JP6472635B2 - コラーゲン水溶液及びそれを用いたゲルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コラーゲン水溶液及びそれを用いたゲルの製造方法に関する。
酸性かつ低温で安定なコラーゲン水溶液にイオンを添加し、pHを中性に上昇させて生体温度(以下、「体温」という。)付近に加温すると、コラーゲン分子が自己組織化して線維を形成する。線維は、互いに絡み合い物理ゲルを形成する。かかる現象は古くから知られており、この現象を利用し、例えば、皮下注入用のコラーゲン水溶液が臨床応用されている。
ところで、3重らせん構造を持つコラーゲン分子は、その両末端に非らせん領域(テロペプチド)を有する。テロペプチドは人体において抗原性を示すという報告に基づき、コラーゲンらせんには作用しないタンパク質分解酵素を用いてテロペプチドを消化したコラーゲン(例えば、ペプシン消化コラーゲンなど)が、医療用途に用いられる。特に日本国内では、テロペプチドが消化されたコラーゲンのみが医療用途として認められている。
テロペプチドはコラーゲンの線維化にポジティブに作用するため、テロペプチドが消化されたコラーゲンの線維化は、体温付近の温度に対する応答性が低下することが知られている(例えば非特許文献1参照)。体温付近の温度に対する応答性が低いと、生体に接触させた後にコラーゲン水溶液が拡散しやすくなり、所望の形状にゲル化させることが難しくなる。そこで、できるだけ体温付近の温度に対する応答性を高くする技術が求められている。
コラーゲンの線維化について、体温付近の温度に対する応答性を高くする技術としては、例えば、線維化したコラーゲンを低温で再び水溶液に戻すことで線維形成の履歴を残し、体温付近の温度に対する応答性を高くするという方法がある(非特許文献2参照)。さらに、低温で線維化する魚類由来コラーゲンを用いた実験結果ではあるが、溶液の食塩濃度を生理濃度から段階的に低下させると線維化速度が高くなるという報告がある(非特許文献3参照)。また、体温付近の温度に応答した線維化の速度は、コラーゲン濃度に依存して高くなることが知られている(例えば非特許文献4)。
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しかしながら、非特許文献2に開示された方法では、体温付近の温度に対する応答性を高くするまでに数日を要するため、使用前の「その場調製(in−situ preparation)」が困難である。また、線維化の履歴が残ったコラーゲン水溶液は保管が難しく、医療材料として応用することが困難であるという問題がある。さらに、非特許文献3に開示された技術では、線維化は徐々に凝集の様相を呈し、得られるゲルが弱くなることが判明している。また、非特許文献4などの記載に基づいてコラーゲン濃度を高めても、数分のラグフェーズを解消することはできない。
このように、結局、従来の技術では、「その場調製」が可能なほどに線維化の体温応答性が高いコラーゲン水溶液は得られていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、「その場調製」が可能なほどに線維化の体温応答性が高いコラーゲン水溶液及びそれを用いたゲルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、コラーゲン水溶液のイオン強度を、生理条件の塩濃度が示すイオン強度よりも高くすると、「その場調製」が可能なほどにコラーゲン線維化の温度応答性が高くなるという現象を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
[1]コラーゲンと水とを含むコラーゲン水溶液であって、23℃におけるpHが6.0〜9.0であり、ナトリウム塩のイオン強度が0.60〜1.2であり、かつ、コラーゲン濃度が0.50%〜2.5%である、コラーゲン水溶液。
[2]リン酸水素ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む、上記のコラーゲン水溶液。
[3]前記コラーゲンは、哺乳類由来テロペプチド除去型コラーゲンを含む、上記のコラーゲン水溶液。
本発明によれば、「その場調製」が可能なほどに線維化の体温応答性が高いコラーゲン水溶液及びそれを用いたゲルの製造方法を提供することができる。
実施例及び比較例のコラーゲン水溶液について、37℃に到達してから60秒後までの貯蔵弾性率の経時変化を示すグラフである。 実施例及び比較例のコラーゲン水溶液について、37℃に到達してから60秒後までの貯蔵弾性率の経時変化を示すグラフである。 実施例及び比較例のコラーゲン水溶液について、23℃での貯蔵弾性率の経時変化を示すグラフである。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態のコラーゲン水溶液は、コラーゲンと水とを含むコラーゲン水溶液であって、23℃におけるpHが6.0〜9.0であり、イオン強度が0.60〜1.2であり、かつ、コラーゲン濃度が0.50%〜2.5%である。
コラーゲン水溶液は、特に限定されないが、室温付近での線維化が進み難いテロペプチド除去型コラーゲンを含むことが好ましく、実質的にテロペプチド除去型コラーゲンからなることがより好ましい。テロペプチド除去型コラーゲンは、コラーゲン分子が両末端に有するテロペプチドを、タンパク質分解酵素により酵素的に分解除去したものであり、例えば、コラーゲン分子が両末端に有するテロペプチドをペプシン消化により分解除去されたものである。また、テロペプチド除去型コラーゲンの中でも、医療機器の原料として承認されている哺乳類由来のテロペプチド除去型コラーゲンが好ましく、既に臨床応用され、熱安定性に優れるブタ皮由来のテロペプチド除去型コラーゲンがより好ましく用いられる。
コラーゲンは、線維形成能を有するコラーゲン(線維形成コラーゲン)であれば特に限定されない。線維形成コラーゲンの中でも、骨、皮膚、腱、および靭帯を構成するコラーゲンであるタイプI、軟骨を構成するコラーゲンであるタイプII、タイプIコラーゲンで構成される生体組織に含まれるタイプIIIなどが、入手のしやすさ、研究実績の豊富さ、あるいは製造したゲルを適用する生体組織との類似性の観点から好ましく用いられる。コラーゲンは常法により生体組織から抽出・精製して得てもよく、市販品を入手してもよい。コラーゲンは各タイプが精製されたものでも、複数のタイプの混合物でもよい。
コラーゲンの変性温度は、32℃以上であると好ましく、35℃以上であるとより好ましく、37℃以上であると更に好ましい。変性温度が32℃以上であることにより、コラーゲン水溶液の室温での流動性をより長く維持することが可能になると共に、生体内でのコラーゲンの変性が起こりにくくなる。コラーゲンの変性温度の上限は特に限定されないが、50℃以下であると好ましく、45℃以下であるとより好ましく、41℃であると更に好ましい。変性温度が上記上限値以下であることにより、生体内でのゲル化をより速やかに進行させることができる。コラーゲンの変性温度は、常法、すなわちコラーゲン水溶液の温度上昇に伴う円二色性、旋光度、又は粘度の変化によって測定される。コラーゲンの変性温度は、上記数値範囲内の変性温度を有するコラーゲンを選択することにより調整してもよい。
本実施形態のコラーゲン水溶液において、コラーゲンの濃度はコラーゲン水溶液の全量を基準として、0.50質量%〜2.5質量%であり、0.70質量%〜2.0質量%であると好ましい。コラーゲンの濃度が0.50質量%以上であることにより、線維化によって得られるゲルの弾性率(硬さ)を更に高めることができる。一方、コラーゲンの濃度が2.5質量%以下であることにより、コラーゲン水溶液の室温での流動性をより良好にすることができ、生体内へのコラーゲン水溶液の注入、容器への充填や容器からの押し出しなどを更に容易にすることが可能となる。
本実施形態のコラーゲン水溶液は、後述の好適な範囲のイオン強度及びpHを得る観点から、無機塩を含むと好ましい。無機塩としては特に限定されず、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素ニナトリウムの総称)、及び、リン酸水素カリウム(リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウムの総称)が挙げられる。無機塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの無機塩のうち、コラーゲン水溶液のpHを後述の好適な範囲に容易に調整でき、かつ、生体に無害である観点から、コラーゲン水溶液がリン酸水素ナトリウム及び塩化ナトリウム(例えば、食塩)を含むことが好ましい。本実施形態の溶媒は、この溶液をリン酸緩衝液として用いる。
また、コラーゲン水溶液は、その溶媒として、細胞や生体組織への障害を最小化する、及びコラーゲンの線維化を生じさせるという2つの効果を発揮するため、中性の等張液を含んでもよい。中性の等張液としては、細胞の洗浄操作に用いられ、コラーゲンを活発に線維化させることができるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってもよい。
コラーゲン水溶液に含まれる無機塩のイオン強度は、0.60〜1.2であると好ましく、0.62〜1.0であるとより好ましい。なお、本実施形態における無機塩のイオン強度は、コラーゲン水溶液が複数の無機塩を含む場合、それら複数の無機塩全体でのイオン強度を指す。コラーゲンの線維化の温度に対する応答性は、イオン強度が高くなると増大するが、無機塩のイオン強度が0.60以上であることにより、その応答性が更に向上する。また、無機塩のイオン強度が1.2以下であることにより、体温付近の温度(例えば37℃)に到達する前での線維化が抑制され、室温でのコラーゲン水溶液の安定性、すなわち線維化せずに溶液の状態を維持すること(長期保存性)をより向上させることができる。なお、本明細書において、無機塩のイオン強度Iは、下記式で表されるように、コラーゲン水溶液に含まれる全ての無機塩由来のイオン種について、それぞれのイオンのモル濃度miと電荷ziの二乗との積を加算し、さらにそれに1/2を乗じて算出されるものである。
Figure 0006472635
本実施形態のコラーゲン水溶液のpH(23℃におけるpH。本明細書において同様。)は、6.0〜9.0であると好ましく、6.5〜8.0であるとより好ましい。コラーゲンの線維化は中性付近で活発に生じることが知られている。pHが6.0以上であることにより、コラーゲンの線維化をより促進することができる。また、pHが9.0以下であることにより、コラーゲンの線維化をより促進することができる。pHの調整は、常法により可能であり、例えば、コラーゲン水溶液に含まれる無機塩の濃度、好ましくは塩化ナトリウム及びリン酸水素ナトリウムの濃度を制御したり、塩酸や水酸化ナトリウムなどの強酸、及び/又は強アルカリを添加したりして、pHを調整することが可能である。なお、本明細書において、pHはpHメータ(例えば、HORIBA社製、商品名「NAVIh F−71」)により測定される。
コラーゲン水溶液が塩化ナトリウム(食塩)を含む場合のその塩化ナトリウムの濃度は、コラーゲン水溶液のpH及びイオン強度が所望の範囲になる濃度であれば特に限定されない。例えば、塩化ナトリウムの濃度が、コラーゲン水溶液の全量に対して、290mM〜500mMであると好ましく、300mM〜450mMであるとより好ましい。塩化ナトリウムの濃度をこのような範囲にすることにより、コラーゲン水溶液のpHを6.0〜9.0の範囲内にしつつ、無機塩のイオン強度を0.60〜1.2の範囲内にすることがより容易となる。
また、コラーゲン水溶液がリン酸水素ナトリウムを含む場合のそのリン酸水素ナトリウムの濃度も、コラーゲン水溶液のpH及びイオン強度が所望の範囲になる濃度であれば特に限定されない。例えば、リン酸水素ナトリウムの濃度が、コラーゲン水溶液の全量に対して、105mM〜180mMであると好ましく、110mM〜160mMであるとより好ましい。リン酸水素ナトリウムの濃度をこのような範囲にすることにより、コラーゲン水溶液のpHを6.0〜9.0の範囲内にしつつ、無機塩のイオン強度を0.60〜1.2の範囲内にすることがより容易となる。
さらに、コラーゲンゲルの強度を早期に高め、より短時間でコラーゲンゲルを回収する観点から、コラーゲン水溶液が架橋剤を含むと好ましい。架橋剤は特に限定されず、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできるが、架橋剤そのものの細胞毒性が低いとされている植物由来のゲニピン、あるいは架橋剤がコラーゲン分子間に挿入されないため水洗で除去される1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(以下、「EDC」と表記する。)とその架橋助剤であるN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などが好ましく用いられる。ゲニピンはゲニポシドのアグリコンであり、例えば、ゲニポシドの酸化、還元及び加水分解により得られ、あるいは、ゲニポシドの酵素加水分解によって得られる。ゲニポシドは、アカネ科のクチナシに含まれるイリドイド配糖体であり、クチナシから抽出して得られる。ゲニピンは、C11145の分子式で表され、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。また、ゲニピンは、本発明による目的達成を阻害しない程度に、その架橋効果を確保する範囲で、誘導体化されていてもよい。EDCは水溶性カルボジイミドの一種であり、水溶性カルボジイミドであればその種類を問わず架橋剤として用いることができるが、その中でも、安価かつ安全性が高いEDCが特に好ましく用いられる。水溶性カルボジイミドは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、EDCは単独で用いてもよいし、NHSと混合して用いてもよい。EDCの架橋活性はNHSの混合によって向上することが知られている。
また、本実施形態のコラーゲン水溶液には、従来のコラーゲン水溶液に用いられる各種の溶媒及び添加剤が更に含まれてもよい。そのような溶媒及び添加剤としては、希塩酸、クエン酸、酢酸などの酸、HEPESやトリスなどの緩衝剤が挙げられる。
上記添加剤及び溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、コラーゲン水溶液における上記添加剤及び溶媒の含有割合は、本発明の目的達成を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
本実施形態のコラーゲン水溶液は、その水溶液を室温から加温して、37℃に到達してから60秒経過した際に得られるゲルの貯蔵弾性率を、200Pa以上にすることができ、より具体的には、200Pa〜3000Paにすることができる。このように生体温度付近での速やかなゲル化(線維化)が可能になるので、本実施形態のコラーゲン水溶液は、「その場調製」が求められる用途に好適に用いることができる。特に、本実施形態のコラーゲン水溶液を生体に接触させ、その生体温度(体温)でゲル化を開始させる医療用途に用いることが有利である。より具体的には、本実施形態のコラーゲン水溶液は、生体内注入用コラーゲン水溶液として用いることが好ましい。本実施形態のコラーゲン水溶液は、生体内に注入すると、その生体温度で速やかにゲル化が進行する。この性質により、コラーゲンゲルを生体内で目的の形状に成型できる他、薬剤や細胞の拡散を抑制することが可能になる。なお、ゲルの貯蔵弾性率は、下記実施例に記載の方法に準拠して測定される。
本実施形態のコラーゲン水溶液を、生体内注入用コラーゲン水溶液として用いる場合、コラーゲン水溶液は更に薬剤を含んでもよい。そのような薬剤としては、従来のインジェクタブルゲルに含有させられるものであれば特に限定されず、例えば、生理活性を有するペプチド類、蛋白類、その他の抗生物質、抗腫瘍剤、ホルモン剤などが挙げられる。薬剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、薬剤の含有割合は、その薬剤の効能を発揮しつつ、本発明の目的達成を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
本実施形態の生体内注入用コラーゲン水溶液は、薬剤を含む場合に薬剤徐放システム(ドラッグデリバリーシステム)として有用である。この場合、生体内においてコラーゲン水溶液が速やかにゲル化するため、薬剤を良好に保持することにより、薬剤の急激な放出を抑制することができる。その後、ゲル内の水が体液中に拡散すること、あるいはゲルが生体内での加水分解により徐々に崩壊するのに伴い、薬剤を徐々に放出することができる。
本実施形態の生体内注入用コラーゲン水溶液は、ES細胞、iPS細胞などの幹細胞や、これら幹細胞から分化誘導した細胞、あるいはプライマリー細胞や株化細胞を更に含んでもよい。細胞を含む本実施形態のコラーゲン水溶液を生体内の組織欠損部に注入すると、コラーゲン水溶液は欠損部において速やかにゲル化するため、細胞を良好に保持でき、細胞の欠損部周囲への漏洩を抑制することができる。その後、細胞の増殖と共に、ゲルの加水分解に伴い周囲から欠損部に細胞や組織が徐々に侵入することにより、組織を再生することが可能となる。
本実施形態のゲルは、上記コラーゲン水溶液を生体に接触させ、その生体温度でコラーゲン水溶液のゲル化を開始し、更にその生体温度でゲル化進行させることで、速やかに得られるものである。かかるゲルは、コラーゲン水溶液の状態での生体内での拡散が抑制されるので、容易に所望の形状で生成することができる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜6)
〔コラーゲン原液の準備〕
濃度1.0質量%のブタ皮膚製コラーゲン溶液(テロペプチド除去型コラーゲン、日本ハム株式会社製、コラーゲンの変性温度:40℃)をコラーゲン原液として準備した。エバポレーター(水溶温度29℃)を用いてコラーゲン原液を濃縮し、濃度2.4%のコラーゲン溶液を得た。最終的に得られるコラーゲン水溶液のコラーゲン濃度が表1に示す数値になるように、適宜希塩酸(pH=3)をその溶液に添加した。
〔コラーゲン水溶液の調製〕
上記のようにして準備したコラーゲン溶液を、15mL遠心チューブに6gずつ入れ、庫内温度を4℃に調整した冷蔵庫内に静置した。上記のようにして冷蔵庫内に静置したコラーゲン溶液に、pH及びイオン強度が表1に示す数値になるよう予め調製した所定濃度(表1参照。)のリン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝液を添加し、手による転倒撹拌とボルテックスミキサーによる撹拌とを繰り返し、およそ20秒間で撹拌を終えて、コラーゲン水溶液を得た。コラーゲン水溶液の23℃におけるpHを、pHメータ(HORIBA社製、型式F−51)により測定した結果を表1に示す。また、コラーゲン水溶液のイオン強度の算出値を表1に示す。なお、本実施例では、コラーゲン水溶液のpHが7.0である場合のみの結果を示すが、コラーゲンの線維化のpH依存性は、従来知られているものと同程度であった。
〔コラーゲン水溶液の動的粘弾性測定〕
上記のようにして得たコラーゲン水溶液について、動的粘弾性測定を行った。動的粘弾性測定装置として、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の商品名「HAAKE MARS III」を用いて、コラーゲン水溶液の動的粘弾性測定(微小振動モード)を行った。ジオメトリ及び測定プログラムは実験目的に応じて使い分けた。以下に測定条件を示す。
<37℃での貯蔵弾性率変化>
実施例1〜5及び比較例1〜6のコラーゲン水溶液の調製後、4分30秒以内にサンプルをセットし、まず120秒経過の間、23℃にて保持した後、30秒間に37度まで昇温し、60秒間その温度で一定に保持したときの貯蔵弾性率を測定した。測定条件は下記のとおりであった。
ジオメトリ:パラレルセンサー(内径60mm)
測定プロファイル:CD(Controlled Deformation)モードによるオシレーション測定において、温度を変化させた(せん断歪み=0.005、温度=23→37℃、周波数=1Hz、プレート間のギャップ=1mm)。測定開始後、貯蔵弾性率G'の時間変化を追跡した。
37℃に到達してから60秒後までの貯蔵弾性率の経時変化を図1及び2に示し、60秒後における貯蔵弾性率の結果を表1に示す。
<23℃での貯蔵弾性率変化>
実施例1〜3及び比較例1のコラーゲン水溶液の調製後、4分30秒以内にサンプルをセットし、23℃にて30分間保持した後、測定を開始した。測定条件は下記のとおりであった。
ジオメトリ:パラレルセンサー(内径60mm)
測定プロファイル:CD(Controlled Deformation)モードによるオシレーション測定(せん断歪み=0.005、温度=23℃、周波数=1Hz、プレート間のギャップ=1mm)とした。測定開始後、貯蔵弾性率G'の時間変化を追跡した。
結果を図3に示す。
Figure 0006472635
図1及び2から明らかなように、イオン強度が0.60〜1.2の範囲にある実施例においては、37℃に保持してから速やかに貯蔵弾性率の貯蔵弾性率が上昇し、ゲル化(線維化)が進行していることが分かった。それに対して、イオン強度が0.60未満である比較例では、37℃に保持してからの貯蔵弾性率の上昇速度は明らかに遅かった。その結果、表1からも明らかなように、37℃に到達して60秒後の貯蔵弾性率は、実施例の方が比較例よりも高くなることが分かった。
また、図3から明らかなように、室温(23℃)でのイオン強度が0.87である実施例1では、それよりもイオン強度が低い例と比較して、室温で保持した際に多少の貯蔵弾性率の上昇が認められたが、その上昇速度は、37℃におけるものと比較すると遙かに小さいものであった。
本発明のコラーゲン水溶液は、薬剤徐放システム、幹細胞などを用いた再生医療、美容、医療用インプラント材料、組織工学用足場材料、細胞包埋培養などの分野において、特に産業上の利用可能性がある。

Claims (3)

  1. コラーゲンと水とを含むコラーゲン水溶液であって、23℃におけるpHが6.0〜9.0であり、ナトリウム塩のイオン強度が0.60〜1.2であり、かつ、コラーゲン濃度が0.50%〜2.5%である、コラーゲン水溶液。
  2. リン酸水素ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む、請求項1記載のコラーゲン水溶液。
  3. 前記コラーゲンは、哺乳類由来テロペプチド除去型コラーゲンを含む、請求項1又は2に記載のコラーゲン水溶液。
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