JP6472681B2 - 断熱紙製容器用部材、その製造方法、及び断熱紙製容器 - Google Patents

断熱紙製容器用部材、その製造方法、及び断熱紙製容器 Download PDF

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Description

本発明は、断熱紙製容器用部材とその製造方法に関する。また、本発明は、該部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える断熱紙製容器に関する。
即席ラーメン、スープ、コーヒー等、高温で供される食品または飲料等(以下、総称して「食品等」ということがある。)の包装容器として、紙基材に熱可塑性樹脂を積層して形成され、これを加熱することにより前記紙基材から発する水蒸気で熱可塑性樹脂を発泡させてなる、断熱紙製容器用部材を使用した断熱紙製容器が提案され実用化されている。
一方、食品等を長期保存することができる高バリア包装材料として、金属箔ラミネートフィルム、アルミニウムや無機酸化物等の蒸着ラミネートフィルム、更に高バリア性樹脂フィルムやそのラミネートフィルムが、数多く提案され実用化されている。
市場からは、食品等を長期保存することが可能な、酸素ガスや水分等に対するバリア性能、更に遮光性を兼ね備える、断熱紙製容器用部材及び該部材を備える断熱紙製容器が望まれている。
特許文献1には、少なくとも容器胴部材の片側壁面は、熱可塑性合成樹脂フィルムの発泡断熱層がコーチングまたはラミネート(以下、「被覆」ということがある。)され、容器胴部材の別の壁面は、熱可塑性合成樹脂フィルム、該樹脂フィルムの発泡断熱層またはアルミニウム箔のいずれかによって被覆されている、容器胴部材及び底板部材からなる断熱紙製容器が提案されている。特許文献1には、片面が熱可塑性合成樹脂フィルムで被覆され、別の面は同一のまたは異なった熱可塑性合成樹脂フィルム若しくはアルミニウム箔で被覆されている原紙から少なくとも容器胴部材を打ち抜くことが記載されており、紙の中に含まれている水分が加熱によって気化し、この気化した水分がフィルムを発泡させることが記載されている。しかしながら、アルミニウム箔による被覆の具体例は開示されていない。
特許文献2には、容器胴部材の外壁面上に熱可塑性合成樹脂フィルムの発泡断熱層を有し、発泡断熱層の厚さが部分的に異なる断熱紙製容器が開示され、さらに、少なくとも容器胴部材の内壁面は容器胴部材の外壁面にラミネートされる熱可塑性合成樹脂フィルムよりも軟化点の高い熱可塑性合成樹脂フィルムまたはアルミニウム箔でラミネートされている断熱紙製容器が開示されている。特許文献2には、原紙の一面に低密度ポリエチレンを押出ラミネートし、反対面には高密度ポリエチレンを押出ラミネートする具体例が記載されている。しかしながら、アルミニウム箔(アルミニウム箔)をラミネートする具体例は開示されていない。
また、特許文献3には、底板部材の外壁面に発泡断熱層が形成され、胴部材と底板部材の内壁面側は耐液体浸透性の材料で被覆されている紙製のどんぶり型容器が開示され、耐液体浸透性の材料として、前記発泡断熱層形成材料よりも融点が高い熱可塑性合成樹脂フィルム又はアルミニウム箔であることが開示されている。特許文献3には、原紙の片面に低密度ポリエチレン(LDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/ポリエチレンテレフタレート(PET)/MDPEをラミネートし、反対面にLDPEをラミネートした原紙から容器底板部材ブランクを打ち抜いたことが記載されている。しかしながら、アルミニウム箔(アルミニウム箔)をラミネートする具体例は開示されていない。
さらに、特許文献4には、少なくとも外面側から熱可塑性樹脂の発泡層、印刷層、紙を主体とする基材層、熱可塑性樹脂層とを備え、前記発泡層と基材層との間に透明ニス層が形成された、胴部と底部からなる紙カップが開示され、さらに、紙(基材層)と熱可塑性樹脂層との間に、バリア性などを向上させるためにアルミニウム箔層などを設けてもよいことが開示されている。特許文献4には、7μのアルミニウム箔を溶融したポリエチレンを使って貼り合わせる具体例が記載されている。
本発明者らは、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及びアルミニウム箔等の金属箔層を、この順に備える断熱紙製容器用部材、具体的には例えば、少なくとも、印刷層、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、金属箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える断熱紙製容器用部材においては、温度130℃程度の乾燥機内で断熱紙製容器用部材を加熱して発泡可能な熱可塑性樹脂層を発泡させた場合、アルミニウム箔等の金属箔層に筋状のシワが発生することがあることを見いだした。本発明者らが、アルミニウム箔等の金属箔層に筋状のシワが発生した断熱紙製容器用部材の断面を観察したところ、接着剤層が、紙基材から剥離した結果、尺取り虫状に曲がった状態となり、筋状のシワとなっていることが判明した。こうした金属箔層に生じる筋状のシワの発生を解消することにより、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに外観のよい断熱紙製容器用部材及び該部材を備える断熱紙製容器として、市場の要求に応えることが求められていた。
特開昭57−110439号公報 特開平7−232774号公報 特開2012−91808号公報 特開平9−142435号公報
本発明の課題は、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生せず、外観のよい断熱紙製容器用部材、並びに断熱紙製容器を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、断熱紙製容器用部材における接着剤層を形成する接着性樹脂の特性と組成を特有のものとすることにより、前記課題を解決できることを見いだした。
すなわち、本発明によれば、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及び金属箔層を、この順に備える断熱紙製容器用部材であって、
接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂 99.5〜50質量%、及び、(a2)極性基含有接着樹脂 0.5〜50質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有することを特徴とする前記の断熱紙製容器用部材が提供される。
本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(6)の断熱紙製容器用部材が提供される。
(1)(a1)無極性熱可塑性樹脂が、中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンの少なくとも一種を含有する前記の断熱紙製容器用部材。
(2)(a2)極性基含有接着樹脂における極性基が、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、イソシアネート基、カルボニル基、グリシジル基、アミノ基、イミド基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも一種である前記の断熱紙製容器用部材。
(3)金属箔層が、アルミニウム箔層である前記の断熱紙製容器用部材。
(4)発泡可能な熱可塑性樹脂層が、低密度ポリエチレンを含有する前記の断熱紙製容器用部材。
(5)少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、金属箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える前記の断熱紙製容器用部材。
(6)少なくとも、印刷層、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、金属箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える前記の断熱紙製容器用部材。
また、本発明によれば、紙基材の一方の表面に、接着性樹脂を押出コーティングして接着剤層を形成し、次いで、接着剤層に金属箔を圧着して金属箔層を形成する工程を備える前記の断熱紙製容器用部材の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、前記の断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える断熱紙製容器が提供される。
本発明によれば、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及び金属箔層を、この順に備える断熱紙製容器用部材であって、接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂 99.5〜50質量%、及び、(a2)極性基含有接着樹脂 0.5〜50質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有することを特徴とする前記の断熱紙製容器用部材であることにより、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材が提供されるという効果が奏される。
また、本発明によれば、紙基材の一方の表面に、接着性樹脂を押出コーティングして接着剤層を形成し、次いで、接着剤層に金属箔を圧着して金属箔層を形成する工程を備える前記の断熱紙製容器用部材の製造方法であることにより、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材を容易に製造することができる断熱紙製容器用部材の製造方法が提供されるという効果が奏される。
さらに、本発明によれば、前記の断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える断熱紙製容器であることにより、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器が提供されるという効果が奏される。
本発明の断熱紙製容器用部材の層構成の例を示す断面図である。 本発明の発泡後の断熱紙製容器用部材の層構成の例を示す断面図である。 本発明の断熱紙製容器用部材の製造方法における第1工程の例を示す説明図である。 本発明の断熱紙製容器用部材の製造方法における第2工程の例を示す説明図である。 本発明の断熱紙製容器の例を示す説明図である。
I.断熱紙製容器用部材
本発明の断熱紙製容器用部材は、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及び金属箔層を、この順に備える断熱紙製容器用部材であって、
接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂 99.5〜50質量%、及び、(a2)極性基含有接着樹脂 0.5〜50質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有することを特徴とする前記の断熱紙製容器用部材である。
1.紙基材
本発明の断熱紙製容器用部材が備える紙基材は、特に制限がなく、断熱紙製容器に使用される紙基材を使用することができる。紙基材は、一般に、植物から得られるセルロース性繊維を水中に分散し、湿式抄紙して得られるシート状材料である。紙基材は、セルロース性繊維と他の繊維とを絡み合わせて膠着させたものであってもよい。例えば、木材パルプ紙、レーヨン紙、合成パルプ紙、合成繊維紙、無機繊維紙、無機粉体紙などを使用することができる。さらに、木材パルプ紙としては、上質紙、クラフト紙、晒クラフト紙、段ボール原紙、白板紙、グラシン紙、和紙等を使用することができ、塗工紙(コート紙)でも非塗工紙でもよく、再生紙でもよい。木材パルプ紙の表面にポリエチレン樹脂をコーティングしたポリラミ紙を使用することもできる。剛性及び強度の観点から、いわゆるカップ用原紙(「コップ原紙」ともいう。)が、特に好ましく使用される。
紙基材の坪量は、通常30〜600g/m、好ましくは100〜500g/m、より好ましくは150〜350g/mの範囲内である。紙基材の坪量が少なすぎると、発泡に必要な水分量が少なくなりすぎて、発泡可能な熱可塑性樹脂層の発泡が不十分となりやすい。また、紙基材の坪量が少なすぎると、強度が低下する上、内容物に熱湯を注いだときに胴部に熱さを感じやすくなる。紙基材の坪量が多すぎると、コスト高になることに加えて、容器成型の加工性が低下したり、過剰な水分量による過発泡が起こったりしやすくなる。紙基材の厚みは、通常100〜600μm、好ましくは200〜500μmの範囲内である。
紙基材の含水率は、通常2〜15重量%、好ましくは4〜13重量%、より好ましくは5〜10重量%の範囲内である。紙基材の含水率が低すぎると、後に説明する蒸発水分による発泡可能な熱可塑性樹脂層の発泡が不十分となったり、発泡むらが生じやすくなったりする。紙基材の含水率が高すぎると、強度が低下して成型加工性が低下することに加えて、過発泡や発泡セルの破裂が生じやすくなる。紙基材の含水率は、温度及び湿度を含む環境条件を制御して調湿することにより、所望の水準に保持することができる。紙基材の含水率は、JIS P8127に規定される絶乾水分測定法によって測定することができる。
2.発泡可能な熱可塑性樹脂層
本発明の断熱紙製容器用部材が備える発泡可能な熱可塑性樹脂層は、紙基材に含有されている水分の蒸発により、発泡して、断熱紙製容器用部材から形成される断熱紙製容器の断熱層となるものである。発泡可能な熱可塑性樹脂層を形成する発泡可能な熱可塑性樹脂としては、紙基材に含有されている水分の蒸発により、発泡することが可能であれば、特に限定されず、従来断熱紙製容器の断熱層を形成するために使用される発泡可能な熱可塑性樹脂を使用することができる。紙基材に含有されている水分の蒸発により、発泡することの容易さの観点から、該熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンを含有するものが好ましい。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等を挙げることができる。ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルファイド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。特に好ましくは、LDPEまたはLLDPEを単独でまたは組み合わせて使用することができる。また、所望により、ポリオレフィン以外の他の熱可塑性樹脂を混合して使用することができる。発泡可能な熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の組成を変更することにより、発泡可能な熱可塑性樹脂層の発泡を制御したり、その結果、最終的に形成される断熱紙製容器の表面の平滑性を調整したりすることができる。
発泡可能な熱可塑性樹脂層を形成する発泡可能な熱可塑性樹脂としては、発泡性の観点から、融点が80〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂が好ましく、より好ましくは81〜117℃、更に好ましくは82〜115℃の範囲である。発泡可能な熱可塑性樹脂の中でも、発泡性に優れる点で、先に述べたようにポリオレフィンが好ましく、ポリエチレンがより好ましく、低密度ポリエチレンが更に好ましい。したがって、本発明の断熱紙製容器用部材としては、発泡可能な熱可塑性樹脂層が、低密度ポリエチレンを含有するものが好ましい。発泡可能な熱可塑性樹脂として特に好ましいのは、LDPE、LLDPE、またはそれらの混合物である。本発明で特に好ましく使用されるLDPEまたはLLDPEの密度は、通常0.910〜0.929g/cm、好ましくは0.911〜0.925g/cmの範囲内である。LDPEまたはLLDPEの融点は、好ましくは98〜120℃、より好ましくは100〜118℃、更に好ましくは102〜115℃の範囲内である。融点は、示差走査熱量測定(DSC)により、最高吸熱ピーク温度として測定される値である(使用する樹脂に適合するJIS規格に基づいて測定する。)。LDPEまたはLLDPEのメルトフローレイト(以下、「MFR」ということがあり、使用する樹脂に適合するJIS規格に基づいて測定する。)は、1〜20g/10分の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜17g/10分の範囲内である。
発泡可能な熱可塑性樹脂層の厚み(発泡前の厚み)は、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmの範囲内である。また、発泡可能な熱可塑性樹脂層の発泡後の厚みは、断熱性や保温性などの観点から、通常100〜2,000μm、好ましくは400〜1,800μm、より好ましくは600〜1,500μmの範囲内である。
発泡可能な熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂は、所望により、顔料(酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等)、帯電防止剤、耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ等)、紫外線吸収剤などの通常使用される添加剤を含有することができる。
3.金属箔層
本発明の断熱紙製容器用部材が備える金属箔層は、断熱紙製容器用部材、及び、断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える断熱紙製容器を、バリア性及び遮光性を有するものとするために備えられ、バリア層及び/または遮光層となる。金属箔層を形成する金属箔としては、通常、断熱紙製容器用部材に使用される金属箔であって、断熱紙製容器に封入される食品等に望ましくない影響を及ぼすものでない限り、特に限定されず、食品包装用途等向けに一般的に製造されている金属箔を使用することができる。例えば、アルミニウム箔、スチール箔、ステンレス箔、スズ箔等を使用することができる。安全性、経済性等の観点から、好ましい金属箔は、アルミニウム箔である。
アルミニウム箔は、食品包装用途等向けに一般的に製造されているアルミニウム箔であれば特に限定されない。通常、包装用途等に使用されているのはJIS H4160(アルミニウム及びアルミニウム合金はく)に示される合金番号1N30である。本発明の断熱紙製容器用部材が備えるアルミニウム箔層を形成するアルミニウム箔としては、厚みが4〜30μm、好ましくは5〜25μm、より好ましくは6〜15μmの範囲のものを選択する。厚みが薄すぎると、強度やバリア性及び/または遮光性が十分でなかったり、取扱い性が低下したりすることがある。厚みが厚すぎると、断熱紙製容器用部材のヒートシール性や経済性等において問題が生じることがある。
4.接着剤層
本発明の断熱紙製容器用部材は、接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂 99.5〜50質量%、及び、(a2)極性基含有接着樹脂 0.5〜50質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有することを特徴とし、接着剤層を形成する接着性樹脂の特性と組成を特有のものとすることにより、加熱発泡により金属箔層にシワが発生することなく、十分な金属箔層と紙基材との接着力を有する断熱紙製容器用部材を提供することが可能となり、さらに、接着性樹脂の押出ラミネート加工性に優れることから、該断熱紙製容器用部材を容易に製造することができる。
〔(a1)無極性熱可塑性樹脂〕
接着性樹脂に含有される(a1)無極性熱可塑性樹脂は、紙基材と金属箔層とを接着する接着剤層を形成する接着性樹脂の母材樹脂(「基幹樹脂」ということもある。)となるものである。無極性熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンが好ましく挙げられる。中でも、(a1)無極性熱可塑性樹脂が、中密度ポリエチレン(MDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE)の少なくとも一種を含有することがより好ましく、押出加工性や断熱紙製容器のシール安定性等の観点からMDPEが更に好ましい。本発明で使用するMDPEの密度は、通常0.930〜0.941g/cmの範囲内にあり、HDPEの密度は、通常0.942〜0.970g/cmの範囲内にある。MDPEまたはHDPEとしては、少量のα−オレフィンを共重合したものでもよい。該α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられ、それらの含有量は、通常3〜15モル%の範囲である。
断熱紙製容器用部材に備えられる発泡可能な熱可塑性樹脂層の加熱発泡により金属箔層にシワが発生しないようにするために、(a1)の無極性熱可塑性樹脂は、好ましくは融点が120℃以上である。(a1)の無極性熱可塑性樹脂の融点が120℃未満であると、(a1)の無極性熱可塑性樹脂を含有する接着剤層が、発泡可能な熱可塑性樹脂層の加熱発泡時に溶融して、紙基材と金属箔層との層間接着力が低下したり、接着性樹脂を押出コーティングするときに、溶融押出された接着性樹脂が、例えば、すだれ状に流出して、均一な厚みの接着剤層を形成できない場合がある。(a1)の無極性熱可塑性樹脂の融点は、より好ましくは120〜135℃、更に好ましくは122〜135℃、特に好ましくは123〜135℃の範囲内である。また、(a1)無極性熱可塑性樹脂の融点は、発泡可能な熱可塑性樹脂層の加熱発泡時に溶融するおそれがない等の観点から、発泡可能な熱可塑性樹脂の融点より、通常5℃以上、好ましくは8℃以上、より好ましくは10℃以上高いことが望ましい。無極性熱可塑性樹脂の融点が高すぎると、接着性樹脂の押出加工性が低下することがある。なお、融点は、先に説明したように、DSCにより測定するものである。また、前記(a1)のMFRは、通常0.4〜20g/10分、好ましくは0.5〜18g/10分、より好ましくは0.8〜15g/10分の範囲内である。
〔(a2)極性基含有接着樹脂〕
接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂は、紙基材と金属箔層との層間接着力を十分なものとするために、母材樹脂である(a1)無極性熱可塑性樹脂とともに含有されるものである。(a2)極性基含有接着樹脂は、ベースとなるポリオレフィン等(ポリオレフィンとしては、先に発泡可能な熱可塑性樹脂として使用する材料を使用することができる。)に常法により極性基をグラフト反応等により導入することによって得られる接着性を有する樹脂や、極性を有する結合を主鎖に有する樹脂等が挙げられる。(a2)極性基含有接着樹脂としては、極性基が、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、イソシアネート基、カルボニル基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基、イミド基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、カルボキシル基または酸無水物基であることがより好ましい。(a2)極性基含有接着樹脂の特性は、特に限定されるものではないが、前記(a1)の無極性熱可塑性樹脂と混合してなる接着性樹脂の特性等を考慮して、密度が、好ましくは0.9〜0.94g/cm、より好ましくは0.905〜0.935g/cmの範囲内、融点が、好ましくは100〜135℃、より好ましくは105〜130℃の範囲内、MFRが、好ましくは0.4〜20g/10分、より好ましくは0.5〜18g/10分の範囲内である。
(a2)極性基含有接着樹脂としては、市販のものを使用することができ、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン〔三菱化学株式会社製のモディック(登録商標)H503、三井化学株式会社製のアドマー(登録商標)NF587、LF128等〕、グリシジル基合有エチレンコポリマー〔日本石油化学株式会社製レクスパール(登録商標)RA3150、住友化学株式会社製ボンドファースト(登録商標)2C、E、B等〕、エチレン・メタクリル酸の共重合樹脂〔三井・デュポンポリケミカル株式会社製のニュクレル(登録商標)AN42012C〕、熱可塑性ポリウレタンエラストマー〔株式会社クラレ製のクラミロン(登録商標)1195L等〕、ポリアミド・アイオノマー(三井・デュポン株式会社製のAM7926等)、ポリアクリルイミド樹脂(ローム・アンド・ハース社製のXHTA等)の接着樹脂が挙げられる。
〔接着性樹脂〕
本発明の断熱紙製容器用部材は、接着剤層を形成する接着性樹脂が、前記の(a1)無極性熱可塑性樹脂 99.5〜50質量%、及び、(a2)極性基含有接着樹脂 0.5〜50質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有するとともに、該接着性樹脂の融点が120℃以上であることにより、断熱紙製容器用部材に備えられる発泡可能な熱可塑性樹脂層の加熱発泡により金属箔層にシワが発生しないようにすることができる。接着性樹脂の融点が120℃未満であると、発泡可能な熱可塑性樹脂層の加熱発泡時に溶融して、紙基材と金属箔層との層間接着力が低下したり、接着性樹脂を押出コーティングするときに、溶融押出された接着性樹脂が、例えば、すだれ状に流出して、均一な厚みの接着剤層を形成できない場合がある。(a1)及び(a2)を特定の割合で含有する本発明における接着性樹脂の融点は、好ましくは120〜135℃、より好ましくは122〜135℃、更に好ましくは125〜135℃の範囲である。また、接着性樹脂のMFRは、通常0.4〜20g/10分、好ましくは0.5〜18g/10分、より好ましくは0.8〜15g/10分の範囲内である。
接着剤層に含有される(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とするときの(a1)と(a2)の含有割合は、好ましくは(a1)99〜60質量%及び(a2)1〜40質量%、より好ましくは(a1)98〜65質量%及び(a2)2〜35質量%であり、更に好ましくは(a1)95〜70質量%及び(a2)5〜30質量%、特に好ましくは(a1)88〜75質量%及び(a2)12〜25質量%である。(a2)極性基含有接着樹脂の含有割合が小さすぎると、金属箔層との接着力が弱く、断熱紙製容器を成型するとき、層間剥離を起こしてしまうことがある。(a2)極性基含有接着樹脂の含有割合が大きすぎると、接着性樹脂を押出コーティングするときに、溶融押出された接着性樹脂が膜状にならず、均一な厚みの接着層を形成することができなかったり、接着性樹脂の融点が低下して金属箔との接着力が低下することにより、発泡可能な熱可塑性樹脂の加熱発泡時に金属箔に「シワ」を発生したり、加熱発泡時に紙基材から気化した水分により部分発泡を起こしたりすることがある。さらに、(a2)極性基含有接着樹脂は高価であるため、経済性の観点から好ましくない。
〔接着性樹脂の押出加工性〕
本発明の断熱紙製容器用部材に備えられる接着剤層を形成する接着性樹脂は、押出加工性に優れ、これにより所定の均一厚みの接着層を容易に形成することができ、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材を得ることができる。接着性樹脂の押出加工性は以下の方法により評価することができる。すなわち、常法に従って、接着性樹脂をTダイから溶融押出する際に、溶融押出された樹脂がTダイの幅に沿って樹脂が流出する状態、すなわち製膜性を観察し、以下の評価基準に基づいて、接着性樹脂の押出加工性を評価する。本発明の断熱紙製容器用部材に備えられる接着剤層を形成する接着性樹脂は、接着性樹脂の押出加工性の評価がAである。
(接着性樹脂の押出加工性の評価基準)
A: 溶融押出された樹脂が、Tダイ幅に沿って均一な膜状に流出し、製膜できる。
B: 溶融押出された樹脂が、Tダイ幅方向に部分的に膜切れを起こし、均一な製膜ができない。
C: 溶融押出された樹脂が、膜状にならず、すだれ状に流出し、製膜ができない。
〔接着力〕
本発明の断熱紙製容器用部材に備えられる接着剤層を形成する接着性樹脂は、紙基材と金属箔層との接着性に優れることにより、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材を得ることができる。接着性樹脂の紙基材と金属箔層との接着性は、以下に説明する方法によって接着力(層間接着強度)を測定することにより評価することができる。すなわち、温度23℃、55%RH(相対湿度)に24時間以上静置した断熱紙製容器用部材から調製した試料について、引張試験を行い、紙基材と金属箔層とが剥離する際の接着力(単位:g重/15mm)を測定する。接着力が150g重/15mm以上であれば、接着性が優れるということができ、200g重/15mm以上であれば接着性が特に優れるということができる。なお、測定は、360g重/15mmまで行うこととし、360g重/15mmまで紙基材と金属箔層とが剥離しなかった場合、または、測定中に紙基材または金属箔層が破壊したときは、接着力が極めて優れるということができ、接着力を「360g重/15mm(材料破壊)」と表示することとする。
(接着力の測定条件)
測定環境: 温度23℃、55%RH
引張試験機: 株式会社エー・アンド・ディー製、卓上引張試験機STA−1150型
試料: 幅15mm、長さ150mm
チャック間距離: 100mm
(測定値は、n=3の平均値で表記する)
〔層間接着強さの実用性評価〕
本発明の断熱紙製容器用部材に備えられる接着剤層を形成する接着性樹脂は、紙基材と金属箔層との接着性に優れることにより、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材を得ることができる。接着性樹脂の紙基材と金属箔層との接着性は、以下に説明する方法による、層間接着強さの実用性評価(以下、単に「実用性評価」ということがある。)で判定することができる。すなわち、温度23℃、55%RHに24時間以上静置した断熱紙製容器用部材から調製した試料について、成人男性の評価者が、紙基材と金属箔層とを手で剥離する際の接着強さを評価する。
(実用性評価の判定基準)
A: 接着性が強く、紙基材または金属箔層が材料破壊する。
B: 紙基材と金属箔層が強い力では剥がれるが、十分な実用性がある。
C: 部分的に接着が弱い部分がある、または、容易に剥離し、実用上問題がある。
本発明の断熱紙製容器用部材に備えられる接着剤層の厚みは、通常5〜30μm、好ましくは10〜25μmの範囲である。接着剤層の厚みが小さすぎると、接着力が低下することがあり、接着剤層の厚みが大きすぎると、断熱紙製容器用部材の総厚みが大きくなり、断熱紙製容器を成型するときに支障をきたすことがあり、またコストが上昇する。
5.高融点熱可塑性樹脂層
本発明の断熱紙製容器用部材は、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及び金属箔層を、この順に備えるものであるが、更に所望により、その他の層を備えることができる。例えば、後に説明する第2の接着剤層を介して、前記の金属箔層の紙基材の反対側の面に高融点熱可塑性樹脂層を備えることができる。したがって、本発明の断熱紙製容器用部材としては、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、金属箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える断熱紙製容器用部材とすることができる。高融点熱可塑性樹脂層は、ヒートシール層として用いることもできる。
〔高融点熱可塑性樹脂〕
高融点熱可塑性樹脂層は、高融点熱可塑性樹脂から形成される。高融点熱可塑性樹脂は、発泡可能な熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の融点に比べて、通常5℃以上、好ましくは8℃以上、より好ましくは10℃以上高い融点を有する熱可塑性樹脂である。この融点の差の上限値は、特に限定されるものではないが、通常50℃、多くの場合40℃である。両樹脂の温度差が小さすぎる場合、発泡可能な熱可塑性樹脂を加熱発泡するときに、高融点熱可塑性樹脂層が溶融したり、場合によっては、予期しない発泡が生じたりすることがある。
高融点熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、通常、断熱紙製容器用部材において使用される熱可塑性樹脂から選択することができる。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンの外、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルファイド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。取扱性、経済性、更に所望によってはヒートシール性等の観点から、ポリオレフィンが好ましく使用される。
ポリオレフィンとしては、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、押出加工性や断熱紙製容器の開口部のシール安定性等の観点からMDPEがより好ましい。本発明で使用するMDPEの密度は、通常0.930〜0.941g/cmの範囲内にあり、HDPEの密度は、通常0.942〜0.970g/cmの範囲内にある。MDPE及びHDPEは、コモノマーとして少量のα−オレフィンを用いて合成されたものであってもよい。該α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが代表的なものである。MDPE及びHDPEの融点は、通常120〜135℃、好ましくは122〜135℃、より好ましくは123〜135℃の範囲内であり、MFRは、通常0.4〜20g/10分、好ましくは0.5〜18g/10分、より好ましくは0.8〜15g/10分の範囲内である。
本発明の断熱紙製容器用部材が、高融点熱可塑性樹脂層を備える場合、高融点熱可塑性樹脂層の厚みは、特に限定されないが、例えば、断熱紙製容器の内壁面側に配置される場合に、熱湯などの加熱液体の浸透を防ぐことが求められることから、通常15〜60μm、好ましくは20〜50μmの範囲内である。
高融点熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂には、所望により、顔料(酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカなど)、帯電防止剤、耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカなど)、紫外線吸収剤などの添加剤を添加することができる。
6.第2の接着剤層
本発明の断熱紙製容器用部材が、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、金属箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える断熱紙製容器用部材である場合、第2の接着剤層を形成する接着性樹脂としては、金属箔層及び高融点熱可塑性樹脂層を接着することができる限り、特に限定されないが、先に説明した接着剤層を形成する接着性樹脂、すなわち、(a1)及び(a2)を特有の割合で含有する接着性樹脂を使用することが好ましい。
第2の接着剤層の厚みは、通常5〜30μm、好ましくは10〜25μmの範囲である。第2の接着剤層の厚みが小さすぎると、接着力が低下することがあり、接着剤層の厚みが大きすぎると、断熱紙製容器用部材の総厚みが大きくなり、断熱紙製容器を成型するときに支障をきたすことがあり、またコストが上昇する。
7.印刷層
本発明の断熱紙製容器用部材は、所望によっては最終的に得られる断熱紙製容器に、美麗な外観イメージや商品としての識別性を与えるために、印刷層を備えることができる。印刷層は、断熱紙製容器用部材及び断熱紙製容器用部材を成型して得られる断熱紙製容器の外表面から施された印刷がみえるものとするために、通常、発泡可能な熱可塑性樹脂層の外表面上に、または、発泡可能な熱可塑性樹脂層と紙基材との間に備えることができ、発泡可能な熱可塑性樹脂層の外表面上に備えることが好ましい。より好ましい本発明の断熱紙製容器用部材としては、少なくとも、印刷層、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、金属箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える断熱紙製容器用部材とすることができる。
〔ベタ印刷層〕
印刷層は、従来、断熱紙製容器用部材において採用されていた印刷層を設けることができる。例えば、特に限定されず、文字、模様、絵などを形成したものでもよいし、単なる着色層やいわゆる隠蔽層でもよい。発泡可能な熱可塑性樹脂層を加熱発泡させた後の発泡面は不均一な凹凸面であるとともに、不揃いな輝きを呈することがあり、安定した印字印刷ができなかったり、外観が良くなかったりすることがある。そこで、発泡可能な熱可塑性樹脂層の表面(ヒートシール部を除く箇所)に、無色または白色あるいは有色のベタ印刷層を備えることができ、これにより、次に説明する模様印刷層に形成した文字、模様、絵などが一層鮮明にみえるようになる。
〔模様印刷層〕
発泡可能な熱可塑性樹脂層の表面に、通常は、該発泡可能な熱可塑性樹脂層の表面に形成した前記のベタ印刷層の表面に、有色インキにより、文字、模様、絵、バーコード表示など、断熱紙製容器の外面からみえる広義の模様が形成されている模様印刷層を備えるものとすることができる。模様印刷層としては、発泡印刷層、非発泡印刷層、またはこれらの併用等、常法に従って選択することができる。
〔印刷インキ〕
本発明の断熱紙製容器用部材に所望により備えられる印刷層を形成するために使用される印刷インキ材料は、特に限定されず、例えば以下のものを使用することができる。
樹脂: 一般的に断熱紙製容器用部材において使用されている樹脂を使用することができる。例えば、硝化綿、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ケトン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらを単独でまたは混合して使用する。
溶剤: メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン等の汎用の有機溶剤を適宜混合して使用する。
顔料: 食品安全等の観点から適合する有機顔料(ポリアゾ系等)及び無機・体質顔料(酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化珪素等)を使用する。
〔印刷層の形成〕
印刷インキによる塗装または印刷は、常法に従うことができ、グラビア印刷、ロール印刷、スプレー印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷その他の通常の印刷方法を採用することができるが、印刷仕上がり、加工適性、加工速度などの点でグラビア印刷によることが好ましい。印刷層を形成するための印刷インキの塗装または印刷は、通常、乾燥後の塗布量が1.5〜4g/m、好ましくは2〜3g/m、厚みとしては2〜6μm、好ましくは3〜5μmである。印刷層が、ベタ印刷層及び模様印刷層からなる場合、ベタ印刷層と模様印刷層との厚みの比率は、特に限定されないが、通常1:10〜10:1、好ましくは1:9〜9:1の範囲である。
8.その他の層
本発明の断熱紙製容器用部材は、更に所望により、その他の層を備えることができる。例えば、発泡可能な熱可塑性樹脂層の上面に顔料とバインダーを含有するインキ受理層等を備えることができる。これらその他の層の厚みは、断熱紙製容器用部材の効果を損ねることがない限り、特に限定されないが、通常0.01〜200μm、好ましくは0.02〜150μm、より好ましくは0.03〜100μm、多くの場合0.05〜50μmの範囲である。
9.断熱紙製容器用部材
本発明の断熱紙製容器用部材における層構成の例を図1の断面図に示す。図1に示す断熱紙製容器用部材は、ベタ印刷層7a及び模様印刷層7bからなる印刷層、発泡可能な熱可塑性樹脂層1、紙基材2、接着剤層3、アルミニウム箔層(金属箔層)4、第2の接着剤層5、高融点熱可塑性樹脂層6を、この順に備える層構成を有する。なお、図1は本発明の断熱紙製容器用部材の層構成の概念を理解するためのものであり、それぞれの層の厚みの比率を限定するものではない。図1に示す断熱紙製容器用部材は、後に説明するように、胴部材及びまたは底部材に形成することができ、更に胴部材と底部材とからなる断熱紙製容器を成型した後に、加熱して、発泡可能な熱可塑性樹脂層1を加熱発泡させることにより、図2の断面図に示すように、ベタ印刷層7a及び模様印刷層7bからなる印刷層、発泡した熱可塑性樹脂層11、紙基材2、接着剤層3、アルミニウム箔層(金属箔層)4、第2の接着剤層5、高融点熱可塑性樹脂層6を、この順に備える層構成を有する発泡後の断熱紙製容器用部材となる。なお、本発明の断熱紙製容器用部材から形成された胴部材及び/または底部材を断熱紙製容器に成型する前に(胴部材及び/または底部材の状態で)、断熱紙製容器用部材の発泡可能な熱可塑性樹脂層1を加熱発泡させることによって、図2の断面図に示す層構成を有する発泡後の断熱紙製容器用部材を得てもよい。
〔バリア性及び遮光性〕
本発明の断熱紙製容器用部材は、特有の層構成を有することにより、バリア性及び遮光性が優れる。すなわち、本発明の断熱紙製容器用部材は、金属箔層を備えることにより、酸素ガス透過量が少なく(JIS K7126−2に準拠した測定により、通常1cm/m・day以下である。)、水蒸気透過量が少ない(JIS K7129−Bに準拠した測定により、通常1g/m・day以下である。)ことからバリア性を有しており、また、全光線透過率が小さい(JIS K 7105に準拠した測定により、通常1%以下である。)ことから遮光性を有するものである。
II.断熱紙製容器用部材の製造方法
本発明の断熱紙製容器用部材は、先に説明した特有の層構成を備えるものとすることができる限り、その製造方法は特に限定されない。本発明の断熱紙製容器用部材は、通常の断熱紙製容器用部材を製造する際に使用する積層方法、例えば、接着剤を使用して積層を行うウエットラミネーション法、サンドイッチラミネーション法、ドライラミネーション法、サーマルラミネーション法、無溶剤型ラミネーション法や、樹脂の溶融被覆により積層を行う押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法、共押出インフレーション法等により製造することができる。製造効率の良好さ、特に接着剤の乾燥工程が不要であることから、樹脂の溶融被覆を利用する製造方法が好ましく採用される。本発明の断熱紙製容器用部材は、紙基材の一方の表面に、接着性樹脂を押出コーティングして接着剤層を形成し、次いで、接着剤層に金属箔を圧着して金属箔層を形成する工程を備える断熱紙製容器用部材の製造方法によって製造することが好ましく、具体的には、図3に示す第1工程及び図4に示す第2工程からなる多層化工程により製造することが好ましい。以下、図を参照しながら説明する。
〔第1工程〕
図3に示すように、紙基材(原紙)を巻回したロール101から紙基材102を繰り出し、送りロール103の上方で紙基材102の片面をコロナ放電処理器104を使用してコロナ放電処理する。ロール105とロール108との間で、紙基材102のコロナ放電処理面に、Tダイ押出機106を通して接着性樹脂107を溶融押出して押出コーティングする。他方、金属箔(例えば、アルミニウム箔)111を巻回したロール110から該金属箔111を繰り出し、コロナ放電処理器109でコロナ放電処理を行った後、接着性樹脂107を介して紙基材102に圧着する。これにより、「紙基材102/接着性樹脂107/金属箔111」の材料からなる層構成を有する多層シート112を形成する。
該多層シート112をロール群113、114及び116により次の工程に搬送し、その途中でコロナ放電処理器115を使用して、金属箔111の他面にコロナ放電処理を行う。対向するロール116と117の間に多層シート112を通しながら、金属箔111のコロナ放電処理面に、Tダイ押出機(共押出機)118を通して第2の接着性樹脂119及び高融点熱可塑性樹脂120(例えば、MDPEまたはHDPE)を共押出コーティングする。得られた「紙基材102/接着性樹脂107/金属箔111/第2の接着性樹脂119/高融点熱可塑性樹脂120」の材料からなる層構成を有する多層シートをロール122を経て半製品シート124として巻回ロール123に巻き取る。
〔第2工程〕
図4に示すように、ロール123から半製品シート124を繰り出し、ロール125(該ロール表面に、前記多層シートである半製品シート124の紙基材102面が接する。)からロール126を経て、対向するロール128と129との間に導く。半製品シート124の紙基材102の表面をコロナ放電処理器127を使用してコロナ放電処理し、更にオゾン発生器132を使用してオゾン処理を行う。半製品シート124の紙基材102の表面処理面に、Tダイ押出機130を通して発泡可能な熱可塑性樹脂(例えば、LDPE)131を押出コーティングする。こうして得られた「発泡可能な熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/金属箔層/第2の接着剤層/高融点熱可塑性樹脂層」の層構成を有する断熱紙製容器用部材の原反シート133を、印刷性能向上のためにコロナ放電処理器135を使用してコロナ放電処理した後、ロール群134及び136を経て、巻回ロール137に巻き回す。
〔印刷層の形成〕
上記の断熱紙製容器用部材の原反シート133は、発泡可能な熱可塑性樹脂層の表面に印刷層を形成することなく実用に供してもよいし、また、印刷層を形成した後に実用に供してもよい。発泡可能な熱可塑性樹脂層の表面に印刷層を形成する場合は、前記の「発泡可能な熱可塑性樹脂層/紙基材/接着剤層/金属箔層/第2の接着剤層/高融点熱可塑性樹脂層」の層構成を有する断熱紙製容器用部材の原反シート133を、巻回ロール137から繰り出し、例えば、多色グラビア印刷機等を使用して、ベタ印刷及びまたは模様印刷を行う。
III.断熱紙製容器及び断熱紙製容器の製造方法
本発明の断熱紙製容器用部材は、先に説明した特有の層構成を備えることによって、該断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える断熱紙製容器(以下、「本発明の断熱紙製容器」ということがある。)とすることができ、本発明の断熱紙製容器は、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生していない断熱紙製容器である。
断熱紙製容器Xは、図5に例示するように、通常、略円筒状または略円錐台状の胴部材aと底部材bとを接合することにより、図示するようなカップ形状に成型されて得られるものである。本発明の断熱紙製容器は、本発明の断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える。すなわち、本発明の断熱紙製容器Xは、本発明の断熱紙製容器用部材から形成される胴部材、または、本発明の断熱紙製容器用部材から形成される底部材の少なくとも一方を備える断熱紙製容器であり、好ましくは本発明の断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び本発明の断熱紙製容器用部材から形成される底部材を備える断熱紙製容器である。
胴部材及び底部材を形成する方法は、それぞれ常法によることができる。すなわち、あらかじめ所定の広幅(例えば幅1000mm程度)に形成した断熱紙製容器用部材の原反シートを、印刷位置に合わせてライン取りスリットし、次いで、パンチング機(打抜機)を使用して、印刷したカットマークに合わせて扇状にブランクカットを行う。続いて、容器成型機を使用して、ブランクカットしたシート材の両端を接合(例えば、ヒートシールによる。)して、略円筒状または略円錐台状の断熱紙製容器用胴部材を形成する。本発明の断熱紙製容器用部材から形成される断熱紙製容器用胴部材は、発泡可能な熱可塑性樹脂層が外面側に、高融点熱可塑性樹脂層が内面側になるようにして胴部材を形成する。次いで、該胴部材の下部を、底部材と接合するために所定の形状に折り曲げる。
別途、断熱紙製容器用部材の原反シート(胴部材を形成するための断熱紙製容器用部材の原反シートと同一でもよいし、異なる層構成及び/または異なる組成を有するものでもよい。)から略円形状に裁断して、断熱紙製容器用底部材を形成する。底部材の周縁部を所定の形状に折り曲げ、前記の胴部材と組み合わせ(巻き重ね等によることが好ましい。)、接合部を熱板等で加圧圧着することにより接合してカップ形状の容器を成型することができる。断熱紙製容器の成型に際しては、必要に応じて、所定の切りかけや切り込みを形成したり、絞り加工したり、折り曲げ加工したり、更に必要により接着工程を加えたりしてもよい。
〔加熱発泡〕
成型後の容器は、外面側に配置された発泡可能な熱可塑性樹脂層を加熱発泡させるために加熱処理を行う。加熱処理により、紙基材に含まれる水分が蒸発して、発泡可能な熱可塑性樹脂層が発泡する。加熱発泡工程での発泡温度は、発泡可能な熱可塑性樹脂の融点よりも通常5℃以上高い温度である。加熱発泡時の加熱温度は、紙基材に含まれる水分を蒸発膨張させることができる温度であり、通常100〜200℃の範囲内から選ばれる。発泡可能な熱可塑性樹脂がLDPEの場合には、加熱発泡時の温度は、好ましくは100〜150℃の範囲である。加熱時間は、通常10秒間から10分間、好ましくは30秒間から8分間、好ましくは2〜6分間の範囲である。加熱手段としては、熱風、電熱、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、高周波、電子線等の任意の手段を採用することができる。未発泡の容器をコンベアで加熱トンネル内を通過させ、熱風または電熱により加熱発泡させる手段が、生産性が高いため好ましい。均一かつ効率的な発泡を行うために、発泡可能な熱可塑性樹脂層の表面に、樹脂成分を合有する塗料を塗布してもよい。
〔発泡性の評価〕
本発明の断熱紙製容器用部材は、特有の層構成を備えることにより、発泡性が優れている。断熱紙製容器用部材の発泡性は、以下の方法により評価することができる。すなわち、所定の寸法に切り出した断熱紙製容器用部材のシート状の試料を、送風低温乾燥器内において、温度130℃で4分間加熱発泡させた後に取り出して、発泡した断熱紙製容器用部材のシート状の試料を以下の評価基準により目視で評価する。本発明の断熱紙製容器用部材は、発泡性の評価がAである。
(発泡性の評価基準)
A: 発泡が、きめが細かく、火膨れがなく、非発泡層面に発泡が見られない。
B: 部分的に発泡が粗い部分と火膨れが見られる。
C: 全面的に発泡が粗く、部分的に大きな火膨れがある。非発泡面にも発泡がある。
〔加熱発泡時のシワ評価〕
本発明の断熱紙製容器用部材は、特有の層構成を備えることにより、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない特有の効果を奏するものである。断熱紙製容器用部材の加熱発泡時のシワ評価は、以下の方法により評価判定することができる。すなわち、前記の発泡性の評価を行った発泡した断熱紙製容器用部材のシート状の試料について、高融点熱可塑性樹脂層の面から目視観察を行い、金属箔層における「シワ」の発生の有無を下記基準により評価する。本発明の断熱紙製容器用部材は、加熱発泡時のシワ評価がAである。なお加熱発泡時のシワ評価がCである場合は、筋状のシワの断面を観察すると、紙基材と金属箔層が分離し、金属箔層に付着した接着性樹脂が尺取り虫形状に湾曲した状態であることが観察される。
(加熱発泡時のシワ評価基準)
A: 表面は平坦で、筋状のシワは全く認められない。
B: ごく僅かに微小の筋状シワが観察される。
C: 筋状の太いシワが幾筋も観察される。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。本発明における各種物性及び特性の測定法は、次のとおりである。
〔紙基材の含水率〕
紙基材の含水率は、JIS P8127に規定される絶乾水分測定法によって測定した。
〔接着性樹脂の融点及びMFR〕
接着性樹脂の融点はJIS K0129に準拠してDSC(示差走査熱量測定)により測定(温度30℃から170℃まで10℃/分の速度で昇温及び降温)し、MFRはJIS K6922−1に準拠して測定(温度190℃、荷重21.18N)した。
〔発泡性の評価〕
断熱紙製容器用部材の発泡性は、以下の方法により評価した。すなわち、断熱紙製容器用部材の原反シート約5mを巻き解き、幅方向に沿う3か所から、幅150mm長さ300mmの断熱紙製容器用部材のシート状の試料3本を切り出した。試料のそれぞれについて、長さ方向端部をホチキスで仮止めして筒状にして、送風低温乾燥器(東京理化器械株式会社製WFO−601SD型)に投入して、温度130℃で4分間静置し、断熱紙製容器用部材の発泡可能な熱可塑性樹脂層を発泡させた。発泡した断熱紙製容器用部材のシート状の試料を送風低温乾燥器から取り出し、下の評価基準により目視で評価した。
(発泡性の評価基準)
A: 発泡が、きめが細かく、火膨れがなく、非発泡層面に発泡が見られない。
B: 部分的に発泡が粗い部分と火膨れが見られる。
C: 全面的に発泡が粗く、部分的に大きな火膨れがある。非発泡面にも発泡がある。
〔加熱発泡時のシワ評価〕
断熱紙製容器用部材の加熱発泡時のシワ評価は、以下の方法により評価判定した。すなわち、前記の発泡性の評価を行った発泡した断熱紙製容器用部材のシート状の試料について、高融点熱可塑性樹脂層の面から目視観察を行い、金属箔層における「シワ」の発生の有無を下記基準により評価した。
(加熱発泡時のシワ評価基準)
A: 表面は平坦で、筋状のシワは全く認められない。
B: ごく僅かに微小の筋状シワが観察される。
C: 筋状の太いシワが幾筋も観察される。
〔接着性−接着力〕
断熱紙製容器用部材に備えられる接着剤層を形成する接着性樹脂の紙基材と金属箔層との接着性は、以下に説明する方法によって接着力(層間接着強度)を測定することにより評価した。すなわち、温度23℃、55%RHに24時間以上静置した断熱紙製容器用部材から調製した試料について、引張試験を行い、紙基材と金属箔層とが剥離する際の接着力(単位:g重/15mm)を測定した。なお、測定は、360g重/15mmまで行うこととし、360g重/15mmまで紙基材と金属箔層とが剥離しなかった場合、または、測定中に紙基材または金属箔層が破壊したときは、接着力を「360(材料破壊)」と表示することとした。
(接着力の測定条件)
測定環境: 温度23℃、55%RH
引張試験機: 株式会社エー・アンド・ディー製、卓上引張試験機STA−1150型
試料: 幅15mm、長さ150mm
チャック間距離: 100mm
(測定値は、n=3の平均値で表記した)
〔接着性−実用性評価〕
断熱紙製容器用部材に備えられる接着剤層を形成する接着性樹脂の接着性は、以下に説明する方法による、層間接着強さの実用性評価で判定した。すなわち、温度23℃、55%RHに24時間以上静置した断熱紙製容器用部材から調製した試料について、成人男性の評価者が、紙基材と金属箔層とを手で剥離する際の接着強さを評価した。
(実用性評価の判定基準)
A: 接着性が強く、紙基材または金属箔層が材料破壊する。
B: 紙基材と金属箔層が強い力では剥がれるが、十分な実用性がある。
C: 部分的に接着が弱い部分がある、または、容易に剥離し、実用上問題がある。
〔接着性樹脂の押出加工性〕
接着性樹脂の押出加工性は以下の方法により評価した。すなわち、接着性樹脂をTダイから溶融押出する際に、溶融押出された樹脂がTダイの幅に沿って樹脂が流出する状態、すなわち製膜性を観察し、以下の評価基準に基づいて、接着性樹脂の押出加工性を評価した。
(接着性樹脂の押出加工性の評価基準)
A: 溶融押出された樹脂が、Tダイ幅に沿って均一な膜状に流出し、製膜できる。
B: 溶融押出された樹脂が、Tダイ幅方向に部分的に膜切れを起こし、均一な製膜ができない。
C: 溶融押出された樹脂が、膜状にならず、すだれ状に流出し、製膜ができない。
[実施例1]
〔第1工程〕
図3に示す第1工程に従い、紙基材のロール101から紙基材102(「紙原紙」ということもある。中越パルプ工業株式会社製のカップ用原紙、坪量300g/m、厚み333μm、含水率6〜9%)を繰り出し、Tダイ押出機106を使用して、以下に示す組成の接着性樹脂107を押出コーティングして接着剤の層を形成した。溶融押出された接着性樹脂107は、Tダイ幅に沿って均一な膜状に流出し、接着剤の層を形成することができた。
(接着性樹脂の組成)
(a1)無極性熱可塑性樹脂: 中密度ポリエチレン〔東ソー株式会社製のペトロセン(登録商標)LW01、密度:0.933g/cm、融点:126℃、MFR:4.3g/10分。以下、「無極性樹脂A」ということがある。〕85.0質量%、及び、
(a2)極性基含有接着樹脂: 〔三菱化学株式会社製のモディック(登録商標)H503、密度:0.930g/cm、融点:128℃、MFR:1.5g/10分。以下、「極性基含有樹脂a」ということがある。〕15.0質量%
(接着性樹脂の融点等)
(a1)及び(a2)からなる接着性樹脂は、融点が126℃、MFRが3.9g/10分であった。
他方、アルミニウム箔のロール110からアルミニウム箔111(日本金属箔株式会社製、厚み7μm。以下、「Al箔」ということがある。)を繰り出して、前記の接着剤の層を介して紙基材102に圧着した。これにより、紙基材/接着剤/アルミニウム箔の層構成を有する多層シート112が形成された。
多層シート112のアルミニウム箔111の面に、Tダイ押出機(共押出機)118から、第2の接着性樹脂119(無極性樹脂Aと極性基含有樹脂aとからなる先の接着性樹脂107と同一の組成である。以下に示す実施例及び比較例においても、第2の接着性樹脂119は、接着性樹脂107と同一の組成とした。)、及び、高融点熱可塑性樹脂120(中密度ポリエチレンである無極性樹脂A)とを共押出コーティングして、半製品シート124〔図1に示す断熱紙製容器用部材における紙基材2/接着剤層3/アルミニウム箔層4/第2の接着剤層5/高融点熱可塑性樹脂層6の層構成に相当する。〕を得た。得られた半製品シート124を巻回ロール123に巻き取った。
〔第2工程〕
次に、図4に示す第2工程に従い、巻回ロール123から半製品シート124を繰り出し、紙基材102の表面に、Tダイ押出機130を通して、発泡可能な熱可塑性樹脂層1を形成する低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製のペトロセン(登録商標)07C03C、密度:0.918g/cm、MFR:15g/10分、融点103℃)を押出コーティングすることにより、図1に示す層構成を有する断熱紙製容器用部材〔発泡可能な熱可塑性樹脂層1(厚み60μm)/紙基材2(厚み333μm)/接着剤層3(厚み15μm)/アルミニウム箔層4(厚み7μm)/第2の接着剤層5(厚み15μm)/高融点熱可塑性樹脂層6(厚み40μm)の層構成を有する。〕である、幅850mmの製品シート133(以下、「原反シート」ということがある。)を形成し、巻回ロール137に巻き取った。
(接着性の評価)
一日間(24時間)静置した巻回ロールから、原反シートを約5m巻き解き、幅方向に沿う3か所から、幅150mm長さ300mmの断熱紙製容器用部材試料3本を切り出した。これらの試料を使用して、断熱紙製容器用部材の接着性の評価として、層間接着強度の測定と層間接着強さの実用性評価を行った。層間接着強度の測定においては、アルミニウム箔層4と紙基材2との剥離は生ぜず、紙基材2の材料破壊が発生した〔以下、この場合の接着力(g重/15mm)の測定結果を、「360g重/15mm(材料破壊)」と表記することがある。〕。
(発泡性の評価及び加熱発泡時のシワ評価)
先の断熱紙製容器用部材試料のそれぞれについて、長さ方向端部をホチキスで仮止めして筒状にして、送風低温乾燥器(東京理化器械株式会社製WFO−601SD型)に投入して、温度130℃で4分間静置し、断熱紙製容器用部材の発泡可能な熱可塑性樹脂層1を発泡させることにより、発泡した発泡可能な熱可塑性樹脂層11を備える加熱発泡させた断熱紙製容器用部材を得た。加熱発泡させた断熱紙製容器用部材を取り出して、発泡性の評価及び加熱発泡時のシワ評価を目視で行った。発泡した発泡可能な熱可塑性樹脂層11の発泡面はきめが細かく、火膨れがなく、また、非発泡層である高融点熱可塑性樹脂層6の表面には発泡が見られないことから、発泡性がAと評価できるものであった。また、高融点熱可塑性樹脂層6を通してアルミニウム箔層4を観察したところ、その表面が平坦で、筋状のシワが全く認められなかったことから、加熱発泡時のシワ評価がAと評価できるものであった。
作製された断熱紙製容器用部材は、バリア性及び遮光性を有するものであった。断熱紙製容器用部材について、加熱発泡時のシワ評価、接着性(接着力及び実用性評価)、接着性樹脂の押出加工性、並びに発泡可能な熱可塑性樹脂層1の発泡性(以下、これらを包括して、「シワの発生及び発泡性等」ということがある。)の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
〔断熱紙製容器の成型〕
断熱紙製容器用部材の原反シートに、グラビア印刷機(富士機械工業株式会社製7色印刷機)を使用して印刷層を形成した。まず、断熱紙製容器の成型に際しシート端部をヒートシールする部分を除いた発泡可能な熱可塑性樹脂層の表面に白ベタインキ〔東洋インキ株式会社製のプライムカップ(登録商標)63C白〕を乾燥後塗布量2.5g/mとなるように塗布してベタ印刷層7aを形成し、次いで、ベタ印刷層7aの表面に赤色インキ〔東洋インキ株式会社製のプライムカップ(登録商標)3S〕を乾燥後塗布量0.375g/mとなるように絵柄を塗布して模様印刷層7bを形成することにより、ベタ印刷層7aと模様印刷層7bとからなる印刷層を形成した。
印刷層を形成した断熱紙製容器用部材の原反シートから、打抜機を使用して、扇状の断熱紙製容器用胴部材を打ち抜いた。この胴部材と、印刷層の形成を行わなかった断熱紙製容器用部材の原反シートから円盤状に打ち抜いて得た断熱紙製容器用底部材とを使用して、常法に従って、カップ成形機を使用して、前記の底部材の端部を、胴部材の端部を折り曲げて包み込む形態(サンドイッチ形態)で熱圧着シールすることにより、カップを成型した。続いて、この成型したカップを、ターンテーブルを備える送風定温乾燥器(東京理化器械株式会社製WFO−601SD型)内で、温度130℃で4分間加熱して発泡可能な熱可塑性樹脂層1を発泡させることによって、発泡した発泡可能な熱可塑性樹脂層11を備える断熱紙製容器を得た。得られた断熱紙製容器は、加熱発泡時にアルミニウム箔層4と紙基材2とがズレることによる「シワ」の発生がみられず、また、発泡可能な熱可塑性樹脂層1の発泡も均一であり、印刷層のひび割れもなく、外観上問題がなく美粧性の観点からも満足できるものであった。この断熱紙製容器は、断熱性、バリア性及び遮光性を有するものであることから、内容物の味の変化がない、保香性がよい、色変化がない等が要求される長期保存用容器として十分満足できるものであることが分かった。
[実施例2]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a1)無極性熱可塑性樹脂として、無極性樹脂Aに代えて、中密度ポリエチレン〔東ソー株式会社製のペトロセン(登録商標)LW04−1、密度:0.940g/cm、融点:131℃、MFR:6.5g/10分。以下、「無極性樹脂B」ということがある。〕を使用したこと、及び、接着性樹脂の融点が131℃、MFRが5.8g/10分であるものとしたことを除いて、実施例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[実施例3]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂として、極性基含有樹脂aに代えて、酸変性線状低密度ポリエチレン〔三井化学株式会社製のアドマー(登録商標)NF587、密度:0.907g/cm、融点:120℃、MFR:2.3g/10分。以下、「極性基含有樹脂b」ということがある。〕を使用したこと、及び、接着性樹脂の融点が129℃、MFRが5.9g/10分であるものとしたことを除いて、実施例2と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[実施例4]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂として、極性基含有樹脂aに代えて、酸変性線状低密度ポリエチレン〔三井化学株式会社製のアドマー(登録商標)LF128、密度:0.922g/cm、融点:110℃、MFR:2.7g/10分。以下、「極性基含有樹脂c」ということがある。〕を使用したこと、及び、接着性樹脂の融点が128℃、MFRが5.9g/10分であるものとしたことを除いて、実施例2と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[実施例5]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a1)無極性熱可塑性樹脂:無極性樹脂A 97.5質量%、(a2)極性基含有接着樹脂:極性基含有樹脂a 2.5質量%に変更したこと、及び、接着性樹脂の融点が126℃、MFRが4.2g/10分であるものとしたことを除いて、実施例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[実施例6]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a1)無極性熱可塑性樹脂:無極性樹脂A 95.0質量%、(a2)極性基含有接着樹脂:極性基含有樹脂a 5.0質量%に変更したこと、及び、接着性樹脂の融点が126℃、MFRが4.2g/10分であるものとしたことを除いて、実施例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[実施例7]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a1)無極性熱可塑性樹脂:無極性樹脂A 90.0質量%、(a2)極性基含有接着樹脂:極性基含有樹脂a 10.0質量%に変更したこと、及び、接着性樹脂の融点が126℃、MFRが4.0g/10分であるものとしたことを除いて、実施例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例1]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂である極性基含有樹脂aを含有しない〔(a1)無極性熱可塑性樹脂:無極性樹脂A 100.0質量%の組成である。〕ものに変更したこと(接着性樹脂は、融点が126℃、MFRが4.3g/10分である。)を除いて、実施例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例2]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂である極性基含有樹脂aを含有しない〔(a1)無極性熱可塑性樹脂:無極性樹脂B 100.0質量%の組成である。〕ものに変更したこと(接着性樹脂は、融点が131℃、MFRが6.5g/10分である。)を除いて、実施例2と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例3]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a1)無極性熱可塑性樹脂である無極性樹脂Aに代えて、低密度ポリエチレン〔東ソー株式会社製のペトロセン(登録商標)225、密度:0.923g/cm、融点109℃、MFR:3.7g/10分。以下、無極性樹脂Cということがある。〕を使用したこと(接着性樹脂は、融点が109℃、MFRが3.7g/10分である。)を除いて、比較例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例4]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂であるエチレン・メタクリル酸共重合体〔三井・デュポンポリケミカル株式会社製のニュクレル(登録商標)AN42012C、密度:0.940g/cm、融点:100℃、MFR:7.0g/10分。以下、「極性基含有樹脂d」ということがある。〕を使用した〔接着性樹脂は、(a1)無極性熱可塑性樹脂を含有せず、(a2)極性基含有接着樹脂:極性基含有樹脂d 100.0質量%の組成である。〕こと(接着性樹脂は、融点が100℃、MFRが7.0g/10分である。)を除いて、比較例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材について、シワの発生及び発泡性等の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例5]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂である極性基含有樹脂dに代えて、極性基含有樹脂aを使用したこと(接着性樹脂は、融点が128℃、MFRが1.5g/10分である。)を除いて、比較例4と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製したところ、接着性樹脂が均一な膜を形成することができず、すだれ状に流出して、所定の厚みを有する接着層を備える断熱紙製容器用部材を得ることができなかった。作製された断熱紙製容器用部材について、接着性(接着力及び実用性評価)の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例6]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂である極性基含有樹脂dに代えて、極性基含有樹脂bを使用したこと(接着性樹脂は、融点が120℃、MFRが2.3g/10分である。)を除いて、比較例4と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製したところ、接着性樹脂が均一な膜を形成することができず、すだれ状に流出して、所定の厚みを有する接着層を備える断熱紙製容器用部材を得ることができなかった。作製された断熱紙製容器用部材について、接着性(接着力及び実用性評価)の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例7]
接着性樹脂について、接着性樹脂に含有される(a2)極性基含有接着樹脂である極性基含有樹脂dに代えて、極性基含有樹脂cを使用したこと(接着性樹脂は、融点が110℃、MFRが2.7g/10分である。)とを除いて、比較例4と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製したところ、接着性樹脂が均一な膜を形成することができず、すだれ状に流出して、所定の厚みを有する接着層を備える断熱紙製容器用部材を得ることができなかった。作製された断熱紙製容器用部材について、接着性(接着力及び実用性評価)の評価結果を、接着剤層の接着剤組成とともに、表1に示す。
[比較例8]
図3に示す第1工程において、接着性樹脂107の押出コーティングとアルミニウム箔111の紙基材102への圧着を行わなかったことを除いて、実施例1と同様にして、断熱紙製容器用部材を作製した。作製された断熱紙製容器用部材は、アルミニウム箔層4(及び接着剤層3)を備えない積層シートであるため、バリア性及び遮光性が低かった。
Figure 0006472681
表1から、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及び金属箔層(具体的には、アルミニウム箔層)を、この順に備える断熱紙製容器用部材であって、
接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂 99.5〜50質量%、及び、(a2)極性基含有接着樹脂 0.5〜50質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有するものである実施例1〜7の断熱紙製容器用部材は、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材であって、更に、接着性樹脂の押出加工性も良好であることから、該断熱紙製容器用部材を容易に得られることが分かった。
特に、接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂 88〜75質量%と、(a2)極性基含有接着樹脂 12〜25質量%とを含有するものである実施例1〜4の断熱紙製容器用部材は、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生することがなく、更に、紙基材と金属箔層との接着強度にも優れる断熱紙製容器用部材であることが分かった。
これに対して、接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有するが、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂のみからなり、(a2)極性基含有接着樹脂を含有しないものである比較例1及び2の断熱紙製容器用部材は、加熱発泡により金属箔層にシワが発生することがないものの、紙基材と金属箔層との接着強度に劣るため、実用上問題があることが分かった。また、接着剤層に含有される接着性樹脂の融点が120℃未満であって、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂のみからなり、(a2)極性基含有接着樹脂を含有しないものである比較例3の断熱紙製容器用部材は、加熱発泡により金属箔層にシワが発生するとともに、紙基材と金属箔層との接着強度に劣るため、実用上問題があることが分かった。
さらに、接着剤層に含有される接着性樹脂の融点が120℃未満であって、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂を含有せず、(a2)極性基含有接着樹脂のみからなる比較例4の断熱紙製容器用部材は、加熱発泡により金属箔層にシワが発生する断熱紙製容器用部材であることが分かった。また同様に、接着剤層に含有される接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂を含有せず、比較例4とは別異の(a2)極性基含有接着樹脂のみからなる比較例5〜7の断熱紙製容器用部材は、接着性樹脂の押出加工性が良好でなく安定した接着剤層が形成されないため、実用上問題があることが分かった。なお、金属箔層を備えない比較例8の積層シートは、バリア性及び遮光性を有さず、また加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材としては使用できないものであることが分かった。
本発明は、少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及び金属箔層を、この順に備える断熱紙製容器用部材であって、
接着剤層が、融点が120℃以上の接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)無極性熱可塑性樹脂 99.5〜50質量%、及び、(a2)極性基含有接着樹脂 0.5〜50質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有することを特徴とする前記の断熱紙製容器用部材であることによって、
断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明は、紙基材の一方の表面に、接着性樹脂を押出コーティングして接着剤層を形成し、次いで、接着剤層に金属箔を圧着して金属箔層を形成する工程を備える前記の断熱紙製容器用部材の製造方法であることにより、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器用部材を容易に製造することができる断熱紙製容器用部材の製造方法を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
さらに、本発明は、前記の断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える断熱紙製容器であることにより、断熱性、バリア性及び遮光性を有するとともに、加熱発泡により金属箔層にシワが発生しない断熱紙製容器を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
1: 発泡可能な熱可塑性樹脂層
2: 紙基材
3: 接着剤層
4: アルミニウム箔層(金属箔層)
5: 第2の接着剤層
6: 高融点熱可塑性樹脂層
7a: 印刷層(ベタ印刷層)
7b: 印刷層(模様印刷層)
11: 発泡した発泡可能な熱可塑性樹脂層
101: 紙基材のロール
102: 紙基材
103,105,108,113,114,116,117,122: ロール群
104,109,115: コロナ放電処理器
106,130: Tダイ押出機
107: 接着性樹脂
110: ロール
111: 金属箔(アルミニウム箔)
112: 多層シート
118: Tダイ押出機(共押出機)
119: 第2の接着性樹脂
120: 高融点熱可塑性樹脂
123: 巻回ロール
124: 半製品シート
125,126,128,129,134,136: ロール群
127: コロナ放電処理器
131: 発泡可能な熱可塑性樹脂
132: オゾン発生器
133: 断熱紙製容器用部材(原反シート)
135: コロナ放電処理器
137: 巻回ロール
X: 断熱紙製容器
a: 胴部材
b: 底部材

Claims (8)

  1. 少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層及びアルミニウム箔層を、この順に備える断熱紙製容器用部材であって、
    接着剤層が、融点が120〜135の範囲内であり、MFRが0.8〜15g/10分の範囲内である接着性樹脂を含有し、かつ、該接着性樹脂が、(a1)中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンの少なくとも一種を含有し、融点が120〜135℃の範囲内であり、MFRが0.8〜15g/10分の範囲内である無極性熱可塑性樹脂 88〜75質量%、及び、(a2)密度が0.905〜0.935g/cm の範囲内であり、融点が105〜130℃の範囲内であり、MFRが0.5〜15g/10分の範囲内である極性基含有接着樹脂 12〜25質量%〔(a1)及び(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含有することを特徴とする前記の断熱紙製容器用部材。
  2. (a1)無極性熱可塑性樹脂が、中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンの少なくとも一種を含有する請求項1記載の断熱紙製容器用部材。
  3. (a2)極性基含有接着樹脂における極性基が、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、イソシアネート基、カルボニル基、グリシジル基、アミノ基、イミド基及びウレタン基からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の断熱紙製容器用部材。
  4. 発泡可能な熱可塑性樹脂層が、低密度ポリエチレンを含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の断熱紙製容器用部材。
  5. 少なくとも、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、アルミニウム箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の断熱紙製容器用部材。
  6. 少なくとも、印刷層、発泡可能な熱可塑性樹脂層、紙基材、接着剤層、アルミニウム箔層、第2の接着剤層及び高融点熱可塑性樹脂層を、この順に備える請求項1乃至5のいずれか1項に記載の断熱紙製容器用部材。
  7. 紙基材の一方の表面に、接着性樹脂を押出コーティングして接着剤層を形成し、次いで、接着剤層にアルミニウム箔を圧着してアルミニウム箔層を形成する工程を備える請求項1乃至6のいずれか1項に記載の断熱紙製容器用部材の製造方法。
  8. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の断熱紙製容器用部材から形成される胴部材及び/または底部材を備える断熱紙製容器。
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