JP6471769B2 - 真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品 - Google Patents

真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品

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Description

本開示は、真空断熱材用外包材等に関するものである。
近年、地球温暖化防止のため温室効果ガスの削減が推進されており、電気製品や車両、設備機器ならびに建物等の省エネルギー化が求められている。中でも、消費電力量低減の観点から、電気製品等への真空断熱材の採用が進められている。電気製品等のように本体内部に発熱部を有する機器や、外部からの熱を利用した保温機能を有する機器においては、真空断熱材を備えることにより機器全体としての断熱性能を向上させることが可能となる。このため、真空断熱材の使用により、電気製品等の機器の消費エネルギー削減の取り組みがなされている。
真空断熱材とは、外包材により形成された袋体内に芯材を配置し、上記芯材が配置された袋体の内部を減圧して真空状態とし、上記袋体の端部を熱溶着して密封することで形成されたものである。上記袋体内部を真空状態とすることにより、気体の対流が遮断されるため、真空断熱材は高い断熱性能を発揮することができる。また、真空断熱材の断熱性能を長期間維持するためには、上記外包材を用いて形成された袋体の内部を長期にわたり高い真空状態に保持する必要がある。そのため、真空断熱材用外包材には、外部からガスが透過することを防止するためのガスバリア性、芯材を覆って密着封止するための熱接着性等の種々の機能が要求される。これらの機能を果たすための、真空断熱材用外包材の一般的な態様としては、熱溶着可能なフィルム、ガスバリアフィルムおよび保護フィルムが積層されてなるものであり、各フィルム同士は接着剤等を介して貼り合されている(特許文献1および2参照)態様を挙げることができる。
上述したような真空断熱材用外包材を用いて真空断熱材を形成し、高い初期断熱性能を有する真空断熱材が得られた場合でも、当該真空断熱材が高温高湿な環境に曝されると、上記ガスバリアフィルム等が劣化され、断熱性能が経時的に低下するという問題がある。このような問題に対処するため、特許文献3においては、M−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する層を有する真空断熱材用外包材を用いることにより、高温高湿な環境で使用されても、優れた信頼性を有する真空断熱材が開示されている。
特開2003−262296号公報 特開2013−103343号公報 特開2011−226644号公報
特許文献3に開示されているM−O−P結合を有する層は、従来の真空断熱材用外包材に用いられてきた無機蒸着層を有するハイバリアフィルム等と比べると、高温高湿な環境に曝された場合の劣化が少ないものである。しかしながら上記M−O−P結合を有する層は、上記無機蒸着層を有するハイバリアフィルム等と比較した場合に、初期のガスバリア性がそれほど高くないため、時間の経過に伴って真空断熱材内部の真空度が徐々に低下するという問題は、依然として解決されていない。
一方、無機蒸着層は初期のガスバリア性は高いが、一般に高温高湿な環境に曝された場合のガスバリア性の劣化が激しい。そのため、真空断熱材用外包材に無機蒸着層を有するハイバリアフィルムを用いた場合でも、時間の経過に伴って真空断熱材内部の真空度は低下するため、長期間断熱性能を維持することは困難である。
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供することを主目的とする。
本開示の一態様においては、少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、上記第1フィルムは、第1樹脂基材と、上記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、上記第2フィルムは、第2樹脂基材と、上記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、上記第3フィルムは、第3樹脂基材と、上記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とする真空断熱材用外包材を提供する。
本開示の上記態様によれば、初期の水蒸気バリア性が、無機蒸着層を有するハイバリアフィルムほどは高くない上記第1フィルムを透過した水蒸気は、上記第2フィルムにより遮断される。これにより、高温高湿な環境においても、上記第2フィルムの内側に位置する第3フィルムへの水蒸気等による影響が大幅に抑制されるため、上記第3フィルムの高いガスバリア性を長期にわたり、初期値と同様に維持することができる。一方、上記第2フィルムは、上記第1フィルムを透過した水蒸気に曝されることにはなるが、高温高湿な環境においてもガスバリア性の劣化が少ない上記第1フィルムを透過する水蒸気の量は、長期にわたり抑制され、上記第2フィルムが受ける影響は限定的であるため、上記第2フィルムは、上記第3フィルム側に透過する水蒸気等を持続的に遮断することができる。したがって、上記外包材を、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。
本開示の上記態様においては、上記第3樹脂基材が、親水基含有樹脂を含み、上記第3樹脂基材が、上記第3フィルムの無機層の上記熱溶着可能なフィルム側に配置されていることが好ましい。上記第3フィルムの無機層により、親水基含有樹脂を含む第3樹脂基材を水蒸気から保護することができ、親水基含有樹脂の酸素に対するバリア性を高く維持することができるからである。
本開示の別の態様においては、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、上記第1フィルムは、第1樹脂基材と、上記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、上記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、上記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、上記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材用外包材を提供する。
本開示の上記態様によれば、上記第1フィルムにより上記オーバーコート層付きフィルムが保護されるため、上記オーバーコート層付きフィルムの劣化が抑制され、高温高湿な環境においても高いガスバリア性を維持することができる外包材とすることができる。したがって、上記外包材を、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。
本開示は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とする真空断熱材を提供する。本開示によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材とすることができる。
本開示は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とする真空断熱材付き物品を提供する。
本開示によれば、物品に備わる上記真空断熱材が、上述した外包材を用いた真空断熱材であり、高温高湿な環境下にて長期間断熱性能を維持することができるため、良好な断熱性能を有する物品とすることができる。
具体的には、本開示によれば、上記真空断熱材が上述の真空断熱材であり、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができるため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が高温となることを防止し、一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた高い省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
本開示においては、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供できるといった作用効果を奏する。
本開示の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。 本開示の真空断熱材の一例を示す概略断面図である。 本開示における金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルの一例を示す図面である。 本開示の真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。
以下、本開示の真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品について、詳細に説明する。
なお、本明細書において、「真空断熱材用外包材」を「外包材」と略する場合がある。
また、「ガスバリア性」と記載した場合、特に断りが無い場合は、酸素等の気体および/または水蒸気に対するバリア性を有する特徴を意味するものとする。
さらに、外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内側となる熱溶着可能なフィルム側を「外包材の内側」、真空断熱材の外側となる、熱溶着可能なフィルムから遠い方側を「外包材の外側」と記載する場合がある。
A.真空断熱材用外包材
まず、本開示の真空断熱材用外包材について説明する。
本開示の真空断熱材用外包材は、その層構成により、2つの態様に大別することができる。以下、それぞれの態様について説明する。
(I)第1態様
本態様の外包材は、少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、上記第1フィルムは、第1樹脂基材と、上記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、上記第2フィルムは、第2樹脂基材と、上記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、上記第3フィルムは、第3樹脂基材と、上記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とするものである。
以下の説明において、上記第1フィルムを金属酸化物リン酸層付きフィルムと、上記第2フィルムを外側無機層付きフィルムと、上記第3フィルムを内側無機層付きフィルムと称する場合がある。
本態様の外包材について、図を参照して説明する。図1は、本態様の外包材の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本態様の外包材10Aは、金属酸化物リン酸層付きフィルム1と、外側無機層付きフィルム2と、内側無機層付きフィルム3と、熱溶着可能なフィルム4とをこの順で有する。上記金属酸化物リン酸層付きフィルム1は、第1樹脂基材5と、上記第1樹脂基材5の少なくとも一方の面側に配置された金属酸化物リン酸層6とを有し、上記外側無機層付きフィルム2は、第2樹脂基材7と、上記第2樹脂基材7の少なくとも一方の面側に配置された無機層8aとを有し、上記内側無機層付きフィルム3は、第3樹脂基材9と、上記第3樹脂基材9の少なくとも一方の面側に配置された無機層8bとを有する。
また、図2は、本開示の外包材を用いた真空断熱材の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、上記真空断熱材20は、芯材11と、上記芯材11を封入する外包材10とを有するものである。上記真空断熱材20は、2枚の上記外包材10を、それぞれの熱溶着可能なフィルムが向き合うように対向させ、その間に上記芯材11を配置し、その後、上記芯材11の外周の一方を開口部とし、残り三方の上記外包材10同士の端部12を熱溶着することで、2枚の上記外包材10により形成され、内部に上記芯材11が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材11が上記外包材10により封入されているものである。
上記外包材を用いて形成された真空断熱材が高温高湿な環境に配置された場合、外包材の外側のフィルムは、高温の水蒸気に曝されることとなる。そのため、初期のガスバリア性が高いフィルムを多数積層した外包材であっても、積層された各フィルムが熱や水蒸気により劣化されると、外包材全体としてのガスバリア性を維持することができなくなるという問題がある。
本態様においては、外包材の外側のフィルムを、内側のフィルムが劣化されることを防止するために用いるという発想に基づいて外包材の層構成を決定することにより、上記問題を解決するものである。すなわち、本態様においては、高温高湿な環境に曝された際の劣化が少ないという特徴を有する金属酸化物リン酸層付きフィルムを、外包材の外側に用いることにより、内側のフィルムの劣化を防止し、外包材全体として、高温高湿な環境におけるガスバリア性を高く維持するものである。
しかしながら、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムの初期の水蒸気に対するバリア性はそれほど高くなく、高温高湿な環境において初期の水蒸気に対するバリア性が維持されている場合であっても、ある程度の水蒸気が上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過し、内側のフィルムに到達するため、内側のフィルムの劣化を完全に防止することは困難である。そこで、本態様においては、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムの内側に外側無機層付きフィルムを配置し、当該外側無機層付きフィルムの内側に内側無機層付きフィルムを配置することにより、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過した水蒸気を上記外側無機層付きフィルムで遮断するものである。これにより、上記内側無機層付きフィルムの劣化を長期にわたり防止することができ、高温高湿な環境においても、上記内側無機層付きフィルムに初期値と同様のガスバリア性を発揮させることができる。一方、上記外側無機層付きフィルムは、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過した水蒸気に曝されることにはなるが、高温高湿な環境においてもガスバリア性の劣化が少ない上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過する水蒸気の量は、長期にわたり抑制され、上記外側無機層付きフィルムが受ける影響は限定的であるため、上記外側無機層付きフィルムは、上記内側無機層付きフィルム側に透過する水蒸気等を持続的に遮断することができる。
このように、本態様によれば、異なる特性を有する上記各フィルムを特定の順に配置して外包材を構成することにより、高温高湿な環境においても高いガスバリア性を維持することができる外包材とすることができる。したがって、上記外包材を、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。
本態様の外包材は、金属酸化物リン酸層付きフィルムと、外側無機層付きフィルムと、内側無機層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有するものである。以下、本態様の外包材の各構成について説明する。
1.金属酸化物リン酸層付きフィルム(第1フィルム)
本態様における金属酸化物リン酸層付きフィルムは、第1樹脂基材と、金属酸化物リン酸層とを有するものである。
(1)金属酸化物リン酸層
金属酸化物リン酸層は、第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する層である。外包材が上記金属酸化物リン酸層を有することにより、当該金属酸化物リン酸層よりも内側に位置する各フィルムへ到達する水蒸気の量を大幅に抑制することができ、当該金属酸化物リン酸層よりも内側に位置する各フィルムが水蒸気により劣化されることを抑制することができる。
上記金属酸化物リン酸層は、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する層であれば特に限定されるものではなく、例えば、金属酸化物およびリン化合物の反応生成物を含む層を用いることができる。以下、このような金属酸化物およびリン化合物の反応生成物について、説明する。
(a)金属酸化物
金属酸化物を構成する金属原子(M)としては、金属酸化物を製造するための取り扱いの容易さや得られる複合構造体のガスバリア性がより優れることから、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルミニウムであることが特に好ましい。金属酸化物を構成する金属原子(M)は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、珪素は半金属に分類される場合があるが、本明細書では珪素を金属に含めるものとする。
金属酸化物は、得られる金属酸化物の形状や大きさの制御性や製造効率などを考慮すると、液相合成法により製造されたものが好ましい。液相合成法においては、加水分解可能な特性基が金属原子(M)に結合した化合物(L)を原料として用いてこれを加水分解縮合させることで、化合物(L)の加水分解縮合物として金属酸化物を合成することができる。また化合物(L)の加水分解縮合物を液相合成法で製造するにあたっては、原料として化合物(L)そのものを用いる方法以外にも、化合物(L)が部分的に加水分解してなる化合物(L)の部分加水分解物、化合物(L)が完全に加水分解してなる化合物(L)の完全加水分解物、化合物(L)が部分的に加水分解縮合してなる化合物(L)の部分加水分解縮合物、化合物(L)の完全加水分解物の一部が縮合したもの、あるいはこれらのうちの2種以上の混合物を原料として用いてこれを縮合または加水分解縮合させることによっても金属酸化物を製造することができる。このようにして得られる金属酸化物も、本態様においては「化合物(L)の加水分解縮合物」ということとする。上記の加水分解可能な特性基(官能基)の種類に特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、アルコキシ基、アシロキシ基、ジアシルメチル基、ニトロ基等が挙げられるが、反応の制御性に優れることから、ハロゲン原子またはアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
化合物(L)は、反応の制御が容易で、得られる金属酸化物リン酸層のガスバリア性が優れることから、以下の式(I)で示される少なくとも1種の化合物(L)を含むことが好ましい。
(n−m) (I)
[式(I)中、Mは、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれる。Xは、F、Cl、Br、I、RO−、RC(=O)O−、(RC(=O))CH−およびNOからなる群より選ばれる。R、R、RおよびRはそれぞれ、アルキル基、アラルキル基、アリール基およびアルケニル基からなる群より選ばれる。式(I)において、複数のXが存在する場合には、それらのXは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のRが存在する場合には、それらのRは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。nはMの原子価に等しい。mは1以上、n以下の整数を表す。]
、R、RおよびRが表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。R、R、RおよびRが表すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基等が挙げられる。R、R、RおよびRが表すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。R、R、RおよびRが表すアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。Rは、例えば、炭素数が1以上、4以下のアルキル基であることが好ましい。Xは、F、Cl、Br、I、RO−であることが好ましい。化合物(L)の好ましい一例では、Xがハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または炭素数が1以上、4以下のアルコキシ基(RO−)であり、mはn(Mの原子価)と等しい。金属酸化物を製造するための取り扱いの容易さや得られる複合構造体のガスバリア性がより優れることから、MはAlであることが好ましい。
化合物(L)としては、アルミニウムトリイソプロポキシドおよびアルミニウムトリs−ブトキシドから選ばれる少なくとも1つの化合物が好ましい。化合物(L)は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。化合物(L)以外の化合物が化合物(L)に占める割合は、例えば、5モル%以下や0モル%である。一例では、化合物(L)は、化合物(L)のみからなる。また、化合物(L)以外の化合物(L)としては、例えばマグネシウム、カルシウム、亜鉛、珪素等の金属原子に、上述の加水分解可能な特性基が結合した化合物などが挙げられる。
化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)が有する加水分解可能な特性基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属原子(M)が酸素原子(O)を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物が形成される。なお、このようにして形成された金属酸化物の表面には、通常、水酸基が存在する。
金属酸化物リン酸層は、金属酸化物の粒子同士が、後述するリン化合物に由来するリン原子を介して結合された特定の構造を有する。このような反応生成物や構造は金属酸化物とリン化合物とを混合し反応させることにより形成することができる。リン化合物との混合に供される(混合される直前の)金属酸化物は、金属酸化物そのものであってもよいし、金属酸化物を含む組成物の形態であってもよい。好ましい一例では、金属酸化物を溶媒に溶解または分散することによって得られた液体(溶液または分散液)の形態で、金属酸化物がリン化合物と混合される。
(b)リン化合物
リン化合物は、金属酸化物と反応可能な部位を含有し、典型的には、そのような部位を複数含有する。好ましい一例では、リン化合物は、そのような部位(原子団または官能基)を2個以上、20個以下含有する。そのような部位の例には、金属酸化物の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)と反応可能な部位が含まれ、例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が含まれる。それらのハロゲン原子や酸素原子は、金属酸化物の表面に存在する水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こすことができる。金属酸化物の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)は、通常、金属酸化物を構成する金属原子(M)に結合している。
リン化合物としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。ポリリン酸の具体例としては、ピロリン酸、三リン酸、4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸などが挙げられる。上記の誘導体の例としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸の、塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物(塩化物等)、脱水物(五酸化ニリン等)などが挙げられる。また、ホスホン酸の誘導体の例には、ホスホン酸(H−P(=O)(OH))のリン原子に直接結合した水素原子が種々の官能基を有していてもよいアルキル基に置換されている化合物(例えば、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)等)や、その塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物および脱水物も含まれる。さらに、リン酸化でんぷんなど、リン原子を有する有機高分子も、上記リン化合物として使用することができる。これらのリン化合物は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのリン化合物の中でも、コーティング液を用いて金属酸化物リン酸層を形成する場合におけるコーティング液の安定性が優れること、得られる金属酸化物リン酸層のガスバリア性がより優れることから、リン酸を単独で使用するか、または、リン酸とそれ以外のリン化合物とを併用することが好ましい。
本態様においては、リン化合物を溶媒に溶解することによって得られる溶液の形態で、リン化合物が上述した金属酸化物と混合されることが好ましい。その際の溶媒は任意のものが使用できるが、水または水を含む混合溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。また、金属酸化物との混合に供されるリン化合物またはリン化合物を含む組成物では、金属原子の含有率が低減されていることが、ガスバリア性により優れる金属酸化物リン酸層が得られることから好ましい。金属酸化物との混合に供されるリン化合物またはリン化合物を含む組成物に含まれる金属原子の含有率は、当該リン化合物またはリン化合物を含む組成物に含まれる全てのリン原子のモル数を基準(100モル%)として、5モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましく、0モル%であってもよい。
(c)反応生成物
金属酸化物リン酸層において、金属酸化物を構成する金属原子のモル数(N)と、リン化合物に由来するリン原子のモル数(N)との比率については、0.8≦モル数(N)/モル数(N)≦4.5の関係を満たすことが好ましく、1.1≦モル数(N)/モル数(N)≦3.0の関係を満たすことがさらに好ましい。モル数(N)/モル数(N)の値が4.5を超えると、金属酸化物がリン化合物に対して過剰となり、金属酸化物の粒子同士の結合が不充分となり、また、金属酸化物の表面に存在する水酸基の量が多くなるため、ガスバリア性が低下する傾向がある。一方、モル数(N)/モル数(N)の値が0.8未満であると、リン化合物が金属酸化物に対して過剰となり、金属酸化物との結合に関与しない余剰なリン化合物が多くなり、また、リン化合物由来の水酸基の量が多くなりやすく、やはりガスバリア性が低下する傾向がある。
また、金属酸化物リン酸層は、特定の重合体(C)をさらに含んでもよい。上記重合体(C)は、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(f)を有する重合体(C)である。なお、本態様において、リン化合物としての要件を満たす重合体であって、官能基(f)を含む重合体は、上記重合体(C)には含めずにリン化合物として扱う。
重合体(C)としては、官能基(f)を有する構成単位を含む重合体を用いることができる。このような構成単位の具体例としては、ビニルアルコール単位、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、マレイン酸単位、イタコン酸単位、無水マレイン酸単位、無水フタル酸単位などの、官能基(f)を1個以上有する構成単位が挙げられる。重合体(C)は、官能基(f)を有する構成単位を1種類のみ含んでいてもよいし、官能基(f)を有する構成単位を2種類以上含んでいてもよい。より優れたガスバリア性を有する金属酸化物リン酸層を得るために、重合体(C)の全構成単位に占める、官能基(f)を有する構成単位の割合は、40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、100モル%であってもよい。
より優れたガスバリア性を有する複合構造体を得るために、重合体(C)は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸、およびポリメタクリル酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。得られる金属酸化物リン酸層のガスバリア性や力学的物性(落下衝撃強さ等)の観点から、重合体(C)の数平均分子量は、8,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。重合体(C)の数平均分子量の上限は特に限定されず、例えば、1,500,000以下である。また、金属酸化物リン酸層における重合体(C)の含有率は、金属酸化物リン酸層の質量を基準(100質量%)として、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であってもよい。重合体(C)は、金属酸化物リン酸層中の他の成分と反応していてもよいし、反応していなくてもよい。なお、本態様では、重合体(C)が他の成分と反応している場合も、重合体(C)と表現する。例えば、重合体(C)が、金属酸化物、および/または、リン化合物に由来するリン原子と結合している場合も、重合体(C)と表現する。この場合、上記の重合体(C)の含有率は、金属酸化物および/またはリン原子と結合する前の重合体(C)の質量を金属酸化物リン酸層の質量で除して算出する。
金属酸化物リン酸層は、少なくとも金属酸化物とリン化合物とが反応してなる反応生成物(ただし、重合体(C)部分を有するものを含む)のみから構成されていてもよいし、当該反応生成物と、反応していない重合体(C)のみから構成されていてもよいが、その他の成分をさらに含んでいてもよい。上記の他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩等の無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩;アセチルアセトナート金属錯体(アルミニウムアセチルアセトナート等)、シクロペンタジエニル金属錯体(チタノセン等)、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;重合体(C)以外の高分子化合物;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤などが挙げられる。金属酸化物リン酸層における上記の他の成分の含有率は、5質量%以下であることが好ましく、0質量%(他の成分を含まない)であってもよい。
(d)金属酸化物リン酸層
金属酸化物リン酸層の厚み(外包材が2層以上の金属酸化物リン酸層を有する場合には各層の厚みの合計)は、1.0μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であってもよい。外包材の加工時における寸法変化を低減し、柔軟性を向上させることができるからである。また、上記厚みの下限は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。
上述したような金属酸化物リン酸層におけるM−O−P結合の有無は、赤外線吸収スペクトルにおける、1080cm−1以上、1130cm−1以下の範囲内の赤外線吸収ピークの有無により判別することができる。上記金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルの測定方法は特に限定されるものではなく、例えば、ATR法(全反射測定法)による測定、測定対象の組成物をかきとり、その赤外線吸収スペクトルをKBr法で測定すること、測定対象から採取したサンプルを顕微赤外分光法により測定することなどにより、赤外線吸収スペクトルを得ることができる。なお、基材上に配置された金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルを測定する場合、上記基材に由来する吸収が観測され、金属酸化物リン酸層の正確な吸収スペクトルが得られないことがある。その場合は、別途測定した上記基材の赤外線吸収スペクトルを差し引くことで、金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルを得ることができる。
800cm−1以上、1400cm−1以下の範囲内における金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルにおいては、金属酸化物を構成する結合、リン化合物を構成する結合、並びに、金属酸化物とリン化合物とがそれ自身でおよび/または互いに反応して形成された結合に由来する全ての赤外線吸収ピークの中で、上記金属酸化物を構成する金属原子(M)とリン化合物に由来するリン原子(P)とが、酸素原子(O)を介して結合したM−O−P結合に由来する赤外線吸収ピークが最大となる、すなわち、上記最大となる赤外線吸収ピークの波数(n)が1080cm−1以上、1130cm−1以下の範囲内にあることが好ましい。ガスバリア性に優れた金属酸化物リン酸層とすることができるからである。
また、金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルにおいて、上記最大吸収波数(n)に極大を有する吸収ピークの半値幅は、得られる金属酸化物リン酸層のガスバリア性の観点から200cm−1以下であることが好ましく、100cm−1以下であることがより好ましく、50cm−1以下であることが特に好ましい。
図3に、本態様において用いることができる金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルの一例を示す。上記赤外線吸収スペクトルは、測定装置としてフーリエ変換型赤外分光光度計(Varian社製、FTS7000)を用い、全反射測定法(ATR法)により、800cm−1以上、1400cm−1以下の範囲内を測定したものである。
上記金属酸化物リン酸層の形成方法等、金属酸化物リン酸層のその他の点については、特開2011−226644号公報における記載と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
(2)第1樹脂基材
樹脂基材は、上記金属酸化物リン酸層を支持可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、樹脂フィルムが好適に用いられる。上記第1樹脂基材が樹脂フィルムである場合、上記樹脂フィルムは未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されたものであってもよい。上記第1樹脂基材は透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。
第1樹脂基材に用いられる樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物、各種のナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。本態様においては、上記の樹脂の中でも、PET、ポリプロピレン等が好適に用いられ、強靭性、耐油性、耐薬品性、入手容易性等の各観点から、PETがより好適に用いられる。
なお、ポリビニルアルコール系樹脂等の親水基含有樹脂は、酸素に対するバリア性に優れた樹脂であるが、親水基含有樹脂の酸素に対するバリア性は、水蒸気に曝されることにより劣化されやすいという性質がある。上記第1樹脂基材を有する金属酸化物リン酸層付きフィルムは、外包材において外側、すなわち、水蒸気に曝されやすい位置に配置されるものであるため、上記第1樹脂基材には親水基含有樹脂が用いられないことが好ましい。
上記第1樹脂基材には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。また、上記第1樹脂基材は、表面処理が施されていてもよい。金属酸化物リン酸層との密着性を向上させることができるからである。上記表面処理としては、例えば、特開2014−180837号公報に開示される酸化処理、凹凸化処理(粗面化処理)、易接着コート処理等を挙げることができる。
第1樹脂基材の厚みは、特に限定されないが、例えば6μm以上、200μm以下の範囲内、より好ましくは9μm以上、100μm以下の範囲内である。
上記第1樹脂基材は、押し込み弾性率が1.5GPa以上であることが好ましく、中でも2.0GPa以上であることが好ましく、特に2.5GPa以上であることが好ましい。また、上記押し込み弾性率の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であることが好ましく、5.0GPa以下であることが好ましい。第1樹脂基材の押し込み弾性率を上記の範囲内とすることで、第1樹脂基材が外的な応力に対して伸長しにくくなるため、樹脂基材の伸長により無機層が受ける応力を小さくすることができ、クラック等の欠陥の発生を抑制することができる。
押し込み弾性率は、ISO 14577:2015に準拠する方法により、超微小負荷硬さ試験機を用いて測定することが出来る。測定は、外包材から所望のサイズのサンプルを切り出し、その断面または表面において、測定対象の層に対しビッカース圧子(対面角136°の正四角錐のダイヤモンド圧子)を装着させた超微小負荷硬さ試験機を用いて、押込み速度0.1μm/秒、押込み深さ2μm、保持時間5秒間、引き抜き速度0.1μm/秒の条件で行う。上記測定は、温度23℃±2℃、湿度60%RH±5%RHの雰囲気中で行う。超微小硬さ試験機は、例えばピコデンターHM500(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いることが出来る。
外包材のサンプルの断面を測定する場合は、上記サンプルの外周を硬化樹脂系接着剤で固めて固定し、固定したサンプルをダイヤモンドナイフで厚さ方向に切断して露出した断面を測定する。また、外包材のサンプルの表面を測定する場合は、測定対象面と反対側の面を硬化樹脂系接着剤で厚さ1.1mmの平坦なガラス板に固定して表面を測定する。押込み弾性指数を算出する際の各樹脂層の厚さは、切削断面の光学顕微鏡観察の計測により測定することが出来る。後述する第1樹脂基材以外の他の層の押し込み弾性率も上記の測定方法で測定する。
1つの条件では、外包材から切り出した1つのサンプルにおいて、測定対象の層に対して少なくとも異なる5箇所で測定し、それらの測定値の平均をその条件の押し込み弾性率の値とする。
(3)金属酸化物リン酸層付きフィルム
上記金属酸化物リン酸層付きフィルムにおいて、上記金属酸化物リン酸層と上記第1樹脂基材との位置関係は特に限定されるものではなく、いずれが熱溶着可能なフィルム側に配置されてもよい。本態様においては、金属酸化物リン酸層を水蒸気への暴露や、物理的な応力から保護するために、金属酸化物リン酸層が上記第1樹脂基材よりも熱溶着可能なフィルム側に配置されることが好ましい。また、熱溶着可能なフィルムから最も離れた位置の金属酸化物リン酸層付きフィルムが、金属酸化物リン酸層が外包材の外側となり、第1樹脂基材が外包材の内側となるように配置される場合は、当該金属酸化物リン酸層の外側に、樹脂製のフィルムなどの保護フィルムが配置されていることが好ましい。上記保護フィルムについては、後述する「5.保護フィルム」において説明されているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.外側無機層付きフィルム(第2フィルム)
本態様における外側無機層付きフィルムは、第2樹脂基材と、上記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有するものである。上記外側無機層付きフィルムを上述した金属酸化物リン酸層付きフィルムの内側に配置することにより、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過した水蒸気が、外側無機層付きフィルムの内側に配置される内側無機層付きフィルムへ到達することを防止することができる。
(1)無機層
無機層は、第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、外側無機層付きフィルムのガスバリア性に主に寄与するものである。上記無機層は、所望のガスバリア性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。このようなガスバリア性を有する層としては、例えば、金属層、無機化合物を主成分とする層などを用いることができる。上記金属層としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金から構成される金属蒸着膜等を挙げることができる。
また、上記無機化合物を主成分とする層の無機化合物としては、所望のガスバリア性を発揮できる材料であればよく、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物および酸化珪素亜鉛等から選ばれる1または2以上の無機化合物等が挙げられる。具体的には、珪素(シリカ)、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウ、ムセリウム、および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の原子を含有する無機化合物を挙げることができる。より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を挙げることができる。上記無機化合物は、単独で用いてもよいし、上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
本態様においては、中でも上記無機層が金属層であることが好ましく、アルミニウム層であることがより好ましい。上記金属層は、無機酸化物層などと比べて安価であり、耐屈曲性に優れているからである。
無機層の厚みは、所望のガスバリア性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、無機層の種類にもよるが、例えば、5nm以上、200nm以下の範囲内、中でも30nm以上、150nm以下の範囲内、特には60nm以上、120nm以下の範囲内であることが好ましい。無機層の厚みが上記範囲に満たないと、製膜が不十分となり所望のガスバリア性を示すことができない場合があり、上記範囲を超えると、クラックが発生しやすくなり可撓性が低下するおそれや、無機層が金属や合金を含む場合、本態様の外包材を用いて形成された真空断熱材において、ヒートブリッジが生じるおそれがあるからである。
無機層は、単一層であってもよく、厚みが上記範囲内となるように2以上を積層した積層構造を有していてもよい。積層構造の無機層を用いる場合は、同一組成の無機層を組み合わせてもよく、異なる組成の無機層を組み合わせてもよい。また、上記無機層は、ガスバリア性および他の層との密着性の向上を図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
第2樹脂基材の一方の面側に無機層を形成する方法としては、無機層の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。例えば、物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法等の乾式製膜法を用いて第2樹脂基材に無機層を製膜する方法、具体的には、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法等を用いることができる。また、既製のガスバリア性の薄膜を用い、第2樹脂基材と予め加熱した薄膜とを熱圧着させる方法、第2樹脂基材または薄膜に接着剤層を介して貼合する方法等が挙げられる。PVD法およびCVD法による具体的な無機層の製膜方法については、例えば、特開2011−5835号公報に開示される方法を用いることができる。
無機層単独(1層)のガスバリア性としては、酸素透過度が0.5cc/(m・day・atm)以下であることが好ましく、中でも0.1cc/(m・day・atm)以下であることが好ましい。また、水蒸気透過度が0.5g/(m・day)以下であることが好ましく、中でも0.1g/(m・day)以下であることが好ましい。上記無機層の酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、外部より浸透した水蒸気やガス等を真空断熱材の内部の芯材まで浸透しにくくすることができる。
ここで無機層単独(1層)とは、1つの無機層をいい、無機層が積層構造である場合は、積層構造を有する無機層を1つとする。
なお、上記酸素透過度は、JIS K7126−2:2006に基づき、温度23℃、湿度60%RHの条件下において酸素透過度測定装置を用いて測定した値とすることができる。上記酸素透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、オクストラン(OXTRAN)を挙げることができる。また、上記水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度測定装置を用いてJIS K7129に従い測定することができる。上記水蒸気透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、パ−マトラン(PERMATRAN)を用いることができる。
酸素透過度の測定の詳細は、JIS K7126−2:2006(プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第2部:等圧法、付属書A:電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法)を参考に、酸素透過度測定装置を用いてキャリアガスおよび試験ガスの状態が温度23℃、湿度60%RHの条件で測定することができる。上記酸素透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、オクストラン(OXTRAN)を挙げることができる。測定は、所望のサイズに切り取り上記装置内に装着し、透過面積約50cm(透過領域:直径8cmの円形)として、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度23℃、湿度60%RHの条件で行う。上記測定の際、上記装置内にキャリアガスを流量10cc/分で60分以上供給してパージする。上記キャリアガスは5%程度水素を含む窒素ガスを用いることが出来る。パージ後、上記装置内に試験ガスを流し、流し始めてから平衡状態に達するまでの時間として12時間を確保した後に測定する。上記試験ガスは、例えば、少なくとも99.5%の乾燥酸素を用いることができる。酸素透過度は、1つの条件で少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件での酸素透過度の値とすることができる。
また、水蒸気透過度の測定の詳細は、JIS K7129:2008(付属書B:赤外線センサ法、以下同様とする。)に準拠して、水蒸気透過度測定装置を用いて温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定することができる。測定は、所望のサイズに切り取り上記装置の上室と下室との間に装着し、透過面積約50cm(透過領域:直径8cmの円形)として温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定を行う。水蒸気透過度測定装置は、例えば、米国MOCON社製の「PERMATRAN」を用いることができる。水蒸気透過度は、1つの条件で少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件での水蒸気透過度の値とすることができる。
(2)第2樹脂基材
外側無機層付きフィルムに用いることができる第2樹脂基材については、「1.金属酸化物リン酸層付きフィルム、(2)第1樹脂基材」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記第2樹脂基材は、押し込み弾性率が1.5GPa以上であることが好ましく、中でも2.0GPa以上であることが好ましく、特に2.5GPa以上であることが好ましい。また、上記押し込み弾性率の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であることが好ましく、5.0GPa以下であることが好ましい。第2樹脂基材の押し込み弾性率を上記の範囲内とすることで、上述した第1樹脂基材の押込み弾性率を規定することによる効果と同様の効果を奏することができる。
(3)外側無機層付きフィルム
外側無機層付きフィルムは、無機層の第2樹脂基材とは反対の面側にオーバーコート層を有していてもよい。外側無機層付きフィルムのガスバリア性を向上させることができるからである。上記オーバーコート層は、後述する「(II)第2態様、2.オーバーコート層付きフィルム、(1)オーバーコート層」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、上記無機層と上記第2樹脂基材との位置関係は特に限定されるものではなく、いずれが熱溶着可能なフィルム側に配置されてもよい。本態様においては、無機層を、上述した金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過した水蒸気から保護するために、無機層が上記第2樹脂基材よりも熱溶着可能なフィルム側に配置されることが好ましい。
3.内側無機層付きフィルム(第3フィルム)
本態様における内側無機層付きフィルムは、第3樹脂基材と、上記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有するものである。上記内側無機層付きフィルムは、上述した金属酸化物リン酸層付きフィルムおよび外側無機層付きフィルムの内側に配置されているため、高温高湿な環境においても、水蒸気等による影響を大幅に抑止することができ、初期値と同様の、高いガスバリア性を発揮することができる。
(1)無機層
無機層は、第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、内側無機層付きフィルムのガスバリア性に主に寄与するものである。上記無機層は、所望のガスバリア性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。上記内側無機層付きフィルムの無機層については、上記「2.外側無機層付きフィルム、(1)無機層」の項において説明されているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)第3樹脂基材
第3樹脂基材に用いることができる樹脂の種類、添加物や、第3樹脂基材に対する表面処理、第3樹脂基材の厚み等については、「1.金属酸化物リン酸層付きフィルム、(2)第1樹脂基材」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記第1樹脂基材に用いることができる樹脂の種類として挙げられているものの中でも、上記第3樹脂基材には、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸系樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などの天然高分子等の親水基含有樹脂が用いられることが好ましく、中でもPVAやEVOH等のポリビニルアルコール系樹脂、特にはEVOHが用いられることが好ましい。親水基含有樹脂は高温においても、酸素に対する高いバリア性を発揮するものであるため、内側無機層付きフィルムとしての酸素に対するバリア性を向上させることができるからである。本態様の外包材において、内側無機層付きフィルムは上述した金属酸化物リン酸層付きフィルムおよび外側無機層付きフィルムにより保護されているため、高温高湿な環境においても、水蒸気等による影響が大幅に抑制されている。そのため、水蒸気により劣化されやすい親水基含有樹脂であっても第3樹脂基材として用いれば、高温高湿な環境においても、酸素に対するバリア性を高く維持することができるからである。なお、本明細書において「親水基」とは、静電的相互作用や水素結合などによって水分子と弱い結合をつくり、水に対して親和性示す原子団をいうものであり、例えばヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基(−NH)、カルボニル基(>CO)、スルホ基(−SOH)などの極性基や解離基を含む原子団がその性質を示す。
上記第3樹脂基材は、押し込み弾性率が1.5GPa以上であることが好ましく、中でも2.0GPa以上であることが好ましく、特に2.5GPa以上であることが好ましい。また、上記押し込み弾性率の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であることが好ましく、5.0GPa以下であることが好ましい。第3樹脂基材の押し込み弾性率を上記の範囲内とすることで、上述した第1樹脂基材の押込み弾性率を規定することによる効果と同様の効果を奏することができる。
上記内側無機層付きフィルムにおける上記無機層と第3樹脂基材との位置関係は特に限定されるものではなく、いずれが熱溶着可能なフィルム側に配置されてもよいが、第3樹脂基材に親水基含有樹脂が用いられる場合、上記第3樹脂基材は上記内側無機層付きフィルムの無機層の熱溶着可能なフィルム側に配置されることが好ましい。上記内側無機層付きフィルムの無機層により、親水基含有樹脂を含む第3樹脂基材を水蒸気から保護することができ、親水基含有樹脂の酸素に対するバリア性を高く維持することができるからである。
(3)内側無機層付きフィルム
内側無機層付きフィルムは、無機層の第3樹脂基材とは反対の面側にオーバーコート層を有していてもよい。内側無機層付きフィルムのガスバリア性を向上させることができるからである。上記オーバーコート層は、後述する「(II)第2態様、2.オーバーコート層付きフィルム、(1)オーバーコート層」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本態様の外包材は、上述したような内側無機層付きフィルムを複数有していてもよい。外包材のガスバリア性を向上することができるからである。外包材が複数の内側無機層付きフィルムを有する場合、各内側無機層付きフィルムの構成は同じでもよく、異なっていてもよい。
4.熱溶着可能なフィルム
本態様における熱溶着可能なフィルムは、熱溶着が可能な層であり、上記外包材を用いて真空断熱材を形成する際に、芯材と接する部位である。また、対向する外包材同士の端部を熱溶着する熱溶着面を形成する部位である。
上記熱溶着可能なフィルムの材料としては、加熱によって溶融し、融着することが可能であることから熱可塑性樹脂が好ましく、例えば直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンや未延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
本態様においては、上記樹脂の中でも、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンや未延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が熱溶着可能なフィルムの材料として用いられることが好ましい。上記材料が上述の樹脂であることにより、上記真空断熱材を形成した際に、上記外包材同士を貼り合わせた端部において、上述した内側無機層付きフィルムなどの熱溶着可能なフィルムの外側に配置された各フィルムへのクラックの発生を抑制することができるからである。
上記熱溶着可能なフィルムの融点としては、例えば80℃以上、300℃以下の範囲内であることが好ましく、中でも100℃以上、250℃以下の範囲内であることが好ましい。熱溶着可能なフィルムの融点が上記範囲に満たないと、本態様の外包材を用いて形成された真空断熱材の使用環境下において、外包材の封止面が剥離する可能性がある。また、熱溶着可能なフィルムの融点が上記範囲を超えると、外包材を高温で熱溶着する必要があるため、外包材として共に用いられる内側無機層付きフィルム等が熱により劣化される可能性がある。
上記熱溶着可能なフィルムの融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて下記の方法により測定することが出来る。まず、外包材から熱溶着可能なフィルムを剥離して約10mgの測定試料を得る。この測定試料をアルミニウム製のセルに入れ、示差走査熱量計(NETZSCH社製 DSC204)を用いて、窒素雰囲気中で20℃から昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で20℃まで冷却し、その温度で10分間保持後、昇温速度10℃/分で300℃まで再度昇温する(2度目の昇温)。2度目の昇温の際に観測される融点での接線と、上記融点より低温側のDSC曲線の基線との交点を、熱溶着可能なフィルムの融点とすることが出来る。
また、上記熱溶着可能なフィルムは、上述した樹脂の他に、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、有機充填剤等の他の材料を含んでいてもよい。
上記熱溶着可能なフィルムの厚みは、例えば15μm以上、100μm以下の範囲内が好ましく、中でも25μm以上、90μm以下の範囲内が好ましく、特に30μm以上、80μm以下の範囲内が好ましい。熱溶着可能なフィルムの厚みが上記範囲よりも大きいと、外包材のガスバリア性が低下する場合等があり、厚みが上記範囲よりも小さいと、所望の接着力が得られない場合がある。
5.保護フィルム
本態様の外包材は、上述した金属酸化物リン酸層付きフィルム、外側無機層付きフィルム、内側無機層付きフィルム、熱溶着可能なフィルムの他に、保護フィルムを有していてもよい。金属酸化物リン酸層付きフィルム等の、外包材として共に用いられる各フィルムを、損傷や劣化から保護することができるからである。保護フィルムは、そのいずれの面にもガスバリア性を有する層が配置されていない点で、上述した各フィルムと区別することが可能である。上記保護フィルムの外包材における配置位置は特に限定されるものではないが、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムの上記熱溶着可能なフィルムとは反対の面側など、真空断熱材を形成する際に最外層(最表層)となる位置に、保護フィルムが配置されていることが好ましい。
上記保護フィルムとしては、熱溶着可能なフィルムよりも高融点の樹脂を用いたものであればよく、シート状でもフィルム状でもよい。このような保護フィルムとして、例えば、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVAL)、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルロースナノファイバー(CNF)等のシートまたはフィルム等が挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が好適に用いられる。
上記保護フィルムは、本態様の外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内部を保護するのに十分な強度を有し、耐熱性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性等に優れたものであることが好ましい。また、上記保護フィルムは、酸素バリア性や水蒸気バリア性など、ガスバリア性を有していることが好ましい。
上記保護フィルムは、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層させて多層としたものであってもよい。また上記保護フィルムは、他の層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。また、上記保護フィルムの厚みは、外包材に共に用いられる他の各フィルムを保護することができる厚さであれば特に限定されるものではないが、一般的に5μm以上、80μm以下の範囲内程度である。
上記保護フィルムは、押し込み弾性率が1.5GPa以上であることが好ましく、中でも2.0GPa以上であることが好ましく、特に2.5GPa以上であることが好ましい。また、上記押し込み弾性率の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であることが好ましく、5.0GPa以下であることが好ましい。保護フィルムの押し込み弾性率を上記の範囲内とすることで、上述した第1樹脂基材の押込み弾性率を規定することによる効果と同様の効果を奏することができる。
6.真空断熱材用外包材
上記外包材の厚みとしては、所望のガスバリア性や強度を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、30μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましく、中でも50μm以上、150μm以下の範囲内であることが好ましい。また、上記外包材の引張強度としては、50N/15mm以上であることが好ましく、なかでも80N/15mm以上であることが好ましい。本態様の外包材を用いて形成された真空断熱材を屈曲させる際に破断等が生じにくくなるためである。なお、上記引張強度は、JIS−Z−1707に基づいて測定した値である。
上記外包材の積層方法としては、所望の構成の外包材を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、予め成膜した各フィルムを接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション法や、熱溶融させた内側無機層付きフィルム等の各材料をTダイ等を用いて押出しして貼り合せ、得られた積層体に接着剤を介して熱溶着可能なフィルムを貼り合せる方法等が挙げられる。
上記外包材は、上述した各フィルム以外の構成を有していてもよい。例えば、上記内側無機層付きフィルムと熱溶着可能なフィルムとの間に、ガスバリア性を有する層を有していてもよい。このような層としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸系樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などの天然高分子等の親水基含有樹脂を含む層が用いられることが好ましく、中でもPVAやEVOH等のポリビニルアルコール系樹脂、特にはEVOHを含む層が用いられることが好ましい。親水基含有樹脂は酸素に対するバリア性や、耐屈曲性等の物理的強度に優れているため、このような層を設けることにより、外包材のガスバリア性、特に酸素に対するバリア性を向上させることができるからである。
また、本態様の外包材は、上述した外側無機層付きフィルムや内側無機層付きフィルムの他に、これらの無機層付きフィルムと同様の構成を有する、その他の無機層付きフィルムを有していてもよい。外包材のガスバリア性を向上することができるからである。上記その他の無機層付きフィルムは、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムおよび外側無機層付きフィルムの間や、外側無機層付きフィルムおよび内側無機層付きフィルムの間に、1つまたは複数配置することができる。上記外側無機層付きフィルムと、内側無機層付きフィルムと、その他の無機層付きフィルムとは、それぞれ同じ構成のものが用いられても、異なる構成のものが用いられてもよい。
上記外包材は、酸素透過度が0.1cc/(m・day・atm)以下、中でも0.05cc/(m・day・atm)以下であることが好ましい。また、上記真空断熱材用外包材は、水蒸気透過度が0.5g/(m・day)以下、中でも0.1g/(m・day)以下、特には0.05g/(m・day)以下であることが好ましい。上記外包材が上記範囲内のガスバリア性を有することにより、高温高湿な環境に長時間曝された場合でも、高い断熱性能を有する真空断熱材を形成することができるからである。なお、上記外包材の酸素透過度および水蒸気透過度の測定方法は、上記「2.外側無機層付きフィルム、(1)無機層」において説明した、無機層の各透過度の測定方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。水蒸気透過度の測定は、所望のサイズに切り取った外包材の表面のうち、上記外包材の厚み方向において一方の最表面層である熱溶着可能なフィルムと反対側に位置する最表面層が高湿度側(水蒸気供給側)となるようにして、水蒸気透過度測定装置の上室と下室との間に装着して行う。
本態様の外包材は、押し込み弾性率が1.0Pa以上の樹脂層を3つ以上有することが好ましく、中でも押し込み弾性率が1.5Pa以上の樹脂層を3つ以上有することが好ましく、特に押し込み弾性率が2.0Pa以上の樹脂層を3つ以上有することが好ましい。また、所望の押し込み弾性率を示す樹脂層は、3つ以上有することが好ましいが、中でも4つ以上有することが好ましい。なお、本態様の外包材における樹脂層の数の上限は、所望のガスバリア性を発揮可能であれば特に限定されないが、例えば、8つ以下とすることが出来る。本態様の外包材は、このような構成を有することで、外包材の構成内部に硬い「芯」となる部分を有することができる。外包材は、少なくとも熱溶着可能なフィルムは高温環境において熱により伸長しやすいが、外包材の構成内部に硬い「芯」となる部分を有することで、熱溶着可能なフィルムの伸びによる力を無機層に伝えにくくすることができる。これにより、高温高湿環境下においても硬く伸びにくくなり、屈曲により第2フィルムまたは第3フィルムに含まれる無機層に発生したクラックを、高温高湿環境下において拡張されにくくすることができる。これにより、高温高湿環境下での酸素透過度の上昇が抑えられ、高温高湿環境で長期間、良好なガスバリア性能を発揮可能となる。
ここで、本態様の外包材における樹脂層とは、例えば、第1フィルムの第1樹脂基材、第2フィルムの第2樹脂基材、第3フィルムの第3樹脂基材、保護フィルム等が挙げられる。また、上記樹脂層は、熱溶着可能なフィルム、および外包材を構成する各層の層間を接着する接着剤層を除く。中でも、本態様の外包材における樹脂層のうち、少なくとも無機層が直接配置された樹脂層、すなわち、樹脂基材が所定の押込み弾性率を示すことが好ましい。
具体的には、本態様の外包材が、保護フィルム、第1フィルム、第2フィルム、第3フィルム、および熱溶着可能なフィルムの5層構成を有する場合は、保護フィルム、第1フィルムの第1樹脂基材、第2フィルムの第2樹脂基材、および第3フィルムの第3樹脂基材のうち少なくとも3つが、押し込み弾性率が上述した所定値以上であることが好ましく、中でも、第1フィルムの第1樹脂基材、第2フィルムの第2樹脂基材、および第3フィルムの第3樹脂基材の3つが、押し込み弾性率が上述した所定値以上であることが好ましく、4つ全ての押し込み弾性率が上述した所定値以上であることがより好ましい。
(II)第2態様
本開示の第2態様の外包材は、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、上記第1フィルムは、第1樹脂基材と、上記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、上記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、上記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、上記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とするものである。
本態様の外包材について、図を参照して説明する。図4は、本態様の外包材の一例を示す概略断面図である。図4に例示するように、本態様の外包材10Bは、金属酸化物リン酸層付きフィルム1と、オーバーコート層付きフィルム13と、熱溶着可能なフィルム4とをこの順で有する。上記金属酸化物リン酸層付きフィルム1は、第1樹脂基材5と、上記第1樹脂基材5の少なくとも一方の面側に配置された金属酸化物リン酸層6とを有し、上記オーバーコート層付きフィルム13は、樹脂基板14と、上記樹脂基板14の少なくとも一方の面側に配置された無機層8cと、上記無機層8cの上記樹脂基板14とは反対の面側に配置されたオーバーコート層15とを有する。
本態様においても、上述した第1態様と同様に、高温高湿な環境に曝された際の劣化が少ないという特徴を有する金属酸化物リン酸層付きフィルムを、外包材の外側に用いることにより、内側のフィルムの劣化を防止し、外包材全体として、高温高湿な環境におけるガスバリア性を高く維持するものである。本態様においては、上記金属酸化物リン酸層付きフィルムの熱溶着可能なフィルム側に、オーバーコート層付きフィルムを用いることにより、そのような外包材を用いて形成された真空断熱材内部の真空度を高く維持することができる。これは、上記オーバーコート層付きフィルムは、高温高湿な環境において上記金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過する程度の水蒸気に曝された場合でも、自身のガスバリア性を高く維持することができるからである。
本態様の外包材は、金属酸化物リン酸層付きフィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有するものである。以下、本態様の外包材の各構成について説明する。
1.金属酸化物リン酸層付きフィルム(第1フィルム)
本態様における金属酸化物リン酸層付きフィルムは、上述した「(I)第1態様、1.金属酸化物リン酸層付きフィルム」の項において説明されたものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
2.オーバーコート層付きフィルム
本態様におけるオーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、上記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有するものである。
(1)オーバーコート層
本態様におけるオーバーコート層は、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置され、親水基含有樹脂を含むものである。上記親水基含有樹脂の有無は、例えば、赤外線吸収スペクトルなどにより判別することができる。また、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)は、0.1以上、2以下の範囲内であり、中でも0.5以上、1.9以下の範囲内、特には0.8以上、1.6以下の範囲内であることが好ましい。比率が上記範囲に満たないと、オーバーコート層の脆性が大きくなり、得られるオーバーコート層の耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、比率が上記範囲を超えると、得られるオーバーコート層のガスバリア性が低下する場合がある。
上述したような比率を有するオーバーコート層は、例えば、オーバーコート層形成用組成物における親水基含有樹脂の含有量を、後述するアルコキシドの合計量100質量部に対して5質量部以上、500質量部以下の範囲内、中でも20質量部以上、200質量部以下の範囲内の配合割合とすることにより得ることができる。上記オーバーコート層形成用組成物の一例としては、A液(ポリビニルアルコール(PVA)、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液)に、予め調製したB液(テトラエトキシシラン(TEOS)、イソプロピルアルコール、塩酸およびイオン交換水からなる加水分解液)を、TEOS100質量部に対してPVAが特定の割合となるように加えて撹拌し、ゾルゲル法により得られる、無色透明のオーバーコート層形成用組成物を挙げることができる。
オーバーコート層における炭素原子に対する金属原子の比率の測定方法は特に限定されるものではなく、例えば、X線光電子分光法や、外包材断面からのエネルギー分散型X線分光法(EDX)などにより測定することができる。また、上記X線光電子分光法により測定する際はエッチングを行い、オーバーコート層の内部を評価してもよい。
上述したA液およびB液を用い、TEOS100質量部に対してPVAが5質量部以上、500質量部以下の範囲内となるように調製されたオーバーコート層形成用組成物を用いて作製されたオーバーコート層における、炭素原子に対する金属原子の比率を下記表1に示す。原子比率の測定は、X線光電子分光法により、測定装置としてESCA5600(アルバック・ファイ株式会社製)を用いて行った。なお、下記表1においては、炭素原子(C)に対する金属原子としての珪素(Si)の比率を示す。
このような、親水基含有樹脂を含み、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が特定の範囲内のものである層としては、一般式R (OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、親水基含有樹脂とを含有するゾルゲル化合物を含む層を用いることができ、中でも上記ゾルゲル化合物を主成分とする層であることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、上記樹脂基板等の熱による劣化を抑制することができるからである。
上記ゾルゲル化合物は、例えば上記オーバーコート層付きフィルムの上記無機層の上に塗布して、20℃以上、180℃以下の範囲内、かつ上記樹脂基板の融点以下の温度で30秒以上、10分以下加熱処理することによって、無機層の上記樹脂基板と反対の面側を覆うようにオーバーコート層を形成することができる。また、上記ゾルゲル化合物を上記無機層の上に2回以上塗布して、20℃以上、180℃以下の範囲内、かつ、上記樹脂基板の融点以下の温度で30秒以上、10分以下加熱処理することによって、オーバーコート層を2層以上形成してもよい。
以下、上記ゾルゲル化合物を主成分とするオーバーコート層について、説明する。
(a)ゾルゲル化合物の金属酸化物成分
上記一般式R1 n(OR2mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2量体以上、6量体以下の範囲内のものを使用してもよい。
上記一般式R1 n(OR2m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1以上、8以下、好ましくは1以上、5以下、より好ましくは1以上、4以下のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
上記一般式R1 n(OR2m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1以上、8以下、より好ましくは1以上、5以下、特に好ましくは1以上、4以下のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
上記一般式R1 n(OR2m中、Mで表される金属原子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。本態様において上記金属原子は珪素であることが好ましい。この場合、本態様で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1 n(OR2mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1以上、5以下のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等を例示することができる。なお、珪素は半金属に分類される場合があるが、本明細書では珪素を金属に含めるものとする。
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252、その他等を使用することができる。本態様では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
また、本態様において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン、その他等を使用することができる。
本態様では、上記一般式R1 n(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH34、テトラエトキシジルコニウムZr(OC254、テトライソプロポキシジルコニウムZr(iso−OC374、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC494、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 n(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH34、テトラエトキシチタニウムTi(OC254、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC374、テトラnブトキシチタニウムTi(OC494、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 n(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH34、テトラエトキシアルミニウムAl(OC254、テトライソプロポキシアルミニウムAl(iso−OC374、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC494、その他等を使用することができる。
本態様では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドとを混合して用いると、得られるオーバーコート層の靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲内であることが好ましい。10質量部を超えると、形成されるオーバーコート層が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、無機層を被覆した際にオーバーコート層が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドとを混合して用いると、得られるオーバーコート層の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲内であることが好ましい。5質量部を超えると、形成されるオーバーコート層の脆性が大きくなり、無機層を被覆した際に、オーバーコート層が剥離し易くなる場合がある。
(b)ゾルゲル化合物の有機ポリマー成分
本態様で使用する親水基含有樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂、天然高分子系のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などを挙げることができ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本態様では、親水基含有樹脂を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。なお、上述したように本明細書において「親水基」とは、静電的相互作用や水素結合などによって水分子と弱い結合をつくり、水に対して親和性示す原子団をいうものであり、例えばヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基(−NH)、カルボニル基(>CO)、スルホ基(−SOH)などの極性基や解離基を含む原子団がその性質を示す。
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05以上、10:6以下位であることが好ましい。
上記親水基含有樹脂において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでもよく、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0モル%以上、50モル%以下の範囲内、中でも20モル%以上、45モル%以下の範囲内であることが好ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
(c)その他
上記ゾルゲル化合物を主成分とする上記オーバーコート層を形成するための原料液を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
本態様で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1質量部以上、20質量部以下の範囲内であることが好ましい。20質量部を超えると、形成されるオーバーコート層の剛性と脆性とが大きくなり、また、オーバーコート層の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
また、ゾル−ゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本態様においては、特に、N、N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01質量部以上、1.0質量部以下の範囲内であることが好ましい。
また、上記ゾルゲル化合物の作成において用いられる「酸」としては、上記ゾル−ゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸などの有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001モル以上、0.05モル以下の範囲内を使用することが好ましい。
更に、上記のゾルゲル化合物の作成においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1モル以上、100モル以下の範囲内、好ましくは、0.8モル以上、2モル以下の範囲内の割合の水をもちいることができる。水の量が2モルを超えると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、オーバーコート層のガスバリア性を改善することができなくなる。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
更に、上記のゾルゲル化合物の作成において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。なお、上記親水基含有樹脂は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗布液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、親水基含有樹脂、酸およびゾル−ゲル法触媒の合計量100質量部に対して30質量部以上、500質量部以下の範囲内であることが好ましい。
(d)ゾルゲル化合物を主成分とするオーバーコート層の形成方法
本態様において、上記ゾルゲル化合物を主成分とする上記オーバーコート層は、以下の方法で製造することができる。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、親水基含有樹脂、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、原料液を調製する。混合により、原料液は、重縮合反応が開始および進行する。
次いで、上記無機層の上に、常法により、上記の原料液を塗布し、乾燥する。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤および親水基含有樹脂等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2つ以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
次いで、上記原料液を塗布した樹脂基板を50℃以上、300℃以下の範囲内、かつ樹脂基板の融点以下の温度、好ましくは、70℃以上、200℃以下の範囲内の温度で、0.05分以上、60分以下加熱処理する。これによって、上記無機層の上に、上記原料液によるオーバーコート層を1層ないし2層以上形成したオーバーコート層付きフィルムを製造することができる。
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との混合組成物を用いて得られたオーバーコート層は、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂単独を主成分とするオーバーコート層を設ける場合にはそのオーバーコート層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するオーバーコート層を積層すると、熱水処理後のガスバリア性を向上させることができる。
更に、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独を主成分とするオーバーコート層、および、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との混合組成物を主成分とするオーバーコート層の両方またはいずれか一方を複数積層しても、ガスバリア性の向上に有効な手段となる。
(2)無機層
本態様におけるオーバーコート層付きフィルムの無機層は、所望のガスバリア性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではない。このような無機層としては、「(I)第1態様、2.外側無機層付きフィルム、(1)無機層」の項において説明されているものと同様のものを用いることができる。本態様においては、初期のガスバリア性や耐劣化性等の観点から、無機化合物を主成分とする層が好適に用いられ、より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を主成分とする層を挙げることができる。上記無機化合物は、単独で用いてもよいし、上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
本態様における無機層に関する厚み、形成方法、ガスバリア性等については、「(I)第1態様、2.外側無機層付きフィルム、(1)無機層」の項の記載と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(3)樹脂基板
樹脂基板は、上記無機層およびオーバーコート層を支持可能なものであれば特に限定されるものではない。このような樹脂基板については、「(I)第1態様、1.金属酸化物リン酸層付きフィルム、(2)第1樹脂基材」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記樹脂基板は、押し込み弾性率が1.5GPa以上であることが好ましく、中でも2.0GPa以上であることが好ましく、特に2.5GPa以上であることが好ましい。また、上記押し込み弾性率の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であることが好ましく、5.0GPa以下であることが好ましい。樹脂基板の押し込み弾性率を上記の範囲内とすることで、上述した「(I)第1態様」の項で説明した第1樹脂基材の押込み弾性率を規定することによる効果と同様の効果を奏することができる。
(4)オーバーコート層付きフィルム
上記オーバーコート層付きフィルムにおいて、上記無機層と上記樹脂基板との位置関係は特に限定されるものではなく、いずれが熱溶着可能なフィルム側に配置されてもよい。本態様においては、無機層およびオーバーコート層を、上述した金属酸化物リン酸層付きフィルムを透過した水蒸気から保護するために、無機層およびオーバーコート層が上記樹脂基板よりも熱溶着可能なフィルム側に配置されることが好ましい。
また、本態様の外包材は、上述したようなオーバーコート層付きフィルムを複数有していてもよい。外包材のガスバリア性を向上することができるからである。外包材が複数のオーバーコート層付きフィルムを有する場合、各オーバーコート層付きフィルムの構成は同じでもよく、異なっていてもよい。
3.熱溶着可能なフィルム
本態様における熱溶着可能なフィルムは、熱溶着が可能な層であり、上記外包材を用いて真空断熱材を形成する際に、芯材と接する部位である。また、対向する外包材同士の端部を熱溶着する熱溶着面を形成する部位である。このような熱溶着可能なフィルムについては、「(I)第1態様、4.熱溶着可能なフィルム」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
4.保護フィルム
本態様の外包材は、上述した金属酸化物リン酸層付きフィルム、オーバーコート層付きフィルム、熱溶着可能なフィルムの他に、保護フィルムを有していてもよい。金属酸化物リン酸層付きフィルム等の、外包材として共に用いられる各フィルムを、損傷や劣化から保護することができるからである。このような保護フィルムについては、「(I)第1態様、5.保護フィルム」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
5.真空断熱材用外包材
本態様の外包材に関するその他の点については、「(I)第1態様、6.真空断熱材用外包材」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
B.真空断熱材
次に、本開示の真空断熱材について説明する。本開示の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とするものである。
本開示の真空断熱材については、既に説明した図2に例示するものと同様とすることができる。本開示によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材とすることができる。
本開示の真空断熱材は、真空断熱材用外包材および芯材を少なくとも有するものである。
以下、本開示の真空断熱材について、構成ごとに説明する。
1.真空断熱材用外包材
本開示の真空断熱材用外包材は、上記芯材を封入するものである。また、上記真空断熱材用外包材は、上述の本開示の真空断熱材用外包材である。このような真空断熱材用外包材については、「A.真空断熱材用外包材」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
なお、封入するとは、上記外包材を用いて形成された袋体の内部に密封されることをいうものである。
2.芯材
本開示における芯材は、上記真空断熱材用外包材により封入されるものである。
上記芯材としては、熱伝導率の低いものであることが好ましい。上記芯材は、その空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材であることが好ましい。
上記芯材を構成する材料としては、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。
上記粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。なかでも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
また、上記発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等があり、これらのなかでも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
また、上記繊維体としては、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で好ましい。
上記芯材は、上述した材料を単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
3.真空断熱材
本開示の真空断熱材は、上記真空断熱材用外包材で封入された内部を減圧密封し、真空状態としたものである。上記真空断熱材内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材内部の真空度を上記範囲内とすることにより、内部に残存する空気の対流による熱伝導を小さいものとすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となる。
また、上記真空断熱材の熱伝導率は低いことが好ましく、例えば、熱伝導率(初期熱伝導率)は、15mW/m・K以下であることが好ましく、なかでも10mW/m・K以下であることが好ましく、特に5mW/m・K以下であることが好ましい。真空断熱材の熱伝導率を上記範囲とすることにより、上記真空断熱材は熱を外部に伝導しにくくなることから、高い断熱効果を奏することができるからである。なお、上記熱伝導率は、JIS−A−1412−2に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名 HC−074、英弘精機製)を挙げることができる。
熱伝導率の測定は、具体的には、JIS A1412−2:1999(熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法))に準拠する方法で、熱伝導率測定装置を用いて測定することが出来る。測定は、以下の条件で、測定試料である真空断熱材の両方の主面が上下方向を向くように配置して行う。測定前に、測定試料の温度が測定環境温度と等しくなっているかを、熱流計などを使用して予め測定しておくことが好ましい。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の熱伝導率の値とする。
(熱伝導率の測定条件)
・測定試料:幅29cm±0.5cm、長さ30cm±0.5cm
・試験の定常に要する時間:15分以上
・標準板の種類:EPS
・高温面の温度:30℃
・低温面の温度:10℃
・測定試料の平均温度:20℃
上記真空断熱材はガスバリア性が高いことが好ましい。外部からの水分や酸素等の侵入による真空度の低下を防止することができるからである。上記真空断熱材のガスバリア性については、上記「A.真空断熱材用外包材、(I)第1態様、6.真空断熱材用外包材」の項で説明した酸素透過度および水蒸気透過度と同様であるため、ここでの説明は省略する。
4.製造方法
本開示の真空断熱材の製造方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、予め上述の外包材を準備し、2枚の上記外包材をそれぞれの熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り三方の外包材同士の端部を熱溶着することで、2枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材が得られる。
また、上記製造方法は、1枚の上記外包材を熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り二方の上記外包材同士の端部を熱溶着することで、1枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材を得る方法であっても良い。
5.用途
本開示の真空断熱材は、熱伝導率が低く、高温高湿な環境においても断熱性能および耐久性能に優れるものである。従って、上記真空断熱材は、熱源を有し発熱する部位や、外部から加熱されることにより高温となる部位に用いることができる。本開示の用途としては、例えば、「C.真空断熱材付き物品」で説明する機器、クーラーボックス、輸送用コンテナ、水素等の燃料タンク、システムバス、温水タンク、保温庫、住宅壁、自動車、飛行機、船舶、列車等が挙げられる。
C.真空断熱材付き物品
次に、本開示の真空断熱材付き物品について説明する。本開示の真空断熱材付き物品は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とするものである。
本開示によれば、物品に備わる上記真空断熱材が、「A.真空断熱材用外包材」の項で説明した外包材を用いた真空断熱材であり、高温高湿な環境下にて長期間断熱性能を維持することができるため、良好な断熱性能を有する物品とすることができる。
ここで、熱絶縁領域とは、真空断熱材により熱絶縁された領域であり、例えば、保温や保冷された領域、熱源や冷却源を取り囲んでいる領域、熱源や冷却源から隔離されている領域である。これらの領域は、空間であっても物体であってもよい。
物品として、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、保温器、保冷器等の電気機器、保温容器、保冷容器、輸送容器、コンテナ、貯蔵容器等の容器、車両、航空機、船舶等の乗り物、家屋、倉庫等の建築物、壁材、床材等の建築資材等が挙げられる。
本開示の真空断熱材付き物品の具体例としては、本体又は内部に熱源部または被保温部を有する機器、および真空断熱材を備える真空断熱材付き機器が挙げられる。
ここで、「熱源部」とは、機器自体が駆動することにより、当該機器本体または機器内部において発熱する部位をいうものであり、例えば電源やモーター等をいう。また、「被保温部」とは、機器本体または内部に熱源部を有さないが、上記機器が外部の熱源から熱を受けて、高温になる部位をいうものである。
本開示によれば、上記真空断熱材が上述の真空断熱材であり、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができるため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が高温となることを防止し、一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた高い省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
本開示における真空断熱材については、上述した「B.真空断熱材」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本開示における機器とは、本体又は本体の内部に熱源部もしくは被保温部を有するものである。本開示における機器としては、例えば、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(登録商標「エコキュート」)、冷蔵庫、自動販売機、炊飯ジャー、ポット、電子レンジ、業務用オーブン、IHクッキングヒーター、OA機器等の電化機器、自動車、住宅壁、輸送用コンテナ等が挙げられる。中でも本開示においては、上記機器が、自然冷媒ヒートポンプ給湯機、業務用オーブン、電子レンジ、自動車、住宅壁、輸送用コンテナであり、これらの機器に上述の本開示の真空断熱材を用いることが好ましい。
上記真空断熱材を機器に装着する態様としては、当該機器の熱源部もしくは被保温部に直接真空断熱材を貼り付けてもよく、被保温部と熱源部または外部熱源との間に真空断熱材を挟みこむようにして装着してもよい。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して、本開示をさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例の外包材の層構成中の「/」は、積層界面を示す。また、上記層構成中の「A/B/C」は、外包材の第1フィルムから熱溶着可能なフィルムに向かってA、B、Cの順で積層されていることを示す。
[実施例1]
(接着剤の調製)
ポリエステルを主成分とする主剤、脂肪族系ポリイソシアネートを含む硬化剤、および酢酸エチルを、重量配合比が主剤:硬化剤:酢酸エチル=10:1:14となるように混合し、2液硬化型の接着剤を調製した。
(真空断熱材用外包材の作製)
金属酸化物リン酸層付きフィルム(第1樹脂基材/金属酸化物リン酸層)/外側無機層付きフィルム(第2樹脂基材/無機層)/内側無機層付きフィルム(無機層/第3樹脂基材)/熱溶着可能なフィルムの層構成を有する外包材を作製した。上記金属酸化物リン酸層付きフィルムとして、一方の面側に金属酸化物リン酸層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(株式会社クラレ製、クラリスタCF)を、外側無機層付きフィルムとして、一方の面側に厚み65nmのアルミニウム蒸着層を有するPETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、VM−PET1519)を、内側無機層付きフィルムとして、一方の面側に厚み55nmのアルミニウム蒸着層を有する、厚み15μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム(株式会社クラレ製、TMXL)を、熱溶着可能なフィルムとして、未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、SC)を用いた。上記各層は、下層となる層の面上に上述の配合比で調製した接着剤を、塗布量3.5g/mとなるようにドライラミネート法により積層した。
すなわち実施例1では、第1フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/第2フィルム(PETフィルム/アルミニウム蒸着層)/第3フィルム(アルミニウム蒸着層/EVOHフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[実施例2]
内側無機層付きフィルムとして、一方の面側に厚み40nmのアルミニウム蒸着層を有する、厚み12μmのEVOHフィルム(株式会社クラレ製、VMXL)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
すなわち実施例2では、第1フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/第2フィルム(PETフィルム/アルミニウム蒸着層)/第3フィルム(アルミニウム蒸着層/EVOHフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[実施例3]
熱溶着可能なフィルムとして、厚み50μmの未延伸の直鎖状短鎖分岐ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製、製品名:TUX−HCE)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外包材を得た。
すなわち実施例3では、第1フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/第2フィルム(PETフィルム/アルミニウム蒸着層)/第3フィルム(アルミニウム蒸着層/EVOHフィルム)/熱溶着可能なフィルム(LLDPEフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[実施例4]
第1フィルムとして金属酸化物リン酸層付きフィルムを用い、第2フィルムおよび第3フィルムとして、一方の面側に厚み20nmのSiO蒸着層を有する、厚み12μmのPETフィルム(三菱樹脂社製、テックバリアLX)のSiO蒸着層上に更にオーバーコート層を形成したフィルムをそれぞれ用い、熱溶着可能なフィルムとして、厚み50μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、SC)を用い、実施例1と同様の方法で外包材を作成した。
第1フィルムの金属酸化物リン酸層付きフィルムは、一方の面側に金属酸化物リン酸層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(株式会社クラレ製、クラリスタCF)を用いた。第2フィルムおよび第3フィルムにおけるオーバーコート層は、「A.真空断熱材用外包材、(II)第2態様、2.オーバーコート層付きフィルム、(1)オーバーコート層」の項において説明されている、A液およびB液を用いたオーバーコート層形成用組成物における親水基含有樹脂の含有量が、アルコキシドの合計量100質量部に対して50質量部となるように調製されたオーバーコート層形成用組成物を用い、オーバーコート層形成用組成物をSiO蒸着層上に塗布して乾燥して形成した。なお、上記オーバーコート層形成用組成物により形成したオーバーコート層のことを、PVA−TEOS層とする。以下、同様とする。
すなわち実施例4では、第1フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/第2フィルム(PETフィルム/SiO蒸着層/PVA−TEOS層)/第3フィルム(PVA−TEOS層/SiO蒸着層/PETフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
実施例1〜4の各外包材の層構成を表2に示す。表2中の第1フィルム〜第3フィルムの各フィルムの構成を示す欄において、右欄に記載の層が、外包材の層構成において、熱溶着可能なフィルム側となる層である。
[実施例5]
(真空断熱材用外包材の作製)
金属酸化物リン酸層付きフィルム(第1樹脂基材/金属酸化物リン酸層)/オーバーコート層付きフィルム(樹脂基板/無機層/オーバーコート層)/熱溶着可能なフィルムの層構成を有する外包材を作製した。上記金属酸化物リン酸層付きフィルムおよび熱溶着可能なフィルムは、上記実施例1と同じ物を用いた。オーバーコート層付きフィルムとして、PETフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを用いた。上記各層は、下層となる層の面上に実施例1と同じ配合比で調製した接着剤を、塗布量3.5g/mとなるようにドライラミネート法により積層した。なお、上記オーバーコート層は、「A.真空断熱材用外包材、(II)第2態様、2.オーバーコート層付きフィルム、(1)オーバーコート層」の項において説明されている、A液およびB液を用いたオーバーコート層形成用組成物における親水基含有樹脂の含有量が、アルコキシドの合計量100質量部に対して50質量部となるように調製されたオーバーコート層形成用組成物を用いて作製されたものである。以下の実施例および比較例におけるオーバーコート層についても同様である。
すなわち実施例5では、第1フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/オーバーコート層付きフィルム(PETフィルム/シリカ蒸着層/PVA−TEOS層)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[実施例6]
オーバーコート層付きフィルムとして、PETフィルムの一方の面側にアルミニウム蒸着層を有し、上記アルミニウム蒸着層のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを用いたこと以外は、実施例5と同様にして外包材を得た。
すなわち実施例6では、第1フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/オーバーコート層付きフィルム(PETフィルム/アルミニウム蒸着層/PVA−TEOS層)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
実施例5〜6の各外包材の層構成を表3に示す。表3中の第1フィルムおよびオーバーコート層付きフィルムの各フィルムの構成を示す欄において、右欄に記載の層が、外包材の層構成において、熱溶着可能なフィルム側となる層である。
[比較例1]
金属酸化物リン酸層付きフィルムの代わりに、一方の面側に厚み65nmのアルミニウム蒸着層を有するPETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、VM−PET1519)を最外層(熱溶着可能なフィルムから最も離れた層)として用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
すなわち比較例1では、第1フィルム(PETフィルム/アルミニウム蒸着層)/第2フィルム(PETフィルム/アルミニウム蒸着層)/第3フィルム(金属アルミ蒸着層/EVOHフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[比較例2]
金属酸化物リン酸層付きフィルムの代わりに、ナイロンフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のナイロンフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを最外層として用い、外側無機層付きフィルムの代わりに一方の面側に金属酸化物リン酸層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(株式会社クラレ製、クラリスタCF)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
すなわち比較例2では、第1フィルム(ナイロンフィルム/シリカ蒸着層/PVA−TEOSコート層)/第2フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/第3フィルム(金属アルミ蒸着層/EVOHフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[比較例3]
内側(熱溶着可能なフィルム側)から、オーバーコート層/酸化アルミニウム蒸着層/オーバーコート層/酸化アルミニウム蒸着層/PETフィルムの順で積層されたフィルムを最外層に用いたこと以外は、比較例2と同様にして外包材を得た。
すなわち比較例3では、第1フィルム(PETフィルム/アルミナ蒸着層/PVA−TEOSコート層)/第2フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/第3フィルム(金属アルミ蒸着層/EVOHフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[比較例4]
内側無機層付きフィルム(第3フィルム)として、一方の面側に厚み55nmのアルミニウム蒸着層を有する、厚み15μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム(株式会社クラレ製、TMXL)に代えて、一方の面側に金属酸化物リン酸層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(株式会社クラレ製、クラリスタCF)を用いたこと以外は、比較例2と同様にして外包材を得た。
すなわち比較例4では、第1フィルム(ナイロンフィルム/シリカ蒸着層/PVA−TEOSコート層)/第2フィルム(PETフィルム/金属酸化物リン酸層)/第3フィルム(金属酸化物リン酸層/PETフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
[比較例5]
外側無機層付きフィルム(第2フィルム)として、一方の面側に金属酸化物リン酸層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(株式会社クラレ製、クラリスタCF)に代えて、PETフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを用い、内側無機層付きフィルム(第3フィルム)として、一方の面側に厚み55nmのアルミニウム蒸着層を有する、厚み15μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム(株式会社クラレ製、TMXL)に代えて、PETフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを用いたこと以外は、比較例2と同様にして外包材を得た。
すなわち比較例5では、第1フィルム(ナイロンフィルム/シリカ蒸着層/PVA−TEOSコート層)/第2フィルム(PETフィルム/シリカ蒸着層/PVA−TEOSコート層)/第3フィルム(PVA−TEOSコート層/シリカ蒸着層/PETフィルム)/熱溶着可能なフィルム(CPPフィルム)の順で積層された層構成を有する外包材を得た。
実施例1〜5および比較例1〜5について、金属酸化物リン酸層の有無、金属酸化物リン酸層の位置、熱溶着可能なフィルムを除く樹脂層(樹脂基材、樹脂基板)数を表4に示す。
[評価]
1.押し込み弾性率の測定
実施例1〜4、および比較例1〜5の各外包材について、第1フィルムの第1樹脂基材、第2フィルムの第2樹脂基材、第3フィルムの第3樹脂基材、および熱溶着層の押し込み弾性率をそれぞれ測定した。また、実施例5〜6の各外包材について、第1フィルムの第1樹脂基材、およびオーバーコート層付きフィルムの樹脂基板の押し込み弾性率をそれぞれ測定した。
押し込み弾性率は、外包材から所望のサイズのサンプルを切り出し、その断面または表面において、測定対象の層に対しビッカース圧子(対面角136°の正四角錐のダイヤモンド圧子)を装着させた超微小負荷硬さ試験機(ピコデンターHM500、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、ISO 14577:2015に準拠する方法により測定した。測定は、押込み速度0.1μm/秒、押込み深さ2μm、保持時間5秒間、引き抜き速度0.1μm/秒の条件で、温度23℃±2℃、湿度60%RH±5%RHの雰囲気中で行った。外包材のサンプルの断面を測定する場合は、上記サンプルの外周を硬化樹脂系接着剤で固めて固定し、固定したサンプルをダイヤモンドナイフで厚さ方向に切断して露出した断面を測定した。また、外包材のサンプルの表面を測定する場合は、測定対象面と反対側の面を硬化樹脂系接着剤で厚さ1.1mmの平坦なガラス板に固定して表面を測定した。押込み弾性指数を算出する際の各樹脂層の厚さは、切削断面の光学顕微鏡観察の計測により測定した。1つの条件では、各外包材から切り出した1つのサンプルにおいて、測定対象の層に対して少なくとも異なる5箇所で測定し、それらの測定値の平均をその条件の押し込み弾性率の値とした。結果を表4に示す。
2.初期酸素透過度の測定
屈曲処理前の上記各実施例および比較例で得られた外包材について、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度70℃、湿度80%RHの条件で初期酸素透過度を測定した。上記環境での酸素透過度の測定は、JIS K7126−2:2006(プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第2部:等圧法、付属書A:電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法)を参考に、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度70℃、湿度80%RHの条件で、酸素透過度測定装置として、オクストラン(OXTRAN2/20、米国企業のモコン(MOCON)社製)を用いて行った。上記測定では、外包材の厚み方向で対向する最表面のうち、熱溶着可能なフィルムとは反対側の最表面が酸素ガスに接するようにして装置に装着し、透過面積約50cm(透過領域:直径8cmの円形)とした。キャリアガスとして、少なくとも5%程度水素を含む窒素ガスを流量10cc/分で60分以上供給してパージした後、上記装置内に試験ガスとして、少なくとも99.5%の乾燥酸素を流し、流し始めてから平衡状態に達するまでの時間として12時間を確保した後、測定を開始した。1つの条件では3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の酸素透過度の値とした。結果を表5に示す。
3.屈曲処理後の酸素透過度の測定
上記各実施例および比較例で得られた外包材について、ゲルボフレックステスタ−により3回屈曲処理を実施後に、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度23℃、湿度60%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN)〕にて酸素透過度を測定して評価した。また、上記温度湿度条件に代えて、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度70℃、湿度80%RHの条件で、同様に酸素透過度を測定して評価した。屈曲処理は、以下の方法に従い行った。また、各条件での酸素透過度は、「2.初期酸素透過度の測定」で説明した操作に従い行った。測定結果を表5に示す。
(屈曲処理)
ASTM F392に準拠して、上記各実施例および比較例で得られた各外包材から、幅210mm×長さ297mm(A4サイズ)の長方形の試験片を切り出し、ゲルボフレックステスター(テスター産業社製、機種名:BE1006)を用い、上記試験片に屈折処理を行った。上記屈曲処理は、上記試験片の両短辺をゲルボフレックステスターのつかみ具に取り付け、試験片を最大ねじれ角が440°となるようにねじりながら、3.5インチだけ縮め、次いで試験片をねじらずに2.5インチだけさらに縮め、その後、試験片を逆の行程で、最初の状態に戻すことを1サイクルとし、各試験片について、3サイクル実施した。
4.屈曲処理による酸素透過度の劣化率
上記各実施例および比較例で得られた外包材について、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度70℃、湿度80%RHの条件での初期酸素透過度と、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度70℃、湿度80%RHの条件での屈曲処理後の酸素透過度と、から、下記の数式(1)に従い劣化率を算出した。測定結果を表5に示す。
劣化率(%)=[温度70℃、湿度80%RHの条件での屈曲処理後の酸素透過度]/[温度70℃、湿度80%RHの条件での初期酸素透過度]×100 … (1)
5.初期水蒸気透過度の測定
各実施例および比較例で得られた外包材について、JIS K7129:2008(付属書B:赤外線センサ法、以下同様とする。)に準拠して、温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で初期水蒸気透過度を測定した。測定は、水蒸気透過度測定装置(英国Technolox社製DELTAPERM)を用い、外包材の厚み方向(積層方向)において対向する最表面のうち、一方の最表面層である熱溶着可能なフィルムと反対側に位置する最表面層が高湿度側(水蒸気供給側)となるようにして、上記装置の上室と下室との間に装着し、透過面積約50cm(透過領域:直径8cmの円形)として、上記の温度および湿度の条件で行った。1つの外包材あたり1つの条件で3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均を、上記外包材のその条件での初期水蒸気透過度の値とした。測定結果を表5に示す。
6.高温高湿保管後の水蒸気透過度の測定
上記各実施例および比較例で得られた外包材について、温度70℃、湿度90%RHの雰囲気中で1000時間保管後の水蒸気透過度を、JIS K7129:2008(付属書B:赤外線センサ法、以下同様とする。)に準拠して、温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定した。測定は、まず、各外包材から、それぞれ幅21.0cm×長さ29.7cmの矩形状の切片を2枚準備し、それぞれの熱溶着可能なフィルムが向き合うようにして重ねて、全周に亘って端部(外包材の外縁から1cmの位置における幅10mmの領域)を大気圧中で170℃の加熱温度で熱溶着して接合し、試験片とした。上記試験片は、内部に何も内包されず、また、減圧されていない状態とした。この試験片を温度70℃、湿度90%RHの雰囲気中で1000時間保管し、保管後の上記試験片の熱溶着されていない領域を、幅9cm×長さ9cmの大きさで切り取り、切り取った外包材の水蒸気透過度を、「5.初期水蒸気透過度の測定」の項で説明した方法および条件で測定した。1つの外包材あたり1つの条件で3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均を、上記外包材のその条件での高温高湿保管後の水蒸気透過度の値とした。測定結果を表5に示す。
7.高温高湿保管前後の水蒸気透過度の劣化率
上記各実施例および比較例で得られた外包材について、初期水蒸気透過度と、温度70℃、湿度90%RHの雰囲気中で1000時間保管後の水蒸気透過度と、から、下記の数式(2)に従い劣化率を算出した。測定結果を表5に示す。
劣化率(%)=[温度70℃、湿度90%RHの雰囲気中で500時間保管後の水蒸気透過度]/[初期水蒸気透過度]×100 … (2)
8.真空断熱材の経時熱伝導率の測定
上記各実施例および比較例において得られた外包材を2枚重ねて、矩形の3方向をヒートシールして1方向のみが開口した袋体を作成した。芯材として290mm×300mm×30mmのグラスウールを用い、乾燥処理を行った後、上記袋体に、上記芯材および乾燥剤として10gの酸化カルシウムを収納して、上記袋体内部を真空排気した。その後、上記袋体の開口部分をヒートシールにより密封して、真空断熱材を得た。到達圧力は0.05Paとした。得られた上記真空断熱材を温度70℃、湿度90%RHの雰囲気で500時間保管した後、熱伝導率を測定した。上記熱伝導率は、JIS A1412−2:1999に従い、熱伝導率測定装置オートラムダ(HC−074、英弘精機製)を用いて熱流計法により測定した。測定は、上述の「B.真空断熱材 3.真空断熱材」の項に記載の測定方法の詳細に従い行った。温度70℃、湿度90%RHの雰囲気で500時間保管後の熱伝導率の測定結果を下記表5に示す。
(考察)
実施例1〜4の外包材は、比較例1〜5の外包材と比較して、高温高湿環境で長時間保管後の水蒸気透過度およびその劣化率が低かった。これは、金属酸化物リン酸層付きフィルム外包材が外包材の最外に位置することによるものと推量される。特に、実施例1の外包材と比較例3の外包材は、層構成において、金属酸化物リン酸層付きフィルムを第1フィルムとして用いたか第2フィルムとして用いたか、の点でのみ相違するが、高温高湿保管後の水蒸気透過度およびその劣化率は大きく異なることからも、金属酸化物リン酸層付きフィルム外包材が外包材の最外に位置することで、高温高湿保管後の外包材の水蒸気透過度およびその劣化率を低くすることができることが確認された。
実施例1〜4の外包材が、比較例1〜5の外包材と比較して、高温高湿保管後の水蒸気透過度およびその劣化率が低かったことから、実施例1〜4の各外包材を用いて形成した真空断熱材の、温度70℃、湿度90%RHの雰囲気中で500時間保管後の熱伝導率は、比較例1〜5の外包材を用いた真空断熱材の、温度70℃、湿度90%RHの雰囲気中で500時間保管後の熱伝導率と比較して低かった。
実施例4の外包材は、キャリアガスおよび試験ガスの状態が温度70℃、湿度80%RHの条件での屈曲処理後の酸素透過度の劣化率が、実施例1〜3の外包材よりも低い傾向を示した。これは、実施例4の外包材が実施例1〜3の外包材よりも押し込み弾性率の大きい樹脂基材をより多く有するためと思われる。すなわち、外包材が押し込み弾性率の大きい樹脂基材を多く有することで、屈曲により無機層にクラックが生じる場合であっても、高温高湿環境下において外包材が硬く伸びにくくなるため、クラックの拡張が抑えられ酸素透過度の劣化が抑制されると推量される。
実施例5〜6の外包材は、比較例1〜5の外包材と比較して、高温高湿保管後の水蒸気透過度および劣化率が低かった。これは、実施例5〜6で得られた外包材が、金属酸化物リン酸層付きフィルムを最外に有する構成であること、オーバーコート層付きフィルムを有することで、比較例1〜5の外包材よりもガスバリア性を有するフィルムの数が少ないにも関わらず、オーバーコート層付きフィルムによる水蒸気バリア性が発揮されたことによると推量される。
(まとめ)
外包材において、ガスバリア性を有する他のフィルムよりも金属酸化物リン酸層付きフィルムが外側に配置されている実施例1〜6で得られた外包材を用いて形成された真空断熱材は、高温高湿な環境で500時間保管された後でも、極めて低い熱伝導率を維持していることが分かる。一方、金属酸化物リン酸層付きフィルムを有していない比較例1、5や、上記各実施例と同様の層構成を有する外包材であっても、ガスバリア性を有する他のフィルムよりも金属酸化物リン酸層付きフィルムが内側に配置されている比較例2〜4で得られた外包材を用いて形成された真空断熱材は、経時熱伝導率が高いことが分かる。これらの結果から、ガスバリア性を有する他のフィルムよりも金属酸化物リン酸層付きフィルムを外側に配置することにより、上記ガスバリア性を有する他のフィルムの劣化が抑制され、高いガスバリア性を維持できていることが推測される。
また、外包材の内側にEVOHの基材が用いられている実施例1〜3および比較例1〜3の外包材は、屈曲試験後でも酸素透過度が低く維持されていることが分かる。無機層などのガスバリア性に寄与する各層は、上記屈曲試験により、ある程度劣化されていると推測されるが、それにもかかわらず上記各外包材は、酸素透過度が低く維持されており、基材として用いられているEVOHが酸素透過度の維持に貢献していることが推測される。
1 … 第1フィルム(金属酸化物リン酸層付きフィルム)
2 … 第2フィルム(外側無機層付きフィルム)
3 … 第3フィルム(内側無機層付きフィルム)
4 … 熱溶着可能なフィルム
5 … 第1樹脂基材
6 … 金属酸化物リン酸層
7 … 第2樹脂基材
8a、8b、8c … 無機層
9 … 第3樹脂基材
10、10A、10B … 真空断熱材用外包材
11 … 芯材
13 … オーバーコート層付きフィルム
14 … 樹脂基板
15 … オーバーコート層
20 … 真空断熱材

Claims (7)

  1. 少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、
    前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有し、
    前記第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、
    前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とする真空断熱材用外包材。
  2. 前記第3樹脂基材が、親水基含有樹脂を含み、
    前記第3樹脂基材が、前記第3フィルムの無機層の前記熱溶着可能なフィルム側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
  3. 少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、
    前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、
    前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、
    前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、
    前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材用外包材。
  4. 芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
    前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
    前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有し、
    前記第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、
    前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とする真空断熱材。
  5. 芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
    前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
    前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、
    前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、
    前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、
    前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材。
  6. 熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
    前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
    前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、第2フィルムと、第3フィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
    前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、且つ、金属酸化物の粒子同士がリン原子を介して結合された金属酸化物リン酸層とを有し、
    前記第2フィルムは、第2樹脂基材と、前記第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有し、
    前記第3フィルムは、第3樹脂基材と、前記第3樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有することを特徴とする真空断熱材付き物品。
  7. 熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
    前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
    前記真空断熱材用外包材は、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有し、
    前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、
    前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、
    前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、
    前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材付き物品。
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