記得られた積層体の100本目のロールをスリッターにかけて、フィルム下部から100Wの蛍光灯を当てながら巻きだし、幅0.5m長さ2mに渡ってn=10で蒸着欠点数を数え、その平均値を1m2あたりの蒸着欠点数とし、以下のように判定した。
A:0〜20個/m2
B:21〜40個/m2
C:41〜60個/m2
D:61〜80個/m2
E:81〜100個/m2
F:101個以上/m2
EVOH樹脂組成物の溶融成形のロングラン性を示すものとして、蒸着欠点数の経時的な増加度合いについて評価を行い、以下のように判定した。
(判定基準)
A:蒸着フィルム1本目と100本目での蒸着欠点のランク差がなかったもの
B:蒸着フィルム1本目と100本目での蒸着欠点のランク差が1つあったもの
C:蒸着フィルム1本目と100本目での蒸着欠点のランク差が2つあったもの
(17)蒸着層とEVOHフィルム層との密着強度の測定
上記得られた積層体の金属蒸着層側の表面に、ドライラミネート用接着剤(三井化学製タケラックA−385/A−50を6/1の質量比で混合し、固形分濃度23質量%の酢酸エチル溶液としたもの)を、バーコーターを用いてコートし、50℃で5分間熱風乾燥させた後、80℃に加熱したニップロールにて、PETフィルム(東洋紡製E5000)とラミネートを行った。このとき、フィルムの半分は、間にアルミホイルを挟むことで貼りあわされない部分も用意した。その後、40℃で72時間養生し、ラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムをアルミ蒸着の境目を中心として100mm×15mmの短冊に裁断し、引っ張り試験機により引っ張り速度10mm/分にてT型剥離試験を5回行った。得られた測定値の平均値を密着強度とした。密着強度は、以下のように判定した。
(判定基準)
A:500g/15mm以上
B:450以上500g/15mm未満
C:400以上450g/15mm未満
D:350以上400g/15mm未満
E:350g/15mm未満
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件で重合を実施し、エチレン−酢酸ビニル共重合体を合成した。
(仕込み量)
酢酸ビニル:83.0kg
メタノール:17.4kg
2,2’−アゾビスイソブチルニトリル:66.4g
(重合条件)
重合温度 :60℃
重合槽エチレン圧力:3.9MPa
重合時間 :3.5時間
上記重合における酢酸ビニルの重合率は36%であった。得られた共重合反応液にソルビン酸を添加した後、追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の41質量%メタノール溶液を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は32モル%であった。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル単位に対して0.4当量となるように添加し、さらにメタノールを加えて共重合体濃度が20質量%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。反応後、酢酸と水を加えて中和し、上記反応液を中和し、反応を停止させた。この溶液に富士シリシア化学製合成シリカ「サイリシア310P」(商品名)(レーザー法で測定された平均粒子径2.7μm)をEVOHに対して300ppm、さらにクロトンアルデヒドをEVOHに添加し、円形の開口部を有する金板から水中に押し出して析出させ、切断することで、直径約3mm、長さ約5mmの含水EVOHペレットを得た。得られた含水EVOHペレットの含水率は110質量%であった。
得られたEVOH樹脂組成物を製膜し、同時二軸延伸機を用いた方法に従い、フィルムを製造し、各物性の評価を行ったところ、JIS−B0601に準拠し測定されたフィルム表面の算術平均粗さ(Ra)は0.28μm、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)は298μmでありともにA判定であった。また、ロールとして巻き取った後のロール端面に黄色の着色が見られず、A判定であった。さらに、フィルム加工時における破断回数は1回であり、A判定であった。製造した積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)における蒸着層の厚みは50nmであった。その積層体1本目の蒸着欠点は9個/m2、積層体100本目の蒸着欠点は12個/m2であり、ともにA判定であった。このことから、経時的な蒸着欠点の増加はA判定であった。上記積層体の蒸着層とEVOHフィルム層との密着強度は530g/15mmであり、A判定であった。
得られたEVOH樹脂組成物について、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押出し、フィルム端部をカット後、巻き取ることによりフィルムロールを得た。外観に優れたフィルムロールを得ることができた。
上記得られた積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)EVOHフィルムを中間層、PETフィルム(東洋紡製E5000)を外層(積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)の金属蒸着層側)、無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPPと略称する;トーセロ製「RXC−18」、厚さ60μm)を内層(積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)のEVOH層側)として、PETの片面およびCPPの片面にドライラミネート用接着剤(三井化学製タケラックA−385/A−50を6/1の質量比で混合し、固形分濃度23質量%の酢酸エチル溶液としたもの)を、バーコーターを用いてコートし、50℃で5分間熱風乾燥させた後、接着剤面で積層体EVOHフィルムを挟み込むようにしてPETフィルムとCPPフィルムを貼合わせ、40℃で5日間エージングを行って、PET/接着剤層/EVOH層/接着剤層/CPPの層構成を有する積層体を得た。次に、得られた積層体をヒートシールしてパウチに成形し、水100gを充填した。
実施例1において、無機粒子(B)と不飽和アルデヒド(C)の種類及び量、さらには金属蒸着層の厚みを表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして乾燥EVOH樹脂組成物、フィルム及び積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)を得た。得られた各EVOH樹脂組成物、フィルム及び積層体についての評価結果を表2に示す。
Claims (16)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、無機粒子(B)及び不飽和アルデヒド(C)を含有し、
上記無機粒子(B)の含有量が50ppm以上5,000ppm以下であり、
上記不飽和アルデヒド(C)の含有量が2.9ppm以上100ppm以下である樹脂組成物。 - 上記無機粒子(B)の不飽和アルデヒド(C)に対する質量比が1以上100,000以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 上記無機粒子(B)の平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 上記無機粒子(B)を構成する金属元素が、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、タングステン及びモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
- 上記無機粒子(B)を構成する無機物が上記元素の酸化物である請求項4に記載の樹脂組成物。
- 上記不飽和アルデヒド(C)が不飽和脂肪族アルデヒドである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 上記不飽和脂肪族アルデヒドが、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナール及び2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の樹脂組成物。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されるフィルム。
- JIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上1μm以下である請求項8に記載のフィルム。
- JIS−B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が、50μm以上1,000μm以下である請求項8又は請求項9に記載のフィルム。
- 請求項8、請求項9又は請求項10に記載のフィルムからなる層と、
他の成分からなる層と
を有する積層体。 - 上記他の成分からなる層が金属蒸着層であり、この金属蒸着層の厚みが30nm以上150nm以下である請求項11に記載の積層体。
- 請求項8、請求項9又は請求項10に記載のフィルムを備える包装材料。
- 請求項11又は請求項12に記載の積層体を備える包装材料。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物をキャスト成形する工程
を有するフィルムの製造方法。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られるフィルムを延伸する工程を有するフィルムの製造方法。
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