JP6210149B2 - 真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品 - Google Patents

真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き物品 Download PDF

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Description

本発明は、長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等に関するものである。
近年、地球温暖化防止のため温室効果ガスの削減が推進されており、電気製品や車両、設備機器、建物等の省エネルギー化が求められている。例えば、消費電力量低減の観点から、電気製品等への真空断熱材の採用が進められている。電気製品等のように本体内部に発熱部を有する機器や、外部からの熱を利用した保温機能を有する機器においては、真空断熱材を備えることにより機器全体としての断熱性能を向上させることが可能となる。このように、真空断熱材の使用により、電気製品等の機器のエネルギー削減の取り組みがなされている。
真空断熱材とは、外包材により形成された袋体に芯材を配置し、上記芯材が配置された袋体の内部を減圧して真空状態とし、上記袋体の端部を熱溶着して密封することで形成されたものである。断熱材内部を真空状態とすることにより、気体の対流が遮断されるため、真空断熱材は高い断熱性能を発揮することができる。また、真空断熱材の断熱性能を長期間維持するためには、外包材を用いて形成された袋体の内部を長期にわたり高い真空状態に保持する必要がある。そのため、外包材には、外部から水蒸気、酸素等のガスが断熱材内部へ透過することを防止するためのガスバリア性能、芯材を覆って密着封止するための熱接着性能等の種々の機能が要求される。
したがって、上記外包材は、これらの各機能特性を有する複数のフィルムを有する積層体として構成されるものとなる。一般的な外包材の態様としては、熱溶着可能なフィルム、ガスバリアフィルムおよび保護フィルムが積層されてなるものであり、各層間は接着剤等を介して貼り合されている(特許文献1および2参照)。特許文献1では、串刺し等によるガスバリアフィルムへのピンホールの発生による真空状態の低下防止を目的として、上記外包材として、2つのナイロンフィルムを用いていることが記載されている。また、特許文献2では、上記外包材を用いて真空断熱材を形成した際の、上記外包材同士を貼り合わせた端部においてガスバリアフィルムに屈曲の影響が直接及ばないものとすることを目的として、ガスバリアフィルムの両面に引張弾性率の高い保護フィルムを配置することが記載されている。
特開2003−262296号公報 特開2013−103343号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2の外包材では、上記外包材単体では十分なバリア性能を発揮することが確認できている場合であっても、上記外包材を用いて真空断熱材を形成した場合に、十分に真空状態を保てず、長期間の断熱性能を維持することができないといった問題がある。特に、真空断熱材が高温に曝される場合、初期熱伝導率が低い真空断熱材であっても、断熱性能が経時的に低下するという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供することを主目的とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、熱に曝された際に真空断熱材用外包材が収縮するとガスバリアフィルムが皺になり、クラックが発生し、また、真空断熱材用外包材が伸張すると、ガスバリアフィルムに引っ張られ、クラックが発生するなど、真空断熱材用外包材の熱による伸縮が真空断熱材の断熱性能劣化の要因となり得ることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
すなわち、本発明は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有する真空断熱材用外包材であって、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材用外包材を提供する。
本発明によれば、上記外包材が配置される雰囲気の温度を変化させた際の、上記外包材の寸法変化率が特定の範囲内であることにより、高温においても高いガスバリア性能を維持することができる外包材とすることができる。したがって、上記外包材を、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。
本発明においては、動的粘弾性測定装置を用いて、引張法により周波数10Hzで貯蔵弾性率を測定したときに、0℃での上記貯蔵弾性率の値に対する100℃での上記貯蔵弾性率の値の割合が25%以上であることが好ましい。温度変化に伴う引張法による貯蔵弾性率の変化が小さい場合、ガスバリアフィルムを構成する樹脂基材、その他外包材を構成する樹脂層が熱により軟化しにくいことから、熱による樹脂基材や樹脂層の寸法変化に起因したガスバリア層の劣化を抑えることができる。また、軟化による上記樹脂基材や樹脂層自体のガスバリア性能の低下を抑えることもできる。これにより、本発明の外包材は、温度変化に対して良好な寸法安定性およびガスバリア性能を発揮することが可能となるからである。
本発明においては、少なくとも上記樹脂基材が、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(以下、EVOH樹脂とする場合がある。)を含まないことが好ましい。熱によるガスバリアフィルムの寸法変化が生じにくくなり、熱による寸法変化に起因したガスバリア層の劣化を抑えることができる。これにより、本発明の外包材は、温度変化に対して良好な寸法安定性およびガスバリア性能を発揮することが可能となるからである。
本発明においては、上記雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が0.5%以下であることが好ましい。上記外包材が配置される雰囲気の温度を変化させた際の、上記外包材の寸法変化率が上記範囲内であれば、高温においてもより高いガスバリア性能を維持することができる外包材とすることができる。したがって、上記外包材を、高温においてもより長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
本発明においては、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であり、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が0.5%以下であることが好ましい。上記外包材の寸法変化率が上記範囲内であれば、外包材が熱に曝された場合でも、ガスバリア層にかかる応力を抑制することができるため、ガスバリア層へのクラックの発生を抑制することができ、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
本発明においては、少なくとも1つの上記ガスバリアフィルムが、上記ガスバリア層の、上記樹脂基材と反対側の面側に、オーバーコート層を有することが好ましい。上記オーバーコート層を有することにより、上記ガスバリアフィルムのガスバリア性能を向上させることができるからである。
本発明においては、上記ガスバリアフィルムの、上記熱溶着可能なフィルムとは反対側の面側に保護フィルムを有することが好ましい。上記外包材が保護フィルムを有することにより、熱溶着可能なフィルムやガスバリアフィルムなど、共に用いられる外包材の他の層を保護することができるからである。
本発明においては、上記ガスバリアフィルムを2つ以上有することが好ましい。外包材のガスバリア性能をより向上させることができるからである。
本発明は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材を提供する。
本発明によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材とすることができる。
本発明は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材付き物品を提供する。
本発明によれば、物品に備わる上記真空断熱材が、上述の真空断熱材用外包材を用いた真空断熱材であり、高温においても長期間断熱性能を維持することができるため、良好な断熱性能を有する物品とすることができる。例えば、上記物品が熱源部を有する機器であれば、上記真空断熱材が備わることで、熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が高温となることを防止することができ、一方、上記物品が被保温部を有する機器であれば、上記真空断熱材が備わることで、上記被保温部の温度状態を保つことができる。よって、消費電力を抑えた高い省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
本発明においては、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供できるといった作用効果を奏する。
本発明の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。 本発明の真空断熱材の一例を示す概略断面図である。 本発明の真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。 実施例および比較例で作製した真空断熱材の熱伝導率の経時変化を示すグラフである。 実施例および比較例で作製した真空断熱材用外包材の高温保持前後の寸法変化率と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を示すグラフである。 実施例および比較例で作製した真空断熱材用外包材の高温保管後の水蒸気透過度の劣化量と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を示すグラフである。 実施例および比較例で作製した真空断熱材用外包材の恒温過程中の寸法変化率と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を示すグラフである。 実施例および比較例で作製した真空断熱材用外包材の酸素透過度と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を示すグラフである。 実施例および比較例で作製した真空断熱材用外包材の高温保管後の酸素透過度の劣化量と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を示すグラフである。 実験例および比較実験例の寸法変化率の経時変化を示すグラフである。 寸法変化率を測定するための測定試料の採取方法を説明する説明図である。
以下、本発明の真空断熱材用外包材、真空断熱材、真空断熱材付き物品、真空断熱材用外包材の設計方法、および真空断熱材用外包材の製造方法について、詳細に説明する。
なお、本明細書において、「真空断熱材用外包材」を「外包材」と略する場合がある。
A.真空断熱材用外包材
本発明の真空断熱材用外包材は、2つの態様に大別することができる。以下、それぞれの態様について説明する。
(A−1)第1態様
以下、本発明における第1態様の真空断熱材用外包材について、説明する。
本態様の真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有する真空断熱材用外包材であって、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とするものである。
本態様の外包材について、図を参照して説明する。図1は、本態様の外包材の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本態様の外包材10は熱溶着可能なフィルム1およびガスバリアフィルム2を有するものであり、上記ガスバリアフィルム2は、樹脂基材3と、上記樹脂基材3の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層4とを有する。図1では、上記ガスバリアフィルム2は、樹脂基材3と、上記樹脂基材3の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層4とを有する。上記外包材10は、高温おける特定の範囲内の寸法変化率を有する。
また、図2は、本態様の外包材を用いた真空断熱材の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、上記真空断熱材20は、芯材11と、上記芯材11を封入する外包材10とを有するものである。上記真空断熱材20は、2枚の上記外包材10を、それぞれの熱溶着可能なフィルム1が向き合うように対向させ、その間に上記芯材11を配置し、その後、上記芯材11の外周の一方を開口部とし、残り三方の上記外包材10同士の端部12を接合することで、2枚の上記外包材10により形成され、内部に上記芯材11が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材11が上記外包材10に封入されているものである。なお、図2中の符号については、図1と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
本態様によれば、上記外包材が配置される雰囲気の温度を変化させた際の、上記外包材の寸法変化率が特定の範囲内であることにより、高温においても高いガスバリア性能を維持することができる外包材とすることができる。したがって、上記外包材を、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。
初期熱伝導率が低い真空断熱材であっても、高温に曝されると、経時的に断熱性能が低下するのが一般的である。その原因としては様々なものが考えられるが、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、高温に曝された際に寸法の伸縮が大きい外包材は、高温における経時的な断熱性能の低下が大きいことを見出し、本発明に至ったのである。
上記断熱性能の低下は、熱に曝された外包材の寸法収縮に伴い、ガスバリアフィルムが皺になり、クラックが発生し、また、真空断熱材用外包材が伸張すると、ガスバリアフィルムに引っ張られ、クラックが発生するなど、真空断熱材用外包材の熱による伸縮が真空断熱材内部の真空度を低下させることに起因していると推測される。外包材を構成する各フィルムには、各種樹脂フィルムが一般的に用いられるが、このような樹脂フィルムには、熱に曝されるとその寸法が伸びるものと、縮むものがある。外包材に用いられるガスバリアフィルムが、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とから構成される場合、上記樹脂基材の寸法が縮むと、上記ガスバリア層にも圧縮応力がかかり、また、上記樹脂基材の寸法が伸びると、ガスバリア層にも引張応力がかかるため、ガスバリア層にクラックが生じ易くなる。さらに、熱溶着可能なフィルムや保護フィルムなど、外包材においてガスバリアフィルムと共に用いられる他の層が伸縮した場合も、上記他の層と近接する上記ガスバリア層にも圧縮応力や引張応力がかかるため、同様にクラックが生じ易くなる。したがって本態様においては、高温に曝された際の上記外包材全体としての寸法変化率を規定することにより、高温においても高いガスバリア性能を有する外包材を実現することができる。
ここで、一般に、樹脂層等で構成に含む積層体は、熱(熱応力)による寸法変化の他に、外力負荷による寸法変化も起こり得る。本発明者等は、後述する実施例および比較例で示すように、外力負荷によるガスバリア性能の劣化と、温度変化によるガスバリア性能の劣化との間に相関がないことを知見した。すなわち、外力負荷による寸法変化、およびそれに起因して生じるガスバリア性能の劣化と、熱による寸法変化、およびそれに起因して生じるガスバリア性能の劣化とは、同視することができず、外力負荷由来のガスバリア性能の劣化傾向から、熱由来のガスバリア性能の劣化傾向を特定することは困難であると推量される。
したがって、外包材の寸法変化によるガスバリア性能の劣化傾向を検討する場合、熱による寸法変化と、外力負荷による寸法変化とは、それぞれ個別に考慮する必要がある。本発明は、熱による寸法変化に起因して生じるガスバリア性能の劣化に着目して完成されたものである。なお、ガスバリア性能を有するとは、具体的には、水蒸気の透過を阻止する水蒸気バリア性能および酸素の透過を阻止する酸素バリア性能の少なくとも一方を有することをいい、両方を有することがより好ましい。
本態様の外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを少なくとも有するものである。以下、本態様の外包材の各構成について説明する。
1.真空断熱材用外包材の特性
(1)真空断熱材用外包材の寸法変化率
本態様の外包材は、高温において特定の寸法変化率を有するものである。すなわち、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率(以下、「高温保持前後の外包材の寸法変化率」とする場合がある。)が1%以下であり、好ましくは0.5%以下、中でも0.4%以下、特には0.3%以下である。上記高温保持前後の外包材の寸法変化率が上記範囲内であれば、外包材が熱に曝された場合でも、ガスバリア層にかかる応力を抑制することができるため、ガスバリア層へのクラックの発生を抑制することができ、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
中でも、ガスバリア性能の中でも水蒸気バリア性能は、主に、ガスバリアフィルムを構成するガスバリア層により発揮されるところ、周囲の層の寸法変化に起因してガスバリア層が劣化することで、上記物性が低下しやすい傾向にある。本態様においては、上記高温保持前後の外包材の寸法変化率を上記範囲内とすることで、高温保持前後でのガスバリア層の劣化および水蒸気透過度の劣化を抑制することができるため、温度変化によらず高ガスバリア性能、特に高水蒸気バリア性能を発揮することが可能となる。
また、本態様においては、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させた際(以下、「昇温過程」とする場合がある。)の上記外包材の寸法変化率は、1%以下、中でも0.7%以下、特には0.5%以下であることが好ましい。また、上記外包材の、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した際(以下、「恒温過程」とする場合がある。)の上記外包材の寸法変化率は、0.5%以下、中でも0.3%以下、特には0.1%以下であることが好ましい。さらに、上記外包材の、雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際(以下、「降温過程」とする場合がある。)の上記外包材の寸法変化率は、1%以下、中でも0.7%以下、特には0.5%以下であることが好ましい。外包材の上記各過程における寸法変化率が上記範囲内であれば、外包材が熱に曝された場合でも、ガスバリア層にかかる応力を抑制することができるため、ガスバリア層へのクラックの発生を抑制することができ、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
なお、雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させた際の上記外包材の寸法変化率のことを、「昇温過程における外包材の寸法変化率」と称する場合がある。また、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した際の上記外包材の寸法変化率のことを、「恒温過程における外包材の寸法変化率」と称する場合がある。さらに、雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記外包材の寸法変化率のことを、「降温過程における外包材の寸法変化率」と称する場合がある。
外包材の寸法、高温保持前後の外包材の寸法変化率、および各過程における上記外包材の寸法変化率は、以下の方法により測定および規定することができる。図11は、寸法を測定するための測定試料の採取方法を説明する説明図である。まず、高温保持前の外包材10から所望のサイズの試験片(図11中の一点破線領域内)を切り出す。試験片の数Nは、少なくともN≧1であればよく、通常はN≧3とする。各試験片の面内において、基準点Pと、上記基準点Pを始点として面内の任意の一方向Xに延びる基準軸Lとを設定し、上記基準軸L上で、上記基準軸Lの上記一方向X(軸方向)を長手方向とする矩形の測定試料Sを採取する。上記測定試料は、短手方向の長さが5mm、長手方向の長さが23mmの矩形とする。上記基準軸L上での上記測定試料Sの採取位置としては、例えば、矩形の中心が上記基準軸Lを通る位置とすることができる。次に、上記基準点Pを回転中心として、上記基準軸Lを22.5°ずつ回転させ、各回転位置において同様に測定試料Sを採取する。これにより、1つ試験片あたり、面内において基準点Pを中心に放射線状に16点の測定試料Sを採取する。測定試料はいずれも上記寸法の矩形とする。
試験片ごとに、採取した16点の各測定試料について高温保持前の雰囲気の温度が20℃の際の寸法を下記の寸法測定条件で測定し、その16点平均値を算出する。ここで、測定対象となる測定試料の「寸法」とは、測定試料の「長手方向の寸法」とする。また、「雰囲気の温度が20℃の際」とは、雰囲気の温度が20℃±0.5℃の範囲内にあるときをいう。このときの測定試料の寸法を「基準寸法」と称する。試験片ごとに、基準寸法の16点平均値を算出して、更にそれを試験片数で平均化した値を「雰囲気の温度が20℃の際の真空断熱材用外包材の寸法」とする。なお、寸法変化率の算出の基準となる「雰囲気の温度が20℃の際の真空断熱材用外包材の寸法」のことを、「高温保持前の真空断熱材用外包材の寸法」と称することがある。
次に、試験片ごとに、採取した16点の測定試料をそれぞれ昇温過程、恒温過程、および降温過程の順に置く。昇温、恒温、降温の一連の過程は、熱機械的分析装置(TMA:Thermomechanical Analyzer)を用いて、以下に示す条件により行う。各過程において、測定試料の寸法を下記の寸法測定条件で経時で連続して測定する。
(寸法測定条件)
熱機械的分析装置:日立ハイテクサイエンス社製 TMA/SS6100
測定モード:引張モード、荷重100mN
測定試料:23mm(長手方向)×5mm(短手方向)の矩形
チャック間距離:20mm
昇温開始温度:20℃
昇温終了温度:145℃(145℃での保持時間:1時間)
降温終了温度:20℃
昇温および降温速度:10℃/min
測定雰囲気:窒素パージ下
寸法測定頻度:0.16分刻み
昇温、恒温、降温の一連の過程を経た後の各測定試料について、雰囲気の温度が20℃の際の長手方向の寸法を測定し、基準寸法からの変化量の割合、すなわち、測定試料の高温保持前後の寸法変化率を算出する。測定試料の高温保持前後の寸法変化率は、下記式(1)で定義することができる。
測定試料の高温保持前後の寸法変化率(%)=|L−L|/L×100 … 式(1)
(ここで、式(1)中のLは基準寸法であり、Lは、昇温、恒温および降温の一連の過程を経た後の測定試料の寸法である。)
そして、試験片ごとに、高温保持前後の寸法変化率の16点平均値を算出し、更にそれを試験片数で平均化した値を「高温保持前後の真空断熱材用外包材の寸法変化率」とする。
また、試験片ごとに、採取した16点の各測定試料について、昇温過程、恒温過程、降温過程の各過程における、基準寸法に対する各過程での測定試料の寸法変化量の割合、すなわち寸法変化率を算出する。試験片ごとに、測定試料の各工程における寸法変化率の16点平均値を求め、更にそれを試験片数で平均化した値を「各過程における真空断熱材用外包材の寸法変化率」とする。各過程における測定試料の寸法変化率は、1つの過程の中で、対象とする測定試料の長手方向の寸法が最小のときを最小寸法Lmin、最大のときを最大寸法Lmaxとして、式(2)から算出することができる。式(2)中のLは、式(1)と同じ基準寸法である。
各工程における測定試料の寸法変化率(%)=(Lmax−Lmin)/L×100 … 式(2)
なお、Lmin、Lmaxは、後述する予備方法において式(4)中のL、Lに対応する。
具体的には、昇温過程であれば、測定試料の寸法変化率は、昇温開始の20℃から終了の145℃までの間で、測定試料の長手方向の最小寸法Lmin、および最大寸法Lmaxを特定し、式(2)から算出することができる。そして式(2)により算出した測定試料の寸法変化率の16点平均を、試験片の昇温過程における寸法変化率とすることができ、更にそれを試験片数で平均化した値を「昇温過程における外包材の寸法変化率」とすることができる。
また、恒温過程であれば、測定試料の寸法変化率は、145℃保持の開始から終了までの間で、測定試料の長手方向の最小寸法Lmin、および最大寸法Lmaxを特定し、式(2)から算出することができる。そして、昇温過程の場合と同様の方法により、恒温過程における外包材の寸法変化率を算出することが出来る。
降温過程の場合も同様に、測定試料の寸法変化率は、降温開始の145℃から終了の20℃までの間で最小寸法Lmin、最大寸法Lmaxを特定し、式(2)から算出することができる。そして、昇温過程の場合と同様の方法により、降温過程における外包材の寸法変化率を算出することが出来る。
上述した本態様の外包材についての各寸法変化率は、上記外包材からサンプリングされる少なくとも3つの試験片(N≧3)について、各々22.5°ずつ異なる16点の平均値を用いることができ、少なくとも合計で48個の寸法変化率の平均値を用いることができる。なお、試験片数が1以上(N≧1)であり、各試験片における16点の測定試料の各寸法変化率の平均値が、上述した外包材についての各寸法変化率の範囲内であることが好ましい。
なお、高温保持前後、および各過程における外包材の寸法変化率は、通常、上述した方法を用いて測定されるが、製膜方向を特定した以下に示す予備方法を用いて規定することも可能である。上記予備方法による上記外包材の寸法変化率とは、測定試料を熱機械的分析装置(TMA:Thermomechanical Analyzer)により、下記の条件で、20℃から145℃の昇温過程と、それに続く145℃で1時間における恒温過程と、それに続く145℃から20℃の降温過程と、の各過程において、連続製膜方向;フィルムの長手方向に垂直な方向;フィルムの幅方向)の初期値(昇温前の20℃での寸法)に対する寸法変化率を測定したものである。上記熱機械的分析装置としては、例えば日立ハイテクサイエンス社製のTMA/SS6100を用いることができる。
測定モード:引張モード、荷重100mN
試料長さ:20mm
試料幅:5mm
昇温開始温度:20℃
昇温終了温度:145℃(145℃での保持時間:1時間)
降温終了温度:20℃
昇温および降温速度:10℃/min
測定雰囲気:窒素パージ下
なお、上記予備方法による上記高温保持前後の寸法変化率は、下記式(3)で定義されるものである。ただし、昇温前の20℃での外包材の寸法を式(3)のLとし、昇温過程、恒温過程および降温過程を経た外包材の寸法を式(3)のLとする。
高温保持前後の寸法変化率(%)=|L−L|/L×100 … 式(3)
また、上記予備方法による昇温過程、恒温過程、降温過程の各過程における寸法変化率は、下記式(4)で定義されるものである。ただし、昇温前の20℃での外包材の寸法を式(4)のLとし、測定する過程において得られる外包材の最小寸法を式(4)のLとし、当該過程において得られる外包材の最大寸法を式(4)のLとする。
各過程における寸法変化率(%)=(L−L)/L×100 … 式(4)
(2)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度
本態様の外包材の、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気での水蒸気透過度は、0.01g/(m・day)以下、中でも0.008g/(m・day)以下、特には0.005g/(m・day)以下であることが好ましい。外包材の水蒸気透過度を上記範囲内とすることで、外包材の外部からの水蒸気の浸入により、上記真空断熱材の熱伝導率の上昇を抑制することができるからである。このときの真空断熱材用外包材の水蒸気透過度のことを、「高温保管前の水蒸気透過度」と称する場合がある。
なお、上記外包材の水蒸気透過度は、測定温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度測定装置(英国Technolox社製、DELTAPERM)を使用して、ISO−15106−5:2015(差圧法)に準拠して測定することができる。測定は、外包材の表面のうち、上記外包材の厚み方向において熱溶着可能なフィルムに対してガスバリアフィルム側に位置する上記表面が高湿度側(水蒸気供給側)となるようにして、上記装置の上室と下室との間に装着し、透過面積64cmの条件で行う。1つの条件で少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件での水蒸気透過度の値とする。以下、本明細書において説明する水蒸気透過度は、上述の方法と同様の方法を用いて測定することができる。
(3)真空断熱材用外包材の酸素透過度
本態様の外包材の、温度100℃、湿度0%RHの雰囲気での酸素透過度は、0.05cc/(m・day・atm)以下、中でも0.03cc/(m・day・atm)以下、特には0.01cc/(m・day・atm)以下であることが好ましい。外包材の酸素透過度を上記範囲内とすることで、外包材の外部からの酸素の浸入により、上記真空断熱材の熱伝導率の上昇を抑制することができるからである。このときの真空断熱材用外包材の酸素透過度のことを、「高温保管前の酸素透過度」と称する場合がある。
なお、上記外包材の酸素透過度は、JIS K7126−2A:2006(プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第2部:等圧法、付属書A:電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法)を参考に、測定温度100℃、湿度0%RHの条件下で、酸素ガス透過度測定装置(米国MOCON社製、OXTRAN)を使用し、測定することができる。測定は、外包材の表面のうち、上記外包材の厚み方向において熱溶着可能なフィルムに対してガスバリアフィルム側に位置する上記表面が酸素ガスに接するようにして上記装置内に装着し、透過面積50cmの条件で行う。上記測定は、以下の手順で行う。まず、上記装置内にキャリアガスを流量10cc/分で60分以上供給してパージする。上記キャリアガスは5%程度水素を含む窒素ガスを用いることができる。パージ後、上記装置内に試験ガスを流し、流し始めてから平衡状態に達するまでの時間として12時間を確保した後に上記測定を開始する。上記試験ガスは少なくとも99.5%の乾燥酸素を用いる。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の酸素透過度の値とする。以下、本明細書において説明する酸素透過度は、上述の方法と同様の方法を用いて測定することができる。
(4)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量
本態様においては、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記外包材の水蒸気透過度の劣化量(以下、「高温保管後の水蒸気透過度の劣化量」とする場合がある。)が0.01g/(m・day)以下、中でも0.008g/(m・day)以下、特には0.005g/(m・day)以下であることが好ましい。高温保管後の水蒸気透過度の劣化量が上記範囲内である外包材は、高温な環境に曝された場合でも水蒸気透過度を低く維持することができるため、高温な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
本態様において、高温保管後の水蒸気透過度の劣化量は、以下の手順で測定される。まず、2枚の外包材(寸法:360mm×450mm)を準備し、一般的な手順により真空断熱材を作製する。すなわち、上記2枚の外包材を重ねて、矩形の3方向をヒートシールして1方向のみが開口した袋体を作製する。芯材としてグラスウール(寸法:300mm×300mm×30mm)を用い、乾燥処理を行った後、上記袋体に、上記芯材および乾燥剤として酸化カルシウム(使用量:5g)を収納して、上記袋体内部を真空排気し、上記袋体の開口部分を熱溶着により密封して、真空断熱材(到達圧力:0.05Pa)を作製する。上記外包材を熱溶着する際の熱溶着温度や、熱溶着する領域の大きさは、用いられる外包材の熱溶着可能なフィルムの融点や、外包材の大きさなどにより適宜設定することができ、一般的な真空断熱材を形成する際の熱溶着温度や領域の大きさと同様とすることができる。
上記方法により作製された真空断熱材を、温度145℃、湿度無管理の雰囲気下で500時間保管した後に、上記真空断熱材の、熱溶着されていない部分の外包材を切り取り、上記切り取った部分の外包材の水蒸気透過度を、上記「(2)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度」に記載された水蒸気透過度の測定方法および測定条件と同じ方法および条件において測定する。以下、このようにして測定された、真空断熱材を145℃の雰囲気で500時間保管した後の外包材の水蒸気透過度を「高温保管後の水蒸気透過度」とする場合がある。
本態様における高温保管後の水蒸気透過度の劣化量は、上述したような方法により測定された外包材の高温保管後の水蒸気透過度を、真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の上記水蒸気透過度と比較した際の、上記真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の水蒸気透過度からの増加量である。すなわち、上記劣化量は、下記の式で算出することができる。
外包材の高温保管後の水蒸気透過度の劣化量 =(高温保管後の水蒸気透過度)−(高温保管前の水蒸気透過度)
(5)真空断熱材用外包材の酸素透過度の劣化量
本態様においては、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記外包材の酸素透過度の劣化量(以下、「高温保管後の酸素透過度の劣化量」とする場合がある。)が0.1cc/(m・day・atm)以下、中でも0.05cc/(m・day・atm)以下、特には0.01cc/(m・day・atm)以下であることが好ましい。高温保管後の酸素透過度の劣化量が上記範囲内である外包材は、高温な環境に曝された場合でも酸素透過度を低く維持することができるため、高温な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
本態様において、高温保管後の酸素透過度の劣化量は、以下の手順において測定される。すなわち、上記「(4)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量」において説明されている方法と同じ方法により作製され、温度145℃の雰囲気で500時間保管された真空断熱材の、熱溶着されていない部分の外包材を切り取り、上記切り取った部分の外包材の酸素透過度を、上記「(3)真空断熱材用外包材の酸素透過度」に記載された酸素透過度の測定方法および測定条件と同じ方法および条件において測定する。以下、このようにして測定された、真空断熱材を145℃の雰囲気で500時間保管した後の外包材の酸素透過度を「高温保管後の酸素透過度」とする場合がある。
本態様における高温保管後の酸素透過度の劣化量は、上述したような方法により測定された外包材の高温保管後の酸素透過度を、真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の酸素透過度と比較した際の、上記真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の酸素透過度からの増加量である。すなわち、上記劣化量は、下記の式で算出することができる。
高温保管後の酸素透過度の劣化量 =(高温保管後の酸素透過度)−(高温保管前の酸素透過度)
(6)貯蔵弾性率
本態様の外包材は、温度変化による貯蔵弾性率の変化が小さいことが好ましい。通常、積層体を構成する各層のうち、1層でも温度変化による貯蔵弾性率の変化量が大きい場合、積層体全体でも温度変化による貯蔵弾性率の変化量が大きくなる傾向にあり、熱による寸法変化が生じやすくなる。本態様の外包材も同様に、貯蔵弾性率が温度変化により大きく変わると、熱による寸法変化が生じやすくなり、その結果、ガスバリア層の劣化が発生しやすくなると推量されるからである。
本態様の外包材の温度変化による貯蔵弾性率の変化が小さいとは、具体的には、本態様の外包材について、動的粘弾性測定(DMA)装置を用いて、引張法により周波数10Hzで貯蔵弾性率を測定したときに、0℃での上記貯蔵弾性率の値に対する100℃での上記貯蔵弾性率の値の割合が25.0%以上であることが好ましく、中でも25.5%以上であることが好ましく、特に26.0%以上であることが好ましい。なお、引張法により測定される貯蔵弾性率のことを「引張貯蔵弾性率値」、上記0℃での貯蔵弾性率の値および100℃での貯蔵弾性率の値のことを、それぞれ「0℃での引張貯蔵弾性率値」および「100℃での引張貯蔵弾性率値」と称する場合がある。
本態様の外包材は、上記割合が大きいほど、0℃での引張貯蔵弾性率値と100℃での引張貯蔵弾性率値との差が小さい、すなわち温度変化による引張貯蔵弾性率の変化量が小さいことを意味する。本態様の外包材は、このような特性を有することで温度変化に対して良好な寸法安定性を示すことができ、寸法変化に伴うガスバリア層の劣化を防ぐことが可能となる。また、ガスバリアフィルムを構成する樹脂基材、その他本態様の外包材を構成する樹脂層は、高温で軟化すると、樹脂基材や上記樹脂層単体が示すガスバリア性能が低下し、その結果、外包材全体のガスバリア性能の低下を引き起こすと推量される。これに対し、本態様の外包材は、温度変化による引張貯蔵弾性率の変化量が小さい、すなわち、外包材に含まれる樹脂基材や樹脂層が熱により軟化しにくいため、高温下でも上記樹脂基材や上記樹脂層自体が有するガスバリア性能を維持することが可能となる。その結果、本態様の外包材は、温度変化に対して良好なガスバリア性能を発揮することができる。
本態様の外包材の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、引張法により周波数10Hzで0℃、100℃のそれぞれの温度で測定する。引張貯蔵弾性率を測定する各温度は±1.0℃の範囲内で許容することが出来る。上記動的粘弾性測定装置としては、例えばユービーエム社製 Rheogel-E4000を用いることができる。測定は、JIS K7244−4:1999(プラスチック−動的機械特性の試験方法 第4部:引張振動‐共振法)に準拠して、以下の条件により行う。まず、引張方向が測定試料の長手方向となるように、チャックに測定試料の両端を取り付け、引張り荷重(静荷重150mg)をかけて、引張りモード正弦波で一定の周波数10Hz、昇温速度5℃/分で0℃から200℃まで引張貯蔵弾性率を測定する。このときの0℃、100℃の各温度での測定値を、それぞれ0℃での引張貯蔵弾性率の値、100℃での引張貯蔵弾性率の値とする。測定に用いる測定試料は、外包材から所望のサイズ試験片をサンプリングし、上記「(1)真空断熱材用外包材の寸法変化率」の項で説明した方法により各試験片からそれぞれ16点の測定試料を採取し、試験片ごとに、測定試料の引張貯蔵弾性率の16点平均値を算出し、更にそれを試験片数で平均化した値を、外包材の貯蔵弾性率とする。具体的には、試験片数N=3のときの計48点の測定試料の引張貯蔵弾性率の平均値を、外包材の貯蔵弾性率とすることが出来る。なお、試験片数がN≧1であり、各試験片における16点の測定試料の引張貯蔵弾性率の平均値が上記の範囲内であることが好ましい。
(測定条件)
・測定試料:40mm(長手方向、チャックによる掴み部分を含む)×5mm(短手方向)の長方形
・測定モード:引張法(正弦波歪み 引張モード)
・昇温速度:5℃/min
・周波数:10Hz
・測定温度範囲:0℃〜200℃
・チャック間距離:20mm
・静荷重:150mg
・歪み量:自動歪み
0℃での引張貯蔵弾性率値(E')に対する100℃での引張貯蔵弾性率値(E'100)の割合は、下記式から求めることが出来る。
0℃での引張貯蔵弾性率値(E')に対する100℃での引張貯蔵弾性率値(E'100)の割合=(E'100/E')×100(%)
(7)外包材構成材料の寸法変化率
上述した寸法変化率を有する外包材を実現するために、本態様において上記外包材を構成する各層には、高温における寸法変化率が低い材料が用いられることが好ましい。外包材を構成する各層が縮むと、近接する上記ガスバリア層にも圧縮応力がかかり、クラックが発生し易くなるため、本態様においては、雰囲気の温度が上昇した際や、高温に維持した際に縮みにくい材料を用いて外包材を構成することが好ましい。また、ガスバリア層に一般的に用いられる金属等の無機物は、雰囲気の温度が上昇すれば寸法が伸び、雰囲気の温度が元に戻れば、元の寸法に戻るのが一般的である。そのため、上記無機物と同様な寸法変化をする材料、すなわち、雰囲気の温度が上昇すれば伸び、雰囲気の温度が維持されれば寸法も維持され、雰囲気の温度が元に戻れば、元の寸法に戻る材料を用いて外包材を構成することが好ましい。
外包材を構成する各層に一般的に用いられる樹脂フィルムの、熱に曝された際の寸法変化率については、それらの樹脂フィルムの製造方法により、ある程度分類することができる。例えば、種々の技術分野において汎用されているナイロンフィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、製造方法が異なる種々の製品が流通しているが、2軸延伸の「PETフィルム」と称される製品であっても、製造工程において2軸が同時に延伸されたか、逐次延伸されたか、2回延伸されたかにより、温度に依る寸法変化率が異なる。したがって、本態様においては、製造方法に由来する配向の違いなどの観点から、高温における寸法変化率が低い材料を選択し、外包材を構成する材料として用いることが好ましい。
上述したような観点から、本態様においては、外包材を構成する各層として、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムが含まれていないことが好ましい。ポリビニルアルコール系フィルムやEVOH樹脂は、酸素透過度が低いフィルムであるため、外包材を構成する各層のフィルムとして頻繁に用いられてきた。しかしながら、これらは高温における寸法変化率、特に収縮率が大きいフィルムであるため、このようなフィルムが外包材に用いられると、外包材全体としての高温における寸法変化率の増大をもたらし、ガスバリア層のクラックの発生につながる可能性があるからである。
中でも、本態様の外包材は、少なくとも上記樹脂基材がEVOH樹脂を含まないことが好ましい。樹脂基材がEVOH樹脂を含む場合、上述したように、高温環境下においてガスバリアフィルムの寸法変化率、収縮率が大きくなり、ガスバリア層にクラック等が発生しやすくなる。また、EVOH樹脂自体が耐熱性に劣り、高温での引張貯蔵弾性率が低下するため、温度変化によりガスバリア性能、特に酸素バリア性能が低下してしまう虞がある。さらに、EVOH樹脂自体の水蒸気バリア性能が低いため、ガスバリア層の劣化による水蒸気バリア性能の低下をEVOH樹脂含有の樹脂基材で補うことが困難な場合があり、温度変化により外包材のガスバリア性能が低下しやすくなるという問題がある。
このような問題に対し、本態様の外包材は、少なくともガスバリアフィルムを構成する樹脂基材がEVOH樹脂を含まないことで、熱による寸法変化に起因したガスバリア層の劣化を抑えることができるため、温度変化に対する寸法安定性およびガスバリア性能を良好にすることが可能となる。
ここで、樹脂基材が「EVOH樹脂を含まない」とは、樹脂基材がEVOH樹脂を全く含まない場合だけでなく、樹脂基材がEVOH樹脂を主成分として含まない場合も含む。樹脂基材が「EVOH樹脂を主成分として含まない」とは、具体的には、樹脂基材中のEVOH樹脂の含有量が50質量%以下であることをいい、中でも25質量%以下であることが好ましく、特に0質量%であることが好ましい。樹脂基材が複数の層で構成された積層体である場合、樹脂基材中のEVOH樹脂の含有量とは、樹脂基材としての上記積層体の全体量に対するEVOH樹脂の含有量とすることができる。樹脂基材中のEVOH樹脂の存在やその含有量は、例えば、赤外線吸収(FT−IR)分析、X線光電子分析装置(XPS)等を用いて特定することが出来る。なお、後述する樹脂基材以外の層が「EVOH樹脂を含まない」ことについても、樹脂基材の場合と同様に規定することが出来る。
また、本態様の外包材が、EVOH樹脂を含む層(EVOH樹脂含有層)を構成に有する場合、上記EVOH樹脂含有層の厚みが、外包材全体の厚み(100%)に対して10%以下であることが好ましく、0%、すなわち外包材が上記EVOH樹脂含有層を構成に含まないことが好ましい。本態様の外包材が上記EVOH樹脂含有層を複数有する場合は、上記EVOH樹脂含有層の厚みの総和が外包材全体の厚みに対して上記の範囲であることが好ましい。上述した熱によりEVOH樹脂含有層が外包材のガスバリア性能に及ぼす影響を抑えることが出来るからである。ここで、EVOH樹脂を含む層とは、EVOH樹脂のみで構成された層の他、EVOH樹脂を主成分として含む層をいい、具体的には、EVOH樹脂の含有量が50質量%より大きい層をいう。また、EVOH樹脂含有層が外包材の構成部材の一部に含まれる場合、具体的には、外包材を構成するガスバリアフィルムにおける樹脂基材が複数層で構成された積層体であり、そのうちの1層がEVOH樹脂含有層である場合、外包材全体の厚みに対する上記積層体中の上記EVOH樹脂含有層単体の厚みが上記の範囲内であることが好ましい。
2.ガスバリアフィルム
上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有するものである。上記ガスバリア層は、通常、上記樹脂基材の少なくとも一方の面上に形成され、上記樹脂基材の両面上にそれぞれ上記ガスバリア層が形成されていてもよい。
外包材のガスバリアフィルムとして、金属箔等が単独で用いられる場合があるが、このような金属箔等は、ガスバリア性能が高いため、真空断熱材内部の真空度を長期間にわたり高く維持することができる。しかしながら、上記金属などの無機物は熱伝導性が高く、ヒートブリッジが発生するため、このようなガスバリアフィルムを有する真空断熱材の熱伝導率を低くすることは困難である。本態様においては、上記問題点に鑑み、ガスバリアフィルムを樹脂基材およびガスバリア層から構成することにより、ガスバリアフィルムに用いられる無機物の量を低減し、上記無機物による熱伝導を抑制することができる。
(1)ガスバリア層
ガスバリア層は、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置される。詳しくは、上記ガスバリア層は、樹脂基材の一方の面に形成され、ガスバリアフィルムのガスバリア性能に主に寄与するものである。ガスバリア層は、所望のガスバリア性能を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、金属または無機化合物を含む層が挙げられる。金属または無機化合物を含む層として、具体的には、金属薄膜、無機化合物膜が挙げられる。ガスバリア層は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。
上記金属薄膜を形成する金属としては、所望のガスバリア性能を発揮できる金属であればよく、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等が挙げられる。
一方、上記無機化合物膜を形成する無機化合物としては、所望のガスバリア性能を発揮できる材料であればよく、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物および酸化珪素亜鉛等から選ばれる1または2以上の無機化合物等が挙げられる。具体的には、珪素(シリカ)、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウ、ムセリウム、および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができる。より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を挙げることができる。上記無機化合物は、単独で用いてもよいし、上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
上記ガスバリア層として用いられる金属薄膜および無機化合物膜は、所望の厚みを有することが出来ればよく、例えば塗布(コーティング)膜であってもよく、蒸着膜であってもよい。中でも、本態様においては、上記ガスバリア層が蒸着膜であることが好ましく、特には、アルミニウム蒸着膜、若しくはアルミニウム酸化物蒸着膜、または珪素酸化物蒸着膜であることが好ましい。これらの蒸着膜は、後述する樹脂基材との密着性が高く、ガスバリア層として用いた際に高いガスバリア性能を発揮することができるからである。
ガスバリア層の厚みは、所望のガスバリア性能を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、ガスバリア層の種類にもよるが、例えば、5nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、中でも10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。ガスバリア層の厚みが上記範囲に満たないと、製膜が不十分となり所望のガスバリア性能を示すことができない場合があり、上記範囲を超えると、クラックが発生しやすくなり可撓性が低下するおそれや、ガスバリア層が金属薄膜である場合、本態様の外包材を用いて形成された真空断熱材において、ヒートブリッジが生じるおそれがあるからである。
ガスバリア層は、単層であってもよく、合計の厚みが上記範囲内となるように2つ以上を積層してもよい。2つ以上のガスバリア層を用いる場合は、同一組成のガスバリア層を組み合わせてもよく、異なる組成のガスバリア層を組み合わせてもよい。また、上記ガスバリア層は、ガスバリア性能および他の層との密着性の向上を図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
樹脂基材上にガスバリア層を形成する方法としては、ガスバリア層の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。ガスバリア層が金属薄膜であれば、例えば、物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法等の乾式製膜法を用いて樹脂基材上に製膜する方法、具体的には、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法等を用いることができる。また、既製の金属薄膜を用い、樹脂基材と予め加熱した金属薄膜とを熱圧着させる方法、樹脂基材または金属薄膜上に接着剤層を介して貼合する方法等が挙げられる。一方、ガスバリア層が無機化合物膜であれば、例えば、PVD法やCVD法等の乾式製膜法を用いて、樹脂基材上に無機化合物膜を形成することができる。PVD法およびCVD法による具体的なガスバリア層の製膜方法については、例えば、特開2011−5835号公報に開示される方法を用いることができる。
(2)樹脂基材
樹脂基材は、上記ガスバリア層を支持可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、樹脂フィルムや樹脂シートが好適に用いられる。樹脂基材が樹脂フィルムである場合、上記樹脂フィルムは未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されたものであってもよい。上記樹脂基材は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。
樹脂基材に用いられる樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体およびそのケン化物、各種のナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。本態様においては、上記の樹脂の中でもPET、PBT、ナイロン等がより好適に用いられる。
上記「1.真空断熱材用外包材の特性、(7)外包材構成材料の寸法変化率」の項において記載したように、同じ「PETフィルム」と称される製品であっても、製造方法により、高温における寸法変化率は異なる。本態様においては、上記樹脂基材として用いられるPETフィルムの熱による寸法変化率は、雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させた際の寸法変化率が1%以下であり、雰囲気の温度を145℃に1時間保持した際の寸法変化率が0.5%以下であり、雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の寸法変化率が1%以下の範囲内であることが好ましい。また、樹脂基材の高温保持前後の寸法変化率は、2%以下であることが好ましい。そのようなPETフィルムを樹脂基材に用いることにより、高温に曝された際に上記ガスバリア層にクラックが発生することを抑制することができるからである。上述したような観点から、上記樹脂基材には、二軸延伸されたポリビニルアルコール系フィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムが用いられないことが好ましい。これらは高温における寸法変化率、特に収縮率が大きいフィルムであるため、外包材全体としての高温における寸法変化率の増大をもたらす可能性があるからである。
上記樹脂基材は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH樹脂)を含まないことが好ましい。高温において樹脂基材の寸法が大きく変化することで、ガスバリア層の劣化が生じやすくなり、温度変化に対する外包材の寸法安定性、ガスバリア性が悪くなる虞があるからである。詳しい理由および樹脂基材が「EVOH樹脂を含まない」ことの定義については既に述べた通りである。
上記樹脂基材には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。
上記樹脂基材は、表面処理が施されていてもよい。ガスバリア層との密着性を向上させることができるからである。上記表面処理としては、例えば、特開2014−180837号公報に開示される酸化処理、凹凸化処理(粗面化処理)、易接着コート処理等を挙げることができる。
樹脂基材の厚みは、特に限定されないが、例えば6μm〜200μmの範囲内、より好ましくは9μm〜100μmである。また、樹脂基材は、単層であってもよく、複数の樹脂層が積層されて成る多層体であってもよい。上記多層体において各樹脂層は、異なる樹脂で構成されていてもよく、同一の樹脂で構成されていてもよい。
(3)オーバーコート層
本態様においては、少なくとも1つの上記ガスバリアフィルムが、上記ガスバリア層の、上記樹脂基材と反対側の面側を覆うように、オーバーコート層を有することが好ましい。上記オーバーコート層を有することにより、上記ガスバリアフィルムのガスバリア性能を向上させることができるからである。このようなオーバーコート層は、特に限定されるものではなく、一般にオーバーコート剤として用いられているものを用いることができる。例えば、上記オーバーコート層の主成分として、有機部分および無機部分を含む混合化合物を用いることができる。
上記混合化合物としては、種々のものがあるが、例えば、株式会社クラレ社製のクラリスタCF(登録商標)などのリン酸アルミナ系の混合化合物、凸版印刷株式会社製のベセーラ(登録商標)などのアクリル酸亜鉛系の混合化合物や、樹脂および無機層状化合物とからなるガスバリア性樹脂組成物や、一般式R M(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる原料液によるゾルゲル化合物などを用いることができる。上記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂、天然高分子系のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などが挙げられる。なお、上記リン酸アルミナ系の混合化合物については特許第4961054号公報、上記アクリル酸亜鉛系の混合化合物については特許第4373797号公報、上記樹脂および無機層状化合物とからなるガスバリア性樹脂組成物については特開平11−257574号公報に開示されているものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本態様においては、上記混合化合物の中でも、一般式R M(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、例えば、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる化合物(以下、「ゾルゲル化合物」とする場合がある。)をオーバーコート層として用いることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、上記樹脂基材等の熱による劣化を抑制することができるからである。
上記混合化合物は、例えば上記ガスバリアフィルムの上記ガスバリア層の上に塗布して、20℃〜180℃の範囲内、かつ上記樹脂基材の融点以下の温度で30秒〜10分間加熱処理することによって、ガスバリア層の上記樹脂基材と反対側の面側を覆うようにオーバーコート層を形成することができる。
また、上記混合化合物を上記ガスバリアフィルムの上記ガスバリア層の上に2回以上塗布して、20℃〜180℃の範囲内、かつ、上記樹脂基材の融点以下の温度で30秒〜10分間加熱処理することによって、オーバーコート層を2つ以上形成してもよい。
以下、上記ゾルゲル化合物を主成分とするオーバーコート層について、詳細に説明する。
(a)ゾルゲル化合物の金属酸化物成分
上記一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
上記一般式R1 nM(OR2m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
上記一般式R1 nM(OR2m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
上記一般式R1 nM(OR2m中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。本態様において上記金属原子はケイ素であることが好ましい。この場合、本態様で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1 nM(OR2mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等を例示することができる。
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252、その他等を使用することができる。本態様では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
また、本態様において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン、その他等を使用することができる。
本態様では、上記一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH34、テトラエトキシジルコニウムZr(OC254、テトライソプロポキシジルコニウムZr(iso−OC374、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC494、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH34、テトラエトキシチタニウムTi(OC254、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC374、テトラnブトキシチタニウムTi(OC494、その他等を例示することができる。
また、上記一般式R1 nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH34、テトラエトキシアルミニウムAl(OC254、テトライソプロポキシアルミニウムAl(iso−OC374、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC494、その他等を使用することができる。
本態様では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるオーバーコート層の靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲内である。10質量部を越えると、形成されるオーバーコート層が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、ガスバリア層を被覆した際にオーバーコート層が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるオーバーコート層の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲内である。5質量部を越えると、形成されるオーバーコート層の脆性が大きくなり、ガスバリア層を被覆した際に、オーバーコート層が剥離し易くなる場合がある。
(b)ゾルゲル化合物の有機ポリマー成分
本態様で使用するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン−ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数10%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。本態様では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン−ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6の範囲内であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5質量部〜500質量部の範囲内であり、好ましくは20質量部〜200質量部の範囲内の配合割合である。500質量部を越えると、オーバーコート層の脆性が大きくなり、得られるオーバーコート層の耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下する場合がある。
上記ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0モル%〜50モル%の範囲内、好ましくは、20モル%〜45モル%の範囲内であることが好ましい。このようなエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
(c)その他
上記ゾルゲル化合物を主成分とする上記オーバーコート層を形成するための原料液を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
本態様で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1質量部〜20質量部の範囲内である。20質量部以上を使用すると、形成されるオーバーコート層の剛性と脆性とが大きくなり、また、オーバーコート層の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
また、ゾル−ゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本態様においては、特に、N、N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01質量部〜1.0質量部の範囲内である。
また、上記ゾルゲル化合物の作成において用いられる「酸」としては、上記ゾル−ゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸などの有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001モル〜0.05モルの範囲内を使用することが好ましい。
更に、上記ゾルゲル化合物の作成においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1モル〜100モルの範囲内、好ましくは、0.8モル〜2モルの範囲内の割合の水を用いることができる。水の量が2モルを越えると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、オーバーコート層のガスバリア性を改善することができなくなる。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
更に、上記ゾルゲル化合物の作成において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗布液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン−ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン−ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体、酸およびゾル−ゲル法触媒の合計量100質量に対して30質量部〜500質量部の範囲内である。
(d)ゾルゲル化合物を主成分とするオーバーコート層の形成方法
本態様において、上記ゾルゲル化合物を主成分とするオーバーコート層は、以下の方法で製造することができる。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、原料液を調製する。混合により、原料液(塗布液)は、重縮合反応が開始および進行する。
次いで、上記ガスバリアフィルムの上記ガスバリア層の上に、常法により、上記の原料液を塗布し、および乾燥する。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン−ビニルアルコール共重合体等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2つ以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
次いで、上記原料液を塗布した樹脂基材を50℃〜300℃の範囲内、かつ樹脂基材の融点以下の温度、好ましくは、70℃〜200℃の範囲内の温度で、0.05分〜60分間加熱処理する。これによって、上記ガスバリア層の上に、上記原料液によるオーバーコート層を1つないし2つ以上形成したガスバリアフィルムを製造することができる。
なお、エチレン−ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体との混合組成物を用いて得られたオーバーコート層は、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂単独を主成分とするオーバーコート層を設ける場合には、そのオーバーコート層の上に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有するオーバーコート層を積層すると、熱水処理後のガスバリア性を向上させることができる。
更に、エチレン−ビニルアルコール共重合体単独を主成分とするオーバーコート層、および、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体との混合組成物を主成分とするオーバーコート層の両方またはいずれか一方を複数積層しても、ガスバリアフィルムのガスバリア性能の向上に有効な手段となる。
上記オーバーコート層のより詳細な製造方法等については、特許第5568897号公報に開示されているものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
(e)その他
上記オーバーコート層は、上述したように、EVOH樹脂を含んでいても良いが、EVOH樹脂を含まないことが好ましい。温度変化によりオーバーコート層の寸法が大きく変化しやすくなり、外包材の寸法安定性の低下や、ガスバリア層の劣化によるガスバリア性能の低下が生じやすくなる虞があるからである。詳しい理由は先に説明した通りである。なお、オーバーコート層がEVOH樹脂を含まないとは、オーバーコート層がEVOH樹脂を全く含まない場合だけでなく、オーバーコート層がEVOH樹脂を主成分として含まない場合も含み、このときの具体的なEVOH樹脂の含有量については既に述べた通りである。
(4)ガスバリアフィルム
上記ガスバリアフィルム単独(1つ)のガスバリア性能としては、酸素透過度が0.1cc/(m・day・atm)以下であることが好ましく、中でも0.05cc/(m・day・atm)以下であることが好ましい。また、水蒸気透過度が0.1g/(m・day)以下であることが好ましく、中でも0.05g/(m・day)以下であることが好ましい。上記ガスバリアフィルムの酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、外部より浸透した水分やガス等を真空断熱材の内部の芯材まで浸透しにくくすることができる。また、このようなガスバリア性能を有するガスバリアフィルムを複数用いること等により、外包材としてのガスバリア性能をより向上させることができる。なお、上記酸素透過度および水蒸気透過度は、上記「1.真空断熱材用外包材の特性」の項で説明したものと同様の方法により測定することができる。
本態様においては、上記外包材が上述したようなガスバリアフィルムを2つ以上有することが好ましい。外包材のガスバリア性能をより向上させることができるからである。外包材が2つ以上のガスバリアフィルムを有する場合、ガスバリアフィルムのガスバリア層の材質、樹脂基材の材質、オーバーコート層の有無等、それぞれのガスバリアフィルムの構成は同じでも、異なっていてもよい。同じ機能や特性を有するガスバリアフィルムを複数使用してもよく、また、異なる機能や特性を有するガスバリアフィルムを、それぞれの機能や特性に応じた配置において使用することにより、各ガスバリアフィルムの機能や特性を発揮させることができる。
例えば、上記外包材が2つのガスバリアフィルムを有し、かつ、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)の樹脂基材が用いられる場合、上記EVOHの樹脂基材は、真空断熱材とした際に、他のガスバリアフィルムよりも内側に配置されることが好ましい。EVOHは、酸素透過度は極めて低いが、水蒸気透過度は比較的高く、上記EVOHの酸素バリア性能は水蒸気により劣化されやすい。そのため、他のガスバリアフィルムを真空断熱材の外側に配置してEVOHに到達する水蒸気の量が制限された配置とすることにより、EVOHの酸素バリア性能をより発揮させることができるからである。なお、高温における寸法変化率、特に収縮率の観点から、上記ガスバリアフィルムには、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリビニルアルコール系フィルムが用いられないことが好ましい。なお上記ガスバリアフィルムに、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)が用いられないとは、ガスバリアフィルムが、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂を含まないことをいう。
また、上記樹脂基材およびガスバリア層の順序は特に限定されるものではなく、外包材に共に用いられる、ガスバリアフィルム以外の各層の層構成や、ガスバリアフィルムの数などに応じて適宜設定することができる。例えば、図1に例示されているように、外包材10を用いて真空断熱材を形成した際に、ガスバリア層4が樹脂基材3の内側になるように配置されてもよい。すなわち、本態様の外包材10は、熱溶着可能なフィルム1とガスバリアフィルム2とを有し、ガスバリアフィルム2が熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有していても良い。また図3(a)に例示されているように、外包材10が保護フィルム5を有する場合などは、ガスバリア層4が樹脂基材3の外側になるように配置されてもよい。すなわち、本態様の外包材10は、熱溶着可能なフィルム1と、熱溶着可能なフィルム1の一方の面に配置されたガスバリアフィルム2と、ガスバリアフィルム2の熱溶着可能なフィルム1とは反対側の面に配置された保護フィルム5と、を有し、ガスバリアフィルム2が熱溶着可能なフィルム1側から樹脂基材3とガスバリア層4とをこの順に有していても良い。
上記外包材10が2つ以上のガスバリアフィルム2を有する場合は、図3(b)に例示されているように、隣接する2つのガスバリアフィルムのそれぞれのガスバリア層4が向き合うように配置されてもよく、図3(c)に例示されているように、隣接する2つのガスバリアフィルムの両方のガスバリア層4が樹脂基材3の内側になるように配置されてもよく、図3(d)に例示されているように、隣接する2つのガスバリアフィルムの両方のガスバリア層4が樹脂基材3の外側になるように配置されてもよい。
すなわち、本態様の外包材10は、図3(b)で示すように、熱溶着可能なフィルム1と、熱溶着可能なフィルム1の一方の面に配置された第1ガスバリアフィルム2aと、第1ガスバリアフィルム2aの熱溶着可能なフィルム1とは反対側の面に配置された第2ガスバリアフィルム2bと、第2ガスバリアフィルム2bの第1ガスバリアフィルム2aとは反対側の面に配置された保護フィルム5と、を有し、第1ガスバリアフィルム2aは、熱溶着可能なフィルム1側から樹脂基材3とガスバリア層4とをこの順に有し、第2ガスバリアフィルム2bは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有していても良い。
また、本態様の外包材10は、図3(c)で示すように、熱溶着可能なフィルム1と、熱溶着可能なフィルム1の一方の面に配置された第1ガスバリアフィルム2aと、第1ガスバリアフィルム2aの熱溶着可能なフィルム1とは反対側の面に配置された第2ガスバリアフィルム2bと、第2ガスバリアフィルム2bの第1ガスバリアフィルム2aとは反対側の面に配置された保護フィルム5と、を有し、第1ガスバリアフィルム2aは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有し、第2ガスバリアフィルム2bは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有していても良い。
さらに本態様の外包材10は、図3(d)で示すように、熱溶着可能なフィルム1と、熱溶着可能なフィルム1の一方の面に配置された第1ガスバリアフィルム2aと、第1ガスバリアフィルム2aの熱溶着可能なフィルム1とは反対側の面に配置された第2ガスバリアフィルム2bと、第2ガスバリアフィルム2bの第1ガスバリアフィルム2aとは反対側の面に配置された保護フィルム5と、を有し、第1ガスバリアフィルム2aは、熱溶着可能なフィルム1側から樹脂基材3とガスバリア層4とをこの順に有し、第2ガスバリアフィルム2bは、熱溶着可能なフィルム1側から樹脂基材3とガスバリア層4とをこの順に有していても良い。
本態様の外包材は、図3(e)および3(f)に例示されているように、真空断熱材の最外層にガスバリアフィルム2cが配置される場合は、ガスバリア層4を保護する観点から、最外層のガスバリアフィルム2cは、ガスバリア層4が樹脂基材3の内側になるように配置されることが好ましい。
すなわち、本態様の外包材10は、図3(e)で示すように、熱溶着可能なフィルム1と、熱溶着可能なフィルム1の一方の面に配置された第1ガスバリアフィルム2aと、第1ガスバリアフィルム2aの熱溶着可能なフィルム1とは反対側の面に配置された第2ガスバリアフィルム2bと、第2ガスバリアフィルム2bの第1ガスバリアフィルム2aとは反対側の面に配置された第3ガスバリアフィルム2cと、を有し、第1ガスバリアフィルム2aは、熱溶着可能なフィルム1側から樹脂基材3とガスバリア層4とをこの順に有し、第2ガスバリアフィルム2bは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有し、第3ガスバリアフィルム2cは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有していても良い。
また、本態様の外包材10は、図3(f)で示すように、熱溶着可能なフィルム1と、熱溶着可能なフィルム1の一方の面に配置された第1ガスバリアフィルム2aと、第1ガスバリアフィルム2aの熱溶着可能なフィルム1とは反対側の面に配置された第2ガスバリアフィルム2bと、第2ガスバリアフィルム2bの第1ガスバリアフィルム2aとは反対側の面に配置された第3ガスバリアフィルム2cと、を有し、第1ガスバリアフィルム2aは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有し、第2ガスバリアフィルム2bは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有し、第3ガスバリアフィルム2cは、熱溶着可能なフィルム1側からガスバリア層4と樹脂基材3とをこの順に有していても良い。
なお、最外層のガスバフィルムは、本態様の外包材における保護フィルムとして機能することができる。
本態様の外包材は、中でも、熱溶着可能なフィルムの一方の面と接するガスバリアフィルムが、上記熱溶着可能なフィルム側から、樹脂基材と、ガスバリア層とをこの順に有することが好ましい。熱溶着可能なフィルムと樹脂基材とが接することで、熱溶着可能なフィルムの熱変形によりガスバリア層に係る応力を樹脂基材で緩衝し、熱溶着可能なフィルムの熱による寸法変化に起因して生じるガスバリア層の劣化を抑制することが出来るからである。
また、本態様の外包材は、熱溶着可能なフィルムと、熱溶着可能なフィルムの一方の面に配置された第1ガスバリアフィルムと、第1ガスバリアフィルムの熱溶着可能なフィルムとは反対側の面に配置された第2ガスバリアフィルムと、を少なくとも有し、第1ガスバリアフィルムは、熱溶着可能なフィルム側から樹脂基材とガスバリア層とをこの順に有し、第2ガスバリアフィルムは、熱溶着可能なフィルム側からガスバリア層と樹脂基材とをこの順に有することが好ましい。外部応力が生じた際に、第1ガスバリアフィルムの樹脂基材と第2ガスバリアフィルムの樹脂基材とが異なる場合、第1ガスバリアフィルムのガスバリア層に係る応力と第2ガスバリアフィルムのガスバリア層に係る応力とが異なるため、双方のガスバリア層の劣化がより生じやすくなる可能性がある。また、第1ガスバリアフィルムのガスバリア層と第2ガスバリアフィルムのガスバリア層との間に一方のガスバリアフィルムの樹脂基材が介在する場合、介在する上記樹脂基材の熱応力による寸法変化により、他方のガスバリアフィルムのガスバリア層の劣化がより生じやすくなる可能性がある。これに対し、双方のガスバリアフィルムのガスバリア層が接触(対向)するように配置する配置態様は、外部応力によるガスバリア層の劣化を抑制することが出来、また、双方のガスバリア層間に樹脂基材が介在しないため、介在する上記樹脂基材の熱応力による寸法変化による応力の影響およびガスバリア層の劣化を抑えることが出来る。
なお、図3は、本態様の外包材の他の例を示す概略断面図である。真空断熱材を形成する際は、通常、それぞれの熱溶着可能なフィルム1が向き合うように、2枚の外包材が配置される。上述した図1、図3に例示されている外包材10は、熱溶着可能なフィルム1が最下層に配置されているため、真空断熱材を形成した際は、これらの図面における下側の層が真空断熱材の内側となり、上側の層が真空断熱材の外側に配置されることとなる。
3.熱溶着可能なフィルム
本態様における熱溶着可能なフィルムは、上記外包材を用いて真空断熱材を形成する際に、芯材と接する部位である。また、対向する外包材同士の端部を熱溶着する熱溶着面を形成する部位である。
上記熱溶着可能なフィルムの材料としては、加熱によって溶融し、融着することが可能であることから熱可塑性樹脂が好ましく、例えば直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンや未延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、テトラフルオロエチレン(C24)・エチレン(C24)共重合体(ETFE)樹脂等が挙げられる。
本態様においては、熱溶着可能なフィルムの設定融点に応じて、上記の樹脂から適宜選択することができる。例えば、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)は、汎用性が高く、また、比較的低温において熱溶着することができる。ただし、LLDPEは融点が低い為、熱に因るガスバリアフィルムの劣化が生じる可能性がある。また、PP樹脂、EVOH樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、ETFE樹脂、PPS樹脂等の融点が145℃以上の樹脂は、上記樹脂を用いて形成される熱溶着可能なフィルムの融点を145℃以上に設定することが可能であるため、熱溶着可能なフィルムの熱劣化を防ぐことができ、より高温環境下での使用に耐え得る真空断熱材を得ることができる。
なお、外包材の使用環境温度にもよるが、高温における寸法変化率、特に収縮率の観点から、上記熱溶着可能なフィルムには、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)が用いられないことが好ましい。すなわち、上記熱溶着可能なフィルムがEVOH樹脂を含まないことが好ましい。温度変化により熱溶着可能なフィルムの寸法が大きく変化することで、ガスバリア層の劣化が生じやすくなり、温度変化に対する外包材の寸法安定性、ガスバリア性が悪くなる虞があるからである。詳しい理由および「EVOH樹脂を含まない」ことの詳細は、先に説明した通りである。
上記熱溶着可能なフィルムの融点は、50℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは145℃以上である。また、上記融点は、300℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは290℃以下、より好ましくは280℃以下である。
上記熱溶着可能なフィルムの融点としては、例えば50℃〜300℃の範囲内であることが好ましく、中でも80℃〜250℃の範囲内、特に、100℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。熱溶着可能なフィルムの融点が上記範囲に満たないと、本態様の外包材を用いて形成された真空断熱材の使用環境下において、外包材の封止面が剥離する可能性がある。また、熱溶着可能なフィルムの融点が上記範囲を超えると、外包材を高温で熱溶着する必要があるため、外包材として共に用いられるガスバリアフィルムや保護フィルム等が熱に因り劣化される可能性がある。
また、上記熱溶着可能なフィルムは、上記融点を145℃以上とすることで、本態様の外包材が高温環境下に長時間曝されても、熱溶着可能なフィルム自体の熱劣化および寸法変化を抑制することができ、熱溶着可能なフィルムの寸法変化に起因した外包材全体での寸法変化の抑制を図ることが可能となる。さらに、熱溶着可能なフィルムの融点が高い程、本態様の外包材を真空断熱材の製造に用いた際に、周囲の環境温度に晒されることによる封止面の剥離を抑えることができる。このため、より高温環境下での使用に耐え得る真空断熱材を得ることができる。このような観点から設定される上記熱溶着可能なフィルムの融点としては、例えば145℃〜300℃の範囲内とすることができ、145℃〜290℃の範囲内、145℃〜280℃の範囲内とすることができる。
外包材における上記熱溶着可能なフィルムの融点は、下記の方法により測定することができる。まず、外包材から熱溶着可能なフィルムを剥離して約10mgの測定試料を得る。この測定試料をアルミニウム製のセルに入れ、示差走査熱量計(NETZSCH社製 DSC204)を用いて、窒素雰囲気下で20℃から昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で20℃まで冷却し、その温度で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で300℃まで再度昇温する(2度目の昇温)。2度目の昇温の際に観測される融点での接線と、上記融点より低温側のDSC曲線の基線との交点を、熱溶着可能なフィルムの融点とすることができる。
また、上記熱溶着可能なフィルムは、上述した樹脂の他に、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、有機充填剤等の他の材料を含んでいてもよい。
上記熱溶着可能なフィルムの厚みは、例えば20μm〜100μmの範囲内が好ましく、中でも25μm〜90μmの範囲内が好ましく、特に30μm〜80μmの範囲内が好ましい。熱溶着可能なフィルムの厚みが上記範囲よりも大きいと、外包材のガスバリア性能が低下する場合等があり、厚みが上記範囲よりも小さいと、所望の接着力が得られない場合がある。
4.保護フィルム
本態様の外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムの他に保護フィルムを有することが好ましい。上記保護フィルムの外包材における配置位置は特に限定されるものではないが、上記ガスバリアフィルムの上記熱溶着可能なフィルムとは反対側の面側など、真空断熱材を形成する際に最外層(最表層)となる位置に、保護フィルムが配置されていることが好ましい。
上記保護フィルムとしては、熱溶着可能なフィルムよりも高融点の樹脂を用いたものであればよく、シート状でもフィルム状でもよい。このような保護フィルムとして、例えば、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を構成材料とするシートまたはフィルム等が挙げられ、中でも保護フィルムの構成材料として、ナイロン系樹脂やPET、特にはナイロン系樹脂が好適に用いられる。
上記「1.真空断熱材用外包材の特性、(7)外包材構成材料の寸法変化率」の項において記載したように、同じ「ナイロンフィルム」と称される製品であっても、製造方法により、高温における寸法変化率は異なる。本態様においては、ナイロンフィルムを保護フィルムとして用いる場合、上記ナイロンフィルムの熱による寸法変化率は、雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させた際の寸法変化率が2%以下であり、雰囲気の温度を145℃に1時間保持した際の寸法変化率が0.5%以下であり、雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の寸法変化率が0.5%以下の範囲内であることが好ましい。また、高温保持前後の寸法変化率は、2%以下であることが好ましい。そのようなナイロンフィルムを保護フィルムとして用いることにより、高温に曝された際にナイロンフィルム自体のクラックが生を抑制することができるからである。
また、上記保護フィルムには、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)が用いられないことが好ましい。つまり、上記保護フィルムはEVOH樹脂を含まないことが好ましい。EVOH樹脂は高温における寸法変化率、特に収縮率が大きい材料であるため、外包材全体としての高温における寸法変化率の増大をもたらす可能性があるからである。また、保護フィルムがEVOH樹脂を含むことで、ガスバリア層の劣化による外包材全体のガスバリア性能の低下が生じる可能性があるからである。詳しい理由および「EVOH樹脂を含まない」ことの詳細は、先に説明した通りである。
上記保護フィルムにPETフィルムが用いられる場合は、上記「2.ガスバリアフィルム、(2)樹脂基材」の項において、高温における寸法変化率として挙げられている好ましい範囲内の寸法変化率を有するPETフィルムが用いられることが好ましい。
上記保護フィルムは、本態様の外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内部を保護するのに十分な強度を有し、耐熱性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性等に優れたものであることが好ましい。また、上記保護フィルムは、酸素バリア性能や水蒸気バリア性能などの、ガスバリア性能を有していることが好ましい。このようなガスバリア性能は、保護フィルムに用いられる樹脂フィルム等により発揮されるものであっても、樹脂フィルム上に形成された、ガスバリア性能を有する膜等により発揮されるものであってもよい。上記ガスバリア性能を有する膜については、上記「2.ガスバリアフィルム」の項において説明されているガスバリア層やオーバーコート層と同様のものを用いることができる。
上記保護フィルムは、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層させて多層としたものであってもよい。また上記保護フィルムは、他の層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
上記保護フィルムの厚みは、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを保護することができる厚さであれば特に限定されるものではないが、一般的に5μm〜80μmの範囲内程度である。
上記保護フィルムは、一方の面にガスバリア層を有していても良い。すなわち、上記保護フィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の一方の面に配置されたガスバリア層を有するガスバリアフィルムであってもよい。この様な構成を有することで、保護フィルム単体でのガスバリア性能を向上させることが出来るからである。上記ガスバリア層については、上述した「2.ガスバリアフィルム」の項で説明したガスバリア層と同様とすることができる。
本態様の外包材において、一方の面にガスバリア層を有する保護フィルムを用いる場合、上記保護フィルムは、上記保護フィルムの上記ガスバリア層が配置された面が熱溶着可能なフィルム側となるようにして配置されることが好ましい。
5.真空断熱材用外包材
上記外包材の厚みとしては、所望のガスバリア性能や強度を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、30μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも50μm〜150μmの範囲内であることが好ましい。また、上記外包材の引張強度としては、50N以上であることが好ましく、なかでも80N以上であることが好ましい。本態様の外包材を用いて形成された真空断熱材を屈曲させる際に破断等が生じにくくなるためである。なお、上記引張強度は、JIS Z1707に基づいて測定した値である。
上記外包材の積層方法としては、所望の構成の外包材を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、予め成膜した各層を上述した層間接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション法や、熱溶融させたガスバリアフィルムの各材料をTダイ等を用いて押出しして貼り合せ、得られた積層体に層間接着剤を介して熱溶着可能なフィルムを貼り合せる方法等が挙げられる。
(A−2)第2態様
以下、本発明における第2態様の真空断熱材用外包材について、説明する。
本態様の真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有する真空断熱材用外包材であって、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度が0.01g/(m・day)以下であり、温度100℃、湿度0%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の酸素透過度が0.05cc/(m・day・atm)以下であり、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量が0.01g/(m・day)以下であることを特徴とするものである。
本態様においては、外包材の水蒸気透過度および酸素透過度が特定の範囲内であり、かつ、高温保管後の水蒸気透過度の劣化量が特定の範囲であるため、高温においても高いガスバリア性能を維持することができる外包材とすることができる。したがって、上記外包材を、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。
上記「温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の外包材の水蒸気透過度の劣化量」、すなわち、高温保管後の水蒸気透過度の劣化量は、外包材の高温保管後の水蒸気透過度を、真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の水蒸気透過度と比較した際の、上記真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の水蒸気透過度からの増加量であり、その測定方法や、より好ましい値等については、上記「(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(4)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量」の記載と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、上記外包材の水蒸気透過度については、上記「(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(2)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度」の記載と、上記外包材の酸素透過度については、上記「(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(3)真空断熱材用外包材の酸素透過度」の記載と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本態様においては、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記外包材の酸素透過度の劣化量、すなわち、高温保管後の酸素透過度の劣化量が0.1cc/(m・day・atm)以下であることが好ましい。高温保管後の酸素透過度の劣化量が上記範囲内である外包材は、高温な環境に曝された場合でも酸素透過度を低く維持することができるため、高温な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。上記高温保管後の酸素透過度の劣化量は、外包材の高温保管後の酸素透過度を、真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の酸素透過度と比較した際の、上記真空断熱材の作製および高温雰囲気下における保管をしていない外包材の酸素透過度からの増加量であり、その測定方法や、より好ましい値等については、上記「(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(5)真空断熱材用外包材の酸素透過度の劣化量」の記載と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記熱溶着可能なフィルムやガスバリアフィルムなど、本態様の外包材を構成する各層については、上記「(A−1)第1態様」の記載と同様であるため、ここでの説明は省略する。
B.真空断熱材
次に、本発明の真空断熱材について説明する。本発明の第1態様の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とするものである。
また、本発明の第2態様の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度が0.01g/(m・day)以下であり、温度100℃、湿度0%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の酸素透過度が0.05cc/(m・day・atm)以下であり、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量が0.01g/(m・day)以下であることを特徴とするものである。
本発明の真空断熱材については、既に説明した図2に例示するものと同様とすることができる。本発明によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材とすることができる。
本発明の真空断熱材は、真空断熱材用外包材および芯材を少なくとも有するものである。
以下、本発明の真空断熱材について、構成ごとに説明する。
1.真空断熱材用外包材
本発明の真空断熱材用外包材は、上記芯材を封入するものである。また、上記真空断熱材用外包材は、上述の本発明の真空断熱材用外包材である。このような真空断熱材用外包材については、「A.真空断熱材用外包材」の「(A−1)第1態様」または「(A−2)第2態様」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、封入するとは、上記外包材を用いて形成された袋体の内部に密封されることをいうものである。
2.芯材
本発明における芯材は、上記真空断熱材用外包材により封入されるものである。上記芯材としては、熱伝導率の低いものであることが好ましい。上記芯材は、その空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材であることが好ましい。
上記芯材を構成する材料としては、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。
上記粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。なかでも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
また、上記発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等があり、これらのなかでも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
また、上記繊維体としては、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で好ましい。
上記芯材は、上述した材料を単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
3.真空断熱材
本発明の真空断熱材は、上記真空断熱材用外包材で封入された内部を減圧密封し、真空状態としたものである。上記真空断熱材内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材内部の真空度を上記範囲内とすることにより、内部に残存する空気の対流による熱伝導を小さいものとすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となる。
また、上記真空断熱材の熱伝導率は低いことが好ましく、例えば、上記真空断熱材の25℃における熱伝導率(初期熱伝導率)は、5mW/m・K以下であることが好ましく、中でも4mW/m・K以下であることが好ましく、特に3mW/m・K以下であることが好ましい。真空断熱材の熱伝導率を上記範囲とすることにより、上記真空断熱材は熱を外部に伝導しにくくなることから、高い断熱効果を奏することができるからである。なお、上記熱伝導率は、JIS A1412−2:1999(熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法))に準拠し、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名:HC−074、英弘精機製)を挙げることができる。測定は、以下の条件で、測定試料の両方の主面が上下方向を向くように配置して行う。熱伝導率測定前に、測定試料の温度が測定環境温度と等しくなっているかを、熱流計などを使用して予め測定しておくことが好ましい。1つの条件では少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件の熱伝導率の値とする。
(熱伝導率の測定条件)
・測定試料:幅29±0.5cm、長さ30±0.5cm
・試験の定常に要する時間:15分以上
・標準板の種類:EPS
・高温面の温度:30℃
・低温面の温度:10℃
・測定試料の平均温度:20℃
上記真空断熱材はガスバリア性能が高いことが好ましい。外部からの水分や酸素等の侵入による真空度の低下を防止することができるからである。上記真空断熱材のガスバリア性能については、上述した「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性」の項で説明した酸素透過度および水蒸気透過度と同様であるため、ここでの説明は省略する。
4.製造方法
本発明の真空断熱材の製造方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、予め上述の本発明の外包材を準備し、2枚の上記外包材をそれぞれの熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り三方の外包材同士の端部を熱溶着することで、2枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材が得られる。
また、上記製造方法は、1枚の上記外包材を熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り二方の上記外包材同士の端部を熱溶着することで、1枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材を得る方法であっても良い。
5.用途
本発明の真空断熱材は、熱伝導率が低く、高温下においても断熱性および耐久性に優れるものである。従って、上記真空断熱材は、熱源を有し発熱する部位や、外部から加熱されることにより高温となる部位に用いることができる。本発明の用途としては、例えば、「C.真空断熱材付き物品」で説明する物品、機器、クーラーボックス、輸送用コンテナ、水素等の燃料タンク、システムバス、温水タンク、保温庫、住宅壁、自動車、飛行機、船舶、列車等が挙げられる。
C.真空断熱材付き物品
次に、本発明の真空断熱材付き物品について説明する。本発明の第1態様の真空断熱材付き物品は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とするものである。
また、本発明の第2態様の真空断熱材付き物品は、熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、上記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度が0.01g/(m・day)以下であり、温度100℃、湿度0%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の酸素透過度が0.05cc/(m・day・atm)以下であり、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量が0.01g/(m・day)以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、物品に備わる上記真空断熱材が、「A.真空断熱材用外包材」の項で説明した外包材を用いた真空断熱材であり、高温においても長期間断熱性能を維持することができるため、良好な断熱性能を有する物品とすることができる。
ここで、熱絶縁領域とは、真空断熱材により熱絶縁された領域であり、例えば、保温や保冷された領域、熱源や冷却源を取り囲んでいる領域、熱源や冷却源から隔離されている領域である。これらの領域は、空間であっても物体であってもよい。
物品として、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、保温器、保冷器等の電気機器、保温容器、保冷容器、輸送容器、コンテナ、貯蔵容器等の容器、車両、航空機、船舶等の乗り物、家屋、倉庫等の建築物、壁材、床材等の建築資材等が挙げられる。
本発明の真空断熱材付き物品の具体例としては、本体又は内部に熱源部または被保温部を有する機器、および真空断熱材を備える真空断熱材付き機器が挙げられる。ここで、「熱源部」とは、機器自体が駆動することにより、当該機器本体または機器内部において発熱する部位をいうものであり、例えば電源やモーター等をいう。また、「被保温部」とは、機器本体または内部に熱源部を有さないが、上記機器が外部の熱源から熱を受けて、高温になる部位をいうものである。
本発明によれば、上記真空断熱材が上述の真空断熱材であり、高温においても長期間断熱性能を維持することができるため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が高温となることを防止し、一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた高い省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
本発明における真空断熱材については、上述した「B.真空断熱材」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における機器とは、本体又は本体の内部に熱源部もしくは被保温部を有するものである。本発明における機器としては、例えば、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(登録商標「エコキュート」)、冷蔵庫、自動販売機、炊飯ジャー、ポット、電子レンジ、業務用オーブン、IHクッキングヒーター、OA機器等の電化機器、自動車等が挙げられる。中でも本発明においては、上記機器が、自然冷媒ヒートポンプ給湯機、業務用オーブン、電子レンジ、自動車に上述の本発明における真空断熱材を用いることが好ましい。
上記真空断熱材は、物品に直接貼り付けてもよく、物品を構成する部材と部材との間に設けられた空間に配置してもよい。例えば、上記真空断熱材を機器に装着する態様としては、当該機器の熱源部もしくは被保温部に直接真空断熱材を貼り付けてもよく、被保温部と熱源部または外部熱源との間に真空断熱材を挟みこむようにして装着してもよい。
D.真空断熱材用外包材の設計方法
次に、本発明の真空断熱材用外包材の設計方法について説明する。本発明の第1態様の真空断熱材用外包材の設計方法は、熱溶着可能なフィルムと、樹脂基材および上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する真空断熱材用外包材の設計方法であって、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下となるように、上記真空断熱材用外包材の層構成を設計することを特徴とするものである。
また、本発明の第2態様の真空断熱材用外包材の設計方法は、熱溶着可能なフィルムと、樹脂基材および上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する真空断熱材用外包材の設計方法であって、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度が0.01g/(m・day)以下であり、温度100℃、湿度0%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の酸素透過度が0.05cc/(m・day・atm)以下であり、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量が0.01g/(m・day)以下となるように、上記真空断熱材用外包材の層構成を設計することを特徴とするものである。
本発明によれば、上述した寸法変化率を有する外包材となるように、または、上述した水蒸気透過度、酸素透過度および高温保管後の水蒸気透過度の劣化量を有する外包材となるように、外包材の層構成を設計することにより、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材を設計することができる。
本発明の真空断熱材用外包材の設計方法においては、上述した「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様」の項において説明したように、高温における寸法変化率が特定の範囲内となるように外包材の層構成を設計する、または、上述した「A.真空断熱材用外包材、(A−2)第2態様」の項において説明したように、水蒸気透過度、酸素透過度、および、高温保管後の水蒸気透過度の劣化量が、それぞれ特定の範囲内となるように外包材の層構成を設計することにより、上記外包材を、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとするものである。このような外包材を設計する方法は、上述した「A.真空断熱材用外包材」の項の記載と同様であるため、ここでの説明は省略する。
E.真空断熱材用外包材の製造方法
次に、本発明の真空断熱材用外包材の製造方法について説明する。本発明の第1態様の真空断熱材用外包材の製造方法は、熱溶着可能なフィルムと、樹脂基材および上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する真空断熱材用外包材の製造方法であって、雰囲気の温度が20℃の際の上記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、上記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下となるように、上記真空断熱材用外包材の層構成を設計する設計工程を有することを特徴とするものである。
また、本発明の第2態様の真空断熱材用外包材の製造方法は、熱溶着可能なフィルムと、樹脂基材および上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する真空断熱材用外包材の製造方法であって、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度が0.01g/(m・day)以下であり、温度100℃、湿度0%RHの雰囲気での上記真空断熱材用外包材の酸素透過度が0.05cc/(m・day・atm)以下であり、温度145℃の雰囲気で500時間保管した後の上記真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量が0.01g/(m・day)以下となるように、上記真空断熱材用外包材の層構成を設計する設計工程を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記設計工程を有することにより、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材を製造することができる。
本発明の真空断熱材用外包材の製造方法は、設計工程において、上述した「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様」の項において説明したように、高温における寸法変化率が特定の範囲内となるように外包材の層構成を設計する、または、上述した「A.真空断熱材用外包材、(A−2)第2態様」の項において説明したように、水蒸気透過度、酸素透過度、および、高温保管後の水蒸気透過度の劣化量が、それぞれ特定の範囲内となるように外包材の層構成を設計することにより、上記外包材を、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとするものである。このような設計工程は、上述した「A.真空断熱材用外包材」の項の記載と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明においては、上記設計工程において設計された外包材を得ることができるものであれば、上述した設計工程以外の各工程については特に限定されるものではなく、外包材の一般的な製造方法における各工程と同様のものとすることができる。例えば、予め成膜した各層を層間接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション工程や、熱溶融させたガスバリアフィルムの各材料をTダイ等を用いて押出しして貼り合せ、得られた積層体に層間接着剤を介して熱溶着可能なフィルムを貼り合せる、貼り合わせ工程等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例、比較例および参考例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(層間接着剤の調製)
ポリエステルを主成分とする主剤、脂肪族系ポリイソシアネートを含む硬化剤、および酢酸エチルを、重量配合比が主剤:硬化剤:酢酸エチル=10:1:10となるように混合し、2液硬化型の層間接着剤を調製した。
(真空断熱材用外包材の作製)
熱溶着可能なフィルム/第1ガスバリアフィルム(樹脂基材/蒸着膜)/第2ガスバリアフィルム(蒸着膜/樹脂基材)/保護フィルムの層構成を有する外包材を作製した。なお、上記層構成の表記中「/」は積層界面を示す。
第1ガスバリアフィルムおよび第2ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層として厚み40nmのアルミニウム膜(Al膜)が蒸着され、上記Al膜上に更にオーバーコート層(OC層)を有する厚み12μmのPETフィルム基材(会社名:東レフィルム加工株式会社、製品名:VMPET1310)をそれぞれ用いた。また、熱溶着可能なフィルムとして、厚み50μmの未延伸ポリプロピレン(会社名:東レフィルム株式会社、製品名:3301)を用いた。保護フィルムとして、片面にガスバリア層として酸化珪素膜(SiO膜)が蒸着され、上記SiO膜上に更にオーバーコート層(OC層)を有する厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(会社名:大日本印刷株式会社、製品名:IB−ON−UB)を用いた。上記各層は、下層となる層の面側に上述の配合比で調製した層間接着剤を、塗布量3.5g/mとなるようにドライラミネート法により積層した。
実施例1で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からPETフィルム基材、Al膜、OC層の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順となる層構成(図3(b))を有した。
(真空断熱材の作製)
得られた外包材を2枚重ねて、矩形の3方向をヒートシールして1方向のみが開口した袋体を作成した。芯材として300mm×300mm×30mmのグラスウールを用い、乾燥処理を行った後、上記袋体に上記芯材を収納して、上記袋体内部を真空排気した。その後、上記袋体の開口部分をヒートシールにより密封して、真空断熱材を得た。到達圧力は0.05Paとした。
[実施例2]
上記第1ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層として厚み40nmのアルミニウム膜(Al膜)が蒸着された厚み12μmのEVOH樹脂基材(会社名:株式会社クラレ、製品名:VMXL)を用い、上記第2ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層として厚み30nmの酸化珪素膜(SiO膜)が蒸着され、上記SiO膜上に更に厚み200nmのオーバーコート層(OC層)を有する厚み12μmのPETフィルム基材(会社名:大日本印刷株式会社、製品名:IB−PET)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
実施例2で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からEVOH樹脂基材、Al膜の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順となる層構成(図3(b))を有した。
[実施例3]
熱溶着可能なフィルムとして、厚み25μmのポリブチレンテレフタレート(会社名:オージーフィルム株式会社)を用い、保護フィルムの代わりに、上記実施例1における第1ガスバリアフィルム(PETフィルム基材/Al膜/OC層)を第3ガスバリアフィルムとして用い、熱溶着可能なフィルム/第1ガスバリアフィルム/第2ガスバリアフィルム/第3ガスバリアフィルムの層構成を有する外包材としたこと以外は、実施例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
実施例3で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からPETフィルム基材、Al膜、OC層の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PETフィルム基材の積層順)、および第3ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PETフィルムの順)の積層順となる層構成(図3(e))を有した。
[実施例4]
第1及び第2ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層として厚さ40nmのアルミニウム膜(Al膜)が蒸着され、上記Al膜上に更にオーバーコート層(OC層)が積層された厚み12.5μmのポリイミド(PI)基材(会社名:宇部興産株式会社、製品名:ユーピレックスS)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
実施例4で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からPI基材、Al膜、OC層の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PI基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)をこの順で積層した層構成(図3(b))を有した。
[実施例5]
保護フィルムとして、厚み25μmのポリフェニルサルファイド(PPS)基材(会社名:東レ株式会社、製品名:トレリナ)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
実施例5で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からPETフィルム基材、Al膜、OC層の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルムの積層順となる層構成(図3(b))を有した。
[実施例6]
(熱溶着可能なフィルムの製膜)
結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(会社名:東洋紡株式会社、製品名:SI−173)をTダイ法で押出して、厚み50μmの熱溶着可能なフィルム(CPET30)を成形した。
実施例1の熱溶着可能なフィルムに代えて、CPET30を熱溶着可能なフィルムとして用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
実施例6で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からPETフィルム基材、Al膜、OC層の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順となる層構成(図3(b))を有した。
[実施例7]
第2ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層としてリン含有Al膜を有するPET樹脂基材(会社名:株式会社クラレ、製品名:クラリスタCF12)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外包材を得て、実施例1と同様にして真空断熱材を得た。
実施例7で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からEVOH樹脂基材、Al膜の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側から燐含有Al膜、PET樹脂基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順となる層構成(図3(b))を有した。
[実施例8]
実施例1の第2ガスバリアフィルムを、実施例2の第2ガスバリアフィルムに代えたこと以外は、実施例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
実施例8で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からPETフィルム基材、Al膜、OC層の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からオーバーコート層、SiO膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順(図3(b))となる層構成を有した。
[実施例9]
実施例1の熱溶着可能なフィルム、実施例1の第1ガスバリアフィルム、実施例1の第2ガスバリアフィルム、および実施例1の保護フィルムを用い、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PETフィルム基材の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、Al膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の順で積層した層構成(図3(c))を有する外包材を得た。また、得られた外包材を用い、実施例1と同様にして真空断熱材を得た。
[比較例1]
第2ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層として厚み200nmのアクリル酸亜鉛系のオーバーコート層(OC層)を有する厚み12μmのPETフィルム基材(会社名:三井化学東セロ株式会社、製品名:マックスバリア)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外包材を得て、実施例1と同様にして真空断熱材を得た。
比較例1で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からEVOH樹脂基材、Al膜の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からアクリル酸亜鉛系オーバーコート層、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順となる層構成(図3(b))を有した。
[比較例2]
第2ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層として酸化珪素膜(SiO膜)を有し、上記SiO膜上に更にオーバーコート層(OC層)を有する厚み12μmのPETフィルム基材(会社名:三菱樹脂株式会社、製品名:テックバリアHX)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外包材を得て、実施例1と同様にして真空断熱材を得た。
比較例2で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からEVOH樹脂基材、Al膜の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順となる層構成(図3(b))を有した。
[比較例3]
第2ガスバリアフィルムとして、片面にガスバリア層として厚み30nmの酸化アルミニウム(Al)膜が蒸着され、上記Al膜上に更に厚み200nmのオーバーコート層(OC層)を有する厚み12μmのPETフィルム基材(会社名:大日本印刷株式会社、製品名:IB−PET)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外包材を得て、実施例1と同様にして真空断熱材を得た。
比較例3で得た外包材は、熱溶着可能なフィルム、第1ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からEVOH樹脂基材、Al膜の積層順)、第2ガスバリアフィルム(熱溶着可能なフィルム側からオーバーコート層、Al膜、PETフィルム基材の積層順)、および保護フィルム(熱溶着可能なフィルム側からOC層、SiO膜、ナイロンフィルムの積層順)の積層順となる層構成(図3(b))を有した。
実施例1〜9および比較例1〜3で得られた外包材の層構成を下記表1に示す。また、上記各実施例および比較例において用いられた各フィルムの会社名、製品名を下記表2に示す。
[評価]
1.真空断熱材用外包材の寸法変化率
実施例1〜9および比較例1〜3で得られた外包材について、高温保持前後での外包材の寸法変化率、ならびに昇温過程、恒温過程、および降温過程の各過程における外包材の寸法変化率を求めた。測定試料は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(1)真空断熱材用外包材の寸法変化率」の項で説明した方法により、外包材から所望のサイズの試験片(N=3)をサンプリングし、試験片ごとに、図11で例示するように面内において基準点から22.5°ずつ放射方向に16点、計48点(16点×3試験片)採取した。各測定試料は、基準寸法を測定後、上記項で説明した方法および条件で、昇温、恒温、降温の一連の過程に置き、各過程における経時寸法、ならびに一連の過程後の寸法を測定した。基準寸法を含め各寸法は上記項に記載の寸法測定条件で測定し、上記項に記載の式(1)から、高温保持前後での測定試料の寸法変化率をそれぞれ求め、その48点平均値を高温保持前後の真空断熱材用外包材の寸法変化率とした。また、上記項に記載の式(2)から、各過程における測定試料の寸法変化率をそれぞれ求め、その48点平均値から、各工程における真空断熱材用外包材の寸法変化率とした。結果を表3に示す。
2.真空断熱材用外包材の水蒸気透過度
実施例1〜9および比較例1〜3で得られた外包材について、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気での水蒸気透過度を測定した。水蒸気透過度は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(2)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度」において説明されている方法により測定した。上記水蒸気透過度は、高温保管前または屈曲処理前の水蒸気透過度に相当する。測定結果を表3に示す。
3.真空断熱材用外包材の酸素透過度
実施例1〜9および比較例1〜3で得られた外包材について、温度100℃、湿度0%RHの雰囲気での酸素透過度を測定した。酸素透過度は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(3)真空断熱材用外包材の酸素透過度」において説明されている方法により測定した。上記酸素透過度は、高温保管前または屈曲処理前の酸素透過度に相当する。測定結果を表3に示す。
4.真空断熱材用外包材の高温保管後の水蒸気透過度の劣化量
実施例1〜9および比較例1〜3で得られた外包材について、高温保管後の水蒸気透過度の劣化量を測定した。高温保管後の水蒸気透過度の劣化量は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(4)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度の劣化量」において説明されている方法により測定した。測定結果を表3に示す。
5.真空断熱材用外包材の高温保管後の酸素透過度の劣化量
実施例1〜9および比較例1〜3で得られた外包材について、高温保管後の酸素透過度の劣化量を測定した。高温保管後の酸素透過度の劣化量は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(5)真空断熱材用外包材の酸素透過度の劣化量」において説明されている方法により測定した。測定結果を表3に示す。
6.0℃での引張貯蔵弾性率値に対する100℃での引張貯蔵弾性率値の割合
実施例1〜9および比較例1〜3で得た各外包材について、動的粘弾性測定装置を用いて、引張法により周波数10Hzで0℃および100℃の各温度での貯蔵弾性率値E'、E'100をそれぞれ測定し、0℃での引張貯蔵弾性率値(E')に対する100℃での引張貯蔵弾性率値(E'100)の割合を算出した。測定に用いる測定試料の採取方法、ならびに各温度での貯蔵弾性率値の測定方法およびその条件は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(6)貯蔵弾性率」の項で説明した測定試料の採取方法、ならびに貯蔵弾性率値の測定方法および条件に基づき行った。測定試料数は計48点(1試験片あたり16点×3試験片)とした。測定結果を表3に示す。
7.屈曲処理後の水蒸気透過度および酸素透過度
実施例1〜9および比較例1〜3で得た各外包材から、幅210mm×長さ297mm(A4サイズ)の長方形の試験片(試験片数N=1)をそれぞれ採取した。ASTM F392に準拠して、各試験片に対してゲルボフレックステスター(テスター産業社製、機種名:BE1006)を用いて3回屈曲処理を行った。3回屈曲処理後の各試験片について、水蒸気透過度および酸素透過度を測定した。屈曲処理後の水蒸気透過度および酸素透過度の測定方法は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性」の項の中の「(2)真空断熱材用外包材の水蒸気透過度」および「(3)真空断熱材用外包材の酸素透過度」の項でそれぞれ説明した方法により測定した。測定結果を表3に示す。
8.真空断熱材熱の熱伝導率の測定
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた真空断熱材の、温度145℃、湿度無管理の雰囲気における熱伝導率の経時変化を測定した。各真空断熱材の熱伝導率は、JIS A1412−2:1999に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定した。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置 オートラムダHC−074(英弘精機製)を用いた。測定試料および測定条件については、上記「B.真空断熱材、3.真空断熱材」の項で説明した熱伝導率の測定試料および測定条件と同様とし、上記熱伝導率は3点平均値とする。測定結果を図4に示す。
9.経時熱伝導率と各パラメータとの相関関係
実施例1〜9および比較例1〜3で得た各真空断熱材を温度145℃、湿度無管理の雰囲気で500時間保管した後の熱伝導率(以下、「経時熱伝導率」とする場合がある。)を上記と同じ方法により測定し、上述した方法により測定された各パラメータと、経時熱伝導率との相関関係をグラフ化した。高温保持前後の外包材の寸法変化率と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を図5に、外包材の高温保管後の水蒸気透過度の劣化量と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を図6に、恒温過程中の外包材の寸法変化率と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を図7に示す。また、外包材の酸素透過度と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を図8に、外包材の高温保管後の酸素透過度の劣化量と、真空断熱材の経時熱伝導率との相関関係を図9に示す。図5〜9において、〇および◇内の数値は、実施例および比較例の番号を示す。
[考察]
表3より、実施例1〜9の外包材は、高温保持前後の寸法変化率が1%以下であり、比較例1〜3の外包材は、高温保持前後の寸法変化率が1%より大きかった。実施例1〜9の外包材と比較例1〜3の外包材と比較すると、実施例1〜9の外包材は、水蒸気透過度の劣化量、および酸素透過度の劣化量が比較例1〜3の外包材よりも小さいことが示された。このことから、高温保持前後の寸法変化率を所定値以下とすることで、熱による寸法変化に起因したガスバリア性能の低下を抑制可能となることが示唆された。
表3より、実施例1〜9の外包材について、水蒸気透過度の劣化量から、高温保管前後で水蒸気透過度が大きく変化していないことが示された。一方で、同じ実施例1〜9の外包材であっても、屈曲処理3回後の水蒸気透過度は、屈曲処理前の水蒸気透過度よりも大きく増加していることが示された。具体的には、水蒸気透過度の劣化量から算出される高温保管後の水蒸気透過度と、屈曲処理3回後の水蒸気透過度とを比較すると、その値は一桁以上相違した。また、実施例1〜9の外包材について、酸素透過度の劣化量から算出される高温保管後の酸素透過度と、屈曲処理3回後の酸素透過度とを比較すると、同じ外包材であっても、異なる傾向が示された。これらの結果から、外力負荷に起因して生じるガスバリア性能の劣化と、熱に起因して生じるガスバリア性能の劣化との間には、相関性が確認されなかった。具体的には、実施例1と比較例1の屈曲処理後のガスバリア性能の劣化と熱に起因して生じるガスバリア性能の劣化を比較した場合、相関性が無いことが確認された。
表3の実施例1、3〜6、8〜9と実施例2、7とを比較したところ、DMA値が25%以上である実施例1、3〜6、8〜9の外包材は、DMA値が25%未満の実施例2、7の外包材よりも酸素透過度の劣化量が小さかった。この結果から、DMA値を所定値以上とすることで、温度変化による外包材のガスバリア性能の低下、特に酸素バリア性能の低下を抑制可能となることが示唆された。また、DMA値を所定値以上に設定する観点、および、ガスバリア性能(特に酸素バリア性能)の低下を抑制する観点からも、樹脂基材がEVOH樹脂を含まないことが好ましいことが示唆された。
表3の実施例1〜8と実施例9とを比較したところ、実施例1〜8の外包材は、図3(b)、(e)で示したように、熱溶着可能なフィルム1の上に配置されたガスバリアフィルム2(2a)が、熱溶着可能なフィルム1側から樹脂基材3とガスバリア層4とをこの順に有することで、図3(c)で示した層構成を有する実施例9の外包材よりも、水蒸気透過度の劣化量が小さかった。この結果から、熱溶着可能なフィルムとガスバリア層との間に樹脂基材が介在することで、熱応力による熱溶着可能なフィルムの寸法変化に起因したガスバリア層の劣化が抑制されたと考えられる。
図5〜図9の結果から、実施例1〜9の外包材を用いた真空断熱材は、比較例1〜3の真空断熱材と比較して低熱伝導率を示した。また、真空断熱材の熱伝導率が、上記真空断熱材に用いられている外包材の特性(高温保持後の寸法変化率、恒温過程での寸法変化率、水蒸気透過度の劣化量、酸素透過度の劣化量)と関係することが示された。このことから、本発明の外包材(例えば、高温保持後の寸法変化率が1%以下であり、恒温過程での寸法変化率が0.5%以下である外包材)は、温度変化に伴うガスバリア性能の低下を抑制でき、また、上記外包材を用いた真空断熱材は、温度変化に因らず低い熱伝導率を維持することが可能であることが示唆された。
[実験例および比較実験例]
実施例1〜5および比較例1〜3で得られた外包材について、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(1)真空断熱材用外包材の寸法変化率」の項で説明した予備方法を用いて、高温における寸法変化率を測定した。寸法変化率は、上記「A.真空断熱材用外包材、(A−1)第1態様、1.真空断熱材用外包材の特性、(1)真空断熱材用外包材の寸法変化率」において説明されている予備方法および条件により各温度における外包材の寸法を測定し、寸法変化率を求めた(実験例1〜5および比較実験例1〜3)。上記各外包材の各過程における寸法変化率を下記表4に示す。
また、上記実施例1〜2および比較例1〜2で得られた外包材について、上記予備方法により測定した昇温過程、恒温過程、および降温過程の一連の過程における寸法変化率(実験例1〜2および比較実験例1〜2)の経時変化の測定結果を図10に示す。なお、図10の上部における破線は、雰囲気の温度変化(温度プロファイル)を示し、図10の中央部における各線は、各実験例および比較実験例の各外包材について、雰囲気の温度が20℃の際の外包材の寸法を基準(0)とし、外包材の寸法が上記基準よりも長い場合にはプラス側(基準の上側)に、上記基準よりも短い場合にはマイナス側(基準の下側)に示す。
なお、表4中の水蒸気透過度およびその劣化量、ならびに、酸素透過度およびその劣化量は、寸法測定の方法に因らないため、表3と同じである。
上記実験例および比較実験例の結果からも、予備方法を用いて測定した高温保持前後の寸法変化率が小さい(高温保持前後の寸法変化率が1%以下である)外包材は、真空断熱材とした際、高温においても長期間断熱性能を維持していることが分かった。
1 … 熱溶着可能なフィルム
2、2a、2b、2c … ガスバリアフィルム
3 … 樹脂基材
4 … ガスバリア層
5 … 保護フィルム
10 … 真空断熱材用外包材
11 … 芯材
12 … 端部
20 …真空断熱材

Claims (13)

  1. 熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有する真空断熱材用外包材であって、
    前記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、前記樹脂基材上の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、
    雰囲気の温度が20℃の際の前記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、前記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材用外包材。
  2. 前記樹脂基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−ビニルエステル共重合体およびそのケン化物、ナイロン、ポリウレタン樹脂、およびアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
  3. 動的粘弾性測定装置を用いて、引張法により周波数10Hzで貯蔵弾性率を測定したときに、0℃での前記貯蔵弾性率の値に対する100℃での前記貯蔵弾性率の値の割合が25%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱材用外包材。
  4. 少なくとも前記樹脂基材が、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を含まないことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の真空断熱材用外包材。
  5. 前記雰囲気の温度が20℃の際の前記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、前記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が0.5%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の真空断熱材用外包材。
  6. 前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であり、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が0.5%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の真空断熱材用外包材。
  7. 少なくとも1つの前記ガスバリアフィルムが、前記ガスバリア層の、前記樹脂基材と反対側の面側に、オーバーコート層を有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の真空断熱用外包材。
  8. 前記ガスバリアフィルムの、前記熱溶着可能なフィルムとは反対側の面側に保護フィルムを有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の真空断熱用外包材。
  9. 前記ガスバリアフィルムを2つ以上有することを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の真空断熱用外包材。
  10. 芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
    前記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、
    前記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、
    雰囲気の温度が20℃の際の前記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、前記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材。
  11. 前記樹脂基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−ビニルエステル共重合体およびそのケン化物、ナイロン、ポリウレタン樹脂、およびアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の真空断熱材。
  12. 熱絶縁領域を有する物品および真空断熱材を備える真空断熱材付き物品であって、
    前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
    前記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムおよびガスバリアフィルムを有し、
    前記ガスバリアフィルムは、樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されるガスバリア層とを有し、
    雰囲気の温度が20℃の際の前記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、前記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材付き物品。
  13. 前記樹脂基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレン−ビニルエステル共重合体およびそのケン化物、ナイロン、ポリウレタン樹脂、およびアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂であることを特徴とする請求項12に記載の真空断熱材付き物品。
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