JP7238566B2 - 真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品 - Google Patents

真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品 Download PDF

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Description

本開示は、真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品に関するものである。
近年、物品の省エネルギー化を目的として、真空断熱材が用いられている。真空断熱材は、外包材の袋体内に芯材が配置され、上記袋体内が大気圧よりも圧力が低い真空状態に保持されている部材であり、内部の熱対流が抑制されるため、良好な断熱性能を発揮することができる。なお、真空断熱材に用いられる上記外包材のことを、真空断熱材用外包材、または単に外包材と称して説明する。
真空断熱材用外包材は、真空断熱材内部の真空状態を長期間保持するために、酸素や水蒸気等のガスの透過を抑制するためのガスバリア性能、芯材を包む際に端部を接合して上記芯材を封止密閉するための熱溶着性等の物性が要求される。これらの物性を満たすため、外包材は、一般に、部材としてガスバリア層および熱溶着可能なフィルムを含む構成が採用される(特許文献1~4)。ガスバリア層としては、例えば、数μm~数10μmレベルの厚みを有する金属箔や、樹脂基材の片面又は両面に数nm~数100nmレベルの厚みであり、無機物を含むガスバリア膜を有するガスバリアフィルム等が用いられる。
ガスバリア層のなかでも、特にガスバリアフィルムは、薄厚でも高いガスバリア性能を発揮することが可能であり、ヒートブリッジが生じにくい。また、ガスバリアフィルムは、金属箔よりも屈曲性が良好であるため、真空断熱材を形成する際に欠陥が生じにくく、欠陥発生によるガスバリア性能の低下が生じにくい。このため、ガスバリアフィルムは、真空断熱材用外包材のガスバリア層としての採用が進められている。
特開2003-262296号公報 特開2013-103343号公報 特開2006-70923号公報 特開2014-62562号公報
しかしながら、一般的な真空断熱材用外包材では、高温高湿環境下で長期使用した場合、基材の含水による影響により高温乾燥環境下で使用した場合とは異なる挙動を示し、バリア性能の劣化が生じる場合があり、高温高湿環境において長期間、断熱性能を維持することが困難である場合があった。
本開示は、高温高湿環境下においても、長期的に真空断熱材の断熱性能の劣化を抑制することが可能な真空断熱材用外包材、およびそれを用いた真空断熱材ならびに真空断熱材付き物品を提供することを主目的とする。
本開示は、熱溶着可能なフィルムと、上記熱溶着可能なフィルムの第1の主面側に位置する、樹脂基材および上記樹脂基材の片面または両面に配置されたガスバリア膜を有する1つ以上のガスバリア層と、を有する真空断熱材用外包材であって、上記真空断熱材用外包材は、二つの同一の上記真空断熱材用外包材を上記熱溶着可能なフィルムの第2の主面同士を貼り合わせた状態で、周波数10Hzの動的粘弾性測定により損失正接tanδを測定し、温度70℃湿度10%RHの初期状態における上記損失正接tanδの値をA、上記初期状態から5%RH/分で温度70℃湿度90%RHに加湿した直後の加湿時状態における上記損失正接tanδの値をB、温度70℃湿度90%RHを1時間保持した高湿保持時における上記損失正接tanδの値をCとしたとき、上記損失正接tanδの加湿時変化率であるB/Aが1.0以上1.5以下であり、かつ、上記損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bが0.8以上1.2以下である、真空断熱材用外包材を提供する。
また、本開示は、芯材と、上記芯材が封入された外包材とを有する真空断熱材であって、上記外包材が、上述した真空断熱用外包材である、真空断熱材を提供する。
また、本開示は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材が封入された外包材とを有し、上記外包材が、上述した真空断熱用外包材である、真空断熱材付き物品を提供する。
本開示によれば、高温高湿環境においても、真空断熱材の断熱性能を長期間維持することが可能な真空断熱材用外包材を提供することができるという効果を奏する。
本開示の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。 本開示の真空断熱材の一例を示す概略斜視図および断面図である。 本開示における損失正接tanδの加湿時変化率及び高湿保持時変化率を求めるための温湿度プログラムである。 実施例で使用した、成膜装置の概略図である。 実施例で使用した、成膜装置のプラズマ前処理機構の概略図である。 実施例で使用した、成膜装置の成膜機構の概略図である。
本開示は、真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品を実施態様に含む。以下、本開示の実施態様を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
また、本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
尚、本明細書において、損失正接tanδを、「tanδ」と略する場合がある。また、「真空断熱材用外包材」を「外包材」と略する場合がある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2つの真空断熱材用外包材の熱溶着可能なフィルム同士を向かい合わせて貼り合わせたものの損失正接tanδの加湿時変化率であるB/Aが1.0以上1.5以下であり、かつ、損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bが0.8以上1.2以下である真空断熱材用外包材であれば、高温高湿環境において、真空断熱材の断熱性能を長期間維持することができることを見出した。
周囲環境の水分が樹脂材料内部に侵入し吸着すると可塑効果を与え、損失正接tanδ曲線は相対湿度の上昇とともにガラス転移を低温側へシフトさせることが知られており、樹脂材料に対する水の吸着量によって損失正接tanδの値は変化する。このことから、一定の湿度環境下におかれた複数層からなる積層体を考えた場合、最表面に位置しない(積層体内部に存在する)層は、隣接する層の吸湿性や水蒸気透過性の性質の違いによって、吸着する水の量が変化すると推量された。
本開示では、損失正接tanδを、真空断熱材用外包材内の湿度の指標として利用し、損失正接tanδの高温での加湿時変化率及び高温高湿での保持時変化率が上記範囲を満たすこと、すなわち、両条件における損失正接tanδの値の変化を低く抑えることは、真空断熱材用外包材を高温高湿環境下で使用した場合でも、真空断熱材用外包材内部の湿度を少ないものとすることを可能とするものとなることを見出した。このように、両条件における損失正接tanδの値の変化を低く抑えることにより、本開示の真空断熱材用外包材は高湿度状態に晒されることによるガスバリア層の劣化、例えば、金属アルミが水酸化アルミニウムとなることによる化学的劣化、基材の膨張・収縮による物理的劣化等を抑制することが可能であると推定される。これにより、上述した効果、すなわち高温高湿環境において使用した場合でも、真空断熱材の断熱性能を長期間維持することが可能な真空断熱材用外包材を提供することを可能としたものである。
I.真空断熱材用外包材
本開示の真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムと、上記熱溶着可能なフィルムの第1の主面側に位置する、樹脂基材および上記樹脂基材の片面または両面に配置されたガスバリア膜を有する1つ以上のガスバリア層と、を有する真空断熱材用外包材であって、上記真空断熱材用外包材は、二つの同一の上記真空断熱材用外包材を上記熱溶着可能なフィルムの第2の主面同士を貼り合わせた状態で、周波数10Hzの動的粘弾性測定により損失正接tanδを測定し、温度70℃湿度10%RHの初期状態における上記損失正接tanδの値をA、上記初期状態から5%RH/分で温度70℃湿度90%RHに加湿した直後の加湿時状態における上記損失正接tanδの値をB、温度70℃湿度90%RHを1時間保持した高温高湿保持時における上記損失正接tanδの値をCとしたとき、上記損失正接tanδの加湿時変化率であるB/Aが1.0以上1.5以下であり、かつ、上記損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bが0.8以上1.2以下である、真空断熱材用外包材である。
図1は、本開示の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図であり、熱溶着可能なフィルム1と、3つのガスバリアフィルム2A、2B、2Cとを有する。ガスバリアフィルム2A、2B、2Cはそれぞれ、樹脂基材3A、3B、3Cおよび樹脂基材3A、3B、3Cの一方の面側に配置されたガスバリア膜4A、4B、4Cを有する。
本開示の真空断熱材用外包材10は、他の同一の真空断熱材用外包材10と熱溶着可能なフィルム1の第2の主面同士が対向するように貼り合わせた状態で、周波数10Hzの動的粘弾性測定により得られる損失正接tanδの、温度70℃湿度10%RHの初期状態における値をA、上記初期状態から5%RH/分で温度70℃湿度90%RHに加湿した直後の加湿時状態における値をB、温度70℃湿度90%RHを1時間保持した高湿保持時における値をCとしたとき、上記損失正接tanδの加湿時変化率であるB/A、および上記損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bが所定の範囲内とされている。
以下、本開示における外包材の特性および構成について、説明する。
A.特性
本開示の真空断熱材用外包材は、上記損失正接tanδの加湿時変化率であるB/Aが1.0以上1.5以下であり、かつ、上記損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bが0.8以上1.2以下であることを特徴とする。
本開示における損失正接tanδは、真空断熱材用外包材を、他の同一の真空断熱材用外包材と上記熱溶着可能なフィルムの第2の主面同士を貼り合わせた外包材積層体を、周波数10Hzの動的粘弾性測定により得られる貯蔵弾性率E’に対する損失弾性率E”の比である。
ここで、上記2つの真空断熱材用外包材を貼り合わせる際のシール方法およびその条件は特に限定されないが、インパルスシーラー(富士インパルス社製 FA-600)を用いて、シール幅10mmとして、加熱時間1.0秒、冷却時間2.0秒の条件でシールすることができる。
外包材の損失正接tanδは、上記熱溶着可能なフィルム同士が貼り合わされた外包材積層体から、シール部分のシール幅方向が短手方向となるような測定試料を採取し、該測定試料について測定することができる。測定方向が複数の方向(例えば8方向)となるように、測定試料は、異なる方向でシールした複数の外包材積層体のそれぞれから採取することが好ましく、損失正接tanδは、JIS K7244-4:1999(プラスチック-動的機械特性の試験方法 第4部:引張振動-非共振法)を参考に、後述する測定条件に基づき、動的粘弾性測定装置を用いた引張法により測定した値の平均値とすることが出来る。動的粘弾性測定装置は、例えば、アイティー計測制御製 DVA-225を用いることができる。
そして、図3に示す温湿度プログラム及び下記条件で損失正接tanδの測定を行い、損失正接tanδ値の、温度70℃湿度10%RHの初期状態における値A、上記初期状態から5%RH/分で温度70℃湿度90%RHに加湿した直後の加湿時状態における値B、温度70℃湿度90%RHを1時間保持した高湿保持時における値Cを測定する。なお、引張貯蔵弾性率を測定する各温度は±0.5℃の範囲内で許容することができる。また、温度70℃湿度10%RHの初期状態における値Aとは、温度70℃湿度10%RHで60分間保持した後の値とすることができる。温度70℃湿度90%RHに加湿した直後における値Bとは、温度70℃湿度10%RHで60分間保持した後、昇湿速度5%RH/分で温度70℃湿度90%RHに加湿した後、3分保持した後の値とすることができる。温度70℃湿度90%RHを1時間保持した高湿保持時における値Cとは、温度70℃湿度10%RHで60分間した後、昇湿速度5%RH/分で温度70℃湿度90%RHに加湿し、その温湿度で60分間保持した後の値とすることができる。
次いで、上記損失正接tanδの加湿時変化率であるB/A、上記損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bを、算出する。
<損失正接tanδ値の測定条件>
・測定試料:20mm(長手方向)×5mm(短手方向)の矩形
・チャック間距離(チャック間測定試料長さ):15mm
・測定モード:引張法(正弦波歪み 引張モード)
・周波数:10Hz
・静荷重:25.00cN~300.00cN
・歪み量:7.00μm~7.60μm
・静/動力比:1.5
本開示において、損失正接tanδの加湿時変化率であるB/Aは、1.0以上1.5以下であるが、好ましくは、1.0以上1.4以下であり、更に好ましくは1.0以上1.3以下である。
損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bは、0.8以上1.2以下であるが、好ましくは、0.9以上1.1以下であり、更に好ましくは、0.93以上1.05以下である。
損失正接tanδの加湿時変化率及び高湿保持時変化率が上記範囲内であれば、損失正接tanδの変化率C/Aの値は特に限定されないが、例えば1.7以下とすることができ、好ましくは、0.8以上1.4以下であり、更に好ましくは、0.9以上1.2以下である。このような損失正接tanδの変化率C/Aであれば、確実に、高温高湿環境において、真空断熱材の断熱性能を長期間維持することが可能となる。
B.構成
本開示の真空断熱材用外包材の構成は、熱溶着可能なフィルムと、上記熱溶着可能なフィルムの第1の主面側に位置する、樹脂基材および上記樹脂基材の片面または両面に配置されたガスバリア膜を有する1つ以上のガスバリア層と、を有する真空断熱材用外包材であり、損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率が上記範囲を満たすものであれば、特に限定されない。損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率は、ガスバリア層の組成やその積層順、熱溶着可能なフィルムの組成等によって変動する。
例えば、本開示においては、下記に例示するガスバリア層や熱溶着可能なフィルムを、真空断熱材用外包材の損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率が上記範囲を満たすように選択し、組み合わせることによって構成することができる。
(1)ガスバリア層
本開示の真空断熱材用外包材におけるガスバリア層は、熱溶着可能なフィルムの一方の面側(第1の主面側)に配置される。ここで、本開示におけるガスバリア層とは、樹脂基材と上記樹脂基材の少なくとも一方の面に配置されたガスバリア膜とを有する複合フィルムをいう。本開示の真空断熱材用外包材は、ガスバリア層を1層有するものでも良いが、2層以上、特には、3層以上有することが好ましい。
また、ガスバリア層を3層有するもので、損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率が上記範囲を満たすものも製造効率上好ましいものである。
a.ガスバリア膜
本開示の真空断熱材用外包材における、1層以上のガスバリア層は、主にガスバリア膜によりガスバリア性能を発揮することができる。本開示においてガスバリア膜は、2つの外包材同士を重ね合わせた外包材積層体の損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率が上記範囲を満たすものであれば特に限定されない。
本態様におけるガスバリア膜としては、例えば、下記に詳述する、金属膜、無機化合物膜、M-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する膜、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜、金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜、等が挙げられる。
(i)金属膜
金属膜を構成する金属としては、例えば、金属アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金を挙げることができる。
金属膜は、蒸着法により形成される蒸着膜であってもよく、コーティング等の塗布法により形成されるコート膜であってもよい。蒸着膜である場合、1回蒸着等により形成されていてもよく、複数回蒸着により形成されていてもよい。金属膜は、塗布法、蒸着法、圧着法等の従来公知の方法を用いて成膜することができる。
中でも樹脂基材との密着性が高く、高ガスバリア性能を発揮することができる観点から蒸着膜であることが好ましい。1つのガスバリア膜は、1回蒸着により形成された単膜であってもよく、複数回蒸着により形成され積層構造を有していてもよい。
(ii)無機化合物膜
無機化合物膜を構成する無機化合物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウ、ムセリウム、亜鉛等の金属元素または非金属元素の酸化物、酸化窒化物、窒化物、酸化炭化物、酸化炭化窒化物等が挙げられる。具体的には、SiO等のケイ素酸化物、Al等のアルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、ケイ素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、ケイ素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化ケイ素、酸化ケイ素亜鉛等を挙げることができる。無機化合物は、単独で用いてもよいし、上述の材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
無機化合物膜は、蒸着法により形成される蒸着膜であってもよく、コーティング等の塗布法により形成されるコート膜であってもよい。蒸着膜である場合、1回蒸着等により形成されていてもよく、複数回蒸着により形成されていてもよい。無機化合物膜は、塗布法、蒸着法、圧着法等の従来公知の方法を用いて成膜することができる。
中でも樹脂基材との密着性が高く、高ガスバリア性能を発揮することができる観点から蒸着膜であることが好ましい。1つのガスバリア膜は、1回蒸着により形成された単膜であってもよく、複数回蒸着により形成され積層構造を有していてもよい。
(iii)M-O-P結合を有する膜
M-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する膜としては、例えば金属酸化物およびリン化合物の反応生成物を含む膜が挙げられる。
上記金属酸化物としては、原子価が2価以上の金属の酸化物を挙げることができ、具体的には、マグネシウム、カルシウム等の周期表第2族の金属;亜鉛等の周期表第12族の金属;アルミニウム等の周期表第13族の金属;ケイ素等の周期表第14族の金属;チタン、ジルコニウム等の遷移金属等の金属の酸化物を挙げることができる。中でも、酸化アルミニウム(アルミナ)が好ましい。
また、上記リン化合物としては、例えばリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。中でもリン酸が好ましい。具体的な金属酸化物およびリン化合物の反応生成物については、例えば、特開2011-226644号公報に開示される反応生成物と同様とすることができる。
M-O-P結合の存在は、赤外線吸収スペクトル(測定波数域;800cm-1以上1400cm-1以下の範囲内)において、最大赤外線吸収ピークが1080cm-1以上1130cm-1以下の範囲内に出現することで確認することができる。赤外線吸収スペクトルの測定方法としては、特に限定されず、例えば、全反射測定法(ATR法)による測定方法、外包材のガスバリア膜からサンプルをかきとり、その赤外線吸収スペクトルをKBr法で測定する方法、採取したサンプルを顕微赤外分光法により測定方法等を用いることができる。
(iv)ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜は、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に多価金属イオンによる架橋結合を有する。ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩は、ポリカルボン酸系ポリマーおよび多価金属化合物の反応生成物である。
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩の存在は、赤外線吸収スペクトルの1490cm-1~1659cm-1の範囲内において、1560cm-1付近に吸収極大を有する吸収ピークの出現により確認することができる。上記ピークは、多価金属と塩を形成しているカルボキシル基(-COO)に帰属するC=O伸縮振動のピークである。通常、カルボキシル基の塩(-COO)に帰属するC=O伸縮振動は、1490cm-1~1659cm-1の赤外光波数領域に、1560cm-1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。赤外線吸収スペクトルは、透過法、ATR法(減衰全反射法)、KBrペレット法、拡散反射法、光音響法(PAS法)等で測定することができる。
ポリカルボン酸系ポリマーとしては、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体を挙げることができる。
また、多価金属化合物としては、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を架橋可能であれば特に制限されず、例えば、アルカリ土類金属、周期表8族金属、周期表11族金属、周期表12族金属、周期表13族金属等の金属の、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等が挙げられる。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみの使用であっても、2種以上を併用してもよい。
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩としては、例えば、アクリル酸亜鉛、メタアクリル酸亜鉛、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸マグネシウム、メタクリル酸カルシウム等が挙げられる。
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜は、他に、バインダー樹脂を含むことができる。上記バインダー樹脂としては、親水性バインダーや疎水性バインダーを用いることができる。親水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルソース、アルギン酸ナトリウム、エチレン-ビニルアルコール共重合体、デンプン、デキストラン、ゼラチン、およびそれらの変性物が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜は、例えば、溶媒にカルボン酸系樹脂、多価金属化合物およびバインダー樹脂を溶解したバリア層形成用溶液を塗布し、電子線を照射して形成することができる。また、ポリカルボン酸系重合体層と多価金属化合物含有層とを隣接させて積層し、層間反応によりポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む膜を形成することができる。
(v)金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜
金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜は、一般式R M(OR(ただし、式中、R1、Rは、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上の金属アルコキシドと、親水基含有樹脂と、を含有し、さらに、ゾルゲル法によって重縮合して得られるゾルゲル化合物を含む膜である。以下、金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物膜のことをゾルゲル化合物膜とする。
ゾルゲル化合物膜は、親水基含有樹脂中の炭素原子(C)と金属アルコキシド中の金属原子(M)との間に、酸素(O)を介した架橋結合C-O-M結合を有することができる。
金属アルコキシドは、一般式R M(ORで表わされるものであり、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物等であってもよい。Mとしては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等が挙げられる。また、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等を挙げることができる。また、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR)が存在する場合には、(OR)は同一であっても、異なってもよい。
中でも金属アルコキシドは、ケイ素を含むアルコキシシランであることが好ましい。アルコキシシランとしては、テトラメトキシシランSi(OCH、テトラエトキシシランSi(OC、テトラプロポキシシランSi(OC、テトラブトキシシランSi(OC等が挙げられる。
親水基含有樹脂は、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノ基(-NH)、カルボニル基(>CO)、スルホ基(-SOH)等の親水基を有する樹脂である。親水基含有樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いても良く、併用しても良い。
ゾルゲル化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)と、ポリビニルアルコール(PVA)との重縮合体である、SiとOとPVAとを含有するゾルゲル化合物が挙げられる。
ゾルゲル化合物膜は、例えば、金属アルコキシド、親水基含有樹脂、シランカップリング剤、ゾル-ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒等を混合して調製したバリア層形成用溶液を塗布し、乾燥後加熱処理を行うことで形成することができる。
本開示において説明しないゾルゲル化合物膜のその他詳細については、例えば特許第5568897号公報、特開2017-61956号公報に開示される詳細と同様とすることができる。
(vi)その他
ガスバリア膜の厚みは、2つの外包材同士を重ね合わせたものの損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率が上記範囲を満たし、外包材全体で所望のガスバリア性能を発揮可能であれば特に限定されず、ガスバリア膜の種類に応じて適宜設定することができる。ガスバリア膜の厚みとしては例えば、5nm以上500nm以下の範囲内とすることができ、中でも10nm以上400nm以下の範囲内とすることができ、特に20nm以上300nm以下の範囲内とすることができる。なお、ガスバリア膜が金属膜または無機化合物膜である場合、ガスバリア膜の厚みの上限はさらに小さくすることができ、例えば金属膜または無機化合物膜の厚みとしては、5nm以上200nm以下の範囲内、中でも10nm以上150nm以下の範囲内とすることができる。
ガスバリア膜が積層構造を有する場合、同一組成の膜を組み合わせてもよく、異なる組成の膜を組み合わせてもよい。ガスバリア膜が積層構造を有する場合、積層構造を構成する多層膜全体でガスバリア膜1つ分とする。
なお、1つのガスバリア膜が積層構造を有する場合、上記ガスバリア膜の厚みとは、1つのガスバリア膜の積層構造全体での厚みをいう。上記ガスバリア膜の厚みが上述の範囲に満たないと、製膜が不十分となり所望のガスバリア性能を発揮することができない場合がある。また、強度を確保できず経時劣化する場合がある。一方、上記ガスバリア膜の厚みが上述の範囲を超えると、折り曲げ等の機械的な応力を受けたときに欠陥が発生しやすくなる場合や、可撓性が低下する場合がある。また、外包材全体に占める無機物の含有率が過剰となり、真空断熱材においてヒートブリッジが生じやすくなる場合がある。
ガスバリア膜は、少なくとも樹脂基材の片面に配置されていればよく、樹脂基材の両面にそれぞれ配置されていてもよい。
ガスバリア膜の形成方法は、樹脂基材の片面または両面に所望の厚みで成膜可能な方法であればよく、塗布法、蒸着法、圧着法等、ガスバリア膜の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。
b.樹脂基材
樹脂基材を構成する樹脂としては、2つの外包材同士を重ね合わせたものの損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率が上記範囲を満たし、ガスバリア膜を支持することができれば特に限定されず、ガスバリアフィルムに用いられる公知の樹脂が挙げられる。上記樹脂として具体的には、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物、各種のナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。樹脂基材は上述した各種樹脂を1以上含むことができる。
上記樹脂基材は、上述した樹脂群から選択される少なくとも1種を主成分とする樹脂フィルムとすることができる。上記樹脂フィルムは、未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸がされていてもよい。また、上記樹脂基材は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。
ここで、主成分とは、上述の高温高湿保持後の特性を満たす程度に、所定の樹脂を含有することをいう。具体的には、樹脂フィルム中の上記所定の樹脂の含有量が、50質量%以上であり、中でも90質量%以上であることが好ましく、特に樹脂フィルムが所定の樹脂のみで構成されていることが好ましい。なお、同一種類の樹脂を2以上含む場合、主成分とは、同一種類の2以上の樹脂の総和が上記範囲内にあることを言う。具体的には、上記樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂の2種類のポリエステル樹脂を含む場合、樹脂フィルムがポリエステル樹脂を主成分とするとは、樹脂フィルム中の上記ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量の総和が、上述した範囲内にあることをいう。ポリエステル樹脂以外の他の樹脂についても同様である。
すなわち、上記樹脂基材として好適に用いることが可能な樹脂フィルムとしては、ポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、環状ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレート樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、アクリロニトリル-スチレン共重合体フィルム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体フィルム等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂フィルムは吸湿性が低く、損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率を上記範囲内とする点で好ましい。また、ポリエステル樹脂フィルムは熱による伸縮性が小さく、比較的安価だからである。
上記樹脂基材は、添加剤を含んでいても良い。上記添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂基材は、表面処理が施されていてもよい。ガスバリア膜との密着性を向上させることができるからである。
上記樹脂基材の厚みは、ガスバリア膜を支持することが可能であれば特に限定されないが、例えば6μm以上200μm以下の範囲内とすることができ、好ましくは9μm以上100μm以下の範囲内である。
(2)熱溶着可能なフィルム
本態様の真空断熱材用外包材における熱溶着可能なフィルムは、真空断熱材用外包材の厚み方向の一方の最外に位置し、一方の最外面を担う部材である。上記熱溶着可能なフィルムは、真空断熱材用外包材を用いて真空断熱材を作製する際に芯材と接し、また、芯材を封止する際に、芯材を介して対向する一対の真空断熱材用外包材の周縁同士を熱溶着により接合する部材である。
上記熱溶着可能なフィルムには、加熱によって溶融し、融着可能な材料が用いられる。このような材料としては、熱可塑性樹脂が好適に用いられる。上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、テトラフルオロエチレン(C)・エチレン(C)共重合体(ETFE)樹脂等を主成分とするフィルム等が挙げられる。
上記熱溶着可能なフィルムは、上述した熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムが好ましい。具体的には、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンや未延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリ酢酸ビニル系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ウレタン樹脂フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂フィルム、テトラフルオロエチレン(C)・エチレン(C)共重合体(ETFE)樹脂フィルム等が挙げられる。主成分とは、熱溶着可能なフィルム中50質量%以上を占める成分をいう。
上記熱溶着可能なフィルムは、設定する融点に応じて上記の樹脂フィルムから適宜選択することができる。例えば、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等の低融点樹脂を主成分とする樹脂フィルムは、汎用性が高く、また、熱溶着可能なフィルムの融点を低く設定することができ比較的低温において熱溶着可能である観点から、好適に用いることができる。また、PP樹脂、EVOH樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、ETFE樹脂、PPS樹脂等の融点が145℃以上の樹脂を主成分とする樹脂フィルムは、熱溶着可能なフィルムの融点を145℃以上に設定することが可能であり、熱溶着可能なフィルムの熱劣化を防ぐことができ、より高温環境下での使用に耐え得る真空断熱材を得ることができる観点から、好適に用いることができる。
上記熱溶着可能なフィルムは、上述した樹脂の他に、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、充填剤等の他の材料を含んでいてもよい。
上記熱溶着可能なフィルムの融点は、材料にもよるが、50℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは145℃以上である。また、上記融点は、300℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは290℃以下、より好ましくは280℃以下である。熱溶着可能なフィルムの融点を上記範囲内で設定することで、本開示の外包材を用いて製造された真空断熱材の使用環境下において、外包材の封止面の剥離を抑制することができ、高温環境下での使用に耐え得る。また、本開示の外包材を用いて真空断熱材を製造する際に、封止のための加熱によりガスバリアフィルムや熱溶着可能なフィルムの熱劣化を抑制することができる。さらに、熱溶着可能なフィルムは、融点を高くすることで、長期間高温環境において使用される場合であっても膨張または収縮しにくくすることができる。
本開示の外包材における上記熱溶着可能なフィルムの融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて下記の方法により測定することができる。まず、外包材から熱溶着可能なフィルムを剥離して約10mgの測定試料を得る。この測定試料をアルミニウム製のセルに入れ、示差走査熱量計(NETZSCH社製 DSC204)を用いて、窒素雰囲気下で20℃から昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、その温度で10分間保持する。さらに降温速度10℃/分で20℃まで冷却し、その温度で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で300℃まで再度昇温する(2度目の昇温)。2度目の昇温の際に観測される融点での接線と、上記融点より低温側のDSC曲線の基線との交点を、熱溶着可能なフィルムの融点とすることができる。
上記熱溶着可能なフィルムの厚みは、特に限定されないが、例えば15μm以上、100μm以下の範囲内、好ましくは、25μm以上、90μm以下の範囲内、より好ましくは30μm以上、80μm以下の範囲内とすることができる。熱溶着可能なフィルムの厚みを上記の範囲内とすることで、外包材のガスバリア性の低下を抑制し、また、真空断熱材の製造に際し、2枚の外包材を接合する際に、所望の接着力を得ることができる。
C.任意の構成
本開示の真空断熱材用外包材は、厚み方向の一方の最外に熱溶着可能なフィルムを有するが、反対側の最外に位置するガスバリア層の上に、更に、保護フィルムを有することができる。保護フィルムを有することで、真空断熱材用外包材を損傷や劣化から保護することができる。上記保護フィルムとしては、熱溶着可能なフィルムよりも高融点を示す汎用の樹脂フィルムを用いることができ、例えばナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。上記保護フィルムの厚みは特に限定されず、適宜設定することができる。
本開示の真空断熱材用外包材は、接着剤層を有していてもよい。上記接着剤層は、例えば熱溶着可能なフィルムとガスバリア層との間、2つのガスバリア層の間、ガスバリア層と保護フィルムとの間等に位置することができる。上記接着剤層の材料としては、従来公知の感圧性接着剤、熱可塑性接着剤、硬化性接着剤等を用いることができる。
D.好ましい実施形態
本開示の好ましい実施形態としては、真空断熱材用外包材の熱溶着可能なフィルムと反対側の最外に水蒸気バリア性能が高いガスバリア層を配置する態様(第1実施態様)、上記真空断熱材外包材に吸湿性が低い樹脂材料を有する樹脂層が用いられる態様(第2実施態様)、少なくとも1つのガスバリア層の樹脂基材が乾燥剤を含む態様(第3実施態様)等を挙げることができる。
1.第1実施態様
本開示の真空断熱材用外包材の第1実施態様は、ガスバリア層を2層以上有する真空断熱材用外包材であって、上記2層以上のガスバリア層のうち上記真空断熱材用外包材の熱溶着可能なフィルムと最も離れた位置に配置されたガスバリア層を、最も高い水蒸気バリア性を有するものとする態様である。
以下、本態様の真空断熱材用外包材の詳細について説明する。
本態様においては、真空断熱材用外包材が2層以上のガスバリア層を有する場合、上記2層以上のガスバリア層のうち、外包材における熱溶着可能なフィルムから最も遠い位置に、水蒸気バリア性能が高いものを配置する。このように外気側に水蒸気バリア性能が高いガスバリア層を配置することによって、高温高湿環境下で使用した場合、外包材内部の湿度の上昇を抑えることが可能となり、損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率を上記範囲内とすることができる。これは、外包材内部の湿度を低く保つことであり、最終的に外包材中のガスバリア膜の劣化を抑制することができる。
ここで、水蒸気バリア性能が高いガスバリア層とは、外包材が2層以上のガスバリア層を有する場合、その中で最も高い水蒸気バリア性を有するものである。このような、水蒸気バリア性能が高いガスバリア層の水蒸気透過度としては、例えば、0.5g/(m・day)以下であり、中でも好ましくは0.2g/(m・day)以下、特に、0.1g/(m・day)以下とすることができる。
ガスバリア層の水蒸気透過度の測定は、JIS K7129:2008(付属書B:赤外線センサ法、以下同様とする。)に準拠して、水蒸気透過度測定装置を用いて、温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定することができる。水蒸気透過度測定装置は、例えば、米国MOCON社製の「PERMATRAN」を用いることができる。
本態様におけるガスバリア層のガスバリア膜および樹脂基材、さらには熱溶着可能なフィルム等は、上記「B.構成」の項で説明したものを適宜選択して用いることができる。
2.第2実施態様
本開示の真空断熱材用外包材の第2実施態様は、上記真空断熱材外包材に吸湿性が低い樹脂材料を有する樹脂層が用いられる態様である。ここで樹脂層としては、例えばガスバリア層の樹脂基材や、熱溶着可能なフィルム、さらには真空断熱材とした際に最も外気側に配置される上述した保護フィルム等を挙げることができる。
このように上記樹脂層に吸湿性が低い材料から構成されたものを用いることにより、高温高湿環境下で真空断熱材を使用した場合でも、外包材内部の湿度が上昇することを抑えることが可能であり、上記損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率を上記範囲内とすることができる。これにより、最終的にガスバリア膜の劣化を抑制することができる。
上記樹脂基材に用いることが可能な吸湿性の低い材料としては、疎水性樹脂を使用することができる。吸水性が低いため、確実に、損失正接tanδの値を上記範囲内とすることができるからである。
疎水性樹脂として具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
本開示においては、ポリエステル樹脂が好ましく、特にPETを用いることが好ましい。
上記樹脂基材は、上述した樹脂群から選択される少なくとも1種を主成分とする樹脂フィルムとすることができる。上記樹脂フィルムは、未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸がされていてもよい。また、上記樹脂基材は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。
本態様においては、少なくとも1つのガスバリア層における樹脂基材に吸湿性が低い樹脂が用いられていればよいが、好ましくは、全てのガスバリア層における樹脂基材に対し、吸湿性が低い樹脂を用いることが好ましい。
また、熱溶着可能なフィルムに用いることが可能な吸湿性の低い材料としては、ポリオレフィン樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリエチレンもしくはポリプロピレンを挙げることができる。
本開示においては、外包材の全膜厚の内、50%以上、好ましくは70%以上が上述した吸湿性の低い材料を有する層で構成されていることが好ましい。
3.第3実施態様
本開示の真空断熱材用外包材の第3実施態様は、外包材を構成する少なくとも1つの層が乾燥剤を含む層である態様である。このように外包材が乾燥剤を含む層を有することにより、外包材内部の湿度を低下させることが可能となり、上記損失正接tanδの加湿時変化率及び損失正接tanδの高湿保持時変化率を上記範囲内とすることができ、最終的にガスバリア膜の劣化を防止することが可能となる。
このような乾燥剤としては、シリカゲル、ゼオライト、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化リン、塩化リチウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、モンモリナイト等が挙げられる。
上記乾燥剤を含む層としては、上述した乾燥剤を含む層であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィンやポリエステル等のバインダー樹脂に、吸湿機能を有するゼオライトや酸化カルシウム等を溶融混錬し製膜することで、乾燥剤が分散した層を得ることができる。具体的には、モイストキャッチ(登録商標)(共同印刷(株)製)やドライキープ(佐々木化学薬品社製)、特開2017-12975号公報、特開平8-217913号公報に記載のフィルム等を挙げることができる。
E.その他
本開示の外包材の厚みは、上述した特性を有することが可能であれば特に限定されず、例えば30μm以上200μm以下の範囲内、好ましくは50μm以上150μm以下の範囲内とすることができる。
本開示の外包材は、水蒸気透過度が0.5g/(m・day)以下であることが好ましく、中でも0.1g/(m・day)以下、特には0.05g/(m・day)以下であることが好ましい。本開示の外包材は、水蒸気透過度が上記の範囲内にあることで、水蒸気バリア性能が高く、高断熱性能を有する真空断熱材を形成することができるからである。
外包材の水蒸気透過度の測定は、以下の方法により行うことができる。
初期水蒸気透過度は、ISO 15106-5:2015(差圧法)に準拠して、水蒸気透過度測定装置を用いて、温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定することができる。水蒸気透過度の測定は、以下の手順で行うことができる。まず、所望のサイズに切り取った外包材のサンプルを、厚み方向(積層方向)において対向する最表面のうち、一方の最表面層である熱溶着可能なフィルムと反対側に位置する最表面層が高湿度側(水蒸気供給側)となるようにして、上記装置の上室と下室との間に装着し、透過面積約50cm(透過領域:直径8cmの円形)として温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で測定を行う。水蒸気透過度測定装置は、例えば、英国Technolox社製の「DELTAPERM」を用いることができる。
本開示の外包材の製造方法としては、例えば、予め製造した各フィルムを上述した接着層を介して貼り合せる方法が挙げられる。また、熱溶融させた各フィルムの原材料をTダイ等で順次押出しして積層することで、本開示の外包材を製造してもよい。
本開示の外包材は、真空断熱材に用いることができる。真空断熱材において、本開示の外包材は、熱溶着可能なフィルムが芯材側となるようにして、芯材を介して対向して配置して用いることができる。
II.真空断熱材
本開示の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する外包材とを有する真空断熱材であって、上記外包材が上述した「I.真空断熱材用外包材」の項で説明したものであることを特徴とするものである。
図2は、本開示の真空断熱材の一例を示す概略断面図である。図2に例示する真空断熱材20は、芯材11と、芯材11を封入する外包材10とを有し、外包材10が、図1で説明した真空断熱材用外包材である。真空断熱材20は、2枚の外包材10が、それぞれの熱溶着可能なフィルムが向き合うように対向し、端部12が熱溶着により接合された袋体となっており、袋体の中に芯材11が封入され、袋体内部が減圧されている。
本開示によれば、芯材を封入する外包材が、上述した「I.真空断熱材用外包材」の項で説明した真空断熱材用外包材であることで、高温高湿環境下において長期間、良好な断熱性能を維持することができる。
以下、本開示の真空断熱材について、構成ごとに説明する。
1.外包材
本開示における外包材は、芯材を封入する部材であり、上述の「I.真空断熱材用外包材」の項で説明した真空断熱材用外包材と同じであるため、ここでの説明は省略する。
2.芯材
本開示における芯材は、外包材により封入される部材である。なお、封入されるとは、外包材を用いて形成された袋体の内部に密封されることをいうものである。
芯材は、熱伝導率が低いことが好ましい。また、芯材は、空隙率が50%以上、特に9
0%以上の多孔質材とすることができる。
芯材を構成する材料としては、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。上記粉体は、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。なかでも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の低下が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
上記発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等を用いることができる。中でも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
上記繊維体は、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で好ましい。
芯材は、上述した材料を単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
3.真空断熱材
本開示の真空断熱材は、外包材の内部に芯材が封入され、上記内部が減圧されて真空状態となっている。真空断熱材内部の真空度は、例えば5Pa以下であることが好ましい。内部に残存する空気の対流による熱伝導を低くすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となるからである。
真空断熱材の熱伝導率は低い程好ましく、例えば熱伝導率(初期熱伝導率)が5mW/(mK)以下であることが好ましい。真空断熱材が熱を外部に伝導しにくくなり、高い断熱効果を奏することができるからである。中でも上記初期熱伝導率は、4mW/(mK)以下であることがより好ましく、3mW/(mK)以下であることがさらに好ましい。
熱伝導率は、JIS A1412-2:1999(熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法))に準拠し、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置は、例えば、熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名:HC-074、英弘精機製)を用いることができる。測定は、以下の条件で、測定試料(真空断熱材)の両方の主面が上下方向を向くように配置して行う。熱伝導率測定前に、測定試料の温度が測定環境温度と等しくなっているかを、熱流計などを使用して予め測定しておくことが好ましい。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の熱伝導率の値とする。
(熱伝導率の測定条件)
・測定試料:幅29cm±0.5cm、長さ30cm±0.5cm
・試験の定常に要する時間:15分以上
・標準板の種類:EPS
・高温面の温度:30℃
・低温面の温度:10℃
・測定試料の平均温度:20℃
また、本開示の真空断熱材は、上述の外包材を用いたものであるため、高温高湿環境下においても、長期的に断熱性能の劣化が抑制される。例えば、温度70℃湿度90%RHにおいて500時間経過した後の真空断熱材の熱伝導率を、10mW/(mK)以下とすることができる。
4.その他
本開示の真空断熱材の製造方法は、一般的な方法を用いることができる。例えば、上述した「I.真空断熱材用外包材」の項で説明した真空断熱材用外包材を2枚準備し、それぞれの熱溶着可能なフィルム同士を向き合わせて重ね、三辺の外縁を熱溶着し、一辺が開口する袋体を得る。この袋体に、開口から芯材を入れた後、上記開口から空気を吸引し、袋体の内部が減圧された状態で開口を封止することで、真空断熱材を得ることができる。
本開示の真空断熱材は、例えば、熱絶縁を要する物品に用いることができる。上記物品
については後述する。
III.真空断熱材付き物品
本開示の真空断熱材付き物品は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材が、芯材と、芯材が封入された外包材とを有し、上記外包材が、上述の「I.真空断熱材用外包材」の項で説明した真空断熱材用外包材である。
本開示によれば、物品に用いられる真空断熱材が「I.真空断熱材用外包材」の項で説明した外包材により構成されており、上記真空断熱材が高温高湿環境下で長期間、良好な断熱性能を発揮可能であるため、高温高湿環境となる物品や上記物品が用いられる対象物の省エネルギー化を達成することができる。
本開示における真空断熱材、およびそれに用いられる外包材については、上述した「II.真空断熱材」および「I.真空断熱材用外包材」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
本開示における物品は、熱絶縁領域を有する。ここで上記熱絶縁領域とは、真空断熱材により熱絶縁された領域であり、例えば、保温や保冷された領域、熱源や冷却源を取り囲んでいる領域、熱源や冷却源から隔離されている領域である。これらの領域は、空間であっても物体であってもよい。上記物品として、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、保温器、保冷器等の電気機器、保温容器、保冷容器、輸送容器、コンテナ、貯蔵容器等の容器、保温の必要な貯水容器および貯水設備、配管、車両、航空機、船舶等の乗り物、家屋、倉庫等の建築物、壁材、床材、扉等の建築資材等が挙げられる。
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
[材料]
実施例および比較例の真空断熱材用外包材を構成する部材を、以下および表1に示す。
また、実施例および比較例で用いた接着剤を下記に示す。
(部材)
・ガスバリアフィルムA:金属アルミニウム(Al)膜が片面に蒸着されたPETフィルム(東レフィルム加工社製 VM-PET1519、厚み12μm、水蒸気透過度0.21g/(m・day))
・ガスバリアフィルムB:金属アルミニウム(Al)膜が片面に蒸着されたPETフィルム(東レフィルム加工社製 VM-PET1510、厚み12μm、水蒸気透過度0.7g/(m・day))
・ガスバリアフィルムC:下記製造方法にて製造した。
(製造方法)
基材としてPETフィルム(東レ加工フィルム製 ルミラーP60、厚み12μm)を連続式真空蒸着機(APPLIED MATERIALS社製 TopMet)の巻き出し装置にセットし、走行速度300m/minで走行させながら片面に気化した金属アルミニウムを付着堆積させて(1回目蒸着)中間体フィルムを形成し、その後巻き取った。1回目蒸着では、1.0×10-1Pa未満に減圧した真空蒸着機内で、抵抗加熱部にアルミワイヤをフィードして溶融し、気化した金属アルミニウムを走行するPETフィルムの片面に付着堆積させた。このとき抵抗加熱部への供給電力値(蒸着ボード電力値)は8.0kW~9.0kWの範囲とした。巻き取った中間フィルムを、再度巻き出し装置にセットして、走行速度250m/minで走行させながら、中間フィルムの金属アルミニウム付着面に、さらに気化した金属アルミニウムを付着堆積させた(2回目蒸着)。2回の蒸着工程を経て、PETフィルムの片面に金属アルミニウム膜が形成されたガスバリアフィルムを得た。その後、得られたガスバリアフィルムを巻き取った。2回目蒸着では、抵抗加熱部への供給電力値(蒸着ボード電力値)を8.0kW~8.5kWの範囲としたこと以外は1回目と同じ条件で金属アルミニウムを付着堆積し、バリアフィルムCを得た。得られたガスバリアフィルムの金属アルミニウム膜の厚みを捜査型電子顕微鏡(日立ハイテク製 SU-8000)を用いて断面から計測したところ144nmであった。
なお、アルミニウム膜厚は、以下のようにして計測した。
ガスバリアフィルムから、所望のサイズにサンプルを切り出し、切り出したサンプルの外周を硬化樹脂(丸本ストルアス製 冷間埋め込み樹脂エポフィックス)で固めて固定した。固定された上記サンプルを、ダイヤモンドナイフで厚さ方向に切断して断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製 SU-8000)を用いて露出した断面の画像を倍率10万倍程度で取得し、画像中でおよそ等間隔の3点で膜厚を計測した。この操作を各ガスバリアフィルムにつき3つのサンプルに対して行い、計9個の計測値の平均を各ガスバリアフィルムにおける金属アルミニウム膜の厚みの値とした。水蒸気透過度は0.06g/(m・day)であった。
・ガスバリアフィルムD:下記製造方法にて製造した。
(製造方法)
基材100として、厚さ12μmの、材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)を含むプラスチック基材(KOLON社製、製品名「CB981」)を用意し、図5に示す、プラズマ前処理機構16B及び成膜機構16Cを有する成膜装置15を用いて、プラズマ前処理工程、及び成膜工程を行い、ガスバリアフィルムDを得た。図6は、プラズマ前処理機構を含む図5の点線部分Iの概略図である。図6中、18はプラズマ原料ガスを供給する原料揮発供給装置であり、Pは、プラズマである。
図7は、成膜機構を含む図5の点線部分IIの概略図である。具体的には、成膜工程においては、図7中の蒸発機構24を用いて、真空蒸着法により、アルミニウムを含む蒸着膜を成膜した。具体的には、図5中の成膜室17内の気圧を1Paに調整した上で、蒸着材料としてアルミニウムの金属線材61をボート24b内に供給しつつ、抵抗加熱式の蒸発機構24を用い、ボート24b内の蒸着材料を加熱し、基材の表面に到達するようにアルミニウムを蒸発させることにより、基材の表面に蒸着膜を成膜した。以上の方法により、基材と蒸着膜とを有する積層フィルムを複数作製した。作製した積層フィルムの蒸着膜の厚さは、13nmであった。水蒸気透過度は0.12g/(m・day)であった。
具体的な条件は、以下のとおりである。
〔プラズマ前処理機構16Bの条件〕
プラズマ前処理機構16Bの形態:図6に示す形態である。
前処理ローラー30と電極部21との間に印加される電圧:340Vである。
プラズマ原料ガス供給部22が供給するプラズマ原料ガス:アルゴン(Ar)と酸素(O2)との混合ガスである。
前処理ローラー30と電極部21との間のプラズマ密度:144W・sec/m2であ
る。
磁場形成部23:1000ガウスの永久磁石である。
〔成膜機構16Cの条件〕
プラズマ供給機構50の形態:図4に示すホローカソード51と、ボート24bからみて、基材100の幅方向における両側に配置された、ホローカソード51の空洞部の開口と対向する図示しないアノードと、を有する形態である。
プラズマ供給機構50の使用方法:ホローカソード51の空洞部にプラズマ原料ガスを供給し、放電させてプラズマを励起した。このプラズマを、対向するアノードによって、基材100の表面と蒸発機構24との間に引き出した。
・ガスバリアフィルムE:金属アルミニウム(Al)膜が片面に蒸着されたエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム(クラレ社製 VMXL、厚み12μm、水蒸気透過度0.50g/(m・day))
・ガスバリアフィルムF:下記製造方法にて製造した。
(製造方法)
1回目蒸着を、真空蒸着機内における抵抗加熱部への供給電力値(蒸着ボード電力値)を7.5kW~8.0kWの範囲とし、基材としてのPETフィルムを走行速度440m/minで走行させながら片面に気化した金属アルミニウムを付着堆積させ、2回目蒸着を、真空蒸着機内における抵抗加熱部への供給電力値(蒸着ボード電力値)を8.0kW~8.5kWの範囲とし、走行速度440m/minで走行させながら、中間フィルムの金属アルミニウム付着面に、気化した金属アルミニウムを付着堆積させた以外は、ガスバリアフィルムCと同様の方法で、ガスバリアフィルムFを得た。得られたガスバリアフィルムの金属アルミニウム膜の厚みを捜査型電子顕微鏡(日立ハイテク製 SU-8000)を用いて断面から計測したところ134nmであった。水蒸気透過度は0.09g/(m・day))であった。
・ガスバリアフィルムG:
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(PET-F、ユニチカ株式会社製)上に酸化珪素(厚み:20nm)を蒸着し、上記蒸着膜の上に下記バリア性塗布膜用組成物をグラビアコート法によりコーティングし、次いで、120℃、140℃および150℃で各20秒間加熱処理して、バリア性塗布膜(厚み:300nm)をバリアコート膜として形成したものを用いた。水蒸気透過度は0.14g/(m・day))であった。
・ガスバリアフィルムH:
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(PET-F、ユニチカ株式会社製)上に酸化アルミナ(厚み:20nm)を蒸着し、上記蒸着膜の上に下記バリア性塗布膜用組成物をグラビアコート法によりコーティングし、次いで、120℃、140℃および150℃で各20秒間加熱処理して、バリア性塗布膜(厚み:300nm)をバリアコート膜として形成したものを用いた。水蒸気透過度は0.11g/(m・day))であった。
(バリア性塗布膜用組成物の調製)
下記表1に示す組成に従い調製したA液(ポリビニルアルコール、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液)に、表1に示す組成に従い予め調製したB液(テトラエトキシシラン(TEOS)、イソプロピルアルコール、塩酸およびイオン交換水からなる加水分解液)を加えて撹拌し、ゾルゲル法により無色透明のバリア性塗布膜用組成物を得た。
Figure 0007238566000001
・熱溶着可能なフィルムA:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製 HC-E、厚み50μm)
[実施例1]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムC、第2層目をガスバリアフィルムB、第3層目をガスバリアフィルムB、第4層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。実施例1の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムCは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムより金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。
第1層~第4層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、ロックペイント製 主剤RU-77T、硬化剤H-7を含む接着剤(主剤:硬化剤:酢酸エチル=10:1:14
)を用い、グラビアコート法により約3.5μmの接着剤層を形成した。
[実施例2]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムD、第2層目をガスバリアフィルムD、第3層目をガスバリアフィルムE、第4層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。実施例2の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムDは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムD側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムDは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムE側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムEは、EVOHフィルムより金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムD側となるように配置した。
第1層~第4層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
[実施例3]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムD、第2層目をガスバリアフィルムF、第3層目をガスバリアフィルムE、第4層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。実施例3の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムDは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムF側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムFは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムE側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムEは、EVOHフィルムより金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムF側となるように配置した。
第1層~第4層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
[実施例4]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムF、第2層目をガスバリアフィルムG、第3層目をガスバリアフィルムG、第4層目をガスバリアフィルムF、第5層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。実施例4の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムFは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムG側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムGは、PETフィルムよりもバリアコート膜が第3層目のガスバリアフィルムG側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムGは、PETフィルムよりもバリアコート膜が第2層目のガスバリアフィルムG側となるように配置した。第4層目のガスバリアフィルムFは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムG側となるように配置した。
第1層~第5層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
[実施例5]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムH、第2層目をガスバリアフィルムD、第3層目をガスバリアフィルムE、第4層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。実施例5の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムHは、PETフィルムよりもバリアコート膜が第2層目のガスバリアフィルムD側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムDは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムE側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムEは、EVOHフィルムより金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムD側となるように配置した。
第1層~第4層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
[比較例1]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムA、第2層目をガスバリアフィルムB、第3層目をガスバリアフィルムB、第4層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。比較例1の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムAは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムより金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。
第1層~第4層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
[比較例2]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムB、第2層目をガスバリアフィルムB、第3層目をガスバリアフィルムB、第4層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。比較例2の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムより金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。
第1層~第4層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
[比較例3]
積層方向の一方から順に、第1層目をガスバリアフィルムB、第2層目をガスバリアフィルムB、第3層目をガスバリアフィルムA、第4層目を熱溶着可能なフィルムAとする真空断熱材用外包材を得た。比較例3の外包材において、第1層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。第2層目のガスバリアフィルムBは、PETフィルムよりも金属アルミニウム膜が第3層目のガスバリアフィルムA側となるように配置した。第3層目のガスバリアフィルムAは、PETフィルムより金属アルミニウム膜が第2層目のガスバリアフィルムB側となるように配置した。
第1層~第4層の各層は、接着剤層で接合した。接着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
[水蒸気透過度]
比較例1、比較例3で製造した真空断熱材用外包材の水蒸気透過度を、E.その他の項で説明した方法により英国Technolox社製の「DELTAPERM」を用いることにより測定した。比較例1の水蒸気透過度は、8×10-2g/(m・day)、比較例3の水蒸気透過度は、8×10-2g/(m・day)であった。
Figure 0007238566000002
[サンプル作製]
上記真空断熱材用外包材を2枚用意し、熱溶着可能なフィルムA同士を向き合わせて重ね合わせ、インパルスシーラー(富士インパルス社製 FA-600)を用いて、加熱時間1.0秒、シール幅10mm、冷却時間2.0秒としてシールした。ヒートシール後の真空断熱材用外包材のシール部分から、20mm×5mmの長方形のサンプルを取り出した。尚、測定方向が8方向となるように、シール方向を変更して真空断熱材用外包材をヒートシールし、各シール部分から測資料を取り出し、全部で8つの測定試料とした。
[損失正接tanδの測定]
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御製 DVA-225)を用い、図3に示される温湿度プログラムに沿って、温度70℃湿度10%RHで60分保持後の初期状態における損失正接tanδの値(A)、初期状態から昇湿速度5%RH/分で温度70℃湿度90%RHまで加湿後、その温湿度で3分保持した時の損失正接tanδの値(B)、その後温度70℃湿度90%RHを1時間保持した時の損失正接tanδの値(C)を測定した。測定条件は以下の通りである。尚、各損失正接tanδ値は、8つの測定試料の測定値の平均値とした。結果を表3に示す。
・測定モード:引張法(正弦波歪み 引張モード)
・昇温速度:5℃/min
・昇湿速度:5%RH/min
・周波数:10Hz
・測定温度:70℃
・測定湿度範囲:10%RH~90%RH
・チャック間距離:15mm
・静荷重:自動
・歪み量:自動
・静/動力比:1.5
上記真空断熱材用外包材を使用した真空断熱材の初期、温度70℃湿度90%RHで400時間保持後、温度70℃湿度90%RHで500時間保持後の、各条件での熱伝導率を測定した。各熱伝導率は、「II.真空断熱材」の「3.II.真空断熱材」の項で説明した方法により測定した。結果を表3に示す。
なお、真空断熱材は以下の方法により作製した。
[真空断熱材の製造]
実施例1~5、および比較例1~3で得られた外包材(寸法:360mm×450mm)を2枚準備し、熱溶着可能なフィルム同士が向き合う様にして2枚重ねて、四辺形の三辺をヒートシールして一辺のみが開口した袋体を作成した。芯材として290mm×300mm×30mmのグラスウールを用い、乾燥処理を行った後、袋体に、芯材および乾燥剤として10gの酸化カルシウムを収納して、袋体内部を排気した。その後、袋体の開口部分をヒートシールにより密封して真空断熱材を得た。到達圧力は、0.05Paとした。
Figure 0007238566000003
表3に示されるように、損失正接tanδの加湿時変化率であるB/Aが1以上1.5以下であり、かつ、損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bが0.8以上1.2以下である実施例1~3では、高温高湿環境において長時間使用した場合においても、真空断熱材の断熱性能の劣化を抑制することができた。
また、比較例1および比較例3においては、真空断熱材用外包材を構成するガスバリアフィルム、熱溶着可能なフィルムは同じであり、製造した真空断熱材用外包材の水蒸気透過度にも差は無かった。しかしながら、比較例1および比較例3の損失正接tanδの加湿時変化率は異なる挙動を示し、温度70℃湿度90%RHで400時間保持後の熱伝導率にも差が見られた。上記から、真空断熱材用外包材の損失正接tanδの加湿時変化率及び高湿保持時変化率を考慮することが、真空断熱材の断熱性能の抑制につながると示唆された。
1 … 熱溶着可能なフィルム
2A、2B、2C … ガスバリア層
3A、3B、3C … 樹脂基材
4A、4B、4C … ガスバリア膜
10 … 真空断熱材用外包材
11 … 芯材
20 …真空断熱材

Claims (9)

  1. 熱溶着可能なフィルムと、前記熱溶着可能なフィルムの第1の主面側に位置する、樹脂基材および前記樹脂基材の片面または両面に配置されたガスバリア膜を有する1つ以上のガスバリア層と、を有する真空断熱材用外包材であって、
    前記真空断熱材用外包材は、二つの同一の前記真空断熱材用外包材を前記熱溶着可能なフィルムの第2の主面同士を貼り合わせた状態で、周波数10Hzの動的粘弾性測定により損失正接tanδを測定し、温度70℃湿度10%RHの初期状態における前記損失正接tanδの値をA、前記初期状態から5%RH/分で温度70℃湿度90%RHに加湿した直後の加湿時状態における前記損失正接tanδの値をB、温度70℃湿度90%RHを1時間保持した高湿保持時における前記損失正接tanδの値をCとしたとき、前記損失正接tanδの加湿時変化率であるB/Aが1.0以上1.5以下であり、かつ、前記損失正接tanδの高湿保持時変化率であるC/Bが0.8以上1.2以下である、真空断熱材用外包材。
  2. 前記損失正接tanδの変化率C/Aが、1.7以下であることを特徴とする、請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
  3. 前記熱溶着可能なフィルムがポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱材用外包材。
  4. 少なくとも1つの前記ガスバリア層における前記樹脂基材がポリエステルフィルムであることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の真空断熱材用外包材。
  5. 前記ガスバリア膜が、金属アルミニウム膜であることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の真空断熱材用外包材。
  6. 前記真空断熱材用外包材が、2層以上のガスバリア層を有する、請求項1から請求項5までのいずれの請求項に記載の真空断熱材用外包材。
  7. 前記真空断熱材用外包材が、3層のガスバリア層を有する、請求項6に記載の真空断熱材用外包材。
  8. 芯材と、前記芯材が封入された外包材とを有する真空断熱材であって、
    前記外包材が、請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の真空断熱用外包材である、真空断熱材。
  9. 熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
    前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材が封入された外包材とを有し、
    前記外包材が、請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の真空断熱用外包材である、真空断熱材付き物品。
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