JP6468764B2 - 眼科装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被検眼の眼底あるいは前眼部を検査する眼科装置に例示される検査装置に関する。ビームスプリッターにより複数の光学系を配置し、眼底撮像及び前眼部撮像を行う装置に関するものである。特に被検者の眼球の収差をキャンセル補正して眼底の微小部を高倍率高解像度で撮像する機能を有した装置に関する。
近年、検査装置の一態様である眼科用の撮像装置として、眼底に2次元的にレーザ光を照射してその反射光を受光して画像化するSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope:走査レーザ検眼鏡)装置が知られている。特に、眼底を高倍率で撮像する際、眼の収差を測定し、その収差を補正する補償光学(Adaptive Optics:AO)機能を組み込んだAO−SLOの研究が進められている。このような装置には、眼底を広画角で撮影する低倍率広角光学系、補償光学機能を組み込み、眼底を高倍率高解像度で撮影するAO光学系、前眼部を撮像する前眼部光学系、AO光学系の眼底撮像範囲を変えるための固視灯表示光学系などの複数の光学系が配置される。これらの光学系の光路分離は、ハーフミラーまたはダイクロイックミラー等のビームスプリッターをチルト偏心配置させ、透過方向と反射方向とに光路を分けることにより行われている。
特許文献1には、チルト偏心させたビームスプリッターにより光路の分離を為したAO−SLO装置が開示されている。当該装置は、複数のビームスプリッター或いはダイクロイックミラーを有する。なお、チルト偏心とは、ビームスプリッター等の光学素子の光軸を照明光等の光軸に対して傾ける或いは回転させる態様で偏心させたものを指す。例えば、一のビームスプリッターは、眼底への照明光を投射する高倍率眼底照明系/低倍率眼底照明系を他光学系と分離する。また、他のビームスプリッターは、固視標表示光学系と前眼部観察光学系を他光学系から分離する。ダイクロイックミラーは、眼の収差を測定する波面イメージセンサー光学系を他光学系から分離する。更に低倍率眼底撮像光学系と高倍率眼底撮像光学系を分離する穴あきビームスプリッターも開示されている。
特開2007−296209号公報
前述したように、複数の光学系を配置する例えばAO−SLO装置等の眼科装置では、特許文献1に開示されるように、チルト偏心させたビームスプリッターにより光路分離が行われる。しかしこれらのビームスプリッターのチルト偏心は、同一平面内(紙面内)でのチルト偏心あるため、軸上での非点収差は残存したままになってしまう。このため、得られる画像が歪む等の事態が生じ、撮像装置としての良好な光学性能は得られない。
本発明は、以上の状況に鑑みて為されたものであって、ビームスプリッターを用いて且つ複数の光学系を配置し、眼底撮像及び前眼部撮像を行う眼科装置において、良好な光学性能を有した装置を提供する。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る眼科装置は、
被検眼の眼底の第1の画像を撮像する第1の光学系、前記被検眼の前眼部の画像を撮像する第2の光学系、前記被検眼の固視を促す指標を表示する第3の光学系及び前記第1の画像より低倍率の第2の画像を撮像する第4の光学系の4つの光学系と、
前記被検眼からの光の光軸に対してチルト偏心して配置され、前記第1の光学系を分離する第1のダイクロイックミラーと、
前記第1のダイクロイックミラーを透過した前記被検眼からの光が、第1の正レンズを介して導かれると共に、前記被検眼からの光の光軸に対してチルト偏心して配置され、前記第2の光学系を分離する第2のダイクロイックミラーと、
前記第2のダイクロイックミラーを透過した前記被検眼からの光の光軸に対してチルト偏心して配置され、反射によって前記第3の光学系を分離すると共に、透過によって第4の光学系を分離する第3のダイクロイックミラーと
前記第2のダイクロイックミラーにより分離された前記第の光学系に配置された第2の正レンズ及び偏心平板と、を有し、
前記第1の正レンズは、前記被検眼の眼底からの光を収斂光として前記第2のダイクロイックミラーに入射させると共に、発散光として前記第3のダイクロイックミラーへ入射させ、及び、前記被検眼の前記前眼部からの発散光を平行光として前記第2のダイクロイックミラーへ入射させ、
前記第2のダイクロイックミラーにより発生する前記被検眼の前記眼底からの光の非点収差が、前記第3のダイクロイックミラーにより補正され、
前記第1のダイクロイックミラーにより発生する前記被検眼の前記前眼部からの発散光の非点収差が、前記第2の正レンズを介して前記偏心平板により補正され、
前記偏心平板は、前記第1のダイクロイックミラーの偏心断面と垂直な偏心断面上で同量のチルト偏心量を有し、前記第2の正レンズを介した収斂光を透過させることにより、前記第1のダイクロイックミラーにより生じる非点収差が補正されることを特徴としている。
本発明によれば、複数の光学系有し且つダイクロイックミラーをチルト偏心させて光路分離する装置において、発生する非点収差を良好に補正し、何れの光学系においても高い光学性能を得ることが可能となる。
本発明の第1実施例に係るAO−SLO装置における主要光学要素の概略構成図である。 本発明の第1実施例で用いた第1、第2、及び第3のダイクロイックミラーの特性を示す図である。 本発明の第2実施例に係るAO−SLO装置における主要光学要素の概略構成図である。 本発明の第2実施例で用いた第1、第2、及び第3のダイクロイックミラーの特性を示す図である。 第2のダイクロイックミラーによる軸上中心の非点収差の発生を説明する光路図である。 第2のダイクロイックミラーによる軸上中心の非点収差の影響が表れた結像面でのスポット像性能を示すスポットダイアグラムである。 本発明の第1実施例において第3のダイクロイックミラーを用いて行われる非点収差の補正について説明する光路図である。 本発明の第1実施例における第3のダイクロイックミラーによる補正後に得られた結像面でのスポット像性能を示すスポットダイアグラムである。 本発明の第1実施例における第3のダイクロイックミラーを用いて行われる非点収差の別の補正態様について説明する光路図である。 本発明の第1実施例における第3のダイクロイックミラーによる別態様の補正後に得られた結像面でのスポット像性能を示すスポットダイアグラムである。
<第1実施例>
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る眼科装置であるAO−SLO装置における主要光学要素の概略構成図である。図1(a)は母線断面上の構成について、図1(b)は子線断面上の構成について各々示している。本装置では、レーザ光源またはSLD(Super Luminescent Diode)光源12の光について、種々の光学系を介し且つ走査型のスキャナー11を用いて被検眼1の眼底上に二次元的に照射している。照射後の眼底からの反射光は光源から眼底に至った光路を逆戻りし、受光センサー12で受光される。受光された眼底反射光は光電変化処理等を経てて画像化される。
なお、実際に用いられる走査型スキャナー11は反射型ミラーデバイスであるが、ここでは便宜的に透過型の態様で示している。また光源12と受光センサー12は同一として図示しているが、実際に符号12に示される位置に配置される構成は光ファイバーの端面であり、その背後の不図示のファイバーカプラーにより、光源発光用の光路と受光センサー用の光路とに分岐されている。
本装置には、第1の光学系であるAO光学系4、第の光学系である前眼部光学系3、第の光学系である固視灯表示光学系5、第4の光学系である低倍率広角光学系2が含まれる。AO光学系は、波面補正機能を有し眼底を高倍率高解像度で撮像するために、眼の収差を測定してその収差をキャンセル補正する不図示の補償光学(Adaptive Optics:AO)機能が組み込まれる。AO光学系4は、被検眼1から偏心して配置される第1ダイクロイックミラーDCM1により光路の分離がされている。被検眼1の前眼部を撮像する前眼部光学系3の光路は、第2ダイクロイックミラーDCM2により分離される。第2のダイクロイックミラーDCM2は、後述する正レンズ10を介した被検眼1からの光を分離するために被検眼より偏心して配置される。即ち、被検眼に導かれる光の光軸に対して、該第2のダイクロイックミラーの光軸が傾けて配置されている。以下、本明細書において偏心して配置されるなる記載は、当該光学素子の光軸が被検眼に導かれる光である測定光等の光軸に対して傾斜するように配置されることを意味することとする。固視灯表示光学系5は、被検眼の固視を促してAO光学系の眼底撮像範囲を変えるための指標を表示する。固視灯表示光学系5の光路は第3のダイクロイックミラーDCM3で反射分離され、眼底を広画角で撮影する低倍率広角光学系2の光路は第3のダイクロイックミラーDCM3により透過分離されている。
なお、第1ダイクロイックミラーDCM1と第2ダイクロイックミラーDCM2との間には、正レンズ10が配置される。当該正レンズ10の配置により、光路上のそれ以降(第2のダイクロイックミラーDCM2以降)の光学系を小型化させている。正レンズ10は、被検眼眼底からの光を収斂光として第2のダイクロイックミラーDCM2に入射させると共に、発散光として第3のダイクロイックミラーDCM3に入射させる。これらの光学系の光路の分離は、第1〜第3の3枚のダイクロイックミラーをチルト偏心配置させ、透過と反射とを使い分けること行われている。
しかし、大きくチルト偏心したダイクロイックミラーに収斂光または発散光を入射させると軸上中心で非点収差が発生する。
図5は、第2のダイクロイックミラーによる軸上中心の非点収差の発生を説明する光路図である。本実施例に係る装置では、被検眼1の瞳側に正レンズ10a(図1の正レンズ10に相当)を配置したことから、瞳1aからの平行光(眼底からの反射光)は収斂光となる。この収斂光は、母線断面(YZ断面を定義)上で45度チルト偏心させた第2のダイクロイックミラーDCM2を収斂光として透過し、受光センサー12に対応する位置に配置される結像面12aにて結像されている。
図6は、結像面12aでのスポット像性能を示すスポットダイアグラム図である。横軸はピント面(結像面)からのデフォーカス量(mm)である。縦軸は画角であり、眼の瞳中心からの光線射出角度(X度、Y度)を示している。母線断面上でY=0度、+15度、−15度、母線断面と垂直な子線断面(XZ断面)上ではX=0度、+15度、−15度の射出光のスポットダイアグラムを示している。なお(X度、Y度)=(0度、0度)が軸上中心光束であり、デフォーカス量により、縦長のスポットダイアグラムから横長のスポットダイアグラムに変化しており、大きな非点収差が発生している。その影響でピント面でのスポットダイアグラムが大きく、光学性能が悪い。
なお図5において、眼の瞳1aと正レンズ10aとの間に、図1のような第1のダイクロイックミラーDCM1は入れていない。これは、眼底からの反射光が眼の瞳で平行光となり、第1のダイクロイックミラーDCM1へ平行光入射し、非点収差が発生しないため省略している。
図7は本発明の軸上非点収差補正法を説明する光路図であって、図7(a)に母線断面(側面から見た場合)の光路図上の各構成の配置を、図7(b)に子線断面(上面を見た場合の)の光路図上の各構成の配置を各々示している。図5に示された構成の後段に、第3のダイクロイックミラーDCM3、正レンズ14、理想レンズ(不図示)を配置して、もう一度結像させている。より詳細には、第3のダイクロイックミラーDCM3へは第2のダイクロイックミラーDCM2を経た発散光が入射する。入射した光は、母線断面ではチルト偏心させず、母線断面と垂直な子線断面で、−45度のチルト偏心量(第2のダイクロイックミラーDCM2の母線断面チルト偏心量と同じ)を与える。これにより、第3のダイクロイックミラーDCM3において軸上の非点収差をキャンセル補正させている。即ち、第2のダイクロイックミラーDCM2にて発生した非点収差に対して、第3のダイクロイックミラーDCM3によってこれをキャンセルする方向に非点収差を発生させ、結果としてこれら光学素子全体で生じる非点収差の抑制を行う。本実施例では、さらに眼の瞳1aと第2のダイクロイックミラーDCM2との間の正レンズを非球面レンズ化して、画角が大きい周辺部での収差も改善している。なお、本実施例において第3のダイクロイックミラーDCM3を本発明における他のダイクロイックミラーとして把握した場合、第2のダイクロイックミラーDCM2は本発明におけるダイクロイックミラーとして把握される。
図8に示すスポットダイアグラムのスポット像性能はそれを示しており、ピント面でのスポットダイアグラムは軸上、周辺ともに小さく、良好な光学性能を得ている。
図9では図7に示した非点収差補正のための構成とは他の態様の構成を例示している。図9に示す各光学要素は、基本的は図7に示すものと同じである。しかしながら本態様では、第3のダイクロイックミラーDCM3の子線断面でのチルト偏心量は図7における第3のダイクロイックミラーDCM3とは逆の+45度の偏心を有する構成としている。
しかし、図10のスポットダイアグラムに示されるスポット像性能から理解されるように、図7に例示された非点収差補正のための構成(図8のスポット像性能)と、軸上も周辺も同等の良好な光学性能を得ている。
以上のべたように、図1に概略構成を示した第1実施例に係るAO−SLO装置は、図7に示した構成である、子線断面において−45度のチルト偏心した第3のダイクロイックミラーと非球面化された正レンズ10とを有する。そして、第2のダイクロイックミラーの偏心断面と前記第3のダイクロイックミラーの偏心断面とは垂直の位置関係にあり、且つ同量の偏心量が設定されて、非点収差を補正する。これにより、眼底を広画角で撮影する低倍率広角光学系2の軸上の非点収差と周辺収差とを良好に補正することができる。なお、偏心断面とは、測定光等の光軸を含む平面のうち、該光軸に対して光軸を傾けて配置された光学素子の偏心量を与える平面を指す。また、この光学素子の傾き角を偏心量と称する。なお、本発明では、偏心断面等の位置関係に関しては、略垂直および略同量の偏心量として把握されることが好まし。ここで、略垂直および略同量の偏心量とは、完全に垂直または同じ偏心量を含む他、非点収差を軽減することが出来る程度のずれも含む概念である。第3のダイクロイックミラーDCM3を経た以降の光は、正レンズ14で平行光化され、スキャナー(実際は反射型スキャナー)11で2次元光速は1光束化され、正レンズ15で受光センサー12に結像する。
第2のダイクロイックミラーDCM2により光路が分離された前眼部光学系3は、眼球表面(被検眼1の瞳1a)からの反射光を結像させて、被検眼1の瞳面の状態を観察或いは撮影する光学系或いは装置である。眼球表面(被検眼1の瞳)からの発散光は第1のダイクロイックミラーDCM1に入射透過し、正レンズ10でほぼ平行光にされ、第2のダイクロイックミラーDCM2に反射されて光路分離される。分離後、該発散光は、ミラー19で反射され、更にレンズ16で不図示のCCDまたはCMOSの2次元撮像素子上にて結像されている。ここで、第1のダイクロイックミラーDCM1への入射透過光は発散光であるため、軸上の非点収差が発生するが、第2のダイクロイックミラーDCM2からの反射光は平行光であるため軸上の非点収差は発生しない。従って、光路分離された第2のダイクロイックミラーDCM2以降であって、さらに収斂光となるレンズ16以降の光路上に、子線断面上で45度のチルト偏心(第1のダイクロイックミラーDCM1のチルト偏心量と同量、−45度でも可)した透過の偏心平板22を挿入させている。
即ち、偏心平板22は、第3のダイクロイックミラーDCM3又は後述するように第2のダイクロイックミラーDCM2の何れかにより第4の光学系より分離された光学系に配置される。また、同様の光学系に第2の正レンズ16も配置される。該第2の正レンズ16は、第1のダイクロイックミラーDCM1が透過させた且つ正レンズ10により平行光とされた被検眼1の前眼部からの発散光を、偏心平板22に収斂光として入射させる。偏心平板22は、第1のダイクロイックミラーDCM1の偏心断面と垂直な断面上で同量の偏心を有し、該収斂光を透過させることにより、第1のダイクロイックミラーDCM1により生じる非点収差を補正する。即ち、この偏心平板22により、前眼部光学系3での軸上非点収差の補正が可能となり、良好な光学性能が得られる。
次に固視灯表示光学系5については、光路図の収斂光/発散光の関係は、第3のダイクロイックミラーDCM3までは低倍率広角光学系2と全く同じである。なお、本光学系は表示系なので、表示デバイス13への逆光線トレースの場合について述べる。第3のダイクロイックミラーDCM3での光路の反射分離後、眼底からの逆光線はレンズ17で収斂光にされる。その後、ミラー20でさらに反射され、中間結像面を形成した後に、さらにレンズ18でもう1回結像させている。表示デバイス13は、その結像面上に置かれている。この光学系では、収斂光の透過による第2のダイクロイックミラーDCM2での軸上非点収差発生に対し、第3のダイクロイックミラーDCM3の子線断面でのチルト偏心を同量設定することにより、発散光入射の反射光としてこれをキャンセルさせている。なお、第3のダイクロイックミラーの子線断面で所定のチルト偏心量を設定する対応は、低倍率広角光学系2の場合と同様である。
また図2に、本発明の第1実施例(図1)で用いた3つのダイクロイックミラーDCM1、2及び3の分光特性を示した。同図において、横軸は波長nm、縦軸は透過率%を示している。AO光学系4を光路分離させる第1のダイクロイックミラーDCM1は、750nm〜880nmの光を反射し、それ以外の波長光は透過することが望ましい。AO光学系4は高解像力が要求されるため、理論解像度から使用波長は短いほうがよい。しかし短くなると可視光になるため、人間の眼を撮像する際、被検者が眩しさを強く感じ、長時間撮像ができない。そこで、人の眼に見えても弱い光と感じられる750nm〜880nmの波長範囲が、バランスの良い波長域となる。
前眼部光学系3を光路分離させる第2のダイクロイックミラーDCM2は、700nm〜750nmの光を反射し、それ以外の波長の光は透過する特性を持たせている。700nm〜750nm波長に対応する撮像素子が安価なものが多いため、それを使ってコストダウンが可能となる。
眼底を広画角で撮影する低倍率広角光学系2と固視灯表示光学系5とを分離する第3のダイクロイックミラーDCM3について、低倍率広角光学系2は、AO光学系4の撮影前後、前眼部撮影時など、長時間モニタリング撮像する必要があるため、眼の比視感度が弱く、眼に見えない880nm以上の波長帯が好ましい。また、固視灯表示光学系5は可視光波長になる。従って、第3のダイクロイックミラーDCM3は、880nm以上透過、700nm以下反射特性を持たせるのが好ましい。
また正レンズ10の焦点距離は50mm以上で、且つ150mm以下が好ましい。焦点距離がこの下限値を下回ると、第1のダイクロイックミラーDCM1との眼球との間の距離(WD)が十分に取れなくなり、人の鼻などが装置にぶつかる可能性が生じる。また、上限値を超えた場合は、正レンズのパワーが弱すぎて、それ以降の光学系が大きくする必要性が生じる。
以上のべたように、光路分割のためのダイクロイックミラーをチルト偏心させてそのダイクロイックミラーに透過収斂光または透過発散光を入射させた場合に発生する軸上の非点収差は、本発明においてこれを相殺し得るチルト偏心量を与えたダイクロイックミラー等を好適に配置することで補正することが可能となり、その結果AO−SLO装置において良好な光学性能を得ることが出来る。
<第2実施例>
本発明の第2実施例に係るAO−SLO装置における主要光学要素の概略構成図に関して、図3(a)は母線断面上の構成について、図3(b)は子線断面上の構成について各々示している。なお、本実施例において、眼球1から正レンズ10までは図1の第1実施例と同じ構成である。なお、図3(b)においては簡単のためDCM3を省略している。
本実施例では、眼底を広画角で撮影する低倍率広角光学系2に関しては、正レンズ10の後の第2のダイクロイックミラーDCM2は子線断面(XZ断面)上で−45度のチルト偏心をさせている。同時に、第3のダイクロイックミラーDCM3は、子線断面と垂直な母線断面(YZ断面)で45度のチルト偏心をさせ、これにより第1実施例と同様に軸上の非点収差を補正している。なお、本実施例でも正レンズ10は非球面レンズ化され、周辺光学性能も同様に補正可能としている。また、正レンズ14以降には配される構成は第1実施例と同じであり、ここでの説明は省略する。
固視灯表示光学系5の光路は、第2のダイクロイックミラーDCM2で反射分離されている。なお、本実施例でも、該固視灯表示光学系5が表示系なので、表示デバイス13への逆光線トレースの場合について述べる。第3のダイクロイックミラーDCM3での光路の反射分離後、眼底からの逆光線は第2のダイクロイックミラーDCM2に収斂光として入射し反射しているため、軸上の非点収差が発生する。そこで、第2のダイクロイックミラーDCM2の子線断面偏心と垂直な母線断面上で45度のチルト偏心させた偏心平板23を第2のダイクロイックミラーDCM2の後段に配置し、発散光入射透過させて、軸上の非点収差をキャンセルさせている。その後、逆光線は正レンズ17で平行光化され、ミラー20で反射され、正レンズ18で結像される。表示デバイス13は、その結像面上に置かれるように配置されている。
前眼部光学系3の構成は、第3のダイクロイックミラーDCM3までは低倍率広角光学系2と同じ構成である。眼球1の表面(眼の瞳)からの発散光が第1のダイクロイックミラーDCM1に入射透過し、正レンズ10でほぼ平行光化される。平行光化された発散光は、第2のダイクロイックミラーDCM2に入射透過し、DCM3で反射分離され、ミラー19で反射された後に、レンズ16でCCDまたはCMOSの2次元撮像素子(不図示)上に結像される。ここで、第1のダイクロイックミラーDCM1への入射透過光は発散光であるため、軸上の非点収差が発生する。これに対し、第2のダイクロイックミラーDCM2への入射透過光、及び第3のダイクロイックミラーDCM3への入射反射光は平行光であるため軸上の非点収差は発生しない。従って、本実施例では、光路分離された第3のダイクロイックミラーDCM3以降で、さらに収斂光となるレンズ16以降に、子線断面上で45度のチルト偏心した透過の偏心平板22を挿入させている。なお、この偏心平板22の偏心量は第1のダイクロイックミラーDCM1のチルト偏心量と同量である。また、第1の実施例の場合と同様にこれを−45度とすることも可能である。この偏心平板の挿入によりにより、DCM1での軸上非点収差の補正が可能となり、良好な光学性能が得られる。
また図4に、本発明の第2実施例(図3)で用いた三つのダイクロイックミラーDCM1、2、及び3の分光特性を示した。横軸は波長nm、縦軸は透過率%を示している。AO光学系4を光路分離させる第1のダイクロイックミラーDCM1は、750nm〜880nmの光を反射し、それ以外の波長光は透過することが望ましい(第1実施例と同じ)。AO光学系4は高解像力が要求されるため、理論解像度から使用波長は短いほうがよい。しかし短くなると可視光になるため、人間の眼を撮像する際、被検者が眩しさを強く感じ、長時間撮像ができない。そこで、人の眼に見えても弱い光と感じられる750nm〜880nmの波長範囲が、バランスの良い波長域となる。次に固視灯表示光学系5を分離する第2のダイクロイックミラーDCM2は、700nm以下で反射、それ以外の波長の光は透過する特性を持たせている。固視灯表示光学系5で用いる光は可視光波長になるためである。最後の第3のダイクロイックミラーDCM3は、750nm以下の波長の光を反射、880nm以上の波長の光を透過する特性を持たせてある。第2のダイクロイックミラーDCM2で700nm以下の光(固視灯表示光学系5)はすでに光路分離されているため、第3のダイクロイックミラーDCM3の反射光は、700nm〜750nmの光となる。従って、700nm〜750nm波長で対応する撮像素子は安価なものが多いため、それを使うことによってコストダウンが可能となる。また低倍率広角光学系2は、AO光学系4の撮影前後、前眼部撮影時など、長時間モニタリング撮像する必要があるため、眼の比視感度が弱く、眼に見えない880nm以上の波長帯の光を用いることが好ましい。
また正レンズ10の焦点距離は50mm以上、150mm以下が好ましい。焦点距離が下限を下回ると、第1のダイクロイックミラーDCM1との眼球の間の距離(WD)が十分に取れなくなり、人の鼻などが装置にぶつかる可能性が生じる。また、焦点距離が上限値を超えた場合は、正レンズのパワーが弱すぎて、それ以降の光学系が大きくする必要性が生じる。
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
DCM1:第1のダイクロイックミラー
DCM2:第2のダイクロイックミラー
DCM3:第3のダイクロイックミラー
1:眼球
2:低倍率広角光学系
3:前眼部光学系
4:高倍率高解像度AO光学系
5:固視灯光学系
9:平板
10:正レンズ
11:スキャナー
12:光源・受光センサー
13:表示パネル
14−18:レンズ
19−20:ミラー

Claims (4)

  1. 被検眼の眼底の第1の画像を撮像する第1の光学系、前記被検眼の前眼部の画像を撮像する第2の光学系、前記被検眼の固視を促す指標を表示する第3の光学系及び前記第1の画像より低倍率の第2の画像を撮像する第4の光学系の4つの光学系と、
    前記被検眼からの光の光軸に対してチルト偏心して配置され、前記第1の光学系を分離する第1のダイクロイックミラーと、
    前記第1のダイクロイックミラーを透過した前記被検眼からの光が、第1の正レンズを介して導かれると共に、前記被検眼からの光の光軸に対してチルト偏心して配置され、前記第2の光学系を分離する第2のダイクロイックミラーと、
    前記第2のダイクロイックミラーを透過した前記被検眼からの光の光軸に対してチルト偏心して配置され、反射によって前記第3の光学系を分離すると共に、透過によって第4の光学系を分離する第3のダイクロイックミラーと
    前記第2のダイクロイックミラーにより分離された前記第の光学系に配置された第2の正レンズ及び偏心平板と、を有し、
    前記第1の正レンズは、前記被検眼の眼底からの光を収斂光として前記第2のダイクロイックミラーに入射させると共に、発散光として前記第3のダイクロイックミラーへ入射させ、及び、前記被検眼の前記前眼部からの発散光を平行光として前記第2のダイクロイックミラーへ入射させ、
    前記第2のダイクロイックミラーにより発生する前記被検眼の前記眼底からの光の非点収差が、前記第3のダイクロイックミラーにより補正され、
    前記第1のダイクロイックミラーにより発生する前記被検眼の前記前眼部からの発散光の非点収差が、前記第2の正レンズを介して前記偏心平板により補正され、
    前記偏心平板は、前記第1のダイクロイックミラーの偏心断面と垂直な偏心断面上で同量のチルト偏心量を有し、前記第2の正レンズを介した収斂光を透過させることにより、前記第1のダイクロイックミラーにより生じる非点収差が補正されることを特徴とする眼科装置。
  2. 前記第1の光学系は、波面補正機能を有して、前記眼底を高倍率で撮像する光学系であり、
    前記第1のダイクロイックミラーは750nm〜880nmの波長範囲の光を反射し、前記波長範囲の外の波長の光は透過する特性を有していることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
  3. 前記第4の光学系は、前記眼底を広画角で撮像する光学系であり、
    前記4つの光学系の中で最も長い波長の880nm以上の波長の光を撮像し、
    前記第2のダイクロイックミラー及び前記第3のダイクロイックミラーは、880nm以上の波長の光を透過する特性を有していることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
  4. 前記第1の正レンズは焦点距離として50mm以上かつ150mm以下の非球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の眼科装置。
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