JP6469555B2 - モデル設計方法 - Google Patents

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Description

本発明は、モデル設計方法に関する。
自動車のアウタパネルやルーフパネルなどのパネル製品は、所望の製品形状をかたどった金型で一の板材を加圧してプレス成形品を成形し、このプレス成形品から製品部分を切り取った後、縁部を曲げてフランジ部を形成したり、ボルトが挿通する孔を空けたりすることにより形成される。このようなパネル製品では、実際に製造する製造工程の前に、製造ラインの設計が行われる。
具体的には、製品形状のデザイン設計が行われると、このデザイン設計からプレス成形品のドローモデルを生成し、CAE(Computer Aided Engineering)によるモデル形状評価を行うことで、デザインされた形状が実際にプレス加工可能であるか確認することとしている。
ここで、図20を参照して、製品形状とドローモデルとの関係について説明する。ドローモデル9は、車種に合わせてデザインされた製品部91と、切り落とすことを想定した余肉部93と、金型で加圧する際に皺押さえすることを想定したダイフェース部95と、を含んで構成される。
デザイン設計が成されると製品形状が得られるため、ドローモデル9の製品部91はデザイン設計と共に生成することができる。また、ダイフェース部95は、皺押さえを想定した部分であるため基本的に略平面であり比較的容易に生成することができる。一方、余肉部93は、プレス加工に応じて変形する部分であるため、ドローモデル9の生成では、余肉部93の生成に多くの時間がかかっている。
また、CAEによるモデル形状評価が良好でない場合、余肉部の修正とCAEによる解析とを繰り返す必要があり、膨大な時間がかかってしまう。そこで、近年では、余肉部の断面を所定のテンプレートから選択することで、CAEによる品質の保証されたドローモデルを短時間で設計できるモデル設計方法が知られている(特許文献1)。
特開2009−104456号公報
特許文献1のモデル設計方法によれば、テンプレートを活用することにより、多くの部分において余肉部の断面を比較的短時間で設定することができる。しかしながら、例えばホイールアーチのように製品部91と余肉部93との境界線が湾曲した特定の部分においては、その断面形状を決定するためには作業者による試行錯誤を要していた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、製品部と余肉部との境界線が湾曲しているような場合であっても安定して余肉部又はその断面形状を設計できるモデル設計方法を提供することを目的とする。
(1)上記目的を達成するため本発明は、2つの異なる面(例えば、後述の製品部91の面及びダイフェース部95の面)から、各面を接続する補間面(例えば、後述の余肉部93の面)又はその断面(例えば、後述の親断面931)をコンピュータによって設計するモデル設計方法であって、第1の面に定められた第1始点(例えば、後述の基準点BP)から延びる第1スケッチ線(例えば、後述の第1スケッチ線SL1)及び第2の面に定められた第2始点(例えば、後述の対岸点OP)から延びる第2スケッチ線(例えば、後述の第2スケッチ線SL2)を設定するスケッチ線作成工程と、前記第1及び第2スケッチ線が近接する位置に前記第1スケッチ線の第1終点(例えば、後述の終点EP1)及び前記第2スケッチ線の第2終点(例えば、後述の終点EP2)を設定する終点設定工程と、前記第1及び第2始点を含む基礎曲面を設定する基礎曲面設定工程と、前記基礎曲面に転写された前記第1スケッチ線の前記第1終点と前記第2スケッチ線の前記第2終点とを、前記基礎曲面上で定義された補間曲線(例えば、後述の補間曲線SPL)で接続することにより、前記断面を設定する断面設定工程と、を備えることを特徴とする。
(2)この場合、前記終点設定工程では、前記第1及び第2始点を含む補助平面を設定し、前記補助平面に転写された前記第1及び第2スケッチ線の交点(例えば、後述の交点O)を基準点として設定し、前記補助平面に対し垂直かつ前記基準点を通過する線を基準軸として設定し、前記基準軸から所定のぼかし距離によって特定される点において前記第1スケッチ線の第1終点及び前記第2スケッチ線の第2終点を設定することが好ましい。
(3)この場合、前記スケッチ線作成工程では、前記第1及び第2始点を含む平面に転写した場合に、当該平面上での交点の位置を特定できる程度に十分な長さで前記第1及び第2スケッチ線を設定することが好ましい。
(1)本発明は、2つの異なる面(具体的には、例えば製品部とダイフェース部)から、各面を接続する補間面(上記の例では、製品部とダイフェース部とを接続する予肉部)又はその断面を設計するモデル設計方法に関する。本発明では、始めに第1及び第2の面それぞれに定められた始点から延びるスケッチ線を設定する(スケッチ線作成工程)。ここで、上述のように例えば第1の面と補間面の境界線や第2の面と補間面の境界線が湾曲していると、これら第1及び第2の面の境界線に定められた始点から延びるスケッチ線は、単純には3次元空間で交わらずに捩れてしまう場合が多く、このため両スケッチ線を如何にして滑らかかつ速やかに接続するかが補間面又はその断面を設計する上で重要となる。これに対し本発明では、これら第1及び第2スケッチ線が近接する位置に終点を設定し(終点設定工程)、さらに第1及び第2始点を含む基礎曲面を設定し(基礎曲面設定工程)、この基礎曲面に転写された第1及び第2スケッチ線の第1及び第2終点を基礎曲面上で定義された補間曲線で接続することによって補間面の断面を設計する(断面設定工程)。これにより、2つの面を接続する補間面の断面形状は、第1の面及び第2の面の近傍では各面に応じて定められたスケッチ線を尊重した形状となり、第1の面と第2の面の中間部分では2つのスケッチ線を補間曲線でぼかして接続した形状となるので、プレス成型に適した補間面又はその断面を設計することができる。また本発明では、第1及び第2始点の位置を変えながら上記スケッチ線作成工程、終点設定工程、補間曲線設定工程、基礎曲面設定工程、及び断面設定工程を繰り返し行い、複数の断面を得ることにより、これら複数の断面によって特定される単一の補間面を設計することができる。
(2)上述のように本発明では、3次元空間上でねじれた位置に存在する2つのスケッチ線を如何にして滑らかかつ速やかに接続するかが重要となる。このため、上述の複数の工程のうち補間曲線を挿入する位置を定める工程、すなわちスケッチ線の終点を定める工程が重要となる。これに対し本発明の終点設定工程では、始めに第1及び第2始点の両方を含む補助平面を設定し、さらにこの補助平面に転写された両スケッチ線の交点を基準点とし、補助平面に対し垂直かつ基準点を通過する基準軸を設定し、さらにこの基準軸から所定のぼかし距離によって特定される点において両スケッチ線の終点を設定する。これにより、2つの面を接続する補間面の断面形状は、各面の近傍では上述のようにスケッチ線を尊重した形状となり、各面の中間部分では上述のようなぼかし距離によって特定される大きさで丸められた形状となる。したがって本発明では、作業者は第1及び第2スケッチ線を設定し、さらに単一のパラメータであるぼかし距離を設定すれば、これらに応じた補間面の断面を設計することができるので、短時間でプレス成型に適した補間面又はその断面を設計することができる。
(3)本発明では、スケッチ線作成工程において十分な長さの第1及び第2スケッチ線を設定しておくことにより、その後の終点設定工程では両スケッチ線が近接する位置を容易に特定することができるので、終点設定工程にかかる時間を短くできる。
本発明の一実施形態に係るモデル設計方法が適用されたドローモデル生成システムの概要を示す図である。 ドローモデル生成システムの機能構成を示すブロック図である。 複数の特徴点を有する平面格子の一例を示す図である。 製品部とダイフェース部との間に設定する親断面の一例を示す図である。 断面テンプレートの一例を示す図である。 ぼかし工程を伴う親断面の設定方法の具体的な手順を示すフローチャートである。 製品部及びダイフェース部に対して設定されたスケッチ線の構成を示す斜視図である。 基準点及び対岸点を含むように設定された補助平面の構成を示す図である。 円柱状のトリム範囲を示す図である。 スケッチ線の始点を含むように設定された基礎曲面の斜視図である。 スケッチ線を基礎曲面の構成を示す図である。 図6のぼかし工程を伴う設計方法を実現する親断面設定部の機能構成を示すブロック図である。 親断面から生成する子断面の一例を示す図である。 投影した特徴点のZ座標の算出方法の一例を示す図である。 余肉部に投影した特徴点のZ座標の算出方法の一例を示す図である。 余肉部に投影した特徴点のZ座標の算出方法の一例を示す図である。 製品部に投影した特徴点のZ座標の算出方法の一例を示す図である。 ドローモデル生成システムの処理の流れを示すフローチャートである。 ドローモデル生成システムの処理の流れを示すフローチャートである。 製品部、余肉部、ダイフェース部からなるドローモデルの一例を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係るモデル設計方法が適用されたドローモデル生成システムについて、図面を参照しながら説明する。
[ドローモデル生成システムの概要]
初めに、図1を参照して、本発明のドローモデル生成システムの概要について説明する。ドローモデル生成システムでは、CAD(Computer Aided Design)を用いて生成した製品部91とダイフェース部95とから、プレス成形品のドローモデル9を生成する。具体的には、ドローモデル生成システムでは、図1(B)に示すように、製品部91及びダイフェース部95を含むドローモデル9に相当する領域に、夫々が個別のXY座標により規定される複数の特徴点101により構成される平面格子10を投影する。そして、図1(C)に示すように、投影した特徴点101を繋ぎポリゴン102とすることで、ドローモデル9を生成する。
このとき、図1(A)に示すように、製品部91及びダイフェース部95は、予め形状が規定されているため、製品部91及びダイフェース部95に投影した特徴点101の座標(Z座標)は、容易に取得することができる。一方、余肉部93は、形状が規定されていないため、余肉部93に投影した特徴点101の座標(Z座標)は、取得することができない。
この点、本発明のドローモデル生成システムでは、余肉部93に投影した特徴点101の座標(Z座標)を後述する方法により補間し、補間面を生成することによって、ドローモデル9を生成することとしている。
なお以下では、製品部91の輪郭線を基準線BLといい、この基準線BLと対向するダイフェース部95の輪郭線を対岸線OLという。一般的には、これら基準線BL及び対岸線OLは閉曲線となっていることから、余肉部93の面形状はこれら線BL,OLの間を結ぶ複数の断面線によって特定することができる。上述のように製品部91及びダイフェース部95の形状は、細密なCADデータによって規定されていることから、これら基準線BL及び対岸線OLの3次元形状は、これらCADデータから取得することができる。
[ドローモデル生成システムの構成]
続いて、図2を参照して、本発明のドローモデル生成システム1の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るモデル設計方法が適用されたドローモデル生成システム1の機能構成を示すブロック図である。
ドローモデル生成システム1は、作業者が各種データや指令を入力する入力装置2と、この入力装置2からの入力に応じて各種演算処理を実行する演算装置4と、画像を表示する表示装置6と、各種データを記憶する記憶装置8と、を備える。
入力装置2は、作業者が操作可能なキーボードやマウスなどのハードウェアで構成される。この入力装置2を操作することにより入力されたデータや指令は、演算装置4に入力される。
表示装置6は、画像を表示可能なCRTや液晶ディスプレイなどのハードウェアで構成される。この表示装置6の表示部には、演算装置4による処理結果として、例えば、ドローモデルの立体画像が表示される。
記憶装置8は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどのハードウェアで構成され、CADを用いて生成された製品部91の形状データ及びダイフェース部95の形状データを含むCADデータを記憶する。なお、記憶装置8に記憶されるCADデータには、余肉部93の形状データは含まれない。また、記憶装置8は、平面格子10を構成する特徴点101のデータ(XY座標)を含む平面格子データを記憶する。また、記憶装置8は、余肉部93などに設定された断面の形状を規定するパラメータを含む断面データを記憶する。
演算装置4は、CPUなどのハードウェアで構成され、所定のソフトウェアと協働して平面格子生成部41と、親断面設定部42と、子断面生成部43と、座標算出部44と、ドローモデル生成部45と、を含んで構成される。
平面格子生成部41は、入力装置2を介した作業者からの指令に応じて図3に示す平面格子10を生成する。平面格子生成部41が生成した平面格子10は、記憶装置8に記憶される。なお、平面格子10は、作業者の操作に応じて生成するのではなく、予め記憶装置8に記憶しておき、適宜必要に応じて記憶装置8から読み出すこととしてもよい。
ここで、図3を参照して、平面格子10について説明する。図3(A)に示すように、平面格子10は、夫々が個別のXY座標により規定される複数の特徴点101を所定間隔で格子状に配置することで構成される。
特徴点101の間隔は任意であるが、演算負荷と精度との兼ね合いを考慮して、対象とするパネル製品に応じて実験を行うことによって最適な間隔Doptを決定することができる。このような最適な間隔Doptを決定する手順について、図3(B)(C)を参照して、具体的に説明する。なお、図3(B)は、製品部91の断面形状を示す模式図であり、図3(C)は、自動車のアウタパネルやルーフパネルなどのパネル製品のうち最もポリゴンの折れ角が大きくなる部位における、特徴点101の間隔とポリゴンの折れ角との関係を示す図である。
上述のように、本発明のドローモデル生成システム1では、製品部91などに平面格子10(特徴点101)を投影し、特徴点101のZ座標を取得することとしている。ここで、製品部91に投影した特徴点101の間隔は、XY座標に対する製品部91の傾斜度合いに応じて異なることになる。
図3(B)を参照して、製品部91が、XY座標と略平行な平面911、913と、XY座標に対して所定の角度傾斜した斜面912とから構成される断面形状を考える。このとき、平面911、913に投影した特徴点101の間隔L1と、斜面912に投影した特徴点101の間隔L2とを比較すると、間隔L2の方が広くなる。この特徴点101の間隔は、特徴点101を繋いでポリゴン102を取得する場合にポリゴン102の折れ角となってあらわれる。ポリゴン102の折れ角が大きいとCAEによるモデル形状評価においてエラーの原因となるため、エラーとならない範囲に収める必要がある。
図3(C)に示すように、CAEによるモデル形状評価では、ポリゴン102の折れ角が所定の許容値θmaxを超えると、エラーや不正な解などの不具合となる。この点、自動車のパネル製品では、特徴点101の間隔をDmaxとすることでポリゴン102の折れ角が約θmaxとなる。このような場合、特徴点101の最適な間隔Doptは、許容値θmaxに対応する最大許容間隔Dmaxよりも、0.数mm程度のマージン分を減算した値に設定される。以上のようにして、対象とするパネル製品に対して、特徴点101の最適な間隔Doptを決定することができる。尚θmaxは経験的な閾値であり、各CAEソフトで夫々異なる。
図2に戻り、親断面設定部42は、入力装置2を介した作業者からの指令に応じて、基準線BLと対岸線OLとの間(すなわち、余肉部93)に、Z軸に対して平行な複数の断面(以下、親断面設定部42が設定する断面を「親断面」と呼ぶ)を設定する。親断面設定部42が設定した複数の親断面は、断面の形状を規定するパラメータと対応付けて記憶装置8に記憶される。
図4は、製品部91とダイフェース部95との間に設定される親断面の例を示す図である。親断面設定部42では、形状データが生成された製品部91とダイフェース部95との間の余肉部93に、複数の親断面931A,931B,931C,931D(以下、総称して「親断面931」と呼ぶ)を生成する。親断面設定部42は、互いに交錯しないように、基準点BP及び対岸点OPをそれぞれ所定の間隔だけ離間させながら複数の親断面931A〜931Dを設定する。
ここで、親断面設定部42における親断面931の設定方法としては、例えば上記特許文献1のように予め設定された断面テンプレートを用いた方法(例えば、後述の図5参照)と、後述のぼかし工程を伴う方法(例えば、後述の図6〜図11参照)と、の2種類がある。
図5は、断面テンプレートの一例を示す図である。
親断面931は図5に示すように、基準線BLの所定の基準点BPから対岸線OLの所定の対岸点OPまでを接続する断面線によって構成される。断面テンプレートとは、この断面線を、複数の直線と複数の曲線とを予め定められた幾つかの組み合わせで繋ぎ合わせて構成したものである。この断面テンプレートを用いると、作業者は、各直線と各曲線との具体的な形状を示す複数のパラメータを入力するだけで親断面931を設定することができる。親断面931を規定するパラメータには、適宜必要な情報を含めることができるが、少なくとも親断面931上の任意の位置におけるXYZ座標を算出可能な情報を含むものとする。図5には、これらパラメータとして、各直線の線長を示すパラメータL1,L2,L3,L4(mm)と、各曲線の曲率半径を示すパラメータR1,R2,R3(mm)と、各曲線の壁角度を示すパラメータA1,A2,A3(deg)と、親断面931の開始位置(基準線BL上の基準点BPの位置)及び終了位置(対岸線OL上の対岸点OPの位置)を示すXYZ座標と、親断面931と基準線BLとが成す角度θ(deg)と、を含むものを例示する。
図5に示すような断面テンプレートを用いると、作業者は、適切な断面テンプレートを選択しそして各パラメータの具体的な値を入力するだけでよいので、比較的短時間で適切な形状の親断面931を設定できる。またこのような断面テンプレートを用いた設定方法は、図4に示すように直線的な基準線BLと対岸線OLとの間における親断面931A,931Bを設定する場合には適していると言える。しかしながら、図5に示す断面テンプレートは平面状であるため、製品部91のホイールアーチWのように湾曲した基準線BLと対岸線OLとの間における親断面931C,931Dを設定する場合には、断面テンプレートを用いた方法は適切ではなく、以下において図6〜図11を参照して説明するぼかし工程を伴う設定方法が適している。
図6は、基準線BLと対岸線OLとの間を接続する親断面の設定方法の具体的な手順を示すフローチャートである。
図7〜図11は、製品部91のうち湾曲した基準線BLを備える部分(具体的には、ホイールアーチ)の一部を示す図である。以下では、図7〜図11に例示するようなホイールアーチに図6の設計方法を適用した場合について説明する。
図6の親断面設定方法は、製品部91の形状に応じた第1スケッチ線及びダイフェース部95の形状に応じた第2スケッチ線を主に作業者が主体となって作成するスケッチ線作成工程(S31〜S34)と、作成された2本のスケッチ線を適切な位置で切断するトリム工程(S35〜S38)と、トリム工程を経た2本のスケッチ線をぼかしながら接続することにより親断面を設定するぼかし工程(S39〜S42)と、によって構成される。
始めにS31では、親断面設定部は、親断面を設計しようとする部分の製品部91の形状データやダイフェース部95の形状データ等の以下の処理に必要なデータを準備し、さらに、後のぼかし工程で用いられるぼかし距離等の以下の処理に必要なパラメータ値を設定する。ぼかし距離の具体的な値は、その都度、作業者が入力するようにしてもよいし、親断面を設定しようとする部分の形状や板材の材料特性等から予め定められた値を用いるようにしてもよい。例えば図7に示すような自動車のホイールアーチに親断面を設定する場合、ぼかし距離は、例えば20mm程度に設定される。
次にS32では、親断面設定部は、基準線BL及び対岸線OL上で作業者によって指定された位置に基準点BP及び対岸点OPを設定する(図7参照)。S33では、親断面設定部は、基準点BP及び対岸点OPから延びる第1スケッチ線SL1及び第2スケッチ線SL2の角度を、作業者による入力に基づいて設定する(図7参照)。ここで基準点BPから延びる第1スケッチ線SL1の角度は、概ね基準点BPにおける製品部91と平行な面内でありかつ基準線BLに対して垂直になるように設定される場合が多い。また対岸点OPから延びる第2スケッチ線SL2の角度は、概ねZ軸と平行でありかつ対岸線OLに対して垂直になるように設定される場合が多い。
S34では、親断面設定部は、S33において定めた2本のスケッチ線SL1,SL2の長さを設定する。ここでスケッチ線SL1、SL2の長さは、図7に示すように十分に延伸して設定することが好ましい(具体的には、例えば、自動車のホイールアーチを対象とする場合には、数m程度)。これは後のトリム工程においてスケッチ線SL1,SL2を補助平面に転写した場合に、この補助平面上で2本のスケッチ線の交点の位置を特定できるようにするためである。なお図6や後述の図7に示すように基準線BLや対岸線OLが湾曲している場合には、これら両スケッチ線SL1,SL2は3次元空間上で交差しない場合が多い。このため、上述のような平面状の断面テンプレートを用いた方法では、適切な断面形状を設定することが困難になってしまう。
S35では、親断面設定部は、基準点BP及び対岸点OPを含みかつZ軸に平行な補助平面を設定する。
図8(A)は、基準点BP及び対岸点OPを含むように設定された補助平面をZ軸に沿って視た図であり、図8(B)は、この補助平面を正面から視た図である。図8(B)では、2本のスケッチ線SL1,SL2を補助平面に転写して得られる直線をそれぞれSL1_Z,SL2_Zと表記する。また、これら図8(A)及び(B)では、補助平面を破線で示す。
S36では、親断面設定部は、補助平面上における2本のスケッチ線SL1_Z,SL2_Zの交点Oの位置を特定する(図8(B)参照)。S37では、親断面設定部は、補助平面に対して垂直かつ上記交点Oを通過する線を中心軸とし、かつS31でその値を設定したぼかし距離を半径とした円柱状の領域をトリム範囲TRMとして設定する。
図9は、補助平面上に設定された交点Oに基づいて定められる円柱状のトリム範囲TRMを示す斜視図である。図9では、トリム範囲TRMの輪郭線を一点鎖線で示す。
S38では、親断面設定部は、以上のようにして補助平面を用いて設定した円柱状のトリム範囲TRMを用いることによって2本のスケッチ線SL1,SL2を切断する。より具体的には、図9に示すようにトリム範囲TRMと2本のスケッチ線SL1,SL2との交点を特定し、これら交点をそれぞれ第1スケッチ線SL1の終点EP1及び第2スケッチ線SL2の終点EP2として設定する。これにより、両スケッチ線SL1,SL2が近接する位置に各々の終点DP1,EP2が設定される。またこれにより基準点である始点BPから終点EP1へ延びる直線状の第1スケッチ線SL1と、対岸点である始点OPから終点EP2へ延びる直線状の第2スケッチ線SL2とが得られる。
S39では、親断面設定部は、2本のスケッチ線SL1,SL2の始点BP,OPを含む基礎曲面を設定する。以下で説明するように、親断面はここで設定される基礎曲面に沿って設定される。
図10(A)は、各スケッチ線SL1,SL2の始点BP,OPを含むように設定された基礎曲面の斜視図であり、図10(B)は、この基礎曲面をZ軸に沿って視た図である。図10(B)では、基礎曲面を破線で示す。これら図10(A)及び(B)に示すように、基礎曲面は、(1)2つの始点BP,OPを含むことに加えて、(2)Z軸に対して平行であり、(3)始点BPにおいて第1スケッチ線SL1と接し、かつ(4)始点OPにおいて第2スケッチ線SL2と接する、という計4つの拘束条件が満たされるように、既知のアルゴリズムを用いて設定される。
S40では、親断面設定部は、図11に示すように、スケッチ線SL1,SL2を既知のアルゴリズムを用いて基礎曲面に転写する。図11では、2本のスケッチ線SL1,SL2を基礎曲面に転写して得られる曲線をそれぞれSL1_B,SL2_Bと表記する。また2本のスケッチ線SL1,SL2の終点EP1,EP2を基礎曲面に転写して得られる点をそれぞれEP1_B,EP2_Bと表記する。
S41では、親断面設定部は、基礎曲面に転写された第1スケッチ線SL1_Bの終点EP1_Bと、第2スケッチ線SL2_Bの終点EP2_Bとを滑らかに接続する補間曲線SPLを既知のアルゴリズムを用いて基礎曲面上で設定する。
S42では、親断面設定部は、以上のようにして基礎曲面上で設定された第1スケッチ線SL1_Bと補間曲線SPLと第2スケッチ線SL2_Bとを接続することにより、図10に示すように基準点BPから対岸点OPへ延びる曲線状の親断面931を設定する。
図12は、図6のぼかし工程を伴う設計方法を実現する親断面設定部42の機能構成を示すブロック図である。親断面設定部42は、データ取得部421と、スケッチ線作成部422と、トリム処理演算部423と、基礎曲面作成部424と、転写処理演算部425と、ぼかし処理演算部426と、を含んで構成され、これらによって複数の親断面931を設定する。
データ取得部421は、親断面を設計しようとする部分の製品部91やダイフェース部95の形状データや、スケッチ線の始点位置(すなわち、基準点BP及び対岸点OPの位置)、角度及び長さ、並びにトリム処理演算部423において用いられるぼかし距離等を記憶装置8又は作業者が操作する入力装置2から取得する。
スケッチ線作成部422は、データ取得部421を介して取得した始点位置、角度、及び長さによって特徴付けられる2本のスケッチ線SL1,SL2を作成する(図6のS32、S33、S34、及び図7参照)。トリム処理演算部423は、基準点BP及び対岸点OPを含みかつZ軸に並行な補助平面を設定し(図6のS35、及び図8参照)、補助平面上における2本のスケッチ線SL1_Z,SL2_Zの交点Oの位置を特定し(図6のS36参照)、この交点Oとデータ取得部421を介して取得したぼかし距離を半径としたトリム範囲を設定し(図6のS37参照)、さらにこのトリム範囲でスケッチ線作成部422によって作成された2本のスケッチ線SL1,SL2を切断する(図6のS38、及び図9参照)。
基礎曲面作成部424は、作業者によってその位置が設定された基準点BP及び対岸点OPを含む基礎曲面を設定する(図6のS39参照)。転写処理演算部425は、トリム処理演算部423における切断処理を経た2本のスケッチ線SL1,SL2を、基礎曲面作成部424によって設定された基礎曲面上に転写する(図6のS40、及び図10参照)。ぼかし処理演算部426は、基礎曲面上に転写された2本のスケッチ線SL1_B,SL2_Bの終点同士を滑らかに接続する補間曲線SPLを基礎曲面上で設定し(図6のS41参照)、さらにこれら基礎曲面上で設定されたスケッチ線SL1_B,SL2_Bと補間曲線SPLとを接続することにより、基準点BPから対岸点OPへ延びる曲線状の親断面931を設定する(図6のS42、図11参照)。
図2に戻り、子断面生成部43は、複数の親断面931のうち隣接する親断面の対の間に、上記親断面と同様にZ軸に対して平行な複数の断面(以下、子断面生成部43が生成する断面を「子断面」と呼ぶ)を生成する。上述のように、基準線BL及び対岸線OLはそれぞれ閉曲線となっており、各親断面は互いに交錯しないように基準点BP及び対岸点OPの間隔を空けながら設定される。したがって、互いに隣接する2つの親断面の対が設定されると、これら一対の親断面、基準線及び対岸線を辺とした閉曲線が形成される。子断面生成部43は、これら親断面の形状に基づいて、これら親断面によって形成される閉曲線内に、互いに交錯しないような複数の子断面を生成する。なお、このような複数の子断面の生成は、公知のパラメトリックなCADソフトウェアにおける通常の機能により実現することができる。以下、複数の子断面を生成する具体的な手順について説明する。
図13(A)に示すように、製品部91に定義される基準線BLとダイフェース部95に定義される対岸線OLとの間の余肉部93には、複数の親断面931A,931Bが設定される。なお、図13の例では、親断面931は、1段の断面形状であり、親断面931Bは、2段の断面形状であるものとする。
これら親断面931A,931Bは、作業者からの指令に応じて、図13(B)に示すように所定の間隔を空けて設定される。子断面生成部43は、親断面931A,931Bの間に、親断面931A,931Bと類似の形状を有する子断面を複数生成することによって、これら親断面931A,931Bの間を埋める。このとき、子断面生成部43は、親断面931Aに基づく子断面と、親断面931Bに基づく子断面との2種類の子断面を生成する。
具体的には、子断面生成部43は、基準線BLのうち各親断面931A,931Bの親基準点BP1,BP2によって挟まれた区間を、所定のピッチで分割することによって、各子断面の始点に相当する子基準点BPC1,BPC2,BPC3,BPC4と、終点に相当する子対岸点OPC1,OPC2,OPC3,OPC4を設定する(図13(C)参照)。次に子断面生成部43は、各子基準点BPC1…BPC4に対し、各子断面と基準線BLとの成す角度に相当する子基準角度θC1,θC2,θC3,θC4を設定する(図13(D)参照)。なお、各子断面が他の断面と交錯しないように、各子断面の子基準点BPC1…BPC4、子対岸点OPC1…OPC4や子基準角度θC1…θC4を設定する具体的な手順については、本願出願人による特願2014−191584号に記載されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
次に子断面生成部43は、図13(C)に示すように、一方の親断面931Aと類似する形状を有しかつ子基準角度θC1…θC4で基準線BLと交錯する複数の子断面933A,933B,933C,933D(以下、これらを総称して「子断面群933」という)を、子基準点BPC1…BPC4及び子対岸点OPC1…OPC4の間に生成する。ここで、子断面生成部43は、上記子基準角度θC1…θC4、子基準点BPC1…BPC4、及び子対岸点OPC1…OPC4の他、図示しない処理によって定められた条件を拘束条件として、この拘束条件の下で既知のアルゴリズムを用いることによって、親断面931Aと類似する形状を有する子断面群933を生成する。
次に子断面生成部43は、図13(E)に示すように、他方の親断面931Bと類似する形状を有しかつ子基準角度θC1…θC4で基準線BLと交錯する複数の子断面935A,935B,935C,935D(以下、これらを総称して「子断面群935」という)を、子基準点BPC1…BPC4及び子対岸点OPC1…OPC4の間に生成する。ここで、子断面生成部43は、上記子基準角度θC1…θC4、子基準点BPC1…BPC4、及び子対岸点OPC1…OPC4の他、図示しない処理によって定められた条件を拘束条件とし、この拘束条件の下で既知のアルゴリズムを用いることによって、親断面931Bと類似する形状を有する子断面群935を生成する。
座標算出部44は、CADデータ上に平面格子10を投影し、特徴点101のXY座標と一致するCADデータ上のZ座標を、特徴点101のZ座標として算出する。これにより、XY平面上に配置された特徴点101にZ座標が与えられる。
ここで、図14を参照して座標算出部44についてより詳細に説明する。図14は、CADデータの断面形状を示す模式図である。図14を参照して、製品部91やダイフェース部95は、記憶装置8に形状データが予め記憶されているため、製品部91やダイフェース部95に投影された特徴点101のZ座標は、製品部91やダイフェース部95の形状データから容易に取得することができる。一方、余肉部93は、形状データが設定されていないため、余肉部93に投影された特徴点101のZ座標を適切に取得するための工夫が求められる。
図2に戻り、そこで、座標算出部44は、判定部46と、第1のZ座標算出部47と、第2のZ座標算出部48と、を含んで構成される。
判定部46は、投影した特徴点101のXY座標と一致するCADデータ上の位置に、形状データが設定されているか否かを判定する。ここで、余肉部93であっても、親断面931又は子断面群933,935が設定されている部分については断面を規定するパラメータが設定されているため、特徴点101が投影された場合にZ座標を容易に取得することができる。そのため、形状データが設定されているか否かとは、特徴点101のXY座標と一致する位置に製品部91、ダイフェース部95、親断面931又は子断面群933,935が存在するか否かを判定することと同義である。
より詳しくは、判定部46は、特徴点101がCAD面(製品部91及びダイフェース部95)上に投影されたか否かを判定する。また、判定部46は、特徴点101が断面領域(親断面931又は子断面群933,935が設定されている余肉部93と、製品部91のうち成形困難な箇所Qで中間形状の断面915が設定されている位置)内に投影されたか否かを判定する。
第1のZ座標算出部47は、特徴点101のXY座標と一致する位置に製品部91、ダイフェース部95、親断面931又は子断面群933,935が存在する場合に機能し、製品部91、ダイフェース部95、親断面931又は子断面群933,935の形状データ(断面のパラメータ)に基づいて特徴点101のZ座標を算出する。具体的には、第1のZ座標算出部47は、特徴点101のXY座標と一致する位置における製品部91、ダイフェース部95、親断面931又は子断面群933,935のZ座標を、特徴点101のZ座標として算出する。
ここで、子断面群933,935は、同一のピッチで生成されるため、子断面群933に投影した特徴点101が、子断面群935にも同時に投影される場合がある。この点、図15を参照して、子断面群933,935の双方に投影された特徴点101AのZ座標の算出方法について説明する。
図15(A)を参照して、子断面群933に投影された特徴点101AのZ座標をZaとし、子断面群935に投影された特徴点101AのZ座標をZbとする。子断面群933は、親断面931Aのパラメータに基づいて生成される一方で、子断面群935は、親断面931Bのパラメータに基づいて生成されるため、Z座標Za、Zbは夫々異なる場合がある。そこで、第1のZ座標算出部47は、Z座標Za、Zbに対して、親断面931A、931Bまでの距離に基づく重み付けを行い、特徴点101AのZ座標を算出する。
具体的には、図15(B)に示すように、第1のZ座標算出部47は、特徴点101Aを通過するZ方向に平行な無限直線と親断面931Aとの距離D1、無限直線と親断面931Bとの距離D2を算出し、以下の式(1)により特徴点101AのZ座標Z1を算出する。なお、無限直線と親断面931A,931Bとの距離とは、無限直線から無限直線に対する親断面931A,931B上の最近点までの距離である。
Figure 0006469555
図2に戻り、第2のZ座標算出部48は、特徴点101のXY座標と一致する位置に製品部91、ダイフェース部95、親断面931及び子断面群933,935が存在しない場合に機能し、この特徴点101の周辺の形状から、この特徴点101のZ座標を算出する。なお、周辺の形状とは、Z座標を特定可能な任意の位置をいい、例えば、特徴点101を通過するZ方向に平行な無限直線の周囲の製品部91、ダイフェース部95、親断面931又は子断面群933,935をいう。
この第2のZ座標算出部48は、候補断面取得部481と、最近点取得部482と、座標演算部483と、を含んで構成される。
候補断面取得部481は、特徴点101を通過するZ方向に平行な無限直線を跨ぐ2つ以上の子断面を候補断面として取得する。このとき、候補断面取得部481は、子断面群933,935の夫々について、2つ以上の候補断面を取得する。なお、無限直線を跨ぐ2つ以上の子断面とは、無限直線の近傍の2つ以上の子断面をいう。最近点取得部482は、取得した複数の候補断面の夫々について、特徴点101を通過する無限直線に対する最近点を算出し、この最近点のZ座標を取得する。座標演算部483は、候補断面上の最近点のZ座標を、無限直線との距離に基づいて重み付けすることで、特徴点101のZ座標を算出する。
ここで、図16を参照して、第2のZ座標算出部48によるZ座標の算出方法の一例について具体的に説明する。第2のZ座標算出部48によるZ座標の算出は、子断面群933に基づくZ座標(第1候補座標)の算出(図16(A))、及び子断面群935に基づくZ座標(第2候補座標)の算出(図16(B))の後に、これら第1候補座標と第2候補座標とに基づくZ座標の算出(図16(C))により行われる。
図16(A)を参照して、特徴点101Bは、対応するXY座標に製品部91、ダイフェース部95、親断面931及び子断面群933,935が存在しない特徴点である。
初めに、第2のZ座標算出部48(候補断面取得部481)は、特徴点101Bを通過し、Z方向に平行な無限直線を設定する。そして、第2のZ座標算出部48(候補断面取得部481)は、複数の子断面群933の中からZ方向視でこの無限直線を跨ぐ2つの子断面群933A,933Bを候補断面として取得する。
続いて、第2のZ座標算出部48(最近点取得部482)は、候補断面として取得した子断面群933A,933Bについて、無限直線に対する最近点を算出し、この最近点のZ座標を取得する。図16(A)では、子断面群933Aについて、最近点P1を算出し、この最近点P1のZ座標Z3を取得している。また、子断面群933Bについて、最近点P2を算出し、この最近点P2のZ座標Z4を取得している。
続いて、第2のZ座標算出部48(座標演算部483)は、最近点P1,P2のZ座標Z3,Z4を、無限直線から最近点P1,P2までの距離に基づいて重み付けをし、第1候補座標Zaを算出する。一例として、第2のZ座標算出部48(座標演算部483)は、無限直線から最近点P1までの距離がD3、無限直線から最近点P2までの距離がD4である場合、以下の式(2)により第1候補座標Zaを算出する。
Figure 0006469555
図16(B)を参照して、続いて、第2のZ座標算出部48は、子断面群935についても同様に候補断面(子断面群935A,935B)を取得すると共に、この候補断面上の最近点(最近点P3,P4)のZ座標(Z座標Z5,Z6)を取得する。そして、第2のZ座標算出部48は、無限直線からの距離に基づく重み付けを行い、第2候補座標Zbを算出する。一例として、第2のZ座標算出部48は、無限直線から最近点P3までの距離がD5、無限直線から最近点P4までの距離がD6である場合、以下の式(3)により第2候補座標Zbを算出する。
Figure 0006469555
これにより、子断面群933に基づく第1候補座標Zaと、子断面群935に基づく第2候補座標Zbとが算出される。
ここで、子断面群933,935は、親断面931A,931Bの間に生成されるところ、子断面群933は、親断面931Aの断面パラメータに基づいて親断面931Aから親断面931Bに向かって生成され、子断面群935は、親断面931Bの断面パラメータに基づいて親断面931Bから親断面931Aに向かって生成される。パネル製品は、連続性を持った形状を有することから、親断面931Aに近い子断面群933は、親断面931Aから遠い(親断面931Bに近い)子断面群933よりも精度良く生成されていると考えられる。親断面931Bと子断面群935についても同様である。
そこで、第2のZ座標算出部48は、子断面群933に基づく第1候補座標Zaと、子断面群935に基づく第2候補座標Zbと、に対して親断面931A,931Bからの距離に基づく重み付けを行い特徴点101BのZ座標Z7を算出する。
具体的には、図16(C)を参照して、特徴点101Bを通過する無限直線と親断面931Aとの距離がD7、無限直線と親断面931Bとの距離がD8である場合、以下の式(4)により特徴点101BのZ座標Z7を算出する。
Figure 0006469555
このように第1のZ座標算出部47により製品部91、ダイフェース部95、親断面931又は子断面群933,935に投影された特徴点101のZ座標が算出され、また、第2のZ座標算出部47により親断面931及び子断面群933,935が設定されていない余肉部93に投影された特徴点101のZ座標が算出される。なお、夫々の特徴点101には、予めXY座標が規定されているため、Z座標の算出に伴い、夫々の特徴点101のXYZ座標が算出されることになる。
図2に戻り、ドローモデル生成部45は、XYZ座標が得られた特徴点101同士を繋ぎポリゴン化することによって、複数の親断面と複数の子断面とに基づいて生成される面を含むような補間面をポリゴン面として生成する。例えば、隣接する特徴点101同士を繋いだ場合には、三角形状のポリゴン102を作成することができる(図1(C)参照)。これにより、CADデータが存在しない余肉部93を含むプレス成形品のドローモデル9(例えば、図20参照)が生成される。
なお、特徴点101の間隔(XY座標)は、上述のようにパネル製品のうち最もポリゴンの折れ角が大きくなる部位においてエラーとならないように定められた最適な間隔Doptに設定されている。そのため、部位によっては特徴点101の間隔が必要以上に細かくなってしまい計算量が膨大になるおそれがあることから、ドローモデル生成部45は、不要な特徴点101を削除する(間引く)こととしてもよい。一例として、隣接する特徴点101のZ座標の差が閾値未満である場合、言い換えると隣接する特徴点101においてZ座標の変化が小さい場合、特徴点101を削除することとしてもよい。
[中間形状のドローモデル生成]
ところで、プレス加工する板材の材料特性の関係から、製品形状を一度のプレス加工で成形できない場合があり、このような場合には、まず板材を中間形状までプレス加工した後に中間形状を加工し製品形状を得ることとしている。製品形状に先立ち中間形状をプレス加工する場合、CAEによるモデル形状評価では、製品形状ではなく中間形状が加工可能であるか否かの評価を行う必要がある。
そこで、本発明のドローモデル生成システム1では、必要に応じて中間形状のドローモデルも生成することとしている。
即ち、親断面設定部42は、材料特性の関係から一度のプレス加工で成形することが困難な製品部91の任意の位置に中間形状の親断面を複数設定し、子断面生成部43は、これら親断面の間に子断面を生成する。そして、座標算出部44は、製品部91に設定された中間形状の親断面及び子断面に対して平面格子10を投影し、特徴点101のXY座標と一致する中間形状の断面のZ座標を、特徴点101のZ座標として算出する。そして、ドローモデル生成部45は、XYZ座標が得られた特徴点101同士を繋ぎポリゴン化する。これにより、プレス加工過程で生成される中間形状を取得することができる。
なお、特徴点101のXY座標によっては、対応する位置に中間形状の断面が設定されていない場合がある。このような場合には、上述のように所定の重み付けを行うことで、中間形状の断面が設定されていない位置に投影する特徴点101のZ座標を算出することができる。
ここで、図17を参照して、中間形状のドローモデルを生成する場合の流れについて具体的に説明する。図17(A)は、ドローモデル9の断面を模式的に示す図である。また、図17(B)(C)は、中間形状の断面に対して投影した特徴点101のZ座標の算出方法を示す図であり、図17(B)は、投影した位置に中間形状の断面(親断面又は子断面)が設定されている場合の算出方法を示す断面図であり、図17(C)は、投影した位置に中間形状の断面(親断面及び子断面)が設定されていない場合の算出方法を示す斜視図である。
図17(A)を参照して、製品部91には、板材の材料特性の関係から一度のプレス加工で成形困難な箇所Qが存在している。そこで、図17(B)に示すように、親断面設定部42は、この箇所Qに中間形状の親断面を複数設定し、子断面生成部43は、これら親断面の間に中間形状の子断面を複数生成する。なお、中間形状の親断面又は子断面を以下「中間形状の断面915」と呼ぶ。中間形状の断面915の設定(生成)方法は、余肉部93に設定(生成)する断面(親断面又は子断面)と同じであるため、省略する。
なお、箇所Qに設定する断面(中間形状の断面915)と、余肉部93に設定する断面(親断面931、子断面群933,935)とは、一体であってもよく、また、夫々個別の断面であってもよい。
中間形状の断面915を設定すると、座標算出部44は、平面格子10を投影する。ここで、中間形状の断面915は、製品部91に対して設定されるため、特徴点101のXY座標が中間形状の断面915の任意の位置と一致する場合、当該特徴点101は、中間形状の断面915及び製品部91の双方に投影されることになる。図17(B)では、特徴点101は、中間形状の断面915のZ座標Z8及び製品部91のZ座標Z9に投影されている。
このような場合、座標算出部44(第1のZ座標算出部47)は、特徴点101のXY座標と一致する位置の中間形状の断面915のZ座標Z8と、製品部91のZ座標Z9とのうち、より大きな値のZ座標を特徴点101のZ座標として算出する。なお、中間形状の断面915は、製品部91に対してZ方向の上方に設定されるため、より大きな値のZ座標は、基本的には、中間形状の断面915のZ座標(Z8)となる。
一方、特徴点101が、中間形状の断面915が設定されていない位置に投影された場合、座標算出部44は、第2のZ座標算出部48として機能し、周辺に設定された中間形状の断面915を用いて特徴点101のZ座標を算出する。
即ち、図17(C)に示すように、座標算出部44(第2のZ座標算出部48)は、特徴点101を通るZ方向に平行な無限直線を跨ぐ2つの中間形状の断面915A,915Bを取得し、この中間形状の断面915A,915Bのうち、特徴点101を通る無限直線との最近点P5,P6を算出する。そして、この最近点P5,P6のZ座標Z10,Z11に対して、無限直線からの距離に基づく重み付けを行い、特徴点101のZ座標を算出する。なお、詳細については上述の通りである。
[ドローモデル生成システムの処理]
図18〜図19は、ドローモデル生成システム1の処理の流れを示すフローチャートである。図18に示すように、ドローモデルの生成は、製品部91やダイフェース部95などの形状データ及び平面格子10を設定する準備工程と、この準備工程において準備したデータを用いてドローモデル9を生成するドローモデル生成工程と、を含む。より具体的には、準備工程は、ステップS1〜S4の処理で構成され、ドローモデル生成工程は、ステップS5〜S8の処理で構成される。
ステップS1では、作業者による入力装置2の操作に基づいて、ドローモデル生成システム1は、製品部91及びダイフェース部95の形状データを生成し、記憶装置8に記憶する。ステップS2では、ドローモデル生成システム1の親断面設定部42は、作業者による入力装置2の操作に基づいて、上述のように図5の断面テンプレートを用いた方法か又は図6〜図11に示すぼかし処理を伴う方法によって、互いに交錯しないように複数の親断面(余肉部93の親断面、中間形状の親断面)を設定し、記憶装置8に記憶する。
ステップS3では、ドローモデル生成システム1は、作業者による入力装置2の操作及び上述のようにして設定された複数の親断面を用いて、各親断面の間に子断面群を生成する子断面群生成処理を実行する。
ステップS4では、平面格子生成部41は、作業者による入力装置2の操作に基づいて平面格子10を生成し、記憶装置8に記憶する。ステップS5において、座標算出部44は、製品部91、ダイフェース部95、親断面及び子断面の形状データ(CADデータ)に対して平面格子10を投影する。続く、ステップS6において、座標算出部44は、Z座標算出処理を行う。ここで、図19を参照して、Z座標算出処理について説明する。
ステップS11において、判定部46は、特徴点101がCAD面上に投影されたか否かを判定する。ここで、CAD面とは、製品部91及びダイフェース部95をいう。即ち、特徴点101が製品部91やダイフェース部95に投影された場合、ステップS11においてYESとなり、特徴点101が製品部91及びダイフェース部95以外の位置、即ち、後述する断面領域内に投影された場合、ステップS11においてNOとなる。
ステップS11においてYESのとき、ステップS12において、第1のZ座標算出部47は、投影した位置の製品部91及びダイフェース部95のZ座標を取得し、処理をステップS13に移す。
ステップS13において、判定部46は、特徴点101が断面領域内に投影されたか否かを判定する。ここで、断面領域とは、断面が設定されている領域であり、具体的には、親断面931又は子断面群933,935が設定されている余肉部93と、製品部91のうち成形困難な箇所Qで中間形状の断面915が設定されている位置をいう。即ち、特徴点101が余肉部93や中間形状の断面915が設定されている位置に投影された場合、ステップS13においてYESとなり、処理をステップS14に移す。一方、ステップS13においてNOの場合、処理をステップS19に移す。
ステップS14において、判定部46は、特徴点101のXY座標と一致する位置に断面が存在するか否かを判定する。即ち、特徴点101のXY座標と一致する位置に、余肉部93に設定された親断面931又は子断面群933,935や、製品部91のうち成形困難な箇所Qに設定された中間形状の断面915が存在しない場合には、ステップS14においてNOとなり、処理をステップS15に移す。
ステップS15において、第2のZ座標算出部48は、特徴点101を通過するZ方向に平行な無限直線を跨ぐ子断面群933,935を取得すると共に、この子断面群933,935上の無限直線との最近点を抽出する。続く、ステップS16において、第2のZ座標算出部48は、最近点のZ座標を無限直線までの距離に基づいて重み付けし、子断面群933に基づく第1候補座標及び子断面群935に基づく第2候補座標を算出する。続くステップS17において、第2のZ座標算出部48は、第1候補座標及び第2候補座標を、親断面931までの距離に基づいて重み付けし、特徴点101のZ座標を算出して取得する。Z座標を取得後、処理をステップS19に移す。
なお、上述の式(2)、(3)は、ステップS16における第1候補座標及び第2候補座標の算出に用いられ、上述の式(4)は、ステップS17におけるZ座標の算出に用いられる。
また、上述のステップS15〜17の説明では、親断面931又は子断面群933,935が設定されている余肉部93においてZ座標を取得する場合について説明したが、製品部91のうち中間形状の断面915が設定されている位置においてZ座標を取得する場合も同様である。
ステップS14に戻り、特徴点101のXY座標と一致する位置に、余肉部93に設定された親断面931又は子断面群933,935や、製品部91のうち成形困難な箇所Qに設定された中間形状の断面915が存在する場合には、ステップS14においてYESとなり、処理をステップS18に移す。
ステップS18において、第1のZ座標算出部47は、各断面の断面パラメータに基づいてZ座標を算出して取得する。具体的には、親断面931、子断面群933,935又は中間形状の断面915のZ座標を、特徴点101のZ座標として算出して取得し、処理をステップS19に移す。
ここで、子断面群933,935の双方に特徴点101が投影された場合には、子断面群933に投影された特徴点101のZ座標Zaと、子断面群935に投影された特徴点101のZ座標Zbとに対して、親断面931A,931Bまでの距離に基づく重み付けを行い、特徴点101のZ座標を算出する。なお、上述の式(1)は、このような場合におけるZ座標の算出に用いられる。
また、上述のステップS18の説明では、余肉部93に設定された子断面群933,935の断面パラメータに基づいてZ座標を算出する場合について説明したが、製品部91のうち中間形状の断面915が設定されている位置において、子断面に基づいてZ座標を取得する場合も同様である。
ステップS19において、取得したZ座標が2つある場合には、大きい方のZ座標を特徴点101のZ座標として取得する。ここで、取得したZ座標が2つある場合とは、ステップS11及びステップS13のいずれにおいてもYESであり、特徴点101を、製品部91のうち成形困難な箇所Qで中間形状の断面915が設定されている位置に投影した場合である。この場合には、ステップS12により取得されたZ座標と、ステップS17又は18により取得されたZ座標の2つが存在する。従って、これらのうち大きい方(基本的にはステップS17又は18により取得されたZ座標)を特徴点101のZ座標として取得し、処理をステップS20に移す。
ところで、CAD面と断面いずれも存在しない領域は原則として無い。従って、ステップS11又はステップS13の少なくともいずれかにおいて、必ずYESとなり、Z座標が取得されることとなる。なお、安全のため、既に公知のソフトウェアにより、3辺以上のフェースを自動的に作成し、ポリゴンメッシュ上の穴の開いた領域を埋めるポリゴン穴埋め処理、もしくはポリゴン格子と連携してもよい。
ステップS20では、ステップS19で取得したZ座標を、特徴点101のXY座標と結びつけて記憶装置8に記憶する。その後、ステップS21に移り、全ての特徴点101について処理を行い、Z座標算出処理を終了する。
図18に戻り、全ての特徴点101についてZ座標を算出(即ちXYZ座標を取得)すると、ステップS6において、ドローモデル生成部45は、不要な特徴点101を削除する。具体的には、ドローモデル生成部45は、隣接する特徴点101においてZ座標の変化が小さい場合、特徴点101を削除する。続いて、ステップS7において、ドローモデル生成部45は、隣接する特徴点101同士を繋いでポリゴン化し、処理を終了する。
以上、本発明のドローモデル生成システム1の好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、スケッチ線SL1,SL2を切断する際に用いられるトリム範囲TRMを、図8及び図9に示すように補助平面に対して垂直かつ交点Oを通過する線を中心軸とした円柱状の領域で定義したが、本発明はこれに限らない。トリム範囲TRMの形状は、2本のスケッチ線SL1,SL2がぼかし距離で特定される程度に近接する位置に各々の終点EP1,EP2が設定されるものであれば、どのような形状であってもよい。具体的には、例えば交点Oを中心とし、ぼかし距離を半径とした球状であってもよい。
1 ドローモデル生成システム
2 入力装置
4 演算装置
42 親断面生成部
43 子断面生成部
9 ドローモデル
91 製品部
93 余肉部
931 親断面
933 子断面
935 子断面
95 ダイフェース部

Claims (3)

  1. 2つの異なる面から、各面を接続する補間面又はその断面をコンピュータによって設計するモデル設計方法であって、
    第1の面に定められた第1始点から延びる第1スケッチ線及び第2の面に定められた第2始点から延びる第2スケッチ線を設定するスケッチ線作成工程と、
    前記第1及び第2スケッチ線が近接する位置に前記第1スケッチ線の第1終点及び前記第2スケッチ線の第2終点を設定する終点設定工程と、
    前記第1及び第2始点を含む基礎曲面を設定する基礎曲面設定工程と、
    前記基礎曲面に転写された前記第1スケッチ線の前記第1終点と前記第2スケッチ線の前記第2終点とを、前記基礎曲面上で定義された補間曲線で接続することにより、前記断面を設定する断面設定工程と、を備えることを特徴とするモデル設計方法。
  2. 前記終点設定工程では、
    前記第1及び第2始点を含む補助平面を設定し、
    前記補助平面に転写された前記第1及び第2スケッチ線の交点を基準点として設定し、
    前記補助平面に対し垂直かつ前記基準点を通過する線を基準軸として設定し、
    前記基準軸から所定のぼかし距離によって特定される点において前記第1スケッチ線の第1終点及び前記第2スケッチ線の第2終点を設定することを特徴とする請求項1に記載のモデル設計方法。
  3. 前記スケッチ線作成工程では、前記第1及び第2始点を含む平面に転写した場合に、当該平面上での交点の位置を特定できる程度に十分な長さで前記第1及び第2スケッチ線を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のモデル設計方法。
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