以下、本開示の真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き機器について、詳細に説明する。
なお、本明細書において、「真空断熱材用外包材」を「外包材」と略する場合がある。
また、「ガスバリア性」と記載した場合、特に断りが無い場合は、酸素等の気体および/または水蒸気に対するバリア性を有する特徴を意味するものとする。
さらに、外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内側となる熱溶着可能なフィルム側を「外包材の内側」、真空断熱材の外側となる、熱溶着可能なフィルムから遠い方側を「外包材の外側」と記載する場合がある。
A.真空断熱材用外包材
まず、本開示の真空断熱材用外包材について説明する。
本開示の外包材は、熱溶着可能なフィルムと、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する、1層以上の金属酸化物リン酸層とを有し、上記1層以上の金属酸化物リン酸層の厚みの合計が0.6μm以上であることを特徴とするものである。
本開示の外包材について、図を参照して説明する。図1は、本開示の外包材の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本開示の外包材10は、金属酸化物リン酸層1と、熱溶着可能なフィルム2とを有する。上記金属酸化物リン酸層1は、特定の厚みを有する。
また、図2は、本開示の外包材を用いた真空断熱材の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、上記真空断熱材20は、芯材11と、上記芯材11を封入する外包材10とを有するものである。上記真空断熱材20は、2枚の上記外包材10を、それぞれの熱溶着可能なフィルムが向き合うように対向させ、その間に上記芯材11を配置し、その後、上記芯材11の外周の一方を開口部とし、残り三方の上記外包材10同士の端部12を熱溶着することで、2枚の上記外包材10により形成され、内部に上記芯材11が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材11が上記外包材10により封入されているものである。
高いガスバリア性を有する外包材を用いて真空断熱材を形成した場合でも、当該真空断熱材が高温高湿な環境に曝されると、上記外包材のガスバリア性が徐々に低下して真空断熱材内部の真空度が低下するため、当該真空断熱材の断熱性能が経時的に低下するという問題がある。上記外包材のガスバリア性の低下の一つの要因としては、上記外包材のガスバリア性に寄与する層の成分が温度や湿度により変化することが挙げられる。例えばアルミニウムなどの金属層は、高いガスバリア性を有するものであるが、温度や湿度により酸化等されることにより、そのガスバリア性は低下する。
一方、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層は、高温高湿な環境においても上述したような成分変化が極めて少ないため、このような層を用いることにより、経時的なガスバリア性の低下を抑制することができる。しかしながら、このような金属酸化物リン酸層を有する外包材を用いた真空断熱材であっても、高温高湿な環境において所望の断熱性能を長期間維持することは困難である。本開示者等が鋭意研究を重ねた結果、所望の断熱性能を得ることができない要因として、上記金属酸化物リン酸層が用いられた従来の真空断熱材の中には、上記金属酸化物リン酸層の厚みが不十分なため、所望の断熱性能が得られていない可能性があることを見出した。
そこで本開示においては、上記金属酸化物リン酸層を特定の厚みにおいて外包材に用いることにより、外包材の初期のガスバリア性を向上し、かつ、外包材を構成する材料が高温高湿な環境において成分変化することに起因するガスバリア性の低下の抑制を実現し、上記外包材を、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。
本開示の外包材は、金属酸化物リン酸層と、熱溶着可能なフィルムとを有するものである。以下、本開示の外包材の構成等について説明する。
1.金属酸化物リン酸層
本開示における金属酸化物リン酸層は、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有し、外包材における上記金属酸化物リン酸層の厚みの合計が0.6μm以上、好ましくは0.9μm以上のものである。外包材における金属酸化物リン酸層の厚みの合計が上記範囲内であることにより、所望のガスバリア性を得ることができ、かつ、上記金属酸化物リン酸層の物理的な強度を向上させ、高温高湿な環境におけるクラックの発生を抑制することができる。また、金属酸化物リン酸層の厚みの合計の上限は特に限定されるものではないが、例えば、3μm以下とすることができる。上記酸化物リン酸層の厚みの合計は、1層の金属酸化物リン酸層により上記合計の厚みを達成してもよく、外包材が2層以上の金属酸化物リン酸層を有することにより、上記合計の厚みを達成してもよい。
また、上記金属酸化物リン酸層は、少なくともM−O−P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する層であれば特に限定されるものではなく、例えば、金属酸化物およびリン化合物の反応生成物を含む層を用いることができる。以下、このような金属酸化物およびリン化合物の反応生成物について、説明する。
(1)反応生成物
(a)金属酸化物
金属酸化物を構成する金属原子(M)としては、金属酸化物を製造するための取り扱いの容易さや得られる複合構造体のガスバリア性がより優れることから、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルミニウムであることが特に好ましい。金属酸化物を構成する金属原子(M)は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、珪素は半金属に分類される場合があるが、本明細書では珪素を金属に含めるものとする。
金属酸化物は、得られる金属酸化物の形状や大きさの制御性や製造効率などを考慮すると、液相合成法により製造されたものが好ましい。液相合成法においては、加水分解可能な特性基が金属原子(M)に結合した化合物(L)を原料として用いてこれを加水分解縮合させることで、化合物(L)の加水分解縮合物として金属酸化物を合成することができる。また化合物(L)の加水分解縮合物を液相合成法で製造するにあたっては、原料として化合物(L)そのものを用いる方法以外にも、化合物(L)が部分的に加水分解してなる化合物(L)の部分加水分解物、化合物(L)が完全に加水分解してなる化合物(L)の完全加水分解物、化合物(L)が部分的に加水分解縮合してなる化合物(L)の部分加水分解縮合物、化合物(L)の完全加水分解物の一部が縮合したもの、あるいはこれらのうちの2種以上の混合物を原料として用いてこれを縮合または加水分解縮合させることによっても金属酸化物を製造することができる。このようにして得られる金属酸化物も、本開示においては「化合物(L)の加水分解縮合物」ということとする。上記の加水分解可能な特性基(官能基)の種類に特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、アルコキシ基、アシロキシ基、ジアシルメチル基、ニトロ基等が挙げられるが、反応の制御性に優れることから、ハロゲン原子またはアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
化合物(L)は、反応の制御が容易で、得られる金属酸化物リン酸層のガスバリア性が優れることから、以下の式(I)で示される少なくとも1種の化合物(L1)を含むことが好ましい。
M1X1 mR1 (n−m) (I)
[式(I)中、M1は、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれる。X1は、F、Cl、Br、I、R2O−、R3C(=O)O−、(R4C(=O))2CH−およびNO3からなる群より選ばれる。R1、R2、R3およびR4はそれぞれ、アルキル基、アラルキル基、アリール基およびアルケニル基からなる群より選ばれる。式(I)において、複数のX1が存在する場合には、それらのX1は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のR1が存在する場合には、それらのR1は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のR2が存在する場合には、それらのR2は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のR3が存在する場合には、それらのR3は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(I)において、複数のR4が存在する場合には、それらのR4は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。nはM1の原子価に等しい。mは1以上、n以下の整数を表す。]
R1、R2、R3およびR4が表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。R1、R2、R3およびR4が表すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基等が挙げられる。R1、R2、R3およびR4が表すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。R1、R2、R3およびR4が表すアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。R1は、例えば、炭素数が1以上、4以下のアルキル基であることが好ましい。X1は、F、Cl、Br、I、R2O−であることが好ましい。化合物(L1)の好ましい一例では、X1がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または炭素数が1以上、4以下のアルコキシ基(R2O−)であり、mはn(M1の原子価)と等しい。金属酸化物を製造するための取り扱いの容易さや得られる複合構造体のガスバリア性がより優れることから、M1はAlであることが好ましい。
化合物(L1)としては、アルミニウムトリイソプロポキシドおよびアルミニウムトリs−ブトキシドから選ばれる少なくとも1つの化合物が好ましい。化合物(L1)は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。化合物(L1)以外の化合物が化合物(L)に占める割合は、例えば、5モル%以下であってもよく、0モル%であってもよい。一例では、化合物(L)は、化合物(L1)のみからなる。また、化合物(L1)以外の化合物(L)としては、例えばマグネシウム、カルシウム、亜鉛、珪素等の金属原子に、上述の加水分解可能な特性基が結合した化合物などが挙げられる。
化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)が有する加水分解可能な特性基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属原子(M)が酸素原子(O)を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物が形成される。なお、このようにして形成された金属酸化物の表面には、通常、水酸基が存在する。
金属酸化物リン酸層は、金属酸化物の粒子同士が、後述するリン化合物に由来するリン原子を介して結合された特定の構造を有する。このような反応生成物や構造は金属酸化物とリン化合物とを混合し反応させることにより形成することができる。リン化合物との混合に供される(混合される直前の)金属酸化物は、金属酸化物そのものであってもよいし、金属酸化物を含む組成物の形態であってもよい。好ましい一例では、金属酸化物を溶媒に溶解または分散することによって得られた液体(溶液または分散液)の形態で、金属酸化物がリン化合物と混合される。
(b)リン化合物
リン化合物は、金属酸化物と反応可能な部位を含有し、典型的には、そのような部位を複数含有する。好ましい一例では、リン化合物は、そのような部位(原子団または官能基)を2個以上、20個以下含有する。そのような部位の例には、金属酸化物の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)と反応可能な部位が含まれ、例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が含まれる。それらのハロゲン原子や酸素原子は、金属酸化物の表面に存在する水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こすことができる。金属酸化物の表面に存在する官能基(たとえば水酸基)は、通常、金属酸化物を構成する金属原子(M)に結合している。
リン化合物としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体が挙げられる。ポリリン酸の具体例としては、ピロリン酸、三リン酸、4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸などが挙げられる。上記の誘導体の例としては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸の、塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物(塩化物等)、脱水物(五酸化ニリン等)などが挙げられる。また、ホスホン酸の誘導体の例には、ホスホン酸(H−P(=O)(OH)2)のリン原子に直接結合した水素原子が種々の官能基を有していてもよいアルキル基に置換されている化合物(例えば、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)等)や、その塩、(部分)エステル化合物、ハロゲン化物および脱水物も含まれる。さらに、リン酸化でんぷんなど、リン原子を有する有機高分子も、上記リン化合物として使用することができる。これらのリン化合物は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのリン化合物の中でも、コーティング液を用いて金属酸化物リン酸層を形成する場合におけるコーティング液の安定性が優れること、得られる金属酸化物リン酸層のガスバリア性がより優れることから、リン酸を単独で使用するか、または、リン酸とそれ以外のリン化合物とを併用することが好ましい。
本開示においては、リン化合物を溶媒に溶解することによって得られる溶液の形態で、リン化合物が上述した金属酸化物と混合されることが好ましい。その際の溶媒は任意のものが使用できるが、水または水を含む混合溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。また、金属酸化物との混合に供されるリン化合物またはリン化合物を含む組成物では、金属原子の含有率が低減されていることが、ガスバリア性により優れる金属酸化物リン酸層が得られることから好ましい。金属酸化物との混合に供されるリン化合物またはリン化合物を含む組成物に含まれる金属原子の含有率は、当該リン化合物またはリン化合物を含む組成物に含まれる全てのリン原子のモル数を基準(100モル%)として、5モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましく、0モル%であってもよい。
(c)反応生成物
金属酸化物リン酸層において、金属酸化物を構成する金属原子のモル数(NM)と、リン化合物に由来するリン原子のモル数(NP)との比率については、0.8≦モル数(NM)/モル数(NP)≦4.5の関係を満たすことが好ましく、1.1≦モル数(NM)/モル数(NP)≦3.0の関係を満たすことがさらに好ましい。モル数(NM)/モル数(NP)の値が4.5を超えると、金属酸化物がリン化合物に対して過剰となり、金属酸化物の粒子同士の結合が不充分となり、また、金属酸化物の表面に存在する水酸基の量が多くなるため、ガスバリア性が低下する傾向がある。一方、モル数(NM)/モル数(NP)の値が0.8未満であると、リン化合物が金属酸化物に対して過剰となり、金属酸化物との結合に関与しない余剰なリン化合物が多くなり、また、リン化合物由来の水酸基の量が多くなりやすく、やはりガスバリア性が低下する傾向がある。
また、金属酸化物リン酸層は、特定の重合体(C)をさらに含んでもよい。上記重合体(C)は、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(f)を有する重合体(C)である。なお、本開示において、リン化合物としての要件を満たす重合体であって、官能基(f)を含む重合体は、上記重合体(C)には含めずにリン化合物として扱う。
重合体(C)としては、官能基(f)を有する構成単位を含む重合体を用いることができる。このような構成単位の具体例としては、ビニルアルコール単位、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、マレイン酸単位、イタコン酸単位、無水マレイン酸単位、無水フタル酸単位などの、官能基(f)を1個以上有する構成単位が挙げられる。重合体(C)は、官能基(f)を有する構成単位を1種類のみ含んでいてもよいし、官能基(f)を有する構成単位を2種類以上含んでいてもよい。より優れたガスバリア性を有する金属酸化物リン酸層を得るために、重合体(C)の全構成単位に占める、官能基(f)を有する構成単位の割合は、40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、100モル%であってもよい。
より優れたガスバリア性を有する複合構造体を得るために、重合体(C)は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸、およびポリメタクリル酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。得られる金属酸化物リン酸層のガスバリア性や力学的物性(落下衝撃強さ等)の観点から、重合体(C)の数平均分子量は、8,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。重合体(C)の数平均分子量の上限は特に限定されず、例えば、1,500,000以下である。また、金属酸化物リン酸層における重合体(C)の含有率は、金属酸化物リン酸層の質量を基準(100質量%)として、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であってもよい。重合体(C)は、金属酸化物リン酸層中の他の成分と反応していてもよいし、反応していなくてもよい。なお、本開示では、重合体(C)が他の成分と反応している場合も、重合体(C)と表現する。例えば、重合体(C)が、金属酸化物、および/または、リン化合物に由来するリン原子と結合している場合も、重合体(C)と表現する。この場合、上記の重合体(C)の含有率は、金属酸化物および/またはリン原子と結合する前の重合体(C)の質量を金属酸化物リン酸層の質量で除して算出する。
金属酸化物リン酸層は、少なくとも金属酸化物とリン化合物とが反応してなる反応生成物(ただし、重合体(C)部分を有するものを含む)のみから構成されていてもよいし、当該反応生成物と、反応していない重合体(C)のみから構成されていてもよいが、その他の成分をさらに含んでいてもよい。上記の他の成分としては、例えば、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩等の無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸金属塩;アセチルアセトナート金属錯体(アルミニウムアセチルアセトナート等)、シクロペンタジエニル金属錯体(チタノセン等)、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物;架橋剤;重合体(C)以外の高分子化合物;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;難燃剤などが挙げられる。金属酸化物リン酸層における上記の他の成分の含有率は、5質量%以下であることが好ましく、0質量%(他の成分を含まない)であってもよい。
(2)金属酸化物リン酸層付きフィルム
上記金属酸化物リン酸層は、樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置された、金属酸化物リン酸層付きフィルムの形態において用いられてもよい。図3に例示されているように、外包材10は、熱溶着可能なフィルム2と、樹脂基材3の一方の面側に配置された金属酸化物リン酸層1を有する金属酸化物リン酸層付きフィルム4とを有していてもよい。なお、図3は本開示の外包材の他の例を示す概略断面図である。
上述したように上記金属酸化物リン酸層は、1層の金属酸化物リン酸層により上記合計の厚みを達成してもよく、外包材が2層以上の金属酸化物リン酸層を有することにより、上記合計の厚みを達成してもよいが、金属酸化物リン酸層が金属酸化物リン酸層付きフィルムの形態において用いられる場合は、外包材が2層以上の金属酸化物リン酸層を有することにより上記合計の厚みを達成する、すなわち、図4に例示するように、外包材10が複数の金属酸化物リン酸層付きフィルム4および4´を有することが好ましい。なお、図4は本開示の外包材の他の例を示す概略断面図であり、熱溶着可能なフィルム2と、金属酸化物リン酸層付きフィルム4´と、金属酸化物リン酸層付きフィルム4とをこの順で有する外包材10を例示するものである。
上記金属酸化物リン酸層付きフィルムは、金属酸化物リン酸層が樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたものであるが、上記金属酸化物リン酸層が配置される樹脂基材も、ある程度のガスバリア性を有していることが一般的である。そのため、例えば、厚み0.6μmの金属酸化物リン酸層を有する1つの樹脂基材のガスバリア性と、それぞれが厚み0.3μmの金属酸化物リン酸層を有する2つの樹脂基材の積層体のガスバリア性とを比べると、金属酸化物リン酸層の厚みの合計は同じであっても、2つの樹脂基材を有する積層体の方が高いガスバリア性を発揮することができるからである。
上記金属酸化物リン酸層付きフィルムにおいて、上記金属酸化物リン酸層が配置される樹脂基材は、上記金属酸化物リン酸層を支持可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、樹脂フィルムが好適に用いられる。上記樹脂基材が樹脂フィルムである場合、上記樹脂フィルムは未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されたものであってもよい。上記樹脂基材は透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。
樹脂基材に用いられる樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物、各種のナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。本開示においては、上記の樹脂の中でも、PET、ポリプロピレン等が好適に用いられ、強靭性、耐油性、耐薬品性、入手容易性等の各観点から、PETがより好適に用いられる。
なお、ポリビニルアルコール系樹脂等の親水基含有樹脂は、酸素に対するバリア性に優れた樹脂であるが、親水基含有樹脂の酸素に対するバリア性は、水蒸気に曝されることにより劣化されやすいという性質がある。上記樹脂基材を有する金属酸化物リン酸層付きフィルムは、外包材において外側、すなわち、水蒸気に曝されやすい位置に配置されるものであるため、上記樹脂基材には親水基含有樹脂が用いられないことが好ましい。また、高温高湿な環境においても外包材全体の寸法変化率を低く抑えるという観点から、樹脂基材にはナイロン等のポリアミド樹脂が用いられないことが好ましい。
樹脂基材は上記金属酸化物リン酸層と近接しているため、上記樹脂基材の寸法が伸縮した場合、上記金属酸化物リン酸層にも圧縮・引張応力がかかり、クラックが生じ易くなる。そのため、本開示において上記樹脂基材は、高温高湿な環境における寸法変化率が小さいものであることが好ましく、温度25℃、湿度0%RHの雰囲気下での上記樹脂基材の寸法を基準とした場合に、上記樹脂基材を温度70℃、湿度90%RHの雰囲気下で2時間保持した後の、上記樹脂基材の寸法変化率が0.6%以下、中でも0.5%以下、特には0.4%以下であることが好ましい。寸法変化率が小さい樹脂基材とするため、上記樹脂基材には上記樹脂の中でも、吸水性が低く、膨潤し難い樹脂が用いられることが好ましい。なお上記寸法変化率の測定は、後述する「5.真空断熱材用外包材」の項における寸法変化率の測定方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
上記樹脂基材には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂基材は、表面処理が施されていてもよい。金属酸化物リン酸層との密着性を向上させることができるからである。上記表面処理としては、例えば、特開2014−180837号公報に開示される酸化処理、凹凸化処理(粗面化処理)、易接着コート処理等を挙げることができる。
樹脂基材の厚みは、特に限定されないが、例えば6μm以上、200μm以下の範囲内、より好ましくは9μm以上、100μm以下の範囲内である。
上記金属酸化物リン酸層付きフィルムにおいて、上記金属酸化物リン酸層と上記樹脂基材との位置関係は特に限定されるものではなく、いずれが熱溶着可能なフィルム側に配置されてもよい。本開示においては、金属酸化物リン酸層を水蒸気への暴露や、物理的な応力から保護するために、金属酸化物リン酸層が上記樹脂基材よりも熱溶着可能なフィルム側に配置されることが好ましい。また、熱溶着可能なフィルムから最も離れた位置の金属酸化物リン酸層付きフィルムが、金属酸化物リン酸層が外包材の外側となり、樹脂基材が外包材の内側となるように配置される場合は、当該金属酸化物リン酸層の外側に、樹脂製のフィルムなどの保護フィルムが配置されていることが好ましい。上記保護フィルムについては、後述する「4.保護フィルム」の項において説明されているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(3)その他
上述したような金属酸化物リン酸層におけるM−O−P結合の有無は、赤外線吸収スペクトルにおける、1080cm−1以上、1130cm−1以下の範囲内の赤外線吸収ピークの有無により判別することができる。上記金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルの測定方法は特に限定されるものではなく、例えば、ATR法(全反射測定法)による測定、測定対象の組成物をかきとり、その赤外線吸収スペクトルをKBr法で測定すること、測定対象から採取したサンプルを顕微赤外分光法により測定することなどにより、赤外線吸収スペクトルを得ることができる。なお、基材などの上に配置された金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルを測定する場合、上記基材に由来する吸収が観測され、金属酸化物リン酸層の正確な吸収スペクトルが得られないことがある。その場合は、別途測定した上記基材の赤外線吸収スペクトルを差し引くことで、金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルを得ることができる。
800cm−1以上、1400cm−1以下の範囲内における金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルにおいては、金属酸化物を構成する結合、リン化合物を構成する結合、並びに、金属酸化物とリン化合物とがそれ自身でおよび/または互いに反応して形成された結合に由来する全ての赤外線吸収ピークの中で、上記金属酸化物を構成する金属原子(M)とリン化合物に由来するリン原子(P)とが、酸素原子(O)を介して結合したM−O−P結合に由来する赤外線吸収ピークが最大となる、すなわち、上記最大となる赤外線吸収ピークの波数(n1)が1080cm−1以上、1130cm−1以下の範囲内にあることが好ましい。ガスバリア性に優れた金属酸化物リン酸層とすることができるからである。
また、金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルにおいて、上記最大吸収波数(n1)に極大を有する吸収ピークの半値幅は、得られる層金属酸化物リン酸層のガスバリア性の観点から200cm−1以下であることが好ましく、100cm−1以下であることがより好ましく、50cm−1以下であることが特に好ましい。
図5に、本態様において用いることができる金属酸化物リン酸層の赤外線吸収スペクトルの一例を示す。上記赤外線吸収スペクトルは、測定装置としてフーリエ変換型赤外分光光度計(Varian社製、FTS7000)を用い、全反射測定法(ATR法)により、800cm−1以上、1400cm−1以下の範囲内を測定したものである。
上記金属酸化物リン酸層の形成方法等、金属酸化物リン酸層のその他の点については、特開2011−226644号公報における記載と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
2.熱溶着可能なフィルム
本開示における熱溶着可能なフィルムは、熱溶着が可能な層であり、上記外包材を用いて真空断熱材を形成する際に、芯材と接する部位である。また、対向する外包材同士の端部を熱溶着する熱溶着面を形成する部位である。
上記熱溶着可能なフィルムの材料としては、加熱によって溶融し、融着することが可能であることから熱可塑性樹脂が好ましく、例えば直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンや未延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
本開示においては、上記樹脂の中でも、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンや未延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が熱溶着可能なフィルムの材料として用いられることが好ましい。上記材料が上述の樹脂であることにより、上記真空断熱材を形成した際に、上記外包材同士を貼り合わせた端部において、上述した金属酸化物リン酸層などの熱溶着可能なフィルムの外側に配置された部材へのクラックの発生を抑制することができるからである。
熱溶着可能なフィルムなど、外包材において上記金属酸化物リン酸層と共に用いられる層が伸縮した場合、近接する上記金属酸化物リン酸層にも圧縮・引張応力がかかり、クラックが生じ易くなる。そのため、本開示において上記熱溶着可能なフィルムは、高温高湿な環境における寸法変化率が小さいものであることが好ましく、温度25℃、湿度0%RHの雰囲気下での上記熱溶着可能なフィルムの寸法を基準とした場合に、上記熱溶着可能なフィルムを温度70℃、湿度90%RHの雰囲気下で2時間保持した後の、上記熱溶着可能なフィルムの寸法変化率が2%以下、中でも1.5%以下、特には1.0%以下であることが好ましい。寸法変化率が小さい熱溶着可能なフィルムとするため、上記熱溶着可能なフィルムには上記樹脂の中でも、吸水性が低く、膨潤し難い樹脂が用いられることが好ましい。なお上記寸法変化率の測定は、後述する「5.真空断熱材用外包材」の項における寸法変化率の測定方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
上記熱溶着可能なフィルムの融点としては、例えば80℃以上、300℃以下の範囲内であることが好ましく、中でも100℃以上、250℃以下の範囲内であることが好ましい。熱溶着可能なフィルムの融点が上記範囲に満たないと、本開示の外包材を用いて形成された真空断熱材の使用環境下において、外包材の封止面が剥離する可能性がある。また、熱溶着可能なフィルムの融点が上記範囲を超えると、外包材を高温で熱溶着する必要があるため、外包材として共に用いられる金属酸化物リン酸層等が熱により劣化される可能性がある。
また、上記熱溶着可能なフィルムは、上述した樹脂の他に、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、有機充填剤等の他の材料を含んでいてもよい。
上記熱溶着可能なフィルムの厚みは、例えば15μm以上、100μm以下の範囲内が好ましく、中でも20μm以上、90μm以下の範囲内が好ましく、特に25μm以上、80μm以下の範囲内が好ましい。熱溶着可能なフィルムの厚みが上記範囲よりも大きいと、外包材のガスバリア性が低下する場合等があり、厚みが上記範囲よりも小さいと、所望の接着力が得られない場合がある。
3.無機層付きフィルム
本開示において外包材は、上述した金属酸化物リン酸層および熱溶着可能なフィルムの他に、樹脂基板と、上記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層とを有する無機層付きフィルムを有することが好ましい。上記無機層は高いガスバリア性を有するため、外包材のガスバリア性を向上させることができるからである。中でも、上記無機層付きフィルムが、上記1層以上の金属酸化物リン酸層と、熱溶着可能なフィルムとの間に配置されていることが好ましい。上述したように金属酸化物リン酸層は劣化が少なく、高温高湿な環境においても初期と同様のガスバリア性を発揮することができるため、無機層付きフィルムを上記金属酸化物リン酸層よりも内側に配置することにより、上記無機層付きフィルムの劣化を抑制し、長期間高いガスバリア性を発揮させることができるからである。
例えば、図6に例示するように、樹脂基板5と、上記樹脂基板5の一方の面側に配置された無機層6とを有する無機層付きフィルム7を、金属酸化物リン酸層付きフィルム4´と、熱溶着可能なフィルム2との間に配置することができる。なお、図6は本開示の真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図であり、図6で説明しない符号については、図1、3、4で説明したものと同様とする。
以下、本開示において用いることができる無機層付きフィルムの各構成について説明する。
(1)無機層
無機層は、樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置され、無機層付きフィルムのガスバリア性に主に寄与するものである。上記無機層は、所望のガスバリア性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。このようなガスバリア性を有する層としては、例えば、金属層、無機化合物を主成分とする層などを用いることができる。上記金属層としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金から構成される金属蒸着膜等を挙げることができる。
また、上記無機化合物を主成分とする層の無機化合物としては、所望のガスバリア性を発揮できる材料であればよく、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物および酸化珪素亜鉛等から選ばれる1または2以上の無機化合物等が挙げられる。具体的には、珪素(シリカ)、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウ、ムセリウム、および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができる。より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を挙げることができる。上記無機化合物は、単独で用いてもよいし、上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
本開示においては、中でも上記無機層が金属層であることが好ましく、アルミニウム層であることがより好ましい。上記金属層は、無機酸化物層などと比べて安価であり、耐屈曲性に優れているからである。
無機層の厚みは、所望のガスバリア性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、無機層の種類にもよるが、例えば、5nm以上、200nm以下の範囲内であることが好ましく、中でも10nm以上、150nm以下の範囲内であることが好ましい。無機層の厚みが上記範囲に満たないと、製膜が不十分となり所望のガスバリア性を示すことができない場合があり、上記範囲を超えると、クラックが発生しやすくなり可撓性が低下するおそれや、無機層が金属や合金を含む場合、本開示の外包材を用いて形成された真空断熱材において、ヒートブリッジが生じるおそれがあるからである。
無機層は、単層であってもよく、合計の厚みが上記範囲内となるように2層以上を積層したものであってもよい。2層以上の無機層を用いる場合は、同一組成の無機層を組み合わせてもよく、異なる組成の無機層を組み合わせてもよい。また、上記無機層は、ガスバリア性および他の層との密着性の向上を図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
樹脂基板の一方の面側に無機層を形成する方法としては、無機層の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。例えば、物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法等の乾式製膜法を用いて樹脂基板に無機層を製膜する方法、具体的には、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法等を用いることができる。また、既製のガスバリア性の薄膜を用い、樹脂基板と予め加熱した薄膜とを熱圧着させる方法、樹脂基板または薄膜に接着剤層を介して貼合する方法等が挙げられる。PVD法およびCVD法による具体的な無機層の製膜方法については、例えば、特開2011−5835号公報に開示される方法を用いることができる。
上記無機層単独(1層)のガスバリア性としては、酸素透過度が0.5cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、中でも0.1cc/m2/day/atm以下であることが好ましい。また、水蒸気透過度が0.5g/m2/day以下であることが好ましく、中でも0.1g/m2/day以下であることが好ましい。上記無機層の酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、外部より浸透した水蒸気やガス等を真空断熱材の内部の芯材まで浸透しにくくすることができる。
なお、上記酸素透過度は、JIS−K−7126Bに基づき、温度23℃、湿度60%RHの条件下において酸素透過度測定装置を用いて測定した値とすることができる。上記酸素透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、オクストラン(OXTRAN)を挙げることができる。また、上記水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度測定装置を用いてJIS−K−7129に従い測定することができる。上記水蒸気透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、パ−マトラン(PERMATRAN)を用いることができる。
(2)樹脂基板
樹脂基板に用いることができる樹脂の種類、添加物や、樹脂基板に対する表面処理、樹脂基板の厚みや寸法変化率等については、「1.金属酸化物リン酸層、(2)金属酸化物リン酸層付きフィルム」の項における樹脂基材に関する説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、高温高湿な環境においても外包材全体の寸法変化率を低く抑えるという観点から、樹脂基板にはポリアミド樹脂が用いられないことが好ましい。
上記樹脂基材に用いることができる樹脂の種類として挙げられているものの中でも、上記樹脂基板には、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸系樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などの天然高分子等の親水基含有樹脂が用いられることが好ましく、中でもPVAやEVOH等のポリビニルアルコール系樹脂、特にはEVOHが用いられることが好ましい。親水基含有樹脂は高温においても、酸素に対する高いバリア性を発揮するものであるため、無機層付きフィルムの酸素に対するバリア性を向上させることができるからである。上記無機層付きフィルムが上述した金属酸化物リン酸層付きフィルムの内側に配置されている場合、高温高湿な環境においても、水蒸気等による影響を大幅に抑止することができ、初期値と同様の、高いガスバリア性を発揮させることができる。そのため、水蒸気により劣化されやすい親水基含有樹脂であっても、上記金属酸化物リン酸層の内側に配置される無機層付きフィルムの樹脂基板として用いれば、高温高湿な環境においても、酸素に対するバリア性を高く維持することができるからである。なお、本明細書において「親水基」とは、静電的相互作用や水素結合などによって水分子と弱い結合をつくり、水に対して親和性示す原子団をいうものであり、例えばヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、アミノ基(−NH2)、カルボニル基(>CO)、スルホ基(−SO3H)などの極性基や解離基を含む原子団がその性質を示す。
樹脂基板に親水基含有樹脂が用いられる場合、上記樹脂基板は上記無機層の熱溶着可能なフィルム側に配置されることが好ましい。上記無機層により、親水基含有樹脂を含む樹脂基板を水蒸気から保護することができ、親水基含有樹脂の酸素に対するバリア性を高く維持することができるからである。
(3)無機層付きフィルム
無機層付きフィルムは、無機層の樹脂基板とは反対の面側にオーバーコート層を有していてもよい。無機層付きフィルムのガスバリア性を向上させることができるからである。このようなオーバーコート層は、特に限定されるものではなく、一般にオーバーコート剤として用いられているものを用いることができる。例えば、上記オーバーコート層の主成分として、有機部分及び無機部分を含む混合化合物を用いることができる。
上記オーバーコート層の厚みは、用いられるオーバーコート剤の種類に応じて適宜設定することができ、所望のガスバリア性能が得られるものであれば特に限定されるものではない。例えば、50nm以上、500nm以下の範囲内、中でも100nm以上、400nm以下の範囲内の厚みにおいて用いることができる。
上記混合化合物を含む層としては、種々のものがあるが、例えば、凸版印刷株式会社製のベーセーラ(登録商標)などのアクリル酸亜鉛系の混合膜や、金属元素、酸素元素および親水基含有樹脂を含有する層を用いることができる。上記金属元素、酸素元素および親水基含有樹脂を含有する層としては、一般式R1 nM2(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、M2は、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、M2の原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、親水基含有樹脂とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるゾルゲル化合物などを用いることができる。上記親水基含有樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂、天然高分子系のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などが挙げられる。なお、上記アクリル酸亜鉛系の混合膜については、特許第4373797号に開示されているものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本開示においては、上記混合化合物の中でも、一般式R1 nM2(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、M2は、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、M2の原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、例えば、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる化合物(以下、「ゾルゲル化合物」とする場合がある。)をオーバーコート層に用いることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、上記樹脂基材等の熱による劣化を抑制することができるからである。上記ゾルゲル化合物については、特許第5568897号公報に開示されているものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本開示の外包材は、上述したような無機層付きフィルムを複数有していてもよい。外包材のガスバリア性を向上することができるからである。外包材が複数の無機層付きフィルムを有する場合、各無機層付きフィルムの構成は同じでもよく、異なっていてもよい。
4.保護フィルム
本開示の外包材は、上述した金属酸化物リン酸層等の他に、保護フィルムを有していてもよい。金属酸化物リン酸層等の、外包材として共に用いられる各フィルムを、損傷や劣化から保護することができるからである。保護フィルムは、そのいずれの面にもガスバリア性を有する層が配置されていない点で、上述した各フィルムと区別することが可能である。上記保護フィルムの外包材における配置位置は特に限定されるものではないが、上記金属酸化物リン酸層の上記熱溶着可能なフィルムとは反対の面側など、真空断熱材を形成する際に最外層(最表層)となる位置に、保護フィルムが配置されていることが好ましい。
上記保護フィルムとしては、熱溶着可能なフィルムよりも高融点の樹脂を用いたものであればよく、シート状でもフィルム状でもよい。このような保護フィルムとして、例えば、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVAL)、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルロースナノファイバー(CNF)等のシートまたはフィルム等が挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が好適に用いられる。なお、高温高湿な環境においても外包材全体の寸法変化率を低く抑えるという観点から、保護フィルムには、ナイロン等のポリアミド樹脂が用いられないことが好ましい。
上記保護フィルムは、本開示の外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内部を保護するのに十分な強度を有し、耐熱性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性等に優れたものであることが好ましい。また、上記保護フィルムは、酸素バリア性や水蒸気バリア性など、ガスバリア性を有していることが好ましい。
上記保護フィルムは、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層させて多層としたものであってもよい。また上記保護フィルムは、他の層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。また、上記保護フィルムの厚みは、外包材に共に用いられる他の各フィルムを保護することができる厚さであれば特に限定されるものではないが、一般的に5μm以上、80μm以下の範囲内程度である。
5.真空断熱材用外包材
本開示の外包材は、高温高湿な環境における寸法変化率が特定の値以下、すなわち、温度25℃、湿度0%RHの雰囲気下での上記外包材の寸法を基準とした場合に、上記外包材を温度70℃、湿度90%RHの雰囲気下で2時間保持した後の、上記外包材の寸法変化率が0.6%以下、中でも0.5%以下、特には0.45%以下であることが好ましい。高温高湿な環境においては上記外包材全体が伸縮すると、上記外包材内に位置する金属酸化物リン酸層にも圧縮・引張応力がかかり、当該応力により金属酸化物リン酸層にクラックが発生し、外包材のガスバリア性が低下する可能性がある。外包材の寸法変化率が上記範囲内であれば、外包材が高温高湿な環境に曝された場合でも、上記金属酸化物リン酸層にかかる応力を抑制することができるため、金属酸化物リン酸層へのクラックの発生を抑制することができ、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
ここで、上記外包材の寸法変化率とは、まず、10mm×5mmの短冊状の外包材を測定試料として、その測定試料を熱機械分析装置(TMA:Thermomechanical Analyzer)により、下記の条件で、温度25℃、湿度0%RHから温度70℃、湿度0%RHへの昇温過程と、それに続く温度70℃、湿度90%RHへの昇湿過程と、それに続く温度70℃、湿度90%RHの雰囲気下で2時間保持する恒温恒湿過程と、それに続く温度25℃、湿度0%RHへの降温降湿過程と、の各温度・湿度において、外包材の初期寸法(昇温・昇湿前の温度25℃、湿度0%RHでの寸法)に対する寸法変化率を測定したものである。上記熱機械分析装置としては、例えば日立ハイテクサイエンス社製のTMA/SS7100を用いることができる。
測定モード:引張モード、荷重400mN/mm2、
試料長さ:10mm、
試料幅:5mm、
昇温開始温度:25℃、
昇湿開始湿度:0%RH、
昇温終了温度:70℃、
昇湿終了湿度:90%RH(温度70℃、湿度90%RHでの保持時間:2時間)、
降温終了温度:25℃、
降湿終了湿度:0%RH、
昇温および降温速度:10℃/min、
昇湿および降湿速度:20%RH/min、
なお、寸法変化率は、下記式(1)で定義されるものである。
寸法変化率(%)=|L−L0|/L0×100 (1)
(ただし、Lは温度70℃、湿度90%RHの雰囲気下で2時間保持した後(恒温恒湿過程後)の長さ、L0は昇温・昇湿前の温度25℃、湿度0%RHでの長さである。)
また、本開示においては、外包材全体の厚みを基準とした場合に、上記外包材におけるポリアミド樹脂層の厚みの合計の割合が14%以下、中でも10%以下、特には5%以下であることが好ましく、上記割合が0%である、すなわち、ポリアミド樹脂層が外包材に用いられていないことが最も好ましい。ポリアミド樹脂層は、高温高湿な環境における寸法変化率が高いため、外包材におけるポリアミド樹脂層の厚みの合計の割合を上記範囲内とすることにより、上述した外包材の寸法変化率を達成しやすくなるからである。なお、ここで「ポリアミド樹脂層」とは、ポリアミド樹脂を主成分とするフィルムなど、ポリアミド樹脂を主成分とする層を意味するものであり、外包材がこのような層を複数有する場合の上記割合は、各層の厚みの合計が、外包材全体の厚みに占める割合である。なお、上記ポリアミド樹脂層としては、具体的には、ナイロン樹脂層等を挙げることができる。
上記外包材の厚みとしては、所望のガスバリア性や強度を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、30μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましく、中でも50μm以上、150μm以下の範囲内であることが好ましい。また、上記外包材の引張強度としては、50N以上であることが好ましく、中でも80N以上であることが好ましい。本開示の外包材を用いて形成された真空断熱材を屈曲させる際に破断等が生じにくくなるためである。なお、上記引張強度は、JIS−Z−1707に基づいて測定した値である。
上記外包材の積層方法としては、所望の構成の外包材を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、予め成膜した各フィルムを接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション法や、熱溶融させた金属酸化物リン酸層付きフィルム等の各材料をTダイ等を用いて押出しして貼り合せ、得られた積層体に接着剤を介して熱溶着可能なフィルムを貼り合せる方法等が挙げられる。
上記外包材は、上述した各フィルム以外の構成を有していてもよい。例えば、上記金属酸化物リン酸層と熱溶着可能なフィルムとの間に、ガスバリア性を有する層を有していてもよい。このような層としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸系樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などの天然高分子等の親水基含有樹脂が用いられることが好ましく、中でもPVAやEVOH等のポリビニルアルコール系樹脂、特にはEVOHを含む層を挙げることができる。親水基含有樹脂は酸素に対するバリア性や、耐屈曲性等の物理的強度に優れているため、このような層を設けることにより、外包材のガスバリア性、特に酸素に対するバリア性を向上させることができるからである。
上記外包材は、酸素透過度が0.1cc/m2/day/atm以下、中でも0.05cc/m2/day/atm以下であることが好ましい。また、上記真空断熱材用外包材は、水蒸気透過度が0.5g/m2/day以下、中でも0.1g/m2/day以下、特には0.05g/m2/day以下であることが好ましい。上記外包材が上記範囲内のガスバリア性を有することにより、高温高湿な環境に長時間曝された場合でも、高い断熱性能を有する真空断熱材を形成することができるからである。なお、上記外包材の酸素透過度および水蒸気透過度の測定方法は、上記「3.無機層付きフィルム、(1)無機層」の項において説明した各透過度の測定方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
B.真空断熱材
次に、本開示の真空断熱材について説明する。本開示の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とするものである。
本開示の真空断熱材については、既に説明した図2に例示するものと同様とすることができる。本開示によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材とすることができる。
本開示の真空断熱材は、真空断熱材用外包材および芯材を少なくとも有するものである。
以下、本開示の真空断熱材について、構成ごとに説明する。
1.真空断熱材用外包材
本開示の真空断熱材用外包材は、上記芯材を封入するものである。また、上記真空断熱材用外包材は、上述の本開示の真空断熱材用外包材である。このような真空断熱材用外包材については、「A.真空断熱材用外包材」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
なお、封入するとは、上記外包材を用いて形成された袋体の内部に密封されることをいうものである。
2.芯材
本開示における芯材は、上記真空断熱材用外包材により封入されるものである。
上記芯材としては、熱伝導率の低いものであることが好ましい。上記芯材は、その空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材であることが好ましい。
上記芯材を構成する材料としては、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。
上記粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。なかでも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
また、上記発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等があり、これらのなかでも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
また、上記繊維体としては、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で好ましい。
上記芯材は、上述した材料を単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
3.真空断熱材
本開示の真空断熱材は、上記真空断熱材用外包材で封入された内部を減圧密封し、真空状態としたものである。上記真空断熱材内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材内部の真空度を上記範囲内とすることにより、内部に残存する空気の対流による熱伝導を小さいものとすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となる。
また、上記真空断熱材の熱伝導率は低いことが好ましく、例えば、上記真空断熱材の25℃における熱伝導率(初期熱伝導率)は、15mW/m・K以下であることが好ましく、なかでも10mW/m・K以下であることが好ましく、特に5mW/m・K以下であることが好ましい。真空断熱材の熱伝導率を上記範囲とすることにより、上記真空断熱材は熱を外部に伝導しにくくなることから、高い断熱効果を奏することができるからである。なお、上記熱伝導率は、JIS−A−1412−3に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名 HC−074、英弘精機製)を挙げることができる。
上記真空断熱材はガスバリア性が高いことが好ましい。外部からの水分や酸素等の侵入による真空度の低下を防止することができるからである。上記真空断熱材のガスバリア性については、上記「A.真空断熱材用外包材、5.真空断熱材用外包材」の項で説明した酸素透過度および水蒸気透過度と同様であるため、ここでの説明は省略する。
4.製造方法
本開示の真空断熱材の製造方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、予め上述の外包材を準備し、2枚の上記外包材をそれぞれの熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り三方の外包材同士の端部を熱溶着することで、2枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材が得られる。
また、上記製造方法は、1枚の上記外包材を熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り二方の上記外包材同士の端部を熱溶着することで、1枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材を得る方法であっても良い。
5.用途
本開示の真空断熱材は、熱伝導率が低く、高温高湿な環境においても断熱性能および耐久性能に優れるものである。従って、上記真空断熱材は、熱源を有し発熱する部位や、外部から加熱されることにより高温となる部位に用いることができる。本開示の用途としては、例えば、「C.真空断熱材付き機器」で説明する機器、クーラーボックス、輸送用コンテナ、水素等の燃料タンク、システムバス、温水タンク、保温庫、住宅壁、自動車、飛行機、船舶、列車等が挙げられる。
C.真空断熱材付き機器
次に、本開示の真空断熱材付き機器について説明する。本開示の真空断熱材付き機器は、本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を備える真空断熱材付き機器であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とするものである。
ここで、「熱源部」とは、機器自体が駆動することにより、当該機器本体または機器内部において発熱する部位をいうものであり、例えば電源やモーター等をいう。また、「被保温部」とは、機器本体または内部に熱源部を有さないが、上記機器が外部の熱源から熱を受けて、高温になる部位をいうものである。
本開示によれば、上記真空断熱材が上述の真空断熱材であり、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができるため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が高温となることを防止し、一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた高い省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
本開示における真空断熱材については、上述した「B.真空断熱材」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本開示における機器とは、本体又は本体の内部に熱源部もしくは被保温部を有するものである。本開示における機器としては、例えば、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(登録商標「エコキュート」)、冷蔵庫、自動販売機、炊飯ジャー、ポット、電子レンジ、業務用オーブン、IHクッキングヒーター、OA機器等の電化機器、自動車、住宅壁、輸送用コンテナ等が挙げられる。中でも本開示においては、上記機器が、自然冷媒ヒートポンプ給湯機、業務用オーブン、電子レンジ、自動車、住宅壁、輸送用コンテナであり、これらの機器に上述の本開示の真空断熱材を用いることが好ましい。
上記真空断熱材を機器に装着する態様としては、当該機器の熱源部もしくは被保温部に直接真空断熱材を貼り付けてもよく、被保温部と熱源部または外部熱源との間に真空断熱材を挟みこむようにして装着してもよい。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して、本開示をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(接着剤の調製)
ポリエステルを主成分とする主剤、脂肪族系ポリイソシアネートを含む硬化剤、および酢酸エチルを、重量配合比が主剤:硬化剤:酢酸エチル=10:1:14となるように混合し、2液硬化型の接着剤を調製した。
(真空断熱材用外包材の作製)
第1金属酸化物リン酸層付きフィルム(樹脂基材/金属酸化物リン酸層)/第2金属酸化物リン酸層付きフィルム(樹脂基材/金属酸化物リン酸層)/無機層付きフィルム(無機層/樹脂基板)/熱溶着可能なフィルムの層構成を有する外包材を作製した。上記第1および第2金属酸化物リン酸層付きフィルムとして、一方の面側に厚み0.3μmの金属酸化物リン酸層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(株式会社クラレ製、クラリスタCF)を、無機層付きフィルムとして、一方の面側にアルミニウム蒸着層を有する、厚み15μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム(株式会社クラレ製、TMXL)を、熱溶着可能なフィルムとして、未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、SC)を用いた。上記各層は、下層となる層の面上に上述の配合比で調製した接着剤を、塗布量3.5g/m2となるようにドライラミネート法により積層した。
[実施例2]
上記無機層付きフィルムとして、一方の面側にアルミニウム蒸着層を有する、厚み12μmのEVOHフィルム(株式会社クラレ製、VMXL)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
[実施例3]
上記無機層付きフィルムを設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
[実施例4]
熱溶着可能なフィルムとして、直鎖状短鎖分岐ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、TUX−HCE)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
[実施例5]
上記無機層付きフィルムを、上記第2金属酸化物リン酸層付きフィルムと熱溶着可能なフィルムとの間ではなく、第1金属酸化物リン酸層付きフィルムの外側(熱溶着可能なフィルムとは反対側)に最外層として配置したこと、および、上記最外層の無機層付きフィルムとして、ナイロンフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のナイロンフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
[比較例1]
上記第1金属酸化物リン酸層付きフィルムの代わりに、ナイロンフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のナイロンフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを最外層として用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
[比較例2]
上記第1および第2金属酸化物リン酸層付きフィルムの代わりに、一方の面側にアルミニウム蒸着層を有するPETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、VM−PET1519)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材を得た。
[比較例3]
上記金属酸化物リン酸層付きフィルムの代わりに、PETフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを用いたこと以外は、比較例1と同様にして外包材を得た。
[比較例4]
上記無機層付きフィルムとして、PETフィルムの一方の面側にシリカ蒸着層を有し、上記シリカ蒸着層のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有するフィルムを用いたこと以外は、比較例3と同様にして外包材を得た。
[評価]
(真空断熱材用外包材の寸法変化率の測定)
上記各実施例および比較例で得られた外包材について、高温高湿な環境における寸法変化率を測定した。寸法変化率は、温度25℃、湿度0%RHの雰囲気下での外包材の寸法を基準とし、上記「A.真空断熱材用外包材、5.真空断熱材用外包材」の項において説明されている方法により各温度・湿度における外包材の寸法を測定し、寸法変化率を求めた。測定結果を下記表1に示す。なお、短冊状の試料の任意の一辺に平行な方向を第1方向、上記任意の一辺に垂直な辺に平行な方向を第2方向とした。
(ポリアミド樹脂層の厚みの合計の割合の算出)
上記各実施例および比較例で得られた外包材について、外包材におけるポリアミド樹脂層(PA層)の厚みの合計の割合を算出した。外包材全体の厚み、および、ポリアミド樹脂層の厚みは、外包材の断面観察像からの計測により測定した。測定結果を下記表1に示す。
(真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の測定)
上記各実施例および比較例で得られた各外包材について、初期の水蒸気透過度の測定と、各外包材を温度70℃、湿度90%RHの雰囲気下で1000時間保管した後の水蒸気透過度の測定とを、以下の手順で行った。まず、2枚の外包材を準備し、上記2枚の外包材を、それぞれの熱溶着可能なフィルムが向き合うように対向させ、外包材の内側には何も内包されていない状態で、上記外包材の外周の全周を熱溶着し、密封された袋体を形成した。上記熱溶着は大気圧下で行い、上記袋体の内部も減圧しなかった。
上記方法により形成され、上記密封された各袋体の、熱溶着されていない部分の外包材を切り取り、上記切り取った部分の外包材の水蒸気透過度を測定した。測定結果を下記表1に示す(下記表1の「0時間」)。また、上記方法により形成され、密封された各袋体を、温度70℃、湿度90%RHの雰囲気下で1000時間保管した後に、上記保管された各袋体の、熱溶着されていない部分の外包材を切り取り、上記切り取った部分の外包材の水蒸気透過度を測定した。測定結果を下記表1に示す(下記表1の「1000時間」)。なお、上記各外包材の水蒸気透過度は、40℃、90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度測定装置(米国MOCON社製、PARMATRAN)を使用して、JIS K7129に従い測定した。
(まとめ)
金属酸化物リン酸層が特定の厚みを有する実施例1〜5においては、高温高湿な環境において1000時間保管された後の水蒸気透過度が極めて低く、高温高湿な環境においても水蒸気バリア性がほとんど劣化していないことが分かる。一方、金属酸化物リン酸層の厚みの合計が0.3μmである比較例1、金属酸化物リン酸層を有していない比較例2〜4においては、上記実施例に比べて高温高湿な環境における水蒸気バリア性の劣化が著しいことが分かる。また、金属酸化物リン酸層の代わりにオーバーコート層付きの無機層付きフィルムを用いた比較例3〜4であっても、上記実施例に比べて高温高湿な環境における水蒸気バリア性の劣化が著しく、一般的に経済面でのコストが高いオーバーコート層を有する無機層付きフィルムと比較しても、金属酸化物リン酸層付きフィルムの方が高温高湿な環境における水蒸気バリア性の劣化が少ないことが分かる。