JP6473562B2 - エチレン−ビニルアルコール共重合体含有樹脂組成物、フィルム、積層体、包装材料及びフィルムの製造方法 - Google Patents
エチレン−ビニルアルコール共重合体含有樹脂組成物、フィルム、積層体、包装材料及びフィルムの製造方法 Download PDFInfo
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Description
また、上記他の成分からなる層が金属蒸着層であり、この金属蒸着層の厚みが30nm以上150nm以下であることが好ましい。当該積層体は、上記特定範囲の厚みの金属蒸着膜を有するので、蒸着欠点が少なく、また金属蒸着層と他の樹脂層との密着強度に優れる。
当該包装材料は、上述の当該フィルム又は当該積層体を備えているので、外観特性及び耐フィルム破断性に優れる。
また、本発明の別のフィルムの製造方法は、当該樹脂組成物から得られるフィルムを延伸する工程を有する。
当該フィルムの製造方法によれば、上記工程を有することで、外観特性、耐フィルム破断性及び耐ブロッキング性により優れるフィルムを得ることができる。
当該樹脂組成物は、EVOH(A)、無機粒子(B)、及び飽和アルデヒド(C)を含有する。当該樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、EVOH(A)、無機粒子(B)、飽和アルデヒド(C)及びその他の任意成分について詳述する。
EVOH(A)は、エチレンとビニルエステルとの共重合体をけん化した共重合体である。
プロピレン、ブチレン等の不飽和炭化水素;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸又はそのエステル;
N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドンなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物から形成されるフィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)を適度なものとし、耐ブロッキング性及び滑り性を向上させるものである。ここで、無機粒子とは、無機物を主成分とする粒子をいう。主成分とは、最も含有量が多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
飽和アルデヒド(C)は、ゲル状ブツ等の発生を抑制すると共に、当該樹脂組成物中での無機粒子(B)の分散性を向上させることで無機粒子(B)の効果を増大させるものである。ここで、飽和アルデヒド(C)とは分子内のアルデヒド基以外の部分に不飽和結合を含まないアルデヒドをいう。飽和アルデヒド(C)は、アルデヒド基以外の部分に不飽和結合を含まない限りは、直鎖状のアルデヒドであっても、分枝状のアルデヒドであっても、分子内に環構造を有するアルデヒドであってもよい。飽和アルデヒド(C)の分子内のアルデヒド基の数は、1であっても2以上であってもよい。
基材フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有していてもよい。その他の任意成分としては、例えばホウ素化合物、カルボン酸及びそのイオン、金属イオン、共役ポリエン化合物、リン化合物、その他の添加剤等が挙げられる。当該樹脂組成物は、これらの任意成分を2種以上含有してもよく、任意成分の合計含有量としては、当該樹脂組成物中の1質量%以下が好ましい。
カルボン酸及びそのイオンは、当該樹脂組成物の溶融成形時の耐着色性を向上させるものである。
金属イオンは、包装材等を成形した場合に層間の接着性を向上させるものである。当該樹脂組成物は、金属イオンを含有することで、包装材等を成形した場合に層間の接着性を向上させることができ、その結果包装材等の耐久性を向上させることができる。かかる金属イオンが層間接着性を向上させる理由は必ずしも明らかではないが、隣接する層の一方が、EVOH(A)のヒドロキシル基と反応し得る官能基を分子内に有する場合等に、このヒドロキシル基と官能基との間の結合生成反応が金属イオンの存在によって加速されること等が考えられる。
リン化合物は、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥の発生及び着色を抑制する共に、ロングラン性を向上させるものである。このリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等のリン酸塩などが挙げられる。
ホウ素化合物は、溶融成形時のゲル化を抑制すると共に押出成形機等のトルク変動(加熱時の粘度変化)を抑制するものである。
オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸類;ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等のホウ酸エステル;
上記ホウ酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩;
水素化ホウ素類などが挙げられる。これらの中でも、ホウ酸類が好ましく、オルトホウ酸(以下、「ホウ酸」ともいう)がより好ましい。
共役ポリエン化合物は、溶融成形時の酸化劣化を抑制するものである。ここで、共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造を有し炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。この共役ポリエン化合物は、共役二重結合を2個有する共役ジエン、3個有する共役トリエン、又はそれ以上の数を有する共役ポリエンであってもよい。また、上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエン構造が同一分子内に3個ある化合物も上記共役ポリエン化合物に含まれる。
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物などが挙げられる。上記共役ポリエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、アルカリ金属、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、乾燥剤、架橋剤、各種繊維等の補強剤などを適量添加することも可能である。
アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。また、上記アルカリ金属の塩としては、例えば1価の金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、金属錯体等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。当該樹脂組成物におけるアルカリ金属の含有量としては、20ppm以上1,000ppm以下が好ましく、50ppm以上500ppm以下がより好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばエチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキトシキベンゾフェノン等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えばペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール(商品名:カーボワックス)等が挙げられる。
滑剤としては、例えばエチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
着色剤としては、例えばカーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等が挙げられる。
充填剤としては、例えばグラスファイバー、ウォラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
熱安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
当該樹脂組成物の製造方法としては、EVOH(A)、無機粒子(B)、飽和アルデヒド(C)を均一にブレンドできる方法であれば特に限定されない。
エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造する方法における
(1)エチレンとビニルエステルとを共重合させる工程、及び
(2)工程(1)により得られた共重合体をケン化する工程において、例えば、
上記工程(1)において特定量の無機粒子(B)又は飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
上記工程(2)において特定量の無機粒子(B)又は飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOHに特定量の無機粒子(B)又は飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOHを溶融成形する際に特定量の無機粒子(B)又は飽和アルデヒド(C)のどちらか一方もしくは両方を添加する方法、
これらの方法を併用する方法等が挙げられる。
当該樹脂組成物は、溶融成形等により、フィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形体に形成される。フィルムとは、通常300μm未満の厚みを有するものをいい、シートとは、通常300μm以上の厚みを有するものをいう。溶融成形の方法としては、例えば、押出成形、キャスト成形、インフレーション押出成形、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形、射出ブロー成形等が挙げられる。溶融成形温度としては、EVOH(A)の融点等により異なるが、150℃〜270℃程度が好ましい。当該成形体は、上述の当該樹脂組成物から形成されるので、外観特性に優れる。これらの成形体は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。上記溶融成形等により得られた成形体は、必要に応じて、曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等の二次加工成形を行って、目的とする成形体にしてもよい。
本発明のフィルムは、当該樹脂組成物から形成される。当該フィルムは、当該樹脂組成物から形成されるので、外観特性及び耐フィルム破断性に優れる。当該フィルムとしては、単層フィルム及び多層フィルムが含まれる。
当該フィルムは、上述の成形体を製造する方法として示したものと同様の方法で製造することができる。これらの中でも、上記樹脂組成物をキャスティングロール上に溶融押出するキャスト成形工程、上記樹脂組成物から得られる無延伸フィルムを延伸する工程(一軸延伸工程、逐次二軸工程、同時二軸延伸工程、インフレーション成形工程)を有する方法が好ましい。当該フィルムの製造方法によれば、これらの工程を有することで、耐フィルム破断性を向上させることができる。
上記成形体としては、当該樹脂組成物から形成されるバリア層(以下、「バリア層」ともいう)のみからなる単層構造の成形体としてもよいが、機能向上の観点から、バリア層の少なくとも一方の面に他の成分からなる層を有する積層体とすることが好ましい。上記成形体は上述の性質を有する樹脂組成物から形成されるバリア層もしくは積層体を備えているので、ボイル殺菌用又はレトルト殺菌用に好適に用いることができる。
上記積層体を構成する他の成分からなる層としては、例えば、熱可塑性樹脂から形成される熱可塑性樹脂層が好ましい。積層体は、バリア層と熱可塑性樹脂層とを備えることで、外観性、耐レトルト性及び加工特性に優れる。
以上のようにして得られたフィルム及び積層体を包装材料として用いることができる。さらに上記フィルム及び積層体を二次加工することにより、包装材料(フィルム、シート、チューブ、ボトル等)を得てもよい。この二次加工することで得られる包装材料としては例えば、(1)フィルム及び積層体を一軸又は二軸方向に延伸、熱処理することにより得られる多層共延伸シート又はフィルム、(2)フィルム及び積層体を圧延することにより得られる多層圧延シート又はフィルム、(3)フィルム及び積層体を真空成形、圧空成形、真空圧空成形等、熱成形加工することにより得られる多層トレーカップ状容器、(4)積層体にストレッチブロー成形等を行って得られるボトル、カップ状容器等が挙げられる。
メトラー・トレド社のハロゲン水分率分析装置「HR73」を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量約10gの条件で、含水EVOHペレットの含水率を測定した。以下に示す含水EVOHの含水率は、EVOHの乾燥質量基準の質量%である。
核磁気共鳴装置(日本電子社の「超伝導核磁気共鳴装置 Lambda500」)を用い、DMSO−d6を測定溶媒として、1H−NMRにより求めた。
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを、呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS Z8801−1〜3準拠)で分けた。上記ふるいを通過したEVOH粉末10gとイオン交換水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付けて、95℃で10時間撹拌した。得られた溶液2mLを、イオン交換水8mLで希釈した。この希釈溶液を、横河電機社のイオンクロマトグラフィー「ICS−1500」を用い、下記測定条件に従ってカルボン酸イオンの量を定量することで、カルボン酸及びカルボン酸イオンの量を算出した。なお、定量に際してはモノカルボン酸又は多価カルボン酸を用いて作成した検量線を用いた。
カラム :DIONEX社の「IonPAC ICE−AS1(9φ×250mm、電気伝導度検出器)」
測定温度 :35℃
溶離液流速 :1mL/min.
分析量 :50μL
乾燥EVOHペレット0.5gをアクタック製のテフロン(登録商標)製耐圧容器に仕込み、和光純薬工業社の精密分析用硝酸5mLをさらに加えた。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、アクタック社のマイクロウェーブ高速分解システム「スピードウェーブ MWS−2」にて150℃10分、次いで180℃10分処理し、乾燥EVOHペレットを分解させた。乾燥EVOHペレットの分解が完了できていない場合は、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、すべての液を50mLのメスフラスコに移し取り、イオン交換水で定容し、分解物溶液を得た。
K :766.490nm
Mg :285.213nm
Ca :317.933nm
P :214.914nm
B :249.667nm
Si :251.611nm
Al :396.153nm
Zr :343.823nm
Ce :413.764nm
W :207.912nm
Mo :202.031nm
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを加え、DNPH溶液を作製した。その後、乾燥樹脂組成物ペレット1gをDNPH溶液20mLに添加し、35℃にて1時間攪拌溶解させた。この溶液にアセトニトリルを添加してEVOHを析出させてから濾過後、濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで飽和アルデヒド(C)を定量した。なお、定量に際しては、対応する飽和アルデヒド(C)をDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。
ケイ素原子を含む無機粒子(B)の場合、富士シリシア化学社の「サイリシア380」(平均粒径9.0μm)又はサイリシア310P(平均粒子径2.7μm)を粉砕及びふるいによる分級を行い、所望のサイズに調整した。
無機粒子(B)の平均粒子径は、島津製作所社の「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200」を用いて測定を行った。評価サンプルは、ガラスビーカーに50ccの純水と測定する無機粒子(B)を5g添加して、スパチュラを用いて撹拌し、その後超音波洗浄機で10分間、分散処理を行った。次に、分散処理を行った無機粒子(B)を含む液を、装置のサンプラ部に添加し吸光度が安定になった時点で測定を行い、粒子の回折/散乱光の光強度分布データから粒子径分布(粒子径と相対粒子量)を計算した。平均粒子径は、測定された粒子径と相対粒子量とを掛けて、相対粒子量の合計で割って求めた。なお、平均粒子径は粒子の平均直径である。
乾燥EVOHペレットを用いて、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押出すと同時にエアーナイフを用いて空気を風速30m/秒で吹き付け、厚さ170μmのEVOH未延伸フィルムを得た。このEVOH未延伸フィルムを、80℃の温水に10秒接触させ、テンター式同時二軸延伸機を用い、90℃雰囲気下で縦方向に3.2倍、横方向に3.0倍延伸し、さらに170℃に設定したテンター内にて5秒間熱処理を行い、フィルム端部をカットすることにより以下の二軸延伸フィルムを得た。
フィルム幅 :50cm
フィルム巻長さ:4,000m
本数 :100本
樹脂組成物の試料ペレット20gを100mLガラス製サンプル管に入れ、アルミホイルで口部に蓋をした後、熱風乾燥機内において220℃で30分加熱した。乾燥機から取り出し、室温で30分間放冷した後、サンプル管を2〜3回振り混ぜた後、アルミホイルの蓋を取り臭気を確認した。試料ペレットの臭気の強さは、以下の基準で評価した。
A:臭気なし
B:弱い臭気を感じる
C:明らかに臭気を感じる
樹脂組成物の溶融成形後の外観特性の評価として、得られた二軸延伸フィルムを紙管に巻き取り、フィルム端部の色を肉眼で観察した。判定基準は以下の通りである。
A:着色なし
B:うすい黄色
C:着色
得られた二軸延伸フィルムの表面について、キーエンス社の「形状測定レーザマイクロスコープ VK−X200」を用い、JIS−B0601:2001に準拠し、算術平均粗さ(Ra)及び輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)の測定を行った。それぞれの評価において測定数は100とし、その平均値を各測定値とした。フィルム表面の算術平均高さ(Ra)及び輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)のそれぞれについて以下のように判定した。
算術平均粗さ(Ra)
A:0.20μm以上0.40μm以下
B:0.15μm以上0.20μm未満又は0.40μmを超え0.60μm以下
C:0.10μm以上0.15μm未満又は0.60μmを超え0.80μm以下
D:0.05μm以上0.10μm未満又は0.80μmを超え1.00μm以下
E:0.05μm未満又は1.00μmを超えた場合
輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)
A:200μm以上400μm以下
B:150μm以上200μm未満又は400μmを超え600μm以下
C:100μm以上150μm未満又は600μmを超え800μm以下
D:50μm以上100μm未満又は800μmを超え1,000μm以下
E:50μm未満又は1,000μmを超えた場合
樹脂組成物及びこれから得られたフィルムの耐フィルム破断性を、得られた二軸延伸フィルムをスリッターにかけ、フィルムロールに100N/mの張力をかけて巻きとったときの破断回数として評価した。判定基準は以下の通りである。
A:0〜1回/100本
B:2〜4回/100本
C:5〜7回/100本
D:8〜10回/100本
E:11回以上/100本
得られた100本の二軸延伸フィルムを用い、日本真空技術社の「バッチ式蒸着設備EWA−105」を使用して、フィルム走行速度200m/分で、フィルム片側にアルミニウムを蒸着させ、積層体を得た。
得られた積層体をミクロトームでカットし断面を露出させた。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(エス・アイ・アイナノテクノロジー社の「ZEISS ULTRA 55」)を用いて観察し、反射電子検出器を用いて蒸着層の厚みを測定した。
樹脂組成物及びこれから得られた積層体の蒸着欠点抑制性の評価として、以下の(15−1)〜(15−3)を行った。
上記得られた積層体の1本目のロールをスリッターにかけて、フィルム下部から100Wの蛍光灯を当てながら巻きだし、幅0.5m長さ2mに渡ってn=10で蒸着欠点数を数え、その平均値を1m2あたりの蒸着欠点数とし、以下のように判定した。
A:0〜20個/m2
B:21〜40個/m2
C:41〜60個/m2
D:61〜80個/m2
E:81〜100個/m2
F:101個以上/m2
上記得られた積層体の100本目のロールをスリッターにかけて、フィルム下部から100Wの蛍光灯を当てながら巻きだし、幅0.5m長さ2mに渡ってn=10で蒸着欠点数を数え、その平均値を1m2あたりの蒸着欠点数とし、以下のように判定した。
A:0〜20個/m2
B:21〜40個/m2
C:41〜60個/m2
D:61〜80個/m2
E:81〜100個/m2
F:101個以上/m2
EVOH樹脂組成物の溶融成形のロングラン性を示すものとして、蒸着欠点数の経時的な増加度合いについて評価を行い、以下のように判定した。
A:蒸着フィルム1本目と100本目での蒸着欠点のランク差がなかったもの
B:蒸着フィルム1本目と100本目での蒸着欠点のランク差が1つあったもの
C:蒸着フィルム1本目と100本目での蒸着欠点のランク差が2つあったもの
樹脂組成物から形成された積層体及びフィルムにおける蒸着層と他の樹脂層との密着強度を評価した。
A:500g/15mm以上
B:450以上500g/15mm未満
C:400以上450g/15mm未満
D:350以上400g/15mm未満
E:350g/15mm未満
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件で重合を実施し、エチレン−酢酸ビニル共重合体を合成した。
酢酸ビニル:83.0kg
メタノール:17.4kg
2,2’−アゾビスイソブチルニトリル:66.4g
重合温度:60℃
重合槽エチレン圧力:3.9MPa
重合時間:3.5時間
得られたEVOH樹脂組成物を製膜し、同時二軸延伸機を用いた方法に従い、フィルムを製造し、各物性の評価を行ったところ、JIS B0601に準拠し測定されたフィルム表面の算術平均粗さ(Ra)は0.28μm、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)は298μmでありともにA判定であった。また、ロールとして巻き取った後のロール端面に黄色の着色が見られず、A判定であった。さらに、フィルム加工時における破断回数は1回であり、A判定であった。製造した積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)における蒸着層の厚みは50nmであった。その積層体1本目の蒸着欠点は9個/m2、積層体100本目の蒸着欠点は12個/m2であり、ともにA判定であった。このことから、経時的な蒸着欠点の増加はA判定であった。上記積層体の蒸着層とEVOHフィルム層との密着強度は530g/15mmであり、A判定であった。
得られたEVOH樹脂組成物について、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押出し、フィルム端部をカット後、巻き取ることによりフィルムロールを得た。外観に優れたフィルムロールを得ることができた。
上記得られた積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)EVOHフィルムを中間層、PETフィルム(東洋紡社の「E5000」)を外層(積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)の蒸着層側)、無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「CPP」という;トーセロ社の「RXC−18」、厚さ60μm)を内層(積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)のEVOH層側)として、PETの片面およびCPPの片面にドライラミネート用接着剤(三井化学社の「タケラックA−385」と「タケラックA−50」とを6/1の質量比で混合し、固形分濃度23質量%の酢酸エチル溶液としたもの)を、バーコーターを用いてコートし、50℃で5分間熱風乾燥させた後、接着剤面で積層体EVOHフィルムを挟み込むようにしてPETフィルムとCPPフィルムを貼合わせ、40℃で5日間エージングを行って、PET/接着剤層/EVOH層/接着剤層/CPPの層構成を有する積層体を得た。次に、得られた積層体をヒートシールしてパウチに成形し水100gを充填した。
実施例1において、無機粒子(B)と飽和アルデヒド(C)の種類及び量、さらには蒸着層の厚みを表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして乾燥EVOH樹脂組成物、フィルム及び積層体(アルミ蒸着層を有する積層体)を得た。得られた各EVOH樹脂組成物、フィルム及び積層体についての評価結果を表2に示す。
Claims (16)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、無機粒子(B)及び飽和アルデヒド(C)を含有し、
上記無機粒子(B)の含有量が50ppm以上5,000ppm以下であり、
上記飽和アルデヒド(C)の含有量が2.9ppm以上100ppm以下である樹脂組成物。 - 上記無機粒子(B)の上記飽和アルデヒド(C)に対する質量比が1以上100,000以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 上記無機粒子(B)の平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 上記無機粒子(B)を構成する金属元素が、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、タングステン及びモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
- 上記無機粒子(B)を構成する無機物が上記元素の酸化物である請求項4に記載の樹脂組成物。
- 上記飽和アルデヒド(C)が飽和脂肪族アルデヒドである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 上記飽和脂肪族アルデヒドが、プロパナール、ブタナール及びヘキサナールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の樹脂組成物。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されるフィルム。
- JIS B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上1μm以下である請求項8に記載のフィルム。
- JIS B0601に準拠して測定される少なくとも一方の表面の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が、50μm以上1,000μm以下である請求項8又は請求項9に記載のフィルム。
- 請求項8、請求項9又は請求項10に記載のフィルムからなる層と、
他の成分からなる層と
を有する積層体。 - 上記他の成分からなる層が金属蒸着層であり、この金属蒸着層の厚みが30nm以上150nm以下である請求項11に記載の積層体。
- 請求項8、請求項9又は請求項10に記載のフィルムを備える包装材料。
- 請求項11又は請求項12に記載の積層体を備える包装材料。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物をキャスト成形する工程
を有するフィルムの製造方法。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られるフィルムを延伸する工程を有するフィルムの製造方法。
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