JP2017019238A - ガスバリア性積層体 - Google Patents

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智弘 宮井
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瞬也 南郷
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浩介 植田
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Abstract

【課題】無機蒸着層のような無機物から成る表面を有する基材に対するアンダーコート層の密着性が顕著に向上され、優れたガスバリア性を長期にわたって発現可能であると共に、耐水性及び生産性にも優れたガスバリア性積層体を提供することである。【解決手段】無機表面を有する基材の該無機表面に、非水系樹脂から成るアンダーコート層を介して、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されたポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア層が形成されて成るガスバリア性積層体であって、前記アンダーコート層が、極性基を有する有機化合物から成る成分を含有することを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア層を有するガスバリア性積層体に関するものであり、より詳細には、蒸着層等の無機表面に対する密着性が顕著に改善されたアンダーコート層を有するガスバリア性積層体に関する。
近年、環境への配慮や或いは湿度条件に影響を受けないガスバリア材として、ポリカルボン酸系ポリマーを多価金属でイオン架橋してなるガスバリア材や、ポリカルボン酸系ポリマー間に架橋剤による共有結合を導入して成るガスバリア材が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
一般に従来のガスバリア材においては、高温或いは長時間の加熱により高度に架橋させることが必要であるため、プラスチック基体への影響が大きいと共に、金属イオンとのイオン架橋に際して浸漬処理や噴霧処理が必要であることから、生産性に劣ると共に、多大なエネルギーや水を消費する等の問題があった。
また、比較的低温での乾燥焼付けを可能にしたガスバリア性積層フィルムとして、ポリカルボン酸系重合体を含む塗液(A)から熱処理せずに形成される層(a)及び水溶性多価金属塩と水系樹脂を含む塗液(B)から形成される層(b)を備えており、塗液(A)から形成される層(a)と塗液(B)から形成される層(b)とが、互いに隣接した少なくとも一対の積層単位を形成することを特徴とする、ガスバリア性積層フィルムが提案されている(特許文献3)。
上記特許文献3に記載されたガスバリア性積層フィルムは、比較的低温での乾燥焼付けが可能であり、基材に影響を与えることなく、ガスバリア性積層フィルムが得られるが、かかる積層フィルムでは、先に塗布されたポリカルボン酸系重合体が固定されてしまうため、多価金属塩の層(a)への移行が十分に進まず、多価金属によるイオン架橋が不十分であり、焼付け後の後処理として、従来の手法である浸漬処理や噴霧処理を加えてイオン架橋率を高めなければ、ガスバリア性の点で未だ十分満足するものではなかった。
また本発明者等により、多価金属によるイオン架橋を、従来の手法である浸漬処理や噴霧処理などを行わなくても、ポリカルボン系ポリマーに多価金属イオンを効率よく供給することが可能であり、効率よく高いイオン架橋率を得ることができ、優れたガスバリア性を有すると共に、耐水性及び可撓性にも優れたガスバリア性積層体の製造方法も提案されている(特許文献4)。
更に本発明者等は、ポリカルボン酸系ポリマーと多価金属イオンとの架橋構造を有するガスバリア層形成のためのアンダーコート層中に、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含有させて成るガスバリア性積層体も提案しており(特許文献5)、これによれば界面付近にイソシアネート化合物が存在し、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基やプラスチック基材に含まれる水酸基等の官能基と界面反応、或いは界面での極性基間同士による電気的な凝集力が発生することにより、優れた層間接着性が発現される。
特開2000−931号公報 特開2002−240207号公報 特開2007−313758号公報 国際公開第2010/001836 国際公開第2011/078366
しかしながら、上記イソシアネート化合物を含有するアンダーコート層はプラスチック基材との接着性には優れているとしても、アンダーコート層を形成する基材として、無機蒸着層のような無機物から成る表面を有する基材を使用した場合には、アンダーコート層と無機蒸着層の密着性が劣るという欠点があった。その結果、ガスバリア性の更なる向上を目的として無機蒸着層を有する基材を用いても、ガスバリア性積層体が本来有する優れたガスバリア性を充分に発揮することができないという問題があった。
またガスバリア性積層体を真空断熱材の外装材に用いる場合、外装材には外部からの水分透過を抑制するべくアルミニウム等の金属や金属酸化物から成る層を有する基材が用いられていることから、無機物から成る表面とアンダーコート層が強固に密着してかつ優れたガスバリア性を発現し得ることが、高い断熱性能を長期にわたって維持する上で重要である。
従って本発明の目的は、無機蒸着層のような無機物から成る表面を有する基材に対するアンダーコート層の密着性が顕著に向上され、優れたガスバリア性を長期にわたって発現可能であると共に、生産性にも優れたガスバリア性積層体を提供することである。
本発明によればまた、断熱性能及びガスバリア性に優れ、長期にわたって優れた断熱性能を発現可能であると共に、可撓性に優れた外装材を用いた真空断熱材を提供することである。
本発明によれば、無機表面を有する基材の該無機表面に、非水系樹脂から成るアンダーコート層を介して、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されたポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア層が形成されて成るガスバリア性積層体であって、前記アンダーコート層が、極性基を有する有機化合物から成る成分を含有することを特徴とするガスバリア性積層体が提供される。
本発明のガスバリア性積層体においては、
1.前記有機化合物が、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を複数有する多価化合物であること、
2.前記ヒドロキシル基が、フェノール性ヒドロキシル基であること、
3.前記フェノール性ヒドロキシル基を複数有する多価化合物が、ポリフェノール化合物類であること、
4.前記ポリフェノール化合物が、タンニン酸であること、
5.前記成分が、アンダーコート層中に0.1〜20重量%の量で含有されていること、
6.前記アンダーコート層中に、ウレタン結合が形成されていこと、
7.前記アンダーコート層が、非水系のポリエステルポリオール及び1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物から成ること、
8.前記アンダーコート層が、多価金属のアルカリ性化合物を含有すること、
9.前記多価金属のアルカリ性化合物が、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩又は水酸化物の少なくとも1種であること、
10.前記ガスバリア層が、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01〜3.0重量%の窒素元素を含むこと、
11.前記多価金属元素が、カルシウム又はマグネシウムの少なくとも1種であること、
12.前記ポリカルボン酸系ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその部分中和物であること、
13.前記無機表面を有する基材が、無機化合物系蒸着層又は金属系蒸着層が形成されたプラスチック基材であること、
が好適である。
本発明によればまた、芯材と、該芯材を被覆する外装材とから成り、内部を減圧密封した真空断熱材において、前記外装材が、上記ガスバリア性積層体を含むことを特徴とする真空断熱材が提供される。
本発明のガスバリア性積層体は、無機物から成る表面を有する基材の無機物表面に対してアンダーコート層が優れた密着性を有しており、ガスバリア性積層体が本来有する優れたガスバリア性を発現できると共に、無機物から成る層の存在と相俟ってより更にガスバリア性を向上することができる。すなわち、本発明においては、アンダーコート層に極性基を有する有機化合物から成る成分を含有することにより、該有機化合物の極性基が無機物表面と反応してアンカー効果を発現し、アンダーコート層の無機物から成る表面との密着性が顕著に向上させることが可能になる。
更に、無機物から成る層を有することにより、ガスバリア性積層体のガスバリア性能は向上する。
本発明のガスバリア性積層体を真空断熱材の外装材の一部として用いた場合に、長期にわたって優れた断熱性能及びガスバリア性を維持することができると共に、優れた可撓性及び耐水性を発現することができる。
本発明のガスバリア性積層体の上述した効果は後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、アンダーコート層中に、タンニン酸を例とするフェノール性極性基を含有する有機化合物を用いた場合は、比較例に比べ
フィルム基材密着力の点で優れる。これは、有機化合物の配合量や樹脂比率等に依存せず効果を発現することが可能である。一方で比較例1に示す通り、アンダーコート層中にこれら極性基を含まない場合は、概して密着力は不足しており、また蒸着フィルムを選定することで基材密着力が発現しても、比較例2に示す通り有機化合物が含まれていない場合、屈曲試験後のガスバリア性能は充分ではない。
本発明のガスバリア性積層体の積層構造の一例を示す断面図である。 本発明のガスバリア性積層体を用いた外装材の一例を示す断面図である。 本発明のガスバリア性積層体を用いた外装材の他の例を示す断面図である。
(ガスバリア性積層体)
本発明のガスバリア性積層体は、図1に示すように、基材2の該無機表面3に、極性基を有する有機化合物から成る成分を有する非水系樹脂から成るアンダーコート層4を介して、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されたポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア層5が形成されて成るガスバリア性積層体1であって、前記アンダーコート層4が、極性基を有する有機化合物から成る成分を含有することが重要な特徴である
《アンダーコート層》
本発明のガスバリア性積層体において、アンダーコート層は、極性基を有する有機化合物から成る成分を含有する以外は、本発明者等が提案した従来のアンダーコート層と基本的には同様である。すなわち、非水系の主材樹脂と、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個有するイソシアネート系硬化剤及び多価金属のアルカリ性化合物から成ることが好適であり、特に、非水系の主材樹脂が金属元素を樹脂骨格中に含む非水系のポリエステルポリオールであること、イソシアネート系硬化剤が直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせであることが好適である。
[主材樹脂]
本発明のガスバリア性積層体のアンダーコート層に用いる主材樹脂は、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系等の非水系樹脂から成り、特に、金属元素が樹脂骨格中に含まれる非水系樹脂であることが好ましい。すなわち、金属元素を樹脂骨格中に含むポリエステルポリオールは、それ自体アンダーコート剤としてアンダーコート層を基材に密着性よく積層することができると共に、金属元素を有することにより水含有溶剤に対して膨潤しやすいことから、ポリカルボン酸系ポリマーを有する塗料を塗布することにより膨潤して、アンダーコート層中に存在する多価金属イオンを効果的にバリア層中に移行させることが可能になる。非水系樹脂を構成するモノマーに金属塩基を導入させておくことによって、形成される樹脂骨格中に金属元素を含ませることができる。尚、「非水系樹脂」とは、水分を含む溶媒に分散させたエマルジョンやラテックス、或いは水溶性の樹脂を除く概念であり、これにより、水含有溶剤との接触時に生じる過度な膨潤によるアンダーコート層の機械的強度の低下が有効に防止されている。
樹脂のモノマーに導入させておくのに好適な金属塩基としては、多価金属の分散性を向上させるため極性を有する官能基を有していることが望ましく、スルホン酸金属塩基、リン酸金属塩基等を挙げることができる。また金属元素としては、リチウムLi,カリウムK,ナトリウムNa,マグネシウムMg,カルシウムCa,銅Cu,鉄Fe等を挙げることができるが、1価の金属元素であることが特に好適であり、本発明においては、特にスルホン酸ナトリウムが導入されていることが好適である。
本発明においては、基材との優れた密着性を得るため、また多価金属のアルカリ性化合物の分散性を高めるために、イソシアネート系硬化剤を用いることから、イソシアネート系硬化剤に対する主材樹脂として、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール、或いはこれらのウレタン変性物等のポリオール成分を用いることが好ましく、これによりアンダーコート層中にウレタン結合が形成され、基材との優れた密着性及び多価金属のアルカリ性化合物の分散性を高めることができる。尚、ポリオール成分中の水酸基分を反応させるのに必要なイソシアネート系硬化剤の重量を1当量としたとき、イソシアネート系硬化剤は少なくとも4当量以上となるように存在していることが好ましい。
ウレタン系ポリマー形成に使用されるポリオール成分としては、ポリエステルポリオール又はそのウレタン変性物が好ましい。これらのポリエステルポリオール成分としては、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記ポリエステルポリオールのガラス転移温度は、−50℃乃至100℃が好ましく、−20℃乃至80℃がより好ましい。また、これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000乃至10万が好ましく、3000乃至8万がより好ましい。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
本発明においては、上記ポリオール成分或いは多価カルボン酸成分に、金属塩基が導入された成分を共重合させることにより、樹脂骨格中に金属元素を有する非水系樹脂とすることができる。
このような金属塩基が導入された多価カルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の金属塩を挙げることができる。また金属塩基が導入されたポリオールとしては2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオール等の金属塩が挙げられる。特に好ましいものは5−ナトリウムスルホイソフタル酸である。
金属塩基が導入された成分は、0.01乃至10モル%の量で共重合されていることが望ましい。上記範囲よりも少ない場合には、多価金属イオンの移行を十分促進することができず、一方上記範囲よりも多い場合には、耐水性に劣るようになる。
尚、金属元素が非水系樹脂の樹脂骨格中に含まれるか否かは、例えば、原料樹脂の蛍光X線による分析により検出することができる。
(蛍光X線分析装置の測定条件)
使用機器:理学電機製 ZSX100e
測定条件: 測定対象 Na−Kα線
測定径 30mm
X線出力 50kV-70mA
測定時間 40s
[イソシアネート系硬化剤]
本発明に用いられるイソシアネート系硬化剤としては、前述した通り、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物を組み合わせで用いることが特に好ましい。
イソシアネート系硬化剤として、主材樹脂に対して相溶性の異なる直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物と骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物の組み合わせを用いることによって、イソシアネート化合物のアンダーコート層内におけるブリードアウトの挙動を制御することが可能になる。
すなわち、直鎖状の脂肪族イソシアネート化合物は主材樹脂に対して相溶性が高いことから、アンダーコート層内に均一に拡散する。これに対して骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物は主材樹脂に対する相溶性が劣るため、アンダーコート層のバリア層側及び基材側にブリードアウトし、特にバリア層側に濃化して、アンダーコート層には、多価金属のアルカリ性化合物を含まない領域(a)が形成され、該領域(a)の窒素の含有量が領域(a)以外のガスバリア層の窒素の含有量よりも多くなっている。
また直鎖状脂肪族イソシアネート化合物と前記脂環式イソシアネート化合物は重量比で、60:40乃至15:85、特に55:45乃至30:70の割合で配合されることが望ましい。上記範囲よりも直鎖状脂肪族イソシアネート化合物が少ない場合には、十分な接着性を得ることができず、また上記範囲よりも脂環式イソシアネート化合物が少ない場合には、領域(a)を形成することが困難になるおそれがある。
直鎖状の脂肪族イソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができ、中でもイソシアヌレート構造を有するものであることが好適であり、具体的には、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを構造単位とするイソシアヌレート体を好適に使用することができる。
また、骨格中に脂環式の環状構造を有する脂環式イソシアネート化合物としては、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができ、中でもイソホロンジイソシアネート及びその誘導体を好適に使用することができる。
上記直鎖状脂肪族ポリイソシアネート化合物及び脂環式イソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を用いることもできる。
本発明のガスバリア性積層体におけるアンダーコート層において、直鎖状脂肪族イソシアネート化合物は、溶剤揮散と共に拡散する際にアンダーコート層内に均一に拡散しやすいという点から、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以下、数平均分子量(Mn)が1200以下、特にガラス転移温度(Tg)が−40℃以下、数平均分子量(Mn)が1100以下であることが好ましい。また、脂環式イソシアネート化合物は、アンダーコート層のバリア層側、或いはプラスチック基材側に留まって、領域(a)を形成することが容易になるという点から、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、数平均分子量(Mn)が400以上、特にガラス転移温度(Tg)が60℃以上、数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましい。
[多価金属のアルカリ性化合物]
後述するアンダーコート層形成用組成物に含有させる多価金属のアルカリ性化合物の多価金属イオンとしては、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を架橋可能である限り特に制限されず、アルカリ土類金属(マグネシウムMg,カルシウムCa、ストロンチウムSr,バリウムBa等)、周期表8族金属(鉄Fe,ルテニウムRu等)、周期表11族金属(銅Cu等)、周期表12族金属(亜鉛Zn等)、周期表13族金属(アルミニウムAl等)等の金属イオンが例示できるが、特に2〜3価であることが好ましく、好適にはカルシウム、マグネシウムイオン、亜鉛等の2価の金属イオンを使用できる。また、上記金属イオンは1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
多価金属のアルカリ性化合物としては、上記金属の、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、有機酸塩、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸亜鉛、酢酸カルシウム等の酢酸塩、或いは乳酸亜鉛、乳酸カルシウム等の乳酸塩等)等を例示できるが、食品の包装材として使用する場合の安全性の観点や金属イオン架橋が形成される際の副生成物が層(B)中に留まらない点で、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩、水酸化物の少なくとも1種類を使用することが特に好ましい。
多価金属のアルカリ性化合物は、平均1次粒径が0.005乃至0.5μmの範囲にあることが好ましく、これにより、高速処理条件においても、形成されたアンダーコート層中に多価金属のアルカリ性化合物の粗粒子が残存することが有効に防止され、優れた透明性を付与し、均一な塗膜を得ることが可能となる。尚、多価金属のアルカリ性化合物粒子の平均1次粒径は、走査型電子顕微鏡の2次電子像での観察により求めることができる。
また多価金属のアルカリ性化合物は、ポリカルボン酸系ポリマーへ移行した多価金属のアルカリ性化合物が速やかに溶解するという点で、多価金属のアルカリ性化合物の粒子の表面には化学処理が施されていないことが好ましい。
[極性基を有する有機化合物]
本発明のガスバリア性積層体においては、前述したとおり、無機物から成る表面を有する基材の無機物表面とアンダーコート層の密着性を向上させるために、アンダーコート層中に極性基を有する有機化合物を含有させる。
このような極性基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基、グリシジル基、アミノ基、カルボン酸エステル基、メルカプト基等、無機物との結合性に優れるものを挙げることができるが、好適には、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を複数有する多価有機化合物であることが望ましい。
またヒドロキシル基は、フェノール性ヒドロキシル基であることが好適であり、このようなフェノール性ヒドロキシル基を複数有するポリフェノール化合物、例えば、カテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、フラバンジェノール、アントシアニジン、プロアントシアニジン、タンニン酸、没食子タンニン、クロロゲン酸、エラグ酸、フェノール酸、アスタキサンチン等を例示することができ、特にタンニン酸を好適に使用することができる。
また上記以外にも、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する有機化合物として、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等の多価ヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシ安息香酸、L-アスコルビン酸等の芳香族系有機化合物等を例示することができる。
本発明において、極性基を有する有機化合物は、アンダーコート層の樹脂成分中で0.1〜20重量%、特に1.0〜5.0重量%の量で含有されていることが好適である。上記範囲よりも極性基を有する有機化合物の量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して無機物表面との密着性が改善されないおそれがあり、一方上記範囲よりも極性基を有する有機化合物の量が多くても、更なる密着性の向上は望めず、経済性に劣る。
[アンダーコート層形成用組成物]
本発明においては、アンダーコート層を形成する組成物(以下、「アンダーコート層形成用組成物」という)において、多価金属のアルカリ性化合物の含有量は、多価金属イオン1個に対してカルボキシル基2個が反応するとして、金属原子換算で、ガスバリア層を形成する組成物(以下、「ガスバリア層形成用組成物」という)中に存在するポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基に対して、0.4当量以上となるように含有することが好ましい。上記範囲よりも多価金属のアルカリ性化合物の含有量が少ないと、ポリカルボン酸系ポリマーの架橋を充分に行うことができず、ガスバリア性を確保することが困難になる。
また後述するガスバリア層を構成するポリカルボン酸系ポリマーに多価金属イオンを供給した後のアンダーコート層においては、層中に残存する多価金属のアルカリ性化合物の粒子の量が少ないことが好ましい。これにより、副生物が発生するリスクを低減することができ、本発明のガスバリア性積層体を真空断熱材の外装材として使用した場合に、断熱性能を長期にわたって維持することが可能になる。具体的には、多価金属のアルカリ性化合物の仕込み量(当量)とイオン架橋に使用された量(当量)の差である残存量(当量)が、1.1以下、特に0.3以下であることが好ましい。
アンダーコート層形成用組成物中の樹脂分の含有量は、15乃至80重量%、特に20乃至60重量%となるように調製することが好ましい。
またアンダーコート層形成用組成物において樹脂分は非水系であることが望ましく、トルエン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶剤で調製することができるが、特に低温での層形成を可能にするために低沸点溶媒を用いることが好ましい。これらの溶剤は単独或いは混合液に溶解させてもよいし、或いは各成分の溶液を混合することによっても調製できる。
また上記成分の他に、公知である硬化促進触媒,充填剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使用時間延長剤等を使用することもできる。
《ガスバリア層》
本発明のガスバリア性積層体において、ガスバリア層は、ポリカルボン酸系ポリマーを主構成成分とし、このポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基を多価金属でイオン架橋してなるものであり、優れたガスバリア性と可撓性を有している。
また、本発明においては特に、ガスバリア層が、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01〜3.0重量%の窒素元素を含んでいることが特に好ましい。
1価の金属元素及び多価金属元素はそれぞれ、ポリカルボン酸系ポリマーを部分的に中和するために用いられる1価金属含有化合物、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間をイオン架橋するために用いられる多価金属のアルカリ性化合物に由来し、また窒素元素はイソシアネート化合物に由来するものであり、これらの元素の含有量が上記範囲にあることにより、優れたガスバリア性及び可撓性のみならず、耐水性、及び屈曲加工後の耐水性も得られる。
これらの金属元素の含有量は、ガスバリア層を灰化させた後、ICP質量分析装置を用いることにより測定することができ、またガスバリア層中の窒素元素は、燃焼法によって測定することができ、またガスバリア層の表層における炭素、酸素及び窒素の原子の含有量は、XPS(X‐ray Photo-electronic Spectroscopy:X線光電子分光法)による表面分析によって測定することができる。
[ポリカルボン酸系ポリマー]
ガスバリア層を構成するポリカルボン酸系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体を挙げることができ、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が好ましい。
上述した耐水性という作用効果を発現する上では、1価の金属元素による部分中和を下記の範囲で行うことが可能である。1価金属元素よって部分中和される量が、特にカルボキシル基に対するモル比で4.5%以下、より好ましくは4.0%以下の範囲で部分中和されているポリカルボン酸系ポリマーが、ガスバリア層の1価の金属元素の量を上記範囲に制御する上で望ましい。
1価の金属としては、特にナトリウム、カリウムが好適であり、1価金属化合物としてこれらの水酸化物を用いてポリカルボン酸系ポリマーを中和することが好適である。
ポリカルボン酸系ポリマーの「重量平均分子量」は、特に限定されないが、2000乃至5,000,000、特に10,000乃至1,000,000の範囲にあることが好ましい。
尚、上記「重量平均分子量」の測定は、分離カラムとして「TSK G4000PWXL」、「TSK G3000PWXL」(東ソー株式会社製)の2本を用いて、溶離液として50mmolリン酸水溶液を用い40℃及び流速1.0ml/分において、クロマトグラムと標準ポリカルボン酸系ポリマーの検量線から求めた。
[ガスバリア層形成用組成物]
ガスバリア層形成用組成物は、少なくとも水を含有する溶媒中に上述したポリカルボン酸系ポリマーを溶解することにより、ポリカルボン酸系ポリマーが解離している溶液であることが好ましい。
ポリカルボン酸系ポリマーを溶解する溶媒としては、水だけでもよいが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2−ブタノン、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤と水との混合溶媒であってもよく、特に水よりも低沸点の溶剤を水と組み合わせて用いることができる。
好適には、前述したアンダーコート層と良親和の溶剤を用いることがアンダーコート層との親和性を向上させ、多価金属のアルカリ性化合物をポリカルボン酸系ポリマー含有溶液に移行を促進させる上で望ましい。前述したアンダーコート層と良親和の溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2−ブタノン、アセトン等のケトン等を好適に用いることができる。
溶媒として水と他の溶剤との混合溶媒を用いる場合には、水100質量部に対して1900質量部以下、特に10乃至900質量部の量で他の溶剤を配合することが望ましい。
ガスバリア層形成用組成物には、ポリカルボン酸系ポリマーの未反応のカルボキシル基と反応し、共有結合による架橋構造を形成可能な架橋剤を配合してもよい。すなわちアンダーコート層中から移行した多価金属イオンがポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基とイオン架橋による架橋構造を形成するが、かかる架橋に使用されなかったカルボキシル基を架橋剤で架橋し、架橋部に共有結合による架橋構造を形成することにより、形成させるガスバリア層の耐熱水性を向上させることも可能である。
このような架橋剤として特に好適なものは、窒素との間に二重結合を形成する炭素にエーテル結合が形成され、該エーテル結合中の酸素を含んで成る環構造、すなわち−N=C−O−基、或いは=C−O−部分を環内に持つオキソイミノ基を有する環構造を2個含有する化合物、或いは分子内に脂環族基を有し且つ脂環族基の隣接炭素原子がオキシラン環を形成しているエポキシ化合物成分を含有する脂環式エポキシ化合物を挙げることができ、これらの架橋剤を用いることにより、架橋部にエステル結合又はアミドエステル結合を少なくとも2つ形成させることができる。これらの架橋剤は単独或いは組み合わせで使用することができる。
また架橋剤を配合する場合には、架橋剤との反応を促進するために酸性又は塩基性触媒を加えてもよい。
ガスバリア層形成用組成物中に含有されるポリカルボン酸系ポリマーは、2乃至60質量%、特に4乃至40質量%の量で含有されていることが好ましく、これにより優れたガスバリア性を得ることが可能となる。
またガスバリア層形成用組成物中に、架橋剤を配合する場合には、ポリカルボン酸系ポリマー100質量部に対して0.1乃至20質量部の量で配合されていることが好ましい。上記範囲よりも少ない場合には、耐熱水性を各段向上させるには至らず、一方上記範囲よりも多いと経済性に劣ると共に、多価金属イオンがカルボキシル基と充分な架橋構造を形成することができず、ガスバリア性を向上させることができない。
またガスバリア層形成用組成物には、上記成分以外にも、無機分散体を含有することもできる。このような無機分散体は、外部からの水分をブロックし、ガスバリア材(ガスバリア性積層体)を保護する機能を有し、ガスバリア性や耐水性を更に向上させることができる。
《無機表面を有する基材》
本発明のガスバリア性積層体においては、ガスバリア層或いはアンダーコート層を形成する基材として、少なくともその一方の表面が無機物から成るものを使用する。
このような基材としては、表面が無機物から成る限り特に制限はなく、従来ガスバリア性積層体においてアンダーコート層を形成していたプラスチック基材表面に無機蒸着層を設けて成るもの、或いは金属箔のように表面のみならず基材全体が無機物から成るものであってもよいし、プラスチック基材に金属箔等を積層して成る積層体等を例示することができる。
このように無機物から成る表面を有する基材は、それ自体ガスバリア性に優れ、ガスバリア層の存在と相俟ってガスバリア性積層体のガスバリア性を顕著に向上させることが可能になる。しかも高温条件下で分子振動によりバリア性が低下するおそれがあるガスバリア層が、アンダーコート層を介して無機物層と隣接することにより、アンダーコート層及びガスバリア層の分子振動が抑制されて、ガスバリア層へ酸素が溶解しにくくなり、高温条件下でもガスバリア性を維持することが可能になる。またガスバリア性積層体を真空断熱材の外装材に用いる場合には、ガスバリア性と共に輻射熱を遮断する能力(反射率)の点で必須の構成要素となるものである。
無機蒸着層を形成すべきプラスチック基材としては、熱成形可能な熱可塑性樹脂から成るフィルム又はシートを挙げることができ、特に蒸着層を形成したものを好適に用いることができる。
フィルム又はシートの製造方法としては、Tダイ法、インフレーション製膜法、キャスト製膜法等の従来公知の成形法を挙げることができる。
フィルム又はシートは、延伸温度で、逐次或は同時二軸延伸し、延伸後のフィルム又はシートを熱固定することにより製造された二軸延伸フィルム又はシートとして用いることもできる。
フィルム又はシートの厚みは、これに限定されないが、5〜3000μmの範囲にあることが好適である。
プラスチック基材を構成する樹脂の適当な例は、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系共重合体;ポリカーボネート等である。
これらの熱可塑性樹脂は単独で使用しても或いは2種以上のブレンド物の形で存在していてもよい、またプラスチック基材は、単層の構成でも、或いは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによる2層以上の積層構成であってもよい。
勿論、前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001部乃至5.0部の範囲内で添加することもできる。
また、プラスチック基材を補強するために、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
更に、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
無機物表面として、プラスチック基材上に物理的或いは化学的に気相蒸着法を用いた蒸着層を設ける場合、蒸着層としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、シリカとアルミナの混合体、ダイヤモンドライクカーボンのような無機化合物系の蒸着層、或いはアルミニウム等の金属系の蒸着層を例示することができる。このような蒸着層の厚みはこれに限定されないが、100〜20000Åの範囲にあることが好適である。
また無機物表面を有する基材として、アルミニウム箔や鋼箔等の金属フィルム又はシートを用いることもできる。このような金属フィルム又はシートの厚みは、5〜100μmの範囲にあることが好適である。
尚、本発明のガスバリア性積層体を後述する真空断熱材の外装材に用いる場合に、無機物表面を有する基材として、熱伝導率の高いアルミニウム等の金属フィルム又はシートを使用すると熱伝導によって断熱効果が損なわれることから、蒸着層が形成されたプラスチック基材を使用することが望ましく、特にアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することが望ましい。
蒸着層はプラスチック基材の少なくとも一方の面に形成されていればよい。
(ガスバリア性積層体の製造方法)
本発明のガスバリア性積層体は、上述した無機物表面を有する基材の無機物表面に、前述したアンダーコート層形成用組成物を塗布する。
アンダーコート層形成用組成物の塗工量は、アンダーコート層形成用組成物中の樹脂分及び多価金属のアルカリ性化合物の仕込み量によって決定され、一概に規定することができないが、形成される層中に樹脂分が0.02乃至5.0g/m、特に0.1乃至2.5g/mの範囲にあり、且つ次いで塗布するガスバリア層形成用組成物溶液中のポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基に対して、多価金属イオンが、前述したように、0.3当量以上になるように塗布することが好ましい。上記範囲よりも樹脂分が少ないと、アンダーコート層を無機物表面に固着させることが困難となり、一方上記範囲よりも樹脂分が多くても経済性に劣るだけで格別なメリットがない。
また無機物表面上に塗布されたアンダーコート層形成用組成物は、用いる主材樹脂、極性基を有する有機化合物の種類及び塗工量にもよるが、50乃至200℃の温度で0.5秒乃至5分間、特に、60乃至140℃の温度で1秒乃至2分間、乾燥させることによって、アンダーコート層を形成することが可能であり、これによりプラスチック基材に影響を与えることなく、経済的にアンダーコート層を形成できる。
次いで形成されたアンダーコート層の上に、ガスバリア層形成用組成物を塗布する。ガスバリア層形成用組成物中に含まれるポリカルボン酸系ポリマー量、すなわち遊離カルボキシル基量は、酸価で少なくとも150KOHmg/g以上、特に250乃至970KOHmg/gの範囲であることが好ましい。
ガスバリア層形成用組成物の塗工量は、ガスバリア層中にイオン架橋が形成される前の樹脂分のみの乾燥状態で、0.3乃至4.5g/m、特に0.5乃至3.0g/mの範囲となるように塗布することが好ましい。上記範囲よりも塗工量が少ないと、十分なガスバリア性が得られない。一方上記範囲よりも樹脂分が多くても経済性に劣るだけで格別なメリットがない。
次いで、塗布されたガスバリア層形成用組成物の加熱処理を行うが、この加熱処理の際にアンダーコート層中の多価金属イオンとイソシアネート化合物がガスバリア層形成用組成物中に移行して、ポリカルボン酸系ポリマーのカルボキシル基間に金属イオン架橋構造を形成し、イソシアネート化合物に由来する窒素元素がガスバリア層の表層及びアンダーコート層との界面近傍に存在することになる。特にガスバリア層形成用組成物中に移行したイソシアネート化合物の大部分は、ガスバリア層表層にブリードアウトし、イソシアネート化合物に由来する化学結合をガスバリア層の表面に形成する。
このガスバリア層形成用組成物の加熱条件は、40乃至110℃、特に50乃至100℃の温度で、1秒乃至1分の範囲にあることが好ましく、2秒乃至30秒の範囲にあることがより好ましい。
尚、ガスバリア層は充分に乾燥させ、ガスバリア層の含水率を低減させることが望ましい。これにより、ガスバリア性積層体を真空断熱材の外装材に使用した場合に、水蒸気の発生を抑制することが可能になり、断熱性能を長期にわたって維持することが可能になる。
上述したアンダーコート層形成用組成物及びガスバリア層形成用組成物の塗布、及び乾燥或いは加熱処理は、従来公知の方法により行うことができる。
塗布方法としては、これに限定されないが、例えばスプレー塗装、浸漬、或いはバーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等により塗布することが可能である。
また乾燥或いは加熱処理は、オーブン乾燥(加熱)、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。
(真空断熱材)
本発明のガスバリア性積層体は、前述したとおり、真空断熱材の外装材の一部として好適に使用することができ、図1に示した基本構造を有するガスバリア性積層体以外の他の層は従来公知の外装材と同様に構成することができるが、本発明においては特に以下に示す層構成を採用することが好適である。
すなわち、図2は、本発明の真空断熱材に用いる外装材として好適なガスバリア性積層体の一例の断面構造を示す図であり、内面側から順に、熱溶着層7、接着層6、ガスバリア性積層体1(ガスバリア層5/アンダーコート層4/無機蒸着層3/基材2)の積層構造を有している。
また図3に示す外装材は、内側から順に、熱溶着層7、接着層6、ガスバリア性積層体1(ガスバリア層5/アンダーコート層4/無機蒸着層3/基材2)、接着層6、無機蒸着層3、基材2、接着層6、保護層8の積層構造を有し、断熱性能の観点から2つの蒸着層が形成されていることにより、外装材のガスバリア性及び輻射熱を遮断する能力(反射率)を向上できると共に、可撓性に優れたガスバリア層の存在と相俟って特に優れたガスバリア性を発現することが可能になる。
好適な積層構成としては、外装材が蒸着層を2層有し、この2つの蒸着層の間にガスバリア層及びアンカーコート層が形成されている層構成を例示できる(図3)。
上記熱溶着層は、押出機で溶融混練された熱可塑性樹脂をTダイや環状ダイ等からガスバリア性積層体に押出すことにより、ガスバリア性積層体上に直接形成することもできるが、熱溶着層として熱可塑性樹脂を押出コートする際に接着層と熱溶着層を共押出ラミネートしてもよい。
また、熱溶着層と成る熱可塑性樹脂をガスバリア性積層体のガスバリア層へ押出コートすると共に、ガスバリア性積層体の他方の面に熱可塑性樹脂から成る他の層(保護層)を形成してもよく、例えば接着性樹脂を介して保護層を形成するプラスチック基材を積層するサンドイッチラミネート又は保護層と成る熱可塑性樹脂を押出コートすることもでき、これにより図2に示したガスバリア性積層体を、一度もドライラミネーション工程を行わず製造できる。
この際、必要に応じて押出ライン上でのガスバリア性積層体又は基材へのコロナ放電処理やプラズマ処理、熱可塑性樹脂溶融膜へのオゾン処理、基材へのアンカーコート塗布等を施しても良い。
また、異なる種類の熱可塑性樹脂を同時にラミネートする共押出ラミネートや、タンデム押出機により複数回の押出ラミネートを同一ライン上で行っても良い。
上記熱溶着層を構成する樹脂としては、従来公知のヒートシール性樹脂を挙げることができ、これに限定されないが、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂を好適に使用することができ、溶着性の点から未延伸のフィルムから成ることが望ましい。最も好適な熱溶着層としては、未延伸のポリプロピレンフィルムを挙げることができる。
熱溶着層として熱可塑性樹脂を押出コートする場合においては、押出コートによる接着性の観点から、ガスバリア層と水素結合を形成する、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はアイオノマー樹脂を用いることが特に好適である。
同様に、接着性の観点から酸化防止剤無添加のオレフィン樹脂や、シングルサイト系触媒により重合したオレフィン樹脂や、基材やガスバリア層表面のカルボキシル基や水酸基といった極性基と化学結合が形成できるエポキシ基等の反応基を含有するオレフィン系樹脂も好適に使用することができる。これらは、上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はアイオノマー樹脂と比較して、高湿度下でも接着強度の低下が起こりにくいため、特に耐水性を求められる用途に適している。
尚、ここでいう酸化防止剤無添加とは樹脂内に含まれる酸化防止剤が10ppm以下のものを示し、溶融押出時に樹脂の酸化が促されることで、樹脂内に極性基が増加し、基材やガスバリア材との凝集力を高めることができる。また後者の反応基を有するオレフィン系樹脂の場合、溶融押出時の熱を利用して化学反応を行うだけでなく、押出ラミネート後での経時保管やオーブンや恒温器内での熱処理(キュア)により、より反応を促して接着性を高めることが可能である。
また、シングルサイト系触媒により重合したオレフィン樹脂としては分子量分布が小さく低密度という特徴を有するメタロセン触媒などに代表されるシングルサイト系触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレンを挙げることができる。このようなオレフィン系樹脂は、押出後の冷却時に結晶化が起こりにくく、結晶化による歪みが小さいためアンカー効果の点で特に有利である。
これらのオレフィン系樹脂の中でも、密度(測定条件は23℃、JIS−K6922−1に準拠)0.950g/cm以下のオレフィン系樹脂が好ましく、アンカー効果の点から、特に密度0.920g/cm以下のオレフィン系樹脂が好ましい。また、押出加工適性の点からオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR:測定条件は190℃、2.16kg荷重、JIS−K6922−1に準拠)は0.1g/10分以上が好ましく、溶融状態で基材やガスバリア層へ浸み込みやすく、優れた接着性が得られやすいという点から、特にMFR7.0g/10分以上が好ましい。
更に、熱可塑性樹脂がガスバリア層と十分に接着しており、この熱可塑性樹脂が柔軟であるほど、外装材が屈曲や引張りなどの応力を受けた際に、この応力を緩和する効果が高くなるため、ガスバリア層のクラック発生を抑制でき、酸素・窒素バリア安定性の点で有効である。
また熱溶着層、ガスバリア性積層体、保護層の間に必要により形成される接着層としては、従来公知の接着性樹脂を用いることができ、これに限定されないが、押出コートを用いたサンドウィッチラミネートによる積層の場合には熱溶着層について上述した樹脂、例えば酸変性エチレン・アクリル酸共重合体、酸変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体、酸変性ポリエチレン等の酸変性オレフィン系樹脂を使用することができ、接着剤を用いたドライラミネートによる積層の場合は、ウレタン系接着剤を好適に使用することができる。さらに、熱溶着層と接着層を共押出コートする場合も同様に上述した樹脂を好適に使用できる。
外装材の最外層として設けられ、外装材の機械的強度、耐水性、耐候性を向上させる保護層を構成する樹脂としては、これに限定されないが、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、或いはエチレン・4フッ化エチレン共重合体樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂を使用することができ、特に外装材の機械的強度、耐突き刺し性等の点から、二軸延伸フィルムから成ることが望ましい。最も好適な保護層としては、二軸延伸ナイロンフィルムを挙げることができる。
本発明において真空断熱材に用いられる外装材における、熱溶着層及び保護層の厚みは、特に限定されず、従来真空断熱材の外装材に用いられていた範囲のものを使用することができるが、具体的には、熱溶着層が20〜100μm、保護層が5〜100μmの範囲にあることが好適である。
本発明の真空断熱材に用いられる外装材の製造方法としては、従来公知の積層方法により製造することができるが、本発明で用いるガスバリア性積層体は、ガスバリア層上に熱可塑性樹脂を直接押出コートして積層フィルムを製造することもできるので、押出コートによるサンドウィッチラミネートで、接着剤を用いたドライラミネートでなくても製造することができる。
[真空断熱材の製造方法]
本発明の真空断熱材の製造方法自体は従来公知の真空断熱材と同様であり、芯材を前述した外装材によって被覆し、この外装材の熱溶着層同士を重ね合わせた後、真空チャンバー内で減圧し、所定内圧に到達した後、熱溶着層を熱溶着して密封することにより製造する。
芯材としては、これに限定されないが、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の繊維、或いはシリカ、パーライト、カーボンブラック等の粉末を使用することができる。
(実施例1)
重量比50/50の2種のポリエステルポリオール、バイロン200(東洋紡株式会社製)及びバイロンGK570(東洋紡株式会社製)を、酢酸エチル/MEK混合溶媒(重量比で65/35)で溶解した液に対して、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、スミジュールN3300)をポリエステルポリオールに対して20重量%加え、脂環式ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン製、デスモジュールZ4470)を、溶媒を除いた重量がポリエステルポリオールに対して20重量%となるよう加えた後、フェノール性極性基を有する有機化合物としてタンニン酸を5重量%、また炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、CS3N−A、一次粒径:0.3μm)を樹脂分に対して200重量%になるよう配合した後、ミル分散してペーストを得た。このペーストを、全固形分が30重量%になるよう前記混合溶媒にて調製し、多価金属のアルカリ性化合物を含有する塗料組成物から成るアンダーコート用コーティング液とした。
前記アンダーコート用コーティング液をバーコーターにより、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業株式会社製、テトライトEXE)のアルミ蒸着層上に塗布した後、ボックス型の電気オーブンにより、設定温度80℃、処理時間2分の条件で熱処理し、塗工量1.4g/mのアンダーコート層を有するフィルムとした。
ポリカルボン酸系ポリマーとしてポリアクリル酸(東亞合成株式会社製、AC-10LP、Mw=2.5万)を用い、水/アセトン混合溶媒(重量比で80/20)に、固形分が10重量%になるように溶解した後、ポリアクリル酸に対して中和度2.5%となるように20%水酸化ナトリウム水溶液を加えて主溶液を得た。前記主溶液をバーコーターにより、アンダーコート層を有する上記フィルムのアンダーコート層上に、塗工量が1.2g/mになるよう塗布してガスバリア材前駆体層とした。ここでガスバリア材前駆体層の塗工量とは、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業株式会社製、テトライトPC)に直接主溶液を塗布して乾燥した、即ちイオン架橋を形成させずに主溶液中のポリアクリル酸だけを乾燥して求めた塗工量のことである。塗布後の上記フィルムをコンベア型の電気オーブンにより、設定温度80℃、パスタイム10秒の条件で熱処理することで、ガスバリア材前駆体層中にイオン架橋を形成させたガスバリア層を、アンダーコート層上に有するフィルム、即ちガスバリア材(ガスバリア性積層体)を得た。
得られたガスバリア性積層体を、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートから成るウレタン系接着剤を用いて、図3に示すラミネート積層体を得た。接着剤の種類としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系など各種の樹脂材料が用いられるが、ウレタン系接着剤が最も好ましい。また、各プラスチック基体としては、性能を満足するものであれば特に限定されるものではないが、塗工基材としてアルミ蒸着フィルム(尾池工業株式会社製:12μm、テトライトEXE、テトライトPC)を用いた。また、熱溶着層としては、通常入手できる無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製:50μm、RXC−22)、保護層として2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製:15μm、エンブレム−ON)を用いて、ラミネート積層体を形成した。
(実施例2)
実施例1において、樹脂分に対する炭酸カルシウム量が150重量%、タンニン酸配合量を2.5重量%とする以外は同様の手法で、ガスバリア性積層体を作成し、実施例1と同様にしてラミネート積層体を得た。
(実施例3)
実施例2において、樹脂分に対する炭酸カルシウム量が150重量%、タンニン酸配合量を5.0重量%とする以外は同様の手法で、ガスバリア性積層体を作成し、実施例1と同様にしてラミネート積層体を得た。
(実施例4)
実施例1において、タンニン酸配合量を30重量%とする以外は同様の手法で、ガスバリア性積層体を作成し、実施例1と同様にしてラミネート積層体を得た。
(実施例5)
実施例4において、フィルムをコンベア型の電気オーブンにより、設定温度110℃、パスタイム10秒の条件で熱処理すること以外は同様の手法で、ガスバリア性積層体を作成し、実施例1と同様にしてラミネート積層体を得た。
(実施例6)
実施例4において、フィルムをコンベア型の電気オーブンにより、設定温度140℃、パスタイム10秒の条件で熱処理すること以外は同様の手法で、ガスバリア性積層体を作成し、実施例1と同様にしてラミネート積層体を得た。
(比較例1)
実施例1において、タンニン酸を添加しないこと以外は同様の手法で、ガスバリア性積層体を作成し、実施例1と同様にしてラミネート積層体を得た。
(比較例2)
実施例1において、厚み12μmのアルミ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業株式会社製、テトライトEXE)に変更する以外は同様の手法で、ガスバリア性積層体を作成し、実施例1と同様にしてラミネート積層体を得た。
得られたラミネート積層体の評価方法として、下記の内容を実施した。
<密着性評価:Tピール剥離試験法>
実施例において得られたラミネート積層体を用いて、ガスバリア材塗工面と接着剤界面において界面剥離せしめ、次いで15mm巾にカットし、引張速度300mm/minで剥離することで、密着強度を測定し評価を行った。
ラミネート積層体としての充分な密着強度として、接着剤とガスバリア塗工面において1.0N/15mm以上が発現しているものを良好(○)とした。
<酸素透過量評価:等圧法>
ガスバリア性能の評価には、実施例において得られたラミネート積層体を用いて、高湿度環境を想定して、30℃で相対湿度80%におけるガスバリア性能で評価した。測定にはモコン社製 酸素透過量測定装置(OXTRAN)を用い、測定方法はJIS K-7126 等圧法に準拠して行った。
<可撓性の評価>
可撓性の評価には、実施例において得られたラミネート積層体を用い、ゲルボフレックステスター(ストローク80mm、を用いて、14cm×11cmのフィルムを100回連続屈曲試験後、ガスバリア性能(30℃−80%RH)を評価することで実施した。
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア性及び可撓性に優れており、各種包装材料に使用できることは勿論、アンダーコート層中に極性基を有する有機化合物から成る成分が含有されているため、無機物から成る表面とアンダーコート層の密着性が顕著に向上されており、ガスバリア性積層体が本来有する優れたガスバリア性を充分に発揮できることから、輻射熱を遮断すべくアルミニウム等の金属や金属酸化物から成る層を有する基材が用いられる真空断熱材の外装材に好適に用いることができる。
1 ガスバリア性積層体、2 プラスチック基材、3 無機蒸着層、4 アンダーコート層、5 ガスバリア層、6 接着層、7 熱溶着層、8 保護層。

Claims (15)

  1. 無機表面を有する基材の該無機表面に、非水系樹脂から成るアンダーコート層を介して、カルボキシル基間に多価金属によるイオン架橋が形成されたポリカルボン酸系ポリマーから成るガスバリア層が形成されて成るガスバリア性積層体であって、
    前記アンダーコート層が、極性基を有する有機化合物から成る成分を含有することを特徴とするガスバリア性積層体。
  2. 前記有機化合物が、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を複数有する多価化合物である請求項1記載のガスバリア性積層体。
  3. 前記ヒドロキシル基が、フェノール性ヒドロキシル基である請求項2記載のガスバリア性積層体。
  4. 前記フェノール性ヒドロキシル基を複数有する多価化合物が、ポリフェノール化合物である請求項3記載のガスバリア性積層体。
  5. 前記ポリフェノール化合物が、タンニン酸である請求項4記載のガスバリア性積層体。
  6. 前記成分が、アンダーコート層中に0.1〜20重量%の量で含有されている請求項1〜5の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  7. 前記アンダーコート層中に、ウレタン結合が形成されている請求項1〜6の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  8. 前記アンダーコート層が、非水系のポリエステルポリオール及び1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物から成る請求項1〜7の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  9. 前記アンダーコート層が、多価金属のアルカリ性化合物を含有する請求項1〜8の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  10. 前記多価金属のアルカリ性化合物が、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩又は水酸化物の少なくとも1種である請求項9記載のガスバリア性積層体。
  11. 前記ガスバリア層が、1.4重量%以下の1価の金属元素と、少なくとも5.0重量%以上の多価金属元素と、窒素、炭素の総重量に対して0.01〜3.0重量%の窒素元素を含む請求項1〜10の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  12. 前記多価金属元素が、カルシウム又はマグネシウムの少なくとも1種である請求項11記載のガスバリア性積層体。
  13. 前記ポリカルボン酸系ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその部分中和物である請求項1〜12の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  14. 前記無機表面を有する基材が、無機化合物系蒸着層又は金属系蒸着層が形成されたプラスチック基材である請求項1〜13の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  15. 芯材と、該芯材を被覆する外装材とから成り、内部を減圧密封した真空断熱材において、前記外装材が、請求項1〜14の何れかに記載のガスバリア性積層体を含むことを特徴とする真空断熱材。
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