JP6379555B2 - 真空断熱材 - Google Patents
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Description
このような問題を解決するものとして、本出願人より、芯材と、酸素吸収性樹脂を含有する酸素吸収層を含む外皮材とから構成される真空断熱体が提案されている(特許文献2)。
従って本発明の目的は、優れた熱溶着性及びガスバリア性を有する熱溶着層を備えて成る外装材を用い、熱溶着層端部からの気体等の侵入を有効に防止して断熱性能が向上された真空断熱材を提供することである。
本発明の他の目的は、断熱性能及びガスバリア性に優れ、長期にわたって優れた断熱性能を発現可能であると共に、可撓性及び耐水性にも優れた外装材を用いた真空断熱材を提供することである。
1.前記熱溶着層が、イソフタル酸成分の共重合比率が10〜20モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートから成る最内層と、イソフタル酸成分の共重合比率が10モル%以下であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートから成る層の少なくとも2層から成ること、
2.前記ガスバリア材が、少なくともアルミニウム蒸着層及びガスバリア層とから成り、該ガスバリア層が、ポリカルボン酸系ポリマーから成り、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01乃至3.0重量%の窒素元素を含むバリア層であること、
しかも本発明の外装材の熱溶着層においては、従来のオレフィン系樹脂から成る熱溶着層に比して薄肉にすることが可能であることから、熱溶着層端部の露出面積が低減されており、外装材端部からの気体等の透過侵入を有効に防止できる。
更に本発明の熱溶着層は、ガスバリア性に優れていることから、外装材に用いた接着樹脂の残留溶剤の外装材内部への侵入も有効に防止できるため、残留溶剤に起因する真空断熱材の断熱性能の劣化を大幅に低減できる。
真空断熱材1は、図1に示すように、芯材2と、この芯材2を被覆する外装材3とから成り、この外装材をヒートシールにより溶着して密封し、内部の減圧状態を維持してなるものであり、本発明においては、用いる外装材が、前述した特定の熱溶着層と、ガスバリア材から成ることが重要な特徴である。
図1に示す外装材3は、熱溶着層4、ガスバリア材5、保護層6の3層からなる積層体から成っており、外装材3は芯材2を内包し、最内層である熱溶着層4,4が接するように重ね合わせた状態で溶着されており、外装材3の溶着端部外面においては熱溶着層4の端面が露出した状態になっている。
本発明の真空断熱材においては、イソフタル酸の共重合割合の異なる少なくとも2層の未延伸のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートから成る熱溶着層を用いることにより、ガスバリア性を確保可能な層と熱溶着性を確保可能な層に機能分離すると共に、これらの2層の層間密着性が高いことから、全体として優れた熱溶着性を確保しながら、熱溶着層のガスバリア性を向上し、前述したような熱溶着層4の露出端面からの気体等の透過侵入を防止すると共に、残留溶剤の外装材内部への侵入を低減して、真空断熱材の優れた断熱性能を長期にわたって持続させることが可能になる。
本発明の外装材においては、熱溶着層として、イソフタル酸成分の共重合比率が異なる少なくとも2層の未延伸のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、すなわち図2に示すように、イソフタル酸成分の共重合比率が高いイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET/IAH」ということがある)から成る第1層10が最内層、イソフタル酸成分の共重合比率が最内層よりも少ないイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET/IAL」ということがある)から成る第2層11から少なくとも成る熱溶着層を使用することが重要な特徴であり、PET/IAHが、イソフタル酸含有量が多く、融点が低く低結晶性であることから、特に優れた熱溶着性を有すると共に、PET/IALが熱溶着性と共に優れたガスバリア性を有していることを見出し、これらを積層して熱溶着層として、ガスバリア材及び外皮材と共に外装材を構成する。
また数平均分子量は、PET/IAHが5000以上、特に10000乃至40000の範囲、PET/IALが5000〜50000の範囲、特に10000乃至40000の範囲にあることが好ましく、ガラス転移点は、PET/IAHで40℃以上、特に50℃以上、PET/IALが50℃以上、特に60℃以上であることが、バリア性の点から好ましい。
またPET/IAH及びPET/IALの何れにも、それ自体公知のフィルム用配合剤、例えば、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、各種安定剤、充填剤、滑剤等を公知の処方によって配合することができ、上述のPET/IAH及びPET/IALの条件に当てはまる範囲で公知のポリエチレンテレフタレートやジオール成分を変性させたポリエチレンテレフタレート等をブレンドすることもできる。
このような積層フィルムは、公知の積層方法により製造することができるが、好適には、多層キャストフィルム又は多層インフレーションフィルムのラミネーション、または共押出コートにより形成することが好ましい。
尚、本発明の熱溶着層は、熱溶着層のみを上述した方法により形成し、後述するガスバリア材と接着剤樹脂を用いて積層することもできるし、或いはガスバリア材上に共押出することによって積層することもでき、外装材の製造方法については後述する。
このような第3層の厚みは、用いる樹脂の種類によって一概に規定できないが、0.01〜10μmの範囲にあることが、第1層及び第2層により発現される熱溶着性及びガスバリア性を損なうことなく、第3層が有する作用効果を発現する上で好ましい。
本発明の真空断熱材の外装材に、溶着層と共に用いるガスバリア材としては、従来真空断熱材の用途に使用されていたガスバリア材をすべて使用することができる。このような従来公知のガスバリア材としては、アルミニウムやスチール等の金属箔、酸化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム、シリカとアルミナの混合体,ダイヤモンドライクカーボンのような無機物系の蒸着層、或いはアルミニウム等の金属系の蒸着層を形成した蒸着フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体、MXD6等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリカルボン酸系ガスバリア性組成物等から成る有機系バリアフィルム、アルミナ、シリカの無機物とエチレンビニルアルコール共重合体、MXD6等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリカルボン酸等の有機物系材料を組み合わせた有機−無機ハイブリットバリアフィルム等を例示することができ、これらの単独、或いは組み合わせによりガスバリア材とすることができる。
かかるガスバリア材は、1価の金属元素、多価金属元素、及び窒素の含有量が所定の範囲に制御されることによって、優れたガスバリア性、可撓性、耐水性、及び屈曲加工後の耐水性を有している。
ガスバリア層を構成するポリカルボン酸系ポリマーとしては、上述した耐水性という作用効果を発現する上で1価の金属元素によって部分中和される量が、特にカルボキシル基に対するモル比で4.5%以下、より好ましくは4.0%以下の範囲で部分中和されているポリカルボン酸系ポリマーが、ガスバリア材中の1価の金属元素の量を上記範囲に制御する上で望ましい。上記範囲よりも中和量が多いと、上記範囲にある場合に比して屈曲加工後の耐水性及び高温高湿度条件下でのガスバリア性に劣るようになる。
1価の金属としては、特にナトリウム、カリウムが好適であり、1価金属化合物としてこれらの水酸化物を用いてポリカルボン酸系ポリマーを中和することが好適である。
ポリカルボン酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体を挙げることができ、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が好ましい。
イソシアネート化合物としては、後述するアンダーコート層に用いるイソシアネート系硬化剤として例示するイソシアネート化合物の中から適宜選択して使用することができるが、イソシアネート化合物の中でも、ポリカルボン酸系ポリマーと相溶性に乏しいもの、例えばイソホロンジイソシアネート及びその誘導体等を用いることが好適である。
アンダーコート層を形成しないガスバリア層においては、ポリカルボン酸系ポリマー、該ポリマーに部分中和を施す場合は1価の金属元素を有する塩基性化合物、及びイソシアネート化合物を含有するガスバリア層形成用組成物を調製し、このガスバリア層形成用組成物から成るフィルム、シート或いは塗膜を、多価金属のアルカリ性化合物含有組成物によってポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基をイオン架橋することによって形成することができる。
ガスバリア層形成用組成物は、ポリカルボン酸系ポリマー及びイソシアネート化合物を、水を含む溶媒に溶解させてもよいし、或いはこれらの成分の水含有溶液を混合することにより調製することができる。
ポリカルボン酸系ポリマーを溶解する溶媒としては、水だけでもよいが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2−ブタノン、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤と水との混合溶媒であってもよく、特に水よりも低沸点の溶剤を水と組み合わせて用いることができる。
イソシアネート化合物をブリードアウトさせる観点からは、有機溶剤を水100重量部に対して10乃至400重量部の量で配合することが好ましい。
またイソシアネート化合物は、ポリカルボン酸系ポリマー100重量部に対して、0.04乃至12重量部、特に0.1乃至7重量部の量で含有して成ることが好適である。
ガスバリア層形成用組成物を、用いるポリカルボン酸系ポリマーやイソシアネート化合物の種類や含有量、或いはガスバリア層形成用組成物の塗工量にもよるが、40乃至110℃の温度で、1秒乃至1分間(ピーク保持時間)加熱し、シート、フィルム又は塗膜を形成する。次いでこのシート、フィルム又は塗膜中のカルボキシル基を多価金属によって、イオン架橋することによりガスバリア層を製造することができる。
多価金属イオンとしては、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を架橋可能である限り特に制限されないが、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等のアルカリ土類金属の金属イオンを好適に使用できる。また、多価金属のアルカリ性化合物としては、安全性の観点や金属イオン架橋が形成される際の副生成物がガスバリア材中に留まらない点で、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種類を使用することが特に好ましい。
上記多価金属のアルカリ性化合物を含有する溶液による処理を行ったガスバリア材は、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間が、多価金属イオンにより20%以上、特に30%以上の割合でイオン架橋されていることが望ましい。
アンダーコート層上にガスバリア層を形成する場合においては、基材の少なくとも一方の面にガスバリア層を有しており、基材とガスバリア層の間に、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び多価金属のアルカリ性化合物を含有するアンダーコート層が形成されている。
基材上に、イソシアネート化合物及び多価金属のアルカリ性化合物を含有するアンダーコート層を形成し、このアンダーコート層上にポリカルボン酸系ポリマーを含有する溶液を塗布してガスバリア層を形成する。これにより、アンダーコート層中に存在する多価金属イオン及びイソシアネート化合物がポリカルボン酸系ポリマー中に供給されて、ガスバリア層中に所定量の多価金属元素及び窒素元素を存在させることが可能になる。その結果、ポリカルボン酸系ポリマーは金属イオン架橋されると共に、ポリカルボン酸系ポリマー中に供給されたイソシアネート化合物の大部分はガスバリア層表面にブリードアウトし、イソシアネート化合物に由来する化学結合をガスバリア層の表面に存在させることが可能になり、残余のイソシアネート化合物はアンダーコート層との界面近傍に留まり、主としてアンダーコート層中の成分とポリカルボン酸系ポリマー間を架橋するか、もしくはイソシアネート化合物同士で反応する。その結果、前述したガスバリア材と同様に、優れたガスバリア性及び耐水性を有すると共に、屈曲加工後の耐水性や耐ブロッキング性についても優れたガスバリア性積層体とすることができる。
アンダーコート層は、主材樹脂、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個有するイソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成るものであるが、主材樹脂が金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールであること、イソシアネート系硬化剤が直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせであることが特に好適である。
またイソシアネート系硬化剤として、主材樹脂に対して相溶性の異なる直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせを用いることによって、イソシアネート化合物のアンダーコート層内におけるブリードアウトの挙動を制御することが可能になる。
樹脂のモノマーに導入させておくのに好適な金属塩基としては、多価金属の分散性を向上させるため極性を有する官能基を有していることが望ましく、スルホン酸金属塩基、リン酸金属塩基等を挙げることができる。また金属元素としては、1価の金属元素であることが特に好適であり、本発明においては、特にスルホン酸ナトリウムが導入されていることが好適である。
上記ポリオール成分或いは多価カルボン酸成分に、金属塩基が導入された成分を共重合させることにより、樹脂骨格中に金属元素を有する非水系樹脂とすることができる。
このような金属塩基が導入された多価カルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の金属塩を挙げることができる。また金属塩基が導入されたポリオールとしては2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオール等の金属塩が挙げられる。特に好ましいものは5−ナトリウムスルホイソフタル酸である。
次いで形成されたアンダーコート層の上に、ガスバリア層形成用組成物を塗布する。ガスバリア層形成用組成物中に含まれるポリカルボン酸系ポリマー量、すなわち遊離カルボキシル基量は、酸価で少なくとも150KOHmg/g以上、特に250乃至970KOHmg/gの範囲であることが好ましい。ガスバリア層形成用組成物の塗工量は、ガスバリア層中にイオン架橋が形成される前の樹脂分のみの乾燥状態で、0.3乃至4.5g/m2、特に0.5乃至3.0g/m2の範囲となるように塗布することが好ましい。
次いで、塗布されたガスバリア層形成用組成物の加熱処理を行うが、この加熱処理の際にアンダーコート層中の多価金属イオンとイソシアネート化合物がガスバリア層形成用組成物中に移行して、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に金属イオン架橋構造を形成し、イソシアネート化合物に由来する窒素元素がガスバリア層の表層及びアンダーコート層との界面近傍に存在することになる。
このガスバリア層形成用組成物の加熱条件は、40乃至110℃、特に50乃至100℃の温度で、1秒乃至1分の範囲にあることが好ましく、2秒乃至30秒の範囲にあることがより好ましい。
ガスバリア層或いはアンダーコート層を形成する基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体或いはポリプロピレン等の熱可塑性樹脂から成るフィルム又はシート等のプラスチック基材、或いはガスバリア性及び輻射熱を遮断する能力(反射率)の向上を目的として、これらのプラスチック基材上に物理的或いは化学的気相蒸着法を用いて、例えば酸化ケイ素や酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムのような無機物系の蒸着層、或いはアルミニウムやジルコニウム等の金属系の蒸着層が設けられたプラスチック基材を用いることが特に望ましい。また、前記プラスチック基材が本発明の熱溶着層であっても良い。即ち、熱溶着層、或いは蒸着層が設けられた熱溶着層は熱溶着層の役割と前記ガスバリア層或いはガスバリア層形成する為の前記アンダーコート層を形成する基材の両方の役割を兼ねることが可能である。尚、蒸着層は、予め基材に形成し蒸着フィルムとした後、蒸着フィルムにガスバリア層を形成することもできるが、基材にガスバリア層を形成した後、ガスバリア層上に蒸着層を形成してもよい。
本発明に用いる外装材においては、ガスバリア材として特に上述したガスバリア層及び蒸着層を有するガスバリア材を用いることが好ましく、かかるガスバリア材の層構成としては、例えば、図4に示すように、基材として、PETフィルム5a及び該PETフィルム5aに蒸着されたアルミニウム蒸着層5b1から成る蒸着フィルムVを用い、この蒸着層5b1にアンダーコート層5cを介してガスバリア層5dが形成されてなるガスバリア材5や、或いは図5に示すように、図4に示すガスバリア材5のPETフィルム5a側にも蒸着層5b2が更に形成されている層構成でもよいし、図6に示すように、図4のガスバリア層5d上に蒸着層5b2が形成されていてもよい。更に、基材として、蒸着層が形成されていないものを使用する場合には、ガスバリア層5d上に蒸着層を形成すればよい。
また上記層構成に、更に前述した他のバリア材や他の樹脂フィルムを積層することもできるし、ガスバリア材に蒸着層を直接形成して上記層構成にすることもできる。
蒸着フィルムとしては、これに限定されないが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セロハン、ポリ乳酸、エチレンビニルアルコール共重合体を基材として用いることができ、蒸着フィルムの厚みは、これに限定されないが、蒸着層が100〜20000Å、蒸着層を形成する基材が5〜100μmの範囲にあることが好適である。
本発明の真空断熱材に用いる外装材は、前述した熱溶着層を用いることが重要な特徴であり、特に上述したガスバリア材を合わせて用いることが好適であり、外装材の他の層は従来公知の外装材と同様に構成することができる。
具体的には、図1に示したように、最内層となる熱溶着層4、ガスバリア材5、最外層となる保護層6から成る層構成を好適に採用することができ、更に図1に示す層構成において、ガスバリア材5と保護層6の間に蒸着フィルムを介在させることも好適である。また溶着層、ガスバリア材、保護層の間には必要により接着層が形成されていてもよい。このような接着層としては、従来公知の接着性樹脂を用いることができ、これに限定されないが、後述する押出コートを用いたサンドウィッチラミネートによる積層の場合には、ポリオレフィンの他にも酸変性エチレン・アクリル酸共重合体、酸変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体、酸変性ポリエチレン等の酸変性オレフィン系樹脂を使用することができ、接着剤を用いたドライラミネートによる積層の場合は、ウレタン系接着剤を好適に使用することができる。
本発明に用いる外装材における、ガスバリア材及び保護層の厚みは、特に限定されず、従来真空断熱材の外装材に用いられていた範囲のものを使用することができるが、具体的には、ガスバリア材が3〜100μm、保護層が5〜100μmの範囲にあることが好適である。
従って、本発明においては好適には、ガスバリア層及び蒸着層を有するガスバリア材に熱溶着層を構成するPET/IAL及びPET/IAHを共押出ラミネートした積層フィルムと、保護層を構成する熱可塑性樹脂フィルムをドライラミネート等の従来公知の積層方法により積層してもよいし、或いは上記ガスバリア材及びPET/IAL及びPET/IAHから成る熱溶着層から成る積層フィルムに、保護層を構成する熱可塑性樹脂を押出ラミネートすること等によって積層してもよいし、或いはPET/IAL及びPET/IAHから成るキャストフィルムをガスバリア材とドライラミネートして成る積層フィルムに保護層を構成する熱可塑性樹脂を押出ラミネートすること等によって製造することもできる。
本発明の真空断熱材の製造方法自体は従来公知の真空断熱材と同様であり、芯材を前述した外装材によって被覆し、この外装材の溶着層同士を重ね合わせた後、真空チャンバー内で減圧し、所定内圧に到達した後、溶着層を熱溶着して密封することにより製造する。
芯材としては、これに限定されないが、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の繊維、或いはシリカ、パーライト、カーボンブラック等の粉末を使用することができる。
ヒートシール試験装置(テスター産業株式会社製)を使用し、シール時間を0.8秒シール圧を2kgf/cm2と固定し、シール温度を変更してシール界面の温度を測定しながら、試験片を作製した。ヒートシール強度の測定はJIS―1707に準じ、23℃―50%RH環境下で、精密万能試験機オートグラフAG―IS(島津製作所株式会社製)にて測定した。フィルムの流れ方向(MD)に300mm/minの速度で引っ張り、最大試験力(N/15mm)をヒートシール強度とし、シール界面温度に対してプロットしてヒートシール曲線を作製した。ここでヒート強度が1N/15mmに達するシール界面温度をシール発現温度とし、シール界面温度110℃でのヒートシール強度と共にヒートシール特性の評価に用いた。シール発現温度95℃以下および110℃でのシール強度15N/15mm以上の両条件を満たすものを熱溶着性良好とした。
(一価の金属元素と多価金属元素の含有量)
ポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア材をアルカリ性溶液に浸漬して溶解させた後、蒸発乾固させて得られた固体をオーブンで灰化させる。得られた灰をICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 iCAP6000)で分析することで、一価の金属元素ならびに多価金属元素の重量比を分析した。
ポリカルボン酸系ポリマーから成るバリア材をアルカリ性溶液に浸漬して溶解させた後、蒸発乾固させて得られた固体を有機元素分析装置(CE Instruments社製 Thermoquest EA1110型)を用いた燃焼法による分析により、窒素と酸素の総重量に対する窒素の重量比を測定した。
(熱伝導率)
実施例に記載の各真空断熱材を、温度50℃の恒温槽で150日保管した前後で熱伝導率を測定した。また、熱伝導率の差分はその前後の値の差とした。差分の値が小さいことは、真空断熱材内部の真空度が高く保持されていることを意味し、断熱効果が経時的にも維持されていることを示す。
保護層として厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム、バリア材として厚み7μmのアルミ箔、熱溶着層として30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率8%)及び3μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率5%)から成る33μmの未延伸2層イソフタル酸変性PETを用い、これらをウレタン系接着剤にて順次ドライラミネートし、30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率8%)を最内層とする外装材用積層フィルムを得た。前記外装材用積層フィルムを用い、前述の真空断熱材の製造方法に基づき真空断熱材を得た。
実施例1において、熱溶着層として20μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率20%)及び3μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率10%)から成る23μmの未延伸2層イソフタル酸変性PETを用い、バリア材として、厚み12μmのアルミ蒸着を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「AL蒸着/PET」と表記)(尾池工業(株)製、テトライトPC)を用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例1において、熱溶着層として5μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率10%)及び30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率0.5%)から成る35μmの未延伸2層イソフタル酸変性PETを用い、バリア材として、厚み12μmのアルミ蒸着を施したエチレンビニルアルコール共重合体(以下、「AL蒸着/EVOH」と表記)((株)クラレ社製、VM−XL)を用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
重量比50/50の2種のポリエステルポリオール、バイロン200(東洋紡績(株)社製、樹脂骨格中に金属元素を含有していない非水系樹脂:蛍光X線にて確認)及びバイロンGK570(東洋紡績(株)社製、樹脂骨格中に金属元素を含有する非水系樹脂:蛍光X線にて確認)を、酢酸エチル/MEK混合溶媒(重量比で65/35)で溶解した液に対して、炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ(株)社製、CS3N−A、一次粒径:0.3μm)を280重量%になるよう配合して全固形分を35%とした後、ガラスビーズ((株)東新理興社製、BZ−04)によりミル分散してペーストを得た。このペーストに、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)社製、スミジュールN3300)をポリエステルポリオールに対して20重量%加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)社製、デスモジュールZ4470)を、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量%となるよう加え、全固形分が25重量%になるよう前記混合溶媒にて調製し、多価金属のアルカリ性化合物を含有する塗料組成物(A’)から成るコーティング液(A”)とした。
前記コーティング液(A”)をバーコーターにより、厚み12μmのAL蒸着/PET(尾池工業(株)社製、テトライトPC)のアルミ蒸着層側に塗布した後、ボックス型の電気オーブンにより、設定温度70℃、処理時間2分の条件で熱処理し、塗工量1.4g/m2の層(A)に該当する層Aを有するフィルムとした。
前記溶液(B’)をバーコーターにより、層Aを有する上記フィルムの層A上に、塗工量が1.5g/m2になるよう塗布して前駆体層(B0)とした。ここで前駆体層(B0)の塗工量とは、厚み12μmのAL蒸着/PET(尾池工業(株)社製、テトライトPC)に直接溶液(B’)を塗布して乾燥した、即ちイオン架橋を形成させずに溶液(B’)中のポリアクリル酸だけを乾燥して求めた塗工量のことである。塗布後の上記フィルムをコンベア型の電気オーブンにより、設定温度80℃、パスタイム5秒の条件で熱処理することで、前駆体層(B0)中にイオン架橋を形成させた層Bを、層A上に有するフィルム、即ちガスバリア性積層体を得た。
実施例3において、前記ガスバリア性積層体をバリア材として用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例4において、前記コーティング液(A”)をバーコーターにより、5μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率10%)及び30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率0.5%)から成る35μmの未延伸2層イソフタル酸変性PETの30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率0.5%)層側に塗工する以外は実施例4と同様の方法でガスバリア性積層体を得た。前記ガスバリア性積層体に厚み12μmのAL蒸着/PET(尾池工業(株)社製、テトライトPC)をウレタン系接着剤にてドライラミネートした積層体をバリア材とし、さらに保護層として、二軸延伸ナイロンフィルムをドライラミネートすることで外装材用積層体を得た。前記外装材用積層フィルムを用い、前述の真空断熱材の製造方法に基づき真空断熱材を得た。
実施例4において、ガスバリア材の層B上に5μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率10%)及び30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率0.5%)から成る35μmの未延伸2層イソフタル酸変性PETを層Bと30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率0.5%)層が隣接するように共押出コートし、さらにガスバリア性積層体のポリエチレンテレフタレート側にウレタン系接着剤にて保護層である厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルムをドライラミネートすることで外装材用積層フィルムを得た。前記外装材用積層フィルムを用い、前述の真空断熱材の製造方法に基づき真空断熱材を得た。
ポリカルボン酸系ポリマーとしてポリアクリル酸(東亞合成(株)社製、AC−10LHP、Mw=25万)を用い、メタノール/2−プロパノール/MEK/水混合溶媒(重量比で25/25/40/10)に、固形分が6重量%になるように溶解した後、ポリアクリル酸に対して中和度2%となるように20%水酸化ナトリウム水溶液を加えて主溶液を得た。前記主溶液に、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)社製、スミジュールN3300、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートベースのイソシアヌレート型、固形分100%、Tg=−60℃、Mn=680)をポリアクリル酸に対して0.4重量部加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)社製、デスモジュールZ4470、イソホロンジイソシアネートベースのイソシアヌレート型、酢酸ブチル溶解品、固形分70%、Tg=70℃、Mn=1200)を、溶媒を除いた重量がポリアクリル酸に対して0.4重量部となるよう加え、バリア材前駆体用コーティング液とした。前記コーティング液をバーコーターにより、AL蒸着/PET(尾池工業(株)社製、テトライトPC)のアルミ蒸着面に塗布した後、コンベア型電気オーブンにより、設定温度105℃、パスタイム40秒の条件で熱処理をして、バリア材前駆体を有するフィルムを得た。水道水1Lに対して塩化カルシウムを金属換算で360mmol(40g)添加し、次いで水酸化カルシウムを11g添加することにより、pHを12.0(水温24℃での値)に調整した後、40℃に暖めてよく攪拌しながら前記バリア材前駆体を有するフィルムを3秒間浸漬処理した。湯中から取り出し乾燥させ、塗工量1.5g/m2の層Bを有するバリア材を得た。実施例1において、バリア材として前記塗工量1.5g/m2の層Bを有するバリア材を用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例1において、熱溶着層として5μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率10%)及び30μmポリエチレンテレフタレートから成る35μmの未延伸2層ポリエステルを用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例1において、熱溶着層として5μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率10%)及び30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率0.5%)から成る35μmの2軸延伸2層イソフタル酸変性PETを用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例1において、熱溶着層として5μmの未延伸イソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率10%)及び30μmの2軸延伸イソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率0.5%)から成る35μmの2層のイソフタル酸変性PETを用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例1において、熱溶着層として、50μmの未延伸ポリプロピレンを用いる以外は
実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例1において、外装材用積層フィルムの最内層が3μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率5%)なるようにドライラミネートする以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
実施例1において、熱溶着層として、30μmイソフタル酸変性PET(イソフタル酸成分共重合比率5%)を用いる以外は実施例1と同様の方法で外装材用積層フィルム及び真空断熱材を得た。
10 PET/IAHから成る第1層、11 PET/IALから成る第2層。
Claims (3)
- 芯材と、該芯材を被覆する外装材とから成り、内部を減圧密封した真空断熱材において、
前記外装材が、少なくとも、熱溶着層及びガスバリア材から成り、該熱溶着層が、イソフタル酸成分の共重合比率が異なる少なくとも2層の未延伸のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートから成り、イソフタル酸成分の共重合比率が高いイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートから成る層が最内層となることを特徴とする真空断熱材。 - 前記熱溶着層が、イソフタル酸成分の共重合比率が10〜20モル%であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートから成る最内層と、イソフタル酸成分の共重合比率が10モル%以下であるイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートから成る層の少なくとも2層から成る請求項1記載の真空断熱材。
- 前記ガスバリア材が、少なくともアルミニウム蒸着層及びガスバリア層とから成り、該ガスバリア層が、ポリカルボン酸系ポリマーから成り、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01乃至3.0重量%の窒素元素を含むバリア層である請求項1又は2記載の真空断熱材。
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