JP2015091651A - 真空断熱材 - Google Patents

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浩介 植田
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雄介 小賦
佳史子 川合
Kashiko Kawai
佳史子 川合
瞬也 南郷
Shunya Nango
瞬也 南郷
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Abstract

【課題】断熱性能及びガスバリア性に優れ、長期に亘って優れた断熱性能を発現可能であり、可撓性及び耐水性にも優れた外装材を用いた真空断熱材の提供。
【解決手段】芯材2と、芯材2を被覆する外装材3とから成り、内部を減圧密封した真空断熱材1において、外装材3が、少なくとも、熱溶着層、蒸着層、及びガスバリア材を有するガスバリア性積層体から成り、前記ガスバリア材が、ポリカルボン酸系ポリマーであり、1.4重量%以下の1価の金属元素と、5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01〜3.0重量%の窒素を含むガスバリア層を有する真空断熱材1。前記カルボン酸系ポリマーがカルボキシル基に対するモル比で4.5%以下が部分中和されたポリ(メタ)アクリル酸であり、前記1価の金属がNa又はKであり、前記多価金属がMg又はCaである、真空断熱材。
【選択図】図1

Description

本発明は、真空断熱材に関するものであり、より詳細には、優れたガスバリア性及び断熱性能を有するガスバリア性積層体を外装材として備えて成る真空断熱材に関する。
多孔質構造の芯材を外装材で被覆した後、内部を減圧し封止して成る真空断熱材は、気体熱伝導率の寄与がほとんどないことから、グラスウール等の断熱材に比して、薄肉で優れた断熱効果を発現可能であり、冷蔵庫や炊飯器等の生活関連や、床暖房や断熱パネル等の住宅関連等、種々の分野で利用されている。
このような真空断熱材において、芯材を覆う外装材は、優れた密封性を有することは勿論、真空断熱材内部の減圧状態を維持し得る高いガスバリア性を有することが要求されており、従来は外装材として、アルミニウム箔を含む積層体が広く使用されていた。
しかしながら、アルミニウム箔を含む積層体を外装材として使用する場合には、アルミニウムの熱伝導率が高いため、このアルミニウム箔による熱伝導によって断熱効果が低減されてしまうという問題があった。
アルミニウム箔によるこのような問題を解決するために、金属或いは無機物を蒸着して成る蒸着膜を備えて成る積層体を真空断熱材の外装材とすることが提案されているが(特許文献1,2)、蒸着膜はクラックやピンホール等の発生によりガスバリア性が低下するという問題がある。
このような観点から、真空断熱材の外装材として、蒸着層と、ポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとの混合物からなる、ガスバリア性を有するポリアクリル酸系樹脂層と熱溶着層とを有するラミネートフィルムを用いることが提案されている(特許文献3,4)。
上記外装材に使用されるポリアクリル酸系樹脂層は、ポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとの混合物溶液を、蒸着層の上に流延して形成した乾燥塗膜を100℃以上の高温で熱処理した後、金属イオンが含まれている水中に浸漬することにより、エステル結合されなかったポリアクリル酸系ポリマーの遊離カルボン酸同士をイオン架橋することにより形成され、優れたガスバリア性を有することが記載されている。
特開2004−172493号公報 特開2004−130654号公報 特開2005−337405号公報 特許第3685206号
しかしながら、上述したポリアクリル酸系樹脂は、100℃以上の高温或いは長時間の加熱により高度に架橋させることが必要であるため、蒸着層への影響が大きいという問題がある。またガスバリア性を向上させるために、金属イオンとのイオン架橋に際して長時間の浸漬処理が必要であることから、生産性に劣ると共に、多大なエネルギーや水を消費する等の問題もある。更に可撓性の点でも十分満足するものではなく、蒸着層の保護を十分行うことができない。このような観点から、外装材のガスバリア性を更に高めるために、より優れたガスバリア性及び可撓性を有する有機物を主体とするガスバリア層を有することが望まれている。
従って本発明の目的は、断熱性能及びガスバリア性に優れ、長期にわたって優れた断熱性能を発現可能であると共に、可撓性及び耐水性にも優れた外装材を用いた真空断熱材を提供することである。
本発明の他の目的は、高温での加熱の必要がなく、生産性に優れた外装材を使用した真空断熱材を提供することである。
本発明によれば、芯材と、該芯材を被覆する外装材とから成り、内部を減圧密封した真空断熱材において、前記外装材が、少なくとも、熱溶着層、蒸着層、及びガスバリア材を有するガスバリア性積層体から成り、前記ガスバリア材が、ポリカルボン酸系ポリマーから成り、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01乃至3.0重量%の窒素元素を含むガスバリア層を有することを特徴とする真空断熱材が提供される。
本発明の真空断熱材においては、
1.前記ポリカルボン酸系ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸であること、
2.前記ポリカルボン酸系ポリマーが、カルボキシル基に対するモル比で4.5%以下の範囲で部分中和されていること、
3.前記1価の金属元素が、ナトリウム又はカリウムであること、
4.前記多価金属元素が、カルシウム又はマグネシウムであること、
5.前記ガスバリア層の表層における炭素、酸素及び窒素の総量に対する窒素の含有量が1atm%以上であること、
6.前記ガスバリア材が、蒸着層が形成されたプラスチック基材の該蒸着層又はプラスチック基材の一方の表面に、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含有するアンダーコート層が形成され、該アンダーコート層上にガスバリア層が形成されていること、
7.前記ガスバリア層又はアンダーコート層の少なくとも一方が、蒸着層と隣接すること、

8.前記ガスバリア材が、蒸着層を2層有し、該2つの蒸着層の間にガスバリア層及びアンダーコート層が形成されていること、
9.前記ガスバリア層及びアンダーコート層の両方が、蒸着層に隣接すること、
10.前記アンダーコート層中に、多価金属のアルカリ性化合物を含有すること、
11.前記多価金属のアルカリ性化合物が、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種類から成ること、
12.前記イソシアネート化合物が、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせであること、
13.前記脂肪族イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有すること、
14.前記アンダーコート層のガスバリア層側に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(x)が形成されており、該領域(x)の窒素の含有量が領域(x)以外のアンダーコート層の窒素の含有量よりも多いこと、
が好適である。
本発明の真空断熱材は、蒸着層と共に、優れたガスバリア性を有するガスバリア層が積層されてなるガスバリア性積層体を外装材として用いているため、長期にわたって優れた断熱効果を発現できる。しかも従来の真空断熱材の外装材において、ガスバリア性を確保するために使用されていたアルミニウム箔等を使用する必要がないため、アルミニウム箔からの熱橋(ヒートブリッジ)による断熱効果低減のおそれがない。
またこのガスバリア材は、ポリカルボン酸系ポリマーを、架橋剤を用いて共有結合による架橋をしなくてもガスバリア性や耐水性に優れており、架橋反応に必要な熱処理工程を簡略化することができる。
更に多価金属含有組成物を含有するアンダーコート層上にガスバリア層を形成することにより、浸漬処理や噴霧処理を行わなくても、多価金属によるイオン架橋率を高めることができるので、優れたガスバリア性を有する外装材を生産性よく作成することが可能になる。またこのアンダーコート層は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含有することから、ガスバリア層/アンダーコート層、アンダーコート層/基材、の各界面付近にイソシアネート化合物が存在し、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基やプラスチック基材に含まれる水酸基等の官能基と界面反応、或いは界面での極性基間同士による電気的な凝集力が発生し、層間接着性を更に向上することが可能になる。
本発明の真空断熱材の一例の断面構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材に用いるガスバリア材の一例の積層構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材に用いるガスバリア材の他の一例の積層構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材の一例の積層構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材の他の例の積層構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材の他の例の積層構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材の他の例の積層構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材の他の例の積層構造を示す図である。 本発明の真空断熱材の外装材の他の例の積層構造を示す図である。
真空断熱材1は、図1に示すように、芯材2と、この芯材2を被覆する外装材3とから成り、この外装材をヒートシールにより溶着して密封し、内部の減圧状態を維持してなるものであり、本発明においては、用いる外装材として、前述した特定のガスバリア材を有するガスバリア性積層体を用いることが重要な特徴である。
すなわち、ポリカルボン酸系ポリマーを多価金属によりイオン架橋してなるガスバリア材は従来より公知であるが、本発明においてはこのようなガスバリア材において、1価の金属元素、多価金属元素、及び窒素の含有量を所定の範囲に制御することによって、優れたガスバリア性、可撓性、耐水性、及び屈曲加工後の耐水性が得られることを見出し、かかるガスバリア材を真空断熱材の外装材に用いることにより、上述した効果を発現できることを見出した。
尚、本発明におけるガスバリア材におけるガスバリア層中の1価の金属元素及び多価金属元素はそれぞれ、ポリカルボン酸系ポリマーを部分的に中和するために用いられる1価金属含有化合物、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間をイオン架橋するために用いられる多価金属のアルカリ性化合物に由来し、また窒素元素はイソシアネート化合物に由来するものであり、これらの元素の含有量が上記範囲にあることにより、上述した作用効果が発現される。
これらの金属元素の含有量は、ガスバリア層を灰化させた後、ICP質量分析装置を用いることにより測定することができ、またガスバリア層中の窒素元素は、燃焼法によって測定することができ、またガスバリア層の表層における炭素、酸素及び窒素の原子の含有量は、XPS(X‐ray Photo-electronic Spectroscopy:X線光電子分光法)による表面分析によって測定することができる。
(ガスバリア材)
本発明の真空断熱材の外装材に使用されるガスバリア材は、ポリカルボン酸系ポリマーから成り、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01乃至3.0重量%の窒素元素を含むガスバリア層を少なくとも有するものであり、ガスバリア層単独から成るガスバリア材、ガスバリア層がプラスチック基材上に形成されたガスバリア材、或いはガスバリア層がアンダーコート層を介してプラスチック基材上に形成されたガスバリア材として提供されるが、特に図2に示すように、ガスバリア層11がアンダーコート層12を介してプラスチック基材13上に形成されてなるガスバリア材を好適に使用することができる。
本発明に用いるガスバリア材は、ポリカルボン酸系ポリマーを主構成成分とし、このポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を多価金属でイオン架橋してなると共に、イソシアネート化合物に由来する窒素元素の存在により、優れたガスバリア性、可撓性及び耐水性、更には屈曲加工後の耐水性や耐ブロッキング性を有するガスバリア材として作成されるものであるが、ガスバリア層中の1価の金属元素、多価金属元素及び窒素元素の含有量が上記範囲内にあることが重要である。
このような特徴を有するガスバリア層は、ポリカルボン酸系ポリマー、該ポリマーの部分中和を行う場合に必要な1価の金属元素を有する塩基性化合物及びイソシアネート化合物を含有するガスバリア層形成用組成物から、シート、フィルム或いは塗膜を形成し、これらの中のカルボキシル基を多価金属でイオン架橋することによりガスバリア層単独、或いはプラスチック基材上にガスバリア層を形成して成るガスバリア材とすることができる。
また、ガスバリア層とアンダーコート層との組み合わせから成るガスバリア材においては、イソシアネート化合物及び多価金属のアルカリ性化合物を含有するアンダーコート層上にポリカルボン酸系ポリマーを含有する溶液を塗布して層を形成することにより、アンダーコート層から多価金属イオン及びイソシアネート化合物をポリカルボン酸系ポリマーに効率よく供給し、アンダーコート層上にガスバリア層、或いはアンダーコート層を介してプラスチック基材上にガスバリア層を形成して成るガスバリア材とすることができる。
[ポリカルボン酸系ポリマー]
ガスバリア層を構成するポリカルボン酸系ポリマーとしては、上述した耐水性という作用効果を発現する上では、1価の金属元素による部分中和を下記の範囲で行うことが可能である。1価金属元素よって部分中和される量が、特にカルボキシル基に対するモル比で4.5%以下、より好ましくは4.0%以下の範囲で部分中和されているポリカルボン酸系ポリマーが、ガスバリア材中の1価の金属元素の量を上記範囲に制御する上で望ましい。上記範囲よりも中和量が多いと、上記範囲にある場合に比して屈曲加工後の耐水性及び高温高湿度条件下でのガスバリア性に劣るようになる。
1価の金属としては、特にナトリウム、カリウムが好適であり、1価金属化合物としてこれらの水酸化物を用いてポリカルボン酸系ポリマーを中和することが好適である。
ポリカルボン酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体を挙げることができ、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が好ましい。
ポリカルボン酸系ポリマーの「重量平均分子量」は、特に限定されないが、2000乃至5,000,000、特に10,000乃至1,000,000の範囲にあることが好ましい。
尚、上記「重量平均分子量」の測定は、分離カラムとして「TSK G4000PWXL」、「TSK G3000PWXL」(東ソー株式会社製)の2本を用いて、溶離液として50mmolリン酸水溶液を用い40℃及び流速1.0ml/分において、クロマトグラムと標準ポリカルボン酸系ポリマーの検量線から求めた。
[イソシアネート化合物]
ガスバリア層にイソシアネート化合物が含有されていることによって、ガスバリア層に上述した範囲の窒素元素を存在させることができる。
イソシアネート化合物としては、後述するアンダーコート層に用いるイソシアネート系硬化剤として例示するイソシアネート化合物の中から適宜選択して使用することができるが、イソシアネート化合物の中でも、ポリカルボン酸系ポリマーと相溶性に乏しいもの、例えばイソホロンジイソシアネート及びその誘導体等を用いることが好適である。これにより、イソシアネート化合物をガスバリア材表面に効率的にブリードアウトさせて、ガスバリア材表面にイソシアネート化合物に由来する化学結合を存在させることができ、屈曲加工後の耐水性をガスバリア層に付与することが可能になる。
[アンダーコート層を含有しないガスバリア材]
アンダーコート層を含有しないガスバリア材においては、ポリカルボン酸系ポリマー、該ポリマーに部分中和を施す場合は1価の金属元素を有する塩基性化合物、及びイソシアネート化合物を含有するガスバリア層形成用組成物を調製し、このガスバリア層形成用組成物から成るフィルム、シート或いは塗膜を、多価金属のアルカリ性化合物含有組成物によってポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基をイオン架橋することによって形成することができる。
ガスバリア層形成用組成物は、ポリカルボン酸系ポリマー及びイソシアネート化合物を水を含む溶媒に溶解させてもよいし、或いはこれらの成分の水含有溶液を混合することにより調製することができ、ポリカルボン酸系ポリマーが解離している溶液である。
ポリカルボン酸系ポリマーを溶解する溶媒としては、水だけでもよいが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2−ブタノン、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤と水との混合溶媒であってもよく、特に水よりも低沸点の溶剤を水と組み合わせて用いることができる。
イソシアネート化合物をブリードアウトさせる観点からは、有機溶剤を水100重量部に対して10乃至400重量部の量で配合することが好ましい。
また上記成分以外にも、無機分散体を含有することもできる。このような無機分散体は、外部からの水分をブロックし、ガスバリア材を保護する機能を有し、ガスバリア性や耐水性を更に向上させることができる。
かかる無機分散体は、球状、針状、層状等、形状は問わないが、ポリカルボン酸系ポリマーに対して濡れ性を有し、ガスバリア材形成用組成物中において、良好に分散するものが使用される。特に水分をブロックし得るという見地から、層状結晶構造を有するケイ酸塩化合物、例えば、水膨潤性雲母、クレイ等が好適に使用される。これらの無機分散体は、アスペクト比が30以上5000以下であることが層状に分散させ、水分をブロックするという点で好適である。
無機分散体の含有量はポリカルボン酸系ポリマー及びイソシアネート化合物の合計100重量部に対し、5乃至100重量部の量で含有していることが好ましい。
ガスバリア層形成用組成物中の樹脂組成物に含まれるポリカルボン酸系ポリマー量、すなわち遊離カルボキシル基量が、酸価で少なくとも150KOHmg/g以上、特に250乃至970KOHmg/gの範囲であることが好ましい。ここで酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性遊離官能基を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を、アルカリ中和滴定に基づく常法により求めたものである。
またイソシアネート化合物は、ポリカルボン酸系ポリマー100重量部に対して、0.04乃至12重量部、特に0.1乃至7重量部の量で含有して成ることが好適である。
ガスバリア層形成用組成物を、用いるポリカルボン酸系ポリマーやイソシアネート化合物の種類や含有量、或いはガスバリア層形成用組成物の塗工量にもよるが、40乃至110℃の温度で、1秒乃至1分間(ピーク保持時間)加熱し、シート、フィルム又は塗膜を形成する。次いでこのシート、フィルム又は塗膜中のカルボキシル基を多価金属によって、イオン架橋することによりガスバリア層を製造することができる。
多価金属によるイオン架橋は、これに限定されないが、ガスバリア層を、多価金属のアルカリ性化合物を含有する水、或いは多価金属のアルカリ性化合物を含有するアルコール溶液で処理することにより容易に金属イオン架橋構造を形成することができる。
多価金属のアルカリ性化合物を含有する水による処理としては、(i)多価金属のアルカリ性化合物を含有する水中へのガスバリア材の浸漬処理、(ii)多価金属のアルカリ性化合物を含有する水のガスバリア材へのスプレー処理、(iii)(i)乃至(ii)の処理後に高湿度下にガスバリア材を置く雰囲気処理、(iv)多価金属のアルカリ性化合物を含有する水でレトルト処理(好ましくは、包材と熱水が直接接触する方法)、等を挙げることができる。
上記処理(iii)は、上記処理(i)〜(ii)後のエージング効果をもたらす処理であり、(i)〜(ii)処理の短時間化を可能にする。上記処理(i)〜(iii)の何れの場合も使用する処理水は冷水でも構わないが、多価金属のアルカリ性化合物を含有する水がガスバリア材に作用しやすいように、多価金属のアルカリ性化合物を含有する水の温度を20℃以上、特に40乃至100℃の温度とする。処理時間は、(i)〜(ii)の場合は、3秒以上、特に10秒乃至4日程度処理を行うことが好ましく、(iii)の場合は、(i)〜(ii)処理を0.5秒以上、特に1秒乃至1時間程度処理した後、高湿度下にガスバリア材を置く雰囲気処理を1時間以上、特に2時間乃至14日程度処理することが好ましい。上記処理(iv)の場合は、処理温度は101℃以上、特に120乃至140℃の温度であり、1秒以上、特に3秒乃至120分程度処理を行う。
また何れの処理の場合も、多価金属のアルカリ性化合物を含有する水は、中性乃至アルカリ性であることが好ましい。
また多価金属のアルカリ性化合物を含有するアルコール系溶液による処理としては、多価金属のアルカリ性化合物を含有するアルコール系溶液を、上述したガスバリア材形成用組成物から成るフィルム、シート、塗膜上に塗布することにより行うことができる。ガスバリア材形成用組成物から成るフィルム等にアルコール系溶液は浸み込みやすいことから、効率よく多価金属をガスバリア材形成用組成物に含浸させることができ、水による処理に比して工程数或いは処理時間を短縮することができ、生産性に優れている。
多価金属のアルカリ性化合物を含有するアルコール系溶液に用いる溶媒としては、用いる多価金属のアルカリ性化合物の種類によっても異なるが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を挙げることができる。
多価金属イオンとしては、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を架橋可能である限り特に制限されず、アルカリ土類金属(マグネシウムMg,カルシウムCa、ストロンチウムSr,バリウムBa等)、周期表8族金属(鉄Fe,ルテニウムRu等)、周期表11族金属(銅Cu等)、周期表12族金属(亜鉛Zn等)、周期表13族金属(アルミニウムAl等)等の金属イオンが例示できるが、特に2〜3価であることが好ましく、好適にはカルシウム、マグネシウムイオン、亜鉛等の2価の金属イオンを使用できる。また、上記金属イオンは1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
多価金属のアルカリ性化合物としては、上記金属の、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、有機酸塩、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸亜鉛、酢酸カルシウム等の酢酸塩、或いは乳酸亜鉛、乳酸カルシウム等の乳酸塩等)等を例示できるが、安全性の観点や金属イオン架橋が形成される際の副生成物がガスバリア材中に留まらない点で、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種類を使用することが特に好ましい。
多価金属のアルカリ性化合物を水に含有させる場合は、水中に金属原子換算で0.125mmol/L以上であることが好ましく、0.5mmol/L以上であることがより好ましく、2.5mmol/L以上であることが更に好ましい。
同様に、多価金属のアルカリ性化合物をアルコール系溶媒に含有させる場合は、アルコール系溶媒中に用いる多価金属のアルカリ性化合物の種類、塗工量によっても異なるが、用いる多価金属が溶液中に金属原子換算で、1mmol/L以上であることが好ましく、10mmol/L以上であることがより好ましく、30mmol/L以上であることが更に好ましい。
上記多価金属のアルカリ性化合物を含有する溶液による処理を行ったガスバリア材は、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間が、多価金属イオンにより20%以上、特に30%以上の割合でイオン架橋されていることが望ましい。
[アンダーコート層を含有するガスバリア材]
アンダーコート層を含有するガスバリア材は、前述したとおり、プラスチック基材の少なくとも一方の面にガスバリア層を有しており、プラスチック基材とガスバリア層の間に、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び多価金属のアルカリ性化合物を含有するアンダーコート層が形成されている。
プラスチック基材上に、イソシアネート化合物及び多価金属のアルカリ性化合物を含有するアンダーコート層を形成し、このアンダーコート層上にポリカルボン酸系ポリマーを含有する溶液を塗布してガスバリア層を形成する。これにより、アンダーコート層中に存在する多価金属イオン及びイソシアネート化合物がポリカルボン酸系ポリマー中に供給されて、ガスバリア層中に所定量の多価金属元素及び窒素元素を存在させることが可能になる。その結果、ポリカルボン酸系ポリマーは金属イオン架橋されると共に、ポリカルボン酸系ポリマー中に供給されたイソシアネート化合物の大部分はガスバリア層表面にブリードアウトし、イソシアネート化合物に由来する化学結合をガスバリア層の表面に存在させることが可能になり、残余のイソシアネート化合物はアンダーコート層との界面近傍に留まり、主としてアンダーコート層中の成分とポリカルボン酸系ポリマー間を架橋するか、もしくはイソシアネート化合物同士で反応する。その結果、前述したガスバリア材と同様に、優れたガスバリア性、可撓性及び耐水性を有すると共に、屈曲加工後の耐水性や耐ブロッキング性についても優れたガスバリア性積層体とすることができる。
[アンダーコート層]
アンダーコート層は、主材樹脂、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個有するイソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るものであるが、主材樹脂が金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールであること、イソシアネート系硬化剤が直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせであることが特に好適である。
すなわち、主材樹脂として金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールは、それ自体アンダーコート剤としてアンダーコート層をプラスチック基材に接着性よく積層することができると共に、金属元素を有することにより水含有溶剤に対して膨潤しやすいことから、ポリカルボン酸系ポリマーを有する塗料を塗布することにより膨潤して、アンダーコート層中に存在する多価金属イオンを効果的にバリア層中に移行させることが可能になる。
またイソシアネート系硬化剤として、主材樹脂に対して相溶性の異なる直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせを用いることによって、イソシアネート化合物のアンダーコート層内におけるブリードアウトの挙動を制御することが可能になる。
すなわち、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物は主材樹脂に対して相溶性が高いことから、アンダーコート層内に均一に拡散する。これに対して骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物は主材樹脂に対する相溶性が劣るため、アンダーコート層のバリア層側及び基材側にブリードアウトし、特にバリア層側に濃化して、図3に示すようにアンダーコート層12には、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(x)14が形成され、該領域(x)14の窒素の含有量が領域(x)以外のアンダーコート層12の窒素の含有量よりも多くなっている。
[主材樹脂]
アンダーコート層に用いる主材樹脂としては、金属元素が樹脂骨格中に含まれる非水系樹脂を用いることが好適であり、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系等を樹脂分とするものであることが好ましく、これらのポリマーを構成するモノマーに金属塩基を導入させておくことによって、形成される樹脂骨格中に金属元素を含ませることができる。尚、「非水系樹脂」とは、水分を含む溶媒に分散させたエマルジョンやラテックス、或いは水溶性の樹脂を除く概念であり、これにより、水含有溶剤との接触時に生じる過度な膨潤によるアンダーコート層の機械的強度の低下が有効に防止されている。
樹脂のモノマーに導入させておくのに好適な金属塩基としては、多価金属の分散性を向上させるため極性を有する官能基を有していることが望ましく、スルホン酸金属塩基、リン酸金属塩基等を挙げることができる。また金属元素としては、リチウムLi,カリウムK,ナトリウムNa,マグネシウムMg,カルシウムCa,銅Cu,鉄Fe等を挙げることができるが、1価の金属元素であることが特に好適であり、本発明においては、特にスルホン酸ナトリウムが導入されていることが好適である。
本発明に用いるガスバリア材においては、基材との優れた接着性を得るため、また多価金属のアルカリ性化合物の分散性を高めるために、イソシアネート系硬化剤を用いることから、イソシアネート系硬化剤に対する主材樹脂として、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール、或いはこれらのウレタン変性物等のポリオール成分を用いることが好ましく、これによりアンダーコート層中にウレタン結合が形成され、基材との優れた接着性及び多価金属のアルカリ性化合物の分散性を高めることができる。尚、ポリオール成分中の水酸基分を反応させるのに必要なイソシアネート系硬化剤の重量を1当量としたとき、イソシアネート系硬化剤は少なくとも4当量以上となるように存在していることが好ましい。
ウレタン系ポリマー形成に使用されるポリオール成分としては、ポリエステルポリオール又はそのウレタン変性物が好ましい。これらのポリエステルポリオール成分としては、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールのガラス転移温度は、−50℃乃至100℃が好ましく、−20℃乃至80℃がより好ましい。また、これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000乃至10万が好ましく、3000乃至8万がより好ましい。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
本発明においては、上記ポリオール成分或いは多価カルボン酸成分に、金属塩基が導入された成分を共重合させることにより、樹脂骨格中に金属元素を有する非水系樹脂とすることができる。
このような金属塩基が導入された多価カルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の金属塩を挙げることができる。また金属塩基が導入されたポリオールとしては2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオール等の金属塩が挙げられる。特に好ましいものは5−ナトリウムスルホイソフタル酸である。
金属塩基が導入された成分は、0.01乃至10モル%の量で共重合されていることが望ましい。上記範囲よりも少ない場合には、多価金属イオンの移行を十分促進することができず、一方上記範囲よりも多い場合には、耐水性に劣るようになる。
尚、金属元素が非水系樹脂の樹脂骨格中に含まれるか否かは、例えば、原料樹脂の蛍光X線による分析により検出することができる。
(蛍光X線分析装置の測定条件)
使用機器:理学電機製 ZSX100e
測定条件: 測定対象 Na−Kα線
測定径 30mm
X線出力 50kV-70mA
測定時間 40s
[イソシアネート系硬化剤]
アンダーコート層に用いられるイソシアネート系硬化剤としては、前述した通り、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物を組み合わせで用いることが特に好ましい。
また直鎖状脂肪族イソシアネート化合物と前記脂環式イソシアネート化合物は重量比で、60:40乃至15:85、特に55:45乃至30:70の割合で配合されることが望ましい。上記範囲よりも直鎖状脂肪族イソシアネート化合物が少ない場合には、十分な接着性を得ることができず、また上記範囲よりも脂環式イソシアネート化合物が少ない場合には、領域(x)を形成することが困難になるおそれがある。
直鎖状の脂肪族イソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができ、中でもイソシアヌレート構造を有するものであることが好適であり、具体的には、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを構造単位とするイソシアヌレート体を好適に使用することができる。
また、骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物としては、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができ、中でもイソホロンジイソシアネート及びその誘導体を好適に使用することができる。
上記直鎖状脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式イソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を用いることもできる。
アンダーコート層において、直鎖状脂肪族イソシアネート化合物は、溶剤揮散と共に拡散する際にアンダーコート層内に均一に拡散しやすいという点から、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下、数平均分子量(Mn)が1200以下、特にガラス転移温度(Tg)が−40℃以下、数平均分子量(Mn)が1100以下であることが好ましい。また、脂環式イソシアネート化合物は、アンダーコート層のバリア層側、或いはプラスチック基材側に留まって、領域(x)を形成することが容易になるという点から、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、数平均分子量(Mn)が400以上、特にガラス転移温度(Tg)が60℃以上、数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましい。
[多価金属のアルカリ性化合物]
アンダーコート層に含有させる多価金属のアルカリ性化合物としては、前述したものを用いることができるが、ポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア層に移行した多価金属のアルカリ性化合物が速やかに溶解するという点で、多価金属のアルカリ性化合物の粒子の表面には化学処理が施されていないものであることが好ましい。
また、アンダーコート層中の領域(x)以外の部分に多価金属のアルカリ性化合物の粒子が残存することがあり、粒子の残存量にもよるが、粒子の1次粒径が0.5μmを超えるとガスバリア材のコーティング層(アンダーコート層及びガスバリア層)の透明性がわずかながら低下することがある。よって、多価金属のアルカリ性金属粒子の1次粒径は0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることが特に好ましい。多価金属のアルカリ性化合物粒子の1次粒径は、走査型電子顕微鏡の2次電子像での観察により求めることができる。
本発明においては、アンダーコート層を形成する組成物(以下、「アンダーコート層形成用組成物」という)において、多価金属のアルカリ性化合物の含有量は、多価金属イオン1個に対してカルボキシル基2個が反応するとして、金属原子換算で、ガスバリア層を形成する組成物(以下、「ガスバリア層形成用組成物」という)中に存在するポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基に対して、0.3当量以上となるように含有することが好ましく、特に高温高湿度条件下におかれる用途に用いる場合には、0.6当量以上となるように含有することが高温高湿度条件でのガスバリア性を維持する上で好ましい。上記範囲よりも多価金属のアルカリ性化合物の含有量が少ないと、ポリカルボン酸系ポリマーの架橋を充分に行うことができず、ガスバリア性を確保することが困難になる。
またポリカルボン酸系ポリマーに多価金属イオンを供給した後のアンダーコート層においては、層中に残存する多価金属のアルカリ性化合物の粒子の量が少ないことが好ましい。これにより、副生物が発生するリスクを低減することができ、真空断熱材の外装材として断熱性能を長期にわたって維持することが可能になる。具体的には、多価金属のアルカリ性化合物の仕込み量(当量)とイオン架橋に使用された量(当量)の差である残存量(当量)が、1.1以下、特に0.3以下であることが好ましい。
アンダーコート層形成用組成物中の樹脂分の含有量は、15乃至80重量%、特に20乃至60重量%となるように調製することが好ましい。
またアンダーコート層形成用組成物において樹脂分は非水系であることが望ましく、トルエン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶剤で調製することができるが、特に低温での層形成を可能にするために低沸点溶媒を用いることが好ましい。これらの溶剤は単独或いは混合液に溶解させてもよいし、或いは各成分の溶液を混合することによっても調製できる。
また上記成分の他に、公知である硬化促進触媒,充填剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使用時間延長剤等を使用することもできる。
アンダーコート層上に施すガスバリア層形成用組成物としては、イソシアネート化合物を含有しない以外は、前述したアンダーコート層を含有しないガスバリア材におけるガスバリア層形成用組成物と同様のものを使用することができる。
尚、ガスバリア層形成用組成物においては、多価金属のアルカリ性化合物を溶解させてガスバリア層形成用組成物へ移行させるために、溶媒に水が含まれることが必須である。更にアンダーコート層と良親和の溶剤を水と混合させることがアンダーコート層との親和性を向上させ、多価金属のアルカリ性化合物のガスバリア層形成用組成物への移行を促進させる上で望ましい。アンダーコート層と良親和の溶剤としては、アンダーコート層形成用組成物に用いる樹脂分によって異なるが、例えばウレタン系ポリマーを用いた場合には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2−ブタノン、アセトン等のケトン等を好適に用いることができる。
更にイソシアネート化合物のガスバリア層形成用組成物への移行量を制御する観点から、水100重量部に対して1900重量部以下、特に5乃至900重量部の量で他の溶剤を配合することが望ましく、10乃至400重量部の量で配合することが更に望ましい。
[プラスチック基材]
本発明において、ガスバリア層或いはアンダーコート層を形成するプラスチック基材としては、熱成形可能な熱可塑性樹脂から成るフィルム又はシートを挙げることができる。フィルム又はシートの製造方法としては、Tダイ法、インフレーション製膜法、キャスト製膜法等の従来公知の成形法を挙げることができる。
フィルム又はシートは、延伸温度で、逐次或は同時二軸延伸し、延伸後のフィルム又はシートを熱固定することにより製造された二軸延伸フィルム又はシートとして用いることもできる。
フィルム又はシートの厚みは、これに限定されないが、5〜3000μmの範囲にあることが好適である。
プラスチック基材を構成する樹脂の適当な例は、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系共重合体;ポリカーボネート等である。
これらの熱可塑性樹脂は単独で使用しても或いは2種以上のブレンド物の形で存在していてもよい、またプラスチック基材は、単層の構成でも、或いは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによる2層以上の積層構成であってもよい。
勿論、前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001部乃至5.0部の範囲内で添加することもできる。
また、ガスバリア材を補強するために、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
さらに、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
本発明の真空断熱材の外装材においては、特にガスバリア性又は輻射熱を遮断する能力(反射率)の少なくとも一方の向上を目的として、プラスチック基材上に物理的或いは化学的に気相蒸着法を用いて、例えば酸化ケイ素や酸化アルミニウムのような無機物系の蒸着層、或いはアルミニウム等の金属系の蒸着層が設けられたプラスチック基材を用いることが特に望ましい。
アンダーコート層を含有するガスバリア材は、上述したプラスチック基材の少なくとも一方の表面に、まず前述したアンダーコート層形成用組成物を塗布する。
アンダーコート層形成用組成物の塗工量は、アンダーコート層形成用組成物中の樹脂分及び多価金属のアルカリ性化合物の仕込み量によって決定され、一概に規定することができないが、形成される層中に樹脂分が0.02乃至5.0g/m、特に0.1乃至2.5g/mの範囲にあり、且つ次いで塗布するガスバリア層形成用組成物溶液中のポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基に対して、多価金属イオンが、前述したように、0.3当量以上になるように塗布することが好ましい。上記範囲よりも樹脂分が少ないと、アンダーコート層をプラスチック基材に固着させることが困難となり、一方上記範囲よりも樹脂分が多くても経済性に劣るだけで格別なメリットがない。
またプラスチック基材上に塗布されたアンダーコート層形成用組成物は、用いる塗料の種類及び塗工量にもよるが、50乃至200℃の温度で0.5秒乃至5分間、特に、60乃至140℃の温度で1秒乃至2分間、乾燥させることによって、アンダーコート層を形成することが可能であり、これによりプラスチック基材に影響を与えることなく、経済的にアンダーコート層を形成できる。
次いで形成されたアンダーコート層の上に、ガスバリア層形成用組成物を塗布する。ガスバリア層形成用組成物中に含まれるポリカルボン酸系ポリマー量、すなわち遊離カルボキシル基量は、酸価で少なくとも150KOHmg/g以上、特に250乃至970KOHmg/gの範囲であることが好ましい。
ガスバリア層形成用組成物の塗工量は、ガスバリア層中にイオン架橋が形成される前の樹脂分のみの乾燥状態で、0.3乃至4.5g/m、特に0.5乃至3.0g/mの範囲となるように塗布することが好ましい。上記範囲よりも塗工量が少ないと、十分なガスバリア性が得られない。一方上記範囲よりも樹脂分が多くても経済性に劣るだけで格別なメリットがない。
次いで、塗布されたガスバリア層形成用組成物の加熱処理を行うが、この加熱処理の際にアンダーコート層中の多価金属イオンとイソシアネート化合物がガスバリア層形成用組成物中に移行して、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に金属イオン架橋構造を形成し、イソシアネート化合物に由来する窒素元素がガスバリア層の表層及びアンダーコート層との界面近傍に存在することになる。特にガスバリア層形成用組成物中に移行したイソシアネート化合物の大部分は、ガスバリア層表層にブリードアウトし、イソシアネート化合物に由来する化学結合をガスバリア層の表面に形成する。
このガスバリア層形成用組成物の加熱条件は、40乃至110℃、特に50乃至100℃の温度で、1秒乃至1分の範囲にあることが好ましく、2秒乃至30秒の範囲にあることがより好ましい。
尚、ガスバリア層は充分に乾燥させ、ガスバリア層の含水率を低減させることが望ましい。これにより、水蒸気の発生を抑制することが可能になり、真空断熱材の外装材として断熱性能を長期にわたって維持することが可能になる。
上述したアンダーコート層形成用組成物及びガスバリア層形成用組成物の塗布、及び乾燥或いは加熱処理は、従来公知の方法により行うことができる。
塗布方法としては、これに限定されないが、例えばスプレー塗装、浸漬、或いはバーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等により塗布することが可能である。
また乾燥或いは加熱処理は、オーブン乾燥(加熱)、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。
(外装材)
本発明の真空断熱材に用いる外装材は、上述したガスバリア材を含有するガスバリア性積層体を用いることが重要な特徴であり、このガスバリア材を外装材の一部として用いる限り、ガスバリア性積層体の他の層は従来公知の外装材と同様に構成することができるが、本発明においては特に以下に示す層構成を採用することが好適である。
すなわち、図4は、本発明の真空断熱材に用いる外装材に用いる好適なガスバリア性積層体の一例の断面構造を示す図であり、内面側から順に、熱溶着層4、接着層5a、ガスバリア材6、接着層5b、基材樹脂7aに蒸着層7bが形成された蒸着フィルム7、接着層5c、保護層8の積層構造を有している。しかし、薄肉化、生産性向上の観点から、蒸着フィルム7及びそれに付随する接着層5bを省略した層構成を用いてもよい。
図4に示すガスバリア材6は、外面側から順にPETフィルム6a及びPETフィルム6aに蒸着されたアルミニウム蒸着層6bから成る蒸着フィルムから成る基材にアンダーコート層6cを介してガスバリア層6dが形成されており、ガスバリア性積層体に2つの蒸着層が形成されていることにより、外装材のガスバリア性及び輻射熱を遮断する能力(反射率)を向上できると共に、可撓性に優れたガスバリア層の存在と相俟って特に優れたガスバリア性を発現することが可能になる。
ガスバリア材の積層構成は図4に示した具体例に限定されるものではなく、例えば図4におけるガスバリア材6が、基材樹脂側にも蒸着層6biiを形成した図5に示す層構成でもよいし、ガスバリア層6d上にも蒸着層6biiを形成した図6に示す層構成でもよいし、蒸着フィルムの基材樹脂側にアンダーコート層6cを介してガスバリア層6dを形成した図7に示す層構成でもよいし、さらにガスバリア層6d上に蒸着層6biiを形成した図8に示す層構成でもよいし、基材樹脂として、蒸着層が形成されていないものを使用する場合は、ガスバリア層6d上に蒸着層6biを形成した図9に示す層構成でもよいし、基材にアンダーコート層を介してガスバリア層が形成されているだけのものを使用することもできるが、基材には蒸着層を有するフィルムを用いることが外装材のバリア性を更に向上できるので好ましい。
本発明において、ガスバリア材の積層構成としては、ガスバリア層又はアンダーコート層の少なくとも一方が蒸着層に隣接していることが好ましい。すなわち、ガスバリア層は高温条件下では分子振動によりバリア性が低下するおそれがあるが、蒸着層と隣接することにより、ガスバリア層の分子振動が抑制され、ガスバリア層へ酸素が溶解しにくくなり、高温条件下でもガスバリア性を維持することが可能になる。
好適な積層構成としては、ガスバリア材が蒸着層を2層有し、この2つの蒸着層の間にガスバリア層及びアンカーコート層が形成されている層構成(図6及び図8)を例示でき、特にガスバリア層及びアンダーコート層の両方が蒸着層と隣接している層構成(図6)が好適である。
ガスバリア性積層体の最内層に設けられる熱溶着層を構成する樹脂としては、従来公知のヒートシール性樹脂を挙げることができ、これに限定されないが、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂を好適に使用することができ、溶着性の点から未延伸のフィルムから成ることが望ましい。最も好適な熱溶着層としては、未延伸のポリプロピレンフィルムを挙げることができる。
また熱溶着層、ガスバリア材、蒸着フィルム、保護層の間に必要により形成される接着層としては、従来公知の接着性樹脂を用いることができ、これに限定されないが、押出コートを用いたサンドウィッチラミネートによる積層の場合には、酸変性エチレン・アクリル酸共重合体、酸変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体、酸変性ポリエチレン等の酸変性オレフィン系樹脂を使用することができ、接着剤を用いたドライラミネートによる積層の場合は、ウレタン系接着剤を好適に使用することができる。
ガスバリア性積層体の最外層に設けられ、外装材の機械的強度、耐水性、耐候性を向上させる保護層を構成する樹脂としては、これに限定されないが、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、或いはエチレン・4フッ化エチレン共重合体樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂を使用することができ、特に外装材の機械的強度、耐突き刺し性等の点から、二軸延伸フィルムから成ることが望ましい。最も好適な保護層としては、二軸延伸ナイロンフィルムを挙げることができる。
蒸着フィルムは、これに限定されないが、上述したポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等から成る基材フィルムに、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、シリカとアルミナの混合体、ダイヤモンドライクカーボンのような無機物系の蒸着層、或いはアルミニウム等の金属系の蒸着層を形成した蒸着フィルムを好適に使用することができるが、後述するように、ガスバリア材に蒸着層を直接形成することもできる。
本発明において外装材として用いられるガスバリア積層体における、熱溶着層、蒸着フィルム及び保護層の厚みは、特に限定されず、従来真空断熱材の外装材に用いられていた範囲のものを使用することができるが、具体的には、熱溶着層が20〜100μm、蒸着層が100〜20000Å、蒸着層を形成する基材が5〜100μm、保護層が5〜100μmの範囲にあることが好適である。
本発明の真空断熱材の外装材として使用されるガスバリア性積層体の製造方法としては、従来公知の積層方法により製造することができるが、本発明で用いるガスバリア材は、ガスバリア材に熱可塑性樹脂を直接押出コートして積層フィルムを製造することができるから、押出コートによるサンドウィッチラミネートで、接着剤を用いたドライラミネートでなくても製造することができる。
すなわち、前記ガスバリア材は、ラミネートにおける加工温度範囲において熱分解を起こさない耐熱分解性を有すると共に、この加工温度範囲において未架橋部分が存在することから、熱エネルギーによる一定の分子運動が確保され、ガスバリア層内に生じる応力を緩和することが可能であり、これにより耐クラック性が確保され、直接ガスバリア材に熱可塑性樹脂を押出コートすることができ、効率よくガスバリア性積層体を製造することができる。
従って、本発明においては好適には、ガスバリア材に熱溶着層を構成する熱可塑性樹脂を押出ラミネートした積層フィルムと、保護層を構成する熱可塑性樹脂を押出ラミネート或いは接着剤を介してラミネートした蒸着フィルムを、ドライラミネート等の従来公知の積層方法により積層してもよいし、或いは上記ガスバリア材及び熱溶着層から成る積層フィルムのガスバリア層に更に蒸着層を形成し、この蒸着層形成積層フィルムに保護層を構成する熱可塑性樹脂を押出ラミネート或いは接着剤を介してラミネートすること等によって製造することもできる。
(真空断熱材の製造方法)
本発明の真空断熱材の製造方法自体は従来公知の真空断熱材と同様であり、芯材を前述した外装材によって被覆し、この外装材の熱溶着層同士を重ね合わせた後、真空チャンバー内で減圧し、所定内圧に到達した後、熱溶着層を熱溶着して密封することにより製造する。
芯材としては、これに限定されないが、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の繊維、或いはシリカ、パーライト、カーボンブラック等の粉末を使用することができる。
本発明を次の実施例によりさらに説明するが、本発明は次の例により何らかの制限を受けるものではない。なお、実施例及び比較例の各種測定方法及び評価方法は以下の通りであり、各実施例のアンダーコート層及びバリア層の組成を表1に、外装材の層構成を表2に記載する。
以下の方法を用いて、ガスバリア層中の一価の金属元素、多価金属元素および窒素元素の含有量を測定した。
(一価の金属元素と多価金属元素の含有量)
ポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア材をアルカリ性溶液に浸漬して溶解させた後、蒸発乾固させて得られた固体をオーブンで灰化させる。得られた灰をICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 iCAP6000)で分析することで、ガスバリア材中の一価の金属元素ならびに多価金属元素の重量比を分析した。
(窒素元素の含有量)
ポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア材をアルカリ性溶液に浸漬して溶解させた後、蒸発乾固させて得られた固体を有機元素分析装置(CE Instruments社製 Thermoquest EA1110型)を用いた燃焼法による分析により、窒素と酸素の総重量に対する窒素の重量比を測定した。
(ガスバリア層の表層の窒素元素の含有量)
実施例に記載の各ガスバリア層の表層をXPS(アルバック・ファイ社製 Quantum−2000)にて表面分析し、表層における炭素、酸素及び窒素の総量に対する窒素の含有量を測定した。
(アンダーコート層及び領域(x)の各窒素含有量)
以下の方法を用いて、各領域における炭素、酸素及び窒素の総量に対する窒素の含有量を測定した。
領域(x):実施例に記載の各ガスバリア材をアルカリ性水溶液に浸漬してガスバリア層を溶解後、露出した表面をXPSにて組成分析。
アンダーコート層:実施例に記載の各ガスバリア材を傾斜切削し、該当する領域をXPSにて組成分析。
(イオン架橋率)
イオン架橋率は、イオン架橋形成後の実施例に記載の各ガスバリア層を用い、フーリエ変換赤外分光光度計で測定し算出する。イオン架橋の形成により、カルボン酸はカルボン酸塩へと転換する。一般に、カルボン酸の特性吸収帯は、920〜970cm−1付近、1700〜1710cm−1付近、2500〜3200cm−1付近の波長に、更に酸無水物では1770〜1800cm−1付近の波長にある。また、カルボン酸塩の特性吸収帯は、1480〜1630cm−1付近の波長にある。イオン架橋率の算出には、1600〜1800cm−1のカルボン酸および酸無水物の波長領域に頂点を有するピークの高さと、1480〜1630cm−1のカルボン酸塩の波長領域に頂点を有するピークの高さを用いる。より好ましくは、1695〜1715cm−1(i)と1540〜1610cm−1(ii)の波長領域に頂点を有するピークの高さを用いる。各試料の赤外吸収スペクトルを検出し、(i)および(ii)の波長での吸光度を測定しピーク高さを得る。カルボン酸とカルボン酸塩の吸光度係数を同じと見なし、カルボキシル基の塩転換率(カルボン酸からカルボン酸塩へ変換した割合)、即ちイオン架橋率Xを下記式(1)により算出する。
また、イオン架橋に使用された多価金属のアルカリ性化合物当量Yを下記式(2)により算出する。
X=(ii)のピーク高さ/[(i)のピーク高さ+(ii)のピーク高さ]…(1)
Y=X/100 …(2)
尚、(i)及び(ii)のピーク高さは、当ピークのすそ部分がベースラインに重なる点とピーク頂点の吸光度差をいう。
(フーリエ変換赤外分光光度計の測定条件)
使用機器:Digilab社製 FTS7000series
測定方法:ゲルマニウムプリズムを用いた一回反射法
測定波長領域:4000〜700cm−1
外装材の各種測定方法及び評価方法を記載する。
(酸素透過量)
実施例に記載の各外装材を酸素透過量測定装置(Modern Control社製、OX―TRAN2/20)を用いて測定した。但し、測定条件は温度80℃、相対湿度0%とした。
(窒素透過量)
実施例に記載の各外装材をJIS K7126 の気体透過試験A法(差圧法)に準拠し測定した。但し、測定条件は温度80℃、相対湿度0%とした。
(水蒸気透過量)
実施例に記載の各外装材を水蒸気透過量測定装置(Modern Control社製、PERMATRAN−W 3/30 )を用いて測定した。測定条件は温度40℃、相対湿度90%とした。
真空断熱材の各種測定方法及び評価方法を記載する。
(熱伝導率)
実施例に記載の各真空断熱材を、温度80℃の恒温槽で100日保管した前後で熱伝導率を測定した。また、熱伝導率の差分はその前後の値の差とした。差分の値が小さいことは、真空断熱材内部の真空度が高く保持されていることを意味し、断熱効果が経時的にも維持されていることを示す。
(実施例1)
ポリカルボン酸系ポリマーとしてポリアクリル酸(東亞合成製、AC-10LHP、Mw=25万)を用い、メタノール/2−プロパノール/MEK/水混合溶媒(重量比で25/25/40/10)に、固形分が6重量%になるように溶解した後、ポリアクリル酸に対して中和度2%となるように20重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて主溶液を得た。前記主溶液に、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、スミジュールN3300、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートベースのイソシアヌレート型、固形分100重量%、Tg=−60℃、Mn=680)をポリアクリル酸に対して0.4重量部加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、デスモジュールZ4470、イソホロンジイソシアネートベースのイソシアヌレート型、酢酸ブチル溶解品、固形分70重量%、Tg=70℃、Mn=1200)を、溶媒を除いた重量がポリアクリル酸に対して0.4重量部となるよう加え、バリア材前駆体用コーティング液とした。前記コーティング液をバーコーターにより、アルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業製、テトライトPC)のアルミ蒸着面に塗布した後、コンベア型電気オーブンにより、設定温度105℃、パスタイム40秒の条件で熱処理をして、バリア材前駆体を有するフィルムを得た。水道水1Lに対して塩化カルシウムを金属換算で360mmol(40g)添加し、次いで水酸化カルシウムを11g添加することにより、pHを12.0(水温24℃での値)に調整した後、40℃に暖めてよく攪拌しながら前記バリア材前駆体を有するフィルムを3秒間浸漬処理した。湯中から取り出し乾燥させ、塗工量1.5g/mのガスバリア材を得た。
外装材の作製方法を説明する。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記ガスバリア材、接着層である厚み2μmのウレタン系接着剤、熱溶着層として厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。
前記外装材及び心材としてグラスウールを用いて、前記真空断熱材の製造方法で真空断熱材を得た。
(実施例2)
水/エタノール混合溶媒(重量比で30/70)1Lに対して塩化カルシウムを金属換算で720mmol(80g)添加し、次いで水酸化カルシウムを22g添加することにより、塗工処理液を調製し、実施例1の浸漬処理に変えて、実施例1のバリア材前駆体上に前記塗工処理液をバーコーターで塗工後、乾燥させることでガスバリア層を有するガスバリア材を得た以外は、実施例1と同様の方法で外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例3)
実施例2において、主溶液の水酸化ナトリウムの替わりに水酸化カリウムを加え、塗工処理液の塩化カルシウムと水酸化カルシウムの替わりに、塩化マグネシウムと水酸化マグネシウムを加える以外は、実施例2と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例4)
ポリエステルポリオール(東洋紡績製、バイロン200)を酢酸エチル/MEK混合溶媒(重量比で65/35)に溶解し、14重量%の濃度の溶液を得た。この溶液中に直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、スミジュールN3300)をポリエステルポリオールに対して20重量部加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、デスモジュールZ4470)を、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量部となるよう加え、全固形分が14重量%になるよう前記混合溶媒にて調製し、アンダーコート層形成用コーティング液とした。前記コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業製、テトライトPC)のアルミ蒸着層上に塗工し、ボックス型の電気オーブンにより、設定温度70℃、処理時間2分の条件で熱処理を行い、厚み0.3μmのアンダーコート層を有するフィルムとした。前記フィルムのアンダーコート層上に、実施例1のバリア材前駆体用コーティング液をバーコーターにより塗布した後、コンベア型電気オーブンにより、設定温度105℃、パスタイム40秒の条件で熱処理をして、バリア材前駆体を得た。
水道水1Lに対して塩化カルシウムを金属換算で360mmol(40g)添加し、次いで水酸化カルシウムを11g添加することにより、pHを12.0(水温24℃での値)に調製した後、40℃に暖めてよく攪拌しながら前記バリア材前駆体を有するフィルムを3秒間浸漬処理した。湯中から取り出し乾燥させ、アンダーコート層及びガスバリア層を有するフィルム、即ちガスバリア材を得た。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記ガスバリア材(アンダーコート層及びガスバリア層を有するフィルム)、厚み2μmのウレタン系接着剤、熱溶着層として厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。そして、実施例1と同様の方法で前記外装材を用い真空断熱材を得た。
(実施例5)
重量比50/50の2種のポリエステルポリオール、バイロン200(東洋紡績製、樹脂骨格中に金属元素を含有していない非水系樹脂:蛍光X線にて確認)及びバイロンGK570(東洋紡績製、樹脂骨格中に金属元素を含有する非水系樹脂:蛍光X線にて確認)を、酢酸エチル/MEK混合溶媒(重量比で65/35)で溶解した液に、炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ製、CS3N−A、一次粒径:0.3μm)をポリエステルポリオールに対して280重量部になるよう配合して全固形分を35重量%とした後、ガラスビーズ(東新理興製、BZ-04)によりミル分散してペーストを得た。このペーストに、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、スミジュールN3300)をポリエステルポリオールに対して20重量部加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、デスモジュールZ4470)を、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量部となるよう加え、全固形分が25重量%になるよう前記混合溶媒にて調製し、多価金属のアルカリ性化合物を含有する塗料組成物から成るアンダーコート用コーティング液とした。
前記アンダーコート用コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業製、テトライトPC)のアルミ蒸着層上に塗布した後、ボックス型の電気オーブンにより、設定温度70℃、処理時間2分の条件で熱処理し、塗工量1.4g/mのアンダーコート層を有するフィルムとした。
ポリカルボン酸系ポリマーとしてポリアクリル酸(東亞合成製、AC-10LP、Mw=2.5万)を用い、水/アセトン混合溶媒(重量比で80/20)に、固形分が10重量%になるように溶解した後、ポリアクリル酸に対して中和度2.5%となるように20重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて主溶液を得た。前記主溶液をバーコーターにより、アンダーコート層を有する上記フィルムのアンダーコート層上に、塗工量が1.5g/mになるよう塗布してガスバリア材前駆体層とした。ここでガスバリア材前駆体層の塗工量とは、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業製、テトライトPC)に直接主溶液を塗布して乾燥した、即ちイオン架橋を形成させずに主溶液中のポリアクリル酸だけを乾燥して求めた塗工量のことである。塗布後の上記フィルムをコンベア型の電気オーブンにより、設定温度80℃、パスタイム5秒の条件で熱処理することで、ガスバリア材前駆体層中にイオン架橋を形成させたガスバリア層を、アンダーコート層上に有するフィルム、即ちガスバリア材を得た。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記ガスバリア材(アンダーコート層及びガスバリア層を有するフィルム)、厚み2μmのウレタン系接着剤、熱溶着層として厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。この外装材を用い、実施例1と同様の方法で真空断熱材を得た。
(実施例6)
実施例5において、主溶液中の水/アセトン混合溶媒(重量比で80/20)を水/アセトン混合溶媒(重量比で20/80)とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例7)
実施例5において、アンダーコート用コーティング液の炭酸カルシウム配合量をポリエステルポリオールに対して100重量部とし、アンダーコート層(A)の塗工量を1.0g/mとし、溶液(B‘)の塗工量を2.0g/mとする以外は実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例8)
実施例5において、主溶液中に水酸化ナトリウムを添加しないこと以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例9)
実施例5において、主溶液中のポリアクリル酸に対する中和度を4.5%とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例10)
実施例5において、主溶液中の水酸化ナトリウム水溶液を水酸化カリウム水溶液とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例11)
実施例5において、主溶液中の水/アセトン混合溶媒の重量比を90/10とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例12)
実施例5において、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、スミジュールN3300)をポリエステルポリオールに対して30重量部加え、脂環式ポリイソシアネートを、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して30重量部となるよう加え、主溶液中の水/アセトン混合溶媒の重量比を30/70とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例13)
実施例5において、アンダーコート用コーティング液中の炭酸カルシウムの替わりに炭酸マグネシウム(和光純薬製)を用い、アンダーコート層の塗工量を1.2g/mとする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例14)
実施例5において、アンダーコート用コーティング液中の炭酸カルシウムの替わりに水酸化カルシウム(和光純薬製)を用い、アンダーコート層の塗工量を1.1g/mとする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例15)
デスモジュールZ4470の替わりに、タケネートD110N(三井化学製、キシリレンジイソシアネートベースのアダクト型、固形分75%)を用いて、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量部とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例16)
実施例5において、スミジュールN3300の替わりにスミジュールHT(住化バイエルウレタン製、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートベースのアダクト型、固形分75重量%)を用いて、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量部とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例17)
実施例5において、アンダーコート用コーティング液中のバイロンGK570の替わりに、バイロン550(東洋紡績製、樹脂骨格中に金属元素を含有していない非水系樹脂:蛍光X線にて確認)を用いる以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(実施例18)
実施例5において、アンダーコート用コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業製、テトライトPC)のポリエチレンテレフタレート上に塗布すること以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材、及び真空断熱材を得た。
(実施例19)
実施例5において、アンダーコート用コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、ガスバリア層上にアルミ蒸着を施す以外は実施例5と同様な方法でガスバリア材を得た。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記のガスバリア材、厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。この外装材を用い、実施例5と同様の方法で真空断熱材を得た。
(実施例20)
実施例5において、ガスバリア材のポリエチレンテレフタレート上にアルミ蒸着層を形成し、アルミ蒸着層を2層有するガスバリア材を得た。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記アルミ蒸着層を2層有するガスバリア材、厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。この外装材を用い、実施例5と同様の方法で真空断熱材を得た。
(実施例21)
実施例5において、ガスバリア材のポリエチレンテレフタレート上に厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業製、テトライトPC)を順次ラミネートし、アルミ蒸着層を2層有する積層体を得た。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記アルミ蒸着層を2層有する積層体、厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。この外装材を用い、実施例5と同様の方法で真空断熱材を得た。
(実施例22)
実施例5において、ガスバリア材のガスバリア層上にアルミ蒸着を形成し、アルミ蒸着層を2層有するガスバリア材を得た。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記のアルミ蒸着層を2層有するガスバリア材、厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。この外装材を用い、実施例5と同様の方法で真空断熱材を得た。
(実施例23)
実施例18において、ガスバリア材のガスバリア層上にアルミ蒸着を形成し、アルミ蒸着層を2層有するガスバリア材を得た。
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、前記のアルミ蒸着層を2層有するガスバリア材、厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし、外装材を得た。この外装材を用い、実施例5と同様の方法で真空断熱材を得た。
(実施例24)
実施例20において、アンダーコート用コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmのテックバリアTX(三菱樹脂製、シリカ蒸着系バリアフィルム)の基材上に塗布すること以外は実施例20と同様の方法でガスバリア材、アルミ蒸着層を2層有する積層体、外装材、及び真空断熱材を得た。
(比較例1)
実施例1において、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、スミジュールN3300)をポリアクリル酸に対して20重量部加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、デスモジュールZ4470)を添加しない以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(比較例2)
実施例5において、主溶液中の水/アセトン混合溶媒の重量比を15/85とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(比較例3)
実施例5において、主溶液中の水/アセトン混合溶媒の重量比を100/0とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(比較例4)
実施例5において、主溶液中のポリアクリル酸に対する中和度を5.0%とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(比較例5)
実施例5において、直鎖状脂肪族ポリイソシアネートをポリエステルポリオールに対して35重量部加え、脂環式ポリイソシアネートを、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して35重量部となるよう加え、主溶液中の水/アセトン混合溶媒の重量比を30/70とする以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
(比較例6)
厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム上に、厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業製、テトライトPC)、厚み2μmのウレタン系接着剤、厚み60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを順次ラミネートし外装材を得た。この外装材を用い、実施例1と同様の方法で真空断熱材を得た。
(比較例7)
実施例5において、アンダーコート用コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布する以外は実施例5と同様な方法でガスバリア材、外装材及び真空断熱材を得た。
上記実施例及び比較例で得られたガスバリア層のイオン架橋率と、ICP発光分光分析装置より求めた一価の金属元素と多価金属元素の含有量と、有機元素分析装置より求めた窒素、炭素の総量に対する窒素の含有量と、ガスバリア層表面、アンダーコート層、領域(x)におけるXPSによる組成分析から求めた炭素、酸素及び窒素の総量に対する窒素の含有量と、酸素・窒素・水蒸気透過量と、熱伝導率の測定結果を表3に示す。実施例においては何れの評価も良好な結果を示したが、多価金属元素量が少ない比較例2は酸素・窒素透過量が多く、一価の金属元素量が過剰な比較例4は高温測定時の酸素・窒素透過量が僅かに多く、有機元素分析装置により求めた窒素、炭素の総量に対する窒素の含有量が少ない比較例3は高温測定時の酸素・窒素透過量が僅かに多く、有機元素分析装置により求めた窒素、炭素の総量に対する窒素の含有量が過剰な比較例1及び5は酸素・窒素透過量が多く、ガスバリア材を用いていない比較例6は酸素・窒素透過量が多く、アルミ蒸着層を有していない比較例7は酸素・窒素透過量は良好な値を示すが、水蒸気透過量が多く、何れの比較例も初期と100日後の熱伝導率の差分において高い値を示した。
本発明の真空断熱材は、ガスバリア性及び可撓性に優れた外装材が用いられていることから、長期にわたって内部の減圧状態を維持することができ、優れた断熱性能を維持できる。冷蔵庫やクーラーボックス等の保温・保冷用途のほか、住宅建材等にも好適に使用することができる。
1 真空断熱材、
2 芯材、
3 外装材、
4 熱溶着層、4a 無延伸ポリプロピレン、
5 ウレタン系接着層、
6 ガスバリア材、
6a ポリエチレンテレフタレート、
6b ,6biiアルミ蒸着層

6c アンダーコート層、 6dガスバリア層
7 蒸着フィルム、
7a 基材樹脂、7a ポリエチレンテレフタレート、
7b蒸着層、7bアルミ蒸着層、
8 保護層、8a 2軸延伸ナイロン、
11 ガスバリア層、
12 アンダーコート層、
13 プラスチック基材

Claims (15)

  1. 芯材と、該芯材を被覆する外装材とから成り、内部を減圧密封した真空断熱材において、
    前記外装材が、少なくとも、熱溶着層、蒸着層、及びガスバリア材を有するガスバリア性積層体から成り、
    前記ガスバリア材が、ポリカルボン酸系ポリマーから成り、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01乃至3.0重量%の窒素元素を含むガスバリア層を有することを特徴とする真空断熱材。
  2. 前記ポリカルボン酸系ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸である請求項1記載の真空断熱材。
  3. 前記ポリカルボン酸系ポリマーが、カルボキシル基に対するモル比で4.5%以下の範囲で部分中和されている請求項1又は2記載の真空断熱材。
  4. 前記1価の金属元素が、ナトリウム又はカリウムである請求項1〜3の何れかに記載の真空断熱材。
  5. 前記多価金属元素が、カルシウム又はマグネシウムである請求項1〜4の何れかに記載の真空断熱材。
  6. 前記ガスバリア層の表層における炭素、酸素及び窒素の総量に対する窒素の含有量が1atm%以上である請求項1〜5の何れかに記載の真空断熱材。
  7. 前記ガスバリア材が、蒸着層が形成されたプラスチック基材の該蒸着層又はプラスチック基材の一方の表面に、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含有するアンダーコート層が形成され、該アンダーコート層上にガスバリア層が形成されている請求項1〜6の何れかに記載の真空断熱材。
  8. 前記ガスバリア層及又はアンダーコート層の少なくとも一方が、蒸着層と隣接する請求項7記載の真空断熱材。
  9. 前記ガスバリア材が、蒸着層を2層有し、該2つの蒸着層の間にガスバリア層及びアンダーコート層が形成されている請求項7又は8に記載の真空断熱材。
  10. 前記ガスバリア層及びアンダーコート層の両方が、蒸着層に隣接する請求項9記載の真空断熱材。
  11. 前記アンダーコート層中に、多価金属のアルカリ性化合物を含有する請求項7〜10の何れかに記載の真空断熱材。
  12. 前記多価金属のアルカリ性化合物が、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種類から成る請求項11記載の真空断熱材。
  13. 前記イソシアネート化合物が、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせである請求項7〜12の何れかに記載の真空断熱材。
  14. 前記脂肪族イソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する請求項13記載の真空断熱材。
  15. 前記アンダーコート層のガスバリア層側に、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(x)が形成されており、該領域(x)の窒素の含有量が領域(x)以外のアンダーコート層の窒素の含有量よりも多いことを特徴とする請求項7〜14の何れかに記載の真空断熱材。
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